特表2016-531778(P2016-531778A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2016-531778向上した耐火性を有する強化石膏ボード
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2016-531778(P2016-531778A)
(43)【公表日】2016年10月13日
(54)【発明の名称】向上した耐火性を有する強化石膏ボード
(51)【国際特許分類】
   B27N 3/00 20060101AFI20160916BHJP
   B32B 13/02 20060101ALI20160916BHJP
【FI】
   B27N3/00 A
   B27N3/00 D
   B32B13/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-537312(P2016-537312)
(86)(22)【出願日】2014年8月29日
(85)【翻訳文提出日】2016年4月25日
(86)【国際出願番号】EP2014068416
(87)【国際公開番号】WO2015028631
(87)【国際公開日】20150305
(31)【優先権主張番号】13290205.7
(32)【優先日】2013年8月30日
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG
(71)【出願人】
【識別番号】514151409
【氏名又は名称】セン・ゴバン プラコ エスアーエス
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ルロジェ,ソフィー
【テーマコード(参考)】
2B260
4F100
【Fターム(参考)】
2B260AA02
2B260BA13
2B260CB01
2B260CD02
2B260DA09
4F100AE06B
4F100AG00A
4F100AK25A
4F100BA02
4F100CB00A
4F100DG01A
4F100DG06A
4F100GB07
4F100JJ07
(57)【要約】
2つの対抗する面を有する石膏ボードであって、このボードの面の一方には繊維マットが埋め込まれている。この繊維マットは、高分子バインダーによって結合された繊維を含む。この繊維の長さは20mmより長く、その径は14ミクロンより大きい。高分子バインダーは、実質的にホルムアルデヒドを含まない。この繊維マットは、難燃剤をバインダーに組み込む必要なく石膏ボードの耐火性を達成させ、更に曲げ強度も提供している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの対抗する面を有する石膏ボードであって、該ボードの面の一方には繊維マットが埋め込まれており、該繊維マットは、高分子バインダーによって結合された繊維を含み、前記高分子バインダーは実質的にホルムアルデヒドを含まず、前記繊維の長さは20mmより長く、前記繊維の径は14ミクロンより大きい、石膏ボード。
【請求項2】
前記高分子バインダーは親水性である、請求項1記載の石膏ボード。
【請求項3】
前記繊維マットは前記ボードの前記面内に全体的に埋め込まれている、請求項1又は2記載の石膏ボード。
【請求項4】
前記繊維マットは部分的に前記ボードの前記面に埋め込まれている、請求項1又は2記載の石膏ボード。
【請求項5】
高分子バインダーによって結合された繊維を含み、前記高分子バインダーは実質的にホルムアルデヒドを含まず、前記繊維の長さは20mmより長く、前記繊維の径は14ミクロンより大きい、請求項1〜4のいずれか1項に記載の石膏ボードを得るために石膏内に埋め込まれる繊維マット。
【請求項6】
前記高分子バインダーは親水性である、請求項5記載の繊維マット。
【請求項7】
前記高分子バインダーは、アクリレート重合体、メタクリレート重合体、アクリレート−メタクリレート共重合体、スチレンアクリル酸共重合体、スチレンメタクリル酸共重合体及びスチレンブタジエン共重合体並びにこれらの混合物からなる群から選択される、請求項5又は6記載の繊維マット。
【請求項8】
前記高分子バインダーは親水性添加物を更に含む、請求項7記載の繊維マット。
【請求項9】
前記親水性添加物は、ポリソルベート系界面活性剤(ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレートなど)及びポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンとの共重合体非イオン系界面活性剤からなる群から選択される、請求項8記載の繊維マット。
【請求項10】
前記アクリレート重合体は、「アクロデュールDS3530」(BASF社)、「アクアセットTF150」(Dow社)、及び「HF05」(Dow社)からなる群から選択される、請求項8又は9記載の繊維マット。
【請求項11】
前記アクリレート重合体が「アクロナルDS2416」(BASF社)である、請求項7記載の繊維マット。
【請求項12】
ガラス繊維を含む、請求項5〜11のいずれか1項に記載の繊維マット。
【請求項13】
前記繊維の径は15ミクロンよりも大きく、好適には16ミクロンより大きい、請求項5〜12のいずれか1項に記載の繊維マット。
【請求項14】
前記繊維の長さは22mmよりも長く、好適には23mmよりも長い、請求項5〜13のいずれか1項に記載の繊維マット。
【請求項15】
不織マットである、請求項5〜14のいずれか1項に記載の繊維マット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維マットフェイサーを含む石膏ボードと、そのようなフェイサーとして使用するための繊維マットに関する。
【背景技術】
【0002】
2つの対抗する紙ライナーの間に石膏スラリーの層を配置することによって、例えば建設等に利用される石膏ボードを製造することが知られている。しかしながら、湿気の多い環境においてもボードの性能を維持するため、その紙フェースシートを、部分的にガラス繊維(グラスファイバ)マット製の対抗層と置き換えることが提案されている。そのようなマットの繊維は、典型的には尿素ホルムアルデヒド樹脂バインダーを使用して結合されている。
【0003】
尿素ホルムアルデヒド樹脂から発生する揮発性の有機化合物の異臭についての懸念、およびこれら化合物のレベル(量)を制限する規制に従う必要性のため、マットのための実質的にホルムアルデヒドを含まないバインダーを提供することが望ましい。
【0004】
使用されているホルムアルデヒドを含まないバインダーは、一般的に、耐火性を向上させるために難燃剤を含んでいる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
最も一般的には、本発明は、石膏強化材としての使用のためのマットを提供し、このマットは、ホルムアルデヒドを含まないバインダーによって結合されている繊維を含んでおり、難燃剤をバインダーに組み込む必要なく容認可能な耐火性が達成され、さらに容認可能な曲げ強度も達成されることを特徴としている。
【0006】
ここで使用されている「ホルムアルデヒドを含まない」とは、ISO16000標準試験によって確認される、28日後に10μg/mより低いレベルで、好適には5μg/mより低いレベルでホルムアルデヒドを放出または発生させるバインダーを意味する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の形態では、本発明は、2つの対抗する面を有し、ボードの面の一方には繊維マットが埋め込まれており、この繊維マットは、高分子バインダーによって結合された繊維を含み、この高分子バインダーは実質的にホルムアルデヒドを含まず、この繊維の長さは20mmより長く、この繊維の径は14ミクロンより大きい石膏ボードを提供する。
【0008】
この繊維マットは効果的にボードのためのフェイサーを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
好適には、前記高分子バインダーは親水性である。前記バインダーは、本質的に親水性であっても、あるいは親水性添加物の存在により親水性の特徴が提供されていてもよい。
【0010】
実施態様によっては、前記マットは前記ボードの面内に全体的に埋め込まれてもよい。即ち、石膏層は前記マットの内側面及び外側面の両方に存在している。典型的には、これらの実施態様は、マットの内側面に配置された石膏スラリーが前記マットに浸透する場合に形成され、このようにして前記マットの外側面を覆う石膏の外側層が提供される。従来技術で良く知られているように、石膏スラリーの前記マットへの浸透は、ローラの作用(例えば、米国特許6,524,679号で解説)又は振動の適用(例えば、米国特許4,378,405号で解説)によって補助することができる。
【0011】
その他の実施態様では、前記マットは部分的にのみ前記ボードの面に埋め込まれることができ、即ち、前記マットを覆う石膏の完全な外層が存在しない。
【0012】
好適には、前記マットの繊維の長さは22mmよりも長く、さらに好適には23mmよりも長い。繊維長を増加させることで、火災において前記バインダーの大部分が焼け落ちた後でも、前記マットが前記石膏ボードに強度を提供し続けることができると考えられる。このように、難燃剤がなくとも、ボードの完全性が維持され、火災の進行が抑制される。
【0013】
一般的には、前記繊維の長さは30mmより短く、好適には28mmより短く、さらに好適には27mmより短い。
【0014】
前記高分子バインダーの親水性は、容認可能なレベルの曲げ強度が達成されるよう、製造工程中に石膏スラリーによる繊維マットへの良好な浸透を確実にする。
【0015】
好適には、前記繊維の径は15ミクロンよりも大きい。一般的には、前記繊維の径は30ミクロンよりも小さく、好適には20ミクロンよりも小さい。
【0016】
前記マット用の前記高分子バインダーは、ポリカルボキシレート;ポリ(メタ)アクリレート;アクリレート−メタクリレート共重合体;スチレンアクリル酸共重合体;スチレンメタクリル酸共重合体;スチレンブタジエン共重合体;またはこれらの混合物等のアクリレート系重合体を含めることができる。前記高分子バインダーは、任意に親水性添加物を含む。適切な親水性添加物には、ポリソルベート系界面活性剤(ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレートなど)及びポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンとの共重合体系非イオン系界面活性剤を含めることができる。適切なアクリレート系重合体は、「アクロナルDS2416」(BASF社);「アクロデュールDS3530」(BASF社);「アクアセットTF150」(Dow社);「HF05」(Dow社);及び「アクロナルDS5350」(BASF社)である。
【0017】
「アクロナルDS2416」は、別の親水性種の追加を必要としないため、前記高分子バインダーとして好適である。
【0018】
典型的には、前記高分子バインダーは熱可塑性ポリマー又はエラストマーである。
【0019】
一般的に、前記繊維マットは、E−ガラス等のガラス繊維を含むことができる。あるいは、前記繊維マットは、ロックウール(例:玄武岩製)等のその他の無機繊維を含むことができる。
【0020】
前記マットは典型的には、10〜1100g/m、好適には20〜300g/mの鉱物繊維を含んでいる。バインダーは一般的に、鉱物繊維のマットの重量に対して5〜350%、好適には10〜100%、そして有利的には15〜30%の量で存在する。
【0021】
第2の形態では、本発明は、親水性高分子バインダーによって結合された繊維を含む繊維マットを提供し、前記高分子バインダーは実質的にホルムアルデヒドを含まず、前記繊維の長さは20mmよりも長く、前記繊維の径は14ミクロンよりも大きく、このマットは本発明の第1の形態による石膏ボードを提供するよう、石膏内に埋め込まれる。
【0022】
本発明の第2の形態による繊維マットは、本発明の第1の形態による、石膏ボードの面の一方内に埋め込まれているマットの1以上の特徴を任意に含むことができる。
【0023】
バインダーをマットに塗布するためのいくつかの方法が従来技術で知られている。例えば、スプレーコーティング法又はローラの使用によって、バインダーをマットに塗布することができる。その他の方法として、マット上へのバインダー材料の供給量を制御することができるアプリケータを用い、マットを該アプリケータの開口部を通過して運ぶことにより、バインダーを塗布してもよい。別の方法として、バインダー材料をマット上に置き、スクレーパー要素によってマット上にまんべんなく塗布してもよい。
【実施例】
【0024】
詳細な説明
本発明を実施例によって解説する。
【0025】
実施例1
250gのヒドロキシエチルセルロース(増粘剤:ヘラキュールズ社によって「ナトロソール」(商標)として販売されている)及び0.3gのエトキシ化オクタデシルアミン/オクタデシルグアニジン複合体(表面処理剤:サイテック社により「アクロゾールC−61」として販売されている;固体含有量:70%)を含む水溶液(2L)を調製した。
【0026】
E−ガラス繊維のカットヤーン(長さ:24mm;糸径:16ミクロン)2.54gを前記溶液に加えた。
【0027】
得られたガラスヤーンの懸濁液を、マットの製造を可能にする装置に移す。この装置は、容器の内容積と容器下方に配置された吸引装置と間の通流を可能にする有孔基部を有する容器を含む。
【0028】
懸濁液を容器内に移し、激しく攪拌することにより均質化し、その後、流体を除去するために吸引装置を起動する。30cm×30cmの寸法であり、単位表面積重量が28.2g/cmであるガラス繊維のマットがスクリーン上で回収される。
【0029】
マットは、アクリル樹脂(BASF社によって販売されている「アクロナルDS2416」)の水溶液内に1分間含浸させる。マット中の余剰のバインダーを吸引によって除去し、その後マットを強固にするために210℃で1分間加熱する。この処理後には、マットは5g/mのアクリル樹脂を含有している。
【0030】
実施例2及び比較例3〜6
実施例2及び比較例3〜6は、両面上に埋め込まれたガラス繊維マットを有する石膏ボードに関する。ガラス繊維マットの特徴を表1に要約する。
【0031】
耐火性:試験1
実施例2及び比較例3〜6による石膏ボードについて、BS:EN 1364 1:1999に従った耐火試験を実施した。簡潔に述べると、フレームがそれぞれの面上で12.5mm厚のボードの単層で被覆された仕切りを構築した。仕切りの一面を炉の炎に曝露した。
【0032】
ボードの性能は、仕切りの非曝露フェース面の平均温度が少なくとも60分間140℃より低く維持されるなら良好であると特徴付けられた。結果を表1に要約している。
【0033】
耐火性:試験2
実施例2及び比較例3〜6による追加の耐火試験を、BS EN 1363−1:1999の手法を用いて実施した。簡潔に述べると、鋼鉄の梁を20mm厚のボードの単層で被覆し、炉の炎に曝露した。
【0034】
ボードの性能は、鋼鉄の梁の平均温度が少なくとも82分間550℃より低く維持され、且つボードがその機械的完全性を90分間より長く保持するなら良好であると特徴付けられた。
【0035】
曲げ強度試験
実施例2及び比較例3〜6の石膏ボードについて、BS:EN 520で解説されている方法に従って曲げ強度試験を実施した。ボードの性能は、曲げ強度が予め設定されたレベルを超えたなら良好であると特徴付けられた。結果を表1に示す。
【0036】
スラリー浸透の特性
繊維マットを通したスラリー浸透の程度を視覚による検査によって特徴付け、浸透が完全で且つ結果的にボードの表面が平坦である場合には「良好」と分類した。結果を表1に示す。
【0037】
【表1】
【国際調査報告】