(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2016-528435(P2016-528435A)
(43)【公表日】2016年9月15日
(54)【発明の名称】タービンハウジング
(51)【国際特許分類】
F02B 39/00 20060101AFI20160819BHJP
【FI】
F02B39/00 D
F02B39/00 U
F02B39/00 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-533968(P2016-533968)
(86)(22)【出願日】2014年7月24日
(85)【翻訳文提出日】2016年3月10日
(86)【国際出願番号】IB2014063391
(87)【国際公開番号】WO2015022592
(87)【国際公開日】20150219
(31)【優先権主張番号】61/866,641
(32)【優先日】2013年8月16日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】14/338,579
(32)【優先日】2014年7月23日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】511141803
【氏名又は名称】ウエスキャスト インダストリーズ インク.
【氏名又は名称原語表記】WESCAST INDUSTRIES,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】シュロス, クレイトン エー.
(72)【発明者】
【氏名】コーロンブ, ジョーセフ, ジェラルド, ジミー
【テーマコード(参考)】
3G005
【Fターム(参考)】
3G005EA16
3G005FA13
3G005FA45
3G005GB24
3G005GB86
3G005GB95
3G005KA00
3G005KA09
(57)【要約】
【課題】アルミニウム等の低コストおよび/または軽量の材料で構成され、しかも高い耐熱性を有するタービンハウジングを提供すること。
【解決手段】入口と、出口と、前記入口および前記出口の間に配置され、渦巻部と、前記渦巻部に対して略接線方向に延びる入口部とを含むガス流路と、を備えるタービンハウジングと、前記タービンハウジング内の溝部に収容され、前記渦巻部および前記入口部を少なくとも部分的に形成する舌状挿入部と、を有し、前記タービンハウジングは、第1の材料で形成され、前記舌状挿入部は、前記第1の材料よりも耐熱性が高い第2の材料で形成されていることを特徴とするターボチャージャシステム。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入口と、出口と、前記入口および前記出口の間に配置され、渦巻部と、前記渦巻部に対して略接線方向に延びる入口部とを含むガス流路と、を備えるタービンハウジングと、
前記タービンハウジング内の溝部に収容され、前記渦巻部および前記入口部を少なくとも部分的に形成する舌状挿入部と、を有し、
前記タービンハウジングは、第1の材料で形成され、
前記舌状挿入部は、前記第1の材料よりも耐熱性が高い第2の材料で形成されていることを特徴とするターボチャージャシステム。
【請求項2】
前記舌状挿入部は、前記舌状挿入部と前記入口部との間の隙間を形成するくぼみを備えることを特徴とする請求項1に記載のターボチャージャシステム。
【請求項3】
前記溝部は、前記舌状挿入部と前記入口部との間の隙間を形成するくぼみを備えることを特徴とする請求項1に記載のターボチャージャシステム。
【請求項4】
前記溝部は、前記タービンハウジングの入口を形成する入口インターフェースを通って延びていることを特徴とする請求項1に記載のターボチャージャシステム。
【請求項5】
前記溝部は、前記舌状挿入部を前記タービンハウジングに対して位置決めする端止め部を備えることを特徴とする請求項1に記載のターボチャージャシステム。
【請求項6】
前記舌状挿入部は、圧入によって前記溝部に係合されることを特徴とする請求項1に記載のターボチャージャシステム。
【請求項7】
前記タービンハウジングの内部には、冷媒流路が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のターボチャージャシステム。
【請求項8】
入口と、出口と、前記入口および前記出口の間に配置され、渦巻部と、前記渦巻部に対して略接線方向に延びる入口部とを含むガス流路と、を備えるタービンハウジングと、
前記タービンハウジング内に収容され、前記渦巻部および前記入口部を少なくとも部分的に形成する舌状挿入部と、を有し、
前記タービンハウジングは、第1の材料で形成され、
前記舌状挿入部は、前記第1の材料よりも耐熱性が高い第2の材料で形成され、
前記舌状挿入部は、リング部と、前記リング部から延びる舌状部とを含むことを特徴とするターボチャージャシステム。
【請求項9】
前記リング部は、前記タービンハウジング内に配置されたタービン軸と同心であることを特徴とする請求項8に記載のターボチャージャシステム。
【請求項10】
前記リング部は、前記タービンハウジングとタービン軸受ハウジングとの間に挟まれていることを特徴とする請求項8に記載のターボチャージャシステム。
【請求項11】
前記舌状部は、前記タービンハウジング内の凹部に収容されることを特徴とする請求項8に記載のターボチャージャシステム。
【請求項12】
前記タービンハウジングの内部には、冷媒流路が形成されていることを特徴とする請求項8に記載のターボチャージャシステム。
【発明の詳細な説明】
【0001】
本出願は、2013年8月16日付け米国仮特許出願第61/866,641号に基づく優先権を主張した2014年7月23日付け米国特許出願第14/338,579号のPCT国際出願である。上記出願の開示はすべて、参照により本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本開示は、ターボチャージャシステム用のタービンハウジングに関する。
【背景技術】
【0003】
以下、本開示に関する背景情報について説明するが、その内容は必ずしも従来技術ではない。
【0004】
ターボチャージャ装置のコストの大部分は、タービンハウジングにかけられる。タービンハウジングは、排気システムから高温ガスを受け取り、渦巻部を介してタービンに運搬し、タービンから排出されたガスを排気システムの残りの部分まで導く。タービンハウジングを形成する材料は、高温の排気ガスに起因する予想最高温度に耐え得ることが必要である。多くの場合、高温排気ガスによりタービンハウジングの温度は従来の低コストのフェライト系鋳鉄の作動限界温度を超えるため、Niレジスト(D5S)またはオーステナイト系ステンレス鋼(例えば、1.4848および1.4849)などの合金化度が高い耐熱材料が必要とされる。これらの高合金材料は高価であり、装置の全体的なコストを大きく引き上げる。
【0005】
タービンハウジングのコストを低く維持するために、タービンハウジングをフェライト系鋳鉄やアルミニウムなどの低コスト材料から作製することが望ましい。アルミニウムなどの材料は、タービンハウジングの作動温度で作動するために十分な耐熱性を有さないため、アルミニウムハウジングを積極的に冷却して実用的な温度範囲内に維持する必要がある。具体的には、多くのアルミニウム合金では、すべての位置でアルミニウム材料を300℃以下に保つ必要がある。
【0006】
ニッケルなどの高価な合金のコストは将来的に上昇し続けると考えられるため、タービンハウジングに低コストおよび/または軽量の材料を使用して(必要に応じ、積極的な冷却も行う)ターボチャージャシステムのコストを低減することに対するエンジンおよびターボチャージャ製造者からの関心は高い。本開示は、上記目的を達成するために行うものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以下、本開示の全体的な概要を説明するが、本発明の全範囲またはすべての構成を包括的に開示するものではない。
【0008】
本開示には、エンジンシステムから排出される排気ガス流内に配置されるターボチャージャシステムが含まれる。ターボチャージャシステムは、排気流のエネルギーを回転軸のエネルギーに変換する回転タービンホイールを内包するタービンハウジングを備える。タービンハウジングは、排気ガスを効率的にタービンホイールへ導くための内部ガス導管を備える。ガス導管は、タービンホイールの外径に対して略接線方向を向く入口部分と、タービンホイールを囲み、これと略同心の第2の部分を有する。タービンハウジングは、ガス導管の入口部分(第1部分)と環状部分(第2部分)が合流する領域に、舌状部と呼ばれる分岐形状を備える。舌状部は、両面が高温排気ガスに曝されるため、急速に加熱される。
【0009】
アルミニウムは、自動車の排気システムによる高温に耐えることができないため、その作動限界の範囲内の温度まで能動的に冷却する必要がある。アルミニウムタービンハウジングの熱耐久性の問題を解決するための方法として、アルミニウムタービンハウジング内に水ジャケットを配置したり、エンジンの冷却システムを使用することが挙げられる。水冷却によりアルミニウムタービンハウジングの外表面の温度を比較的低温(通常は120℃以下)にすることで、タービンハウジングを冷却しない場合に比べて、エンジンルーム内の他の構成要素をターボチャージャ装置に近接して配置することができる。アルミニウムタービンハウジングを水冷却することで、より良好な収容状態と低質量が実現でき、しかもオーステナイト系ステンレス鋼のような従来の高合金鉄系材料と比較してコストを低減することができる。鉄合金から作られたタービンハウジングの場合でも、低コストの材料を使用して、ハウジングのコストを可能な限り低く維持することが望まれている。低コストの鉄合金の使用は、通常、材料の熱耐久性の限界の問題で制限されることが多く、中でもタービンハウジングの舌状部は、その形状と機能により極端な熱負荷がかかるため、特に制限が大きい。
【0010】
本開示で提示される実施形態で取り組まれている主な問題は、タービンハウジングを従来の鉄合金から構成するか、代替材料で構成して冷却するかに関わらず、タービンハウジングの舌状部の耐久性を高めることである。水冷却タービンハウジングの場合には、タービンハウジングの舌状部は、内部のガス導管内の排気ガスの流れを妨げないように比較的薄くなければならず、舌状部内に冷却チャネルを組み込むための十分な空間がない。アルミニウムの熱伝導率が、最も高温な鉄系材料と比較してはるかに高いとしても、水冷却アルミニウムタービンハウジングの舌状部が、アルミニウムが耐え得る最大の動作条件(温度および質量流量)を制限する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示は、舌状部の材料を第2の高耐熱性材料で置き換える方法を提供する。第1の方法は、タービンハウジングの入口からタービンハウジング内に構成要素を挿入する方法である。第2の方法は、主タービンハウジング内にタービンの回転軸に対して平行に部材を挿入する方法である。
【0012】
一形態において、本開示は、タービンハウジングおよび舌状挿入部を有するターボチャージャシステムを提供する。タービンハウジングは、入口、出口、および入口と出口との間のガス流路を含む。ガス流路は、渦巻部と渦巻部に対して略接線方向に延びる入口部を含む。タービンハウジングは、第1の材料で形成される。舌状挿入部は、タービンハウジング内の溝部に収容され、少なくとも部分的に渦巻部と入口部を形成する。舌状挿入部は、第1の材料よりも耐熱性が高い第2の材料で形成されている。
【0013】
いくつかの実施形態では、舌状挿入部は、舌状挿入部と入口部との間の隙間を形成するくぼみまたは凹部を備える。
【0014】
いくつかの実施形態では、溝部は、舌状挿入部と入口部との間の隙間を形成するくぼみまたは凹部を備える。
【0015】
いくつかの実施形態では、溝部は、タービンハウジングの入口を形成する入口インターフェースを通って延びている。
【0016】
いくつかの実施形態では、溝部は、舌状挿入部をタービンハウジングに対して位置決めする端止め部を備える。
【0017】
いくつかの実施形態では、舌状挿入部は、圧入によって溝部に係合される。
【0018】
いくつかの実施形態では、タービンハウジングの内部には、冷媒流路が形成されている。
【0019】
他の形態において、本開示は、タービンハウジングおよび舌状挿入部を有するターボチャージャシステムを提供する。タービンハウジングは、入口、出口、および入口と出口との間のガス流路を含む。ガス流路は、渦巻部と、渦巻部に対して略接線方向に延びる入口部を含む。タービンハウジングは、第1の材料で形成される。舌状挿入部は、タービンハウジング内に収容され、少なくとも部分的に渦巻部と入口部を形成する。舌状挿入部は、第1の材料よりも耐熱性が高い第2の材料で形成されている。舌状挿入部は、リング部と、リング部から延びる舌状部とを含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、リング部は、タービンハウジング内に配置されたタービン軸と同心である。
【0021】
いくつかの実施形態では、リング部は、タービンハウジングとタービン軸受ハウジングとの間に挟まれている。
【0022】
いくつかの実施形態では、舌状部は、タービンハウジング内の凹部に収容される。
【0023】
いくつかの実施形態では、タービンハウジングの内部には、冷媒流路が形成されている。
【0024】
本開示のさらなる適用領域は、本明細書の記載により明らかとなる。本概要における説明および具体的な実施例は、例示を目的としたものであり、本開示の範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
本明細書に記載された図面は、実施形態の一例を説明するためのものであり、すべての可能な実装形態ではなく、本開示の範囲を限定するものではない。
【
図1】
図1は、ターボチャージャ付きエンジンシステムの概略図である。
【
図2】
図2は、本開示の原理に係るタービンハウジングと舌状挿入部の分解斜視図である。
【
図3】
図3は、
図2のタービンハウジングと舌状挿入部の斜視断面図である。
【
図4】
図4は、他の実施形態に係る溝部を備えた
図2のタービンハウジングの斜視断面図である。
【
図5】
図5は、
図2のタービンハウジングから舌状挿入部を除去した斜視図である。
【
図6】
図6は、
図2のタービンハウジングから舌状挿入部を除去した斜視断面図である。
【
図7】
図7は、本開示の原理に係る他のタービンハウジングおよび舌状挿入部の分解斜視図である。
【
図8】
図8は、
図7のタービンハウジングおよび舌状挿入部の分解斜視断面図である。
【
図10】
図10は、タービンとタービン軸受ハウジングが組み付けられた
図7のタービンハウジングおよび舌状挿入部の斜視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の例示的な実施形態について、添付図面を参照してより詳細に説明する。なお、図面全体を通じて対応する参照番号は、同様のまたは対応する部材または構成を示すものである。以下の説明は、例示にすぎず、本開示および応用または使用を限定することを意図するものではない。
【0027】
本発明の例示的な実施形態は、本開示を詳細に説明し、かつ当業者にその範囲を伝えるために提供される。本開示の実施形態の深い理解を提供するために、要素や装置の具体例などについて詳細に説明しているが、必ずしも上記具体的な形態を採用する必要はなく、その例示的な実施形態は多くの異なる形態で実施することができ、いずれも本開示の範囲を限定するものと解釈すべきではないことは、当業者において明らかである。いくつかの実施例では、周知のプロセス、周知の装置構造、および周知の技術については詳細には説明していない。
【0028】
本明細書で使用される用語は、単に特定の実施形態を説明するためのものであり、限定することを意図したものではない。本明細書では、文脈上明確に示さない限り、単数形は複数形をも含む意図である。「構成する」、「構成している」、「含んでいる」、「有している」等の表現は包括的であり、したがって、構成、整数、ステップ、動作、要素、および/または、要素の存在を特定するが、1つ以上の他の構成、整数、ステップ、動作、要素、および/または、それらの組み合わせの追加を除外するものではない。
【0029】
要素または層が、他の要素または層に対して、「上に」、「結合され」、「接合され」、「接続され」、または、「連結され」と表現される場合は、他の要素または層に対して直接的に配置、結合、接合、接続、または連結されているか、あるいは、介在する他の要素または層が存在する。反対に、要素または層が、他の要素または層に対して、「直接に上に」、「直接に結合され」、「直接に接合され」、「直接に接続され」、または、「直接に連結され」と表現される場合は、介在する他の要素または層は存在しない。各要素間の関係を説明するために用いられる他の用語(たとえば、「間に」と「直接に間に」、「隣接する」と「直接に隣接する」等)についても、同様に解釈される。本明細書において、「および/または」という用語は、列挙された関連部材の1つ又は複数のあらゆる組み合わせを含むものである。
【0030】
本明細書において、第1、第2、第3等の用語は、さまざまな要素、部材、領域、層および/または部分を説明するために用いられるが、これらの要素、部材、領域、層および/または部分は、これらの用語により限定されない。これらの用語は、1つの要素、部材、領域、層または部分を、他の要素、部材、領域、層または部分と区別するためのみに用いられる。本明細書で用いられる「第1」、「第2」および他の数的用語のような用語は、文脈により明確に示されていない限りは、順番または並びを示唆しない。したがって、下記の第1要素、第1部材、第1領域、第1層または第1部分は、実施形態の説明から離れることなく、第2要素、第2部材、第2領域、第2層または第2部分と称することもできる。
【0031】
本明細書では、図に記載されたある要素または構成と他の要素または構成の関係の説明を容易にするために、「内」、「外」、「下」、「下方」、「低」、「上」、「上方」等の空間に関する用語が使用される。空間に関する用語は、図示の向きに加えて、装置の使用または動作における異なる向きを含むことを意図する。例えば、図示の装置が反転している場合、他の要素または構成の「下」または「下方」として説明される要素は、当該他の要素または構成の「上方」を向くことになる。したがって、「下方」という用語は、上方と下方の両方の向きを包含し得る。また、装置は他の向きであってもよく(90度回転、または他の向き)、本明細書で使用される空間に関する用語は、上記のように解釈される。
【0032】
図1を参照すると、ターボチャージャ(過給機)付きエンジン4のターボチャージャシステム1は、燃焼エンジン4の排気システム5の排気ガス流路中に配置されたタービン2を有する。ターボチャージャシステム1は、高温の排気ガスからエネルギーを抽出し、そのエネルギーを用いて圧縮機3で吸入空気を圧縮する。圧縮された吸入空気は、中間熱交換器12で冷却された後、吸気システム11を経由して、吸気マニホールド6などの吸気分配システムに移動(通過)する。吸入空気は、エンジン4内で燃料と混合され、点火されることで、電力を生成するとともに、タービン2を駆動するための、より高温の排気ガスを生成する。必要に応じて、本エンジンシステムは、EGRクーラ8およびEGRバルブ9を備える排気ガス再循環(EGR)回路7を含み、排気ガスの一部を案内、冷却および計量して吸入空気システム11内の吸入空気と混合し、エンジン4における燃焼を制御する。
【0033】
図2〜6を参照すると、タービンハウジング10は、タービンハウジング10の入口インターフェース70において、エンジン、排気マニホールド、または上流側の排気システムに取り付けられている。タービン2からの排気ガスは、タービンハウジング出口82から排出される。タービンハウジングの出口インターフェース80は、下流側の排気システム(図示せず)を備えるタービンハウジング出口ガス管82に接続されており、排気ガスは排気システムの残りの部分(例えば、排気後処理システムなど)で適切に処理される。タービンハウジング10は、排気ガス中のエネルギーを軸仕事に変換するための回転ブレード装置を備えるタービン2を含む。タービン2とそのシャフトは、軸受ハウジング(図示せず)に配置され、支持されている。軸受ハウジングは、タービン軸受ハウジングインターフェース90においてタービンハウジング10に接続されている。
【0034】
タービンハウジング10の機能は、タービンにおいて排気ガス中のエネルギーの一部を効率的にタービンブレードおよびシャフトの回転運動エネルギーに変換できるように、エンジンシステムからの排気ガスを運搬および誘導し、タービンに供給することである。タービンハウジング10は、タービンに排気ガスを運搬および誘導するための排気ガス流路98をタービン上流に備える。排気ガス流路98は、第1および第2の部分100、110を含む。排気ガス流路98の第1部分100は、タービンハウジング入口60を介してエンジンまたは上流の排気システム(図示せず)からの排気ガスを受け取ることができる。排気ガス流路98の第1部分100は、排気ガス流路98の第2部分110に対して略接線方向を向いている。第2部分110は、渦巻部と呼ばれ、排気ガス流路98の第1部分100からの排気ガスを受け取る環状のガス流路である。第2部分110は、タービンホイールの周囲に排気ガスを運搬することができる。
【0035】
排気ガスは非常に高温であり、現在の乗用車では、ディーゼルエンジンの場合で800℃〜900℃、ガソリンエンジンの場合で950℃〜1050℃にまで達する(将来的には、さらに高温になることも考えられる)。タービンハウジング10内の排気ガス流路98の第1および第2部分100、110の交点またはその付近には、舌状挿入部30の舌状部40が配置される。舌状挿入部30は排気ガス流路98の第1および第2部分100、110の間に隔壁を形成し、高い排気ガス温度およびガス速度による高い対流伝熱負荷にさらされる。
【0036】
舌状挿入部30は、タービンハウジング10の溝部または凹部20に収容される。
図2〜4に示すように、溝部20は、入口60において、第1部分100の少なくとも一部に形成され、入口インターフェース70を通って延びている。これにより、タービンハウジング10の残りの部分とは異なる材料で舌状挿入部30を形成することができる。これは、例えば、舌状挿入部30に耐熱性の高い材料を用いることを可能にする。また、熱により誘発される機械的応力が舌状挿入部30とタービンハウジング10の間で部分的に分断されるため、タービンハウジングの耐久性を高めることができる。また、舌状挿入部30を用いることで、舌状挿入部30とタービンハウジング10の間に隙間または断熱空間52を容易に形成することができる。
図2および
図3に示す実施形態では、断熱空間52は舌状挿入部30に形成されたくぼみまたは凹部50により形成される。隙間または断熱空間52は、舌状挿入部30とタービンハウジング10の間の熱伝達を低減する。あるいは、
図4に示すように、隙間または断熱空間52は、溝部20内、またはタービンハウジング10の舌状挿入部30との隣接する部分に設けられたくぼみまたは凹部53により形成されてもよい。
【0037】
図5に示すように、溝部20は、機械加工プロセスによる鋳造物のクリーンアップ加工を容易にするために、隅部に比較的大きな半径54を有する。溝部20は、舌状挿入部30を所望の位置に配置および支持することができる。
図3に示す実施形態では、舌状挿入部30が溝部20から摺脱するのを防止するために、例えば、舌状挿入部30の外面56に上流側の排気要素(例えば、排気マニホールドや排気管)が係合していてもよい。また、舌状挿入部30を溝部20に対して正確な位置に着座させるための構成が備えられていてもよい。
図4に示す実施形態では、端止め部25が舌状挿入部30の溝部20に対する着座位置を決定する。端止め部25は、舌状挿入部30に対応した形状(幅、高さ、または長さ)を備え、舌状挿入部30の着座位置を決定している。
【0038】
タービンハウジングの適用に際し、入口インターフェース70において入口60からタービンハウジング10内に舌状挿入部30を挿入することが不可能であるか、実際的ではない場合がある。例えば、タービンハウジング10の排気ガス流路98の第1部分100の形状が複雑であるため、舌状挿入部30を容易に挿入できない、あるいは、冷却水ジャケットやウェストゲート装置などのサブシステム要素が存在するなど、他の形状的制限があるような場合である。舌状挿入部30を挿入することが不可能または実際的でない場合の別の例としては、
図2〜
図6に示すように、統合されたターボマニホールドを用いる場合がある。 一般的に、ターボマニホールドは、排気マニホールドとタービンハウジングを単一の要素に結合しているため、舌状挿入部を設置するためにタービンハウジングの入口を利用することができない。
【0039】
図7〜
図10を参照すると、タービンハウジング310には、他の実施形態に係る舌状挿入部330が組み込まれている。タービンハウジング310は、例えば、統合されたターボマニホールドであってもよい。舌状挿入部330は、リング332を備え、リング332からは舌状部340が延びている。舌状挿入部330は、タービン軸受ハウジングインターフェース390からタービンハウジング310に挿入される。上流のエンジンまたは排気要素(図示せず)からの排気ガスは、タービンハウジング310の入口458に導入され、タービンハウジング310の出口460を通じて排出される。タービンハウジング310は、入口インターフェース370において上流側の排気分配システムに接続され、出口インターフェース380において下流側排気系に接続されている。
【0040】
タービンハウジング310は、水冷却(または冷媒冷却)タービンハウジングの一例である。本例では、タービンハウジング310内の冷却チャネル450の全体に、(例えば、エンジン又は車両の冷却システムからの)冷媒を循環させることで、タービンハウジング310の材料を冷却している。能動冷却により、低コスト材料、あるいはアルミニウムなどの低密度材料を用いる場合でも、同材料の非冷却時の使用温度を超える適用温度で使用することができる。冷媒体は、冷媒入口430を介してタービンハウジング310内の冷却チャネル450に入り、冷媒出口440を通って冷却チャネル450から出る。
【0041】
図9および
図10は、舌状部340がタービンハウジングガス導管398を第1部分400および第2部分410に分離していることを示す。同様に、
図8は、舌状部340が、タービンハウジング310内に形成された凹部または舌状部収容部470に嵌合されることを示す。舌状部340が収容部470に収容されるため、舌状挿入部330を回転させることで容易に位置決めすることができる。舌状挿入部330の軸方向および径方向標準位置は、舌状挿入インターフェース480の対応する形状により固定されるため、機械的な操作によって正確な位置決めが完了する。
図10に示すように、タービンハウジング310における舌状挿入部330の正確な位置決めに対する他の可能な自由度は、タービンハウジング310のタービン軸受ハウジングインターフェース390にタービン軸受ハウジング500を設置することにより固定される。タービン軸受ハウジング500は、Vバンドクランプ530により、タービンハウジング310に固定される。タービン軸受ハウジング500は、タービンシャフト520を支持および配置する。タービン510は、タービンシャフト520の一端に固定される。
【0042】
舌状挿入部30は非冷却タービンハウジングとともに、舌状挿入部330は冷却タービンハウジングとともに示されているが、舌状挿入部30、330は、冷却タービンハウジング、非冷却タービンハウジングのいずれにも用いることができる。すべての実施形態において、舌状挿入部には、タービンハウジングの材料とは異なる材料を用いることができる。 上述の実施形態では、舌状挿入部に低熱膨張材料を用い、あるいは、舌状挿入部の相対的な配置がタービンハウジングに大きな負荷やたわみを付与しないため、舌状挿入部とタービンハウジングの間で、対応する大きな熱誘起応力を生じさせることなく、異なる熱膨張を可能とする。
【0043】
引用した例および議論は、一般的に自動車およびオンロード車のエンジンの排気系に配置されたターボチャージャに関連しているが、本明細書で説明する一般的な概念は、例えば定置エンジン、および船や機関車のエンジンシステム用のターボチャージャにも適用可能である。本開示の原理は、固定または自動車用の内部または外部燃焼システムに関連付けられた排気システムに用いることができる。
【0044】
上述の実施形態の記載は、例示および説明を目的とするものである。開示を網羅または限定することを意図するものではない。個々の要素または特定の実施形態の構成は、通常その特定の実施形態に限定されるものではなく、適用可能な場合は、具体的に図示または説明されていない場合でも、交換可能であり、任意の実施形態で用いることができる。また、上記要素および構成は、様々な態様で変更することができる。かかる変更は、本開示からの逸脱と見なされるべきではなく、そのすべての修正は、本開示の範囲内に含まれることが意図されている。
【手続補正書】
【提出日】2016年4月18日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入口と、出口と、前記入口および前記出口の間に配置され、渦巻部と、前記渦巻部に対して略接線方向に延びる入口部とを含むガス流路と、を備えるタービンハウジングと、
前記タービンハウジング内の溝部に収容され、前記渦巻部および前記入口部を部分的に形成する舌状挿入部と、を有し、
前記タービンハウジングは、第1の材料で形成され、
前記舌状挿入部は、前記第1の材料よりも耐熱性が高い第2の材料で形成され、
前記舌状挿入部は、前記入口の周縁の一部に沿って延び、
前記入口には前記舌状挿入部の第1端が配置され、前記舌状挿入部の第2端は前記渦巻部まで延びることを特徴とするターボチャージャシステム。
【請求項2】
前記舌状挿入部は、前記舌状挿入部と前記入口部との間の隙間を形成するくぼみを備えることを特徴とする請求項1に記載のターボチャージャシステム。
【請求項3】
前記溝部は、前記舌状挿入部と前記入口部との間の隙間をさらに形成するくぼみを備えることを特徴とする請求項2に記載のターボチャージャシステム。
【請求項4】
前記溝部は、前記タービンハウジングの入口を形成する入口インターフェースを通って延びていることを特徴とする請求項3に記載のターボチャージャシステム。
【請求項5】
前記溝部は、前記舌状挿入部を前記タービンハウジングに対して位置決めする端止め部を備えることを特徴とする請求項4に記載のターボチャージャシステム。
【請求項6】
前記舌状挿入部の第2端は、前記舌状挿入部が前記渦巻部の放射方向内側に傾斜するように角度調整されたテーパ部を備えることを特徴とする請求項5に記載のターボチャージャシステム。
【請求項7】
前記舌状挿入部は、圧入によって前記溝部に係合されることを特徴とする請求項6に記載のターボチャージャシステム。
【請求項8】
前記タービンハウジングの内部には、冷媒流路が形成されていることを特徴とする請求項7に記載のターボチャージャシステム。
【請求項9】
入口と、出口と、前記入口および前記出口の間に配置され、渦巻部と、前記渦巻部に対して略接線方向に延びる入口部とを含むガス流路と、を備えるタービンハウジングと、
前記タービンハウジング内に収容され、前記渦巻部および前記入口部を少なくとも部分的に形成する舌状挿入部と、を有し、
前記タービンハウジングは、第1の材料で形成され、
前記舌状挿入部は、前記第1の材料よりも耐熱性が高い第2の材料で形成され、
前記舌状挿入部は、環状のリング部と、非環状の舌状部とを含み、
前記舌状部は、前記リング部の軸方向端から前記渦巻部内に向かって軸方向外側に延び、
前記舌状部は、前記入口部と前記渦巻部との合流部を形成することを特徴とするターボチャージャシステム。
【請求項10】
前記リング部は、前記タービンハウジング内に配置されたタービン軸と同心であることを特徴とする請求項9に記載のターボチャージャシステム。
【請求項11】
前記リング部は、前記タービンハウジングとタービン軸受ハウジングとの間に挟まれていることを特徴とする請求項10に記載のターボチャージャシステム。
【請求項12】
前記舌状部は、前記タービンハウジング内の凹部に収容されることを特徴とする請求項11に記載のターボチャージャシステム。
【請求項13】
前記タービンハウジングの内部には、冷媒流路が形成されていることを特徴とする請求項12に記載のターボチャージャシステム。
【国際調査報告】