(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
減少した毒性および維持された抗真菌活性により特徴付けられたアンフォテリシンB(AmB)の特定の誘導体が提供される。その誘導体の特定のものは、AmBのC16尿素誘導体である。その誘導体の測定のものは、AmBのC3、C5、C8、C9、C11、C13、またはC15デオキシ誘導体である。その誘導体の特定のものは、AmBのマイコサミン付加物のC3’またはC4’修飾を含む。本発明のAmB誘導体を製造する方法、本発明のAmB誘導体を含む医薬組成物、および法のAmB誘導体の使用方法も提供される。
対象における真菌感染症を治療する方法であって、その必要のある対象に、治療効果のある量の請求項1から12いずれか1項記載の化合物を投与する工程を有してなる方法。
【発明を実施するための形態】
【0061】
これまで、AmBが酵母およびヒト細胞にとって毒性である機構の理解の欠如により、臨床的にうまくいく誘導体の合理的開発が妨げられてきた。AmBの作用の長きに亘り認められている機構は、細胞膜内のイオンチャンネルの形成であり、これは電気化学的勾配の崩壊および最終的な細胞死をもたらしてきた
[2d,9]。このモデルは、毒性の弱い誘導体の開発には、酵母対ヒト細胞における選択的なイオンチャンネルの形成が必要であることを示唆している
[10]。この長年に亘るモデルに反して、我々のグループは、AmBの主要な作用機構は、イオンチャンネルの形成ではなく、単純なエルゴステロール結合であることを最近発見した
[11]。Gray, KC et al., Proc Natl Acad Sci USA 109:2234 (2012)。酵母およびヒト細胞は、それぞれ、異なるステロール、エルゴステロールおよびコレステロールを有する。したがって、新しいモデルは、改善された治療指数へのより単純かつすぐに実施可能なロードマップを示唆している;すなわち、低毒性AmB誘導体は、強力なエルゴステロール結合能力を維持するが、コレステロールに結合する能力は欠如しているであろう。最近、我々のグループは、マイコサミン糖(mycosamine sugar)からC2’ヒドロキシル基を除去すると、誘導体のC2’deOAmB(
図1)が生じ、これは、意外なことに、エルゴステロール結合能力を維持するが、コレステロールに対する結合を示さないことを報告した。Wilcock, BC et al., J Am Chem Soc 135:8488 (2013)。優先的なステロール結合仮説と一致して、インビトロ研究により、C2’deOAmBは、酵母に対して毒性であるが、ヒト細胞に対して毒性ではないことが示された。
【0062】
C2’アルコールの除去が、効率的なエルゴステロール結合を維持しながら、コレステロール結合能力が何故損なわれるかを説明するために、AmB構造が、両方のステロールと結合することができる基底状態配座で存在するという仮説を立てた。C2’アルコールを除去すると、エルゴステロール結合能力を維持するが、コレステロールと結合できない、AmB構造の配座変化を生じる可能性がある。一般的分子は、共通の結合部位で2つの異なる配位子と結合することができる。結合ポケットに対して遠位部での修飾により、結合部位配座が変わる。アロステリック修飾のこの原理により、ある配位子の他の配位子を上回る優先的結合が生じる。我々の知る限り、そのような配位子選択的アロステリック効果は、小分子−小分子相互作用において、以前は観察されていない。勇気づけるように、配位子選択的アロステリック修飾は、共通の結合部位において多数の配位子と結合するタンパク質において観察された
[13]。それゆえ、C2’アルコールの除去は、ステロール結合ポケットをアロステリックに修飾し、これがコレステロール結合能力の減少を説明するという仮説を立てた。
【0063】
興味深いことに、N−ヨードアシルAmBの以前に得たX線結晶構造において、C2’アルコールをC13ヘミケタールに結合する顕著な水架橋水素結合に気付いた
[14]。そのような水架橋水素結合がAmBの基底状態配座を固定するのに役立つのであれば、C2’アルコールの除去により、この相互作用が消失し、それによって、コレステロールおよびエルゴステロールに対する親和性が変わった別の基底状態配座異性体の適用が潜在的に可能になるであろうと認識した。その結晶構造が、C2’deOAmBについての我々の観察を潜在的に正当化するこの可能性により興味をそそられて、我々は、この結晶構造が、エルゴステロールおよびコレステロールの両方と結合できるAmBの基底状態配座を表すであろうという仮説を立てた。この論理にしたがって、我々は、結晶構造に観察されたどの他の固定化特徴の崩壊または除去によって、同様に、別の基底状態配座へのアクセスが可能になり、それにより、AmBのステロール結合プロファイルが変わるかもしれないことを提案した。この論理により導かれて、前記X線結晶構造を注意深く調べると、AmB基底状態を安定化させる能力を持つ追加の分子間の固定化特徴が3つ明らかになった:1)C41カルボキシレートとC3’アンモニウムとの間の塩架橋、2)C1カルボニルO、C3アルコールおよびC5アルコールの間の1,3,5水素結合ネットワーク、および3)C9アルコール、C11アルコール、およびC13アルコールの間の1,3,5水素結合ネットワーク。我々は、このように、治療指数が改善されたAmB誘導体に合理的に到達するための新しい方法として、アロステリック修飾モデルの効力を試験するために、これらの分子間安定化特徴の各々を乱す結果を系統的に調べ始めた。
【0064】
新しいアロステリック部位#1:C41−C3’カルボキシレート
この塩架橋相互作用は、提案された固定化特徴のエネルギー的に最強のものである。それゆえ、C16炭素に付加された基の系統的修飾を、このアロステリック修飾モデルをさらに綿密に調べるための第一系列の誘導体として目標にした。数ある中でも、エステルおよびアミドを含む、C41カルボキシレートを修飾する多数のAmB誘導体が報告されている
[10c,10e,15]。しかしながら、以前のAmB誘導体の全ては、C16炭素に付加された炭素原子を維持している。我々は、C16炭素へのヘテロ原子の付加が、塩架橋相互作用に大きく影響するであろうという仮説を立てた。したがって、そのような誘導体に到達するための効率的な化学選択的合成戦略を追求した。そのような目的を複雑にするのは、AmBが、密集したたくさんの複雑かつ敏感な官能基を有し、誘導体の直接合成が困難になることである。
【0065】
本発明によれば、ジフェニルホスホリルアジドにより促進される、Fmoc保護、メチルケタール形成、およびクルチウス転位の短い三工程手順が、分子内に捕捉されてオキサゾリジノン1を生成する中間体イソシアネートを提供する(スキーム1)ことを発見した
[16]。
【0067】
この容易な手順により、AmBから化学選択的様式で汎用中間体1がグラム量で迅速に生成される。多種多様なアミン求核試薬による1の遮断により、オキサゾリジノンが効率的に開きながら、Fmoc保護基が同時に開裂される。例えば、1をエチレンジアミンに曝露し、次いで、酸性水中でメチルケタール加水分解を行うと、42%の収率でアミノエチル尿素(AmBAU)2が生じる
[17]。同様に、メチルアミンを使用すると、1から36%の収率でメチル尿素(AmBMU)3に到達する。1をβ−アラニンアリルエステルに曝露し、続いて、Pd(PPh
3)
4およびチオサリチル酸でアリルを除去すると、エチルカルボキシレート尿素(AmBCU)4が生成される。この汎用合成戦略により、様々なたくさんのAmB尿素誘導体に効率的に到達することが可能になり、その合成効率のために多量の尿素誘導体を生成することができる。
【0068】
この新規のAmB化学型への効率的なアクセスにより、尿素2〜4を、インビトロ抗真菌およびヒト細胞毒性スクリーニングにおいて、AmBおよび様々な以前に報告されたAmB誘導体と比べた。酵母毒性は、サッカロマイセス・セレビシエに対する微量液体希釈アッセイ(MIC)により測定した。ヒト細胞毒性は、ヒト赤血球の90%溶血(EH
90)を生じるのに必要な化合物の量を決定することによって研究した。これらの結果が表1に纏められている。アンフォテリシンBは0.5μMでサッカロマイセス・セレビシエの増殖を阻害し、一方で、90%赤血球溶解はたった10.4μMで生じる。マイコサミンの除去(AmdeB)は、酵母およびヒト細胞アッセイの両方において、細胞死滅活性を完全になくす
[15e,18]。メチルエステル化(AmBME)は、サッカロマイセス・セレビシエに対する抗真菌活性を0.25μMで維持する一方で、溶血濃度を、AmBに見られる濃度の三分の一に減少させる。C41メチルAmBは、AmBMEと同様に、0.5μMのMICを示すのに対し、22.0μMで溶血を生じる
[15e,18]。以前に観察されたように、アミノアミドAmB誘導体AmBAAまたはメチルアミドAmBMAを形成するために単純にアミド化すると、酵母に対する効力を、それぞれ、0.03μMおよび0.25μMに増加させる。溶血活性は、AmBMEおよびC41MeAmBと同様に維持された。ビス−アミノアルキル化アミド誘導体AmBNR
2は、以前に、治療指数をほどほどに改善することが示された
[19]。前例と一致して、AmBNR
2は、AmBと比べて増加した抗真菌活性を示す一方で、48.5μMと、溶血を生じるのに高濃度を要した。
【0070】
尿素誘導体2〜4は、サッカロマイセス・セレビシエに対して、0.125μMから3μMに及ぶ強力な抗真菌活性を維持している。意外なことに、2〜4は、赤血球に対する毒性は劇的に減少していた。AmBMUおよびAmBAUは、AmBに観察された濃度の45倍超である、500μMでさえ、EH
90に到達しなかった。AmBCUは、赤血球において90%溶血を生じるのに324μMを必要とし、これはAmBが要する濃度の30倍超であった。この最初の治療指数スクリーニングに勇気付けられて、臨床的に意義のある真菌細胞株のカンジダ・アルビカンスに対して、この尿素系列をさらに試験した。カンジダ・アルビカンスは、最も一般的なヒト真菌感染症である。AmBは、0.25μMでカンジダ・アルビカンスの酵母増殖を阻害する。サッカロマイセス・セレビシエに見られた傾向と同様に、尿素誘導体2〜4の効力は、カチオン特徴の量が増加するにつれて、増加した。AmBAU、AmBMU、およびAmBCUは、それぞれ、0.25、0.5、および1μM要する(表2)。
【0072】
アロステリック修飾モデルにしたがうと、尿素2〜4は、強力なエルゴステロール結合能力を維持し、それでも、コレステロールに結合する能力を失うと仮定される。この仮説を試験するために、固体NMRアッセイが、エルゴステロールおよびコレステロールの両方に対する、新規の尿素部類の代表としてのAmBMUの結合定数を決定するために現在進行中である。
【0073】
先に提示した戦略を使用して、C16位にアミンが付加された多種多様なAmB誘導体に到達することができる。様々な求核試薬(例えば、アミン、アルコール、およびフェノール)によるオキサゾリジノン1の開環により、幅広い尿素またはカルバメート誘導体に効率的に到達することができた。可能性のある到達できる誘導体の小集団がスキーム2に概略示されている(
図2)。オキサゾリジノン1を第一級アミンで遮断して、第一級尿素を生成し、第二級アミンで第二級尿素を生成し、アルファ分岐と共に第一級アミンで、アルファ位に立体化学が導入された尿素を生成することができた。その上、オキサゾリジノン1をアニリンで開環してアリール尿素を、フェノールで開環してアリールカルバメートを、またはアルコールで開環してアルキルカルバメートを生成することができた。
【0074】
アミンの例としては、制限するものではなく、1−(1−ナフチル)エチルアミン;1−(2−ナフチル)エチルアミン;1−(4−ブロモフェニル)エチルアミン;1,1−ジフェニル−2−アミノプロパン;1,2,2−トリフェニルエチルアミン;1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフチルアミン;1,2−ビス(2−ヒドロキシフェニル)エチレンジアミン;1−アミノ−2−ベンジルオキシシクロペンタン;1−アミノインダン;1−ベンジル−2,2−ジフェニルエチルアミン;1−シクロプロピルエチルアミン;1−フェニルブチルアミン;2−(3−クロロ−2,2−ジメチル−プロピオニルアミノ)−3−メチルブタノール;2−(ジベンジルアミノ)プロピオンアルデヒド;2,2−ジメチル−5−メチルアミノ−4−フェニル−1,3−ジオキサン;2−アミノ−1−フルオロ−4−メチル−1,1−ジフェニルペンタン;2−アミノ−3,3−ジメチル−1,1−ジフェニルブタン;2−アミノ−3−メチル−1,1−ジフェニルブタン;2−アミノ−3−メチルブタン;2−アミノ−4−メチル−1,1−ジフェニルペンタン;2−アミノヘプタン;2−アミノヘキサン;2−アミノノナン;2−アミノオクタン;2−クロロ−6−フルオロベンジルアミン;2−メトキシ−α−メチルベンジルアミン;2−メチル−1−ブチルアミン;2−メチルブチルアミン;3,3−ジメチル−2−ブチルアミン;3,4−ジメトキシ−α−メチルベンジルアミン;3−アミノ−2−(ヒドロキシメチル)プロピオン酸;3−ブロモ−α−メチルベンジルアミン;3−クロロ−α−メチルベンジルアミン;4−クロロ−α−メチルベンジルアミン;4−シクロヘキセン−1,2−ジアミン;4−フルオロ−α−メチルベンジルアミン;4−メトキシ−α−メチルベンジルアミン;7−アミノ−5,6,7,8−テトラヒドロ−2−ナフトール;ビス[1−フェニルエチル]アミン;ボルニルアミン;シス−2−アミノシクロペンタノール塩酸塩;シス−ミルタニルアミン;シス−N−Boc−2−アミノシクロペンタノール;イソピノカンフェイルアミン;L−アリシンエチレンアセタール;メチル3−アミノブチレートp−トルエンスルホン酸塩;N,N’−ジメチル−1,1’−ビナフチルジアミン;N,N−ジメチル−1−(1−ナフチル)エチルアミン;N,N−ジメチル−1−フェニルエチルアミン;N,α−ジメチルベンジルアミン;N−アリル−α−メチルベンジルアミン;N−ベンジル−α−メチルベンジルアミン;sec−ブチルアミン;トランス−2−(アミノメチル)シクロヘキサノール;トランス−2−アミノ−1,2−ジヒドロ−1−ナフトール塩酸塩;トランス−2−ベンジルオキシシクロヘキシルアミン;α,4−ジメチルベンジルアミン;α−エチルベンジルアミン;α−メチルベンジルアミン;およびβ−メチルフェネチルアミンが挙げられる。
【0075】
新しいアロステリック部位#2:C1カルボニルO、C3およびC5アルコール水素結合ネットワーク
毒性の弱いAmB誘導体を開発するための指針としてのアロステリック修飾モデルを支持する第二組の誘導体を意外にも作り出したので、ポリオール水素結合骨格を目標にした。理想的には、C3またはC11アルコールいずれかの単純な除去により、観察された延長した水素結合ネットワークが完全になくなるであろう。いずれの脱酸素誘導体の化学選択的分解合成は、AmB骨格上に存在する9つの第二級アルコールの内の1つを化学選択的に標的とすることが重要であるので、難しい合成作業である。C3アルコールは、C1カルボニルに対してβ位にあるために、潜在的に化学選択的に標的にできることが反応副生成物により示唆された。この暫定的結果により勇気付けられて、C3デオキシAmBの合成を行った。
【0076】
適切に完全に保護された中間体をAmBから迅速に生成した(
図16のスキーム3)。この手順は、アミンのAlloc保護、C3/C5およびC9/C11p−メトキシフェニルアセタールの形成、残りのアルコールのTESシリル化、および最後にC16カルボキシレートのTMSE形成を含んで、完全に保護された中間体5を形成した。低温での5のNaHMDSへの曝露によりC3アルコールをやすやすと除去して、α−β不飽和ラクトンを生成した。この中間体のストライカー還元により不飽和を効率的に還元して6を生成し、C3deOAmBを生成するためのただ1つの脱保護手順が残った。6をHFに曝露して、TES基をきれいに除去し、TBAFにより促進されたTMSEの除去が続いた。メチルケタールおよびPMPケタールの加水分解を、HClによる酸性条件下で同時に行った。7の最終的なAlloc脱保護を行い、C3deOAmBを合成するための努力が現在進行中である。
【0077】
新しいアロステリック部位#3:C9、C11、C13水素結合ネットワーク
自然な生成物分解を使用して、多数のAmB誘導体に到達することができるが、多くの誘導体は、このプラットフォームからは容易に到達できない。効率的かつ融通の利く全合成が、AmB誘導体に到達するためのプラットフォームとしての分解合成を補完するであろう
[20]。例えば、全合成は、C9またはC11デオキシAmBのいずれかを生成して、アロステリック修飾の最終的に提案される部位を綿密に調べることのできる戦略である。この目的を念頭に置いて、効率的かつ融通の利く反復の鈴木・宮浦クロスカップリング(ICC)プラットフォームに依存する全合成戦略を開発した
[21]。
図3Aに示されるように、AmBは、4つの構成要素単位(BB1〜4)に逆合成により分割される。反復様式で鈴木・宮浦クロスカップリングのみを使用して、構成要素単位1と2、2と3、および3と4の間に結合を形成することを目標とする。次いで、その後の大環状ラクトン化および全体的な保護により、全合成が完了するであろう。この戦略を使用して、BB1をC11デオキシBB1で単純に置換し、合成の残りを不変のままにすることによって、C11デオキシAmBの合成を行うことができるであろう。
【0078】
この難しい合成作業を行うために、BB1の合成が、効率的、拡大可能であり、長期の貯蔵ができることが好ましい。
図3Bに示されるように、断片10および11を結合させることによって、保護されたBB1(9)を生成するつもりである。9の9BBN−ボランによるヒドロホウ素化により、BB2との鈴木カップリングの準備ができる。この全合成努力に対する2つの重要な提言を行った。最初に、重要な断片10への拡大可能な経路を立案した。次いで、BB1の合成が完了した際に、モデルシステムにおけるBB1のBB2へのクロスカップリングを調査した。
【0079】
10の初期合成の3つの態様が改善をもたらした
[22]。既存の経路は3%の全収率で進行し、毒性試薬の大規模な使用を要し、長期貯蔵に適さない中間体を通じて進行した。この課題に対処するために、10の第二世代合成(
図17のスキーム4)を開発した。チタン/BINOL錯体の存在下でのChanのジエンおよび桂皮アルデヒドを組み合わせて、エナンチオ選択性の伸長アルドール反応を行った
[23]。次いで、一連のsyn還元、ケタール化、およびオゾン分解により、12から40%の全収率で所望のアルデヒド10を生成した。この合成により、不要な毒性化学物質を避けながら、多段階工程がなくなる。10に対するスチレン前駆体が、高結晶性であることが判明した。この性質は、その前駆体は、分解せずに長期間に亘り貯蔵できるので、都合良いことが分かった。
【0080】
10への効率的なアクセスが確立されたので、β−ケトホスホネート11との組合せと、その後の5工程手順により、ボラン14が生成された。14を念頭に置いて、BB2との再現できるクロスカップリングを目標にした。この変換は、唯一のsp2−sp3クロスカップリングであるので、ICC手順において最も難しいと予測された。無水条件下で、14と、糖がMOM基により模倣されているBB2代用物15との間で生産的なカップリングは観察されなかった。しかしながら、塩基と当モルの3当量の水を添加すると、所望の結合の形成が促進された。BB2上のMIDAボロネートは、これらの半水性反応条件に対して安定である。これらの条件により、60〜70%の収率で、グリコシル化されたBB2へのBB1のカップリングが生じた。現在の努力は、ICC手順、大環状ラクトン化、および脱保護の完了に集中している。
【0081】
このICC戦略を使用したAmBの誘導体合成は、適切な脱酸素構成要素単位のための、構成要素単位の内の1つの単純な交換のみを含む。この特有な融通性の証明として、C9デオキシBB1の合成に努力が向けられた。BB1 14のC11立体中心の導入は、いす型遷移状態を経て唯一観察される立体化学結果を生じる立体選択的9BBNヒドロホウ素化により行われる(
図4A)。C9アルコールが存在しない場合、いす型遷移状態は不可能である。したがって、ヒドロホウ素化により、ジアステレオマーの混合物が生じるであろう。この制約を克服するために、MIDAボロネートから出発して、段階的様式で、9−デオキシBB1を立体選択的に組み立てた。この経路は、様々な一般的な合成変換に耐えるMIDAボロネートの能力をうまく活かす
[24]。
【0082】
アリルMIDAボロネート17から出発して、手短な一連のオゾン分解、ブラウン(brown)アリル化、TBS保護、およびヒドロホウ素化/酸化により、アルデヒド18が生じた(
図18のスキーム5)。この最初の手順中、初期のブラウンアリル化生成物の、典型的な過酸化水素/水酸化ナトリウムの代わりに、漂白剤酸化作業により、MIDAボロネートが分解せずに、炭素−ホウ素結合が効率的に酸化した。18のリチウム化ジメチルメチルホスホネートへの曝露と、それに続く、デス・マーチン酸化により、β−ケトホスホネート19が生じた。BB1合成戦略の収束性を示すために、ホーナー・ワズワース・エモンズ・カップリングにおいて、19を、完全に酸化したBB1に使用したのと同じアルデヒドである10と組み合わせて、α−β不飽和エステル20を得た。このカルボニルの(R)−CBS触媒による還元と、それに続く触媒水素化により、21を得た。このC9デオキシBB1中間体は、立体化学の全てが予め導入された正確な酸化状態で全ての炭素骨格を含んでいる。MIDAボロネートの脱保護およびBB2とのカップリングの準備ができたC9デオキシBB1を実現するためには、TBS保護しか必要ない。
【0083】
本発明の化合物
本発明の態様は、AmBMUまたはその薬学的に許容される塩である。
【0085】
本発明の態様は、AmBAUまたはその薬学的に許容される塩である。
【0087】
本発明の態様は、AmBCUまたはその薬学的に許容される塩である。
【0089】
本発明の態様は、C3deOAmBまたはその薬学的に許容される塩である。
【0091】
本発明の態様は、C9deOAmBまたはその薬学的に許容される塩である。
【0093】
本発明の態様は、C5deOAmBまたはその薬学的に許容される塩である。
【0095】
本発明の態様は、C8deOAmBまたはその薬学的に許容される塩である。
【0097】
本発明の態様は、C11deOAmBまたはその薬学的に許容される塩である。
【0099】
本発明の態様は、C13deOAmBまたはその薬学的に許容される塩である。
【0101】
本発明の態様は、C15deOAmBまたはその薬学的に許容される塩である。
【0103】
本発明の態様は、C3’deNH
2AmB(C3’デアミノAmB;C3’deAAmB)またはその薬学的に許容される塩である。
【0105】
本発明の態様は、C4’deOAmBまたはその薬学的に許容される塩である。
【0111】
本発明の態様は、スキーム2に示された6つの変換のいずれか1つによる、アンフォテリシンBのC16尿素誘導体を製造する方法である:
【0115】
を表し、
Rの各例は、水素、ハロゲン、直鎖および分岐鎖アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、ヒドロキシル、スルフヒドリル、カルボキシル、アミノ、アミド、アジド、ニトロ、シアノ、アミノアルキル、およびアルコキシルからなる群より独立して選択される。
【0116】
「アルキル」という用語は、当該技術分野で認識されており、その例としては、直鎖アルキル基、分岐鎖アルキル基、シクロアルキル(脂環式)基、アルキル置換シクロアルキル基、およびシクロアルキル置換アルキル基を含む飽和脂肪族基が挙げられる。ある実施の形態において、直鎖または分岐鎖アルキルは、その骨格に約30以下の炭素原子(例えば、直鎖ではC
1〜C
30、分岐鎖ではC
3〜C
30)を、あるいは、約20以下の炭素原子を有する。同様に、シクロアルキルは、その環構造に約3から約10の炭素原子を、あるいは、その環構造に約5、約6、または約7の炭素を有する。
【0117】
「アルケニル」および「アルキニル」という用語は、当該技術分野で認識されており、上述したアルキルに対する長さと可能な置換が類似であるが、それぞれ、少なくとも1つの二重結合または三重結合を含む不飽和脂肪族基を称する。
【0118】
炭素数が特に明記のない限り、「低級アルキル」は、先に定義されたものであるが、その骨格構造に、1から約10の炭素、あるいは1から約6の炭素原子を有するアルキル基を称する。同様に、「低級アルケニル」および「低級アルキニル」は、同様の鎖長を有する。
【0119】
「アラルキル」という用語は、当該技術分野で認識されており、アリール基(すなわち、芳香族またはヘテロ芳香族基)により置換されたアルキル基を称する。
【0120】
「アリール」という用語は、当該技術分野で認識されており、ゼロから4つのヘテロ原子を含むことがある、5、6および7員の単環芳香族基、例えば、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ピレン、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、トリアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジンおよびピリミジンなどを称する。その環構造にヘテロ原子を有するそれらのアリール基は、「アリール複素環」または「複素環式芳香族化合物」と称されることもある。その芳香環は、例えば、ハロゲン、アジド、アルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシル、アルコキシル、アミノ、ニトロ、スルフヒドリル、イミノ、アミド、ホスホネート、ホスフィネート、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、アルキルチオ、スルホニル、スルホンアミド、ケトン、アルデヒド、エステル、ヘテロシクリル、芳香族またはヘテロ芳香族部分、−CF
3、−CNなどの置換基により1つ以上の環位置で置換されてもよい。「アリール」という用語は、2つ以上の炭素が2つの隣接する環に共通しており(それらの環は「縮合環」である)、環の少なくとも1つが芳香族である、例えば、他の環が、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリールおよび/またはヘテロシクリルであってよい、2つ以上の環を有する多環系も含む。
【0121】
「ヘテロ原子」という用語は、当該技術分野で認識されており、炭素または水素以外の任意の元素の原子を称する。説明のためのヘテロ原子としては、ホウ素、窒素、酸素、リン、硫黄およびセレンが挙げられる。
【0122】
「ニトロ」という用語は、当該技術分野で認識されており、−NO
2を称する。
【0123】
「ハロゲン」という用語は、当該技術分野で認識されており、−F、−Cl、−Brまたは−Iを称する。
【0124】
「スルフヒドリル」という用語は、当該技術分野で認識されており、−SHを称する。
【0125】
「ヒドロキシル」という用語は、当該技術分野で認識されており、−OHを称する。
【0126】
「スルホニ」という用語は、当該技術分野で認識されており、−SO
2-を称する。
【0127】
「アミン」および「アミノ」という用語は、当該技術分野で認識されており、非置換および置換両方のアミン、例えば、一般式:
【0129】
により表されることがある部分を称し、式中、R50、R51、およびR52の各々は、独立して、水素、アルキル、アルケニル、−(CH
2)
m−R61を表し、またはR50およびR51は、それらが結合したN原子と一緒になって、環構造に4から8の原子を有する複素環を完成し;R61は、アリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、複素環または多環を表し;mはゼロまたは1から8の範囲の整数である。他の実施の形態において、R50およびR51(および必要に応じてR52)の各々は、独立して、水素、アルキル、アルケニル、または−(CH
2)
m−R61を表す。それゆえ、「アルキルアミン」という用語は、置換または非置換アルキルがそこに結合した、先に定義されたようなアミン基を含む、すなわち、R50およびR51の少なくとも一方がアルキル基である。
【0130】
「アミド」という用語は、アミノ置換カルボニルとして当該技術分野で認識されており、一般式:
【0132】
により表されることがある部分を含み、式中、R50およびR51は先に定義されたようなものである。本発明におけるアミドのある実施の形態は、不安定なことがあるイミドを含まない。
【0133】
「アルコキシル」または「アルコキシ」という用語は、当該技術分野で認識されており、酸素ラジカルがそこに結合した、先に定義されたようなアルキル基を称する。代表的なアルコキシル基としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、tert−ブトキシなどが挙げられる。
【0134】
本発明の化合物、またはその薬学的に許容される塩、および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物も提供される。そのような医薬組成物を製造する方法も提供される。この方法は、本発明の化合物、またはその薬学的に許容される塩を、薬学的に許容される担体中に入れる工程を有してなる。
【0135】
本発明の化合物および本発明の医薬組成物は、真菌の増殖を阻害するのに有用である。1つの実施の形態において、本発明の化合物が有効量で、真菌と接触せしめられ、それによって、真菌の増殖が阻害される。1つの実施の形態において、本発明の化合物、またはその薬学的に許容される塩が、組織培養培地内に加えられるか、または含まれる。
【0136】
本発明の化合物および本発明の医薬組成物は、対象における真菌感染症の治療に有用である。1つの実施の形態において、本発明の化合物、またはその薬学的に許容される塩が治療効果のある量で、その必要のある対象に投与され、それによって、真菌感染症が治療される。
【0137】
真菌は、菌界において分類された真核生物である。菌界は、酵母、カビ、およびマッシュルームを含むより大きい生物を含む。酵母およびカビは、感染性因子として臨床的関連がある。
【0138】
酵母は、菌界に分類される真核生物である。酵母は、一般に、真菌の出芽形態として表される。本発明に関して特に重要なのは、哺乳類宿主において感染症を引き起こすことのできる酵母種である。そのような感染症は、感染症に対する障壁が損なわれた宿主(例えば、火傷被害者)および免疫系が損なわれた宿主(例えば、化学療法または免疫抑制治療を受けている宿主、およびHIVに感染した宿主)を含む、免疫不全宿主において最も一般に生じる。病原性酵母は、制限なく、カンジダ属、並びにクリプトコッカス属の様々な種類を含む。カンジダ属の病原性酵母の中でも注目すべきは、カンジダ・アルビカンス、カンジダ・トロピカリス、カンジダ・ステラトイデア、カンジダ・グラブラタ、カンジダ・クルセイ、カンジダ・パラサシローシス、カンジダ・ギリエルモンディイ、カンジダ・ビスワナチー(viswanathii)、およびカンジダ・ルシタニアエである。クリプトコッカス属は、具体的には、クリプトコッカス・ネオフォルマンスを含む。酵母は、粘膜の感染症、例えば、ヒトにおける経口感染症、食道感染症、および膣感染症、並びに骨、血液、尿生殖路、および中枢神経系の感染症を引き起こし得る。この羅列は、例示であり、決して制限するものではない。
【0139】
数多くの真菌(酵母は別として)が、哺乳類宿主における感染症を引き起こし得る。そのような感染症は、感染症に対する障壁が損なわれた宿主(例えば、火傷被害者)および免疫系が損なわれた宿主(例えば、化学療法または免疫抑制治療を受けている宿主、およびHIVに感染した宿主)を含む免疫不全宿主において、最も一般に生じる。病原性真菌(酵母は別として)は、制限なく、アスペルギルス属、クモノスカビ属、ケカビ属、ヒストプラスマ属、コクシジオイデス属、ブラストマイセス属、トリコフィトン属、ミクロスポルム属、およびエピデルモフィトン属の種類を含む。先の真菌の中でも注目すべきは、アスペルギルス・フミガーツス、アスペルギルス・フラーブス、アスペルギルス・ニガー、ヒストプラスマ・カプスラーツム、コクシジオイデス・イミチス、およびブラストマイセス・デルマチチジスである。真菌は、2〜3例を挙げると、肺、骨、血液、尿生殖路、および中枢神経系における、全身感染症および深部組織感染症を引き起こし得る。ある真菌は、皮膚および爪の感染症の原因である。
【0140】
ここに用いたように、「阻害する」および「阻害」は、対照と比べて客観的に測定可能な量または程度の減少を意味する。1つの実施の形態において、阻害するまたは阻害は、対照と比べて少なくとも統計的に有意な量の減少を意味する。1つの実施の形態において、阻害するまたは阻害は、対照と比べて少なくとも5パーセントの減少を意味する。様々な個々の実施の形態において、阻害するまたは阻害は、対照と比べて少なくとも10、15、20、25、30、33、40、50、60、67、70、75、80、90、または95パーセント(%)の減少を意味する。
【0141】
ここに用いたように、「治療する」および「治療」という用語は、以下をもたらす介入を行うことを称する:(a)病気または疾病を発症するリスクがあるかまたは罹りやすいであろうが、まだそれに罹っていると診断されていない対象に、その病気または疾病を引き起こすのを防ぐ;(b)病気または疾病を阻害する、例えば、その進行を遅くするかまたは阻む;または(c)病気または疾病を緩和または改善する、例えば、その病気または疾病の退行を生じる。1つの実施の形態において、「治療」および「治療する」という用語は、以下をもたらす介入を行うことを称する:(a)病気または疾病を阻害する、例えば、その進行を遅くするかまたは阻む;または(b)病気または疾病を緩和または改善する、例えば、その病気または疾病の退行を生じる。
【0142】
ここに用いた「真菌感染症」は、対象におけるまたは対象の、ここに定義した真菌の感染症を称する。1つの実施の形態において、「真菌感染症」という用語は、酵母感染症を含む。ここに用いた「酵母感染症」は、対象におけるまたは対象の、ここに定義した酵母の感染症を称する。
【0143】
ここに用いたように、「対象」は、生きている哺乳類を称する。様々な個々の実施の形態において、対象は、制限なく、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ、ヒツジ、ヤギ、ネコ、イヌ、ブタ、ウマ、ウシ、またはヒト以外の霊長類を含むヒト以外の哺乳類である。1つの実施の形態において、対象はヒトである。
【0144】
ここに用いたように、「酵母または真菌感染症に罹った対象」は、酵母また真菌感染症の客観的な兆候を少なくとも1つ示す対象を称する。1つの実施の形態において、酵母または真菌感染症に罹った対象は、酵母または真菌感染症に罹っていると診断され、その治療の必要がある対象である。酵母または真菌感染症を診断する方法は、周知であり、ここに詳しく記載する必要はない。
【0145】
ここに用いたように、「投与」は、通常の意味を持ち、制限なく、静脈内、筋肉内、腹腔内、髄腔内、眼球内(例えば、硝子体内)、皮下、直接投与(例えば、腫瘍中に)、粘膜、吸入、経口、および局所を含む、任意の適切な投与経路による投与を包含する。
【0146】
1つの実施の形態において、投与は静脈内である。
【0147】
1つの実施の形態において、投与は経口である。
【0148】
ここに用いたように、「有効量」という句は、所望の生物学的効果を達成するのに十分な任意の量を称する。
【0149】
ここに用いたように、「治療効果のある量」という句は、所望の治療効果を達成する、例えば、酵母また真菌感染症を治療するのに十分な量を称する。
【0150】
本発明の化合物は、他の治療薬と組み合わせても差し支えない。本発明の化合物および他の治療薬は、同時にまたは連続して投与されてもよい。他の治療薬が同時に投与される場合、それらは、同じまたは別の製剤で投与できるが、それらは、実質的に同時に投与される。他の治療薬および本発明の化合物の投与が時間的に隔てられている場合、他の治療薬は、互いと、本発明の化合物と連続して投与される。これらの化合物の投与の間の時間の隔たりは、およそ数分であっても、それより長くてもよい。
【0151】
他の治療薬の例としては、AmB、並びに他の抗生物質、抗ウイルス薬、抗炎症薬、免疫抑制薬、および抗癌剤を含む他の抗真菌薬が挙げられる。
【0152】
先に述べたように、「有効量」は、所望の生物学的効果を達成するのに十分な任意の量を称する。ここに提供された教示と組み合わせて、様々な活性化合物の中から選び、効力、相対的バイオアベイラビリティ、患者の体重、副作用の重症度および好ましい投与様式などの要因を比較検討することによって、不要な実質的毒性を生じないが、それでも特定の患者を治療するのに効果的である効果的予防または治療計画を計画することができる。どの特定の施用にとっての有効量も、治療されている疾病または病気、投与されている本発明の特定の化合物、対象のサイズ、または疾病または病気の重症度などの要因に応じて変わり得る。当業者は、過度の実験を必要とせずに、本発明の特定の化合物および/または他の治療薬の有効量を経験的に決定することができる。最大投与量、すなわち、ある医学的判断にしたがって最高の安全量を使用することが一般に好ましい。化合物の適切な全身レベルを達成するために、一日当たりの複数回投与を考えてもよい。適切な全身レベルは、例えば、患者における薬物のピークまたは持続血漿レベルの測定によって、決定できる。「投与量(dose)」および「用量(dosage)」は、ここで置き換え可能に使用されている。
【0153】
一般に、活性化合物の1日の経口量は、ヒトの対象にとって、一日当たり約0.01ミリグラム/kgから一日当たり1000ミリグラム/kgであろう。一日当たり1回または複数回の投与で、0.5から50ミリグラム/kgの範囲の経口量が、所望の結果を生じると期待されている。用量は、投与様式に応じて、局所または全身で所望の薬物レベルを達成するために適切に調節されるであろう。例えば、静脈内投与は、一日当たり一桁から数桁の大きさだけ低い用量であろうと予測される。対象における反応がそのような用量で不十分である場合、患者の耐容性が許す限りで、さらに多い用量(または異なるより局所的な送達経路によるより多い有効量)を用いてもよい。化合物の適切な全身レベルを達成するために、一日当たりの複数回投与が考えられる。
【0154】
1つの実施の形態において、本発明の化合物の静脈内投与は、一般に、0.1mg/kg/日から20mg/kg/日であろう。このように、静脈内投与は、AmBの最大耐容量と同程度であっても、それを超えてもよい。
【0155】
ここに記載したどの化合物についても、治療効果のある量は、動物モデルから最初に決定することができる。治療効果のある用量は、ヒトにおいて試験された本発明の化合物について、および他の関連する活性薬剤などの、類似の薬理学的活性を示すことが知られている化合物について、ヒトのデータから決定することもできる。非経口投与には、より多い用量が必要であろう。適用される用量は、投与される化合物の相対的バイオアベイラビリティおよび効力に基づいて調節することができる。上述した方法および当該技術分野で周知の他の方法に基づいて、最大効果を達成するために用量を調節することは、当業者の能力の十分に範囲内である。
【0156】
本発明の製剤は、薬学的に許容される溶液中に入れて投与される。その溶液は通常、薬学的に許容される濃度の塩、緩衝剤、防腐剤、適合担体、補助薬、および随意的な他の治療成分を含有するであろう。
【0157】
アンフォテリシンBは、デオキシコール酸塩系製剤および脂質系(リポソームを含む)製剤を含む数多くの製剤で市販されている。本発明のアンフォテリシンB誘導体化合物は、同様に、例えば、制限なく、デオキシコール酸塩系製剤および脂質系(リポソームを含む)製剤として製剤化されるであろう。
【0158】
治療に使用するために、有効量の本発明の化合物を、本発明の化合物を所望の表面に送達するどの様式で対象に投与することもできる。本発明の医薬組成物の投与は、当業者に公知のどの手段により行ってもよい。投与経路としては、以下に限られないが、経口、静脈内、筋肉内、腹腔内、皮下、直接投与(例えば、腫瘍または膿瘍)、粘膜、吸入、および局所が挙げられる。
【0159】
経口投与について、前記化合物(すなわち、本発明の化合物、および他の治療薬)は、活性化合物を、当該技術分野で周知の薬学的に許容される担体と組み合わせることによって、容易に製剤化できる。そのような担体は、本発明の化合物を、治療すべき対象が経口摂取するために、錠剤、丸薬、糖衣錠、カプセル剤、液体、ゲル、シロップ剤、スラリー、懸濁剤などとして製剤化することを可能にする。経口使用のための医薬品は、得られた混合物を必要に応じて粉砕し、所望であれば適切な助剤を加えた後に、顆粒の混合物を処理して、錠剤または糖衣錠の芯を得ることにより、固体賦形剤として得ることができる。適切な賦形剤は、特に、ラクトース、スクロース、マンニトール、またはソルビトールを含む糖類などの充填剤;例えば、トウモロコシデンプン、小麦デンプン、米デンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、および/またはポリビニルピロリドン(PVP)などのセルロース調合剤である。所望であれば、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、もしくはアルギン酸またはアルギン酸ナトリウム等のその塩などの崩壊剤を加えてもよい。必要に応じて、生理食塩水または緩衝剤、例えば、内部酸性条件を中和するためのEDTA中に、経口製剤を製剤化しても、またはどの担体も含まずに投与してもよい。
【0160】
上述した1つまたは複数の成分の経口投与剤形も具体的に考えられる。その成分は、その誘導体の経口送達が効果的であるように、化学修飾されてもよい。一般に、考えられる化学修飾は、その成分分子自体に対する少なくとも1つの部分の結合であり、その部分は、(a)酸加水分解の阻害;および(b)胃または腸から血流への摂取:を可能にする。その成分の全体的な安定性の増加および体内での循環時間の増加も望ましい。そのような部分の例としては、ポリエチレングリコール、エチレングリコールとプロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、およびポリプロリンが挙げられる。Abuchowski and Davis, “Soluble Polymer-Enzyme Adducts”, In: Enzymes as Drugs, Hocenberg and Roberts, eds., Wiley-Interscience, New York, N.Y., pp. 367-383 (1981);Newmark et al., J Appl Biochem 4:185-9 (1982)。使用できる他のポリマーは、ポリ−1,3−ジオキソランおよびポリ−1,3,6−チオキソカンである。先に示したような、製薬学的用途にとって、ポリエチレングリコール部分が好ましい。
【0161】
前記成分(または誘導体)について、放出位置は、胃、小腸(十二指腸、空腸、または回腸)、または大腸であってよい。当業者は、胃内では溶解せず、それでも、十二指腸または腸内のどこかで物質を放出する利用可能な製剤を持っている。放出は、本発明の化合物(または誘導体)の保護、もしくは腸内などの胃の環境を過ぎての生物学的活性物質の放出のいずれかにより、胃の環境の有害効果を回避することが好ましい。
【0162】
十分な胃抵抗性を確実にするために、少なくともpH5.0に対して不浸透性のコーティングが必須である。腸溶コーティングとして使用されるより一般的な不活性成分の例に、トリメリト酸酢酸セルロース(CAT)、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMCP)、HPMCP 50、HPMCP 55、フタル酸ポリ酢酸ビニル(PVAP)、Eudragit L30D、Aquateric、フタル酸酢酸セルロース(CAP)、Eudragit L、Eudragit S、およびセラックがある。これらのコーティングを混合フイルムとして使用してよい。
【0163】
胃に対する保護を意図したものではない、コーティングまたはコーティングの混合物を錠剤上に使用しても差し支えない。これは、糖衣、または錠剤を飲み込み易くするコーティングを含み得る。カプセルは、乾燥治療薬(例えば、粉末剤)の送達のための硬質殻(ゼラチンなど)からなってもよい;液体形態については、軟質ゼラチン殻を使用してもよい。カシェ剤(cachet)の殻材料は、厚いデンプンまたは他の食用紙であって差し支えない。丸薬、トローチ剤、成形錠剤または粉薬錠剤について、湿式練薬(moist massing)技法を使用することができる。
【0164】
その治療薬は、約1mmの粒径の顆粒またはペレットの形態で、多数の微粒子として配合物中に含むことができる。カプセル投与のための物質の配合も、粉末剤、軽く圧縮された芯(plug)として、またさらには錠剤としてであって差し支えない。その治療薬は、圧縮により調製しても差し支えない。
【0165】
着色剤および香料添加剤の全てを含んでもよい。例えば、本発明の化合物(または誘導体)を製剤化し(リポソームまたはマイクロスフェアカプセル化などにより)、次いで、着色剤および香料添加剤を含有する冷蔵飲料などの食品内にさらに含ませてもよい。
【0166】
その治療薬の体積を不活性材料で希釈または増加させてもよい。これらの希釈剤としては、炭水化物、特に、マンニトール、α−ラクトース、無水ラクトース、セルロース、スクロース、修飾デキストランおよび加工デンプンが挙げられる。三リン酸カルシウム、炭酸マグネシウムおよび塩化ナトリウムを含む特定の無機塩も、充填剤として使用してよい。市販の希釈剤に、Fast−Flo、Emdex、STA−Rx 1500、EmcompressおよびAvicellがある。
【0167】
固形の剤型への治療薬の製剤中に、崩壊剤を含んでもよい。崩壊剤として使用される材料としては、以下に限られないが、デンプンに基づく市販の崩壊剤であるExplotabを含む、デンプンが挙げられる。デンプングリコール酸ナトリウム、Amberlite、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ウルトラミロペクチン(ultramylopectin)、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、オレンジの皮、酸性カルボキシメチルセルロース、海綿およびベントナイトの全てを使用してもよい。崩壊剤の別の形態に、不溶性陽イオン交換樹脂がある。粉末ゴムを崩壊剤として、また結合剤として使用してよく、これらは、寒天、Karayaまたはトラガカントなどの粉末ゴムを含み得る。アルギン酸およびそのナトリウム塩も、崩壊剤として有用である。
【0168】
結合剤を使用して、治療薬を一緒に保持して硬質錠剤を形成してもよく、結合剤の例としては、アカシア、トラガカント、デンプンおよびゼラチンなどの天然物からの材料が挙げられる。他の結合剤としては、メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)、およびカルボキシメチルセルロース(CMC)が挙げられる。治療薬を粒状にするために、ポリビニルピロリドン(PVP)およびヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)の両方をアルコール溶液中に使用しても差し支えない。
【0169】
減摩剤を治療薬の製剤中に含ませて、製剤化過程中の粘着を防いでもよい。治療薬とダイの壁との間の層として、滑剤を使用してもよく、滑剤の例としては、以下に限られないが、そのマグネシウム塩とカルシウム塩を含むステアリン酸、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、流動パラフィン、植物油および蝋が挙げられる。ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム、様々な分子量のポリエチレングリコール、Carbowax 4000および6000などの可溶性滑剤も使用してよい。
【0170】
製剤化中の薬物の流動性を改善し、圧縮中の再配置を助けるであろう流動促進剤を加えてもよい。流動促進剤としては、デンプン、タルク、焼成シリカおよび水和ケイアルミン酸塩が挙げられるであろう。
【0171】
治療薬の水性環境中への溶解を助けるために、湿潤剤として界面活性剤を加えてもよい。界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウムおよびスルホン酸ジオクチルナトリウムなどの陰イオン洗剤が挙げられる。使用できる陽イオン洗剤としては、塩化ベンザルコニウムおよび塩化ベンゼトニウムが挙げられる。界面活性剤として製剤中に含んでも差し支えない潜在的な非イオン洗剤としては、ラウロマクロゴール400、ステアリン酸ポリオキシル40、ポリオキシエチレン水素化ヒマシ油10、50および60、モノステアリン酸グリセロール、ポリソルベート40、60、65および80、ショ糖脂肪酸エステル、メチルセルロース、並びにカルボキシメチルセルロースが挙げられる。これらの界面活性剤は、単独または様々な比率の混合物のいずれかとして、本発明の化合物または誘導体の製剤中に存在し得る。
【0172】
経口に使用できる医薬品は、ゼラチンから製造された押し込み型のカプセル、並びにゼラチンと、グリセロールまたはソルビトールなどの可塑剤とから製造された軟質の密閉カプセルを含む。この押し込み型のカプセルは、ラクトースなどの充填剤、デンプンなどの結合剤、および/またはタルクまたはステアリン酸マグネシウムなどの滑剤、並びに必要に応じて、安定剤との混合剤中に活性成分を含有し得る。軟質カプセルにおいて、活性化合物は、脂肪油、流動パラフィン、または液体ポリエチレングリコールなどの適切な液体中に溶解または懸濁されることがある。その上、安定剤を加えてもよい。経口投与のために製剤化されるマイクロスフェアも使用してよい。そのようなマイクロスフェアは、当該技術分野で明確に定義されている。経口投与のための全ての製剤は、そのような投与に適した用量にあるべきである。
【0173】
口腔投与について、前記組成物は、従来の様式で製剤化された錠剤またはトローチ剤の形態をとってもよい。
【0174】
吸入による投与について、本発明により使用するための化合物は、適切な噴射剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素または他の適切なガスを使用して、加圧パックまたは噴霧器からのエアゾール・スプレーの形態で都合よく送達されるであろう。加圧エアゾールの場合、用量単位は、一定量を送達するためにバルブを設けることによって、決定してもよい。その化合物の混合粉末およびラクトースまたはデンプンなどの適切な基礎粉末を含有する、例えば、吸入器(inhalerまたはinsufflator)に使用するためのゼラチンのカプセルまたはカートリッジで製剤化してもよい。
【0175】
本発明の化合物(またはその誘導体)の肺送達もここに考えられる。本発明の化合物(または誘導体)は、吸入しながら哺乳類の肺に送達され、肺の上皮層を越えて血流まで横切る。吸入分子の他の報告に以下がある:Adjei et al., Pharm Res 7:565-569 (1990);Adjei et al., Int J Pharmaceutics 63:135-144 (1990) (酢酸リュープロリド);Braquet et al., J Cardiovasc Pharmacol 13(suppl. 5):143-146 (1989)(エンドセリン−1);Hubbard et al., Annal Int Med 3:206-212 (1989) (α1−抗トリプシン);Smith et al., 1989, J Clin Invest 84:1145-1146(α−1−プロテイナーゼ);Oswein et al., 1990, "Aerosolization of Proteins", Proceedings of Symposium on Respiratory Drug Delivery II, Keystone, Colorado, March, (組換えヒト成長ホルモン);Debs et al., 1988, J Immunol 140:3482-3488 (インターフェロン−ガンマおよび腫瘍壊死因子アルファ);およびPlatz et al., 米国特許第5284656号明細書(顆粒球コロニー刺激因子)。全身的な効果のための薬物の肺送達のための方法および組成物が、Wong等に1995年9月19日に発行された米国特許第5451569号明細書に記載されている。
【0176】
以下に限られないが、その全てが当業者に馴染みのある、噴霧器、定量吸入器、および粉末吸入器を含む、治療薬の肺送達のために設計された幅広い機械装置が、本発明の実施のための使用に考えられる。
【0177】
本発明の実施に適した市販の装置のいくつかの特別な例に、ミズーリ州、セントルイス所在のMallinckrodt,Lnc.により製造されているUltravent噴霧器;コロラド州、エングルウッド所在のMarquest Medical Productsにより製造されているAcorn II噴霧器;ノースカロライナ州、リサーチトライアングルパーク所在のGlaxo Inc.により製造されているVentolin定量吸入器;およびマサチューセッツ州、ベッドフォード所在のFisons Corp.により製造されているSpinhaler粉末吸入器がある。
【0178】
そのような装置の全てには、本発明の化合物(または誘導体)の分配に適した製剤の使用が必要である。一般に、各製剤は、使用される装置のタイプに特有であり、治療に有用な通常の希釈剤、補助薬および/または担体に加え、適切な噴射材料の使用を含むことがある。リポソーム、マイクロカプセルまたはマイクロスフェア、包接錯体、または他のタイプの担体の使用も考えられる。本発明の化学修飾化合物は、化学修飾のタイプまたは使用する装置のタイプに応じて、異なる調合で調製してもよい。
【0179】
噴流または超音波いずれかの噴霧器に使用するのに適した製剤は、一般に、溶液1mL当たり本発明の生物学的活性化合物の約0.1から25mgの濃度で水中に溶解した本発明の化合物(または誘導体)を含む。その製剤は、緩衝剤および単糖(例えば、本発明の化合物の安定化および浸透圧の調節のため)も含んでよい。噴霧器用製剤は、エアゾールを形成する際の溶液の噴霧化により生じる本発明の化合物の表面に誘起された凝集を減少させるまたは防ぐために、界面活性剤も含んでよい。
【0180】
定量吸入装置に使用するための製剤は、一般に、界面活性剤を用いて、噴射剤中に懸濁された本発明の化合物(または誘導体)を含有する微粉末を含む。その噴射剤は、トリクロロフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、および1,1,1,2−テトラフルオロエタン、またはそれらの組合せを含む、クロロフルオロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン、ハイドロフルオロカーボン、または炭化水素などのこの目的のために利用されるどの従来の材料であってもよい。適切な界面活性剤としては、トリオレイン酸ソルビタンおよび大豆レシチンが挙げられる。オレイン酸も界面活性剤として有用であろう。
【0181】
粉末吸入装置から分配するための製剤は、本発明の化合物(または誘導体)を含有する乾燥微粉末を含み、装置からの粉末の散布を促進する量、例えば、製剤の50から90質量%で、ラクトース、ソルビトール、スクロース、またはマンニトールなどの増量剤も含むことがある。本発明の化合物(または誘導体)は、都合よく、肺の深部まで最も効果的に送達するために、10マイクロメートル(μm)未満、最も好ましくは0.5から5μmの平均粒径を有する粒子形態で調製すべきである。
【0182】
本発明の医薬組成物の経鼻送達も考えられる。経鼻送達により、肺内に治療薬を堆積させる必要なく、鼻に治療薬を投与した後、本発明の医薬組成物を血流に直接通過させることができる。経鼻送達のための製剤は、デキストランまたはシクロデキストランを有する製剤を含む。
【0183】
経鼻投与について、有用な装置は、定量噴霧器が取り付けられた小さい硬質ボトルである。1つの実施の形態において、その一定量は、本発明の医薬組成物の溶液を、所定の容積の槽であって、その槽内の液体が圧縮されたときに噴霧を形成することによってエアゾール製剤をエアゾール化する寸法の開口を有する槽内に引き込むことによって送達される。その槽は、本発明の医薬組成物を投与するために圧縮される。特定の実施の形態において、その槽はピストン装置である。そのような装置は市販されている。
【0184】
あるいは、圧搾されたときに噴霧を形成することによって、エアゾール製剤をエアゾール化する寸法の開口または穴を有するプラスチック製のスクイーズボトルが使用される。その穴は通常、ボトルの上面に見られ、その上面は、一般に、エアゾール製剤を効率的に投与するために鼻孔に一部が嵌まるように先細になっている。鼻孔吸入器が、測定用量の薬物を投与するために、一定量のエアゾール製剤を提供することが好ましい。
【0185】
前記化合物は、それらを全身に送達することが望ましい場合、注入による、例えば、ボーラス注入法または持続注入による、非経口投与のために製剤化されることがある。注入のための製剤は、防腐剤が添加された単位用量形態、例えば、アンプル剤または複数回投与容器内に提供されることがある。その組成物は、油性または水性ビヒクル中の懸濁液、溶液、またはエマルションのような形態を取ってよく、懸濁化剤、安定剤および/または分散剤などの調合剤を含有してもよい。
【0186】
非経口投与のための医薬製剤としては、水溶性形態にある活性化合物の水溶液が挙げられる。さらに、活性化合物の懸濁液は、適切な油性懸濁注射液として調製してもよい。適切な親油性溶媒またはビヒクルとしては、ゴマ油などの脂肪油、またはオレイン酸エチルまたはトリグリセリドなどの合成脂肪酸エステル、もしくはリポソームが挙げられる。水性懸濁注射液は、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトール、またはデキストランなどの、懸濁液の粘度を増加させる物質を含むことがある。また、必要に応じて、この懸濁液は、適切な安定剤、または化合物の溶解度を上昇させて高濃度溶液の調製を可能にする作用物質を含んでもよい。
【0187】
あるいは、前記活性化合物は、使用前に、適切なビヒクル、例えば、発熱物質不含有滅菌水で戻すための粉末形態にあってもよい。
【0188】
また、前記化合物は、例えば、ココアバターまたは他のグリセリドなどの通常の坐剤基剤を含有する、坐剤または停留浣腸などの直腸または膣内用の組成物として製剤化してもよい。
【0189】
また、先に述べた製剤の他に、前記化合物を持続性製剤として製剤化してもよい。そのような長時間作用する製剤は、適切な高分子または疎水性物質(例えば、許容される油のエマルションとして)またはイオン交換樹脂により、もしくはやや溶けにくい誘導体、例えば、やや溶けにくい塩として、製剤化してもよい。
【0190】
また、前記医薬組成物は、適切な固体またはゲル相担体または賦形剤を含んでもよい。そのような担体または賦形剤の例としては、以下に限られないが、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖、デンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、およびポリエチレングリコールなどのポリマーが挙げられる。
【0191】
適切な液体または固体医薬品の形態には、例えば、吸入用水溶液または生理食塩水溶液、マイクロカプセル封入、渦巻型化(encochleated)、微小金粒子上の被覆、リポソーム内の封入、噴霧、エアゾール、皮膚内埋込みペレット、または皮膚切創用鋭利物面での乾燥がある。また、医薬組成物としては、顆粒、粉末剤、錠剤、被覆錠剤、(マイクロ)カプセル剤、坐剤、シロップ剤、乳剤、懸濁剤、クリーム剤、点滴薬、または活性化合物の持続製剤が挙げられ、その調合において、通例、崩壊剤、結合剤、コーティング剤、膨潤剤、滑剤、香味料、甘味剤または可溶化剤などの賦形剤および添加剤および/または補助剤が前述のようにして用いられる。その医薬組成物は、種々の薬物送達システムに使用するのに適している。薬物送達の方法についての簡単な総説については、ここに引用する、Langer R, Science 249:1527-33 (1990)を参照されたい。
【0192】
本発明の化合物および、必要に応じて加える他の治療剤は、これら自体で(混ぜものなしで)、または薬学的に許容される塩の形態で、投与してよい。医薬中に使用される場合は、この塩は、薬学的に許容されなければならないが、薬学的に許容されない塩も、その薬学的に許容される塩を調製するために都合よく使用してよい。そのような塩としては、以下に限られないが、以下の酸から調製されるものが挙げられる:塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、マレイン酸、酢酸、サリチル酸、p−トルエンスルホン酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、ギ酸、マロン酸、コハク酸、ナフタレン−2−スルホン酸、およびベンゼンスルホン酸。また、そのような塩は、カルボン酸基のナトリウム塩、カリウム塩またはカルシウム塩などの、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩として調製することもできる。
【0193】
適切な緩衝剤としては、酢酸と塩(1〜2%w/v);クエン酸と塩(1〜3%w/v);ホウ酸と塩(0.5〜2.5%w/v);およびリン酸と塩(0.8〜2%w/v)が挙げられる。適切な防腐剤としては、塩化ベンザルコニウム(0.003〜0.03%w/v);クロロブタノール(0.3〜0.9%w/v);パラベン(0.01〜0.25%w/v)およびチメロサール(0.004〜0.02%w/v)が挙げられる。
【0194】
本発明の医薬組成物は、有効量の本発明の化合物および随意的な治療薬を薬学的に許容される担体中に含んでなる。「薬学的に許容される担体」という用語は、ヒトまたは他の脊椎動物に投与するのに適した、1種類以上の適合固体または液体充填剤、希釈剤または被包物質を意味する。「担体」という用語は、活性成分がそれと組み合わさって施用を容易にする、天然または合成の有機または無機成分を表す。この医薬組成物の成分は、所望の医薬効率を実質的に損なうであろう相互作用がないような様式で、本発明の化合物と、そして互いに、混合することができる。
【0195】
具体的に、以下に限られないが、本発明の化合物を含む治療薬は、粒子で提供されてもよい。ここに用いた粒子は、本発明の化合物またはここに記載した他の治療薬から全体または一部がなり得るナノ粒子または微小粒子(もしくはある場合には、それより大きい粒子)を意味する。粒子は、以下に限られないが、腸溶コーティングを含むコーティングに取り囲まれた芯内に治療薬を含んでもよい。その治療薬が、粒子全体に分散されていてもよい。治療薬は粒子に吸着されてもよい。粒子は、0次放出、1次放出、2次放出、遅延放出、持続放出、即効放出およびその任意の組合せなどを含む、任意次放出の速度論のものであってもよい。粒子は、治療薬に加え、以下に限られないが、浸食性、非浸食性、生分解性、または非生分解性の材料もしくはそれらの組合せを含む薬学および医学の当該技術分野に日常的に使用される材料のいずれを含んでもよい。粒子は、溶液中にまたは半固体状態で本発明の化合物を含有するマイクロカプセルであってよい。粒子は、事実上、どの形状のものであってもよい。
【0196】
治療薬を送達するための粒子の製造に、非生分解性高分子材料および生分解性高分子材料の両方を使用することができる。そのようなポリマーは、天然または合成ポリマーであってよい。そのポリマーは、放出が望ましい期間に基づいて選択される。特に興味深い生体接着性ポリマーとしては、その教示をここに引用する、Sawhney H S et al. (1993) Macromolecules 26:581-7に記載された生体浸食性(bioerodible)ヒドロゲルが挙げられる。それらの例としては、ポリヒアルロン酸、カゼイン、ゼラチン、グルチン、ポリ無水物、ポリアクリル酸、アルギネート、キトサン、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(イソブチルメタクリレート)、ポリ(ヘキシルメタクリレート)、ポリ(イソデシルメタクリレート)、ポリ(ラウリルメタクリレート)、ポリ(フェニルメタクリレート)、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(イソプロピルアクリレート)、ポリ(イソブチルアクリレート)、およびポリ(オクタデシルアクリレート)が挙げられる。
【0197】
前記治療薬は、制御放出系内に含まれることがある。「制御放出」という用語は、製剤からの薬物放出の様式およびプロファイルが制御されている、どの薬物含有製剤も称することが意図されている。これは、即効放出並びに非即効放出製剤も指し、非即効放出製剤は、以下に限られないが、持続放出製剤および遅延放出製剤を含む。「持続放出」という用語(「徐放」と称されることもある)は、従来の意味で、長期間に亘り薬物を徐々に放出し、必ずではないが、長期間に亘り実質的に一定の薬物の血液レベルを生じることが好ましい、製剤を称するために使用される。「遅延放出」という用語は、従来の意味で、製剤の投与と、そこからの薬物の放出との間に時間遅延がある製剤を称するために使用される。「遅延放出」は、長期間に亘り薬物を徐々に放出することを含んでも含まなくてもよく、それゆえ、「持続放出」であってもなくてもよい。
【0198】
長期の持続放出インプラントを使用することは、慢性症状の治療に特に適しているであろう。ここに用いたように、「長期」の放出は、少なくとも7日間、好ましくは30〜60日間に亘り治療レベルの活性成分を送達するように、インプラントが構成され、準備されることを意味する。長期の持続放出インプラントは、当業者によく知られており、上述した放出システムのいくつかを含む。
【0199】
ここに記載された組成物および方法に対する他の適切な改変および適用が、当業者に公知の情報を考慮して、ここに含まれる本発明の説明から容易に明白であり、本発明の範囲またはその実施の形態から逸脱せずに行えることが関連技術の当業者により理解されるであろう。ところで、本発明を詳しく記載してきたが、本発明は、説明目的のためだけにここに含まれ、本発明を制限することが意図されていない、以下の実施例を参照することによって、より明白に理解されるであろう。
【実施例】
【0200】
実施例1.C5−デオキシAmB
分解合成
図19のスキーム6を参照のこと。
【0201】
C5−デオキシAmB(C5deOAmB)に到達するための可能性のある合成戦略の1つは、天然物AmBから出発する分解合成である。出発点として完全に保護された中間体5を使用して、C3アルコールを除去した際に、アルファ−ベータ不飽和エステル9が生成される。ベータ炭素の求核酸化により、必要なヒドロキシル基がC−3に再び取り付けられ、AmB骨格上の保護されていない唯一のアルコールとしてC−5アルコールが残るであろう。ここから、バートン・マクコンビー脱酸素化により、そのC−5アルコールを除去できるであろう。次に、短い脱保護手順により、C5deOAmBが得られるであろう。
【0202】
詳しくは、C3−デオキシAmBの合成に使用したものと類似の手順を使用して到達できる中間体である中間体3の使用を期待している。5をNaHMDSに曝露すると、54%の収率で、C−3アルコールがきれいに除去される。銅触媒により触媒されるB
2Pin
2を使用した求核付加は、ベータ位で選択的にホウ素化し得るであろう。過ホウ酸ナトリウムによる続く酸化と、その後のTBSシリル化により、保護形態でC−3で再び酸化される可能性がある。次に、チオカルボニルジイミダゾールを使用したチオカルボニルの形成と、続く水素化トリブチルスズおよびアゾビスイソブチロニトリルによるラジカル脱酸素化により、C−5脱酸素化されたAmB骨格11が生じ得るであろう。シリル基のHF−ピリジン除去、それに続く2:1のTHF:H
2O中のCSAによるケタール加水分解、および最後のアリルエステルとカルバミン酸alloc両方の同時除去を含む脱保護手順により、C5deOAmBが迅速に生成し得るであろう。
【0203】
実施例2.C5−デオキシAmB
二重
13C標識AmB大環状ラクトンの全合成
図20〜25のスキーム7〜12を参照のこと。
【0204】
効率的かつ融通の利く反復鈴木・宮浦クロスカップリング(ICC)プラットフォームに依存する全合成戦略を構想する。このICC戦略は、二官能性B保護ハロホウ酸を利用する。これは、適切なホウ酸パートナーに曝露することができ、ハロゲン化物末端でのみ、鈴木・宮浦クロスカップリング条件下で選択的に反応することができる。遊離ホウ酸に対する塩基性加水分解を使用したMIDA配位子の脱保護により、次のサイクルのクロスカップリングのための構成要素単位の準備がされる。
図3Aに示されるように、AmBは、4つの構成要素単位(BB1〜BB4)に逆合成により分割される。反復様式で鈴木・宮浦クロスカップリングのみを使用して、構成要素単位1と2、2と3、および3と4の間に結合を形成することを目標とする。次いで、その後の大環状ラクトン化および全体的な保護により、全合成が完了するであろう。この戦略を使用すれば、脱酸素化された誘導体の合成には、新しい脱酸素化された構成要素単位の合成しか必要なく、合成の残りが不変のままである。例えば、C5−デオキシAmBの合成は、BB1をC−5デオキシBB1と単に置換することによって行えるであろう。
【0205】
2つのより小さい断片であるアルデヒド14、およびベータ−ケトホスホネート17のカップリングから生じるBB1の合成。アルデヒド14の合成は、チタン/BINOL錯体の存在下でのChanのジエン12および桂皮アルデヒド13の組合せで始まり、エナンチオ選択性の伸長アルドール反応が行われる。次に、一連のsyn還元、ケタール化、およびオゾン分解により、12から40%の全収率で所望のアルデヒド14が生成される。C5deOAmBの右半分の合成は、(R)−リンゴ酸の選択的エステル化により始まり、ケタール化が続き、シクロペンチリデンケタール15が提供される。15のペタシス試薬への曝露と、それに続くリチウム化ジメチルメチルホスホネート16への曝露の際のケトン形成により、ベータ−ケトホスホネート17が得られる。
【0206】
BB1の左半分と右半分の両方を生成した際に、ホーナー・ワズワース・エモンズ・カップリングにより断片14および17が結合する。次に、それに続くストライカー還元によりケトン18が生成される。18のL−Selectride(登録商標)への曝露、それに続く、結果として生じたアルコールのアシル化、およびメチレンジオキサンの最終的なヒドロホウ素化から生じるジアステレオ選択的ケトン還元により、BB2との鈴木・宮浦クロスカップリングのためにC5deOAmBの準備ができる。
【0207】
BB1と同様に、BB2も、2つのより小さい断片に分割される。糖供与体24、およびグリコシル受容体33が、ジアステレオ選択的グリコシル化反応において結合される。最初に、これらの2つのより小さい断片を合成しなければならない。24の合成は、2−フリルメチルケトンから始まる。このケトンの還元と、それに続く、NBSにより促進されるアフマトヴィッチ反応およびその後のBoc保護により、ジヒドロピラン20が生成される。次に、Bocアセタールのパラ−メトキシベンジルアセタールとの交換と、それに続くルーシェ条件下でのケトン還元により、アリルアルコール21に到達する。次いで、このアリルアルコールを使用して、TBSClおよびイミダゾールによりシリル化される前に、mCPBAエポキシ化の面選択性を制御する。次いで、そのエポキシドの部位選択的開環が、ジエチルアルミニウムアジド錯体により開環して、アジド−アルコール22を生成することにより行われる。次に、遊離アルコールをEDC、DMAP、およびTDMBAによりエステル化する。最後に、PMBアルコールの還元が、DDQへの曝露の際に行われ、続いて、トリクロロアセトイミダートの形成により、アリルアルコール33とのグリコシル化の準備ができている、完全に保護されたC2’−エピマイコサミン糖供与体24の合成が実現される。
【0208】
L−(−)−アラビトールから出発して、ビスケタール化と、それに続くIBXによるアルコール酸化、およびウィッティヒオレフィン化により、1,1−二置換オレフィン25が提供される。25のヒドロホウ素化と、それに続くベンジル化、および両方のエチルケタールの酸開裂によって、環化してビス−エポキシド26を得ることができる中間体が生成される。18−クラウン−6の存在下でのTMSCNおよびKCNによるビス−エポキシド26の開環により、ビス−シアノジオールが生成され、これは、ビス−カルボン酸への加水分解の際に、分子内ジアステレオトピック基選択性ラクトン化を経て、ラクトン27が提供される。次いで、簡単なメチルエステル化およびTBSシリル化により、ラクトン28が提供される。28の炭素と水素上のパラジウムへの曝露の際の脱ベンジル化と、それに続くピニック酸化、次いで、TMS−エタノールとの光延反応により、水酸化ナトリウムによる選択的鹸化を行って、酸29を提供できる特異的に置換されたジエステルが提供される。塩化オキサリルによる29の酸塩化物の形成と、それに続く、ビス−メタル化オレフィン31とのスティルカップリングにより、アルファ−ベータ不飽和ケトン32が提供される。ケトン32のアリルアルコール33へのジアステレオ選択的還元が、CBS還元により行われ、24とのグリコシル化の準備ができる。
【0209】
ベータ−グリコシル化の制御のために隣接基関与効果プラットフォームを利用して、緩衝クロロ−メチルピリジニウムトリフラートの存在下で24および33を組み合わせて、ベータ対アルファの選択率が20:1を超えた34が提供される。次いで、ヘキサフルオロイソプロパノール、tert−ブタノール、および塩化メチレン中におけるCSAへの曝露の際に、TDMB配向基が除去されて、遊離アルコール35が現れる。酸化、得られたケトンの還元、およびシリル化の3工程手順により、TBSエーテル36に到達する。ヨード−脱ゲルミル化と、それに続くジフェニルホスホリルクロリドおよびLiHMDSへの曝露により、ケテンアセタールホスホネート38に到達する。トリブチルスタンナン39への選択的スティルカップリングにより、BB2の合成が達成される。
【0210】
ヨード−トリエンBB3は、4つの構成要素単位の複雑さが最小のものである。その合成は、トランス−ビニルヨウ化物MIDAボロネート40から出発して、4工程で行われる。Pd(PPh
3)
4およびCUTCを使用した31とのスティルカップリングと、その後のヨード−脱ゲルミル化により、ジエン41が提供される。次いで、オレフィン網目構造が、31との第2のスティルカップリングによって別のビニル基により延長され、その後のヨード−脱ゲルミル化により、BB3に到達する。BB4の合成は、我々のグループからの以下の文献にしたがって迅速に達成される。Lee, SJ et al., J Am Chem Soc 130:466 (2008); Paterson, I et al., J Am Chem Soc 123:9535 (2001)。
【0211】
4つの構成要素単位の全てを手にして、ここで、反復クロスカップリングプラットフォームを使用して、それらを組み立てて、AmB大環状ラクトンを迅速に生成することができる。BB1およびBB2と、Buchwaldの第二世代SPhosパラダサイクル、リン酸カリウム、および3当量の水との組合せにより、鈴木・宮浦クロスカップリングが行われて、BB1−BB2ダイマー43が形成される。MIDAボロネートのピナコール交換と、その後のBB3との第2の鈴木カップリング(この時は、XPhos第二世代パラダサイクルによる)により、ペンタエン44が形成される。パラジウム第二世代XPhosパラダサイクルの存在下での水酸化ナトリウムによる、MIDAボロネートからの遊離ホウ酸のその場放出により、AmBの全ての炭素線状骨格、45が形成される。メチルエステル45の水酸化リチウムによる鹸化後、次いで、大環状ラクトン化により、AmBの二重
13C標識ラクトン、46が得られる。TBAF−tBuOH錯体によるTMSE脱保護、HF−ピリジンによる全体の脱シリル化、トリフルオロ酢酸による脱ケタール化、およびトリメチルホスフィンによるC3’アジドのシュタウディンガー還元を含む、一連の保護基除去により、AmB−
13C
2の合成が達成されるはずである。
【0212】
実施例3.C5−デオキシAmB
C5deOAmBの全合成
【0213】
【化36】
【0214】
C5デオキシAmBに到達するための代わりの合成戦略は、全合成の努力の成果によるものである。2つのより小さい断片である、アルデヒド47、およびベータ−ケトホスホネート17のカップリングから生じるC5deOBB1の合成を構想する。アルデヒド47の合成は、アセト酢酸メチルのアルキル化後に得られる、ベータ−ケトエステル48から始まる。48の野依水素化と、それに続くTBSシリル化により、シリルエーテル49が得られる。49からは、C5deOAmBの左半分を完成するために、オゾン分解しか残っていない。
【0215】
C5deOAmBの左半分と右半分の両方を生成する際に、断片47および17を結合するためにホーナー・ワズワース・エモンズ・カップリングを見込んでいる。次いで、その後のストライカー還元によりケトン50が生成されるであろう。50の「Selectride」への曝露により生じるジアステレオ選択的ケトン還元、続いて、結果として生じるアルコールのアシル化、および最終的なヒドロホウ素化により、C5deOBB1は、BB2との鈴木・宮浦クロスカップリングの準備ができる。
【0216】
図26のスキーム14を参照のこと。
【0217】
4つの構成要素単位の全てを手にして、ここで、反復クロスカップリングプラットフォームを使用して、それらを組み立てて、C5deOAmB大環状ラクトンを迅速に生成することができる。C5deOBB1およびBB2と、Buchwaldの第二世代SPhosパラダサイクル、リン酸カリウム、および3当量の水との組合せにより、鈴木・宮浦クロスカップリングが行われて、C5deOBB1−BB2ダイマー51が形成されると見込んでいる。MIDAボロネートのピナコール交換と、その後のBB3との第2の鈴木カップリング(この時は、XPhos第二世代パラダサイクルによる)により、ペンタエン52が形成される。パラジウム第二世代XPhosパラダサイクルの存在下での水酸化ナトリウムによる、MIDAボロネートからの遊離ホウ酸のその場放出により、C5deOAmBの全ての炭素線状骨格53が形成される。メチルエステル53の水酸化リチウムによる鹸化後、次いで、大環状ラクトン化により、大環状ラクトン54が得られるはずである。TBAF−tBuOH錯体によるTMSE脱保護、HF−ピリジンによる全体の脱シリル化、トリフルオロ酢酸による脱ケタール化、およびトリメチルホスフィンによるC3’アジドのシュタウディンガー還元を含む、一連の保護基除去により、C5deOAmBの合成が行われるはずである。
【0218】
実施例4.C8−デオキシAmB
C8deOAmBの全合成
図27のスキーム15を参照。
【0219】
AmBに到達するための戦略と同様に、全合成の努力の成果から生じるC8−デオキシAmBの合成を構想する。この合成を行うために、行う必要があるであろうAmB合成に対する唯一の変更は、C5deOBB1をC8deOBB1と置き換えることである。アルファ−ベータ不飽和ケトン55の還元から生じるC8deOBB1の合成を構想する。このケトンには、アルデヒド47およびベータ−ケトホスホネート17のホーナー・ワズワース・エモンズ・カップリングから到達するであろう。
【0220】
47と17との間のHWEオレフィン化と、それに続く、結果として生じるアルファ−ベータ不飽和カルボニルのストライカー還元により、ケトン56が提供される。次いで、そのケトンを水素化ホウ素ナトリウムによりアルコールに還元し、そのアルコールをチオエステル57として除去するために活性化させることを見込んでいる。次いで、水素化トリブチルスズおよびAIBNに曝露した際に、そのC8−チオエステルのラジカル媒介除去が行われる。次いで、メチレンジオキサンの9BBNHによるヒドロホウ素化により、C8deOAmBをICC手順に入れる準備ができる。
【0221】
図28のスキーム16を参照のこと。
【0222】
4つの構成要素単位の全てを手にして、ここで、反復クロスカップリングプラットフォームを使用して、それらを組み立てて、C8deOAmB大環状ラクトンを迅速に生成することができる。C8deOBB1およびBB2と、Buchwaldの第二世代SPhosパラダサイクル、リン酸カリウム、および3当量の水との組合せにより、鈴木・宮浦クロスカップリングが行われて、BB1−BB2ダイマー58が形成されると見込んでいる。MIDAボロネートのピナコール交換と、その後のBB3との第2の鈴木カップリング(この時は、XPhos第二世代パラダサイクルによる)により、ペンタエン59が形成される。パラジウム第二世代XPhosパラダサイクルの存在下での水酸化ナトリウムによる、MIDAボロネートからの遊離ホウ酸のその場放出により、C8deOAmBの全ての炭素線状骨格60が形成される。メチルエステル60の水酸化リチウムによる鹸化後、次いで、大環状ラクトン化により、大環状ラクトン61が得られるはずである。TBAF−tBuOH錯体によるTMSE脱保護、HF−ピリジンによる全体の脱シリル化、トリフルオロ酢酸による脱ケタール化、およびトリメチルホスフィンによるC3’アジドのシュタウディンガー還元を含む、一連の保護基除去により、C8deOAmBの合成が達成されるはずである。
【0223】
実施例5.C9−デオキシAmB
C9deOAmBの全合成
図29のスキーム17を参照。
【0224】
AmBに到達するための戦略と同様に、全合成の努力の成果から生じるC9−デオキシAmBの合成を構想する。この合成を行うために、行う必要があるであろうAmB合成に対する唯一の変更は、BB1をC9deOBB1と置き換えることである。アルデヒド14およびベータ−ケトホスホネート62のホーナー・ワズワース・エモンズ・カップリングから生じるC9deOBB1の合成を構想する。そのC−11立体中心は、ジアステレオ選択的ヒドロホウ素化により組み込むことができず、したがって、この制約を克服するために、MIDAボロネートから出発して、段階的様式で、9−デオキシBB1を立体選択的に組み立てた。この経路は、様々な一般的な合成変換に耐えるMIDAボロネートの能力をうまく活かすものである。
【0225】
アリルMIDAボロネート63から出発して、手短な一連のオゾン分解、ブラウンアリル化、TBS保護、およびヒドロホウ素化/酸化により、アルデヒド64が生じる。この最初の手順中、初期のブラウンアリル化生成物の、典型的な過酸化水素/水酸化ナトリウムの代わりに、漂白剤酸化作業により、MIDAボロネートが分解せずに、炭素−ホウ素結合が効率的に酸化する。64のリチウム化ジメチルメチルホスホネートへの曝露と、それに続く、デス・マーチン酸化により、β−ケトホスホネート65が生じる。BB1合成戦略の収束性を示すために、ホーナー・ワズワース・エモンズ・カップリングにおいて、14を62と組み合わせて、α−β不飽和エステル66を得る。このカルボニルの(R)−CBS触媒による還元と、それに続く触媒水素化により、67が生じる。このC9デオキシBB1中間体は、立体化学の全てが予め導入された正確な酸化状態で全ての炭素骨格を含んでいる。MIDAボロネートの脱保護およびBB2とのカップリングの準備ができたC9デオキシBB1を実現するためには、TBS保護しか必要ない。
【0226】
図30のスキーム18を参照のこと。
【0227】
4つの構成要素単位の全てを手にして、ここで、反復クロスカップリングプラットフォームを使用して、それらを組み立てて、C9deOAmB大環状ラクトンを迅速に生成することができる。NaOHによるMIDAボロネートの加水分解後の、C9deOBB1およびBB2と、Buchwaldの第二世代SPhosパラダサイクル、リン酸カリウム、および3当量の水との組合せにより、鈴木・宮浦クロスカップリングが行われて、BB1−BB2ダイマー68が形成されると見込んでいる。MIDAボロネートのピナコール交換と、その後のBB3との第2の鈴木カップリング(この時は、XPhos第二世代パラダサイクルによる)により、ペンタエン69が形成される。パラジウム第二世代XPhosパラダサイクルの存在下での水酸化ナトリウムによる、MIDAボロネートからの遊離ホウ酸のその場放出により、C9deOAmBの全ての炭素線状骨格70が形成される。メチルエステル70の水酸化リチウムによる鹸化後、次いで、大環状ラクトン化により、大環状ラクトン71が得られるはずである。TBAF−tBuOH錯体によるTMSE脱保護、HF−ピリジンによる全体の脱シリル化、トリフルオロ酢酸による脱ケタール化、およびトリメチルホスフィンによるC3’アジドのシュタウディンガー還元を含む、一連の保護基除去により、C9deOAmBの合成が達成されるはずである。
【0228】
実施例6.C11−デオキシAmB
C11deOAmBの全合成
【0229】
【化37】
【0230】
AmBに到達するための戦略と同様に、全合成の努力の成果から生じるC11−デオキシAmBの合成を構想する。この合成を行うために、行う必要があるであろうAmB合成に対する唯一の変更は、BB1をC11deOBB1と置き換えることである。アルデヒド14およびベータ−ケトホスホネート72のホーナー・ワズワース・エモンズ・カップリングから生じるC11deOBB1の合成を構想する。
【0231】
アルファ−ヒドロキシエステル73のTBSシリル化から出発するC11deOBB1の合成を構想する。このエステルへのリチウム化ジメチルメチルホスホネート17の添加により、ベータ−ケトホスホネート72が提供されるはずである。ホーナー・ワズワース・エモンズ・カップリング条件下で、72はアルデヒド14と反応するはずである。生成されるアルファ−ベータ不飽和カルボニルのストライカー試薬によるそれに続く還元により、ケトン75が提供されるはずである。75の「L−Selectride」への曝露から生じるジアステレオ選択的ケトン還元と、それに続く、結果として生じるアルコールのアシル化、およびメチレンジオキサンのヒドロホウ素化により、C11deOAmBは、BB2との鈴木・宮浦クロスカップリングの準備ができる。
【0232】
図31のスキーム20を参照のこと。
【0233】
4つの構成要素単位の全てを手にして、ここで、反復クロスカップリングプラットフォームを使用して、それらを組み立てて、C11deOAmB大環状ラクトンを迅速に生成することができる。C11deOBB1およびBB2と、Buchwaldの第二世代SPhosパラダサイクル、リン酸カリウム、および3当量の水との組合せにより、鈴木・宮浦クロスカップリングが行われて、BB1−BB2ダイマー76が形成されると見込んでいる。MIDAボロネートのピナコール交換と、その後のBB3との第2の鈴木カップリング(この時は、XPhos第二世代パラダサイクルによる)により、ペンタエン77が形成される。パラジウム第二世代XPhosパラダサイクルの存在下での水酸化ナトリウムによる、MIDAボロネートからの遊離ホウ酸のその場放出により、C11deOAmBの全ての炭素線状骨格78が形成される。メチルエステル78の水酸化リチウムによる鹸化後、次いで、大環状ラクトン化により、大環状ラクトン79が得られるはずである。TBAF−tBuOH錯体によるTMSE脱保護、HF−ピリジンによる全体の脱シリル化、トリフルオロ酢酸による脱ケタール化、およびトリメチルホスフィンによるC3’アジドのシュタウディンガー還元を含む、一連の保護基除去により、C11deOAmBの合成が達成されるはずである。
【0234】
実施例7.C13−デオキシAmB
C13deOAmBの全合成
図32のスキーム21を参照。
【0235】
C13deOAmBの合成への手法の1つが、
図11に示されている。適切に保護された中間体を生成する際に、そのC−13アルコールは、別のケタールであるチオケタールへの転化、またはC−13、C−14ジヒドロピランへの脱離のいずれかにより、還元のために活性化させることができる。そのC−13アルコールの活性化の際に、それは、次いで、単純な水素原子に還元できるであろう。次いで、一連の保護基除去により、C13deOAmBの合成が完了するであろう。
【0236】
C13deOAmBの合成は、マイコサミン窒素のFmoc保護により始め、TESシリルエーテルとしてのC13ケタールを除く、全てのアルコールの過シリル化(persilylation)、および最後に、TMSEエステルの光延取付けを行って、完全に保護された中間体80が提供される。次いで、C−13位は、エタンチオールおよび酸によって、エチルチオケタール81に容易に転化される。81のmCPBAによる酸化でスルホキシドが提供され、これは、DCM中のトリエチルシランにより、還元条件下で除去できるであろう。82を手にして、フッ化テトラブチルアンモニウムによるTMSE除去、HF−ピリジン錯体による全体のTES脱シリル化、およびピペリジンによる最終的なFmoc脱保護を含む、一連の保護基除去により、C13deOAmBへの到達が可能になるであろう。
【0237】
実施例8.C15−デオキシAmB
C15deOAmBの全合成
図33のスキーム22を参照。
【0238】
AmBに到達するための戦略と同様に、全合成の努力の成果から生じるC15−デオキシAmBの合成を構想する。この合成を行うために、行う必要があるであろうAmB合成に対する唯一の変更は、BB2をC15deOAmBと置き換えることである。C15アルコールがない、アリルアルコール83の、マイコサミン糖供与体24によるグリコシル化から生じるC15deOBB1の合成を構想する。
【0239】
アリルアルコール83の合成は、L−(−)−アラビトールから始まり、前記ジアステレオトピック基選択性ラクトン化の初めから終わりまで、BB2と同じ合成手順で進行して、ラクトン86を生成する。この分岐点から、メチルエステル化と、それに続き、チオカルボニルとして除去するためのC15−アルコールの活性化、並びに水素化トリブチルスズおよびAIBNにより促進される、結果として生じるバートン・マクコンビー脱酸素化により、脱酸素化ラクトン87が提供されるはずである。
【0240】
ラクトン86を手にして、炭素および水素上のパラジウムへの87の曝露の際の脱ベンジル化と、それに続く、ピニック酸化、次いで、TMS−エタノールとの光延反応により、水酸化ナトリウムによる選択的鹸化を行って、酸88を提供できる特異的に置換されたジエステルが提供されるはずである。塩化オキサリルによる88の酸塩化物の形成と、それに続く、ビス−メタル化オレフィンとのスティルカップリングにより、アルファ−ベータ不飽和ケトン90が提供されるはずである。ケトン90のアリルアルコール83へのジアステレオ選択的還元がCBS還元により行われ、24とのグリコシル化の準備ができるであろう。ベータ−グリコシル化の制御のために隣接基関与効果プラットフォームを利用して、緩衝クロロ−メチルピリジニウムトリフラートの存在下で83および24を組み合わせて、ベータ選択率が優れた91が提供されるはずである。次いで、ヘキサフルオロイソプロパノール、tert−ブタノール、および塩化メチレン中におけるCSAへの曝露の際に、TDMB配向基が除去されて、遊離アルコール92を現すことができるであろう。酸化、得られたケトンの還元、およびシリル化の3工程手順により、TBSエーテル93に到達するはずである。ヨード−脱ゲルミル化と、それに続くジフェニルホスホリルクロリドおよびLiHMDSへの曝露により、ケテンアセタールホスホネート95に到達できるであろう。トリブチルスタンナンへの選択的スティルカップリングにより、C15deOBB2の合成が達成されるはずである。
【0241】
図34のスキーム23、および
図35のスキーム24を参照のこと。
【0242】
4つの構成要素単位の全てを手にして、ここで、反復クロスカップリングプラットフォームを使用して、それらを組み立てて、C15deOAmB大環状ラクトンを迅速に生成することができる。BB1およびC15deOBB2と、Buchwaldの第二世代SPhosパラダサイクル、リン酸カリウム、および3当量の水との組合せにより、鈴木・宮浦クロスカップリングが行われて、BB1−BB2ダイマー96が形成されると見込んでいる。MIDAボロネートのピナコール交換と、その後のBB3との第2の鈴木カップリング(この時は、XPhos第二世代パラダサイクルによる)により、ペンタエン97が形成される。パラジウム第二世代XPhosパラダサイクルの存在下での水酸化ナトリウムによる、MIDAボロネートからの遊離ホウ酸のその場放出により、C15deOAmBの全ての炭素線状骨格98が形成される。メチルエステル98の水酸化リチウムによる鹸化後、次いで、大環状ラクトン化により、大環状ラクトン99が得られるはずである。TBAF−tBuOH錯体によるTMSE脱保護、HF−ピリジンによる全体の脱シリル化、トリフルオロ酢酸による脱ケタール化、およびトリメチルホスフィンによるC3’アジドのシュタウディンガー還元を含む、一連の保護基除去により、C15deOAmBの合成が達成されるはずである。
【0243】
実施例9.C15−デオキシAmB
選択的アシル化
図36のスキーム25を参照のこと。
【0244】
C15deOAmBに到達する第2の戦略の概要が、
図13に示されている。適切に保護された中間体を生成する際に、選択的アシル化反応が、C15アシル誘導体のみを提供することができるであろう。この特異的に保護されたアルコールを手にして、残りのアルコールの保護と、それに続く、今では遊離したC−15アルコールの脱アシル化および脱酸素化により、C15deOAmBから一連の脱保護しか離れていない中間体に到達できるであろう。
【0245】
スキーム25に示されるように、AmBから出発して、フェニルアシルの形成、メチルケタールの形成、ジアゾメタンを使用したメチルエステル化、およびp−メトキシベンジルアセタールとしてのC,3−C,5ジオールおよびC,9−C,11ジオール両方の選択的アセタール形成を含む、一連の保護基操作により、適切に保護された中間体100に到達する。DMAPにより触媒された、p−ニトロフェニル無水物による100のアシル化により、C−15位が選択的にアシル化される。この特異的に保護されたアルコール101を手にして、残りのアルコールの過シリル化、それに続く脱アシル化、チオカルボニルとしての今では遊離したC−15アルコールの活性化、並びに水素化トリブチルスズおよびAIBNにより促進されるラジカル脱酸素化の手順により、中間体102に到達するはずである。HF−ピリジンによるTES基の除去、それに続くCSA触媒ケタール加水分解、水酸化リチウムによるメチルエステル鹸化、および最終的な酵素的脱アシル化の最後の脱保護手順により、C15deOAmBに到達するはずである。
【0246】
実施例10.C3’−デアミノAmB
ハイブリッド合成
図37のスキーム26参照のこと。
【0247】
C3’deAAmBの合成は、我々のグループにより以前にC2’デオキシAmBの合成に利用したアンフォテルノリド(amphoternolide)103のグリコシル化戦略に基づく。Wilcock, BC et al., J Am Chem Soc 135:8488 (2013)。C3’デアミノAmBの全ての炭素骨格を得るために、デアミノ糖供与体104によるグリコシル化103を構想する。それに続く保護基の除去により、この誘導体に効率的に到達するはずである。
【0248】
104の合成は、スキーム8に概説されたような2−フリルメチルケトンから到達できる、PMBエーテル105から始まる。水素化物によるエポキシド105の開環により、C2’アルコール106が選択的に生成される。EDCおよびDMAPを用いて、ZDMB配向基を導入し、続いて、残りのアルコールをTBSシリル化して、ピラン107が提供される。PMB保護基のDDQ除去およびトリクロロアセトイミデートとの交換により、C3’デアミノ糖供与体104が生成される。104を手にして、109を提供するために、緩衝クロロ−メチルピリジニウムトリフラート条件下で例外的なベータ選択性でグリコシル化を進めることを構想する。次いで、シュタウディンガー条件下でトリメチルホスフィンによりZDMB配向基を除去することを期待する。次いで、アルコール110の酸化、還元手順により、立体化学がC2’で反転し、アルコール111が提供されるであろう。HF−ピリジンによる脱シリル化、Pd(PPh
3)
4およびチオサリチル酸によるアリルエステルの除去、並びに水およびジメチルスルホキシド(DMSO)中のメチルケタール加水分解CSAの脱保護手順により、C3’deAAmBに到達するはずである。
【0249】
実施例11.C4’−デオキシAmB
ハイブリッド合成
図38のスキーム27参照のこと。
【0250】
C4’deOAmBの合成は、我々のグループにより以前にC2’デオキシAmBの合成に利用したアンフォテルノリド(amphoternolide)103のグリコシル化戦略に基づく。Wilcock, BC et al., J Am Chem Soc 135:8488 (2013)。C4’デオキシAmBの全ての炭素骨格を得るために、脱酸素化糖供与体112によるグリコシル化103を構想する。それに続く保護基の除去により、この誘導体に効率的に到達するはずである。
【0251】
112の合成は、スキーム8に概説されたような2−フリルメチルケトンから到達できる、PMBエーテル113から始まる。アジ化ナトリウムによりエポキシド113を開環させ、続いて、EDCおよびDMAPを用いて、ZDMB配向基を導入して、TBSエーテル114を生成する。次いで、HFによる処理の際に脱シリル化され、C4’で遊離アルコールを提供することを構想する。次いで、このC4’アルコールは、チオカルボニルへの活性化と、それに続く、水素化トリブチルスズおよびAIBNによるラジカル脱酸素化の二段階手法後に除去して、アジド115を得ることができるであろう。次いで、PMB保護基のDDQ除去およびトリクロロアセトイミデートとの交換により、C4’デオキシ糖供与体112が生成されるであろう。112を手にして、117を提供するために、緩衝クロロ−メチルピリジニウムトリフラート条件下で例外的なベータ選択性でグリコシル化を進めることを構想する。次いで、シュタウディンガー条件下でトリメチルホスフィンによりZDMB配向基を除去すると同時に、C3’アジドをアミンに還元することを期待する。次いで、Fmoc−スクシンイミドによる再保護で、アルコール118が提供されるであろう。次いで、アルコール#の酸化、還元手順により、立体化学がC2’で反転し、アルコール119が提供されるであろう。HF−ピリジンによる脱シリル化、Pd(PPh
3)
4およびチオサリチル酸によるアリルエステルの除去、並びに水およびジメチルスルホキシド(DMSO)中のメチルケタール加水分解CSAの脱保護手順により、C4’deOAmBに到達するはずである。
【0252】
実施例12.生物学的活性のインビトロ評価
ここに提案された各誘導体を酵母およびヒト細胞の両方に対する生物学的活性について試験して、その治療指数を決定する。微量液体希釈法により、サッカロマイセス・セレビシエおよび臨床的に関連するカンジダ・アルビカンスに対する各誘導体のMIC(最小阻止濃度)を決定し、それによって、各新規の誘導体の抗真菌活性を確立する。ヒト細胞に対する毒性を試験するために、各化合物を、赤血球に対する溶血アッセイに曝露し、これにより、ヒト赤血球の90%溶解(EH
90)を生じるのに要する濃度を決定する。その上、各化合物をヒト初代尿細管細胞に曝露して、腎臓細胞に対する各化合物の毒性を決定する。これらのアッセイは、同じ細胞株に対するAmBの公知の値に対して比較して、各化合物の治療指数の改善を決定する。
【0253】
実施例13.生物学的活性のインビボ評価
播種性カンジダ症のマウスモデルにおいて、AmBMUおよびAmBAUの抗菌効果を試験した。この実験において、好中球減少マウスせ、尾静脈を通じてカンジダ・アルビカンスに感染させ、次いで、感染から2時間後、それらのマウスをAmB、AmBMU、またはAmBAUの1回の腹腔内注射で治療した。次いで、感染から2、6、12、および24時間後に、マウスを犠牲にし、その腎内生菌数を数量化した。その結果が
図39に示されている。AmBMUおよびAmBAUの両方とも、3つの試験用量(すなわち、1、4、および16mg/kg)の全てで腎内生菌数の減少で、AmBよりも実質的に効果的であった。その差は、接種から24時間後の16mg/kgの用量で最も著しかった。AmBに対して、AmBMUは、1.2log単位(p≦0.001)だけ生菌数を減少させ、AmBAUはほぼ3log単位(p≦0.0001)だけ生菌数を減少させた。改善された薬理学的特性は、おそらく大幅に増加した水溶性のために、新たな化合物に関するインビボ抗真菌活性における予期せぬ劇的な改善に寄与するであろうと推測する。
【0254】
別の一連の実験において、健康なマウスに1、2、4、8、16、32、または64mg/kgのAmBまたはその誘導体の1回の静脈内投与と、その後、致死率のモニタによって、急性毒性を評価した。その結果が
図40に示されている。4mg/kgのAmBの投与量の群における全てのマウスは、数秒以内で死亡した。AmBAUは、64mg/kgの投与量の群まで50%超の致死率に到達せずに、劇的に毒性が低かった。64mg/kgのAmBMUを投与した全てのマウスは生存し、観察可能な毒性がなかったことは際立っていた。
【0255】
文献
【0256】
【0257】
【0258】
に示されるように、AmBは、4つの構成要素単位(BB1〜BB4)に逆合成により分割される。反復様式で鈴木・宮浦クロスカップリングのみを使用して、構成要素単位1と2、2と3、および3と4の間に結合を形成することを目標とする。次いで、その後の大環状ラクトン化および全体的な保護により、全合成が完了するであろう。この戦略を使用すれば、脱酸素化された誘導体の合成には、新しい脱酸素化された構成要素単位の合成しか必要なく、合成の残りが不変のままである。例えば、C5−デオキシAmBの合成は、BB1をC−5デオキシBB1と単に置換することによって行えるであろう。
4つの構成要素単位の全てを手にして、ここで、反復クロスカップリングプラットフォームを使用して、それらを組み立てて、AmB大環状ラクトンを迅速に生成することができる。BB1およびBB2と、Buchwaldの第二世代SPhosパラダサイクル、リン酸カリウム、および3当量の水との組合せにより、鈴木・宮浦クロスカップリングが行われて、BB1−BB2ダイマー43が形成される。MIDAボロネートのピナコール交換と、その後のBB3との第2の鈴木カップリング(この時は、XPhos第二世代パラダサイクルによる)により、ペンタエン44が形成される。パラジウム第二世代XPhosパラダサイクルの存在下での水酸化ナトリウムによる、MIDAボロネートからの遊離
C標識ラクトン、46が得られる。TBAF−tBuOH錯体によるTMSE脱保護、HF−ピリジンによる全体の脱シリル化、トリフルオロ酢酸による脱ケタール化、およびトリメチルホスフィンによるC3’アジドのシュタウディンガー還元を含む、一連の保護基除去により、AmB−
4つの構成要素単位の全てを手にして、ここで、反復クロスカップリングプラットフォームを使用して、それらを組み立てて、C5deOAmB大環状ラクトンを迅速に生成することができる。C5deOBB1およびBB2と、Buchwaldの第二世代SPhosパラダサイクル、リン酸カリウム、および3当量の水との組合せにより、鈴木・宮浦クロスカップリングが行われて、C5deOBB1−BB2ダイマー51が形成されると見込んでいる。MIDAボロネートのピナコール交換と、その後のBB3との第2の鈴木カップリング(この時は、XPhos第二世代パラダサイクルによる)により、ペンタエン52が形成される。パラジウム第二世代XPhosパラダサイクルの存在下での水酸化ナトリウムによる、MIDAボロネートからの遊離
酸のその場放出により、C5deOAmBの全ての炭素線状骨格53が形成される。メチルエステル53の水酸化リチウムによる鹸化後、次いで、大環状ラクトン化により、大環状ラクトン54が得られるはずである。TBAF−tBuOH錯体によるTMSE脱保護、HF−ピリジンによる全体の脱シリル化、トリフルオロ酢酸による脱ケタール化、およびトリメチルホスフィンによるC3’アジドのシュタウディンガー還元を含む、一連の保護基除去により、C5deOAmBの合成が行われるはずである。
4つの構成要素単位の全てを手にして、ここで、反復クロスカップリングプラットフォームを使用して、それらを組み立てて、C8deOAmB大環状ラクトンを迅速に生成することができる。C8deOBB1およびBB2と、Buchwaldの第二世代SPhosパラダサイクル、リン酸カリウム、および3当量の水との組合せにより、鈴木・宮浦クロスカップリングが行われて、BB1−BB2ダイマー58が形成されると見込んでいる。MIDAボロネートのピナコール交換と、その後のBB3との第2の鈴木カップリング(この時は、XPhos第二世代パラダサイクルによる)により、ペンタエン59が形成される。パラジウム第二世代XPhosパラダサイクルの存在下での水酸化ナトリウムによる、MIDAボロネートからの遊離
酸のその場放出により、C8deOAmBの全ての炭素線状骨格60が形成される。メチルエステル60の水酸化リチウムによる鹸化後、次いで、大環状ラクトン化により、大環状ラクトン61が得られるはずである。TBAF−tBuOH錯体によるTMSE脱保護、HF−ピリジンによる全体の脱シリル化、トリフルオロ酢酸による脱ケタール化、およびトリメチルホスフィンによるC3’アジドのシュタウディンガー還元を含む、一連の保護基除去により、C8deOAmBの合成が達成されるはずである。
4つの構成要素単位の全てを手にして、ここで、反復クロスカップリングプラットフォームを使用して、それらを組み立てて、C9deOAmB大環状ラクトンを迅速に生成することができる。NaOHによるMIDAボロネートの加水分解後の、C9deOBB1およびBB2と、Buchwaldの第二世代SPhosパラダサイクル、リン酸カリウム、および3当量の水との組合せにより、鈴木・宮浦クロスカップリングが行われて、BB1−BB2ダイマー68が形成されると見込んでいる。MIDAボロネートのピナコール交換と、その後のBB3との第2の鈴木カップリング(この時は、XPhos第二世代パラダサイクルによる)により、ペンタエン69が形成される。パラジウム第二世代XPhosパラダサイクルの存在下での水酸化ナトリウムによる、MIDAボロネートからの遊離
酸のその場放出により、C9deOAmBの全ての炭素線状骨格70が形成される。メチルエステル70の水酸化リチウムによる鹸化後、次いで、大環状ラクトン化により、大環状ラクトン71が得られるはずである。TBAF−tBuOH錯体によるTMSE脱保護、HF−ピリジンによる全体の脱シリル化、トリフルオロ酢酸による脱ケタール化、およびトリメチルホスフィンによるC3’アジドのシュタウディンガー還元を含む、一連の保護基除去により、C9deOAmBの合成が達成されるはずである。
4つの構成要素単位の全てを手にして、ここで、反復クロスカップリングプラットフォームを使用して、それらを組み立てて、C11deOAmB大環状ラクトンを迅速に生成することができる。C11deOBB1およびBB2と、Buchwaldの第二世代SPhosパラダサイクル、リン酸カリウム、および3当量の水との組合せにより、鈴木・宮浦クロスカップリングが行われて、BB1−BB2ダイマー76が形成されると見込んでいる。MIDAボロネートのピナコール交換と、その後のBB3との第2の鈴木カップリング(この時は、XPhos第二世代パラダサイクルによる)により、ペンタエン77が形成される。パラジウム第二世代XPhosパラダサイクルの存在下での水酸化ナトリウムによる、MIDAボロネートからの遊離
酸のその場放出により、C11deOAmBの全ての炭素線状骨格78が形成される。メチルエステル78の水酸化リチウムによる鹸化後、次いで、大環状ラクトン化により、大環状ラクトン79が得られるはずである。TBAF−tBuOH錯体によるTMSE脱保護、HF−ピリジンによる全体の脱シリル化、トリフルオロ酢酸による脱ケタール化、およびトリメチルホスフィンによるC3’アジドのシュタウディンガー還元を含む、一連の保護基除去により、C11deOAmBの合成が達成されるはずである。
4つの構成要素単位の全てを手にして、ここで、反復クロスカップリングプラットフォームを使用して、それらを組み立てて、C15deOAmB大環状ラクトンを迅速に生成することができる。BB1およびC15deOBB2と、Buchwaldの第二世代SPhosパラダサイクル、リン酸カリウム、および3当量の水との組合せにより、鈴木・宮浦クロスカップリングが行われて、BB1−BB2ダイマー96が形成されると見込んでいる。MIDAボロネートのピナコール交換と、その後のBB3との第2の鈴木カップリング(この時は、XPhos第二世代パラダサイクルによる)により、ペンタエン97が形成される。パラジウム第二世代XPhosパラダサイクルの存在下での水酸化ナトリウムによる、MIDAボロネートからの遊離
酸のその場放出により、C15deOAmBの全ての炭素線状骨格98が形成される。メチルエステル98の水酸化リチウムによる鹸化後、次いで、大環状ラクトン化により、大環状ラクトン99が得られるはずである。TBAF−tBuOH錯体によるTMSE脱保護、HF−ピリジンによる全体の脱シリル化、トリフルオロ酢酸による脱ケタール化、およびトリメチルホスフィンによるC3’アジドのシュタウディンガー還元を含む、一連の保護基除去により、C15deOAmBの合成が達成されるはずである。