(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2016-532477(P2016-532477A)
(43)【公表日】2016年10月20日
(54)【発明の名称】オクルーダー
(51)【国際特許分類】
A61B 17/00 20060101AFI20160926BHJP
【FI】
A61B17/00 500
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-521766(P2016-521766)
(86)(22)【出願日】2014年10月6日
(85)【翻訳文提出日】2016年6月2日
(86)【国際出願番号】EP2014071327
(87)【国際公開番号】WO2015052125
(87)【国際公開日】20150416
(31)【優先権主張番号】13188121.1
(32)【優先日】2013年10月10日
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】504296275
【氏名又は名称】カラク アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】特許業務法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ビート ウィドマー
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス メルマン
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160DD03
4C160DD55
4C160DD65
4C160MM33
(57)【要約】
循環系における通路を閉鎖するためのオクルーダーであって、該オクルーダーは、
−少なくとも1つの、前記通路を閉鎖するための閉塞体(4,5)、
−前記通路内で前記閉塞体(4,5)を固定するための少なくとも1つの固定構造に拡張させ、それによって前記閉塞体(4,5)を拡張することができる拡張ユニットを形成する複数の細長部材(1)、該細長部材(1)は前記少なくとも1つの閉塞体(4,5)を貫通し、
−前記拡張ユニットを拡張した状態でロックするためのロックユニット(2,3)、及び
−前記細長部材(1)と前記少なくとも1つの閉塞体(4,5)との間の相対的な動きを制限するための複数の固定ブッシュ(10)、各固定ブッシュ(10)は1つの単一の細長部材(1)を取り囲み、前記少なくとも1つの閉塞体(4,5)のうちの1つと隣接する、
を備え、
前記オクルーダーは、さらに少なくとも1つの糸(11,12)を備え、これらの各固定ブッシュ(10)の少なくとも1つが前記少なくとも1つの閉塞体(4,5)に、この少なくとも1つの糸(11,12)で固定され、該糸は前記ブッシュ(10)及び前記閉塞体(4,5)を貫通していることを特徴とする。このオクルーダーは、小さなブッシュが人体又は動物体内で動き回ることができないこと、及びすでに保護ジャケットを備えるオクルーダーをさらに改善することを確実にする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
循環系における通路を閉鎖するためのオクルーダーであって、該オクルーダーは、
−少なくとも1つの、前記通路を閉鎖するための閉塞体(4,5)、
−前記通路内で前記閉塞体(4,5)を固定するための少なくとも1つの固定構造に拡張させ、それによって前記閉塞体(4,5)を拡張することができる拡張ユニットを形成する複数の細長部材(1)、該細長部材(1)は前記少なくとも1つの閉塞体(4,5)を貫通し、
−前記拡張ユニットを拡張した状態でロックするためのロックユニット(2,3)、及び
−前記細長部材(1)と前記少なくとも1つの閉塞体(4,5)との間の相対的な動きを制限するための複数の固定ブッシュ(10)、各固定ブッシュ(10)は1つの単一の細長部材(1)を取り囲み、前記少なくとも1つの閉塞体(4,5)のうちの1つと隣接する、
を備え、
前記オクルーダーは、さらに少なくとも1つの糸(11,12)を備え、これらの各固定ブッシュ(10)の少なくとも1つが前記少なくとも1つの閉塞体(4,5)に、この少なくとも1つの糸(11,12)で固定され、該糸は前記ブッシュ(10)及び前記閉塞体(4,5)を貫通していることを特徴とするオクルーダー。
【請求項2】
前記少なくとも1つの閉塞体(4,5)が、複数の開口を有し、各開口が前記細長部材(1)の1つ(one single)によって貫通され、前記少なくとも1つの糸(11,12)がこれらの開口を通って前記閉塞体を貫通することを特徴とする請求項1に記載のオクルーダー。
【請求項3】
前記少なくとも1つの糸(11)が、各ブッシュ(10)の周囲でループを形成することを特徴とする請求項1又は2に記載のオクルーダー。
【請求項4】
前記少なくとも1つのブッシュ(10)の各々が、別個の糸(11,12)で前記閉塞体(4,5)に固定されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のオクルーダー。
【請求項5】
各糸(11)が閉じたループを形成していることを特徴とする請求項4に記載のオクルーダー。
【請求項6】
各糸(12)が第1の自由端(121)及び第2の自由端(122)を有するストランド(120)を有し、前記第1の自由端(121)が前記少なくとも1つのブッシュ(10)の一方の側に配置され、前記第2の自由端(122)が前記少なくとも1つのブッシュ(10)の第2の、反対側に配置され、前記第1及び第2の自由端(121,122)がその間の前記ストランド(120)よりも厚いことを特徴とする請求項4に記載のオクルーダー。
【請求項7】
前記第1の自由端(121)及び前記第2の自由端(122)が膨らみであることを特徴とする請求項6に記載のオクルーダー。
【請求項8】
前記オクルーダーが、前記細長部材(1)を少なくとも部分的に包むジャケット(6,7)を備えることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のオクルーダー。
【請求項9】
前記ジャケット(6,7)が少なくとも1つの前記固定構造を包むことを特徴とする請求項8に記載のオクルーダー。
【請求項10】
前記ジャケット(6,7)が前記少なくとも1つの閉塞体(4,5)に取り付けられていることを特徴とする請求項8又は9に記載のオクルーダー。
【請求項11】
前記少なくとも1つのブッシュ(10)が前記ジャケット及び前記少なくとも1つの閉塞体(4,5)によって規定される空間に配置され、好ましくは全てのブッシュ(10)が前記ジャケット及び前記少なくとも1つの閉塞体(4,5)によって規定される空間の中に配置されることを特徴とする請求項10に記載のオクルーダー。
【請求項12】
前記オクルーダーが、厳密に2つの固定構造を備えることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載のオクルーダー。
【請求項13】
前記オクルーダーが、厳密に2つの外側ジャケット(6,7)及び少なくとも2つの固定構造を備え、各ジャケット(6,7)が前記固定構造の1つを包み、前記2つのジャケットが別の固定構造を包むことを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載のオクルーダー。
【請求項14】
前記オクルーダーが、厳密に第1及び第2の閉塞体(4,5)を備え、拡張していない状態で、前記第1及び第2の閉塞体(4,5)が、互いに離れて配置され、第1の前記固定構造が前記第1の閉塞体(4)と前記ロックユニット(2,3)の前記第1の要素との間に配置され、第2の前記固定構造が前記第2の閉塞体(5)と前記ロックユニット(2,3)の前記第2の要素との間に配置されることを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載のオクルーダー。
【請求項15】
前記少なくとも1つの閉塞体(4,5)が柔軟なシートであることを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載のオクルーダー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、循環系における通路を閉鎖するためのオクルーダーに関し、より詳細には、例えば、心臓の心房中隔若しくは心室中隔を通る孔、又は体内導管内の孔等の、人体の体内通路を閉塞するための、オクルーダーに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、循環系における通路を閉塞するためにうまく機能するインプラントを開示する。このインプラントは、心臓病学のインプラントとしてその特別な用途を有し、これを用いて、例えば、心臓の心房中隔又は心室中隔を通る孔を閉じることができる。これは、体内の所望の位置で展開されるか、又は組み立てられるように配置される。このオクルーダーは、固定構造を形成する複数の細いワイヤー状の細長部材と、体内通路内で固定構造によって拡張される単一の閉塞体、即ち、ディスク状の柔軟な膜を備える。固定構造は開いた状態でロックユニットによりロックされる。このロックユニットは2つのロック要素を備え、閉塞体が開かれると接合される。
【0003】
特許文献2は、同様の原理で動作するが、固定構造によって開かれた2つの閉塞体を備えるオクルーダーを開示する。このオクルーダーは通路の両側をしっかりと閉鎖する。
【0004】
これら2つのオクルーダーは、オクルーダーが開閉でき、従って、固定構造がロックユニットによってその開かれた形状でロックされるまで、体内通路内でその位置を変えることができる利点を有する。しかしながら、細い細長部材が、特に固定構造へと曲げられるときに、壊れないように注意しなければならない。特許文献3で提案されているように、生分解性材料が使用される場合は、材料が溶解される前にインプラントが体内組織に覆われることに注意しなければならない。また、小さなパーツがオクルーダーから離脱して人体の他の部位に運搬され、重篤な傷害を引き起こすおそれがある。さらに、閉塞体の被覆、特にディスク状の膜の被覆が細長部材の被覆よりも速く起こることがわかった。
【0005】
特許文献4は、この問題に対して、保護ジャケット又はシェルを固定構造の周囲に配置することを提案している。このシェルは、ソフトで柔軟な材料で作られ、オクルーダーを導入用シースで動物体又は人体に導入するときに、シェルも圧縮する又は折り畳むことができる。固定構造の部品が壊れてはずれたときに、部品はジャケットによって押しとどめられ、体内を巡ることはない。しかしながら、それでも体内を巡ることがあり得るオクルーダーの部品がある。
【0006】
他の種類のオクルーダーも当業界でよく知られている。しかしながら、以下に記載の先行技術のオクルーダーは上記利点を有していない。
【0007】
特許文献5は、閉塞体を形成する2つのシートとワイヤーアームを備えるセール状のオクルーダーを開示している。ワイヤーアームは先端がシートに縫い付けられて終わっている。
【0008】
特許文献6は、2つのシート状の閉塞体及び開いた構造を形成する細長部材を示し、細長部材がシート上に縫い付けられている。
【0009】
特許文献7では、シートは終端部も備える細長部材に縫い付けられている。
【0010】
構造体によってアームをシートに取り付けることも特許文献8及び9に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】US6488706
【特許文献2】WO2005/074813
【特許文献3】US2003/0149463
【特許文献4】WO2012/156415
【特許文献5】WO03/061481
【特許文献6】WO2003/062711
【特許文献7】WO2010/129511
【特許文献8】WO2004/067538
【特許文献9】US2005/034723
【発明の概要】
【0012】
従って、本発明の目的は、改良されたオクルーダーを提供することである。
【0013】
この目的は請求項1に記載のオクルーダーで達成される。
【0014】
本発明の循環系の通路を閉鎖するためのオクルーダーは、
−少なくとも1つの、前記通路を閉鎖するための閉塞体、
−前記通路内で前記閉塞体を固定するための少なくとも1つの固定構造に拡張させ、それによって前記閉塞体を拡張することができる拡張ユニットを形成する複数の細長部材、該細長部材は前記少なくとも1つの閉塞体を貫通し、
−前記拡張ユニットを拡張した状態でロックするためのロックユニット、及び
−前記細長部材と前記少なくとも1つの閉塞体の間の相対的な動きを制限するための複数の固定ブッシュ、各固定ブッシュは1つの単一の細長部材を取り囲み、前記少なくとも1つの閉塞体のうちの1つと隣接する、
を備え、
前記オクルーダーは、さらに少なくとも1つの糸を備え、これらの各固定ブッシュの少なくとも1つが前記少なくとも1つの閉塞体に、この少なくとも1つの糸で固定され、該糸は前記ブッシュ及び前記閉塞体を貫通していることを特徴とする。好ましくは、これらのブッシュの各々が、少なくとも1つの閉塞体の1つに固定されている。
【0015】
細長部材はフィラメント、糸又はワイヤーであることが好ましい。少なくとも1つの閉塞体を貫通する細長部材はオクルーダーの取り扱いを容易にする。固定構造は特許文献4,特許文献2及び特許文献1からわかるように形成することができる。好ましい実施形態では、本発明のオクルーダーは同じ種類、即ち、1つ又は2つの閉塞体、同じロックユニット及び細長部材を有している。細長部材は、その反対側の端部が一緒になっているときはロゼット形状の固定構造中に曲げられ、ねじこまれている。
【0016】
少なくとも1つの閉塞体を細長部材に接続するブッシュは閉塞体に縫い付けられているので、細長部材が壊れたときでも、これらのブッシュは閉塞体に固定されたままである。ブッシュは動物体又は人体を巡ることはできない。これはオクルーダーの安全性を改善する。何故なら、特にこのような小さい、及び極めて小さい部品が動物体又は人体のどこかにさまよう可能性があるからである。ブッシュは極小さいため、容易に見つけることができず、深刻な危害を起こし得る。
【0017】
本発明の好ましい実施形態では、少なくとも1つの閉塞体は複数の開口を備え、各開口は細長部材の1つによって貫通されており、少なくとも1つの糸がこれらの開口を通って閉塞体を貫通している。これは製造を簡素化する。例えば、特許文献4、特許文献2及び特許文献1に記載されている閉塞体も同様に、本発明のオクルーダーに用いることができる。
【0018】
本発明の好ましい実施形態では、少なくとも1つの糸が各ブッシュの周囲でループを形成する。
【0019】
糸は、例えば、その2つの端部で、結び目を作ることによって終わることができる。糸の2つの端部又は2つのストランド(strand)は、一緒に接着されてもよいし、又は溶接されてもよい。
【0020】
複数のブッシュは同じ糸で閉塞体に取り付けられてもよい。しかしながら、好ましい実施形態では、各ブッシュは別の糸で閉塞体に固定される。
【0021】
本発明の好ましい実施形態では、ループは閉じられており、各糸は閉じたループを形成している。
【0022】
本発明の別の好ましい実施形態では、各糸は、第1の自由端及び第2の自由端を有するストランドを備える。第1の自由端はブッシュの一方の側に位置し、第2の自由端は当該ブッシュの第2の、反対側に位置する。第1及び第2の自由端はその間のストランドよりも厚い。好ましくは第1の自由端及び第2の自由端は膨らみである。例えば、これらの膨らみはストランドの端部を結ぶことによって、又はそれらが縮んで膨らみになるまで端部を加熱することによって得られる。
【0023】
ブッシュに好ましい材料は、白金−イリジウム等の金属、又はポリマーとBaS(硫化バリウム)のブレンド等の分解可能であるがX線可視材料からなることが好ましい。縫糸は非分解性ポリマー(例えば、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエステル)からなることが好ましい。
【0024】
オクルーダーの固定は、オクルーダーが、少なくとも幾つかのオクルーダーの部品を取り囲むシェル、シース又はジャケットを備える場合でも改良され得る。下記で、ジャケットという語句を用いるが、それはシェル、シース又は類似のものも意味する。外側ジャケットは、複数の又は全ての細長部材、即ち、細長部材の束を包んでいることが好ましい。
【0025】
好ましくは、ジャケットは少なくとも部分的に細長部材を包み、より好ましくは、ジャケットは少なくとも1つの固定ユニットを包む。好ましくは、固定構造が形成される前;即ち、オクルーダーが開かれる前でも、ジャケットは常に拡張ユニットのこの部品の周囲に配置される。本書の導入部分で既に述べたように、この種のオクルーダーは包まれた壊れた部品が人体又は動物体を巡ることを防止する。空洞が凝固した血液又は構造化された組織で満たされたジャケットを有する場合でも、固定構造は埋め込まれ、壊れた部品がさまようことがない。
【0026】
好ましい実施形態では、ジャケットは少なくとも1つの閉塞体に取り付けられているので、それらが一緒になって、ほぼ又は殆ど閉じた部屋を形成する。好ましくは、少なくとも1つのブッシュは、ジャケットと少なくとも1つの閉塞体で規定されるこの空間又は部屋に配置される。好ましくは、全てのブッシュがこの空間又は部屋の中に配置される。
【0027】
1つの単一の閉塞体及び厳密に2つの固定構造のみが存在してもよい。好ましい実施形態では、オクルーダーは厳密に2つの固定構造及び厳密に2つの閉塞体を備える。好ましくは、厳密に2つの外側ジャケットが存在し、各ジャケットは固定構造の一方を包む。
【0028】
好ましい実施形態では、オクルーダーは厳密に第1及び第2の閉塞体を備える。非拡張状態では、第1及び第2の閉塞体は互いに一定の距離をもって配置されている。第1の該固定構造は、第1の閉塞体とロックユニットの第1の要素の間に配置され、第2の該固定構造は、第2の閉塞体とロックユニットの第2の要素の間に配置される。
【0029】
好ましくは、少なくとも1つの閉塞体は柔軟なシートであり、各閉塞体は好ましくは別個のシートである。
【0030】
好ましい実施形態では、ジャケットは、オクルーダーの長手方向軸の周りのジャケットの外周の中で固定構造を取り囲む。ジャケットは目の詰まった材料から作ることができ、又は開口を有していてもよい。例えば、ジャケットはネット、編地、織物、不織布、流延膜、又は人工組織若しくは生物組織であってもよい。組織細胞は固定構造の材料よりもジャケットの材料を好むので、ジャケット、シース又は外皮の表面構造は、オクルーダー及び組織の内皮化又は被覆を促進する。このことは、固定構造がその形状を人体又は動物体内の通路の周囲組織に適応させる実施形態では特に、オクルーダーの被覆を促進する。
【0031】
ジャケットに好ましい材料は、ポリエステル又はPLA,PLLA,PGA,PLGA若しくはP4HB等の分解性ポリマー、又はこれらのポリマー材料のブレンドである。固定構造に好ましい材料は、金属又はPLA,PLLA,PGA,PLGA若しくはP4HB等の分解性ポリマー、又はこれらのポリマー材料のブレンドである。閉塞体は、ジャケットと同じ材料で作られていることが好ましい。しかしながら、閉塞体は異なる材料で作られてもよい。閉塞体に好ましい材料は、ポリエステル又はPLA,PLLA,PGA,PLGA若しくはP4HB等の分解性ポリマー、又はこれらのポリマー材料のブレンドである。閉塞体は、柔軟なシートで作られていることが好ましい。好ましくは、閉塞体は開かれたときに円形のディスク状の形状を有することが好ましい。
【0032】
2つのジャケットを有するオクルーダーを用いる場合、ジャケットは異なる材料で作られてもよい。例えば、ジャケットの一方が生分解性であってもよく、他方は生分解性ではない。同じことが固定構造及び閉塞体にも当てはまる。
【0033】
ジャケットが生分解性材料で作られる場合、固定構造も生分解性材料で作られることが好ましい。好ましい実施形態では、ジャケットの分解速度は固定構造の1つよりも小さく、固定構造が十分に溶解されるか、又はオクルーダーが被覆されるまで固定構造はジャケットによって保護される。
【0034】
好ましくは、拡張ユニットは被覆ジャケットに対して動くことができる。このように、拡張される間、妨げられることなく、固定構造はそのシェル内で組み立てられてもよい。
【0035】
好ましくは、ジャケットは少なくとも幾つかの細長部材に取り付けられている。細長部材はそれぞれ長手方向軸を有し、細長部材はそれらの対応する長手方向軸の方向でジャケットに対して動くことができる。このように、固定構造は拡張される間、邪魔されることはないが、組み立てられるときにジャケットが安全に固定構造を取り囲むことを確実にする。少なくとも幾つかの長手方向部材の上にジャケットを縫い付けることは、固定するための1つの簡単な方法であるが、固定構造とジャケットの間の接続はまだ緩い。
【0036】
好ましい実施形態では、固定構造はジャケット内で開かれるが、ジャケットの材料を貫通しない。
【0037】
好ましくは、ジャケットは閉塞体に取り付けられている。閉塞体はジャケットの一方の側を形成することができる。好ましい実施形態では、閉塞体は円周の縁を有し、ジャケットはこの縁に固定される。この取り付けは漏れ止めである必要はなく、穴又は開口を有してもよい。例えば、ジャケットは閉塞体上に縫い付けられてもよいし、閉塞体上に溶接されてもよいし、閉塞体に接着されてもよいし、他の結合であってもよい。閉塞体及びジャケットを1つの単一の部品として作ることもできる。しかしながら、全ての実施形態において、オクルーダー、固定構造それぞれが開いたときに、閉塞体が円形の、ほぼ平らなディスク状の形状を有することが好ましい。ジャケットと閉塞体は柔軟な材料で作られることが好ましく、閉塞体及びジャケットは折り畳まれた状態に圧縮できる。
【0038】
本発明のさらなる実施形態は、従属請求項に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0039】
本発明の好ましい実施形態を、図面を参照しながら以下に説明する。図面は本発明の好ましい実施形態を説明する目的のためのものであり、本発明を限定するものではない。図面において、
【
図1】
図1は、第1の実施形態で開いた状態の本発明のオクルーダーの部分断面図を示す。
【
図4】
図4は、殆ど完全に圧縮された状態の第2の実施形態のオクルーダーを示す。
【
図5】
図5は、部分的に展開又は開いた状態の
図4のオクルーダーの斜視図を示す。
【
図6】
図6は、
図5のオクルーダーの部分的な縦断面図を示す。
【
図10】
図10は、第1の実施形態の本発明のオクルーダーの写真を示す。
【
図11】
図11は、本発明の第3の実施形態の部分拡大斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0040】
好ましい実施形態のオクルーダーは、特許文献4に開示されたインプラントに基づく。しかしながら、それは、特許文献2に開示されたオクルーダー、即ち、取り囲むジャケットが無いオクルーダーにも基づくこともできる。それはまた、特許文献1及び特許文献3に記載されたオクルーダー、即ち、単一の閉塞体を有するオクルーダーにも基づくこともできる。本発明のオクルーダーはまた、別の形状を有することもできるし、以下に記載する別の様式で機能することもできる。
【0041】
オクルーダーは、体内通路、例えば、心臓の心房中隔若しくは心室中隔の孔、左心耳、又は閉鎖することを望む他の人体又は動物体の管を閉じるためのインプラントとして好適に用いられる。インプラントは体内への挿入のために圧縮可能である。この挿入には、配送機構を用いる。例えば、配送機構は、導入シース、2つの配送カテーテル及びガイドワイヤーを備える。オクルーダーは、身体の静脈若しくは動脈、又は体内の管に導入され、意図する閉鎖場所の位置に到達したときに循環系の通路を閉鎖するために展開可能であるか又は広げることができる。
【0042】
図1〜3は、本発明の第1の実施形態を示し、
図4〜8は第2の実施形態を示す。しかしながら、その違いは細長部材1のジャケット6,7への縫い付け方のみである。縫糸は参照番号8で示し、ひと針ずつ(stitch)を参照番号80で示す。従って、これらの2つの実施形態は、以下で一緒に説明し、全体の開示は両方の実施形態に適用でき、2つの実施形態の間でさらに区別することはない。
【0043】
オクルーダーは、
図1〜3でわかるように、少なくとも1つの、ここでは2つの閉塞体4,5、拡張ユニット1及びロックユニット2,3を備える。
【0044】
拡張ユニットは複数の細い細長部材1からなる。これらの細長部材1はフィラメント状、ワイヤー状又は糸状である。細長部材は柔軟性を有し、曲げることができるが、それらの長手方向軸の方向には弾力性が無いことが好ましい。細長部材は堅く、伸びないことが好ましい。各細長部材は第1のホルダ2に取り付けられているか又は保持されている第1の端部と、第2のホルダ3に取り付けられているか又は保持されている第2の端部を有する。細長部材1は、互いに別個に配置され、互いに直接に接続しない。即ち、それらは別個のワイヤーであることが好ましく、ネット若しくは他の接続されたものの一部ではないことが好ましい。
【0045】
2つのホルダ2,3が一緒になったとき、細長部材1は長手方向に圧縮される。細長部材は自動的に曲がり、斜めに捻れて、花、プロペラ若しくは傘に似た、2つの円形又はループ形状を形成する。これらの捻れた形状が固定構造を形成する。オクルーダーが移植されると、これらの構造は閉鎖されるべき通路の両側の周囲の組織の上に配置され、この位置でオクルーダーを固定する。
【0046】
2つのホルダ2,3は、この広げられた形状でオクルーダーを固定するロック要素を有し、従って、その形状で固定構造を固定する。1つのロック要素は
図3で最もよくわかる。それは第1のホルダ2のロックステム20であり、これは第2のホルダ3の開口と噛み合わせることができる。
【0047】
第1及び第2の閉塞体4,5は、薄い膜であり、2つのホルダ2,3の間に配置される。閉塞体は、その伸ばされた形状で、円形の、ディスク状で、ほぼ平らであることが好ましい。閉塞体は、柔軟性のある材料で作られているので、導入シース中に導入されるときは折り畳むか又は圧縮することができる。オクルーダーが伸ばされ、展開された状態では、閉塞体は同様に広げられている。好ましくは、閉塞体はほぼ平らなので、閉鎖されるべき通路の周囲の組織と隣接することができる。図面では、閉塞体は非常に堅いように見え、その圧縮され、実際には柔軟性のある形状は写実的には示されていない。特に
図1及び2は、膜4,5及びジャケット6,7(後で説明する)が伸ばされているように理解されるべきではない。さらに、
図4〜7に示されている状態では、2つの膜4,5は写実的にはより多く折り畳まれ、平らなディスク状ではない。実際のオクルーダーは
図10の写真に示される。ジャケット6,7から膜4,5を分けている縫い目60及び70がよく見える。好ましくは、2つの閉塞体4,5はそれぞれが同じ素材で作られ、それぞれが同じサイズ及び形状を有することが好ましい。
【0048】
閉塞体4,5は、オクルーダーの長手方向軸から放射状に延びる。好ましくは、閉塞体はこの軸と同軸に配置される。また、両方の膜は、同一であり、それらが隣接するホルダ2,3との距離が同一であることが好ましい。各閉塞体4,5は中心穴40,50を有する。これらの穴40,50及び2つのホルダ2,3の対応する穴は、オクルーダーが体内通路中に導入シースで導入されるときは、ガイドワイヤー及び2つの配送カテーテルによって貫通されている。
【0049】
閉塞体4,5は、3つの位置で各細長部材1を分割している。第1の位置は、第1のホルダ2と第1の膜4の間である。第2の位置は、2つの膜4,5の間であり、第3の位置は第2の膜5と第2のホルダ3の間である。第1及び第3の位置は、広げられねじられた位置で第1及び第2の固定構造を形成する。第2の位置は、この状態でコイル状の形状を有し、これは
図2で最もよくわかる。好ましくは、少なくとも細長部材1の第1及び第3の位置が同じ長さを有する。
【0050】
本発明によれば、ロゼット様又は花様の各固定構造は、自身の保護ジャケット6,7又はシェルによって個々に取り囲まれている。好ましくはスリーブである第1のジャケット6は、細長部材1の第1の位置の周囲に配置され、第2の、好ましくは同一のジャケット7は細長部材1の第3の位置の周囲に配置される。これは、
図1,4〜7で最もよくわかる。
【0051】
細長部材1は、ジャケット6,7に対して動くことができる。しかしながら、ジャケット6,7の位置を固定するために、それらは常に第1及び第3の位置にかぶさり、ジャケット6,7はこの領域で細長部材1の少なくとも幾つかに緩く取り付けられている。この例での取り付けは、糸8で為されており、ジャケット6,7は細長部材1に縫い付けられる。これは
図5及び10で最もよくわかる。
【0052】
ジャケット6,7自身は、1つの一体部品から作られてもよいし、互いに接続された複数の部品で作られてもよい。この例では、ジャケットは、それぞれ1つの一体部品で作られ、縫い目60,70で膜4,5に縫い付けられている。
【0053】
ジャケット6,7は、膜4,5にも取り付けられており、膜4,5はジャケット6,7の一方の側面を形成する。好ましくは、ジャケット6,7は膜4,5に縫い付けられており、細長部材1が貫通する各側面に小さな中心穴だけが開いた、閉じられた外皮又は柔軟性のあるシェルを形成する。しかしながら、各閉塞体4,5は、展開され開かれたときには、常にほぼ平らな要素を形成することが好ましく、それによって閉塞体4,5は、通路の周囲組織に平らに隣接し、最も適切な仕方で通路を閉鎖することができる。
【0054】
図1及び3で最もよくわかるように、固定構造はジャケット6,7及び膜4,5によって形成されるシェル内に包まれる。それにもかかわらず、固定構造は未だ、閉鎖されるべき通路の解剖学的周囲にその形状を適合させることができる。
図1、4〜7でわかるように、拡張ユニットの部品、即ち、開いた状態で固定構造を形成する細長部材1は、圧縮された状態若しくは部分的に展開された状態で、これらのシェルにも包まれている。
【0055】
本発明のオクルーダーは、閉塞体4,5と細長部材1の間の相対的な動きを防止する新規な方法を有する。閉塞体4,5は、それらの外周に、当該外周縁部から十分な距離に、穴41を備える。各穴41には、1つの単一の細長部材1が貫通する。このことは
図6で最もよくわかる。穴は、互いに均一な距離で配置されることが好ましい。
【0056】
オクルーダーは、固定ブッシュ10も備える。各固定ブッシュ10には、1つの単一の細長部材1が貫通し、ブッシュ10は各細長部材の長手方向軸に対して動くことができないように、細長部材1に固定される。ブッシュ10は、細長部材1の上に圧着されていることが好ましい。
【0057】
ブッシュ10は、膜4,5の第1の面に配置され、この膜4,5と隣接する。この膜の第1の面は、隣接するホルダ2,3及び隣接するジャケット6,7に向いている。
図1でわかるように、ブッシュ10は、膜4,5に縫い付けられている。縫糸11は、細長部材1が通るブッシュ10の穴と同じ穴を貫通し、この穴に隣接する膜4,5を2度貫通する。このことは
図8,9で最もよくわかる。
図8及び9の実施形態で示されるように、縫糸11は、閉じたループを形成してもよい。各ループは別個の糸によって形成される。
【0058】
図11及び12に示される実施形態では、縫糸12はストランド120と、膨らみに形作られた2つの自由端121,122からなる。好ましくは、これらの膨らみは、縫糸12をブッシュ10の貫通穴を通過させた後で形成される。端部を、例えば、加熱するか、又は結んで膨らみを形成することができる。糸は、2度目は膜を貫通しないことが好ましい。
【0059】
膜4,5のブッシュ10は、膜4とジャケット6、及び膜5とジャケット7のそれぞれによって形成される空間又は部屋の中に位置する。このことは
図7で最もよくわかる。ジャケットの外側、即ち、膜4,5の第2の側部上にはブッシュ10は存在せず、縫糸のみである。細長部材が壊れたとき、対応するブッシュ10は、膜に取り付けられたままになる。糸が切れたとき、特にジャケットが既に凝固した血液で満たされている場合でも、ブッシュ10は、依然としてジャケットの中に留まる。
【0060】
たとえジャケットが存在しなくても、細長部材が貫通しているが、膜に縫い付けられた固定ブッシュを有して貫通していることで膜は改良されている。何故なら、極めて小さなブッシュが人体又は動物体内を巡ることはできないからである。
【0061】
もし、ブッシュが膜に非常に強固に縫い付けられていないなら、ブッシュは未だ、膜4,5が細長部材1に沿って極短い距離を動くことを可能にする。これらのブッシュ10は、特に、細長部材がX線に写らない場合、X線マーカーとしても使用できる。
【0062】
本発明のオクルーダーは、極小さなブッシュが人体又は動物体内を巡ることができないことを確実にし、既に保護ジャケットを有するオクルーダーさえも改良する。
【符号の説明】
【0063】
1 細長部材
10 固定ブッシュ
11 固定糸
12 固定糸
120 ストランド
121 第1の自由端
122 第2の自由端
2 第1のホルダ
20 ロックステム
3 第2のホルダ
4 第1の膜
40 中心穴
41 穴
5 第2の膜
50 中心穴
6 第1のジャケット
60 縫い目
7 第2のジャケット
70 縫い目
8 縫糸
80 ステッチ
【国際調査報告】