特表2016-531736(P2016-531736A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2016-531736(P2016-531736A)
(43)【公表日】2016年10月13日
(54)【発明の名称】タングステン/チタニア酸化触媒
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/888 20060101AFI20160916BHJP
   B01J 38/02 20060101ALI20160916BHJP
   B01D 53/86 20060101ALI20160916BHJP
   B01D 53/90 20060101ALI20160916BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20160916BHJP
   B01D 53/96 20060101ALI20160916BHJP
   F01N 3/10 20060101ALI20160916BHJP
【FI】
   B01J23/888 AZAB
   B01J38/02
   B01D53/86 222
   B01D53/86 228
   B01D53/90
   B01D53/94 228
   B01D53/94 222
   B01D53/94 400
   B01D53/96 500
   F01N3/10 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-528601(P2016-528601)
(86)(22)【出願日】2014年7月18日
(85)【翻訳文提出日】2016年3月11日
(86)【国際出願番号】GB2014052207
(87)【国際公開番号】WO2015011452
(87)【国際公開日】20150129
(31)【優先権主張番号】61/858,913
(32)【優先日】2013年7月26日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】590004718
【氏名又は名称】ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ミカレフ, デーヴィッド マシュー
(72)【発明者】
【氏名】パーソンズ, アレックス コーネル
【テーマコード(参考)】
3G091
4D148
4G169
【Fターム(参考)】
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4G169GA01
4G169ZA01A
4G169ZA41A
(57)【要約】
(a)WO−TiO担体上に少なくとも1つの貴金属を含む酸化触媒であって、前記担体が、WOとTiOの組み合わされた重量に基づいて、約1から約20重量パーセントのWOを含有する、酸化触媒、及び(b)第1及び第2の触媒層が基材上及び/又は内にある基材、を含む、排出ガスを処理するための触媒体。
【選択図】図1A及び図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.WO−TiO担体上に少なくとも1つの貴金属を含む酸化触媒であって、前記担体が、前記WOとTiOの組み合わされた重量に基づいて、約1から約20重量パーセントのWOを含有する、酸化触媒、及び
b.基材
を含み、前記酸化触媒が前記基材の上又は内に配置される、排出ガスを処理するための触媒体。
【請求項2】
前記担体が、前記WOとTiOの組み合わされた重量に基づいて、約2から約10重量パーセントのWOを含有する、請求項1に記載の触媒体。
【請求項3】
前記酸化触媒が、V、Ce、Zr、Al、Si、及びMoを実質的に含まない、請求項1又は2に記載の触媒体。
【請求項4】
前記少なくとも1つの貴金属が、Au、Ag、Pt、Pd、Rh、又はそれらの組み合わせである、請求項1から3のいずれか一項に記載の触媒体。
【請求項5】
前記貴金属が、Pt、Pd、又はそれらの組み合わせである、請求項4に記載の触媒体。
【請求項6】
前記酸化触媒が、前記WO−TiO担体上の前記貴金属から成る、請求項1から5のいずれか一項に記載の触媒体。
【請求項7】
前記酸化触媒を含有するウォッシュコートを更に含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の触媒体。
【請求項8】
酸素の存在下でNOを選択的に還元するため及び/又はNHを吸蔵するための第2の触媒を更に含み、前記第2の触媒が、基材の上又は内に配置されるが、前記酸化触媒から物理的に分離されている、請求項1から7のいずれか一項に記載の触媒体。
【請求項9】
前記酸化触媒が第1のウォッシュコート層として前記基材上に配置され、前記第2の触媒が第2のウォッシュコート層として前記基材上に配置され、前記第1のウォッシュコート層が前記第2の層を完全に覆うが、前記第2の層から分離されている、請求項8に記載の触媒体。
【請求項10】
第2の触媒層が、Al、TiO、CeO、SiO、及びZrOから成る群から選択される高表面積金属酸化物、或いは、アルミノケイ酸塩又はシリコアルミノホスフェートモレキュラーシーブを備え、前記金属酸化物又はモレキュラーシーブが、V、Cr、Co、Cu、Fe、Hf、La、Ce、In、V、Mn、Ni、Zn、及びGaから成る群から選択される助触媒金属を任意選択的に担持する、請求項9に記載の触媒体。
【請求項11】
前記第2の触媒層が、AEI、AFX、CHA、KFI、LEV、ERI、DDR、UEI、RHO、EAB、PAU、MER、GOO、YUG、GIS、UFI、VIN、AEI/CHA連晶、BEA、MOR、及びFERから成る群から選択される骨格を有するモレキュラーシーブ上で担持されるCu及びFeから選択される助触媒金属を含む、請求項10に記載の触媒。
【請求項12】
排ガスを処理するための方法であって、
a.WO−TiO担体上に貴金属を含む酸化触媒を有する基材を通して、NHを含有する排ガスを流動させることであって、前記担体が、WOとTiOの組み合わされた重量に基づいて、約1から約20重量パーセントのWOを含有する、流動させることと、
b.前記NHの少なくとも一部を酸化し、NO及びHOを生成することとを含む方法。
【請求項13】
前記流動する排ガスが、少なくとも500ppmのSOを含有する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
排ガスの処理に使用される触媒体を再生するための方法であって、
a.酸化触媒を有する基材を通して、排ガスを流動させることであって、前記排ガスが、前記基材に入る前にSOを含有し、前記酸化触媒がWO−TiO担体上に貴金属を含み、前記担体が、WOとTiOの組み合わされた重量に基づいて、約1から約20重量パーセントのWOを含有する、流動させることと、
b.前記触媒層内の前記SOの少なくとも一部を吸着することと、
c.前記触媒層が少なくとも5g/Lの前記SOを吸着した後に前記触媒を再生することと
を含む方法。
【請求項15】
排ガスの処理に使用される触媒体を再生するための方法であって、
a.酸化触媒を有する基材を通して、排ガスを流動させることであって、前記排ガスが、前記基材に入る前にSOを含有し、前記酸化触媒がWO−TiO担体上に貴金属を含み、前記担体が、WOとTiOの組み合わされた重量に基づいて、約1から約20重量パーセントのWOを含有する、流動させることと、
b.前記触媒層内の前記SOの少なくとも一部を吸着することと、
c.350℃以下の温度で前記触媒を再生することと
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
燃焼排ガスを処理するための酸化触媒、特に選択式接触還元プロセスに関連付けられるアンモニアスリップを低減するための酸化触媒が提供される。
【0002】
関連技術の記載
炭化水素系燃料の燃焼によって、大部分において、比較的無害な窒素(N)、水蒸気(HO)、及び二酸化炭素(CO)を含むエンジン排ガス又は排煙が生成される。しかし、排ガスは、更に、比較的少量に、不完全燃焼からの一酸化炭素(CO)、未燃燃料からの炭化水素(HC)、過剰な燃焼温度からの窒素酸化物(NO)、及び粒子状物質(ほとんどが、煤)などの有害な物質及び/又は有毒な物質を含む。大気中に放出される排ガスの環境影響を軽減するため、好ましくは、代わりに他の有害な物質又は有毒な物質を生成しないプロセスによってこれらの望ましくない成分の量を除去又は削減することが望ましい。
【0003】
一酸化窒素(NO)、二酸化窒素(NO)、及び亜酸化窒素(NO)を含むNOは、リーンバーンエンジンによって生成される排ガスから除去することが面倒な成分である。排ガスが、還元ではなく酸化反応に有利に働く十分な酸素を含有しているので、NOからNへの還元は、リーンバーン排ガスにおいて特に困難である。それにもかかわらず、NOは、選択式接触還元(SCR)として一般に知られるプロセスによって還元することができる。SCRプロセスは、触媒が存在している中で、アンモニア等の窒素還元剤の補助により、NOを元素窒素(N)及び水へと転化することを含む。SCRプロセスにおいて、アンモニア等のガス状の還元剤は、排ガスをSCR触媒と接触させる前に排ガス流に添加される。還元剤は触媒上に吸着され、ガスが触媒化された基材の中又はその上を通過する際に、NO還元反応は起こる。アンモニアを使用する化学量論的SCR反応に対する化学式は、下記の通りである。
4NO+4NH+O→4N+6H
2NO+4NH+O→3N+6H
NO+NO+2NH→2N+3H
【0004】
ほとんどのSCRプロセスは、NOの転化を最大限にするために、化学量論的過剰量のアンモニアを使用する。SCRプロセスを通過する未反応のアンモニア(「アンモニアスリップ」とも呼ばれる)は望ましくない。なぜなら、スリップアンモニアガス(slipped ammonia gas)は、他の燃焼種と反応する場合があり、放出された場合、大気に負の影響を与えるためである。アンモニアスリップを低減させるため、SCRシステムは、SCR触媒の下流にアンモニア酸化触媒(AMOX)(アンモニアスリップ触媒(ASC)としても知られる)を含むことができる。
【0005】
排ガス中の過剰アンモニアを酸化するための触媒は既知である。例えば、米国特許第7393511号では、チタニア、アルミナ、シリカ、ジルコニア等の担体上の貴金属、例えば白金、パラジウム、ロジウム、又は金を含有するアンモニア酸化触媒が記述されている。しかしながら、これらの触媒は、特定の燃料、具体的にはディーゼルガスに存在することが多いSO(例えば、SO及び/又はSO)による毒作用の影響を受けやすい。
【0006】
したがって、当該技術分野においてアンモニアスリップ触媒を改善する必要性が依然として存在する。本発明は、とりわけこの必要性を満たすものである。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、部分的には、SCRプロセスの下流で使用されるときにアンモニアスリップの低減に特に有効である不均一酸化触媒(heterogeneous oxidation catalyst)に関する。この触媒は、基材上に配置されたとき、SO被毒に耐性がある酸化成分を含む。出願人らは、タングステン/チタニア上で担持されている貴金属の触媒が、アルミナのような従来の担体に比較して、更に、チタニア及びシリカ−チタニアなどの高SO用途に適していると通常みなされる担体に比較して、SOによる毒作用の影響をそれほど受けないことを驚くべきことに発見した。この触媒の高いSO耐性は、触媒が、高いSO濃度に曝される用途において有利である。
【0008】
したがって、(a)WO−TiO担体上に貴金属を含む酸化触媒であって、前記担体が、WOとTiOの組み合わされた重量に基づいて、約1から約20重量パーセントのWOを含有する、酸化触媒、及び(b)酸化触媒が上及び/又は内にある基材を含む、排出ガスを処理するための触媒体が提供される。
【0009】
本発明の別の態様によると、(a)WO−TiO担体上に貴金属を含む酸化触媒を有する基材を通して、NHを含有する排ガスを流動させることであって、前記担体が、WOとTiOの組み合わされた重量に基づいて、約1から約20重量パーセントのWOを含有する、流動させることと、(b)特に、流動する排ガスが少なくとも350ppmのSOを含有するか、又は、酸化触媒が5g/Lを上回る硫黄に曝される場合、NH の少なくとも一部を酸化し、NO及びHOを生成することとを含む、排ガスを処理するための方法が提供される。
【0010】
本発明の更に別の態様によると、(a)酸化触媒を有する基材を通して、排ガスを流動させることであって、前記排ガスが、基材に入る前にSOを含有し、酸化触媒がWO−TiO担体上に貴金属を備え、前記担体が、WOとTiOの組み合わされた重量に基づいて、約1から約20重量パーセントのWOを含有する、流動させることと、(b)触媒層内のSOの少なくとも一部を吸着することと、(c)触媒層が少なくとも5g/LのSOを吸着した後に触媒を再生することとを含む、排ガス微粒子フィルタ(exhaust gas particulate filter)を再生するための方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1A】本発明の特定の実施態様に係る触媒体の図面である。
図1B】本発明の特定の実施態様に係る触媒体の図面である。
図2】種々の温度における再生後の硫酸化触媒(sulfated catalysts)のNH変換を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
好適な実施態様では、本発明は、環境大気質を改善するための触媒体、特に、発電所、ガスタービン、リーンバーン内燃エンジン等により生じた排ガスの排出を改善するための触媒体を対象とする。排出は、幅広い動作温度範囲にわたって、排ガス内のNH及び/又はNOの濃度を還元することによって、少なくとも部分的に改善される。更に、本触媒の使用により、運転時間ごとの高温再生の必要性がより少なくなることによって、燃費を向上させることができる。更に、本発明の触媒は、相対的に高い硫黄レベルを有する燃料とともに使用してもよい。この燃料は、一般的に燃料品質がより低いとみなされる。有用な触媒体としては、酸化雰囲気において、特に触媒が高いSO濃度にさらされる雰囲気において、優先的にアンモニアを酸化し、及び/又は、NOxを還元する触媒が挙げられる。
【0013】
好適な実施形態では、本発明の触媒体は、タングステン/チタニア担体上の少なくとも1つの貴金属を含有する酸化触媒を含む。この貴金属は、ルテニウム、レニウム、ロジウム、パラジウム、銀、オスミウム、イリジウム、白金、及び金のうちの1つ又は複数であってもよい。好適には、この貴金属は、1つ又は複数の白金族金属(PGM)、特に、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、及び白金である。特定の実施形態では、この貴金属は、白金、パラジウム、又はこの2つの組み合わせである。貴金属成分は、金属を含有する塩類水溶液を担体と混合し、基材に塗布され得るウォッシュコートを形成するように、任意の従来手段によって担体に加えられ得る。
【0014】
基材上の貴金属は、好適には、貴金属の約0.1から30g/ft、より好適には、約0.5から10g/ft、更により好適には、約1から5g/ftの量において存在する。好適には、酸化触媒は、タングステン/チタニア担体上の重量に基づいて、約0.05から約5重量パーセント、より好適には、約0.1から約2重量パーセント、更により好適には、約0.5から1重量パーセントの貴金属を含有する。タングステン/チタニア担体は、約0.01から約3g/in、より好適には、約0.05から約1g/in、更により好適には、約0.1から約0.5g/inの量において基材上に存在する。
【0015】
特定の実施形態では、この触媒は、ルテニウム、レニウム、ロジウム、パラジウム、銀、オスミウム、イリジウム、白金、及び/又は金のうちの1つ又は複数を含まないか、又は実質的に含まない。特定の実施形態では、酸化触媒は、希土類金属を含まないか、又は実質的に含まない。好適には、酸化触媒は、ナトリウム、カリウム、カルシウム、及びマグネシウムなどの1つ又は複数のアルカリ及びアルカリ土類金属を含まないか、又は実質的に含まない。好適には、酸化触媒は、バナジウム及び/又はモリブデンを含まないか、又は実質的に含まない。特定の実施形態では、酸化触媒は、マンガン、ケイ素、ジルコニウム、アルミニウム、セリウム、及びそれらの酸化物を含まないか、又は実質的に含まない。特定の実施形態では、酸化触媒は、銅、鉄、ニッケル、コバルト、クロム、ハフニウム、ランタン、ガリウム、及び亜鉛から選択される1つ又は複数の金属を含まないか、又は実質的に含まない。本明細書で使用されるように、酸化触媒内の金属に関連して「実質的に含まない」という表現は、触媒の酸化機能に影響を与えないほどに低い濃度の中に金属が存在していないか、又は存在しているかのいずれかであることを意味する。特定の金属を実質的に含まない触媒の例としては、触媒内の1つ又は複数の貴金属の全重量に基づいて、約1重量パーセントを下回る量、約0.1重量パーセントを下回る量、又は約0.01重量パーセントを下回る量において特定の金属が存在する触媒を含む。
【0016】
特定の金属を実質的に含まない酸化触媒は、「触媒的に不活性な」金属又はそれらの酸化物を含むウォッシュコート組成物の一部であってもよいことが理解されよう。「触媒的に不活性な」金属といった場合、NOの触媒還元及び/又はNHの酸化において分子成分として直接関与しない金属酸化物を意味する。触媒的に不活性な金属酸化物の例としては、結合剤、充填剤、レオロジー改質剤などとして使用される特定の耐火性金属酸化物が含まれる。例えば、アルミナ結合剤を含有するウォッシュコートは、アルミニウムを実質的に含まない酸化触媒を更に含有してもよい。
【0017】
タングステン/チタニア担体は、好適には、チタニア上のタングステンを含有する。好適には、タングステン/チタニアは、WOとTiOの単に物理的な混合物ではなく、複合酸化物、例えばタングステンがドープされたチタニアである。有用なチタニアは、ルチル型又はアナターゼ型の両方を含み、ルチル型がより好まれる。特定の実施形態では、チタニアは主にルチル型である。好適には、担体は、約1から約20重量パーセント、約2から10重量パーセント、又は約3から7重量パーセントのWOを含有し、残部はTiOである。
【0018】
特定の実施形態では、担体は、WOとTiOから成り、バナジウム、ケイ素、アルミニウム、モリブデン、セリウム、マンガン、マグネシウム、ジルコニウム、希土類金属、又はそれらの関連する酸化物などの任意の他の金属又は金属酸化物を含まない。意外なことに、貴金属の担体としてのWO/TiOは、TiOとSiOなどの従来の酸化物担体に比べて、更に、SiO/TiOなどの混合酸化物に比べて、硫黄被毒に対する耐性が高い。更に、本発明のWO/TiO担体は、WOとTiOの両方を含有する混合酸化物に比べて、SiO(すなわち、SiO/WO/TiO)などの第3の成分に比べて、硫黄被毒に対して卓越した耐性を有する。
【0019】
タングステン/チタニア担体は、好ましくは水銀圧入法(mercury intrusion porosimetry)によって測定される、好ましくは約0.2から0.4g/ccの孔容積、例えば、約0.2から0.4g/ccの孔容積を有する。特定の実施形態では、担体は、幅広い孔(例えば、100から350Å)、或いは幅広い孔と狭い孔の両方を有する。特定の実施形態では、担体は、少なくとも50m/g、好ましくは約50から500m/g、より好ましくは約50から300m/g、又は約150から250m/gのBET表面積(BET surface area)を有する。担体材料の平均粒子サイズは、粒子計数に基づき、好ましくは約0.01から10μm、例えば、約0.5から5μm、約0.1から1μm、又は約5から10μmであり、好ましくは、粒子計数の大部分が、これらの範囲のうちの1つの範囲内にある。特定の実施形態では、担体のD90粒子サイズは、これらの範囲のうちの1つの範囲内にある。
【0020】
本発明の酸化触媒は、不均一触媒反応システム(すなわち、反応ガスと接触した固体の触媒)において利用してもよい。接触面積、機械的安定性、及び流体の流動特性を改善するために、酸化触媒は、基材の上及び/又は内に配置してもよい。特定の実施態様では、酸化触媒を含有するウォッシュコートが、波形金属プレート又はハニカムコーディエライトブリック(honeycomb cordierite brick)のような不活性基材に塗布される。酸化触媒を含有するウォッシュコートは、好ましくは、溶液、懸濁液、又はスラリー(slurry)である。適切な被覆とは、基材の一部又は全体を覆う表面被覆、基材の一部を貫通する被覆、基材の一部に浸透する被覆、又はこれらの何らかの組合せを含む。酸化触媒に加えて、ウォッシュコートは、更に、アルミナ、シリカ、非ゼオライトのシリカアルミナ、チタニア、ジルコニア、セリアのうちの1つ又は複数を含む、充填剤、結合剤、安定剤、レオロジー改質剤、及びその他の添加物などの成分を含んでもよい。特定の実施態様では、ウォッシュコートは、グラファイト、セルロース、でんぷん、ポリアクリル酸塩、及びポリエチレンなどの孔形成剤を含む。これらの付加的な成分は、必ずしも望ましい反応を触媒しないが、代わりに、例えば、その動作温度範囲を増大させること、触媒の接触表面領域を増大させること、基材に対する触媒の付着性を増大させることなどによって、触媒材料の有効性を改善する。結合剤の粒子が担体の粒子よりもかなり大きいため、通常、結合剤として使用される金属酸化物粒子は、粒径に基づき、担体として使用される金属酸化物粒子と区別可能である。
【0021】
特定の実施態様では、基材の上又は内のウォッシュコートローディングは、>1.2g/in、>1.5g/in、>1.7g/in、又は>2.00g/inなど、>1.00g/inであり、或いは、例えば、1.5から2.5g/inである。
【0022】
代替的に、タングステン/チタニア担体は、充填剤、結合剤、及び強化剤などの他の成分と共に練られて押し出し可能なペーストとなり、次いで、ダイを通して押し出され、ハニカムブリックが形成される。ハニカムブリックを乾燥及び/又はか焼する前か後に、酸化触媒を形成するため、貴金属成分がブリックの1つ又は複数の部分或いはブロック全体のいずれかに添加される。他の実施形態では、タングステン/チタニア担体上に貴金属を含有する酸化触媒は、押し出しの前に押し出し可能なペーストに組み込まれる。
【0023】
本発明において有用な2つの基材のデザインは、プレートとハニカムである。プレート型触媒は、比較的より低い圧力降下を有し、ハニカム型よりも詰まり(plugging)や付着物(fouling)の影響を受けにくいが、プレートの形状がはるかに大きく、より高価である。プレートは、通常、金属又は波形金属から作られる。
【0024】
ハニカム構成は、プレート型よりも小型だが、より高い圧力低下を有し、より詰まりやすい。しかしながら、ほとんどの移動用途に対して、好適な基材は、いわゆるハニカム形状を有するフロースルーモノリスを含む。このフロースルーモノリスは、両端が開口し、且つ概して基材の入口面から出口面に延在し、高い表面積対容積比をもたらす、複数の隣接した平行流路を含む。特定の用途に対して、ハニカムフロースルーモノリスは、例えば、平方インチ当たり約600から800のセル数の高いセル密度を有し、及び/又は、約0.18から0.35mm、好ましくは、約0.20から0.25mmの平均的な内部壁の厚みを有する。特定の他の用途に対して、ハニカムフロースルーモノリスは、平方インチ当たり約150から600のセル数、より好ましくは、平方インチ当たり約200から400のセル数の低いセル密度を有する。好ましくは、ハニカムモノリスは多孔質である。コーディエライト、炭化ケイ素、窒化ケイ素、セラミック、及び金属に加えて、基材に対して使用することができる他の材料は、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、チタン酸アルミニウム、αアルミナ、ムライト(針状ムライトなど)、ポルサイト、サーメット(AlOsZFe、Al/Ni、又はBCZFeなど)、又はそれらの任意の2つ以上のセグメントを含む複合物を含む。好適な材料には、コーディエライト、炭化ケイ素、及びチタン酸アルミナ(alumina titanate)が含まれる。特定の実施形態では、基材は好ましくは不活性である。
【0025】
排気システムに必要とされる空間量を減らすため、特定の実施態様の個々の排気コンポーネントは、1つ以上の機能を実行するように設計される。例えば、ASC触媒をフロースルー基材の代わりにウォールフロー型フィルタ基材(wall−flow filter substrate)に適用することは、排気処理システムの全体的なサイズを小さくするという役割を果たす。これは、1つの基材が2つの機能を果たすこと、すなわち、1つの基材が、触媒によるアンモニアスリップの低減とフィルタ基材による排ガスの煤の除去を果たすことにより可能となる。したがって、特定の実施態様では、基材は、ハニカムウォールフロー型フィルタ又はパーシャルフィルター(partial filter)である。ウォールフロー型フィルタは、複数の隣接する平行な流路を含むという点において、フロースルーハニカム基材に類似する。しかしながら、フロースルーハニカム基材の流路は、両端部が開かれているが、ウォールフロー基材の流路は、一方の端部が蓋で覆われている。交互するパターンでは、隣接する流路の反対側の端部が蓋で覆われる。流路の交互する端部を蓋で覆うことによって、基材の入口面に入るガスが流路を直線的に通り抜け、流出することが防止される。代わりに、排ガスは、基材の前部に入り、流路のおよそ真ん中まで移動し、それから、流路の後ろ半分に入って基材の後面から出る前に、流路壁を通ることを強いられる。
【0026】
基材の壁の気孔率及び孔径は、ガス透過性であるが、ガスが壁を通過する際に、ガスから煤などの大部分の粒子状物質を捕捉する気孔率及び孔径である。好適なウォールフロー基材は、高効率フィルタである。本発明で使用されるウォールフローフィルターは、好ましくは、少なくとも70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、又は少なくとも約90%の効率を有する。特定の実施態様では、効率は、約75から約99%、約75から約90%、約80から約90%、又は約85から約95%までの範囲内に含まれる。ここで、効率は、煤及び他の同様の粒径の粒子、並びに従来のディーゼル排ガス中に典型的に見出される微粒子濃度に関連する。例えば、ディーゼル排気中の微粒子のサイズは、0.05ミクロンから2.5ミクロンの範囲内であってもよい。したがって、該効率は、前記範囲、又は、例えば、0.1から0.25ミクロン、0.25から1.25ミクロン、或いは1.25から2.5ミクロンのサブ範囲を基準としてもよい。
【0027】
気孔率は、多孔質の基材内の隙間のパーセンテージの測定値であり、排気システムにおける背圧に関係する。概して、気孔率が低くなれば背圧が高くなる。好ましくは、多孔質の基材は、約30から約80%、例えば、約40から約75%、約40から約65%、又は約50から60%までの範囲内に含まれる気孔率を有する。
【0028】
基材の全空隙容量のパーセンテージとして測定される孔の相互接続性は、多孔質の基材を通る連続的な経路、すなわち、フィルタの入口面から出口面までを形成するため、孔、隙間、及び/又は流路が繋がれる程度(度合い)である。好ましくは、多孔質の基材は、少なくとも約30%、より好ましくは少なくとも約40%の孔の相互接続容量を有する。
【0029】
多孔質の基材の平均孔径は、特に濾過用途においても重要である。平均孔径は、水銀圧入法(mercury porosimetry)を含む任意の許容可能な手段によって決定し得る。多孔質の基材の平均孔径は、基材自体によって、基材の表面上の煤ケーキ層の促進によって、又は両方の組み合わせによって、妥当な効率を提供する一方で、低背圧を促進するのに十分な大きさを有する値であるべきである。好ましい多孔性基材は、約10から約40μm、例えば約20から約30μm、約10から約25μm、約10から約20μm、約20から約25μm、約10から約15μm、及び、約15から約20μmの、平均孔径を有する。
【0030】
図1Aを参照すると、酸化触媒が、高多孔性フロースルー基材(high−porosity flow−through substrate)(10)の壁の表面上のウォッシュコート層(20)である、本発明の実施形態が示される。ここでは、この層は、基材の一部のみ、すなわち後部を覆う。しかしながら、他の実施形態では、この層は、基材全体又は基材の前部を覆ってもよい。層は、前後のいずれかからであっても、基材の長さの25%、50%、又は75%を占めてもよい。本明細書で使用されるように、基材の「前」とは、基材を通る通常のガス流に対する入口端部のことであり、「後」とは、基材を通る通常のガス流に対する出口端部のことである。フィルタ上のコーティングについては、酸化触媒を含有するコーティングは、フィルタ壁の上流側、フィルタ壁の下流側、又はその両方にあってもよい。「上流」及び「下流」は、フィルタ壁を透過する排ガスの正方向に関連して定義される。好ましくは、酸化触媒は、基材壁の少なくとも一部を透過する。
【0031】
図1Bを参照すると、触媒体は、基材(10)、基材上の第1の触媒層(30)、及びW/TiOで担持された貴金属触媒を含有する基材上の第2の触媒層(20)を含む。ここでは、第1の層が基材の長さ全体に適用される。他の実施形態では、第1の層は、基材の一部のみに適用される。特定の実施形態では、第1の層は、好ましくは第2の層全体を覆う。
【0032】
本明細書で使用される用語「第1の層」及び「第2の層」は、触媒体を通過する排ガス流及び/又は触媒体を越える排ガス流の正方向に対する触媒体内の触媒層の相対的位置を記述するために使用される。通常の排ガス流状態の下で、排ガスは、第2の層と接触する前に第1の層に接触する。特定の実施態様では、第2の層は、最下層として不活性フロースルーハニカム基材に適用される。第1の層は、第2の層の上に適用される最上層である。このような実施態様では、基材を通過する排ガスは、第2の層と接触する前に第1の層を貫通(従って接触)し、次いで、第1の層を通って戻り、触媒成分から抜け出る。他の実施態様では、第1の層は、基材の上流部分上に配置された第1の区域であり、第2の層は、第2の区域として基材上に配置される。第2の区域は第1の区域の下流である。
【0033】
特定の実施形態では、第1の触媒層は、NHを吸蔵するための及び/又は酸素の存在下でNOをNHで選択的に還元するための触媒を含む。これは、本明細書でSCR触媒とも呼ばれている。本明細書で使用されるように、NH吸蔵に関連する「触媒」という用語は、特定の条件下でNHを吸蔵し、他の条件下で吸蔵されたNHを放出するが、NHが関与する反応を必ずしも触媒しない材料を示す。
【0034】
特定の実施形態では、SCR触媒は、耐火性金属酸化物及びアルミノケイ酸塩(ゼオライト)、シリコアルミノホスフェート(SAPO)、又はアルミノホスフェート(AIPO)などのモレキュラーシーブを含む、高表面積担体上の少なくとも1つの助触媒金属(promoter metal)を含む。特定の実施形態では、助触媒金属は、V、Cr、Co、Cu、Fe、Hf、La、Ce、In、V、Mn、Ni、Zn、及びGaから成る群から選択される。助触媒金属は、遊離金属又は金属イオンであってもよく、担体材料の合成の間、イオン交換、インシピエントウェットネス、ダイレクトコーティングを含む様々な技法によって、或いはそのままの状態で、担体の上又は内に組み込まれてもよい。好適な助触媒金属は、特に助触媒金属がモレキュラーシーブの上又は内にロードされる際に、Cu及びFeを含む。
【0035】
特定の実施態様では、助触媒金属酸化物(promoter metal oxide)は、遊離バナジウム(free vanadium)、バナジウムイオン、又はバナジウムの酸化物などのバナジウム、或いはそれらの誘導体である。好ましくは、バナジウムの形態は、バナジア(V)である。バナジウムに加えて、助触媒金属酸化物は、タングステンの酸化物及び/又はモリブデンの酸化物のような他の触媒的に活性な金属酸化物を含んでもよい。本明細書で使用されるように、「触媒的に活性な」金属酸化物とは、NOの触媒還元及び/又はNHの酸化において分子成分として直接関与する金属酸化物或いはその他の窒素系SCR還元剤(nitrogenous−based SCR reductant)を意味する。特定の実施形態では、SCR触媒は、V2O/WO/TiOであり、任意選択的にMoOを含む。
【0036】
好適なモレキュラーシーブ担体は、AEI、AFX、CHA、KFI、LEV、ERI、DDR、UEI、RHO、EAB、PAU、MER、GOO、YUG、GIS、UFI、VIN、AEI/CHA連晶、BEA、MFI、MOR、及びFERから成る群から選択される骨格(framework)を有するゼオライト及びSAPOを含む。特定の実施形態では、骨格は、AEI、CHA、及びそれらの連晶から選択される。好適なアルミノケイ酸塩モレキュラーシーブは、約10対約50、好ましくは、約15対約25のシリカ対アルミナの比を有する。
【0037】
他の実施形態では、SCR触媒の高表面積担体は、耐火性金属酸化物である。好適な耐火性金属酸化物は、Al、TiO、CeO、SiO、及びZrOを含む。耐火性金属酸化物担体は、好ましくは水銀圧入法によって測定される、好ましくは約0.1から0.5g/ccの孔容積、例えば、約0.2から0.4g/ccの孔容積を有する。特定の実施形態では、担体は、幅広い孔(例えば、100から350Å)、或いは幅広い孔と狭い孔の両方を有する。特定の実施形態では、担体は、少なくとも50m/g、好ましくは約50から500m/g、より好ましくは約50から300m/g、又は約150から250m/gのBET表面領域を有する。
【0038】
好ましくは、SCR触媒を含有する触媒層は、実質的に貴金属を含まず、酸化触媒を含有する触媒層は、実質的にSCR触媒を含まない。触媒層に関連して「実質的含まない」とは、当該金属が、触媒層の性能に影響する量で層の中に存在しないことを意味する。特定の実施態様では、第1の金属を有し、第2の金属を「実質的に含まない」層とは、第1の金属に対して第2の金属を、5重量パーセント未満、好ましくは1重量パーセント未満、更により好ましくは0.1重量パーセント未満有する層を意味する。特定の実施形態では、第1及び第2の層は、互いに隣接して接触するが、物理的に別々の層である。
【0039】
ウォールフロー型フィルタ上の被覆は、(フィルタを通る排ガス流に対して)フィルタの入口側及び/又は出口側にあり、好ましくは、フィルタの出口側にあり、特に選択式接触還元(SCR)触媒又は煤酸化触媒を組み込む実施態様では、フィルタの上流側にある。
【0040】
特定の実施態様では、本発明の触媒体は、部分的に、触媒体が窒素系還元剤の源の下流に配置される排出ガス処理システムである。窒素系還元剤の例としては、アンモニア、ヒドラジン、又は任意の適切なアンモニア前駆体、例えば、尿素((NHCO)、炭酸アンモニウム、カルバミン酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、又はギ酸アンモニウムが含まれる。より好ましくは、触媒体は、選択式接触還元(SCR)の下流側に配置されたアンモニアスリップ触媒である。このような実施態様では、アンモニアスリップ触媒は、選択的接触還元プロセスによって消費されない任意の窒素系還元剤の少なくとも一部を酸化する。例えば、特定の実施態様では、アンモニアスリップ触媒は、ウォールフロー型フィルタの出口側に配置され、SCR触媒は、フィルタの上流側に配置される。特定の他の実施態様では、アンモニアスリップ触媒は、フロースルー基材の下流側端部に配置され、SCR触媒は、フロースルー基材の上流側端部に配置される。他の実施態様では、アンモニアスリップ触媒及びSCR触媒は、排気システム内の別々のブリック上に配置される。これらの別々のブリックは、互いに隣接し、且つ接触し、又は特定の距離によって分離され、それらは互いに流体連通し、且つSCR触媒ブリックはアンモニアスリップ触媒ブリックの上流に配置される。
【0041】
特定の実施形態では、アンモニアは、少なくとも100℃の温度で酸化される。別の実施形態では、アンモニアは、約150℃から750℃の温度で酸化される。特定の実施態様では、該温度範囲は175から550℃である。別の実施態様では、該温度範囲は175から400℃である。更に別の実施態様では、該温度範囲は450から900℃、好ましくは500から750℃、500から650℃、450から550℃、又は650から850℃である。
【0042】
本発明の別の態様によると、ガス中のNO化合物の還元及び/又はNHの酸化のための方法が提供される。この方法は、ガス中のNO化合物のレベルを低減させるのに十分な時間の間にガスを本明細書に記載の触媒と接触させることを含む。本発明の方法は、次のステップ、(a)触媒フィルタの入口と接触している煤を蓄積及び/又は燃焼すること、(b)触媒フィルタと接触する前に、好ましくはNO及び還元剤の処理を含んだ触媒化ステップの介在なく、窒素系還元剤を排ガス流中に導入すること、(c)NO吸収触媒上でNHを生成すること、及び好ましくは下流のSCR反応において還元剤としてそのようなNHを使用すること、(d)排ガス流をDOCと接触させ、炭化水素系可溶性有機成分(SOF)及び/又は一酸化炭素をCOへと酸化し、及び/又はNOをNOへと酸化し、次に、それらを使用してパーティキュレートフィルタ内の粒子状物質を酸化し、及び/又は排ガス中の粒子状物質(PM)を還元すること、(e)還元剤の存在下で、排ガスを1つ又は複数のフロースルーSCR触媒装置と接触させ、排ガス中のNO濃度を低減させること、及び(f)排ガスを大気中に放出する前、又は排ガスがエンジンに入る/再度入るのに先立って排ガスを再循環ループに通す前に、アンモニアのほとんど、全てではなくても、を酸化するために、好ましくはSCR触媒の下流で、排ガスをアンモニアスリップ触媒と接触させることのうちの1つ又は複数を含んでもよい。
【0043】
本方法は、内燃機関(移動式又は固定式)、固定式ガスタービン、海洋用途や機関車用途、及び石炭や石油火力発電所などの燃焼プロセスに由来する排ガスで実施することができる。本方法は、更に、精製などの工業的プロセスからのガス、製油所の加熱器やボイラー、炉、化学プロセス工業、コークス炉、都市廃棄物プラント、及び焼却炉などからのガスを処理するために使用されてもよい。特定の実施態様では、本方法は、ガスタービン又はリーンバーン内燃機関からの排ガスを処理するために使用される。
【0044】
本触媒は、多量のSOを含有する排ガスの処理に適している。例えば、触媒は、再生を必要とする前に高濃度の硫黄にさらされる場合がある。再生をさほど頻繁に行わない方が、燃料噴射に基づく再生現象の必要性が少なくなるため、燃費が向上する。特定の実施形態では、本発明は、(a)本明細書に記載の酸化触媒被膜を有する基材を通して、SOを含有する排ガスを流動させるステップ、(b)触媒被膜上のSOの少なくとも一部を吸着するステップ、及び(c)触媒層がSOを少なくとも約5g/L、少なくとも約10g/L、少なくとも約20g/L、例えば、約5から約10g/L、約10から約20g/L、約20から約30g/L、約30から約40g/L、及び約40から約50g/Lを含む約5から約50g/Lを吸着した後に触媒を再生するステップを含む、排ガスの処理に使用される触媒体を再生する方法を対象とする。
【0045】
排ガス中のSOの濃度は、特に制限されていない。つまり、SO濃度が高い排ガスは、SO濃度が低い排ガスに比べて、再生がより頻繁に行われることになる。それでも、SO濃度が低い排ガスを処理するために触媒が使用されるとき、再生時間の間の間隔は、従来の触媒に比べてまだ延長することができる。特定の用途では、触媒は、300ppmを超える硫黄、500ppmを超える硫黄、1000ppmを超える硫黄、又は2000ppmを超える硫黄を含有する、ディーゼル燃料のような燃料を燃焼させることによって生じる排ガスを処理するために使用される。
【0046】
ディーゼル排気に加えて、本発明の酸化触媒は、石炭火力発電所又は天然ガスを燃料とするタービンからの排煙のような高硫黄濃度を含有し得る他の種類の排ガスを処理してもよい。このような実施形態では、本発明の酸化触媒は、NHに加えて、排ガスの他の成分を酸化することができる。
【0047】
硫酸化された後、本触媒は、高い温度の再生に耐えることができる。例えば、再生は、350℃を超える温度(例えば、450℃を超える温度及び550℃を超える温度)で起こり得る。しかしながら、本触媒は、400℃以下、更に350℃以下のような比較的低い温度で再生を成功させることもできる。したがって、触媒、並びに後処理システムにおける他の成分、特に同じ基材上の他の触媒は、定期操作の間にさほど熱応力にさらされなくなる。再生の温度がより低いことにより、更に加熱用燃料の必要性が減少し、結果として燃費が向上する。
【0048】
本触媒は、高温度エージング後の卓越した性能も有する。例えば、触媒の性能は、100時間の間580℃の温度での熱水エージング後に維持される。
【0049】
更なる実施態様では、排ガス中の一酸化窒素を二酸化窒素に酸化するための酸化触媒は、窒素系還元剤が排ガス中に添加される場所の上流に配置されてもよい。1つの実施態様では、酸化触媒は、例えば、250℃から450℃までの範囲内に含まれる酸化触媒の入口での排ガス温度で、NO対NOの体積比が約4:1から約1:3までの範囲内に含まれる、SCR触媒に入るガス流を生じさせるために適合される。酸化触媒は、フロースルーモノリス基材上に被膜された、白金、パラジウム、又はロジウムのような少なくとも1つの白金族金属(又は、それらの幾つかの組み合わせ)を含んでもよい。1つの実施態様では、少なくとも1つの白金族金属は、白金、パラジウム、又は白金とパラジウム両方の組合せである。白金族金属は、アルミナ、アルミノシリケートゼオライトなどのゼオライト、シリカ、非ゼオライトシリカアルミナ、セリア、ジルコニア、チタニア、或いはセリアとジルコニアの両方を含有する混合酸化物や複合酸化物のような高表面積ウォッシュコート成分上で担持されてもよい。
【0050】
更なる実施態様では、適切なフィルタ基材は、酸化触媒とアンモニアスリップ触媒との間に配置される。フィルタ基材は、上記のどれからでも、例えば、ウォールフロー型フィルタから選択されてよい。例えば、上述の種類の酸化触媒を用いてフィルタが触媒化される場所では、好ましくは、窒素系還元剤を計量する地点は、フィルタとアンモニアスリップ触媒との間に位置する。代替的に、フィルタが触媒化されない場合、窒素系還元剤を計量する手段は、酸化触媒とフィルタとの間に位置してもよい。
【0051】
実施例
実施例1:触媒の調製
5重量%のWO及び残部のTiOを有するWO/TiO担体上の白金を含む触媒ウォッシュコートが1インチ×1インチのフロースルーセラミックハニカム基材(flow−through ceramic honeycomb substrate)の壁に塗布された。コーティングされた基材は、 100時間の間、580℃の温度と10%の湿度で老化された。試料の完全性が維持された。
【0052】
実施例2及び比較例A〜E:重硫黄負荷の後のNH変換
実施例1からのコーティングされた基材は、下記の条件の下で硫酸化された。300℃で128分にわたって200ppmの硫黄。500ppmのNH3、4.5wt.%のCO、5wt.%のH2O、200ppmのCO2、12wt.%のO2、及び残部N2を含有する模擬的な排ガスにおいて試料がNH3を酸化する能力を試験するために、硫酸化された試料は次いでSCATリグへロードされた。試験は、225℃の温度及び150、000hr‐1の排ガス空間速度で行われた。触媒の性能は、硫酸化された条件の下で、更に350℃、400℃、450℃、500℃、及び550℃において15分の再生の後に評価された。
【0053】
比較例の試料A〜Eは、実施例1に記載された手順を用いて調製されたが、表1で特定された担体を用いて調製された。
【0054】
【0055】
これらの比較例の試料は、次いで同様の硫酸化にさらされ、同様の条件下でのNH酸化性能について評価された。これらの試験の結果は、図2に示される。
【0056】
これらの試験の結果は、WO/TiO上に担持されたPGMは、TiO、及びTiO/SiO/WOを含む他の担体に比べて、硫酸化後のNH変換性能がより優れていることを示す。
図1A
図1B
図2
【国際調査報告】