(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2016-531586(P2016-531586A)
(43)【公表日】2016年10月13日
(54)【発明の名称】ニコチン塩粒子を発生させるためのエアロゾル発生システム
(51)【国際特許分類】
A24F 47/00 20060101AFI20160916BHJP
A61M 15/00 20060101ALI20160916BHJP
【FI】
A24F47/00
A61M15/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2016-543418(P2016-543418)
(86)(22)【出願日】2014年9月19日
(85)【翻訳文提出日】2016年2月25日
(86)【国際出願番号】EP2014070034
(87)【国際公開番号】WO2015040180
(87)【国際公開日】20150326
(31)【優先権主張番号】13185245.1
(32)【優先日】2013年9月19日
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】596060424
【氏名又は名称】フィリップ・モーリス・プロダクツ・ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(72)【発明者】
【氏名】ズーバー ジェラール
(72)【発明者】
【氏名】ファリーヌ マリー
(72)【発明者】
【氏名】シルヴェストリーニ パトリック チャールズ
(57)【要約】
エアロゾル発生システムは、ニコチン供与源(6)と、ニコチン供与源の下流にある揮発性送達促進化合物供与源(10)であって、揮発性送達促進化合物が酸を含むものと、ニコチン供与源を加熱するように構成された加熱手段(18)と、ニコチン供与源と揮発性送達促進化合物供与源との間を物理的に分離する熱伝達バリア(8)とを含む。加熱手段はニコチン供与源を約80℃〜約150℃の温度に加熱するよう構成されることが好ましい。熱伝達バリアは、使用時に、加熱手段によってニコチン供与源が80℃〜150℃の温度に加熱された時に揮発性送達促進化合物供与源の温度が約50℃より低くなるように構成されることが好ましい。熱伝達バリアは、23℃および相対湿度50%で約1ワット毎メートル毎ケルビン(W/(m・K))未満の熱伝導率を持つ固体材料を備えうる。別の方法として、熱伝達バリアは、少なくとも約8mmの長さを持つくぼみを含みうる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアロゾル発生システムであって、
ニコチン供与源と、
前記ニコチン供与源の下流にある揮発性送達促進化合物供与源であって、前記揮発性送達促進化合物が酸を含むものと、
前記ニコチン供与源を約80℃〜約150℃の温度に加熱するように構成された加熱手段と、
前記ニコチン供与源と前記揮発性送達促進化合物供与源との間を物理的に分離する熱伝達バリアとを含み、
前記加熱手段によって前記ニコチン供与源が80℃〜150℃の温度に加熱された時に、使用時に前記揮発性送達促進化合物供与源の温度が60℃より低くなるように前記熱伝達バリアが構成されている、エアロゾル発生システム。
【請求項2】
前記熱伝達バリアが固体材料またはガス、真空または部分真空またはその組み合わせを含む、請求項1に記載のエアロゾル発生システム。
【請求項3】
前記熱伝達バリアが23℃および相対湿度50%で約1ワット毎メートル毎ケルビン(W/(m・K))未満の熱伝導率を持つ固体材料を備える、請求項2に記載のエアロゾル発生システム。
【請求項4】
前記熱伝達バリアが少なくとも約8mmの長さを持つくぼみを含む、請求項2に記載のエアロゾル発生システム。
【請求項5】
前記ニコチン供与源が収着エレメントおよび収着エレメント上に収着されたニコチンを含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載のエアロゾル発生システム。
【請求項6】
前記揮発性送達促進化合物供与源が収着エレメントおよび前記収着エレメント上に収着された揮発性送達促進化合物を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載のエアロゾル発生システム。
【請求項7】
前記揮発性送達促進化合物がカルボン酸を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載のエアロゾル発生システム。
【請求項8】
前記酸が3−メチル−2−オキソ吉草酸、ピルビン酸、2−オキソ吉草酸、4−メチル−2−オキソ吉草酸、3−メチル−2−オキソブタン酸、2−オキソオクタン酸、乳酸およびこれらの組み合わせから成る群より選択される、請求項7に記載のエアロゾル発生システム。
【請求項9】
前記酸がピルビン酸または乳酸である、請求項8に記載のエアロゾル発生システム。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載のエアロゾル発生システムであって、空気吸込み口および空気出口を含むハウジングを備え、前記ハウジングが空気吸込み口から空気出口へと直列になっていて、
前記空気吸込み口と連通する前記ニコチン供与源を含む第1の区画と、
前記第1の区画と連通する前記揮発性送達促進化合物供与源を含む第2の区画と、
前記第1の区画と前記第2の区画との間を物理的に分離する熱伝達バリアとを備え、
前記空気吸込み口および前記空気出口が相互に連通し、空気が前記空気吸込み口を通して前記ハウジング内に入り、前記ハウジングを通して流れ、前記空気出口を通して前記ハウジングから出るように構成されている、エアロゾル発生システム。
【請求項11】
前記第1の区画と前記第2の区画の一方または両方が、1つ以上の壊れやすいシールによってシールされている、請求項10に記載のエアロゾル発生システム。
【請求項12】
前記第1の区画および前記第2の区画の一方または両方をシールする前記1つ以上の壊れやすいバリアを貫通するための貫通要素をさらに備える、請求項11に記載のエアロゾル発生システム。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載のエアロゾル発生システムであって、
前記ニコチン供与源と、前記揮発性送達促進化合物供与源と、前記熱伝達バリアとを備えるエアロゾル発生物品を備える、エアロゾル発生システム。
【請求項14】
請求項13に記載のエアロゾル発生システムであって、さらに、
前記エアロゾル発生物品と連動するエアロゾル発生装置を備え、前記エアロゾル発生装置が前記エアロゾル発生物品の前記ニコチン供与源を加熱するよう構成された前記加熱手段を備える、エアロゾル発生システム。
【請求項15】
請求項13または14に記載のエアロゾル発生システムで使用するための、エアロゾル発生物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエアロゾル発生システムに関連する。特に、本発明はニコチン塩粒子を含むエアロゾルを発生するためのエアロゾル発生システムに関連する。
【背景技術】
【0002】
ニコチンをユーザーに送達するための、ニコチン供与源および揮発性送達促進化合物供与源を含む装置が知られている。例えば、WO 2008/121610 A1は、ニコチンおよび揮発性送達促進化合物は気相で相互に反応して、ユーザーによって吸い込まれるニコチン塩粒子のエアロゾルを形成する装置を開示している。ところが、WO 2008/121610 A1は、気相におけるニコチンと揮発性送達促進化合物の比を最適化して、ユーザーに送達される未反応のニコチン蒸気および送達促進化合物蒸気の量を最小化する方法に対処していない。
【0003】
例えば、揮発性送達促進化合物の蒸気圧がニコチンの蒸気圧と異なる場合、2つの反応物の蒸気濃度の差異につながることがある。揮発性送達促進化合物とニコチンの間の蒸気濃度の差異は、未反応の送達促進化合物蒸気のユーザーへの送達につながることがある。
【0004】
最小量の反応物を用いてユーザーに送達するための最大量のニコチン塩粒子を生成することが望ましい。従って、ユーザーに送達するためのニコチン塩粒子のエアロゾル形成をさらに改善するWO 2008/121610 A1で開示されているタイプのエアロゾル発生システムを提供することが望ましい。気相ニコチンと反応する気相揮発性送達促進化合物の比を増やすことが特に望ましい。
【発明の概要】
【0005】
本発明によれば、ニコチン供与源と、ニコチン供与源の下流にある揮発性送達促進化合物供与源であって、揮発性送達促進化合物が酸を含むものと、ニコチン供与源を加熱するように構成された加熱手段と、ニコチン供与源と揮発性送達促進化合物供与源との間を物理的に分離する熱伝達バリアとを含む、エアロゾル発生システムが提供されている。
【0006】
本発明によれば、ニコチン供与源と、ニコチン供与源の下流にある揮発性送達促進化合物供与源であって、揮発性送達促進化合物が酸を含むものと、ニコチン供与源を約80℃〜約150℃の温度に加熱するように構成された加熱手段と、ニコチン供与源と揮発性送達促進化合物供与源との間を物理的に分離する熱伝達バリアであって、ニコチン供与源が加熱手段によって約80℃〜約150℃の温度に加熱されている時、使用時に揮発性送達促進化合物供与源の温度が約60℃よりも低くなるように熱伝達バリアが構成されているものとを含む、エアロゾル発生システムが提供されている。
【0007】
一定の実施形態では、熱伝達バリアは、23℃および相対湿度50%で約1ワット毎メートル毎ケルビン(W/(m・K))未満の熱伝導率を持つ固体材料を備える。
【0008】
その他の実施形態で、熱伝達バリアは、少なくとも約8mmの長さを持つくぼみを備える。
【0009】
エアロゾル発生システムは、使用時にユーザーに送達されるために、そこを通してエアロゾルがエアロゾル発生システムを抜け出る近位端を備える。近位端は口側の端と呼ばれることもある。使用時に、エアロゾル発生システムによって発生したエアロゾルを吸い込むために、ユーザーはエアロゾル発生物品の近位端を吸い込む。エアロゾル発生システムは近位端と向かい合った遠位端を備える。
【0010】
「長軸方向」という用語は本明細書で使用される時、エアロゾル発生システムの近位端とそれに向かい合った遠位端との間の方向を描写するために使用され、また「横断」という用語は、長軸方向と直角をなす方向を描写するために使用される。
【0011】
「長さ」は本明細書で使用される時、本発明によるエアロゾル発生システムの成分、または成分の一部分の遠位端と近位端との間の最大長軸方向寸法を意味する。
【0012】
「上流」および「下流」という用語は本明細書で使用される時、ユーザーがエアロゾル発生システムの近位端を吸い込む時の、エアロゾル発生システムを通した気流の方向に対する、本発明によるエアロゾル発生システムの構成要素または構成要素の一部分の相対的な位置を描写するために使用される。
【0013】
ユーザーがエアロゾル発生システムの近位端を吸い込む時、空気はエアロゾル発生システムに引き出され、エアロゾル発生システム内を下流に通過し、近位端でエアロゾル発生システムから出る。
【0014】
エアロゾル発生システムの近位端はまた、下流端と呼ばれることもあり、エアロゾル発生システムの構成要素または構成要素の一部分は、エアロゾル発生システムを近位端に向けて通る気流に対する位置に基づき、相互に上流または下流にあるものとして描写されうる。
【0015】
揮発性送達促進化合物供与源の位置がニコチン供与源の下流にあることで、本発明によるエアロゾル発生システムのニコチン送達の一貫性が都合良く改善される。
【0016】
理論によって束縛されることはないが、本発明によるエアロゾル発生システム内のニコチン供与源の下流にある揮発性送達促進化合物供与源の位置は、使用中にニコチン供与源の揮発性送達促進化合物供与源から放出される揮発性送達促進化合物の蒸着を低減または防止すると考えられる。これによって、本発明によるエアロゾル発生システム内のニコチン送達の時間経過に伴う退色が低減される。
【0017】
熱伝達バリアはニコチン供与源と揮発性送達促進化合物供与源を分離する。熱伝達バリアはニコチン供与源と揮発性送達促進化合物供与源との間の熱伝達を低減するよう構成されている。
【0018】
ニコチン供与源と揮発性送達促進化合物供与源との間に熱伝達バリアを含めることで、本発明によるエアロゾル発生システムの揮発性送達促進化合物供与源をより低い温度に維持することを都合良く可能にしつつ、ニコチン供与源は加熱手段によってより高い温度に加熱される。特に、熱伝達バリアを含めることで、ニコチン供与源の温度を高めつつ、揮発性送達促進化合物供与源を揮発性送達促進化合物の熱分解温度よりも低い温度に維持することで、本発明によるエアロゾル発生システムのニコチン送達を著しく増大することを都合良く可能にする。
【0019】
「熱伝達バリア」は本明細書で使用される時、ニコチン供与源から揮発性送達促進化合物供与源へと伝達される熱の量を、バリアが存在しないエアロゾル発生システムと比較して減少させる物理的バリアを説明するために使用される。物理的バリアは固体材料を含んでもよい。別の方法としてまたはさらに、物理的バリアは、ニコチン供与源と揮発性送達促進化合物供与源との間にガス、真空または部分真空を含んでもよい。
【0020】
熱伝達バリアは、ニコチン供与源と揮発性送達促進化合物供与源を物理的に分離する。「物理的に分離」は本明細書で使用される時、熱伝達バリアがニコチン供与源または揮発性送達促進化合物供与源の部分を形成しないことを意味する。すなわち、本発明によるエアロゾル発生システムは、ニコチン供与源および揮発性送達促進化合物供与源に加えて、熱伝達バリアを備える。
【0021】
加熱手段はニコチン供与源を約80℃〜約150℃の温度に加熱するよう構成されることが好ましい。加熱手段はニコチン供与源を約100℃〜約120℃の温度に加熱するよう構成されることがより好ましい。一定の実施形態では、加熱手段はニコチン供与源を約110℃の温度に加熱するよう構成されることが好ましい。
【0022】
加熱手段はニコチン供与源を約80℃〜約150℃の温度に加熱する能力を持つ任意のヒーターを備えうる。
【0023】
ニコチン供与源と揮発性送達促進化合物供与源の加熱に差異があることにより、ニコチンおよび揮発性送達促進化合物の蒸気濃度の制御と均等なバランスを都合良く可能にし、効率的な反応化学量論を得る。これにより、エアロゾルの形成の効率、およびユーザーへのニコチン送達の一貫性が都合良く改善される。
【0024】
組み合わせると、ニコチン供与源の下流にある揮発性送達促進化合物供与源の位置、およびニコチン供与源と揮発性送達促進化合物供与源との間に熱伝達バリアを含めることは、それによって、本発明によるエアロゾル発生システム内のニコチン送達の変動性を都合良く低減する。特に、組み合わせると、ニコチン供与源の下流にある揮発性送達促進化合物供与源の位置、およびニコチン供与源と揮発性送達促進化合物供与源との間に熱伝達バリアを含めることによって、本発明によるエアロゾル発生システムの使用中に、ニコチン蒸気の揮発性送達促進化合物の蒸気に対するモル比を実質的に一定に保つことを都合良く可能にする。
【0025】
ニコチン蒸気の揮発性送達促進化合物の蒸気に対するモル比を使用時に実質的に一定に保つことを可能にすることで、ニコチン供与源の下流にある揮発性送達促進化合物供与源の位置、およびニコチン供与源と揮発性送達促進化合物供与源との間に熱伝達バリアを含めることはまた、特殊なフィルターまたはその他の揮発性送達促進化合物除去手段を揮発性送達促進化合物供与源の下流に含めることなく、ユーザーへの未反応の送達促進化合物蒸気の送達が低減されることを都合良く可能にする。
【0026】
熱伝達バリアの構造、寸法および物理的特性は、揮発性送達促進化合物供与源を望ましい温度より低く維持するために、ニコチン供与源と揮発性送達促進化合物供与源との間の熱伝達の十分な低減を達成するように選択されうる。
【0027】
熱伝達バリアは、使用時に揮発性送達促進化合物供与源が約60℃より低い温度に維持されるように構成されることが好ましい。熱伝達バリアは、使用時に揮発性送達促進化合物供与源が約50℃より低い温度に維持されるように構成されることがより好ましい。一定の実施形態では、熱伝達バリアは、使用時に揮発性送達促進化合物供与源が約45℃より低い温度に維持されるように構成される。
【0028】
熱伝達バリアは断熱材料で形成されうる。
【0029】
一定の実施形態では、熱伝達バリアは、23℃および相対湿度50%で約1ワット毎メートル毎ケルビン(W/(m・K))未満の熱伝導率を持つ固体材料を備える。好ましくは、熱移動要素は、23℃および相対湿度50%で、改良された非定常平面熱源(MTPS)法を使用して測定して、熱伝導率が約5ワット毎メートル毎ケルビン(W/(m・K))未満である固体材料を含む。より好ましくは、熱移動要素は、23℃および相対湿度50%で、改良された非定常平面熱源(MTPS)法を使用して測定して、熱伝導率が約1ワット毎メートル毎ケルビン(W/(m・K))未満である固体材料を含む。一定の実施形態では、熱移動要素は、23℃および相対湿度50%で、改良された非定常平面熱源(MTPS)法を使用して測定して、熱伝導率が約0.1ワット毎メートル毎ケルビン(W/(m・K))未満である固体材料を含む。
【0030】
熱伝達バリアは、任意の適切な断熱材料を含みうる。断熱材料は食品安全性材料であることが好ましい。適切な断熱材料には、ポリウレタン、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ガラス、紙、厚紙およびセルロース繊維などのプラスチック材料が含まれるが、これに限定されない。当業者であれば、その他の適切な断熱材料を知っているであろう。
【0031】
その他の実施形態で、熱伝達バリアはくぼみを含んでもよい。
【0032】
「くぼみ」という用語は本明細書で熱伝達バリアに関連して使用される時、ガスで充填された空間もしくは区画、または真空や部分真空など空気圧が減少した領域を含む空間もしくは区画を説明するために使用される。くぼみはガスで充填された空間であることが好ましい。くぼみは空気で充填された空間であることがより好ましい。
【0033】
こうした実施形態で、熱伝達バリアは少なくとも約8mmの長さを持つくぼみを備える。こうした実施形態では、熱伝達バリアは少なくとも約9mmの長さを持つくぼみを含むことが好ましい。一定の実施形態で、熱伝達バリアは少なくとも約10mmの長さを持つくぼみを備える。
【0034】
本発明によるエアロゾル発生システムは揮発性送達促進化合物供与源を含む。揮発性送達促進化合物は酸を含む。「揮発性」は本明細書で使用される時、送達促進化合物の蒸気圧が少なくとも約20Paであることを意味する。特に明記しない限り、本明細書で言及したすべての蒸気圧は、ASTM E1194−07に従い測定された25℃での蒸気圧である。
【0035】
揮発性送達促進化合物の25℃での蒸気圧は、少なくとも約50Paであることが好ましく、少なくとも約75Paであることがより好ましく、少なくとも100Paであることが最も好ましい。
【0036】
揮発性送達促進化合物の25℃での蒸気圧は約400Pa以下であることが好ましく、約300Pa以下がより好ましく、約275Pa以下がさらにより好ましく、約250Pa以下が最も好ましい。
【0037】
一定の実施形態で、揮発性送達促進化合物の25℃での蒸気圧は、約20Pa〜約400Paの間としうるが、約20Pa〜約300Paの間がより好ましく、約20Pa〜約275Paの間がさらにより好ましく、約20Pa〜約250Paの間が最も好ましい。
【0038】
その他の実施形態で、揮発性送達促進化合物の25℃での蒸気圧は、約50Pa〜約400Paの間としうるが、約50Pa〜約300Paの間がより好ましく、約50Pa〜約275Paの間がさらにより好ましく、約50Pa〜約250Paの間が最も好ましい。
【0039】
さらなる実施形態で、揮発性送達促進化合物の25℃での蒸気圧は、約75Pa〜約400Paの間としうるが、約75Pa〜約300Paの間がより好ましく、約75Pa〜約275Paの間がさらにより好ましく、約75Pa〜約250Paの間が最も好ましい。
【0040】
なおさらなる実施形態で、揮発性送達促進化合物の25℃での蒸気圧は、約100Pa〜約400Paの間としうるが、約100Pa〜約300Paの間がより好ましく、約100Pa〜約275Paの間がさらにより好ましく、約100Pa〜約250Paの間が最も好ましい。
【0041】
揮発性送達促進化合物は単一の化合物を含みうる。別の方法として、揮発性送達促進化合物は2つ以上の異なる化合物を含みうる。
【0042】
揮発性送達促進化合物が2つ以上の異なる化合物を含む場合、2つ以上の異なる化合物の組み合わせの25℃での蒸気圧は少なくとも約20Paである。
【0043】
揮発性送達促進化合物は揮発性の液体であることが好ましい。
【0044】
揮発性送達促進化合物は、2つ以上の異なる液体化合物の混合物を含みうる。
【0045】
揮発性送達促進化合物は、1つ以上の化合物の水溶液を含みうる。別の方法としては、揮発性送達促進化合物は、1つ以上の化合物の非水溶液を含みうる。
【0046】
揮発性送達促進化合物は2つ以上の異なる揮発性化合物を含みうる。例えば、揮発性送達促進化合物は、2つ以上の異なる揮発性液体化合物の混合物を含みうる。
【0047】
別の方法として、揮発性送達促進化合物は、1つ以上の不揮発性化合物および1つ以上の揮発性化合物を含みうる。例えば、揮発性送達促進化合物は、揮発性溶媒中の1つ以上の不揮発性化合物の溶液または1つ以上の不揮発性液体化合物および1つ以上の揮発性液体化合物の混合物を含みうる。
【0048】
揮発性送達促進化合物は酸を含む。揮発性送達促進化合物は有機酸または無機酸を含みうる。揮発性送達促進化合物は有機酸を含むことが好ましく、カルボン酸がより好ましい。一定の好ましい実施形態で、揮発性送達促進化合物は2−オキソ酸を含む。一定の好ましい実施形態で、揮発性送達促進化合物はα−ヒドロキシ酸を含む。
【0049】
適切なカルボン酸の例は、3−メチル−2−オキソペンタン酸、ピルビン酸、2−オキソペンタン酸、4−メチル−2−オキソペンタン酸、3−メチル−2−オキソブタン酸、2−オキソオクタン酸、乳酸およびこれらの組み合わせから成る群より選択された酸を含む。特に好ましい実施形態で、揮発性送達促進化合物はピルビン酸または乳酸を含む。
【0050】
1つの好ましい実施形態で、揮発性送達促進化合物供与源は、収着エレメントと、収着エレメントに収着された揮発性送達促進化合物とを含む。
【0051】
「収着された」は本明細書で使用される時、揮発性送達促進化合物が収着エレメントの表面上に吸着された、または収着エレメント中に吸収された、または収着エレメント上に吸着されて収着エレメント中に吸収されたことを意味する。揮発性送達促進化合物は収着エレメント上に吸着されることが好ましい。
【0052】
収着エレメントを任意の適切な材料または材料の組み合わせから形成しうる。例えば、収着エレメントはガラス、ステンレス鋼、アルミニウム、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)およびこれらの組み合わせの1つ以上を含みうる。例えば、収着エレメントはPEとPETの両方を含みうる。
【0053】
好ましい実施形態で、収着エレメントは多孔性収着エレメントである。
【0054】
例えば、収着エレメントは、多孔性プラスチック材料、多孔性重合体繊維および多孔性ガラス繊維から成る群より選択された1つ以上の材料を含む多孔性収着エレメントであってもよい。
【0055】
収着エレメントは揮発性送達促進化合物に対して化学的に不活性であることが好ましい。
【0056】
収着エレメントは適切な任意のサイズおよび形状を有しうる。
【0057】
好ましい一定の実施形態において、収着エレメントは実質的に円柱状のプラグである。特に好ましい一定の実施形態において、収着エレメントは多孔性の実質的に円柱状のプラグである。
【0058】
好ましい他の実施形態で、収着エレメントは実質的に円柱状の中空管である。特に好ましい他の実施形態で、収着エレメントは多孔性の実質的に円柱状の中空管である。
【0059】
収着エレメントのサイズ、形状および組成物は、揮発性送達促進化合物の所望量が収着エレメント上に収着されるのを可能にするように選んでもよい。
【0060】
揮発性送達促進化合物供与源は、ユーザーに送達するために望ましい量のエアロゾルを発生するために、十分な揮発性送達促進化合物を備えるべきである。
【0061】
収着エレメントは、揮発性送達促進化合物のための貯蔵部としての役割を都合良く果たす。
【0062】
本発明によるエアロゾル発生システムはまた、ニコチン供与源も備える。ニコチンは、25℃で約5Pa〜約6Paの蒸気圧を持つ。
【0063】
ニコチン供与源は1つ以上のニコチン、ニコチン塩基、ニコチン塩(ニコチン−HCl、ニコチン酒石酸塩またはニコチン二酒石酸塩など)、またはニコチン誘導体を含みうる。
【0064】
ニコチン供与源は天然ニコチンまたは合成ニコチンを含みうる。
【0065】
ニコチン供与源は純粋なニコチン、水性溶媒または非水溶媒におけるニコチンの溶液、あるいは液体たばこ抽出物を含みうる。
【0066】
ニコチン供与源は電解質形成化合物をさらに含みうる。電解質形成化合物はアルカリ金属水酸化物、アルカリ金属酸化物、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ土類金属水酸化物およびこれらの組み合わせから成る群より選択しうる。
【0067】
例えば、ニコチン供与源は、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、酸化リチウム、酸化バリウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、硫酸アンモニウムおよびこれらの組み合わせから成る群より選択された電解質形成化合物を含んでもよい。
【0068】
一定の実施形態で、ニコチン供与源はニコチン、ニコチン塩基、ニコチン塩またはニコチン誘導体および電解質形成化合物の水溶液を含みうる。
【0069】
別の方法としてまたは追加的に、ニコチン供与源は天然風味、人工風味および酸化防止剤を含むがこれに限定されないその他の成分をさらに含みうる。
【0070】
ニコチン供与源は収着エレメントおよび収着エレメントに収着されたニコチンを含みうる。
【0071】
本明細書に使用される「収着された」は、ニコチンが収着エレメントの表面上に吸着された、または収着エレメント中に吸収された、または収着エレメント上に吸着された、および中に吸収されたことの両方を意味する。
【0072】
収着エレメントを任意の適切な材料または材料の組み合わせから形成しうる。例えば、収着エレメントはガラス、ステンレス鋼、アルミニウム、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)およびこれらの混合物の1つ以上を含みうる。例えば、収着エレメントはPEとPETの混合物を含んでもよい。
【0073】
好ましい実施形態で、収着エレメントは多孔性収着エレメントである。
【0074】
例えば、収着エレメントは、多孔性プラスチック材料、多孔性重合体繊維および多孔性ガラス繊維から成る群より選択された1つ以上の材料を含む多孔性収着エレメントであってもよい。
【0075】
収着エレメントはニコチンに関して化学的に不活性であることが好ましい。
【0076】
収着エレメントは適切な任意のサイズおよび形状を有しうる。
【0077】
好ましい一定の実施形態において、収着エレメントは実質的に円柱状のプラグである。特に好ましい一定の実施形態において、収着エレメントは多孔性の実質的に円柱状のプラグである。
【0078】
好ましい他の実施形態で、収着エレメントは実質的に円柱状の中空管である。特に好ましい他の実施形態で、収着エレメントは多孔性の実質的に円柱状の中空管である。
【0079】
収着エレメントのサイズ、形状および組成物は、ニコチンの所望量が収着エレメント上に収着されるのを可能にするように選んでもよい。当業者は、その望ましい機能に応じて適切な収着エレメントを設計することができる。
【0080】
ニコチン供与源は、ユーザーに送達するために望ましい量のエアロゾルを発生するために十分なニコチンを含むべきである。
【0081】
収着エレメントはニコチンのための貯蔵部としての役割を都合良く果たす。
【0082】
当然のことながら、ニコチン供与源および送達促進化合物供与源は、同一または異なる組成の収着エレメントを備えうる。
【0083】
当然のことながら、ニコチン供与源および送達促進化合物供与源は、同一または異なるサイズおよび形状の収着エレメントを備えうる。
【0084】
本発明によるエアロゾル発生システムは、ニコチン供与源を含む第1の区画および揮発性送達促進化合物供与源を含む第2の区画を備えうる。
【0085】
こうした実施形態では、エアロゾル発生システムはさらに、第2の区画の下流に第3の区画を備えうる。
【0086】
別の方法としてまたは追加的に、こうした実施形態では、エアロゾル発生システムはさらに、第2の区画および第3の区画(含まれている場合)の下流にマウスピースを備えうる。
【0087】
一定の好ましい実施形態で、本発明によるエアロゾル発生システムは、空気吸込み口および空気出口を備えたハウジングを備えうるが、そのハウジングは空気吸込み口から空気出口へと直列に、空気吸込み口と連通するニコチン供与源を含む第1の区画と、第1の区画と連通する揮発性送達促進化合物供与源を含む第2の区画と、第1の区画と第2の区画との間の熱伝達バリアとを備え、ここで空気吸込み口および空気出口は相互に連通し、空気がハウジング内に空気吸込み口を通して入り、ハウジングを通して流れ、空気出口を通してハウジングから出ることができるように構成される。
【0088】
「空気吸込み口」という用語は本明細書で使用される時、それを通して空気がハウジングに吸い出されうる1つ以上の開口部を描写するために使用される。
【0089】
「空気出口」という用語は本明細書で使用される時、それを通して空気がハウジングから吸い出されうる1つ以上の開口部を描写するために使用される。
【0090】
空気出口はエアロゾル発生システムのハウジングの近位端に位置する。空気吸込み口はエアロゾル発生システムのハウジングの遠位端に位置しうる。別の方法として、空気吸込み口はエアロゾル発生システムのハウジングの近位端と遠位端との間に位置しうる。
【0091】
「直列」は本明細書で使用される時、使用時にハウジング内に空気吸込み口を通して入り、ハウジングを通り、空気出口を通してハウジングを出る空気がまず第1の区画を通過し次に第2の区画を通過するように、第1の区画および第2の区画が配置されていることを意味する。すなわち、第1の区画は空気吸込み口の下流であり、第2の区画は第1の区画の下流であり、空気出口は第2の区画の下流である。
【0092】
ニコチン蒸気は空気吸込み口からハウジングを通して空気出口に向かって下流に流れる時、第1の区画内のニコチン供与源から空気中に放出される。揮発性送達促進化合物の蒸気はまた、ハウジングを通して第1の区画から空気出口に向かってさらに下流に流れる時、第2の区画内の揮発性送達促進化合物供与源から空気中に放出される。ニコチン蒸気は気相で揮発性送達促進化合物の蒸気と反応してエアロゾルを形成し、これが空気出口を通してユーザーに送達される。
【0093】
こうした好ましい実施形態で、ハウジングはさらに第2の区画の下流にあり、かつそれと連通する第3の区画を備えうる。
【0094】
別の方法としてまたは追加的に、こうした好ましい実施形態では、ハウジングはさらに、第2の区画または第3の区画(含まれている場合)と連通するマウスピースを備えうる。
【0095】
ニコチン蒸気は、第2の区画内で揮発性送達促進化合物の蒸気と反応して、エアロゾルを形成しうる。本発明によるエアロゾル発生システムはさらに、第2の区画の下流に第3の区画を備えうるが、ニコチン蒸気は、別の方法としてまたは追加的に、揮発性送達促進化合物の蒸気と第3の区画内で反応して、エアロゾルを形成してもよい。
【0096】
第1の区画と第2の区画の容積は同一または異なる容積としうる。本発明によるエアロゾル発生システムがさらに第2の区画の下流に第3の区画を備える場合、第1の区画、第2の区画および第3の区画の容積は同じでも異なっていてもよい。
【0097】
一定の好ましい実施形態で、第1の区画と第2の区画の容積は実質的に同じである。
【0098】
一定の実施形態で、第1の区画と第2の区画と熱伝達バリアの容積は実質的に同じである。
【0099】
1つの実施形態で、第1の区画、第2の区画および熱伝達バリアは、それぞれ長さが約10mmである。
【0100】
本発明によるエアロゾル発生システムがニコチン供与源を含む第1の区画を備える場合、第1の区画はエアロゾル発生システムを初めて使用する前に1つ以上の壊れやすいバリアでシールされうる。一定の好ましい実施形態で、第1の区画は一対の向かい合った横断する壊れやすいバリアによってシールされる。
【0101】
別の方法としてまたは追加的に、本発明によるエアロゾル発生システムが揮発性送達促進化合物供与源を含む第2の区画を備える場合、第2の区画はエアロゾル発生システムを初めて使用する前に1つ以上の壊れやすいバリアでシールされうる。一定の好ましい実施形態で、第2の区画は一対の向かい合った横断する壊れやすいバリアによってシールされる。
【0102】
1つ以上の壊れやすいバリアは適切な任意の材料で形成されうる。例えば、1つ以上の壊れやすいバリアは金属の箔またはフィルムで形成されうる。
【0103】
こうした実施形態で、本発明によるエアロゾル発生システムは、エアロゾル発生システムを初めて使用する前に、第1の区画と第2の区画の一方または両方をシールする1つ以上の壊れやすいバリアを貫通するための貫通要素をさらに備える。貫通要素は適切な任意の材料で形成されうる。
【0104】
本発明によるエアロゾル発生システムが第3の区画を含む場合、第3の区画は、1つ以上のエアロゾル修飾剤を含んでもよい。例えば、第3の区画は、活性炭などの1つ以上の吸収材、メントールなどの1つ以上の風味剤またはそれらの組み合わせを含みうる。
【0105】
本発明によるエアロゾル発生システムがマウスピースを含む場合、マウスピースは、フィルターを含んでもよい。フィルターは、低い粒子濾過効率または非常に低い粒子濾過効率を有しうる。別の方法として、マウスピースは中空管を備えうる。
【0106】
本発明によるエアロゾル発生システムの加熱手段は外部ヒーターを備えうる。
【0107】
「外部ヒーター」という用語は本明細書で使用される時、使用時にエアロゾル発生システムのニコチン供与源の外側に位置するヒーターを意味する。
【0108】
別の方法としてまたは追加的に、本発明によるエアロゾル発生システムの加熱手段は内部ヒーターを備えうる。
【0109】
「内部ヒーター」という用語は本明細書で使用される時、使用時にエアロゾル発生システムのニコチン供与源の内側に位置するヒーターを意味する。
【0110】
加熱手段は電気的な加熱手段としうる。
【0111】
加熱手段が電気的な加熱手段である場合、エアロゾル発生システムはさらに電源を備えうる。別の方法として、電気的な加熱手段は外部電源により電力供給しうる。
【0112】
加熱手段が電気的な加熱手段である場合、エアロゾル発生システムはまた、電源から電気的な加熱手段への電力供給を制御するよう構成された電子回路をさらに備えうる。電気的な加熱手段への電力供給を制御するために、適切な任意の電子回路を使用しうる。電子回路はプログラム可能なものとしうる。
【0113】
電源はDC電源としうる。望ましい実施形態で、電源は電池である。例えば、電源はニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池、またはリチウムベースの電池、例えばリチウムコバルト、リチウム鉄リン酸塩またはリチウムポリマー電池としうる。別の方法として、電源はコンデンサーなど別の形態の電荷蓄積装置としうる。電源は再充電可能でもよい。
【0114】
別の方法として、加熱手段は可燃性燃料などの非電気的な動力供給で発熱するものであってもよい。例えば、加熱手段は気体燃料の燃焼によって加熱される熱伝導性のある導体素子を備えうる。
【0115】
別の方法として、加熱手段は化学的加熱手段などの非電気的な加熱手段であってもよい。
【0116】
一定の実施形態で、加熱手段は熱エネルギーを外部熱源からニコチン供与源に移動するよう構成されたヒートシンクまたは熱交換器を含む。ヒートシンクまたは熱交換器は適切な任意の熱伝導性の材料で形成されうる。適切な材料には、アルミニウムおよび銅などの金属が含まれるが、これに限定されない。
【0117】
一定の好ましい実施形態で、本発明によるエアロゾル発生システムは、ニコチン供与源、揮発性送達促進化合物供与源および熱伝達バリアを含むエアロゾル発生物品を備えうる。
【0118】
こうした実施形態で、本発明によるエアロゾル発生システムはさらに、エアロゾル発生物品と連動するエアロゾル発生装置を備えうるが、エアロゾル発生装置はエアロゾル発生物品のニコチン供与源を加熱するよう構成された加熱手段を備える。
【0119】
「エアロゾル発生物品」という用語は本明細書で使用される時、気相内で互いに反応してエアロゾルを形成できるニコチンおよび揮発性送達促進化合物を放出する能力を持つニコチン供与源および送達促進化合物供与源を含む物品を意味する。
【0120】
「エアロゾル発生装置」という用語は本明細書で使用される時、エアロゾル発生物品と相互作用して、ユーザーの肺にユーザーの口を通して直接吸入可能なエアロゾルを発生する装置を意味する。
【0121】
本発明によれば、本発明によるエアロゾル発生システムで使用するためのエアロゾル発生物品も提供されている。本発明によれば、本発明によるエアロゾル発生システムで使用するためのエアロゾル発生装置も提供されている。
【0122】
エアロゾル発生物品は実質的に円柱状であることが好ましい。
【0123】
エアロゾル発生物品は適切な任意の形状の横断断面を持ちうる。
【0124】
エアロゾル発生装置は、エアロゾル発生物品を受けるよう構成されたくぼみを含みうる。
【0125】
こうした実施形態では、エアロゾル発生装置のくぼみは、少なくともエアロゾル発生物品のニコチン供与源を受けるよう構成される。エアロゾル発生装置のくぼみは、エアロゾル発生物品のニコチン供与源、揮発性送達促進化合物供与源および熱伝達バリアを受けるよう構成されることが好ましい。
【0126】
エアロゾル発生装置の加熱手段は、くぼみの周辺部付近に配置された外部ヒーターを備えうる。
【0127】
別の方法として、エアロゾル発生装置の加熱手段は、くぼみ内に配置された内部ヒーターを備えうる。
【0128】
エアロゾル発生装置の加熱手段は1つ以上の発熱体を備えうる。1つ以上の発熱体はエアロゾル発生装置のくぼみの長さに沿って部分的に延びうる。1つ以上の発熱体はエアロゾル発生装置のくぼみの周囲に沿って全体的または部分的に延びうる。
【0129】
特に好ましい実施形態で、エアロゾル発生装置の加熱手段は電気抵抗性の材料を含む1つ以上の発熱体を含む。
【0130】
一定の特に好ましい実施形態で、本発明によるエアロゾル発生システムは、ニコチン供与源を含む第1の区画、揮発性送達促進化合物供与源を含む第2の区画、および第1の区画と第2の区画との間の熱伝達バリアを含むエアロゾル発生物品を備えうる。
【0131】
上述の通り、エアロゾル発生物品は、第1の区画および第2の区画の一方または両方をシールする1つ以上の壊れやすいバリアを備えうる。
【0132】
こうした実施形態で、エアロゾル発生装置は、エアロゾル発生物品の第1の区画と第2の区画の一方または両方をシールする1つ以上の壊れやすいバリアを貫通するために、エアロゾル発生装置のくぼみ内に位置する貫通要素を含みうる。貫通部材は、エアロゾル発生装置のくぼみ内の中央に、くぼみの長軸方向軸に沿って位置することが好ましい。
【0133】
一定の実施形態で、エアロゾル発生物品は、管状の多孔性収着エレメントを含む揮発性送達促進化合物供与源と、収着エレメント上に収着された揮発性送達促進化合物とを含むシールされた第2の区画を備えてもよく、またエアロゾル発生装置は、細長い貫通要素の遠位端に隣接した貫通部分と、軸部分と、細長い貫通要素の近位端に隣接した遮断部分とを含む、WO 2014/140087 A1に開示されているタイプの細長い貫通要素を備えてもよい。こうした実施形態で、細長い貫通要素の貫通部分の最大直径は細長い貫通要素の軸部分の直径よりも大きく、エアロゾル発生物品がエアロゾル発生装置内に受けられた時に、細長い貫通要素の遮断部分がエアロゾル発生物品の管状の多孔性収着エレメント内に適合するような外径を持つ。
【0134】
その他の実施形態で、エアロゾル発生装置は、細長い貫通要素の遠位端にある貫通ヘッドを含む細長い貫通要素と、少なくとも2つの開口部を含む中空の軸部分とを備えうるが、ここで、エアロゾル発生物品がエアロゾル発生装置内に受けられた時、かつ細長い貫通要素がエアロゾル発生物品の第1の区画および第2の区画の一方または両方をシールする1つ以上の壊れやすいバリアを貫通する時、細長い貫通要素の中空の軸部分の少なくとも1つの開口部はエアロゾル発生物品の第1の区画または第2の区画と流体連通する。こうした実施形態では、細長い貫通要素は貫通および気流チャネルの提供といった二重の機能性を持つ。一定の実施形態では、細長い貫通要素の中空の軸部分は、エアロゾル発生物品の第1の区画と流体連通する第1の開口部と、エアロゾル発生物品の第2の区画と流体連通する第2の開口部とを備えうる。
【0135】
エアロゾル発生装置のくぼみは実質的に円柱状であることが好ましい。
【0136】
エアロゾル発生装置のくぼみは適切な任意の形状の横断断面を持ちうる。例えば、くぼみの横断断面は、実質的に円形、楕円形、三角形、正方形、菱型、台形、五角形、六角形または八角形としうる。
【0137】
一定の好ましい実施形態では、エアロゾル発生装置のくぼみの横断断面は、エアロゾル発生物品の横断断面と実質的に同一形状である。
【0138】
一定の特に好ましい実施形態では、エアロゾル発生装置のくぼみの横断断面は、エアロゾル発生物品の横断断面と実質的に同一の形状および寸法である。
【0139】
エアロゾル発生物品およびエアロゾル発生装置のくぼみの横断断面は、実質的に円形または実質的に楕円形であることが好ましい。エアロゾル発生物品およびエアロゾル発生装置のくぼみは、実質的に円形な横断断面であることが最も好ましい。
【0140】
エアロゾル発生装置のくぼみの長さは、エアロゾル発生物品がエアロゾル発生装置のくぼみで受けられる時に、エアロゾル発生物品の近位端または下流端がエアロゾル発生装置のくぼみから突出するように、エアロゾル発生物品の長さよりも短いことが好ましい。
【0141】
エアロゾル発生装置のくぼみの直径は、エアロゾル発生物品の直径と実質的に等しいかまたはわずかに大きいことが好ましい。
【0142】
「直径」は本明細書で使用される時、エアロゾル発生物品およびエアロゾル発生装置のくぼみの最大横断寸法を意味する。
【0143】
本発明によるエアロゾル発生システムは紙巻たばこ、葉巻、細い葉巻またはパイプなどの喫煙物品または紙巻たばこパックをまねてもよい。一定の好ましい実施形態において、本発明によるエアロゾル発生システムは紙巻たばこをまねる。
【0144】
本発明によるエアロゾル発生システムがエアロゾル発生物品を備える時、エアロゾル発生物品は紙巻たばこ、葉巻、細い葉巻またはパイプなどの喫煙物品または紙巻たばこパックをまねてもよい。一定の好ましい実施形態では、エアロゾル発生物品は紙巻たばこをまねてもよい。
【0145】
誤解を避けるために、本発明の1つの態様に対する上述の特徴はまた、本発明のその他の態様に適用されうる。特に、上記で本発明の第1の態様に関連して説明した特徴は、適切な場合には、本発明の第2の態様および本発明の第3の態様の一方または両方にも関連することができ、またその逆も同様である。
【0146】
すべての学術的および技術的な用語は本明細書で使用される場合、別途指定のない限り、当業界において一般に使用される意味を持つ。本明細書で提供した定義は、本明細書で頻繁に使用される一定の用語の理解を促進するために提供されている。
【0147】
単数形(「1つの」および「その」)は本明細書で使用される場合、複数形の対象を持つ実施形態を含蓄するが、その文脈によってそうでないことが明らかに示される場合はその限りではない。
【0148】
「好ましい」および「好ましくは」という語は、ある一定の状況下である一定の利益をもたらしうる本発明の実施形態を言及する。特に好ましいのは、好ましい特徴の組み合わせを含む、本発明によるエアロゾル発生システムである。例えば、本発明によるエアロゾル発生システムが、エアロゾル発生物品およびエアロゾル発生物品と連動するエアロゾル発生装置を備える場合、特に好ましいのは、好ましいエアロゾル発生物品および好ましいエアロゾル発生装置の組み合わせを持つ実施形態である。
【0149】
ただし、当然のことながら、同一またはその他の状況下で、その他の実施形態もまた好ましいものでありうる。その上、1つ以上の好ましい実施形態の列挙は、その他の実施形態が有用ではないことを暗に意味するものではなく、本開示の範囲および請求の範囲からその他の実施形態を除外する意図はない。
【0150】
ここで、添付図面を参照しながら本発明に関してさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0151】
【
図1】
図1は本発明の実施形態によるエアロゾル発生システムの概略的な長軸方向断面を示す。
【発明を実施するための形態】
【0152】
図1はエアロゾル発生物品2およびエアロゾル発生装置4を含む、本発明の実施形態によるエアロゾル発生システムを概略的に示す。
【0153】
エアロゾル発生物品2は、ニコチン供与源を含む第1の区画6と、熱伝達バリア8と、揮発性送達促進化合物供与源を含む第2の区画10と、第3の区画12と、マウスピース14とを含む、細長い円柱状のハウジングを含む。
図1に示す通り、第1の区画6、熱伝達バリア8、第2の区画10、第3の区画12およびマウスピース14は、直列にかつエアロゾル発生物品2内に同軸に整列して配置されている。第1の区画6はエアロゾル発生物品2の遠位端に位置する。第2の区画10は第1の区画6の下流に位置する。熱伝達バリア8は第1の区画6と第2の区画10との間に位置する。第3の区画12は第2の区画10のすぐ下流に位置する。マウスピース14はエアロゾル発生物品2の近位端で第3の区画10のすぐ下流に位置する。
【0154】
エアロゾル発生物品2の第1の区画6と第2の区画10の上流端と下流端は、壊れやすいアルミ箔バリア(図示せず)でシールされる。
【0155】
エアロゾル発生装置4は、エアロゾル発生物品2を受ける細長い円柱状のくぼみを含むハウジングを含む。エアロゾル発生物品2の近位端がくぼみから突出するように、くぼみの長さはエアロゾル発生物品2の長さよりも短い。
【0156】
エアロゾル発生装置4はさらに、電源16、コントローラ(図示せず)、加熱手段18、および貫通要素20を備える。電源16は電池であり、コントローラは電気回路を備え、電源16および加熱手段18に接続されている。
【0157】
加熱手段18は、その遠位端にあるくぼみの一部分の周辺部付近に位置する外部発熱体を備え、くぼみの周囲に全体的に延びる。
図1に示す通り、外部発熱体はエアロゾル発生物品2の第1の区画6および熱伝達バリア8の上流部分を囲むように位置する。
【0158】
貫通要素20は、エアロゾル発生装置4のくぼみ内の中央に位置し、くぼみの主軸方向軸に沿って延びる。
【0159】
使用時に、エアロゾル発生物品2がエアロゾル発生装置4のくぼみに挿入されると、貫通要素20はエアロゾル発生物品2に挿入され、エアロゾル発生物品2の第1の区画6と第2の区画10の上流端と下流端にある壊れやすいバリア(図示せず)を貫通する。これにより、ユーザーは、その遠位端を通してエアロゾル発生物品のハウジングに空気を引き出し、第1の区画6、熱伝達バリア8、第2の区画10および第3の区画12を通して下流に流し、その近位端でマウスピース14を通してハウジングから出すことができる。
【0160】
ニコチン蒸気は、第1の区画6内のニコチン供与源からエアロゾル発生物品2を通して引き出された気流内に放出され、揮発性送達促進化合物の蒸気は第2の区画10の揮発性送達促進化合物供与源からエアロゾル発生物品2を通して引き出された気流内に放出される。ニコチン蒸気は、第2の区画10および第3の区画12内の気相内にある揮発性送達促進化合物の蒸気と反応してエアロゾルを形成するが、これがエアロゾル発生物品2の近位端でマウスピース14を通してユーザーに送達される。
【0161】
使用時に、熱伝達バリア10は、第1の区画が加熱手段18によって加熱される時、エアロゾル発生物品2の第2の区画10が第1の区画6よりも低い温度で維持されるように、第1の区画6から第2の区画10への熱伝達を低減する。
【0162】
エアロゾル発生物品2の第1の区画6は、10 mgのニコチンがその上に収着された多孔性の収着エレメントを含むニコチン供与源を含み、エアロゾル発生物品2の熱伝達バリア8は空気で充填されたくぼみを含み、エアロゾル発生物品2の第2の区画10は、20 mgのピルビン酸がその上に収着された多孔性の収着エレメントを含むピルビン酸供与源を含む。エアロゾル発生物品2の第1の区画6、熱伝達バリア8、および第2の区画10のそれぞれ長さは約10mmである。エアロゾル発生物品2の第3の区画12の長さは約25mmである。エアロゾル発生物品2のマウスピース14の長さは約10mmである。エアロゾル発生物品2の全長は約85mmである。
【0163】
エアロゾル発生装置4の加熱手段18の外部発熱体の長さは約15mmである。加熱手段18は、第1の区画6を約110℃より低い温度に加熱するよう構成されている。使用時に、第1の区画6の外側を約150秒間にわたり約100℃〜約110℃の温度に加熱した後、少なくとも200秒間この範囲内の温度に維持するように、一定の電源が加熱手段18に提供される。
【0164】
熱伝達バリア8が含まれていることで、エアロゾル発生物品2の第2の区画10は、加熱手段18による第1の区画6の加熱時に約45℃よりも低い温度に維持される。これを実証するために、加熱手段18による第1の区画6の加熱中に、加熱手段18の始動から始めて6分間にわたり第1および第2の温度センサーを使用して温度測定をする。第1および第2の温度センサーは、それぞれ第1の区画および第2の区画の外側に、その長さ方向に沿ってほぼ中間に取り付けられる。結果は表1に示した。
【表1】
【0165】
図1に示す発明の実施形態によるエアロゾル発生システムの平均ニコチン送達量(μg/吸入)は、カナダ保健省(Health Canada)喫煙方法(smoking regime)(喫煙の容積55cm
3、喫煙頻度30秒、吸入の長さ2秒および通気口の封鎖100%)によるエアロゾル発生システムの動作中の吸入数の関数として測定される。
【0166】
比較の目的で、本発明によらない基準エアロゾル発生システムの平均ニコチン送達量(μg/吸入)もまた、カナダ保健省(Health Canada)喫煙方法(smoking regime)(喫煙の容積55cm
3、喫煙頻度30秒、吸入の長さ2秒および通気口の封鎖100%)によるエアロゾル発生システムの動作中の吸入数の関数として測定される。基準エアロゾル発生システムは、第1の区画がピルビン酸供与源を含み第2の区画がニコチン供与源を含むようにピルビン酸供与源およびニコチン供与源の位置が逆であるという点で、
図1によるエアロゾル発生物品とは異なる。こうして、基準エアロゾル発生システムのエアロゾル発生物品は、多孔性の収着エレメントを含み、20 mgのピルビン酸がその上に収着されたピルビン酸供与源を備えた第1の区画と、多孔性の収着エレメントを含み、10 mgのニコチンがその上に収着されたニコチン供与源を備えた第2の区画とを含む。
【0167】
ニコチン供与源、ニコチン供与源の下流にある揮発性送達促進化合物供与源、およびニコチン供与源と揮発性送達促進化合物供与源との間にある熱伝達バリアを含むエアロゾル発生物品を備えた本発明によるエアロゾル発生システムの平均ニコチン送達量(μg/吸入)は、吸入数の増加に伴い増加する。本発明によるエアロゾル発生システムの吸入毎のニコチン送達の増加は、従来的な点火端を有する紙巻たばこの吸入毎のニコチン送達の増加と類似している。
【0168】
ニコチン供与源およびニコチン供与源のすぐ上流の揮発性送達促進化合物を含む、エアロゾル発生物品を備える基準エアロゾル発生システムの平均ニコチン送達量(μg/吸入)は、本発明によるエアロゾル発生システムのニコチン送達よりも著しく少ない。その上、本発明によるエアロゾル発生システムおよび従来的な点火端を有する紙巻たばことは対照的に、基準エアロゾル発生システムの平均ニコチン送達量(μg/吸入)は、吸入数の増加に伴い減少する。
【国際調査報告】