(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2016-531210(P2016-531210A)
(43)【公表日】2016年10月6日
(54)【発明の名称】高吸収性多糖類繊維およびその使用
(51)【国際特許分類】
D01F 2/00 20060101AFI20160909BHJP
D01F 2/06 20060101ALI20160909BHJP
D03D 15/00 20060101ALI20160909BHJP
A61L 15/42 20060101ALI20160909BHJP
A61L 15/28 20060101ALI20160909BHJP
D04B 1/14 20060101ALI20160909BHJP
D04B 21/00 20060101ALI20160909BHJP
【FI】
D01F2/00 Z
D01F2/06 Z
D03D15/00 A
A61L15/42 100
A61L15/28 200
D04B1/14
D04B21/00 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-520187(P2016-520187)
(86)(22)【出願日】2014年6月13日
(85)【翻訳文提出日】2016年2月2日
(86)【国際出願番号】AT2014000125
(87)【国際公開番号】WO2014201484
(87)【国際公開日】20141224
(31)【優先権主張番号】A483-2013
(32)【優先日】2013年6月17日
(33)【優先権主張国】AT
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】500077889
【氏名又は名称】レンツィング アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】ローダー、 トーマス
(72)【発明者】
【氏名】カインドル、 ガルノート
(72)【発明者】
【氏名】レッドリンガー、 シグリッド
(72)【発明者】
【氏名】フィーゴ、 ハインリヒ
(72)【発明者】
【氏名】クロナー、 ガート
【テーマコード(参考)】
3B200
4C081
4L002
4L035
4L048
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200AA03
3B200BA01
3B200BB05
3B200BB14
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3B200DB02
4C081AA02
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4L002AC07
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4L048AA13
4L048AA54
4L048AB01
4L048AB07
4L048AC15
(57)【要約】
本発明は、繊維形成性物質としてセルロースおよびα(1→3)−グルカンの混合物を含む高吸収性多糖類繊維の製造方法、それからなる高吸収性繊維、ならびにそれらの使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キサントゲネート法を用いた高吸収性多糖類繊維の製造方法であって、繊維形成性物質は、セルロースおよびα(1→3)−グルカンの混合物を含む、高吸収性多糖類繊維の製造方法。
【請求項2】
前記繊維形成性物質が、1重量%〜99重量%のα(1→3)−グルカン、好ましくは、5重量%〜45重量%のα(1→3)−グルカンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法が、ビスコース法である請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記α(1→3)−グルカンの少なくとも90%はヘキソース単位であり、前記ヘキソース単位の少なくとも50%がα(1→3)‐グリコシド結合によって結合している、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記繊維がステープルファイバーまたは連続フィラメントである、先行するいずれかの請求項に記載の方法。
【請求項6】
キサントゲネート法を用いて製造された高吸収性多糖類繊維であって、繊維形成性物質として、セルロースおよびα(1→3)−グルカンを含む、高吸収性多糖類繊維。
【請求項7】
前記繊維形成性物質が、1重量%〜99重量%のα(1→3)−グルカン、好ましくは、5重量%〜45重量%のα(1→3)−グルカンを含む、請求項6に記載の繊維。
【請求項8】
前記α(1→3)−グルカンの少なくとも90%はヘキソース単位であり、前記ヘキソース単位の少なくとも50%がα(1→3)‐グリコシド結合によって結合している、請求項6に記載の繊維。
【請求項9】
前記繊維は、90%以上、好ましくは100%を超える保水容量を有する、請求項6に記載の繊維。
【請求項10】
前記繊維がステープルファイバーまたは連続フィラメントである、先行するいずれかの請求項に記載の繊維。
【請求項11】
不織布、衛生製品、とりわけ止血栓、おりものシート、およびおむつ、ならびにその他の吸収性不織布製品および紙の製造のための請求項6に記載の繊維の使用。
【請求項12】
糸、織布、または編地等の繊維製品の製造のための請求項6に記載の繊維の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な高吸収性多糖類繊維、その製造および特性、ならびにその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
不織布は、布繊維から形成された多孔性布帛である。使用された繊維の長さによって、連続繊維製であり、紡糸工程の直後にこの繊維を堆積させることによって得られたスパンレイド不織布と、規定の繊維長を有する繊維製の短繊維不織布とに分けられる。これらは、乾式法、例えば、止血片の製造の場合のようにカードスライバーを圧縮することによって、または、例えば、その後の固化を伴う製紙と同様の湿式法のどちらかによって製造される。ウールや綿等の天然繊維だけでなく、同様にポリプロピレンやポリエステル等の化学繊維もまた使用される。吸収性不織布製品の分野において、圧倒的大部分の場合、セルロース系繊維が、その極度の親水性のために使用される。それらの高吸収容量は、セルロースが水分子と強い水素結合を形成する能力に基づく。加えて、これらの繊維は完全に生分解性であることを特徴とする。綿およびパルプだけでなく、主に人造セルロース繊維、ビスコースやリヨセル繊維等のいわゆる再生セルロース繊維は、清潔さ、柔らかさ、および吸収性に関して綿等の天然セルロース繊維をしのぐということで、さまざまな分野で使用される。本発明では、ビスコース法およびモダール法は、これらの方法において多糖類は常にCS
2と反応してそれぞれのキサントゲネートになるということから、まとめて「キサントゲネート法」と呼ぶことにする。セルロース繊維を製造するためのキサントゲネート法は、数十年もの間当業者に一般に知られている。
【0003】
吸収性不織布製品の例としては、雑巾および布巾、止血片またはおりものシート等の衛生製品、医療用の滅菌布または創傷治療製品、ならびに清浄パッドまたは清涼タオル等の化粧品が挙げられる。場合によっては、これらの製品によって満たされるべき要件は、その使用目的によってかなり異なる。若干の最低限の要件はあるものの、とりわけ繊維伸びと引掛強さについては、問題のない梳綿を可能にするために、これら繊維の機械的特性についての要件は、布部門におけるよりもはるかに低い。吸収性不織布の必須機能は、それぞれの使用条件での液体の吸収、輸送、分配、放出および/または保持に関する。多数の試験方法が、DIN 53814の保水力、浸水時間、水保有容量、要求湿潤性試験に従う吸収容量および吸収速度、厚さ膨潤、ならびに水蒸気吸収を含むこれら特性の評価について定着している。吸収性不織布の分野で使用されるこれら繊維に対する最も重要な要件は、水および/または血液や尿等の一般的な液体に対する高吸収容量である。これを定量化するため、保水容量(water retention capacity)および水保有容量(water holding capacity)が主に用いられる。
【0004】
保水容量は、膨潤値とも呼ばれ、湿らせて既定の遠心分離の後に、保持された水の量を、繊維の乾燥初期重量に対して百分率で示す。これは主に超分子繊維構造および孔特性によって決まる。
【0005】
水保有容量は、水に浸漬して既定の脱水後の繊維の束によって保持された水の量に相当する。これは主に繊維間の毛管空間に保持された水である。極めて重要な影響要因は、繊維の繊度、クリンプ、断面形状、および仕上げである。
【0006】
文献から知られる高吸収性再生セルロース繊維の製造方法は、3つの群に分けることができる。
1.繊維構造の物理的影響
繊維構造を物理的に変性する可能性は、多種多様であり、紡糸溶液および紡糸浴の組成を変えることから、フィラメントの押出しおよび延伸方法に影響を与えることに及ぶ。中空繊維、陥没中空繊維構造、または多肢、いわゆる多葉断面繊維は、特に高吸収容量を示す。中空繊維は、例えば、炭酸ナトリウムをビスコースに添加することによって製造できる。酸性紡糸浴に接触すると、二酸化炭素が放出され、これが繊維を膨張させ、中空構造の形成につながる。US4,129,679(A)は、かかる方法に従って製造された繊維を記載している。この方法の特定の機能は、この膨張した繊維は、それ自身に陥没し、それによって多肢断面を形成するということである。多葉断面形状の繊維を製造するのに用いることができる別の選択肢としては、紡糸口金の開口が3以上の肢部分を有し、好ましくは肢部分の長さと幅の比が2:1以上の開口の紡糸口金からセルロース溶液を押し出すことが挙げられる。かかる方法は、WO8901062(A1)に記載されている。高度のクリンプを有する繊維もまた、目立った親水性を有する。例えば、代替クリンプ促進改良剤を用いて、および/または、EP0049710(A1)に記載されているように、ある特定の状況ではゼロに減らされうる低改良剤濃度で、変更されたビスコース組成と紡糸条件とを組み合わせることによって、ビスコース繊維のクリンプに影響を与えることが可能である。
【0007】
これらの断面改良繊維の欠点は、さらなる加工段階(例えば、梳綿)でのそれらの著しく劣化した加工性である。
【0008】
2.吸収性物質、具体的にはポリマーの組み込みによる影響
カルボキシメチルセルロース(US4289824(A))、アルギン酸もしくはその塩類(AT402828(B))、グアーガム(WO9855673(A1))、またはアクリル酸とメタクリル酸のコポリマー等の親水性ポリマーのセルロース溶液への添加で、再生セルロース繊維の吸水容量を大きく増加させることができる。DE2550345(A1)は、マトリクスに分散したN‐ビニルアミドポリマーに起因する高流体保有容量を有する再生セルロースマトリクスの混合繊維を記載している。US3844287(A)は、均一に分配されたポリアクリル酸塩を含む再生セルロースの主剤からの、混合繊維の高吸収性材料の製造を提案している。どちらの場合も、繊維の製造は、ビスコース工程の後に行われる。
【0009】
3.再生セルロース繊維または、使用セルロースの化学的変性
これらの方法の目的は、再生セルロース繊維または繊維形成性セルロースに直接行われる化学反応によって吸収容量を増加させることである。例としては、セルロースのアクリル酸とのグラフト共重合または、ビスコース繊維の低置換範囲でのカルボキシメチル化が挙げられる。かかる方法は、例えば、JPH0351366に開示されている。
【0010】
応用技術的展望から、保水容量は、水保有容量とは違って実際の条件を良く再現することから、吸収性不織布の分野で最も重要な要因である。例えば、止血片または創傷包帯が体液を吸収するのは十分ではない。これを有用にするには、吸収された流体が、外力にさらされた場合であっても繊維材料内に保持されることが必須である。
【0011】
上述した物理的な繊維の変性は、実質的に表面特性、例えば、繊維の断面形状およびクリンプに関し、それ故、吸水容量の増加を引き起こすのみである。保水容量は影響を受けないか、またはほとんど影響を受けない。
【0012】
化学的変性をすることおよび/または吸収性物質の組み込みによって、繊維の保水容量は改良可能であるが、非セルロース基の導入は、問題がないわけではない。例えば、生分解性は、もはや完全には確保されない可能性がある。これは、例えば、アクリル酸やメタクリル酸のコポリマーが組み込まれた場合である。別の欠点は、許容範囲の抽出物または灰分の最大量を超える危険性である。例えば、カルボン酸ナトリウム基を含むセルロース繊維の灰化は、常に若干量の炭酸ナトリウムの生成につながる。荷電基の組み込みは、必須のpH許容値の範囲の順守をより困難にする。カルボン酸ナトリウム基を含む不織布は、例えば、普通は明らかにアルカリ性の範囲のpH値を有する。
【0013】
US7,000,000は、α(1→3)‐グリコシド結合によって結合したヘキソースの繰り返し単位から実質的になる多糖類の溶液を紡糸することによって得られた繊維を記載している。これらの多糖類は、サッカロースの水溶液をStreptococcus salivariusから単離したグルコシルトランスフェラーゼ(GtfJ)と接触させることによって製造することが可能である(Simpson et al.,Microbiology,vol.41,pp 1451−1460(1995))。この文脈では、「実質的に」とは、この多糖鎖内では、他の結合形態も存在し得る偶発的な欠陥位置が存在していてもよいことを意味する。本発明では、これらの多糖類を「α(1→3)−グルカン」と呼ぶことにする。
【0014】
US7,000,000によれば、このα(1→3)−グルカンは、誘導体化、好ましくはアセチル化されるものである。好ましくは、その溶媒は有機酸、有機ハロゲン化合物、フッ素化アルコール、またはかかる成分の混合物である。これら溶媒は、高価であり、かつ再生には手間がかかる。US7,000,000は、このようにして製造された繊維の吸収性についてのいかなる情報も開示していない。
【0015】
要約すると、セルロースまたは再生セルロース繊維の化学的変性に関する方法およびセルロースマトリクスへの高吸収性物質の組み込みは、受け入れられていないと述べることができる。この理由は多種多様で、例えば、追加の処理段階に必要とされる余分な手間は高過ぎ、使用される高吸収性物質は高価過ぎるか、もしくは生理学的および/または毒物学的な観点から拒絶されるに違いなく、所望の吸収性が達成されず、または、例えば所要の高度の充填の場合に、特定の機械的な最低限の規格が達成されないという事実にある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
かかる従来技術を考慮して、本目的は、したがって、いかなる断面または化学的変性も必要とせず、生理学的および/または毒物学的観点から完全に無害でありながら、顕著に増加した保水容量をなお示す繊維およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上述した目的は、繊維形成性物質がセルロースとα(1→3)−グルカンの混合物を含むキサントゲネート法を用いた高吸収性多糖類繊維の製造方法によって解決される。本発明によれば、これは、α(1→3)−グルカンを含む水酸化ナトリウム溶液がセルロースキサントゲネート溶液に添加されるという点において達成される。このグルカン溶液の添加は、この工程のさまざまな位置で行われる。本発明では、かかる多糖類繊維は、セルロースに加えて、別の繊維形成性多糖類、すなわち前記α(1→3)−グルカンをも含んではいるが、これもまたビスコースまたはモダール繊維と呼ぶことにする。
【0018】
本発明では、「繊維」という用語は、規定の繊維長を備えるステープルファイバーおよび連続フィラメントの両方を含むものとする。後述する本発明の原則はすべて、概してステープルファイバーおよび連続フィラメントの両方に適用する。
【0019】
本発明の繊維の単繊維の繊度は、0.1〜10dtexであり得る。好ましくは、0.5〜6.5dtexであり、より好ましくは、0.9〜6.0dtexである。ステープルファイバーの場合、その繊維長は、通常0.5〜120mmであり、好ましくは20〜70mmであり、より好ましくは35〜60mmである。連続フィラメントの場合、このフィラメント糸の中の個々のフィラメントの本数は、50〜10,000であり、好ましくは、50〜3000である。
【0020】
前記α(1→3)−グルカンは、サッカロースの水溶液をStreptococcus salivariusから単離したグルコシルトランスフェラーゼ(GtfJ)と接触させることによって製造することが可能である(Simpson et al.,Microbiology,vol.41,pp 1451−1460(1995)、US7,000,000)。
【0021】
本発明の方法の好ましい実施形態において、α(1→3)−グルカンの少なくとも90%はヘキソース単位であり、これらヘキソース単位の少なくとも50%はα(1→3)‐グリコシド結合によって結合している。
【0022】
一般に、本発明の繊維の製造方法は、以下の主な段階からなる。
1a.アルカリセルロースの製造、およびそのキサントゲネート化。
1b.アルカリ性グルカン溶液の製造。
2.前記2種の溶液の混合。
3.前記α(1→3)−グルカン含有紡糸溶液を、紡糸口金から硫酸紡糸浴に押し出し、この繊維を延伸し、後処理する。
【0023】
前記繊維形成性物質の前記紡糸溶液での総濃度は、4重量%〜15重量%、好ましくは、5.5重量%〜12重量%でよい。
【0024】
本発明の方法において、繊維形成性物質は1重量%〜99重量%のα(1→3)−グルカンを含むことができる。より好ましくは、α(1→3)−グルカンの含量は5重量%〜45重量%である。5%未満であると、添加したα(1→3)−グルカンの効果は、本発明の繊維の用途の典型的な種類には低過ぎ、45%を超えると、紡糸溶液におけるCS
2の競争反応が激しくなり過ぎ、この溶液の紡糸性が顕著に低下する。しかしながら、特定の条件下および/または本発明の繊維の特定の種類の用途については、どちらの限度も超えてよく、本発明の範囲は、明確に、α(1→3)−グルカン含量がそれぞれ、1重量%〜5重量%および45重量%〜99重量%の繊維もまた含む。
【0025】
好ましくは、前記繊維形成性物質の残余の部分は、実質的にセルロースからなる。この文脈では、「実質的に」とは、少量の、主にセルロース系原料由来の、一般的には前記パルプ由来の他の物質が存在し得ることを意味する。かかる他の物質としては、主にヘミセルロースおよびその他の糖類、リグニン残渣等が挙げられる。これらは、市販のビスコースおよびモダール繊維にも含まれる。
【0026】
しかしながら、本発明の範囲は、上述した構成成分に加えて、不織布および繊維工業で一般に知られるようなその他の多糖類や機能性添加剤をも含む繊維もまた明確に含むものとする。
【0027】
本発明の方法に使用されるα(1→3)−グルカンの重量平均DP
wとして表される重合度は、200〜2000でよく、500〜1000の値が好ましい。
【0028】
キサントゲネート法を用いて製造され、セルロースおよびα(1→3)−グルカンを含む高吸収性多糖類繊維もまた、本発明の主題である。本発明の繊維の繊維形成性物質は、1重量%〜99重量%のα(1→3)−グルカン、好ましくは、5重量%〜45重量%のα(1→3)−グルカンを含む。
【0029】
好ましい実施形態において、本発明の多糖類繊維のα(1→3)−グルカンの少なくとも90%はヘキソース単位であり、これらヘキソース単位の少なくとも50%はα(1→3)‐グリコシド結合によって結合している。
【0030】
驚くべきことに、本発明の繊維は、少なくとも90%の並外れて高い保水容量を有することが発見された。組成と製造方法によって、この保水容量はさらに100%を超える。
【0031】
様々な乾式および湿式紙、不織布、衛生製品、例えば止血栓、おりものシート、およびおむつ等、ならびにその他の不織布、特に吸収性不織布製品の製造のためだけでなく、糸、織布、または編地等の繊維製品の製造のための本発明の繊維の使用もまた、本発明の主題である。
【0032】
以下、実施例を参照しながら本発明を説明する。しかしながら、本発明はこれら実施例に明確に限定されないだけでなく、同一の発明の概念に基づく他の実施形態のすべてをも含む。
【0033】
実施例
α(1→3)−グルカン類の重合度は、GPCによってDMAc/LiCl中で測定した。次に、特定された重合度は常に重量平均重合度(DP
w)である。
【0034】
(実施例1)
セルロース29.8重量%、NaOH14.9重量%、およびイオウ8重量%を含むビスコースキサントゲネート水溶液を溶解装置で、NaOH4.5重量%を含む第一の溶解液と反応させ、その後、α(1→3)−グルカン9重量%およびNaOH4.5重量%を含む第二の溶解液、最後に水と反応させた。このようにして得られたビスコースは、繊維形成性材料8.90重量%、NaOH5.20重量%、およびイオウ2.4重量%(繊維形成性材料としてセルロース100%に対して)を含み、熟成指数が14ホッテンロートおよび落球式粘度が80秒(Zellcheming Leaflet III/5/Eに準拠して測定)であった。α(1→3)−グルカン10%および25%のビスコース溶液を製造した。これらのグルカン量は、繊維形成性物質中のα(1→3)−グルカンの割合に関連していた。これらのビスコース類は、それぞれ、イオウ2.2重量%(繊維形成性材料としてグルカン10%およびセルロース90%)ならびにイオウ1.8重量%(繊維形成性材料としてグルカン25%およびセルロース75%)を含む。紡糸口金を用いて、この溶液を、硫酸100g/l、硫酸ナトリウム330g/l、および硫酸亜鉛15g/lを含む再生浴に押し出した。この紡糸口金は直径50μmの穿孔を1053有していた。含窒素助剤0.5重量%をこのビスコース紡糸溶液に添加した。適切な繊維の強度を出すために、おおよそ75%の延伸を第二浴(92℃、15g/lのH
2SO
4)で行った。この延伸速度は50m/分である。
【0035】
参考例1では、実施例1からのビスコースは、グルカン/NaOH溶液を添加しない他は実施例1と同一の条件で繊維に紡糸した。
得られた繊維の特性を表1に示す。
【0036】
(実施例2)
セルロース8.70重量%、NaOH5.20重量%、およびイオウ2.3重量%を含み、熟成指数が15ホッテンロートおよび落球式粘度が75秒(Zellcheming Leaflet III/5/Eに準拠して測定)のビスコースを、紡糸口金を用いて、硫酸100g/l、硫酸ナトリウム310g/l、および硫酸亜鉛15g/lを含む再生浴に押し出した。この紡糸口金は直径50μmの穿孔を1053有していた。含窒素助剤0.5重量%をこのビスコース紡糸溶液に添加した。適切な繊維の強度を出すために、おおよそ75%の延伸を第二浴(92℃、15g/lのH
2SO
4)で行った。この延伸速度は50m/分である。
【0037】
グルカンを10、15、および30%有する繊維が製造できるように、容積型ポンプを用いて、適切な量のα(1→3)−グルカン/NaOH水溶液(NaOH5重量%、α(1→3)−グルカン8重量%)を紡糸口金から上流で前記ビスコース溶液に添加した。これらのグルカン量は、これら多糖類繊維の全繊維形成性物質におけるα(1→3)−グルカンの画分と関連していた。
【0038】
参考例2では、実施例2からのビスコースは、グルカン/NaOH溶液を添加しない他は実施例2と同一の条件で繊維に紡糸した。
得られた繊維の特性を表1に示す。
【0039】
【表1】
【国際調査報告】