(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2016-532305(P2016-532305A)
(43)【公表日】2016年10月13日
(54)【発明の名称】単結晶シリコンウェハのテクスチャリング添加剤及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/308 20060101AFI20160916BHJP
C30B 29/06 20060101ALI20160916BHJP
C30B 33/10 20060101ALI20160916BHJP
H01L 31/0236 20060101ALI20160916BHJP
【FI】
H01L21/308 B
C30B29/06 B
C30B33/10
H01L31/04 280
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-539392(P2016-539392)
(86)(22)【出願日】2013年12月17日
(85)【翻訳文提出日】2014年8月14日
(86)【国際出願番号】CN2013089672
(87)【国際公開番号】WO2015032153
(87)【国際公開日】20150312
(31)【優先権主張番号】201310394735.2
(32)【優先日】2013年9月4日
(33)【優先権主張国】CN
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】514205436
【氏名又は名称】常州時創能源科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】Changzhou Shichuang Energy Technology Limited Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】100081053
【弁理士】
【氏名又は名称】三俣 弘文
(72)【発明者】
【氏名】符黎明
(72)【発明者】
【氏名】陳培良
【テーマコード(参考)】
4G077
5F043
5F151
【Fターム(参考)】
4G077AA02
4G077BA04
4G077FG06
4G077HA01
4G077HA12
5F043AA02
5F043BB02
5F043GG10
5F151AA02
5F151CB21
5F151GA04
5F151GA14
(57)【要約】
【課題】テクスチャリングコストを低減し、環境汚染を減少することができ、結晶シリコン太陽電池の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明は、ポリエチレングリコール、安息香酸ナトリウム、クエン酸、加水分解ポリ無水マレイン酸、酢酸ナトリウム及び残部の水を含む単結晶シリコンウェハのテクスチャリング添加剤を提供する。本発明は、更に、無機アルカリ又は有機アルカリの水溶液であるアルカリ溶液と上記テクスチャリング添加剤を含有し、前記テクスチャリング添加剤とアルカリ溶液の質量比が0.2〜5:100である、単結晶シリコンウェハのテクスチャリングのためのテクスチャリング液を提供する。本発明は、更に、上記テクスチャリング液を用いて単結晶シリコンウェハの表面をテクスチャリングする単結晶シリコンウェハのテクスチャリング方法を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレングリコール、安息香酸ナトリウム、クエン酸、加水分解ポリ無水マレイン酸、酢酸ナトリウムの各成分を含み、残部が水である
ことを特徴とする単結晶シリコンウェハのテクスチャリング添加剤。
【請求項2】
前記各成分の含有量の質量百分率は、ポリエチレングリコールが1%〜20%、安息香酸ナトリウムが0.1%〜2.0%、クエン酸が1.0%〜5.0%、加水分解ポリ無水マレイン酸が1.0%〜5.0%、酢酸ナトリウムが0.1%〜1.0%、残部が水である
ことを特徴とする請求項1に記載の単結晶シリコンウェハのテクスチャリング添加剤。
【請求項3】
前記水は脱イオン水である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の単結晶シリコンウェハのテクスチャリング添加剤。
【請求項4】
無機アルカリ又は有機アルカリの水溶液であるアルカリ溶液と、請求項1〜3のいずれか一項に記載の単結晶シリコンウェハのテクスチャリング添加剤を含有し、
前記単結晶シリコンウェハのテクスチャリング添加剤とアルカリ溶液の質量比が、0.2〜5:100である
ことを特徴とする単結晶シリコンウェハのテクスチャリングのためのテクスチャリング液。
【請求項5】
前記アルカリ溶液が、0.5〜3wt%の水酸化ナトリウム又は水酸化カリウム水溶液であることを特徴とする請求項4に記載の単結晶シリコンウェハのテクスチャリングのためのテクスチャリング液。
【請求項6】
請求項4又は5に記載のテクスチャリング液を利用して、単結晶シリコンウェハの表面をテクスチャリングすることを特徴とする単結晶シリコンウェハのテクスチャリング方法。
【請求項7】
前記表面テクスチャリングのテクスチャリング温度を75〜90℃で、テクスチャリング時間が500〜1500sである
ことを特徴とする請求項6に記載の単結晶シリコンウェハのテクスチャリング方法。
【請求項8】
単結晶シリコンウェハのテクスチャリング方法において、
(A)質量百分率が1%〜20%のポリエチレングリコール、0.1%〜2.0%の安息香酸ナトリウム、1.0%〜5.0%のクエン酸、1.0%〜5.0%の加水分解ポリ無水マレイン酸、0.1%〜1.0%の酢酸ナトリウムを残部の水に加え、均一に混合し、テクスチャリング添加剤を調製するステップと、
(B)ステップ(A)で製作されたテクスチャリング添加剤を無機アルカリ又は有機アルカリの水溶液であるアルカリ溶液に、前記テクスチャリング添加剤とアルカリ溶液の質量比が0.2〜5:100であるように、加え均一に混合し、テクスチャリング液を調製するステップと、
(C)単結晶シリコンウェハをステップ(B)で製作されたテクスチャリング液にディッピングして表面を、テクスチャリング温度を75〜90℃でテクスチャリング時間が500〜1500でテクスチャリングするステップと
を含むことを特徴とする単結晶シリコンウェハのテクスチャリング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単結晶シリコンウェハのテクスチャリング添加剤及びその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池ウェハの製造過程において、太陽電池の性能と効率を向上させるために、シリコンウェハの表面にテクスチャリング面を製作することが必要とされ、効果的なテクスチャリング面構造によって、入射した太陽光にシリコンウェハの表面で数回の反射と屈折を行わせて入射光のシリコンでの前進方向を変えることができる。光路を長くしてシリコンウェハの赤外光に対する吸収率を増加するようになり、一方、より多くの光子をpn接合に近い領域で吸収して光生成キャリアを発生し、これらの光生成キャリアがより容易に収集されるので、光生成キャリアの収集効率が高くなった。
【0003】
現在の一般のテクスチャリングプロセスにおいて、テクスチャリングするには、一般に水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムを用い、適当なイソプロパノールとケイ酸ナトリウムの混合溶液を添加するようになっている。その欠点は、テクスチャリング時間が長く、テクスチャリングピラミッドが大きくて不均一で、元のシリコンウェハの表面状態に対する要求が高く、薬品消耗量が大きく、また、溶液の寿命が短く、テクスチャリングの繰り返し性が悪く、イソプロパノール等の揮発量が非常に大きく、絶え間なく液体を調製することが必要とされ、作業難度が高いことで、テクスチャリングの外観不良率が非常に高く、電池ウェハの変換効率が低い等の問題を起こしてしまうことにある。
【0004】
一般のテクスチャリングプロセスによる技術的難題を解決するために、化学反応を均一に行わせ、溶液濃度と反応速度の制御可能性をより好適にするためのテクスチャリング補助用の触媒を発見することが必要になった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、単結晶シリコンウェハのテクスチャリング面の製作に用いる場合に、大量のイソプロパノール又はエタノールを使用する必要がなく、テクスチャリング液の化学的酸素要求量が大幅に低くなり、また、均一で細かくて密集しているテクスチャリング面ピラミッドを得ることができるので、テクスチャリングコストを低減し、環境汚染を減少することができ、結晶シリコン太陽電池の製造工程の安定化に有利であり、優れた実用価値を有している単結晶シリコンウェハのテクスチャリング添加剤及びその使用方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を実現するために、本発明は、その成分として、ポリエチレングリコール、安息香酸ナトリウム、クエン酸、加水分解ポリ無水マレイン酸、酢酸ナトリウム及び残部の水を含む単結晶シリコンウェハのテクスチャリング添加剤を提供する。
【0007】
好ましくは、前記単結晶シリコンウェハのテクスチャリング添加剤における各成分の含有量の質量百分率について、ポリエチレングリコールが1%〜20%、安息香酸ナトリウムが0.1%〜2.0%、クエン酸が1.0%〜5.0%、加水分解ポリ無水マレイン酸が1.0%〜5.0%、酢酸ナトリウムが0.1%〜1.0%、残部が水である。
【0008】
好ましくは、前記水が脱イオン水である。
【0009】
本発明は、更に、無機アルカリ又は有機アルカリの水溶液であるアルカリ溶液と上記単結晶シリコンウェハのテクスチャリング添加剤を含有し、前記単結晶シリコンウェハのテクスチャリング添加剤とアルカリ溶液の質量比が0.2〜5:100である単結晶シリコンウェハのテクスチャリングのためのテクスチャリング液を提供する。
【0010】
好ましくは、前記アルカリ溶液が0.5〜3wt%の水酸化ナトリウム又は水酸化カリウム水溶液である。
【0011】
本発明は、更に、上記テクスチャリング液を利用して単結晶シリコンウェハの表面をテクスチャリングする単結晶シリコンウェハのテクスチャリング方法を提供する。
【0012】
好ましくは、前記表面テクスチャリングのテクスチャリング温度を75〜90℃とし、テクスチャリング時間を500〜1500sとする。
【0013】
上記単結晶シリコンウェハのテクスチャリング方法は、具体的なステップとして、
(A)質量百分率が1%〜20%のポリエチレングリコール、0.1%〜2.0%の安息香酸ナトリウム、1.0%〜5.0%のクエン酸、1.0%〜5.0%の加水分解ポリ無水マレイン酸、0.1%〜1.0%の酢酸ナトリウムを残部の水に加え、均一に混合し、テクスチャリング添加剤を調製し、ただし、水が好ましくは脱イオン水であるステップと、
(B)ステップ(A)で製作されたテクスチャリング添加剤をアルカリ溶液に加え、均一に混合し、テクスチャリング液を調製し、前記テクスチャリング添加剤とアルカリ溶液の質量比が0.2〜5:100であり、前記アルカリ溶液が無機アルカリ又は有機アルカリの水溶液であり、好ましくは0.5〜3wt%の水酸化ナトリウム又は水酸化カリウム水溶液であるステップと、
(C)単結晶シリコンウェハをステップ(B)で製作されたテクスチャリング液にディッピングして表面をテクスチャリングし、テクスチャリング温度を75〜90℃とし、テクスチャリング時間を500〜1500sとするステップと
を含む。
【0014】
上記テクスチャリング添加剤と上記テクスチャリング方法を用いてシリコンウェハの表面をテクスチャリングした後、シリコンウェハの表面全体の色合いが均一で、シリコンウェハの表面にサイズが約1〜6μmである均一に被覆されたピラミッドが形成されている。
【発明の効果】
【0015】
本発明の利点と有用な効果は、単結晶シリコンウェハのテクスチャリング面の製作に用いる場合に、大量のイソプロパノール又はエタノールを使用する必要がなく、テクスチャリング液の化学的酸素要求量が大幅に低くなり、また、均一で細かくて密集しているテクスチャリング面ピラミッドを得ることができるので、テクスチャリングコストを低減し、環境汚染を減少することができ、結晶シリコン太陽電池の製造工程の安定化に有利であり、優れた実用価値を有している単結晶シリコンウェハのテクスチャリング添加剤及びその使用方法を提供することにある。
【0016】
このテクスチャリング添加剤及び使用方法を用いてテクスチャリングした後、テクスチャリング面ピラミッドのサイズが細かくて、均一に分布しており、電池ウェハの歩留まりが高くなり、電池ウェハの充填因子が増大し、太陽電池ウェハの光電変換効率が高くなった。なお、本発明のテクスチャリング添加剤は、イソプロパノール又はエタノールを含有せず、毒性、腐食性、刺激性がなく、燃焼や爆発の危険性がなく、更に環境汚染を回避でき、また、テクスチャリング添加剤の製造や使用のプロセスが簡単で、装置が安価で、繰り返し性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明に係る実施例3で得られたシリコンウェハ表面のテクスチャリング面の走査型電子顕微鏡平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面と実施例を参照しながら、本発明の具体的な実施形態を更に説明する。以下の実施例は本発明の技術的解決手段をより明らかに説明するためのものに過ぎず、それによって本発明の保護範囲を限定するわけではない。
【0019】
本発明の具体的な実施形態は以下のとおりである。
実施例1
【0020】
(A)1gのポリエチレングリコール−600、0.1gの安息香酸ナトリウム、1gのクエン酸、1gの加水分解ポリ無水マレイン酸、0.1gの酢酸ナトリウムを脱イオン水に加え、100gのテクスチャリング添加剤溶液を調製するステップと、
(B)250gのNaOHを脱イオン水に溶解し、50kgのアルカリ溶液を得、ステップ(A)で製作された100gのテクスチャリング添加剤をアルカリ溶液に溶解し、テクスチャリング液を調製するステップと、
(C)単結晶シリコンウェハをステップ(B)で製作されたテクスチャリング液にディッピングして表面をテクスチャリングするステップであって、テクスチャリング温度を75℃とし、テクスチャリング時間を1500sとするステップと、
を利用した単結晶シリコンウェハのテクスチャリング方法である。
実施例2
【0021】
(A)20gのポリエチレングリコール−200、2gの安息香酸ナトリウム、5gのクエン酸、5gの加水分解ポリ無水マレイン酸、1gの酢酸ナトリウムを脱イオン水に加え、100gのテクスチャリング添加剤溶液を調製するステップと、
(B)60gのNaOHを脱イオン水に溶解し、2kgのアルカリ溶液を得、ステップ(A)で製作された100gのテクスチャリング添加剤をアルカリ溶液に溶解し、テクスチャリング液を調製するステップと、
(C)単結晶シリコンウェハをステップ(B)で製作されたテクスチャリング液にディッピングして表面をテクスチャリングするステップであって、テクスチャリング温度を90℃とし、テクスチャリング時間を500sとするステップと、
を利用した単結晶シリコンウェハのテクスチャリング方法である。
実施例3
【0022】
(A)15gのポリエチレングリコール−400、1gの安息香酸ナトリウム、2.5gのクエン酸、3gの加水分解ポリ無水マレイン酸、0.5gの酢酸ナトリウムを脱イオン水に加え、100gのテクスチャリング添加剤溶液を調製するステップと、
(B)100gのKOHを脱イオン水に溶解し、10kgのアルカリ溶液を得、ステップ(A)で製作された100gのテクスチャリング添加剤をアルカリ溶液に溶解し、テクスチャリング液を調製するステップと、
(C)単結晶シリコンウェハをステップ(B)で製作されたテクスチャリング液に溶解して表面をテクスチャリングし、テクスチャリング温度を80℃とし、テクスチャリング時間を700sとするステップと、
を利用した単結晶シリコンウェハのテクスチャリング方法である。
【0023】
図1は本実施例3で得られたシリコンウェハ表面のテクスチャリング面の走査型電子顕微鏡平面写真を示しており、図から分かるようにシリコンウェハの表面に均一に被覆されたピラミッドが形成されており、ピラミッドの被覆率が高く、サイズが小さく、約1〜4μmとなっている。
【0024】
以上に述べたのは本発明の好ましい実施形態に過ぎず、当業者にとって、本発明の技術原理から逸脱しない限り、多数の変形を行ってもよいが、これらの変形例も本発明の保護範囲に含まれる。上記の百分率は特に断りの無い限り質量百分率である。
【国際調査報告】