特表2016-528874(P2016-528874A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2016-528874エアロゾル発生のための誘導加熱装置およびシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2016-528874(P2016-528874A)
(43)【公表日】2016年9月23日
(54)【発明の名称】エアロゾル発生のための誘導加熱装置およびシステム
(51)【国際特許分類】
   A24F 47/00 20060101AFI20160826BHJP
   A61M 15/06 20060101ALI20160826BHJP
【FI】
   A24F47/00
   A61M15/06 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-563024(P2015-563024)
(86)(22)【出願日】2015年5月21日
(11)【特許番号】特許第5986694号(P5986694)
(45)【特許公報発行日】2016年9月6日
(85)【翻訳文提出日】2015年11月13日
(86)【国際出願番号】EP2015061198
(87)【国際公開番号】WO2015177253
(87)【国際公開日】20151126
(31)【優先権主張番号】14169188.1
(32)【優先日】2014年5月21日
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN,ZA,ZM,ZW
(71)【出願人】
【識別番号】596060424
【氏名又は名称】フィリップ・モーリス・プロダクツ・ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(72)【発明者】
【氏名】ミロノフ オレク
(57)【要約】
エアロゾル発生のための誘導加熱装置は、エアロゾル形成基質およびサセプタを含むエアロゾル形成インサートの少なくとも一部分を受けるための内部表面を持つくぼみを含む装置ハウジングを備える。装置ハウジングはさらに、磁軸を持つ誘導コイルを備えるが、誘導コイルは、くぼみの少なくとも一部分を囲むように配列される。装置はなおもさらに誘導コイルに接続され、かつ誘導コイルに高周波電流を供給するよう構成された電源を備える。そこで、誘導コイルを形成するワイヤー材料は主要部分を含む断面を持ち、その主要部分は、磁軸の方向の長軸方向延長部分および磁軸に対して直角を成す横方向延長部分を持ち、その長軸方向延長部分は主要部分の横方向延長部分よりも長い。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアロゾル発生のための誘導加熱装置であって、前記装置が、
−エアロゾル形成基質およびサセプタを含むエアロゾル形成インサートの少なくとも一部分を受けるための内部表面を持つくぼみを備えた装置ハウジングであって、前記装置ハウジングがさらに磁軸を持つ誘導コイルを備え、前記誘導コイルが前記くぼみの少なくとも一部分を囲むように配列されている装置ハウジングと、
−前記誘導コイルに接続され、かつ前記誘導コイルに高周波電流を供給するよう構成された電源とを備え、
前記誘導コイルを形成するワイヤー材料が、主要部分を含む断面を持ち、前記主要部分が前記磁軸の方向の長軸方向延長部分および前記磁軸に対して直角を成す横方向延長部分を持ち、この長軸方向延長部分が前記主要部分の前記横方向延長部分よりも長い、装置。
【請求項2】
前記主要部分が矩形の形態を持つ、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記主要部分が前記ワイヤー材料の断面全体を形成する、請求項1〜2のいずれか1項に記載の装置。
【請求項4】
前記ワイヤー材料の断面がさらに二次的部分を含み、前記二次的部分が前記磁軸と直角を成す方向の長軸方向延長部分および前記磁軸の方向の横方向延長部分を持ち、この長軸方向延長部分が前記二次的部分の横方向延長部分よりも長い、請求項1または2のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
前記ワイヤー材料の断面がL字型である、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記誘導コイルの前記ワイヤー材料がLitzワイヤーでできているか、またはLitzケーブルである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
前記誘導コイルが3〜5個の巻線を持つ、請求項1〜6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
前記装置ハウジングの外側壁と前記誘導コイルとの間に提供された磁気遮蔽をさらに含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
前記磁気遮蔽がシート材料の形態の前記誘導コイル、または前記装置ハウジングの外側壁の内側被覆を囲む、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記磁気遮蔽が前記誘導コイルの個別の巻線間に配置される、請求項8または9に記載の装置。
【請求項11】
前記くぼみの内部表面の外周部分と前記誘導コイルが円筒形状である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
前記エアロゾル形成インサートが前記くぼみ内に収容される時に、前記装置ハウジングが前記エアロゾル形成インサートを前記くぼみ内に保持するための保持用部材を備える、請求項1〜11のいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の装置およびエアロゾル形成基質およびサセプタを含むエアロゾル形成インサートを備える、誘導加熱およびエアロゾル発生システムであって、前記エアロゾル形成基質が前記装置の前記くぼみ内に収容され、また前記エアロゾル形成インサートの前記サセプタが、前記誘導コイルによって発生する電磁場により誘導的に加熱されるようにその内部に配置される、システム。
【請求項14】
前記エアロゾル形成インサートが、
サセプタを備え、液体(好ましくは、ニコチンを含む)を含むカートリッジおよび
サセプタを備えるたばこ材料含有ユニットのうち一方である、請求項13に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は誘導的に加熱可能な喫煙装置に関連し、ここでエアロゾルは、エアロゾル形成基質を誘導的に加熱することにより発生されうる。
【背景技術】
【0002】
電気的に加熱可能な装置において、現時点では、装置内に提供されている電池によって供給可能なエネルギーに限界があることが妨げになっている。これらの装置の小型化傾向は、これらの電力供給にさらに負担を強いるものとなっている。エネルギーの使用を最適化するために誘導加熱が提案されてきた。誘導加熱により、装置の加熱されることになる部分へのより適切なエネルギー移動、およびより適切なエネルギー変換を達成しうる。ところが、小型化された電気喫煙装置はそれでも頻繁に再充電する必要があり、これはユーザーにとって不便である。
【0003】
従って、エアロゾル発生のための改良型の誘導加熱装置に対するニーズがある。特に、エネルギー効率に関連して、そのような装置のニーズがある。
【発明の概要】
【0004】
本発明の一つの態様によれば、エアロゾルを発生させるための誘導加熱装置が提供されている。装置は、エアロゾル形成基質およびサセプタを含むエアロゾル形成インサートの少なくとも一部分を受けるための内部表面を持つくぼみを含む装置ハウジングを備える。装置ハウジングはさらに、磁軸を持つ誘導コイルを備えるが、誘導コイルは、くぼみの少なくとも一部分を囲むように配列される。装置はさらに誘導コイルに接続され、かつ誘導コイルに高周波電流を供給するよう構成された電源を備える。誘導コイルを形成するワイヤー材料は、主要部分を含む断面を持つ。主要部分は、磁軸の方向の長軸方向延長部分および磁軸に対して直角を成す横方向延長部分を持つ。磁軸に対して直角を成す横方向延長部分は、半径方向に延びることが好ましい。断面の主要部分の長軸方向延長部分は、断面の主要部分の横方向延長部分よりも長い。簡単に言えば、ワイヤー材料の形態は、円形断面のあるワイヤーにより形成された従来のらせん誘導コイルと比較して、全体的にまたは少なくとも主要部分で平坦化される。こうして、主要部分内のワイヤー材料はコイルの磁軸に沿って延び、また比較的小さな範囲で半径方向に延びる。この手段により、誘導コイル内のエネルギー損失を小さくしうる。特に、キャパシタンス損失を小さくしうる。電荷を帯びた2つの物体のキャパシタンスは、近接する2つの表面(ここでは誘導コイル内で互いに面する近接する巻線または回転の側面)の表面積に正比例する。こうして、キャパシタンス損失は、直角方向の巻線延長部分を減少させることで小さくなる。
【0005】
主要部分は矩形の形態を持つことが好ましい。一部の好ましい実施形態で、主要部分はワイヤー材料の断面全体を形成する。これらの実施形態では、誘導コイルは、矩形の断面を持つワイヤー材料によりらせん状に形成され、それによりヘリカルフラットコイル(ワイヤー材料の形態に対して平坦)が形成される。こうした誘導コイルは製造しやすい。エネルギー損失の低減の他に、誘導コイルの外径が最小化されるという追加的な利点がある。これにより装置の最小化が許容される。フラットコイルを提供することにより得られる空隙は、装置の大きさを変えることなく磁気遮蔽を提供するため、あるいは装置をさらに小さくするためにも使用されうる。
【0006】
本発明による装置では、誘導コイルは装置ハウジング内のくぼみの周辺に配列される。誘導コイルは、くぼみまたは、くぼみ内に挿入されたいかなる材料とも接触しないように配列されうるため、この点は都合が良い。誘導コイルは、例えばハウジング材料内に成形されるなど、ハウジング内に完全に埋め込まれうる。誘導コイルは外部からの影響から保護され、ハウジング内に固定的に取り付けられうる。さらに、インサートがくぼみ内に収容されていない時は、くぼみは完全に空になりうる。これによって、装置の部品を損傷するリスクなく、くぼみだけでなく、装置全体の洗浄が許容されかつ促進される。また、くぼみ内には、くぼみへのインサートの挿入および除去時に損傷する恐れのある、または洗浄される必要がある可能性のある要素は存在しない。
【0007】
本発明による装置の別の態様によれば、断面は二次的部分を含む。二次的部分は、磁軸と直角を成す方向の長軸方向延長部分および磁軸の方向の横方向延長部分を持ち、長軸方向延長部分は二次的部分の横方向延長部分よりも長い。二次的部分の横方向延長部分は常に主要部分の長軸方向延長部分よりも小さく、二次的部分の長軸方向延長部分は常に主要部分の横方向延長部分よりも大きい。これにより、ワイヤー材料の断面は、誘導コイル内のエネルギー損失をなおも低減することにより大きなままに保ちうる。キャパシタンスは近接する表面の距離に対して反比例もする。こうして、キャパシタンスは、近接する表面間の距離を増加させることにより小さくしうる。誘導コイルは、誘導コイルの巻線が実質的に同一となるように、サイズが均一のワイヤー材料により製造されることが好ましい。ワイヤー材料が半径方向に延長された延長部分を持つ二次的部分とともに提供されている場合、個別の巻線のこれらの二次的部分は相互に距離を置いて配置される。これらは相互に距離を置いて配置されるが、それは従来型の誘導コイルの場合と同様に近接する巻線間の距離によってだけでなく、主要部分の長軸方向延長部分の長さにもよる。
【0008】
二次的部分を提供することで、誘導コイルと装置ハウジングの外側壁との間に、または個別の巻線間にも追加的な空隙を提供しうる。コイルの寸法を小型化することによって得られたこの空隙には、例えば遮蔽材料を配列しうる。
【0009】
主要部分および二次的部分を持つワイヤー材料の断面はL字型であることが好ましい。
【0010】
誘導コイルにより発生する電磁場により加熱されることになるくぼみに挿入されたサセプタに近接するために、誘導コイルは、くぼみに近接して配列されることが好ましい。こうして、誘導コイルのワイヤー材料の断面が二次的部分を含み、ここで二次的部分の長軸方向延長部分が断面の主要部分の横方向延長部分を超える場合、二次的部分は誘導コイルの外向きの半径方向に延びることが好ましい。これにより、主要部分は、くぼみに最も近接する断面の部分であることが保証されうる。
【0011】
ワイヤー材料の断面の別の形態はT字型としうる。そこで、T字は逆さまに配列され、T字の「頭部」が主要部分を形成し、またくぼみの長軸方向に対して並列に配列される。
【0012】
断面のなおも別の形態は三角形であり、ここで三角形の基底は誘導コイルの磁軸に対して平行に、かつくぼみの長軸方向に対して平行に配列される。本発明による誘導コイルの形態は一般的に、断面の一つの側面を形成する最大の長軸方向延長部分を持つ断面を持つことにより画定されうる。そこで、ワイヤー材料はワイヤー材料の断面の最大の長軸方向延長部分が誘導コイルの磁軸に平行に延びるように配列される。そこで、ワイヤー材料はまた、ワイヤー材料の断面の最大の長軸方向延長部分がくぼみに最も近接して配列されるようにくぼみを囲む。断面のさらなる任意の長軸方向延長部分は、(例えば、フラットコイルで)最大の長軸方向延長部分と等しいか、または(例えば、三角形の形状の誘導コイルで)それよりも小さい。
【0013】
本発明による装置の別の態様によれば、誘導コイルのワイヤー材料はLitzワイヤーで製造されるか、またはLitzケーブルである。Litz材料では、ワイヤーまたはケーブルが個別の孤立したワイヤーで、例えば、捻じって束ねるかまたは編んで製造される。Litz材料は交流電流を搬送するのに特に適している。個別のワイヤーは、高めの周波数での導体の表皮効果および近接効果の損失を低減するよう設計されており、またそれによって誘導コイルのワイヤー材料の内部がインダクタコイルの導電率に貢献できるようになる。
【0014】
誘導コイル内を流れる電源により供給される高周波電流の周波数は1 MHz〜30 MHzの範囲としうるが、1 MHz〜10 MHzの範囲が好ましく、5 MHz〜7 MHzの範囲がさらに好ましい。「〜の範囲」という用語は本明細書で使用する時、明示的にそれぞれの境界値も開示しているものと理解される。
【0015】
本発明による装置のさらなる態様によれば、誘導コイルは3〜5個の巻線を含む。これらの実施形態では、ワイヤー材料の断面、またはその主要部分はそれぞれ平坦な矩形を形成することが好ましい。これにより、十分な長さの誘導コイルは、非常に効率の高い方法で製造されうる。誘導コイルがフラットコイルであり、誘導コイルを形成するためにLitzケーブルが使用される場合、製造は特に効果的となる。
【0016】
主要部分またはフラットコイルのためのこれらのサイズは、本発明による装置で使用するための誘導コイルの製造にとって最適な範囲であることが示されてきた。特に、これらのサイズは誘導的に加熱される喫煙装置で使用するための誘導コイルについて最適化される。
【0017】
本発明による装置のなおも別の態様によれば、装置はさらに装置ハウジングの外側壁と誘導コイルとの間に提供された磁気遮蔽を備える。誘導コイルの外側に提供された磁気遮蔽は、装置の外側に達する電磁場を最小化しうる。磁気遮蔽は誘導コイルを囲むことが好ましい。こうした遮蔽は装置ハウジングそれ自体の材料の選択によって達成しうる。磁気遮蔽は例えば、装置ハウジングの外側壁のシート材料または内部被覆の形態でも提供しうる。遮蔽は例えば、遮蔽効果を向上させるために二層または多層の遮蔽材料(例えば、ミューメタル)でもよい。遮蔽の材料は高い磁気浸透性であるのが好ましく、強磁性材料としうる。磁気遮蔽材料はまた、誘導コイルの個別の巻線間に配列してもよい。その後で、遮蔽材料(存在する場合)が、ワイヤー材料の断面の二次的部分の間に提供されることが好ましい。これにより、二次的部分の間の空隙が磁気遮蔽のために使用されうる。巻線間に供給されている遮蔽材料は粒子の性質を持つことが好ましい。
【0018】
磁気遮蔽は磁気コンセントレータの機能も持ち、こうして磁場の誘引および配向を行いうる。こうした磁場コンセントレータは上述した磁気遮蔽と組み合わせて、それに加えて、またはそれとは別個に提供されうる。
【0019】
本発明による装置の一つの態様によれば、くぼみおよび誘導コイルの内部表面の外周部分は円筒形状である。こうした配列では、磁場の分布は、くぼみ内部において基本的に均一である。こうして、サセプタの配列に応じて、くぼみ内に収容されるエアロゾル形成インサートの規則的または対称的な加熱が達成されうる。さらに、汚れや残留物が詰まりうるエッジが全くまたはほんのわずかしか存在しないため、円筒形のくぼみの洗浄が促進される。
【0020】
くぼみの内部表面により保持されうるように、エアロゾル発生インサートは装置ハウジングのくぼみ内にぴったりと嵌まることが好ましい。くぼみまたは装置ハウジングの内部表面は、挿入されたインサートをより適切に保持するために形成されてもよい。本発明による装置の別の態様によれば、エアロゾル形成インサートがくぼみ内に収容された時、装置ハウジングは、くぼみ内にエアロゾル形成インサートを保持するための保持部材を備える。こうした保持部材は例えば、くぼみの内部表面でくぼみ内に延びる突起としうる。突起は、くぼみの遠位領域で、エアロゾル形成インサートが装置ハウジングくぼみ内に挿入される挿入用の開口部かまたはその近辺に配列しうることが好ましい。例えば、突起は周辺に連続したリブまたは部分的リブの形態を持ちうる。突起は、くぼみ内へのインサートの導入を保持するための整列用部材としての役目も果たしうる。整列用部材は、くぼみの内部表面の外周部分に沿って長軸方向に延びる長軸方向のリブの形態を持つことが好ましい。突起は、例えば半径方向に延びるピンの位置に配列してもよい。装置が逆さまに保持された時でさえもインサートがくぼみから抜け落ちないように、保持部材はインサートの一定の掴みを提供することが好ましい。ただし、保持部材は、ある一定の放出力がインサートに作用した時にインサートを損傷することなく再びインサートを放出することが好ましい。
【0021】
本発明の別の態様によれば、誘導加熱およびエアロゾル発生システムも提供されている。システムは、本明細書に記載された誘導コイルを持つ装置を備え、またエアロゾル形成基質およびサセプタを含むエアロゾル形成インサートを備える。エアロゾル形成基質は装置のくぼみ内に収容され、またエアロゾル形成インサートのサセプタが誘導コイルによって発生される電磁場によって誘導的に加熱可能なように、その内部に配列される。
【0022】
装置の態様および利点については上記で説明済みであり、反復しない。
【0023】
エアロゾル形成基質はエアロゾルを形成できる揮発性化合物を放出する能力を持つ基質であることが好ましい。揮発性化合物はエアロゾル基質の加熱により放出される。エアロゾル形成基質は固体でも液体でもよく、固体および液体の両方の成分を含んでもよい。
【0024】
エアロゾル形成基質はニコチンを含む場合がある。ニコチンを含有するエアロゾル形成基質はニコチン塩マトリクスとしうる。エアロゾル形成基質は植物由来材料を含みうる。エアロゾル形成基質はたばこを含みうるが、たばこ含有材料は揮発性のたばこ風味化合物を含むことが好ましく、これが加熱に伴いエアロゾル形成基質から放出される。エアロゾル形成基質は均質なたばこ材料を含みうる。
【0025】
均質化されたたばこ材料は、粒子のたばこを凝集することによって形成されうる。存在する場合、均質化したたばこ材料のエアロゾル形成体含有量は、乾燥重量で5%以上であり、乾燥重量で5〜30重量パーセント以上であることが好ましい。
【0026】
別の方法として、エアロゾル形成基質は非たばこ含有材料を含みうる。エアロゾル形成基質は均質な植物由来材料を含みうる。
【0027】
エアロゾル形成基質は少なくとも一つのエアロゾル形成剤を含んでもよい。エアロゾル形成体は、使用時に、密度が高く安定したエアロゾルの形成を促進し、エアロゾル発生装置の使用温度で実質的に熱劣化耐性のある任意の適切な公知の化合物または化合物の混合物としうる。適切なエアロゾル形成体は本技術で公知であり、多価アルコール(トリエチレングリコール、1,3-ブタンジオールおよびグリセリンなど)、多価アルコールのエステル(グリセロールモノアセテート、ジアセテートまたはトリアセテートなど)、およびモノカルボン酸、ジカルボン酸またはポリカルボン酸の脂肪族エステル(ドデカン二酸ジメチルおよびテトラデカン二酸ジメチルなど)を含むが、これに限定されない。特に好ましいエアロゾル形成体は多価アルコールまたはその混合物(トリエチレングリコール、1,3-ブタンジオールおよびグリセリン(最も好ましい)など)である。
【0028】
エアロゾル形成基質は、その他の添加物および成分(芳香成分など)を含みうる。
【0029】
サセプタは誘導的に加熱されうる導体である。サセプタは電磁エネルギーを吸収し、それを熱に変換することができる。本発明によるシステムでは、一つまたは複数の誘導コイルにより発生した電磁場を変化させることでサセプタを加熱し、それが次に、主に熱の伝導により、熱をエアロゾル形成インサートのエアロゾル形成基質に移動する。この目的で、サセプタはエアロゾル形成基質の材料と熱的に近接している。サセプタまたは複数のサセプタの形態、種類、分布および配列はユーザーのニーズに応じて選択されうる。
【0030】
一部の好ましい実施形態で、エアロゾル形成インサートは、サセプタを備えかつ液体を含む、好ましくはニコチンを含む、カートリッジである。一部のその他の好ましい実施形態で、エアロゾル形成インサートはサセプタを含むたばこ材料含有ユニットである。たばこ材料含有ユニットは、サセプタおよび均質化されたたばこ材料でできたたばこプラグを含むユニットとしうる。たばこ材料含有ユニットはさらに、たばこ材料含有ユニットの口側の端に配列されたフィルターを備えうる。
【0031】
本発明による装置の装置ハウジング内のくぼみは、例えば、環状のカップの形態など、単純な開かれた形態を持つことができ、くぼみ内に挿入されるインサートの製造が容易にもなりうる。こうしたインサートは、例えば環状でもよい。
【0032】
本発明についてはさらに、実施形態に関して説明するが、これを下記の図表によって例示する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1図1はエアロゾル形成基質が装置のくぼみに挿入されたフラット誘導コイルを備えた誘導加熱装置の概略図である。
図2図2は例えば図1に示す通り、くぼみがフラット誘導コイルおよび磁気遮蔽によって囲まれている、誘導加熱装置の抜粋部分の断面図を示す。
図3図3は正方形の断面を持つフラット誘導コイルの実施形態を示す。
図4図4は、くぼみがL字型誘導コイルによって囲まれた誘導加熱装置の抜粋部分の断面図である。
図5図5は逆T字型誘導コイルで囲まれたくぼみの抜粋を示す。
図6図6は三角形の誘導コイルで囲まれたくぼみの抜粋を示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1は誘導加熱装置1およびエアロゾル形成インサート2を概略的に示し、取り付けられた状態のエアロゾル形成インサート2は誘導加熱システムを形成する。誘導加熱装置1は内部電源11を外部電源(図示せず)、例えば充電装置に接続するための、接点101(例えば、ドッキングポートおよびピン)を遠位端に持つ装置ハウジング10を備える。内部電源11、例えば再充電可能電池11は、ハウジング10の遠位領域にある装置ハウジングの内部に提供される。
【0035】
装置ハウジングの近位端は、エアロゾル形成インサート2をくぼみ13に挿入するための挿入用開口部102を持つ。くぼみ13は装置ハウジングの近位領域にある装置ハウジング内に形成される。くぼみ13は、くぼみ13内にエアロゾル形成インサート2を取り外しできる方法で受け取るように構成されている。らせん誘導コイル15は装置内部に、装置ハウジング10の外側壁103とくぼみ側壁131との間に配列される。誘導コイル15の磁軸は、くぼみ13の長軸方向400に対応し、これはまた、この実施形態で装置1の長軸方向に対応する。くぼみ、誘導コイルおよび装置ハウジングの近位領域の実施形態について、さらに下の図2〜6でより詳細に説明する。
【0036】
装置1はさらに、電子回路12、例えば回路を持つプリント基板を備える。電子回路12と誘導コイル15のどちらも内部電源11から電力を供給される。従って、要素は相互接続されている。誘導コイル15との間の電気的接続150はハウジング内部であるがくぼみ13の外側に通じる。誘導コイル15は、くぼみ13と接触しない、または、くぼみ内部に配列されうるか存在しうる、どの要素とも接触しない。こうして、任意の電気構成要素は、くぼみ13内の要素またはプロセスからも分離した状態にしうる。これはエアロゾル形成ユニット2自体としうるが、特にユニットまたはその部分の加熱によってエアロゾル発生プロセスで生じる残留物でもよい。くぼみ13と電子回路12および電源11を持つ装置1の遠位領域との分離は流体密封であることが好ましい。ただし、装置1の近位方向への気流を許容する換気用開口部を、くぼみの壁130、131内、および装置ハウジング内に、または両方に提供しうる。
【0037】
くぼみ13は、くぼみの壁130、131により形成される内部表面を持つ。くぼみ13の一つの開放端は挿入用の開口部102を形成する。挿入用の開口部を通して、エアロゾル形成ユニット2、例えば、たばこプラグまたはエアロゾル含有カートリッジがくぼみ13に挿入されうる。こうしたエアロゾル形成ユニットは、ユニットがくぼみ13内に収容される時に、ユニットのサセプタ22が誘導コイル15内で発生した電磁場およびサセプタ内で誘起された電流によって誘導的に加熱可能なように、くぼみ内に配列することができる。くぼみ13の下部壁131はユニット2を導入する時の機械的な止め具を形成しうる。
【0038】
エアロゾル形成インサートは例えば、エアロゾル形成基質、例えば、たばこ材料やプラグ20を含むエアロゾル形成体を備えうる。インサート2はエアロゾル形成基質を誘導的に加熱するためのサセプタ22を備え、また紙巻たばこフィルター21を備えうる。誘導コイルによって発生する電磁場はエアロゾル形成基質20内のサセプタを誘導的に加熱する。サセプタの熱はエアロゾル形成インサートに移動され、こうしてユーザーによる吸入のためのエアロゾルを形成しうる構成要素が蒸発する。
【0039】
図2は誘導加熱装置(例えば、図1の誘導加熱装置)のくぼみ13の拡大した断面を示す。くぼみは、くぼみ側壁131および下部壁130により形成され、挿入用の開口部102を持つ。くぼみ側壁131と装置ハウジング10の外側壁103との間には、フラット誘導コイル15が配列されている。フラット誘導コイル15は、らせんコイルであり、くぼみの長さまたは長さの一部に沿って延びる。外側壁103、装置ハウジング10、フラット誘導コイル15およびくぼみ13は環状であり、同心円状に配列されることが好ましい。フラット誘導コイルは装置ハウジング内に埋め込まれうる。フラット誘導コイルはフラットワイヤーまたはLitzケーブルでできていることが好ましい。誘導コイルの材料は銅であることが好ましい。
【0040】
くぼみ13には、くぼみ内にエアロゾル形成ユニットを保持するための保持部が提供されうる。環状に配列された突起132の形態の保持部は、くぼみ内に延びる。くぼみの壁131および装置ハウジング10は、同一の材料で製造しうるが、プラスチック材料で製造されることが好ましい。くぼみの壁130、131は、例えば射出成形によって単体で形成されることが好ましい。
【0041】
誘導コイルの巻線150の長軸方向の広い延長部分151により、コイル内部に、またコイルの磁軸400に沿って、より均一な電磁場の発生が許容される。ところが、誘導コイルの巻線の半径方向の狭い延長部分152は容量の損失を制限する。また、それによってくぼみ13の直径の拡大、または装置1の直径の制限のいずれかが許容される。
【0042】
遮蔽材料17のシートは、誘導コイル15とハウジングの壁103との間に同心円状に配列される。材料シートは磁気遮蔽としての役割を果たす。遮蔽材料は、誘起される磁場が遮蔽材料に入り、シート材料内を案内されうるように、高い磁気浸透性があることが好ましい。ミューメタルがシート材料として使用されることが好ましい。
【0043】
遮蔽材料17の外側の磁場を低減する要因は、遮蔽が生成される磁気材料の浸透性、磁気伝導経路を提供するこの材料の厚さ、および磁気揺動の周波数に依存する。こうして、シート材料およびその配列は、特定の用途および仕様に適応させうる。シート材料は、例えば遮蔽材料内での渦電流の形成を利用することにより、磁場を阻止する形態でも機能しうる。この遮蔽方法は高周波数で特に適している。こうした遮蔽のために導電性材料が使用される。
【0044】
遮蔽材料17のシートに加えて、粒子材料18の形態のさらなる遮蔽材料を、遮蔽材料17とハウジングの壁103との間に提供してもよい。粒子材料18は磁場コンセントレータ材料であり、誘導コイル15の巻線150間に配列されることが好ましい。
【0045】
図3はLitzケーブルでできたフラットらせん誘導コイル15を示す。誘導コイル15は3つの巻線150を持ち、長さは約22ミリメートルである。誘導コイル15それ自体は正方形の形態を持つ。
【0046】
図4は、誘導加熱装置(例えば、図1で説明した誘導加熱装置)のくぼみ13の拡大した断面を示す。図2と同一の参照番号が同一または類似した要素に使用される。
【0047】
くぼみ側壁131と装置ハウジング10または外側壁103との間に、L字型誘導コイル25が配列される。誘導コイル25は、らせんコイルであり、ここで巻線材料(これを元にL字型誘導コイル25が製造される)は、L字型断面を持つ。
【0048】
L字型誘導コイル25は、くぼみ13の長さまたは長さの一部に沿って延びる。装置ハウジング10(少なくともくぼみの領域内)、L字型誘導コイル25およびくぼみ13は管状であり、同心円状に配列されることが好ましい。L字型誘導コイルは、装置ハウジング10内に配列され、その内部に埋め込まれてもよい。
【0049】
「L」字の「足部」251(または断面の主要部分)は、例えば図2および3に関連して説明したフラット誘導コイルの長さであるサイズを持ちうる。「L」字の「脚部」252(または断面の二次的部分)は、半径方向の延長部分255が長軸方向の「足部」と同じであるかまたは小さいことが好ましい。
【0050】
また、個別の巻線250間の容量損失は、一般的な誘導コイルに使用される匹敵する環状のワイヤーよりも小さい。巻線150(または半径方向の広い延長部分を持つ二次的部分)の脚部252間の距離253は、近接する巻線150間の距離254よりもずっと大きい。相互に直接隣接した、および相互に面した巻線150間の表面では、L字型巻線のむしろ平坦な「足部」(または断面の主要部分)が優位を占める。
【0051】
L字型誘導コイル25のLにより形成される空隙内に、また個別の巻線間に、コンセントレータ材料18が配列される。
【0052】
図5および6には、誘導コイルのさらに2つの実施形態の断面が示されている。図5では、断面は逆T字型をしている。「頭部」351は、くぼみ13に最も近い誘導コイルの部分である。T字の「頭部」は、くぼみ13の側壁131に、または、くぼみの長軸方向の中心軸400に平行に配列される。
【0053】
T字の「脚部」352は、くぼみ13の中心軸400に関して半径方向に延びる。また、T字の脚部間の距離253は、誘導コイル35の個別の巻線351間の距離254よりも大きく、その約2倍〜3倍であることが好ましい。コンセントレータ材料18は、誘導コイル35の巻線351間に提供される。コンセントレータ材料18は、誘導コイル35の材料のT字型断面の「脚部」によって所定位置に保持されうる。
【0054】
図6に示す通り、誘導コイル45の断面は三角形の形状としうる。三角形の基底451は、くぼみ13の側壁131と平行に配列される。基底451は、くぼみ13の長軸方向の三角形の最大の延長部分であり、くぼみ13の最も近くに配列される。三角形の頂点452は、長軸方向の三角形の最小の延長部分であり、くぼみから最も離れて配列される。頂点452は、くぼみから一番離れている。また、頂点452間の距離253は近接する巻線45間の距離254よりも大きい。
【0055】
三角形の半径方向延長部分255は、三角形の長軸方向延長部分(基底451)よりも小さくても大きくてもよいが、誘導コイル45の直径を小さく保つために小さい方が好ましい。
【0056】
誘導コイルの配列および誘導加熱装置は、例証としてのみ表示したものである。ユーザーのニーズに応じて、または装置とともに加熱・使用されるエアロゾル形成ユニットに応じて、例えば誘導コイルの長さ、巻線数、位置または厚さの変更を適用しうる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】