特表2016-533880(P2016-533880A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2016-533880(P2016-533880A)
(43)【公表日】2016年11月4日
(54)【発明の名称】表面改質金属コロイドの形成
(51)【国際特許分類】
   B01J 13/00 20060101AFI20161007BHJP
   C09C 1/62 20060101ALI20161007BHJP
   C09D 7/12 20060101ALI20161007BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20161007BHJP
   C09C 3/12 20060101ALI20161007BHJP
   C09D 17/00 20060101ALI20161007BHJP
【FI】
   B01J13/00 B
   C09C1/62
   C09D7/12
   C09D201/00
   C09C3/12
   C09D17/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2016-532690(P2016-532690)
(86)(22)【出願日】2014年8月7日
(85)【翻訳文提出日】2016年3月25日
(86)【国際出願番号】EP2014066999
(87)【国際公開番号】WO2015018899
(87)【国際公開日】20150212
(31)【優先権主張番号】13179954.6
(32)【優先日】2013年8月9日
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】500449008
【氏名又は名称】ライプニッツ−インスティトゥート フィア ノイエ マテリアーリエン ゲマインニュッツィゲ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクタ ハフトゥンク
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベッカー−ヴィリンジャー カルステン
(72)【発明者】
【氏名】アリ ブディマン
(72)【発明者】
【氏名】ブコウスキー ミルコ
(72)【発明者】
【氏名】ヨッフム マーロン
(72)【発明者】
【氏名】テイラー アラン
(72)【発明者】
【氏名】デュラン ジェラルディーン
【テーマコード(参考)】
4G065
4J037
4J038
【Fターム(参考)】
4G065AA04
4G065AA07
4G065AA08
4G065AB02Y
4G065AB03X
4G065AB03Y
4G065AB05Y
4G065AB09Y
4G065AB11Y
4G065AB12X
4G065AB16X
4G065AB16Y
4G065AB17X
4G065AB21X
4G065AB21Y
4G065AB28Y
4G065AB29Y
4G065BA15
4G065BA20
4G065BB01
4G065BB03
4G065CA01
4G065DA06
4G065DA07
4G065DA09
4G065EA01
4G065EA02
4G065FA02
4J037AA04
4J037CC28
4J038EA011
4J038HA061
(57)【要約】
本特許出願は、ラッカー、塗料、コーティング剤及びインクにおける直接使用のためのマスターバッチとして好適な機能性表面改質金属コロイドの形成に関するものである。このために、少なくとも1つの官能基を含むオルガノシルセスキオキサンで金属コロイドを表面改質する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)少なくとも1つの金属塩と、該金属塩の金属に対する親和性を示す少なくとも1つの官能基を有する少なくとも1つのオルガノシルセスキオキサンと、少なくとも1つの還元剤と、少なくとも1つの溶媒とを混合する工程と、
b)前記金属塩の前記金属の還元を誘導する熱処理及び/又は光化学処理工程と、
c)前記少なくとも1つのオルガノシルセスキオキサンで表面改質された金属コロイドの形成工程と、
を含む、表面改質金属コロイドを製造する方法。
【請求項2】
前記金属に対して親和性を示す前記官能基が、N、S、O、Cl、Br又はIの群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記オルガノシルセスキオキサンが、架橋を可能にする少なくとも1つの更なる基を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記シルセスキオキサンが、7000g/mol未満の平均分子量を有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記金属塩が、第8族〜第16族の金属から選択される少なくとも1つの金属イオンを含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記還元剤が、ヒドラジン又はヒドラジン誘導体、ホウ化水素、アスコルビン酸、リンゴ酸、シュウ酸、ギ酸、クエン酸、それらの塩、NaSO3、Na、メルカプタン、アミン、次亜リン酸塩を含む群から選択されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
得られる前記金属コロイドが、3wt%〜30wt%の炭素含有率を有することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記金属塩がCuイオンを含むことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
a)少なくとも1つの金属コロイドを少なくとも1つの溶媒中に分散させる工程と、
b)請求項1〜4のいずれか一項に記載の少なくとも1つのオルガノシルセスキオキサンを添加する工程と、
を含む、表面改質金属コロイドを製造する方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法によって得られる、金属コロイド。
【請求項11】
少なくとも1つの請求項10に記載の金属コロイドを含む、成形体又はコーティング剤。
【請求項12】
コーティング剤、塗料、パウダーコーティング剤、マスターバッチ、インク、織物、ポリマー、化合物、電子アプリケーション、導電性コーティング剤、医療デバイス又はインプラントにおける請求項10に記載の金属コロイドの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラッカー、塗料、コーティング剤及びインクにおける直接使用のためのマスターバッチとして好適な機能性表面改質金属コロイドの形成に関するものである。具体的にその粒子は、複雑な又はコストのかかる製造工程を伴うことなく、関連する金属コアに合わせて、及び基体への結合可能性又は結合マトリックスに合わせて設計することができ、またこれらは様々な周囲溶媒のマトリックス系中においても有効である。
【背景技術】
【0002】
現行の技術水準では、還元プロセスを介した金属コロイドの形成といった多くの試みが示されている。
【0003】
特許文献1は、狭い粒径分布(narrow distribution)の選択されるサイズのコロイド粒子を含有する試薬を製造する方法を記載している。還元プロセスは、金属、第1の還元剤、及び安定化剤を含有する溶液を発端として核を形成し、続いて、第2の還元剤を適用して実施されるものであり、なお、第1の還元剤は、第2の還元工程で核を形成することなく、かつその後の粒子の成長工程において核の成長を遅らせないように、また上記第2の還元剤が、自発除核(spontaneous enucleation)を遅らせるように選択されるものである。この多段階プロセスの不利点は、得られる粒子が、狭い粒径分布が重要な要件となる免疫学的検定において使用されるために特別に設計されていることから、プロセスがやや複雑になっていることである。さらに、粒子表面は、単にタンパク質及び抗体と相互作用するのに好適となるように特別に設計されている。
【0004】
特許文献2及び特許文献3は、銅微小粒子を特許請求するとともに、銅酸化物を、例えばヒドラジン等の還元剤、例えばクエン酸又はシステイン等の錯化剤、及びタンパク質保護剤と混合させることから開始するその製造方法も特許請求している。実質的に凝集粒子を含有せず、形状が規則的で、分散性に優れ、かつ大量生産工程で製造することができる銅微小粒子が要求されている。粒子表面を調節する特定の官能化は意図されておらず、実現されてもいない。
【0005】
金属コロイドに関する特殊な安定化メカニズムが、例えば両親媒性ベタイン又は脂肪アルコールポリグリコールエーテル等の、強い親水性を有する界面活性剤を用いた特許文献4において理解される。かかる界面活性剤タイプの安定化は、小さい分子表面の改質メカニズムであり、溶媒である水にとって好適であるに過ぎない。より超格子タイプの構造体は、ミセル中におけるin−situ還元を介して形成されるコロイド金属に結合するのに適するペンダント型アミン基を有するブロックと、周囲溶媒と相溶性の第2のブロックとを有するブロックコポリマーからのミセルを発端とする特許文献5において実現されている。その結果物は、無機コア及び有機ポリマーシェルを有するコア−シェル型粒子である。特許文献6は、強塩基媒質中の金属塩を発端として、高濃度金属コロイドゾルを製造するのに水溶性ホモポリマーを用いた同等の試みを記載している。
【0006】
金属コロイドを安定化させるようなチオール含有化合物の使用は、一般的な試みである。通常、例えば有機メルカプタン(特許文献7)又はシステイン(特許文献2、特許文献3、特許文献7)等の低分子量化合物が適用される。これらの事案では、超格子タイプの構造体も実現されていない。
【0007】
また、シェルが酸化又は化学的攻撃からコアを保護するコア−シェル型構造体を構築するために、事前に形成した金属コロイドを官能化させ、金属に対する親和性を有するメルカプト基を有するメルカプトシランで安定化させることで、例えばシリカのような無機ゾル−ゲル誘導シェルを成長させることを可能とするシード層がコロイド表面上に主としてもたらされる(特許文献8)。官能化プロセス直後にコロイド表面上に複数の反応性シラン基が残ることから、適用可能な基の量はどうもランダム過程の結果によるものとされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】欧州特許第0426300号
【特許文献2】欧州特許出願公開第1787742号
【特許文献3】欧州特許出願公開第2452767号
【特許文献4】欧州特許第0796147号
【特許文献5】独国特許出願公開第19506113号
【特許文献6】独国特許出願公開第102006017696号
【特許文献7】国際公開第2010035258号
【特許文献8】欧州特許第1034234号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
現行の技術水準において言及される試みの欠点を回避するために、本発明の課題は、機能性ウェットコーティング剤、パウダーコーティング剤、配合製剤及びインクにおける直接使用のためのマスターバッチとして利用することができる、官能性が調節されかつ特定量の官能基を有する金属コロイドの形成とした。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題は、
a)少なくとも1つの金属塩と、該金属塩の金属に対する親和性を示す少なくとも1つの官能基を有する少なくとも1つのオルガノシルセスキオキサンと、少なくとも1つの還元剤と、少なくとも1つの溶媒とを混合する工程と、
b)前記金属塩の前記金属の還元を誘導する熱処理及び/又は光化学処理工程と、
c)前記少なくとも1つのオルガノシルセスキオキサンで表面改質された金属コロイドの形成工程と、
を含む、表面改質金属コロイドを製造する方法によって解決される。
【0011】
オルガノシルセスキオキサンは、通常、一般式(RSiO1.5(式中、nは4以上の偶数である)を有するケイ素−酸素をベースとしたフレームワークである。このため、これらの化合物は特定の構造を有し、例えば、式(RSiO1.5を有する化合物は八面体ケージ構造を有する。
【0012】
オルガノシルセスキオキサン(SSQ)は、欧州特許第1957563号に記載されているように、調節可能な官能性を伴って特定の様式で調製することができる。オルガノシルセスキオキサンは、1タイプのみのアルコキシシラン前駆体を発端として、同一種類の官能基である8つの官能基(functionalities)を有するケージ型の化学種を導くことにより構築され得るか、又は、2若しくは3タイプの異なる前駆体から合成を開始した場合には、二官能性種若しくは三官能性種として設計され得る。このため、例えば、反応性基を含有する官能性オルガノアルコキシシランと、アルキル官能性オルガノアルコキシシランとの間の化学量論比を変えることで、作られるケージは、ケージ1つ当たり1種類の官能基を1つだけ有するか又は1種類の官能基を複数有することが可能となる。この特徴により、ケージ型SSQは、シランカップリング剤特性から、ハイブリッドコーティング剤又はバルク材料の構築を可能とするマトリックス形成特性におよぶ材料の設計にかかる強力な道具となる。
【0013】
オルガノシルセスキオキサンは、上記金属塩の金属に対する親和性を示す(affine to)少なくとも1つの官能基を含む。これは、N、S、O、Cl、Br、I及び/又は芳香族基を含む群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む基であることが好ましい。
【0014】
より好ましくは、この官能基は、オルガノシルセスキオキサンのSi原子の1つと接続する非加水分解性基の一部である。
【0015】
本発明の好ましい実施の形態では、少なくとも1つの官能基は、アミノ基、ヒドロキシル基、エポキシ基、メチル又はエチルエーテル基、カルボニル基、チオール基、ジスルフィド基、メチル又はエチルチオエーテル基、カルボン酸、アミド基、無水物基、芳香族基、複素芳香族基、スルホニル基、1,2又は1,3カルボニル基を含む群から選択される。これらの基が金属コロイドの合成条件に耐性がない場合、これらの基の前駆体又は保護された基を使用してもよい(エポキシ基はヒドロキシル基のための前駆体として作用し得るか、又はイソシアネート基はアミノ基のための前駆体となる)。
【0016】
かかる基は、炭素数1〜20の線形又は分枝状のアルキレン基又は炭素数3〜20の環状アルキレン基によって、オルガノシルセスキオキサンの1つのSi原子と結合することができ、なお、2つ以上の水素原子がD、F、Cl、Br、Iで置換されていてもよく、互いに及びSi原子と直接接続していない1つ若しくは複数のCH基がO、Sで置換されていてもよく、又は、1つ若しくは複数のCH基が、6個〜12個の芳香族環原子を含む置換若しくは非置換の芳香族環系、若しくは5個〜12個の芳香族環原子を含む置換若しくは非置換の芳香族複素環系で置換されていてもよい。
【0017】
このような非加水分解性基の例は、−CH−NH−(CH−NH−(CH−NH−(CH−NH−(CH−NH−(CH−NH−(CH−NH−(CH−NH−CH−SH、−(CH−SH、−(CH−SH、−(CH−SH、−(CH−SH、−(CH−SH、−(CH−SH、−(CH−SH、−C−SH、−CH−NCO、−(CH−NCO、−(CH−NCO、−(CH−NCO、−(CH−NCO、−(CH−NCO、−(CH−NCO、−(CH−NCO(ここで、はオルガノシルセスキオキサンのSi原子との結合である)である。
【0018】
上述のように、オルガノシルセスキオキサンは、2タイプ以上の基を含んでいてもよい。オルガノシルセスキオキサンは更なる不活性基を含むことも可能であり、これにより、例えば、オルガノシルセスキオキサンの疎水性が増大する。これらの基は、炭素数1〜20の線形若しくは分枝状のアルキル鎖、又は炭素数3〜20の環状アルキル鎖であってもよく、なお、2つ以上の水素原子がD、F、Cl、Br、Iで置換されていてもよく、互いに及びSi原子と直接接続していない1つ若しくは複数のCH基がO、Sで置換されていてもよく、又は、1つ若しくは複数のCH基が、6個〜12個の芳香族環原子を含む置換若しくは非置換の芳香族環系、若しくは5個〜12個の芳香族環原子を含む置換若しくは非置換の芳香族複素環系で置換されていてもよい。
【0019】
かかる不活性基の例は、炭素数1〜12の線形又は分枝状のアルキル鎖、又は炭素数3〜12の環状アルキル鎖、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、n−ヘキシル、i−ヘキシル、オクチル、シクロヘキシル、又は6個〜12個の芳香族環原子を有するアリール基、例えばフェニル若しくはナフチルである。
【0020】
本発明の別の実施の形態では、オルガノシルセスキオキサンが、架橋を可能にする更なる基を含んでいてもよい。これは、これらの基が、縮合、重縮合又は重合反応の一部をなすことができることを意味する。これは、表面改質金属コロイドを周囲マトリックス、例えばポリマーマトリックスと化学結合させるか、又は金属コロイドを架橋させる可能性を切り開くものである。これらの官能基は、マトリックス中に存在する特定の基と特に反応することができ、例えば、変性ポリマーのヒドロキシル基は、オルガノシルセスキオキサン上に存在するエポキシド基と反応し得る。また、官能基は、周囲マトリックスの重縮合又は重合反応に加わることもある。これは、組成物の硬化前に改質金属コロイドを対応するモノマーと混合させた場合である。
【0021】
架橋を可能にする官能基の具体例は、例えばエポキシド基、オキセタン基、ヒドロキシル基、エーテル基、アミノ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、任意に置換されたアニリノ基、アミド基、カルボキシル基、無水カルボキシル基、ビニル基、アリル基、アルキニル基、アクリロイル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイル基、メタクリロイルオキシ基、メルカプト基、シアノ基、アルコキシ基、イソシアナト基、保護された又はブロック化されたイソシアナト基、アルデヒド基、アルキルカルボニル基、酸無水物基、及びリン酸基である。これらの官能基は、アルキレン、アルケニレン又はアリーレンブリッジ基(bridge groups)を介してケイ素原子に接続し、それは、酸素又は−NH−基を介在するものであってもよい。ビニル基又はアルキニル基を含有する非加水分解性基の例は、例えば、ビニル、1−プロペニル、2−プロペニル及びブテニル等のC2〜6アルケニル、並びに、アセチレニル及びプロパルギル等のC2〜6アルキニルである。上記ブリッジ基、及びアルキルアミノ基の場合、存在する任意の置換基は、例えば、上述のアルキル、アルケニル又はアリールラジカルから誘導される。当然のことながら、非加水分解性基も2つ以上の官能基を含有していてもよい。
【0022】
架橋を可能にする官能基を含有する非加水分解性基の具体例は、グリシジル−又はグリシジルオキシ−(C1〜20)−アルキレン基、例えばβ−グリシジルオキシエチル、γ−グリシジルオキシプロピル、δ−グリシジルオキシブチル、ε−グリシジルオキシペンチル、ω−グリシジルオキシヘキシル、及び2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル、(メタ)アクリロイルオキシ−(C1〜6)−アルキレン基(ここで(C1〜6)−アルキレンは例えば、メチレン、エチレン、プロピレン又はブチレンである)、イソシアナト−(C1〜6)アルキレン基、例えば3−イソシアナトプロピル基、ビニル終端C1〜6−アルキレン基である。
【0023】
いくつかの実施の形態では、上記金属塩の金属に対する親和性を示す基も、架橋することができる基とされる。
【0024】
本発明の一実施の形態では、オルガノシルセスキオキサンが、上記金属塩の金属に対する親和性を示す基のみを含む。
【0025】
本発明の一実施の形態では、オルガノシルセスキオキサンが、上記金属塩の金属に対する親和性を示す少なくとも1つの基と、不活性基であってもよい少なくとも1つの更なる基とを含む。
【0026】
本発明の別の実施の形態では、オルガノシルセスキオキサンが、上記金属塩の金属に対する親和性を示す少なくとも1つの基と、架橋を可能にする少なくとも1つの基とを含む。好ましい実施の形態では、この基は、上記金属塩の金属に対する親和性を示す基と異なる。
【0027】
本発明の好ましい実施の形態では、オルガノシルセスキオキサンが、シルセスキオキサンの異なるSi原子と結合する少なくとも2つの異なる非加水分解性基を含む。
【0028】
本発明の好ましい実施の形態では、オルガノシルセスキオキサンが、シルセスキオキサンの異なるSi原子と結合する少なくとも3つの異なる非加水分解性基を含む。
【0029】
本発明の別の実施の形態では、オルガノシルセスキオキサンが、上記金属塩の金属に対する親和性を示す少なくとも1つの基と、架橋を可能にする少なくとも1つの基と、不活性基であってもよい少なくとも1つの更なる基とを含む。
【0030】
好ましい本発明のオルガノシルセスキオキサンは、官能基として、メルカプト基のみ、アミノ基のみ、エポキシ基のみ、メルカプト基及びアルキル基、メルカプト基及びビニル基、メルカプト基及びブロック化されたイソシアナト基、メルカプト基及びアミノ基、エポキシ基及びアルキル基、メルカプト基及びアルキル基及びビニル基、メルカプト基及びアルキル基及びアミノ基、メルカプト基及びアルキル基及びブロック化されたイソシアナト基を含む。
【0031】
イソシアネートのブロック化は、イソシアネートの反応性を可逆的に低下させる、当業者に既知の方法である。イソシアネートをブロック化するために、あらゆる一般的なブロッキング剤、例えば、アセトンオキシム、シクロヘキサノンオキシム、メチルエチルケトキシム、アセトフェノンオキシム、ベンゾフェノンオキシム、3,5−ジメチルピラゾール、1,2,4−トリアゾール、マロン酸エチル、アセト酢酸エチル、ε−カプロラクタム、フェノール、エタノールが有用であり、本発明によれば1,2,4−トリアゾールが好まれる。
【0032】
オルガノシルセスキオキサンの製造に使用される出発原料に応じて、異なる構造体が形成され得る。本発明に好ましいオルガノシルセスキオキサンは、閉じたタイプのケージ形状オルガノシルセスキオキサン:
(R−SiO1.5 (I)
又は、部分的に開いたタイプのケージ形状オルガノシルセスキオキサン:
(R−SiO1.5(O0.51+m (II)
(式中、nは6〜18の整数を表し、mは0〜3を表す)である。
【0033】
式(I)で表される閉じたタイプのケージ形状構造では、nが、6〜18、好ましくは6〜14の偶数、より好ましくは8、10又は12となる。
【0034】
少なくとも1つのRは、先に述べたような、上記金属塩の金属に対する親和性を示す基である。存在する場合、他のRは、架橋を可能にする基又は不活性基である。Rは、H及び/又は線形若しくは分枝状のC1〜6アルキレン基である。
【0035】
反応混合物中には、オルガノシルセスキオキサンの混合物、例えば、nが8、10及び12である混合物が存在していてもよい。
【0036】
本発明の好ましい実施の形態では、本発明のオルガノシルセスキオキサンが、7000g/mol未満、5000g/mol未満、好ましくは3000g/mol未満、2000g/mol未満の平均分子量(GPC−SEC(ゲル浸透クロマトグラフィ−サイズ排除クロマトグラフィ)にて求める)を有する。
【0037】
本件では、SSQ分子が、還元反応が開始すると直ぐに金属と結合し得る1種類の少なくとも1つの官能基を有することが意図される。個々のSSQケージを構築するのに使用される前駆体同士間の調節された化学量論的な内部平衡(internal stoichiometric balance)の可能性と、金属と官能性SSQ分子との間の化学量論的な平衡の可能性との組合せから、上述のプレ反応によって、極めて確定的な官能性を有する金属コロイドを構築することができる。金属コロイドは、金属コロイドハイブリッド要素1つ当たり、唯一つ、正確には2つ若しくは3つ、又は実に複数のSSQ官能化分子を有するように設計され得る。加えて、メルカプト基及びアミン基、いわゆるH酸基が、錯化能力及び還元能力を同時に示す候補となる。さらに、かかるH酸基は、バインダマトリックスを増量させるか(built up)又はそれと結合することができる、例えばブロック化イソシアネート等の重縮合可能な基、又は例えばビニル基若しくはアクリレート基等の重合性基と組み合わせることも可能である。
【0038】
組成物は、少なくとも1つの金属塩を更に含む。好ましい実施の形態では、金属塩が、第8族〜第16族の金属、更に好ましくは、Cu、Ag、Au、Ni、Pd、Pt、Co、Rh、Ir、Ru、Os、Se、Te、Cd、Bi、In、Ga、As、Ti、V、W、Mo、Sn及びZn、更に好ましくは、Cu、Ag、Au、Ni、Pd、Pt、Co、Rh、Ir、Ru、Os、Se、Te、Sn及びZnを含む群から選択される少なくとも1つの金属から選択される少なくとも1つの金属イオンを含む。
【0039】
塩は、硝酸塩;硫酸塩;炭酸塩;ハロゲン化物(フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物);有機酸による塩、例えば、酢酸塩、酒石酸塩、シュウ酸塩;H(AuCl)等の金属酸を含む群から選択することができる。
【0040】
好適な塩の例は、CuCl、CuCl、CuSO、Cu(NO、AgNO、H(AuCl)、PdCl、ZnCl、ZnSO、SnCl、SnCl、Cu(CHCOO)、CuCO、Cu(ClOであり、これらの塩の水和物も使用することができる。
【0041】
好ましい実施の形態では、金属塩はCuイオンを含む。金属塩は、CuCl、CuCl、CuSO、Cu(NO、Cu(CHCOO)、CuCO、及び/又はCu(ClOであるのが更に好ましい。
【0042】
好ましい実施の形態では、金属イオンとオルガノシルセスキオキサンとの比率が、500:1〜1:50となる。好ましい実施の形態では、該比率は500:1〜1:2である。別の好ましい実施の形態では、該比率が少なくとも1:1であり、最大500:1となる。金属イオンを過剰に使用することによって、金属コロイド1つ当たりのオルガノシルセスキオキサンの数を制御することができる。
【0043】
組成物は、少なくとも1つの還元剤を更に含む。還元剤は、金属塩の金属を、金属へと還元し得るのに必要である。還元剤の例は、ヒドラジン又はヒドラジン誘導体、水素化ホウ素ナトリウム等のホウ化水素、アスコルビン酸、リンゴ酸、シュウ酸、ギ酸、クエン酸、それらの塩、NaSO、Na、メルカプタン、アミン、次亜リン酸ナトリウム(NaHPO)等の次亜リン酸塩、糖である。好ましい実施の形態では、還元剤は、アスコルビン酸、ヒドラジン、水素化ホウ素ナトリウム、及び次亜リン酸ナトリウムを含む群から選択される。
【0044】
金属イオンと還元剤とのモル比は50:1〜1:50とすることができる。
【0045】
組成物はまた、少なくとも1つの溶媒を含む。少なくとも1つの溶媒は、組成物のあらゆる構成成分を溶解することができる溶媒である。構成成分の性質に応じて、極性溶媒若しくは非極性溶媒、又はそれらの混合物を使用してもよい。極性溶媒の例は、水;メタノール、エタノール、プロパノール、n−ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール又はジエチレングリコール等のアルコール;ジエチルエーテル又はテトラヒドロフラン等のエーテル;DMFである。非極性溶媒の例は、ペンタン、ヘキサン又はシクロヘキサン等のアルカン;ベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン又はトルエン等の芳香族溶媒;クロロホルムである。少なくとも2つの溶媒の混合物を使用してもよい。
【0046】
本発明の好ましい実施の形態では、第1の工程において、少なくとも1つの溶媒中の金属塩の溶液又は分散液を調製する。この工程では、通常、エチレングリコール、水、エーテル、アルコール、又はそれらの混合物のような極性溶媒を使用する。
【0047】
本発明の一実施の形態では、金属塩の濃度が0.005mol/l〜2mol/lとなる。
【0048】
これにオルガノシルセスキオキサンを添加する。好ましくは、オルガノシルセスキオキサンを溶媒溶液として添加する。この溶媒は、金属塩に使用するものと同じ溶媒であっても異なる溶媒であってもよい。必要であれば、溶液中のあらゆる構成成分を得られる混合物中に維持するために、オルガノシルセスキオキサンを、加熱させた溶液に添加してもよい。
【0049】
本発明の一実施の形態では、オルガノシルセスキオキサンの溶液の濃度が0.0001mol/l〜2mol/lとなる。
【0050】
この混合物に最終工程で還元剤を添加する。この添加は好ましくは、1分〜2時間の期間にわたって行われる。この時間中、混合物は通常、撹拌される。
【0051】
好ましい実施の形態では、還元剤を、好ましくは濃度が0.05mol/l〜2mol/lの溶液として添加する。
【0052】
還元剤の添加中、又は還元剤の添加後、熱処理及び/又は光化学処理を実施して金属塩の金属の還元を誘起させる。
【0053】
このような処理は、周囲温度における混合物の撹拌を含んでいてもよい。該処理はまた、混合物の加熱又は0℃未満の冷却を含んでいてもよい。加熱は、混合物を30℃〜120℃へと加熱することを含むものであってもよい。
【0054】
混合物を更にこの温度で或る特定の期間、好ましくは5分〜48時間、処理してもよい。金属コロイドを形成する全反応に2時間〜48時間かけることが好ましい。
【0055】
金属及び還元剤に応じて、混合物は、室温で撹拌しても、又は冷やす若しくは加熱してもよい。
【0056】
反応中に温度を変えてもよい。
【0057】
好ましい実施の形態では、溶液が、分散剤、安定化剤又はキャッピング剤のようないずれの更なる成分も含有しない。
【0058】
本発明の別の実施の形態では、溶液が、分散剤、キャッピング剤又は安定化剤のような更なる添加剤を含有していてもよい。これは、粒子の凝集を防止するのに有益となり得る。
【0059】
或る特定の期間の後に反応をクエンチすることが必要である場合がある。クエンチ後、反応物を一定期間、先に述べたような範囲の1又は一連の異なる温度で更に撹拌することが必要である場合がある。
【0060】
好ましい実施の形態では、このプロセスが一段階法であるため、反応中にエマルション又は別の液相が何も存在しない。また、該プロセスは、別の還元剤の添加等のいずれの更なる工程も含まないことが好ましい。
【0061】
結果として、少なくとも1つのオルガノシルセスキオキサンで改質された金属コロイドが形成される。
【0062】
本方法は、反応混合物を清浄し(cleaning)、必要であれば、改質金属コロイドを単離する更なる工程を含んでいてもよい。
【0063】
好ましい実施の形態では、これらの工程は、遠心分離、デカンテーション、クロスフロー濾過又は濾過を含む。また、得られる粉末を真空乾燥させてもよい。
【0064】
金属コロイドは好ましくは、40nm未満、30nm未満、20nm未満、好ましくは1nm〜40nm、2nm〜30nm、特に好ましくは4nm〜20nmの平均粒径(TEMで測定)を有する。
【0065】
本発明の別の態様は、少なくとも1つの金属コロイドを少なくとも1つの溶媒中に分散させる工程を含む表面改質金属コロイドを製造する方法である。先の方法について述べたように、少なくとも1つのオルガノシルセスキオキサンを添加する。
【0066】
少なくとも1つの溶媒は、極性溶媒又は非極性溶媒とすることができ、又はそれらの混合物を使用してもよい。極性溶媒の例は、水;メタノール、エタノール、プロパノール、n−ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール又はジエチレングリコール等のアルコール;ジエチルエーテル又はテトラヒドロフラン等のエーテル;DMFである。非極性溶媒の例は、ペンタン、ヘキサン又はシクロヘキサン等のアルカン;ベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン又はトルエン等の芳香族溶媒;クロロホルムである。少なくとも2つの溶媒の混合物を使用してもよい。水、アルコール又はTHF等の極性溶媒が好ましい。
【0067】
混合物を或る特定の期間、例えば1時間〜48時間、好ましくは3時間〜18時間、更に撹拌することが必要である場合がある。表面改質は、溶媒及び反応条件(還流、密閉容器、開放容器)に応じて、0℃〜140℃の温度で、好ましくは20℃〜130℃の温度で行うことができる。
【0068】
得られる改質金属コロイドは、そのまま、又は、例えば遠心分離、濾過若しくはクロスフロー濾過によって更に単離若しくは清浄して使用することができる。
【0069】
Cu:シルセスキオキサンのモル比は、300:1〜1:20、好ましくは5:1〜10:1、より好ましくは2:1〜10:1とすることができる。官能基が金属コロイドの表面に結合しなければならいことから、大量のシルセスキオキサンが必要とされると思われる。
【0070】
好ましい実施の形態では、改質に使用される金属コロイドが、1000g/mol未満、800g/mol未満、500g/mol未満の分子量を有する化合物で表面改質される。このような表面改質により、オルガノシルセスキオキサンが金属コロイドの表面に容易に結合し得る。このような化合物の例は、デヒドロアスコルビン酸である。PVP等の安定化ポリマーが何も存在しないことが好ましい。
【0071】
本発明の好ましい実施の形態では、表面改質金属コロイドが、3wt%〜30wt%の炭素含有率を有する。
【0072】
本発明の好ましい実施の形態では、硫黄を含有するオルガノシルセスキオキサンを使用した場合、表面改質金属コロイドは、0.1wt%〜20wt%又は0.1wt%〜9wt%の硫黄含有率を有する。
【0073】
本発明の好ましい実施の形態では、窒素を含有するオルガノシルセスキオキサンを使用した場合、表面改質金属コロイドは、0.1wt%〜5wt%の窒素含有率を有する。
【0074】
本発明の方法により得られる表面改質金属コロイドは、様々な用途で使用することができる。使用されるオルガノシルセスキオキサンは、多くの種々の官能基を伴って得られ得るため、オルガノシルセスキオキサンは、金属コロイドをいずれの環境にも適合させることができる。
【0075】
オルガノシルセスキオキサンの、金属に親和性の少なくとも1つの基(The at least one metal affine group)は、金属コロイドの表面に化学結合、好ましくは共有結合又は配位結合を形成する。
【0076】
金属コロイドは、コーティング剤、塗料、パウダーコーティング剤、マスターバッチ、インク、織物、ポリマー、電子アプリケーション(electronic applications)、導電性コーティング剤、医療デバイス又はインプラントに使用することができる。特に、銅及び銀のような抗菌金属の金属コロイドを使用する場合、本発明の金属コロイドは、既述の用途において抗菌特性を付加することができる。
【0077】
金属コロイドを、ポリマー、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリレート、例えばポリメチルメタクリレート及びポリメチルアクリレート、ポリビニルブチラール、ポリカーボネート、ポリウレタン、ABSコポリマー、ポリ塩化ビニル、ポリエーテル、エポキシド樹脂、又はこのようなポリマーのモノマー若しくは前駆体、例えばエポキシド、イソシアネート、メタクリレート、アクリレートと混合することができる。金属コロイドは、かかるポリマーの重合前後に添加することができ、重合前に金属コロイドを添加することが好ましい。
【0078】
このような組成物は、当該技術分野において、意図した目的及び所望の特性に応じて一般に添加される更なる添加剤を含み得る。添加剤の具体例は、架橋剤、溶剤、有機及び無機着色顔料、染料、UV吸収剤、潤滑剤、レベリング剤、湿潤剤、接着促進剤、並びに開始剤である。開始剤は、熱又は光化学的に誘導される架橋に役立ち得る。
【0079】
組成物は、液体、ペースト又は粉末であってもよく、これは、例えばポリウレタンをベースとする、顆粒又はパウダーコーティング剤へと更に加工することもできる。
【0080】
組成物は、任意の従来通りの様式でコーティング用組成物として表面に塗布することができる。任意の一般的なコーティング方法を使用することができる。コーティング方法の例は遠心コーティング、(電着)浸漬コーティング、ナイフコーティング、噴霧、吹付け(squirting)、スピニング、引抜き(drawing)、スピンコーティング、ポーリング(pouring:流し込み)、ローリング、ブラッシング、フローコーティング、流延成形(film casting)、ブレードキャスティング、スロットコーティング、メニスカスコーティング、カーテンコーティング、ローラー塗布、又は従来の印刷法、例えばスクリーン印刷若しくはフレキソ印刷である。塗布されるコーティング用組成物の量は、所望の被膜の厚みがもたらされるように選ばれる。
【0081】
表面へのコーティング用組成物の塗布に続いて、適切な場合には、例えば周囲温度(40℃未満)における乾燥を行う。
【0082】
任意に事前乾燥させたコーティング剤に、熱及び/又は放射線による処理を施す。
【0083】
また、成形体を製造するのに該組成物を使用することもできる。
【0084】
本発明の好ましい実施の形態では、改質金属コロイドが、このような組成物中に、少なくとも0.15wt%、少なくとも0.3wt%、少なくとも0.4wt%、少なくとも0.5wt%で存在し、これとは無関係に、多くとも5wt%、多くとも3wt%で存在する。特に改質銅コロイドは、コーティング剤又は成形体に殺菌特性を付与することができる。
【0085】
金属コロイドはまた官能基を含む(comprise with)ことが可能で、これにより、組成物のモノマー又はポリマーと架橋し得る。
【0086】
そのため本発明の目的は、少なくとも1つの本発明による改質金属コロイドを含む成形体又はコーティング剤、好ましくはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリレート、例えばポリメチルメタクリレート及びポリメチルアクリレート、ポリビニルブチラール、ポリカーボネート、ポリウレタン、ABSコポリマー、ポリ塩化ビニル、ポリエーテル、エポキシド樹脂を含む群から選択されるポリマーを少なくとも1つ含む成形体又はコーティング剤を提供することである。
【0087】
また、本発明の目的は、このようなコーティング剤でコーティングされる基体を提供することである。基体は、プラスチック、金属、ガラス又はセラミックから作られるものとすることができる。
【0088】
本発明の別の態様は、金属コロイドの表面改質のための上記のオルガノシルセスキオキサンの使用である。
【0089】
本発明のオルガノシルセスキオキサンは好ましくは、欧州特許第1957563号に従って製造される。
【0090】
第1の工程において、式RSiX(式中、Rは、加水分解するのに安定な有機基であり、後に、オルガノシルセスキオキサンのSiと結合する有機基を形成し、各Xは、他の各X基と同じか又は異なり、各Si−X結合が加水分解性となってSi−OH結合を形成するように、化学反応性基から選択される)を有する少なくとも50モル%の加水分解性モノマー前駆体を含む、加水分解性モノマー前駆体を、鉱酸触媒の存在下で部分的に加水分解させる。完全な縮合前に、過剰な水で液体組成物をクエンチさせる。
【0091】
その後、オルガノシルセスキオキサンを、通常、分離相として単離させる。蒸発によって残存するあらゆる溶媒を除去してもよい。
【0092】
好ましい実施の形態では、加水分解性モノマー前駆体を溶液中で部分的に加水分解させる。溶媒は極性溶媒とするが、これは水でなく、好ましくはアルコール、より好ましくは100℃未満の沸点を有するアルコールとする。
【0093】
部分加水分解の水の量は、加水分解性モノマー前駆体中に存在する1つ又は多くとも2つの加水分解性結合の加水分解を実現させるものとする。好ましい実施の形態では、水の量は、1つの加水分解性結合の加水分解に関する水の量とする。
【0094】
好ましい実施の形態では、X基は、同じであっても異なっていてもよく、水素、ヒドロキシル又はハロゲン(F、Cl、Br又はI)、好ましくは炭素数1〜12、特に炭素数1〜6の、アルコキシ(好ましくはC1〜6アルコキシ、例えばメトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、i−プロポキシ及びブトキシ)、アリールオキシ(好ましくはC6〜10アリールオキシ、例えばフェノキシ)、アシルオキシ(好ましくはC1〜6アシルオキシ、例えばアセトキシ又はプロピオニルオキシ)、アルキルカルボニル(好ましくはC2〜7アルキルカルボニル、例えばアセチル)、アミノ、モノアルキルアミノ又はジアルキルアミノを含む群から選択される。好ましい加水分解性基は、ハロゲン、アルコキシ基及びアシルオキシ基である。特に好ましい加水分解性基は、C1〜4アルコキシ基、特にメトキシ及びエトキシである。
【0095】
好ましい実施の形態では、加水分解性モノマー前駆体の70モル%、80モル%又は100モル%が式RSiXを有する。
【0096】
必要であれば、後にオルガノシルセスキオキサンのSi原子と結合する、加水分解性前駆体の官能基を、シルセスキオキサンの合成前に保護しておいてもよく、例えば、イソシアネートをブロック化しておいてもよい。
【0097】
加水分解性モノマー前駆体として有用なシランの例は、γ−グリシジルオキシアルキルトリアルコキシシラン、エポキシアルキルトリ(メ)エトキシシラン又は2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)アルキルトリ(メ)エトキシ−シラン((メ)エトキシはメトキシ又はエトキシである)(ここで、アルキル基は炭素数2〜6であり得る)、γ−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン(GPTS)、γ−グリシジルオキシプロピル−トリエトキシシラン(GPTES)、3,4−エポキシブチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、ヒドロキシメチルトリエトキシシラン、ビス(ヒドロキシエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン及びN−ヒドロキシエチル−N−メチルアミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、トリメトキシシリルプロピルジエチレントリアミン、N−(6−アミノヘキシル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、4−アミノブチルトリエトキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)−フェニルエチルトリメトキシシラン及びアミノフェニルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、2−メルカプトエチルトリエトキシシラン、1,2−ジメルカプトエチルトリメトキシシラン及びp−メルカプトフェニルトリメトキシシラン、3−イソシアナトプロピルトリ(メ)エトキシシラン及び3−イソシアナトプロピルジメチルクロロシランである。
【0098】
本発明の好ましい実施の形態では、1種類の加水分解性モノマー前駆体を使用する。
【0099】
本発明の好ましい実施の形態では、少なくとも2つの異なる加水分解性モノマー前駆体を使用し、それらが、異なる非加水分解性基を含んでいることが好ましい。
【0100】
本発明の他の目的及び利点は、添付の図面と併せて、本明細書及び添付の特許請求の範囲を読むことにより確認することができる。
【0101】
本発明のより完全な理解のために、添付の図面に関連してなされる以下の説明について述べる。
【図面の簡単な説明】
【0102】
図1】CuV146についてのXRD(X線回折)スペクトル(Cu Kα)である。
図2】CuV094aについてのXRDスペクトルである。
図3】CuV140についてのXRDスペクトルである。
図4】CuV140SH_1についてのXRDスペクトルである。
図5】CuV140SH_2についてのXRDスペクトルである。
図6】遊離リガンドと比較した、NaBHを還元剤として用いたCu/SSQ−SH 1:1(モル比)(CuV077)についてのIRスペクトルである。
図7】遊離リガンドと比較した、NaBHを還元剤として用いたCu/SSQ−SH 4:1(CuV078)についてのIRスペクトルである。
図8】NaHPOを還元剤として用いたCu/SSQ−SH 4:1(CuV091)についてのIRスペクトルである。
図9】アスコルビン酸を還元剤として用いたCu/SSQ−SH 185:1(CuV146)についてのIRスペクトルである。
図10】アスコルビン酸を還元剤として用いたCu/SSQ−SH−NH 33:1(CuV103)についてのIRスペクトルである。
図11】アスコルビン酸を還元剤として用いたCu/SSQ−SH−NH(CuV107)についてのIRスペクトルである。
図12】NaBHを還元剤として用いたCu/SSQ−SH−NH(CuV109)についてのIRスペクトルである。
図13】アスコルビン酸を還元剤として用いた、種々の比率(1/0、5/1、3/1、2/1)のCu/SSQ−SH(CuV140、CuV140−SH_1、CuV140−SH_2、CuV140−SH_3)についてのIRスペクトルである。
図14】乾燥させた粒子分散液(CuV077)によるTEM顕微鏡写真である。
図15】乾燥させた粒子分散液(CuV078)によるTEM顕微鏡写真である。
図16】乾燥させた粒子分散液(CuV091)によるTEM顕微鏡写真である。
図17】乾燥させた粒子分散液(CuV146)によるTEM顕微鏡写真である。
図18】乾燥させた粒子分散液Cu:SSQ−SH 16.7:1(CuV094a)によるTEM顕微鏡写真である。
図19】乾燥させた粒子分散液Cu:SSQ−SH 33.5:1(CuV094b)によるTEM顕微鏡写真である。
図20】乾燥させた粒子分散液Cu:SSQ−SH 66.9:1(CuV094c)によるTEM顕微鏡写真である。
図21】乾燥させた粒子分散液Cu:SSQ−SH 133.8:1(CuV094d)によるTEM顕微鏡写真である。
図22】乾燥させた粒子分散液Cu/SSQ−SH−NH 33:1(CuV103)によるTEM顕微鏡写真である。
図23】乾燥させた粒子分散液Cu/SSQ−SH−NH(CuV107)によるTEM顕微鏡写真である。
図24】乾燥させた粒子分散液Cu/SSQ−SH−NH(CuV109)によるTEM顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0103】
図1は、SSQ−SHで改質された金属コロイドのXRDスペクトルを示すものである。銅の結晶性金属相の反射がはっきりと見える。
【0104】
図2は、SSQ−SHで改質された金属コロイドのXRDスペクトルを示すものである。
【0105】
図3は、アスコルビン酸による還元によって得られる金属コロイドのXRDスペクトルを示すものである。
【0106】
図4は、図3の金属コロイドをSSQ−SHで表面改質することによって得られる金属コロイドのXRDスペクトルを示すものである。結晶性銅相の反射が同じままである。
【0107】
図5は、図3の金属コロイドを異なる量のSSQ−SHで表面改質することによって得られる金属コロイドのXRDスペクトルを示すものである。結晶性銅相の反射が同じままである。
【0108】
図6は、SSQ−SHで改質された金属コロイドのIRスペクトル、及び遊離SSQ−SHのIRスペクトルを示すものである。SSQ−SHが、特に2560cm−1におけるSHバンドの還元によって、金属コロイドの表面に結合していることが見てとれる。
【0109】
図7は、NaBHを還元剤として用いて得られる、SSQ−SHで改質された金属コロイドのIRスペクトルを示すものである。SSQ−SHのバンドが改質金属コロイドのスペクトル中に依然として見られる。
【0110】
図8は、NaHPOを還元剤として用いて得られる、SSQ−SHで改質された金属コロイドのIRスペクトルを示すものである。SSQ−SHのバンドが改質金属コロイドのスペクトル中に依然として見られる。
【0111】
図9は、アスコルビン酸を還元剤として用いて得られる、SSQ−SHで改質された金属コロイドのIRスペクトルを示すものである。IRスペクトル中、SSQ−SHの側に(beside)、同様にアスコルビン酸又はその還元体も、改質金属コロイドの表面に結合していることが見てとれる。
【0112】
SSQ−SHと金属との比率を変えると、図10に示されるような類似のIRスペクトルが得られる。
【0113】
図11は、アスコルビン酸を還元剤として用いて得られる、SSQ−SH−NHで改質された金属コロイドの表面のIRスペクトルを示すものである。SSQ−SH−NHのバンドは弱い。
【0114】
図12は、NaBHを還元剤として用いて得られる、SSQ−SH−NHで改質された金属コロイドの表面のIRスペクトルを示すものである。SSQ−SH−NHのバンドは良好に見える。
【0115】
図13は、オルガノシルセスキオキサンで改質されていない金属コロイド(CuV140)、及びSSQ−SHの使用量を増大させて金属コロイドを改質したもののIRスペクトルを示すものである。全ての場合において、SSQ−SHは金属コロイドの表面にはっきりと結合している。
【0116】
図14図24は、種々の実施例による分散液の乾燥粒子のTEM顕微鏡写真を示すものである。
【0117】
表5は、種々の実施例による元素分析からの炭素含有率(表記:C)、硫黄含有率(表記:S)及び窒素含有率(表記:N)を示すものである。
【0118】
特に、S含有率は、金属コロイドの表面上におけるオルガノシルセスキオキサンの存在を示している。これらの値は、実験に使用される金属とオルガノシルセスキオキサンとの比率に比例する範囲内にある。16.7〜1のモル比から、12.19±0.27wt%の硫黄含有率が導かれる。33.5:1のより小さい比率からは、8.67±0.02wt%の硫黄含有率が導かれる。オルガノシルセスキオキサンの更に小さい比率(amount)(66.9:1又は133.8:1)からはそれぞれ、5.89±0.16wt%、5.10±0.25wt%が導かれる。これらの場合には、同量のオルガノシルセスキオキサンが金属コロイドと結合していることが分かる。
【0119】
これによって、粒子の合成中に存在する比率により、粒子の表面上のオルガノシルセスキオキサンの量を制御することができることが示される。
【0120】
表6は、オルガノシルセスキオキサンによる金属コロイドの表面改質に関する類似の実験を示すものである。この表は、元素分析からの炭素含有率(表記:C)及び硫黄含有率(表記:S)を開示している。この金属コロイドに関して、オルガノシルセスキオキサンによる表面改質についての最適な比率が存在することが分かる。
【実施例】
【0121】
SSQの分子量は、GPC−SECにより求めた。THF 1ml中のPDMS標準物質(分子量311g/mol、3510g/mol、10700g/mol)で較正した。測定には、下記条件:移動相THF(1mL/分)、固定相PSSプレカラム、PSS−SDV 100オングストローム、8×300mm;サンプル体積50μL、検出器RIDを使用した。サンプルは全て希釈せずに測定した。
【0122】
元素分析は、vario Micro Cube(Elementar Analysensysteme GmbH Germany、1200℃)を用いて高温加熱により実施した。Heガスによって運ばれる生成した被検査ガスN、HO、CO及びSOが、昇温脱離カラム(temperature programmable desorption column)(TPD)によって順次分離され、熱伝導度検出器(thermo-conductivity detector)(TCD)により定量される。乾燥粉末を測定した。
【0123】
実施例1:メルカプト官能化シルセスキオキサン(SSQ−SH)に関する製作手順
工程1−反応性溶媒の調製
周囲条件下で下記のものを混合して均質溶液とする。
【0124】
【表1】
【0125】
混合後、溶液を30分以内に使用するか、又は室温で密閉容器内に保存する。
【0126】
工程2−前加水分解
容器に1モル当量(2500g)の(3−メルカプトプロピル)−トリメトキシシランを充填し、混合しながら60l/分の速度で工程1による反応性溶媒を添加する。反応が発熱反応であれば溶液の温度をモニタリングすることとし、溶媒損失を防ぐために反応容器を名目上(nominally)封止する。
【0127】
工程3−一次縮合
工程2による溶液を封止し、下記プロセス条件に従って65℃で4時間エージングする。
【0128】
【表2】
【0129】
工程4−二次縮合及び樹脂の回収
溶液混合物の量
【0130】
【表3】
【0131】
工程3による溶液を、撹拌しながら脱イオン水に注入する。1時間後、混合物を強力撹拌して沈殿させ、2つの不混和相を形成させた後、デカンテーション/排水により分離する。シルセスキオキサンは2つの相の下層のものである。
【0132】
工程5−樹脂の乾燥
シルセスキオキサン樹脂は、透明度及び保存寿命に影響を及ぼす可能性のある残留するアルコール及び/又は水を含有すると考えられる。残留物は、回収した樹脂を65℃で加熱するといった蒸発法によって除去することができる。含有率は重量測定又は分光法により測定することができる。
【0133】
【表4】
【0134】
生成されるシルセスキオキサンは1100g/モルの平均分子量を有する。
【0135】
実施例2:メルカプト−アミン官能化シルセスキオキサン(SSQ−SH−NH)に関する製作手順
工程1−反応性溶媒の調製
実施例1と同様。
【0136】
工程2−前加水分解
容器に0.5モル当量の3−メルカプトプロピル−トリメトキシシラン及び0.5モル当量の3−イソシアナトプロピル−トリエトキシシランを充填し、混合しながら60l/分の速度で工程1による反応性溶媒を添加する。反応が発熱反応であれば溶液の温度をモニタリングすることとし、溶媒損失を防ぐために反応容器を名目上封止する。反応条件に従って、ブロック化されていないイソシアネート末端基を、反応混合物中に存在する水に起因してアミン官能性末端基へと加水分解させると、メルカプト−アミン官能化SSQの混合物(mixed mercapto-amine-functionalised SSQ)がもたらされる。
【0137】
工程3−一次縮合
実施例1と同様。
【0138】
工程4−二次縮合及び樹脂の回収
実施例1と同様。
【0139】
工程5−樹脂の乾燥
実施例1と同様。
【0140】
生成されるシルセスキオキサンは1200g/molの平均分子量を有する。
【0141】
実施例3:メルカプト−ブロック化イソシアナト官能化シルセスキオキサン(SSQ−SH−NCO−B)に関する製作手順
工程1−反応性溶媒の調製
実施例1と同様。
【0142】
工程2−前加水分解
3−イソシアナトプロピル−トリエトキシシランを1,2,4−トリアゾールと反応させることによって、ブロック化イソシアネート官能基が得られる。該ブロッキング剤は、完全な変換を確実にするために化学量論量を僅かに超えるように(1/1.1)使用する。1,2,4−トリアゾールを窒素雰囲気下で初めに充填し、135℃の油浴温度で溶融する。3−イソシアナトプロピル−トリエトキシシランを滴加する。反応時間は6時間とし、イソシアネートバンドによりIR分光法によってモニタリングする。続いて、容器に0.5モル当量の3−メルカプトプロピル−トリメトキシシラン及び0.5モル当量の1,2,4−トリアゾール−ブロック化3−イソシアナトプロピル−トリメトキシシラン及び工程1による反応性溶媒を、混合しながら60l/分の速度で添加する。反応が発熱反応であれば溶液の温度をモニタリングすることとし、溶媒損失を防ぐために反応容器を名目上封止する。
【0143】
工程3−一次縮合
実施例1と同様。
【0144】
工程4−二次縮合及び樹脂の回収
実施例1と同様。
【0145】
工程5−樹脂の乾燥
実施例1と同様。
【0146】
生成されるシルセスキオキサンは1900g/molの平均分子量を有する。
【0147】
実施例4:NaBHを還元剤として用いたCu/SSQ−SH 1/1(CuV077)
0.6gのCuSO・5HOを120mlのエチレングリコールに溶解し、4gのエチレングリコールに溶解させた2.69gのSSQ−SHを添加した。続いて、エチレングリコールに溶解させたNaBHを滴加し(50ml中0.55g、2ml/分)、750rpmで2時間撹拌した。2時間後、反応混合物を120℃に加熱し、16時間反応させた。清浄のため、得られた混合物を8000rpmで10分間遠心分離し、エチレングリコール、THF及びエタノールで洗浄した。残余分は褐色を示し、これを40℃で12時間真空乾燥させた。
【0148】
実施例5:NaBHを還元剤として用いたCu/SSQ−SH 4/1(CuV078)
0.6gのCuSO・5HOを120mlのエチレングリコールに溶解し、2gのTHFに溶解させた0.67gのSSQ−SHを添加した。続いて、エチレングリコールに溶解させたNaBHを滴加し(50ml中0.55g、2ml/分)、750rpmで2時間撹拌した。2時間後、反応混合物を120℃に加熱し、6時間反応させた。清浄のため、得られた混合物を8000rpmで10分間遠心分離し、エチレングリコール及びTHFで洗浄した。残余分は褐色を示し、これを40℃で12時間真空乾燥させた。
【0149】
実施例6:NaHPOを還元剤として用いたCu/SSQ−SH 4/1(CuV091)
0.6gのCuSO・5HOを120mlのエチレングリコールに溶解し、2gのTHFに溶解させた0.67gのSSQ−SHを添加した。混合物を90℃に加熱した。続いて、エチレングリコールに溶解させたNaHPOを滴加し(10ml中0.98g、5ml/分)、4分間撹拌し、水浴内でクエンチさせた。さらに、100mlの氷/水混合物を添加した。2時間後、反応混合物を120℃に加熱し、6時間反応させた。清浄のため、得られた混合物を10000rpmで10分間遠心分離し、脱イオン水及びエタノール(無水)で洗浄した。残余分は褐色を示し、これを40℃で12時間真空乾燥させた。
【0150】
実施例7:アスコルビン酸を還元剤として用いたCu/SSQ−SH 185/1(CuV146)
125gのCuSO・5HOを、400mlの水/100mlのエタノールの混合物に溶解し、80℃に加熱した。3.0gのSSQ−SHを5mlのTHFに溶解し、反応混合物に添加した。250mlの水に溶解させた44gのアスコルビン酸を滴加し、24時間撹拌した。清浄のため、得られた混合物を10000rpmで15分間遠心分離し、脱イオン水及びエタノール(無水)で洗浄した。残余分は褐色を示し、これを40℃で12時間真空乾燥させた。
【0151】
実施例8:NaBHを還元剤として用いたCu/SSQ−SH 16.7/1(CuV094a)
0.3gのCuSO・5HOを60mlのエチレングリコールに溶解し、5mlのトルエンに溶解させた0.08gのSSQ−SHを添加した。続いて、エチレングリコールに溶解させたNaBHを滴加し(25ml中0.25g、2ml/分)、750rpmで2時間撹拌した。清浄のため、得られた混合物を10000rpmで10分間遠心分離し、トルエン及びエタノールで洗浄した。残余分は褐色を示し、これを40℃で12時間真空乾燥させた。
【0152】
実施例9:NaBHを還元剤として用いたCu/SSQ−SH 33.5/1(CuV094b)
0.3gのCuSO・5HOを60mlのエチレングリコールに溶解し、5mlのトルエンに溶解させた0.04gのSSQ−SHを添加した。続いて、エチレングリコールに溶解させたNaBHを滴加し(25ml中0.25g、2ml/分)、750rpmで2時間撹拌した。清浄のため、得られた混合物を10000rpmで10分間遠心分離し、トルエン及びエタノールで洗浄した。残余分は褐色を示し、これを40℃で12時間真空乾燥させた。
【0153】
実施例10:NaBHを還元剤として用いたCu/SSQ−SH 66.9/1(CuV094c)
0.3gのCuSO・5HOを60mlのエチレングリコールに溶解し、5mlのトルエンに溶解させた0.02gのSSQ−SHを添加した。続いて、エチレングリコールに溶解させたNaBHを滴加し(25ml中0.25g、2ml/分)、750rpmで2時間撹拌した。清浄のため、得られた混合物を10000rpmで10分間遠心分離し、トルエン及びエタノールで洗浄した。残余分は褐色を示し、これを40℃で12時間真空乾燥させた。
【0154】
実施例11:NaBHを還元剤として用いたCu/SSQ−SH 133.8/1(CuV094d)
0.3gのCuSO・5HOを60mlのエチレングリコールに溶解し、5mlのトルエンに溶解させた0.01gのSSQ−SHを添加した。続いて、エチレングリコールに溶解させたNaBHを滴加し(25ml中0.25g、2ml/分)、750rpmで2時間撹拌した。清浄のため、得られた混合物を10000rpmで10分間遠心分離し、トルエン及びエタノールで洗浄した。残余分は褐色を示し、これを40℃で12時間真空乾燥させた。
【0155】
実施例12:アスコルビン酸を還元剤として用いたCu/SSQ−SH−NH 33/1(CuV103)
0.6gのCuSO・5HOを60mlの水に溶解し、80℃に加熱した。0.08gのSSQ−SH−NHを1mlのTHFに溶解し、反応混合物に添加した。40mlの水に溶解させた6.36gのアスコルビン酸を滴加し、24時間撹拌した。清浄のため、得られた混合物を10000rpmで15分間遠心分離し、脱イオン水及びエタノール(無水)で洗浄した。残余分は褐色を示し、これを40℃で12時間真空乾燥させた。
【0156】
実施例13:アスコルビン酸を還元剤として用いたCu/SSQ−SH−NH(CuV107)
2.5gのCuSO・5HOを50mlの水に溶解し、80℃に加熱した。0.09gのSSQ−SH−NHを2mlのTHFに溶解し、反応混合物に添加した。50mlの水に溶解させた8.8gのアスコルビン酸を滴加し、16時間撹拌した。清浄のため、得られた混合物を10000rpmで15分間遠心分離し、脱イオン水及びエタノール(無水)で洗浄した。残余分は褐色を示し、これを40℃で12時間真空乾燥させた。
【0157】
実施例14:NaBHを還元剤として用いたCu/SSQ−SH−NH(CuV109)
0.3gのCuSO・5HOを60mlのエタノールに溶解し、2mlのTHFに溶解させた0.08gのSSQ−SH−NHを添加した。続いて、エタノールに溶解させたNaBHを滴加し(40ml中0.8g、2ml/分)、750rpmで2時間撹拌した。2時間後、反応混合物を120℃に加熱し、6時間反応させた。清浄のため、得られた混合物を8000rpmで10分間遠心分離し、エタノール及び脱イオン水で洗浄した。残余分は褐色を示し、これを40℃で12時間真空乾燥させた。
【0158】
実施例15:アスコルビン酸を還元剤として用いたCu/SSQ−SH 1/0(CuV140)
125gのCuSO・5HOを500mlの水に溶解し、80℃に加熱した。250mlの水に溶解させた44gのアスコルビン酸を滴加し(5ml/分)、16時間撹拌した。清浄のため、得られた混合物を10000rpmで15分間遠心分離し、脱イオン水及びエタノール(無水)で洗浄した。残余分は褐色を示し、これを40℃で12時間真空乾燥させた。
【0159】
実施例16:アスコルビン酸を還元剤として用いたCu/SSQ−SH 1/0.75(CuV140−SH_1)(Cu/SSQ−SH_1)
5g(CuV140)を700mlの水に再分散させ、2.4mlのTHFに溶解させた1gのSSQ−SHと混合して、24時間撹拌した。清浄のため、得られた混合物を10000rpmで15分間遠心分離し、脱イオン水及びエタノール(無水)で洗浄した。残余分は褐色を示し、これを40℃で12時間真空乾燥させた。
【0160】
実施例17:アスコルビン酸を還元剤として用いたCu/SSQ−SH 1/1.26(CuV140−SH_2)(Cu/SSQ−SH_2)
5g(CuV140)を700mlの水に再分散させ、4mlのTHFに溶解させた1.66gのSSQ−SHと混合して、24時間撹拌した。清浄のため、得られた混合物を10000rpmで15分間遠心分離し、脱イオン水及びエタノール(無水)で洗浄した。残余分は褐色を示し、これを40℃で12時間真空乾燥させた。
【0161】
実施例18:アスコルビン酸を還元剤として用いたCu/SSQ−SH 1/1.84(CuV140−SH_3)(Cu/SSQ−SH_3)
5g(CuV140)を700mlの水に再分散させ、6mlのTHFに溶解させた2.5gのSSQ−SHと混合して、24時間撹拌した。清浄のため、得られた混合物を10000rpmで15分間遠心分離し、脱イオン水及びエタノール(無水)で洗浄した。残余分は褐色を示し、これを40℃で12時間真空乾燥させた。
【0162】
多くの具体的な実施形態と併せて本発明を記載し、説明してきたが、当業者であれば、本明細書に説明され、記載され、また特許請求される本発明の原理から逸脱することなく変更及び修正を行なうことができることを理解するであろう。本発明は、その趣旨又は本質的な特徴から逸脱することなく他の具体的な形態で具体化され得る。記載される実施形態は、全ての点に関して説明であって限定ではないとみなされる。したがって、本発明の範囲は、上記明細書ではなく添付の特許請求の範囲によって示される。特許請求の範囲と均等な意味及び範囲内に含まれる全ての変更形態を、その範囲内に包含する。
【0163】
【表5】
【0164】
【表6】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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【国際調査報告】