(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2016-529902(P2016-529902A)
(43)【公表日】2016年9月29日
(54)【発明の名称】過酸化物分散体
(51)【国際特許分類】
A23L 5/49 20160101AFI20160902BHJP
A61K 8/38 20060101ALI20160902BHJP
A61K 8/39 20060101ALI20160902BHJP
A61K 8/86 20060101ALI20160902BHJP
A61Q 5/08 20060101ALI20160902BHJP
A61Q 5/10 20060101ALI20160902BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20160902BHJP
A61K 47/08 20060101ALI20160902BHJP
A61K 47/14 20060101ALI20160902BHJP
A61Q 11/00 20060101ALI20160902BHJP
A61K 47/34 20060101ALI20160902BHJP
【FI】
A23L5/49
A61K8/38
A61K8/39
A61K8/86
A61Q5/08
A61Q5/10
A61K9/10
A61K47/08
A61K47/14
A61Q11/00
A61K47/34
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-537836(P2016-537836)
(86)(22)【出願日】2014年8月28日
(85)【翻訳文提出日】2016年4月19日
(86)【国際出願番号】US2014053049
(87)【国際公開番号】WO2015031558
(87)【国際公開日】20150305
(31)【優先権主張番号】14/013,196
(32)【優先日】2013年8月29日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG
(71)【出願人】
【識別番号】500307340
【氏名又は名称】アーケマ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・エイチ・コゼル
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ・エム・グラベル
(72)【発明者】
【氏名】ティモシー・ベルフォード
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・サルヴァドール
(72)【発明者】
【氏名】マリナ・デスポトポーロウ
【テーマコード(参考)】
4B018
4C076
4C083
【Fターム(参考)】
4B018LB07
4B018LB08
4B018LB10
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4B018LE05
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4C083CC01
4C083CC23
4C083DD39
4C083FF01
(57)【要約】
C6〜C12脂肪酸のポリグリセリルエステルである界面活性剤を使用することにより、通常は固体の有機過酸化物の水性分散体の粘度を有利に低下させることができる。粘度の低下により、過酸化物を粉砕して粒子径を小さくすることが容易になり、容易に注入又はポンプ圧送することができる粒子径の小さい過酸化物の分散体も提供される。水性分散体は、医薬品、パーソナルケア製品、及び洗浄製品等の構成成分として有用であり、食品及び工業製品等用に有効な脱色剤となる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
製品の脱色方法であって、前記製品を、a)平均粒子径10μm未満の水不溶性固体有機過酸化物約35重量%以上と、b)1種以上のC6〜C18脂肪酸のポリグリセリルエステルである界面活性剤とを含む水性分散体と接触させる工程を含む方法。
【請求項2】
前記製品が食品又は食品以外の工業製品である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記製品が、乳製品、食用油、食用脂、多糖類、飲料及びこれらの組み合わせからなる群から選択される食品である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記水性分散体と前記製品との接触を、前記製品の色を低減するのに有効な量、時間、及び温度で行う、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記界面活性剤のHLB値が12〜18である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記1種以上のC6〜C18脂肪酸が、オクタン酸、デカン酸、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記1種以上のC6〜C18脂肪酸が飽和である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記1種以上の脂肪酸のポリグリセリルエステルが、平均8〜12個のグリセリン繰り返し単位を有するポリグリセリン部分を含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記界面活性剤が、ヒドロキシル基を有するポリグリセリルをベースにしており、前記ポリグリセリルのヒドロキシル基の約25%〜約60%がエステル化されている、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記界面活性剤が、カプリル酸/カプリン酸ポリグリセリル−10である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記界面活性剤が、食品用界面活性剤及び/又は薬学的に許容される界面活性剤である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記水性分散体が0.1〜2.0重量%の界面活性剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記水性分散体が高分子ゲル化剤をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記高分子ゲル化剤が多価陽イオンの存在下で架橋する、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記水性分散体が塩基をさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記水性分散体が塩をさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記有機過酸化物が過酸化ベンゾイルである、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記有機過酸化物の平均粒子径が5μm未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記界面活性剤が構造(I):
(I) R1−[CH2−CH(OR2)−CH2O]n−R3(式中、nの平均値は約6〜約14であり、R1、R2及びR3はそれぞれ独立してC6〜C18脂肪酸部分又は水素であるが、但し、R1、R2又はR3の少なくとも1つがC6〜C18脂肪酸部分である)を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記水性分散体が、前記製品を含む流れに直接添加される、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
粒子状の乾燥有機過酸化物が前記流れに直接添加されない、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記方法が有機過酸化物粉塵を発生させない、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
乳製品、食用油、食用脂、多糖類、飲料及びこれらの組み合わせからなる群から選択される食品の脱色方法であって、前記食品を、
a)平均粒子径5μm未満の過酸化ベンゾイル約37〜約42重量%;
b)水約53.5〜約62重量%;
c)ゲル化剤約0.2〜約2重量%;
d)平均8〜12個のグリセリン繰り返し単位を有するポリグリセリン部分を含有するポリグリセリルエステルであって、オクタン酸とデカン酸との混合物で部分的にエステル化されており、HLB値が12〜18のポリグリセリルエステル約0.1〜約2重量%;
e)架橋剤約0.01〜約0.05重量%;及び
f)塩基約0.2〜約1重量%;
を含む水性分散体と、前記食品の色を低減するのに有効な時間及び温度で接触させる工程を含む方法。
【請求項24】
i)a)平均粒子径10μm未満の水不溶性固体有機過酸化物約35重量%以上と、b)1種以上のC6〜C18脂肪酸のポリグリセリルエステルである界面活性剤とを含む水性分散体、及びii)少なくとも1種の追加の薬学的に許容される成分、少なくとも1種の追加のパーソナルケア成分、又は少なくとも1種の追加の洗浄製品成分を含む、医薬組成物、パーソナルケア組成物、又は洗浄製品。
【請求項25】
食品組成物、洗浄組成物、パーソナルケア組成物、又は医薬組成物を脱色するための水性有機過酸化物脱色分散体であって、a)水、b)平均粒子径10μm未満の水不溶性固体有機過酸化物、c)界面活性剤、及び任意選択的にゲル化剤を含み、ポンプ圧送可能、注入可能、又は噴霧可能である分散体。
【請求項26】
前記分散体がペースト又は液体である、請求項25に記載の分散体。
【請求項27】
前記界面活性剤が、食品用界面活性剤及び薬学的に許容される界面活性剤からなる群から選択される少なくとも1種の界面活性剤である、請求項25に記載の分散体。
【請求項28】
前記分散体をポンプ圧送可能、注入可能、又は噴霧可能にするのに十分な粘度を有する、請求項25に記載の分散体。
【請求項29】
ASTM D2196−10を用いて、800〜10,000cpsの粘度を有する、請求項25に記載の分散体。
【請求項30】
有機過酸化物が、前記組成物を脱色するのに十分な量で前記分散体中に存在する、請求項25に記載の分散体。
【請求項31】
分散体が、水不溶性固体有機過酸化物を少なくとも約35重量%以上含む、請求項25に記載の分散体。
【請求項32】
食品組成物、洗浄組成物、パーソナルケア組成物、又は医薬組成物を脱色するシステムであって、請求項25に記載の分散体と、前記分散体をそれぞれポンプ圧送又は噴霧することにより前記分散体を定量供給するように構成されたポンプ又はスプレーノズルとを含むシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通常は固体の有機過酸化物の水性分散体に関する。分散体は、高濃度の過酸化物を含有するペースト又は液体であり、過酸化物は小粒子(例えば、平均で直径10μm未満)の形態で存在する。ペーストはポンプ圧送可能、注入可能及び/又は噴霧可能となるように剪断減粘性であるか又は十分な流動性があるため、それらの取り扱い及び使用が容易になる。本発明はさらに、このような水性分散体の使用方法、及び水性分散体を含有する組成物も提供する。
【背景技術】
【0002】
過酸化物は、一般的特性として、可燃性で爆発性の傾向があり、一部の過酸化物は他のものよりかなりこのような特性を示す。例えば、過酸化ベンゾイルは、乾燥するとショック、摩擦、又は静電気により分解し得る。この特性は、これらの物質の使用者、並びにその製造業者及び中間取扱業者に危険をもたらす。従って、難燃性有機過酸化物組成物を提供することが、長い間目的となっていた。
【0003】
水溶性又は水分散性過酸化物により提供される安全性及び最終用途の利点が認識されてきた。しかし、商業的に重要な多くの過酸化物は水不溶性である。さらに、比較的高濃度の水不溶性固体過酸化物を含有する分散体は、典型的にはかなり粘度が高く、そのため取り扱い及び処理が困難である。この問題は、過酸化物の粒子径が小さくなるにつれ特に悪化する。例えば、過酸化物を水中で粉砕してその粒子径を10μm未満に小さくすると、水性分散体は非常に濃厚なペーストを形成することが多い。粉砕を再度実施できる程度に、分散体が「緩くなり」、軟化することが可能となるように一定時間粉砕を中断しない限り、それ以上粉砕することはかなり困難になる。これらの難点のため、所望の小さい粒子径を達成するのに必要な時間が著しく長くなる。水不溶性過酸化物には粒子径が小さい方が有利となる最終用途が多いため、ポンプ圧送及び/又は注入により取り扱うことができる粒子径の小さい過酸化物の高濃縮水性分散体、並びにこのような水性分散体を好都合に且つ効率的に製造し得る方法が依然として必要とされている。
【0004】
過酸化ベンゾイルなどの水不溶性固体有機過酸化物は、漂白剤として、例えば、小麦粉、ホエー及びチーズなどの食品の脱色に広く使用されている。Yehia El−Samragy,“Benzoyl Peroxide−Chemical and Technical Assessment(CTA),”61st JECFA,2004を参照されたい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、a)平均粒子径10μm未満の水不溶性固体有機過酸化物約40重量%以上と、b)1種以上のC6〜C18脂肪酸のポリグリセリルエステルである界面活性剤とを含む水性分散体を提供する。別の態様では、本発明は、平均粒子径が10μmより大きい有機過酸化物を、1種以上のC6〜C18脂肪酸のポリグリセリルエステルである界面活性剤の存在下、水中で粉砕する工程を含む、このような水性分散体の製造方法を提供する。このような界面活性剤を使用すると、処理中に水性分散体の粘度を低下させるのに役立つ。
【0006】
本発明の水性分散体には、容易にポンプ圧送可能、噴霧可能、及び/又は注入可能な液状であり、それにより、乾燥粒子状の有機過酸化物又は高粘度の分散体の有機過酸化物の取り扱い又は使用に関連する従来の問題が回避されるという利点がある。
【0007】
本発明の別の態様によれば、食品又は食品以外の工業製品などの製品を、製品と前述の水性分散体とを接触させる工程を含む方法で脱色することができる。
【0008】
本発明の別の態様では、前述の水性分散体と少なくとも1種の追加の薬学的に許容される成分とを含む医薬組成物を提供する。
【0009】
本発明のさらに別の態様は、前述の水性分散体と少なくとも1種の追加のパーソナルケア成分とを含むパーソナルケア組成物に関する。
【0010】
本発明はさらに、前述の水性分散体と少なくとも1種の追加の洗浄製品成分とを含む洗浄製品を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の水性分散体は、通常は固体(即ち、室温で固体)の有機過酸化物と、界面活性剤とを含む。
【0012】
好適な有機過酸化の例としては、芳香族ジアシルペルオキシド、例えば、過酸化ベンゾイル、o−メチルベンゾイルペルオキシド、o−メトキシベンゾイルペルオキシド、o−エトキシベンゾイルペルオキシド、o−クロロベンゾイルペルオキシド及び2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド;脂肪族ジアシルペルオキシド、例えば、過酸化デカノイル、過酸化ラウロイル及び過酸化ミリストイル;ケトンペルオキシド、例えば、1−ヒドロキシシクロヘキシルペルオキシド及び1−ヒドロペルオキシシクロヘキシルペルオキシド;アルデヒド過酸化物、例えば、1−ヒドロキシヘプチルペルオキシド;ペルオキシジカーボネート、例えば、ジセチルペルオキシジカーボネート、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、及びアシルペルオキシアルキルカーボネート、例えば、アセチルペルオキシステアリルカーボネート等並びにこれらの混合物がある。室温で通常は固体であり、実質的に水に不溶性の他の有機過酸化物を使用することもできる。出発有機過酸化物は任意の好適な方法で得ることができ、固体(乾燥)形態であっても、又は水との混合物の形態であってもよい。より詳細に後述するように、有機過酸化物は典型的には、始めは比較的大きい粒子径(例えば、10μmより大きい)を有し、その後、界面活性剤と水の存在下、任意の好適な手順でその粒子径を小さくして、本発明の水性分散体を得る。
【0013】
本水性分散体は、有機過酸化物を約35重量%以上含む。本発明の特徴の1つは、本発明により有機過酸化物を約35重量%以上含有する水性分散体の製造が可能となることであり、本分散体は剪断減粘性又は流動性液体であるため、分散体はポンプ圧送可能、噴霧可能又は注入可能である。これまで、約35重量%以上の有機過酸化物を含有するポンプ圧送可能又は噴霧可能な分散体の製造は困難であった。本明細書では、剪断減粘性は、剪断速度が増加するにつれ、粘度が低下することを意味する。従って、分散体を撹拌又は混合すると、本発明の過酸化物分散体の粘度は低下し、それは注入可能又はポンプ圧送可能又は噴霧可能となり、使用し易くなる。本発明の幾つかの実施形態では、水性分散体は十分な流動性があるため、撹拌又は混合されなくても注入、ポンプ圧送又は噴霧することができる。水性分散体中の過酸化物の濃度は、所望に応じて又は必要に応じて調節することができるが、典型的には有機過酸化物の濃度は約30重量%以上且つ約75重量%以下であるか、又は約35〜60重量%、又は約37〜約53重量%以下、又は約37〜約42重量%である。
【0014】
水性分散体を提供するのに十分な水が存在し、水は液体マトリックスとして機能し、その中に有機過酸化物の粒子が分散している。典型的には、水性分散体の含水率は、約25〜70重量%、約40〜65重量%、約42〜約63重量%、又は約53〜約63重量%、又は約58重量%〜約63重量%である。水のpHは、所望に応じて又は必要に応じて、塩基、酸、及び緩衝剤等の1種以上のpH調節剤を添加することにより調節することができる。塩などの可溶性種も存在してもよい。
【0015】
水と有機過酸化物の他に、本発明の組成物は1種以上の界面活性剤も含む。一実施形態では、界面活性剤は薬学的に許容される界面活性剤である。薬学的に許容される界面活性剤は、生物に著しい刺激を引き起こさず、本発明の分散体と配合される投与化合物の生物学的活性及び特性を阻害しない界面活性剤を指す。別の実施形態では、界面活性剤は食品用界面活性剤である。食品用界面活性剤は、食料品中に少なくともある一定のレベル以下存在することが規則により認められている界面活性剤を指す。使用される界面活性剤は、薬学的に許容される界面活性剤と食品用界面活性剤の両方であってもよい。
【0016】
驚くべきことに、1種以上のC6〜C18脂肪酸のポリグリセリルエステル、又は好ましくは1種以上のC6〜C12脂肪酸のポリグリセリルエステル、又は好ましくは1種以上のC8〜C12脂肪酸のポリグリセリルエステルは、有機過酸化物の平均粒子径を10μm未満、且つ好ましくは2μm超に小さくするのに使用される粉砕工程中、自由流動性液体のままである分散体を提供するのに特に有効であることが判明した。即ち、他のタイプの界面活性剤を使用すると粉砕中に非常に濃厚なペーストが形成され、それにより、所望する特定の小さい粒子径を達成するのに必要な時間が著しく増加する。従って、本発明は、処理効率の実質的な改善を提供する。
【0017】
脂肪酸のポリグリセリルエステルはまた、当該技術分野で「脂肪酸のポリグリセリンエステル」及び「ポリグリセリン脂肪酸エステル」とも称される。それらは、重合したグリセリンを食用脂、油又は脂肪酸と反応させることにより生成する混合部分エステルと記載することができる。脂肪酸のポリグリセリルエステルである市販の界面活性剤は、少量のモノグリセリド、ジグリセリド、及びトリグリセリド、遊離グリセリン及びポリグリセリン、遊離脂肪酸及び/又は遊離脂肪酸の塩を含み得る。ポリグリセリル成分の重合度は変わり得る。本発明の様々な実施形態では、界面活性剤のポリグリセリルセグメントは、1分子当たり平均2、3、4、5、6、7、8若しくは9個以上、及び/又は20、19、18、17、16、15、14、13、12若しくは11個以下のグリセリル繰り返し単位を含有する。特定の一実施形態では、1分子当たり平均約10個のグリセリル繰り返し単位が存在する。
【0018】
粒子径が比較的大きい(例えば、平均粒子径が10μmより大きい)有機過酸化物を水中で粉砕して粒子径を小さくする(例えば、10μm未満又は5μm未満の平均粒子径、幾つかの実施形態では好ましくは2μmより大きい平均粒子径にする)工程に、比較的短鎖の脂肪酸でエステル化されたポリグリセリルを界面活性剤として使用すると、このような粉砕工程中に粘度を低下させるのに役立つことが予想外に判明した。得られる水性分散体は剪断減粘性である。従って、ポリグリセリルのエステル化に使用される脂肪酸は、主としてC6〜C18脂肪酸、又はC6〜C12脂肪酸、又はC8〜C12脂肪酸(即ち、1分子当たり6〜18個、6〜12個、又は8〜12個の炭素原子を含有する脂肪酸)であるが、エステル化されたポリグリセリル中にそれより短鎖及び/又は長鎖の脂肪酸も少量存在してもよい。例えば、本発明の様々な実施形態では、界面活性剤中に存在する脂肪酸部分の50以上、60以上、70以上、80以上、90以上、又は実質的に全部がC6〜C18又はC6〜C12脂肪酸部分である。異なるC6〜C18、又はC6〜12、C8〜C12脂肪酸部分の混合物が存在してもよい。脂肪酸部分は直鎖であっても又は分岐鎖であってもよく、飽和であっても又は不飽和であってもよい。典型的には、脂肪酸部分は、一般構造−OC(=O)R(式中、RはC5〜C11アルキル基である)に対応するモノカルボキシレート部分である。一実施形態では、界面活性剤中に存在する脂肪酸部分は主として飽和脂肪酸であるため、界面活性剤のヨウ素価は10未満又は5未満となる。好適なC6〜C18脂肪酸の例としては、ヘキサン酸(カプロン酸としても知られる)、オクタン酸(カプリル酸としても知られる)、デカン酸(カプリン酸としても知られる)及びドデカン酸(ラウリン酸としても知られる)、テトラデカン酸(ミリスチン酸としても知られる)ヘキサデカン酸(パルミチン酸としても知られる)、オクタデカン酸(ステアリン酸としても知られる)及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。一実施形態では、C6〜C12脂肪酸は、オクタン酸とデカン酸との混合物である(場合により他の脂肪酸が少量存在する)。
【0019】
典型的には、ポリグリセリルは脂肪酸部分で部分的にエステル化されており、1つ以上のヒドロキシル基はエステル化されないままになっている。例えば、界面活性剤は1分子当たり平均1〜3個の脂肪酸部分を含有し得る。特定の実施形態では、ポリグリセリル中の使用可能なヒドロキシル基の約25%〜約60%、又は約30%〜約50%が脂肪酸部分でエステル化されている。
【0020】
界面活性剤は、一般構造(I):
(I) R
1−[CH
2−CH(OR
2)−CH
2O]
n−R
3
(式中、nの平均値は約6〜約14であり、R
1、R
2及びR
3はそれぞれ独立してC6〜C18脂肪酸部分又は水素であるが、但し、R
1、R
2又はR
3の少なくとも1つはC6〜C18脂肪酸部分である)に対応し得る。一実施形態では、R
1、R
2又はR
3の少なくとも1つは水素である。構造(I)は直線上に配置されたグリセリル繰り返し単位を示すが、式は分岐鎖のポリグリセリルも包含することが理解される。
【0021】
本発明に有用な例示的な界面活性剤としては、カプリル酸/カプリン酸ポリグリセリル−10、カプリル酸ポリグリセリル−10、カプリン酸ポリグリセリル−10、ラウリン酸ポリグリセリル−10、並びにポリグリセリル成分が1分子当たり平均8、9、11又は12個のグリセリン繰り返し単位を含有する類似物質が挙げられるが、これらに限定されるものではない。本発明の界面活性剤として使用するのに好適なC6〜C18脂肪酸のポリグリセリルエステルとC6〜C12脂肪酸のポリグリセリルエステルは、様々な供給業者、例えば、Lonzaから市販されている。
【0022】
本発明の様々な態様では、界面活性剤はHLB値が少なくとも12、13、又は14、及び/又はHLB値が18、17又は16以下であってもよい。例えば、界面活性剤のHLB値は12〜18又は14〜16であってもよい。
【0023】
本発明の一実施形態では、水性分散体中に存在する唯一のタイプの界面活性剤は、C6〜C18若しくはC6〜C12脂肪酸のポリグリセリルエステル、又はこのような界面活性剤の混合物である。他の実施形態では、このようなポリグリセリルエステルは、存在する界面活性剤の全量の50、60、70、80、90又は95重量%以上を占める。
【0024】
界面活性剤は、水及び有機過酸化物と、有機過酸化物の粉砕中に水性分散体の粘度を低下させるのに有効な量で配合することができる。典型的には、水性分散体中の界面活性剤の濃度は、少なくとも0.1重量%且つ2.0重量%以下である。
【0025】
水性分散体中には、水、界面活性剤及び有機過酸化物に加えて、他の成分が存在してもよい。例えば、生成物を安定で均質な分散体として維持することを助け、有機過酸化物の粒子の沈降を抑制するために、1種以上のゲル化剤を水性分散体に組み込んでもよい。ゲル化剤は、水に入れるとゲルを形成することができる物質である。高分子ゲル化剤、とりわけ特定の多糖類などの天然起源の高分子ゲル化剤は本発明に特に有用である。好適な高分子ゲル化剤としては、アルギネート(アルギン酸の塩)、カラギーナン、ジェランガム、グアーガムペクチン質(例えば、ペクチン酸、ペクチン、ペクテート)、及びキサンタンガムが挙げられるが、これらに限定されるものではない。アクリル酸と、1種以上の追加の単量体、例えば、(メタ)アクリレート及び官能化アクリル単量体との共重合体を含む、アクリル酸系重合体も高分子ゲル化剤として有用である。このような重合体は架橋されてもよい。架橋剤は、1分子当たりフリーラジカル重合性炭素−炭素二重結合を1個しか含有しないアクリル酸などの1種以上の単量体と共重合するポリアルケニルエーテル又はジビニルグリコール等の、フリーラジカル重合に関与することができる1分子当たり2個以上の炭素−炭素二重結合を含有する共単量体であってもよい。このような重合体の例としては、「カルボマー」と称される種類の重合体、及びNoveon,Inc.により「Carbopol」の商標名で販売されているものなどの重合体が挙げられる。
【0026】
ゲル化剤は、食品又は医薬品に含有されるのに好適となるように選択することができる。一実施形態では、ゲル化剤は、架橋によりさらにゲル化することができる。例えば、高分子ゲル化剤は、その主鎖に沿って又は主鎖のペンダント基として、架橋剤と相互作用又は反応することができる1種以上の異なるタイプの官能基を含有してもよい。このような官能基は、例えば、カルボン酸基、スルホン酸基又はこれらの塩(カルボン酸塩、スルホン酸塩)であってもよい。好適な架橋剤は、多価陽イオン(例えば、2価及び3価の陽イオン)を提供する種を含んでもよい。例示的な多価陽イオンとしては、アルミニウム(3+)、バリウム(2+)、カルシウム(2+)、銅(2+)、鉄(2+)、ストロンチウム(2+)、及び亜鉛(2+)が挙げられる。陽イオンは、食品として安全な塩及び/又は医薬として安全な塩の形態で供給されてもよい。架橋剤として有用な、好適な塩の具体例としては、以下のもの(その水和物を含む)及びそれらの混合物:炭酸カルシウム、塩化カルシウム、エデト酸カルシウム二ナトリウム、乳酸カルシウム、硝酸カルシウム、シュウ酸カルシウム、硫酸カルシウム、リン酸二カルシウム、クエン酸三カルシウム、リン酸三カルシウム、並びにそれらに対応するバリウム類似体、銅類似体、ストロンチウム類似体及び亜鉛類似体が挙げられる。高分子ゲル化剤及び架橋剤の量は所望に応じて変わり得る。
【0027】
ゲル化剤は、粒子状有機過酸化物が経時的に水性分散体から沈降する傾向を低減するのに有効な量で利用されてもよい。ゲル化剤はさらに又は代わりに増粘剤又はレオロジー調整剤として機能することができる。
【0028】
様々な実施形態では、水性分散体は0.25重量%以上、又は0.4重量%以上の高分子ゲル化剤を含有する。他の実施形態では、水性分散体は1.5重量%以下、又は0.75重量%以下の高分子ゲル化剤を含有する。例えば、水性分散体は0.25〜1.5重量%の高分子ゲル化剤を含んでもよい。使用する場合、架橋剤の量は、一般的に、高分子ゲル化剤の存在量に応じて変わり得る。例えば、高分子ゲル化剤の濃度が比較的低い場合、架橋剤の濃度も比較的低くてもよい。
【0029】
様々な実施形態では、水性分散体は約0.1重量%以上〜3重量%、又は好ましくは約0.25重量%以上〜1重量%の塩基又は安定剤又は緩衝剤を含有する。好適な塩基/安定剤/緩衝剤の例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸カリウム(一塩基性及び二塩基性塩)、及びクエン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0030】
架橋剤の典型的な濃度は、例えば、約0.01〜0.075重量%であってもよい。一実施形態では、水性分散体の組成は次の通りである:
a)平均粒子径5μm未満の過酸化ベンゾイル37.5〜42重量%;
b)水53.5〜62重量%;
c)高分子ゲル化剤0.25〜1.5重量%;
d)平均8〜12個のグリセリン繰り返し単位を有するポリグリセリン部分を含有するポリグリセリルエステルであって、オクタン酸とデカン酸との混合物で部分的にエステル化されており、HLB値が12〜18のポリグリセリルエステル(例えば、カプリル酸/カプリン酸ポリグリセリル−10)0.1〜2.0重量%;
e)塩/架橋剤0.01〜0.05重量%;及び
f)塩基/安定剤/緩衝剤0.25〜1.0重量%。
【0031】
水性分散体は、任意の方法を使用して製造することができる。例えば、水性分散体は、有機過酸化物の所望の粒子径(例えば、20μm未満、若しくは15μm未満、若しくは10μm未満、若しくは5μm未満、又は3〜5μm、若しくは2〜5μm、若しくは1〜5μm、若しくは3〜10μm、若しくは2〜10μm、若しくは1〜10μm)を達成するまで、水と界面活性剤との存在下で有機過酸化物を粉砕/摩砕することにより製造することができる。粒子径は、ASTM UOP 856−07、レーザー光散乱による粉末の粒度分布(Particle Size Distribution of Powder by Laser Light Scattering)を使用して求めることができ、D50体積パーセントで報告される。
【0032】
粉砕は、ローター/ステーター方式のミル、水平ボールミル、又は、最も好ましくは、垂直バスケットミルなどの当該技術分野で既知の任意の好適な装置で行うことができる。粉砕中の温度は、有機過酸化物が分解しないように制御されなければならない。典型的には、粉砕は40℃以下の温度で行われる。高分子ゲル化剤が水性分散体中に含まれ得る場合、粉砕工程後に、それを水性分散体に添加することが好ましい可能性がある。水性分散体はまた、米国特許第4,039,475号明細書、米国特許第4,092,470号明細書、米国特許第4,734,135号明細書、及び米国特許第4,440,885号明細書に開示されるものなどの当該技術分野で既知の方法を使用して製造することもでき、それらの開示内容全体が本明細書に援用される。当該技術分野で既知の音波処理及び超音波印加/方法も好適である。
【0033】
本発明の水性分散体は、粒子径が小さく、低粘度であるため、分散体をポンプ圧送及び噴霧することが可能である。水性分散体の粘度は、Brookfield粘度計及びASTM D2196−10(Standard Test Methods for Rheological Properties of Non−Newtonian Materials by Rotational(Brookfield Type)Viscometerを用いて測定した場合、好ましくは800〜10,000cps(センチポアズ)、より好ましくは1,000〜5,000cps、さらにより好ましくは1,000〜2,000cpsである。このような分散体は、例えば、空気式又はさらには手動式の噴霧装置を用いて噴霧することができる。
【0034】
本発明の水性分散体は、食品工業及び医薬品工業を含む、有機過酸化物の利用が望ましい様々な最終用途に有用である。例えば、水性分散体は、食品用漂白剤として又は抗ニキビ剤の成分として使用することができる。本発明の水性分散体の使用により、有機過酸化物を乾燥形態で使用することに関連する一般的な問題、例えば、食品などの組成物中に過酸化物を容易に分散させるのが困難である、粉塵が発生する、及び脱色効率が低いといった問題が軽減又は回避される。
【0035】
一実施形態では、製品を本発明の水性分散体と接触させる工程を含む、製品の脱色方法を提供する。このような処理に好適な製品としては、食品及び食品以外の工業製品が挙げられる。食品は、例えば、乳製品(例えば、ホエー、チーズ、牛乳)、食用油、食用脂、多糖類(例えば、小麦粉、デンプン)、飲料(例えば、ビール)及びこれらの組み合わせからなる群から選択することができる。好適な食品以外の工業製品としては、例えば、非食用油脂、紙(パルプ)、及びテキスタイル等が挙げられる。水性分散体と製品との接触は、製品の色を低減するのに有効な量、時間、及び温度で行うことができる。選択される条件は、要因の中でもとりわけ、所望される又は必要な色低減度、及び製品や有機過酸化物の種類に依存することになるが、水性分散体中に存在する固体有機過酸化物の粒子径が小さいため、比較的大きい粒子径を有する従来の有機過酸化物分散体又は乾燥過酸化物含有組成物と比較して、短時間で、及び/又は少量の又は低濃度の有機過酸化物を用いて、及び/又は穏和な条件下で(例えば、低い接触温度で)、所定の色低減量を達成することが可能となる。
【0036】
本明細書に記載の水性分散体と少なくとも1種の追加の薬学的に許容される成分とを含む医薬組成物を本発明により提供することができる。当該技術分野で公知の好適な薬学的に許容される成分のいずれかを使用することができるが、但し、このような成分は有機過酸化物と適合するものとする。例えば、1種以上の医薬有効成分(例えば、抗菌剤、抗微生物剤)及び/又は医薬品添加物、例えば、充填剤、担体、界面活性剤、顔料、安定剤、レオロジー調整剤、及びゲル化剤等を、有機過酸化物の水性分散体と組み合わせて使用することができる。医薬組成物は抗ニキビ剤であってもよく、例えば、ローション状、石鹸状、ゲル状、又はクリーム状であってもよい。有機過酸化物の粒子径が小さいため、及び/又は依然としてポンプ圧送可能又は注入可能な比較的高濃度の分散体を製造できる可能性があるため、本発明の水性分散体を含有する医薬組成物は作用を有するように、又は有機過酸化物を含有する従来の医薬組成物より強力になるように製剤化することができる。
【0037】
本発明の別の実施形態では、本明細書に記載の水性分散体と少なくとも1種の追加のパーソナルケア成分とを含むパーソナルケア組成物を提供する。例えば、担体、充填剤、界面活性剤、研磨剤、レオロジー調整剤、ゲル化剤、香味剤、再石灰化剤、皮膚軟化剤、及び漂白活性化剤等並びにこれらの組み合わせなどの当該技術分野で公知の従来のパーソナルケア成分のいずれかを、有機過酸化物の水性分散体と組み合わせることができる。本発明の水性分散体は、例えば、歯ホワイトニング製品(例えば、歯磨粉、洗口剤)、及びヘアカラー製品又はヘアブリーチ製品の成分として使用することができる。
【0038】
本発明のさらに別の実施形態では、洗浄製品は本明細書に記載の有機過酸化物の水性分散体と、少なくとも1種の追加の洗浄製品成分とを含む。洗浄製品は、例えば、台所用洗剤、洗濯用洗剤、衣類用漂白製品、又は硬質表面洗浄剤(例えば、クレンザー)等であってもよく、特に、この種の製品は液状、クリーム状又はゲル状である。好適な追加の洗浄製品成分としては、前述の製品に有用であることが知られている構成成分のいずれか、例えば、界面活性剤、担体、漂白活性化剤、ビルダー、研磨剤、顔料、レオロジー調整剤、ゲル化剤、香料、付着防止剤、及び酵素等が挙げられる。
【0039】
前述の製品は、本発明の有機過酸化物の水性分散体を、1種以上の薬学的に許容される成分、パーソナルケア成分、又は洗浄成分と組み合わせることにより製造することができる。
【0040】
有機過酸化物を含有する本発明の水性分散体は、重合開始剤及び熱硬化性樹脂用硬化剤等として使用することもできる。
【実施例】
【0041】
実施例1(比較例)
次の目標組成(記載する量は重量%である)を有する水性分散体を製造する:
過酸化ベンゾイル 53.3
水 44.15
ゲル化剤 0.5
モノオレイン酸デカグリセリン 1.5
架橋剤 0.05
塩基 0.5
【0042】
使用する界面活性剤は、Lonzaにより供給される、Polyaldo(登録商標) 10−1−Oモノオレイン酸デカグリセリン(オレイン酸でエステル化されたポリグリセリル)である。使用する過酸化ベンゾイルは、75重量%の過酸化ベンゾイルを含有する過酸化ベンゾイル/水混合物である(従って、製剤の実際の過酸化ベンゾイル含有率は40重量%である)。過酸化ベンゾイルを粉砕して平均粒子径を2μmに小さくする時、材料は非常に濃厚なペーストを形成し、そのため粉砕工程の速度が著しく遅くなる。粉砕を再開できるように、ペーストを「休ませ」、十分軟化させるため、粉砕を定期的に中断しなければならない。このため、過酸化ベンゾイルを粉砕して平均粒子径2μmにするための粉砕時間が非常に長くなる。
【0043】
実施例2(本発明の実施例)
次の目標組成(記載する量は重量%である)を有する水性分散体を製造する:
過酸化ベンゾイル 53.3
水 45.325
実施例1のゲル化剤 0.25
カプリル酸/カプリン酸ポリグリセリル−10 0.6
実施例1の架橋剤 0.025
実施例1の塩基 0.5
【0044】
使用する界面活性剤はPolyaldo 10−1−CCであり、これは、その供給業者であるLonzaにより「デカン酸、デカグリセリンとの混合モノエステル、及びオクタン酸」と記載されている。使用する過酸化ベンゾイルは、75重量%の過酸化ベンゾイルを含有する過酸化ベンゾイル/水混合物である(従って、製剤の実際の過酸化ベンゾイル含有率は40重量%である)。カプリル酸/カプリン酸ポリグリセリル−10界面活性剤では、モノオレイン酸デカグリセリン界面活性剤と比較して、予想外に粉砕効率が改善される。最も顕著な改善は、界面活性剤が3倍少なくて済み、分散体は全粉砕工程中、自由流動性液体のままである(即ち、粉砕を定期的に停止する必要がない)ことである。驚くべきことに、カプリル酸/カプリン酸ポリグリセリル−10界面活性剤を使用すると、実施例2の低い界面活性剤レベルでも、モノオレイン酸デカグリセリンを界面活性剤として使用する場合と比較して2倍速く平均粒子径2.5μmに達することができる。生成物は全工程中ずっと流体のままであるため、温度制御はずっと良好であり、分解の危険性が著しく低減する。界面活性剤のレベルが低くなるため、分散体の安定化に必要なゲル化剤(カラギーナン)が比較的少なくて済む。比較的少ないカラギーナンで済むため、粉砕により得られるペースト中に均質に分散させることがずっと容易になる。
【0045】
以下の実施例で、本発明の水性分散体により提供される利点の幾つかを説明する。
【0046】
実施例3(食品中への有機過酸化物の分散)
ホエー流を乾燥有機過酸化物(有機過酸化物を不活性担体と混和したものなど)で処理する従来のプロセスでは、水に分散させるために、乾燥有機過酸化物の25kgの箱を持ち上げて、高剪断ミキサーに投入する。有機過酸化物が沈降しないように注意しなければならない。槽を連続的に撹拌しなければならない。次いで、得られた混合物をホエー流に計量供給する。
【0047】
予め分散された液状の本発明の水性分散体は、以下のように使用することができる。浸漬管を、本発明の水性分散体を収容する55ガロンのドラム缶に挿入する。次いで、有機過酸化物を含有する水性分散体をホエー流に直接、計量供給する。重い箱を手で持ち上げる必要がなく(それにより、起こり得る人間工学的問題が回避され)、食品流への均一な濃度の有機過酸化物の添加を達成することが容易である。撹拌槽がなくなることによりプロセスが簡単になり、資本経費が削減される。水を添加して分散させる必要がなく;従って、作業者の過失が起こる可能性がなくなる。
【0048】
実施例4(飛散防止)
この実施例では、乾燥有機過酸化物製品で起こる飛散の問題が本発明の水性分散体によりどのようにして解決されるかを説明する。
【0049】
従来のプロセスでは、粒子状の乾燥有機過酸化物(例えば、不活性担体と混和したものなど)の25kgの箱を開けて持ち上げ、撹拌槽に投入する。このプロセスでは、一部の粉末(有機過酸化物を含入する)が空気によって運ばれ、塵雲を形成する。粉塵は作業の周囲の表面に沈降する。粉塵は吸入すると有害で、皮膚刺激性があり、粉塵爆発を引き起こす可能性があるため、作業者は防塵マスクを装備しなければならず、作業時に飛散する粉塵の量を低減するために槽上に換気装置(例えば、集塵装置)が配置される。沈降した粉塵を清掃するために、それを、水を撒いて濡らし、それが清掃をするのに安全になるようにすることができる。次いで、有機過酸化物を含有する濡れた粉塵を、例えば、布やモップを用いて吸収する。廃棄物を廃棄処分するためにドラム缶に回収する。
【0050】
本発明の有機過酸化物の水性分散体を用いる場合、浸漬管を水性分散体のドラム缶に単に挿入するだけでよく、水性分散体を、食品(例えば、ホエー)を含有する流れなどのプロセス流に直接、計量供給することができる。有機過酸化物を手動で取り扱うことがなく、粉塵が発生しない。有機過酸化物は安定に分散された状態を維持するため、ドラム缶の内容物を撹拌する又はかき混ぜる必要がない。ドラム缶間で管を移動させる結果として幾らかの量の水性分散体がこぼれても、このような量は少ない可能性があり、容易に抑えられる。こぼれた量は湿った布で清掃し、袋に入れて廃棄処分することができる。
【0051】
実施例5(こぼれたものの処理)
取り扱い中、25kgの箱の従来の乾燥有機過酸化物がこぼれる。生じる塵雲は、あらゆる装置、設備、天井及び床を含む周囲領域全体を汚染する。これらの表面を全て、水を撒いて濡らすのに約30ガロンの水が必要となる。こぼれた有機過酸化物を含有する濡れた粉末を55ガロンのドラム缶3つに入れる場合、その清掃作業に約5時間かかる。汚染された領域は石鹸と水で清掃する。
【0052】
55ガロンのドラム缶の本発明の水性分散体を誤ってこぼした場合、有機過酸化物を予め濡らす必要はない。SnakeBOOM(Breg Environmentalから入手可能)などの吸収材を用いて、こぼれたものを直接吸収することができる。使用した吸収材は55ガロンのドラム缶3つに入れて廃棄処分する。その清掃に約2時間かかる。こぼした領域は石鹸と水で清掃する。
【0053】
実施例6(脱色効率の向上)
この実施例は、本発明の水性分散体を脱色プロセスに使用する場合に可能となる、効率の向上を実証する。
【0054】
従来のホエー流脱色プロセスでは、固体の不活性担体と混和した一定量の過酸化ベンゾイルを予め水に分散させてホエー流に計量供給し、得られた混合物を加熱撹拌槽に入れ、ホエー流で所望のレベルの色低減を達成するために、それを60℃で45分間保持する。
【0055】
前述の従来の過酸化ベンゾイル/不活性担体混和物分散体中に存在するものより粒子径が小さい過酸化ベンゾイルを含有する本発明の水性分散体を用いて、水性分散体をホエー流に計量供給し、得られる混合物を熱交換器に入れる。前述の比較例と同レベルの色低減を達成するのに要する時間は、60℃で、比較例よりかなり短いと予想される。
【国際調査報告】