(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG
本発明は、P2Xプリン作動性受容体のアンタゴニストとしての活性を有するジアミノピリミジン化合物、および有効量のジアミノピリミジン化合物を投与することを含む、P2X受容体と関連する疾患を治療するための方法に関する。さらに特に、呼吸器の状態および障害における咳、慢性の咳および咳への衝動の治療において、P2X3および/またはP2X2/3アンタゴニストを使用する方法が提供される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、P2X3および/またはP2X2/3受容体により媒介される疾患、状態および障害を治療する方法に対する必要性、ならびにP2X3およびP2X2/3受容体のアンタゴニストを含むP2X受容体のモジュレーターとして作用する化合物に対する必要性がある。そのような疾患および障害は、呼吸器疾患または障害と関連する咳を含む咳、慢性の咳および咳への衝動を含むことが本明細書において示される。慢性の咳は、苦痛を与えるものであり、機能的障害を引き起こすが、新規に認可された咳の治療は約50年出現していない。本発明は、他の必要性だけでなくこれらの必要性も満足させる。
【0008】
本発明は、P2X3またはP2X2/3受容体活性化により引き起こされ、または媒介される疾患の治療に使用するための化合物に関し、さらにP2X3および/またはP2X2/3受容体により媒介される疾患の共通の徴候、症状および病的状態の治療のための選択的なP2X3および/またはP2X3−P2X2/3のアンタゴニストとして使用するための化合物に特に関する。そのような化合物は、医薬の製造においても使用することができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、P2X3受容体および/またはP2X3−P2X2/3の二重受容体のアンタゴニストを使用して、咳に強く影響される呼吸器疾患の治療で使用するための化合物を提供する。これらの化合物は、そのような疾患を治療するための医薬の製造においても使用することができる。さらに具体的に、呼吸器疾患は、急性または亜急性の咳、咳への衝動、および慢性の咳を含むことができる。これらの呼吸器疾患は、主としてP2X3を含有する受容体(例えば、P2X3およびP2X2/3)の拮抗作用により治すことができる。その上、本明細書において例示される化合物(例えば、ジアミノピリミジンP2X3/P2X2/3アンタゴニスト)は、急性および亜急性の咳、咳への衝動、ならびに慢性の咳を含む多くの呼吸器疾患の咳が関係する症状を弱めることに非常に効果的である。
【0010】
したがって、一態様において、本発明は、それを必要とする対象における呼吸器疾患と関連する咳または咳への衝動を治療するための方法を目的とする。該方法は、それを必要とする対象に有効量の式(I):
【0011】
【化1】
の化合物または薬学的に許容されるその塩を投与することを含むことができる。
【0012】
1つまたは複数の実施形態において、R
1は、水素または任意選択で置換されたC
1〜C
6アルキルである。1つまたは複数の実施形態において、R
2は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミノ、アミノスルホニル、ハロ、アミド、ハロアルキル、アルコキシ、ヒドロキシ、ハロアルコキシ、ニトロ、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシアルコキシ、アルキニルアルコキシ、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、カルボキシアルキル、シアノまたはアルキルカルボニルである。
【0013】
一態様において、本発明は、呼吸器疾患と関連する咳または咳への衝動について対象を治療することにおいて使用するための化合物を提供し、該化合物は、式(I):
【0014】
【化2】
(式中、
R
1は、水素または任意選択で置換されたC
1〜C
6アルキルであり、
R
2は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミノ、アミノスルホニル、ハロ、アミド、ハロアルキル、アルコキシ、ヒドロキシ、ハロアルコキシ、ニトロ、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシアルコキシ、アルキニルアルコキシ、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、カルボキシアルキル、シアノまたはアルキルカルボニルである)
の化合物または薬学的に許容されるその塩である。
【0015】
一態様において、本発明は、それを必要とする患者において呼吸器疾患と関連する咳または咳への衝動を治療するための医薬を製造するための、式(I):
【0016】
【化3】
(式中、
R
1は、水素または任意選択で置換されたC
1〜C
6アルキルであり、
R
2は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミノ、アミノスルホニル、ハロ、アミド、ハロアルキル、アルコキシ、ヒドロキシ、ハロアルコキシ、ニトロ、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシアルコキシ、アルキニルアルコキシ、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、カルボキシアルキル、シアノまたはアルキルカルボニルである)
の化合物の使用を提供する。
【0017】
上の態様のいずれかの1つまたは複数の実施形態において、慢性の咳は、突発性または治療抵抗性の咳である。咳は昼間の咳であり得る。
【0018】
上の態様のいずれかの1つまたは複数の実施形態において、式(I)の化合物は、約600mgで1日に2回投与される。式(I)の化合物は、約2週間投与することができる。例えば、式(I)の化合物は、約600mgで1日に2回、約2週間投与される。
【0019】
上の態様のいずれかの1つまたは複数の実施形態において、慢性の咳は難治性の慢性の咳である。上の態様のいずれかの1つまたは複数の実施形態において、慢性の咳は、約50〜90%(例えば、約55%、60%、65%、70%、75%、80%、または85%)減少される。
【0020】
上の態様のいずれかの1つまたは複数の実施形態において、P2X3またはP2X2/3アンタゴニストの化合物は、化合物1〜38から選択される。例えば、該化合物は、化合物6、7、13、16、20、27、34および37から選択することができる(例えば、該化合物は化合物16であってもよい)。
【0021】
上の態様のいずれかの1つまたは複数の実施形態において、R
1は、水素またはメチルである。
【0022】
上の態様のいずれかの1つまたは複数の実施形態において、R
2は、ハロアルキル、アミノスルホニル、アルキルスルホニル、アルキルカルボニルまたはカルボキシアルキルである。
【0023】
上の態様のいずれかの1つまたは複数の実施形態において、R
2はハロアルキルであり、さらにアルキルはメチルである。
【0024】
上の態様のいずれかの1つまたは複数の実施形態において、R
2はアミノスルホニルである。
【0025】
上の態様のいずれかの1つまたは複数の実施形態において、R
2はカルボキシアルキルである。上の態様のいずれかの1つまたは複数の実施形態において、R
2はアルキルカルボニルである。
【0026】
1つまたは複数の実施形態において、呼吸器の症状、状態または障害は、P2X3またはP2X3−P2X2/3受容体のアンタゴニストにより弱められる。呼吸器疾患は、咳過敏性が優性な多くの状態から選択することができ、原因不明の咳、または上部呼吸器感染、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、もしくは突発性肺線維症と関連する咳を含み得る。
【0027】
1つまたは複数の実施形態において、咳は、亜急性もしくは慢性の咳、治療抵抗性の咳、突発性慢性の咳、ウイルス感染後の咳、医原性の咳、後鼻漏と関連する咳、上部呼吸器感染、喘息および/もしくはCOPDと関連する咳、間質性疾患と関連する咳、逆流性食道炎(GERD)と関連する咳および/もしくは喫煙と関連する咳または気管支炎の一形態である。医原性の咳は、ACE阻害剤により誘発され得る。それに加えて、間質性疾患は肺線維症であり得る。
【0028】
別の態様において、本発明は、それを必要とする患者において慢性の咳を治療するための方法を目的とする。該方法は、有効量の式(I):
【0029】
【化4】
の化合物または薬学的に許容されるその塩を投与することを含むことができる。1つまたは複数の実施形態において、R
1は、水素または任意選択で置換されたC
1〜C
6アルキルである。
【0030】
1つまたは複数の実施形態において、R
2は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミノ、アミノスルホニル、ハロ、アミド、ハロアルキル、アルコキシ、ヒドロキシ、ハロアルコキシ、ニトロ、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシアルコキシ、アルキニルアルコキシ、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、カルボキシアルキル、シアノまたはアルキルカルボニルである。
【0031】
別の態様において、本発明は、それを必要とする患者において慢性の咳の治療に使用するための化合物を提供し、該化合物は、式(I):
【0032】
【化5】
(式中、
R
1は、水素または任意選択で置換されたC
1〜C
6アルキルであり、
R
2は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミノ、アミノスルホニル、ハロ、アミド、ハロアルキル、アルコキシ、ヒドロキシ、ハロアルコキシ、ニトロ、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシアルコキシ、アルキニルアルコキシ、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、カルボキシアルキル、シアノまたはアルキルカルボニルである)
の化合物または薬学的に許容されるその塩である。
【0033】
別の態様において、本発明は、それを必要とする患者において慢性の咳を治療するための医薬を製造するための、式(I):
【0034】
【化6】
(式中、
R
1は、水素または任意選択で置換されたC
1〜C
6アルキルであり、
R
2は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミノ、アミノスルホニル、ハロ、アミド、ハロアルキル、アルコキシ、ヒドロキシ、ハロアルコキシ、ニトロ、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシアルコキシ、アルキニルアルコキシ、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、カルボキシアルキル、シアノまたはアルキルカルボニルである)
の化合物の使用を提供する。
【0035】
上の態様のいずれかの1つまたは複数の実施形態において、慢性の咳は、突発性または治療抵抗性の咳である。咳は昼間の咳であり得る。
【0036】
上の態様のいずれかの1つまたは複数の実施形態において、式(I)の化合物は、約600mgで1日に2回投与される。式(I)の化合物は、約2週間投与することができる。例えば、式(I)の化合物は、約600mgで1日に2回、約2週間投与される。
【0037】
上の態様のいずれかの1つまたは複数の実施形態において、慢性の咳は難治性の慢性の咳である。上の態様のいずれかの1つまたは複数の実施形態において、慢性の咳は、約50〜90%(例えば、約55%、60%、65%、70%、75%、80%、または85%)減少される。
【0038】
上の態様のいずれかの1つまたは複数の実施形態において、P2X3またはP2X2/3のアンタゴニストの化合物は、化合物1〜38から選択される。例えば、該化合物は、化合物6、7、13、16、20、27、34および37から選択することができる(例えば、該化合物は化合物16であってもよい)。
【0039】
上の態様のいずれかの1つまたは複数の実施形態において、R
1は、水素またはメチルである。
【0040】
上の態様のいずれかの1つまたは複数の実施形態において、R
2は、ハロアルキル、アミノスルホニル、アルキルスルホニル、アルキルカルボニルまたはカルボキシアルキルである。
【0041】
上の態様のいずれかの1つまたは複数の実施形態において、R
2はハロアルキルであり、さらにアルキルはメチルである。
【0042】
上の態様のいずれかの1つまたは複数の実施形態において、R
2はアミノスルホニルである。
【0043】
上の態様のいずれかの1つまたは複数の実施形態において、R
2はカルボキシアルキルである。上の態様のいずれかの1つまたは複数の実施形態において、R
2はアルキルカルボニルである。
【0044】
別の態様において、本発明は、急性、亜急性または慢性の咳の原因となるニューロン過敏性を治療する方法を提供する。該方法は、有効量の式(I):
【0045】
【化7】
の化合物または薬学的に許容されるその塩を投与することを含む。
【0046】
1つまたは複数の実施形態において、R
1は、水素または任意選択で置換されたC
1〜C
6アルキルである。1つまたは複数の実施形態において、R
2は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミノ、アミノスルホニル、ハロ、アミド、ハロアルキル、アルコキシ、ヒドロキシ、ハロアルコキシ、ニトロ、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシアルコキシ、アルキニルアルコキシ、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、カルボキシアルキル、シアノまたはアルキルカルボニルである。
【0047】
別の態様において、本発明は、それを必要とする患者において急性、亜急性、または慢性の咳の原因となるニューロン過敏性の治療に使用するための化合物を提供し、該化合物は、式(I):
【0048】
【化8】
(式中、
R
1は、水素または任意選択で置換されたC
1〜C
6アルキルであり、
R
2は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミノ、アミノスルホニル、ハロ、アミド、ハロアルキル、アルコキシ、ヒドロキシ、ハロアルコキシ、ニトロ、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシアルコキシ、アルキニルアルコキシ、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、カルボキシアルキル、シアノまたはアルキルカルボニルである)
の化合物または薬学的に許容されるその塩である。
【0049】
別の態様において、本発明は、それを必要とする患者において急性、亜急性または慢性の咳の原因となるニューロン過敏性を治療するための医薬の製造のための、式(I):
【0050】
【化9】
(式中、
R
1は、水素または任意選択で置換されたC
1〜C
6アルキルであり、
R
2は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミノ、アミノスルホニル、ハロ、アミド、ハロアルキル、アルコキシ、ヒドロキシ、ハロアルコキシ、ニトロ、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシアルコキシ、アルキニルアルコキシ、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、カルボキシアルキル、シアノまたはアルキルカルボニルである)
の化合物の使用を提供する。
【0051】
上の態様のいずれかの1つまたは複数の実施形態において、慢性の咳は、突発性または治療抵抗性の咳である。咳は昼間の咳であり得る。
【0052】
上の態様のいずれかの1つまたは複数の実施形態において、式(I)の化合物は、約600mgで1日に2回投与される。式(I)の化合物は、約2週間投与することができる。例えば、式(I)の化合物は、約600mgで1日に2回、約2週間投与される。
【0053】
上の態様のいずれかの1つまたは複数の実施形態において、慢性の咳は難治性の慢性の咳である。上の態様のいずれかの1つまたは複数の実施形態において、慢性の咳は、約50〜90%(例えば、約55%、60%、65%、70%、75%、80%、または85%)減少される。
【0054】
上の態様のいずれかの1つまたは複数の実施形態において、P2X3またはP2X2/3のアンタゴニストの化合物は、化合物1〜38から選択される。例えば、該化合物は、化合物6、7、13、16、20、27、34および37から選択することができる(例えば、該化合物は化合物16であってもよい)。
【0055】
上の態様のいずれかの1つまたは複数の実施形態において、R
1は、水素またはメチルである。
【0056】
上の態様のいずれかの1つまたは複数の実施形態において、R
2は、ハロアルキル、アミノスルホニル、アルキルスルホニル、アルキルカルボニルまたはカルボキシアルキルである。
【0057】
上の態様のいずれかの1つまたは複数の実施形態において、R
2はハロアルキルであり、さらにアルキルはメチルである。
【0058】
上の態様のいずれかの1つまたは複数の実施形態において、R
2はアミノスルホニルである。
【0059】
上の態様のいずれかの1つまたは複数の実施形態において、R
2はカルボキシアルキルである。上の態様のいずれかの1つまたは複数の実施形態において、R
2はアルキルカルボニルである。
【0060】
1つまたは複数の実施形態において、本発明は、呼吸器疾患と関連する咳の症状および咳への衝動を、式(I)の化合物を投与することにより治療するための方法に関する。本発明は、それを必要とする対象における呼吸器疾患と関連する咳の症状および咳への衝動を治療することにおいて式(I)の化合物を使用するための化合物にも関する。本発明は、それを必要とする対象における呼吸器疾患と関連する咳の症状および咳への衝動を治療するための医薬を製造するための式(I)の化合物の使用にも関する。例えば、本発明は、P2X3またはP2X2/3受容体のアンタゴニストにより媒介される呼吸器疾患または障害と関連する慢性の咳の症状および/または咳への衝動を、式(I)の化合物を投与することにより治療する方法に関する。本発明は、P2X3またはP2X2/3受容体のアンタゴニストにより媒介される呼吸器疾患または障害と関連する慢性の咳の症状および/または咳への衝動を治療するために使用するための式(I)の化合物にも関する。本発明は、P2X3またはP2X2/3受容体のアンタゴニストにより媒介される呼吸器疾患または障害と関連する慢性の咳の症状および/または咳への衝動を治療するための医薬の製造における式(I)の化合物の使用にも関する。
【0061】
1つまたは複数の実施形態において、本発明は、突発性/治療抵抗性の慢性の咳における昼間の慢性の咳を減少させるための方法に関する。本発明は、慢性の咳の原因となるニューロン過敏性を治療する方法にも関する。本発明は、突発性/治療抵抗性の慢性の咳における昼間の慢性の咳を減少させることに使用するための、および慢性の咳の原因となるニューロン過敏性を治療するための式(I)の化合物にも関する。本発明は、突発性/治療抵抗性の慢性の咳における昼間の慢性の咳を減少させるための、および慢性の咳の原因となるニューロン過敏性を治療するための医薬の製造における式(I)の化合物の使用にも関する。
【0062】
1つまたは複数の実施形態において、本発明の方法は、それを必要とする患者において、本明細書に記載された呼吸器疾患および障害または本明細書に記載されたそれらの症状を、化合物1〜39から選択された化合物を投与することにより治療、予防または改善することに関する。例えば、該化合物は、化合物6、7、13、17、21、28、35および38から選択される。例えば、該化合物は化合物16である。本発明は、本明細書に記載された呼吸器疾患および障害を治療、予防または改善するための化合物1〜39から選択された化合物の使用にも関する。本発明は、本明細書に記載された呼吸器疾患および障害を治療、予防または改善するための医薬の製造における化合物1〜39から選択された化合物の使用にも関する。例えば、該化合物は、化合物6、7、13、17、21、28、35および38から選択される。例えば、該化合物は化合物16である。
【0063】
本発明は、本発明の化合物の医薬組成物およびそれを調製する方法も提供する。
【0064】
下の詳細な説明で述べるように、本発明は、慢性の咳を含む咳および咳への衝動を治療または軽減するためのP2X3およびP2X2/3のアンタゴニストのクラスを特徴とする。本発明は、症状を知覚する中枢神経系のモジュレートを単に抑制するのではなくて、これらの病気において咳過敏性を引き起こす根本原因に対処する利点を有する。例えば、本発明は、感作された対象(例えば、ヒト)において持続性のおよび不適当な咳への衝動を最終的に誘発する求心性神経の活性を低下させる方法を提供する。本発明は、高度に選択的なP2X3およびP2X2/3のアンタゴニストを与える利点も有する。さらなる特徴および利点は、下の詳細な説明で述べられ、当業者には明らかであろう。
【発明を実施するための形態】
【0066】
定義
特に断らない限り、明細書および特許請求の範囲を含む本願において使用される以下の用語は、下で与えられる定義を有する。明細書および添付された特許請求の範囲で使用されるように、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈が明確に他のように指示していない限り、複数の指示対象を含むことが注意されなければならない。
【0067】
「アゴニスト」は、別の化合物または受容体部位の活性を増強させる化合物を指す。
【0068】
「アルキル」は、炭素原子および水素原子のみからなり、1から12個の炭素原子を有する1価の線状または分岐飽和炭化水素部分を意味する。「低級アルキル」は、炭素原子が1から6個のアルキル基、すなわちC
1〜C
6アルキルを指す。アルキル基の例として、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、n−ヘキシル、オクチル、およびドデシルなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0069】
「アルケニル」は、少なくとも1つの二重結合を含有する、炭素原子が2から6個の線状で1価の炭化水素ラジカルまたは炭素原子が3から6個の分岐した1価の炭化水素ラジカル、例えば、エテニル、プロペニルなどを意味する。
【0070】
「アルキニル」は、少なくとも1つの三重結合を含有する、炭素原子が2から6個の線状で1価の炭化水素ラジカルまたは炭素原子が3から6個の分岐した1価の炭化水素ラジカル、例えば、エチニル、プロピニルなどを意味する。
【0071】
「アルキレン」は、炭素原子が1から6個の線状の飽和した2価の炭化水素ラジカルまたは炭素原子が3から6個の分岐した飽和した2価の炭化水素ラジカル、例えば、メチレン、エチレン、2,2−ジメチルエチレン、プロピレン、2−メチルプロピレン、ブチレン、ペンチレンなどを意味する。
【0072】
「アルコキシ」は、式−ORの部分を意味し、Rは本明細書において定義されたアルキル部分である。アルコキシ部分の例として、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0073】
「アルコキシアルキル」は、式R
a−O−R
b−の部分を意味し、R
aは本明細書において定義されたアルキルであり、R
bはアルキレンである。典型的なアルコキシアルキル基は、例として、2−メトキシエチル、3−メトキシプロピル、1−メチル−2−メトキシエチル、1−(2−メトキシエチル)−3−メトキシプロピル、および1−(2−メトキシエチル)−3−メトキシプロピルを含む。
【0074】
「アルキルカルボニル」は、式−R’−R’’の部分を意味し、R’は(C=O)であり、R’’は本明細書において定義されたアルキルである。
【0075】
「アルキルスルホニル」は、式−R’−R’’の部分を意味し、R’は−SO
2−であり、R’’は本明細書において定義されたアルキルである。
【0076】
「アルキルスルホニルアルキル」は、式−R’−R’’−R’’’の部分を意味し、R’はアルキレンであり、R’’は−SO
2−であり、R’’’は本明細書において定義されたアルキルである。
【0077】
「アルキルアミノ」は、式−NR−R’の部分を意味し、Rは、水素またはアルキルであり、R’は本明細書において定義されたアルキルである。
【0078】
「アルキルスルファニル」は、式−SRの部分を意味し、Rは本明細書において定義されたアルキルである。
【0079】
「アミノ」は、式−NHRの部分を意味し、Rは、水素またはアルキルであってもよい。
【0080】
「アミド」は、式−NR(CO)R’−の部分を意味し、RおよびR’は、Hまたは本明細書において定義されたアルキルであってもよい。
【0081】
「ヒドロキシ」は、式−OHの部分を意味する。
【0082】
「ハロアルコキシ」は、式−ORの基を意味し、Rは本明細書において定義されたハロアルキル基である。
【0083】
「ニトロ」は、式−NO
2の基を意味する。「アルキルカルボニル」は、式−(CO)Rの基を指し、Rは本明細書において定義されたアルキル基である。
【0084】
「アミノアルキル」は、−R−R’基を意味し、R’は本明細書において定義されたアミノであり、Rはアルキレンである。「アミノアルキル」は、アミノメチル、アミノエチル、1−アミノプロピル、2−アミノプロピルなどを含む。「アミノアルキル」のアミノ部分は、アルキルで1度または2度置換されていてもよく、それぞれ「アルキルアミノアルキル」および「ジアルキルアミノアルキル」を提供する。「アルキルアミノアルキル」は、メチルアミノメチル、メチルアミノエチル、メチルアミノプロピル、およびエチルアミノエチルなどを含む。「ジアルキルアミノアルキル」は、ジメチルアミノメチル、ジメチルアミノエチル、ジメチルアミノプロピル、およびN−メチル−N−エチルアミノエチルなどを含む。
【0085】
「アミノスルホニル」は、−SO
2−NRR’基を意味し、RおよびR’は、各々独立に水素または本明細書において定義されたアルキルである。
【0086】
「アルキルスルホニルアミド」は、式−NR’SO
2−Rの部分を意味し、Rはアルキルであり、R’は、水素またはアルキルである。
【0087】
「アルキニルアルコキシ」は、式−O−R−R’の基を意味し、Rは本明細書において定義されたアルキレンであり、R’はアルキニルである。
【0088】
「アリール」は、単環式、二環式または三環式芳香環からなる1価の環状芳香族炭化水素部分を意味する。アリール基は、任意選択で本明細書において定義されたように置換されていてもよい。アリール部分の例には、任意選択で置換されたフェニル、ナフチル、フェナントリル、フルオレニル、インデニル、ペンタレニル、アズレニル、オキシジフェニル、ビフェニル、メチレンジフェニル、アミノジフェニル、ジフェニルスルフィジル、ジフェニルスルホニル、ジフェニルイソプロピリデニル、ベンゾジオキサニル、ベンゾフラニル、ベンゾジオキシリル、ベンゾピラニル、ベンゾオキサジニル、ベンゾオキサジノニル、ベンゾピペラジニル(benzopiperadinyl)、ベンゾピペラジニル、ベンゾピロジニル、ベンゾモルホリニル、メチレンジオキシフェニル、エチレンジオキシフェニルなど、および部分的に水素化されたそれらの誘導体が含まれるが、これらに限定されない。
【0089】
「アリールスルホニル」は、式−SO
2−Rの基を意味し、Rは本明細書において定義されたアリールである。
【0090】
「アンタゴニスト」は、別の化合物または受容体部位の作用を弱めるかまたは妨げる化合物を指す。
【0091】
「シアノアルキル」は式−R’−R’’の部分を意味し、R’は本明細書において定義されたアルキレンであり、R’’は、シアノまたはニトリルである。
【0092】
互換的に使用され得る用語「ハロ」、「ハロゲン」および「ハロゲン化物」は、置換基フルオロ、クロロ、ブロモ、またはヨードを指す。
【0093】
「ハロアルキル」は、1個または2個以上の水素原子が、同じかまたは異なったハロゲンで置換された本明細書において定義されたアルキルを意味する。典型的なハロアルキルには、−CH
2Cl、−CH
2CF
3、−CH
2CCl
3、およびパーフルオロアルキル(例えば、−CF
3)などが含まれる。
【0094】
「ヒドロキシアルコキシ」は、式−ORの部分を意味し、Rは本明細書において定義されたヒドロキシアルキルである。
【0095】
「ヒドロキシアルキルアミノ」は、式−NR−R’の部分を意味し、Rは、水素またはアルキルであり、R’は本明細書において定義されたヒドロキシアルキルである。
【0096】
「ヒドロキシアルキルアミノアルキル」は、式−R−NR’−R’’の部分を意味し、Rはアルキレンであり、R’は、水素またはアルキルであり、R’’は本明細書において定義されたヒドロキシアルキルである。
【0097】
「ヒドロキシカルボニルアルキル」または「カルボキシアルキル」は、式−R−(CO)−OHの基を意味し、Rは本明細書において定義されたアルキレンである。
【0098】
「ヒドロキシアルキルオキシカルボニルアルキル」または「ヒドロキシアルコキシカルボニルアルキル」は、式−R−C(O)−O−R−OHの基を意味し、各Rはアルキレンであり、同じであっても異なっていてもよい。
【0099】
「ヒドロキシアルキル」は、1個または2個以上、好ましくは1、2または3個のヒドロキシ基で置換された、本明細書において定義されたアルキル部分を意味するが、ただし、同じ炭素原子が、2個以上のヒドロキシ基を担持することはない。代表的な例には、ヒドロキシメチル、2−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシプロピル、3−ヒドロキシプロピル、1−(ヒドロキシメチル)−2−メチルプロピル、2−ヒドロキシブチル、3−ヒドロキシブチル、4−ヒドロキシブチル、2,3−ジヒドロキシプロピル、2−ヒドロキシ−1−ヒドロキシメチルエチル、2,3−ジヒドロキシブチル、3,4−ジヒドロキシブチルおよび2−(ヒドロキシメチル)−3−ヒドロキシプロピルが含まれるが、これらに限定されない。
【0100】
「カルボキシ」は、式−O−C(O)−OHの基を意味する。
【0101】
「スルホンアミド」は、式−SO
2−NR’R’’の基を意味し、R’およびR’’は、各々独立に水素またはアルキルである。
【0102】
「任意選択で置換された」とは、例えば、用語アルキルと共に使用される場合、本明細書において定義された置換基のいずれかから選択された1から3個の置換基、好ましくは1個または2個の置換基、例えばアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロアルキル、ヒドロキシアルキル、ハロ、ニトロ、シアノ、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、アシルアミノ、モノ−アルキルアミノ、ジ−アルキルアミノ、ハロアルキル、ハロアルコキシ、ヘテロアルキル、−COR(Rは、水素、アルキル、フェニルまたはフェニルアルキルである)、−(CR’R’’)
n−COOR(nは0から5の整数であり、R’およびR’’は、独立に水素またはアルキルであり、Rは、水素、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、フェニルまたはフェニルアルキルである)、または−(CR’R’’)
n−CONR
aR
b(nは0から5の整数であり、R’およびR’’は、独立に水素またはアルキルであり、R
aおよびR
bは、互いに独立に、水素、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、フェニルまたはフェニルアルキルである)により、任意選択で独立に置換されたアルキル基を意味する。
【0103】
「脱離基」とは、合成有機化学においてそれと従来関連する意味を有する基、すなわち、置換反応条件下で置き換えられ得る原子または基を意味する。脱離基の例には、ハロゲン、アルカンスルホニルオキシまたはアリーレンスルホニルオキシ、例えば、メタンスルホニルオキシ、エタンスルホニルオキシ、チオメチル、ベンゼンスルホニルオキシ、トシルオキシ、およびチエニルオキシ、ジハロホスフィノイルオキシ、任意選択で置換されたベンジルオキシ、イソプロピルオキシ、ならびにアシルオキシなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0104】
「モジュレーター」とは、標的と相互作用する分子を意味する。相互作用は、本明細書において定義されたアゴニストおよびアンタゴニストなどを含むが、これらに限定されない。
【0105】
「任意選択の」または「任意選択で」とは、その後で記載される事象または状況が起こるかもしれないが、起こる必要がないこと、および該記載が該事象または状況が起こる場合および起こらない場合を含むことを意味する。
【0106】
「疾患」および「疾患状態」とは、任意の疾患、状態、症状、障害または適応症を意味する。
【0107】
「不活性有機溶媒」または「不活性溶媒」とは、該溶媒がそれと関連して記載される反応の条件下で不活性であることを意味し、例えば、ベンゼン、トルエン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、Ν,Ν−ジメチルホルムアミド、クロロホルム、塩化メチレンまたはジクロロメタン、ジクロロエタン、ジエチルエーテル、酢酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、tert−ブタノール、ジオキサン、およびピリジンなどを含む。反対に特定されない限り、本発明の反応で使用される溶媒は不活性溶媒である。
【0108】
「薬学的に許容される」とは、一般的に安全で、無毒性であり、生物学的にも他の意味でも望ましくないことがなく医薬組成物の調製に有用であることを意味し、それが獣医学的なならびにヒトの薬学的使用のために許容されることを含む。
【0109】
化合物の「薬学的に許容される塩」とは、本明細書において定義された薬学的に許容され、かつ親化合物の所望の薬理学的活性を有する塩を意味する。そのような塩として、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸;または酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息酸、カンファースルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルタミン酸、グリコール酸、ヒドロキシナフト酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ムコン酸、2−ナフタレンスルホン酸、プロピオン酸、サリチル酸、コハク酸、酒石酸、p−トルエンスルホン酸、トリメチル酢酸などの有機酸で形成された酸付加塩;あるいは親化合物中に存在する酸性プロトンが、金属イオン、例えば、アルカリ金属イオン、アルカリ土類イオン、もしくはアルミニウムイオンにより置き換えられたか;または有機もしくは無機塩基と配位している場合に形成された塩が含まれる。許容される有機塩基は、ジエタノールアミン、エタノールアミン、N−メチルグルカミン、トリエタノールアミン、およびトロメタミンなどを含む。許容される無機塩基は、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウムおよび水酸化ナトリウムを含む。
【0110】
好ましい薬学的に許容される塩は、酢酸、塩酸、硫酸、メタンスルホン酸、マレイン酸、リン酸、酒石酸、クエン酸、ナトリウム、カリウム、カルシウム、亜鉛、およびマグネシウムから形成された塩である。
【0111】
薬学的に許容される塩への全ての言及は、溶媒添加形(溶媒和物)または同じ酸付加塩の本明細書において定義された結晶形(多形)を含むことが理解されるべきである。
【0112】
「保護基(protective group)」または「保護基(protecting group)」とは、合成化学においてそれが関連する型通りの意味で、化学反応が別の保護されていない反応性部位で選択的に実施され得るように、多官能性化合物中の1つの反応性部位を選択的に封鎖する基を意味する。本発明のある工程は、反応物中に存在する反応性窒素原子および/または酸素原子を封鎖する保護基に依存する。例えば、用語「アミノ保護基」および「窒素保護基」は、本明細書において互換的に使用され、合成手順中に望ましくない反応に対して窒素原子を保護することを意図されるこれらの有機基を指す。典型的な窒素保護基として、トリフルオロアセチル、アセトアミド、ベンジル(Bn)、ベンジルオキシカルボニル(カルボベンジルオキシ、CBZ)、p−メトキシベンジルオキシカルボニル、p−ニトロベンジルオキシカルボニル、およびtert−ブトキシカルボニル(BOC)などが含まれるが、これらに限定されない。当業者は、除去の容易さおよび以降の反応に耐える能力について、基をどのように選択するべきかを知っているであろう。
【0113】
「溶媒和物(単数)」または「溶媒和物(複数)」とは、化学量論量または非化学量論量のいずれかで溶媒を含有する溶媒添加形を意味する。幾つかの化合物は、固定されたモル比の溶媒分子を結晶性固体状態で捕捉して、そのようにして溶媒和物を形成する傾向を有する。溶媒が水であれば形成された溶媒和物は水和物であり;溶媒がアルコールである場合には、形成された溶媒和物はアルコレートである。水和物は、1分子または2分子以上の水と、その中で水がその分子の状態をH
2Oとして保持する物質の1つとの組合せにより形成され、そのような組合せは1種または2種以上の水和物を形成することができる。
【0114】
「対象」は、哺乳動物および非哺乳動物を意味する。哺乳動物は、ヒト;チンパンジーおよび他の類人猿およびサル種などの非ヒト霊長類;ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、およびブタなどの飼育動物;ウサギ、イヌ、およびネコなどの家畜;ラット、マウス、およびテンジクネズミなどの齧歯類を含む実験動物などを含むが、これらに限定されない哺乳綱の任意の構成員を意味する。非哺乳動物の例としては鳥類などが含まれるが、これらに限定されない。用語「対象」は、特定の年齢または性別を表さない。
【0115】
「咳が関係する呼吸器の障害」または「呼吸器疾患」は、限定されないが、咳過敏性症候群、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、気管支痙攣などを指す。呼吸器障害として、例えば、亜急性または慢性の咳、治療抵抗性の咳、突発性慢性の咳、上部呼吸器の感染と関連した咳、ウイルス感染後の咳、医原性の咳(例えば、ACE阻害剤により誘発されたような)、突発性肺線維症もしくは喫煙と関連する咳または気管支炎の形態が含まれる。呼吸器障害は、任意の呼吸器疾患と関連する咳への衝動、例えば慢性閉塞性肺疾患(COPD)、咳変形喘息、間質性肺疾患と関連する咳、またはゼイゼイいう咳への衝動を含むことができる。
【0116】
「急性の咳」とは、期間にして2週間まで続く咳を意味すると理解される。例えば、急性の咳は、風邪またはインフルエンザなどの急性疾患の結果であり得る。急性の咳は、原因となる要因(例えば、風邪またはインフルエンザ)が排除されたときに消失するであろう。
【0117】
「亜急性の咳」は、2から8週間の間続く咳を意味すると理解される。幾つかの場合に、亜急性の咳は、対象が疾患(例えば、風邪またはインフルエンザ)に感染している期間に続いて起こる。亜急性の咳は、原因となる要因が除去された後もしばしばとどまる咳である。例えば、亜急性の咳は、感染後(例えばウイルス感染後)に現れる。
【0118】
「慢性の咳」とは、明白な原因となる要因を有しないことがある8週間を超えて長く続く持続性または難治性の咳を指し、喘息またはCOPD(すなわち、突発性)などの他の呼吸器疾患と関連しないこともある。慢性の咳は、他の呼吸器疾患(例えばCOPD)とは対照的に、それを定義および診断するための顕著な特徴がないことも特徴とする。慢性の咳の別の特性は、慢性の咳に悩む対象が他の大部分の点では一見正常であってもよいことである。慢性の咳は、頻繁な咳込み(例えば、昼間の1時間当たり少なくとも5〜10回の咳)および睡眠中のうるさい咳込みを特徴とする。慢性の咳は、十年を超えることを含む、数年の期間継続し得る。
【0119】
対象が慢性の咳により悩まされているかどうかを決定するために、開業医または臨床医は、3ステップの試験を実施することができる。第1に、対象を、推定上の後鼻漏について治療することができる。幾つかの場合に、そのような治療は、抗ヒスタミンの形態を取る。第2に、対象を、プロトンポンプ阻害剤で治療することができる(例えば、逆流性疾患などの推定上の胃食道疾患を治療するために)。第3に、対象を、ステロイドで治療することができる(例えば、推定上の喘息の場合を治療するために)。
【0120】
対象が上の3ステップの治療措置後も慢性の咳を示し続けるならば、その咳は慢性の咳と言われるべきであり、恐らく難治性である。難治性の咳に悩む患者は、慢性の咳と診断される前に急性および亜急性の咳の両方に悩まされていたことが多いことが理解される。
【0121】
「治療的有効量」とは、疾患状態を治療するために対象に投与されたときに、該疾患状態のためのそのような治療をもたらすのに十分な化合物の量を意味する。「治療的有効量」は、化合物、治療される疾患状態、重症度または治療される疾患、対象の年齢および相対的健康、投与の経路および形態、診察する開業医または開業獣医の判断、ならびに他の要因に依存して変わるであろう。
【0122】
用語「上で定義されたもの」および「本明細書において定義されたもの」は、可変性のものについて言及される場合、その可変性のものの広い定義に加えて、存在するのであれば好ましい、より好ましい、および最も好ましい定義もその言及により包含する。
【0123】
「治療すること」または疾患状態の「治療」は、
(i)疾患状態を抑制すること、すなわち、疾患状態もしくはその臨床的症状の発症を阻止すること、または
(ii)疾患状態を軽減すること、すなわち、疾患状態もしくはその臨床的症状の一時的または永続性退行を起こさせること
を含む。
【0124】
「予防すること」または疾患状態の「予防」は、疾患状態の臨床的症状を、疾患状態にさらされるかまたは罹患しやすくされ得るが、疾患状態の症状を未だ経験しておらずまたは示していない対象で発症しないようにすることを含む。例えば、呼吸器疾患または障害を治療または予防することは、呼吸器疾患と関連する咳および/または咳への衝動などの障害の症状を治療または予防することを含む。
【0125】
化学反応に言及する場合、用語「処理すること」、「接触すること」および「反応させること」は、指示されたおよび/または所望の生成物を生成させるために、適当な条件下で2種以上の試薬を添加または混合することを意味する。指示されたおよび/または所望の生成物を生成する反応が、必ず最初に添加された2種の試薬の組合せから直接生じなくてもよい、すなわち、指示されたおよび/または所望の生成物の形成に最終的に結びつく混合物中で生成された1種または2種以上の中間体があってもよいことが認識されるべきである。
【0126】
命名法および構造
一般的に、本願において使用される命名法は、AUTONOM(商標)v.4.0;IUPACの系統的命名法を作成するためにBeilstein Instituteがコンピューター化したシステムに基づく。本明細書で示した化学構造は、ISIS(登録商標)バージョン2.2を使用して調製された。本明細書中における構造中の炭素、酸素または窒素原子に現れる任意の開放原子価は、水素原子の存在を示す。
【0127】
本明細書中で同定された全ての特許および出版物は、それらの全体で参照により本明細書に組み込まれる。
【0128】
方法
本発明は、P2X3またはP2X2/3受容体のアンタゴニストにより媒介される呼吸器疾患を治療するための化合物および方法を提供し、前記方法は、それを必要とする対象に有効量の式(I):
【0129】
【化10】
(式中、
R
1は、水素または任意選択で置換されたC
1〜C
6アルキルであり、
R
2は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミノ、アミノスルホニル、ハロ、アミド、ハロアルキル、アルコキシ、ヒドロキシ、ハロアルコキシ、ニトロ、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシアルコキシ、アルキニルアルコキシ、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、カルボキシアルキル、シアノまたはアルキルカルボニルである)
の化合物を投与することを含む。
【0130】
本発明は、それを必要とする患者においてP2X3またはP2X2/3受容体のアンタゴニストにより媒介される呼吸器疾患の治療に使用するための化合物を提供し、該化合物は、式(I):
【0131】
【化11】
(式中、
R
1は、水素または任意選択で置換されたC
1〜C
6アルキルであり、
R
2は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミノ、アミノスルホニル、ハロ、アミド、ハロアルキル、アルコキシ、ヒドロキシ、ハロアルコキシ、ニトロ、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシアルコキシ、アルキニルアルコキシ、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、カルボキシアルキル、シアノまたはアルキルカルボニルである)
の化合物または薬学的に許容されるその塩である。
【0132】
本発明は、それを必要とする患者においてP2X3またはP2X2/3受容体のアンタゴニストにより媒介される呼吸器疾患を治療するための医薬の製造のための、式(I):
【0133】
【化12】
(式中、
R
1は、水素または任意選択で置換されたC
1〜C
6アルキルであり、
R
2は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミノ、アミノスルホニル、ハロ、アミド、ハロアルキル、アルコキシ、ヒドロキシ、ハロアルコキシ、ニトロ、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシアルコキシ、アルキニルアルコキシ、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、カルボキシアルキル、シアノまたはアルキルカルボニルである)
の化合物の使用を提供する。
【0134】
本発明の化合物および方法で治療可能な典型的呼吸器疾患には、急性、亜急性もしくは慢性の咳、治療抵抗性の咳、突発性慢性の咳、ウイルス感染後の咳、ゼイゼイいう咳、医原性の咳(例えば、ACE阻害剤により誘発されたような)、突発性肺線維症もしくは喫煙と関連する咳または気管支炎の形態が含まれる。本発明により治療可能な疾患には、何らかの呼吸器疾患と関連する咳への衝動、例えば慢性閉塞性肺疾患(COPD)または喘息と関連する咳への衝動が含まれる。例えば、本発明は、呼吸器疾患と関連する咳の症状および咳への衝動を治療するための方法に関する。本発明は、呼吸器疾患と関連する咳の症状および咳への衝動の治療に使用するための式(I)の化合物にも関する。本発明は、呼吸器疾患と関連する咳の症状および咳への衝動を治療するための医薬を製造するための式(I)の化合物の使用にも関する。
【0135】
例えば、本発明は、P2X3またはP2X2/3受容体のアンタゴニストにより媒介される呼吸器疾患または障害と関連する咳の症状および/または咳への衝動の治療方法にも関する。本発明は、P2X3またはP2X2/3受容体のアンタゴニストにより媒介される呼吸器疾患または障害と関連する咳の症状および/または咳への衝動の治療に使用するための式(I)の化合物に関する。本発明は、P2X3またはP2X2/3受容体のアンタゴニストにより媒介される呼吸器疾患または障害と関連する咳の症状および/または咳への衝動を治療するための医薬の製造における式(I)の化合物の使用に関する。
【0136】
本発明は、呼吸器の症状がP2X3および/またはP2X2/3受容体の活性化により媒介される呼吸器疾患の治療方法も提供する。本発明は、呼吸器の症状がP2X3および/またはP2X2/3受容体の活性化により媒介される呼吸器疾患の治療に使用するための式(I)の化合物を提供する。本発明は、呼吸器の症状がP2X3および/またはP2X2/3受容体の活性化により媒介される呼吸器疾患の治療における式(I)の化合物の使用を提供する。
【0137】
方法は、対象に有効量の式(I)の化合物を投与することを含むことができる。該方法は、式(I)の本明細書において説明した実施形態のいずれかを投与することを含むことができる。使用するための式(I)の化合物は、有効量で使用することができる。式(I)の化合物は、医薬を製造するための有効量で使用することができる。
【0138】
本発明は、P2X3および/またはP2X2/3受容体の活性化により媒介される呼吸器の症状(例えば、咳または慢性の咳)の治療に使用するための化合物も提供する。本発明は、本発明の化合物が、P2X3および/またはP2X2/3受容体の活性化および感作により媒介される呼吸器疾患(例えば、咳または慢性の咳)の治療に使用するための医薬の製造に使用され得ることも提供する。
【0139】
本発明のある特定の実施形態において、治療または予防されるべき呼吸器疾患は、慢性の咳であってもよい。例えば、本発明は、突発性/治療抵抗性の慢性の咳における昼間の咳を減少させるための方法に関する。幾つかの実施形態において、慢性の咳を有する対象は、24時間の期間にわたって1時間当たり40回以上の多くの咳を有する(例えば、1時間当たり少なくとも25回の咳)。幾つかの実施形態において、慢性の咳は、原因となる疾患または慢性的な軽い病気により引き起こされるのか明らかでない。例えば、慢性の咳は、P2X3またはP2X2/3受容体の持続的な内因性の過活性化により引き起こされ得る。そのような活性化は、単独の慢性的な軽い病気の結果でないこともある。本発明のある特定の実施形態において、治療されるべき症状または障害は、慢性の咳の原因となるニューロン過敏性である。
【0140】
いかなる特定の理論にもとらわれることは望まず、幾つかの実施形態において、本発明は、P2X3および/またはP2X2/3受容体の活性に拮抗し、最終的にモジュレートする(例えば、減少させる)ことにより役に立つことができる。これは結果として哺乳動物の気道中の結節性のおよび頸部の求心性線維の機能をモジュレートする(例えば、下方に調節する)効果を有し得る。この過程は、例えば、急性、亜急性または慢性の咳に悩む患者において、咳への衝動を誘発するニューロンのシグナルを減少させる総体的な効果を有し得る。いかなる理論にもとらわれることは望まず、化合物16は、慢性の咳込みに対する有効な治療であり得る。さらに理論にとらわれることは望まず、本明細書に記載されたP2X3受容体のモジュレーターは、慢性の咳の原因となるニューロン過敏性を調節しおよび/または弱めることができる。
【0141】
本発明の多くの実施形態において、治療または予防されるべき障害は、呼吸器疾患と関連する咳への衝動である。
【0142】
例えば、本発明は、それを必要とする患者において、本明細書に記載された呼吸器疾患および障害、または本明細書に記載されたそれらの症状を、化合物1〜39から選択された化合物を投与することにより、治療、予防または改善することに関する。例えば、該化合物は、化合物6、7、13、17、21、28、35および38から選択される。例えば、該化合物は化合物16である。
【0143】
幾つかの場合に、1つの群からの好ましい実施形態を、別の群からの好ましい実施形態と組み合わせることができる。例えば、1つの好ましい実施形態において、R
1は−CH
3である。別の好ましい実施形態において、R
2は−SO
2NH
2である。本発明により、上で開示された2つの好ましい実施形態が組み合わされて、R
1が−CH
3であり、R
2が−SO
2NH
2である好ましい化合物を生ずることができる。
【0144】
式(I)のある特定の実施形態において、R
1はメチルである。
【0145】
式(I)のある特定の実施形態において、R
1は水素である。
【0146】
式(I)のある特定の実施形態において、R
2は、ハロアルキル、アミノスルホニル、アルキルスルホニル、アルキルカルボニルまたはカルボキシアルキルである。
【0147】
式(I)のある特定の実施形態において、R
2はハロアルキルであり、アルキルはメチルである。
【0148】
式(I)のある特定の実施形態において、R
2はアミノスルホニルである。
【0149】
式(I)のある特定の実施形態において、R
2はカルボキシアルキルである。
【0150】
式(I)のある特定の実施形態において、R
2はアルキルカルボニルである。
【0151】
R
1またはR
2が、アルキルであるかまたはアルキル部分を含有する場合、そのようなアルキルは、好ましくは低級アルキル、すなわちC
1〜C
6アルキルであり、より好ましくはC
1〜C
4アルキルである。
【0152】
本発明による代表的な化合物を表1に示す。
【0154】
合成
本発明の化合物は、下に示して説明した例示の合成反応のスキームに描いた種々の方法により作製することができる。本発明で使用するための化合物の合成は、例えば、本明細書に各々その全体で特に組み込まれる米国特許第7,858,632号、第8,008,313号、第8,003,788号、第7,531,547号、第7,741,484号および第7,799,796号で提供された教示により実施することもできる。
【0155】
これらの化合物の調製に一般的に使用される出発原料および試薬は、Aldrich Chemical Co.などの市販の供給業者から入手できるか、またはFieserおよびFieserのReagents for Organic Synthesis;Wiley&Sons:New York、1991年、1〜15巻;RoddのChemistry of Carbon Compounds、Elsevier Science Publishers、1989年、1〜5巻および補足資料;ならびにOrganic Reactions、Wiley&Sons:New York、1991年、1〜40巻などの参考文献で説明されている手順に従って当業者に知られた方法により調製されるかのいずれかである。以下の合成反応スキームは、本発明の化合物を合成することができる幾つかの方法の単なる例示にすぎず、これらの合成反応スキームに種々の改変を施すことが可能であり、それらの改変は本願に含まれる開示を参照した当業者への示唆となると予想される。
【0156】
合成反応スキームの出発原料および中間体は、所望であれば、濾過、蒸溜、結晶化、クロマトグラフィーなどを含むが、これらに限定されない従来の技法を使用して、単離および精製することができる。そのような材料は、物理定数およびスペクトルのデータを含む従来の手段を使用して特徴付けることができる。
【0157】
反対のことが明記されない限り、本明細書に記載された反応は、好ましくは、不活性雰囲気下の大気圧で、約−78℃から約150℃、より好ましくは約0℃から約125℃の反応温度範囲、最も好ましくはおよび便利にはおよそ室温(または周囲温度)、例えば、約20℃で実施される。
【0158】
下のスキームAに、上記式(I)の特定の化合物を調製するために使用され得る別の合成手順を例示し、R
3、R
4、R
dおよびR
eは、本明細書において定義される通りである。
【0160】
スキームAのステップ1において、O−アルキル化は、フェノールjとヨードアセトニトリルkなどのハロアセトニトリルとの反応により実施されて、シアノエーテルlを生ずる。多置換フェノールjは、市販されているかまたはステップ1で使用するために当技術分野において周知の技法により調製できるかのいずれかである。例えば、置換されたアルデヒドは、下の試験例で例示したように、mCPBAなどの過酸を使用してバイヤービリガー酸化により、対応するフェノールjに変換することができる。ステップ1のアルキル化は、極性の非プロトン性溶媒の条件下において温和な塩基の存在下で行うことができる。
【0161】
ステップ2において、シアノエノールエーテル化合物nが、シアノエーテルlの水素化ナトリウムなどの強塩基による処理と、それに続くエステルmの導入によるエノレートの形成と(示していない)、それが結果としてヨードメタンまたは他のハロゲン化アルキルの添加によりアルキル化されることにより形成される。このステップは、極性の非プロトン性溶媒の条件下で実施することができる。
【0162】
ステップ3において、シアノエノールエーテルnが、グアニジン化合物oと、極性の非プロトン性の条件下における塩基の存在下で反応して、ジアミノピリミジン(p)を生ずる。該ジアミノピリミジン(p)が、本発明の方法で使用され得る式(I)の化合物である。
【0163】
スキームAの手順においては多数の変形が可能であり、当業者には自明であろう。
【0164】
本発明の化合物を製造するための特定の詳細を下の実施例の部に記載する。
【0165】
使用
本発明は、P2X
3またはP2X
2/3受容体のアンタゴニストにより媒介される呼吸器疾患を治療するための方法を提供し、前記方法は、それを必要とする対象に有効量の式(I)の化合物を投与することを含む。本発明は、P2X
3またはP2X
2/3受容体のアンタゴニストにより媒介される呼吸器疾患の治療に使用するための式(I)の化合物も提供する。本発明は、P2X
3またはP2X
2/3受容体のアンタゴニストにより媒介される呼吸器疾患を治療するための医薬の製造において式(I)の化合物も提供する。
【0166】
本発明により治療可能な典型的呼吸器疾患は、亜急性もしくは慢性の咳、治療抵抗性の咳、突発性慢性の咳、ウイルス感染後の咳、医原性の咳(例えば、ACE阻害剤により誘発されるような)、突発性肺線維症もしくは喫煙と関連する咳または気管支炎の形態を含む。本発明により治療可能な疾患には、何らかの呼吸器疾患と関連する咳への衝動、例えば慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息または気管支痙攣と関連する咳への衝動が含まれる。
【0167】
本発明のある特定の実施形態において、呼吸器疾患は慢性の咳であってもよい。
【0168】
本発明の多くの実施形態において、該疾患は呼吸器疾患と関連する咳への衝動である。
【0169】
1つまたは複数の実施形態において、本発明の化合物は、慢性の咳(例えば、難治性の慢性の咳)を有する対象における他覚的な昼間の咳の回数の減少をもたらすことができる。例えば、本発明の化合物または薬学的に許容されるそれらの塩を、それを必要とする対象に投与することにより、他覚的な昼間の咳の回数を1%から99%の間で減少させる結果をもたらすことができる。例えば、他覚的な昼間の咳の回数を50%から90%の間で減少させることができ、または咳の回数を75%減少させることができる。それに加えて、昼間の、および合計して2時間の咳の回数頻度、ならびに咳重症度スコアにおける有意の減少もあり得る。
【0170】
投与および医薬組成物
例えば、本発明は、呼吸器疾患と関連する咳の症状および咳への衝動を、式(I)の化合物を投与することにより治療するための方法に関する。本発明は、呼吸器疾患と関連する咳の症状および咳への衝動の治療に使用するための式(I)の化合物にも関する。本発明は、呼吸器疾患と関連する咳の症状および咳への衝動を治療するための医薬の製造における式(I)の化合物の使用にも関する。
【0171】
例えば、本発明は、P2X3またはP2X2/3受容体のアンタゴニストにより媒介される呼吸器疾患または障害と関連する咳の症状および/または咳への衝動を、式(I)の化合物を投与することにより治療する方法に関する。本発明は、P2X3またはP2X2/3受容体のアンタゴニストにより媒介される呼吸器疾患または障害と関連する咳の症状および/または咳への衝動の治療に使用するための式(I)の化合物に関する。本発明は、P2X3またはP2X2/3受容体のアンタゴニストにより媒介される呼吸器疾患または障害と関連する咳の症状および/または咳への衝動を治療するための医薬の製造における式(I)の化合物の使用に関する。
【0172】
例えば、本発明は、突発性/治療抵抗性の慢性の咳における昼間の咳を減少させるための方法に関する。本発明は、慢性の咳の原因となるニューロン過敏性を治療する方法にも関する。本発明は、突発性/治療抵抗性の慢性の咳における昼間の咳を減少させることに、または慢性の咳の原因となるニューロン過敏性のために使用するための式(I)の化合物に関する。本発明は、突発性/治療抵抗性の慢性の咳における昼間の咳を減少させるため、または慢性の咳の原因となるニューロン過敏性のための医薬の製造における式(I)の化合物の使用に関する。
【0173】
例えば、本発明は、本明細書に記載された呼吸器疾患および障害、または本明細書に記載されたそれらの症状を、それを必要とする患者に、化合物1〜39から選択された化合物を投与することにより治療、予防または改善することに関する。例えば、該化合物は、化合物6、7、13、17、21、28、35および38から選択される。例えば、該化合物は化合物16である。
【0174】
本発明は、少なくとも1種の本発明の化合物、または個々の異性体、異性体のラセミもしくは非ラセミ混合物またはそれらの薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を、少なくとも1種の薬学的に許容される担体、ならびに任意選択で他の治療のおよび/または予防的含有成分と一緒に含む医薬組成物を含む。
【0175】
一般的に、本発明の化合物は、同様な役に立つ活性剤のための許容される投与様式のいずれかにより治療的有効量で投与するのに適する。適当な投薬量の範囲は、治療されるべき疾患の重症度、対象の年齢および相対的健康、使用される化合物の効力、投与の経路および形態、投与が指示される適応症、ならびに関与する開業医の選好および経験などの多数の要因に依存して、典型的には1〜1000mgを1日に1回または2回、好ましくは100〜900mgを1日に1回または2回、最も好ましくは500〜700mgを1日に1回または2回である。適当な投薬量の範囲は、1日に1〜1000mgの複数回(例えば、3〜4回)を含む投薬量を含むことができる。
【0176】
例えば、幾つかの実施形態において、本発明の化合物は、約600mgを1日に2回の投薬量で投与することができる。幾つかの実施形態において、本発明の化合物は、約100mg、200mg、300mg、400mg、500mg、550mg、650mg、700mg、800mg、900mg、または1000mgを1日に2回の投薬量で投与することができる。
【0177】
治療期間は、数日、数週間、数か月または数年の間継続し得る。幾つかの実施形態において、治療(例えば、本発明の化合物または薬学的に許容されるその塩の投与)は、2週間継続する。幾つかの実施形態では、治療は1か月継続する。幾つかの実施形態では、治療は、無期限で続行することができる。本発明の幾つかの実施形態では、対象を式(I)の化合物により600mgを1日に2回の投薬量で2週間治療することができる。
【0178】
上記のような疾患を治療する当業者は、過度の実験をせずに自分の知識および本願の開示をよりどころに、所与の疾患のための本発明の化合物の治療的有効量を確かめることができるであろう。
【0179】
本発明の化合物は、経口(バッカルおよび舌下を含む)、直腸内、鼻内、局所、肺内、膣内、もしくは非経口(筋肉内、動脈内、髄腔内、皮下および静脈内を含む)投与に適した剤形を含む医薬配合物として、または吸入もしくは吹入による投与に適した形態で投与することができる。好ましい投与様式は、一般的に、苦痛の程度により調節することができる便利な毎日の投薬量の治療計画を使用する経口である。
【0180】
本発明の化合物(単数)または化合物(複数)は、1種または2種以上の在来型の補助剤、担体、または希釈剤と一緒に、医薬組成物および単位投薬量の形態に入れることができる。医薬組成物および単位剤形は、追加の有効化合物または有効薬剤成分を添加されまたは添加されずに、在来型の含有成分を従来の比率で含むことができて、単位剤形は、使用されるべき意図される毎日の投薬量の範囲と同一量の任意の適当な有効量の有効含有成分を含有することができる。医薬組成物は、錠剤もしくは充填されたカプセル剤、半固体、散剤、徐放性配合物などの固体、または溶液剤、懸濁液剤、エマルション剤、エリキシル、もしくは充填されたカプセル剤などの経口使用ための液体として;あるいは直腸内または膣内投与のための坐剤の形態で;あるいは非経口的使用のための滅菌注射用溶液剤の形態で使用することができる。したがって、1錠剤当たり約1ミリグラムまたは、より広範には約0.01から約100ミリグラムの有効含有成分を含有する配合物が、適当な代表的単位剤形である。
【0181】
本発明の化合物は、広範囲の経口投与の剤形に製剤化することができる。医薬組成物および剤形は、有効成分として本発明の1種または2種以上の化合物またはそれらの薬学的に許容される塩を含むことができる。薬学的に許容される担体は、固体または液体のどちらであってもよい。固体形態の製剤は、散剤、錠剤、ピル、カプセル剤、カシェ剤、坐剤、および分散性顆粒剤を含む。固体担体は、希釈剤、着香剤、可溶化剤、潤滑剤、懸濁剤、結合剤、防腐剤、錠剤崩壊剤、またはカプセル化材料としてもはたらき得る1種または2種以上の物質であってもよい。散剤では、担体は、一般的に、微細化された固体であり、それは微細化された有効成分との混合物である。錠剤では、有効成分は、一般的に、適当な比率で必要な結合能力を有する担体と混合されて、所望の形状およびサイズに詰められる。散剤および錠剤は、好ましくは、約1から約70パーセントの有効化合物を含有する。適当な担体は、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、砂糖、ラクトース、ペクチン、デキストリン、デンプン、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、低融点ワックス、ココアバターなどを含むが、これらに限定されない。用語「製剤」は、担体としてのカプセル化材料による有効化合物の配合物を含むことを意図され、担体を含むかまたは含まない有効成分が、それと共にある担体により取り囲まれたカプセル剤を提供する。同様に、カシェ剤およびロゼンジが含まれる。錠剤、散剤、カプセル剤、ピル、カシェ剤、およびロゼンジは、経口投与に適した固体形態であることができる。
【0182】
経口投与に適した他の形態は、エマルション剤、シロップ剤、エリキシル、水溶液剤、水性懸濁液剤を含む液体形態の製剤、または使用直前に液体形態の製剤に変換されることを意図される固体形態の製剤を含む。エマルション剤は、溶液で、例えば、プロピレングリコール水溶液で調製することができ、または例えば、レシチン、ソルビタンモノオレエートなどの乳化剤、もしくはアラビアゴムを含有することができる。水溶液剤は、有効成分を水に溶解して、適当な着色剤、着香剤、安定剤、および増粘剤を添加することにより調製することができる。水性懸濁液剤は、微細化された有効成分を、天然または合成ゴム、樹脂、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、および他の周知の懸濁剤などの粘性材料を添加した水に分散させることにより調製することができる。液体形態の製剤は、溶液剤、懸濁液剤、およびエマルション剤を含み、有効成分に加えて、着色剤、着香剤、安定剤、緩衝剤、人工および天然甘味剤、分散剤、増粘剤、可溶化剤などを含有することができる。
【0183】
本発明の化合物は、表皮に局所投与するために、軟膏、クリーム剤もしくはローション剤として、または経皮パッチとして製剤化することができる。軟膏およびクリーム剤は、例えば、適当な増粘剤および/またはゲル化剤を添加された水性または油性基剤を用いて製剤化することができる。ローション剤は、水性または油性基剤を用いて製剤化することができ、一般的には1種または2種以上の乳化剤、安定剤、分散剤、懸濁剤、増粘剤、または着色剤も含有するであろう。口腔内への局所投与に適した配合物には、着香された基剤、通常スクロースおよびアラビアゴムまたはトラガカント中に有効な活性剤を含むロゼンジ、ゼラチンおよびグリセリンまたはスクロースおよびアラビアゴムなどの不活性基剤中に有効含有成分を含むトローチ、ならびに適当な液体担体中に有効含有成分を含む口内洗浄薬が含まれる。
【0184】
主題の化合物は、鼻内投与のために製剤化することができる。該溶液剤または懸濁液剤は、鼻内空洞に従来の手段により、例えば、スポイト、ピペットまたはスプレーを用いて直接適用される。この配合物は単回または複数回投与のための剤形で提供することができる。スポイトまたはピペットの後者の場合に、これは、適当な、所定の体積の溶液剤または懸濁液剤を投与する患者により達成することができる。スプレーの場合、これは、例えば、計量霧化スプレーポンプにより達成することができる。
【0185】
本発明の化合物は、鼻腔内投与を含む特に呼吸器へのエアロゾル投与のために製剤化することができる。該化合物は、一般的に、例えば、5ミクロン以下のオーダーの小さい粒子サイズを有するであろう。そのような粒子サイズは、当技術分野において知られた手段により、例えばマイクロ化により得ることができる。有効含有成分は、クロロフルオロカーボン(CFC)、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、もしくはジクロロテトラフルオロエタン、または二酸化炭素または他の適当なガスなどの適当な噴射剤と共に加圧パック中に提供される。エアロゾル剤は、レシチンなどの界面活性剤も便利に含有することができる。薬剤の用量は、計量バルブにより制御することができる。あるいは有効含有成分は、乾燥粉末、例えばラクトース、デンプン、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのデンプン誘導体およびポリビニルピロリドン(PVP)などの適当な粉末基剤中の化合物の粉末混合物の形態で提供することができる。粉末担体は、鼻内空洞でゲルを形成するであろう。粉末組成物は、例えばカプセル、またはそれから散剤を吸入器により投与することができる例えばゼラチンのカートリッジもしくはブリスターパック中の単位用量形態で提供することができる。
【0186】
薬学的製剤は、単位剤形であってもよい。そのような形態で、製剤は、適当量の有効成分を含有する単位用量に小分けされる。単位剤形は、パッケージされた製剤、パックされた錠剤、カプセル剤、および瓶中の散剤またはアンプルなどの製剤の離散的量を含有するパッケージであってもよい。単位剤形は、それ自体、カプセル剤、錠剤、カシェ剤、経口テープもしくはロゼンジであることもでき、またはそれは、適当な数のパッケージされた形態にあるこれらのいずれかであることができる。
【0187】
他の適当な薬学的担体およびそれらの配合物は、Remington:The Science and Practice of Pharmacy 1995年、E.W.Martin編、第19版、Mack Publishing Company、Easton、Pennsylvaniaに記載されている。本発明の化合物を含有する代表的な医薬配合物を下に記載する。
【実施例】
【0188】
以下の製剤および実施例は、当業者が本発明をより明確に理解して実行することを可能にするように与えられる。それらは本発明の範囲を限定するとみなされるべきではなく、単にそれらの例示のおよび代表例であるとみなされるべきである。
【実施例1】
【0189】
5−(5−ブロモ−2−イソプロピル−4−メトキシ−フェノキシ)−ピリミジン−2,4−ジアミン
この実施例で使用される合成手順の概略を、スキームBに示す。
【0190】
【化14】
【0191】
ステップ1. 2−ブロモ−5−イソプロピル−フェノール
37mLのCCl
4中の3−イソプロピルフェノール(4.975g、36.5mmol)の溶液を−20℃に冷却した。臭素(1.9mL、38.4mmol)を5.0mLのCCl
4に溶解して、内部温度が−10℃未満に維持されるような速度で滴下した。この混合物をそのまま室温に温めた。12時間後、この混合物を100mLのCH
2Cl
2に溶解させて、H
2Oでおよび次にブラインで洗浄した。合わせた有機物をNa
2SO
4で脱水して濾過し、真空で濃縮して、2−ブロモ−5−イソプロピル−フェノールと4−ブロモ−5−イソプロピルフェノールの1:1混合物8.663gを暗色の油状物として得た。これらの2種の異性体は分離不能であり、下のステップ2で一緒に使用した。
【0192】
ステップ2. 1−ブロモ−4−イソプロピル−2−メトキシ−ベンゼン
50mLのDMF中のステップ1からの2−ブロモ−5−イソプロピル−フェノールと4−ブロモ−5−イソプロピルフェノール(8.663g、40.3mmol)、K
2CO
3(16.710g、120.9mmol)の混合物に、ヨードメタン(3.0mL、48.3mmol)を機械的に攪拌しながら加えた。この混合物を4時間で50℃に加温した。室温に冷却した後、300mLのH
2Oを加えてこの溶液をジエチルエーテル(Et
2O)で抽出し、H
2Oで洗浄してブラインで洗浄した。合わせた有機物をMgSO
4で脱水し濾過して真空で濃縮し、1−ブロモ−4−イソプロピル−2−メトキシ−ベンゼンおよび1−ブロモ−2−イソプロピル−4−メトキシ−ベンゼン(6.621g、72%)を1:1の分離不能の混合物として、淡黄色の油状物の形態で得た。この位置異性体の混合物を、下のステップ3でそのまま使用した。
【0193】
ステップ3. 5−ブロモ−2−イソプロピル−4−メトキシ−ベンズアルデヒド
100mLの1,2ジクロロエタン中のステップ2からの1−ブロモ−4−イソプロピル−2−メトキシ−ベンゼンおよび1−ブロモ−2−イソプロピル−4−メトキシ−ベンゼン(6.621g、28.9mmol)の溶液に、TiCl
4(6.3mL、57.8mmol)を0℃で加えた。10分後に、ジクロロメトキシメタン(Cl
2CHOMe)(2.6mL、28.9mmol)を加えて混合物を加温して還流させた。3時間後に、この混合物を冷却して氷上に注ぎ、50mLの2M HClで酸性化した。生じたスラリーをCH
2Cl
2で抽出して、ブラインで洗浄した。合わせた有機物をMgSO
4で脱水して濾過し、真空で濃縮して暗緑色の油状物を得た。フラッシュクロマトグラフィー(96:4のヘキサン/酢酸エチル)により精製して、5−ブロモ−2−イソプロピル−4−メトキシ−ベンズアルデヒドおよび5−ブロモ−4−イソプロピル−2−メトキシ−ベンズアルデヒド(2.876g、39%;6.621g、72%)を、分離不能の異性体の1:1混合物として橙色の油状物の形態で得、それをステップ4でそのまま使用した。
【0194】
ステップ4. 5−ブロモ−2−イソプロピル−4−メトキシ−フェノール
25mLのCH
2Cl
2中のステップ3からの5−ブロモ−2−イソプロピル−4−メトキシ−ベンズアルデヒドおよび5−ブロモ−4−イソプロピル−2−メトキシ−ベンズアルデヒド(2.87g、11.2mmol)の溶液に、mCPBA(2.31g、13.4mmol)を加えた。16時間後に、この混合物を150mlのCH
2Cl
2に溶解させて、飽和NaHCO
3でおよび次にブラインで洗浄した。合わせた有機層をNa
2SO
4で脱水して濾過し、真空で濃縮して油状物を得、それを50mLのMeOHおよび30mLの4M NaOHに溶解させた。2時間後に、この混合物を蒸発させて、水で希釈し、濃HClでpH=1に酸性化した。この混合物を酢酸エチル(3×100mL)で抽出して、100mLのブラインで洗浄した。合わせた有機物をNa
2SO
4で脱水して濾過し、蒸発させ、5−ブロモ−2−イソプロピル−4−メトキシ−フェノールと2−ブロモ−5−イソプロピル−4−メトキシ−フェノールの混合物を橙色残渣として得た。これらの位置異性体はフラッシュクロマトグラフィー(勾配:ヘキサン、7:3、1:1のヘキサン/CH
2Cl
2)により分離可能であり、5−ブロモ−2−イソプロピル−4−メトキシ−フェノール(0.929、34%)を黄色の油状物として(それを以下のステップで使用した)、および2−ブロモ−5−イソプロピル−4−メトキシ−フェノール(0.404g、15%)を黄色固体として得た。
【0195】
ステップ5. (5−ブロモ−2−イソプロピル−4−メトキシ−フェノキシ)−アセトニトリル
17mLのジメチルホルムアミド(DMF)中のステップ4からの5−ブロモ−2−イソプロピル−4−メトキシ−フェノール(0.831g、3.4mmol)とK
2CO
3(0.562g、4.1mmol)の混合物にヨードアセトニトリル(0.594g、3.6mmol)を加えた。この混合物を60℃に30分間加温して次に室温に冷えるに任せた。室温に冷却した後、この混合物を50mLのH
2Oに溶解させ、1:1のトルエン/酢酸エチルで抽出し、H
2Oでおよび次にブラインで洗浄した。合わせた有機層をNa
2SO
4で脱水し濾過して、真空で濃縮し、粗固体を得た。フラッシュクロマトグラフィー(1:1のヘキサン/CH
2Cl
2)により精製して(5−ブロモ−2−イソプロピル−4−メトキシ−フェノキシ)−アセトニトリル(0.611g、63%)を白色固体として得た。
【0196】
ステップ6. 2−(5−ブロモ−2−イソプロピル−4−メトキシ−フェノキシ)−3−メトキシ−アクリロニトリル
水素化ナトリウム(0.122g、5.0mmol、60%w/w)を乾燥ヘキサンで洗浄して窒素気流下で蒸発させた。10mLのTHFを加えてこの混合物を0℃に冷却した。(5−ブロモ−2−イソプロピル−4−メトキシ−フェノキシ)−アセトニトリル(0.577g、2.03mmol)を小分けして加えた。30分後にギ酸エチル(4.9mL、60.9mmol)を加えてこの溶液を80℃に加温した。4.5時間後に、この混合物を冷却して5.0mLのヨードメタンを一度に加えた。16時間後に、この溶液の反応をH
2Oで停止させて、真空で濃縮し、酢酸エチルで抽出し、H
2Oで洗浄して次にブラインで洗浄した。合わせた有機層をNa
2SO
4で脱水し濾過して、真空で濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(9:1のヘキサン/酢酸エチル)により精製して、2−(5−ブロモ−2−イソプロピル−4−メトキシ−フェノキシ)−3−メトキシ−アクリロニトリル(0.319g、48%)を白色固体として得た。
【0197】
ステップ7. 5−(5−ブロモ−2−イソプロピル−4−メトキシ−フェノキシ)−ピリミジン−2,4−ジアミン
10.0mLのジメチルスルホキシド(DMSO)中の2−(5−ブロモ−2−イソプロピル−4−メトキシ−フェノキシ)−3−メトキシ−アクリロニトリル(0.282g、0.9mmol)およびグアニジンカーボネート(0.078g、0.4mmol)の溶液に、ナトリウムメトキシド(1.0mL、MeOH中1.0M)を加えた。この混合物を120℃に加温した。メタノールを短路の凝縮器により収集した。3時間後に、この混合物を冷却して真空で濃縮し、粗油状物を得た。フラッシュクロマトグラフィー(95:5のCH
2Cl
2/MeOH)により精製して、17(0.246g、77%)をピンクの固体として得た。質量スペクトルM+H=352。上の手順は、ステップ1における種々の異なったフェノールで、および/またはステップ7における置換されたグアニジンで本質的に同じ反応条件下で使用することができて、追加の化合物を生成させる。実施例1の手順により作製された追加の化合物を表1に示す。
【実施例2】
【0198】
5−(2−イソプロピル−5−メタンスルホニル−4−メトキシ−フェノキシ)−ピリミジン−2,4−ジアミン
【0199】
【化15】
実施例2に従って調製された5−(2−イソプロピル−4−メトキシ−フェノキシ)−ピリミジン−2,4−ジアミン(0.32g、1.17mmol)とメタンスルホン酸無水物(0.81g、4.67mmol)の混合物に、トリフルオロメタンスルホン酸(0.45g、3.00mmol)を加えて、この混合物を80℃で16時間加熱した。反応混合物を氷水中に注ぎ、飽和NaHCO
3溶液で塩基性化してジクロロメタン中に抽出し、それをNa
2SO
4で脱水し濾過して、真空で濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィーによりシリカゲル(0.1%NH
4OHを添加したCH
2Cl
2中3%のCH
3OH)で精製して、5−(2−イソプロピル−5−メタンスルホニル−4−メトキシ−フェノキシ)−ピリミジン−2,4−ジアミンを白色固体(0.248g、90%;0.107g)として得た。MS(M+H):353。
【実施例3】
【0200】
5−(5−ヨード−2−イソプロピル−4−メトキシ−フェノキシ)−ピリミジン−2,4−ジアミン
【0201】
【化16】
氷酢酸(4ml)中の5−(2−イソプロピル−4−メトキシ−フェノキシ)−ピリミジン−2,4−ジアミン(0.40g、1.44mmol)の室温の溶液に、氷酢酸溶液(4ml)中の一塩化ヨウ素(0.28g、1.76mmol)の溶液を加えた。水(6ml)も加えて、反応物を16時間攪拌して、その後、さらなる分の氷酢酸(4ml)中の一塩化ヨウ素(0.4g、2.47mmol)を加えた。該反応混合物をさらに1時間室温で攪拌した。該酸性混合物を飽和NaHCO
3溶液で塩基性化してジクロロメタン中に抽出した。有機層をNa
2SO
4で脱水し濾過して真空で濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(0.1%NH
4OHを添加したCH
2CL
2中5%のCH
3OH)により精製して、5−(5−ヨード−2−イソプロピル−4−メトキシ−フェノキシ)−ピリミジン−2,4−ジアミンをベージュに着色した固体(0.536g、92%)として得た。M+H 400。
【実施例4】
【0202】
5−(2,4−ジアミノ−ピリミジン−5−イルオキシ)−4−イソプロピル−2−メトキシ−ベンゾニトリル
【0203】
【化17】
DMF(5ml)中の5−(5−ヨード−2−イソプロピル−4−メトキシ−フェノキシ)−ピリミジン−2,4−ジアミン(0.37g、0.925mmol)とCuCN(0.12g、1.39mmol)の混合物を120℃で3時間加熱した。水(100ml)を加えて沈殿を収集した。メタノール性ジクロロメタン(0.1%NH
4OHを添加したCH
2Cl
2中10%のCH
3OH)を加えて残渣を粉砕し、生成物をその銅錯体から遊離させて濾過した。濾液を濃縮してフラッシュクロマトグラフィー(0.1%NH
4OHを添加したCH
2Cl
2中3%のCH
3OH)により精製し、5−(2,4−ジアミノ−ピリミジン−5−イルオキシ)−4−イソプロピル−2−メトキシ−ベンゾニトリルを白色固体(0.12g、44%)として得た。M+H 300。
【実施例5】
【0204】
1−[5−(2,4−ジアミノ−ピリミジン−5−イルオキシ)−4−イソプロピル−2−メトキシ−フェニル]−エタノンおよび1−[5−(2,4−ジアミノ−ピリミジン−5−イルオキシ)−2−ヒドロキシ−4−イソプロピル−フェニル]−エタノン
【0205】
【化18】
無水ジクロロエタン(20mL)中の5−(2−イソプロピル−4−メトキシ−フェノキシ)−ピリミジン−2,4−ジアミンを、トリフルオロ酢酸(0.06mL、0.77mmol)、塩化アセチル(0.31mL、4.37mmol)、および三塩化アルミニウム(583mg、4.37mmol)に加えた。22時間室温で攪拌した後、水(1.2mL)を反応物に0℃で加えた。この混合物を無水硫酸ナトリウムを使用して脱水して真空で濃縮した。水酸化ナトリウム水溶液(0.2M、10mL)を残渣に加えて、この混合物を100℃で1時間加熱した。冷却後、反応物をジクロロメタンで抽出した。ジクロロメタン層を無水硫酸マグネシウムを使用して脱水し、濃縮して、96/4/0.1ジクロロメタン/メタノール/水酸化アンモニウムで溶出するシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、1−[5−(2,4−ジアミノ−ピリミジン−5−イルオキシ)−4−イソプロピル−2−メトキシ−フェニル]−エタノン(72mg、31%)をオフホワイトの固体として得た。MS(M+H)=317。1−[5−(2,4−ジアミノ−ピリミジン−5−イルオキシ)−2−ヒドロキシ−4−イソプロピル−フェニル]−エタノン(43mg、20%)も淡黄色固体として回収された。MS(M+H)=303。
【実施例6】
【0206】
5−(2,4−ジアミノ−ピリミジン−5−イルオキシ)−4−イソプロピル−2−メトキシ−安息香酸
【0207】
【化19】
エタノール(1mL)中の5−(2,4−ジアミノ−ピリミジン−5−イルオキシ)−4−イソプロピル−2−メトキシ−ベンゾニトリル(50mg、0.17mmol、実施例15から)の懸濁液に、水酸化ナトリウム(174mg、4.34mmol、1mLの水に溶解)を加えた。終夜還流させた後、反応物を氷浴中で冷却した。塩酸水溶液(3M)を反応物のpHが7になるまで加えた。白色固体沈殿を収集し、少量の水およびジクロロメタンで洗浄して、乾燥すると、5−(2,4−ジアミノ−ピリミジン−5−イルオキシ)−4−イソプロピル−2−メトキシ−安息香酸(51mg、96%、MS(M+H)=319)が得られ、それを塩酸塩に変換した。
【実施例7】
【0208】
5−(2,4−ジアミノ−ピリミジン−5−イルオキシ)−4−イソプロピル−2−メトキシ−ベンズアミド
【0209】
【化20】
エタノール(1mL)に懸濁した5−(2,4−ジアミノ−ピリミジン−5−イルオキシ)−4−イソプロピル−2−メトキシ−ベンゾニトリル(49mg、0.16mmol、実施例15から)に、水酸化ナトリウム(64mg、1.60mmol、1mLの水に溶解)を加えた。該反応物を110℃で5時間加熱し、冷却してジクロロメタン(25mL)で洗浄した。ジクロロメタン層を濃縮して、分取用TLCプレート(92/8/0.5ジクロロメタン/メタノール/水酸化アンモニウム)により精製して、5−(2,4−ジアミノ−ピリミジン−5−イルオキシ)−4−イソプロピル−2−メトキシ−ベンズアミドを白色固体(9mg、17%、MS(M+H)=318)として得て、それを塩酸塩に変換した。
【実施例8】
【0210】
[5−(2,4−ジアミノ−ピリミジン−5−イルオキシ)−4−イソプロピル−2−メトキシ−フェニル]尿素
ステップ1. 5−(5−アミノ−2−イソプロピル−4−メトキシ−フェノキシ)−ピリミジン−2,4−ジアミン
【0211】
【化21】
Parrボンベ中でエタノール(150mL)に懸濁した5−(2−イソプロピル−4−メトキシ−5−ニトロ−フェノキシ)−ピリミジン−2,4−ジアミン(2.1g、6.58mmol)に、10%パラジウム/チャーコール(210mg)を加えた。Parr水素化反応器中で、終夜35psiで水素化した後、反応物をセライトを通して濾過した。セライトパッドをエタノールおよび酢酸エチルで洗浄して、濾液を濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(92/8/0.1ジクロロメタン/メタノール/水酸化アンモニウム)で精製して、5−(5−アミノ−2−イソプロピル−4−メトキシ−フェノキシ)−ピリミジン−2,4−ジアミンを淡橙色固体(468mg、25%、(M+H)
+=290)として得て、それを塩酸塩に変換した。
【0212】
ステップ2. [5−(2,4−ジアミノ−ピリミジン−5−イルオキシ)−4−イソプロピル−2−メトキシ−フェニル]−尿素
【0213】
【化22】
水(3mL)に懸濁した5−(5−アミノ−2−イソプロピル−4−メトキシ−フェノキシ)−ピリミジン−2,4−ジアミン(314mg、1.09mmol)に、酢酸(0.25mL、4.34mmol)を加えた。全ての固体が溶解したら、シアン酸ナトリウム(71mg、1.09mmol、1.5mLの水に溶解)を滴下した。30分後に、反応物を濃縮して、92/8/0.1ジクロロメタン/メタノール/水酸化アンモニウムで溶出するシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、[5−(2,4−ジアミノ−ピリミジン−5−イルオキシ)−4−イソプロピル−2−メトキシ−フェニル]−尿素をオフホワイトの固体(244mg、68%、(M+H)
+=333)として得て、それを塩酸塩に変換した。
【実施例9】
【0214】
N−[5−(2,4−ジアミノ−ピリミジン−5−イルオキシ)−4−イソプロピル−2−メトキシ−フェニル]アセトアミド
【0215】
【化23】
無水ジクロロメタン(10mL)に溶解した5−(5−アミノ−2−イソプロピル−4−メトキシ−フェノキシ)−ピリミジン−2,4−ジアミン(100mg、0.35mmol、実施例17から)に、無水ピリジン(0.03mL、0.38mmol)を加えた。この反応混合物に0℃で塩化アセチル(0.03mL、0.38mmol)を加えた。室温で1時間攪拌した後、反応物を濃縮して分取用TLC(93/7/0.5ジクロロメタン/メタノール/水酸化アンモニウム)で精製して、オフホワイトの固体(74mg、ビス−およびトリアセチル化生成物の混合物)を得た。この固体に水酸化ナトリウム水溶液(0.2M、2mL)を加えて、この混合物を1時間還流させて冷却し、ジクロロメタン(10mL)で洗浄した。ジクロロメタン層を無水硫酸マグネシウムを使用して脱水し、真空で濃縮してN−[5−(2,4−ジアミノ−ピリミジン−5−イルオキシ)−4−イソプロピル−2−メトキシ−フェニル]−アセトアミドを白色固体(53mg、46%、(M+H)
+=332)として得て、それを塩酸塩に変換した。
【実施例10】
【0216】
5−(2−イソプロピル−4−メトキシ−5−ニトロ−フェノキシ)−ピリミジン−2,4−ジアミン
この実施例で使用した合成手順の概略をスキームDに示す。
【0217】
【化24】
【0218】
ステップ1. 2−(1−ヒドロキシ−1−メチル−エチル)−4−メトキシ−フェノール
800mlのTHF中のメチルマグネシウム臭化物(221ml、665mmol)の溶液に、0℃で1−(2−ヒドロキシ−5−メトキシ−フェニル)−エタノン(20.21g、302mmol)を小分けして30分かけて加えた。この混合物をそのまま室温に温めた。16時間後にこの混合物に10%NH
4Clをゆっくり添加することにより反応を停止させ、濃HClで注意深くpH=1に酸性化し(ゆっくり添加)、Et
2Oで抽出した。合わせた有機物をH
2Oで洗浄し、ブラインで洗浄して、MgSO
4で脱水し濾過して真空で濃縮し、2−(1−ヒドロキシ−1−メチル−エチル)−4−メトキシ−フェノール(50.57g、100%)を渋色の固体として得た。
【0219】
ステップ2. 2−イソプロピル−4−メトキシ−フェノール
550mlのAcOH中の2−(1−ヒドロキシ−1−メチル−エチル)−4−メトキシ−フェノール(50.57g、278mmol)の溶液に、10%Pd/C(20mlのH
2O中のスラリーとして)を加えた。ギ酸アンモニウム(87.52g、1388mmol)を小分けして加えた。この混合物を100℃に1時間加温して、冷却し、セライトのパッドを通して濾過した。セライトパッドを酢酸エチルで洗浄した。母液をH
2Oと混合して酢酸エチルで抽出した。合わせた有機物をH
2Oで洗浄し、ブラインで洗浄して、Na
2SO
4で脱水し濾過して、真空で濃縮し、2−イソプロピル−4−メトキシ−フェノール(44.74g、97%)を淡黄色の油状物として得た。
【0220】
ステップ3. トルエン−4−スルホン酸2−イソプロピル−4−メトキシ−フェニルエステル
750mlのCH
2Cl
2中の2−イソプロピル−4−メトキシ−フェノール(56.91g、342mmol)、トリエチルアミン(57.3.0ml、411mmol)の溶液を、0℃に冷却した。250mlのCH
2Cl
2中の塩化p−トルエンスルホニル(68.54g、360mmol)を、内部温度が10℃未満に維持された速度で滴下した。この混合物をそのまま室温に温めた。16時間後に、H
2Oを加えて混合物をCH
2Cl
2で抽出した。合わせた有機物をブラインで洗浄して、Na
2SO
4で脱水し濾過し、真空で濃縮して、粗固体を得た。ヘキサンから再結晶すると、トルエン−4−スルホン酸2−イソプロピル−4−メトキシ−フェニルエステル(81.67g、74%)が白色針状物として得られた。
【0221】
ステップ4. トルエン−4−スルホン酸2−イソプロピル−4−メトキシ−5−ニトロ−フェニルエステル
118mLのAcOH中のトルエン−4−スルホン酸2−イソプロピル−4−メトキシ−フェニルエステル(19.00g、59mmol)の溶液に、236mlの発煙HNO
3を20分かけて加えた。16時間後にこの溶液を、2Lの氷/H
2Oの急速に攪拌されているスラリー中に注いだ。15分後に、沈殿を濾過してH
2Oで洗浄し、真空下で乾燥して(50℃)、トルエン−4−スルホン酸2−イソプロピル−4−メトキシ−5−ニトロ−フェニルエステル(21.27g、98%)およびトルエン−4−スルホン酸2−イソプロピル−4−メトキシ−3−ニトロ−フェニルエステルを淡黄色固体(7:1の分離不能の混合物)として得た。
【0222】
ステップ5. 2−イソプロピル−4−メトキシ−5−ニトロ−フェノール
350mLのEtOH中のトルエン−4−スルホン酸2−イソプロピル−4−メトキシ−5−ニトロ−フェニルエステルおよび2−イソプロピル−4−メトキシ−3−ニトロ−フェニルエステル(21.20g、58mmol)および175mLの2M KOHの溶液を、100℃に加温した。45分後に、この混合物を冷却して蒸発させ、1Lの水に溶解させた。この溶液を12M HClでpH=1に酸性化して酢酸エチルで抽出した。合わせた有機物をH
2O、ブラインで洗浄して、Na
2SO
4で脱水し、濾過して真空で濃縮した。粗油状物をフラッシュクロマトグラフィー(勾配:95:5から4:1のヘキサン/酢酸エチル)により精製して、3−アミノ−2−イソプロピル−5−ニトロ−フェノール(10.03g、81%)を黄色固体として、および3−アミノ−2−イソプロピル−3−ニトロ−フェノール(1.32g、11%)を黄色の油状物として得た。
【0223】
ステップ6. (2−イソプロピル−4−メトキシ−5−ニトロ−フェノキシ)−アセトニトリル
500mLのDMF中の3−アミノ−2−イソプロピル−5−ニトロフェノール(9.94g、47mmol)、K
2CO
3(13.00g、94mmol)とトルエンスルホン酸シアノメチルエステル(10.93g、52mmol)の混合物を50℃に加温した。16時間後に、この混合物を冷却して、500mLのH
2O中に注ぎ、トルエン/酢酸エチル(1:1)で抽出した。合わせた有機物をH
2Oで洗浄し、ブラインで洗浄して、濾過して真空で濃縮した。粗固体をEtOHから再結晶して、(2−イソプロピル−4−メトキシ−5−ニトロ−フェノキシ)−アセトニトリル(8.95g、76%)を黄色結晶性固体として得た。
【0224】
ステップ7. 5−(2−イソプロピル−4−メトキシ−5−ニトロ−フェノキシ)−ピリミジン−2,4−ジアミン
(2−イソプロピル−4−メトキシ−5−ニトロ−フェノキシ)−アセトニトリル(8.785g、35.5mmol)とBredereck試薬(14.6mL、70.9mmol)の混合物を100℃に加温した。45分後に、この混合物を減圧下で(50℃、50mtorr)蒸発させて、橙色固体を得た。該固体を150mLのEtOH中のアニリン塩酸塩(9.19g、70.9mmol)の溶液に加えた。この混合物を加温して還流させた。16時間後に、追加のアニリン塩酸塩(4.596g、35.5mmol)を加えて、混合物の還流を4時間継続した。この溶液を真空で濃縮してH
2O中に注いだ。この混合物を酢酸エチルで抽出し、H
2Oで洗浄し、ブラインで洗浄して、Na
2SO
4で脱水し、真空で濃縮して黄緑色固体を得た。この粗生成物を200mLのNMPとグアニジンカーボネート(17.70g、98mmol)の混合物に加えて130℃に加温した。5時間後にこの混合物を冷却してから2Lの氷/H
2O混合物中に注いだ。生じた沈殿を濾過して、H
2Oで洗浄し、真空下で乾燥した(50℃)。粗固体をEtOHから再結晶して、5−(2−イソプロピル−4−メトキシ−5−ニトロ−フェノキシ)−ピリミジン−2,4−ジアミン(8.14g、63%、3ステップ)を黄色結晶性固体(EtOHと1:1で溶媒和)として得た。(M+H)
+=320。
【実施例11】
【0225】
1−[5−(2,4−ジアミノ−ピリミジン−5−イルオキシ)−4−イソプロピル−2−メトキシ−フェニル]−3−エチル−尿素
ステップ1. 5−(5−アミノ−2−イソプロピル−4−メトキシ−フェノキシ)−ピリミジン−2,4−ジアミン
【0226】
【化25】
250mLのEtOHおよび25mLのAcOH中の5−(2−イソプロピル−4−メトキシ−5−ニトロ−フェノキシ)−ピリミジン−2,4−ジアミン(2.953g、9.2mmol)の溶液に、10%Pd/Cを加えた。この混合物を、Parr水素化反応器により50psiのH
2の下に置いた。2.5時間後に、混合物を、セライトのパッドを通して濾過した。パッドを酢酸エチルで洗浄してこの溶液を一部真空で濃縮した。残渣を500mLのH
2Oに溶解させて、0℃に冷却した。この溶液を50%NaOHでpH=12に調節して酢酸エチルで抽出した。合わせた有機物をH
2Oで洗浄し、ブラインで洗浄して、Na
2SO
4で脱水して濾過し、真空で濃縮して、5−(5−アミノ−2−イソプロピル−4−メトキシ−フェノキシ)−ピリミジン−2,4−ジアミン(2.156g、82%)を暗橙色の固体として得た。
【0227】
ステップ2. 1−[5−(2,4−ジアミノ−ピリミジン−5−イルオキシ)−4−イソプロピル−2−メトキシ−フェニル]3−エチル−尿素
【0228】
【化26】
4mLのトルエン中の5−(5−アミノ−2−イソプロピル−4−メトキシ−フェノキシ)−ピリミジン−2,4−ジアミン(0.117g、0.4mmol)およびエチルイソシアネート(0.034g、0.5mmol)の溶液を封管中で100℃に加熱した。5時間後に、この溶液を冷却して真空で濃縮し、褐色固体を得た。フラッシュクロマトグラフィー(CH
2Cl
2/MeOH97:3)により精製して、1−[5−(2,4−ジアミノ−ピリミジン−5−イルオキシ)−4−イソプロピル−2−メトキシ−フェニル]−3−エチル−尿素(0.120g、83%)を白色固体として得た。(M+H)=361。
【実施例12】
【0229】
1−[5−(2,4−ジアミノ−ピリミジン−5−イルオキシ)−4−イソプロピル−2−メトキシ−フェニル]3−フェニル−尿素
【0230】
【化27】
5−(5−アミノ−2−イソプロピル−4−メトキシ−フェノキシ)−ピリミジン−2,4−ジアミン(0.309g、1.1mmol)を上の手順に記載したようにして、1−[5−(2,4−ジアミノ−ピリミジン−5−イルオキシ)−4−イソプロピル−2−メトキシ−フェニル]−3−フェニル−尿素(0.122g、28%)に白色固体として変換した。[MH]
+=408。
【0231】
5−(5−アミノ−2−イソプロピル−4−メトキシ−フェノキシ)−ピリミジン−2,4−ジアミン(0.313g、1.1mmol)および2,5−ヘキサンジオン(0.14ml、1.2mmol)から5−[5−(2,5−ジメチル−ピロール−1−イル)−2−イソプロピル−4−メトキシ−フェノキシ]−ピリミジン−2,4−ジアミン、(0.259g、64%)を同様に調製した。(M+H)=368。
【実施例13】
【0232】
4−クロロ−N−[5−(2,4−ジアミノ−ピリミジン−5−イルオキシ)−4−イソプロピル−2−メトキシ−フェニル]ブチルアミド
【0233】
【化28】
15mlのCHCl
3およびNa
2HPO
4(0.392g、2.8mmol)中の5−(5−アミノ−2−イソプロピル−4−メトキシ−フェノキシ)−ピリミジン−2,4−ジアミン(0.400g、1.4mmol)の溶液に、塩化4−クロロブチリル(0.194g、1.4mmol)を滴下した。4.5時間後に、H
2OおよびCH
2Cl
2を加えてこの混合物を15分間攪拌した。この混合物を2N Na
2CO
3で中和して、CH
2Cl
2で抽出した。合わせた有機物をブラインで洗浄して、Na
2SO
4で脱水し、濾過して真空で濃縮し、4−クロロ−N−[5−(2,4−ジアミノ−ピリミジン−5−イルオキシ)−4−イソプロピル−2−メトキシ−フェニル]−ブチルアミド(0.495g、91%)を褐色発泡体として得た。[MH]
+=394。
【実施例14】
【0234】
5−(2−イソプロピル−5−イソチオシアナト−4−メトキシ−フェノキシ)−ピリミジン−2,4−ジアミン
【0235】
【化29】
1mlのH
2OおよびTFA(0.040g、0.4mmol)中の5−(5−アミノ−2−イソプロピル−4−メトキシ−フェノキシ)−ピリミジン−2,4−ジアミン(0.100g、0.4mmol)の溶液に、チオホスゲン(0.040g、0.4mmol)を加えた。1時間後にこの混合物を2M NaOHで中和して、CH
2Cl
2で抽出した。合わせた有機物をブラインで洗浄して、Na
2SO
4で脱水し、濾過して真空で濃縮し、5−(2−イソプロピル−5−イソチオシアナト−4−メトキシ−フェノキシ)−ピリミジン−2,4−ジアミン(0.042g、36%)を褐色発泡体として得た。[MH]
+=334。
【実施例15】
【0236】
2−[5−(2,4−ジアミノピリミジン−5−イルオキシ)−4−イソプロピル−2メトキシ−フェニル]プロパン−2−オール
【0237】
【化30】
83mLのTHF中のメチルマグネシウム臭化物(83.4mmol、27.8ml、Et
2O中3.0M)の溶液に、0℃で1−[5−(2,4−ジアミノ−ピリミジン−5−イルオキシ)−4−イソプロピル−2−メトキシ−フェニル]−エタノン(2.523g、8.3mmol、実施例16から)を小分けして加えた。16時間後に、この混合物を0℃に冷却して10%NH
4Clを添加することにより反応を停止させた。H
2Oを加えてこの混合物を酢酸エチルで抽出した。合わせた有機物をH
2Oで洗浄し、ブラインで洗浄して、NaHCO
3で脱水し、濾過して真空で濃縮した。粗固体を31mlのDMFに溶解させた。K
2CO
3(0.65g、4.7mmol)およびヨードメタン(0.098ml、1.6mmol)を加えてこの混合物を50℃に加温した。追加分のヨードメタン(0.019mL、0.6mmol)を1、2および3時間目に加えた。16時間後にこの混合物を冷却して、10%NH
4Cl、酢酸エチルで抽出した。合わせた有機物をH
2Oで洗浄し、ブラインで洗浄して、Na
2SO
4で脱水し、濾過して真空で濃縮し、2−[5−(2,4−ジアミノピリミジン−5−イルオキシ)−4−イソプロピル−2−メトキシ−フェニル]−プロパン−2−オール(収量0.711g)を白色固体として得た。[MH]
+=333。
【実施例16】
【0238】
5−(2,5−ジイソプロピル−メトキシ−フェノキシ)−ピリミジン−2,4−ジアミン
【0239】
【化31】
10mlのCH
2Cl
2中の2−[5−(2,4−ジアミノピリミジン−5−イルオキシ)−4−イソプロピル−2−メトキシ−フェニル]−プロパン−2−オール(0.350g、1.1mmol)の溶液に、トリフルオロ酢酸(4.0ml、52.6mmol)およびトリエチルシラン(1.7ml、10.5mmol)を加えた。30分後に飽和NaHCO
3を加えて、この混合物を酢酸エチルで抽出した。合わせた有機物をブラインで洗浄して、Na
2SO
4で脱水し、濾過して真空で濃縮し、粗油状物を得た。フラッシュクロマトグラフィー(96:4のCH
2Cl
2/MeOH)により精製して、5−(2,5−ジイソプロピル−メトキシ−フェノキシ)−ピリミジン−2,4−ジアミン(0.225g、68%)を白色固体として得た。[MH]
+=317。
【実施例17】
【0240】
1−[5−(2,4−ジアミノ−ピリミジン−5−イルオキシ)−4−イソプロピル−2−メトキシ−フェニル]−エタノール
【0241】
【化32】
100mlのMeOH中の1−[5−(2,4−ジアミノ−ピリミジン−5−イルオキシ)−4−イソプロピル−2−メトキシ−フェニル]−エタノン(2.500g、8.3mmol)の溶液に、NaBH
4(1.566g、41.4mmol)を0℃でゆっくり加えた。この溶液をそのまま室温に温めた。20時間後に、飽和NH
4Clを加えて、この混合物を真空で濃縮して酢酸エチルで抽出した。合わせた有機物をブラインで洗浄して、Na
2SO
4で脱水し、濾過して真空で濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(9:1のCH
2Cl
2/MeOH)により精製して、1−[5−(2,4−ジアミノ−ピリミジン−5−イルオキシ)−4−イソプロピル−2−メトキシ−フェニル]−エタノール(1.613g、60%)を白色発泡体として得た。[MH]
+=301。
【実施例18】
【0242】
5−(2−イソプロピル−4−メトキシ−5−ビニル−フェノキシ)−ピリミジン−2,4−ジアミンおよび5−[2−イソプロピル−4−メトキシ−5−(1−メトキシ−エチル)−フェノキシ]−ピリミジン−2,4−ジアミン
【0243】
【化33】
30mlのCH
2Cl
2中の1−[5−(2,4−ジアミノ−ピリミジン−5−イルオキシ)−4−イソプロピル−2−メトキシ−フェニル]−エタノール(1.613g、5.3mmol)の−78℃の溶液に、DAST(0.935g、5.8mmol)を加えた。1.5時間攪拌した後、飽和NaHCO
3を加えてこの混合物をCH
2Cl
2で抽出した。合わせた有機物をブラインで洗浄して、Na
2SO
4で脱水し、濾過して真空で濃縮した。シリカゲルクロマトグラフィー(95:5のCH
2Cl
2/MeOH)により精製して、5−(2−イソプロピル−4−メトキシ−5−ビニル−フェノキシ)−ピリミジン−2,4−ジアミン(0.044g、3%)を発泡体として([MH]
+=301)、および5−[2−イソプロピル−4−メトキシ−5−(1−メトキシ−エチル)−フェノキシ]−ピリミジン−2,4−ジアミン(0.075g、4%)を発泡体として得た。[MH]
+=303。
【実施例19】
【0244】
5−(2,4−ジアミノ−ピリミジン−5−イルオキシ)−4−イソプロピル−2−メトキシ−N−メチル−ベンゼンメチルスルホンアミド
ステップ1. 5−(2,4−ジアミノ−ピリミジン−5−イルオキシ)−4−イソプロピル−2−メトキシ−ベンゼンスルホニルクロリド
【0245】
【化34】
2mlのクロロスルホン酸中のピリミジン(0.400g、1.5mmol)の混合物を20分間攪拌した。この混合物を氷上に注いだ。沈殿を濾過して冷H
2Oにより洗浄し、真空下で乾燥して、5−(2,4−ジアミノ−ピリミジン−5−イルオキシ)−4−イソプロピル−2−メトキシ−ベンゼンスルホニルクロリド(0.515g、95%)を白色固体として得た。[MH]
+=373。
【0246】
ステップ2. 5−(2,4−ジアミノ−ピリミジン−5−イルオキシ)−4−イソプロピル−2−メトキシ−N−メチル−ベンゼンメチルスルホンアミド
【0247】
【化35】
スクリューキャップをしたチューブ中の−78℃の10mlのメチルアミンに、5−(2,4−ジアミノ−ピリミジン−5−イルオキシ)−4−イソプロピル−2−メトキシ−ベンゼンスルホニルクロリド(0.300g、0.8mmol)を加えた。この混合物をそのまま室温に温めた。20時間後にこの混合物を蒸発させてH
2Oで洗浄し、真空下で乾燥して、5−(2,4−ジアミノ−ピリミジン−5−イルオキシ)−4−イソプロピル−2−メトキシ−N−メチル−ベンゼンメチルスルホンアミド(0.170g、57%)を白色固体として得た。mp(HCl塩)=252.3〜252.9℃;[MH]
+=367。
【0248】
メチルアミンをエチルアミンで置き換えて、5−(2,4−ジアミノ−ピリミジン−5−イルオキシ)−N−エチル−4−イソプロピル−2−メトキシ−ベンゼンスルホンアミド(0.186g、61%)を白色固体として同様に調製した。mp(HCl塩)=260〜265℃;[MH]
+=382。
【実施例20】
【0249】
5−(2,4−ジアミノ−ピリミジン−5−イルオキシ)4−イソプロピル−2−メトキシ−N,N−ジメチル−ベンズアミド
【0250】
【化36】
無水ジクロロメタン(5.6mL)中の5−(2,4−ジアミノ−ピリミジン−5−イルオキシ)−4−イソプロピル−2−メトキシ−安息香酸(180mg、0.57mmol、実施例17から)の懸濁液に、トリフルオロ酢酸(0.08mL、1.14mmol)および次に塩化チオニル(0.36mL、5.65mmol)を加えた。1時間後に反応物を濃縮した。残渣に無水ジクロロメタン(4.5mL)およびジメチルアミン(テトラヒドロフラン中の2M溶液の2.84mL、5.65mmol)を加えた。2時間室温で攪拌した後、反応物を濾過して濃縮した。95/5/0.1から93/7/0.1ジクロロメタン/メタノール/水酸化アンモニウムで溶出するシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、5−(2,4−ジアミノ−ピリミジン−5−イルオキシ)4−イソプロピル−2−メトキシ−N,N−ジメチル−ベンズアミド(40mg、20%)を淡黄色固体として得た。MS(M+H)=346。
【0251】
ジメチルアミンの代わりにメチルアミンを使用して、5−(2,4−ジアミノ−ピリミジン−5−イルオキシ)−4−イソプロピル−2−メトキシ−N−メチル−ベンズアミド(23mg、15%)を同様に淡黄色固体として調製した。MS(M+H)=332。
【実施例21】
【0252】
4−(2,4−ジアミノ−ピリミジン−5−イルオキシ)−2−ヨード−5−イソプロピル−フェノール
【0253】
【化37】
ジクロロメタン(15ml)中の1(0.21g、0.52mmol)の0℃の冷懸濁液に、BBr
3(0.26g、1.05mmol)を加えた。該反応混合物を室温で16時間攪拌し、水で反応を停止させて飽和NaHCO
3で塩基性化した。不溶性固体を濾過により収集した。濾液を水で洗浄して、Na
2SO
4で脱水し、濾過して真空で濃縮した。合わせた残渣をシリカゲルでフラッシュクロマトグラフにかけて(0.1%NH
4OHを添加したジクロロメタン中3から5%のメタノール)精製し、所望の生成物(0.174g、86%)を得た。(M+H)=387。
【実施例22】
【0254】
5−(5−ヨード−2−イソプロピル−4−プロパ−2−イニルオキシ−フェノキシ)−ピリミジン−2,4−ジアミン
【0255】
【化38】
無水N,N−ジメチルホルムアミド(2mL)中に溶解した4−(2,4−ジアミノ−ピリミジン−5−イルオキシ)−2−ヨード−5−イソプロピル−フェノール(200mg、0.43mmol)に、無水炭酸カリウム(414mg、3.00mmol)および塩化プロパルギル(0.03mL、0.43mmol)を加えた。室温で終夜攪拌した後、該反応物をジクロロメタン、水およびブラインで抽出した。ジクロロメタン層を無水硫酸マグネシウムを使用して脱水し、濃縮してシリカゲルカラムクロマトグラフィー(95/5/0.1ジクロロメタン/メタノール/水酸化アンモニウム)により精製して、5−(5−ヨード−2−イソプロピル−4−プロパ−2−イニルオキシ−フェノキシ)−ピリミジン−2,4−ジアミンを白色固体(131mg、71%)として得た。MS(M+H)=425。
【実施例23】
【0256】
5−(5−エタンスルホニル−2−イソプロピル−4−メトキシ−フェノキシ)−ピリミジン−2,4−ジアミン
【0257】
【化39】
水(20mL)中の亜硫酸ナトリウム(541mg、4.29mmol)の溶液に、5−(2,4−ジアミノ−ピリミジン−5−イルオキシ)−4−イソプロピル−2−メトキシ−ベンゼンスルホニルクロリド(400mg、1.07mmol)を加えて、該反応物を80℃で1時間加熱した。重炭酸ナトリウム(361mg、4.29mmol、5mLの水に溶解)、ジオキサン(20mL)、およびヨウ化エチル(0.10mL、1.29mmol)を加えて該反応物を80℃で2時間加熱した。反応物を濃縮し、ジクロロメタン(150mL)および水(20mL)で抽出した。ジクロロメタン層を無水硫酸ナトリウムを使用して脱水し、濃縮して、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(95/5/0.1ジクロロメタン/メタノール/水酸化アンモニウム)により精製して、5−(5−エタンスルホニル−2−イソプロピル−4−メトキシ−フェノキシ)−ピリミジン−2,4−ジアミン(77mg、20%)を白色固体として得た。MS(M+H)=367。
【実施例24】
【0258】
5−(2−イソプロピル−4−メトキシ−5−トリフルオロメチル−フェノキシ)−ピリミジン−2,4−ジアミン
この実施例で使用した合成手順の概略をスキームEに示す。
【0259】
【化40】
【0260】
ステップ1. 1−ヨード−4−イソプロピル−2−メトキシ−5−(トルエン−4−スルホニル)−ベンゼン
HOAc(10ml)中の2−イソプロピル−4−メトキシ−1−(トルエン−4−スルホニル)−ベンゼン(10g、31.25mmol)の溶液に、HOAc(10ml)およびH
2O(5ml)中のICl(9.6g、59.26mmol)の溶液を加えた。該反応混合物を室温で16時間攪拌して飽和NaHCO
3溶液で塩基性化した。該水溶液をEtOAc中に抽出し、それを水、ブラインで洗浄して、Na
2SO
4で脱水し、濾過して真空で濃縮し、1−ヨード−4−イソプロピル−2−メトキシ−5−(トルエン−4−スルホニル)−ベンゼン(12.35g、89%)を得た。
【0261】
ステップ2. 1−イソプロピル−5−メトキシ−2−(トルエン−4−スルホニル)−4−トリフルオロメチル−ベンゼン
無水DMF(10ml)中の1−ヨード−4−イソプロピル−2−メトキシ−5−(トルエン−4−スルホニル)−ベンゼン(0.5g、1.12mmol)、CuI、KFの油浴温度120℃の熱混合物に、ヨウ化トリフルオロメチル(0.64g、4.48mmol)を小分けして30分かけて加えた。該反応混合物を4時間加熱してH
2O(100ml)中に注いだ。濾過により収集した不溶性固体に塩化メチレンを加えて粉砕し、濾過して濃縮し、1−イソプロピル−5−メトキシ−2−(トルエン−4−スルホニル)−4−トリフルオロメチル−ベンゼン(0.45g、100%)を固体として得た。
【0262】
ステップ3. 2−イソプロピル−4−メトキシ−5−トリフルオロメチル−フェノール
MeOH(5ml)およびH
2O(5ml)中の1−イソプロピル−5−メトキシ−2−(トルエン−4−スルホニル)−4−トリフルオロメチル−ベンゼン(0.40g、1.03mmol)およびNaOH(0.5g、12.5mmol)の溶液を、90℃で2時間加熱した。冷却した反応混合物を3N HClで酸性化して、塩化メチレン中に抽出した。合わせた抽出物をNa
2SO
4で脱水して、濾過し濃縮して、所望の2−イソプロピル−4−メトキシ−5−トリフルオロメチル−フェノール(0.194g、81%)を油状物として得た。
【0263】
ステップ4. 5−(2−イソプロピル−4−メトキシ−5−トリフルオロメチル−フェノキシ)−ピリミジン−2,4−ジアミン
実施例2の手順のステップ5〜7に従って、2−イソプロピル−4−メトキシ−5−トリフルオロメチル−フェノールを、5−(2−イソプロピル−4−メトキシ−5−トリフルオロメチル−フェノキシ)−ピリミジン−2,4−ジアミンに変換した。(M+H)=343
【実施例25】
【0264】
5−(2,4−ジアミノ−ピリミジン−5−イルオキシ)−4−イソプロピル−2−メトキシ−チオベンズアミド
【0265】
【化41】
無水THF(20ml)中の5−(2,4−ジアミノ−ピリミジン−5−イルオキシ)−4−イソプロピル−2−メトキシ−ベンズアミド(0.25g、0.79mmol、実施例52の手順に従って調製)とLawesson試薬(0.96g、2.37mmol)の混合物を室温で16時間攪拌して真空で濃縮した。シリカでのフラッシュクロマトグラフィー(1%NH
4OHを添加した塩化メチレン中5%のCH
3OH)により、5−(2,4−ジアミノ−ピリミジン−5−イルオキシ)−4−イソプロピル−2−メトキシ−チオベンズアミド(0.201g、76%)を黄色固体として得た。
【実施例26】
【0266】
5−(4−エトキシ−5−ヨード−2−イソプロピル−l−フェノキシ)−ピリミジン−2,4−ジアミン
【0267】
【化42】
無水DMF(2ml)中の4−(2,4−ジアミノ−ピリミジン−5−イルオキシ)−2−ヨード−5−イソプロピル−フェノール(0.2g、0.52mmol)の溶液に、EtBr(57mg、0.52mmol)を小分けして加えた。該反応混合物をEtOAcとH
2Oの間に分配した。有機抽出物をNa
2SO
4で脱水し、濾過して濃縮した。シリカでのフラッシュクロマトグラフィー(1%NH
4OHを添加した塩化メチレン中3%のMeOH)により、5−(4−エトキシ−5−ヨード−2−イソプロピル−フェノキシ)−ピリミジン−2,4−ジアミン(0.17g、28%)を黄色固体として得た。(M+H)=415。
【実施例27】
【0268】
配合物
種々の経路により送達するための薬学的製剤は、以下の表に示すように製剤化される。これらの表で使用される「有効含有成分」または「有効化合物」は、式(I)の化合物の1種または2種以上を意味する。
【0269】
【表2】
【0270】
含有成分を混合して、各々約100mgを含有するカプセル中に分配する。1カプセルは毎日の合計投薬量に近い。
【0271】
【表3】
【0272】
含有成分を組み合わせて、メタノールなどの溶媒を使用して顆粒化する。次に配合物は乾燥されて適当な錠剤成形機械で錠剤に成形される(約20mgの有効化合物を含有する)。
【0273】
【表4】
【0274】
含有成分が混合されて経口投与のための懸濁液を形成する。
【0275】
【表5】
【0276】
水を除く全ての含有成分を組み合わせて攪拌しながら約60℃に加熱する。次に約60℃の十分な量の水を激しく攪拌しながら加えて含有成分を乳化させ、次に水を約100gになるまで適量で加える。
【0277】
鼻内スプレー用配合物
約0.025〜0.5パーセントの有効化合物を含有する数種の水性懸濁液が鼻内スプレー用配合物として調製される。この配合物は、例えば、微結晶性セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、デキストロ−スなどの不活性な含有成分を任意選択で含有する。pHを調節するためには塩酸を加えることができる。鼻内スプレー用配合物は、鼻内スプレーの計量ポンプにより送達することができて、典型的には1回の作動当たり約50〜100マイクロリットルの配合物を送達する。典型的な投薬スケジュールは、4〜12時間毎に2〜4回のスプレーである。
【0278】
化合物16の錠剤
化合物16は、10、20、30、50、100または300mgの化合物16を含有する黄色で、フィルムでコートされた楕円形の錠剤に製剤化されて供給される。錠剤は、表2に記載したUSP/NF公定書規格のラクトース一水和物、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMCまたはヒプロメロース)、クロスカルメロースナトリウム、微結晶性セルロース(Avicel PH102)、およびステアリン酸マグネシウムを用いて製剤化される。錠剤は、Opadry Yellow(Colorcon,Inc.)でフィルムコートされており、子供に開けられないキャップおよびインダクションシールを備えたHDPE瓶中に梱包される。
【0279】
【表6】
*:Opadry Yellowは、以下のUSP/NF賦形剤を含む:ヒプロメロース、二酸化チタン、タルク、トリアセチンおよび黄色酸化鉄。
【実施例28】
【0280】
P2X3/P2X2/3のFLIPR(蛍光撮像プレートリーダー)アッセイ
CHO−K1細胞に、クローン化されたラットP2X3またはヒトP2X2/3の受容体サブユニットをトランスフェクトさせてフラスコで継代接種した。FLIPR実験の18〜24時間前に、細胞をそれらのフラスコから遊離させて、遠心分離して栄養培地中に2.5×10
5細胞/mlで再懸濁した。細胞を黒色の壁を有する96ウェルのプレート中に50,000細胞/ウェルの密度で等分して、終夜5%CO
2中37℃でインキュベートした。実験の日に、細胞をFLIPR緩衝液(カルシウムおよびマグネシウムを含まないハンクス平衡塩類溶液、10mM HEPES、2mM CaCl
2、2.5mMプロベネシド;FB)で洗浄した。各ウェルに100μlのFBおよび100μlの蛍光色素Fluo−3AM[2μΜ最終濃度]を入れた。色素を加えて37℃で1時間インキュベーション後に、細胞を4回FBで洗浄して、最終の75μl/ウェルのFBを各ウェルに残した。
【0281】
試験化合物(DMSO中に10mMで溶解してFBで段階的に希釈した)または媒質を各ウェルに加え(4×溶液の25μl)、20分間室温で平衡に達させた。次にプレートをFLIPRに置いて100μl/ウェルでアゴニストまたは媒質を添加する前にベースライン蛍光(488nmで励起および510〜570nmで発光)を10秒間測定した。アゴニストは、1μΜ(P2X3)または5μΜ(P2X2/3)の最終濃度を生ずるα,β−meATPの2×溶液であった。蛍光を、アゴニスト添加後1秒間隔で追加の2分間測定した。イオノマイシンの最後の添加(5μΜ、最終の濃度)をFLIPR試験プレートの各ウェルに行って、細胞生存能力および色素が結合した細胞質のカルシウムの最大蛍光を確定した。α,β−meATPの添加への応答におけるピークの蛍光(試験化合物の不在および存在において)を測定して、非線形回帰を使用して阻害曲線を発生させた。PPADS、標準的P2Xアンタゴニストを陽性対照として使用した。
【0282】
上の手順を使用して、本発明の化合物はP2X3受容体に対する活性を示した。化合物4−(2,4−ジアミノ−ピリミジン−5−イルオキシ)−2−ヨード−5−イソプロピル−フェノールは、上のアッセイを使用して、例えば、約8.3というpIC
50を示した。
【実施例29】
【0283】
咳感作についてのin vivoアッセイ
Hartleyテンジクネズミを標準的な咳のプロトコルで研究する。簡単に説明すると、テンジクネズミ(N=4〜8/群)を、吸入されたヒスタミンまたはα,β−メチレンATPで予め感作した後に霧化したクエン酸の吸入で処置して、経験のある調査員により観察される咳込みノット(coughing nots)の発生についてモニターする。動物は、ヒスタミンまたはα,β−メチレンATPとそれに続くクエン酸溶液の吸入による刺激の30〜60分前に、媒質(経口または霧化された吸入により)または本発明の化合物(1から100mg/kg(経口)、または増加する霧化濃度で)を与えられる。
【0284】
次に咳に対する敏感さを、刺激による誘発後の頻度を計数することによりモニターして、その結果、本発明の化合物が咳の応答頻度を阻害する大きさが計算できる。
【実施例30】
【0285】
ATP化されたP2X3チャンネルの化合物16による阻害:
慢性の咳における効果的な抗咳機構
証拠により、P2X3受容体は、気道の迷走神経の求心性により発現されて、感覚ニューロンの興奮性亢進を助長することが示唆される。それ故、本発明者らは、慢性の咳(CC)に至る咳反射を媒介する迷走神経の経路の感作におけるP2X3受容体の役割を探究した。突発性/治療抵抗性の慢性の咳における昼間の咳を減少させることにおける化合物16の経口投与の効力を調べるために検討を行った。
【0286】
二重盲検無作為化プラセボ対照交差試験のこの検討において、24名の対象(19名の女性、平均年齢55歳)を、プラセボを対照とする二重盲検の2期間にわたる1日2回600mgの化合物16の交差研究に無作為化した。ベースラインおよび2週間治療後における外来の音響モニタリングシステムを使用して咳を評価した。主要エンドポイントで、昼間の他覚的な咳の頻度(咳/時間)(VitaloJAK(商標))を;副次的エンドポイントで、咳重症度および咳への衝動(UTC)の視覚的アナログスケール(VAS)、変化の総合的評点ならびに咳についての生活の質の質問票(CQLQ)を評価した。
【0287】
化合物16は、咳を顕著に減少させた(プラセボに対する平均の差):昼間の咳/時間−75%(95%CI−50から−88)、p<0.001(
図1);咳の重症度VAS−26mm(−10から−42)、p=0.003;UTC VAS−21mm(−2から−41)、p=0.035;およびCQLQ−9(−2から−17)、p=0.018。化合物16の患者24人中13人が、咳の改善と評価され、それと比較してプラセボの処置では22人中2人が改善と評価された。それ故、化合物16は、プラセボに対して実質的な抗咳効果を示した。実際に、化合物16を用いる治療は、難治性の慢性の咳を有する患者において、驚くべきことに、他覚的な昼間の咳の回数で75%の減少をもたらした。
【0288】
本発明をそれらの特定の実施形態を参照して説明したが、本発明の真の精神および範囲から逸脱することなく、種々の変化をなすことができること、および等価物で置換することができることが当業者により理解されるべきである。それに加えて、特定の状況、材料、物質の組成、工程、工程のステップ(単数)またはステップ(複数)を、本発明の目的の精神および範囲に適合させるために、多くの改変がなされ得る。全てのそのような改変は、ここに添付した特許請求の範囲の範囲内であることが意図される。