(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2016-533448(P2016-533448A)
(43)【公表日】2016年10月27日
(54)【発明の名称】触媒化された基材のための車載式診断システム
(51)【国際特許分類】
F01N 3/20 20060101AFI20160930BHJP
F01N 3/28 20060101ALI20160930BHJP
F01N 3/24 20060101ALI20160930BHJP
【FI】
F01N3/20 C
F01N3/28 301Q
F01N3/24 C
F01N3/24 E
F01N3/28 L
F01N3/28 301G
F01N3/28 301E
F01N3/28 A
F01N3/28 301D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-523200(P2016-523200)
(86)(22)【出願日】2014年10月15日
(85)【翻訳文提出日】2016年6月13日
(86)【国際出願番号】GB2014053091
(87)【国際公開番号】WO2015056004
(87)【国際公開日】20150423
(31)【優先権主張番号】61/891,072
(32)【優先日】2013年10月15日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】590004718
【氏名又は名称】ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ベルジャル, ダヴィド
(72)【発明者】
【氏名】ハッチャー, ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】フィリップス, ポール リチャード
【テーマコード(参考)】
3G091
【Fターム(参考)】
3G091AA17
3G091AA18
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3G091GB17X
3G091HA09
3G091HA10
3G091HA12
3G091HA15
3G091HA16
3G091HA39
(57)【要約】
内燃機関の排気システムのための車載式診断システムは、明らかにされる。システムは、非触媒化領域及び非触媒化領域を有した触媒化された基材、第一のセンサー並びに第二のセンサーを含む。第一のセンサーは、触媒化された基材の非触媒化領域内に位置し、第二のセンサーは、触媒化された基材の非触媒化領域内に置かれる。触媒化された基材の車上診断のための方法もまた、明らかにされる。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)触媒化領域及び非触媒化領域を有する触媒化された基材と;(2)第一のセンサーと;(3)第二のセンサーとを含み、第一のセンサーは触媒化された基材の触媒化領域内に位置し、第二のセンサーは、触媒化された基材の非触媒化領域内に位置する、内燃機関の排気システムのための車載式診断システム。
【請求項2】
触媒化された基材が総体積を有し、非触媒化領域が総体積の25%より小さい体積を有する、請求項1に記載の車載式診断システム。
【請求項3】
非触媒化領域の体積が、触媒化された基材の総体積の10%未満である、請求項1又は2に記載の車載式診断システム。
【請求項4】
触媒化された基材が、入口端及び出口端、並びに入口端から出口端まで延びる軸長を有し、非触媒化領域が、触媒化された基材の入口端から、触媒化された基材の軸長の一部に沿って延びる、請求項1から3の何れか一項に記載の車載式診断システム。
【請求項5】
非触媒化領域が、触媒化された基材の入口端から、触媒化された基材の軸長の60%未満で延びる、請求項4に記載の車載式診断システム。
【請求項6】
非触媒化領域が、触媒化された基材の半径方向長さの100%に沿って延びる、請求項4又は5に記載の車載式診断システム。
【請求項7】
触媒化された基材の下流に位置する追加の酸化触媒を更に含む、請求項1から6の何れか一項に記載の車載式診断システム。
【請求項8】
非触媒化領域が不活性ウォッシュコートでコーティングされる、請求項1から7の何れか一項に記載の車載式診断システム。
【請求項9】
第一のセンサー及び第二のセンサーが、触媒化された基材の軸長に沿って同様の長さで位置する、請求項1から8の何れか一項に記載の車載式診断システム。
【請求項10】
第一のセンサー及び第二のセンサーが、両方とも熱センサーである、請求項1から9の何れか一項に記載の車載式診断システム。
【請求項11】
第一のセンサー及び第二のセンサーが、両方とも熱電対である、請求項1から10の何れか一項に記載の車載式診断システム。
【請求項12】
請求項1から11の何れか一項に記載の車載式診断システムを含む排気システム。
【請求項13】
内燃機関、及び請求項1から11の何れか一項に記載の車載式診断システム又は請求項12に記載の排気システムのどちらか一方、を備える車両。
【請求項14】
内燃機関のための排気システム内の触媒化された基材の車上診断のための方法であって、触媒化された基材が触媒化領域及び非触媒化領域を有し、第一のセンサーが触媒化領域内に位置し、第二のセンサーが非触媒化領域内に位置し、
(a)第一のセンサーで触媒化領域の温度、及び第二のセンサーで、非触媒化領域の温度を測定することと;
(b)触媒化領域の温度と非触媒化領域の温度の間の温度差、を算定することと;
(c)触媒化された基材が診断試験に合格であったか不合格であったかを、合格又は不合格の触媒化された基材について予期される差と温度差を比較することにより決定することと、
を含む方法。
【請求項15】
触媒化された基材が、入口端、出口端、及び入口端から出口端まで延びる軸長を有し、第一の熱センサー及び第二の熱センサーが、触媒化された基材の軸長に沿って同様の長さで位置する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
温度差の比較後、触媒化された基材が、診断試験に不合格であったとき、故障を示す光を発すること、を更に含む、請求項14又は請求項15に記載の方法。
【請求項17】
請求項1から11の何れか一項に記載の車載式診断システムを使用する、請求項14から16の何れか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒化された基材、特にディーゼル酸化触媒、のための車載式診断システム、及び排気システム内の触媒化された基材の車上診断のための方法に関する。本発明は、排気システム及び車両にも関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関は、炭化水素、一酸化炭素、窒素酸化物(“NO
x”)、硫黄酸化物及び微粒子物質、を含む種々の汚染物質を含有する排気ガスを生じる。ますます厳重な、国家及び地域の法規は、そのようなディーゼル又はガソリン機関から排出されうる汚染物質の量を低下させた。種々の触媒成分を含有する排気システムは、それらの低い排出水準に到達するために開発された。
【0003】
それらの排気システムの複雑さの増加に伴い、車上診断は、車両所有者に排気システムの動作条件を理解させるために開発された。自動車の文脈での車上診断(“OBD”)は、適当な電子管理システムに繋がっているセンサーのネットワークにより提供される車両システム、の自己−診断及び性能の報告、を記述するような総称である。OBDシステムの初期の実施例は、もし問題が検出されたならば、単に故障を示す光を点灯するであろう、しかしそれは問題の性質についての情報を提供しない。より現代のOBDシステムは、標準化されたデジタル接続口を使用し、車両システムの迅速な問題同定及び解決を可能にする、標準化された診断トラブルコード及びリアル−タイムデータの選択についての情報、を提供することが可能である。
【0004】
車両からの機関排出物を低下させる一方で、より新しい法規は、規制のスレショルドを超える排出物;例えば、微粒子物質、一酸化炭素、炭化水素及び/又はNO
xの課された制限を上回る水準(典型的には、汚染物質排出物のg/kmにおいて)、の原因となるであろう排出システムの故障又は悪化、の場合に運転者に通知するような車上診断(OBD)の使用を増加することも要求する。車上診断の典型的な方法は、触媒成分の前にセンサー、及び触媒成分の後に別のセンサーを位置決めすること、並びに成分が適切に作動するかどうかを判定するためにセンサー値の差を測定すること、を含む。例えば、米国特許No.6、739、176は、触媒の下流の温度プローブと同様に、触媒の上流及び下流にCOセンサーを位置決めすること、を含む、ディーゼル機関のための排気ガス純化触媒の操作性を確認するための手順、を教示する。米国特許No.4、029、472は、セラミック体が排気ガス気流にさらされる時、接合点の1に隣接した排気ガス酸化触媒が接合点の温度差を提供する、2つの熱電対接合点、を有する、排気ガス中の可燃物の含有量を検出するための熱電センサー、を明らかにする。2つの接合点間の出力差は、排気ガス中の残留可燃物の濃度に比例する。
【0005】
米国特許No.8、127、537は、三元触媒(TWC)及びシングルラムダセンサー、を含む排気システムを明らかにする。TWCは、TWCの残り中の触媒組成物に対して、減少された酸素貯蔵活性を有し、又は酸素貯蔵活性のない、入口端から延びるチャネルの長さの少なくとも一部中の触媒組成物、を有する。シングルラムダセンサーは、減少された酸素貯蔵活性を有し又は酸素貯蔵活性のないTWC組成物と、実質、第一に接触する排気ガスとのみ接触される。米国特許No.8、205、437は、触媒でコーティングされるモノリス基材、及びモノリス基材の外壁により一部定義される穴の中に配備される第一のセンサー、を含む排気システムを教示する。上流端から延びるチャネルの長さの少なくとも一部中の触媒組成物は、触媒組成物が向けられる反応についての、基材の残り中の触媒組成物に対して増加された活性、を有する。センサーは、それが、増加された活性を有する触媒組成物と、実質、第一に接触する排気ガスとのみ接触するように、配置される。米国特許No.8、327、632は、触媒化されたスートフィルター(CSF)、制御装置及び触媒化されたセンサーを有する排気システムも明らかにする。システムは、CSF中のHC及び/又はCOの燃焼、CSFの温度上昇、並びにCSF上に集められる微粒子物質の燃焼の結果として、CSF中に流れ込む排気ガス中の炭化水素(HC)及び/又は一酸化炭素(CO)の含有量を増加させうる。
【0006】
我々は、排気ガス温度の一時的な変化と比較して相対的に小さな、典型的にはディーゼル排気ガスに見られる、発熱によって一層ひどくされる車両排気条件の一時的な性質のために、触媒部品の上流と下流に位置決めされたセンサーが十分に正確ではないことを、見出した。
【0007】
何れの、自動車のシステム及び方法、と同様に、車載式診断システムにおける更なる改良に到達することは、望まれる。我々は、排気システム内の触媒化された基材のための新たな車載式診断システムを発見した。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、内燃機関の排気システムのための車載式診断システムである。車載式診断システムは、触媒化された領域(触媒化領域)及び触媒化されていない領域(非触媒化領域)を有する触媒化された基材、第一のセンサー並びに第二のセンサーを含む。第一のセンサーは触媒化された基材の触媒化領域内に位置し、第二のセンサーは触媒化された基材の非触媒化領域内に位置する。
【0009】
本発明は、触媒化された基材の車上診断のための方法も含む。方法は、第一のセンサーにおける触媒化領域の温度、及び第二のセンサーにおける非触媒化領域の温度を測定することと;温度差を算定することと;触媒化された基材が診断試験に合格であったか不合格であったかを、合格及び不合格の触媒基材について予期される差と温度差を比較することにより決定することと、を含む。方法は、本発明の車載式診断システムを用いて実行されてもよい。
【0010】
本発明は、本発明の車載式診断システムを含む、典型的には、内燃機関又は車両のための、排気システムも提供する。
【0011】
本発明は、更に、内燃機関、及び本発明の車載式診断システム又は本発明の排気システムを、含む車両を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明のある実施態様を示す1A及び比較配置を示す1Bを用いて、ディーゼル酸化触媒基材のための熱センサーの2つの異なる配置を説明する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の車載式診断システムは、触媒化領域及び非触媒化領域を有する触媒化された基材を含む。
【0014】
触媒化された基材は、触媒成分を含有する基材を含む。触媒成分は、典型的には、1以上の無機酸化物及び1以上の金属を含むウォッシュコートである。触媒化された基材は、内燃機関中で形成される排気ガスを、洗浄するための手順において使用される。
【0015】
触媒化された基材の基材は、好ましくはモノリス基材である。モノリス基材は、好ましくは、セラミック基材又は金属基材である。セラミック基材は、何れかの適当な耐火性物質、例えば、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、マグネシア、ゼオライト、シリコン窒化物、シリコン炭化物、ジルコニウムケイ酸塩、マグネシウムケイ酸塩、アルミノケイ酸塩及びメタロアルミノケイ酸塩(菫青石及びリシア輝石のような)、又は混合物又はそれらの何れか2以上の混合酸化物、でできていてもよい。金属基材は、何れかの適当な金属、他の微量金属(典型的には、希土類金属)に加えて、鉄、ニッケル、クロミウム及び/又はアルミニウムを含有するフェライト系合金と同様に、特に、チタン及びステンレス鋼のような金属合金並びに耐熱金属でできていてもよい。
【0016】
基材は、好ましくは、フロースルー基材であり、しかしフィルター基材でもあってもよい。フロースルー基材は、基材を通って軸方向に広がり、基材の至る所に延びる、多くの小さな平行薄肉チャネルを備えたハニカム構造を好ましくは有する。もし基材がフィルター基材であれば、好ましくは、それは、ウォールフローモノリスフィルターである。ウォールフローフィルターのチャネルは、互い違いに塞がれ、そしてそれは、排気ガス気流が入口からチャネルへ入ることと、その後、チャネル壁を通って流れることと、出口へ導く異なるチャネルから出ることと、を可能にする。排気ガス気流中の微粒子は、このようにフィルター中に捕捉される。
【0017】
触媒化された基材上の触媒は、1以上の無機酸化物及び1以上の金属を含む多くの成分を典型的には含むウォッシュコートとして、典型的には基材に加えられる。無機酸化物は、最も一般的に、第2、第3、第4、第5、第13及び第14属元素の酸化物を含む。有用な無機酸化物は、好ましくは、10から700m
2/gの範囲の表面積、0.1から4mL/gの範囲の細孔体積、及び約10から1000オングストロームの細孔直径を有する。無機酸化物は、好ましくは、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、ニオビア、タンタル酸化物、モリブデン酸化物、タングステン酸化物、希土類酸化物(特に、セリア又はネオジウム酸化物)、又は混合酸化物又はそれらの何れか2以上の複合酸化物、例えば、シリカ‐アルミナ、セリア‐ジルコニア又はアルミナ‐セリア‐ジルコニア、であり、ゼオライトでもありうる。
【0018】
1以上の金属は、典型的には、1以上の白金族金属(PGMs)、好ましくは、白金、パラジウム及び/又はロジウム、を含む。1以上の金属は、金属カーボネート、金属サルフェート、金属ナイトレート、金属アセテート及び金属水酸化物と同様に、アルカリ土類金属酸化物(バリウム、カルシウム、ストロンチウム及びマグネシウムのような)、アルカリ金属(カリウム、ナトリウム、リチウム及びセシウムのような)、希土類金属(ランタン、イットリウム、プラセオジウム及びネオジウム)又はそれらの組み合わせ、の酸化物のような金属酸化物も含んでもよい。
【0019】
本発明で、触媒化された何れの基材も使用されうるが、触媒化された基材は、好ましくは、ディーゼル酸化触媒(DOC)である。
【0020】
DOC成分は、当該技術分野でよく知られる。DOCsは、COをCO
2に酸化し、気相の炭化水素(HC)及びディーゼル微粒子の有機画分(可溶の有機画分)をCO
2及びH
2Oに酸化するように、設計される。典型的なDOC成分は、アルミナ、シリカ‐アルミナ及びゼオライトのような高表面積の無機酸化物担体上に、白金及び任意にまたパラジウムも含む。
【0021】
触媒化された基材は、総体積を有する。触媒化された基材についての典型的な総体積は、約1.0から約15Lまでである。触媒化された基材の非触媒化領域は、好ましくは、触媒化された基材の総体積の50%未満、より好ましくは触媒化された基材の総体積の25%未満、及びより一層好ましくは触媒化された基材の総体積の10%未満を含む。
【0022】
触媒化された基材の非触媒化領域は、例えばただ裸の基材の領域のような基材のコーティングされない領域であってもよいが、好ましくは、非触媒化領域が不活性ウォッシュコートでコーティングされる基材の一部である。不活性ウォッシュコートは、炭化水素又は一酸化炭素の酸化を触媒化するような触媒的活性、のない金属(例えば、PGM又は他の遷移金属)を含有するであろう。好ましくは、不活性ウォッシュコートは、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、ニオビア、希土類酸化物(特に、セリア又はネオジウム酸化物)、又は混合酸化物又はそれらの何れか2以上の複合酸化物、例えば、シリカアルミナ、セリアジルコニア又はアルミナセリアジルコニア、のような1以上の無機酸化物からなるであろうし、ゼオライトでもあってもよい。
【0023】
非触媒化領域に対しての不活性ウォッシュコートの使用は、それによれば、一時的な温度差の正確性を改善するような、非触媒化領域と触媒化領域のより同等な熱的質量が得られるかもしれないので、好ましいかもしれない。非触媒化領域に対しての不活性ウォッシュコートの使用は、より一様なフロー分布を与えるような、2つの領域のより同等な背圧、という結果になるかもしれない。
【0024】
典型的には、触媒化された基材は、入口端から出口端まで延びる軸長を伴う、入口端及び出口端を有する。非触媒化領域は、好ましくは、触媒化された基材の入口端から、触媒化された基材の軸長の一部に沿って延びる。より好ましくは、非触媒化領域は、触媒化された基材の入口端から、触媒化された基材の軸長の約50%以下で延びる。
【0025】
非触媒化領域は、触媒化された基材の半径方向長さの100%に沿って延びてもよい。好ましくは、非触媒化領域が触媒化された基材の半径方向長さ全体に沿って延びるとき、排気システムは触媒化された基材の下流に位置する追加の酸化触媒を更に含むであろう。この追加の酸化触媒は、ディーゼル酸化触媒でありうり、しかし、好ましくは、触媒化されたスートフィルター(CSF)である。触媒化されたスートフィルター(CSF)は、DOCと同様の組成及び作用、の触媒でコーティングされるフィルター基材である。それは、ディーゼル微粒子物質の燃焼においても促進しうる。典型的なCSF触媒成分は、白金、パラジウム、及び高表面積の無機酸化物を、含む。
【0026】
触媒化された基材の下流の追加の酸化触媒は、酸化されることなく非触媒化領域を通過した排出物(例えば、炭化水素及びCO)を浄化するのに有用であってもよい。
【0027】
典型的には、よりずっと高い着火温度を有する第二の触媒化領域は、非触媒化領域の代わりに使用されてもよい。これは、例えば、触媒化された基材の触媒化領域と比較してよりずっと低いPGM充填量を有する第二の触媒化領域、を使用することにより果たされる。この配置の潜在的な利点は、この第二の触媒化領域をより高温で通過する排出物が変換されるであろうが、OBD測定のために必要とされる条件の間でOBDに干渉しないように著しい発熱を生じないであろう、ということである。
【0028】
触媒化された基材は、任意の慣用手法により生じてもよい。例えば、触媒化領域及び非触媒化領域からなる触媒化された基材を生み出すような差異のコーティングは、コーティングがそれらの範囲では実行されず、しかし抑制手段により塞がれない範囲内でのみ実行されるように、基材の範囲をブランクオフするように形づくられてもよい抑制手段により達成されてもよい。加えて、抑制手段はコーティングのための異なる液体を分離するように内部で分けられてもよく、又は部分がコーティングを妨げるようにブランクオフされてもよい。
【0029】
本発明の車載式診断システムは、第一のセンサー及び第二のセンサーも含む。第一のセンサーは、触媒化された基材の触媒化領域内に位置する。第二のセンサーは、触媒化された基材の非触媒化領域内に位置する。本発明の車載式診断システムにおいて有用なセンサーは、温度センサー、炭化水素センサー、酸素センサー、ラムダセンサー、窒素酸化物(NO
x)センサー及び一酸化炭素センサーを、含む。熱電対のような温度センサーは、特に好まれる。
【0030】
好ましくは、第一のセンサー及び第二のセンサーは、触媒化された基材の軸長に沿って同様の長さで位置する。より好ましくは、それらは、触媒化された基材の軸長に沿って互いの約1inch(2.54cm)内に位置し、より一層好ましくは、触媒化された基材の軸長に沿って同一長さで位置する。
【0031】
本発明の車載式診断システムは、排気システム内に位置する触媒化された基材、の潜在的な悪化を検出するように、好ましくは使用される。触媒化された基材の、排気ガス中の炭化水素及び一酸化炭素を燃焼する能力は、合格及び不合格の触媒化された基材について予期される差と差を比較することにより直接触媒OBD測定を与える、感知され記録される2つの値(例えば、温度)の間の差、により測定される。
【0032】
第一のセンサー及び第二のセンサーの感知される値(例えば、温度及びCO水準)は、連続的に測定されてもよく、もし第一の感知される値と第二の感知される値の間の差が事前決定された値を下回るならば、これは、触媒化された基材の性能が設定水準を下回ったこと、を示唆する故障を示す光(MIL)を発するであろう。例えば、性能においての触媒化された基材の悪化としては、触媒化領域の測定される温度が非触媒化領域の測定される温度に近づき始めるであろう。温度の差が設定値を下回ると(例えば、10℃以下の温度差)、その後、触媒化された基材は、診断試験に不合格する。
【0033】
本発明は、内燃機関のための排気システム内の触媒化された基材の車上診断、のための方法も含む。方法は、第二のセンサーでの非触媒化領域内の温度(又はO
2量もしくはCO量のような、他の何れかの感知される値)、及び第一のセンサーでの触媒化領域内の温度(又はO
2量もしくはCO量のような、他の何れかの感知される値)を、測定することを含む。温度差は、第一のセンサーの温度から第二のセンサーの温度を減算することにより算定される。その後、触媒化された基材が診断試験に合格であったか不合格であったかは、合格及び不合格の触媒基材について予期される差と温度差を比較することにより決定される。例えば、10℃より大きい温度差は触媒基材の合格を示唆してもよく、一方で10℃以下の温度差は触媒基材の不合格を示唆してもよい。
【0034】
本発明の方法において、第一のセンサー及び第二のセンサーが触媒化された基材の軸長に沿って同様の長さで位置することは、好まれる。より好ましくは、第一の熱センサーは、触媒化された基材の軸長に沿って第二の熱センサーの1inch以内に位置するであろう;より好ましくは、同一の軸長に位置するであろう。第一の熱センサー及び第二の熱センサーは、好ましくは、触媒化された基材の軸長に沿って同様の長さで位置するが、それらは、好ましくは、基材自体の異なる点に、例えば、基材の互いから反対側に、位置する。
【0035】
加えて、本発明の方法は、更に、温度差(又はO
2量あるいはCO量のような、他の何れかの感知される値の間の差)が事前決定された値未満に減る時、故障を示す光を発することを含む。事前決定された値は、不活性化される触媒についての温度差により、設定される。好ましくは、差異の温度データは、ある期間にわたる温度の変化を合計し又は平均するであろうアルゴリズム中へ、入力されうる。あのようにして、故障を示す光は、ある誤ったデータ点により発されないであろう。
【0036】
触媒化領域及び非触媒化領域を有する触媒化された基材は、ディーゼル酸化触媒(DOC)又は触媒化されたスートフィルター(CSF)であってもよい。触媒化された基材がDOCであることは好まれる。
【0037】
本発明の排気システムは、車載式診断システム(すなわち、触媒化された基材を含む)を含む。本発明の排気システムは、更に、追加の酸化触媒(例えば、DOC、CSF又はASC)のような排出物制御装置(すなわち、触媒化された基材に加えて)、を含む。排出物制御装置は、好ましくは、触媒化された基材の下流に、位置する。
【0038】
排出物制御装置は、ディーゼル微粒子フィルター(DPF)、リーンNO
xトラップ(LNT)、リーンNO
x触媒(LNC)、選択的触媒還元(SCR)触媒、ディーゼル酸化触媒(DOC)、触媒化されたスートフィルター(CSF)、選択的触媒還元フィルター(SCRF
TM)触媒、アンモニアスリップ触媒(ASC)及びそれらの2以上の組み合わせ、から選択されてもよい。このような排出物制御装置は、当該技術分野でよく知られる。
【0039】
一般に、内燃機関は、スパークイグニッション機関(例えば、ガソリン又はペトロール機関)又はコンプレッションイグニッション機関(例えば、ディーゼル機関)、であってもよい。内燃機関は、コンプレッションイグニッション機関であることが好まれ、より好ましくはディーゼル機関である。
【0040】
本発明の排気システムがSCR触媒又はSCRF
TM触媒を備えるとき、その後、排気システムは、アンモニア、又は尿素もしくはギ酸アンモニウムのようなアンモニア前駆体、好ましくは尿素、のような窒素還元剤を、酸化触媒の下流、及びSCR触媒又はSCRF
TM触媒の上流の排気ガス中に注入するための注入器を更に含む。そのような注入器は、窒素還元剤の前駆体のソース(例えば、タンク)と、流動的に繋げられてもよい。排気ガス中への、前駆体の、バルブ制御される添加は、適当にプログラムされた機関管理手法、及び排気ガスの組成をモニタリングするセンサーにより提供される閉回路又は開回路のフィードバック、により調節されてもよい。アンモニアはカルバミン酸アンモニウム(固体)を熱することによっても発生しうり、かつ発生させられたアンモニアは排気ガス中に注入されうる。
【0041】
代わりに又は注入器に加えて、アンモニアは、その場(例えば、SCR触媒又はSCRF
TM触媒の、上流に配備されるLNTの豊富な再生の間)で発生しうる。このように、排気システムは、炭化水素を有する排気ガスをエンリッチするための機関管理手法を更に含んでもよい。
【0042】
排気システムの第一の実施態様において、排気システムは、本発明の車載式診断システム(好ましくは、触媒化された基材がDOCである)及び触媒化されたスートフィルター(CSF)を含む。そのような配置はDOC/CSFと呼ばれてもよい。触媒化された基材は、典型的には、触媒化されたスートフィルター(CSF)(例えば、の上流である)が後に続く。
【0043】
排気システムの第二の実施態様は、本発明の車載式診断システム(好ましくは、触媒化された基材がDOCである)、触媒化されたスートフィルター(CSF)及び選択的触媒還元(SCR)触媒を、含む排気システムに関する。そのような配置は、DOC/CSF/SCRと呼ばれてもよく、軽量任務級ディーゼル車両のための好適な排気システムである。触媒化された基材は、典型的には、触媒化されたスートフィルター(CSF)(例えば、の上流である)が後に続く。触媒化されたスートフィルターは、典型的には、選択的触媒還元(SCR)触媒(例えば、の上流である)が後に続く。窒素還元剤の注入器は、触媒化されたスートフィルター(CSF)と選択的触媒還元(SCR)触媒の間に配置されてもよい。
【0044】
排気システムの第三の実施態様は、ディーゼル酸化触媒(DOC)、触媒化されたスートフィルター(CSF)としての、本発明の触媒化された基材(すなわち、車載式診断システム)、及び選択的触媒還元(SCR)触媒を含む排気システムに関する。これは、DOC/CSF/SCR配置でもある。ディーゼル酸化触媒(DOC)は、典型的には、本発明の酸化触媒(例えば、の上流である)が後に続く。本発明の触媒化された基材は、典型的には、選択的触媒還元(SCR)触媒(例えば、の上流である)が後に続く。窒素還元剤の注入器は、触媒化された基材と選択的触媒還元(SCR)触媒の間に配置されてもよい。
【0045】
排気システムの第4の実施態様において、排気システムは、本発明の車載式診断システム(好ましくは、触媒化された基材がDOCである)、選択的触媒還元(SCR)触媒、及び触媒化されたスートフィルター(CSF)又はディーゼル微粒子フィルター(DPF)のどちらかを含む。配置は、DOC/SCR/CSF又はDOC/SCR/DPFのどちらかである。
【0046】
排気システムの第4の実施態様において、本発明の車載式診断システムは、典型的には、選択的触媒還元(SCR)触媒(例えば、の上流である)が後に続く。窒素還元剤の注入器は、触媒化された基材と選択的触媒還元(SCR)触媒の間に配置されてもよい。選択的触媒還元(SCR)触媒は、触媒化されたスートフィルター(CSF)又はディーゼル微粒子フィルター(DPF)(例えば、の上流である)が後に続く。
【0047】
排気システムの第5の実施態様は、本発明の車載式診断システム(好ましくは触媒化された基材がDOCである)、及び選択的触媒還元フィルター(SCRF
TM)触媒を含む。そのような配置は、DOC/SCRF
TMと呼ばれてもよい。触媒化された基材は、典型的には、選択的触媒還元フィルター(SCRF
TM)触媒(例えば、の上流である)が後に続く。窒素還元剤の注入器は、触媒化された基材と選択的触媒還元フィルター(SCRF
TM)触媒の間に配置されてもよい。
【0048】
排気システムの上記に記載される第二から第五の実施態様のそれぞれにおいて、ASC触媒はSCR触媒もしくはSCRF
TM触媒(すなわち、個々のモノリス基材として)からの下流に、又はより好ましくは、下流のゾーンに配備されうり、又はSCR触媒を含むモノリス基材の終端はASCのための担体として使用されうる。
【0049】
以下の実施例は、単に発明を説明する。当業者は、本発明の精神及び特許請求の範囲に含まれる多くの変形を認めるであろう。
【実施例】
【0050】
実施例1:触媒化領域及び非触媒化領域を有するDOCの調製
モノリス基材(直径118mm及び長さ140mm)は、50g/ft
−3の充填量で、白金及びパラジウム(Pt:Pd=2:1)を含有する最高水準のDOCコーティングでコーティングされる。基材の後部は、慣習的なウォッシュコーティング手段を使用して、コーティングの50%を添加される。慣習的な精密なコーティングプロトコルを使用しブランクオフされた(マスクされた)領域を有する基材の前部は、DOC1を生じさせるような第一の添加のように、コーティングのもう一方の50%を添加される。
【0051】
実施例2:車両試験比較
車両試験は、1.5LのDOC(DOC1)及びCSFを備え付けられた1.5LのEuro5車両で、実施される。DOC1は、排気温度及び測定される排出物を用いて、新欧州ドライビングサイクル(NEDC)を通して評価される。排出測定は、事前−及び事後−触媒モダル排出物を測定するように備え付けられたCVSローラー動力計で、全ての規制される排出物について実施される。2つの熱電対は、事前及び事後DOC温度を測定するように、慣習的な方法によりシステムに加えられる。加えて、本発明のOBDは、モノリス中、前面から同一距離(35mm)及び側面から30mmの同一半径位置、に注意深く配置される2つの熱電対を加えることにより、試験される。ある熱電対は、モノリスの慣習的にコーティングされた領域に位置し、もう一方は、モノリスのコーティングされない領域に位置する。OBD熱電対を用いるDOC1は、
図1Aで説明され、慣習な事前−及び事後−触媒熱電対の位置は、
図1Bで説明される。試験の間、DOCの非触媒化領域に取り付けられた熱電対と触媒化領域においての同様な軸及び半径位置に取り付けられた熱電対との間の温度差は、決定され;事前−及び事後−触媒温度の間の温度差もまた測定される。真新しいDOC触媒の試験に加えて、真新しいDOC触媒の活性は、フレッシュDOC触媒、末期の古いDOC触媒及びOBDの古いDOC触媒、の温度プロファイルを比較するために、水熱オーブンエイジングを使用して調製される。
【0052】
結果は、“受動性の”NEDCサイクルの間に測定された温度差が、本発明のOBDシステムを使用する真新しいDOCと古いDOCの区別を、熱電対をDOCの上流及び下流に位置決めするシステムと比較することで可能にすることを、示す。本発明のOBDシステムは、DOCの上流及び下流の熱電対を用いてDOC体積全体をモニタリングすることと比較して平均温度変化(avgΔT)及びピーク温度変化(maxΔT)の両方において改良された分解能、を示す。
【0053】
【国際調査報告】