(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2016-533957(P2016-533957A)
(43)【公表日】2016年11月4日
(54)【発明の名称】自動車の駆動方法及び自動車のための駆動システム
(51)【国際特許分類】
B60W 10/06 20060101AFI20161007BHJP
B60K 6/46 20071001ALI20161007BHJP
B60K 6/24 20071001ALI20161007BHJP
B60W 10/26 20060101ALI20161007BHJP
B60K 6/28 20071001ALI20161007BHJP
B60W 20/13 20160101ALI20161007BHJP
F02D 19/02 20060101ALI20161007BHJP
F02B 43/00 20060101ALI20161007BHJP
F02M 21/02 20060101ALI20161007BHJP
【FI】
B60W10/06 900
B60K6/46ZHV
B60K6/24
B60W10/26 900
B60K6/28
B60W20/13
F02D19/02 C
F02B43/00 A
F02M21/02 L
F02M21/02 301
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-537162(P2016-537162)
(86)(22)【出願日】2014年8月26日
(85)【翻訳文提出日】2016年4月18日
(86)【国際出願番号】EP2014002329
(87)【国際公開番号】WO2015028147
(87)【国際公開日】20150305
(31)【優先権主張番号】102013014457.4
(32)【優先日】2013年8月30日
(33)【優先権主張国】DE
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG
(71)【出願人】
【識別番号】500242786
【氏名又は名称】フラウンホファー ゲセルシャフト ツール フェールデルンク ダー アンゲヴァンテン フォルシュンク エー.ファオ.
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100105463
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 三男
(74)【代理人】
【識別番号】100129861
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 滝治
(74)【代理人】
【識別番号】100140464
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 匠
(72)【発明者】
【氏名】メルツ,トビアス
(72)【発明者】
【氏名】ハイム,リュディガー
(72)【発明者】
【氏名】プファイファー,トーマス
【テーマコード(参考)】
3D202
3G092
【Fターム(参考)】
3D202AA07
3D202BB02
3D202BB21
3D202BB51
3D202CC51
3D202CC57
3D202DD18
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3D202EE01
3G092AB07
3G092AB08
3G092AC02
3G092BA03
3G092EA11
3G092FA01
3G092FA15
3G092GA14
3G092HE01Z
(57)【要約】
自動車を専ら電動機で動かすために少なくとも一つの電動機が間接的又は直接的に自動車のドライブシャフトと結合しており、この電動機が、エネルギー貯蔵ユニットを介して電気エネルギーを供給され、このエネルギー貯蔵ユニットが、ガスエンジンによって駆動される発電機により充電電流を供給される、自動車の駆動方法及び自動車のための駆動システムを記載する。本発明は、自動車が動いている間は、電動機に割当可能な平均的な出力需要がガスエンジンに割当可能な平均的な出力放出量に相当するようにガスエンジンを動作させ、したがってエネルギー貯蔵ユニットに割当可能な充電状態が、変化しないか又は許容差を足した充電状態範囲内でしか変化しないことを特色とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車(1)を専ら電動機で動かすために少なくとも一つの電動機(2)が間接的又は直接的に前記自動車(1)のドライブシャフト(3)又はドライブハブと結合しており、前記電動機(2)が、エネルギー貯蔵ユニット(4)を介して電気エネルギーを供給され、前記電気エネルギー貯蔵ユニット(4)が、ガスエンジン(6)によって駆動される発電機(5)により充電電流を供給される、前記自動車(1)の駆動方法において、
前記自動車(1)が動いている間は、前記電動機(2)に割当可能な平均的な出力需要が前記ガスエンジン(6)に割当可能な平均的な出力放出量に相当するように前記ガスエンジン(6)を動作させ、したがって前記エネルギー貯蔵ユニット(4)に割当可能な充電状態が、変化しないか又は許容差を足した充電状態範囲内でしか変化しないことを特徴とする駆動方法。
【請求項2】
前記ガスエンジン(6)が、一定の回転数で、又は許容差を足した回転数範囲内の回転数で動作され、前記回転数、いわゆる回転数動作点では、前記ガスエンジン(6)が効率及び/又は排ガスを最適化されて動作されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ガスエンジン(6)が、様々な離散的な回転数で、いわゆる回転数動作点で、又は許容差を足した回転数範囲内の前記回転数動作点の周りの一つの回転数で、前記電動機(2)の前記平均的な出力需要を超えて出力需要が上回る場合に前記ガスエンジン(6)の前記回転数が段階的に若しくは切替え可能に上昇するように又は前記許容差を足した回転数範囲内で上昇するように動作されること、並びに前記ガスエンジン(6)が、効率及び/又は排ガスを最適化されて動作されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ガスエンジン(6)が、前記少なくとも一つの回転数動作点を出発点として、時間的に制限されており回転数が可変のブースト機能によって動作され、したがって前記電動機(2)の前記平均的な出力需要を超えて出力需要が上回ることを可能にすることを特徴とする請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記ガスエンジン(6)が、液化石油ガス(LPG)又は圧縮天然ガス(CNG)の形態の燃料によって動作されることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記エネルギー貯蔵ユニット(4)に割当可能な最大充電容量及び前記自動車(1)に積載されている燃料(7)の最大量は、前記自動車(1)によって到達可能な最大航続距離の一部分が、前記ガスエンジン(6)内での前記燃料(7)の燃焼及び前記発電機(5)による前記自動車(1)を駆動するための電気エネルギーへの変換のみによって達成されるように選択されていること、並びに
前記一部分が、最大航続距離の少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、特に好ましくは少なくとも90%であることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記許容差を足した充電状態範囲が、前記エネルギー貯蔵ユニットに割当可能な前記充電状態の最大±30%であることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記電気エネルギー貯蔵ユニット(4)が、前記自動車(1)の休止状態において、前記ガスエンジン(6)の動作により充電されることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
間接的又は直接的に自動車(1)のドライブシャフト(3)又はドライブハブと結合している少なくとも一つの電動機(2)と、電気エネルギー供給のために前記電動機(2)と電気的に結合している電気エネルギー貯蔵ユニット(4)と、充電電流供給のために前記電気エネルギー貯蔵ユニット(4)と電気的に結合している発電機(5)と電流生成のために作用結合しているガスエンジン(6)とを備えた前記自動車(1)のための駆動システムにおいて、
前記ガスエンジン(6)が一価又は二価のガスエンジンであり、前記電気エネルギー貯蔵ユニット(4)の充電容量が、前記自動車(1)に対して航続距離を決定しないことを特徴とする駆動システム。
【請求項10】
前記エネルギー貯蔵ユニット(4)の前記最大充電容量及び前記自動車(1)により積載されている燃料(7)の最大量が、前記自動車(1)によって到達可能な最大航続距離が前記航続距離の一部分では、前記ガスエンジン(6)内での前記燃料(7)の燃焼及び前記発電機(5)による前記自動車(1)を駆動するための電気エネルギーへの変換のみによって達成可能であるように選択されていること、並びに
前記一部分が、少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、特に好ましくは少なくとも90%であることを特徴とする請求項9に記載の駆動システム。
【請求項11】
前記電気エネルギー貯蔵ユニット(4)が、好ましくはニッケル水素、アルカリマンガンバッテリー、塩化亜鉛バッテリー、又は亜鉛炭素バッテリーの形態の安価な蓄電器であることを特徴とする請求項9又は10に記載の駆動システム。
【請求項12】
前記ガスエンジン(6)が、液化石油ガス(LPG)又は圧縮天然ガス(CNG)のための燃料タンク(8)を備えていることを特徴とする請求項9から11のいずれか一項に記載の駆動システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車を専ら電動機で動かすために少なくとも一つの電動機が間接的又は直接的に自動車のドライブシャフトと又は自動車のホイールの少なくとも一つのドライブハブと結合している、自動車の駆動方法及び自動車のための駆動システムに関する。この少なくとも一つの電動機は、エネルギー貯蔵ユニットを介して電気エネルギーを供給され、このエネルギー貯蔵ユニットの方は、ガスエンジンよって駆動される発電機により充電電流を供給される。
【背景技術】
【0002】
エレクトロモビリティは工業国においてますます関心を得ているが、とりわけ電動車両の実際の普及及び利用は、産業界や政治によって期待され望まれているよりはるかに少ない。これは、一つには電動機で駆動される自動車の航続距離がごく短いせいであり、そのうえこれまでは購入費がまだ高すぎたせいである。快適性及び航続距離に関する消費者の高い期待は、電動機によるドライブチェーンに関与するすべてのコンポーネントの効率を最適化することを技術開発に対して強い、したがってそれに伴う製造費が同じように上昇している。例えば、高効率の同期電動機がホイールの直接駆動に用いられ、同期電動機の電流供給にはエネルギー密度が特に高いリチウムイオン蓄電池が用いられている。
【0003】
これに加えてフル電動車両は、今のところまだ認識され得る航続距離問題のほかに、自動車に積載されている電気エネルギー貯蔵ユニットの充電時間が長すぎることと、少なくともこれまではまだ十分に普及していない充電インフラとによって理由づけられる追加的な動作問題を有している。
【0004】
上記の問題を回避又は軽減するため、電動機による駆動技術も燃焼に基づく駆動技術も適用されるハイブリッド駆動形態での自動車が売り出されている。とりわけ、自動車の直接駆動のために内燃機関も少なくとも一つの電動機も設けられている場合には、構造が複雑な、したがって製造費が高いトランスミッションユニット及びクラッチユニットを必要とし、これらのユニットは最終的に、バッテリー又は蓄電池のかなりの重量だけでなく、自動車の総重量にも顕著に反映される。
【0005】
これに対し、電動機で駆動される自動車のためのハイブリッドな駆動コンセプトが知られており、この自動車を動かすためには、ドライブシャフトと結合した少なくとも一つの電動機が用いられ、この電動機のエネルギー供給のために、再充電可能なバッテリー又は蓄電池が存在している。バッテリーの充電容量を超える電気エネルギー供給のためには、追加的に設けられた例えばディーゼルエンジン又はガソリンエンジンの形態の内燃機関が用いられ、この内燃機関は、電流生成のための発電機と結合しており、この発電機がバッテリー又は蓄電池の充電に用いられる。このような駆動コンセプトは、文献DE4121386A1でより詳しく説明されており、この駆動コンセプトでは、専ら電動機で駆動される自動車の自動車側のトレーラ連結器により、連結又は取外し可能なエネルギートレーラを繋ぎ合わせることができ、このエネルギートレーラが、発電機のための駆動部としての内燃機関を内包している。内燃機関によって駆動される発電機により生成され得る電気エネルギーが、車両バッテリーの充電に用いられ、したがってこの電気自動車による、車両バッテリーに貯蔵される総電荷の利用だけで到達可能な航続距離を、延長することができる。
【0006】
電気自動車のための、エネルギーを供給するトレーラを備えた類似の駆動コンセプトを文献DE9404746.4U1から読み取ることができ、この駆動コンセプトではガソリンエンジンが、エネルギーを供給するトレーラ上にある発電機を駆動するために設けられている。さらなる同等の、電気自動車のためのトレーラ上の電流ユニットをDE3732869A1から読み取ることができる。
【0007】
電流生成のための発電機を駆動するためにディーゼルエンジン及びガソリンエンジンを使用するだけでなく、文献DE102009045979A1ではガスタービンの使用が提案されており、このガスタービンは、新鮮な空気と、固体、液体、及び/又は気体状の燃料とから成る混合物によって動作され、したがって従来のディーゼルエンジン又はガソリンエンジンより最適化された効率及びまた少ない排出で動作することができる。電動機駆動に必要なバッテリーユニット又は蓄電池ユニットを充電するための電気エネルギー源としてガスタービンと発電機の組合せを用いた同等のハイブリッド駆動システムは、さらに文献DE102009000530A1、DE102005035313A1、及び米国特許出願公開第2011/0017532(A1)号から読み取れる。
【0008】
専ら少なくとも一つの電動機で駆動される自動車に電流供給するための、電流生成のための及び蓄電池又はバッテリーの充電のための発電機を駆動するためのディーゼル駆動、ガソリン駆動、及びガスタービン駆動のほかに、ガスエンジンの使用も知られており、ガスエンジンは、液化石油ガス(LPG)又は圧縮天然ガス(CNG)によって動作させることができ、これによりディーゼルエンジン及びガソリンエンジンに比べて少ない排ガス排出を達成することができる。ガスエンジンと組み合わせてハイブリッドに駆動されるこのような電動車両は、例えば文献DE102008051324A1、DE102010028312A1、DE19509625A1、及びDE102009027294A1に記載されている。
【0009】
文献DE102007004172A1は、積載されているバッテリーの絶え間ない放電によって電動機が電気エネルギーを供給される電動車両を開示している。同様に積載されている内燃機関によって駆動される発電機は、自動車のエンジンが切られた状態、つまり休止状態で、バッテリーを再充電することができる。緊急の場合にのみ、車両内の操作機構のアクティブ化によりいわゆる緊急走行モードが実現され、この緊急走行モードでは、車両はトラクションバッテリーなしで限定的な走行動作が可能である。この場合には例外的に、走行中に内燃機関によって駆動される発電機がアクティブ化され、この発電機によって提供される電力が電動機駆動部に直接的に、つまりトラクションバッテリーを迂回して提供される。
【0010】
文献WO2013/000534A1は、シリーズハイブリッド構造の自動車を説明しており、この自動車は、発電機を備えた内燃機関を内包するそれ自体で知られているレンジエクステンダーにより充電状態を上昇させ得る電気エネルギー貯蔵器を備えている。
【0011】
この文献から読み取れる技術的教示は、レンジエクステンダーの内燃機関を、発電機により経済的に出力制御することに関している。これに関しては内燃機関の回転数が制御され、この回転数は、発電機の負荷トルクを制御することで制御される。発電機の負荷トルクの制御の方は、積載されているエネルギー貯蔵器を発電機が充電する充電電流を制御することに基づいて行われる。
【0012】
文献DE69927341T2は、発電機を駆動する内燃機関を備えたハイブリッド車両を説明している。この発電機は、駆動輪を駆動するためにバッテリーとも第2の発電機とも結合している。この文献から読み取れる技術的教示は、ハイブリッド車両の個々のコンポーネントに対して個別に構想された調節論理に関しており、この調節論理を用い、少なくとも内燃機関及び第1の発電機の動作が、修正値及び規定値と実際値の多数の比較に応じて実現される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の基礎となる課題は、自動車を専ら電動機で動かすために少なくとも一つの電動機が間接的又は直接的に自動車のドライブシャフトと又は自動車のホイールの少なくとも一つのドライブハブと結合しており、この少なくとも一つの電動機が、エネルギー貯蔵ユニットを介して電気エネルギーを供給され、このエネルギー貯蔵ユニットの方は、ガスエンジンによって駆動される発電機により充電電流を供給される、自動車の駆動方法及びまた自動車のためのこれに関する駆動システムを、一方では、電動機で駆動される自動車に存在する航続距離問題を軽減又は解決するように、もう一方では安価なコンポーネントを採用するように、さらに発展させることである。とりわけ、支配的な開発信条、つまり航続距離及び効率が最適化された電動車両を実現するためにできるだけ最適化された個々のコンポーネントを組み合わせることに反して、以前から定評のある技術を採用し、ただしこれらの技術を、航続距離問題がさながら解決されるように、ただしこれがはるかに有利な実現費用で解決されるように用いる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の基礎となる課題の解決策は請求項1に提示されている。電動機で駆動される車両のための本解決策により形成された駆動システムは請求項9の対象である。本解決思想を有利に形成する特徴は、従属請求項の対象であり、また以下の説明から読み取ることができる。
【0015】
本発明の基礎となる考えは、それ自体で知られているシリーズハイブリッド駆動原理を採用しており、この駆動原理では、専ら電気により駆動される自動車が少なくとも一つの電動機を備えており、この電動機は、間接的又は直接的に自動車のドライブシャフトと又は自動車のホイールの少なくとも一つのドライブハブと結合しており、且つエネルギー貯蔵ユニットによって電気エネルギーを供給され、このエネルギー貯蔵ユニットは、ガスエンジンによって駆動される発電機を介して充電される。しかしながら本解決思想は、エネルギー貯蔵ユニットをそのエネルギー密度及び最大充電容量に関してそれほど最適に設計してはいないことにより、属概念のハイブリッド車両の支配的な開発戦略及び動作戦略に故意に背を向けている。むしろ、エネルギー貯蔵ユニットの最大充電容量は、そこに貯蔵される電気エネルギーがせいぜい、専ら電動機で駆動される走行方式の場合の、つまり積載されているガスエンジンと発電機とのユニットによるエネルギー貯蔵ユニットの充電がない場合の最低航続距離を達成するのに足りるように、容量決定されている。エネルギー貯蔵ユニットの明確に非常に制限して選択されたエネルギー貯蔵能力によって少なくとも保証されるべきは、約20〜50kmの最低航続距離の保証である。航続距離を決定するのはむしろ、エネルギー貯蔵ユニットを充電する発電機を駆動するガスエンジン内で燃焼させるための積載されている燃料である。
【0016】
本解決策による駆動コンセプトは、電動機による駆動技術の分野ではパラダイムシフトであり、このパラダイムシフトは、電気駆動システム又はハイブリッド電気駆動システムの分野での、あらゆる個々のコンポーネントの効率の最適化に関係している一般に表明される開発目標に、明らかに反している。このような技術的に最適化されたシステムが高い開発費を積み上げることは確実であり、この開発費は最終的に消費者に対し、非常に高い購入費として現れ、したがってこのように非常に今風の電動機で駆動される自動車は、必要な資金をもっている限定的な関心者層だけに委ねられる。
【0017】
技術的な出力限界を絶えずずらしていくことを特徴とするこの技術パラダイムにまさに逆行して、本解決策による駆動コンセプトは、存在しており以前から定評のある技術をベースとする要求により、電気自動車に存在する中心的な航続距離問題をいわば知的に解決するように方向転換しており、ただし安価なコンポーネントを用い、この安価なコンポーネントは最終的に有意に低下した購入価格において現れ、こうすることで、電動機で駆動される車両の市場受容性及び最終的には普及を明らかに最大化することができる。
【0018】
したがって本解決策によれば、自動車が動いている間は、電動機に割当可能な平均的な出力需要がガスエンジンに割当可能な平均的な出力放出量に相当するようにガスエンジンを動作させ、したがってエネルギー貯蔵ユニットに割当可能な充電状態は、変化しないか又は許容差を足した充電状態範囲内でしか変化しない。これは、平均して電動機によりエネルギー貯蔵ユニットから取り出される自動車を動かすための出力が、積載されているガスエンジンによって間接的にもたらされることを意味しており、このガスエンジンは、自動車の動作中には連続的に動作するのが好ましい。この場合、エネルギー貯蔵ユニットは、ガスエンジンと発電機とのユニットによる電流生成により連続的に充電されるエネルギー中間貯蔵器として用いられるだけであり、その一方で自動車の駆動に役立つ少なくとも一つの電動機は、このエネルギー貯蔵ユニットから電気エネルギーを得る。もちろん、少なくとも一つの電動機によってエネルギー貯蔵ユニットから取り出される電荷は、発電機によってエネルギー貯蔵ユニットに送られる電荷に数学的に厳密には相当し得ず、むしろ、エネルギー貯蔵ユニットの充電状態は、自動車の動作中には支配的である連続的な放電過程及び充電過程により、エネルギー貯蔵ユニットに割当可能な充電状態の約±30%の許容範囲内で変動する。
【0019】
一つの例示的実施形態では、エネルギー貯蔵ユニットを、適切に容量決定された一種の電気コンデンサーとしてのみ形成することが考えられ、この電気コンデンサーの充電容量は、原理に起因し、重量の重い蓄電池に比べて小さい。自動車の動作中は絶えずコンデンサーが充電されており、且つ少なくとも一つの電動機により同じ量の放電が行われることにより、エネルギー貯蔵ユニットには、電動機の平均的なエネルギー需要を超える充電量を蓄える必要がない。それでもエネルギー貯蔵ユニットの充電容量は常に、少なくとも一つの電動機による上昇したエネルギー需要を短期間で取り出せるように選択されているのが望ましく、この上昇したエネルギー需要は、例えば追越し過程の途中の、例えば短期間の加速過程によって生じ得る。
【0020】
少なくとも一つの電動機の短期間に上昇した出力需要による、エネルギー貯蔵ユニットの短期間の上昇した放電を補償するには、好ましくは効率及び排ガスを最適化され、離散的に設定された回転数で動作するガスエンジンを、許容差を足した回転数範囲内で動作させる。
【0021】
その代わりに、ガスエンジンが同様に効率及び排出又は排ガスを最適化されて動作される様々な離散的な回転数で、ガスエンジンを動作させることが可能である。例えば自動車が長く続く上り坂を越えなければならないときに、少なくとも一つの電動機による上昇したエネルギー消費が比較的長く持続する走行状況が、動作に条件づけられて生じる場合には、ガスエンジンを離散的に設定された上昇した回転数で動作させ、この回転数によりエネルギー貯蔵ユニットも、少なくとも一つの電動機の上昇したエネルギー需要に適合し、上昇した充電電流を印加される。
【0022】
自動車を専ら電動機で動かすために少なくとも一つの電動機が間接的又は直接的に自動車のドライブシャフトと結合している、自動車を駆動するための本解決策による動作コンセプトは、航続距離を決定するエネルギー源として、積載されているエネルギー貯蔵ユニットの最大充電容量ではなく、むしろ、ガスエンジン及びガスエンジンと電流生成のために結合された発電機の駆動に用いられる積載されている燃料の量を利用する。好ましい一実施形態では、ガスエンジン内での積載されている燃料の燃焼及びそれに伴う発電機の駆動のみによって獲得される電気エネルギー部分が、自動車によって到達可能な最大航続距離の少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%〜最大90%であるように、エネルギー貯蔵ユニットの充電容量とガスエンジンの動作のために積載されているガスエンジンの燃料の量とを互いに調整して選択している。これは、フル充電されたエネルギー貯蔵ユニットに蓄えられた電気エネルギー部分が、本解決策により形成される駆動システムの最大航続距離に対して10%〜最大40%にすぎないことを意味する。さらに、自動車の最大航続距離に到達したときにそうであるような、エネルギー供給ユニットが完全に放電されている動作事例が考えられる。この場合に、燃料タンク、つまりガスタンクを満たすことしかできず、電気エネルギー貯蔵ユニットを満たすことはできないならば、この場合には、自動車の最大航続距離は、その燃料量の技術的に利用可能なエネルギー含量だけに左右され、つまり最大限到達可能な航続距離に対する燃料の割合は100%であろう。
【0023】
本解決策による動作コンセプトは、ゼロエミッション車両の意味における電気エネルギーだけの利用という考えからは外れるのではあるが、本解決策による駆動コンセプトは、重量及び充電容量に起因する航続距離問題を回避し、それだけでなく例えば、好ましくはニッケル水素バッテリー、アルカリマンガンバッテリー、塩化亜鉛バッテリー、又は亜鉛炭素バッテリーをベースとする従来の安価な蓄電池の使用のような従来技術の使用の下で、電気自動車の安価な実現を可能にする。
【0024】
また、好ましくは液化石油ガス(LPG)又は圧縮天然ガス(CNG)の形態のガスエンジン用燃料に関する膨大で広域にわたるインフラが既に存在している。
【0025】
説明したガスエンジンと発電機との動作による、及びまた逆の電気力学原理を利用するブレーキ過程中のエネルギー回生による、自動車が動いている間のエネルギー貯蔵器の充電の可能性のほかに、燃料が相応に蓄えられていれば、休止状態の自動車を、ガスエンジン及びガスエンジンと結合された発電機により充電することも可能である。したがって、例えばとりわけ、純粋に電気によって駆動される車両を充電するためのインフラがないか又はまだ十分には存在していない地域において、充電ステーションの可能性に関係なく自動車を動作させることもできる。
【0026】
間接的又は直接的に自動車のドライブシャフトと結合している少なくとも一つの電動機と、電気エネルギー供給のために電動機に電気的に結合している電気エネルギー貯蔵ユニットと、充電電流供給のために電気エネルギー貯蔵ユニットに電気的に結合している発電機と、電流生成のために作用結合しているガスエンジンと、を備えた自動車のための本解決策により形成された駆動システムを実現するために、好ましくはLPG燃料又はCNG燃料で駆動される一価のガスエンジンが用意され、この場合、積載されている燃料量のエネルギー含量が、自動車の最大航続距離を本質的に決定する。これに対し電気エネルギー貯蔵ユニットの充電容量は、自動車に対して航続距離を決定しない。液化石油ガス又はCNGの純粋な燃焼だけでなく、必要に応じてガソリンでも動作させ得るほぼ一価のガスエンジンを使用することもできる。
【0027】
従来のガソリンエンジンとは異なるガスエンジンの使用は、ことにガスエンジンが従来の内燃機関に対してより高い圧縮に基づきより高い効率を有するので、特に寒冷時始動の直後には、排出値を有意により少なくすることができる。さらに、ガスエンジンを最適な動作点で、つまり離散的に設定された回転数で動作させることにより、ガスエンジンの効率を上昇させることができる。それだけでなくガスエンジンは、従来のガソリン燃料又はディーゼル燃料で駆動される内燃機関に対し、基本的には、ガス引込管を備えた建物に接続することでも追加補充ができるという利点を有している。
【0028】
本発明の簡単な説明
以下では本発明を、包括的な発明思想を制限することなく、一つの例示的実施形態に基づいて、一つだけの図面を参照しながら具体的に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本解決策による電動機で駆動される自動車のためのすべてのコンポーネントの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
一つだけの図には、専ら電動機で駆動される自動車1をベースとする本解決策による駆動コンセプトが図解されており、この駆動コンセプトでは、ドライブシャフト3の駆動に用いられる駆動に必要な少なくとも一つの電動機2が、電気エネルギー貯蔵器4と結合しており、この電気エネルギー貯蔵器は、一価又は二価のガスエンジン6で駆動される発電機5によって充電される。ガスエンジン6を動作させるための燃料7は、自動車1により積載されている適切な燃料タンク8に蓄えられている。本解決策による動作方式は、電動機2の平均的な出力需要とガスエンジン6の平均的な出力放出量とを適応させることを基礎とする。こうすることで、自動車1の走行中に、積載されているエネルギー貯蔵ユニット4の充電状態が変化しないか又はさほど変化しないことを保証することができる。
【0031】
この動作方式により初めて、電気エネルギー貯蔵ユニット4を、すべてのこれまで知られている解決策の場合のように航続距離を決定するエネルギー源としては形成しないことが可能となり、むしろエネルギー貯蔵ユニット4は、ガスエンジン6及びガスエンジンの後ろに接続された発電機5によって生成された電気エネルギーのためのバッファーユニット又は中間貯蔵ユニットとしてのみ用いられる。理論上の極端な場合には、電気エネルギー貯蔵ユニット4をただのコンデンサーの形態で形成することもでき、このコンデンサーの充電容量はシステムに基づいて制限されており、コンデンサーに中間貯蔵された電気エネルギーを電動機2に転送するためだけに用いられる。エネルギー貯蔵ユニット4は、典型的にはニッケル水素、アルカリマンガンバッテリー、塩化亜鉛バッテリー、又は亜鉛炭素バッテリーの形態で形成されている。
【0032】
充電容量を最適化した非常に今風のバッテリーシステムとは違うエネルギー貯蔵ユニット4のまったく異なる機能方式により、充電容量特性に関し、質的に高価値の要求は存在せず、したがって本解決策による駆動コンセプトは、従来の、及びとりわけ安価なエネルギー貯蔵ユニットの使用を可能にする。本解決策による方法が少なくとも一つの最適化された作用点でのガスエンジン6の動作を可能にすることが加わると、従来の駆動技術にも関わらず、最も経済的でまたエコロジーな要求に対応する。電動機で駆動される自動車1の本解決策による駆動コンセプトによって到達可能な最大航続距離は、ガスエンジン6の着火のための積載されている燃料7、例えば液化石油ガス(LPG)又は圧縮天然ガス(CNG)によって有力に決定される。こうすることで、従来式に駆動される自動車1の航続距離に相当する航続距離が可能となり、したがって最終顧客にとっては、最新の構造形式の電気自動車でそうであるような航続距離の鬱積がない。
【符号の説明】
【0033】
1 自動車
2 電動機
3 ドライブハブ
4 エネルギー貯蔵ユニット
5 発電機
6 ガスエンジン
7 燃料
8 燃料タンク
【手続補正書】
【提出日】2015年2月2日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車(1)を専ら電動機で動かすために少なくとも一つの電動機(2)が間接的又は直接的に前記自動車(1)のドライブシャフト(3)又はドライブハブと結合しており、前記電動機(2)が、エネルギー貯蔵ユニット(4)を介して電気エネルギーを供給され、前記電気エネルギー貯蔵ユニット(4)が、ガスエンジン(6)によって駆動される発電機(5)により充電電流を供給される、前記自動車(1)の駆動方法であって、
前記自動車(1)が動いている間は、前記電動機(2)に割当可能な平均的な出力需要が前記ガスエンジン(6)に割当可能な平均的な出力放出量に相当するように前記ガスエンジン(6)を動作させ、したがって前記エネルギー貯蔵ユニット(4)に割当可能な充電状態が、変化しないか又は許容差を足した充電状態範囲内でしか変化しないことと、
前記ガスエンジン(6)が、一定の回転数で、又は許容差を足した回転数範囲内の回転数で動作され、前記回転数、いわゆる回転数動作点では、前記ガスエンジン(6)が効率及び/又は排ガスを最適化されて動作されることを特徴とする駆動方法。
【請求項2】
自動車(1)を専ら電動機で動かすために少なくとも一つの電動機(2)が間接的又は直接的に前記自動車(1)のドライブシャフト(3)又はドライブハブと結合しており、前記電動機(2)が、エネルギー貯蔵ユニット(4)を介して電気エネルギーを供給され、前記電気エネルギー貯蔵ユニット(4)が、ガスエンジン(6)によって駆動される発電機(5)により充電電流を供給される、前記自動車(1)の駆動方法であって、
前記自動車(1)が動いている間は、前記電動機(2)に割当可能な平均的な出力需要が前記ガスエンジン(6)に割当可能な平均的な出力放出量に相当するように前記ガスエンジン(6)を動作させ、したがって前記エネルギー貯蔵ユニット(4)に割当可能な充電状態が、変化しないか又は許容差を足した充電状態範囲内でしか変化しないことと、
前記ガスエンジン(6)が、様々な離散的な回転数で、いわゆる回転数動作点で、又は許容差を足した回転数範囲内の前記回転数動作点の周りの一つの回転数で、前記電動機(2)の前記平均的な出力需要を超えて出力需要が上回る場合に前記ガスエンジン(6)の前記回転数が段階的に若しくは切替え可能に上昇するように又は前記許容差を足した回転数範囲内で上昇するように動作されること、並びに前記ガスエンジン(6)が、効率及び排ガスを最適化されて動作されることを特徴とする駆動方法。
【請求項3】
前記ガスエンジン(6)が、前記少なくとも一つの回転数動作点を出発点として、時間的に制限されており回転数が可変のブースト機能によって動作され、したがって前記電動機(2)の前記平均的な出力需要を超えて出力需要が上回ることを可能にすることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ガスエンジン(6)が、液化石油ガス(LPG)又は圧縮天然ガス(CNG)の形態の燃料によって動作されることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記エネルギー貯蔵ユニット(4)に割当可能な最大充電容量及び前記自動車(1)に積載されている燃料(7)の最大量は、前記自動車(1)によって到達可能な最大航続距離の一部分が、前記ガスエンジン(6)内での前記燃料(7)の燃焼及び前記発電機(5)による前記自動車(1)を駆動するための電気エネルギーへの変換のみによって達成されるように選択されていること、並びに
前記一部分が、最大航続距離の少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、特に好ましくは少なくとも90%であることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記許容差を足した充電状態範囲が、前記エネルギー貯蔵ユニットに割当可能な前記充電状態の最大±30%であることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記電気エネルギー貯蔵ユニット(4)が、前記自動車(1)の休止状態において、前記ガスエンジン(6)の動作により充電されることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【国際調査報告】