(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2016-531229(P2016-531229A)
(43)【公表日】2016年10月6日
(54)【発明の名称】電気的に活性化される材料を用いたディスペンサポンプ
(51)【国際特許分類】
F04B 43/02 20060101AFI20160909BHJP
F04B 43/04 20060101ALI20160909BHJP
【FI】
F04B43/02 H
F04B43/02 N
F04B43/04 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-515451(P2016-515451)
(86)(22)【出願日】2014年9月18日
(85)【翻訳文提出日】2016年4月27日
(86)【国際出願番号】US2014056257
(87)【国際公開番号】WO2015042235
(87)【国際公開日】20150326
(31)【優先権主張番号】61/880,270
(32)【優先日】2013年9月20日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】506190555
【氏名又は名称】ゴジョ・インダストリーズ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100081695
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 正明
(74)【代理人】
【識別番号】100103414
【弁理士】
【氏名又は名称】戸村 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】シャバレラ,ニック,エルマノ
(72)【発明者】
【氏名】ウェゲリン,ジャクソン,ウィリアム
【テーマコード(参考)】
3H077
【Fターム(参考)】
3H077AA08
3H077BB03
3H077CC02
3H077CC09
3H077DD06
3H077EE01
3H077EE16
3H077EE36
3H077EE37
3H077FF07
3H077FF22
3H077FF36
(57)【要約】
可撓性膜を含むディスペンサから流体を分注するための装置及び技術が提供され,前記可撓性膜は,前記可撓性膜に印加される電圧に応じて異なる複数のレベルの柔軟性を有する。いくつかの実施形態によると,ばね等の付勢装置が可撓性膜の第1の側部に配置され,可撓性膜に圧力をかけるよう構成される。第1の電圧が可撓性膜に印加されると,可撓性膜は,ばねが可撓性膜を曲げて,可撓性膜を,ばねに関して可撓性膜の反対側に配置されたポンプ室内へと押出することができるようにするために十分に柔軟になる。流体はポンプ室内に貯蔵され,可撓性膜が曲がることによりポンプ室は圧縮される。このようなポンプ室の圧縮は,ポンプ室に,ポンプ出口を通して流体を分注させる。
【代表図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスペンサの流体リザーバから流体を分注するためのポンプであって:
ポンプ入口であって,前記ポンプ入口を通して前記流体リザーバから前記流体が収容されるポンプ入口と;
前記入口を通して収容された前記流体を貯蔵するためのポンプ室と;
前記ポンプ室を選択的に圧縮するための可撓性膜であって,前記可撓性膜は,第1の電圧が前記可撓性膜に印加された場合に第1の柔軟性を有し,また第2の電圧が前記可撓性膜に印加された場合に第2の柔軟性を有する,可撓性膜と;
前記可撓性膜に圧力をかけるための付勢装置であって,前記圧力は,前記可撓性膜が前記第1の柔軟性を有する場合に前記可撓性膜を曲げて,前記ポンプ室を圧縮する,付勢装置と;及び
ポンプ出口であって,前記ポンプ室が圧縮された場合に前記流体が前記ポンプ出口を通して分注される,ポンプ出口と
を備えるポンプ。
【請求項2】
前記可撓性膜が前記第2の柔軟性を有する場合,前記圧力は,前記可撓性膜を曲げるには不十分である請求項1記載のポンプ。
【請求項3】
前記可撓性膜は,前記ポンプ室の壁を形成する請求項2記載のポンプ。
【請求項4】
前記可撓性膜は:
ポリマー材料と;
前記ポリマー材料の第1の面に配置される第1の導電性材料と;及び
前記ポリマー材料の第2の面に配置される第2の導電性材料であって,前記第2の面は,前記第1の面と直径方向に反対側である,第2の導電性材料と
を備える請求項1記載のポンプ。
【請求項5】
前記ポリマー材料は絶縁性材料を含む請求項4記載のポンプ。
【請求項6】
前記第1の電圧又は前記第2の電圧のうちの少なくとも一方を印加するための直流(DC)電圧源を備え,前記第1の導電性材料は,前記DC電圧源の第1の端子に接続され,前記第2の導電性材料は,前記DC電圧源の第2の端子に接続され,前記第2の端子は,前記第1の端子の極性とは逆の極性を有する請求項4記載のポンプ。
【請求項7】
前記第2の電圧は,0ボルトの電圧に相当する請求項1記載のポンプ。
【請求項8】
前記付勢装置は,前記可撓性膜に関して前記ポンプ室の直径方向反対側に配置される請求項1記載のポンプ。
【請求項9】
前記可撓性膜に第2の圧力をかけるための第2の付勢装置を備え,前記第2の付勢装置は,前記可撓性膜に関して前記ポンプ入口の直径方向反対側に配置され,前記第2の圧力は,前記可撓性膜が前記第1の柔軟性を有する場合に,前記可撓性膜を曲げて,前記ポンプ入口を封止する請求項1記載のポンプ。
【請求項10】
前記可撓性膜に第3の圧力をかけるための第3の付勢装置を備え,前記第3の付勢装置は,前記可撓性膜に関して前記ポンプ出口の直径方向反対側に配置され,前記第3の圧力は,前記可撓性膜が前記第1の柔軟性を有する場合に,前記可撓性膜を曲げて,前記ポンプ出口を開放する請求項9記載のポンプ。
【請求項11】
前記可撓性膜に第2の圧力をかけるための第2の付勢装置を備え,前記第2の付勢装置は,前記可撓性膜に関して前記ポンプ出口の直径方向反対側に配置され,前記第2の圧力は,前記可撓性膜が前記第1の柔軟性を有する場合に,前記可撓性膜を曲げて,前記ポンプ出口を開放する請求項1記載のポンプ。
【請求項12】
前記ポンプ室と前記ポンプ出口との間の流体経路に沿って隆起したリムが配置され,前記隆起したリムは,前記可撓性膜が前記第2の柔軟性を有している間,前記可撓性膜に接触して,前記ポンプ出口を封止する請求項1記載のポンプ。
【請求項13】
前記可撓性膜は,前記第1の電圧の印加前には第1の形状を有し,前記可撓性膜は,前記第2の電圧が印加されるのに応答して前記第1の形状に復帰するよう構成される請求項1記載のポンプ。
【請求項14】
前記付勢装置は,ばねを備える請求項1記載のポンプ。
【請求項15】
ディスペンサの流体リザーバから流体を分注するためのポンプであって:
ポンプ入口であって,前記ポンプ入口を通して前記流体リザーバから前記流体が収容される,ポンプ入口と;
前記ポンプ入口を通して収容された前記流体を貯蔵するための,ポンプ室と;
可撓性膜であって,前記可撓性膜は,前記可撓性膜に第1の電圧が印加された場合に前記ポンプ室を圧縮し,かつ第2の電圧が前記可撓性膜に印加された場合に前記ポンプ室を減圧する,可撓性膜と;及び
ポンプ出口であって,前記ポンプ室が圧縮された場合に前記流体が前記ポンプ出口を通して分注される,ポンプ出口と
を備えるポンプ。
【請求項16】
前記可撓性膜は,前記第1の電圧が印加された場合に第1の柔軟性を有し,また前記第2の電圧が印加された場合に第2の柔軟性を有する請求項15記載のポンプ。
【請求項17】
前記可撓性膜は:
絶縁性材料と;
前記絶縁性材料の第1の面に配置される,第1の導電性材料と;及び
前記絶縁性材料の第2の面に配置される,第2の導電性材料であって,前記第2の面は,前記第1の面と直径方向に反対側である,第2の導電性材料と
を備える請求項15記載のポンプ。
【請求項18】
前記可撓性膜に圧力をかけるための付勢装置を備え,前記付勢装置は,前記可撓性膜に関して前記ポンプ入口の直径方向反対側に配置され,前記圧力は,前記第1の圧力がかけられた場合に前記可撓性膜を曲げて,前記ポンプ入口を封止する請求項15記載のポンプ。
【請求項19】
前記可撓性膜に圧力をかけるための付勢装置を備え,前記付勢装置は,前記可撓性膜に関して前記ポンプ室の直径方向反対側に配置され,前記圧力は,前記第1の圧力がかけられた場合に前記可撓性膜を曲げて,前記ポンプ室を圧縮する請求項15記載のポンプ。
【請求項20】
ディスペンサから流体を分注するための方法であって:
可撓性膜に圧力をかけるステップと;
前記流体を分注するための信号の受信に応答して,前記可撓性膜に前記圧力をかけながら,第1の電圧を前記可撓性膜に印加するステップであって,前記第1の電圧は,前記可撓性膜上の圧力が,前記可撓性膜を,前記流体を貯蔵するポンプ室内へと曲げることにより,前記ポンプ室によって前記流体が圧縮され,ポンプ出口を通して押出されるレベルまで,前記可撓性膜の柔軟性を上昇させるステップと;及び
前記可撓性膜に前記圧力をかけながら,第2の電圧を前記可撓性膜に印加するステップであって,前記第2の電圧は,前記可撓性膜上の圧力が,前記可撓性膜を曲げず,前記ポンプ室が減圧されるレベルまで,前記可撓性膜の柔軟性を低下させるステップと
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
関連出願
本出願は,2013年9月20日出願の米国仮特許出願第61/880270号,名称「電気的に活性化される材料を用いたディスペンサポンプ(DISPENSER PUMP USING ELECTRICALLY ACTIVATED MATERIAL)」に対する優先権を主張し,前記出願は参照により本出願に援用される。
【技術分野】
【0002】
本発明は,流体製品ディスペンサにおいて使用されるポンピング機構に関し,より具体的には,ノズルを通して流体製品を分注するために流体室を加圧するよう,電気的に活性化されるポリマーを使用するポンピング機構に関する。
【背景技術】
【0003】
当該技術分野において,壁又はスタンドに設置されるディスペンサからハンドケア製品を分注することが知られている。このようなディスペンサは典型的には,ハンドソープ,ローション又は殺菌剤を収容する交換可能なリザーバを有する。いくつかのモデルは,ヒトの手がディスペンサの下に置かれた時にこれを感知することによって自動的に製品を分注する。センサはコントローラに信号を送信し,コントローラはポンプを動作させ,ポンプはノズルを通してヒトの手へと流体を押出する。
【0004】
ディスペンサは従来,通行人に対して従来のアクセスしやすさを提供する建物の入口,浴室又は軽食堂に配置され得る。しかしながら,全ての領域が,ディスペンサへの電力の供給に好適であるわけではない。したがってディスペンサは典型的には,オンボード電源,典型的にはバッテリを備える。
【0005】
しかしながら,バッテリの消耗が著しい場合がある。ポンプはモータによって作動され,このモータは,本質的にかなりの動力損失を有する歯車又は他の形態の動力伝達装置を含む。センサ及び制御回路は,オンボード電源に更なる消耗を与える。したがって,自動ディスペンサの頻繁な保守が必要となり,バッテリの定期的な交換によりコストがかかる。
【0006】
更に,伝統的なポンプアクチュエータは比較的大型であり,利用できる空間が限定されている領域における自動ディスペンサの使用は不可能となる。
【0007】
したがって,非接触型ディスペンサの機能的便益を維持しながら,電力消費プロファイルが低く,かつフットプリントが小さい自動ディスペンサを提供することは有利である。本発明は上述の問題を取り除くものである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態による流体製品ディスペンサの斜視図;
【
図2】前記流体製品ディスペンサの,ディスペンサの内部構成部品を示す断面図;
【
図3】本発明の実施形態による,電気的にエネルギー供給されていない状態における流体製品ポンプの概略断面図;
【
図4】本発明の実施形態による,電気的にエネルギー供給されている状態における流体製品ポンプの概略断面図;及び
【
図5】本発明の実施形態による,流体製品ポンプの別の実施形態の概略断面図。
【0009】
詳細な説明
図1を参照すると,本発明の実施形態による製品ディスペンサが図示されており,全体として10で示されている。ディスペンサ10は製品を計量して分注し,前記製品は石鹸,ローション又は殺菌剤等のハンドケア製品を含んでよいが,他のタイプの流体製品を製品ディスペンサから分注してもよい。
【0010】
図1及び
図2を参照すると,ディスペンサ10は基部14及びカバー18を含み,カバー18は,閉鎖している場合にディスペンサ10の構成部品を保持する内部領域を画定する。基部14は概して剛性であってよく,ポンプ及び流体リザーバ30並びに後述される他の構成部品を支持するために好適な構造的構成を有する。ディスペンサ10は,図示されていない壁,スタンド又は他の構造体に設置でき,したがって基部14は,1つ又は複数の固定具を収納できる設置用孔又はブラケットを含む。基部14は更に,カバー18が枢動可能に取り付けられるヒンジ22を含んでよい。ラッチ26はカバー18を所定の位置に固定し,手動でこれを解放することによって,ディスペンサ10の内部領域へのアクセスを可能とする。ある例示的な様式では,カバー18は概して凹状であってよく,またサービス要員が流体リザーバ30を視認できるように位置決めされた窓11を含んでよい。
【0011】
ここでも
図2を参照すると,流体リザーバ30は,ハンドケア製品を収容するよう構成される。リザーバ30は,再使用可能なコンテナであってよく,必要に応じて製品を詰め替えてもよい。あるいはリザーバ30は使い捨てであってよく,空になった場合に交換できる。リザーバ30へのアクセスは,カバー18のラッチを解除して基部14から離れるように枢動させ,ディスペンサ10の内部を露出させることによって得られる。一実施形態では,リザーバ30は,基部14から延在する棚及び/又は壁によって所定の位置に保持してよい。一般にリザーバ30は,衛生面での理由により,取り外されて別のリザーバ30に交換される。このような交換可能なリザーバを,これ以降詰め替えユニット34と呼ぶ。
【0012】
詰め替えユニット34は,バッグと呼ばれる柔軟なシート状材料から構成してよく,バッグの側部又は端部に取り付けられた出口を含んでよい。更に他の詰め替えユニット34は,正立又は倒立設置構成における使用のために,概して剛性又は半剛性のプラスチックから構成してよい。
図2では,詰め替えユニット34はディスペンサハウジング内に完全に格納されている。しかしながら,本発明の実施形態の意図する包含範囲から逸脱することなく,詰め替えユニット34に関する他の構造的構成及び設置構成も選択してよい。
【0013】
図2及び
図3を参照すると,ポンプ入口42及びポンプ出口46を有するディスペンサポンプ40の例示的実施形態が示されている。ポンプ出口46は,ディスペンサ10から流体製品を分注するためのノズル47に接続される。ポンプ入口42は,詰め替えユニット34に流体接続される。より具体的には,浪費を最小化するために,ポンプ入口42は詰め替えユニット34の端部に接続される。一実施形態では,ポンプ40は使い捨てであり,組立体として詰め替えユニット34に取り付けられた状態で提供される。この様式において,詰め替えユニット34を交換する際,ディスペンサ10の全ての湿った構成部品が廃棄される。
【0014】
ここでも
図3を参照すると,ポンプ40は,全体として50で示されるポンプ室50を含む。現在説明している実施形態では,ポンプ室50は,概ね凹状の領域52を有する。入口42は凹状領域52の上側から延在し,出口46は凹状領域52の遠位の底部端から延在するが,確実な判断によって,ポンプ室50に対する入口及び出口の他の位置も選択してよい。これにより,重力が,詰め替えユニット34から凹状領域52内へと製品を引き出す補助となる。以下に詳細に説明するアクチュエータは,ポンプ室50に加圧することによって,出口46及びノズル47を通して製品を放出する。本発明の実施形態の意図する包含範囲から逸脱することなく,ポンプ室50の他の構成を用いてよいことを理解されたい。
【0015】
ポンプ室50内の流体は,ポンプ室50を構成する1つ又は複数の壁を変位させることによって加圧できる。好ましい実施形態では,ポンプ室50は,1つ又は複数の剛性壁部53から,かつ可撓性膜70によって構成してよい。圧力は,可撓性膜70に隣接して位置する付勢装置54から凹状領域52内で生成される。一実施形態では,付勢装置54は板ばね又はコイルばね55を備える。しかしながら,他のタイプのばね又は付勢装置を使用してよい。付勢装置54からの力は,ポンプ室50内の流体の容積を制限する膜70を押圧することによって,内側の製品を加圧する。
【0016】
引き続き
図3を参照すると,膜70は,可撓性ポリマー材料から構成される。この可撓性材料は復元力を有し,事前に決定された剛性,即ち屈曲に対する耐性を有する。一実施形態では,膜70はシリコーンから,あるいはポリウレタンから作製される。しかしながら,ポンプ40の動作のために必要な場合は,剛性及び復元力に関する必要な特性を有する他のタイプの材料を使用してよいものと解釈するべきである。したがって,膜70を変位させた,即ち装置54によって膜70に付勢した後,膜70は,その元の形状を保持しようとし,力が除去された場合に付勢されていない構成に復帰しようとする。付勢装置54のばね定数は,本明細書に記載されるディスペンサ10の動作に好適な様式で,膜70の剛性に適合させることができることを理解されたい。
【0017】
膜70は更に,膜70の対向する面70’,70”それぞれに塗布される導電性材料を含む。一実施形態では,この導電性材料は,比較的薄い層として膜の表面に付着する炭素粒子を含む。膜の各面70’,70”,より具体的には各導電層72は,それぞれDC電圧電源の反対の極性の端子に接続される。ある閾値の大きさの電圧を膜70に印加すると,膜70の剛性は,共に押圧する導電層72の引力によって変化する。したがって実際には,膜70は一時的にその剛性をある程度失ってより柔軟になり,したがって付勢装置54の力による変位を受ける(
図4を参照)。その結果,電位が除去されると,基材の復元力は膜70をその元の形状に復元させ,したがって付勢力を克服する(
図3を参照)。電圧源にエネルギー供給し,エネルギー供給を切断することによって,ポンプ室50の圧縮及び減圧が得られ,これによりディスペンサ10からの製品のポンピングが促進されることが,容易に理解できる。
【0018】
膜70のポリマー材料が導電層72間の絶縁体として機能することは,当業者は理解するであろう。上述のように,印加される電圧の分極効果は膜70の特性を変化させる。膜70に印加される電圧は,2kV〜4kVの範囲内であってよい。しかしながら,ポンプ40を作動させる際の使用に好適となるように,いずれの範囲の電位を印加してよい。電圧の印加によって絶縁性ポリマーの剛性が変化する現象は当該技術分野において公知であるため,ここではこれ以上の説明は提供しない。
【0019】
製品がノズル47を通って適切に流れることを保証するために,1つ又は複数の弁がポンプ40に組み込まれる。一実施形態では,全体として80で示される第1の弁は,入口42と流体連通する。更に,全体として81で示される第2の弁は,出口46に流体接続される。適切な遷移において起動された場合,弁80,81は,詰め替えユニット34への製品の逆流を防止し,ディスペンサが起動される前にノズルを通して製品が漏れることを防止する。
【0020】
再び
図3,
図4を参照すると,膜70を弁80,81として使用して,上述のように入口42及び出口46を選択的に開閉できる。本発明の一実施形態では,追加の付勢装置57は,膜70に隣接して,かつ入口42の近傍に位置決めしてよい。上述のようにして導電層72に電圧を印加すると,膜70は,導電層72が被覆する全領域に亘って剛性を失う。したがって,膜70は更に柔軟性となり,これにより付勢装置57は,入口42と封止接触するように膜70を押圧でき,これによって流体が詰め替えユニット34へと逆流するのを防止できる。
【0021】
付勢装置54及び57は同時に膜70を変位させることに留意されたい。したがって,ある代替実施形態では,図示されていない単一の付勢装置を,ポンプ室50から流体を変位させるため及び入口42を封止するための両方に使用できると考えられる。よって付勢装置は特別に構成してよく,入口42をポンプ室に近接して位置決めすることによって,単一の付勢要素による両方の動作を容易にすることができる。
【0022】
ここでも
図3及び
図4を参照すると,別の別個の付勢装置59が含まれていてよく,前記付勢装置59を,出口46の位置において膜70を係合するよう位置決めしてよい。入口42及び出口46は,ポンプ40の動作中の正反対の時点において流体に関して封止されなければならないことに留意されたい。したがって,付勢装置59は,ポンプ室50内の流体が加圧された場合に,出口46から離れるように膜70を移動させるよう位置決めされる。即ち,エネルギー供給されていない状態において,膜70は出口46を被覆することによって,流体が出口46を通って流れるのを防止するよう構成される。
【0023】
ここで
図3及び
図5を参照すると,エネルギー供給されていない状態における出口46を通した漏れに対する保護を得るために,隆起したリム49を出口46の開口の周囲に位置決めしてよい。更に,本明細書ではリブ51と呼ばれる突出部を,隆起したリム49の部分とは反対側の1つ又は複数の剛性壁部53から延在するように形成してよい。これにより,膜70の剛性及び復元力は,圧着動作によって膜70を出口46に接触させる(
図5参照)。
【0024】
加圧された流体は膜70に作用して,出口46との係合が解除されるように膜70を移動させることが理解されるだろう。したがって
図5は,膜70に出口46との係合を解除させるための専用の付勢装置を含まない本発明の実施形態を示す。したがって膜70の剛性及び/又は厚さは,ポンプ室50内の圧力が上昇するにつれて,膜70の剛性を克服する閾値に到達し,流体がノズル47を通して流れることができるようになるように選択できる。本実施形態はリム49及びリブ51の両方を示しているが,これらのうちの一方を除外した変形例が考えられる。
【0025】
本発明の1つ又は複数の実施形態における本発明の原理を図示及び説明したが,これらの原理から逸脱することなく,本発明の構成及び細部を修正できることは,当業者には容易に明らかとなるはずである。
【国際調査報告】