(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2016-531821(P2016-531821A)
(43)【公表日】2016年10月13日
(54)【発明の名称】複層ガラス用のスペーサ
(51)【国際特許分類】
C03C 27/06 20060101AFI20160916BHJP
【FI】
C03C27/06 101Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-518674(P2016-518674)
(86)(22)【出願日】2014年8月22日
(85)【翻訳文提出日】2016年5月30日
(86)【国際出願番号】EP2014067901
(87)【国際公開番号】WO2015043848
(87)【国際公開日】20150402
(31)【優先権主張番号】13186710.3
(32)【優先日】2013年9月30日
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG
(71)【出願人】
【識別番号】512212885
【氏名又は名称】サン−ゴバン グラス フランス
【氏名又は名称原語表記】Saint−Gobain Glass France
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ハンス−ヴェアナー クスター
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルター シュライバー
(72)【発明者】
【氏名】マルタン リゴー
【テーマコード(参考)】
4G061
【Fターム(参考)】
4G061AA09
4G061AA13
4G061BA01
4G061CB02
4G061CD02
4G061CD22
(57)【要約】
本発明は、少なくとも2枚のガラス板(10,11)から成る複層ガラス用のスペーサに関し、このスペーサは、少なくとも、内壁(3)及び外壁(4)によって相互に接続されている、相互に平行な2つの側壁(1,2)を少なくとも含んでおり、且つ、側壁(1,2)、内壁(3)及び外壁(4)によって中空室(5)が包囲されている、ポリマー製のベースボディ(I)と、ポリマー製の支持体膜及び少なくとも1つの金属層又はセラミック層を含んでおり、少なくとも外壁(4)上に設けられている絶縁膜(8)と、を含んでおり、各側壁(1,2)には、少なくとも1種の金属又は少なくとも1種の合金を含んでいる補強ストライプ(6,6’)が装入されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複層ガラス用のスペーサにおいて、
少なくとも、
−内壁(3)及び外壁(4)によって相互に接続されている、相互に平行な2つの側壁(1,2)を少なくとも含んでおり、且つ、前記側壁(1,2)、前記内壁(3)及び前記外壁(4)によって中空室(5)が包囲されている、ポリマー製のベースボディ(I)と、
−ポリマー製の支持体膜及び少なくとも1つの金属層又はセラミック層を含んでおり、少なくとも前記外壁(4)上に設けられている絶縁膜(8)と、
を含んでおり、
各側壁(1,2)には、少なくとも1種の金属又は少なくとも1種の合金を含んでいる補強ストライプ(6,6’)が装入されており、
前記ベースボディ(I)は、0重量%から20重量%までの割合のガラス繊維を有している、
ことを特徴とする、スペーサ。
【請求項2】
前記補強ストライプ(6,6’)は、少なくとも鋼を含んでおり、該鋼は有利には特殊鋼ではない、請求項1に記載のスペーサ。
【請求項3】
前記補強ストライプ(6,6’)は、0.05mmから1mmまで、有利には0.1mmから0.5mmまで、特に有利には0.2mmから0.4mmまでの厚さを有している、請求項1又は2に記載のスペーサ。
【請求項4】
前記補強ストライプ(6,6’)は、1mmから5mmまでの幅を有している、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のスペーサ。
【請求項5】
前記絶縁膜(8)の前記ポリマー製の支持体膜は、10μmから100μmまでの厚さを有しており、前記絶縁膜(8)の前記金属層又はセラミック層は、10nmから1,500nmまでの厚さを有しており、前記絶縁膜(8)は、5μmから100μmまでの厚さの少なくとも1つの別のポリマー層を含んでいる、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のスペーサ。
【請求項6】
前記絶縁膜(8)は、2つから4つまでの金属層又はセラミック層を含んでおり、各金属層又はセラミック層と少なくとも1つのポリマー層とが交互に配置されている、請求項5に記載のスペーサ。
【請求項7】
前記絶縁膜(8)の前記金属層又はセラミック層は、少なくとも、鉄、アルミニウム、銀、銅、金、クロム、酸化ケイ素、窒化ケイ素、又は、それらの合金又は混合物を含んでおり、
前記絶縁膜(8)の前記ポリマー製の支持体膜は、少なくとも、ポリエチレンテレフタレート、エチレンビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデン、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、シリコーン、アクリロニトリル、ポリメチルアクリレート、又は、それらのコポリマー又は混合物を含んでいる、請求項5又は6に記載のスペーサ。
【請求項8】
前記ベースボディ(I)は、少なくとも、ポリエチレン(PE)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチロール、ポリブタジエン、ポリニトリル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリレート、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、有利には、ポリプロピレン(PP)、アクリルニトリル−ブタジエン−スチロール(ABS)、アクリルエステル−スチロール−アクリルニトリル(ASA)、アクリルニトリル−ブタジエン−スチロール−ポリカーボネート(ABS/PC)、スチロール−アクリルニトリル(SAN)、ポリエチレンテレフタレート−ポリカーボネート(PET/PC)、ポリブチレンテレフタレート−ポリカーボネート(PBT/PC)、又は、それらのコポリマー又は誘導体又は混合物を含んでいる、請求項1乃至7のいずれか1項に記載のスペーサ。
【請求項9】
前記ベースボディ(I)は、0重量%から15重量%までの割合のガラス繊維を有している、請求項1乃至8のいずれか1項に記載のスペーサ。
【請求項10】
前記補強ストライプ(6,6’)は穿孔されている、請求項1乃至9のいずれか1項に記載のスペーサ。
【請求項11】
前記側壁(1,2)、前記内壁(3)及び前記外壁(4)はそれぞれ平坦であり、且つ、前記内壁(3)は前記側壁(1,2)と直接的に接続されており、前記外壁(4)は、平坦な接続区間(7,7’)を介して前記側壁(1,2)と接続されており、前記側壁(1,2)と前記接続区間(7,7’)との間の角度αは120°から150°である、請求項1乃至10のいずれか1項に記載のスペーサ。
【請求項12】
0.25W/(m・K)よりも小さく、有利には0.2W/(m・K)よりも小さい熱伝導率を有している、請求項1乃至11のいずれか1項に記載のスペーサ。
【請求項13】
少なくとも、相互に平行に配置されている2枚のガラス板(10,11)と、該ガラス板(10,11)間の縁部領域に配置されている、請求項1乃至12のいずれか1項に記載のスペーサと、を含んでいる、複層ガラスにおいて、
各側壁(1,2)が、前記ガラス板(10,11)のうちの一方に対向しており、外側のシール層(9)が、少なくとも前記外壁(4)上に設けられており、前記中空室(5)には、有利には乾燥剤(12)、有利にはシリカゲル、モレキュラーシーブ、CaCl2、Na2SO4、活性炭、ケイ酸塩、ベントナイト及び/又はゼオライトが完全に又は部分的に充填されていることを特徴とする、複層ガラス。
【請求項14】
請求項1乃至12のいずれか1項に記載の複層ガラス用のスペーサを製造するための方法において、
a)2つの補強ストライプ(6,6’)を相互に平行に配置するステップと、
b)前記補強ストライプ(6,6’)を取り囲むようにポリマー材料を射出成形し、ポリマー製のベースボディ(I)を形成するステップと、
c)絶縁膜(8)を少なくとも前記ベースボディ(I)の前記外壁(4)に被着させるステップと、
d)前記ポリマー製のベースボディ(I)を切断するステップと、
e)前記ポリマー製のベースボディ(I)を、周を成すフレーム形状に折り曲げ、該ポリマー製のベースボディ(I)の端部を相互に接続するステップと、
を備えていることを特徴とする、方法。
【請求項15】
多層ガラス、有利には複層ガラス、特に建造物の窓ガラス又はファサードガラスにおける、請求項1乃至12のいずれか1項に記載のスペーサの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複層ガラス用のスペーサ、当該スペーサを製造するための方法、当該スペーサの使用並びに複層ガラスに関する。
【0002】
今日、建造物の窓及びファサードの領域において使用されているガラスは、ほぼ全て複層ガラスである。複層ガラスは、間隔保持部材、即ちスペーサによって相互に所定の間隔を空けて配置されている、少なくとも2枚のガラス板から形成されている。スペーサは、複層ガラスの縁部領域において周縁を成すように配置されている。従って、ガラス板間には中間空間が形成されており、この中間空間には通常の場合、不活性ガスが充填されている。ガラスによって画定されている内部空間と、外部の周囲空間との間での熱流を、複層ガラスによって、単純な窓ガラスに比べて著しく低減することができる。
【0003】
スペーサは、ガラス板の熱特性に多大な影響を及ぼす。従来のスペーサは、軽金属から形成されており、通常はアルミニウムから形成されている。軽金属は容易に加工することができる。スペーサは、通常の場合、直線状で継ぎ目のない成形材として製造され、必要な大きさに合わせて切断され、続いて折り曲げられることによって、複層ガラスへの使用に必要とされる矩形の形状へと成形される。もっとも、アルミニウムの熱伝導率が高いことから、縁部領域における複層ガラスの遮断効果は著しく低下している(コールドエッジ(cold edge)効果)。
【0004】
熱特性を改善するために、スペーサに関していわゆるウォームエッジ(warm edge)を用いる解決手段が公知である。このスペーサは特に合成物質から形成されており、従って、著しく低い熱伝導率を有している。合成物質製スペーサは、例えば、独国特許発明第2752542号明細書又は独国特許出願公開第19625845号明細書から公知である。しかしながら、合成物質製スペーサはその加工に関して欠点を有している。例えば、合成物質製スペーサを例えば押し出し成形によって、確かに継ぎ目のない成形材として製造することができるが、しかしながら、後続の折り曲げの際には、材料を局所的に加熱することが必要になるが、これは従来の機械では容易に実現することはできない。従って、その種の成形材は、複層ガラスメーカに多大な投資を迫るものである。
【0005】
独国特許出願公開第102010006127号明細書では、合成物質製スペーサに金属膜を設け、曲げ性を改善することが提案されている。金属膜は特に、ガラス板と対向する面と、その間に位置する、スペーサのガラス板中間空間側とは反対側の面とに配置されている。もっともこの解決手段では、金属膜が熱橋(thermal bridge)として作用するので、曲げ性が改善される一方で、熱特性は低下する。従って、合成物質製スペーサの熱に関する利点も、やはりある程度は失われてしまう。
【0006】
独国特許出願公開第19807454号明細書からは、穿孔金属薄板ストリップが側壁に嵌め込まれている合成物質製スペーサが公知である。穿孔金属薄板ストリップは、スペーサの補強に用いられている。穿孔金属薄板ストリップの曲げ性に及ぼす作用、またそれに伴う、スペーサの材料に対する要求は論じられていない。
【0007】
つまり、最小限の熱伝導率を補償しながら、それにもかかわらず簡単に加工することができる、特に折り曲げることができる複層ガラス用のスペーサが必要とされている。本発明が基礎とする課題は、その種のスペーサを提供することである。
【0008】
本発明によれば、この課題は、独立請求項1に記載の複層ガラス用のスペーサによって解決される。有利な実施の形態は従属請求項に記載されている。
【0009】
少なくとも2枚のガラス板から成る複層ガラス用の本発明によるスペーサは、少なくとも1つのポリマー製のベースボディを含んでいる。ポリマー製のベースボディは、相互に平行な少なくとも2つの側壁を含んでおり、これらの側壁は、ガラス板に対向させるため、且つ、ガラス板と接触させるために設けられており、更に、内壁及び外壁を介して相互に接続されている。側壁、内壁及び外壁は、中空室を包囲している。その種の中空室は、スペーサにとって一般的なものであり、また特に、乾燥剤を収容するために設けられている。
【0010】
ポリマー製のベースボディの各側壁内には、有利には、補強ストライプが装入されている。補強ストライプは、有利には、少なくとも1種の金属又は少なくとも1種の合金を含んでいる。本発明の範囲において「装入されている」とは、補強ストライプがポリマー製のベースボディの材料又はポリマー製のベースボディの側壁の材料によって周囲全体が包囲されていることと解される。
【0011】
補強ストライプは、従来の工業設備を用いても加工できるようにするために、所要の曲げ性をスペーサに与える。事前に加熱する必要なく、スペーサを最終的な形状に折り曲げることができる。補強ストライプによって、その形状が持続的に維持される。更に、補強ストライプは、スペーサの安定性を高める。しかしながら補強ストライプは熱橋として作用しないので、熱伝導に関するスペーサの特性に実質的に不利な影響が及ぼされることはない。このことは特に2つの理由による:(a)補強ストライプはポリマー製のベースボディに装入されているので、周囲環境と接触していない;(b)補強ストライプは、例えばガラス板間の中間空間と外部の周囲環境との間での熱交換が行われる外壁内又は内壁内に配置されているのではなく、側壁内に配置されている。曲げ性と最適な熱特性とを同時に実現できることは、本発明の決定的な利点である。
【0012】
更に本発明者は、曲げ性がポリマー製のベースボディのガラス繊維の割合に依存するということを発見した。ガラス繊維の割合は、ガラス繊維強化プラスチックから成る通常のポリマー製のスペーサでは約35重量%である。この割合のガラス繊維によって、スペーサの十分な安定性が達成される。もっとも、ガラス繊維をそのような高い割合で有しているスペーサは、損傷なく折り曲げるようにするためには硬すぎる。本発明者は、最大で20重量%の割合のガラス繊維によって良好な曲げ性が実現されることを発見した。ガラス繊維の割合を抑えることに伴い低下する剛性及び安定性、また特に折り曲げ後の復元力に対する剛性及び安定性は、本発明による補強ストライプによって補償される。
【0013】
本発明に従いガラス繊維の割合が低くされているポリマー製のベースボディを本発明による補強ストライプと組み合わせることによって、良好な曲げ性を実現することができ、またそれと同時に、取り付け位置における高い安定性及び剛性を実現することができる。
【0014】
側壁以外のベースボディの別の部分、特に内壁及び外壁は、有利には金属製の装入体を有していない。
【0015】
スペーサの熱伝導率(λ値)は、有利には、0.25W/(m・K)よりも小さく、特に有利には0.2W/(m・K)よりも小さい。これは、スペーサにおける厳密な位置に依存した熱伝導率の局所的な変動を考慮しない、スペーサ全体に関して測定された熱伝導率(等価熱伝導率)を意味している。その種の低い熱伝導率を、驚くべきことに、本発明による補強ストライプを備えているポリマー製のベースボディによって達成することができる。
【0016】
ポリマー製のベースボディの側壁は、完成した複層ガラスにおいてガラス板と対向させるために設けられている。スペーサとガラス板との接触は、側壁を介して行われる。スペーサとガラス板との間に直接的な接触が存在している必要はない。その代わりに、接触を間接的に、例えばシール材料を介して行うことができる。
【0017】
内壁は、完成した複層ガラスにおいてガラス板間の中間空間に対向させるために設けられている。1つの有利な実施の形態においては、中空室内の乾燥剤の中間空間に対する作用を保証するために、内壁に複数の孔が設けられている。
【0018】
外壁は、内壁に対向しており、且つ、複層ガラスの外側の周囲環境と対向させるために設けられている。外壁は、スペーサが配置されているガラス板間の中間空間から外側に向けられている。
【0019】
側壁、外壁及び内壁、また必要に応じて接続区間は、それぞれ有利には、0.5mmから2mmまでの、特に有利には0.8mmから1.5mmまでの厚さ(肉厚)を有している。ポリマー製のベースボディの厚さは、有利には一定であり、従って、全ての壁及び区間は同一の厚さを有している。その種のスペーサは容易に加工することができ、また有利には安定している。
【0020】
1つの有利な実施の形態において、内壁、外壁及び側壁は、それぞれ平坦に形成されている。即ちその意味では、内壁、外壁及び側壁は、ポリマー製のベースボディの平坦な区間である。各壁の端部は、隣接する2つの壁の各端部と接続されている。側壁を、内壁及び外壁と直接的に接続させることができる。
【0021】
1つの有利な実施の形態においては、内壁が側壁と直接的に接続されているが、それに対し、外壁は側壁と間接的に、即ち接続区間を介して接続されている。有利には、接続区間も同様に平坦に形成されている。内壁は有利には、各側壁に対して約90°の角度で配置されている。側壁は相互に平行であり、且つ、内壁は外壁に平行である。接続区間は有利には、各側壁に対して約120°から150°までの角度、理想的には135°の角度で配置されている。スペーサに関するこの形態は、特に有利であることが実証されている。
【0022】
ポリマー製のベースボディは、有利には5mmから35mmまで、特に有利には5mmから33mmまで、例えば10mmから20mmまでの幅を有している。この幅は、本発明においては、側壁間の寸法である。幅は、2つの側壁の相互に背を向けている面間の距離である。ベースボディの幅は、複層ガラスにおいて、2つのガラス板の距離を規定する。
【0023】
ポリマー製のベースボディは、有利には3mmから20mmまで、特に有利には5mmから10mmまで、極めて有利には5mmから8mmまでの高さを有している。高さに関するこの範囲において、スペーサは、有利な安定性を有しており、また、複層ガラスにおいて有利には目立たなくなっている。更に、スペーサの中空室は、適量の乾燥剤を収容するための有利な大きさを有している。高さは、外壁と内壁の相互に背を向けている面間の距離である。
【0024】
ポリマー製のベースボディは、有利には少なくとも、ポリエチレン(PE)、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチロール、ポリブタジエン、ポリニトリル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリレート、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、アクリルニトリル−ブタジエン−スチロール(ABS)、アクリルエステル−スチロール−アクリルニトリル(ASA)、アクリルニトリル−ブタジエン−スチロール−ポリカーボネート(ABS/PC)、スチロール−アクリルニトリル(SAN)、ポリエチレンテレフタレート−ポリカーボネート(PET/PC)、ポリブチレンテレフタレート−ポリカーボネート(PBT/PC)、又は、それらのコポリマー又は誘導体又は混合物を含んでいる。ポリマー製のベースボディは、特に有利には、ポリプロピレン(PP)、アクリルニトリル−ブタジエン−スチロール(ABS)、アクリルエステル−スチロール−アクリルニトリル(ASA)、アクリルニトリル−ブタジエン−スチロール−ポリカーボネート(ABS/PC)、スチロール−アクリルニトリル(SAN)、ポリエチレンテレフタレート−ポリカーボネート(PET/PC)、ポリブチレンテレフタレート−ポリカーボネート(PBT/PC)、又は、それらのコポリマー又は誘導体又は混合物を含んでいる。それらの材料は、僅かな熱伝導率及び良好な加工性に関して特に有利である。
【0025】
ポリマー製のベースボディは、有利には、0重量%から20重量%まで、特に有利には0重量%から15重量%までの割合のガラス繊維を有している。通常は約35重量%の割合のガラス繊維を有している、従来技術によるポリマー製のスペーサに比べて、ガラス繊維の割合は低い。これによって、確かにスペーサの剛性及び安定性は低下するが、しかしながら、曲げ性を有利に改善することができる。低下した安定性、特に折り曲げ後の復元力に対する安定性は、本発明による補強ストライプによって補償される。
【0026】
1つの有利な実施の形態においては、ガラス繊維の割合が0重量%である。つまり、ポリマー製のベースボディはガラス繊維補強プラスチックを含んでいない。1つの別の有利な実施の形態においては、ポリマー製のベースボディはガラス繊維補強プラスチックを含んでおり、その際、ガラス繊維の割合は20重量%よりも低く、有利には15重量%よりも低い。ガラス繊維の割合によって、特に、ベースボディの熱膨張率を変化及び適合させることができる。
【0027】
1つの有利な実施の形態においては、本発明による補強ストライプが少なくとも鋼を含んでいる。鋼は入手が容易で、加工性が良く、また、スペーサに特に有利な曲げ性を与え、更には、安定性及び剛性を改善する。鋼は特に有利には特殊鋼ではなく、このことは、スペーサのコストに関して特に有利である。鋼の腐食は、ポリマー製のベースボディへの装入によって防止させる。
【0028】
補強ストライプは有利には、0.05mmから1mmまで、特に有利には0.1mmから0.5mmまで、非常に有利には0.2mmから0.4mmまで、とりわけ0.25mmから0.35mmまでの厚さを有している。1つの特に有利な実施の形態においては、補強ストライプの厚さは約0.3mmである。これによって、スペーサの曲げ性、剛性及び安定性に関して極めて良好な結果が得られる。
【0029】
補強ストライプは有利には1mmから5mmまでの幅を有している。これによって良好な曲げ性及び補強が達成される。補強ストライプの幅は、個々のケースにおいてはもちろん側壁の幅にも依存する。
【0030】
補強ストライプの長さは、有利にはポリマー製のベースボディの長さと一致している。
【0031】
本発明の1つの実施の形態においては、補強ストライプを穿孔することができる。適切な穿孔によって、曲げ性を有利に制御することができる。
【0032】
1つの有利な実施の形態においては、補強ストライプが結合材を介して、ポリマー製のベースボディと接続されている。補強ストライプとベースボディとの間の各接触面には、有利には、結合材が設けられている。このことは、ポリマー製のベースボディと補強ストライプとの間の結合性にとって特に有利であり、従って、スペーサの安定性にとって特に有利である。
【0033】
本発明の1つの有利な実施の形態においては、スペーサに絶縁膜が設けられている。絶縁膜は、スペーサの熱伝導率を更に低減させる。更に絶縁膜は、スペーサを介する拡散を阻止する。つまり、特に、ガラス板間の中間空間への湿気の浸入及びガラス板間の中間空間からの不活性ガスの流出が阻止される。絶縁膜は、有利には、0.001g/(m
2h)未満のガス透過率を有している。
【0034】
絶縁膜は、少なくとも、外壁の外面に配置されている。本発明の範囲において、外面とは、壁の中空室側とは反対側の表面を表す。有利には、絶縁膜は少なくとも、側壁間において、ベースボディの外壁を含む区間全体の外面上に配置されている。外壁が例えばそれぞれ1つの接続区間を介して側壁と接続されている場合には、絶縁膜は外壁の外面及び2つの接続区間の外面に配置されている。1つの特に有利な実施の形態においては、絶縁膜は、側壁間において、ベースボディの外壁を含む区間全体の外面上に配置されており、更に、少なくとも各側壁の少なくとも一部の外面に配置されている。つまり絶縁膜は、一方の側壁から外壁(また場合によっては接続区間)を介して反対側の側壁まで延在している。これによって、ポリマー製のベースボディと絶縁膜とから成るアセンブリの安定性並びにスペーサの熱特性に関して非常に良好な結果が得られる。
【0035】
絶縁膜は少なくとも1つのポリマー膜を含んでいる。ポリマー膜は支持体膜として使用され、また有利には10μmから100μmまで、特に有利には15μmから60μmまでの厚さを有しており、このことは絶縁膜の安定性にとって有利である。
【0036】
更に絶縁膜は、少なくとも、支持体膜上に被着されている金属層又はセラミック層を少なくとも1つ含んでいる。金属層又はセラミック層は、有利には10nmから1,500nmまで、特に有利には10nmから400nmまで、とりわけ有利には30nmから200nmまでの厚さを有している。これによって、絶縁効果に関して非常に良好な結果が達成される。
【0037】
絶縁膜は、有利には、少なくとも1つの別のポリマー層を含んでおり、その厚さは有利には5μmから100μmまで、特に有利には15μmから60μmまでである。
【0038】
1つの特に有利な実施の形態においては、ポリマー製の支持体膜は及びポリマー層は同一の材料から形成されている。このことは、特に有利である。何故ならば、使用される材料の多様性が低いことによって、製造シーケンスが簡略化されるからである。ここで、ポリマー製の膜及び1つ又は複数のポリマー層は、有利には同一の肉厚を有しているので、同一の出発材料を絶縁膜の全てのポリマー製部材に対して使用することができる。
【0039】
ポリマー製の膜及び/又はポリマー層は、有利には少なくとも、ポリエチレンテレフタレート、エチレンビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデン、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、シリコーン、アクリロニトリル、ポリメチルアクリレート、又は、それらのコポリマー又は混合物を含んでいる。
【0040】
金属層は有利には鉄、アルミニウム、銀、銅、金、クロム、又は、それらの合金又は混合物を含んでいる。
【0041】
セラミック層は有利には、酸化ケイ素及び/又は窒化ケイ素を含んでいる。
【0042】
絶縁膜は、有利には少なくとも2つの金属層又はセラミック層を含んでおり、隣接する2つの金属層又はセラミック層間にはそれぞれ少なくとも1つのポリマー層が配置されている。このことは、ポリマー製の膜の絶縁効果にとって非常に有利である。これは特に、1つの層において起こり得る欠陥を別の層によって補償できることによる。更に、単一の厚い層に比べて複数の薄い層の方が良好な結合特性を有している。有利には、絶縁膜の一番上の層がポリマー層であり、これは、金属層又はセラミック層を保護するために利用される。一番上の層は、ポリマー製の支持体膜までの間隔が最も大きい位置にある層である。1つの特に有利な実施の形態において、絶縁膜は、2つから4つまでの金属層又はセラミック層を有している。有利には、各金属層又はセラミック層が少なくとも1つのポリマー層と交互に配置されている。
【0043】
更に本発明は、複層ガラスを含み、この複層ガラスは相互に平行に配置されている少なくとも2つのガラス板と、ガラス板間の縁部領域に配置されている本発明によるスペーサと、を有している。スペーサは有利には周縁を成すようにフレーム状に形成されている。各側壁は、ガラス板のうちの1つに対向しており、且つ、各ガラス板と接触している。スペーサの側壁は、有利には、シール層を介してガラス板と接続されている。シール層として例えばブチルが適している。少なくとも、スペーサの外壁においては、有利にはガラス板とスペーサとの間の縁部領域においては、有利には外側のシール材料が配置されている。外側のシール材料、有利には可塑性のシール材料は、例えば、ポリマー又はシラン変性されたポリマー、特に有利には有機ポリスルフィド、シリコーン、RTV(室温架橋された)シリコーンゴム、HTV(高温架橋された)シリコーンゴム、過酸化架橋されたシリコーンゴム及び/又は添加架橋されたシリコーンゴム、ポリウレタン、ブチルゴム及び/又はポリアクリレートを含んでいる。
【0044】
ガラス板間の中間空間は、有利には真空にされているか、又は、不活性ガス、例えばアルゴン又はクリプトンが充填されている。
【0045】
スペーサの中空室には、有利には、完全に又は部分的に乾燥剤が充填されている。ガラス板間の中間空間内の残留湿気は、乾燥剤に吸着されるので、従ってガラス板が曇ることはなくなる。乾燥剤として、特に、シリカゲル、モレキュラーシーブ、CaCl
2、Na
2SO
4、活性炭、ケイ酸塩、ベントナイト及び/又はゼオライトが適している。
【0046】
複層ガラスは、有利には0.05W/(m・K)よりも小さい、有利には0.035W/(m・K)よりも小さいPsi値を有している。Psi値は、フレームシステムを有している複層ガラスにおける熱伝導率として測定される。
【0047】
ガラス板は有利にはソーダ石灰ガラスから形成されている。ガラス板の厚さは、原則として任意に変えることができるが、特に一般的には、ガラス板は1mmから25mmまで、有利には3mmから19mmまでの厚さを有している。ガラス板の透過率は有利には85%以上である。
【0048】
勿論、複層ガラスは2枚より多くのガラス板を含むこともでき、その際有利には、隣接する2枚のガラス板間それぞれに、本発明によるスペーサが配置されている。
【0049】
本発明の課題は、更に、複層ガラス用の本発明によるスペーサを製造するための方法によって解決され、この方法は、
a)2つの補強ストライプを相互に平行に配置するステップと、
b)補強ストライプを取り囲むようにポリマー材料を射出成形し、ポリマー製のベースボディを形成するステップと、
c)絶縁膜を少なくともベースボディの外壁に被着させるステップと、
d)補強ストライプを有しているポリマー製のベースボディを切断するステップと、
e)補強ストライプを有しているポリマー製のベースボディを、周を成すフレーム形状に折り曲げるステップと、
を備えている。
【0050】
補強ストライプを有しているポリマー製のベースボディは、継ぎ目のない成形材として、押出成形によって製造される。この継ぎ目のない成形材から、複層ガラスにおける使用に必要とされる長さを有している成形材部材が切り出される。成形材部材は、第1の端部及び第2の端部を有している。成形材部材は、続いて、通常は矩形のフレーム形状に周を成すように折り曲げられる。その際、両端部は、フレーム構造の安定性を改善するために有利には相互に接続され、例えば差込接続によって接続される。
【0051】
スペーサの中空室には、有利には、乾燥剤が充填されている。択一的に、乾燥剤をベースボディと一緒に押出成形することもできる。
【0052】
成形材部材の折り曲げは、有利には、事前の加熱を要することなく、特に周囲温度において行われる。本発明による補強ストライプを有しているスペーサの特別な利点は、その種の加熱が必要ないということである。つまり、スペーサを従来の工業製造設備において加工することができる。
【0053】
1つの有利な実施の形態においては、ポリマー製のベースボディには本発明による絶縁膜が設けられている。有利には、この絶縁膜はスペーサを折り曲げる前に設けられる。絶縁膜は例えば、接着によってベースボディに被着させることができるか、又は、ベースボディと一緒に押出成形することもできる。
【0054】
本発明による複層ガラスは、フレーム状のスペーサが平行な2枚のガラス板間の縁部領域に配置されることによって製造される。ガラス板はスペーサと接続され、有利には、加圧によって接続され、またそれぞれシール層を介して接続される。続いて、外側のシール材料が少なくとも外壁に配置される。有利には、ガラス板とスペーサとの間の周縁にわたり外側のシール材料が充填される。
【0055】
フレーム状のスペーサによって画定される、ガラス板間の中間空間には、有利には負圧が加えられる、及び/又は、不活性ガスが充填される。
【0056】
本発明は更に、本発明によるスペーサの多層ガラスにおける使用、有利には複層ガラスにおける使用を含む。複層ガラスは、有利には、建造物の窓ガラスとして又はファサードガラスとして使用される。
【0057】
以下では、添付の図面及び複数の実施例に基づき、本発明を詳細に説明する。図面は概略的に描かれたものであって縮尺通りではない。図面の記載は本発明を制限することを意図したものではない。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【
図1】本発明によるスペーサの1つの実施の形態の斜視断面図を示す。
【
図2】本発明によるスペーサを備えている、本発明による複層ガラスの1つの実施の形態の断面図を示す。
【
図3】本発明による方法の1つの実施の形態のフローチャートを示す。
【0059】
図1には、複層ガラス用の本発明によるスペーサが断面図で示されている。スペーサは、ポリマー製のベースボディIを含んでおり、このベースボディIは例えばポリプロピレン(PP)から形成されている。ポリマーは、0重量%の割合のガラス繊維、又は例えば10%の比較的僅かな割合のガラス繊維を有している。
【0060】
ベースボディIは、相互に平行な側壁1,2を有しており、それらの側壁1,2は、複層ガラスのガラス板と接触させるために設けられている。各側壁1,2の一方の端部間には内壁3が延在しており、この内壁3は複層ガラスのガラス板間の中間空間に対向している。側壁1,2の他方の端部はそれぞれ接続区間7,7’に繋がっている。これらの接続区間7,7’を介して、側壁1,2は外壁4と接続されており、この外壁4は内壁3に平行に形成されている。接続区間7(又は7’)と側壁2(又は1)との間の角度αは約45°である。従って、外壁4と接続区間7,7’との間の角度も約45°になる。ベースボディIは中空室5を包囲している。
【0061】
側壁1,2、内壁3、外壁4及び接続区間7,7’の肉厚(厚さ)はほぼ等しく、例えば1mmである。ベースボディは、例えば、6.5mmの高さ及び15mmの幅を有している。
【0062】
各側壁1,2には補強ストライプ6が装入されている。補強ストライプ6,6’は特殊鋼ではない鋼から形成されており、また例えば0.3mmの厚さ(肉厚)及び例えば3mmの幅を有している。補強ストライプ6,6’の長さは、ベースボディIの長さと一致している。
【0063】
補強ストライプは、ベースボディIに十分な曲げ性及び安定性を提供し、それによって、前もって加熱することなく折り曲げることができるようになり、また所望の形状を持続的に維持することができる。従来技術によるその他の解決手段とは異なり、スペーサは非常に低い熱伝導率を有している。何故ならば、金属製の補強ストライプ6,6’は側壁1,2にのみ装入されているので、ガラス板間の内部空間と、外側の周囲環境との間での熱交換の極一部しか、側壁1,2を介して行われないからである。補強ストライプ6,6’は、熱橋として作用しない。これは本発明の優れた利点である。
【0064】
外壁4及び接続区間7,7’の外面並びに各側壁1,2の外面の一部には、絶縁膜8が配置されている。絶縁膜8は、スペーサを介する拡散を低減する。これによって、複層ガラスのガラス板間の内部空間への湿気の浸入、又は、ガラス板内部空間の不活性ガス充填物の流出を低減することができる。更に、絶縁膜8はスペーサの熱特性を改善する。つまり絶縁膜8は熱伝導率を低下させる。
【0065】
絶縁膜8は、以下の層列を有している:ポリマー製の支持体膜(L−LDPE(低密度のリニアポリエチレン)から成る、厚さ:24μm)/金属層(アルミニウムから成る、厚さ50nm)/ポリマー層(PET,12μm)/金属層(Al、50nm)/ポリマー層(PET、12μm)。つまり、支持体膜の上の積層体は、2つのポリマー層と、2つの金属層と、を含んでおり、またポリマー層と金属層とが交互に配置されている。積層体は、更なる金属層及び/又は更なるポリマー層を含むこともでき、その場合においてもそれらの金属層及びポリマー層はやはり有利には交互に配置されているので、隣接する2つの金属層間にはそれぞれ1つのポリマー層が配置されており、また一番上の金属層の上にはポリマー層が配置されている。
【0066】
ポリマー製のベースボディIと、補強ストライプ6,6’と、絶縁膜8と、から成るアセンブリによって、本発明によるスペーサは、剛性、密度及び熱伝導率に関する有利な特性を有している。従って本発明によるスペーサは、とりわけ、複層ガラスにおける使用、特に、建造物の窓又はファサードの領域における使用に適している。
【0067】
図2には、スペーサの領域での本発明による複層ガラスの断面図が示されている。複層ガラスは、ソーダ石灰ガラスから成る、それぞれが例えば3mmの厚さを有している2枚のガラス板10,11から形成されており、それら2枚のガラス板10,11は、縁部領域に配置されている本発明によるスペーサを介して相互に接続されている。スペーサは、補強ストライプ6,6’及び絶縁膜8を備えている
図1に示したスペーサである。
【0068】
スペーサの側壁1,2は、それぞれ1つのシール層13を介して、ガラス板10,11に接続されている。シール層13は例えば、ブチルから形成されている。ガラス板10,11とスペーサとの間の複層ガラスの縁部空間には、外側のシール材料9が周縁を成すように配置されている。シール材料9は例えばシリコーンゴムである。
【0069】
ベースボディIの中空室5には、乾燥剤12が充填されている。乾燥剤12は、例えば、モレキュラーシーブである。乾燥剤12は、ガラス板とスペーサとの間に存在する残留湿気を吸着し、それによって、ガラス板間の中間空間におけるそれらのガラス板10,11の曇りを阻止する。乾燥剤12の効果は、ベースボディIの内壁3における図示していない多数の孔によって促進される。
【0070】
図3には、複層ガラス用のスペーサを製造するための本発明による方法の1つの実施例のフローチャートが示されている。
【0071】
実施例
本発明による補強ストライプ6,6’及び絶縁膜8を用いて、
図1に示した本発明によるスペーサを製造した。スペーサを、直線状の成形材として製造し、続けて、複層ガラスにおける使用に必要とされる形状に折り曲げた。続けて、スペーサが折り曲げ工程において、その使用の障害となるような損傷を受けていないか否か、また所望の形状を持続的に維持できるか否かについて評価を行った。スペーサが損傷を受けておらず、またその形状を維持できる場合には、スペーサを「折り曲げ可能」と分類した。更に、スペーサの熱伝導率(λ値)を測定した。ここでの熱伝導率は、等価熱伝導率であって、従って、スペーサにおける熱伝導率の位置依存性は考慮せずにスペーサ全体に対して測定された熱伝導率である。結果は表1に纏めてある。
【0072】
比較例1
比較例1は、スペーサの構成に関して本発明による実施例とは異なる。それ以外については、比較例1を実施例と同様に形成した。比較例1のスペーサでは、側壁に補強ストライプ6,6’が装入されていない。更に、ポリマー製のベースボディIにおけるガラス繊維の割合を35重量%とした。この点を除き、スペーサを
図1に示したスペーサに対応させた。結果は表1に纏めてある。
【0073】
比較例2
比較例2は、スペーサの構成に関して本発明による実施例とは異なる。それ以外については、比較例2を実施例と同様に形成した。比較例2のスペーサでは、側壁に補強ストライプ6,6’が装入されていない。その代わりに、従来技術によるスペーサに曲げ性を与えるために、側壁、接続区間及び外壁の外面には厚さ0.1mmの特殊鋼膜を被着させた。ポリマー製のベースボディIにおけるガラス繊維の割合を35重量%とした。結果は表1に纏めてある。
【0074】
表1
折り曲げ可能? 熱伝導率
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
実施例 はい 0.18W/(m・K)
比較例1 いいえ 0.16W/(m・K)
比較例2 はい 0.30W/(m・K)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【0075】
実施例における本発明によるスペーサは、比較例1におけるスペーサとは異なり、補強ストライプ6,6’に基づき折り曲げ可能であった。しかしながら熱伝導率は、補強ストライプ6,6’によって、極僅かにしか上昇しなかった。実施例における本発明によるスペーサは、比較例2におけるスペーサと比較すると、著しく低い熱伝導率を有していた。その理由は、本発明による補強ストライプ6,6’にあり、この補強ストライプ6,6’は従来技術による特殊鋼膜とは異なり熱橋として機能しない。
【0076】
即ち、本発明によるスペーサは、十分な曲げ性を非常に低い熱伝導率に調和させるものである。この結果は当業者にとって予想もしない驚くべきものであった。
【符号の説明】
【0077】
(I) ポリマー製のベースボディ
(1) 側壁
(2) 側壁
(3) 内壁
(4) 外壁
(5)中空室
(6,6’)補強ストライプ
(7,7’)接続区間
(8)絶縁膜
(9)外側のシール材料
(10)ガラス板
(11)ガラス板
(12)乾燥剤
(13)シール層
α 側壁1,2と接続区間7,7’との間の角度
【国際調査報告】