特表2016-531202(P2016-531202A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特表2016-531202ダイヤモンド被覆及びこれを堆積させる方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2016-531202(P2016-531202A)
(43)【公表日】2016年10月6日
(54)【発明の名称】ダイヤモンド被覆及びこれを堆積させる方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/27 20060101AFI20160909BHJP
   C30B 29/04 20060101ALI20160909BHJP
   C01B 31/06 20060101ALI20160909BHJP
   G04B 13/02 20060101ALI20160909BHJP
   G04B 15/14 20060101ALI20160909BHJP
   G04B 1/14 20060101ALI20160909BHJP
   G04B 17/06 20060101ALI20160909BHJP
【FI】
   C23C16/27
   C30B29/04 G
   C01B31/06 Z
   G04B13/02 Z
   G04B15/14 Z
   G04B1/14
   G04B17/06 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】有
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-530399(P2016-530399)
(86)(22)【出願日】2014年7月2日
(85)【翻訳文提出日】2016年2月1日
(86)【国際出願番号】EP2014064043
(87)【国際公開番号】WO2015014562
(87)【国際公開日】20150205
(31)【優先権主張番号】13179159.2
(32)【優先日】2013年8月2日
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】506425538
【氏名又は名称】ザ・スウォッチ・グループ・リサーチ・アンド・ディベロップメント・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】メルツァーギ,セバスティアーノ
(72)【発明者】
【氏名】フォール,セドリック
(72)【発明者】
【氏名】デュボワ,フィリップ
【テーマコード(参考)】
4G077
4G146
4K030
【Fターム(参考)】
4G077AA03
4G077AB10
4G077BA03
4G077DB04
4G077DB21
4G077EA03
4G077EA05
4G077EA06
4G077EB04
4G077ED06
4G077HA20
4G077TA04
4G077TC03
4G077TC13
4G077TE01
4G077TK01
4G146AA04
4G146AB07
4G146AC02A
4G146AC02B
4G146AD16
4G146AD28
4G146AD36
4G146AD40
4G146BA12
4G146BA48
4G146BC25
4G146BC33A
4G146BC37A
4G146BC38A
4G146DA03
4K030AA10
4K030AA17
4K030BA28
4K030BB04
4K030BB13
4K030CA02
4K030CA03
4K030CA04
4K030CA05
4K030FA17
4K030JA01
4K030JA05
4K030JA09
4K030JA10
4K030JA11
4K030LA23
(57)【要約】
本発明は、ナノ結晶質ダイヤモンドの第1の層及び微晶質ダイヤモンドの第2の層の少なくとも1つのスタックを有するダイヤモンド被覆に関する。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材を被覆するためのダイヤモンド被覆であって、
前記被覆は、ナノ結晶質ダイヤモンドの第1の層と、及び微晶質の第2の層との少なくとも1つのスタックを有し、
前記基材に最も近いダイヤモンド層は、ナノ結晶質であり、
前記基材から最も遠いダイヤモンド表面は、微晶質であることを特徴とするダイヤモンド被覆。
【請求項2】
前記被覆は、前記スタックの少なくとも2つの連続を有し、
最初のスタックの前記微晶質ダイヤモンド層は、次のスタックの前記ナノ結晶質ダイヤモンド層に接していることを特徴とする請求項1に記載のダイヤモンド被覆。
【請求項3】
前記ナノ結晶質ダイヤモンド層の厚みは、50nm〜1μmであることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載のダイヤモンド被覆。
【請求項4】
前記ナノ結晶質ダイヤモンド層の厚みは、100〜200nmであることを特徴とする請求項3に記載のダイヤモンド被覆。
【請求項5】
前記微晶質ダイヤモンド層の厚みは、100nm〜1μmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のダイヤモンド被覆。
【請求項6】
前記微晶質ダイヤモンド層の厚みは、200〜500nmであることを特徴とする請求項5に記載のダイヤモンド被覆。
【請求項7】
前記ナノ結晶質ダイヤモンド層の表面における粒度は、50nm未満であり、好ましくは、30nm未満であり、さらに好ましくは、10nm未満であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のダイヤモンド被覆。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の被覆で被覆された機能面を有する基材を有するマイクロメカニカル部品であって、
前記機能面は、前記被覆の前記ナノ結晶質ダイヤモンド層と接していることを特徴とするマイクロメカニカル部品。
【請求項9】
前記基材は、ケイ素、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、タンタル、モリブデン、タングステン、ホウ素、これらの物質のホウ化物、炭化物、窒化物及び酸化物、及びセラミックスからなる物質の群から選択される物質で作られていることを特徴とする請求項8に記載のマイクロメカニカル部品。
【請求項10】
当該ダイヤモンド被覆は、歯車、ピニオン、エスケープ車、パレットレバー、パレット石、ばね、メインばね、バランスばね、アーバー及び/又は回転ベアリングを有することを特徴とする請求項8又は9に記載のダイヤモンド被覆。
【請求項11】
反応室において化学気相成長によって基材上にダイヤモンド被覆を堆積させる方法であって、
a)前記基材を準備するステップと、
b)初期核形成ステップと、及び
c)成長ステップとを有し、
この成長ステップは、ナノ結晶質ダイヤモンド層を形成するナノ結晶質ダイヤモンド成長段階と、その後の別の微晶質ダイヤモンド成長段階とを有する2つの連続する段階の少なくとも1つのシーケンスを有し、前記ナノ結晶質ダイヤモンド層を、前記微晶質ダイヤモンド層を成長させるための核形成層として用いることを特徴とする記載の方法。
【請求項12】
前記成長ステップc)は、複数回繰り返されることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記成長ステップc)の前記ナノ結晶質ダイヤモンド層成長段階時に、前記ナノ結晶質ダイヤモンド粒度が50nmを超えないように、好ましくは、30nmを超えないように、さらに好ましくは、10nmを超えないように、堆積パラメーターをセットすることを特徴とする請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記成長ステップc)の前記微晶質ダイヤモンド成長段階の継続時間の間に、200nm〜1μmの厚み、好ましくは、200〜500nmの厚みの微晶質ダイヤモンドが作られることを特徴とする請求項11〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記成長ステップc)の前記ナノ結晶質ダイヤモンド成長段階の継続時間の間に、100〜200nmの厚みのナノ結晶質ダイヤモンドが作られることを特徴とする請求項11〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記基材は、ケイ素、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、タンタル、モリブデン、タングステン、ホウ素、これらの物質のホウ化物、炭化物、窒化物及び酸化物、及びセラミックスからなる物質の群から選択される物質で作られていることを特徴とする請求項11〜15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
高温フィラメントリアクター内で行われることを特徴とする請求項11〜16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記成長ステップc)の間の前記基材の温度は、500〜1000℃であることを特徴とする請求項11〜17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記ナノ結晶質ダイヤモンドの成長段階を、
* 継続時間が1〜5時間であること、
* 直接又は間接的に活性化されるかどうかにかかわらず、CH4/H2/X混合気体を加熱すること(ここで、Xは、ドーパント気体の体積%が0%〜10%であるようなドーパント気体であって、全体積に対するCH4の体積%が3%〜9%である)、
* 1barの圧力における水素流量は、毎分20〜50リットル、好ましくは、毎分40リットルであること、
* 前記反応室内の混合気体の圧力が、2〜6mbar、好ましくは、4mbarであること、かつ、
* 前記基材の温度が500〜1000℃であること、
の条件で行うことを特徴とする請求項11〜18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記微晶質ダイヤモンドの成長段階を、
* 継続時間が1〜5時間であること、
* 直接又は間接的かどうかにかかわらず、CH4/H2/X混合気体を加熱すること(ここで、Xは、ドーパント気体の体積%が0%〜10%であるようなドーパント気体であって、全体積に対するCH4の体積%が0.05%〜1%である)、
* 1barの圧力における水素流量は、毎分30〜90リットル、好ましくは、毎分40リットルであること、
* 前記反応室内の混合気体の圧力が、0.5〜2mbar、好ましくは、1mbarであること、かつ、
* 前記基材の温度が500〜1000℃であること、
の条件で行うことを特徴とする請求項11〜19のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイヤモンド被覆に関し、より詳細には、粗さRaが20nm未満の微晶質ダイヤモンド被覆(MCD:microcrystalline diamond coating)に関する。これは、例えば、マイクロメカニクスの分野におけるトライボロジー(摩擦技術)的な用途に用いられる。
【0002】
また、本発明は、ダイヤモンド被覆などを経済的に堆積させる製造方法に関する。より具体的には、本発明は、この種の製造方法であって、自身に対して動いている他の部品と摩擦接触するように構成するマイクロメカニカル部品に適用されるものに関する。これらのマイクロメカニカル部品は、回転部品のような可動部品であることができ、また同様に、ベアリングのような固定部品であることができる。これらは、例えば(これに制限されない)、機械式計時器用ムーブメントのためのマイクロメカニカル部品であることができる。
【0003】
本発明は、さらに、ダイヤモンド被覆で被覆された機能面を有する基材を有するマイクロメカニカル部品に関する。
【背景技術】
【0004】
従来技術において、微晶質ダイヤモンド被覆で基材を被覆して、基材の耐摩耗性を向上させて、また、摩擦を減らすことが、広く知られている。
【0005】
図1は、従来技術による微晶質層の概略図である。このような単結晶ダイヤモンド被覆を作るためには、被覆される基材2の表面上に核形成層1を作る。この核形成層は、例えば、基材表面上に分布するダイヤモンドのナノ粒子で形成された種物質を有しており、被覆密度が1010粒子/cm2のオーダーである。そして、基材は、高温フィラメント又は化学気相成長法(CVD)のリアクター内に配置される。この中に、典型的にはメタン−水素の混合体である混合気体が注入される。所定の圧力、温度及び気流の条件の下で、ダイヤモンド微結晶3がカラム状の形態で、種物質から所望の被覆の厚みにまで成長する。通常、このような微結晶は、基材からフレア状に延びるようなピラミッド形のカラム状の形を有する。これによって、図1に示すように、層の厚みが大きくなるにしたがって粒度が大きくなる。
【0006】
トライボロジー的な用途において典型的な耐摩耗性を有する場合、厚みが0.5〜10μmのオーダーのダイヤモンド層が用いられる。このような厚みでは、表面の粒度は200nmを超え、粗さ(Ra)が50nmに到達することがある。このことは、多くの用途において満足な摩擦条件を達成することができないことを意味する。
【0007】
この課題を克服するために、当業者は、粗さを減らすために、堆積に対する一又は複数の研磨操作をその後に行う必要がある。典型的には、これらの研磨操作は、機械的に又はプラズマ的な手法で行われる。いずれにしても、これらの研磨操作は、時間を必要とし、困難で、高コストであり、特定の用途、特に、パレット及び/又はエスケープ車の歯のようなマイクロメカニカル的な計時器用部品を被覆する用途では、満足させる結果を与えない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明は、ダイヤモンド被覆、具体的には、粗さRaが20nm未満の微晶質ダイヤモンド被覆を提供することによってこれらの課題を克服することを目的とする。当該被覆は、従来技術の被覆よりも製造が容易であり、また、実装が経済的である。
【0009】
また、本発明は、厚みの全体にわたって機械的性質が改善された微晶質ダイヤモンド被覆を提供することも目的とする。
【0010】
また、本発明は、本発明の被覆の総厚みにかかわらず、可視的な外面で粒度が100nm未満の微晶質ダイヤモンド被覆を提供することも目的とする。
【0011】
また、本発明は、美的外観が改善された外面を有する微晶質ダイヤモンド被覆、特に、反射性を有し、光学分野での用途に適しているものを提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このために、本発明は、ナノ結晶質ダイヤモンドの第1の層及び微晶質ダイヤモンドの第2の層のスタックの少なくとも1つを有するダイヤモンド被覆に関する。
【0013】
これらの特徴の結果、本発明によって、同じ厚みの微晶質ダイヤモンド層よりも表面の粒度及び粗さが小さくような、厚い、すなわち、厚みが1μmよりも厚い微晶質ダイヤモンド被覆を作ることが可能になる。このことは、ダイヤモンドのナノ粒子で作られた伝統的な核形成層よりもはるかに密度が高いナノ結晶質ダイヤモンド層で形成される核形成層から、単結晶微結晶成長が始まることに起因している。
【0014】
好ましい実施形態によると、本発明の被覆は、少なくとも2つのスタックの連続を有する。最初のスタックの微晶質ダイヤモンド層は、次のスタックのナノ結晶質ダイヤモンド層に接している。
【0015】
被覆を形成する各スタック上でピラミッド形のカラム状の成長が再開する。このことは、本発明のスタックの連続が、所与の厚みの単一のスタックの粒度及び粗さを有する大きな被覆の厚みを与えることができることを意味している。
【0016】
好ましいことに、ナノ結晶質層の厚みは、50nm〜1μmであり、微晶質層の厚みは、100nm〜1μmであり、好ましくは、ナノ結晶質層の厚みは、100〜200nmであり、微晶質層の厚みは、200〜500nmである。
【0017】
好ましくは、ナノ結晶質ダイヤモンド層の表面での粒度は、50nm未満であり、より詳細には、30nm未満であり、さらに好ましくは、10nm未満である。
【0018】
好ましくは、本発明の被覆の可視的な外面の粒度は、100nmのオーダーである。
【0019】
本発明は、さらに、機能面を有する基材を有するマイクロメカニカル部品に関し、この機能面は、ナノ結晶質ダイヤモンドの第1の層及び微晶質ダイヤモンドの第2の層の少なくとも1つのスタックを有するダイヤモンド被覆で被覆され、前記基材の機能面は、前記被覆のナノ結晶質ダイヤモンド層と接している。
【0020】
好ましいことに、前記基材は、ケイ素、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、タンタル、モリブデン、タングステン、ホウ素、これらの物質のホウ化物、炭化物、窒化物及び酸化物、及びセラミックスからなる物質の群から選択される物質で作られている。
【0021】
好ましい実施形態によると、本発明のマイクロメカニカル部品は、歯車、ピニオン、エスケープ車、パレットレバー、パレット石、ばね、メインばね、バランスばね、アーバー及び/又は回転ベアリングを有する。
【0022】
本発明は、さらに、反応室において化学気相成長法によって基材上にダイヤモンド被覆を堆積させる方法に関し、
a)前記基材を準備するステップと、
b)初期核形成ステップと、及び
c)前記基材の表面上に前記被覆を成長させる成長ステップとを有し、
この成長ステップは、ナノ結晶質ダイヤモンド層を形成するナノ結晶質ダイヤモンド成長段階と、その後の別の微晶質ダイヤモンド成長段階とを有する2つの連続する段階の少なくとも1つのシーケンスを有し、前記ナノ結晶質ダイヤモンド層を、前記微晶質ダイヤモンド層を成長させるための核形成層として用いる。
【0023】
好ましくは、ステップc)は、複数回繰り返される。
【0024】
好ましいことに、前記成長ステップc)の前記ナノ結晶質ダイヤモンド層成長段階時に、前記ナノ結晶質ダイヤモンド粒度が50nmを超えないように、好ましくは、30nmを超えないように、さらに好ましくは、10nmを超えないように、堆積パラメーターを調整し、前記成長ステップc)の前記微晶質ダイヤモンド成長段階の継続時間は、200nm〜1μmの厚み、好ましくは、200〜500nmの厚みの微晶質ダイヤモンドを得るようにセットされる。
【0025】
好ましくは、前記成長ステップc)の前記ナノ結晶質ダイヤモンド成長段階の継続時間によって、100〜200nmの厚みのナノ結晶質ダイヤモンドを作ることができる。
【0026】
好ましくは、前記基材は、ケイ素、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、タンタル、モリブデン、タングステン、ホウ素、これらの物質のホウ化物、炭化物、窒化物及び酸化物、及びセラミックスからなる物質の群から選択される物質で作られている。
【0027】
好ましいことに、当該方法は、高温フィラメントリアクター内で行われ、前記成長ステップc)の間の前記基材の温度は、500〜1000℃である。
【0028】
好ましい実施形態によれば、前記ナノ結晶質ダイヤモンドの成長段階を、
* 継続時間が1〜5時間であること、
* 直接又は間接的に活性化されるかどうかにかかわらず、CH4/H2/X混合気体を加熱すること(ここで、Xは、ドーパント気体の体積%が0%〜10%であるようなドーパント気体であって、全体積に対するCH4の体積%が3%〜9%である)、
* 1barの圧力における水素流量は、毎分20〜50リットル、好ましくは、毎分40リットルであること、
* 前記反応室内の混合気体の圧力が、2〜6mbar、好ましくは、4mbarであること、かつ、
* 前記基材の温度が500〜1000℃であること、
の条件で行い、
前記微晶質ダイヤモンドの成長段階を、
* 継続時間が1〜5時間であること、
* 直接又は間接的かどうかにかかわらず、CH4/H2/X混合気体を加熱すること(ここで、Xは、ドーパント気体の体積%が0%〜10%であるようなドーパント気体であって、全体積に対するCH4の体積%が0.05%〜1%である)、
* 1barの圧力における水素流量は、毎分30〜90リットル、好ましくは、毎分40リットルであること、
* 前記反応室内の混合気体の圧力が、0.5〜2mbar、好ましくは、1mbarであること、かつ、
* 前記基材の温度が500〜1000℃であること、
の条件で行う。
【0029】
図面を参照しながら例(これに制限されない)としてのみ与えられる本発明の好ましい実施形態についての説明を読むことで、本発明の特徴をより明確に理解することができるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】既に説明しており、従来技術によって微晶質ダイヤモンド被覆で被覆された基材の概略断面図を示している。
図2】本発明に係るスタックを有する微晶質ダイヤモンド被覆で被覆された基材の断面図を示している。
図3】本発明に係る複数のスタックを有する微晶質ダイヤモンド被覆で被覆された基材の断面図を示している。
図4図4a及び4bはそれぞれ、本発明及び従来技術による微晶質ダイヤモンド被覆で被覆された基材の平面図を示している走査電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1を参照すると、伝統的な堆積方法に従って堆積された微晶質ダイヤモンド被覆3で被覆された基材2が示されている。なお、微晶質の成長は、ダイヤモンドのナノ粒子で作られた種物質1によって開始する。これは、基材2の表面上に分布し、基材表面から離れるように構成するピラミッド形のカラム状の幾何学的構成を有する結晶で作られた層をもたらす。層3の厚みが大きくなると、結晶の大きさが大きくなり、被覆の可視的な外面で粒度の成長が続いて起こる。この粒度の増加は、粗さ(ラフネス)の増加につながる。このことは、被覆が用いられることが想定された用途によっては望ましくない。
【0032】
図2を参照すると、本発明の堆積方法によって堆積された微晶質ダイヤモンド被覆5で被覆された基材4が示されている。
【0033】
単一の微晶質ダイヤモンド層3によって形成されている従来技術の被覆と異なり、図2に示すように、当該単結晶ダイヤモンド被覆は、ナノ結晶質ダイヤモンドの第1の層5aと微晶質ダイヤモンドの第2の層5bとのスタックによって形成されている。
【0034】
なお、微晶質ダイヤモンド被覆の表面厚みが同じであれば、従来技術の被覆と比べて、当該被覆の可視的な外面における粒度は小さく、結果的に、粗さは減少する。このことは、微晶質ダイヤモンド層のための核形成がナノ結晶質ダイヤモンド層から作られるということに起因している。このナノ結晶質ダイヤモンド層は、閉じた層であり、これは、被覆される基材の表面において単純に分布するダイヤモンドのナノ粒子で作られた伝統的な種物質よりも密度を高くし成長サイトの数を均質にする。例えば、ナノ結晶質層の厚みが100nmのオーダーで、微晶質層の厚みが200nmのオーダーであれば、得られる粒度の減少は、50%のオーダーであり、粗さRaの減少は30%のオーダーである。このことは、図4a及び4bにおいて明確に示されている。
【0035】
また、ダイヤモンド被覆の厚みが同じであれば、本発明の被覆の微晶質ダイヤモンド層は、従来技術の微晶質ダイヤモンド被覆よりも薄い。なぜなら、本発明のダイヤモンド被覆の層化された性質のためである。このような本発明のダイヤモンド被覆における微晶質ダイヤモンド層の厚みの減少は、被覆の外面の粒度及び粗さRaの減少にも寄与する。
【0036】
図3を参照すると、本発明に係る被覆7の変種の実施形態が堆積された基材6が示されている。この変種において、当該被覆は、図2を参照して説明したもののように、2つのスタック5の連続を有している。
【0037】
図4a及び4bは、微晶質ダイヤモンド被覆で被覆された基材を上から見た走査電子顕微鏡写真を示している。これにおいて、本発明に従ってナノ結晶質層(図4a)から、そして、従来技術に従って基材の表面で分布したダイヤモンドのナノ粒子から、同じ条件で(ともに同じリアクター内で)、最終の微晶質ダイヤモンド層が堆積されたものである。本発明の被覆膜の粒度が従来技術のもの(典型的には、250nmの微晶質ダイヤモンド層の厚みに対して200nm)と比べて50%小さく(典型的には、250nmの微晶質ダイヤモンド層の厚みに対して100nm)、本発明の被覆膜の粗さRaが従来技術のものと比べて30%小さいことがはっきりわかる。
【0038】
以下、被覆されるマイクロメカニカル部品を有するシリコンウェハーで作られた基材上の本発明の微晶質ダイヤモンド被覆の例示的な堆積について説明する。この基材は、壊すことができる固定要素によってウェーハ上で維持されている。
【0039】
被覆5は、高温フィラメント反応室において化学気相成長法(CVD)によって基材4上に堆積される。
【0040】
反応室に配置される前に、基材4は、フッ化水素酸槽で洗われて、既にある酸化層を取り除き、ナノ結晶質ダイヤモンドの第1の層を成長させるために用いるダイヤモンドのナノ粒子への基材4の表面の付着性を向上させる。
【0041】
そして、基材4は、典型的にはイソプロパノールである溶媒と、懸濁状態のダイヤモンドのナノ粒子とを含有する槽に配置される。ナノ粒子の大きさは、典型的には、5〜15nmである。そして、超音波によって槽を撹拌して、ダイヤモンドのナノ粒子を基材の表面に付着させる。
【0042】
そして、基材4を、大気又は不活性気体流(例、窒素流)で乾燥させて、基材準備ステップが終わる。
【0043】
そして、準備した基材を、反応室内のスタンド上に配置し、好ましくは、気体が基材のまわりで自由に流れることを可能にし、その後、典型的には1mbar未満の真空に反応室内を排気させる。
【0044】
そして、ヒーターを介して基材を、直接及び/又はリアクターフィラメントから放射された熱によって間接的に、堆積温度まで加熱する。典型的には、堆積温度は、500〜1000℃であり、例えば、750℃°のオーダーである。
【0045】
堆積温度に到達すると、CH4/H2混合気体が反応室に注入される。全体積に対するCH4の割合は、3%〜9%であり、好ましくは、6%であり、また、1barの圧力における水素流量は、毎分20〜50リットルであり、好ましくは、毎分40リットルである。そして、反応室の混合気体の圧力は、2〜6mbarであり、好ましくは、4mbarである。これらの条件によって、核形成及びダイヤモンドのナノ粒子からのナノ結晶質ダイヤモンドの成長のステップが開始し、初期核形成ステップを構成する。
【0046】
そして、この初期核形成ステップの条件が、典型的には100nmにわたってナノ結晶質ダイヤモンド層が形成されることを可能にするような厚み上にナノ結晶質ダイヤモンド層を成長させるために、維持される。
【0047】
この厚みはもちろん異なっていてもよく、得る必要がある最終被覆硬度に依存して1μm以内であることができる。なお、被覆のナノ結晶質ダイヤモンド層が比較的大きな厚みである場合には本発明の被覆の硬度がより低くなることがわかっている。
【0048】
このナノ結晶質ダイヤモンドの成長は、本発明のダイヤモンド被覆成長ステップの1つの段階を構成する。
【0049】
所望のナノ結晶質ダイヤモンドの厚みに到達すると、微晶質ダイヤモンド層を成長させるために、反応室内の条件を変更する。このために、CH4/H2混合気体の全体積に対するCH4の割合が、0.05%〜1%、好ましくは、0.1%の値に変えられ、1barにおける水素流量が、毎分30〜90リットル、好ましくは、毎分60リットルの値に変えられる。そして、反応室の混合気体の圧力は、0.5〜2mbar、好ましくは、1mbarの値に戻される。これらの堆積条件において、ダイヤモンドが微晶質の形態で成長し、下にあるナノ結晶質層の粒子が将来の微晶質層の種物質を形成する。
【0050】
所望の厚みを達成すると、微晶質ダイヤモンド層成長段階を中断する。小さい表面粒度(典型的には約100nm)及びトライボロジー的な用途で用いるのに適している20nm未満の粗さRaを有する微晶質ダイヤモンド層を得るために、微晶質ダイヤモンド層の厚みは、好ましくは、500nmを超えるべきではない。
【0051】
1μmを超えるダイヤモンド被覆の厚みが望まれるような用途では、ナノ結晶質ダイヤモンド層及び微晶質ダイヤモンド層の堆積の連続的なシーケンスが、所望厚みが達成されるまで繰り返される。
【0052】
当然、本発明は、上記実施形態に制限されず、当業者であれば、添付の請求の範囲によって定められるような本発明の範囲から逸脱せずに、様々な単純な改変及び変種を思い描くことができる。
図1
図2
図3
図4a
図4b
【手続補正書】
【提出日】2016年2月1日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面がダイヤモンド被覆で被覆されている基材を有するマイクロメカニカル部品であって、
前記ダイヤモンド被覆は、表面における粒度が50nm未満であるナノ結晶質ダイヤモンドの第1の層と、及び表面における粒度が100nmのオーダーの微晶質の第2の層との少なくとも1つのスタックを有し、
前記基材に最も近いダイヤモンド層は、ナノ結晶質であり、
前記基材から最も遠いダイヤモンド表面は、微晶質であることを特徴とするマイクロメカニカル部品。
【請求項2】
前記被覆は、前記スタックの少なくとも2つの連続を有し、
最初のスタックの前記微晶質ダイヤモンド層は、次のスタックの前記ナノ結晶質ダイヤモンド層に接していることを特徴とする請求項1に記載のマイクロメカニカル部品。
【請求項3】
前記ナノ結晶質ダイヤモンド層の厚みは、50nm〜1μmであることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載のマイクロメカニカル部品。
【請求項4】
前記ナノ結晶質ダイヤモンド層の厚みは、100〜200nmであることを特徴とする請求項3に記載のマイクロメカニカル部品。
【請求項5】
前記微晶質ダイヤモンド層の厚みは、100nm〜1μmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のマイクロメカニカル部品。
【請求項6】
前記微晶質ダイヤモンド層の厚みは、200〜500nmであることを特徴とする請求項5に記載のマイクロメカニカル部品。
【請求項7】
前記ナノ結晶質ダイヤモンド層の表面における粒度は、30nm未満であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のマイクロメカニカル部品。
【請求項8】
前記ナノ結晶質ダイヤモンド層の表面における粒度は、10nm未満であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のマイクロメカニカル部品。
【請求項9】
前記基材は、ケイ素、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、タンタル、モリブデン、タングステン、ホウ素、これらの物質のホウ化物、炭化物、窒化物及び酸化物、及びセラミックスからなる物質の群から選択される物質で作られていることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のマイクロメカニカル部品。
【請求項10】
当該マイクロメカニカル部品は、歯車、ピニオン、エスケープ車、パレットレバー、パレット石、ばね、メインばね、バランスばね、アーバー及び/又は回転ベアリングを有することを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のマイクロメカニカル部品。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載のマイクロメカニカル部品を製造する方法であって、
a)前記基材を準備するステップと、
b)初期核形成ステップと、及び
c)成長ステップとを有し、
この成長ステップは、ナノ結晶質ダイヤモンド層を形成するナノ結晶質ダイヤモンド成長段階と、その後の別の微晶質ダイヤモンド成長段階とを有する2つの連続する段階の少なくとも1つのシーケンスを有し、前記ナノ結晶質ダイヤモンド層を、前記微晶質ダイヤモンド層を成長させるための核形成層として用いることを特徴とする記載の方法。
【請求項12】
前記成長ステップc)は、複数回繰り返されることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記成長ステップc)の前記ナノ結晶質ダイヤモンド層成長段階時に、前記ナノ結晶質ダイヤモンド粒度が50nmを超えないように、好ましくは、30nmを超えないように、さらに好ましくは、10nmを超えないように、堆積パラメーターをセットすることを特徴とする請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記成長ステップc)の前記微晶質ダイヤモンド成長段階の継続時間の間に、200nm〜1μmの厚み、好ましくは、200〜500nmの厚みの微晶質ダイヤモンドが作られることを特徴とする請求項11〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記成長ステップc)の前記ナノ結晶質ダイヤモンド成長段階の継続時間の間に、100〜200nmの厚みのナノ結晶質ダイヤモンドが作られることを特徴とする請求項11〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記基材は、ケイ素、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、タンタル、モリブデン、タングステン、ホウ素、これらの物質のホウ化物、炭化物、窒化物及び酸化物、及びセラミックスからなる物質の群から選択される物質で作られていることを特徴とする請求項11〜15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
高温フィラメントリアクター内で行われることを特徴とする請求項11〜16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記成長ステップc)の間の前記基材の温度は、500〜1000℃であることを特徴とする請求項11〜17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記ナノ結晶質ダイヤモンドの成長段階を、
* 継続時間が1〜5時間であること、
* 直接又は間接的に活性化されるかどうかにかかわらず、CH4/H2/X混合気体を加熱すること(ここで、Xは、ドーパント気体の体積%が0%〜10%であるようなドーパント気体であって、全体積に対するCH4の体積%が3%〜9%である)、
* 1barの圧力における水素流量は、毎分20〜50リットル、好ましくは、毎分40リットルであること、
* 前記反応室内の混合気体の圧力が、2〜6mbar、好ましくは、4mbarであること、かつ、
* 前記基材の温度が500〜1000℃であること、
の条件で行うことを特徴とする請求項11〜18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記微晶質ダイヤモンドの成長段階を、
* 継続時間が1〜5時間であること、
* 直接又は間接的かどうかにかかわらず、CH4/H2/X混合気体を加熱すること(ここで、Xは、ドーパント気体の体積%が0%〜10%であるようなドーパント気体であって、全体積に対するCH4の体積%が0.05%〜1%である)、
* 1barの圧力における水素流量は、毎分30〜90リットル、好ましくは、毎分40リットルであること、
* 前記反応室内の混合気体の圧力が、0.5〜2mbar、好ましくは、1mbarであること、かつ、
* 前記基材の温度が500〜1000℃であること、
の条件で行うことを特徴とする請求項11〜19のいずれかに記載の方法。
【国際調査報告】