(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2016-534494(P2016-534494A)
(43)【公表日】2016年11月4日
(54)【発明の名称】炭素コーティングされた電気化学的に活性な粉末
(51)【国際特許分類】
H01M 4/58 20100101AFI20161007BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20161007BHJP
H01M 4/1397 20100101ALI20161007BHJP
H01M 4/136 20100101ALI20161007BHJP
C01B 25/45 20060101ALI20161007BHJP
【FI】
H01M4/58
H01M4/36 C
H01M4/1397
H01M4/136
C01B25/45 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】有
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2016-519915(P2016-519915)
(86)(22)【出願日】2014年9月17日
(85)【翻訳文提出日】2016年6月1日
(86)【国際出願番号】EP2014069746
(87)【国際公開番号】WO2015049105
(87)【国際公開日】20150409
(31)【優先権主張番号】13004760.8
(32)【優先日】2013年10月2日
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】502270497
【氏名又は名称】ユミコア
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】特許業務法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】パウルゼン,ジェンズ
(72)【発明者】
【氏名】シャ,シン
(72)【発明者】
【氏名】リ,キョンテ
(72)【発明者】
【氏名】キム,デカン
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA02
5H050AA08
5H050AA12
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CB12
5H050DA02
5H050DA09
5H050EA08
5H050EA09
5H050FA17
5H050FA18
5H050FA19
5H050GA02
5H050GA10
5H050GA13
5H050GA27
5H050HA00
5H050HA02
5H050HA04
5H050HA13
5H050HA14
(57)【要約】
本発明は、式A
aM
m(XO
4)
nで表される化合物を含有する粒子を含む電気化学的に活性な粉末に関し、式中、Aはアルカリ金属を含み、Mは少なくとも1種の遷移金属、及び所望により少なくとも1種の非遷移金属を含み、かつXはS、P、及びSiから選択され、式中、0<a≦3.2、1≦m≦2、及び1≦n≦3であり、前記粒子は、炭素質材料を含む層で少なくとも部分的にコーティングされ、前記炭素質材料は高度に規則的な黒鉛を含み、前記高度に規則的な黒鉛の有する、ラマンスペクトル分析により得られる、1580cm
−1におけるピーク強度(I
1580)に対する1360cm
−1におけるピーク強度(I
1360)の比率は最大3.05である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーティング層を備える核を含有する粒子を含む電気化学的に活性な粉末であって、前記核は式LiaMm(XO4)nにより表される化合物を含有し、式中、Mは少なくとも1種の遷移金属及び所望により少なくとも1種の非遷移金属を含み、かつXはS、P、及びSiから選択され、式中、0<a≦3.2、0≦m≦2、及び1≦n≦3であり、前記粒子は前記コーティング層により少なくとも部分的にコーティングされ、これにより前記コーティング層は炭素質材料を含み、前記炭素質材料は高度に規則的な黒鉛を含み、前記高度に規則的な黒鉛は、少なくとも1.5かつ最大3.05の、ラマンスペクトル分析により得られた1580cm−1におけるピーク強度(I1580)に対する1360cm−1におけるピーク強度(I1360)の比率(I1360/I1580)を有する、電気化学的に活性な粉末。
【請求項2】
XがPである、請求項1に記載の粉末。
【請求項3】
Mが、鉄、マンガン、バナジウム、チタン、モリブデン、ニオブ、タングステン、亜鉛及びこれらの混合物を含む遷移金属であり、前記遷移金属が、好ましくは以下の酸化状態:Fe2+、Mn2+、V2+、V3+、Cr3+、Ti2+、Ti3+、Mo3+、Mo4+、Nb3+、Nb4+及びW4+である、請求項1又は2に記載の粉末。
【請求項4】
前記化合物が、式LiMPO4を特徴とし、好ましくはオリビン構造を有し、式中、Mは遷移金属の第一列に属する金属カチオンであり、好ましくはMn、Fe、Co、及びNiからなる群から選択される、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の粉末。
【請求項5】
前記化合物が、式LiaM1−yM’y(XO4)nを特徴とし、式中0≦a≦2、0≦y≦0.6及び1≦n≦1.5であり、式中、Mは周期表の遷移金属の第一列、又は遷移金属の第一列の混合物であり、M’はMg2+、Ca2+、Al3+、Zn2+又はこれらと同じ元素の組み合わせから選択される、原子価が一定の元素である、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の粉末。
【請求項6】
前記化合物が、式Lia(M,M’)PO4を特徴とし、式中0≦a≦1であり、MはMn、Fe、Co、Ni、及びCuからなる群から選択される1種以上のカチオンであり、かつM’はNa、Mg、Ca、Ti、Zr、V、Nb、Cr、Zn、B、Al、Ga、Ge、及びSnからなる群から選択される任意の代替的なカチオンである、請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の粉末。
【請求項7】
前記化合物が、式LiuMv(XO4)W(u=1、2、又は3、v=1又は2、w=1又は3)を特徴とし、MがTiaVbCrcMndFeeCofNigSchNbiの式を有し(a+b+c+d+e+f+g+h+i=1)、かつXがPx−1Sx(0≦x≦1)である、請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の粉末。
【請求項8】
前記化合物が、式Li1+xMm(XO4)nを特徴とし、式中、0<x≦0.2、0≦m≦1、及び1≦n≦1.05であり、かつMが鉄、マンガン、バナジウム、チタン、モリブデン、ニオブ、タングステン、亜鉛及びこれらの混合物からなる群から選択される遷移金属である、請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の粉末。
【請求項9】
I1360/I1580が最大2.10である、請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の粉末。
【請求項10】
前記炭素質材料を含む前記層が少なくとも2nmの厚みを有する、請求項1乃至請求項
9のいずれか一項に記載の粉末。
【請求項11】
前記LiaMm(XO4)nが、XRDデータのリートベルト法により測定された、最大90nmの結晶寸法を有する、請求項1乃至請求項10のいずれか一項に記載の粉末。
【請求項12】
式Li1+xFePO4により表される化合物を含有する粒子を含む電気化学的に活性な粉末であって、式中、xは少なくとも0.01であり、前記粒子は炭素質材料含有層で少なくとも部分的にコーティングされてなり、少なくとも3nmの厚みを有し、前記炭素質材料は高度に規則的な黒鉛を含み、前記高度に規則的な黒鉛は、最大3.00の、ラマンスペクトルにより得られた1580cm−1におけるピーク強度(I1580)に対する1360cm−1におけるピーク強度(I1360)の比率(I1350/I1580)を有する、電気化学的に活性な粉末。
【請求項13】
請求項1乃至請求項12のいずれか一項に記載の電気化学的に活性な粉末及び結着剤を含有する組成物を含む電極材料。
【請求項14】
少なくとも2つの電極及び少なくとも1種の電解質を含有する電気化学セルであって、前記電極の少なくとも1つ、好ましくは正極が、請求項13に記載の電極である、電気化学セル。
【請求項15】
電池及び前記電池を含有する装置であって、前記電池は、少なくとも1つの、請求項14に記載の、電気化学セルを含有し、前記装置がポータブル電子デバイス、ポータブルコンピュータ、タブレット、携帯電話、電動車両及びエネルギー貯蔵システムからなる群から選択される、電池及び装置。
【請求項16】
炭素コーティングされた電気化学的に活性な粉末の製造方法であって、前記粉末が、式LiaMm(XO4)nにより表される化合物を含有する粒子を含み、式中、0<a≦3.2、0≦m≦2、及び1≦n≦3であり、Mは少なくとも1種の遷移金属、及び場合により少なくとも1種の非遷移金属を含み、かつXはS、P、及びSiの中から選択され、前記方法が、
i.以下の前駆体:
a.Li源、
b.M元素源、
c.X元素源、及び
d.炭素源、の混合物を提供する工程
(ここで、A元素源、M元素源及びX元素源は、全体又は部分が、少なくとも1種の供給源となる元素を有する化合物の形態にて導入される)、
ii.前記混合物を焼結チャンバー内で、少なくとも500℃の焼結温度まで加熱し、そして前記混合物を前記焼結温度にて第1の期間焼結する工程(ここで、不活性ガス流が前記チャンバーに供給される)、
iii.前記混合物の加熱及び/又は焼結の前、間及び/又は後に、前記焼結チャンバー内に蒸気をある注入時間にわたって連続的に注入することにより、前記化合物を含有する粒子を製造する工程(ここで、前記粒子は高度に黒鉛化した炭素を含有する炭素質材料により、少なくとも部分的にコーティングされている)、並びに
iv.前記粉末を、好ましくは室温まで冷却する工程、
を含む、製造方法。
【請求項17】
前記炭素コーティングされた電気化学的に活性な粉末が、請求項1乃至請求項11のいずれか一項に記載の粉末である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
XがPである、請求項16又は請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素コーティングされた粒子を含む電気化学的に活性な粉末に関し、上記粒子は電気化学的に活性な化合物を含有し、この化合物は好ましくはオリビン又はNASICON構造を有する。本発明はまた、上記粉末の製造プロセス、及び上記粉末を含有する様々な製品に関する。特に、本発明は上記粉末を含む正極、及び電池、特に上記電極を含むリチウムイオン電池に関する。
【背景技術】
【0002】
電気化学的に活性な粉末は、例えば米国特許出願公開第2009/0148771(A1)号明細書から知られており、ここではリチウム(Li)系粉末が開示されている。上記粉末は、リン酸リチウム系粒子を含み、この粒子はその電気化学的活性が知られている。特に、上記公報はMが特にマンガン、鉄、ニッケル及びマグネシウムであり、0≦X≦1であり、かつ50nm〜500nmの平均粒径を有する、粒子状LiM
xPO
4化合物を開示している。上記粒子状化合物はカソードにおいて活物質として使用され、この場合、上記化合物は炭素材料(例えば黒鉛)、及び結着剤と混合される。
【0003】
既知の電気化学的に活性な粉末、例えば、LiFePO
4等のリン酸リチウムをベースにした粉末の周知の限界は、その低伝導率であり、この低伝導率によりこの粉末の多様な用途が制限され得る。特に、リチウムイオン電池により駆動され、電池に高いレート特性を要求する電気デバイスは、必要とされる使用目的までは機能しない場合がある。かかる材料の伝導率を向上させ、一層良好な電気化学的性能を達成するために、例えば炭素の添加、炭素コーティング、金属ドーピング、粒径調節等の多くのアプローチが用いられてきた。
【0004】
例えば、米国特許出願公開第2009/0148771(A1)号明細書は、LiFePO
4粉末に粒子状炭素材料を添加して、この材料を含有する正極電池電極の性能を向上させることを開示している。上記公報は更に、上記炭素材料の含有する黒鉛量を増加させた場合、一層良好な結果が得られたことを示している。粒子状炭素材料中の黒鉛の量を定量するために、米国特許出願公開第2009/0148771(A1)号明細書の発明者らは、ラマンスペクトル分析により得られた1,580cm
−1におけるピーク強度(I
1580)に対する、1,360cm
−1におけるピーク強度I
1360の比率(I
1360/I
1580)を用いた。この明細書で説明される通り、ピーク強度I
1580は黒鉛化炭素によるものであり、一方、ピーク強度I
1360は不規則に存在する炭素によるものであり、0.25ほどの低比率で非常に良好な性能が得られた。
【0005】
しかし、既知の電気化学的に活性な粉末、及び特に、LiFePO
4等のリン酸リチウムをベースにしたこれらの粉末の伝導率を向上させる他の最適な方法に、炭素コーティングにより粉末の粒子を覆うというものがある。
【0006】
炭素コーティングは、粉末の性能、特にその伝導率、比容量、レート特性及びサイクル寿命を向上させるために用いられる最も重要な技術の1つである。様々な研究プログラムにより、効果的な炭素コーティングは、リン酸リチウム等の粒子状の電気化学的活物質の表面電子伝導率を高めるだけでなく、これらの活物質の調製の改良又は簡素化もし得ることが示されている。例えば、炭素コーティングしたLiFePO
4は、LiFePO
4粒子を炭素粉末と共に粉砕することにより、又は上記LiFePO
4粒子表面上に予め付着した有機前駆体をそのまま炭化させることにより、容易に調製することができる。
【0007】
しかし、上述のLiFePO
4粒子等の電気化学的に活性な粒状物質に塗布される炭素コーティングの構造は、粒子状物質の電気化学的性能に著しく影響を及ぼし得る。高温(800℃超)で作製した炭素コーティングは、低温(600℃未満)で作製したものより高い電子伝導率を有する。これらの利点は、炭素コーティングの黒鉛化を増大させること、すなわち、非黒鉛化炭素、例えば、不規則な炭素を消費して、コーティング中に存在する黒鉛化炭素の量を増加させることによるものであると考えられる。炭素系材料中の黒鉛化炭素の量、及び不規則な炭素に対する黒鉛化炭素の比率は、米国特許出願公開第2009/0148771(A1)号により示されている通り、ラマン分光法により測定したID/IG(不規則/黒鉛)ピーク強度の比率により評価することができる。ID/IGの比率が低くなるほど、黒鉛化炭素の量は多くなる。
【0008】
このような見識をもとに、リン酸リチウム系粒子等の電気化学的に活性な粒子状物質を、黒鉛化炭素によりコーティングする、様々な試みが行われてきた。a)粒子を有機前駆体でコーティングし、焼結温度(800℃超)を高温に設定して上記前駆体を炭化すること;b)炭素ナノチューブ、グラフェン、炭素ナノファイバー等の黒鉛化炭素源を増量させた材料と、粒子を組み合わせること;又はc)焼結中に、様々な触媒、例えばフェロセンを使用して、炭素の高度な黒鉛化を達成すること;等の方法論を試験的に利用して、電気化学的に活性な粒子状物質の性質が高められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、上で列挙したアプローチは全て欠点を有しており、最適な生成物の入手には成功していない。例えば、焼結温度を高くすると、結果として、リン酸リチウム系粒子等の電気化学的に活性な粒子状物質の粒子の凝集が生じ得るだけでなく、通常、上記材料の酸化も生じ、ひいては電気化学的な活性が激しく低下するおそれがある。換言すれば、許容され得る黒鉛化炭素層でコーティングした粒子を得ても、焼結プロセス中に、得られる粉末の電気化学的活性が、許容され得るレベルよりも低下してしまう。
【0010】
他方、活性粒子状物質の電気化学的な活性に対する悪影響を回避するために焼結温度を下げると、得られる炭素層の黒鉛化炭素量は不十分なものになり、要求を満たさなくなってしまう。
【0011】
したがって、許容され得る電気化学的性質を有しており、かつ高度に黒鉛化した炭素層でコーティングされている、リン酸リチウム系材料を含有する粒子等の、電気化学的に活性な粒子状物質を提供することが本発明の目的となり得る。本発明は、炭素コーティングされた電気化学的に活性な粒子状物質を含有する電極を提供することを更なる目的とし、上記コーティングは多量の黒鉛化炭素を含み、上記電極は、最適な特性を有する黒鉛化炭素を含む電池を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、式A
aM
m(XO
4)
nで表される化合物を含有する粒子を含む電気化学的に活性な粉末を提供し、式中、Aはアルカリ金属を含み、Mは少なくとも1種の遷移金属、及び場合により少なくとも1種の非遷移金属を含み、かつXはS、P、及びSiから選択され、式中、0<a≦3.2、1≦m≦2、かつ1≦n≦3であり、上記粒子は、炭素質材料を含む層で少なくとも部分的にコーティングされ、上記炭素質材料は高度に規則的な黒鉛を含み、上記高度に規則的な黒鉛の有する、ラマンスペクトル分析により得られる、1580cm
−1におけるピーク強度(I
1580)に対する1360cm
−1におけるピーク強度(I
1360)の比率(I
1360/I
1580)は最大でも3.05である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
以下で図を説明する:
【
図1】本発明の粉末を製造するために使用する装置を示す。
【
図2】温度プロファイル、即ち本発明の粉末を製造するためのプロセスに使用する、温度対時間を示す。
【
図3】本発明の粉末の代表的な粒子、及び比較のために使用した粉末の粒子の画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明者らは、驚くべきことに、本発明の活性な粉末が含有する炭素質材料によるコーティング層は、高度に黒鉛化されており、かつ均一性が増していることを観察した。これらの有利な特性は、活性粉末の表面電子伝導率を向上させ、ひいては活性粉末を含有する電極の比容量を最適なものにし、かつ活性粉末を含有する電極のレート特性及びサイクル寿命を向上させ得る。最適化したコーティングを有することによる更なる利益は、充放電中の分極作用の低減、及び充放電中の活性粉末の高度安定性であり得る。
【0015】
特に、発明者らは、費用のかかる複雑なプロセスを必要とすることなく、リン酸鉄リチウム粒子の表面上に、高度に黒鉛化し均一な炭素層を得た。かかる粉末を製造するために使用するプロセスでは、比較的低い焼結温度(800℃未満)、及び比較的短い焼結時間(2時間以内)を用いた。炭素層は、リン酸鉄リチウムに高放電容量及びレート性能を付与するようである。
【0016】
本発明にかかる活物質として使用する化合物において、AはLi、Na又はKであることが好ましい。Mは、鉄、マンガン、バナジウム、チタン、モリブデン、ニオブ、タングステン、亜鉛及びこれらの混合物を含む遷移金属であることが好ましく、上記遷移金属は、以下の酸化状態:Fe
2+、Mn
2+、V
2+、V
3+、Cr
3+、Ti
2+、Ti
3+、Mo
3+、Mo
4+、Nb
3+、Nb
4+及びW
4+であることが好ましい。非遷移金属はマグネシウム及びアルミニウムを含むのが好ましい。
【0017】
第1の実施形態では、本発明に従って使用される化合物は式LiMPO
4を有し、上記化合物はオリビン構造を有することが好ましく、式中、Mは遷移金属の第一列の金属カチオンであり、Mn、Fe、Co、及びNiからなる群から選択されることが好ましい。かかる化合物は、例えば参照により本明細書に含まれる米国特許第5,910,382号により開示されている前駆体を使用することにより、合成することができる。Mはカチオンの組み合わせであることが好ましく、それらの少なくとも1つはMn、Fe、Co及びNiからなる群から選択される。Mは、Fe
1−xMn
x又はFe
1−xTi
x(0<x<1)であることがより好ましい。MはFeであることが最も好ましい。
【0018】
第2の実施形態では、本発明で使用される化合物は式Li
xM
1−yM’
y(XO
4)
nを有し、式中、0≦x≦2、0≦y≦0.6及び1≦n1.5であり、式中、Mは、周期表の第一列の遷移金属、又は遷移金属の混合物であり、M’は、Mg
2+、Ca
2+、Al
3+、Zn
2+又はこれらと同じ元素の組み合わせから選択される、原子価が一定の元素であり、かつXはS、P及びSiから選択され、Pが好ましい。かかる化合物は、参照することによって本明細書に包含される例えば米国特許出願公開第2004/0033360(A1)号により開示されている前駆体を使用することにより合成することができる。
【0019】
本発明の第3の実施形態では、化合物は式Li
x(M,M’)PO
4を有し、式中、0≦x≦1であり、MはMn、Fe、Co、Ni、及びCuからなる群から選択される1種以上のカチオンであり、かつM’はNa、Mg、Ca、Ti、Zr、V、Nb、Cr、Z
n、B、Al、Ga、Ge、及びSnからなる群から選択される、任意の代替的なカチオンである。
【0020】
本発明の第4の実施形態では、化合物は式Li
uM
v(XO
4)
Wを有し(u=1、2、又は3、v=1又は2、w=1又は3)、MはTi
aV
bCr
cMn
dFe
eCo
fNi
gSc
hNb
iの式を有し(a+b+c+d+e+f+g+h+i=1)、かつXはP
x−1S
x(0≦x≦1)である。
【0021】
好ましい実施形態では、化合物は式Li
1+xM
m(XO
4)
nで表されるLi豊富な化合物であり、式中、0<x≦0.2、0≦m≦1、及び1≦n≦1.05である。好ましくは、0<x≦0.2、0≦m≦1、及びn=1である。Mは遷移金属であることが好ましく、鉄、マンガン、バナジウム、チタン、モリブデン、ニオブ、タングステン、亜鉛及びこれらの混合物からなる群から選択される遷移金属であることがより好ましい。あるいは、MはM=Fe
1−mM’
mの式を有し(0≦m≦0.025)、式中、M’はアルカリ土類金属及び非金属からなる群から選択される1種以上の元素のいずれかである。M’はMg、Ca、Sr、Ba、及びBからなる群から選択されることが好ましい。M’はMg又はBであることが最も好ましい。XはS、P及びSiから選択されるのが好ましく、Pが好ましい。本実施形態における化合物のLi含有量は非化学量論的に調整され、すなわち、モル比Li/Mが1.00を超え、特にNASICON構造を有する粉末に関しては、1.5を超えることが好ましい。
【0022】
本発明の粉末を形成する粒子は、好ましくは少なくとも50nmの平均直径、より好ましくは少なくとも80nmm、最も好ましくは少なくとも150nmの平均直径を有する。上記平均直径は、好ましくは最大600nm、より好ましくは最大400nm、最も好ましくは最大200nmである。上記粒子の平均粒径は、例えば走査型電子顕微鏡(SEM)により得られ、観察される画像にて測定した最長直径の平均値から計算される。
【0023】
本発明の粉末を形成する粒子は、好ましくは500nm未満、より好ましくは200nm未満、及び好ましくは30nm超の平均粒径d50を有する、粒径分布を有する。粒径分布は単峰性であることが好ましい。本発明の粉末は、好ましくは最大1.5、より好ましくは最大1.3、最も好ましくは最大1.1の(d90−d10)/d50比を特徴とする。
【0024】
本発明に従うと、本発明の粉末を形成する粒子は、高度に規則的な黒鉛を含有する炭素質材料を含む層でコーティングされている。本明細書において、炭素質材料とは例えば、炭素質材料の総量に基づいて60〜100モル%の量で炭素を含有し、かつ好ましくは、室温で10
−6S/cm超の、好ましくは10
−4S/cm超の電子伝導率を有する、炭素が豊富な材料と理解される。電気化学的操作中に炭素の化学的不活性に干渉しなければ、炭素質材料中に他の元素が存在してもよく、このような元素は水素、酸素、窒素である。本明細書において、高度に規則的な黒鉛は、ラマンスペクトル分析により得られる、1580cm
−1におけるピーク強度(I
1580)に対する1360cm
−1におけるピーク強度(I
1360)の比率(I
1360/I
1580)が最大3.05である黒鉛と理解される。比率I
1360/I
1580は、最大2.80であることが好ましく、最大2.60であることがより好ましく、最大2.40であることが更により好ましく、最大2.20であることが更に一層好ましく、最大2.10であることが最も好ましい。比率I
1360/I
1580は少なくとも1.5であることが好ましく、少なくとも1.8であることがより好ましく、少なくとも2.0であることが最も好ましい。上記炭素質材料に含有される高度に規則的な黒鉛の量は、炭素質材料の総含有量に基づいて少なくとも22重量%であることが好ましく、少なくとも28重量%であることがより好ましく、少なくとも30重量%であることが最も好ましい。好ましい実施形態では、炭素質材料は本質
的に、高度に規則的な黒鉛からなる。
【0025】
上記Li
aM
m(XO
4)
nは、好ましくは最大90nm、及び好ましくは最大85nmの結晶寸法を有する。結晶寸法はリートベルト法によるXRDデータの精密化をもとに測定される。
【0026】
開示の方法では、比較的低い焼結温度及び短い焼結期間が利用されるおかげで、小さな結晶寸法と、比較的高度な黒鉛化度とを合わせて得ることができるのに対し、従来技術の方法では、十分な黒鉛化を可能にする焼結温度及び期間が選択されると、結晶寸法が約100nm又はそれ以上にまで成長してしまう。
【0027】
炭素質材料を含む層は、好ましくは少なくとも2nm、より好ましくは少なくとも5nm、最も好ましくは少なくとも8nmの厚みを有する。上記層は、好ましくは最大20nm、より好ましくは最大15nm、最も好ましくは最大12nmの厚みを有する。上記層は、好ましくは2nm〜20nm、より好ましくは5nm〜15nm、最も好ましくは8nm〜12nmの厚みを有する。上記層の厚みは、透過型電子顕微鏡法を使用して測定することができる。
【0028】
本発明の粉末を形成する粒子は、好ましくは最大25g/cm
2、より好ましくは最大20g/cm
2、最も好ましくは最大18g/cm
2のBETを有する。上記BETは、好ましくは少なくとも10g/cm
2、より好ましくは少なくとも12g/cm
2、最も好ましくは少なくとも15g/cm
2である。
【0029】
好ましい実施形態では、本発明は式Li
1−xFePO
4により表される化合物を含有する粒子を含む、炭素コーティングされた粉末に関し、式中、xは少なくとも0.01であり、より好ましくは、xは少なくとも0.03であり、最も好ましくは、xは少なくとも0.06であり、上記粒子は、炭素質材料を含む層で少なくとも部分的にコーティングされており、上記層は少なくとも3nm、より好ましくは少なくとも6nm、更により好ましくは少なくとも9nmの厚みを有し、上記炭素質材料は高度に規則的な黒鉛を含み、上記高度に規則的な黒鉛の有する、ラマンスペクトルにより得られる、1580cm
−1におけるピーク強度(I
1580)に対する1360cm
−1におけるピーク強度(I
1360)の比率(I
1360/I
1580)は最小1.50〜最大3.00、より好ましくは1.80〜2.40、最も好ましくは1.90〜2.10である。上記炭素質材料は本質的に、上記高度に規則的な黒鉛から構成されるのが最も好ましい。上記層の厚みは8nm〜12nmであることが最も好ましい。
【0030】
本発明はまた、本発明の炭素コーティングされた電気化学的に活性な粉末、及び好ましくは結着剤を含む組成物に関し、上記組成物は、電極材料として使用するのに好ましいものである。したがって、本発明はまた、本発明の組成物を含む電極材料にも関する。この組成物は導電剤を更に含んでもよく、導電剤は繊維状炭素であることが好ましい。結着剤は、ポリエーテル、ポリエステル、メチルメタクリレート単位をベースにしたポリマー、アクリロニトリル系ポリマー、フッ化ビニリデン及びこれらの混合物からなる群から選択される材料であることが好ましい。本発明は更に、本発明の電極材料を含む電極に関する。
【0031】
本発明はまた、少なくとも2つの電極及び少なくとも1種の電解質を含有する電気化学セルに関し、電極の少なくとも1つ、好ましくは正極は、本発明の電極である。電池の例としては、円筒型セル及び角柱型セルが挙げられる。電解質は、極性液体であって、溶媒和する又は溶媒和しない溶液又はポリマー中に、場合により上記極性液体により可塑化又はゲル化されている、1種以上の金属塩を含有する極性液体である。電解質はまた、ポリ
オレフィン、ポリエステル、シリカナノ粒子、アルミナ又はアルミン酸リチウムLiAIO
2等の微多孔性セパレータ内に固定化した極性液体とすることができる。極性液体の例としては、環式又は直鎖カーボネート、ギ酸アルキル、オリゴエチレングリコール、アルキルエーテル、N−メチルピロリジノン、y−ブチロラクトン、テトラアルキルスルファミド(tetraalakylsulfamides)及びこれらの混合物が挙げられる。
【0032】
本発明は更に、本発明の電気化学セルの少なくとも1つを含有する電池、及び上記電池を含有する様々な装置に関する。装置の例は、ポータブル電子デバイス、例えばポータブルコンピュータ、タブレット、携帯電話;電動車両;及びエネルギー貯蔵システムとすることができる。
【0033】
本発明はまた、炭素コーティングされた電気化学的に活性な粉末の製造方法に関し、上記粉末は、式A
aM
m(XO
4)
nにより表される化合物を含有する粒子を含み、式中、0<a≦3.2、1≦m≦2、及び1≦n≦3であり、Aはアルカリ金属を含み、Mは少なくとも1種の遷移金属、及び場合により少なくとも1種の非遷移金属を含み、かつXはS、P、及びSiから選択され、上記粉末は本発明の粉末であることが好ましく、上記方法は
i.以下の前駆体、
a.A元素源、
b.M元素源、
c.X元素源、及び
d.炭素源、の混合物を提供する工程
(ここで、A元素源、M元素源及びX元素源は、全体又は部分が、少なくとも1種の供給源となる元素(source element)を有する化合物の形態にて導入される)、
ii.上記混合物を焼結チャンバー内で、少なくとも500℃の焼結温度まで加熱し、上記混合物を上記焼結温度にて第1の期間焼結する工程(ここで、不活性ガス流が上記チャンバーに供給される)、
iii.上記混合物の上記加熱及び/又は上記焼結の前、間、及び/又は後において、ある注入時間にわたって、上記焼結チャンバー内に蒸気を連続的に注入することにより、上記化合物を含有する粒子を製造する工程(ここで、粒子は高度に黒鉛化した炭素を含有する炭素質材料により、少なくとも部分的にコーティングされている)、並びに
iv.上記粉末を、好ましくは室温まで冷却する工程、を含む。
【0034】
本発明はまた、本発明の方法を実施するための装置に関する。
図1に関して、本発明の装置(100)は、焼結チャンバー(102)を有する炉(101);上記焼結チャンバー内に不活性ガスを導入するための注入口(103);蒸気を製造するために使用する蒸気源(104)及び蒸気を輸送し、焼結チャンバー(102)内に注入する手段(105)を含有する。炉はまた、過剰な蒸気を排気するために使用する排気口(106)を含むこともできる。
【0035】
本発明に従い、これらに利用する元素源を合わせて混合し、上記混合物に更なる加工を実施する。本発明の方法の工程iを工程iiと組み合わせること、例えば上記元素源を加熱中に混合することもまた可能であるが、上記元素源を、工程iiの開始前に混合することが好ましい。本発明の方法の工程iにて得た混合物は、均一な混合物、即ち本質的に全体に均一な組成を有する混合物であることが好ましい。均一な混合物は、例えば上記元素源をボールミル内で混合することにより、又は水平型若しくは垂直型アトライター、ローター−ステーターマシン(rotor−stator machines)、高エネルギーミル、遊星式混練機、振盪機若しくは振盪台、超音波装置若しくは高剪断ミキサー、あ
るいは上述の装置の組み合わせを使用することにより得ることができる。均一な混合物を得るためには、前駆体は粉末形態であることが好ましく、サブミクロンの粒度分布を有することが好ましく、サブミクロンのd50粒度分布を有することがより好ましい。
【0036】
本発明の方法の好ましい実施形態では、Aはリチウムであり、リチウム源は、酸化リチウム、水酸化リチウム、炭酸リチウム、中性リン酸塩Li
3PO
4、酸性リン酸塩LiH
2PO
4、オルトケイ酸リチウム、メタケイ酸リチウム、ケイ酸リチウム、硫酸リチウム、シュウ酸リチウム、酢酸リチウム、及びこれらの混合物からなる群から選択される化合物であることが好ましい。
【0037】
M源は、鉄、マンガン、コバルト、ニッケル、バナジウム、チタン、クロム、及び銅からなる群から選択される遷移金属、又は遷移金属の混合物を含む化合物であることが好ましい。好ましい実施形態では、M源は、酸化鉄(III)、マグネタイト、二酸化マンガン、五酸化二バナジウム(di−vanadimn pentoxide)、三価のリン酸鉄、三価の硝酸鉄、三価の硫酸鉄、ヒドロキシリン酸鉄、ヒドロキシリン酸リチウム、三価の硫酸鉄、三価の硝酸鉄、及びこれらの混合物からなる群から選択される化合物である。M源は鉄含有前駆体とM’含有前駆体との混合物であることが好ましい。好適な鉄含有前駆体の例としては、リン酸鉄(II)、シュウ酸鉄(II)及び酸化鉄(II)が挙げられる。好適なM’含有前駆体の例としては、酸化物、水酸化物又は有機錯体等の、Mg及びBを含有する少なくとも1種の化合物が挙げられる。
【0038】
X源は、硫酸、硫酸リチウム、リン酸、リン酸エステル、中性リン酸塩Li
3PO
4、酸性リン酸塩LiH
2PO
4、リン酸一ナトリウム(monoanunonium phosphate)、リン酸二アンモニウム(diarmnonium mphosphate)、三価のリン酸鉄、リン酸アンモニウムマンガン(NH
4MnPO
4)、シリカ、ケイ酸リチウム、アルコキシシラン及びその部分加水分解生成物、並びにこれらの混合物からなる群から選択されることが好ましい。好ましい実施形態では、X源は金属硫酸塩、例えば三価のリン酸鉄である。
【0039】
本発明によると、M源はまたX源でもあり、A源はまたX源でもあることも可能であり、あるいは、Aがリチウムである場合、リチウム源はまた、X源であるか、若しくはX源はまた、リチウム源であることもまた可能である。
【0040】
炭素源は有機前駆体材料又は有機前駆体材料の組み合わせであることが好ましい。一般に、所望の性質を有する炭素質材料をもたらす、任意の有機前駆体材料又は有機前駆体材料の組み合わせが、本発明に従った利用において好適である。上記前駆体は、粒子状物質の安定性に影響を与えないのが好ましい。
【0041】
本発明に従った炭素源として好適に利用することができる好ましい前駆体としては、炭化水素及びそれらの誘導体、特に多環式芳香族部分を含むもの、例えばピッチ及びタール誘導体、ペリレン及びその誘導体;糖及び炭水化物等の多価化合物、並びにこれらの誘導体;並びにポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。かかるポリマーの好ましい例としては、ポリオレフィン、ポリブタジエン、ポリビニルアルコール、フェノール縮合生成物が挙げられ、アルデヒド、フルフリルアルコール由来のポリマー、スチレン、ジビニルベンゼン、ナフタレン、ペリレン、アクリロニトリル、酢酸ビニルのポリマー誘導体;セルロース、デンプン並びにこれらのエステル及びエーテル、並びにこれらの混合物との反応によるものが含まれる。
【0042】
本発明に従い使用することができる更なる炭素源は、式CY−CYの化合物(式中、Yはハロゲン又は擬ハロゲンを示す)である。用語「擬ハロゲン」とは、イオンY
−の形態
で存在することが可能であり、かつ対応するプロトン化化合物HYを形成することができる有機又は無機のラジカルを意味する。ハロゲン及び擬ハロゲンの例としては、F、Cl、Br、I、CN、SCN、CNO、OH、N
3、RCO
2、RSO
3(式中、RはH又は有機ラジカルである)が挙げられる。CY結合の還元による形成は、水素、亜鉛、マグネシウム、Ti
3+イオン、T
2+イオン、Sm
2+イオン、Cr
2+イオン、V
2+イオン、テトラキス(ジアルキルアミノエチレン)又はホスフィン等の還元成分の存在下にて実施することが好ましい。これらの試薬は最終的には、電気化学的に入手でき、又は再生することができる。更に、還元速度を増加させる触媒を使用することもまた、有利である可能性がある。特に2,2’−ビピリジン等の、リン又は窒素化合物との錯体の形態である、パラジウム又はニッケル誘導体が特に効果的である。同様に、これらの化合物は上で述べたもの等の還元剤の存在下にて化学的に、又は電気化学的に、活性形態で生成することができる。このような例において、炭素質材料は、式:
CY−CY+2e
−→−C==C−+2Y
−
による炭素−ハロゲン結合を還元することにより製造される。
【0043】
還元により炭素を生成することが可能な化合物としては、ペルハロカーボン、特にポリマーの形態である、ヘキサクロロブタジエン及びヘキサクロロシクロペンタジエンが挙げられる。
【0044】
炭素質材料を得るための別の方法は、式
−CH−CY−+B
−→−C=C−+BHY
−
による、水素添加化合物HY(Yは上で規定した通りである)の除去を含む。
【0045】
還元により炭素を生成することができる化合物としては、特にポリフッ化ビニリデン(vinylidene polyfiuoride)、ポリ塩化ビニリデン若しくはポリ臭化ビニリデン等のポリマー形態であるハイドロハロカーボン、又は炭水化物等の、偶数個の水素原子及びY基を含む有機化合物が挙げられる。脱水素(擬)ハロゲン化は、室温を含む低温にて、塩基をHY化合物と反応させて塩を形成することにより達成することができる。好適な塩基の例としては、第三級塩基、アミン、アミジン、グアニジン、イミダゾール、アルカリ性水酸化物等の無機塩基、A(N(Si(CH
3)
3)
2、LiN[CH(CH
3)
2]
2及びブチルリチウム等の、強塩基のように挙動する有機金属化合物が挙げられる。
【0046】
好ましい実施形態では、以下の化合物を源として使用し、炭素コーティングされたリチウム豊富なリン酸鉄リチウムLi
1+xFePO
4(0<x≦0.2)を調製する:Li
3PO
4をLi源及びP源とし、Fe
3(PO
4)
2・8H
2OをFe源及びP源とし、並びにセルロースを炭素源とする[Li:Feのモル比は1.06:1であり、炭素源の重量比は5.85重量%であった(m
cellulose/m
Li3PO4+m
Fe3(PO4)2・8H2Oとして定義)]。
【0047】
便宜上、本発明に従い利用する元素源を、以下、前駆体と呼ぶ。
【0048】
本発明によると、時間(202)に対し温度(201)プロファイルを示す
図2を参照すると、前駆体混合物、即ち本発明で利用する元素源を含有する混合物を加熱速度(203)で、混合物の焼結が生じる温度(204)まで加熱する。本明細書において焼結温度と呼ぶ上記温度は、好ましくは少なくとも500℃、より好ましくは少なくとも550℃、最も好ましくは少なくとも600℃である。焼結温度は、好ましくは最大800℃、より好ましくは最大750℃、最も好ましくは最大700℃である。焼結温度は、好ましくは500℃〜800℃、より好ましくは550℃〜750℃、最も好ましくは600℃〜700℃である。焼結温度は、焼結プロセス中で一定とすることができ、又は変化させる
ことができる。焼結プロセス中に焼結温度を変化させる場合、本明細書において、「焼結温度」は様々な温度の平均と理解される。焼結温度は、かかる高温を読み取るために利用する通常の方法で測定した、焼結チャンバーの温度であると見なされる。
【0049】
上記混合物は、好ましくは少なくとも3℃/分、より好ましくは少なくとも5℃/分、最も好ましくは少なくとも6℃/分の加熱速度(203)で加熱する。上記混合物は、好ましくは最大15℃/分、より好ましくは最大10℃/分、最も好ましくは最大8℃/分の加熱速度で加熱する。上記加熱速度は、好ましくは3℃/分〜15℃/分、より好ましくは5℃/分〜10℃/分、最も好ましくは6℃/分〜8℃/分である。
【0050】
以下で焼結時間と呼ぶ、焼結(206)に用いられる時間は、好ましくは少なくとも60分、より好ましくは少なくとも80分、最も好ましくは少なくとも100分である。上記焼結時間は、好ましくは最大600分、より好ましくは最大300分、最も好ましくは最大180分である。上記焼結時間は、好ましくは60〜600分、より好ましくは80〜300分、最も好ましくは100〜180分である。
【0051】
本発明に従うと、上記混合物の上記加熱及び/又は上記焼結の前、間、及び/又は後において、ある注入時間にわたって、蒸気を焼結チャンバー内に連続的に注入する。連続的な注入とは、本明細書において、注入時間全体にわたり、新鮮な蒸気が焼結チャンバーに連続的に供給されることと理解される。例えば、一実施態様において、第1の注入時間における加熱工程の間、第1の蒸気注入を実施し、第2の注入時間における焼結工程の間、第2の蒸気注入を実施する。別の実施形態において、蒸気注入を加熱工程(207)の間に開始して焼結工程まで連続して続け、ここで、焼結中の上記蒸気注入は、上記焼結工程において少なくともある程度の間(208)実施する。
図2において、蒸気を注入する時間は網掛け領域(209)により示される。加熱、焼結及び/又は冷却工程の前又は間に蒸気注入を開始することもまた、可能である。
【0052】
便宜上、温度を言及する場合、温度を表現するために検討される単位は、他に明確な指示がある場合を除き、常に℃である。
【0053】
本発明の方法の第1の好ましい実施形態では、上記前駆体の混合物を焼結温度まで加熱する間、蒸気が焼結チャンバーに連続的に注入される。焼結チャンバー内の温度が焼結温度の少なくとも5分の1、より好ましくは焼結温度の少なくとも3分の1である場合、蒸気注入は、上記加熱の間に開始する(204)のが好ましい。500℃〜800℃の焼結温度を使用する場合、焼結チャンバー内の温度が少なくとも150℃、より好ましくは少なくとも200℃、最も好ましくは少なくとも250℃であるときに、蒸気注入は上記加熱の間に開始するのが好ましい。
【0054】
第2の好ましい実施形態では、焼結チャンバー内の温度が焼結温度(202)と実質的に等しいときに蒸気注入を開始する。
【0055】
第3の好ましい実施形態では、焼結チャンバー内の温度が焼結温度未満であるものの、好ましくは上記焼結温度の少なくとも5分の1であるときに蒸気注入を開始し(207)、蒸気注入は焼結工程まで間断なく継続し、ここで、焼結中の上記蒸気注入は、上記焼結工程の少なくともある程度の間実施し、焼結工程中の蒸気注入は、合計焼結時間の最大4分の3、より好ましくは合計焼結時間の最大2分の1、最も好ましくは合計焼結時間の最大4分の1となる注入時間にわたって実施する。焼結工程中の蒸気注入は、合計焼結時間の、好ましくは少なくとも10分の1、より好ましくは少なくとも5分の1で実施する。
【0056】
蒸気注入は、上記前駆体混合物の加熱及び焼結の両方に必要な時間の、少なくとも約4
分の1、より好ましくは少なくとも約3分の1、最も好ましくは少なくとも約2分の1の合計注入時間にわたって、間断なく実施する。上記蒸気注入は、加熱工程の少なくともある程度の間、及び焼結工程の少なくともある程度の間、間断なく実施することが好ましい。蒸気注入は焼結工程まで継続し、即ち、加熱工程と焼結工程との間に蒸気注入の中断がないことが好ましい。
【0057】
本発明に従うと、蒸気はある注入時間にわたって焼結チャンバー内に注入され、注入時間は数秒から数時間まで変更することができる。例えば、好ましい実施形態では、加熱工程中の注入時間は、上記前駆体混合物を焼結温度まで加熱するのに必要な合計時間の、少なくとも25%、より好ましくは少なくとも50%、最も好ましくは少なくとも75%である。更に好ましい実施形態では、焼結工程中の注入時間は、合計焼結時間の少なくとも10%、より好ましくは少なくとも15%、更により好ましくは少なくとも20%、最も好ましくは少なくとも75%である。第3の好ましい実施形態では、加熱工程中の注入時間は、上記前駆体混合物を焼結温度まで加熱するのに必要な合計時間の少なくとも25%、より好ましくは少なくとも50%、最も好ましくは少なくとも75%であり、かつ、焼結工程中の注入時間は、合計焼結時間の少なくとも10%、より好ましくは少なくとも15%、更により好ましくは少なくとも20%、最も好ましくは少なくとも75%であり、加熱工程と焼結工程との間に蒸気注入の中断は存在しない。
【0058】
本発明の方法の好ましい実施形態では、蒸気は、焼結工程のある程度の間、好ましくは初期に焼結チャンバー内に注入され、焼結工程の残りの期間、好ましくは最後の期間は、蒸気のない雰囲気にて実施される。
【0059】
蒸気は、焼結チャンバー内に大気圧にて注入されることが好ましく、水をベースにした、即ち蒸気の生成に使用する液体媒質として水を主に使用したものであることが好ましい。好ましくは、注入の際、蒸気は少なくとも150℃、より好ましくは少なくとも200℃、最も好ましくは少なくとも250℃である。蒸気の温度は、例えば水をベースにした蒸気を可燃性気体と混合し、上記気体を燃焼させて、熱を蒸気に移すことにより上昇させることができる。より良好な結果が得られるため、水をベースにした蒸気を使用し、水を前駆体と反応させることが特に有利である。特に、関与する活物質150gあたり、少なくとも1.5L、より好ましくは少なくとも2.0L、最も好ましくは少なくとも2.5Lの量の水が反応するように蒸気注入を調節することが好ましい。上記反応する水の量は、好ましくは最大1.5L、より好ましくは最大2.0L、最も好ましくは最大2.5Lであることが好ましい。反応した水の量は、蒸気として導入した水の量と、本発明の方法の最後で捕捉した水の量との差から計算することができる。
【0060】
蒸気は、蒸気源から、例えば好適な配管を経由して焼結チャンバー内に供給及び注入することができる。従来の材料及び従来の蒸気生成方法を使用する、任意の従来の蒸気源を、本発明に従い使用することができる。蒸気はまた、焼結チャンバーから収集し凝縮させて、上記蒸気を生成するのに使用した液体媒質、例えば水を回収することができる。
【0061】
蒸気は、好ましくは少なくとも10L/分、より好ましくは少なくとも20L/分、最も好ましくは少なくとも25L/分の流速で注入される。蒸気は、最大50L/分、より好ましくは最大40L/分、最も好ましくは最大30L/分の流速で注入される。
【0062】
本明細書において、焼結チャンバーは、前駆体混合物の加熱及び焼結が行われるチャンバーと理解される。本明細書において、「焼結チャンバー内に蒸気を注入すること」とは、上記焼結チャンバー内に、蒸気を含有する雰囲気が提供されることと理解される。
【0063】
本発明に従うと、焼結チャンバーには不活性ガス流が提供される。かかるガスの例とし
ては、窒素、二酸化炭素、又はヘリウム若しくはアルゴン等の希ガス、あるいはこれらの混合物が挙げられる。不活性ガスと呼ぶものの、上記ガスは少量の反応性ガス、例えば水素もまた含有してよい。好ましい実施形態では、不活性ガスは、好ましくは不活性ガス/H
2の体積比99〜95:1〜5v/vで、少量の反応性ガス(好ましくは水素)と、上記不活性ガスの大部分を含む不活性ガスとを含有する混合物であり、別の不活性ガスは、窒素であることが好ましい。不活性ガスを使用して、本発明に従い使用される反応性前駆体を覆い、不必要な反応の発生を防ぐ。
【0064】
本発明の粉末の調製プロセス全体にわたり、不活性ガス流を焼結チャンバーに供給するのが好ましい。本発明の粒子を形成した後、得た粉末を、好ましくは室温まで冷却する。冷却速度(210)は、好ましくは少なくとも1℃/分、より好ましくは少なくとも2℃/分、最も好ましくは少なくとも4℃/分である。上記冷却速度は、好ましくは最大10℃/分、より好ましくは最大7℃/分、最も好ましくは最大5℃/分である。上記冷却速度は、好ましくは1℃/分〜10℃/分、より好ましくは2℃/分〜7℃/分、最も好ましくは4℃/分〜5℃/分である。
【0065】
本発明の方法は、特に加工条件、異なる前駆体の性質及びブレンドの順序に関して、異なった方法で実施することが可能であることを理解されたい。
【0066】
本発明の方法により、比較的短い焼結時間を利用して、定性的に電気化学的に活性な粉末を製造することができることが観察された。また驚くべきことに、上記方法は、省エネルギーな方法で、かつ経済的なコストにて、定性的な粉末を提供することも観察された。
【0067】
本発明は、以下の実施例及び比較実験の補助により更に説明されるが、これらの実施例に限定されない。
【0068】
測定方法
・ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF
6)型電解質中にLi箔を対電極として有するCR2032コイン型セルの電気化学的性能を25℃にて試験した。活物質の充填量は4.75(±0.2)mg/cm
2である。セルを4.0Vまで充電し、2.5Vまで放電してレート特性及び容量を測定する。加えた電流密度は、この活物質について、1Cの放電で活物質の140mAh/gの比容量が得られることから計算した。
・炭素質材料の電子伝導率は、米国特許出願公開第2002/0195591号に開示されている方法に従い測定することができる。
・サンプルの炭素構造は、532nmの波長の固体レーザーでJASCO NRS 3100高解像度ラマン分光顕微鏡を使用し、ラマン分光法により測定した。
・サンプルの微細構造の特性決定は、JEOL3100F電解放出TEMを使用した透過電子顕微鏡法(TEM)により実施する。
・粒径分布は、国際特許出願第2005/051840号に開示される方法論に従い測定することができる。
・粒子のBETは、Brunauer,S.,Emmett,P.H.,及びTeller,E.,J.Am.Chem.Soc.60:309〜319(1938)により開発されたN
2吸着法により測定することができる。
・結晶寸法は以下の通り測定した:XRDパターンを、Rigaku D/MAX 2200 PC X線回折計に、0.02°のスキャン工程にて17〜144の2θ範囲で記録した。スキャン速度を1分あたり1.0°に設定した。185mmの半径を有する(having has)、θ/2θ Bragg−Brentano型ゴニオメーターを使用した。ターゲット(銅)のX線管を、40kV及び40mAにて操作した。湾曲黒鉛結晶ベースの回折ビームモノクロメーターを使用してCu−Kβ放射線を除去した。10mmの高さ制限発散スリット(divergent height limiting
slit)(DHLS)、1°の発散スリット(DS)及び5°の垂直ソーラースリットを含む、入射ビームの光学設定を使用した。回折ビームの光学設定は、1°の散乱線除去スリット(SS)、5°の垂直ソーラースリット及び0.3mmの受光スリット(RS)を含んだ。結晶寸法は、Bruker AXS Topas 3.0ソフトウェアにより、H.M.Rietveld(1969),J.Appl.Crystallography 2(2):65〜71に開示されているリートベルトによる精密化法を用いて計算した。
【0069】
実施例1
Fe源としてFe
3(PO
4)
2・8H
2O、Li及びPO
4源としてLi
3PO
4、並びに炭素源としてセルロースを含有するブレンドをN
2中にて240℃で、1時間乾燥させた。ブレンド中のLi:Fe比は1.06:1であった。割合M
cellulose/(M
Li3PO4+M
Fe3(PO4)2・8H2O)は5.85重量%であった。
【0070】
乾燥後、蒸気注入用の注入口を備え、かつN
2/H
2(99:1、v/v)で構成される不活性ガス流を供給する炉の中にブレンドを移した。ブレンドを600℃の焼結温度まで加熱し、当該温度にて2時間焼結した。加熱速度は5℃/分であった。炉内への蒸気注入は、上記炉の加熱中に炉内の温度が250℃に到達したときに開始し、焼結工程まで中断することなく継続した。合計の蒸気注入時間は100分であった。蒸気の存在下における合計焼結時間は0.5時間となった。蒸気注入を実施した際の温度プロファイル及び表示を
図2に示す。
【0071】
焼結後、得た粉末を5℃/分の冷却速度で室温まで冷却した。
【0072】
比較実験1
実施例1のプロセスを、蒸気注入を用いることなく繰り返した。
【0073】
比較実験2
Prayon製の、商業用の炭素コーティングされたLiFePO
4サンプル(Prayon FE100、CAS番号:15365−14−7、製品コード:PR−038)を調査した。
【0074】
粉末の分析
図3は、それぞれ、実施例1(300)、並びに比較例1(400)及び2(500)の粉末の透過電子顕微鏡(TEM)写真を示す。実施例1の粉末は、約10nmの厚みを有する炭素コーティング層(302)でコーティングされた粒子(301)を含有するが、比較例の粉末を形成する粒子(401及び501)上の炭素コーティング(402及び502)は、最大約3nmの厚みを有する。
【0075】
更に表1は、得た粉末のラマン分光法により得られた、ピーク強度の比率I
1360/I
1580を示す。上で詳述した通り、比率I
1360/I
1580は、炭素の黒鉛化度の指標である。比率I
1360/I
1580が低くなるほど、黒鉛化度、即ち、炭素層内の高度に規則的な黒鉛の量は大きくなる。実施例1は、炭素層が高度に規則的な黒鉛を多量に有することを示す、最も小さい比率I
1360/I
1580を示す。
【0077】
電気化学的挙動
実施例及び比較例のプロセスにより得られた粉末の電気化学的挙動を、いわゆるコインセルで調査した。得られた粉末を、カーボンブラック10重量%及びPVDF 10重量%と共にN−メチルピロリドン(NMP)中で混合してスラリーを調製し、集電体としてのAl箔上に付着させた。これにより得られた、活物質を80重量%含有する電極を、活物質を6mg/cm
2充填するコインセルの製造において、正極として使用した。負極は金属Liから製造した。コインセルに対し、2.5〜4.0Vで種々のCレートにて、LiBF
4系電解質によるサイクル試験を行った。
【0078】
表2は、コインセルの電気化学的性能を示す。ここでは実施例、比較実験1及び2のそれぞれの粉末を、活物質として使用した。実施例1は、あらゆるCレートの試験において(20Cの高レート下であっても)、最高の電荷容量(CQ1)、最高の放電容量(DQ1)及び最高のレート能力を示すことが、すぐに見て取れる。
【0080】
結晶寸法
表3は、リートベルト法により得られた粉末の結晶寸法を示す。
【0082】
電気化学的に活性な粉末を含有する他のリチウムを、異なる出発物質を使用することにより、類似の方法で調製することができることは明らかである。特に、Mn、Co、Ni、V、Cr、Ti、Mo、Nb、及びW等の他の遷移金属のリン酸塩を、Fe
3(PO
4)
2・8H
2Oの代わりに、又はFe
3(PO
4)
2・8H
2Oに加えて使用し、混合金属を含む又はFe以外の金属を含む、本発明にかかるリン酸金属リチウムを調製することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0083】
【特許文献1】米国特許出願公開第2009/0148771(A1)号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2009/0148771(A1)号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2009/0148771(A1)号明細書
【手続補正書】
【提出日】2015年7月14日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーティング層を備える核を含有する粒子を含む電気化学的に活性な粉末であって、前記核は式LiaMm(XO4)nにより表される化合物を含有し、式中、Mは少なくとも1種の遷移金属及び所望により少なくとも1種の非遷移金属を含み、かつXはS、P、及びSiから選択され、式中、0<a≦3.2、1≦m≦2、及び1≦n≦3であり、前記粒子は前記コーティング層により少なくとも部分的にコーティングされ、これにより前記コーティング層は炭素質材料を含み、前記炭素質材料は高度に規則的な黒鉛を含み、前記高度に規則的な黒鉛は、少なくとも1.5かつ最大3.05の、ラマンスペクトル分析により得られた1580cm−1におけるピーク強度(I1580)に対する1360cm−1におけるピーク強度(I1360)の比率(I1360/I1580)を有する、電気化学的に活性な粉末。
【請求項2】
XがPである、請求項1に記載の粉末。
【請求項3】
Mが、鉄、マンガン、バナジウム、チタン、モリブデン、ニオブ、タングステン、亜鉛及びこれらの混合物を含む遷移金属であり、前記遷移金属が、好ましくは以下の酸化状態:Fe2+、Mn2+、V2+、V3+、Cr3+、Ti2+、Ti3+、Mo3+、Mo4+、Nb3+、Nb4+及びW4+である、請求項1又は2に記載の粉末。
【請求項4】
前記化合物が、式LiMPO4を特徴とし、好ましくはオリビン構造を有し、式中、Mは遷移金属の第一列に属する金属カチオンであり、好ましくはMn、Fe、Co、及びNiからなる群から選択される、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の粉末。
【請求項5】
前記化合物が、式LiaM1−yM’y(XO4)nを特徴とし、式中0≦a≦2、0≦y≦0.6及び1≦n≦1.5であり、式中、Mは周期表の遷移金属の第一列、又は遷移金属の第一列の32混合物であり、M’はMg2+、Ca2+、Al3+、Zn2+又はこれらと同じ元素の組み合わせから選択される、原子価が一定の元素である、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の粉末。
【請求項6】
前記化合物が、式Lia(M,M’)PO4を特徴とし、式中0≦a≦1であり、MはMn、Fe、Co、Ni、及びCuからなる群から選択される1種以上のカチオンであり、かつM’はNa、Mg、Ca、Ti、Zr、V、Nb、Cr、Zn、B、Al、Ga、Ge、及びSnからなる群から選択される任意の代替的なカチオンである、請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の粉末。
【請求項7】
前記化合物が、式LiuMv(XO4)W(u=1、2、又は3、v=1又は2、w=1又は3)を特徴とし、MがTiaVbCrcMndFeeCofNigSchNbiの式を有し(a+b+c+d+e+f+g+h+i=1)、かつXがPx−1Sx(0≦x≦1)である、請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の粉末。
【請求項8】
前記化合物が、式Li1+xMm(XO4)nを特徴とし、式中、0<x≦0.2、m=1、及び1≦n≦1.05であり、かつMが鉄、マンガン、バナジウム、チタン、モリブデン、ニオブ、タングステン、亜鉛及びこれらの混合物からなる群から選択される遷移金属である、請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の粉末。
【請求項9】
I1360/I1580が最大2.10である、請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の粉末。
【請求項10】
前記炭素質材料を含む前記層が少なくとも2nmの厚みを有する、請求項1乃至請求項9のいずれか一項に記載の粉末。
【請求項11】
前記LiaMm(XO4)nが、XRDデータのリートベルト法により測定された、最大90nmの結晶寸法を有する、請求項1乃至請求項10のいずれか一項に記載の粉末。
【請求項12】
前記核の化合物が、式Li1+xFePO4により表され、式中、xは少なくとも0.01であり、前記コーティング層が少なくとも3nmの厚みを有し、前記炭素質材料が高度に規則的な黒鉛を含み、前記高度に規則的な黒鉛が最大3.00の、ラマンスペクトルにより得られた1580cm−1におけるピーク強度(I1580)に対する1360cm−1におけるピーク強度(I1360)の比率(I1360/I1580)を有する、請求項1乃至請求項11のいずれか一項に記載の粉末。
【請求項13】
請求項1乃至請求項12のいずれか一項に記載の電気化学的に活性な粉末及び結着剤を含有する組成物を含む電極材料。
【請求項14】
少なくとも2つの電極及び少なくとも1種の電解質を含有する電気化学セルであって、前記電極の少なくとも1つ、好ましくは正極が、請求項13に記載の電極である、電気化学セル。
【請求項15】
電池及び前記電池を含有する装置であって、前記電池は、少なくとも1つの、請求項14に記載の、電気化学セルを含有し、前記装置がポータブル電子デバイス、ポータブルコンピュータ、タブレット、携帯電話、電動車両及びエネルギー貯蔵システムからなる群から選択される、電池及び装置。
【請求項16】
炭素コーティングされた電気化学的に活性な粉末の製造方法であって、前記粉末が、式LiaMm(XO4)nにより表される化合物を含有する粒子を含み、式中、0<a≦3.2、1≦m≦2、及び1≦n≦3であり、Mは少なくとも1種の遷移金属、及び場合により少なくとも1種の非遷移金属を含み、かつXはS、P、及びSiの中から選択され、前記方法が、
i.以下の前駆体:
a.Li源、
b.M元素源、
c.X元素源、及び
d.炭素源、の混合物を提供する工程
(ここで、A元素源、M元素源及びX元素源は、全体又は部分が、少なくとも1種の供給源となる元素を有する化合物の形態にて導入される)、
ii.前記混合物を焼結チャンバー内で、少なくとも500℃の焼結温度まで加熱し、そして前記混合物を前記焼結温度にて第1の期間焼結する工程(ここで、不活性ガス流が前記チャンバーに供給される)、
iii.前記混合物の加熱及び/又は焼結の前、間及び/又は後に、前記焼結チャンバー内に蒸気をある注入時間にわたって連続的に注入することにより、前記化合物を含有する粒子を製造する工程(ここで、前記粒子は高度に黒鉛化した炭素を含有する炭素質材料により、少なくとも部分的にコーティングされている)、並びに
iv.前記粉末を、好ましくは室温まで冷却する工程、
を含む、製造方法。
【請求項17】
前記炭素コーティングされた電気化学的に活性な粉末が、請求項1乃至請求項11のいずれか一項に記載の粉末である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
XがPである、請求項16又は請求項17に記載の方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0031
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0031】
本発明はまた、少なくとも2つの電極及び少なくとも1種の電解質を含有する電気化学セルに関し、電極の少なくとも1つ、好ましくは正極は、本発明の電極である。電池の例としては、円筒型セル及び角柱型セルが挙げられる。電解質は、極性液体であって、溶媒和する又は溶媒和しない溶液又はポリマー中に、場合により上記極性液体により可塑化又はゲル化されている、1種以上の金属塩を含有する極性液体である。電解質はまた、ポリオレフィン、ポリエステル、シリカナノ粒子、アルミナ又はアルミン酸リチウムLiAIO
2等の微多孔性セパレータ内に固定化した極性液体とすることができる。極性液体の例としては、環式又は直鎖カーボネート、ギ酸アルキル、オリゴエチレングリコール、アルキルエーテル、N−メチルピロリジノン、y−ブチロラクトン、
テトラアルキルスルファミド及びこれらの混合物が挙げられる。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0037
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0037】
M源は、鉄、マンガン、コバルト、ニッケル、バナジウム、チタン、クロム、及び銅からなる群から選択される遷移金属、又は遷移金属の混合物を含む化合物であることが好ましい。好ましい実施形態では、M源は、酸化鉄(III)、マグネタイト、二酸化マンガン、
五酸化二バナジウム、三価のリン酸鉄、三価の硝酸鉄、三価の硫酸鉄、ヒドロキシリン酸鉄、ヒドロキシリン酸リチウム、三価の硫酸鉄、三価の硝酸鉄、及びこれらの混合物からなる群から選択される化合物である。M源は鉄含有前駆体とM’含有前駆体との混合物であることが好ましい。好適な鉄含有前駆体の例としては、リン酸鉄(II)、シュウ
酸鉄(II)及び酸化鉄(II)が挙げられる。好適なM’含有前駆体の例としては、酸化物、水酸化物又は有機錯体等の、Mg及びBを含有する少なくとも1種の化合物が挙げられる。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0038
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0038】
X源は、硫酸、硫酸リチウム、リン酸、リン酸エステル、中性リン酸塩Li
3PO
4、酸性リン酸塩LiH
2PO
4、
リン酸一ナトリウム、
リン酸二アンモニウム、三価のリン酸鉄、リン酸アンモニウムマンガン(NH
4MnPO
4)、シリカ、ケイ酸リチウム、アルコキシシラン及びその部分加水分解生成物、並びにこれらの混合物からなる群から選択されることが好ましい。好ましい実施形態では、X源は金属
リン酸塩、例えば三価のリン酸鉄である。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0045
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0045】
還元により炭素を生成することができる化合物としては、特に
ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニリデン若しくはポリ臭化ビニリデン等のポリマー形態であるハイドロハロカーボン、又は炭水化物等の、偶数個の水素原子及びY基を含む有機化合物が挙げられる。脱水素(擬)ハロゲン化は、室温を含む低温にて、塩基をHY化合物と反応させて塩を形成することにより達成することができる。好適な塩基の例としては、第三級塩基、アミン、アミジン、グアニジン、イミダゾール、アルカリ性水酸化物等の無機塩基、A(N(Si(CH
3)
3)
2、LiN[CH(CH
3)
2]
2及びブチルリチウム等の、強塩基のように挙動する有機金属化合物が挙げられる。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0049
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0049】
上記混合物は、好ましくは少なくとも3℃/分、より好ましくは少なくとも5℃/分、最も好ましくは少なくとも6℃/分の加熱速度(203)で加熱
された。上記混合物は、好ましくは最大15℃/分、より好ましくは最大10℃/分、最も好ましくは最大8℃/分の加熱速度で加熱する。上記加熱速度は、好ましくは3℃/分〜15℃/分、より好ましくは5℃/分〜10℃/分、最も好ましくは6℃/分〜8℃/分である。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0068
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0068】
測定方法
・ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF
6)型電解質中にLi箔を対電極として有するCR2032コイン型セルの電気化学的性能を25℃にて試験した。活物質の充填量は4.75(±0.2)mg/cm
2である。セルを4.0Vまで充電し、2.5Vまで
放電してレート特性及び容量を測定する。加えた電流密度は、この活物質について、1Cの放電で活物質の140mAh/gの比容量が得られることから計算した。
・炭素質材料の電子伝導率は、米国特許出願公開第2002/0195591号に開示されている方法に従い測定することができる。
・サンプルの炭素構造は、532nmの波長の固体レーザーでJASCO NRS 3100高解像度ラマン分光顕微鏡を使用し、ラマン分光法により測定した。
・サンプルの微細構造の特性決定は、JEOL3100F電解放出TEMを使用した透過電子顕微鏡法(TEM)により実施する。
・粒径分布は、国際特許出願第2005/051840号に開示される方法論に従い測定することができる。
・粒子のBETは、Brunauer,S.,Emmett,P.H.,及びTeller,E.,J.Am.Chem.Soc.60:309〜319(1938)により開発されたN
2吸着法により測定することができる。
・結晶寸法は以下の通り測定した:XRDパターンを、Rigaku D/MAX 2200 PC X線回折計に、0.02°のスキャン工程にて17〜144の2θ範囲で記録した。スキャン速度を1分あたり1.0°に設定した。185mmの半径を
有する、θ/2θ Bragg−Brentano型ゴニオメーターを使用した。ターゲット(銅)のX線管を、40kV及び40mAにて操作した。湾曲黒鉛結晶ベースの回折ビームモノクロメーターを使用してCu−Kβ放射線を除去した。10mmの高さ制限発散スリット(divergent height limiting slit)(DHLS)、1°の発散スリット(DS)及び5°の垂直ソーラースリットを含む、入射ビームの光学設定を使用した。回折ビームの光学設定は、1°の散乱線除去スリット(SS)、5°の垂直ソーラースリット及び0.3mmの受光スリット(RS)を含んだ。結晶寸法は、Bruker AXS Topas 3.0ソフトウェアにより、H.M.Rietveld(1969),J.Appl.Crystallography 2(2):65〜71に開示されているリートベルトによる精密化法を用いて計算した。
【手続補正書】
【提出日】2015年10月22日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーティング層を備える核を含有する粒子を含む電気化学的に活性な粉末であって、前記核は式LiaMm(XO4)nにより表される化合物を含有し、式中、Mは少なくとも1種の遷移金属及び所望により少なくとも1種の非遷移金属を含み、かつXはS、P、及びSiから選択され、式中、0<a≦3.2、1≦m≦2、及び1≦n≦3であり、前記粒子は前記コーティング層により少なくとも部分的にコーティングされ、これにより前記コーティング層は炭素質材料を含み、前記炭素質材料は高度に規則的な黒鉛を含み、前記高度に規則的な黒鉛は、少なくとも1.5かつ最大3.05の、ラマンスペクトル分析により得られた1580cm−1におけるピーク強度(I1580)に対する1360cm−1におけるピーク強度(I1360)の比率(I1360/I1580)を有する、電気化学的に活性な粉末。
【請求項2】
XがPである、請求項1に記載の粉末。
【請求項3】
Mが、鉄、マンガン、バナジウム、チタン、モリブデン、ニオブ、タングステン、亜鉛及びこれらの混合物を含む遷移金属であり、前記遷移金属が、好ましくは以下の酸化状態:Fe2+、Mn2+、V2+、V3+、Cr3+、Ti2+、Ti3+、Mo3+、Mo4+、Nb3+、Nb4+及びW4+である、請求項1又は2に記載の粉末。
【請求項4】
前記化合物が、式LiMPO4を特徴とし、好ましくはオリビン構造を有し、式中、Mは遷移金属の第一列に属する金属カチオンであり、好ましくはMn、Fe、Co、及びNiからなる群から選択される、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の粉末。
【請求項5】
前記化合物が、式LiaM1−yM’yを特徴とし、式中0≦a≦2、0≦y≦0.6及び1≦n≦1.5であり、式中、Mは周期表の遷移金属の第一列、又は遷移金属の第一列の混合物であり、M’はMg2+、Ca2+、Al3+、Zn2+又はこれらと同じ元素の組み合わせから選択される、原子価が一定の元素である、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の粉末。
【請求項6】
前記化合物が、式Lia(M,M’)PO4を特徴とし、式中0≦a≦1であり、MはMn、Fe、Co、Ni、及びCuからなる群から選択される1種以上のカチオンであり、かつM’はNa、Mg、Ca、Ti、Zr、V、Nb、Cr、Zn、B、Al、Ga、Ge、及びSnからなる群から選択される任意の代替的なカチオンである、請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の粉末。
【請求項7】
前記化合物が、式LiuMv(XO4)W(u=1、2、又は3、v=1又は2、w=1又は3)を特徴とし、MがTiaVbCrcMndFeeCofNigSchNbiの式を有し(a+b+c+d+e+f+g+h+i=1)、かつXがPx−1Sx(0≦x≦1)である、請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の粉末。
【請求項8】
前記化合物が、式Li1+xMm(XO4)nを特徴とし、式中、0<x≦0.2、m=1、及び1≦n≦1.05であり、かつMが鉄、マンガン、バナジウム、チタン、モリブデン、ニオブ、タングステン、亜鉛及びこれらの混合物からなる群から選択される遷移金属である、請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の粉末。
【請求項9】
I1360/I1580が最大2.10である、請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の粉末。
【請求項10】
前記炭素質材料を含む前記層が少なくとも2nmの厚みを有する、請求項1乃至請求項9のいずれか一項に記載の粉末。
【請求項11】
前記LiaMm(XO4)nが、XRDデータのリートベルト法により測定された、最大90nmの結晶寸法を有する、請求項1乃至請求項10のいずれか一項に記載の粉末。
【請求項12】
前記核の化合物が、式Li1+xFePO4により表され、式中、xは少なくとも0.01であり、前記コーティング層が少なくとも3nmの厚みを有し、前記炭素質材料が高度に規則的な黒鉛を含み、前記高度に規則的な黒鉛が最大3.00の、ラマンスペクトルにより得られた1580cm−1におけるピーク強度(I1580)に対する1360cm−1におけるピーク強度(I1360)の比率(I1360/I1580)を有する、請求項1乃至請求項11のいずれか一項に記載の粉末。
【請求項13】
請求項1乃至請求項12のいずれか一項に記載の電気化学的に活性な粉末及び結着剤を含有する組成物を含む電極材料。
【請求項14】
少なくとも2つの電極及び少なくとも1種の電解質を含有する電気化学セルであって、前記電極の少なくとも1つ、好ましくは正極が、請求項13に記載の電極である、電気化学セル。
【請求項15】
電池及び前記電池を含有する装置であって、前記電池は、少なくとも1つの、請求項14に記載の、電気化学セルを含有し、前記装置がポータブル電子デバイス、ポータブルコンピュータ、タブレット、携帯電話、電動車両及びエネルギー貯蔵システムからなる群から選択される、電池及び装置。
【請求項16】
請求項1乃至請求項11に記載の炭素コーティングされた電気化学的に活性な粉末の製造方法であって、前記粉末が、式LiaMm(XO4)nにより表される化合物を含有する粒子を含み、式中、0<a≦3.2、1≦m≦2、及び1≦n≦3であり、Mは少なくとも1種の遷移金属、及び場合により少なくとも1種の非遷移金属を含み、かつXはS、P、及びSiの中から選択され、前記方法が、
i.以下の前駆体:
a.Li源、
b.M元素源、
c.X元素源、及び
d.炭素源、の混合物を提供する工程
(ここで、A元素源、M元素源及びX元素源は、全体又は部分が、少なくとも1種の供給源となる元素を有する化合物の形態にて導入される)、
ii.前記混合物を焼結チャンバー内で、少なくとも500℃の焼結温度まで加熱し、前記混合物を前記焼結温度にて第1の期間焼結する工程(ここで、不活性ガス流が前記チャンバーに供給される)、
iii.前記混合物の加熱の前又は間、及び前記混合物の焼結の前又は間に、前記焼結チャンバー内に蒸気をある注入時間にわたって連続的に注入することにより、前記化合物を含有する粒子を製造する工程(ここで、前記粒子は高度に黒鉛化した炭素を含有する炭素質材料により、少なくとも部分的にコーティングされている)、並びに
iv.前記粉末を、好ましくは室温まで冷却する工程、
を含む、製造方法。
【請求項17】
XがPである、請求項16に記載の方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0004
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0004】
例えば、米国特許出願公開第2009/0148771(A1)号明細書
(及び同様に、同一出願人からの米国特許出願公開第2013/0052535(A1)号明細書、並びに特開2013−069566(A)号公報)は、LiFePO
4粉末に粒子状炭素材料を添加して、この材料を含有する正極電池電極の性能を向上させることを開示している。上記公報は更に、上記炭素材料の含有する黒鉛量を増加させた場合、一層良好な結果が得られたことを示している。粒子状炭素材料中の黒鉛の量を定量するために、米国特許出願公開第2009/0148771(A1)号明細書の発明者らは、ラマンスペクトル分析により得られた1,580cm
−1におけるピーク強度(I
1580)に対する、1,360cm
−1におけるピーク強度I
1360の比率(I
1360/I
1580)を用いた。この明細書で説明される通り、ピーク強度I
1580は黒鉛化炭素によるものであり、一方、ピーク強度I
1360は不規則に存在する炭素によるものであり、0.25ほどの低比率で非常に良好な性能が得られた。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0018
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0018】
第2の実施形態では、本発明で使用される化合物は式Li
xM
1−yM’
y(XO
4)
nを有し、式中、0≦x≦2、0≦y≦0.6及び1≦n1.5であり、式中、Mは、周期表の第一列の遷移金属、又は遷移金属の混合物であり、M’は、Mg
2+、Ca
2+、Al
3+、Zn
2+又はこれらと同じ元素の組み合わせから選択される、原子価が一定の元素であり、かつXはS、P及びSiから選択され、Pが好ましい。かかる化合物は
、例えば米国特許出願公開第2004/0033360(A1)号により開示されている前駆体を使用することにより合成することができる。
【国際調査報告】