(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2016-531561(P2016-531561A)
(43)【公表日】2016年10月13日
(54)【発明の名称】希少な微生物学的核酸の検出
(51)【国際特許分類】
C12N 15/09 20060101AFI20160916BHJP
C12Q 1/68 20060101ALI20160916BHJP
C40B 40/06 20060101ALI20160916BHJP
【FI】
C12N15/00 A
C12Q1/68 AZNA
C40B40/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2016-520018(P2016-520018)
(86)(22)【出願日】2014年10月1日
(85)【翻訳文提出日】2016年5月11日
(86)【国際出願番号】EP2014071025
(87)【国際公開番号】WO2015049278
(87)【国際公開日】20150409
(31)【優先権主張番号】13306360.2
(32)【優先日】2013年10月1日
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】516097055
【氏名又は名称】テクセル
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100114889
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 義弘
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ドランジュ ファビアン
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA18
4B063QQ42
4B063QR14
(57)【要約】
優勢な二本鎖DNA分子の量を相対的に減少させて希少核酸分子の割合を増加させる二本鎖特異的ヌクレアーゼによる処理を含む核酸の試料の調製を含む、微生物またはウイルスに由来する少なくとも1種の希少核酸の生物学的試料中の存在をインビトロで検出するための方法に関する。核酸分子を含む試料の調製のため、および生物学的生成物の特徴決定のための、二本鎖特異的ヌクレアーゼの使用にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)二本鎖核酸分子、一本鎖核酸分子、またはそれらの組み合わせを含む核酸分子を生物学的試料から抽出する工程、
(b)工程(a)の二本鎖核酸分子の変性および復元を誘導する工程、
(c)工程(b)の生成物を二重鎖特異的ヌクレアーゼ(DSN)と接触させる工程、
(d)工程(c)の生成物からDSNを不活性化しかつ/またはDSNを抽出し、核酸分子を濃縮する工程、
(e)工程(d)の生成物の核酸分子を増幅する工程、
(f)工程(e)の生成物からDNAライブラリーを調製する工程、
(g)工程(f)のDNAライブラリーの分子の核酸配列を決定し、該核酸配列から、微生物またはウイルスに由来する少なくとも1種の希少核酸を検出する工程
を含む、生物学的試料中の微生物またはウイルスに由来する少なくとも1種の希少核酸の存在をインビトロで検出するための方法。
【請求項2】
工程(a)において、前記核酸分子がDNA分子、RNA分子、またはそれらの組み合わせを含み、該核酸分子の抽出の後に工程(a)のRNA分子の逆転写が実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(e)において、核酸分子の増幅がローリングサークル増幅(RCA)によって実施される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
微生物が、グラム陽性菌、グラム陰性菌、マイコプラズマ、酵母、および真菌からなる群より選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
微生物が、マイコプラズマ・ハイオリニス(Mycoplasma hyorhinis)、マイコプラズマ・ニューモニエ(Mycoplasma pneumoniae)、アコレプラズマ・レイドロウイ(Acheloplasma laidlawii)、マイコプラズマ・ファーメンタンス(Mycoplasma fermentans)、マイコプラズマ・オラーレ(Mycoplasma orale)、スピロプラズマ・シトリ(Spiroplasma citri)、マイコプラズマ・シノビエ(Mycoplasma synoviae)、マイコプラズマ・ガリセプチカム(Mycoplasma gallisepticum)、およびマイコプラズマ・アルギニニ(Mycoplasma arginini)からなる群より選択されるマイコプラズマである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1種の希少核酸分子がウイルスの核酸分子である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
ウイルスが、二本鎖DNAウイルス、一本鎖DNAウイルス、二本鎖RNAウイルス、および一本鎖RNAウイルス、分節型ウイルス、および非分節型ウイルスからなる群より選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
ウイルスが、ヒトウイルス、サルウイルス、齧歯類ウイルス、ウマウイルス、ウシウイルス、ブタウイルス、昆虫ウイルス、およびバクテリオファージからなる群より選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ウイルスが、C型肝炎ウイルス(HCV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、B19、アデノウイルス5、BK、BVDV、FluA H3N8、MLV、PPV、レオウイルス3、およびインフルエンザBウイルスからなる群より選択される、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の微生物またはウイルスに由来する少なくとも1種の希少核酸の検出、ならびに該少なくとも1種の微生物またはウイルスの存在および/またはレベルについての生物学的試料の特徴決定を含む、生物学的試料を特徴決定するための方法。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の生物学的試料中の微生物またはウイルスに由来する少なくとも1種の希少核酸の検出を含む、生物学的試料の調製のための製造過程を評価するための方法であって、微生物またはウイルスに由来する該希少核酸の検出が、該製造過程の少なくとも2つの異なる段階で実施される、方法。
【請求項12】
生物学的試料中の微生物またはウイルスに由来する少なくとも1種の希少核酸の検出のためのDSNの使用。
【請求項13】
核酸分子を増幅する工程を含む方法における使用であって、DSNの使用が少なくとも該核酸分子を増幅する工程の前に実施される、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
DSNと、緩衝液、陽性対照、および使用説明書からなる群より選択される少なくとも1種の化合物とを含む、生物学的試料中の微生物またはウイルスに由来する少なくとも1種の希少核酸の検出のためのキット。
【請求項15】
以下の要素を含む、請求項14に記載のキット:
(a)DSN、
(b)緩衝液、陽性対照、および使用説明書からなる群より選択される少なくとも1種の化合物、ならびに
(c)前記少なくとも1種の微生物またはウイルスを特異的に検出することができる少なくとも1種のプライマー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物学的試料の核酸分子の二本鎖特異的ヌクレアーゼによる処理の工程を含む、生物学的試料中の微生物またはウイルスに由来する少なくとも1種の希少核酸分子をインビトロで検出するための方法に関する。本発明は、核酸分子の二本鎖特異的ヌクレアーゼによる処理の工程を含む、生物学的生成物を特徴決定するための方法、および生物学的生成物の調製のための製造過程を評価するための方法にも関する。
【0002】
本発明は、生物学的試料中の微生物もしくはウイルスの希少核酸分子のインビトロでの検出のための、生物学的生成物の特徴決定のための、かつ/または生物学的生成物の調製のための製造過程の評価のための、二本鎖特異的ヌクレアーゼの使用にも関する。本発明は、微生物またはウイルスに由来する少なくとも1種の希少核酸の検出のためのキットにも関する。
【背景技術】
【0003】
リアルタイムPCRまたはqPCRの使用による分子的方法は、増幅および検出の方法として、診断研究所における必須のツールになった。診断のための強力なツールとして、分子生物学の方法が、ウイルス学のための細胞培養物および細菌のための培養培地のような通常の診断のための伝統的方法に取って代わるべきであるか否かという疑問が生じる。ウイルス学の領域において、以下に限定されないが、HCV、HBV、およびB19のような、細胞培養物中で増殖することができないウイルスの検出および分析のため、qPCRが使用されている。この方法は、改善された検出の感度および迅速さを有する。qPCRの設計は、高度に保存された領域の増幅によって行われるが、このテクノロジーには、ある属の全てのゲノムまたは新たな変異型ゲノムを検出するためには限界がある。例えば、ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV-1)株の検出のためには、9種のqPCRのセットが必要である(Gardner et al.,2003)。さらに、マルチプレックスqPCRにおける異なる増幅配列の検出は、4種または5種の標的に限定される。従って、包括的な調節が必要とされる時、全てのqPCRアッセイを実施するためには多量の試料が必要とされる。
【0004】
次世代配列決定法(NGS)とも呼ばれるハイスループット配列決定法(HTS)は、全ゲノム配列決定のため、そしてメタゲノム研究において、広く使用されている。微生物学の領域において、それは、宿主内または集団内のゲノム可変性の同定のために適用されているが、この方法の主な適用は、新たな病原体の検出および発見のための成功した使用であった。NGSの強みおよび主な利点は、「演繹的」試験なしに、微生物の完全なスペクトルを検出するその能力である(Barzon et al.,2011)。他の利点は、検出された配列がGenbankのような利用可能なデータベースに存在する場合、病原体が直接同定される点である。
【0005】
サブトラクティブ法、ヌクレアーゼ抵抗性の保護された断片の配列決定を含む、他の配列決定に基づく方法は、新たな病原体の検出のために成功裡に適用されているが、これらの方法は、複雑であり、ハイスループット分析のために十分な感度を有しない。
【0006】
ウイルスゲノムの広範に保存された領域のPCR増幅から入手された塩基組成サインに頼るマイクロアレイ法およびエレクトロスプレーイオン化質量分析(PCR/ESI-MS)のような新たな方法が、より広いウイルス検出を達成するために開発された。これらの方法は、高度の広範な検出、およびウイルス科の新ウイルスの発見のために設計されているが、配列特異性による完全な病原体の検出は可能にしないと予想される。
【0007】
NGSアッセイにおいて、感度は、核酸分子の量によって決定される。NGSは、試料中の全ての核酸分子を配列決定するため、感度の増加は、微生物学的診断の場合には、宿主に由来する核酸分子である、関心対象外の配列のレベルの減少に依存する。生物学的試料中の最低レベルの混入物を検出するためには、配列の可能な限り多数のコピーまたは「リード」が生成される必要がある。しかしながら、いくつかのケースにおいて、最大数であっても、混入物を検出するのに十分ではないかもしれない。
【0008】
最近、NGSアッセイの感度を改善し、高レベルの優勢な核酸を克服するための進歩があった。多数の論文が、ウイルス核酸を保護しながら、試料中に存在する遊離の核酸を加水分解するヌクレアーゼによる試料の処理を記載している。しかしながら、タンパク質に密着している核酸分子にはヌクレアーゼが到達できないため、この加水分解工程は十分でない。
【0009】
改変されたVIDISCA法(cDNA-AFLP(増幅断片長多型)に基づくウイルス発見)が、試料中のrRNAの量を減少させるために使用された(Vries et al.,2010)。また、Cheval et al.(2011)は、LOD(検出限界)に近い濃度で異なるウイルスが添加されたMRC5上清における、Phi29を使用したローリングサークル増幅(RCA)の使用を記載している。Cheval et al.に開示されたように、Phi29増幅は、HTS試料の感度を増加させ、3×LODの添加で9種のウイルスのうちの7種、0.8×LODの添加で9種のウイルスのうちの4種を検出する。しかしながら、比較アッセイは、qPCRの感度が最も高いことを証明している。
【0010】
従って、希少核酸の検出法の感度を改善する必要が依然として存在する。
【0011】
これが本発明の目的である。
【発明の概要】
【0012】
本発明は、核酸分子を含む試料のインビトロでの調製のための希少核酸を増強する標準化された方法として機能し得る、増幅前レベルでの二重鎖特異的ヌクレアーゼ(DSN)の使用による、核酸を含む試料中の優勢な核酸分子の減少に基づく方法に関し、本法においては、試料が増幅工程の前に二本鎖特異的ヌクレアーゼによって処理される。
【0013】
最近の刊行物は、ライブラリー調製における核酸分子の集団を標準化するための増幅後レベルでのDSN処理のみを記載しており、それは、ゲノム包括度の可変性を減少させることが示された(Rodrigue et al.,2009)。本発明とは反対に、Rodriuqgue et al.による方法の目標、およびその方法によって解決される問題は、希少な混入核酸の配列決定を可能な限り回避することである点に注意すべきである。
【0014】
本発明による方法においては、二本鎖特異的ヌクレアーゼによる処理が、優勢な二本鎖DNA分子の量を相対的に減少させ、試料中の希少核酸分子の割合を増加させる。
【0015】
本発明による方法は、DNAライブラリーの生成におけるバイアスを低下させ、現在のところ最も高感度のアッセイであるqPCRの感度に類似しているかまたはそれより優れた感度を達成することを可能にする。本発明による方法は、以下の利点を与える:
− 検出のために配列特異的プライマーを必要としない非「演繹的」試験である。
− 病原体の同定を可能にする。
− qPCRと同等の感度を有する。
【0016】
本発明は、二本鎖特異的ヌクレアーゼによる核酸分子の処理の工程を含む、細胞上清のような生物学的試料中の微生物またはウイルス性因子の高感度の検出法に関する。このプロトコルは、エンベロープを有しているかまたは有していない、一本鎖または二本鎖のDNAまたはRNAである、任意の微生物またはウイルスの検出のために設計される。本発明の方法は、微生物学的なまたはウイルス性の因子に由来する希少核酸分子の高感度の検出に適用され得る一般的なスキームを提供する。
【0017】
本発明は、本明細書に与えられた詳細な説明から、および例示のためにのみ与えられ、意図された本発明の範囲を限定するものではない添付の図面から、より完全に理解されるであろう。
【0018】
本発明は、第一に、
(a)二本鎖核酸分子、一本鎖核酸分子、またはそれらの組み合わせを含む核酸分子を生物学的試料から抽出する工程、
(b)工程(a)の二本鎖核酸分子の変性および復元を誘導する工程、
(c)工程(b)の生成物を二重鎖特異的ヌクレアーゼ(DSN)と接触させる工程、
(d)工程(c)の生成物からDSNを不活性化しかつ/またはDSNを抽出し、核酸分子を濃縮する工程、
(e)工程(d)の生成物の核酸分子を増幅する工程、
(f)工程(e)の生成物からDNAライブラリーを調製する工程、
(g)工程(f)のDNAライブラリーの分子の核酸配列を決定し、該核酸配列から、微生物またはウイルスに由来する少なくとも1種の希少核酸の存在を検出する工程
を含む、生物学的試料中の微生物またはウイルスに由来する少なくとも1種の希少核酸の存在をインビトロで検出するための方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】左から右にBK、BVDV、およびPPVによる、遺伝子特異的CqとRNA 18S Cqとの間の差のヒストグラム表示。各ウイルスについて、左の最も明るいバーは、増幅なしに入手された結果を表し、右の最も暗いバーは、増幅によって入手された結果を表す。
【
図2】左から右にAde5、B19、BK、BVDV、HBV、InfA、MLV、MVM、PPV、およびReo3による、遺伝子特異的CqとRNA 18S Cqとの間の差のヒストグラム表示。各ウイルスについて、左の最も明るいバーは、増幅およびDSN処理によって入手された結果を表し、右の最も暗いバーは、増幅なしで入手された結果を表す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
「生物学的試料」という用語は、任意の生物学的材料を含んでいることが多いかまたは含んでいる試料または抽出物を意味する。より好ましくは、本発明による方法における生物学的試料は、核酸分子を含み、さらに好ましくは、本発明による方法における生物学的試料は、核酸分子および細胞を含む。
【0021】
具体的な態様において、本発明は、生物学的試料がヒトの生体液または組織、動物の生体液または組織、ヒトまたは動物の生体液または組織の培養物、真核細胞の培養物、原核細胞の培養物、真核細胞および原核細胞の両方の培養物からなる群より選択される材料から調製される、生物学的試料中の微生物またはウイルスに由来する少なくとも1種の希少核酸をインビトロで検出するための方法に関する。生物学的試料は、本発明による方法を実施するために適合するよう、生物学的試料の抽出または精製のような方法の使用によって、生物学的材料から調製される。
【0022】
「生体液」とは、身体に起因し、おそらく排泄されるかまたは分泌される液体として定義される液をさす。本発明による方法において、体液または組織は、血漿、血清、全血、全血抽出物、尿、糞便、汗、リンパ液、羊水、胆汁、母乳、唾液、痰、涙、精液、膣分泌物、房水、硝子体液、および脳脊髄液からなる群より選択される。
【0023】
具体的な態様において、本発明は、生物学的試料が生物学的療法用生成物であり、好ましくは、組換えタンパク質、モノクローナル抗体、ワクチン、細胞治療生成物、遺伝子治療生成物、ヒト起源または動物起源の生成物、例えば血液由来生成物、ヘパリン、ヒアルロン酸、およびコラーゲンからなる群より選択される、生物学的試料中の微生物またはウイルスに由来する少なくとも1種の希少核酸をインビトロで検出するための方法に関する。
【0024】
別の具体的な態様において、本発明は、ヒトまたは動物の生体液または組織の培養物が細胞培養物からの細胞を含み、細胞培養物が真核細胞、原核細胞、またはそれらの組み合わせを含む、生物学的試料中の微生物またはウイルスに由来する少なくとも1種の希少核酸をインビトロで検出するための方法に関する。真核細胞には、ヒト、動物、植物、真菌、および酵母のような単細胞真核生物が含まれる。原核細胞には、細菌および古細菌が含まれる。より具体的な態様において、本発明による生物学的試料中の微生物またはウイルスに由来する少なくとも1種の希少核酸のインビトロでの検出のための方法において、生物学的試料は、ウイルスに感染した細胞培養物からの細胞、モノクローナル抗体の産生のために使用されるマウス/ヒトハイブリドーマのようなハイブリドーマ作製からの細胞、および組換えタンパク質の作製のために使用可能な細胞からなる群より選択される。別の具体的な態様において、本発明は、生物学的試料が、好ましくは、マスター細胞バンク、ワーキング細胞バンク、および産生細胞バンクからなる群より選択される細胞バンクからの試料である、生物学的試料中の微生物またはウイルスに由来する少なくとも1種の希少核酸をインビトロで検出するための方法に関する。
【0025】
「核酸」とは、天然または人工のヌクレオチド、好ましくは、デオキシリボ核酸(DNA)および/またはリボ核酸(RNA)を含むポリマー分子を意味するものとする。本発明の方法によると、「希少核酸分子」とは、生物学的試料中に含まれる核酸分子の全量と比較して、この核酸分子の塩基の濃度において、限定された割合または頻度で試料中に存在する分子である。具体的な態様において、本発明は、少なくとも1種の希少核酸分子が、核酸分子の全量と比較した時、約1/10
4〜約1/10
9、好ましくは、約1/10
5〜約1/10
8、より好ましくは、約1/10
6〜約1/10
7に含まれる割合で存在する、生物学的試料中の少なくとも1種の希少核酸分子を検出するための方法に関する。ここで、「約」とは、+/-10%を意味するものとする。本発明による方法の具体的な態様において、「希少核酸分子」とは、微生物またはウイルスの検出限界(LOD)の関数として定義された微生物またはウイルスの核酸分子である。
【0026】
「微生物」とは、真核生物および原核生物の中から選択される微生物性因子または微視的な生物であるものとする。
【0027】
本発明による、生物学的試料中の微生物またはウイルスに由来する少なくとも1種の希少核酸の存在をインビトロで検出するための方法において、生物学的試料からの核酸分子の抽出は、核酸分子および核酸分子を含む生物学的生成物の操作の分野の当業者に周知の、Maniatis T.et al.(Edition 1999)に記載された方法のような、核酸分子を単離するための記載された方法のいずれかによって実施され得る。
【0028】
好ましくは、核酸の抽出は、RNA担体のような担体分子の非存在下ですら高度に効率的である抽出手法を選択することによって実施される。適合した回収をもたらすキットの非限定的な例として、Silica-adembeads(Ademtech)およびNucleoSpin RNA virus(Macherey Nagel)が使用され得る。好ましくは、核酸分子の抽出は、核酸の精製および濃縮のためにいくつかのプロトコルにおいて使用されるRNA担体として定義された分子の非存在下で実施される。実際、RNA担体は、さらなる工程においてマトリックスとして働くことができ、さらなるHTSにおける主な混入配列となり得る。
【0029】
「核酸変性」とは、核酸相補鎖、または単一の核酸鎖の中の核酸相補構造が解離する工程であるものとする。二本鎖核酸分子および二本鎖核酸構造は、相補的なヌクレオチドの間の水素結合を通して非共有結合性の会合によって形成され、核酸変性は、水素結合の破壊によって起こる。G塩基およびC塩基は3個の水素結合によって連結され得、A塩基およびT塩基は2個の水素結合によって連結され得るため、鎖のヌクレオチド組成は、変性・復元のための条件に影響し得る。G塩基およびC塩基を高い割合で含む鎖は、G塩基およびC塩基をより低い割合で含む鎖より変性を受けにくいであろう。核酸変性は可逆性である。当業者は、変性および復元を誘導するための条件を容易に決定するであろう。本発明による方法において、二本鎖核酸分子の変性の誘導は、高温、pH、溶媒、高いイオン濃度、およびアルカリ剤のような、水素結合を不安定化することができる物理的または化学的な作用物質に核酸を供する方法によって達成され得る。酵素剤も、水素結合破壊および変性を誘導し得る場合がある。使用可能な薬剤の例は、カオトロピック要素である。
【0030】
変性が温度の上昇によって誘導された時、核酸変性は可逆性であり、温度の降下の工程によって復元が可能になり、相補鎖が水素結合の形成によって再集合する。変性が、特定の条件の適用または特定の薬剤の添加によって誘導された時には、薬剤からの核酸の抽出をもたらす方法が、核酸の復元を可能にし得る。
【0031】
具体的な態様において、微生物またはウイルスに由来する希少核酸のインビトロでの検出のための本発明による方法は、核酸試料が約85℃〜約105℃、好ましくは、約90℃〜約100℃に含まれる温度、好ましくは、約95℃に置かれる、核酸分子の変性を誘導する工程を含む。「約」という用語は、およそ10%の可能な変動を意味する。試料を加熱することによって誘導された二本鎖変性の後、復元工程は、アニーリング工程における相補的な二本鎖核酸の再会合を可能にするため、初期温度へ徐々に戻すことを含む。これらの方法は、当業者に周知である。具体的な態様において、微生物またはウイルスに由来する希少核酸のインビトロでの検出のための本発明による方法は、核酸が、復元のために必要な時間、好ましくは、少なくとも4時間、約70℃の温度に置かれる、核酸分子の復元を誘導する工程を含む。核酸の変性および復元は、サーマルサイクラーにおいて実施され得、260nmでのUV分光法によって容易にモニタリングされ得る。
【0032】
微生物またはウイルスに由来する少なくとも1種の希少核酸の検出のための方法の具体的な態様において、二本鎖核酸分子の変性の誘導は、変性を誘導するための当業者に公知の方法によって、好ましくは、核酸試料を高温に供することによって、達成される。
【0033】
より具体的な態様において、微生物またはウイルスに由来する希少核酸のインビトロでの検出のための本発明による方法は、核酸が約95℃の温度に置かれる二本鎖核酸分子の変性を誘導する工程、その後、核酸が少なくとも4時間、約70℃の温度に置かれる二本鎖核酸分子の復元を誘導する工程を含む。
【0034】
約70℃に4時間置かれた核酸分子について、約70℃という温度は、復元が極めて特異的に起こることを確実にし、誤った対合を制限する。
【0035】
「二重鎖特異的ヌクレアーゼ」または「二本鎖特異的ヌクレアーゼ」とは、二本鎖のもしくは対合したDNA分子、またはDNA分子内の二本鎖のもしくは対合したDNA構造を特異的に切断する酵素、ならびに、対合したDNA分子およびRNA分子からなる対合した核酸分子を切断する酵素である。
【0036】
二重鎖特異的ヌクレアーゼによる処理は、二本鎖DNA内およびDNA-RNAハイブリッド二重鎖内のDNA分子の特異的な切断をもたらし、一本鎖DNAを顕著には切断しない。具体例として、タラバ(カムチャツカ)ガニの肝膵臓から精製されたDSN(Shagin et al.,2002)を挙げることができる。DSNは、また、短いDNA二重鎖の完全にマッチしたものと不完全にマッチしたものとを区別する。DSNは、全長濃縮cDNA標準化(Zhulidov et al.,2004;Bogdanova et al.,2011a)および次世代配列決定法のための標準化されたRNA-seqライブラリーの構築(Christodoulou et al.,2011)のために広く使用されている。
【0037】
核酸分子の濃縮とは、濃度が初期濃度の少なくとも2倍になるまで、核酸分子を濃縮することに相当する。この濃縮は、後の酵素反応の性能に適合させる。
【0038】
非限定的な例として、核酸分子の濃縮は、smart D-N Ademkitのような抽出キットの使用を介して実施され得る。この手法は、DSN酵素を効率的に除去し、核酸を濃縮する。DSNは、酵素の加熱または物理的抽出のような、酵素を不活化するかまたは排除するための公知の方法によって、不活化されるかまたは排除される。一例として、DSNは、抽出手法smart D-N Ademkitを使用することによって抽出され得る。
【0039】
核酸分子は、当業者に公知の方法を使用することによって増幅される。好ましくは、核酸の増幅は、ローリングサークル増幅(RCA)によって実施される。DNA断片が、まずライゲートされ、次いで、Phi29酵素によって増幅される。Phi29酵素は、ゲノムコピー数が1000ゲノムに近いかまたはそれより小さい場合、小さいゲノムを処理するのには効率的でない。RCA増幅において増幅され得るよう、これらの小さい断片をライゲートするため、ライゲーション工程が実施される。RCAのための市販のキットが、この工程のために使用され得る。好ましくは、RCA手法は、qiagen(登録商標)WTAキットによって実施される。
【0040】
DNAライブラリーは、特定の生物または試料に由来する既知のDNA配列またはcDNA配列を表すDNAまたはcDNAのコレクションである。本発明によるDNAライブラリーのインビトロでの調製のための方法において、DNAライブラリーは、好ましくは、RNA分子の逆転写から入手されたcDNA断片を含むcDNAライブラリーである。NGSにおいて、DNAまたはcDNAの断片は、必要であれば、クローン増幅のためのライブラリーとして直接使用され得る。
【0041】
チェーンターミネーション法(サンガー配列決定法)を含む、核酸分子の配列を決定するための多数の方法のうち、以下の次世代配列決定(NGS)法を挙げることができる:一分子リアルタイム配列決定法(Pacific Bio(登録商標))、イオン半導体(Ion Torrent sequencing)、パイロシーケンシング(454)、シーケンシングバイシンセシス(Sequencing by synthesis)(Illumina(登録商標))、およびシーケンシングバイライゲーション(sequencing by ligation)(SOLiD sequencing)。
【0042】
具体的な態様において、本発明は、工程(a)において、核酸分子がDNA分子、RNA分子、またはそれらの組み合わせを含み、核酸分子の抽出の後に工程(a)のRNA分子の逆転写が実施される、試料中の微生物またはウイルスに由来する少なくとも1種の希少核酸の存在をインビトロで検出するための方法に関する。
【0043】
「RNAの逆転写」という表現は、RNA分子からのcDNA分子の生成のために適合した条件において、試料のRNA分子を逆転写酵素と接触させる方法を定義する。任意の逆転写酵素が本発明による方法において使用され得るが、RNase Hマイナス型転写酵素または低下したRNase H活性を有する転写酵素が好ましい。非限定的な例として、RNA分子の逆転写は、改変型または非修飾型の逆転写酵素(RT)、好ましくは、superscript III RT(Life technologies)を使用して実施される。
【0044】
具体的な態様において、本発明は、工程(g)を実施する前に工程(f)のDNAライブラリーがDSNによって処理される、試料中の微生物またはウイルスに由来する少なくとも1種の希少核酸をインビトロで検出するための方法に関する。
【0045】
具体的な態様において、本発明は、少なくとも1種の希少核酸分子が微生物の核酸分子である、試料中の少なくとも1種の希少核酸分子を検出するための方法に関する。
【0046】
本発明による方法において、微生物または微生物性因子は、酵母、真菌、藻類、原虫のような真核生物、ならびに細菌および古細菌のような原核生物の中から選択される微視的な生物である。細菌には、グラム陽性菌およびグラム陰性菌が含まれる。より具体的な態様において、本発明は、グラム陽性菌、グラム陰性菌、ミコバクテリア、マイコプラズマ、および真菌からなる群より選択される、少なくとも1種の微生物性因子を検出するための方法に関する。希少核酸分子の検出のための方法の具体的な態様において、微生物のゲノムの性質は、二本鎖DNA、一本鎖DNA、二本鎖RNA、および一本鎖RNAからなる群より選択される。
【0047】
具体的な態様において、本発明は、マイコプラズマに由来する少なくとも1種の希少核酸の存在を検出するための方法に関する。より具体的な態様において、本発明は、マイコプラズマ・ハイオリニス(Mycoplasma hyorhinis)、マイコプラズマ・ニューモニエ(Mycoplasma pneumoniae)、アコレプラズマ・レイドロウイ(Acheloplasma laidlawii)、マイコプラズマ・ファーメンタンス(Mycoplasma fermentans)、マイコプラズマ・オラーレ(Mycoplasma orale)、スピロプラズマ・シトリ(Spiroplasma citri)、マイコプラズマ・シノビエ(Mycoplasma synoviae)、マイコプラズマ・ガリセプチカム(Mycoplasma gallisepticum)、およびマイコプラズマ・アルギニニ(Mycoplasma arginini)からなる群より選択されるマイコプラズマに由来する少なくとも1種の希少核酸の存在を検出するための方法に関する。
【0048】
より具体的な態様において、本発明は、マイコプラズマ・オラーレに由来する少なくとも1種の希少核酸の存在を検出するための方法に関する。
【0049】
別の具体的な態様において、本発明は、少なくとも1種の希少核酸分子がウイルスの核酸分子である、試料中の少なくとも1種の希少核酸分子を検出するための方法に関する。
【0050】
具体的な態様において、本発明は、ウイルスのゲノムが被包されている、試料中のウイルスに由来する少なくとも1種の希少核酸分子を検出するための方法に関する。別の具体的な態様において、本発明は、ウイルスのゲノムが遊離型である、試料中のウイルスに由来する少なくとも1種の希少核酸分子を検出するための方法に関する。
【0051】
より具体的な態様において、本発明は、ウイルスが二本鎖DNAウイルス、一本鎖DNAウイルス、二本鎖RNAウイルス、および一本鎖RNAウイルスからなる群より選択される、試料中のウイルスに由来する少なくとも1種の希少核酸分子を検出するための方法に関する。さらに具体的な態様において、本発明は、ウイルスが、ゲノムが別々の部分に分割されている「分節型ウイルス」である、試料中のウイルスに由来する少なくとも1種の希少核酸分子を検出するための方法に関する。別のより具体的な態様において、本発明は、ウイルスが、ゲノムが別々の部分に分割されていない「非分節型ウイルス」である、試料中のウイルスに由来する少なくとも1種の希少核酸分子を検出するための方法に関する。
【0052】
より具体的な態様において、本発明は、ウイルスがヒトウイルス、サルウイルス、齧歯類ウイルス、ウマウイルス、ウシウイルス、ブタウイルス、昆虫ウイルス、およびバクテリオファージからなる群より選択される、試料中のウイルスに由来する少なくとも1種の希少核酸分子を検出するための方法に関する。
【0053】
具体的な態様において、本発明は、ウイルスが以下のものからなる群より選択される、生物学的試料中のウイルスに由来する少なくとも1種の希少核酸をインビトロで検出するための方法に関する:
・アデノウイルス科(アデノウイルス5を含む)
・アネロウイルス科
・ボルナウイルス科
・ブニヤウイルス科
・カリシウイルス科(ベシウイルス2117を含む)
・サーコウイルス科(ブタサーコウイルス1型および2型を含む)
・コロナウイルス科
・フィロウイルス科
・フラビウイルス科(BVDV、C型肝炎ウイルス、ウエストナイルウイルスを含む)
・ヘパドナウイルス科(B型肝炎ウイルスを含む)
・ヘペウイルス科(E型肝炎ウイルスを含む)
・ヘルペスウイルス科(HSV、HCMV、EBV、HHV-6、HHV-7、HHV-8を含む)
・オルソミクソウイルス科
・パピローマウイルス科
・パラミクソウイルス科(RSV-A、RSV-Bを含む)
・パルボウイルス科(B19、MVM、PPVを含む)
・ピコルナウイルス科(A型肝炎ウイルスを含む)
・ポリオーマウイルス科(ヒトポリオーマウイルスBKおよびJC、MyCVを含む)
・ポックスウイルス科
・レオウイルス科
・レトロウイルス科(ヒト免疫不全ウイルス、マウス白血病ウイルスを含む)
・ラブドウイルス科、ならびに
・トガウイルス科
【0054】
より具体的な態様において、本発明は、ウイルスがウシウイルス性下痢症ウイルス(BVDV);ウシアデノウイルス3型(BAV3);ウシパルボウイルス(BPV);ブルータングウイルス(BTV)、BT-2株;ウシシンシチウムウイルス(BRSV)、TN株;レオウイルス3型(Reo3)、アブニー(Abney)株、MLV、PPV、インフルエンザB、FluA H3N8、および狂犬病ウイルスからなる群より選択される、生物学的試料中のウイルスに由来する少なくとも1種の希少核酸をインビトロで検出するための方法に関する。
【0055】
より具体的な態様において、本発明は、ウイルスの特異的な検出が、以下のものからなる群より選択される少なくとも1種、好ましくは、2種の特異的なプライマーを使用することによって実施される、生物学的試料中のウイルスに由来する少なくとも1種の希少核酸をインビトロで検出するための方法に関する:
(a)Ad5に由来する核酸を検出するための:SEQ ID N°1、SEQ ID N°2、およびSEQ ID N°3の中から選択される配列と同一であるかまたは少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含むプライマー。
(b)BKに由来する核酸を検出するための:SEQ ID N°4、SEQ ID N°5、およびSEQ ID N°6の中から選択される配列と同一であるかまたは少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含むプライマー。
(c)BVDVに由来する核酸を検出するための:SEQ ID N°7、SEQ ID N°8、およびSEQ ID N°9の中から選択される配列と同一であるかまたは少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含むプライマー。
(d)HBVに由来する核酸を検出するための:SEQ ID N°10、SEQ ID N°11、およびSEQ ID N°12の中から選択される配列と同一であるかまたは少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含むプライマー。
(e)FluAに由来する核酸を検出するための:SEQ ID N°13、SEQ ID N°14、およびSEQ ID N°15の中から選択される配列と同一であるかまたは少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含むプライマー。
(f)MLVに由来する核酸を検出するための:SEQ ID N°16、SEQ ID N°17、およびSEQ ID N°18の中から選択される配列と同一であるかまたは少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含むプライマー。
(g)PPVに由来する核酸を検出するための:SEQ ID N°19、SEQ ID N°20、およびSEQ ID N°21の中から選択される配列と同一であるかまたは少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含むプライマー。
(h)Reo3に由来する核酸を検出するための:SEQ ID N°22、SEQ ID N°23、およびSEQ ID N°24の中から選択される配列と同一であるかまたは少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含むプライマー。
【0056】
本発明は、生物学的試料中の微生物またはウイルスに由来する少なくとも1種の希少核酸のインビトロでの検出のための本発明による方法、ならびに少なくとも1種の微生物またはウイルスの存在および/またはレベルについての生物学的試料の特徴決定を含む、生物学的試料の少なくとも1種の微生物またはウイルスの存在および/またはレベルについて特徴決定するための方法にも関する。
【0057】
「少なくとも1種の微生物またはウイルスの存在および/またはレベルについての特徴決定」とは、少なくとも1種の微生物もしくはウイルスの存在もしくは欠如、および/または、存在する場合の、少なくとも1種の微生物もしくはウイルスの量の決定であるものとする。具体的な態様において、生物学的生成物の少なくとも1種の微生物またはウイルスの存在および/またはレベルについての特徴決定のための本発明の方法は、生物学的生成物中の混入している微生物またはウイルスの存在および/またはレベルを決定するための方法である。
【0058】
具体的な態様において、本発明は、微生物がグラム陽性菌、グラム陰性菌、マイコプラズマ、酵母、および真菌からなる群より選択される、生物学的試料中の微生物に由来する少なくとも1種の希少核酸のインビトロでの検出のための本発明による方法、ならびに少なくとも1種の微生物の存在および/またはレベルについての生物学的生成物の特徴決定を含む、生物学的生成物の少なくとも1種の微生物の存在および/またはレベルについて特徴決定するための方法に関する。
【0059】
より具体的な態様において、本発明は、微生物がマイコプラズマ・ハイオリニス、マイコプラズマ・ニューモニエ、アコレプラズマ・レイドロウイ、マイコプラズマ・ファーメンタンス、マイコプラズマ・オラーレ、スピロプラズマ・シトリ、マイコプラズマ・シノビエ、マイコプラズマ・ガリセプチカム、およびマイコプラズマ・アルギニニからなる群より選択されるマイコプラズマである、生物学的生成物中の微生物に由来する少なくとも1種の希少核酸のインビトロでの検出のための本発明による方法、ならびに少なくとも1種の微生物の存在および/またはレベルについての生物学的生成物の特徴決定を含む、少なくとも1種の微生物の生物学的生成物中の存在および/またはレベルについて特徴決定するための方法に関する。
【0060】
別の具体的な態様において、本発明は、ウイルスがアデノウイルス科、アネロウイルス科、ボルナウイルス科、ブニヤウイルス科、カリシウイルス科、サーコウイルス科、コロナウイルス科、フィロウイルス科、フラビウイルス科、ヘパドナウイルス科、ヘペウイルス科、ヘルペスウイルス科、オルソミクソウイルス科、パピローマウイルス科、パラミクソウイルス科、パルボウイルス科、ピコルナウイルス科、ポリオーマウイルス科、ポックスウイルス科、レオウイルス科、レトロウイルス科、ラブドウイルス科、およびトガウイルス科からなる群より選択される、生物学的生成物中のウイルスに由来する少なくとも1種の希少核酸のインビトロでの検出のための本発明による方法、ならびに少なくとも1種のウイルスの存在および/またはレベルについての生物学的生成物の特徴決定を含む、少なくとも1種のウイルスの生物学的生成物中の存在および/またはレベルについて特徴決定するための方法に関する。
【0061】
別のさらに具体的な態様において、本発明は、ウイルスがアデノウイルス5、ベシウイルス2117、ブタサーコウイルス1型および2型、C型肝炎ウイルス、ウエストナイルウイルス、B型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルス、HSV、HCMV、EBV、HHV-6、HHV-7、HHV-8、RSV-A、RSV-B、B19、MVM、PPV、A型肝炎ウイルス、ヒトポリオーマウイルスBKおよびJC、MyCV、ヒト免疫不全ウイルス、マウス白血病ウイルス、ウシウイルス性下痢症ウイルス(BVDV);ウシアデノウイルス3型(BAV3);ウシパルボウイルス(BPV);ブルータングウイルス(BTV)、BT-2株;ウシシンシチウムウイルス(BRSV)、TN株;レオウイルス3型(Reo3)、アブニー株;MLV;PPV;インフルエンザB;FluA H3N8;ならびに狂犬病ウイルスからなる群より選択される、生物学的生成物中のウイルスに由来する少なくとも1種の希少核酸のインビトロでの検出のための本発明による方法、ならびに少なくとも1種のウイルスの存在および/またはレベルについての生物学的生成物の特徴決定を含む、少なくとも1種のウイルスの生物学的生成物中の存在および/またはレベルについて特徴決定するための方法に関する。
【0062】
別の具体的な態様において、生物学的生成物の少なくとも1種の微生物またはウイルスの存在および/またはレベルについての特徴決定のための本発明の方法は、少なくとも1種の微生物またはウイルスの存在および/またはレベルの決定が、特定の生物学的生成物における所定の微生物またはウイルスの既知の許容される存在および/またはレベルと比較される、生物学的生成物の安全性を評価するための方法である。
【0063】
別の具体的な態様において、本発明は、生物学的生成物中の微生物またはウイルスに由来する少なくとも1種の希少核酸のインビトロでの検出が、製造過程の少なくとも2つの異なる段階で実施される、本発明による生物学的試料中の微生物またはウイルスに由来する少なくとも1種の希少核酸のインビトロでの検出のための方法を含む、生物学的生成物の調製のための製造過程を評価するための方法に関する。
【0064】
より具体的な態様において、本発明は、微生物がグラム陽性菌、グラム陰性菌、マイコプラズマ、酵母、および真菌からなる群より選択される、生物学的生成物中の微生物に由来する少なくとも1種の希少核酸のインビトロでの検出のための本発明による方法を含む、生物学的生成物の調製のための製造過程を評価するための方法に関する。
【0065】
さらに具体的な態様において、本発明は、微生物がマイコプラズマ・ハイオリニス、マイコプラズマ・ニューモニエ、アコレプラズマ・レイドロウイ、マイコプラズマ・ファーメンタンス、マイコプラズマ・オラーレ、スピロプラズマ・シトリ、マイコプラズマ・シノビエ、マイコプラズマ・ガリセプチカム、およびマイコプラズマ・アルギニニからなる群より選択されるマイコプラズマである、生物学的生成物中の微生物に由来する少なくとも1種の希少核酸のインビトロでの検出のための本発明による方法を含む、生物学的生成物の調製のための製造過程を評価するための方法に関する。
【0066】
別のより具体的な態様において、本発明は、微生物がアデノウイルス科、アネロウイルス科、ボルナウイルス科、ブニヤウイルス科、カリシウイルス科、サーコウイルス科、コロナウイルス科、フィロウイルス科、フラビウイルス科、ヘパドナウイルス科、ヘペウイルス科、ヘルペスウイルス科、オルソミクソウイルス科、パピローマウイルス科、パラミクソウイルス科、パルボウイルス科、ピコルナウイルス科、ポリオーマウイルス科、ポックスウイルス科、レオウイルス科、レトロウイルス科、ラブドウイルス科、およびトガウイルス科からなる群より選択されるウイルスである、生物学的生成物中の微生物に由来する少なくとも1種の希少核酸のインビトロでの検出のための本発明による方法を含む、生物学的生成物の調製のための製造過程を評価するための方法に関する。
【0067】
別のより具体的な態様において、本発明は、微生物がアデノウイルス5、ベシウイルス2117、ブタサーコウイルス1型および2型、C型肝炎ウイルス、ウエストナイルウイルス、B型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルス、HSV、HCMV、EBV、HHV-6、HHV-7、HHV-8、RSV-A、RSV-B、B19、MVM、PPV、A型肝炎ウイルス、ヒトポリオーマウイルスBKおよびJC、MyCV、ヒト免疫不全ウイルス、マウス白血病ウイルス、ウシウイルス性下痢症ウイルス(BVDV);ウシアデノウイルス3型(BAV3);ウシパルボウイルス(BPV);ブルータングウイルス(BTV)、BT-2株;ウシシンシチウムウイルス(BRSV)、TN株;レオウイルス3型(Reo3)、アブニー株、MLV、PPV、インフルエンザB、FluA H3N8、ならびに狂犬病ウイルスからなる群より選択されるウイルスである、生物学的生成物中の微生物に由来する少なくとも1種の希少核酸のインビトロでの検出のための本発明による方法を含む、生物学的生成物の調製のための製造過程を評価するための方法に関する。
【0068】
別の具体的な態様において、本発明は、ウイルスがアデノウイルス科、アネロウイルス科、ボルナウイルス科、ブニヤウイルス科、カリシウイルス科、サーコウイルス科、コロナウイルス科、フィロウイルス科、フラビウイルス科、ヘパドナウイルス科、ヘペウイルス科、ヘルペスウイルス科、オルソミクソウイルス科、パピローマウイルス科、パラミクソウイルス科、パルボウイルス科、ピコルナウイルス科、ポリオーマウイルス科、ポックスウイルス科、レオウイルス科、レトロウイルス科、ラブドウイルス科、およびトガウイルス科からなる群より選択される、生物学的生成物中のウイルスに由来する少なくとも1種の希少核酸のインビトロでの検出のための本発明による方法、ならびに少なくとも1種のウイルスの存在および/またはレベルについての生物学的生成物の特徴決定を含む、少なくとも1種のウイルスの生物学的生成物中の存在および/またはレベルについて特徴決定するための方法に関する。
【0069】
別の具体的な態様において、本発明は、ウイルスがアデノウイルス5、ベシウイルス2117、ブタサーコウイルス1型および2型、C型肝炎ウイルス、ウエストナイルウイルス、B型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルス、HSV、HCMV、EBV、HHV-6、HHV-7、HHV-8、RSV-A、RSV-B、B19、MVM、PPV、A型肝炎ウイルス、ヒトポリオーマウイルスBKおよびJC、MyCV、ヒト免疫不全ウイルス、マウス白血病ウイルス、ウシウイルス性下痢症ウイルス(BVDV);ウシアデノウイルス3型(BAV3);ウシパルボウイルス(BPV);ブルータングウイルス(BTV)、BT-2株;ウシシンシチウムウイルス(BRSV)、TN株;レオウイルス3型(Reo3)、アブニー株、MLV、PPV、インフルエンザB、FluA H3N8、ならびに狂犬病ウイルスからなる群より選択される、生物学的生成物中のウイルスに由来する少なくとも1種の希少核酸のインビトロでの検出のための本発明による方法、ならびに少なくとも1種のウイルスの存在および/またはレベルについての生物学的生成物の特徴決定を含む、少なくとも1種のウイルスの生物学的生成物中の存在および/またはレベルについて特徴決定するための方法に関する。
【0070】
別の具体的な態様において、本発明は、本発明による試料中の微生物またはウイルスに由来する少なくとも1種の希少核酸のインビトロでの検出のための方法、および検出方法において生成されたDNAライブラリーの分子の核酸配列からの少なくとも1種の微生物またはウイルスの同定の工程を含む、生物学的試料中の少なくとも1種の微生物またはウイルスを同定するための方法に関する。
【0071】
より具体的な態様において、本発明は、試料中の少なくとも1種の希少核酸分子の検出のための方法におけるDSNの使用に関する。
【0072】
より具体的な態様において、本発明は、核酸分子が少なくとも核酸分子を増幅する工程の前にDSNと接触させられる、本発明による試料中の微生物またはウイルスの少なくとも1種の希少核酸分子の検出のための方法におけるDSNの使用に関する。
【0073】
さらに具体的な態様において、本発明は、核酸分子が核酸分子を増幅する工程の前および後にDSNと接触させられる、本発明による試料中の微生物またはウイルスの少なくとも1種の希少核酸の検出のための方法におけるDSNの使用に関する。
【0074】
別の具体的な態様において、本発明は、DSNと、緩衝液、陽性対照、および使用説明書からなる群より選択される少なくとも1種の化合物とを含む、生物学的試料中の微生物またはウイルスに由来する少なくとも1種の希少核酸分子の検出のためのキットに関する。
【0075】
より具体的な態様において、本発明によるキットは、
(a)DSN、
(b)緩衝液、陽性対照、および使用説明書からなる群より選択される少なくとも1種の化合物、ならびに
(c)少なくとも1種の微生物またはウイルスの特異的な検出のために使用可能なプライマー
を含む。より具体的な態様において、本発明によるキットは、
(a)DSN、
(b)緩衝液、陽性対照、および使用説明書からなる群より選択される少なくとも1種の化合物、ならびに
(c)マイコプラズマ・ハイオリニス、マイコプラズマ・ニューモニエ、アコレプラズマ・レイドロウイ、マイコプラズマ・ファーメンタンス、マイコプラズマ・オラーレ、スピロプラズマ・シトリ、マイコプラズマ・シノビエ、マイコプラズマ・ガリセプチカム、およびマイコプラズマ・アルギニニからなる群より選択される少なくとも1種のマイコプラズマの検出のために特異的に設計されている、少なくとも1種の微生物またはウイルスの特異的な検出のために使用可能なプライマー
を含む。
【0076】
別の具体的な態様において、本発明によるキットは、
(a)DSN、
(b)緩衝液、陽性対照、および使用説明書からなる群より選択される少なくとも1種の化合物、ならびに
(c)アデノウイルス科、アネロウイルス科、ボルナウイルス科、ブニヤウイルス科、カリシウイルス科、サーコウイルス科、コロナウイルス科、フィロウイルス科、フラビウイルス科、ヘパドナウイルス科、ヘペウイルス科、ヘルペスウイルス科、オルソミクソウイルス科、パピローマウイルス科、パラミクソウイルス科、パルボウイルス科、ピコルナウイルス科、ポリオーマウイルス科、ポックスウイルス科、レオウイルス科、レトロウイルス科、ラブドウイルス科、およびトガウイルス科からなる群より選択される少なくとも1種のウイルスの検出のために特異的に設計されている、少なくとも1種のウイルスの特異的な検出のために使用可能なプライマー
を含む。
【0077】
別の具体的な態様において、本発明によるキットは、
(a)DSN、
(b)緩衝液、陽性対照、および使用説明書からなる群より選択される少なくとも1種の化合物、ならびに
(c)アデノウイルス5、ベシウイルス2117、ブタサーコウイルス1型および2型、C型肝炎ウイルス、ウエストナイルウイルス、B型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルス、HSV、HCMV、EBV、HHV-6、HHV-7、HHV-8、RSV-A、RSV-B、B19、MVM、PPV、A型肝炎ウイルス、ヒトポリオーマウイルスBKおよびJC、MyCV、ヒト免疫不全ウイルス、マウス白血病ウイルス、ウシウイルス性下痢症ウイルス(BVDV);ウシアデノウイルス3型(BAV3);ウシパルボウイルス(BPV);ブルータングウイルス(BTV)、BT-2株;ウシシンシチウムウイルス(BRSV)、TN株;レオウイルス3型(Reo3)、アブニー株;MLV、PPV、インフルエンザB、FluA H3N8、ならびに狂犬病ウイルスからなる群より選択される少なくとも1種のウイルスの検出のために特異的に設計されている、少なくとも1種のウイルスの特異的な検出のために使用可能なプライマー
を含む。
【0078】
さらに具体的な態様において、本発明によるキットは、以下のものを含む:
・DSN、
・緩衝液、陽性対照、および使用説明書からなる群より選択される少なくとも1種の化合物、ならびに
・以下のものからなる群より選択される、少なくとも1種のウイルスの特異的な検出のために使用可能な少なくとも1種のプライマー:
(a)Ad5に由来する核酸を検出するための:SEQ ID N°1、SEQ ID N°2、およびSEQ ID N°3からなる群より選択される配列と同一であるかまたは少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を有するプライマー。
(b)BKに由来する核酸を検出するための:SEQ ID N°4、SEQ ID N°5、およびSEQ ID N°6からなる群より選択される配列と同一であるかまたは少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を有するプライマー。
(c)BVDVに由来する核酸を検出するための:SEQ ID N°7、SEQ ID N°8、およびSEQ ID N°9からなる群より選択される配列と同一であるかまたは少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を有するプライマー。
(d)HBVに由来する核酸を検出するための:SEQ ID N°10、SEQ ID N°11、およびSEQ ID N°12からなる群より選択される配列と同一であるかまたは少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を有するプライマー。
(e)FluAに由来する核酸を検出するための:SEQ ID N°13、SEQ ID N°14、およびSEQ ID N°15からなる群より選択される配列と同一であるかまたは少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を有するプライマー。
(f)MLVに由来する核酸を検出するための:SEQ ID N°16、SEQ ID N°17、およびSEQ ID N°18からなる群より選択される配列と同一であるかまたは少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を有するプライマー。
(g)PPVに由来する核酸を検出するための:SEQ ID N°19、SEQ ID N°20、およびSEQ ID N°21からなる群より選択される配列と同一であるかまたは少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を有するプライマー。
(h)Reo3に由来する核酸を検出するための:SEQ ID N°22、SEQ ID N°23、およびSEQ ID N°24からなる群より選択される配列と同一であるかまたは少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を有するプライマー。
【0079】
以下の例および図面は、例示の目的のためにのみ本明細書に提供され、特記しない限り限定的なものではない。
【実施例】
【0080】
実施例1:検出のために必要とされるリードの数の評価
表1は、混入された宿主から調製された試料における、公知の最小のウイルスゲノムであるPCV1およびより大きいウイルスゲノムサイズを表すPRVの1ウイルス粒子の検出のために生成される必要のあるリードの数を要約したものである。表1は、ウイルスゲノムが、1μgまたは1ngのいずれかの全核酸分子を含む試料中に存在し、配列がNGSプロトコルを使用した時に均一に増幅されるという仮定に基づく。
【0081】
【表1】
【0082】
リードの数は、ウイルスゲノムのサイズに依存し、小さいゲノムサイズでは、より大きいゲノムサイズと比較して、log10で2桁、リードの数が増加する。NGS装置の能力は増加しているが、リードの総数は装置の能力にとってあまりに重要であり得る。
【0083】
実施例2:希少核酸の増幅に対するDSN処理の効果
ヒトMRC5細胞からの上清を入手し、qPCR検出の限界、対応する定量的(RT)-PCRのLODに近いウイルス濃度で、異なる型のゲノムを有するウイルスを人為的に添加した。以下のウイルスを添加した:ヒトアデノウイルス5型(HADV-5またはアデノ5またはAde5;A 549細胞において産生され滴定された)、パルボウイルスB19(B19、World Health Organizationストック、NIBSC 99/800、国際単位で表された力価)、ヒトポリオーマウイルスBK(BK ATCC-837)、ウシウイルス性下痢症ウイルスのNADL株(MDBK細胞において産生され滴定されたBVDV-l-NADLまたはBVDV)、B型肝炎ウイルス(HBV、WHOストック、NIBSC 97/750、IUで表された力価)、ウマインフルエンザウイルスA(InfAまたはFluA H3N8、MDCK細胞において産生され定量的PCRによって1ml当たりのゲノムコピー(gc)で滴定された)、モロニーマウス白血病ウイルス(MoMLV ATCC VR-190、NIH/3T3において産生されFg10S+L-細胞において滴定された)、ブタパルボウイルス(PPV、VR-742、ST細胞において産生され滴定された)、およびレオウイルス3型(またはReo3、ATCC VR-232、Vero細胞において産生され滴定された)。
【0084】
表2は、試験されたウイルス、起源、および検出限界(LOD)の関数としての希釈を要約したものである。
【0085】
【表2】
【0086】
最初に、DSN処理の非存在下で、希少ウイルス核酸の増幅を18S RNA配列(18S)の増幅と比較するため、特異的リアルタイムPCRアッセイを実施した。
【0087】
PCRアッセイのために使用されたプライマーの核酸配列は、以下の通りである:
【0088】
B19についてのqPCRの感度は、Cheval et al.,(2011)に記載されている。
【0089】
製造業者の説明に従い、QIAamp viral RNA miniキット(Qiagen)によって、核酸抽出手法を実施した:140μLの試料を抽出し、核酸(DNAおよびRNA)を100μlの最終体積で溶出させた。製造業者の説明に従い、Reverse Transcriptase SuperScript III(Invitrogen Inc.)を使用して、溶出画分に対して逆転写を実施した。
【0090】
試料を以下の方法のいずれかによって処理した:
(1)製造業者の説明(Berthet et al.,2008)に従い、逆転写酵素によって核酸を処理し、その後のRCAによる増幅は行わなかった。BVDV、HBV、およびPPVについて、qPCRアッセイにおける定量サイクル(Quantification cycle)(Cq)を決定し、次いで、18S RNA配列のCqを差し引いた。試験された3種のウイルスの各々について、遺伝子特異的マトリックスCqとRNA 18S Cqとの間の差は、14Cq〜18Cqに含まれる(
図1、左の明るいバー)。
(2)核酸を抽出し、逆転写酵素によって処理し、次いで、RCAによって増幅した。BVDV、HBV、およびPPVについて、qPCRアッセイにおける定量サイクル(Cq)を決定し、次いで、18S RNA配列のCqを差し引いた。BVDV配列、HBV配列、およびPPV配列は、18S配列より少なく増幅された。PPV配列はRCA増幅後に検出されなかったため、PPVについてのCqはPCRプログラムの終点に対応する45と定義された;従って、Cqの間の差は33である。マトリックスCqとRNA 18S Cqとの間の差は、およそ19〜およそ33Cqに含まれる(
図1、右の暗いバー)。従って、希少遺伝子特異的増幅と18S増幅との間の差は、RCA増幅後により高くなり、これはバイアスのかかった増幅を示す。
【0091】
第2の工程において、DSN処理を含む本発明による方法を実施した後、希少ウイルス核酸の増幅を18S RNA配列(18S)の増幅と比較するため、特異的リアルタイムPCRアッセイを実施した。
【0092】
製造業者の説明に従い、Silica Adembeadsキット(Ademtech)によって、核酸抽出手法を実施した:250μLの試料を抽出し、核酸(DNAおよびRNA)を60μlの最終体積で溶出させた。製造業者の説明に従い、Reverse Transcriptase SuperScript III(Invitrogen Inc.)を使用して、28μlの溶出画分に対して逆転写を実施した。
【0093】
試料を以下の方法のいずれかによって処理した:
(1)核酸を抽出し、次いで、逆転写酵素によって処理し、RCAによる増幅は行わなかった。Ade5、BK、BVDV、HBV、InfA、PPV、およびReo3について、qPCRアッセイにおいて定量サイクル(Cq)を決定し、次いで、18S RNA配列のCqを差し引いた。試験されたウイルスの各々について、遺伝子特異的マトリックスCqとRNA 18S Cqとの間の差は、11Cq〜17Cqに含まれていた(
図2、右の暗いバー)。
(2)核酸を抽出し、逆転写酵素によって処理し、DSNによって処理し、次いで、RCAによって増幅した(本発明の方法)。qPCRアッセイにおいて検出されたAde5、B19、BK、BVDV、HBV、InfA、MLV、MVM、PPV、およびReo3についての定量サイクル(Cq)から、18S RNA(18S)配列のCqを差し引いた(
図2、左の明るいバー)。
【0094】
本発明によって試料をDSN処理および濃縮処理に供した時、ウイルス配列と18S配列との間の比は、試料を増幅した時と増幅しなかった時とで、ほぼ同一であり、これは、バイアスのない増幅法を示唆する。核酸を、RCA増幅なしで、抽出、次いで、RT処理に供した時、18S配列と比較して、およそ12および17Cqの差が、3マトリックスの間に見出された。本発明の方法によって、核酸を、抽出、次いで、RT処理、次いで、DSN処理、濃縮、およびRCA増幅に供した時、ウイルス配列は、およそ8Cqおよび21Cqの、18S配列と比較した3マトリックスの差を示す。
【0095】
バイアス増幅現象は、同一反応において、より多数の配列と比較された時、はるかに検出されにくく増幅されにくい、標的の低い頻度に基づく。これは、主に宿主の核酸の配列決定をもたらし、混入物の検出の欠如をもたらし得る。これは、混入物が高レベルの宿主核酸を含有している生物学的試料の中に分散している時、低レベルの混入物の検出においてHTSを使用するには有害であり得る。
【0096】
本発明による方法によって調製された希少核酸の増幅効率の比較は、この方法が核酸のバイアスのない増幅を可能にすることを示す。
【0097】
実施例3:qPCR、先行技術の方法におけるNGS、および本発明の方法による検出の感度の比較
実施例1に記載されたように、9種の異なるウイルスを、ウイルスのqPCR検出の限界に近い濃度で、MRC5上清に人為的に添加した。各ウイルスについて、2通りの試料を調製した:
− LODの0.8倍のウイルス濃度(ミックス1)
− LODの3倍のウイルス濃度(ミックス2)
【0098】
本発明の方法(NGS法2)の感度を、qPCRおよび先行技術において記載されたNGS法1の感度と比較することを可能にするため、ウイルス希釈は、NGS法(NGS法1)を記載しているCheval et al.,(2011)に以前に発表されたものと同一である。以下の表3は、ウイルスの名称および参照を要約したものである。
【0099】
【表3】
【0100】
・NGS法1(Cheval et al.,2011)
150μlの体積の各試料を、nucleospin RNA virusキット(Macherey-Nagel)を使用して抽出し、次いで、バクテリオファージPhi29ポリメラーゼに基づく多置換増幅(MDA)によって増幅した。
・NGS法2(本発明)
製造業者の説明に従い、Silica Adembeadsキット(Ademtech)によって、核酸抽出手法を実施した:250μLの試料を抽出し、核酸(DNAおよびRNA)を60μlの最終体積で溶出させた。Reverse Transcriptase SuperScript III(Invitrogen Inc.)(Berthet et al,2008)を使用して、28μlの溶出画分に対して逆転写を実施した。
【0101】
RT工程の後にDSN処理を実施した:70μlのRT反応物を、22.75μlの4×ハイブリダイゼーション緩衝液(Hepes NaCl 1M EDTA)と混合し、98℃で3分間、熱変性させた。次いで、反応物を、70℃に4時間維持した後、10.5μlの予熱された2×DSN緩衝液および1.75μlのDSN酵素(Evrogen)を添加し、反応物を70℃で10分間インキュベートした。100μlの2×停止反応物を添加することによって反応を停止させ、DSNを除去し、前工程において希釈された核酸を濃縮するため、smart抽出に供した。製造業者の説明に従い、200μlの試料を200μlの溶解緩衝液、200μlの結合緩衝液、および2μlのSmart D-N-Adembeads(Ademtech)と混合した。混合物を、5分間のインキュベーションの間に2回混合し、5分間、10μlの水によって溶出させた。得られた核酸分子を、ライゲーションに供し、製造業者の説明に従い、QuantiTect Whole Transcriptomeキット(Qiagen)を使用することによって増幅した。
【0102】
結果
表4は、各ウイルスについて、NGS法1およびNGS法2(本発明の方法)についての検出された配列の数、ならびにqPCRによる検出頻度を提示する。
【0103】
表4は、各方法および各条件(ミックス1およびミックス2)についての検出されたウイルスの頻度も要約している。
【0104】
【表4】
【0105】
ミックス1(0.8LOD)について、qPCR、NGS法1、およびNGS法2は、それぞれ、10種のウイルスのうちの7種、4種、および9種を検出した。ミックス2(3LOD)について、qPCR、NGS法1、およびNGS法2は、それぞれ、10種のウイルスのうちの9種、7種、および9種を検出した。
【0106】
核酸試料の調製のための本発明による方法を使用することによって、10種のウイルスのうちの9種が、ミックス1およびミックス2の両方について検出され、これは、本発明による方法が効率的であることを示している。これはqPCRおよびNGS法1を使用した時には当てはまらない。本発明の方法の感度は、qPCRの感度より優れている。NGS法1より優れているNGS法2の感度は、本発明の方法によるDSNの使用および濃縮工程によって提供される技術的な効果を証明している。
【0107】
実施例4:生物学的試料中のウイルスおよび細菌の配列の検出
以下の表5に記載されるように、病原体のqPCR検出の限界に近い濃度で、3種の異なるウイルスおよび1種のマイコプラズマ種を含む、4種の異なる病原体を、細胞上清に人為的に添加した。マイコプラズマ・オラーレは、およそ680kpbの二本鎖DNAから構成されたゲノムを特徴とする。
【0108】
【表5】
【0109】
使用されたプロトコルは、実施例3と同一である。
【0110】
製造業者の説明に従い、Silica Adembeadsキット(Ademtech)によって、核酸抽出手法を実施した:250μLの試料を抽出し、核酸(DNAおよびRNA)を60μlの最終体積で溶出させた。Reverse Transcriptase SuperScript III(Invitrogen Inc.)(Berthet et al,2008)を使用して、28μlの溶出画分に対して逆転写を実施した。
【0111】
RT工程後にDSN処理を実施した:70μlのRT反応物を、22.75μlの4×ハイブリダイゼーション緩衝液(Hepes NaCl 1M EDTA)と混合し、98℃で3分間、熱変性させた。次いで、反応物を、70℃で4時間維持した後、10.5μlの予熱された2×DSN緩衝液および1.75μlのDSN酵素(Evrogen)を添加し、反応物を70℃で10分間インキュベートした。100μlの2×停止反応物を添加することによって反応を停止させ、DSNを除去し、前工程において希釈された核酸を濃縮するため、smart抽出に供した。製造業者の説明に従い、200μlの試料を、200μlの溶解緩衝液、200μlの結合緩衝液、および2μlのSmart D-N-Adembeads(Ademtech)と混合した。混合物を、5分間のインキュベーションの間に2回混合し、5分間、70℃の10μlの水によって溶出させた。得られた核酸分子をライゲーションに供し、製造業者の説明に従い、QuantiTect Whole Transcriptomeキット(Qiagen)を使用することによって増幅した。
【0112】
PCRアッセイのために使用されたプライマーの核酸配列は、以下の通りである:
【0113】
結果
表6は、各病原体について、本発明の方法(「NGS」)を使用することによって検出された配列の数、およびqPCRによって検出された、閾値に達した時のサイクル数(Cp)を提示する。
【0114】
【表6】
【0115】
本発明の方法は、公知の最小の哺乳動物ウイルスPCV-1、および細菌科に属するマイコプラズマ種を検出した。
【0116】
核酸試料を調製するための本発明による方法を使用することによって、ウイルスおよび細菌の配列に属する希少な微生物学的配列を検出し同定することが可能である。
【0117】
実施例5:抽出に依る本発明の方法の感度
異なる抽出キットを使用することによって実施された核酸抽出の後、本発明の方法およびqPCRの感度を比較した。およそ1 LODおよび0.1 LODのウイルスゲノムに相当する極めて低レベルのウイルスが添加された2通りの試料をMRC5上清で調製し、それぞれ、ミックスBおよびミックスCと名付けた。表7は、ウイルスの名称、起源、および希釈を提示する。
【0118】
【表7】
【0119】
抽出手法は、実施例3に提示されたのと同一であった。1 LODミックスおよびqPCR決定については、3種の抽出キット:Qiagen(QIAamp viral RNA miniキット)、Macherey Nagel(MN)(NucleoSpin RNA virus)、およびAdemtech(Silica adembeads extractionキット)を評価し、0.1 LODミックスについては、2種の抽出キット:Qiagen(QIAamp viral RNA miniキット)およびMacherey Nagel(MN)(NucleoSpin RNA virus)を評価した。
【0120】
結果
以下の表8は、抽出キットの各々を使用した後にqPCRを実施することによって入手された検出された配列の数およびCq、ならびに本発明による方法を使用することによって検出された異なる配列の数を提示する。qPCR検出について、太字の下線が引かれた数字は、ウイルス配列のデュプリケートの検出を示し、普通の数字は、1配列のみが検出されたことを示す。
【0121】
【表8】
【0122】
結論
より低い感度がMacherey NagelおよびAdemtechのキットに起因し得るが、3種のキットは全て類似した検出レベルを示す。本発明による方法による試料調製は、ミックスB(1 LOD)において検出された9種のウイルスのうちの8種の検出を可能にし、このことは、本発明の方法が、この量の混入ウイルスについて、qPCRと少なくとも同等の感度を有することを示している。
【0123】
ミックスC(0.1 LOD)においては、9種のウイルスのうちの8種が、本発明の方法を使用することによって検出される。検出されなかった唯一のウイルスは、0.007 LODに相当する極めて低いレベルのMLV添加に相当する。qPCR決定によって、最良の抽出方法(MN)は、9種のウイルスのうちの7種の検出を可能にし、5種のウイルスが50%の頻度で検出され、このことは、qPCRと比較した時の、本発明による方法のより高い感度を確認している。
【0124】
参考文献
【国際調査報告】