特表2016-531547(P2016-531547A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2016-531547(P2016-531547A)
(43)【公表日】2016年10月13日
(54)【発明の名称】食品コーティング
(51)【国際特許分類】
   A23L 5/00 20160101AFI20160916BHJP
   A23L 33/15 20160101ALI20160916BHJP
   A23L 33/10 20160101ALI20160916BHJP
【FI】
   A23L5/00 F
   A23L33/15
   A23L33/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2016-515433(P2016-515433)
(86)(22)【出願日】2014年9月15日
(85)【翻訳文提出日】2016年5月10日
(86)【国際出願番号】NL2014050631
(87)【国際公開番号】WO2015037997
(87)【国際公開日】20150319
(31)【優先権主張番号】1040389
(32)【優先日】2013年9月16日
(33)【優先権主張国】NL
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】516079268
【氏名又は名称】ルースロ ビー.ブイ.
(71)【出願人】
【識別番号】516079279
【氏名又は名称】フォーティファイド フード コーティングス ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】ブルインズ、ディーデリック ヨハン クリストフォー
(72)【発明者】
【氏名】スティーヴンズ、ポール
【テーマコード(参考)】
4B018
4B035
【Fターム(参考)】
4B018LB03
4B018LB06
4B018MD04
4B018MD20
4B018MD23
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4B035LC05
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4B035LG15
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4B035LG42
4B035LK06
4B035LK11
4B035LK14
4B035LP26
(57)【要約】
ゲル化可能な親水コロイドと可塑剤とを含む液状ゲル化組成物を食品の前記外面上に塗布するステップと、前記液状ゲル化組成物を食品の外面と接触したままゲル化させて、食品の前記外面を直接覆うゲル層を形成するステップを備える食品の外面にゲル層を設ける方法である。特に、摂取前に加熱される予め調製した食事を被覆するための新規な食品コーティング組成物も記載する。ゲル化組成物は、栄養素、香味剤または医薬などの追加の物質を含んでもよい。前記組成物で被覆した食品および食料品を被覆する方法も記載する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品の外面にゲル層を設ける方法であって、
1)ゲル化可能な親水コロイドと、可塑剤とを含む液状ゲル化組成物を前記食品の前記外面上に塗布するステップと、
2)前記液状ゲル化組成物を前記食品の前記外面と接触したままゲル化させて、前記食品の前記外面を直接覆うゲル層を形成するステップと
を備えることを特徴とする方法。
【請求項2】
ステップ1)が、前記液状ゲル化組成物を前記食品上にかけるか、スプレーするか、または噴霧することを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記液状ゲル化組成物を前記食品の外面に均一に塗布することで、前記食品上に連続したゲル層を設けることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
ステップ2)で形成したゲル層が前記食品の前記外面に付着することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記ゲル化組成物を、厚さ0.4mm〜1.6mm、好ましくは0.6〜1.2mmで塗布することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記ゲル層の質量が、前記ゲル層を含む食品の合計質量の1〜30%、好ましくは2〜20%、より好ましくは3〜15%、最も好ましくは4〜10%であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記ゲル化組成物が常温でゲル化することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記ゲル化組成物が40℃超、好ましくは50℃超、より好ましくは60℃超の温度で液化することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記ゲル化組成物が90℃未満、好ましくは80℃未満、より好ましくは70℃未満の温度で液化することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記ゲル化可能な親水コロイドがゼラチン、ペクチン、寒天、カラギナンおよびアラビアゴムからなる群より選択されることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記ゲル化可能な親水コロイドがゼラチンを含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ゼラチンのブルーム値が100〜300であることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ゲル化組成物が、その合計質量に対して、前記ゲル化可能な親水コロイドを少なくとも10w/w%含むことを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記ゲル化組成物が、その合計質量に対して、前記ゲル化可能な親水コロイドを30w/w%以下含むことを特徴とする請求項1乃至13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記ゲル化組成物が、その乾燥質量に対して、前記ゲル化可能な親水コロイドを少なくとも25w/w%、好ましくは少なくとも30w/w%、より好ましくは少なくとも35?w/w%、最も好ましくは少なくとも40w/w%含むことを特徴とする請求項1乃至14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記可塑剤がポリオールを含むことを特徴とする請求項1乃至15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記可塑剤が、グリセロールまたはソルビトールまたはそれらの組み合わせを含むことを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記可塑剤がグリセロールを含むことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記ゲル化組成物が、その合計質量に対して、前記可塑剤を少なくとも2w/w%含むことを特徴とする請求項1乃至18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記ゲル化組成物が、その合計質量に対して、前記可塑剤を15w/w%以下含むことを特徴とする請求項1乃至19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記ゲル化組成物が凝固点降下剤を含むことを特徴とする請求項1乃至20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記ゲル化組成物が、その合計質量に対して、前記凝固点降下剤を少なくとも1w/w%、好ましくは少なくとも2w/w%含むことを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記ゲル化組成物が、その合計質量に対して、前記凝固点降下剤を10w/w%以下、好ましくは7w/w%以下含むことを特徴とする請求項21または22に記載の方法。
【請求項24】
前記凝固点降下剤が、単糖または二糖またはそれらの2つ以上の組み合わせを含むことを特徴とする請求項21乃至23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記単糖または前記二糖が、グルコース、フルクトース、スクロース、マルトースおよびラクトースまたはそれらの2つ以上の組み合わせからなる群より選択されることを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記凝固点降下剤がフルクトースを含むことを特徴とする請求項21乃至25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記ゲル化組成物が、分子量が最大20kDa、好ましくは最大5kDaであるペプチドを含むことを特徴とする請求項1乃至26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記ペプチドが加水分解ゼラチンに由来することを特徴とする請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記ペプチドの分子量が100Da〜5000Da、好ましくは500Da〜5000Daであることを特徴とする請求項27または28に記載の方法。
【請求項30】
前記ゲル化組成物が、その合計質量に対して、前記ペプチド、好ましくは加水分解ゼラチンを少なくとも5w/w%含むことを特徴とする請求項27乃至28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記ゲル化組成物が、その合計質量に対して、前記ペプチド、好ましくは加水分解ゼラチンを15w/w%含むことを特徴とする請求項27乃至30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記ゲル化組成物が消泡剤を含むことを特徴とする請求項1乃至31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記消泡剤が、親水性C8−C10モノ−、ジ−、トリグリセリドを含むことを特徴とする請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記ゲル化組成物が前記消泡剤を10〜1000ppm含むことを特徴とする請求項32または33に記載の方法。
【請求項35】
前記ゲル化組成物が、栄養素、ビタミン、カルシウム、微量元素などの栄養補助食品;呈味改善剤などの香味剤;付臭剤;着色剤;医薬品からなる群より選択される1つ以上の追加の物質を含むことを特徴とする請求項1乃至34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
さらに、第2のゲル層を前記食品上に設けることを備えることを特徴とする請求項1乃至35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
第2のゲル層の組成が第1のゲル層のものと異なることを特徴とする請求項36に記載の方法。
【請求項38】
第2のゲル層が、1つ以上の追加の物質の存在および/または組成において第1のゲル層とは異なることを特徴とする請求項37に記載の方法。
【請求項39】
ゲル化組成物であって、その合計質量に対して、
ゲル化可能な親水コロイドを12〜25w/w%、好ましくは16〜20w/w%と、
分子量が最大20kDaであるペプチドを5〜15w/w%、好ましくは7.5〜12.5w/w%と、
可塑剤を2〜12w/w%、好ましくは4〜8w/w%と、
凝固点降下剤を1〜10w/w%、好ましくは3〜7w/w%と、
任意に消泡剤を10〜1000ppm、好ましくは20〜40ppmと、
任意に追加の物質を0.5〜15w/w%、好ましくは2〜4w/w%と
を含むことを特徴とするゲル化組成物。
【請求項40】
前記ゲル化可能な親水コロイドがゼラチンを含むことを特徴とする請求項39に記載のゲル化組成物。
【請求項41】
前記ゼラチンのブルーム値が100〜300であることを特徴とする請求項40に記載のゲル化組成物。
【請求項42】
前記可塑剤がポリオールを含むことを特徴とする請求項39乃至41のいずれか1項に記載のゲル化組成物。
【請求項43】
前記可塑剤が、グリセロールまたはソルビトールまたはそれらの組み合わせを含むことを特徴とする請求項42に記載のゲル化組成物。
【請求項44】
前記可塑剤がグリセロールを含むことを特徴とする請求項43に記載のゲル化組成物。
【請求項45】
前記ペプチドの分子量が最大5kDa、好ましくは100Da〜5000Da、より好ましくは500Da〜5000Daであることを特徴とする請求項39乃至44のいずれか1項に記載のゲル化組成物。
【請求項46】
前記ペプチドが加水分解ゼラチンに由来することを特徴とする請求項45に記載のゲル化組成物。
【請求項47】
前記凝固点降下剤が、単糖または二糖またはそれらの2つ以上の組み合わせを含むことを特徴とする請求項39乃至46のいずれか1項に記載のゲル化組成物。
【請求項48】
前記単糖または前記二糖が、グルコース、フルクトース、スクロース、マルトースおよびラクトースまたはそれらの2つ以上の組み合わせからなる群より選択されることを特徴とする請求項47に記載のゲル化組成物。
【請求項49】
前記凝固点降下剤はフルクトースを含むことを特徴とする請求項48に記載のゲル化組成物。
【請求項50】
栄養素、ビタミン、カルシウム、微量元素、栄養補給食品、酸化防止剤などの栄養補助食品;呈味改善剤などの香味剤;付臭剤;着色剤;および医薬品からなる群より選択される追加の物質を1つ以上含むことを特徴とする請求項39乃至49のいずれか1項に記載のゲル化組成物。
【請求項51】
食品であって、その外面に付着した請求項39乃至50のいずれか1項に記載のゲル化組成物のゲル層を含むことを特徴とする食品。
【請求項52】
予め調理した食事であることを特徴とする請求項51に記載の食品。
【請求項53】
凍結条件下で、冷蔵庫条件の下でまたは常温で摂取まで貯蔵され、摂取のために少なくとも50℃に加熱されるものであることを特徴とする請求項51または52に記載の食品。
【請求項54】
前記ゲル層が連続したゲル層であることを特徴とする請求項51乃至53のいずれか1項に記載の食品。
【請求項55】
前記ゲル層の厚さが0.4mm〜1.6mm、好ましくは0.6〜1.2mmであることを特徴とする請求項51乃至54のいずれか1項に記載の食品。
【請求項56】
前記ゲル化組成物が常温でゲル化することを特徴とする請求項51乃至55のいずれか1項に記載の食品。
【請求項57】
前記ゲル化組成物が40℃超、好ましくは50℃超、より好ましくは60℃超の温度で液化することを特徴とする請求項51乃至56のいずれか1項に記載の食品。
【請求項58】
前記ゲル化組成物が90℃未満、好ましくは80℃未満、より好ましくは70℃未満の温度で液化することを特徴とする請求項51乃至57のいずれか1項に記載の食品。
【請求項59】
被覆した食料品の調製方法であって、請求項1乃至50のいずれか1項に記載のゲル化組成物を食料品上に塗布するステップを備えることを特徴とする方法。
【請求項60】
請求項39乃至50のいずれか1項に記載の液状ゲル化組成物の調製方法であって、
a)水性溶媒を用意するステップと、
b)前記水性溶媒に可塑剤を添加するステップと、
c)前記水性溶媒にゲル化可能な親水コロイドを添加するステップと、
d)均一混合物となるように混合するステップと、
e)ステップd)の混合物を膨張させるステップと、
f)ステップe)の膨張した組成物を融解させて、液状ゲル化組成物を得るステップと
を備えることを特徴とする方法。
【請求項61】
請求項39乃至50のいずれか1項に記載のゲル化組成物に含まれることを特徴とする医薬または栄養補助食品。
【請求項62】
患者または患者群の治療適合性を改善する方法であって、請求項51乃至58のいずれか1項に記載の食料品を前記患者または前記患者群に提供するステップを備え、ゲル化組成物が前記治療のための1つ以上の医薬品を含むことを特徴とする方法。
【請求項63】
前記患者または前記患者群に提供する前に前記食料品を加熱することを特徴とする請求項62に記載の方法。
【請求項64】
栄養素、ビタミン、カルシウム、微量元素、栄養補給食品、酸化防止剤などの栄養補助食品、および/または医薬品の1つ以上を対象に投与する方法であって、請求項51乃至58のいずれか1項に記載の食料品を対象に摂取させるステップを備え、ゲル化組成物が前記栄養補助食品および/または前記医薬品の1つ以上を含むことを特徴とする方法。
【請求項65】
前記食料品を前記対象に摂取させる前に加熱することを特徴とする請求項64に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品、特に予め調理した食事の外面にゲル層を設ける方法、ゲル化組成物、前記組成物で被覆した食品、前記組成物の調製方法、前記組成物中に含まれる医薬または栄養補助食品、および治療適合性を改善する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
消費者、特に、食品自体を調理しないものにとって、食料品は新鮮なままであり、食品の調理とその摂取との間の貯蔵中、魅力的な外観を有することが重要である。当分野において、食品は、通常、Dow Chemical社のサランラップ(登録商標)などの薄いプラスチックホイルで覆われている。しかしながら、そのようなホイルは、食料品とホイルとの間に空間を許し、凍結した際に食品を新鮮に保つのに適さない。
【0003】
米国特許公開第2004/0166205号公報から、4%ゼラチン溶液をブルーベリーへ軽く噴霧し、これらのベリーを冷却し、ゼラチン溶液をゲル化させて、これらのベリーに「新鮮な」外観を与えることが既知である。しかしながら、被覆したベリーは、被覆された直後に「新鮮な」外観を有するに過ぎない。コーティングは弱く、水分を失い、ベリーを劣化させずに常温または冷蔵庫の温度(4〜10℃)で保つことができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これまで、調理後直ちに摂取されない食品に最適である新鮮な外観および保管性をもたらすことができなかった。これは、特に、早期に調理された食事、または使用前に冷蔵保存もしくは凍結され、摂取前に加熱を必要とする食事を消費者に提供するキッチンおよび食堂にとって問題である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、食品の外面にゲル層を設ける方法であって、
1)ゲル化可能な親水コロイドと、可塑剤とを含む液状ゲル化組成物を食品の前記外面上に塗布するステップと、
2)前記液状ゲル化組成物を食品の外面と接触したままゲル化させて、食品の前記外面を直接覆うゲル層を形成するステップ
とを備える方法を提供するという点で上記課題を解決する。
【発明を実施するための形態】
【0006】
「ゲル化可能な親水コロイド」という用語は、好ましくは適した溶液または分散体などの水性溶媒である前記液状ゲル化組成物中の親水コロイドが、ゲルを特に室温で形成できることを意味する。当業者であれば、使用できる適したゲル化可能な親水コロイドをよく知っている。
【0007】
可塑剤を組み込むことによってゲル層が、被覆した食料品の貯蔵中に多すぎる水分をなくし、ゲル層および食料品を大きく乾燥させることなく、魅力的で卓越した外観のゼリーのコーティングが維持されることを見出した。結果として、向上した保管性に加えて、より魅力的な外観が貯蔵中に得られる。当業者であれば、使用できる適した可塑剤をよく知っている。
【0008】
前記組成物の成分は、消費者が前記組成物で被覆した食品を摂取することを可能にするために、好ましくは食品用のものである。
【0009】
「直接覆う」という用語は、例えば国際公開第2007/149276号公報に記載されている食用フィルムまたは上記のサランラップなどの既存のフィルムに食品が包まれている場合のようにゲル層と食品との間に空間を残すことなく、ゲル層が食品の外面と直接接触していることを意味する。
【0010】
当然ながら、軟質ゼラチンカプセルおよびその調製物などのゼラチンカプセルが、食品上へ液体溶液を噴霧することによって調製されるものではないことから、本発明に包含されることを意図しない。まず、軟質ゼラチンカプセルの内容物は、食品として解することができない。本明細書において、食品は、そのたった1つの摂取によって、食べたという感覚、特に食事を食べたという感覚といった満腹感に達するために摂取されることを目的とした製品であることを意図する。医薬または食品添加剤はそれ自体、満腹感を与えることを目的とせず、健康を改善することを目的とすることから、本明細書において意図されるような食品ではない。第2に、軟質ゲル化カプセルの調製方法では、ゲル化溶液を初めにゲル化して、ゲル化したゼラチンシートを形成し、該シートは、例えば医薬を充填した後に共に融解するカプセル壁のための材料として使用されることから、軟質ゼラチンカプセルは、液状ゲル化組成物を食品の外面に塗布することによって製造されるものではない。
【0011】
本発明の組成物は液体であることから、コーティング組成物の塗布により、食料品の最適な接触および密閉を可能にするために、揚水性である。この目的に向けて、ステップ1)は、好ましくは、液状ゲル化組成物を食品上にかける、スプレーするまたは噴霧することを含む。
【0012】
好ましくは、液状ゲル化組成物を食品の外面に均一に塗布して、食品上に連続したゲル層を設け、食品に最適な外観および保護を与える。
【0013】
好ましい実施形態において、ステップ2)で形成したゲル層が、食品の前記外面に付着する。これは、食品の外面へのゲル化組成物の塗布およびそのゲル化後、ゲル層が食品に、それから離れることなく張り付くことを意味する。かさねて、食品の最適な保護が得られる。
【0014】
ゲル化組成物は、好ましくは、厚さ0.4mm〜1.6mm、より好ましくは0.6〜1.2mmまたは0.7〜1.2mmで塗布され、連続して塗布することができる。生じたコーティングまたはゲル層は、味および食感に影響を与えることなく、同じ厚さを有するであろう。
【0015】
ゲル層の質量は、好ましくはゲル層を含む食品の合計質量の1〜30%、好ましくは2〜20%、より好ましくは3〜15%、最も好ましくは4〜10%である。本発明の方法に従うゲル層で被覆される食事の質量は、通常は約100〜約600g、好ましくは約350〜450gであり、摂取後に満腹感をもたらす通常の食事の通常の質量である。そのような食事のために、好ましくは約20〜40gのゲル化組成物が前記食事を覆うために使用される。前記食事は、好ましくは、実質的に平らな板の上に、または長方形もしくはボウルの形状の蓋のない容器にあり、好ましくは、最適な外観を保ちながら最適な保管性および貯蔵品質を食品にもたらすために、平板上または容器内の実質的に完全な食品を空気から密封するように、ゲル化組成物を食品に塗布する。この目的に向けて、ゲル化組成物を、好ましくは、平板または容器上にも、少なくとも食品の縁に塗布して、平板または容器表面上で始まり、完全食品を覆い、密封する連続したゲル層を設ける。しかしながら、ゲル化組成物を食事の1つ以上の部分にのみ塗布することもでき、したがって、必要とされるゲル化組成物をより少なくする。
【0016】
ゲル化組成物は、好ましくは、ゲル層を好都合に調製できるように常温でゲル化する。食品が使用まで凍結することを意図したものである場合、常温でゲル化しないが、例えば冷蔵庫温度でゲル化するゲル化組成物を選択することができる。後者の場合、ゲル層は、食料品を冷凍機から取り出し、常温で保つ際に、自発的に液化し、魅力的な食品をもたらすだろう。当然ながら、常温でゲル化する組成物は、より低い温度でもゲル化する。当業者であれば、ゲル化組成物の想定されたゲル化温度に到達するのに適した親水コロイドを選択することが大変十分に可能である。
【0017】
ゲル化組成物は、好ましくは40℃超、好ましくは50℃超、より好ましくは60℃超の温度で液化する。常温で、ゲル層は無傷のままであり、最適な保護をもたらす。食事を想定された摂取温度、例えば60℃または70℃に加熱することにより、食品のゲルコートが融解、すなわち液化し、食事に最適な外観を与える一方で、食事は貯蔵後も依然として新鮮である。同様の理由で、ゲル化組成物は、好ましくは90℃未満、好ましくは80℃未満、より好ましくは70℃未満の温度で液化する。ゲル化組成物は、好ましくは、組成物が常温でゲル化する一方で、得られたゲル層が好ましくは食品を摂取のために加熱する温度以下で融解するように選択される。そのような場合、コーティングは摂取する温度で液体であり、それ故に、当該温度では、コーティングは消失し、ゼリーの食感が一切なく、最適な外観、食感および味感を消費者にもたらす。
【0018】
ゲル化可能な親水コロイドは、好ましくは、ゼラチン、ペクチン、寒天、カラギナンおよびアラビアゴムからなる群より選択される。当業者であれば、適した別の親水コロイドをよく知っている。特に、ゼラチンが、本発明の組成物に非常に適した親水コロイドとして示された。ゼラチンは、コラーゲンから得られる水溶性タンパク質の混合物である。ゼラチンは、例えばコラーゲンの部分的な加水分解によって得られ、該コラーゲンは、皮膚、腱、靭帯、骨などの酸またはアルカリの条件での水抽出によって、または酵素加水分解によって得られる。酸処理によって得られたゼラチンはタイプAゼラチンと称される一方で、タイプBゼラチンはアルカリ処理により得られる。ゼラチンは、食品、医薬品および化粧品においてゲル化剤として慣用されている。
【0019】
また、ゲル化可能な親水コロイドは食品に栄養を与え、消費者の満腹に対し正の効果を持つ。したがって、ゲル化可能な親水コロイド、特にゼラチンを組み込むことによって、食品はより少ない炭水化物および/または脂肪を含有し得、カロリーがより少ない食品または食事をもたらすが、消費者の満腹を同程度または同様に満たし、これは肥満に対する強力なツールとなり得る。また、本発明に従って調製した、すなわちゼラチンコーティングを含む食品または食事のタンパク質レベルが上昇し、それ故に、栄養不良に対して、そのような被覆した食品または食事を摂取させてもよい。
【0020】
透明な、弾性および粘着性のゲルがゼラチンによって形成され、良好な付着特性を有する食料品上およびその周囲に最適なゲルを形成させる。特に、完全または部分的な食事などの食料品を平板またはボウル上に提供する場合、ゼラチンを含む組成物が、食品の周囲にゲルを形成し、食品および平板の両方に付着しつつ食品および平板に渡って連続した層を形成することが示された。前記ゲル層は、平板上に食品をとどめるだけでなく、該平板上に食品を固定し、その結果、平板を取り扱う間に傾けた場合に、平板から食品が滑らないか、または滑ることはごくまれである。
【0021】
ゼラチンは、そのブルーム、またはゲル強度によって定められる。該ゼラチンは、室温で熱可塑性ゲルを形成し、熱湯で再び溶ける。該ゼラチンは、例えば、フルーツガムおよびゼラチンデザートにおけるゲル形成剤およびテクスチャライザーとして使用される。ゼラチンゲルのゲル強度は、QTS25 Texture Analyser(Brookfield Viscometers)またはTexture Analyser TA−XT2(Stable Micro Systems Ltd.,ロンドン,英国)などの標準装置(GME,ブリュッセル,ベルギー)によって求めることができ、ブルーム数(本明細書において「ブルーム値」とも称する)によって示される。試験は、O.T.Bloomによって1925年に最初に開発された(米国特許第1,540,979号明細書および米国特許第2,119,699号明細書)。試験は、ゲル4mmの表面を破壊することなく曲げるのにプローブ(通常、直径0.5インチ)が必要とする質量(g)を決定する。結果は、ブルーム(グレード)で表される。ブルーム数は、通常30〜300ブルームである。ブルーム数が高くなると、ゲルがより強くなる。ブルーム試験をゼラチンで行うためには、試験前に6.67%ゼラチン溶液を17〜18時間、10℃で保つ。「低いブルーム」という用語は50〜125のブルーム数を反映し、一方で、「中間のブルーム」は150〜250のブルーム数を反映し、「高いブルーム」は250〜325のブルーム数を反映する。
【0022】
更なる加水分解によって、「加水分解コラーゲン」としても既知である、いわゆる「加水分解ゼラチン」が生じ、これは、平均分子量が20kDa未満、例えば500Da〜15kDaのペプチド調製物である。加水分解ゼラチンにおけるペプチドの分子量は、好ましくは100Da〜5000Da、より好ましくは500Da〜5000Daである。比較的小さい分子であるため、加水分解ゼラチンは、ゼリーにする効果がない。加水分解コラーゲンは、例えば、局所クリームにおけるテクスチャー調整剤および保湿剤として使用され、グリシン、プロリンおよびヒドロキシプロリンの含量が高いことから栄養製品にも使用される。
【0023】
ゼラチンの平均分子量も、加水分解ゼラチンの平均分子量も、当分野にて既知の方法、例えばHPLCサイズ排除クロマトグラフィーによって求めることができる。
【0024】
当業者であれば、想定された目標のために、いずれの既知のゼラチンも選択できる。ハラルまたはコーシャーの食品を被覆するのであれば、ウシまたは魚起源のゼラチンを選択するのが好ましいであろう。また、魚を被覆するのであれば、魚起源のゼラチンを検討してもよい。しかしながら、ブタのゼラチンも同様に使用できる。
【0025】
ブルームおよび/またはゼラチン含量の増加によって、本発明の組成物の粘度が増加するであろう。当業者であれば、想定された目標に適したゼラチンおよび含量を選択することが可能である。したがって、ゼラチンのブルーム値は好ましくは100〜300であり、これは、組成物を工業的に加工するのに適したものとする。
【0026】
本発明に従う組成物は、好ましくは、その合計質量に対して、ゲル化可能な親水コロイド、特にゼラチンを少なくとも10w/w%、好ましくは30w/w%以下含む。質量は材料の水分含量を含んでいる。例えば、ゼラチンの水分含量は12w/w%であってもよい。
【0027】
組成物の成分の量を乾燥質量に基づいて、すなわち組成物およびその成分中のいずれの水分含量も除いて定めた場合、好ましくは、ゲル化組成物は、その乾燥質量に対して、ゲル化可能な親水コロイドを少なくとも25w/w%、好ましくは少なくとも30w/w%、より好ましくは少なくとも35w/w%、最も好ましくは少なくとも40w/w%含む。
【0028】
好ましくは、可塑剤は、ポリオール、好ましくはグリセロールまたはソルビトールまたはそれらの組み合わせを含み、最も好ましくは、グリセロールを含む。
【0029】
好ましくは、ゲル化組成物は、その合計質量に対して、可塑剤を少なくとも2w/w%、好ましくは15w/w%以下含む。
【0030】
ゲル化組成物は、予め調理され、摂取前のしばらくの間貯蔵される部分的なまたは完全な食事などの食料品を被覆するのに適している。コーティングは保護層を提供し、卓越した魅力的な外観をもたらし、食料品からの水分損失を防ぐ。後述するように、組成物は、栄養補助食品および医薬品などの追加の物質のための担体としても非常に適している。
【0031】
食料品または食事を貯蔵のために凍結するのであれば、本発明の組成物は、好ましくは、凝固点降下剤、すなわち凝固点を低下させるのに有効な薬剤を含む。凝固点降下剤を組み込むことによって、はるかに小さい温度で氷晶の形成が起きるか、または当該形成を防ぐ。当業者であれば適した凝固点降下剤をよく知っている。好ましくは、組成物は、その合計質量に対して、凝固点降下剤を少なくとも1w/w%、より好ましくは少なくとも2w/w%、好ましくは10w/w%以下、より好ましくは7w/w%以下含む。前記範囲を超えると、コーティング中にいくらかの着色が出て、あまり魅力的ではない。いずれの食用凝固点降下剤も氷晶形成を制限するが、本発明の組成物において、凝固点降下剤は、好ましくは、単糖、二糖またはそれらの2つ以上の組み合わせを含む。単糖または二糖は、好ましくは、グルコース、フルクトース、スクロース、マルトースおよびラクトース、またはそれらの2つ以上の組み合わせからなる群より選択される。好ましくは、凝固点降下剤はフルクトースを含む。好ましい凝固点降下剤は、想定された凝固点降下をもたらし、より氷晶形成が少なくなる。氷晶があまり形成されないか、全く形成されない場合、冷凍中または冷凍後の食料品の外観は非常に魅力的なままである。これは、例えば、冷蔵ショーケースにおいて冷凍ピザのような冷凍食品を見せる場合に非常に好都合である。そのような食料品は非常に新鮮かつ魅力的な外観を有する。
【0032】
氷晶形成をさらに制限するために、組成物は、好ましくは、最大20kDaまで、好ましくは最大5kDaまでの分子量を有するペプチド、特に当分野にて「AFP」すなわち不凍ペプチド(Anti Freeze Peptides)として既知のペプチドを含む。そのようなペプチドは、小さい結晶の周囲にフィルムを形成することによって、凝固点降下に貢献し、氷晶成長に対抗する。ペプチドを組み込むことによって、氷晶がより少ないか、またはより小さい食料品上にコーティングを形成することができる。さらに、ペプチドは栄養を与えるものであり、それ故に栄養不良に対して使用できる。さらに、ペプチドは、ゲル化可能な親水コロイド、特にゼラチンと同様に、満腹に対して正の効果がある。ペプチドを組み込むことによって、食品中に存在する必要がある炭水化物および/または脂肪を少なくし、カロリーがより少ないが、消費者にとって同じまたは同様の満腹を満たす食品または食事をもたらす。
【0033】
好ましい実施形態では、ペプチドは加水分解ゼラチンに由来する。したがって、組成物は、好ましくは加水分解ゼラチンを含む。加水分解ゼラチンは食用ペプチドにとって最適な供給源であり、本発明の組成物に適している。加水分解ゼラチンは、上記の満腹効果の点から見て特に適している。加水分解ゼラチンをゲル化組成物に組み込んだ場合、満腹感を消費者に依然として与える低いカロリーの食事を調製できる。ペプチドの分子量は、好ましくは100Da〜5000Daであり、より好ましくは500Da〜5000Daである。
【0034】
好ましくは、ゲル化組成物は、その合計質量に対して、ペプチド、好ましくは加水分解ゼラチンを少なくとも5w/w%、かつ好ましくは15w/w%以下含む。しかしながら、当業者であれば、他の供給源由来の他の適したペプチドをよく知っている。適した加水分解ゼラチンは、例えば、Rousselot B.V.,オランダのPeptanである。
【0035】
好ましくは、ゲル化組成物は、コーティング中の泡形成を防ぐために、消泡剤を含む。消泡剤は当分野にて既知のいずれの食用の薬剤であり得るが、Sasol社(ドイツ)によって商標名Witafrol 7420の下で製造されているカプリル酸/カプリン酸グリセリドなどの、親水性C8−C10モノ−、ジ−およびトリグリセリドを含むことが消泡剤にとって好ましい。好ましくは、ゲル化組成物は、消泡剤を10〜1000ppm、より好ましくは20〜500ppm、最も好ましくは20〜40ppm含む。
【0036】
満腹効果への貢献並びにゲル化組成物、特に、ゼラチンおよび任意に加水分解したゼラチンによる食品中の炭水化物および/または脂肪の置き換えの可能性は別として、想定された物質を食料品または食事に補充するために、コーティング組成物は、そのような追加の物質のための担体または賦形剤として大変十分に適している。したがって、ゲル化組成物は、好ましくは、栄養素、ビタミン、カルシウム、微量元素、栄養補給食品、酸化防止剤などの栄養補助食品;呈味改善剤などの香味剤;付臭剤;着色剤;および医薬品からなる群より選択される追加の物質を1つ以上含む。前記追加の物質は、丸薬等の形態の前記物質の別個の摂取を必要とすることなく、食品に好都合に添加される。それ故に、コーティング組成物は、例えば病院、年配者の住居、保養地などにおいて使用できる。また、コーティング組成物を、個々の患者に処方された正確な薬物を含むように前記患者に適合させることができ、その結果、前記患者は食事を取るだけで彼らの薬を摂取し、患者コンプライアンスが大きく向上するだろう。
【0037】
例えば、血中コレステロール低下、脳卒中および心臓疾患の予防といった消費者の健康を改善するか、もしくは維持するゲル化組成物に、または例えば疲労に対する精神能力の増大、熱意および注意の改善などの消費者に有益であるゲル化組成物に、市販の栄養混合物を組み込むことができる。例えば、Qual series(DSM,オランダ)のものなどのビタミン混合物、life’sDHAおよびlife’sAHA(DSM,オランダ)などの栄養脂質、並びにOatwell、Fruitflow、ALL−Q、FloraGlo、PeptoPro、resVida(DSM,オランダ)をゲル化組成物に組み込むことができる。さらに、糖尿病患者のために、ゲル層中に適量の1つ以上の血中グルコース調節薬を組み込み、患者がインスリンを注射する必要性をなくし得る食事を調理することができる。ゲル層中のそのような医薬の量を、例えば被覆した食事中の炭水化物の量に応じて、患者の必要に正確に合わせることができる。適した血中グルコース調節薬の例は、例えば、α−グリコシダーゼ阻害剤(アカルボースなど)、ビグアニド(メトホルミンなど)、ジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤(リナグリプチン、サキサグリプチン、シタグリプチンおよびビルダグリプチンなど)、メグリチニド(レパグリニドなど)、スルホニル尿素誘導体(トルブタミド、グリクラジド、グリベンクラミド、グリメピリドなど)、チアゾリジンジオン(ピオグリタゾンなど)およびインクレチン模倣物質(エキセナチドおよびリラグルチドなど)である。アルツハイマー病に対する医薬(ガランタミン、リバスチグミンおよびメマンチンなど)を本発明のコーティング組成物に組み込む場合、本発明のそのようなコーティングで被覆した食事を取るアルツハイマー患者は、薬を飲み忘れるリスクなしで、自動的に投薬されるだろう。
【0038】
本発明の方法の別の実施形態において、該方法は、さらに、第2のゲル層を食品上に設けるステップを備え、好ましくは、第2のゲル層の組成は、特に、1つ以上の追加の物質の存在および/または組成において、第1のゲル層のものとは異なる。
【0039】
上記の第1のゲル層の前または後に、第2のゲル層を食料品上に塗布することができる。このようにして、2層のまたは多層の構造が得られ、ここで、第1の層および第2の層の組成は互いに異なっていてもよい。好ましくは、第1の層および第2の層の両方が本発明に従うが、このことは必須ではない。第2の層を、例えばコーティングの強度および透明性を増大させるために塗布することができる。しかしながら、食料品を本発明の組成物で被覆することで得られた単層は、好ましくは同様に透明である。二層を調製するのであれば、両方の層が薄い、すなわち0.4〜0.5mmの範囲内であり得るが、他の厚さも可能である。外層が内層より薄いものであり得、逆もまた同様にあり得る。氷晶が外層上に形成しがちである場合、クライオジェニック剤(cryogenic agent)の含量は、好ましくは外層においてより高く、一方で、内層は、好ましくはより高いゼラチン含量を有することによって、より硬質であってもよく、あるいは内層のゼラチンのブルーム値がより高いものであり得る。
【0040】
また、本発明は、組成物の合計質量に対して、ゲル化可能な親水コロイドを12〜25w/w%、好ましくは16〜20w/w%と、分子量が最大20kDa、好ましくは最大5kDaであるペプチドを5〜15w/w%、好ましくは7.5〜12.5w/w%と、可塑剤を2〜12w/w%、好ましくは4〜8w/w%と、凝固点降下剤を1〜10w/w%、好ましくは3〜7w/w%と、任意に消泡剤を10〜1000ppm、好ましくは20〜40ppmと、任意に追加の物質を0.5〜15w/w%、好ましくは2〜4w/w%とを含むゲル化組成物に関する。これらの成分の好ましいものは、上述した通りである。
【0041】
特定の実施形態では、ゲル化組成物は、ゼラチンを12〜25w/w%、好ましくは16〜20w/w%と、加水分解ゼラチンを5〜15w/w%、好ましくは7.5〜12.5w/w%と、グリセロールを2〜12w/w%、好ましくは4〜8w/w%と、フルクトースを1〜10w/w%、好ましくは3〜7w/w%と、任意に消泡剤を10〜1000ppm、好ましくは20〜40ppmと、任意に追加の物質を0.5〜15w/w%、好ましくは2〜4w/w%とを含む。
【0042】
上記範囲内で上記成分を有するゲル化組成物は、非常に適したコーティングを与え、凍結の間でも卓越した外観を食料品にもたらし、食品安定性をもたらし、味およびテクスチャーを維持する。さらに、呈味改善剤および他の追加物質は、食品の品質および/または栄養価を改善することができる。
【0043】
本発明のゲル化組成物は、好ましくは予め調理した食料品または食事を被覆するためのものであり、該食料品または該食事は、好ましくは摂取前に加熱されるものである。被覆した食事または食品を加熱することによって、コーティングが融解し、食品に応じて、食品に浸透する。消費者は、被覆した食料品を食べる体験をせず、代わりに新鮮な食品を食べる。
【0044】
本発明は、さらに、食品、特に予め調理した食事であって、その外面に付着した本発明のゲル化組成物のゲル層を含む食品、特に予め調理した食事に関する。
【0045】
食品は、好ましくはすぐに食べられる温かい食事であり、好ましくは摂取前に十分に調理され、すなわち貯蔵を必要とする。貯蔵は、常温で、すなわち16〜24℃で、好ましくは18〜20℃で、または冷蔵庫内で(すなわち4〜10℃、好ましくは6〜8℃の温度で)、または凍結条件の冷凍機内で(すなわち0℃未満、好ましくは−5℃〜−25℃、より好ましくは−12℃〜−20℃の温度で)行うことができる。したがって、食品は、好ましくは、凍結条件下で、冷蔵庫条件下でまたは常温で摂取まで貯蔵され、好ましくは摂取のために少なくとも50℃に加熱されることを意図したものである。特に、そのような予め調理した食事は、加熱される凍結した食事、または電子レンジの使用によって加熱されることを意図した食事であり得る。
【0046】
予め調理した食事は、好ましくはマイクロ波または凍結した食事であるが、本発明に従う食事を提供することが大変十分に可能であり、大学病院、またはホテルまたはレストランなどの大きな機関のキッチンまたは食堂によって調理され、そこで、食事が調理され、その後、例えば常温または冷蔵庫温度に冷却され、摂取直前に再加熱される。
【0047】
前記の加熱によって、ゲル層は、食感および味感に負の影響を及ぼすことなく融解する。それどころか、食品は、特に、本発明に従うゲル層で被覆した冷凍ピザの場合、被覆せずに同様の条件で保持した同様のピザよりも味がよくなる。
【0048】
上述したように、ゲル層は、好ましくは連続したゲル層であり、その厚さは、好ましくは0.4mm〜1.6mm、より好ましく0.6〜1.2mm、または0.7〜1.2mmであり、常温でゲル化する。食品のゲル化組成物は、好ましくは40℃超、より好ましくは50℃超、さらにより好ましくは60℃超の温度で液化し、好ましくは90℃未満、より好ましくは80℃未満、さらにより好ましくは70℃未満の温度で液化する。
【0049】
本発明は、さらに、本発明の組成物を食料品上に塗布するステップを備える、被覆した食料品の調製方法に関する。
【0050】
ゲル化組成物を、該組成物がゲル化する温度、例えば室温またはより低い温度で食料品に塗布することができる。また、該組成物を冷凍食品上に塗布することができ、例えば室温で被覆した食料品を、例えば4℃または例えば−20℃の凍結温度で冷蔵保存することもできる。
【0051】
また、本発明は、本発明の液状ゲル化組成物の調製方法であって、
a)水性溶媒を用意するステップと、
b)前記水性溶媒に可塑剤を添加するステップと、
c)前記水性溶媒にゲル化可能な親水コロイドを添加するステップと、
d)均一混合物となるように混合するステップと、
e)ステップd)の混合物をゲル化するステップと、
f)ステップe)のゲル化した組成物を融解し、液状ゲル化組成物を得るステップと、
を備える方法に関する。
【0052】
水性溶媒は、水であり得るか、または1つ以上の栄養素等の追加の物質などの1つ以上の想定された成分を含む溶液もしくは分散液であり得る。また、液状ゲル化組成物は、揚水性かつ瞬時に流れるものである限り、粘性の塊状物であってもよい。例えば、低粘性の塊状物は、流し込むために依然として適したものであり得る。融解ステップは、通常、親水コロイド、特にゼラチンが液化し、液体、または少なくとも瞬時に流れる塊状物をもたらす温度を超えるように混合物を加熱することを備える。
【0053】
また、本発明は、本発明のゲル化組成物に組み込まれた薬物または医薬品または栄養補助食品に関する。
【0054】
別の実施形態において、本発明は、患者または患者群の治療適合性を改善する方法に関し、該方法は、食料品または食事を前記患者または前記患者群に提供するステップを備え、前記食料品または前記食事は本発明のゲル化組成物で被覆され、該組成物は前記治療のための1つ以上の医薬品を含む。食料品または食事は、好ましくは、前記食料品または前記食事を患者または患者群に提供する前に加熱される。
【0055】
さらに別の実施形態において、本発明は、栄養素、ビタミン、カルシウム、微量元素、栄養補給食品、酸化防止剤などの栄養補助食品および/または医薬品の1つ以上を対象へ投与する方法に関し、該方法は、対象に食料品を摂取させるステップを備え、前記食料品は本発明のゲル化組成物で被覆されており、該組成物は栄養補助食品および/または医薬品の1つ以上を含む。
【0056】
食料品は、好ましくは対象に前記食料品を摂取させる前に加熱される。
【0057】
本発明を以下の実施例によってさらに説明するが、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものではない。以下の表中、計算した質量%は、小数点以下2桁で記載され、それ故に、合計パーセンテージが合計100.00とはわずかに異なるものであり得る。
【実施例】
【0058】
実施例1
栄養強化食品コーティング
以下の成分をコーティング組成物の調製に使用した:
【表1】
【0059】
成分を水に添加し、均一溶液が得られるまで混合した。
【0060】
均一混合物を塗布して、室温で1.5時間膨張させた(すなわちゲル化)。その後、ゲル化した混合物を融解するまで約45分間、60℃で保ち、10分間静置した。混合物を使用して、ゆでたジャガイモ、ゆでたエンドウおよびニンジン、並びにウィンナーシュニッツェルを含む室温の予め調理した食事にかけた。同じことを、食事上に組成物をスプレーノズルでスプレーすることによって行った。コーティングの厚さは約0.9mmであった。食事を4℃および−20℃で貯蔵した。
【0061】
これらの温度で24、36、48および72時間貯蔵した後、食事は、魅力的な卓越した外観を有しており、−20℃で72時間後のみ、小規模の氷晶の形成が見られた。いずれの食事においても、味の損失またはテクスチャーの劣化は見られなかった。
【0062】
栄養素の選択において上記組成物とは異なる同様のゲル化組成物を作製した。例えば、上述したようなDSM,オランダのいくつかの栄養補給剤を等量で含む同様の混合物を調製した。
【0063】
実施例2
心臓疾患および脳卒中のリスクを低下させるための食事用の食品コーティング
以下の成分をコーティング組成物の調製に使用した。
【表2】
【0064】
実施例1で説明したように食事を調製し、4℃で24時間貯蔵し、退職者のための機関(retirement institution)の高齢者に与えた。
【0065】
実施例3
血中LDLコレステロールレベルを低下させるための食事用の食品コーティング
以下の成分をコーティング組成物の調製に使用した。
【表3】
【0066】
実施例1で説明したように食事を調製し、4℃で24時間貯蔵し、4.5mmol/lを超えて血中LDLコレステロールレベルが上昇している患者に毎日与えた。時間とともに、多くの患者において、LDLコレステロールレベルが3.6〜4.1mmol/lのレベルに減少した。
【0067】
実施例4
疲労に対する食事、並びに熱意、注意および精神能力を増加させる食事のための食品コーティング
以下の成分をコーティング組成物の調製に使用した。
【表4】
【0068】
実施例1で説明したように食事を調製し、4℃で24時間貯蔵し、退職者のための機関(retirement institution)の高齢者に与えた。そのような被覆した食事を一週間毎日摂取した後、高齢者がより生き生きとし、より幸福であるようであったことが、介護スタッフによって見られた。
【0069】
実施例5
糖尿病患者のための食事用の食品コーティング
以下の成分をコーティング組成物の調製に使用した。
【表5】
実施例6
アルツハイマー患者のための食事用の食品コーティング
以下の成分をコーティング組成物の調製に使用した。
【表6】
【国際調査報告】