(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2016-533402(P2016-533402A)
(43)【公表日】2016年10月27日
(54)【発明の名称】自己組織化を促進するための下層組成物及び製造及び使用法
(51)【国際特許分類】
C08L 33/14 20060101AFI20160930BHJP
C08K 5/42 20060101ALI20160930BHJP
C08K 5/17 20060101ALI20160930BHJP
C08F 20/40 20060101ALI20160930BHJP
【FI】
C08L33/14
C08K5/42
C08K5/17
C08F20/40
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2016-517305(P2016-517305)
(86)(22)【出願日】2014年9月24日
(85)【翻訳文提出日】2016年5月18日
(86)【国際出願番号】EP2014070391
(87)【国際公開番号】WO2015044215
(87)【国際公開日】20150402
(31)【優先権主張番号】14/039,809
(32)【優先日】2013年9月27日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】511293803
【氏名又は名称】アーゼッド・エレクトロニック・マテリアルズ(ルクセンブルグ)ソシエテ・ア・レスポンサビリテ・リミテ
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(72)【発明者】
【氏名】ウー・ヘンペン
(72)【発明者】
【氏名】イン・ジャン
(72)【発明者】
【氏名】リン・グァンヤン
(72)【発明者】
【氏名】キム・ジウン
(72)【発明者】
【氏名】シャン・ジエンホゥイ
【テーマコード(参考)】
4J002
4J100
【Fターム(参考)】
4J002BG071
4J002EN136
4J002EV246
4J002EV256
4J002FD156
4J002GP03
4J002HA03
4J100AB02P
4J100AL03P
4J100AL03Q
4J100AL74Q
4J100AL74R
4J100BA02Q
4J100BA02R
4J100CA04
4J100CA05
4J100DA01
4J100FA03
4J100FA04
4J100FA19
4J100JA37
4J100JA38
(57)【要約】
ここに開示されるものは、自己組織化された構造の形成を促進する硬化された下層を堆積するための調合物である。該下層は、(a)次の構造(I)を有する少なくとも一種のペンダントビニルエーテルモノマー繰り返し単位を含むポリマー:
[式中、Rは、H、C
1〜C
4アルキルまたはハロゲンから選択され、そしてWは、C
1〜C
6アルキレン、C
6〜C
20アリーレン、ベンジレンまたはC
2〜C
20アルキレンオキシアルキレンから選択される二価の基である]
(b)任意選択の熱酸発生剤;及び
(c)溶剤、
を含む。また本発明は、該下層を用いてパターンを形成する方法にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自己組織化された構造の形成を促進する下層を堆積するための調合物であって、
(a)次の構造を有する少なくとも一つのペンダントビニルエーテルモノマー繰り返し単位を含むポリマー:
【化1】
[式中、Rは、H、C
1〜C
4アルキルまたはハロゲンから選択され、そしてWは、C
1〜C
6アルキレン、C
6〜C
20アリーレン、ベンジレンまたはC
2〜C
20アルキレンオキシアルキレンから選択される二価の基である]
b)溶剤、
を含む前記調合物。
【請求項2】
熱酸発生剤を更に含み、この熱酸発生剤は好ましくはスルホニウム塩またはヨードニウム塩ではない、請求項1に記載の調合物。
【請求項3】
一種以上の熱酸発生剤が、置換されたもしくは置換されていないハロゲン化アルキル化合物、置換されたもしくは置換されていないアルカンスルホネート、置換されたもしくは置換されていない2−ニトロベンジルスルホン酸エステル、第一級アミンの酸塩、第二級アミンの酸塩、第三級アミンの酸塩、ジカルボキシイミジルスルホン酸エステル、及びオキシムスルホネートエステルからなる群から選択されるか、あるいは一種以上の熱酸発生剤が、トリ−C1−C8−アルキルアンモニウムp−トルエンスルホネート、トリ−C1−C8−アルキルアンモニウムドデシルベンゼンスルホネート、トリ−C1−C8−アルキルアンモニウムパーフルオロブタン−1−スルホネート、トリ−C1−C8−アルキルアンモニウムトリフルオロメタン−スルホネート、1,2,3−トリス(パーフルオロC1−C8アルカンスルホニルオキシ)ベンゼン、1,2,3−トリス(C1−C8アルカンスルホニルオキシ)ベンゼン、1,2,3−トリス(p−トルエンスルホニルオキシ)ベンゼン、4−ニトロベンジル9,10−ジメトキシアントラセン−2−スルホネート、N−ヒドロキシフタルイミドトリフルオロメタン−スルホネート、2−ニトロベンジルトリフルオロメタンスルホネート、4−ニトロベンジルトリフルオロメタンスルホネート、2−ニトロベンジルパーフルオロブタンスルホネート、4−ニトロベンジルパーフルオロブタンスルホネート及び上記の物質の少なくとも一つを含む組み合わせからなる群から選択される、請求項2に記載の調合物。
【請求項4】
ポリマーが、C1〜C10アルキル(メタ)アクリレート、スチレン、ビニルピリジン、ブタジエン、イソプレン、エチレン、プロピレン、α−メチルスチレン、無水イタコン酸、無水マレイン酸、マレイン酸、イタコン酸、ヒドロキシエチルメタクリレート、4−ヒドロキシスチレン、イソボルニルメタクリレート、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、ジメチルシロキサン、エチレンオキシド、エチレン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、及びイソブチレンからなる群から選択される一種以上のモノマー繰り返し単位を更に含む、請求項1〜3のいずれか一つに記載の調合物。
【請求項5】
ポリマーが、ランダムコポリマーである、及び/またはポリマーが、スチレンまたはメチルメタクリレートから選択される一種または二種のモノマー繰り返し単位を更に含む、請求項1〜4のいずれか一つに記載の調合物。
【請求項6】
自己組織化された構造の形成を促進する下層を堆積するための調合物を製造する方法であって、
a.次の成分、
i.次の構造を有する少なくとも一つのペンダントビニルエーテルモノマー繰り返し単位を含むポリマー:
【化2】
[式中、Rは、H、C
1〜C
4アルキルまたはハロゲンから選択され、そしてWは、C
1〜C
6アルキレン、C
6〜C
20アリーレン、ベンジレンまたはC
2〜C
20アルキレンオキシアルキレンから選択される二価の基である]、及び
ii.任意選択の熱酸発生剤;及び
iii.溶剤;
を含む混合物を攪拌し、
但し、前記熱酸発生剤はスルホニウム塩またはヨードニウム塩ではなく、ここで均一な溶液が生成され;及び
b.生じた均一な溶液をフィルターで濾過する、
ことを含む、前記方法。
【請求項7】
一種以上の熱酸発生剤が、置換されたもしくは置換されていないハロゲン化アルキル化合物、置換されたもしくは置換されていないアルカンスルホネート、置換されたもしくは置換されていない2−ニトロベンジルスルホン酸エステル、第一級アミンの酸塩、第二級アミンの酸塩、第三級アミンの酸塩、ジカルボキシイミジルスルホン酸エステル、及びオキシムスルホネートエステルからなる群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
ポリマーが、C1〜C10アルキル(メタ)アクリレート、スチレン、ビニルピリジン、ブタジエン、イソプレン、エチレン、プロピレン、α―メチルスチレン、無水イタコン酸、無水マレイン酸、マレイン酸、イタコン酸、ヒドロキシエチルメタクリレート、4−ヒドロキシスチレン、イソボルニルメタクリレート、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、ジメチルシロキサン、エチレンオキシド、エチレン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、及びイソブチレンからなる群から選択される一種以上のモノマー繰り返し単位を更に含む、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
ポリマーが、ランダムコポリマーである、及び/またはポリマーが、スチレンまたはメチルメタクリレートから選択される一種または二種のモノマー繰り返し単位を更に含む、請求項6〜8のいずれか一つに記載の方法。
【請求項10】
ブロックコポリマーフィルム中に増加されたパターンを誘導する方法であって、
a.二つ以上の自発的に分離するブロックを有するブロックコポリマーを用意し;
b.基材を用意し;
c.第一のコーティングを堆積するための第一の調合物を上記基材上にコーティングし、そして第一のコーティングを熱的に硬化させ;及び
d.硬化した第一のコーティングの少なくとも一部上に、ブロックコポリマーを配置することを含み;
ここで、第一の調合物は、(i)次の構造を有する少なくとも一つのペンダントビニルエーテルモノマー繰り返し単位を含む第一のポリマー
【化3】
[式中、Rは、H、C
1〜C
4アルキルまたはハロゲンから選択され、そしてWは、C
1〜C
6アルキレン、C
6〜C
20アリーレン、ベンジレンまたはC
2〜C
20アルキレンオキシアルキレンから選択される二価の基である]
(ii)任意選択の熱酸発生剤;及び
(iii)溶剤、
を含む、上記方法。
【請求項11】
e.ブロックコポリマーを配置する前に、硬化した第一のコーティング中にリソグラフィプロセスによってパターンを形成し;及び、
f.任意に、第二のポリマーを含む第二の調合物から、上記のパターンに第二のコーティングを提供し、その後、濯ぎ液で濯ぐ、
ことを更に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
第二の調合物が、(i)次の構造を有する少なくとも一つのペンダントビニルエーテルモノマー繰り返し単位を含む第二のポリマー、
【化4】
[式中、Rは、H、C
1〜C
4アルキルまたはハロゲンから選択され、そしてWは、C
1〜C
6アルキレン、C
6〜C
20アリーレン、ベンジレンまたはC
2〜C
20アルキレンオキシアルキレンから選択される二価の基である]
(ii)任意選択の熱酸発生剤;及び(iii)溶剤を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
第一のコーティングがピン止め層であり、第二のコーティングが中性層である、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
第一のポリマーが、C1−C10アルキル(メタ)アクリレート、スチレン、ビニルピリジン、ブタジエン、イソプレン、エチレン、プロピレン、α−メチルスチレン、無水イタコン酸、無水マレイン酸、マレイン酸、イタコン酸、ヒドロキシエチルメタクリレート、4−ヒドロキシスチレン、イソボルニルメタクリレート、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、ジメチルシロキサン、エチレンオキシド、エチレン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、またはイソブチレンから選択される少なくとも一種のモノマー繰り返し単位を更に含み、及び/または第二のポリマーが、複数種のモノマー繰り返し単位の少なくとも一つの組み合わせを更に含み、前記組み合わせが、メチル(メタ)アクリレートとスチレン、ブタジエンとブチル(メタ)アクリレート、ブタジエンとジメチルシロキサン、ブタジエンとメチル(メタ)アクリレート、ブタジエンとビニルピリジン、イソプレンとメチル(メタ)アクリレート、イソプレンとビニルピリジン、ブチル(メタ)アクリレートとメチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレートとビニルピリジン、ヘキシル(メタ)アクリレートとビニルピリジン、イソブチレンとブチル(メタ)アクリレート、イソブチレンとジメチルシロキサン、イソブチレンとメチル(メタ)アクリレート、イソブチレンとビニルピリジン、イソプレンとエチレンオキシド、ブチル(メタ)アクリレートとビニルピリジン、エチレンとメチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレートとブチル(メタ)アクリレート、スチレンとブタジエン、スチレンとブチル(メタ)アクリレート、スチレンとジメチルシロキサン、スチレンとイソプレン、スチレンとビニルピリジン、エチレンとビニルピリジン、ビニルピリジンとメチル(メタ)アクリレート、エチレンオキシドとイソプレン、エチレンオキシドとブタジエン、エチレンオキシドとスチレン、エチレンオキシドとメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとブタジエン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとジメチルシロキサン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとエチレン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとイソブチレン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとイソプレン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとスチレン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとビニルピリジン、(メタ)アクリロニトリルとブタジエン、(メタ)アクリロニトリルとブチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリルとジメチルシロキサン、(メタ)アクリロニトリルとエチレンオキシド、(メタ)アクリロニトリルとエチレン、(メタ)アクリロニトリルとヘキシル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリルと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリルとイソブチレン、(メタ)アクリロニトリルとイソプレン、(メタ)アクリロニトリルとメチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリルとスチレン、または(メタ)アクリロニトリルとビニルピリジンから選択される、請求項10〜13のいずれか一つに記載の方法。
【請求項15】
第一のコーティングが中性層であり、第二のコーティングがピン止め層である、請求項11〜13のいずれか一つに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、誘導自己組織化によるリソグラフィパターン化の分野に属し、より具体的には自己組織化された図形の形成を援助するエネルギー中性及びピン止め下層の分野に属する。
【背景技術】
【0002】
近年、誘導自己組織化技術が、リソグラフィ図形(feature)の生成のために並びに他の幅広い様々な用途のために、溶液から合成されたナノ構造を組織化する有用な手段として登場した。例えば、Thurn−Albrecht et al.,“Ultrahigh Nanowire Arrays Grown in Self−Assembled.Diblock Copolymer Templates”,Science,290,2126,(2000)(非特許文献1)、Black et al.,“Integration of Self−Assembled Diblock Copolymers for Semiconductor Capacitor Fabrication” Applied Physics Letters,79,409,(2001)(非特許文献2)及びAkasawa et al.,“Nanopatterning with Microdomains of Block Copolymers for Semiconductor Capacitor Fabrication”Jpn.J.Appl.Phys.,41,6112,(2002)(非特許文献3)を参照されたい。
【0003】
誘導自己組織化の用途の多くでは、分子相互作用が相分離を誘導しドメインを形成させ、この際、不混和性の極性及び非極性材料が濃縮される。誘導自己組織化用途においては、極性ブロック及び非極性ブロックを有するブロックコポリマーの薄いフィルムであって、前記ブロックが、それらの各々のモル質量に相当する所定の大きさを持つフィルムに特に関心が持たれている。選択された大きさのこれらのブロックは、それらの各々のモル質量と組成を伴った自然の長さスケールを持つドメインを提供する。更に、ブロックコポリマー内での個々のブロックのモル質量を調節することによって、選択された大きさの様々な形状、例えば特定の幅、特定のピッチ及び特定の対称パターン(例えば6角形の密充填アレイまたは並行なライン)のラメラまたはシリンダを生成することができる。
【0004】
エネルギー中性のポリマーを用いて形成されたフィルム層(以下、中性層)が時折使用される。なぜならば、これらは、ポリマーブロックのうち他方に対し一方のブロックに優先的な濡れを示さず、それ故、特定の箇所での特定のドメインの形成を優先的に強制または誘導する傾向がないからである。中性層は、官能化されたポリマーブラシ、使用されるブロックコポリマーに使用されたものと類似の繰り返し単位を有するランダムコポリマー、または使用されるブロックコポリマー中のものと類似のモノマーをそれぞれ有するホモポリマーのブレンドであることができる。
【0005】
ピン止め層は、ブロックのうちの一つ中のモノマーと類似のモノマーを主に持つポリマーでできたフィルム層である。これらは時折使用される。なぜならば、これらは、ポリマーブロックのうち他方に対し一方のブロックに優先的な濡れを示し、それ故、特定の箇所での特定のドメインの形成を優先的に強制または「ピン止め」する傾向があるからである。
【0006】
ブロックコポリマーの薄いフィルム中での自己組織化を誘導するために使用される方法の中には、グラフォエピタキシ及びケミカルエピタキシがある。グラフォエピタキシでは、自己組織化は、トレンチなどの予め形成されたトポグラフィ構造によって誘導される。例えば、中性下層表面と、ブロックコポリマードメインの一方のタイプ(例えば、A−BジブロックコポリマーアセンブリのAドメイン)に優先的に引きつけられる側壁とを有するトポグラフィにパターン化された構造を、トポグラフィによる拘束を介したトレンチ内での自己組織化を誘導するために使用することができる。幅Lのトレンチ及びP
BCPの周期性を持つブロックコポリマー(BCP)を用いた場合には、L/P
BCP倍の周期増倍を残りのドメインに達成できる。
【0007】
ピン止め層または中性層のいずれかに架橋性官能基を導入するために様々な試みがなされており;それの活性化は下層を架橋させ、そして下層とブロックコポリマーとの間の混合を遅らせる。例えば、米国特許第8,226,838号(特許文献1)において、Chengらは、「エポキシベースのホモポリマーまたはコポリマーを含む架橋された有機ポリマー」を含む下層を開示しており、ここでエポキシベースのモノマー繰り返し単位には、エポキシジシクロペンタジエニルメタクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2,3−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、(2,3−エポキシシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート、5,6−エポキシノルボルネン(メタ)アクリレート、及びこれらの少なくとも一種を含む組み合わせが挙げられる。このエポキシベースのモノマーは、スチレン及びメチルメタクリレートなどを包含する様々な他のポリマーの単独または組み合わせと共重合され、各々、要求に応じてピン止め層または中性層を与える。しかし、上記のエポキシベースのモノマー繰り返し単位は、架橋された基材を供するように機能し得るが、これらは、メチルメタクリレートなどのモノマーの相互作用特性のマッチングには効果が弱い。
【0008】
それ故、熱架橋可能な硬化を供し、及びそれと同時に、メチル(メタ)アクリレートと似た表面相互作用特性を供する、ポリマー組成物への要望が残っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第8,226,838号
【特許文献2】米国特許第6,512,020号
【特許文献3】米国特許第3,474,054号
【特許文献4】米国特許第4,200,729号
【特許文献5】米国特許第4,251,665号
【特許文献6】米国特許第5,187,019号
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Thurn−Albrecht et al.,“Ultrahigh Nanowire Arrays Grown in Self−Assembled.Diblock Copolymer Templates”,Science,290,2126,(2000)
【非特許文献2】Black et al.,“Integration of Self−Assembled Diblock Copolymers for Semiconductor Capacitor Fabrication” Applied Physics Letters,79,409,(2001)
【非特許文献3】Akasawa et al.,“Nanopatterning with Microdomains of Block Copolymers for Semiconductor Capacitor Fabrication”Jpn.J.Appl.Phys.,41,6112,(2002)
【発明の概要】
【0011】
本発明は、自己組織化構造の形成を促進する下層を堆積するための調合物に関する。該下層は、(a)次の構造(I)を有する少なくとも一つのペンダントビニルエーテルモノマー繰り返し単位を含むポリマー:
【0012】
【化1】
[式中、Rは、H、C
1〜C
4アルキルまたはハロゲンから選択され、そしてWは、C
1〜C
6アルキレン、C
6〜C
20アリーレン、ベンジレンまたはC
2〜C
20アルキレンオキシアルキレンから選択される二価の基である]
(b)任意選択の熱酸発生剤;及び
(c)溶剤、
を含む。また本発明は、該下層を用いてパターンを形成する方法にも関する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、ブロックコポリマーの誘導自己組織化のためのプロセスに関する。
【
図2】
図2は、ブロックコポリマーの誘導自己組織化のための他のプロセスに関する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
ここで使用する「及び」という接続詞は包括的であることを意図しており、「または」という接続詞は、他に指示が無ければあるいは明らかな場合または文脈上必要な場合以外は、排他的であることを意図していない。例えば、「またはその代わりに」というフレーズは、排他的であることを意図している。更に例えば、「または」という接続詞は、単一の位置での化学置換を記載する時は排他的と解される。本発明で使用する冠詞は、複数も単数も包含すると解される。ここで使用する場合、「コポリマー」という用語は、二種以上のモノマー繰り返し単位を含むものと解され、そして「ポリマー」という用語は、ホモポリマーまたはコポリマーであり得る。ここで使用する場合、「(メタ)アクリル」という接頭語が使用される場合は、「アクリル」または「メタクリル」が意図される。例えば、(メタ)アクリレートは、アクリレートまたはメタクリレートを表し得る。ここで使用する場合、「例示的な」という形容詞は、優先的な意味合いはなく一つの特徴の例示を意味することを意図したものである。アリーレンは、置換されたもしくは置換されていないアリーレンを指し、ここで置換基はアルキルまたはアルキレンであってよく、そしてアリーレンは、フェニレンまたは他の芳香族類を指す。
【0015】
ここに開示されるものは、自己組織化された構造の形成を促進する下層を堆積するための新規調合物である。下層は、ピン止め層または中性層であることができる。該下層は、(a)次の構造(I)を有する少なくとも一つのペンダントビニルエーテルモノマー繰り返し単位を含むポリマー:
【0016】
【化2】
[式中、Rは、H、C
1〜C
4アルキル及びハロゲンからなる群から選択され、そしてWは、C
1〜C
6アルキレン、C
6〜C
20の置換されたもしくは置換されていないアリーレン、及びC
2〜C
20アルキレンオキシアルキレンからなる群から選択される二価の基である]
(b)任意選択の熱酸発生剤;及び
(c)溶剤、
を含む。一つの態様では、熱酸発生剤は、スルホニウムまたはヨードニウム塩ではない。該新規ポリマーはランダムコポリマーである。ポリマー中の構造(I)の割合は、全モノマー性単位に対しポリマー中で、約5〜約25モル%、または約5〜約20モル%、または約10〜約25モル%、または10〜約20モル%の範囲であることができる。
【0017】
ここに更に開示されるものは、自己組織化された構造の形成を促進する下層を堆積するための新規調合物の製造方法である。この方法は、(a)(i)構造(I)を有する少なくとも一つのペンダントビニルエーテルモノマー繰り返し単位を含むポリマー[式中、Rは、H、C
1〜C
4アルキルまたはハロゲンから選択され、そしてWは、C
1〜C
6アルキレン、C
6〜C
20アリーレン、ベンジレンまたはC
2〜C
20アルキレンオキシアルキレンから選択される二価の基である];(ii)任意選択の熱酸発生剤;及び(iii)溶剤を含む混合物を攪拌し、それにより均一な溶液を生成する、ことを含む。一つの態様では、熱酸発生剤は、スルホニウムまたはヨードニウム塩ではない。該方法は、更に、生じた均一な溶液を濾過することを含んでよい。
【0018】
また更にここに開示されるものは、ブロックコポリマーフィルム中に増加されたパターンを誘導する方法であり、該方法は、次のステップ、すなわち(a)二つ以上の自然に分離するブロックを有するブロックコポリマーを供するステップ;(b)基材を供するステップ;(c)該基材上に、第一のコーティングを堆積するための新規の第一の調合物をコーティングし、そしてこの第一のコーティングを熱硬化するステップ;(d)硬化された第一のコーティングの少なくとも一部上にブロックコポリマーを配置するステップ;を含み、ここで第一の新規調合物は、(i)構造(I)を有する少なくとも一つのペンダントビニルエーテルモノマー繰り返し単位[式中、Rは、H、C
1〜C
4アルキルまたはハロゲンから選択され、そしてWは、C
1〜C
6アルキレン、C
6〜C
20アリーレン、ベンジレン、またはC
2〜C
20アルキレンオキシアルキレンから選択される二価の基である];(ii)任意選択の熱酸発生剤;及び(iii)溶剤を含む。一つの態様では、熱酸発生剤は、スルホニウムまたはヨードニウム塩ではない。
【0019】
他の態様の一つでは、ブロックコポリマーフィルムに増加されたパターンを誘導する方法は、更に、ブロックコポリマーを配置する前に、硬化された第一のコーティングにリソグラフィプロセスによってパターンを形成するステップ(e)を含んでよい。該プロセスは、更に、硬化された第一のコーティングのパターンに、第二の調合物から第二のコーティングを供し;及び第二のコーティングを濯ぎ液で濯ぐステップ(f)を含んでよい。
【0020】
ブロックコポリマーフィルムに増加したパターンを誘導するための方法の更に別の態様の一つでは、第一のコーティングはピン止め層であってよく、そして第二のコーティングは中性層であってよい。
【0021】
ブロックコポリマーフィルムに増加したパターンを誘導するための方法の更に別の態様の一つでは、第一のコーティングは中性層であってよく、そして第二のコーティングはピン止め層であってよい。
【0022】
第二のコーティングは、ブラシ型中性ポリマーまたはブラシ型ピン止めポリマーであることができる。第二の層の例は、OHブラシ型中性ポリマー、例えばPSを45〜80モル%含むPMMA−r−PS−OH;OHブラシ型ピン止めポリマー、例えば100%PS−OHであることができ;そして第二の調合物は、(i)構造(I)を有する少なくとも一つのペンダントビニルエーテルモノマー繰り返し単位を含む第二のポリマーを含み、式中、Rは、H、C
1〜C
4アルキルまたはハロゲンから選択され、そしてWは、C
1〜C
6アルキレン、C
6〜C
20アリーレン、ベンジレン、またはC
2〜C
20アルキレンオキシアルキレンから選択される二価の基である。
【0023】
一つの態様では、新規の第一の層調合物の新規ポリマーは、式(1)中、Wが非芳香族系、例えばC
1〜C
6アルキレン、C
2〜C
20アルキレンオキシアルキレン、更に例えばメチレン、エチレン、分岐状もしくは線状プロピレン、分岐状もしくは線状ブチレン、分岐状もしくは線状ペンチレン、分岐状もしくは線状ヘキシレン、CH
2OCH
2,CH
2CH
2OCH
2などで例示される同式のものであることができる。構造(1)のこのコモノマーは、(メタ)アクリレートなどの他のコモノマーと共重合して、自己組織化するブロックコポリマーのブロックのうちの一つに親和性を有する新規ピン止め層を供することができる組成物を形成するピン止めポリマーを提供することができるか、あるいは自己組織化するブロックコポリマーのブロックのうちの一つに親和性を有するスチレン類などのビニル芳香族類のようなコモノマーと共重合することができる。
【0024】
他の態様の一つでは、新規の第一層調合物の新規ポリマーは、構造(1)中、Wが、C
1〜C
6アルキレン、C
6〜C
20アリーレン、ベンジレン、またはC
2〜C
20アルキレンオキシアルキレン、例えばメチレン、エチレン、分岐状もしくは線状プロピレン、分岐状もしくは線状ブチレン、分岐状もしくは線状ペンチレン、分岐状もしくは線状ヘキシレン、CH
2OCH
2、CH
2CH
2OCH
2、CH
2フェニレン、フェニレン、アルキレンpHなどである同式のものであることができる。構造(1)のこのコモノマーは、(メタ)アクリレートなどの他のコモノマーと共重合して、自己組織化するブロックコポリマーのブロックのうちの一つに対して親和性を有する新規のピン止め層を供することができる組成物を形成するピン止めポリマーを提供することができるか、あるいは自己組織化するブロックコポリマーのブロックのうちの一つに対し親和性を有するスチレン類などのビニル芳香族類のようなコモノマーと共重合することができる。
【0025】
上記の開示の新規調合物は、一種以上の成分を適当な溶剤中に溶解し、そして均一な混合物が得られるまで攪拌することによって適切に調製される。ここで、一種以上の成分は、別々に溶解し、そして別個の溶液を一緒にブレンドして調合物とし得ることが理解される。その代わりに、個々の成分の二種以上を溶剤と混合し、そして最後にブレンドしてよい(必要に応じて)。例えば、ポリマー及び熱酸発生剤は、同一かまたは異なってよいそれらの各々の溶剤中に別々に溶解してよく、そして生じた各溶液をブレンド及び攪拌して均一な溶液を得ることができる。更に別の例として、ポリマー及び熱酸発生剤を溶剤または溶剤混合物に加えて、そして均一な溶液が得られるまで攪拌することができる。
【0026】
更に、生じた溶液を濾過して微粒子を除くことも有利であり得る。フィルターの要求されるサイズ等級は、用途や、コストなどの他の要求に依存し得る。例えば、100nm(ナノメーター)以下と格付けされたフィルターに通して調合物を濾過することが有利であり得る。更に別の例として、50nm(ナノメーター)以下と格付けされたフィルターに通して調合物を濾過することが有利であり得る。更に別の例として、40nm(ナノメーター)以下と格付けされたフィルターに通して調合物を濾過することが有利であり得る。更なる例として、10nm(ナノメーター)以下と格付けされたフィルターに通して調合物を濾過することが有利であり得る。更なる例として、5nm(ナノメーター)以下と格付けされたフィルターに通して調合物を濾過することが有利であり得る。また、次第に減少するサイズの複数のフィルターを備えたフィルタートレインを用いて、溶液を段階的な濾過に付すことも有利であり得る。溶剤及び調合物成分に依存してかつ限定されることなく、フィルターは、対称的または非対称的超高密度ポリエチレン、ナイロン、ポリ(テトラフルオロエチレン)、ポリ(ビニリデンフルオライド)、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロプロピルビニルエーテル、パーフルオロメチルビニルエーテル、または類似物から構築してよい。適当なフィルターは、マサチューセッツ州ビルリカのEntegris,Inc.から入手できる。
【0027】
熱酸発生剤は、加熱時に酸を生成することで知られている。このような酸は、ルイス酸またはブレンステッド酸であり得る。後者の酸は、それらの対応するアニオンによって特徴づけされる。それ故、熱酸発生剤は、限定なされないがp−トルエンスルホネート、ドデシルベンゼンスルホネート、パーフルオロアルカンスルホネート、過フッ素化及び部分フッ素化アルコキシアルカンスルホネート、ベンゼンスルホネート及びフッ素化ベンゼンスルホネート、アルカンスルホネート、カンフルスルホネート、ヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアルセネート、ヘキサフルオロアンチモネート、テトラフルオロボレート、ハロゲニド、ホスホネート及び類似物などのアニオンを有する酸を生成し得る。
【0028】
熱酸発生剤のアニオンは、限定はされないが、対イオンとして働く基、例えばスルホニウムまたはヨードニウム塩、アンモニウム塩、及び第一級、第二級もしくは第三級アミンのアンモニウム塩などとペアにすることができる。加えて、アニオン性部分は、エステルまたは他の結合として共有結合していてもよい。例えば、熱酸発生剤は、Asakura et alの米国特許第6,512,020号(特許文献2)に記載のような、o−ニトロベンジルもしくはp−ニトロベンジルエステル、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミジル−N−エステル、例えば5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミジル−N−トリフルオロメタンスルホネートまたは他のジカルボキシイミジルエステル、例えば1,3−ジオキソイソインドリン−2−イル−エステル、または1,3−ジオキソ−1H−ベンゾ[de]イソキノリン−2(3H)−イルエステル、オキシムエステル、例えばオキシムスルホネート、例えば(Z)−2,2,2−トリフルオロ−1−フェニルエタノンO−トリフルオロメチルスルホニルオキシムであることができる。更に、アルカンスルホネートを熱酸発生剤として使用し得る。一般的に、スルホネートなどのオキソ酸アニオンはエステル化するかまたは塩として使用でき、他方で、テトラフルオロボレートなどの非オキソ酸アニオンは、トリメチルアンモニウムテトラフルオロボレートなどの塩として使用し得る。更に、熱酸発生剤は、置換されたもしくは置換されていないハロゲン化アルキル化合物を含んでよい。
【0029】
例示的な熱酸発生剤には、限定はされないが、オニウム塩、ハロゲン含有化合物、パーフルオロベンゼンスルホネートエステル、パーフルオロアルカンスルホネートエステルなどが挙げ得る。非限定的に、上記の調合物のための例示的な熱酸発生剤には、トリ−C
1〜C
8−アルキルアンモニウムp−トルエンスルホネート、トリ−C
1〜C
8−アルキルアンモニウムドデシルベンゼンスルホネート、トリ−C
1〜C
8−アルキルアンモニウムパーフルオロブタン−1−スルホネート、トリ−C
1〜C
8−アルキルアンモニウムトリフルオロメタン−スルホネート、N−ヒドロキシフタルイミドトリフルオロメタン−スルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムパーフルオロ−1−ブタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムパーフルオロ−1−オクタンスルホネート、ビス(フェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミドパーフルオロ−1−ブタンスルホネート、2−ニトロベンジルトリフルオロメタンスルホネート、4−ニトロベンジルトリフルオロメタンスルホネート、2−ニトロベンジルパーフルオロブタンスルホネート、4−ニトロベンジルパーフルオロブタンスルホネート、または上記物質の少なくとも一つを含む組み合わせなどが挙げられる。例には、限定はされないが、第一級、第二級または第三級アミンのアンモニウム塩が挙げられる。或る用途では、幾つかのタイプの熱酸発生剤を排除することが望ましくあり得る。それは、それらの高温特性の故であるか、またはこれらが、特に中性層またはピン止め層中に欠陥を招き得る望ましくない副生成物を後に残す恐れがある故である。これらの例には、スルホニウムまたはヨードニウム塩などが挙げられ得る。次の説明に拘束されることを意図するものではないが、これらの副生成物の少なくとも一部は、フィルム内での不制御の遊離基反応から誘導されるものと考えられる。これとは対照的に、「潜在性酸」の種の他の熱酸発生剤は、ベーク中にフィルムから蒸発する傾向がある揮発性副生成物を生成する。熱酸発生剤は、加熱時に強酸を発生することができる。本発明で使用される熱酸発生剤(TAG)は、ポリマーと反応できそして本発明に存在するポリマーの架橋を伝播できる酸を加熱時に発生する任意の一種以上であることができ、上記の酸は、特に好ましくはスルホン酸類などの強酸である。好ましくは、熱酸発生剤は、90℃超で、より好ましくは120℃超で、更により好ましくは150℃超で活性化される。熱酸発生剤の例は、強非求核酸のアンモニウム、アルキルアンモニウム、ジアルキルアンモニウム、トリアルキルアンモニウム、テトラアルキルアンモニウム塩である。また、共有結合型熱酸発生剤も、有用な添加剤として想定され、例えばアルキルもしくはアリールスルホン酸の2−ニトロベンジルエステル、及び熱分解して遊離のスルホン酸類を与えるスルホン酸の他のエステルなどがある。例は、第四級アンモニウムパーフルオロアルキルスルホネートである。不安定なエステルの例は:2−ニトロベンジルトシレート、2,4−ジニトロベンジルトシレート、2,6−ジニトロベンジルトシレート、4−ニトロベンジルトシレート;ベンゼンスルホネート類、例えば2−トリフルオロメチル−6−ニトロベンジル4−クロロベンゼンスルホネート、2−トリフルオロメチル−6−ニトロベンジル4−ニトロベンゼンスルホネート;フェノール系スルホネートエステル類、例えばフェニル,4−メトキシベンゼンスルホネート;第四級アンモニウムトリス(フルオロアルキルスルホニル)メチド、及び第四級アルキルアンモニウムビス(フルオロアルキルスルホニル)イミド、有機酸のアルキルアンモニウム塩、例えば10−カンフルスルホン酸のトリエチルアンモニウム塩である。様々な芳香族系(アントラセン、ナフタレンまたはベンゼン誘導体)スルホン酸アミン塩をTAGとして使用でき、これには、米国特許第3,474,054号(特許文献3)、米国特許第4,200,729号(特許文献4)、米国特許第4,251,665号(特許文献5)及び米国特許第5,187,019号(特許文献6)に記載のものなどが挙げられる。好ましくは、TAGは、170〜220℃の温度で非常に低い揮発性を有する。TAGの例は、Nacure及びCDXの名称でKing Industriesによって販売されているものである。このようなTAGは、Nacure 5225及びCDX2−2168Eであり、後者は、King Industries、Norwalk、Conn.06852、USAからプロピレングリコールメチルエーテル中25〜30%有効成分含有率で供給されるドデシルベンゼンスルホン酸アミン塩である。
【0030】
層調合物のための適当な溶剤には、限定はされないが、グリコールエーテルアセテート類、エステル類、α−ヒドロキシエステル類、α−アルコキシエステル類、アルコール類、ケトン類、アミド類、イミド類、エーテル類、エーテルエステル類、エーテルアルコール類、芳香族溶剤及び類似物が挙げられる。具体的には、溶剤としては、限定はされないが、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、エチル−3−エトキシプロピオネート、メチル−3−メトキシプロピオネート、ブチルアセテート、アミルアセテート、シクロヘキシルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、3−エトキシエチルプロピオネート、3−エトキシメチルプロピオネート、3−メトキシメチルプロピオネート、メチルアセトアセテート、エチルアセトアセテート、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノエチルエーテルプロピオネート、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、ジアセトンアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、3−メチル−3−メトキシブタノール、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、2−ブタノン、2−ペンタノン、2−ヘキサノン、2−ヘプタノン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、またはテトラメチレンスルホンなどが挙げられ得る。溶媒は単独でまたは混合物として使用してよい。更に、ポリマー合成用の溶剤を、上記のものから選択し得る。
【0031】
上記調合物は、更に、適当な熱硬化剤を含んでよく、これには、限定はされないが、イミダゾール類、第一級、第二級及び第三級アミン、第四級アンモニウム塩、酸無水物、ポリスルフィド、ポリメルカプタン、フェノール類、カルボン酸、ポリアミド、第四級ホスホニウム塩、及びこれらの組み合わせなどが挙げられる。
【0032】
ここで言うポリマーは、ピン止め層であれ中性層であれ、純粋なポリマーまたはブレンドであってよい。更に、ポリマーは、オリゴマー、モノマーまたは他の小分子、例えばレベリング剤、溶解度調節剤、柔軟化剤、可塑剤及び類似物などとブレンドしてよい。加えて、ポリマーはテレケリックポリマーであってよく、これは、限定はされないが、単官能性または二官能性であってよく、ここでポリマー鎖の末端の官能基(複数可)は、限定はされないが、アルコール基、エステル基、カーボネート基、カルボン酸基、ホスホン酸基、スルホン酸基、アミン基、アミドもしくはイミド基、エポキシ基、シリル基、アルコキシシリル基、アルキルシリル基、アミノシラン基、イソシアネート基、チオシアネート基、またはイソチオシアネート基から選択してよい。ピン止め材料及び中性材料中のモノマー繰り返し単位は、選択されるブロックコポリマー中のブロックのうちの一つ中の繰り返し単位と同じかまたは類似のものであってよい。例えば、選択されたブロックコポリマーが(b)−ポリスチレン−(b)−ポリメチルメタクリレートである場合は、ピン止め材料は、構造(I)とスチレンまたはスチレンと類似の成分(例えば4−メチルスチレン)とを含み得るか、構造(1)とメチルメタクリレートまたはメチルメタクリレートと類似のコモノマー(例えばアクリレート)とを含み得る。ここに開示されるポリマーの分子量は、例えば800〜500,000ダルトンであってよい。更なる例として、ピン止め材料中のポリマーの分子量は、2,000〜200,000ダルトンの間であってよい。別の更なる例として、ピン止め材料中のポリマーの分子量は、10,000〜100,000ダルトンの間であってよい。
【0033】
構造(I)のペンダントビニルエーテル繰り返し単位に加えて、ここに開示されるポリマーは、他のモノマー繰り返し単位を含んでよい。これらには、限定はされないが、C
1〜C
10アルキル(メタ)アクリレート、スチレン、ビニルピリジン、ブタジエン、イソプレン、エチレン、プロピレン、α−メチルスチレン、無水イタコン酸、無水マレイン酸、マレイン酸、イタコン酸、ヒドロキシエチルメタクリレート、4−ヒドロキシスチレン、イソボルニルメタクリレート、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、ジメチルシロキサン、エチレンオキシド、エチレン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、またはイソブチレンなどが挙げられる。
【0034】
更に、構造(I)のペンダントビニルエーテル繰り返し単位に加えて、ここに開示されるポリマーは、モノマー繰り返し単位の組み合わせ、例えばメチル(メタ)アクリレートとスチレン、ブタジエンとブチル(メタ)アクリレート、ブタジエンとジメチルシロキサン、ブタジエンとメチル(メタ)アクリレート、ブタジエンとビニルピリジン、イソプレンとメチル(メタ)アクリレート、イソプレンとビニルピリジン、ブチル(メタ)アクリレートとメチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレートとビニルピリジン、ヘキシル(メタ)アクリレートとビニルピリジン、イソブチレンとブチル(メタ)アクリレート、イソブチレンとジメチルシロキサン、イソブチレンとメチル(メタ)アクリレート、イソブチレンとビニルピリジン、イソプレンとエチレンオキシド、ブチル(メタ)アクリレートとビニルピリジン、エチレンとメチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレートとブチル(メタ)アクリレート、スチレンとブタジエン、スチレンとブチル(メタ)アクリレート、スチレンとジメチルシロキサン、スチレンとイソプレン、スチレンとビニルピリジン、エチレンとビニルピリジン、ビニルピリジンとメチル(メタ)アクリレート、エチレンオキシドとイソプレン、エチレンオキシドとブタジエン、エチレンオキシドとスチレン、エチレンオキシドとメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとブタジエン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとジメチルシロキサン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとエチレン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとイソブチレン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとイソプレン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとスチレン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとビニルピリジン、(メタ)アクリロニトリルとブタジエン、(メタ)アクリロニトリルとブチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリルとジメチルシロキサン、(メタ)アクリロニトリルとエチレンオキシド、(メタ)アクリロニトリルとエチレン、(メタ)アクリロニトリルとヘキシル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリルと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリルとイソブチレン、(メタ)アクリロニトリルとイソプレン、(メタ)アクリロニトリルとメチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリルとスチレン、または(メタ)アクリロニトリルとビニルピリジンを含んでよい。
【0035】
重合は、当技術分野で既知のようにフリーラジカル法(適当ならば)によって開始し得る。開始剤には、限定はされないが、ハロゲンダイマー、アゾ化合物、例えばアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、及び1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)(ABCN)、及び有機系過酸化物、例えばジ−tert−ブチルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、メチルエチルケトンパーオキシド、t−ブチルパーオクトエート、及びアセトンパーオキシドなどが挙げられ得る。多くの他の開始剤が、イリノイ州シカゴのAkzo Nobel Polymer Chemicals LLCから入手できる。
【0036】
更に、限定はされないが、重合は、アニオン重合法によって(適当であれば)、リチウムアルキル化合物、リチウムもしくはナトリウムビフェニル、リチウムもしくはナトリウムアントラセン、ナトリウムアミド、カリウムアミド、アルカリ金属アクリロニトリル付加物、及び類似物などの開始剤を用いて開始してもよい。加えて、重合は、Yokotaの特開昭58−225103号公報に開示されるように、アニオン重合とフリーラジカル重合との組み合わせを用いて行うことができる。
【0037】
更に、限定はされないが、重合は、カチオン重合法によって(適当であれば)、限定はされないが塩化アルミニウム、三フッ化ホウ素、五塩化アンチモン、四塩化チタン、塩化亜鉛、及びアルキルアルミニウムジクロライドなどの開始剤を用いても開始し得る。加えて、アルミニウムクロライドとtert−ブチルクロライドなどの組み合わせを使用して、tert−ブチルカルボカチオンを発生させてもよい。
【0038】
自己誘導アセンブリの形成に有用なブロックコポリマーは、アニオン重合または当技術分野で既知の他の重合方法によって製造し得る。本方法での使用に考慮される例示的なブロックコポリマーアセンブリ成分には、少なくとも一種のブロックコポリマーを含む組み合わせも挙げられる。ブロックコポリマーは、ジブロックコポリマー並びにマルチブロックコポリマーであることができる。例示的なジブロックコポリマーには、限定はされないが、ポリ(スチレン−b−ビニルピリジン)、ポリ(スチレン−b−ブタジエン)、ポリ(スチレン−b−イソプレン)、ポリ(スチレン−b−メチルメタクリレート)、ポリ(スチレン−b−アルケニル芳香族類)、ポリ(イソプレン−b−エチレンオキシド)、ポリ(スチレン−b−(エチレン−プロピレン))、ポリ(エチレンオキシド−b−カプロラクトン)、ポリ(ブタジエン−b−エチレンオキシド)、ポリ(スチレン−b−t−ブチル(メタ)アクリレート)、ポリ(メチルメタクリレート−b−t−ブチルメタクリレート)、ポリ(エチレンオキシド−b−プロピレンオキシド)、ポリ(スチレン−b−テトラヒドロフラン)、ポリ((スチレン−alt−無水マレイン酸)−b−スチレン)、ポリ(スチレン−b−ジメチルシロキサン)、及びポリ(スチレン−b−ジメチルゲルマニウムオキシド)などが挙げられる。例示的なトリブロックコポリマーには、ポリ(スチレン−b−メチルメタクリレート−b−スチレン)、ポリ(メチルメタクリレート−b−スチレン−b−メチルメタクリレート)、ポリ((スチレン−alt−無水マレイン酸)−b−スチレン−b−メチルメタクリレート)、ポリ(スチレン−b−ジメチルシロキサン−b−スチレン)、及びポリ(エチレンオキシド−b−イソプレン−b−スチレン)などが挙げられる。例示的なマルチブロックコポリマーは、ポリ(スチレン−b−メチルメタクリレート)nであり、nは1よりも大きい。上記の例示的なブロックコポリマーは、例示としてのみ意図されたものであり、これらに限定されると解釈されるべきではないことは明らかである。
【0039】
該ブロックコポリマーは、ここに開示されるフィルム形成ステップに応じる総合的分子量及び多分散性を有することができ、そのため、ブロックコポリマーアセンブリ中の自然に分離するブロックの形成は熱的に進行し得るか、または溶剤蒸気雰囲気などの相分離を補助し得る条件下に熱的に進行し得る。一つの態様では、ブロックコポリマーは、1,000〜200,000g/モルの数平均分子量(M
n)を有し得る。分子量のM
w及びM
nは両方とも、例えば、ポリスチレン標準に対してキャリブレートした一般のキャリブレーション法を用いてゲル透過クロマトグラフィにより決定できる。更に別の態様の一つでは、ブロックコポリマー中の各々のブロックは、独立して、250〜175,000g/モルの分子量(M
n)を有し得る。更に別の態様の一つでは、ブロックコポリマー中の各々のブロックは、独立して、1.0と2.0と間の多分散性(M
w/M
n)を有し得る。更に別の態様の一つでは、ブロックコポリマー中の各々のブロックは、独立して、1.0と1.5との間の多分散性(M
w/M
n)を有し得る。更に別の態様の一つでは、ブロックコポリマー中の各々のブロックは、独立して、1.0と1.5との間の多分散性(M
w/M
n)を有し得る。更に別の態様の一つでは、ブロックコポリマー中の各々のブロックは、独立して、1.0と1.1との間の多分散性(M
w/M
n)を有し得る。
【0040】
ポリマー層に画像を形成するのに使用されるリソグラフィプロセスには、当技術分野で既知の方法及び放射線種を用いたパターン化方法が含まれ得る。これらには、x線、ソフトx線、極端紫外線、真空紫外線または紫外線範囲の波長を有する光子ビーム、電子ビームまたはイオンビームが挙げられる。当技術分野で既知のフォトレジストを、硬化したポリマーフィルム上にパターンを形成するために選択された放射線に関連して適切に使用し得る。このようなパターンは、プラズマエッチング、反応性イオンエッチング、イオンミリング、または当業界で既知の他の方法などの様々なエッチング技術を用いて、硬化したポリマーフィルム中にエッチングすることできる。リソグラフィにより確定された画像を形成する方法は決定的ではなく、そして他の技術を、ここに添付の特許請求の範囲から逸脱することなく使用し得る。
【0041】
ここに記載の方法を実施できる土台には、半導体製造プロセスでは通例の任意の基材が挙げられる。このような基材には、限定はされないが、半導体基材、例えばケイ素またはケイ素−ゲルマニウム、金属基材、例えばアルミニウムまたは銅、化合物基材、例えば二酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、ケイ化タンタル、ケイ化チタン、窒化チタン、窒化タンタル、またはポリマー、例えば反射防止コーティングなどが挙げられる。
【0042】
本新規組成物を利用した方法の一例を
図1及び2に示す。
【0043】
図1は、該新規組成物を基材(1)上にコーティングし、次いで硬化してピン止め層(2)を形成し;次いでこのピン止め層を、フォトレジスト(3)を用いたリソグラフィプロセスを使用してパターン化して、パターン化されたピン止め層(4)を形成し;パターン化したピン止め層を更に、中性層(5)の第二のコーティングでコーティングし、そして濯ぎ液で濯ぎ、それによって第二のコーティングを、パターン化されたピン止め層の開口部中にのみ堆積し;次いでブロックコポリマー(6)を、第二のコーティングを備えたピン止めパターン化層上にコーティングし、そして加熱してブロックコポリマーを自己組織化させる方法を開示している。次いで、自己組織化されたブロックコポリマーを乾式もしくは湿式エッチングしてパターン(7)を形成する。
図2は、該新規組成物を基材(1)上にコーティングし、次いで硬化して中性層(2)を形成し;次いでこの中性層を、フォトレジスト(3)を用いたリソグラフィプロセスを使用してパターン化して、パターン化された中性層(4)を形成し;任意選択的に、パターン化した中性層を更に、ピン止め層(5)の第二のコーティングでコーティングし、そして濯ぎ液で濯ぎ、それによって第二のコーティングを、中性層の開口部中にのみ堆積し;次いでブロックコポリマー(6)を、第二のピン止めコーティングを備えた中性パターン化層上にコーティングし、そして加熱してブロックコポリマー(7)を自己組織化させる方法を開示している。次いで、自己組織化されたブロックコポリマーを乾式もしくは湿式エッチングしてパターンを形成する。
【0044】
ここに開示されるペンダントビニルエーテルモノマー繰り返し単位は、以下に、合成例1に従いまたは合成例1に類似して合成し得る。
【0045】
上記で触れた文献はそれぞれ、全ての目的に関してその内容の全てが本明細書に掲載されたものとする。以下の具体例は、本発明の組成物を製造及び利用する方法の詳細な例示を与えるものである。しかし、これらの例は、本発明の範囲を如何様にも限定もしくは減縮することを意図したものではなく、本発明を実施するために排他的に利用しなければならない条件、パラメータまたは値を教示するものと解釈するべきではない。
【実施例】
【0046】
ポリマーの分子量は、Water 2695 Alliance Separation Moduleを用いて、またはWaters Dual Wavelength UV Detector、Model 2487もしくは等価品及びWaters Differential Refractometer, Model 2414,Dectector等価品、Shodexカラムセット(一つのShodex GPC KF−801(1.5×10
3)カラム、二つのShodex GPC KF−802(5×10
3)カラム及び一つのShodex GPC KF−804(4×10
5)カラム)を備えた等価品を用いてゲル透過クロマトグラフィで測定した。移動相は、UV安定化THF HPLCグレード品であり、分子量標準は、American Standards Corporation及びMillipore Corporationによって供給されたポリスチレン標準のセットまたは等価品であった。
【0047】
合成例1(2−ビニルオキシエチルメタクリレート(VEMA)の合成)
機械的攪拌機、冷水式凝縮器及び加熱マントルを備えた2Lフラスコ中で、40gのメタクリル酸ナトリウムを300gのジメチルスルホキシド(DMSO)中に懸濁させた。0.35gの4−メトキシフェノールを加えた。この混合物を、窒素ブランケット下に攪拌しながら80℃に加熱した。加熱中、36gの2−クロロエチルビニルエーテルを30分間にわたって加えた。次いで、この反応を80℃で20時間維持した。この反応溶液を室温まで冷却した後、300mlの水中に溶解した0.45gの水酸化ナトリウムを添加し、そしてこの混合物を20分間攪拌した。次いで、約500gのクロロホルムを加え、そして生じた混合物を30分間攪拌した。次いでこの混合物を分液漏斗中に移した。底部層を分離し、廃棄した。クロロホルム層を脱イオン(DI)水で徹底的に洗浄し、そして硫酸ナトリウムで乾燥した。次いで、濾液を室温で回転蒸発に付して、揮発性材料の殆どを除去した。淡色の液体は、プロトンNMRによって2−ビニルオキシエチルメタクリレート(VEMA)と一致した:(CDCl3中):1.98ppm(3H CH3),3.8ppm(2H C(O)CH2CH2−O),4.3ppm(2H C(O)CH2CH2−O),4.0ppm及び4.2ppm(2H OCHCH2),5.5ppm及び6.2ppm(2H CH2=C(CH3)),6.5 ppm(1H OCHCH2)。
【0048】
合成例2(DSAにおけるピン止め用途のためのコポリマーの合成)
合成例1に記載のように製造した3.76gのVEMA、13.6gのメチルメタクリレート(MMA)、0.183gの2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)(AIBN)及び0.3gのn−ドデカンチオールを、磁気スターラーバー及び冷水式凝縮器を備えた200mlのフラスコ中で、38gのジメチルホルムアミド(DMF)中に溶解した。30分間窒素パージした後、このフラスコを60℃の油浴中に入れた。この温度で1時間、重合を行い、そしてこの溶液を室温まで放冷した。反応混合物を攪拌しながら約400mlのメタノール中にゆっくりと注ぎ入れることによってこのポリマー溶液を析出させ、そしてこの析出物を濾過した単離した。生じたポリマーを、20gのテトラヒドロフラン(THF)中に溶解し、そして200mlのメタノール中に析出させることによって精製した。次いで、ポリマーを、重量が一定(4g)となるまで、50℃の減圧炉中で乾燥した。ゲル透過クロマトグラフィは、49,870g/モルのMw及び23,571g/モルのMnを示した。ポリマー中へのVEMAの導入量は、プロトンNMRによって約15モル%と評価された。
【0049】
合成例3(DSAにおける中性層のためのコポリマーの合成)
合成例1に記載のように製造した3.12gのVEMA、4.0gのメチルメタクリレート(MMA)、14.6gのスチレン、0.22gの2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)(AIBN)及び0.46gのn−ドデカンチオールを、磁気スターラーバー及び冷水式凝縮器を備えた200mlのフラスコ中で、41gのテトラヒドロフラン(THF)中に溶解した。30分間窒素パージした後、このフラスコを70℃の油浴中に入れた。この温度で6時間、重合を行い、そしてこの溶液を室温まで放冷した。このポリマー溶液を、攪拌しながら約400mlのメタノール中にゆっくりと注ぎ入れてポリマーを析出させ、そしてこのポリマーを濾過して単離した。ポリマーを、20gのテトラヒドロフラン中に溶解し、そして200mlのメタノール中に析出させることによって精製した。次いで、ポリマーを、重量が一定(5.8g)となるまで、50℃の減圧炉中で乾燥した。ゲル透過クロマトグラフィは、11,929g/モルのM
w及び6,909g/モルのM
nを示した。
【0050】
試験例1(硬化試験)
合成例2から得られたポリマーをPGMEA中に溶解して、1.0重量%溶液を調製した。p−トルエンスルホン酸/トリエチルアミン(熱酸発生剤、TAG)を加えて、ポリマーに対するTAGの割合を1重量%とした。この溶液を、0.2μmPTFEマイクロフィルターで濾過した。この濾過された溶液を、1500rpmで30秒間、8インチケイ素ウェハ上にスピンキャストし、そしてこのコートされたウェハを250℃で窒素下に2分間ベークした。膜厚は、NanoSpecで206.4Åと測定された。このウェハを、PGMEAを用いて30秒間パドルリンスしそして110℃で1分間ベークした。膜厚は207.3Åであり、これは、ポリマーコーティングが、実質的な溶媒からの攻撃に耐えるほどに十分に架橋されたことを示した。
【0051】
試験例2(硬化試験)
合成例3から得られたポリマーをPGMEA中に溶解して、0.9重量%溶液を調製した。p−トルエンスルホン酸/トリエチルアミン(熱酸発生剤、TAG)を加えて、ポリマーに対するTAGの割合を1重量%とした。この溶液を、0.2μmPTFEマイクロフィルターで濾過した。この溶液を、1500rpmで30秒間、8インチケイ素ウェハ上にスピンキャストし、そしてこのコートされたウェハを200℃で空気中で2分間ベークした。膜厚は、NanoSpecで216.3Åと測定された。このウェハを、PGMEAを用いて30秒間パドルリンスしそして110℃で1分間ベークし、膜厚は215.8Åであり、これは、ポリマーコーティングが、実質的な溶媒からの攻撃に耐えるほどに十分に架橋されたことを示した。
【0052】
試験例3(中性ポリマーの試験)
合成例3から得られたポリマーをPGMEA中で溶解して0.9重量%の溶液を調製した。p−トルエンスルホン酸/トリエチルアミン(熱酸発生剤、TAG)を加えて、ポリマーに対してTAGの割合を1重量%とした。この溶液を、0.2μmPTFEマイクロフィルターで濾過した。この溶液を、1500rpmで30秒間、8インチケイ素ウェハ上にスピンキャストし、そしてこのウェハを200℃で空気中で2分間ベークした。膜厚は、NanoSpecで216.3Åと測定された。PGMEA中のポリスチレン−b−ポリ(ポリメタクリレート)(PS標準に対するMn:22,000g/モル、及びPMMAに対するMn:22,000g/モル、PDI:1.02)のジブロックコポリマー溶液を、1500rpmで30秒間、上記のウェハ上にスピンキャストし、そしてこのウェハを、空気中250℃で2分間アニールした。ジブロックポリマーの欠陥の無いフィンガープリント(首尾のよい自己組織化)がNanoSEMで観察された。これは、中性層がこのジブロックポリマーに対し中性であることを示した。
【0053】
試験例4:
15nm厚のSi
3N
4の無機反射防止コーティング(ARC)フィルムを、300mmSiウェハ上に化学蒸着(CVD)を介して堆積した。合成例2から得られたポリマー(ピン止め層)を前記基材上にスピンコートし、そして250℃で窒素下に2分間ベークして硬化した。JSR Corporation,Tokyo,Japan製のJSR AIM8490PTDフォトレジストを1500rpmでコーティングし、そして120℃で60秒間ベークした。193nm液浸リソグラフィツール(ASML NXT−1950iスキャナ、XY偏極NA1.35、σ
o=0.87、σ
i=0.72、ダイポール40)中で露光した後、ポスト露光ベークを100℃で60秒間行い、そして現像した。次いで、これらのサンプルを、O
2及びArプラズマ(圧力:50mtorr、15sccm(O2)、100sccm(Ar)、電力:50W)エッチングステップに付してレジストパターンをトリミングして、プラズマに曝された硬化したポリマー層、すなわちピン止め層を除去した。次いで、残ったレジストを、ガンマバレロラクトン(GVL)及びn−ブチルアクリレート(=70:30)及びPGMEA溶剤の溶剤混合物を室温で用いて、湿式レジストストリップにより除去した。第二の調合物のヒドロキシルで末端キャップしたポリ(スチレン−γ−MMA)をスピンコートし、そして窒素雰囲気中で250℃で2分間アニールした。未反応材料を、プロピレングリコールメチルエーテルアセテートを用いて濯ぎ、そして100℃で60秒間ベークした。PS−b−PMMAブロックコポリマー溶液、例えばAZ Electronic Materials,70 Meister Ave,Somerville,NJから入手可能なAZEMBLY
TM PME−190を、パターン化されたウェハ上にコーティングし、そして250℃で5分間アニールした。上面フィルムの検査は、ブロックコポリマー図形の首尾のよい自己組織化を示した。
【0054】
具体的な例示に基づいて本願の開示を説明及び記載したが、本発明が関連する技術に熟練した者にとって自明な様々な変更及び改変は、添付の特許請求の範囲に記載の発明の趣旨、範囲及び思想内であると思量される。
【手続補正書】
【提出日】2016年8月22日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
ピン止め層または中性層のいずれかに架橋性官能基を導入するために様々な試みがなされており;それの活性化は下層を架橋させ、そして下層とブロックコポリマーとの間の混合を遅らせる。例えば、米国特許第8,226,838号(特許文献1)において、Chengらは、「エポキシベースのホモポリマーまたはコポリマーを含む架橋された有機ポリマー」を含む下層を開示しており、ここでエポキシベースのモノマー繰り返し単位には、エポキシジシクロペンタジエニルメタクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2,3−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、(2,3−エポキシシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート、5,6−エポキシノルボルネン(メタ)アクリレート、及びこれらの少なくとも一種を含む組み合わせが挙げられる。このエポキシベースのモノマーは、スチレン及びメチルメタクリレートなどを包含する様々な他の
モノマーの単独または組み合わせと共重合され、各々、要求に応じてピン止め層または中性層を与える。しかし、上記のエポキシベースのモノマー繰り返し単位は、架橋された基材を供するように機能し得るが、これらは、メチルメタクリレートなどのモノマーの相互作用特性のマッチングには効果が弱い。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0023
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0023】
一つの態様では、新規の第一の層調合物の新規ポリマーは、
構造(1)中、Wが非芳香族系、例えばC
1〜C
6アルキレン、C
2〜C
20アルキレンオキシアルキレン、更に例えばメチレン、エチレン、分岐状もしくは線状プロピレン、分岐状もしくは線状ブチレン、分岐状もしくは線状ペンチレン、分岐状もしくは線状ヘキシレン、CH
2OCH
2,CH
2CH
2OCH
2などで例示される同
構造のものであることができる。構造(1)のこのコモノマーは、(メタ)アクリレートなどの他のコモノマーと共重合して、自己組織化するブロックコポリマーのブロックのうちの一つに親和性を有する新規ピン止め層を供することができる組成物を形成するピン止めポリマーを提供することができるか、あるいは自己組織化するブロックコポリマーのブロックのうちの一つに親和性を有するスチレン類などのビニル芳香族類のようなコモノマーと共重合することができる。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0024
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0024】
他の態様の一つでは、新規の第一層調合物の新規ポリマーは、構造(1)中、Wが、C
1〜C
6アルキレン、C
6〜C
20アリーレン、ベンジレン、またはC
2〜C
20アルキレンオキシアルキレン、例えばメチレン、エチレン、分岐状もしくは線状プロピレン、分岐状もしくは線状ブチレン、分岐状もしくは線状ペンチレン、分岐状もしくは線状ヘキシレン、CH
2OCH
2、CH
2CH
2OCH
2、CH
2フェニレン、フェニレン、アルキレンpHなどである同
構造のものであることができる。構造(1)のこのコモノマーは、(メタ)アクリレートなどの他のコモノマーと共重合して、自己組織化するブロックコポリマーのブロックのうちの一つに対して親和性を有する新規のピン止め層を供することができる組成物を形成するピン止めポリマーを提供することができるか、あるいは自己組織化するブロックコポリマーのブロックのうちの一つに対し親和性を有するスチレン類などのビニル芳香族類のようなコモノマーと共重合することができる。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0032
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0032】
ここで言うポリマーは、ピン止め層であれ中性層であれ、純粋なポリマーまたはブレンドであってよい。更に、ポリマーは、オリゴマー、モノマーまたは他の小分子、例えばレベリング剤、溶解度調節剤、柔軟化剤、可塑剤及び類似物などとブレンドしてよい。加えて、ポリマーはテレケリックポリマーであってよく、これは、限定はされないが、単官能性または二官能性であってよく、ここでポリマー鎖の末端の官能基(複数可)は、限定はされないが、アルコール基、エステル基、カーボネート基、カルボン酸基、ホスホン酸基、スルホン酸基、アミン基、アミドもしくはイミド基、エポキシ基、シリル基、アルコキシシリル基、アルキルシリル基、アミノシラン基、イソシアネート基、チオシアネート基、またはイソチオシアネート基から選択してよい。ピン止め材料及び中性材料中のモノマー繰り返し単位は、選択されるブロックコポリマー中のブロックのうちの一つ中の繰り返し単位と同じかまたは類似のものであってよい。例えば、選択されたブロックコポリマーが(b)−ポリスチレン−(b)−ポリメチルメタクリレートである場合は、ピン止め材料は、構造(I)とスチレンまたはスチレンと類似の
コモノマー(例えば4−メチルスチレン)とを含み得るか、構造(1)とメチルメタクリレートまたはメチルメタクリレートと類似のコモノマー(例えばアクリレート)とを含み得る。ここに開示されるポリマーの分子量は、例えば800〜500,000ダルトンであってよい。更なる例として、ピン止め材料中のポリマーの分子量は、2,000〜200,000ダルトンの間であってよい。別の更なる例として、ピン止め材料中のポリマーの分子量は、10,000〜100,000ダルトンの間であってよい。
【国際調査報告】