特表2016-534142(P2016-534142A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2016-534142モメタゾン及びオロパタジンを有する安定な定用量薬剤組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2016-534142(P2016-534142A)
(43)【公表日】2016年11月4日
(54)【発明の名称】モメタゾン及びオロパタジンを有する安定な定用量薬剤組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/58 20060101AFI20161007BHJP
   A61K 31/335 20060101ALI20161007BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20161007BHJP
   A61P 11/02 20060101ALI20161007BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20161007BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20161007BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20161007BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20161007BHJP
   A61K 47/18 20060101ALI20161007BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20161007BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20161007BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20161007BHJP
   A61K 47/44 20060101ALI20161007BHJP
   A61K 47/14 20060101ALI20161007BHJP
【FI】
   A61K31/58
   A61K31/335
   A61P43/00 121
   A61P11/02
   A61K9/10
   A61K9/12
   A61K47/38
   A61K47/36
   A61K47/18
   A61K47/10
   A61K47/12
   A61K47/04
   A61K47/44
   A61K47/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2016-542408(P2016-542408)
(86)(22)【出願日】2014年9月4日
(85)【翻訳文提出日】2015年1月15日
(86)【国際出願番号】IB2014064251
(87)【国際公開番号】WO2015036902
(87)【国際公開日】20150319
(31)【優先権主張番号】2975/MUM/2013
(32)【優先日】2013年9月13日
(33)【優先権主張国】IN
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】516114592
【氏名又は名称】グレンマーク・スペシャルティー・エスエー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ウルハス・ドゥパッド
(72)【発明者】
【氏名】アショク・カトクールヴァル
(72)【発明者】
【氏名】ヤシュワント・グプタ
(72)【発明者】
【氏名】ラジェシュ・アンカム
(72)【発明者】
【氏名】チャンドラカント・ダトラク
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA22
4C076AA24
4C076BB25
4C076CC10
4C076DD03F
4C076DD09F
4C076DD22Z
4C076DD23Z
4C076DD24Z
4C076DD26Z
4C076DD30
4C076DD31R
4C076DD37R
4C076DD41Z
4C076DD42Z
4C076DD43Z
4C076DD46F
4C076DD51
4C076DD65R
4C076EE23F
4C076EE30
4C076EE31
4C076EE32
4C076EE53F
4C076FF16
4C076FF36
4C076FF39
4C076FF61
4C086AA01
4C086AA10
4C086BA10
4C086DA12
4C086GA13
4C086GA14
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA05
4C086MA13
4C086MA23
4C086MA59
4C086NA03
4C086NA05
4C086ZA34
4C086ZC75
(57)【要約】
本発明は、ヒトへの経鼻投与のために、モメタゾン若しくはその塩又はオロパタジン若しくはその塩を含む、安定した一定用量の水性薬剤組成物(例えば容器内に含有)に関する。組成物は、親水コロイドを更に有してもよい。また、本発明は、薬剤組成物を調製する方法及び対象の鼻炎治療への薬剤組成物の使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトへの経鼻投与のための安定した一定用量の水性薬剤組成物であって、
前記組成物は、約0.001%w/w〜約0.075%w/wのモメタゾン又はその塩及び約0.5%w/w〜約0.8%w/wのオロパタジン又はその塩を含む、薬剤組成物。
【請求項2】
モメタゾン又はその塩及びオロパタジン又はその塩は、約1:3〜約1:106の重量比で存在する、請求項1に記載の薬剤組成物。
【請求項3】
前記モメタゾン塩は、フランカルボン酸モメタゾンであり、前記オロパタジン塩は、オロパタジン塩酸塩である、請求項1又は2に記載の薬剤組成物。
【請求項4】
前記組成物は、懸濁物の形態である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の薬剤組成物。
【請求項5】
前記組成物は、前記組成物の少なくとも約0.1%w/wの濃度で、親水コロイドを更に有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の薬剤組成物。
【請求項6】
前記組成物は、約3.3から4.1のpH及び約200mOsm/kg〜約400mOsm/kgの範囲のモル浸透圧濃度を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の薬剤組成物。
【請求項7】
前記懸濁物組成物中の粒子は、約1μm〜約20μmの範囲の平均粒径を有する、請求項4に記載の薬剤組成物。
【請求項8】
前記組成物は、約20cps〜約150cpsの範囲の粘度を有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の薬剤組成物。
【請求項9】
前記組成物は、容器内に収容され、点鼻スプレーとして供給されるときには、約15〜75mmの最長軸、約10〜65mmの最短軸、及び約1〜2の楕円率を有するスプレーパターンを有する請求項1〜8のいずれか一項に記載の薬剤組成物。
【請求項10】
ヒトへの経鼻投与のための安定した一定用量の薬剤水性懸濁物組成物であって、
前記組成物は、約0.025%w/w〜約0.05%w/wのモメタゾン又はその塩、約0.6%w/w〜約0.7%w/wのオロパタジン又はその塩、並びに、カルボキシメチルセルロースナトリウム及びキサンタンガムから選択される親水コロイドを含む、薬剤水性懸濁物組成物。
【請求項11】
前記組成物は、約0.025%w/wのフランカルボン酸モメタゾンを有する、請求項10に記載の薬剤組成物。
【請求項12】
前記組成物は、約0.05%w/wのフランカルボン酸モメタゾンを有する、請求項10に記載の薬剤組成物。
【請求項13】
前記組成物は、約0.665%w/wのオロパタジン塩酸塩を有する、請求項10〜12のいずれか一項に記載の薬剤組成物。
【請求項14】
前記親水コロイドは、約0.3%w/w〜約0.5%w/wの範囲の濃度で存在し、前記親水コロイドは、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロースナトリウム又はこれらを両方とも含む、請求項10〜13のいずれか一項に記載の薬剤組成物。
【請求項15】
前記組成物は、キレート化剤、保存剤、緩衝剤、界面活性剤、等張化剤、味覚マスキング剤、抗酸化剤、保湿剤、pH調整剤及びこれらの混合物から成る群より選択される、薬学的に許容される添加剤を更に有する、請求項10〜14のいずれか一項に記載の薬剤組成物。
【請求項16】
前記キレート化剤は、エデト酸二ナトリウム(EDTA)、エデト酸三ナトリウム、エデト酸四ナトリウム、ジエチレンアミンペンタアセテート及び前述のいずれかの組合せから成る群より選択され、前記キレート化剤は、約0.002%w/w〜約0.5%w/wの範囲で存在する、請求項15に記載の薬剤組成物。
【請求項17】
前記保存剤は、ベンジルアルコール、ハロゲン化第四級アンモニウム、フェニルカルビノール、チメロサール及び前述のいずれかの組合せから成る群より選択され、前記保存剤は、約0.005〜約0.2%w/wの範囲で存在する、請求項15又は16に記載の薬剤組成物。
【請求項18】
前記緩衝剤は、クエン酸、酢酸、フマル酸、塩酸、リンゴ酸、硝酸、リン酸、プロピオン酸、硫酸、酒石酸、リン酸塩及び前述のいずれかの組合せから成る群より選択される、請求項15〜17のいずれか一項に記載の薬剤組成物。
【請求項19】
前記界面活性剤は、ポリエトキシ化ソルビタン誘導体、ポリオキシエチレン植物性油脂、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、オレイン酸ナトリウム及び前述のいずれかの組合せからなる群より選択される、請求項15〜18のいずれか一項に記載の薬剤組成物。
【請求項20】
前記組成物は、約3.5〜3.9のpH、及び、約250mOsm/kg〜約350mOsm/kgの範囲のモル浸透圧濃度を有する、請求項10〜19のいずれか一項に記載の薬剤組成物。
【請求項21】
前記組成物は懸濁物の形態であり、約1μm〜約20μmの範囲の平均粒径を有する、請求項10〜20のいずれか一項に記載の薬剤組成物。
【請求項22】
前記組成物は、約20cps〜約150cpsの範囲の粘度を有する、請求項10〜21のいずれか一項に記載の薬剤組成物。
【請求項23】
前記組成物は、容器の中に収容され、点鼻スプレーとして供給されるときは、約15〜75mmの最長軸、約10〜65mmの最短軸、及び約1〜2の楕円率を有するスプレーパターンを有する、請求項10〜22のいずれか一項に記載の薬剤組成物。
【請求項24】
ヒトへの経鼻投与のための安定した一定用量の薬剤水性懸濁物組成物であって、前記組成物は、(1)約0.025%w/wのフランカルボン酸モメタゾン一水和物、(2)約0.665%w/wのオロパタジン塩酸塩、(3)約0.3%w/wのキサンタンガム及び約0.5%w/wのカルボキシメチルセルロースナトリウムから選択される親水コロイド、(4)約0.02%w/wの塩化ベンザルコニウム、(5)約0.4%w/wの塩化ナトリウム、(6)約0.01%w/wのエデト酸二ナトリウム、(7)約0.94%w/wのリン酸ナトリウム七水和物、及び(8)約0.01%w/wのポリソルベート80を含む、薬剤水性懸濁物組成物。
【請求項25】
ヒトへの経鼻投与のための安定した一定用量の薬剤水性懸濁物組成物であって、前記組成物は、(1)約0.050%w/wのフランカルボン酸モメタゾン一水和物、(2)約0.665%w/wのオロパタジン塩酸塩、(3)約0.3%w/wのキサンタンガム及び約0.5%w/wのカルボキシメチルセルロースナトリウムから選択される親水コロイド、(4)約0.02%w/wの塩化ベンザルコニウム、(5)約0.4%w/wの塩化ナトリウム、(6)約0.01%w/wのエデト酸二ナトリウム、(7)約0.94%w/wのリン酸ナトリウム七水和物、及び(8)約0.01%w/wのポリソルベート80を含む、薬剤水性懸濁物組成物。
【請求項26】
前記組成物は、約3.5〜3.9のpH、及び、約250mOsm/kg〜約350mOsm/kgの範囲のモル浸透圧濃度を有する、請求項24又は25に記載の薬剤組成物。
【請求項27】
前記組成物は、約1μm〜約20μmの範囲の平均粒径を有する、請求項24又は25に記載の薬剤組成物。
【請求項28】
前記組成物は、約20cps〜約150cpsの範囲の粘度を有する、請求項24又は25に記載の薬剤組成物。
【請求項29】
前記組成物は、容器の中に収容され、点鼻スプレーとして供給されるときは、約15〜75mmの最長軸、約10〜65のmmの最短軸、及び約1〜2の楕円率を有するスプレーパターンを有する、請求項24又は25に記載の薬剤組成物。
【請求項30】
ヒトへの経鼻投与に好適な安定した懸濁物であって、(a)水性溶媒、(b)約1〜約20μmの平均粒径を有し、前記溶媒中に懸濁される、フランカルボン酸モメタゾンの粒子、(c)前記溶媒中に溶解されるオロパタジン塩酸塩、及び(d)親水コロイドを含み、前記懸濁物は、約20cps〜約150cpsの範囲の粘度を有する、懸濁物。
【請求項31】
前記懸濁物は、約3.5〜3.9のpH、及び約250mOsm/kg〜約350mOsm/kgの範囲のモル浸透圧濃度を有する、請求項30に記載の懸濁物。
【請求項32】
キレート化剤、保存剤、緩衝剤、界面活性剤、等張化剤を更に有し、随意pH調整剤を有する、請求項30又は31に記載の懸濁物。
【請求項33】
それを必要とするヒトにおける鼻炎を治療する方法であって、請求項1〜29のいずれか一項に記載の薬剤組成物、又は、請求項30〜32のいずれか一項に記載の懸濁物を、ヒトに、経鼻経路で投与することを含む、方法。
【請求項34】
前記組成物又は懸濁物は、点鼻スプレー又は点鼻液の形態で前記ヒトに投与される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
必要とするヒトを対象にした鼻炎の治療のために、請求項1〜29のいずれか一項に記載の経鼻投与のための薬剤組成物、又は前記懸濁物若しくは請求項30〜32のいずれか一項に記載の懸濁物の使用。
【請求項36】
前記組成物又は懸濁物は、点鼻スプレー又は点鼻液の形態で前記ヒトに投与される、請求項35に記載の使用。
【請求項37】
ヒトの鼻炎の治療のための、請求項1〜29のいずれか一項に記載の薬剤組成物、又は、請求項30〜32のいずれか一項に記載の懸濁物。
【請求項38】
請求項1〜29のいずれか一項に記載の薬剤組成物又は請求項30〜32のいずれか一項に記載の懸濁物を供給する方法であって、前記方法は、前記組成物又は懸濁物を、噴霧器内に収容することと、15〜75mmの最長軸、10〜65mmの最短軸、及び1〜2の楕円率を有するスプレーパターンを有する前記組成物のスプレーを、ヒトの鼻に供給することとを含む、方法。
【請求項39】
請求項1〜29のいずれか一項に記載の薬剤組成物又は請求項30〜32のいずれか一項に記載の懸濁物、及び前記薬剤組成物又は懸濁物の使用についての説明書を有する添付文書を含むキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権文献
本特許出願は、インド国特許仮出願番号第2975/MUM/2013号(2013年9月13日に出願)の優先権を主張するものであり、その開示は、参照事項としてここに包含される。
【0002】
本出願は、モメタゾン又はその塩及びオロパタジン又はその塩を含む、ヒトへの経鼻投与用の、安定した一定用量の水性薬剤組成物に関する。また、本出願は、薬剤組成物を調製するための方法、並びに、対象の鼻炎の治療での使用に関する。
【背景技術】
【0003】
鼻炎は、鼻の内側の粘膜の刺激及び炎症の医学用語である。鼻炎によって、くしゃみ、鼻のうずうず感、せき、頭痛、疲労、不調及び認知障害等の、更なる症状が生ずる場合があり得る。
【0004】
米国特許第4,871,865号及び第4,923,892号に開示されるように、オロパタジン塩酸塩は、(Z)−11−[3−(ジメチルアミノ)プロピリデン]−6,11−ジヒドロジベンズ[b,e]オキセピン−2−酢酸塩酸塩として、化学的に記述される。これは、PATANASE(登録商標)点鼻スプレーとして、米国で市販されており、0.6%w/vのオロパタジンを非滅菌水溶液中に有する。それは、成人及び6才以上の小児に対する季節性アレルギー性鼻炎の症状の軽減のために示される。
【0005】
フランカルボン酸モメタゾンは、皮膚上の又は気道中の炎症を低減するために局所的に使用される糖質副腎皮質ステロイドである。フランカルボン酸モメタゾンはNASONEX(商標登録)として、米国では、鼻腔炎症等の上気道の状態に対して指示される点鼻スプレーとして市販されている。これは、0.05%w/wフランカルボン酸モメタゾンと等価のフランカルボン酸モメタゾン一水和物の水性懸濁物が含有されている定量手動ポンプ式スプレーユニット中に50mcg、使用できる。
【0006】
国際公開公報2011/141929号は、フルチカゾン及びオロパタジンを有する噴霧用水性点鼻液を開示する。
【0007】
米国特許第6,127,353号は、フランカルボン酸モメタゾン一水和物の薬剤組成物を開示する。
【0008】
米国特許第7,977,376号及び第8,399,508号は、オロパタジンの局所製剤を開示する。
【0009】
国際公開第2014/092346号は、コルチコステロイド、抗ヒスタミン剤及びステビアを含む、苦味をマスキングした薬剤組成物を開示する。
【0010】
国際公開第2006/057769号は、オロパタジンを含む点鼻スプレーを供給する方法を開示する。
【0011】
国際公開第2010/025236号は、ウイルス性上気道感染、上気道感染及び風邪の治療のための、鼻用ステロイド剤及び鼻抗ヒスタミン剤の組合せを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第4,871,865号
【特許文献2】米国特許第4,923,892号
【特許文献3】国際公開公報2011/141929号
【特許文献4】米国特許第6,127,353号
【特許文献5】米国特許第7,977,376号
【特許文献6】米国特許第8,399,508号
【特許文献7】国際公開第2014/092346号
【特許文献8】国際公開第2006/057769号
【特許文献9】国際公開第2010/025236号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
使い易くかつ効果的な鼻炎の治療の必要性が、未だ存在する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、ヒトへの経鼻投与を目的とした安定した一定用量の水性薬剤組成物に関する。本組成物は、モメタゾン又はその塩及びオロパタジン又はその塩を含む。薬剤組成物は、経鼻投与に好適な容器内に含まれていてもよい。
【0015】
一実施形態では、ヒトへの経鼻投与のための安定した一定用量の水性薬剤組成物(例えば容器内に含有)であって、この組成物は、約0.001%w/w〜約0.075%w/wのモメタゾン又はその塩と、約0.5%w/w〜約0.8%w/wオのロパタジン又はその塩とを含む。薬剤組成物は、水溶液又は懸濁物の形態であってもよいが、好ましくは、組成物は懸濁物の形態であり、モメタゾン又はその塩は粒子の形態で存在し、オロパタジン又はその塩は溶解された形態で存在する。一つの態様では、モメタゾン又はその塩及びオロパタジン又はその塩は、約1:3〜約1:106、又は、約1:5から約1:53まで、又は、好ましくは約1:5から約1:36までの重量比で存在する。
【0016】
また、組成物は、好ましくは親水コロイドを含む。一実施形態では、組成物は懸濁物であり、温度25+/−2℃かつ相対湿度(RH)60%+/−5%、又は温度40+/−2℃かつRH75%+/−5%での3ヵ月又は6ヵ月保管後に、相分離(すなわち、粒子及び水溶液の分離)を防止するために十分な量の親水コロイドを含む。
【0017】
別の実施形態は、ヒトへの経鼻投与のための安定した一定用量の水性薬剤組成物(例えば容器内に含有)であって、この組成物は、約0.001%w/w〜約0.075%w/wのフランカルボン酸モメタゾン一水和物と、約0.5%w/w〜約0.8%w/wのオロパタジン塩酸塩とを含む。
【0018】
更に別の実施形態は、ヒトへの経鼻投与のための安定した一定用量の水性薬剤の懸濁物組成物(例えば容器内に含有)であって、組成物は、約0.025%w/w〜約0.05%w/wのモメタゾン又はその塩と、約0.6%w/w〜約0.7%w/wのオロパタジン又はその塩へと、親水コロイドとを含む。
【0019】
更に別の実施形態は、ヒトへの経鼻投与のための安定した一定用量の水性薬剤の懸濁物組成物(例えば容器内に含有)であって、組成物は、約0.025%w/w〜約0.05%w/wのモメタゾン又はその塩と、約0.6%w/w〜約0.7%w/wのオロパタジン又はその塩と、カルボキシメチルセルロースナトリウム及びキサンタンガムを含む親水コロイドとを含む。親水コロイドは、組成物の少なくとも約0.1%w/wの濃度で存在してもよい。
【0020】
一実施形態は、ヒトへの経鼻投与のための安定した一定用量の水性薬剤の懸濁物組成物(例えば容器内に含有)であって、約0.025%w/w〜約0.05%w/wのフランカルボン酸モメタゾンと、約0.6%w/w〜約0.7%w/wのオロパタジン塩酸塩と、親水コロイドとを含み、親水コロイドは、キサンタンガムである。キサンタンガムは、組成物の少なくとも約0.1%w/w、又は好ましくは約0.1%w/w〜約3%w/wの濃度で存在していてもよい。
【0021】
別の実施形態は、ヒトへの経鼻投与のための安定した一定用量の水性薬剤の懸濁物組成物(例えば容器内に含有)であって、約0.025%w/w〜約0.05%w/wのフランカルボン酸モメタゾンと、約0.6%w/w〜約0.7%w/wのオロパタジン塩酸塩と、親水コロイドとを含み、親水コロイドは、カルボキシメチルセルロースナトリウムを含む。カルボキシメチルセルロースナトリウムは、少なくとも約0.1%w/w、又は好ましくは組成物の約0.1%w/w〜約3%w/wの濃度で存在してもよい。
【0022】
更に別の実施形態は、ヒトへの経鼻投与のための、懸濁物の形態の安定した一定用量の水性薬剤組成物(例えば容器内に含有)であって、モメタゾン又はその薬学的に許容される塩と、オロパタジン又はその薬学的に許容される塩と、組成物の少なくとも約0.1%w/wの濃度の親水コロイドと、薬学的に許容される添加剤とを含む。
【0023】
好適な薬学的に許容される添加剤は、キレート化剤、保存剤、緩衝剤、界面活性剤、等張化剤、味覚マスキング剤、抗酸化剤、保湿剤、pH調整剤及びそれらの混合物を含むが、これに限定されるものではない。
【0024】
一実施形態では、薬剤組成物は、約3.3〜約4.1、又は約3.5〜約3.9のpHを有する。
【0025】
薬剤組成物のモル浸透圧濃度(osmolality)は、約200mOsm/kg〜約400mOsm/kgの範囲でもよく、又は約250mOsm/kg〜約350mOsm/kgの範囲でもよい。
【0026】
薬剤組成物の粘度は、約10cps〜約200cpsの範囲でもよく、又は、好ましくは約20cps〜約150cpsの範囲でもよい。
【0027】
更に別の態様では、薬剤組成物は懸濁物の形態であり、平均粒径が約1μm〜約20μm、又は好ましくは約1μm〜約15μmの範囲の粒子としてフランカルボン酸モメタゾンを含有する。一態様では、本発明の懸濁物薬剤組成物は、顕微鏡検査技術で測定される場合の平均粒径が15μm未満である。
【0028】
更に別の態様では、薬剤組成物は、点鼻スプレーとして供給されるとき、約15〜75mmの最長軸、約10〜65mmの最短軸及び約1〜2の楕円率のスプレーパターンを含むスプレー特性を有する。
【0029】
別の実施形態は、ヒトへの経鼻投与のための懸濁物の形態の、安定した一定用量薬剤組成物(例えば容器内に含有)であって、フランカルボン酸モメタゾン一水和物と、オロパタジン塩酸塩と、組成物の約0.3%w/wの濃度でキサンタンガムを有する親水コロイドとを含み、組成物は、約3.5〜約3.9のpHを有する。
【0030】
更に別の実施形態は、ヒトへの経鼻投与のための懸濁物の形態の、安定した一定用量薬剤組成物(例えば容器内に含有)であって、フランカルボン酸モメタゾン一水和物、オロパタジン塩酸塩及び組成物の約0.5%w/wの濃度でカルボキシメチルセルロースナトリウムを有する親水コロイドを含み、組成物は約3.5〜約3.9のpHを有する。
【0031】
更に別の実施形態では、安定した一定用量の水性薬剤組成物は、噴霧器の中に含有され、組成物のスプレーをヒトの鼻腔に供給する際には、15〜75mmの最長軸、10〜65mmの最短軸、1〜2の楕円率を有するスプレーパターンを形成する。
【0032】
一実施形態では、本発明は、ヒトへの経鼻投与のための安定した一定用量薬剤水性懸濁物組成物(例えば容器内に含有)に関するものであり、組成物は、(1)約0.025%w/wのフランカルボン酸モメタゾン一水和物、(2)約0.665%w/wのオロパタジン塩酸塩、(3)約0.3%w/wのキサンタンガム及び約0.5%w/wのカルボキシメチルセルロースナトリウムから選択される親水コロイド(4)約0.02%w/wの塩化ベンザルコニウム、(5)約0.4%w/wの塩化ナトリウム、(6)約0.01%w/wのエデト酸二ナトリウム、(7)約0.94%w/wのリン酸ナトリウム七水和物、及び(8)約0.01%w/wのポリソルベート80を含む。
【0033】
別の実施形態は、ヒトへの経鼻投与のための安定した一定用量薬剤水性懸濁物組成物(例えば容器内に含有)であって、組成物は、(1)約0.050%のw/wフランカルボン酸モメタゾン一水和物、(2)約0.665%w/wのオロパタジン塩酸塩、(3)約0.3%w/wのキサンタンガム及び約0.5%w/wのカルボキシメチルセルロースナトリウムから選択される親水コロイド(4)約0.02%w/wの塩化ベンザルコニウム、(5)約0.4%w/wの塩化ナトリウム、(6)約0.01%w/wのエデト酸二ナトリウム、(7)約0.94%w/wのリン酸ナトリウム七水和物、及び(8)約0.01%w/wのポリソルベート80を含む。
【0034】
更に別の実施形態は、ヒトへの経鼻投与のための安定した一定用量薬剤水性懸濁物組成物(例えば容器内に含有)であって、組成物は、(1)約0.025%w/wのフランカルボン酸モメタゾン一水和物、(2)約0.665%w/wのオロパタジン塩酸塩、(3)約0.3%w/wのキサンタンガム及び約0.5%w/wのカルボキシメチルセルロースナトリウムから選択される親水コロイド、(4)約1%w/w〜約1.2%w/wの微結晶性セルロース及びカルボキシメチルセルロースナトリウムの混合物、(5)約0.02%w/wの塩化ベンザルコニウム、(6)約0.4%w/wの塩化ナトリウム、(7)約0.01%w/wのエデト酸二ナトリウム、(8)約0.94%のw/wリン酸ナトリウム七水和物、及び(9)約0.01%w/wのポリソルベート80を含む。
【0035】
更に別の実施形態は、ヒトへの経鼻投与のための安定した一定用量薬剤水性懸濁物組成物(例えば容器内に含有)であって、組成物は、(1)約0.050%w/wのフランカルボン酸モメタゾン一水和物、(2)約0.665%w/wのオロパタジン塩酸塩、(3)約0.3%w/wのキサンタンガム及び約0.5%w/wのカルボキシメチルセルロースナトリウムから選択される親水コロイド、(4)約1%w/w〜約1.2%w/wの微結晶性セルロース及びカルボキシメチルセルロースナトリウムの混合物、(5)約0.02%w/wの塩化ベンザルコニウム、(6)約0.4%w/wの塩化ナトリウム、(7)約0.01%w/wのエデト酸二ナトリウム、(8)約0.94%のw/wリン酸ナトリウム七水和物、及び(9)約0.01%w/wのポリソルベート80を含む。
【0036】
更に別の実施形態は、ヒトへの経鼻投与に好適な安定した懸濁物であって、(a)水性溶媒、(b)約1〜約20μmの平均粒径を有し、溶媒中に懸濁されるフランカルボン酸モメタゾンの粒子、(c)溶媒中に溶解されるオロパタジン塩酸塩、及び(d)親水コロイドを含み、懸濁物は、約20cps〜約150cpsの範囲の粘度を有する。好適な一実施形態では、懸濁物は、約3.5〜3.9のpH、及び約250mOsm/kg〜約350mOsm/kgの範囲のモル浸透圧濃度を有する。一実施形態では、懸濁物は、キレート化剤、保存剤、緩衝剤、界面活性剤、等張化剤及び随意pH調整剤を更に有する。
【0037】
別の実施形態では、本発明は、必要に応じてヒトの鼻炎を治療する方法に関するものであり、本発明の安定した一定用量、水性薬剤組成物を、経鼻経路で投与することを含む。一実施形態では、薬剤組成物は、ここに開示されるように、約0.025%w/w〜約0.05%w/wのモメタゾン又はその塩と、約0.5%w/w〜約0.8%w/wのオロパタジン又はその塩とを含む。
【0038】
更に別の実施形態では、本発明は、それを必要とするヒトの鼻炎の治療のために、本発明の薬剤組成物を使用することに関するものである。例えば、一実施形態は、それを必要とするヒトの鼻炎の治療のための、安定した一定用量の、水性薬剤組成物(例えば容器内に含有)の調製における、約0.025%w/w〜約0.05%w/wのモメタゾン又はその塩、及び約0.5%w/w〜約0.8%w/wのオロパタジン又はその塩の使用である。
【0039】
更に別の実施形態では、本発明は、それを必要とするヒトの鼻炎の治療のために、約0.025%w/w〜約0.05%w/wのモメタゾン又はその塩、及び約0.5%w/w〜約0.8%w/wのオロパタジン又はその塩を含む経鼻投与のための安定した一定用量の水性薬剤組成物(例えば容器内に含有)に関する。
【0040】
更に別の実施形態では、本発明は、容器内に含まれる経鼻投与のための安定した一定用量の水性薬剤組成物、及び本薬剤組成物の使用についての説明書を有する添付文書を備えるキットに関する
【発明を実施するための形態】
【0041】
定義
本明細書に使用される用語は、以下の通りに定義される。本出願に記載される定義と、優先権が主張される仮出願の記載の定義とで、矛盾があるならば、本出願の定義の用語を意味するものとする。
【0042】
「有効量」という用語は、活性成分に関連して使用されるときは、鼻炎を治療するために対象に投与される際の意図された治療的有用性を対象に発現させる活性成分の量を意味する。「活性成分」という用語(「活性」又は「活性物質」又は「薬剤」と同義的に使用される)は、本明細書で用いられるように、モメタゾン又はその塩及びオロパタジン又はその塩を含む。
【0043】
本発明の文脈で、モメタゾン又はその塩の有効量は、約0.01mg〜約10mg又は、好ましくは約0.02mg〜約5mgの範囲であってもよい。オロパタジン又はその塩の有効量は、約0.05mg〜約20mg、又は好ましくは約0.1mg〜約15mgの範囲とすることができる。
【0044】
本発明の一態様では、経鼻経路からの連日投与のために、モメタゾン又はその塩の有効量は、約10mcg〜約500mcgの範囲、又は好ましくは約20mcg〜約400mcgであってもよく、オロパタジン又はその塩は、約50mcg〜約7000mcg、又は、好ましくは約100mcg〜約5400mcgであってもよい。
【0045】
「塩」又は「薬学的に許容される塩」とは、健全な医学判断の範囲内で、過度の毒性、刺激及びアレルギー応答なく、ヒト及び下等動物の組織と接触する使用に好適であり、危険率に対して妥当な有益性に見合い、及びそれらの用途に有効であるそれらの塩及びエステルを意味する。代表的な酸添加塩類としては、塩酸塩、フロ酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、酢酸塩、シュウ酸エステル、吉草酸エステル、オレイン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、ラウリン酸塩、ホウ酸塩、安息香酸塩、乳酸、リン酸塩、トシラート、メシラート、クエン酸塩、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、酒石酸塩、アスコルビン酸塩、グルコヘプトン酸、ラクトビオン酸塩及びラウリル硫酸塩が挙げられる。代表的なアルカリ又はアルカリ土類金属塩としては、ナトリウム、カルシウム、カリウム及びマグネシウムの塩類が挙げられる。
【0046】
本明細書で用いられる「治療する」又は「治療」という用語としては、哺乳類において、モメタゾン若しくはその塩又はオロパタジン若しくはその塩によって、又はこれら2つの組合せによって調節させる疾患の予防、緩和、防止、改善又は抑制が挙げられる。
【0047】
「薬学的に許容される添加剤」とは、規制当局の承認を得ているか、又は、一般に、ヒト又は動物への使用に安全と考えられる活性成分以外の薬剤組成物の構成成分のいずれかを意味する。
【0048】
本明細書で用いられるように、「平均粒子径」という用語(又は、同義的に、「粒径中央値」)とは、粒子の分布を示し、計測された全ての粒子の約50体積パーセントが既知の平均粒子径値未満のサイズを有し、かつ、計測された全ての粒子の約50体積パーセントが、既知の平均粒子径値より大きい粒径を有する。これは、「D50」又は「d(0.5)」という用語によって識別されることができる。平均粒子径は、顕微鏡法、レーザー回折、光子相関分光(PC)及びコールターの原理等の各種技術を使用して計測することができる。
【0049】
本発明の文脈では、「親水コロイド」は、親水性コロイド粒子(例えば、親水性ポリマー)が水の中に分散するコロイド系のことをいう。親水コロイド系は、ゲル状態又はゾル(液体)状態で存在することができる。懸濁物組成物では、親水コロイドは、増粘剤、安定化剤及び懸濁剤として機能する。親水コロイドの非限定的な例としては、キサンタンガム、アラビアゴム、グアーゴム、ローカストビーンガム、アルギン酸塩、澱粉、寒天、カラギナン、ゼラチン、Avicel RC591(商標登録:微結晶性セルロースとカルボキシメチルセルロースナトリウムの混合物)、及びセルロース誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム)が挙げられる。好ましくは、親水コロイドとしては、キサンタンガム又はカルボキシメチルセルロースナトリウムが挙げられる。
【0050】
本明細書で用いられるように、「容器」という用語は、単回投与用容器又は反復投与用容器を示す。好適な単回投与用容器又は反復投与用容器としては、ガラス、アルミニウム、ポリプロピレン又は高密度ポリエチレンが挙げられるが、これに限定されるものではなく、例えば、高密度ポリエチレン容器は、ブロー充てん密封生産技術を使用して製造される。一実施形態では、容器は、微細霧の形態で薬剤組成物を供給する噴霧器である。噴霧器は、一般に、薬剤組成物を含む容器と、容器で塞がれた(例えば密封係合)されたポンプと、ポンプの上部を収容する取り外し可能なアクチュエータと、容器及びアクチュエータと取り外し可能なように係合されるキャップとを有する。
【0051】
本発明は、ヒトへの経鼻投与のための、安定した一定用量の水性薬剤組成物(例えば容器内に含有)に関するものである。これは、約0.001%w/w〜約0.075%w/wのモメタゾン又はその塩及び約0.5%w/w〜約0.8%w/wのオロパタジン又はその塩を有する。
【0052】
薬剤組成物は水溶液又は懸濁物の形態でもよいが、好ましくは、組成物は懸濁物の形態であり、モメタゾン又はその塩は、粒子の形態で存在し、オロパタジン又はその塩は、溶解された形態で存在する。モメタゾン又はその塩、及びオロパタジン又はその塩は、約1:3〜約1:106、又は約1:5〜約1:53、又は好ましくは約1:5〜約1:36のの重量比で存在してもよい。
【0053】
また、組成物は、親水コロイドを好ましくは含む。一実施形態では、組成物は懸濁物であり、温度25+/−2℃かつ相対湿度(RH)60%+/−5%、又は温度40+/−2℃かつRH75%+/−5%での3ヵ月又は6ヵ月の保管後に、相分離(すなわち、粒子及び水溶液の分離)を防止するために十分な量の親水コロイドを含む。
【0054】
「安定した」という用語は、水性懸濁物と関連して使用される場合は、組成物が、振盪した後少なくとも24時間周囲条件で保存されたときに目視検査で相分離を示さないことを示す。好ましくは、この安定した組成物は、少なくとも3日間、又は少なくとも5日間、又は少なくとも7日間相分離を示さない。一つの態様では、本発明の「安定した」組成物は、振盪(例えば1分間)及び目視検査の際、周囲条件(温度約25℃及び相対湿度約60%)での保管後少なくとも6ヵ月間、塊形成なく、かつ合計不純物含有量が1.0%以下であることを示す。
【0055】
本発明の文脈において、薬剤含有量及び不純物は、HPLC、LC−MS、TLC等の各種分析技術によって測定することができる。
【0056】
モメタゾン又はその塩及びオロパタジン又はその塩を含む経鼻投与のための各種薬剤組成物が調製されたとき、一般に、組成物は、懸濁物組成物中において物理的な分離を示したことが観察された。この物理不安定性は更に、投与量が均等でなくなる。驚くべきことに、懸濁物組成物中に特定の濃度で親水コロイドを添加(例えば少なくとも約0.1%w/wの濃度)することにより、(分離の無い)経鼻投与に好適な物理的に安定した組成物を生成したことが見出された。
【0057】
別の実施形態では、ヒトへの経鼻投与のための安定した一定用量の水性薬剤の懸濁物組成物(例えば容器内に含有)であって、組成物は、約0.025%w/w〜約0.05%w/wのモメタゾン又はその塩、約0.6%w/w〜約0.7%w/wのオロパタジン又はその塩、及び親水コロイドを含む。
【0058】
更に別の実施形態は、ヒトへの経鼻投与のための安定した一定用量の水性薬剤の懸濁物組成物(例えば容器内に含有)であって、組成物は、約0.025%w/w〜約0.05%w/wのモメタゾン又はその塩、約0.6%w/w〜約0.7%w/wのオロパタジン又はその塩、及びカルボキシメチルセルロースナトリウム及びキサンタンガムを含む親水コロイドを含む。親水コロイドは、組成物の少なくとも約0.1%w/wの濃度で存在してもよい。
【0059】
更に別の実施形態は、ヒトへの経鼻投与のための安定した一定用量の水性薬剤の懸濁物組成物(例えば容器内に含有)であって、約0.025%w/w〜約0.05%w/wのフランカルボン酸モメタゾン、約0.6%w/w〜約0.7%w/wのオロパタジン塩酸塩,及び、キサンタンガムを有する親水コロイドを含む。キサンタンガムは、少なくとも約0.1%w/w、又は、好ましくは組成物の約0.3%w/w〜約3%w/wの濃度で存在してもよい。
【0060】
更に別の実施形態は、ヒトへの経鼻投与のための安定した一定用量の水性薬剤の懸濁物組成物(例えば容器内に含有)であって、約0.025%w/w〜約0.05%w/wのフランカルボン酸モメタゾン、約0.6%w/w〜約0.7%w/wのオロパタジン塩酸塩、及びカルボキシメチルセルロースナトリウムを有する親水コロイド備えている。カルボキシメチルセルロースナトリウムは、少なくとも約0.1%w/w、又は好ましくは組成物の約0.1%w/w〜約3%w/wの濃度で存在してもよい。
【0061】
更に別の実施形態は、ヒトへの経鼻投与のための、懸濁物の形態の安定した一定用量の水性薬剤組成物(例えば容器内に含有)であって、モメタゾン又はその薬学的に許容される塩、オロパタジン又はその薬学的に許容される塩、親水コロイド(例えば少なくとも組成物の約0.1%w/wの濃度)及び薬学的に許容される添加剤を含む。
【0062】
本発明の組成物の物性、外観又はにおいを改善するために、所望により、一つ以上の薬学的に許容される添加剤が更に追加されてもよいことは、当業者にも認識される。好適な薬学的に許容される添加剤は、キレート化剤、保存剤、緩衝剤、界面活性剤、等張化剤、味覚マスキング剤、抗酸化剤、保湿剤、pH調整剤及び前述のいずれかの任意の組合せを含むが、これに限定されるものではない。
【0063】
水性点鼻薬組成物を調製するために使用可能な好適な界面活性剤は、一つ又は複数のアニオン性、カチオン性、非イオン性又は両性イオン性の界面活性剤を有してもよい。
【0064】
水性の点鼻薬懸濁物に使用可能な好適な界面活性剤の例は、ソルビタンエステルのエチレンオキシドとの反応により生成されるポリソルベート等のポリエトキシ化ソルビタン誘導体、それらのエーテルエトキシレート、ポリオキシエチレンアルキルフェノール、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレン植物性油脂、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンエステル又は脂肪酸と樹脂酸の混合物、ポリオキシエチレンソルビトールラノリン誘導体、ポリオキシエチレントリデシルエーテル又は脂肪酸と樹脂酸の混合物、ポリオキシエチレンソルビタンエステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアリン酸塩、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート、ポリオキシエチレンモノステアリン酸塩、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪族アルコール、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレングリコールモノパルミチン酸塩、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミチン酸塩、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオキシプロピレンステアリン酸塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンラノリン誘導体、オレイン酸ナトリウム、四級アンモニウム誘導体、オレイン酸カリウム、N−セチルN−エチルモルホリニウムエトサルフェート、ラウリル硫酸ナトリウム又は、それらの混合物から非限定的に選択されてもよい。好適な界面活性剤は、ポリエトキシ化ソルビタン誘導体(例えばポリソルベート80)である。界面活性剤の量は、組成物の全重量に対して約0.001%〜約1%w/wの範囲にあってもよい。
【0065】
鼻粘膜への投与に対する水性点鼻薬懸濁物の耐容力を向上させるため等張となるように処方することが有利である。モル浸透圧濃度は、モメタゾン、オロパタジン及び更に存在する物質の他に水性点鼻薬懸濁物中に存在する物質の様々な量により、及び/又は等張化剤、好ましくは生理的に耐容性を示す塩、例えば塩化ナトリウム又は塩化カリウム、又は生理的に耐容性を示すポリオール、例えば糖アルコール、特にソルビトール又はグリセロール等を、等張性を与えるために必要な濃度で添加することにより、設定することができる。
【0066】
水性点鼻薬懸濁物に使用可能な好適な保存剤の非限定的な例は、ベンジルアルコール、ハロゲン化四級アンモニウム、フェニルカルビノール、チメロサール及びエデト酸二ナトリウムが挙げられる。ハロゲン化四級アンモニウム保存剤が好適である。好適なハロゲン化四級アンモニウム保存剤は、ポリクオタニウム−1及びハロゲン化ベンザルコニウムを含む。好適なハロゲン化ベンザルコニウムとしては、塩化ベンザルコニウム及び臭化ベンザルコニウムが挙げられる。水性点鼻薬懸濁物の中に存在する保存剤の量は、組成物の全重量に対して約0.005〜約0.2%w/wの範囲でもよい。好ましくは、保存剤は組成物の全重量に対して約0.02%w/wの濃度で存在する。
【0067】
水性点鼻薬懸濁物に使用可能な好適なキレート化剤の非限定的な例としては、
エデト酸二ナトリウム(EDTA)、エデト酸三ナトリウム、エデト酸四ナトリウム及びジエチレンアミンペンタアセテートが挙げられ、好ましくはEDTAである。本発明の水性点鼻薬懸濁物に存在するキレート化剤の量は、組成物の全重量に対して約0.0002〜約0.5%w/wの範囲でもよい。
【0068】
水性点鼻薬懸濁物に使用可能な好適な緩衝剤の非限定的な例としては、クエン酸、酢酸、フマル酸、塩酸、リンゴ酸、硝酸、リン酸、プロピオン酸、硫酸、酒石酸、リン酸塩(例えば、リン酸水素ナトリウム七水和物等のリン酸水素ナトリウム)又はこれらの組合せが挙げられる。本発明の懸濁物は、組成物のpHを約3〜約6に維持するに十分な量の緩衝剤を含んでもよい。好ましくは、緩衝剤の量は、組成物の全重量に対して約0.005%〜約1%w/wの範囲にある。
【0069】
水性点鼻薬懸濁物に使用可能な好適な甘味料/味覚マスキング剤の非限定的な例としては、スクラロース、タウマチン(例えば、Talin(登録商標))、スクロース、サッカリン(ナトリウム及びカルシウム塩等の塩の形態を含む)、果糖、グルコース、デキストロース、コーンシロップ、アスパルテーム、アセスルファムK、キシリトール、ソルビトール、エリトリトール、アンモニウムグリチルリジン酸塩、ネオテーム、マンニトール、ユーカリ油、樟脳、及び天然又は人工フレーバー又は香料(例えばメントール、ミント、バニラ、オレンジなど)、又は、これらの物質の二つ以上の組合せが挙げられる。特に好適な味覚マスキング剤は、スクラロースである。水性点鼻薬懸濁物の中に存在する甘味料/味覚マスキング剤の量は、組成物の全重量に対して約0.01%〜約1%w/wの範囲であってもよい。
【0070】
水性点鼻薬懸濁物に使用可能な好適な抗酸化剤の非限定的な例としては、アスコルビン酸、α−トコフェロール(ビタミンE)、ブチル化ヒドロキシアニゾール、ブチル化オキシトルエン、グルタチオン及び前述のいずれかの任意の組合せが挙げられる。水性点鼻薬組成物に存在する抗酸化剤の量は、組成物の全重量に対して約0.0002%〜約0.5%w/wの範囲であってもよい。
【0071】
水性点鼻薬懸濁物に使用可能な好適な保湿剤の非限定的な例としては、グリセリン、ソルビトール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール又はこれらの混合物が挙げられ、これは水等の好適な保湿剤溶媒と混合される。水性点鼻薬懸濁物中に存在する保湿剤の量は、組成物の全重量に対して約0.0002%〜約0.5%w/wの範囲であってもよい。
【0072】
好適なpH調整剤は、水酸化ナトリウム及び塩酸を含むが、これに限定されるものではない。
【0073】
本発明の文脈において、製薬学上安定した経鼻投与のための定用量の懸濁物組成物は、そのpHが約3.3〜約4.1、又は約3.5〜約3.9であってもよい。組成物のモル浸透圧濃度は、約200mOsm/kg〜約400mOsm/kgの範囲、又は、約250mOsm/kg〜約350mOsm/kgの範囲であってもよい。組成物の粘度は、約10cps〜約200cps、又は、好ましくは約20cps〜約150cpsであってもよい。
【0074】
更に別の態様では、懸濁物の形態で薬剤組成物は、粒径中央値が約1μm〜約20μmの範囲、又は好ましくは約1μm〜約15μmの範囲のフランカルボン酸モメタゾンの粒子を有する。ある態様では、本発明の懸濁物薬剤組成物は、顕微鏡検査技術で測定される場合に、15μm未満の平均粒径を有する。
【0075】
更に別の態様では、薬剤組成物は、点鼻スプレーとして供給される場合は、約15〜75mmの最長軸、約10〜65mmの最短軸、約1〜2の楕円率を有するスプレーパターンを有する。
【0076】
本発明の文脈において、粘度は、ダイナミックストレスレオメータ又はブルックフィールド粘度計等の既知の各種機器で測定することができる。好適な実施形態では、粘度は、ブルックフィールド粘度計を用い、スピンドルの回転を使用してサンプルを介してトルク伝達を計測することによって測定される。
【0077】
別の実施形態では、本発明は、ヒトへの経鼻投与のための安定した一定用量の水性薬剤組成物(例えば容器内に含有)に関し、組成物は、約0.001%w/w〜約0.075%w/wのフランカルボン酸モメタゾン一水和物、及び約0.5%w/w〜約0.8%w/wのオロパタジン塩酸塩を含む。
【0078】
別の実施形態は、ヒトへの経鼻投与のための懸濁物の形態の、安定した一定用量薬剤組成物(例えば容器内に含有)であって、フランカルボン酸モメタゾン一水和物、オロパタジン塩酸塩、及び組成物の約0.3%w/wの濃度でキサンタンガムを有する親水コロイドを含み、組成物は、約3.5〜約3.9のpHを有する。
【0079】
更に別の実施形態は、ヒトへの経鼻投与のための懸濁物の形態の、安定した一定用量薬剤組成物(例えば容器内に含有)であって、フランカルボン酸モメタゾン一水和物、オロパタジン塩酸塩及び組成物の約0.5%w/wの濃度でカルボキシメチルセルロースナトリウムを有する親水コロイドを含み、組成物は、約3.5〜約3.9のpHを有する。
【0080】
更に別の実施形態は、ヒトへの経鼻投与のための安定した一定用量薬剤水性懸濁物組成物(例えば容器内に含有)であって、組成物は、(1)約0.025%w/wのフランカルボン酸モメタゾン一水和物、(2)約0.665%w/wのオロパタジン塩酸塩、(3)約0.3%w/wのキサンタンガム及び約0.5%w/wのカルボキシメチルセルロースナトリウムから選択される親水コロイド、(4)約0.02%w/wの塩化ベンザルコニウム、(5)約0.4%w/wの塩化ナトリウム、(6)約0.01%w/wのエデト酸二ナトリウム、(7)約0.94%w/wのリン酸ナトリウム七水和物、及び(8)約0.01%w/wのポリソルベート80を含む。
【0081】
更に別の実施形態は、ヒトへの経鼻投与のための安定した一定用量薬剤水性懸濁物組成物(例えば容器内に含有)であって、組成物は、(1)約0.050%w/wのフランカルボン酸モメタゾン一水和物、(2)約0.665%w/wのオロパタジン塩酸塩、(3)約0.3%w/wのキサンタンガム及び約0.5%w/wのカルボキシメチルセルロースナトリウムから選択される親水コロイド、(4)約0.02%w/wの塩化ベンザルコニウム、(5)約0.4%w/wの塩化ナトリウム、(6)約0.01%w/wのエデト酸二ナトリウム、(7)約0.94%w/wのリン酸ナトリウム七水和物、及び(8)約0.01%w/wのポリソルベート80を含む。
【0082】
更に別の実施形態は、ヒトへの経鼻投与のための安定した一定用量薬剤水性懸濁物組成物(例えば容器内に含有)であって、組成物は(1)約0.025%w/wのフランカルボン酸モメタゾン一水和物、(2)約0.665%w/wのオロパタジン塩酸塩、(3)約0.3%w/wのキサンタンガム及び約0.5%w/wのカルボキシメチルセルロースナトリウムから選択される親水コロイド、(4)約1%w/w〜約1.2%w/wの微結晶性セルロース及びカルボキシメチルセルロースナトリウムの混合物、(5)約0.02%w/wの塩化ベンザルコニウム、(6)約0.4%w/wの塩化ナトリウム、(7)約0.01%w/wのエデト酸二ナトリウム、(8)約0.94%のw/wリン酸ナトリウム七水和物、及び(9)約0.01%w/wのポリソルベート80を含む。
【0083】
更に別の実施形態は、ヒトへの経鼻投与のための安定した一定用量薬剤水性懸濁物組成物(例えば容器内に含有)であって、組成物は(1)約0.050%w/wのフランカルボン酸モメタゾン一水和物、(2)約0.665%w/wのオロパタジン塩酸塩、(3)約0.3%w/wのキサンタンガム及び約0.5%w/wのカルボキシメチルセルロースナトリウムから選択される親水コロイド、(4)約1%w/w〜約1.2%w/wの微結晶性セルロース及びカルボキシメチルセルロースナトリウムの混合物、(5)約0.02%w/wの塩化ベンザルコニウム、(6)約0.4%w/wの塩化ナトリウム、(7)約0.01%w/wのエデト酸二ナトリウム、(8)約0.94%のw/wリン酸ナトリウム七水和物、及び(9)約0.01%w/wのポリソルベート80を含む。
【0084】
更に別の実施形態は、ヒトへの経鼻投与に適した安定した懸濁物であって、(a)水性溶媒、(b)約1〜約20μmの粒径中央値を有し、溶媒中に懸濁される、フランカルボン酸モメタゾンの粒子、(c)溶媒中に溶解されるオロパタジン塩酸塩、及び(d)親水コロイドを含み、懸濁物は、約20cps〜約150cpsの範囲の粘度を有する。好適な一実施形態では、懸濁物は、約3.5〜3.9のpHを有し、及び約250mOsm/kg〜約350mOsm/kgの範囲のモル浸透圧濃度を有する。一実施形態では、懸濁物は、キレート化剤、保存剤、緩衝剤、界面活性剤、等張化剤及び随意pH調整剤を更に有する。
【0085】
更に別の実施形態では、本発明は、容器内に含まれる経鼻投与のための本発明の安定した一定用量の水性薬剤組成物及び本薬剤組成物の使用についての説明書を含む添付文書を含むキットに関する。一つの好適な実施形態では、容器は、アクチュエータを有する噴霧器の一部である。アクチュエータが作動するとき、組成物は、スプレーの形態で供給される。
【0086】
更に別の実施形態では、薬剤組成物は、噴霧器内に含まれ、組成物のスプレーをヒトの鼻に供給する際、15〜75mmの最長軸、10〜65mmの最短軸、及び1〜2の楕円率を有するスプレーパターンを有する。
【0087】
本発明の文脈において、薬剤組成物は、噴霧器を使用する点鼻スプレーとして供給される場合は、特定のスプレーパターン及びスプレー液滴サイズを生成する。例えば、スプレーパターンは、NSPUAセットアップを有するADSA(InnovaSystem)等、既知の各種技術で測定可能であり、また、例えば、スプレー液滴径分布は、NSPUAセットアップを有するMalvern Spraytec(Innovaシステム)等、各種の既知の技術で測定可能である。
【0088】
以下は、スプレーの液滴径分布の特徴を決めるための典型的手順について説明する。噴霧器には、上記のように組成物が投入され、微細霧が噴霧器のノズルから現れるまで、アクチュエータを介した作動ポンプによって装填される。市販されているレーザー回折器具が、ノズルが約3cm又は6cmとなるように、レーザー回折器具のレーザー光線の下方に配置される。ポンプは、従来の機械のアクチュエータで、一定の力を用いて作動する。その結果得られた組成物のスプレーは、レーザー光線と交差する。D10、D50、D90、SPANに関するデータが収集される(%体積10μm未満)。3つのスプレーに対するこれらの各パラメータの平均値が算出される。
【0089】
モメタゾン及びオロパタジンの安定した水性点鼻薬懸濁は、これらに限定されないが、非ステロイド性抗炎症薬、鬱血除去薬及び前述のいずれかの任意の組合せの薬効分類から選択される、一つ又は複数のさらなる薬剤の活性剤を含んでもよい。
【0090】
水性点鼻薬懸濁物は、液滴、又は局所投与に好適な任意の他の形態として、投与可能である。組成物は、鼻綿球又は鼻スポンジを使用して投与されてもよい。
【0091】
好適な実施形態では、水性懸濁物は、点鼻スプレーの形態で与えられ、懸濁物は、単回投与用容器又は反復投与用容器で投与される。好適な単回投与用容器又は反復投与用容器としては、ガラス、アルミニウム、ポリプロピレン又は高密度ポリエチレン、例えばブロー充てん密封生産技術を使用して生成される高密度ポリエチレン容器が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0092】
特定の更なる実施形態では、本発明は、(a)本発明の複数回投与用薬剤組成物と、(b)容器とを含む複数回投与用組成物を提供し、本容器は、(i)組成物の複数回投与を持続し、押し潰すことができるチャンバを押し潰した際に1回分の投薬量が開口部から出る開口部を有する押し潰し可能なチャンバと、(ii)押し潰し可能なチャンバの開口部に取り付けられた取り外し可能な密閉機構とを備える。特定の実施形態では、複数回投与用容器は、成形用ポリマー製である。
【0093】
この実施形態では、好適なポリマーの非限定的な例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ナイロン(Ny)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリサルホン(PSF)、ポリエーテルサルホン(PES)、ポリアクリラート(PAR)、及びポリアミド(PA)が挙げられる。特定の実施形態では、ポリマーとしては、ポリエチレン、特に中密度ポリエチレン(MDPE)(若しくは分岐状ポリエチレン)又は高密度ポリエチレン(HDPE)(若しくは直鎖状ポリエチレン)が挙げられる。一実施形態では、複数回投与用容器は、高密度ポリエチレン(HDPE)製である。
【0094】
また、定量吸入器(MDI)を介した吸入等、点鼻スプレーを供給するための他の手段が使用されてもよい。数種類のMDIは、吸入投与に定期的に使用される。この種の装置は、呼吸作動MDI(スペーサ/把持チャンバ)を、MDI、及びネブライザと組み合わせて備えることができる。本明細書で用いられる用語「MDI」は、例えば、活性剤及び高圧ガスの混合物(随意、一つ又は複数の添加剤)を含むキャニスター、定量弁、アクチュエータ、及びマウスピースを備える吸入デリバリーシステムを示す。キャニスターには、通常、点鼻スプレー用組成物等の活性成分の懸濁物、及び、一つ又は複数のハイドロフルオロアルカン[例えば1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFA−134a)及び1,1,1,2,3,3(3−ヘプタフルオロプロパン(HFA−227))]などの高圧ガス、クロロフルオロカーボン、アルコール(例えばエタノール、イソプロパノール、ブタノール、プロパノール)、又はそれらの混合物等が充填されている。アクチュエータが押されれば、定量の懸濁物が、吸入のためにエアロゾル化される。次に対象によって吸入され得るマウスピースの方に活性成分含有粒子が進む。
【0095】
また、本発明は、必要に応じてヒトの鼻炎を治療する方法に関し、この方法は、本発明の安定した一定用量水性薬剤組成物を、経鼻経路で投与することを含む。例えば、容器内に含まれ得る薬剤組成物は、約0.025%w/w〜約0.05%w/wのモメタゾン又はその塩、及び約0.5%w/w〜約0.8%w/wのオロパタジン又はその塩を含む。
【0096】
更に別の実施形態では、本発明は、ヒトの鼻炎の治療のための安定した一定用量の水性薬剤組成物(例えば容器内に含有)を調製する場合に、約0.025%w/w〜約0.05%w/wのモメタゾン又はその塩、及び約0.5%w/w〜約0.8%w/wのオロパタジン又はその塩を使用することに関する。本明細書に記載される任意の薬剤組成物が、使用されてもよい。
【0097】
更に別の実施形態では、本発明は、経鼻投与のための安定した一定用量の水性薬剤組成物(例えばコンテナ内に含有)であって、約0.025%w/w〜約0.05%w/wのモメタゾン又はその塩、及び約0.5%w/w〜約0.8%w/wのオロパタジン又はその塩を、それを必要とするヒトの鼻炎の治療のために備える。
【0098】
本発明の文脈において、鼻炎とは、鼻内側粘膜、鼻粘膜及びこれに関連する非鼻粘膜の刺激及び炎症が挙げられるが、これに限定されるものではない。これには、アレルギー性鼻炎、持続性鼻炎、永続性鼻炎、季節性鼻炎、慢性鼻炎、薬物性鼻炎、血管運動神経性鼻炎、感染性鼻炎、自律神経鼻炎、ホルモン鼻炎、薬物性鼻炎、萎縮性鼻炎及び呈味鼻炎が挙げられる。好ましくは、アレルギー性鼻炎、永続性鼻炎、持続性鼻炎、季節性鼻炎、並びに、これらに関連した鼻及び非鼻症状が挙げられる。
【0099】
本発明の文脈において、アレルギー性鼻炎に関連する鼻及び非鼻症状としては、くしゃみ、鼻のぐずつき、鼻汁(鼻水)、鼻閉、せき、眼性そう痒、過剰な流涙、頭痛、疲労、風邪(別名鼻咽腔炎、鼻咽頭炎、急性鼻感冒又は悪寒)、不調及び認知障害が挙げられる。
【0100】
ここに開示される実施形態に対して、各種の変更がなされてもよいことが、理解されよう。したがって、上記の説明は、限定することとして解釈されてはならず、単に好適な実施形態の実例のみとして解釈されるべきである。他の構成及び方法が、当業者によって、本発明の範囲及び本質を逸脱しない範囲で実行されてもよい。
【0101】
以下の実施例は、当業者が本発明を実行するのを可能にするために提供され、これらは単に本発明を例示するのみである。これら実施例が、本発明の範囲を限定するように解釈されてはならない。
【実施例】
【0102】
実施例1から2:フランカルボン酸モメタゾン、オロパタジンHCl及びカルボキシメチルセルロースナトリウムを有する懸濁物組成物
【0103】
【表1】
【0104】
製造手順:
1.Avicel RC−591を、均質化により注射用蒸留水中に添加し、水和した。
2.カルボキシメチルセルロースナトリウムを注射用蒸留水中に分散し、ステップ−1に添加した。
3.リン酸水素ナトリウム七水和物、塩化ナトリウム、エデト酸二ナトリウム及びオロパタジンを水に溶解した。塩酸を用いて、pHを2.8〜3.2に調整した。
4.ステップ−3を、均質化によりステップ−1に加えた。
5.ポリソルベート80を、注射用蒸留水中に溶解した。フランカルボン酸モメタゾン一水和物を加え、撹拌してスラリーを生成した。
6.ステップ−5を、均質化によりステップ−4に添加した。
7.塩化ベンザルコニウムを、注射用蒸留水中に溶解した。
8.ステップ−7を、均質化によりステップ−6に加えた。
9.pHを確認し、HClを用いて3.5−3.9に調整し、注射用蒸留水で全重量を調節した。組成物のモル浸透圧濃度は、約250〜350mOsm/kgであった。
【0105】
異なる条件で組成物の安定性試験を行った。同結果は、以下の通りである:
容器の詳細:ポンプが圧着され、アクチュエータ及びキャップが取り付けられているHDPEビンを有する噴霧器。
【0106】
【表2A】
【表2B】
【0107】
実施例3〜4:フランカルボン酸モメタゾン、オロパタジンHCl及びキサンタンガムを有する懸濁物組成物。
【0108】
【表3】
【0109】
製造手順:
1.Avicel RC−591を、均質化を行って注射用蒸留水中に追加し、水和を行った。
2.キサンタンガムを注射用蒸留水に分散させ、ステップ−1に追加した。
3.リン酸水素ナトリウム七水和物、塩化ナトリウム、エデト酸二ナトリウム及びオロパタジンを、水に溶解した。塩酸を用いて、pHを2.8〜3.2に調整した。
4.ステップ−3を、ステップ−1に添加した。
5.ポリソルベート80を、注射用蒸留水中に溶解した。フランカルボン酸モメタゾン一水和物をこれに加え、撹拌してスラリーを生成した。
6.ステップ−7を、均質化によりステップ−6に添加した。
7.塩化ベンザルコニウムを、注射用蒸留水中に溶解した。
8.ステップ−3を、均質化によりステップ−1に加えた。
9.pHを確認し、HClを用いて3.5〜3.9に調整し、注射用蒸留水で重量を調節した。組成物のモル浸透圧濃度は、約250〜350mOsm/kgであった。
【0110】
異なる条件で組成物の安定性試験を行った。同結果は、以下の通りである:
容器の詳細:ポンプが圧着され、アクチュエータ及びキャップが取り付けられているHDPEビンを有する噴霧器。
【0111】
【表4A】
【表4B】
【表4C】
【0112】
比較例A及びB:フランカルボン酸モメタゾン及びオロパタジンHClを有する懸濁物組成物。
【0113】
【表5】
【0114】
製造手順:
実施例1で述べた通りの製造手順が追従された。
【0115】
比較例C及びD:フランカルボン酸モメタゾン及びオロパタジンHClを有する懸濁物組成物。
【0116】
【表6】
【0117】
製造手順:
実施例3で述べた通りの製造手順が追従された。
【0118】
ここでは、特定の実施形態に関して本発明を説明してきたが、これらの実施形態は、単に本発明の原理及び用途を例示するのみであることが理解されよう。従って、多数の変形が実施形態になされてもよく、また、上記の如く、本発明の精神と範囲から逸脱することなく、他の構成が考案されてもよいことが理解されよう。
【0119】
本出願の中に引用されるすべての出版物、特許及び特許出願は、同一の範囲で参照事項としてここに包含され、それは、あたかも、個々の出版、特許又は特許出願が、参照事項としてここに包含されることが具体的かつ個別的に示されるが如きである。
【国際調査報告】