【実施例】
【0079】
本発明を以下の非限定的な実施例によって更に説明する。
【0080】
(実施例1)
ディスパーゼ/中性プロテアーゼを使用した細胞株H1のヒト胚性幹細胞の懸濁及び集団化
継代41でのヒト胚性幹細胞株H1の細胞(WA01細胞,WiCell,Madison WI)をPBS(カタログ番号14190,Invitrogen)で1度洗浄し、DMEM/F12(Invitrogenカタログ番号11330,Grand Island,NY)内で、Dispase(登録商標)(中性プロテアーゼ,Sigma Aldrich Co LLC,カタログ番号D4818,St.Louise,MO)の1mg/mLの溶液で処理した。群体の縁部が丸まって持ち上がり始めるまで、ただし培養表面からの群体の完全な剥離の前に、細胞を37℃で15〜25分間インキュベートした。Dispase(登録商標)をその後に除去し、10μMのY−27632(Axxoraカタログ番号ALX−270−333,San Diego,CA)を含有するmTeSR(登録商標)1(Stem Cell Technologies,Vancouver,BC,Canada)培地で2度洗浄した。次いで、10μM Y−27632を含むmTeSR(登録商標)1培地を、5mL/60cm
2の培養皿に添加し、スクレーバ又はゴム製ポリスマンを使用して表面から細胞を剥離した。次いで、培地及び細胞を、ガラスピペットを使用して50mLの円錐チューブに移植し、集団を90g(rcf)で3分間遠心分離させた。
【0081】
遠心分離の後、培地を吸引し、細胞を徐々に再懸濁して、全平面培養のうち、225〜240cm
2につき10μMのY−27632を含有する12mLのmTeSR(登録商標)1培地(1つのT225フラスコ又は4枚の10cm皿に等しい、約9000万個の細胞)内で簡潔に微粉化した。次いで、細胞懸濁液を、10μMのY−27632を有する、2mL/ウェルの新鮮なmTeSR(登録商標)1培地を含有する超低級結合培養6ウェルの皿(Corning Incorporated,カタログ番号3471、Corning,NY)に移植した。この方法で剥離させた細胞は、剥離させた断片の平均直径がおよそ20〜30マイクロメートル(
図1a)で、それぞれが細胞の塊からなる、単層の断片に類似していた。これらの単層断片を懸濁状態で2時間インキュベートし(インキュベーション時間は、0.5〜4時間の範囲であり得る)、この時点で断片の凝集体が観察された。次いで、凝集体を、ガラスの10mLピペットを使用して短時間で微粉化し、低結合プレートで一晩インキュベートした(凝集体は、懸濁へ直接進行し得る)(凝集体はまた、無処理の細胞培養プラスチック及び標準組織培養処理したプラスチック内でインキュベートされ得る)。
【0082】
一晩のインキュベーション(18〜24時間)後、50rpm(30〜80+rpmの範囲であり得る)で撹拌される、25mLのmTeSR(登録商標)1培地を含有する、125mLのスピナーフラスコ(Corning Incorporated,カタログ番号4500−125,Corning NY)に細胞及び培地を直接移植し、約75mLの最終体積を作製した。培地を4日間、毎日交換した。培養下での4日後に多能性が決定され、フローサイトメトリー結果は、多能性のマーカー(CD9、SSEA4、TRA−1−60、及びTRA−1−81)の高い発現を示したが、分化のマーカー(CXCR4)の発現はほとんど示さなかった。これについては、
図1bを参照されたい。これらのデータは、細胞剥離剤としてDispase(登録商標)を使用して平面接着培養形式からH1 hES細胞を細胞集団として正常に移植し、撹拌(動的)懸濁培養系内で多能性を維持し得ることを実証する。この実施例はまた、プレート及び三角フラスコの、撹拌よりもむしろ振とうされる懸濁系において、同等の結果で実行され得る。
【0083】
懸濁培養下での4日間後に(分化はまた、凝集体の形成から24〜120時間後に開始し、好ましくは、分化開始前の2〜3日間培養し得る)、多能性細胞凝集体が培地成分のステージ式の進行で分化されて、膵臓の運命を形成するように細胞が誘導された。スピナー撹拌については、凝集体の分化のために65rpmまで速度を上げた。培地及び成分を表1aに示す。
【0084】
ステージ1の終了時に、試料に対してフローサイトメトリー及びPCRを実行した。懸濁分化培養は、ステージ1(
図1c)の終了時に、疎性の凝集体の、均一かつ均質な細胞の集団を形成し、多能性のマーカー(CD9)の発現はほぼ除去されたが、胚体内胚葉分化のマーカーはかなり高く、CXCR4(CD184)については97.2%の陽性、及びCD99については97.3%の陽性であった(
図1d)。これらの結果は、未分化のWA01 hES細胞と対比した、多能性遺伝子(CD9、NANOG、及びPOU5F1/OCT4)の発現における劇的な減少、並びに胚体内胚葉と関連付けられている遺伝子(CXCR4、CERBERUS、GSC、FOXA2、GATA4、GATA6、MNX1、及びSOX17)における大きな増加を示す、qRT−PCR結果と相関した(
図1e)。
【0085】
その後、TGF−βファミリーメンバー、GDF8を除去し、FGF7を培地に添加することによって、胚体内胚葉集団を原始前腸に更に分化させた。FGF7での3日間の培養後、高いグルコース(25mM)及び低濃度の脂質豊富なウシ血清アルブミン(AlbuMAX(登録商標)(Life Technologies Corporation,Carlsbad,CA)を含有する培地、又は比較的低いグルコース濃度(8mM)及び2%の脂肪酸を含まないウシ血清アルブミンを含有する培地のいずれかへの、オールトランスレチノイン酸の添加によって、膵臓PDX1発現運命に集団を分化させた。これらの培地への成分の詳細な添加を表1aに示す。分化の終了時に、膵臓前駆細胞のマーカーの発現について、試料を分析した。フローサイトメトリーによって測定される、いずれかの条件(グルコース+2%のFAF−BSA(A)又は高いグルコース+0.1%のAlbuMAX(登録商標)(B)で分化させた集団は、機能的β細胞に必要とされる転写因子である高レベルのNKX6.1、及び高レベルの内分泌膵臓マーカー(シナプトフィジン及びクロモグラニンなど)を発現することが観察された(表1b)。これらの結果は、条件A及びBの両方からの試料内で発現した、高レベルの複数の膵臓前駆体遺伝子を示す、RT−PCR結果と一貫した(データの表示なし)。
【0086】
それらが胚体内胚葉(DE)(
図1c)から原始前腸への、及び膵臓内胚葉(
図1f)への分化を通して進行した際の、細胞集団の典型的な形態は、細胞及び細胞集団に対する可視の形態的な変化を実証した。典型的に、多能性集団は、位相差顕微鏡法では高密度かつ暗く見え、その後、細胞がステージ2において原始前腸へと進行するにつれて外観がより疎性になる。この形態は、続くオールトランスレチノイン酸処理を反転させ、集団は再び、平滑な集団境界を有した更に高密度かつ均一なものとなる。
【0087】
ステージ4を通して条件Bに従って分化させた細胞は、ALK5阻害剤を含有するステージ5の培地内で更に5日間保持された(表1cを参照のこと)。培養下でのこの追加の成熟は、内分泌マーカー発現(INS、GCG、SST、PPY、及びPCSK1)における有意な増加をもたらした。その後、IACUC承認の研究プロトコルに従って、細胞集団をSCID−Bgマウスの腎臓被膜内に埋め込み、マウスを20週間観察し、2〜4週間毎に空腹/供給の状態でC−ペプチドを測定した。埋め込みから4週間後、20時間の空腹、及びその後グルコース刺激の後、C−ペプチドは検出不可能であった。6週目までに、5匹中2匹の陽性マウスがいくらかの(0.087及び0.137ng/mL)ヒトC−ペプチドを示し、10週目までに、5匹中5匹のマウスがC−ペプチドに対して陽性(0.085〜0.291ng/mL)であった。16週目で、20時間の空腹及びグルコース刺激の後、4匹のマウス全て(4/4)がC−ペプチド発現に対して陽性(0.377〜3.627ng/mL)であった。
【0088】
これらの結果は、多能性細胞凝集体が形成され、次いで、PDX1及びNKX6.1のようなβ細胞転写因子の発現によって特徴付けられる、膵臓前駆細胞集団を生成するように、懸濁培養系内で分化し得ることを示す。更に、生体内に埋め込んで成熟可能にさせた、分化した細胞集団は、生理学的に適切なレベルでのグルコースチャレンジに反応して、インスリンを発現した。
【0089】
【表2】
[この文献は図面を表示できません]
【0090】
【表3】
[この文献は図面を表示できません]
【0091】
【表4】
[この文献は図面を表示できません]
【0092】
(実施例2)
EDTAを使用した細胞株H1のヒト胚性幹細胞の懸濁及び集団化
継代41でのヒト胚性幹細胞株H1の細胞(WA01細胞,WiCell,Madison WI)を、PBS(カタログ番号14190、Invitrogen)で1度洗浄し、非酵素的細胞剥離/継代剤であるEDTA(Lonza、カタログ番号17−7−11E)で処理した。細胞を8分間室温でインキュベートした。次いで、EDTAを除去し、1〜2分以上(9〜10分の全EDTA露出)の後、10μMのY−27632(Axxoraカタログ番号ALX−270−333,San Diego,CA)を含有するmTeSR(登録商標)1培地でプレートを濯ぎ、ガラスピペットを使用して、除去された細胞を50mLの円錐チューブに収集した。10μMのY−27632を含有するmTeSR(登録商標)1培地でプレートの濯ぎをもう1度実行し、除去された細胞と共に貯留した。室温でのEDTAへの露出から9〜10分後に、いくつかの細胞はプレート上に留まり、剥離された細胞は、単一の細胞懸濁液に完全には脱凝集されなかったことに留意されたい。代わりに、表面から小さな凝集体として細胞が除去された。培地及び細胞をその後、ガラスピペットを使用して50mLの円錐チューブに移植し、細胞計数を実行した(NucleoCounter(登録商標)−ChemoMetec A/S,Cat#YC−T100,Denmark)。必要に応じて、10μMのy−27632を含有する追加のmTeSR(登録商標)1培地を添加して、100〜150万個の細胞/mLの細胞の濃度を作製した。
【0093】
集団が疎性に凝集しており、ペレットに遠心分離してピペットで再懸濁すると、単一の細胞に分離するであろうことから、細胞を遠心分離しなかった。代わりに、均一な懸濁液が形成されるまで、チューブ内の培地及び細胞を静かに渦流した。所望の場合、更に、EDTA処理の期間を延長し、細胞をほぼ単一の細胞懸濁液にすることもできる。その後、ガラスピペットを使用して、37℃、加湿、5%のCO
2インキュベーター内に3mL/ウェルで、2枚の非組織培養処理した6ウェルの皿(Becton Dickinson,カタログ番号Falcon 351146,Franklin Lakes,NJ)に細胞懸濁液を移植した。細胞を懸濁状態で2時間インキュベートし、この時点で凝集体が観察された。次いで、ガラスピペットでの静かなピぺッティングによって、凝集体を微粉化して、大きな凝集体を破壊し、均質で均一な集団懸濁液を作製してから、撹乱せずに一晩インキュベートした。
【0094】
次いで、18〜24時間後に、細胞及び培地を50mLの円錐チューブ内で、90g(rcf)で3分間遠心沈降させた。使用済みの培地の上澄を破棄し、新鮮なmTeSR(登録商標)1内で細胞凝集体を懸濁させ、37℃、加湿、5%のCO
2インキュベーター内にて55rpmで撹拌されるスピナーフラスコ(Corning Incorporated,カタログ番号4500−125,Corning NY)に、懸濁液を移植した。培地を2日間、毎日交換した。多能性は、撹拌される懸濁培養下での2日後、分化培養への遷移前に決定された。CD9、SSEA4、TRA−1−60、TRA−1−81、及びCXCR4発現のフローサイトメトリー結果を、散布図形式で
図2aに示す。これらのデータは、多能性のマーカー(CD9、SSEA4、TRA−1−60、TRA−1−81)の高い発現を示すが、分化のマーカー(CXCR4)の発現はほとんど又は全く示さない。これらの結果は、H1 hES細胞が、非酵素的剥離方法を使用して、平面接着培養系形式から懸濁培養へと移植され、動的撹拌される懸濁培養系で多能性を維持し得ることを示す。
【0095】
懸濁培養下での2日後、多能性細胞凝集体が培地成分のステージ式の進行で分化され、膵臓の運命を形成するように細胞が誘導された。スピナー撹拌は、55rpmの速度に維持した。培地及び成分を表2aに示す。
【0096】
ステージ1の終了時に、試料に対してフローサイトメトリー及びPCRを実行した。懸濁分化培養は、ステージ1(
図2b)の終了時に、疎性の凝集体における細胞の均一かつ均質な集団を形成し、多能性のマーカー(CD9)の発現はほぼ除去されたが、胚体内胚葉分化のマーカーであるCXCR4(CD184)はかなり高く、3つのスピナーフラスコにわたって、95.9%±1.8sd(
図2c)であった。これらの結果は、未分化のWA01 hES細胞と対比した、多能性遺伝子(CD9、NANOG、及びPOU5F1/OCT4)の発現における劇的な減少、並びに胚体内胚葉と関連付けられている遺伝子(CXCR4、CERBERUS、GSC、FOXA2、GATA4、GATA6、MNX1、及びSOX17)における大きな増加を示す、qRT−PCR結果と相関した(
図2d)。
【0097】
次いで、スピナーフラスコからの胚体内胚葉集団を貯留し、別のスピナーフラスコ又は三角フラスコ(振とうされる撹拌系)のいずれかに分配し、GDF8を除去し、FGF7を培地に添加することによって原始前腸への更なる分化に差し向けた。FGF7での3日間の培養後、比較的低いグルコース濃度(8mM)及び2%の脂肪酸を含まないウシ血清アルブミンを含有する培地のいずれかへの、オールトランスレチノイン酸の添加によって、膵臓PDX1発現運命に集団を分化させた。これらの培地への成分の詳細な添加を表2aに示す。分化の終了時に、膵臓前駆細胞のマーカーの発現について、試料を分析した。フローサイトメトリーを使用して、機能的β細胞に必要とされる転写因子である、高レベルのNKX6.1、及びシナプトフィジン及びクロモグラニンなどの高レベルの内分泌膵臓マーカー(表2b及び
図2e)が、両方の懸濁形式で観察された。これらの結果は、スピナーフラスコ形式又は三角フラスコ形式で生成した試料内で発現した、非常に類似した高レベルの複数の膵臓前駆体遺伝子を示した、RT−PCR結果と一貫した(
図2f)。
【0098】
これらの結果は、多能性細胞凝集体が形成され、その後、撹拌される系又は振とうされる懸濁系を含む、複数の懸濁培養形式の懸濁培養下で分化され、PDX1及びNKX6.1のようなβ細胞転写因子の発現によって特徴付けられる膵臓前駆細胞集団を生成し得ることを実証する。
【0099】
【表5】
[この文献は図面を表示できません]
【0100】
【表6】
[この文献は図面を表示できません]
【0101】
(実施例3)
細胞株H1のヒト胚性幹細胞の懸濁集団化及び連続懸濁継代
Matrigel(登録商標)(Corning Incorporated,Corning NY)でコーティングされた、組織培養処理したポリスチレン上で成長させた、継代40でのヒト胚性幹細胞株H1の細胞(WA01細胞,WiCell,Madison WI)を、PBS(カタログ番号14190,Invitrogen)で2度洗浄し、Accutase(登録商標)(1部のPBS対1部のAccutase(登録商標),Sigma−Aldrich,カタログ番号A−6964,St.Louis,MO)の半強度の溶液で処理した。細胞を室温で3分半インキュベートした(Accutase(登録商標)は、コラーゲン分解性又はたんぱく分解酵素(甲殻類から隔離される)で構成され、哺乳類又は細菌由来の産物を含有しない、細胞剥離液である)。Accutase(登録商標)をその後に除去し、3分以上(6分半の全Accutase(登録商標)露出)の後、10μMのY−27632を含有するmTeSR(登録商標)1培地でプレートを濯ぎ、ガラスピペットを使用して、除去された細胞を50mLの円錐チューブに収集した。10μMのY−27632を含有するmTeSR(登録商標)1培地でプレートの濯ぎをもう1度実行し、除去された細胞と共に貯留した。Accutase(登録商標)への露出後に、いくつかの細胞はプレート上に留まり、剥離された細胞は、単一の細胞懸濁液に完全には脱凝集されなかった。代わりに、表面から小さな凝集体として細胞が除去された(
図3a)。培地及び細胞をその後、ガラスピペットを使用して50mLの円錐チューブに移植し、細胞計数を実行した。必要に応じて、10μMのy−27632を含有する追加のmTeSR(登録商標)1培地を添加して、100〜150万個の細胞/mLの細胞の濃度を作製した。
【0102】
集団が疎性に凝集しており、ペレットに遠心分離してピペットで再懸濁すると、単一の細胞に分離するであろうことから、細胞を遠心分離しなかった。代わりに、均一な懸濁液が形成されるまで、チューブ内の培地及び細胞を静かに渦流した。次いで、ガラスピペットを使用して、37℃、加湿、5%のCO
2インキュベーター内に、2枚の超低結合培養の6ウェルの皿に細胞懸濁液を移植した。細胞を懸濁状態で90分間インキュベートし、この時点で凝集体が観察された。次いで、凝集体を短時間で微粉化し、55rpmで撹拌される25mLのmTeSR(登録商標)1培地を含有する、125mLのスピナーフラスコに直接移植した(合計最終体積は、約75mLであった)。培地を3日間毎日変更し、多能性を培養下での3日目に決定した。集団の位相差顕微鏡画像は、静的懸濁培養下で90分後に形成され、培養下で3日間にわたって増殖した、集団の均一な球状集団を示している(
図3b)。懸濁培養下での3日間の終了時に、マーカーCD9、SSEA4、TRA−1−60、TRA−1−81、及びCXCR4のフローサイトメトリー結果によって、細胞の多能性を分析した。細胞は、分化のマーカーである、CXCR4の発現がほとんどなく、多能性のマーカー(CD9、SSEA4、TRA−1−60、及びTRA−1−81)の高い発現を維持した。これらのデータは、H1 hES細胞が、Accutase(登録商標)などの酵素的剥離方法を使用して、平面接着培養形式から懸濁培養に移植可能であり、動的撹拌される懸濁培養系内に多能性を維持することを示している。
【0103】
その後、更に20回の継代のために、Accutase(登録商標)分離を使用して、多能性集団を連続的に継代させた。各継代で、5000万個の細胞を2分間、50mLの円錐チューブ内で重力沈降させ、PBSで2度洗浄し、37℃の水浴内で、Accutase(登録商標)の添加の2及び4分後にチューブを静かに渦流することで、Accutase(登録商標)の半強度の溶液で処理した。6分間のインキュベーションの後、細胞ペレットを撹乱させずに、Accutase(登録商標)をチューブから吸引した。次いで、細胞を3分以上インキュベートした(9分間の総Accutase(登録商標)露出)。次いで、10μMのY−27632を含有するmTeSR(登録商標)1培地でチューブを濯ぎ、ガラスピペットを使用して2度微粉化し、懸濁された細胞を70マイクロメートルの細胞ストレーナ(BD Falcon,Cat#352350,Franklin Lakes,NJ)に通過させた。10μMのY−27632を含有するmTeSR(登録商標)1培地で、チューブの追加濯ぎを2度実行し、細胞ストレーナに通過させた。
【0104】
均一な懸濁液が形成されるまで、チューブ内の培地及び細胞を静かに渦流した。その後、ガラスピペットを使用して3mL/ウェルで、37℃、加湿、5%のCO
2インキュベーター内の超低結合培養6ウェルの皿に細胞懸濁液を移植し、懸濁状態で2時間インキュベートし(0〜28時間テスト)、この時点で、凝集体を培地の最終体積80mLでガラススピナーフラスコに移植した。あるいは、細胞懸濁液を、55rpmで撹拌されるスピナーフラスコ、又は40rpmで振とうされる三角フラスコへ直接定置してもよく、集団は培地の最終体積80mLで、撹拌懸濁液(
図3c)内に形成された。
【0105】
この連続継代方法を使用して、それぞれの継代でおよそ1:3の分割比で、細胞を20回継代させた。多能性をそれぞれの継代でフローサイトメトリーによって測定し、染色体12及び17(hES細胞内で潜在的に不安定なものとして識別される2つの染色体)について、蛍光インサイチューハイブリダイゼーション(FISH)アッセイを使用して、核型を決定した。CD9、SSEA4、TRA−1−60、TRA−1−81、及びCXCR4発現のフローサイトメトリー結果を散布図形式で示す。この結果が、多能性のマーカーが高い発現であること、及び分化のマーカー(CXCR4)の発現がほとんど又は全くないことを示す一方、染色体12及び17のFISHアッセイは、正常なコピー数を示した。これらのデータは、非哺乳類の酵素的細胞分離方法である、Accutase(登録商標)を使用する、常用の連続継代によって、懸濁培養下でH1 hES細胞が維持され得、20回の継代にわたっては、最初の入力細胞あたりに1×10
9細胞を生成する、動的撹拌される懸濁培養系で多能性及び安定した核型を維持することを示す。EDTAもまた、この連続懸濁液に、6回の継代用として使用され得る。
【0106】
【表7】
[この文献は図面を表示できません]
【0107】
(実施例4)
細胞株H1の懸濁培養されたヒト胚性幹細胞の指向された分化
継代40でのヒト胚性幹細胞株H1の細胞(WA01細胞,WiCell,Madison WI)を、Accutase(登録商標)を使用して平面接着培養から剥離し、懸濁培養系形式に移植した。実施例3に述べた方法を使用する30回の継代用に、細胞を動的撹拌される懸濁培養系に維持した。
【0108】
表3に示すとおり、多能性は最初の20回の継代を通して確認され、フローサイトメトリーによって測定される、安定した高レベルの多能性マーカーが培養を通して維持された。多能性を確認し、糖尿病の治療のための細胞供給源を提供するそれらの能力を実証するために、正常な膵臓発達を繰り返すことを意図したモルフォゲン又は成長因子を含有する、異なる培地の段階式進行を通して、動的撹拌される懸濁培養系で細胞を膵臓前駆体に分化させた。このプロセスは、高いPDX1及びNKX6.1の同時発現によって特徴付けられる、膵臓前駆細胞集団を生じさせる。これらの細胞は、移植される際に、グルコースに反応してインスリンを分泌し、糖尿病のストレプトゾトシン誘導モデルにおいて正常血糖を維持することができる、機能的グルコース刺激インスリン分泌組織に更に成熟した。
図4c及び表4cを参照されたい。
【0109】
これらの膵臓前駆細胞を生成するため、16回の継代用に動的撹拌される懸濁培養系で増殖し、維持したH1ヒト胚性幹細胞を、実施例3に述べた方法を使用して分化させた。要約すると、細胞を30回の継代用に増殖し、これらの継代の最初の20回分の多能性をテストした。細胞は、16回目の継代で分化された。集団形式の多能性細胞を4℃で3時間、mTeSR(登録商標)1培地からFBC溶液(表4a)へ移植した。その後、Sartorius Stedim Biostat B−DCU(Goettingen,Germany)制御ユニットによって調節される、3リットルのガラス懸濁バイオリアクターに細胞集団を移植し、表4bに従って、55万個の細胞/mLで、分化培地内で懸濁した。細胞を、温度、pH、及び溶存酸素(DO)を調節した、閉鎖された無菌懸濁バイオリアクター(Fermprobe(登録商標)pH電極225mm、モデル番号F−635、及びBroadley−James Corporation,Irvine CA)提供の溶存酸素Oxyprobe(登録商標)12mmセンサー、モデル番号D−145)内で14日間維持した。
【0110】
運転を通して、合計培地体積≦1.6リットル内でのCO
2流量の調節によって、pHをpH 7.4に維持しながら、培地の重炭酸塩レベルを3.64g/Lに維持した。150cc/分の一定のガス流量で、ステージ1について20%の溶存酸素設定値、及びステージ2以降について30%の溶存酸素設定値を使用したSartorious制御システムの制御の下で、CO
2、空気、及びO
2でバイオリアクターヘッドスペースを連続的に灌流した。溶存酸素含量に応じて酸素流量を調節し、pHに応じてCO
2流量を調節した。温度は、電熱ジャケットにより、運転を通して37℃に維持した。運転の開始時に、それぞれの培地交換(1回の交換ごとに培地の93%を除去)について、羽根車(70rpmで動作する3インチステンレス鋼ピッチブレード羽根車)を停止し、閉鎖系を維持するために、Terumo(商標)チューブ接合装置を使用する、C−Flex(登録商標)チュービングに接続したバイオリアクター内で、ディップチューブを通した蠕動ポンプによって、培地を除去又は添加した。分化の各ステージの終了時に、細胞/集団の画像を撮影し、フローサイトメトリー試料を収集し、ステージ1、3日目、及び3日後のステージ2の終了時にCXCR4発現について分析した(
図4a)。分化の開始時(表3、継代16)で、CXCR4陰性多能性細胞集団からCXCR4発現(細胞の98.5%がCXCR4陽性、
図4b)細胞の集団へのほぼ完全な集団遷移が観察された。次いで、3日後のステージ2の終了時に、これらの細胞をほぼCXCR4陰性状態に遷移し(細胞の7.0%がCXCR4陽性)、ステージ3の終了時までに、細胞はほとんど完全にCD56陽性状態に遷移した。ステージ4の4日目の分化プロセスの終了時に、細胞はPDX1発現に対して88.5%陽性(
図4b)であり、膵内分泌細胞(33.5%クロモグラニン陽性)と膵臓前駆細胞(NKX6.1に対して65.7%陽性)との混合物と一貫した発現パターンを示した。このステージに特異的なマーカー発現パターンは、多能性集団から膵臓細胞への効率的なステージ式分化を示した。分化プロセスの終了時に、277万個の細胞/mLが生成され(1.5リットルで41億個の細胞)、インプットされたhES細胞ごとに分化細胞5個の総質量増殖を示した。
【0111】
運転の終了時に、500mLを遠心分離及び洗浄のために除去し、生着、成熟、及び機能の動物モデルでテストした。残りの1000mLの細胞懸濁液を、kSep(登録商標)400システム(KBI Biosystems,Durham NC)内で処理して、完全な閉ループ系において細胞産物を洗浄、濾過、及び濃縮した。細胞産物を、1リットルの開始体積から、最終濃度4100万個の細胞/mLに濃縮された細胞50mLまで濃縮した。次いで、自動化バイアル充填機(Fill−It,TAP,Hertfordshire UK)を使用して、1.2mLの充填体積を有する24個のバイアル内に、これらの濃縮された細胞を分注し、液体窒素冷凍庫内に定置することによって凍結した。
【0112】
洗浄され、標準遠心分離によって濃縮された500mLの分化細胞を、腎臓被膜下に直接定置するか、又は皮下に埋め込まれた免疫保護マクロ封入デバイス(TheraCyte(商標),Irvine CA)内に定置するかのいずれかで、SCID−Bgマウス1匹当たり500万個の細胞の用量で移植した(1条件につき6体の動物)。埋め込みから12週間後までに、埋め込まれた細胞は、空腹及びその後の供給に反応して、ELISA(ヒトC−ペプチドカスタムELISA Mercodia,cat# 10−1141−01)によって検出される、有意なレベルの循環ヒトC−ペプチド(>0.1ng/mL)を発現し、16〜20週後までに、動物は1ng/mLを超える循環C−ペプチドを有した(表4c)。
【0113】
埋め込みから27週間(190日)後に、デバイス封入された免疫保護移植片を有する2体の動物を、単一の高用量のストレプトゾトシン(STZ)でそれぞれ処理して、全ての内因性マウスβ島細胞を選択的に殺し、糖尿病を誘導した(250mg/Kg)。対照動物において真性糖尿病を誘導するために十分なSTZ処理から翌2週間は、移植された動物の血糖レベルが正常な範囲(<150mg/dL)内に留まった。埋め込みから29週間後、及びSTZ投与の2週間後に、2体の動物がグルコース刺激インスリン分泌(GSIS)についてテストされ、グルコース投与に反応する循環ヒトC−ペプチドにおける著しい増加を示した。更に、埋め込みから209日(29.5週間)後、それぞれの移植片を除去する際に、動物の血糖レベルが>500mg/dLへと劇的に増加した。
【0114】
これらの結果は、糖尿病を治療するためのヒト胚性幹細胞由来の細胞産物が、増殖及び分化された幹細胞の懸濁液から調製され得ることを実証する。産物は、計測可能な、撹拌される閉ループバイオリアクター系で生成され得、細胞産物は、商業的cGMPの製造に必要とされる、閉ループ洗浄及び濃度で処理され得る。このヒト胚性幹細胞由来の細胞産物は、血糖を調節する能力であるGSIS能力、及び細胞療法の除去時の糖尿病状態への回帰に示されるように、広く使用される糖尿病の動物モデルにおいて糖尿病を治療し得る。
【0115】
【表8】
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【0116】
【表9】
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(専門用語:時間0=新しいステージの最初の供給、時間24、48、又は96時間=新しいステージ培地の経過時間)
【0117】
【表10】
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【0118】
(実施例5)
細胞株H1の接着培養されたヒト胚性幹細胞の懸濁形式における指向された分化
継代41でのヒト胚性幹細胞株H1の細胞(WA01細胞,WiCell,Madison WI)を、EDTAを使用して平面接着培養から剥離し、例2に述べた方法を使用して懸濁培養系形式に移植した。
【0119】
図5aに示すとおり、フローサイトメトリーによって細胞凝集体の多能性を測定し、細胞が高度に多能性であることを示す、多能性マーカーCD9、SSEA4、TRA−1−61、及びTRA−1−80の高い発現が観察された。次いで、正常な膵臓発達のモルフォゲン駆動体を繰り返すことを意図した、小分子及び成長因子を含有する、培地の段階式進行を通して、これらの多能性細胞を動的に撹拌される懸濁培養系で膵臓前駆体に分化させた。このプロセスは、膵臓細胞転写因子、PDX1及びNKX6.1の同時発現によって特徴付けられる、膵臓前駆細胞集団を産生する。これらの細胞が移植される際、それらは、糖尿病のストレプトゾトシン誘導モデルにおける高血糖を補正し得る、機能的なグルコース刺激インスリン分泌組織に更に成熟する。
【0120】
膵臓前駆細胞集団を生成するために、mTeSR(登録商標)1培地内で維持された集団形式の多能性細胞を、制御装置で調整した温度、pH、及び溶存酸素を有する、0.2リットルのガラス製の撹拌懸濁バイオリアクター(Dasgip,カタログ番号DS0200 TBSC,Shrewsbury,MA)に移植した。多能性細胞集団をバイオリアクターで2日間培養した。その時点(ステージ1、0日目)で培地を交換し、分化を開始させながら、表5aに従って分化培地内において細胞約70万個/mLで、細胞凝集体を懸濁させた。その後、この閉鎖された無菌懸濁バイオリアクター内で、細胞を14日間維持した。分化全体を通して、合計体積0.3リットル内でのCO
2流量の調節によって、pHをpH 7.4に維持しながら、培地の重炭酸塩レベルを3.64g/Lに維持した。5リットル/時間の一定のガス流量において、30%の溶存酸素設定値でのDasgip制御システムの制御下で、バイオリアクターヘッドスペースにCO
2及び空気を注入した。溶存酸素含量に応じて空気流量を調節し、pHに応じてCO
2流量を調節した。
【0121】
【表11】
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【0122】
この実施例で、及び本明細書全体で使用されるとおり、SCIOは、化学名4−{[2−(5−クロロ−2−フルオロフェニル)−5−(1−メチルエチル)ピリミジン−4−yl]アミノ}−N−(2−ヒドロキシプロピル)ピリジン−3−カルボキサミド及びCAS番号674794−97−9を有する、Alk5阻害剤である。SCIOの化学構造を以下に示す。
【0123】
【化1】
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【0124】
温度は、運転を通して37℃に維持した。運転開始時に、それぞれの培地交換(1回の交換につき培地の95%を除去)について、羽根車を停止し、Terumo(商標)チューブ接合装置を使用したC−Flex(登録商標)チュービングに接続した、バイオリアクターディップチューブを通る蠕動ポンプによって、培地を除去してから添加して、閉鎖系を維持した。
【0125】
ステージ1中、いくつかの異なる供給設定を試験した。(a)分化開始から24時間後に培地変更、48時間で培地変更なし、(b)分化開始から24時間後に培地変更、及び48時間でグルコースをボーラス添加、並びに(c)ステージ1を通して培地を変更せず、分化開始から24時間後にグルコース及びGDF8をボーラス添加し、次いで、開始から48時間後にグルコースをボーラス添加。
【0126】
表5bに示すとおり、リアクターごとに、プロセスの開始、中間、及び終了時の細胞計数を取得した。ステージ1の終了時に、フローサイトメトリーによるたんぱく質発現パターンについて、細胞を試料採取した。条件A(分化開始から24時間後に胚体内胚葉に培地変更、その後48時間培地変更なし)において分化した細胞が、分化のマーカー(CD99及びCXCR4)の誘導、並びに多能性マーカー発現(CD9)の低減によって測定される、最良の結果を示した(
図5b)。胚体内胚葉形成の終了時点での、CD9のより低い発現との組み合わせにおけるCXCR4及びCD99のより高い発現は、膵臓遺伝子のより高い発現、及び分化における後の代替器官運命を示す遺伝子のより低い発現と相関した(
図5d及び5e)。具体的には、分化の第1のステージを通して培地を変更しないこと、又はステージ1においてバルク供給形式でグルコースを培地に添加することのいずれか又は両方は、4つのステージの分化の終了時の非常に異なる凝集体形態と相関する、ステージ1の終了時のより低いCXCR4レベルをもたらした(
図5c)。具体的には、条件B及びCは、ステージ4の終了時に、フローサイトメトリーによって測定される、より低い膵臓遺伝子発現(NKX6.1及びCHGA)、及び非膵臓遺伝子(CDX2及びSOX2)のより高い発現を有した(
図5d及び表5b)。これらの発見はqRT−PCR(
図5e)によって裏付けられており、条件Aは条件Cよりも膵臓遺伝子の発現が有意に高く、条件BはA及びCの中間であることを示した。更に、条件Cは、例えば、CDX2、AFP、及びアルブミン(
図5e)など、代替の非膵臓運命を示す有意により高いレベルの遺伝子を発現した。これらのデータは、DE形成の最後の48時間に培地変更なしで生成される、均質で高いCXCR4を発現する胚体内胚葉(DE)が、純粋な膵臓内胚葉集団に後から変換できることを示す。
【0127】
4つのステージの分化の終了時に、条件Aに従って分化した細胞をバイオリアクターから除去し、0.1%のFAF−BSAを含有するMCDB131培地で洗浄し、SCID−Bgマウスに埋め込んだ。それぞれのマウスに、500万個の細胞を腎臓被膜下に直接移植した。埋め込み後4週間毎に、採血を実行し、血糖及びCペプチドを測定した。埋め込みの12週間後までに、ヒトCペプチドは、ELISAによって1ng/mLを超えるレベルで検出可能であり、16週目でCペプチドレベルは平均2.5ng/mLであった(
図5f)。埋め込み後20週で、空腹にさせてから供給した状態の動物でCペプチドを測定した。グルコース処理は、空腹状態の0.93ng/mLから、供給状態の2.39ng/mLまで、循環ヒトCペプチドにおける有意な増加を誘導し(
図5g)、移植された細胞が機能的GSISコンピテント組織へと成熟したことを示した。更に、動物にストレプトゾトシン(STZ)投与(マウスβ細胞は、ヒトβ細胞と比較して、より敏感であり、STZによって優先的に破壊される)を与えて、糖尿病の状態を誘導した際、機能的GSISコンピテント組織の移植片を有する動物は、真性糖尿病を発症した未処理の対照とは異なり、正常な血糖レベルを維持した(
図5h)。これらの結果は、hES分化細胞移植片を有する動物が、機能的膵臓組織移植片によって、STZ誘導糖尿病から保護されたことを実証する。
【0128】
【表12】
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【0129】
(実施例6)
細胞株H1のマイクロキャリア接着培養されたヒト胚性幹細胞の懸濁液形式における指向された分化
Cytodex(登録商標)3マイクロキャリアビーズ(C3)(Sigma−Aldrich Co LLC,St.Louis,MO,カタログ番号C3275)を、15mLのDulbeccoのPBS(DPBS)を含有する、20mLの体積のシリコンコーティングされたガラスシンチレーションバイアル瓶内に、400mgのビーズを4〜24時間浸漬することによって、培養用に調製した。Cytodex(登録商標)3は、架橋デキストランのマトリックスに化学結合させた、変性コラーゲンの薄い層から構成される。Cytodex(登録商標)3の変性コラーゲン層は、トリプシン及びコラゲナーゼが挙げられる、様々なプロテアーゼにより消化されやすく、細胞の生存率、機能及び完全性を最大限維持しつつ、細胞をマイクロキャリアから取り外すという性能を提供する。
【0130】
浸漬後、ビーズを加圧滅菌し、無菌DPBSで濯ぎ、10μMのY27632を添加したマウス胚性繊維芽細胞調湿培地(MEF−CM)内で再懸濁した。その後、125mLのCorning(登録商標)ガラススピナーフラスコ(Corning Incorporated,Corning,NY)に、ビーズ100mg/フラスコの密度でビーズを移植した。Y27632と共にビーズ及びMEF−CMを含有するスピナーを、37℃、加湿、5%のCO
2インキュベーター内で少なくとも60分間均衡化した。
【0131】
継代44での、ヒト胚性幹細胞株H1の細胞(WA01細胞、WiCell,Madison WI)を、TrypLE(商標)(Life Technologies Corporation,Grand Island,NY)を使用して平面接着培養から剥離した(37℃で8分間インキュベーションして、単一の細胞懸濁液を形成)。次いで、細胞を洗浄し、Y−27632を有するMEF−CM内で懸濁し、1100万個のhES細胞を、静的(静止)インキュベーション期間中6時間、ビーズに接着させた。次いで、Y−27632を有するMEF−CMをスピナーフラスコに添加して、75mLの最終培地体積を作製し、細胞及びビーズをガラススピナーフラスコ内で50rpmの羽根車速度で撹拌した。MEF−CMを毎日50mLの培地交換をしながら、この様式で5日間細胞を成長させた。培養下で5日後に、フラスコは53×10
6個の細胞(±12×10
6SD)を含有した。対照として、100万個のH1 hES細胞もまた、Matrigel(商標)の1:30希釈でコーティングされた、6ウェルの組織培養ポリスチレン皿に播種し、MEF−CMの毎日の培地変更を維持した。
【0132】
多能性培養下で5日後に、正常な膵臓発達モルフォゲンを繰り返すことを意図した、小分子及び/又は成長因子のいずれか又は両方を含有する異なる培地の段階式進行を通して、これらの細胞はその後、動的撹拌される懸濁培養系で膵臓前駆体に分化した。正常な膵臓発達を繰り返すための方法として、2つの培地製剤、アクチビンA及びWnt3Aを使用してDEを形成したもの、及びGDF8を有するMCX化合物を使用してDEを形成したもの(それぞれ、表6a及び6b)をテストした。培地を毎日変更し、RT−PCR及びフローサイトメトリーによって試料を特徴付け、細胞特性を決定した。マイクロキャリア上の細胞の位相差画像を撮影し、細胞の分化が開始する前の、多能性培養系としての細胞形態の時間経過を
図6aに示す。培養分化を示す時間経過を
図6bに示す。また、実験を通して様々な時点で細胞計数を取得し、結果を、平面培養下又は懸濁マイクロキャリア培養下のいずれかの培地製剤について、表面積の関数(
図6cの細胞/cm
2)又は培地体積(
図6dの細胞/mL)として示した。
【0133】
プロセスを通した様々な点で、フローサイトメトリー及びRT−PCRによって、細胞が特徴付けられた。分化の第1のステージのフローサイトメトリーの結果、胚体内胚葉の形成を、CXCR4(Y軸)及びCD9(X軸)の細胞発現のドットプロットとして
図6eに示し、結果をまた、各マーカーの全発現として
図6fに表す。結果は、全ての条件において、CXCR4発現の利得、及び多能性表面マーカー、CD9の損失によって定義されるように、実質的に大多数の細胞が胚体内胚葉を形成することを示す。更に、胚体内胚葉のより効率的な形成が、MCX/GDF8マイクロキャリア>MCX/GDF8平面>WNT3A/AAマイクロキャリア>WNT3A/AA平面からの処理の順位で生じる。MCX/GDF8で処理した細胞は、CERBERUS(Cer1)、グースコイド、及びFGF17(
図6g)のより低い発現を示すため、細胞に対する、培地に特異的な影響はないように見えるが、全ての処理条件は、胚体内胚葉遺伝子であるCD99、CXCR4、FOXA2、KIT、及びSOX17の類似した発現レベルを示す(
図6g及び表6c)。これらのプロセスは、膵臓細胞転写因子、PDX1及びNKX6.1の同時発現によって特徴付けられる、膵臓前駆細胞集団を生成する。これらの細胞が移植される際、それらは、糖尿病のストレプトゾトシン誘導モデルにおける高血糖を補正し得る、機能的なグルコース刺激インスリン分泌組織に更に成熟する。
【0134】
下の表6aで使用するとおり、B27はGibco(登録商標)B−27(登録商標)Supplement(Life Technologies Corporation,Carlsbad,CA)である。
【0135】
この実施例で使用するとおり、MCX化合物は、14−プロパ−2−エン−1−イル−3,5,7,14,17,23,27−ヘプタアザテトラシクロ[19.3.1.1〜2,6〜.1〜8,12〜]ヘプタコサ−1(25),2(27),3,5,8(26),9,11,21,23−ノナエン−16−オンであり、以下の式(式1)を有する。
【0136】
【化2】
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【0137】
上記のMCX化合物の代わりに、他の環式アニリンピリジノトリアジンもまた使用され得る。かかる化合物としては、限定されるものではないが、14−メチル−3,5,7,14,18,24,28−ヘプタアザテトラシクロ[20.3.1.1〜2,6〜.−1〜8,12〜]オクタコサ−1(26),2(28),3,5,8(27),9,11,22,24−ノナエン−17−on−e、及び5−クロロ−1,8,10,12,16,22,26,32−オクタアザペンタシクロ[24.2.2.1〜3,7〜−1〜9,13〜.1〜14,18〜]トリトリアコンタ−3(33),4,6,9(32),10−,12,14(31),15,17−ノナエン−23−オンが挙げられる。これらの配合物を以下に示す(式2及び式3)。
【0138】
【化3】
[この文献は図面を表示できません]
【0139】
例示の好適な化合物は、米国特許出願公開第2010/0015711号に開示され、その開示は、MCX化合物、関連する環式アニリンピリジノトリアジン、及びそれらの合成に関連するため、その全体が組み込まれる。
【0140】
この実施例のステージ4で使用したCyp26阻害剤は、N−{4−[2−エチル−1−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)ブチル]フェニル}−1,3−ベンゾチアゾール−2−アミンであり、これは、CAS番号201410−53−9及び以下の構造を有する。
【0141】
【化4】
[この文献は図面を表示できません]
【0142】
このCyp26阻害剤は、「Cypi」としても知られている。このCyp26阻害剤の構造及び合成は、米国特許番号第7,378,433号に開示されており、その開示はCyp26阻害剤及びそれらの合成に関連することから、その全体が組み込まれる。
【0143】
【表13】
[この文献は図面を表示できません]
【0144】
【表14】
[この文献は図面を表示できません]
【0145】
【表15】
[この文献は図面を表示できません]
【0146】
(実施例7)
この実施例には、H1(WA01)hES細胞株のサブクローン、WB0106を使用した。WB0106を、WiCell Research Institute(Madison,WI)で、DDL−13と呼ばれるH1株種材料から誘導した。H1株のWB0106サブクローンを、継代23で解凍したDDL−13バイアルから、Matrigel(商標)基質上のmTESR1(登録商標)1培地内に誘導し、続いてEDTAを使用して継代した。WB0106を継代28で凍結し、正常な核型(FISH及びGバンド)、膵臓前駆細胞に分化する能力、及び集団を形成し、懸濁培養下で増殖する適格性に基づいて、これらの研究のために選択した。
【0147】
その後、T225フラスコ(Corning Incorporated,Corning,NY)内のMatrigel(商標)の基質上の培地内に、WB0106 WCBバイアルを解凍し、第1の継代で細胞を複数のT225フラスコへ増殖させた。第2の継代で、単一の2層Cell Stack(商標)(CS2)を播種するため、複数のT225フラスコからの細胞を結合して使用した。CS2が70%コンフルエントになると、隣接するポンプチュービングを有するC−Flex(登録商標)チュービングアセンブリキャップを培地ポートに結合し、系を閉鎖した。C−Flex(登録商標)チュービングによって系を閉鎖した後、袋又はボトルをTerumo接合装置で溶接し、蠕動ポンプを使用して液体体積(培地、PBS
-/-、Accutase(登録商標)、又は懸濁細胞)を移した。
【0148】
細胞をCS2から剥離するために、細胞をPBS
-/-で1度洗浄し、その後PBS
-/-で希釈したAccutase(登録商標)
の半強度の溶液で処理し、4〜5分間インキュベートした。次いで、Accutase(登録商標)を除去し、酵素溶液の適用から3分後に、CS2を軽打して細胞の剥離を促進した。0.5%のBSAを添加し、10マイクロモルのRhoキナーゼ阻害剤であるY−27632を含有する、培地のボトルを、CS2内にポンプで注入することで残留のAccutase(登録商標)を濯ぎ、不活性化してから、濯ぎ液を収集した。第2の濯ぎ液の体積を添加し、収集し、第1の濯ぎ液と共に貯留した。その後、200mL中の2.0〜2.5×10
8個の細胞を、1層のCellSTACK(登録商標)内に移植し、加湿、5%のCO
2インキュベーター内で2時間、37℃でインキュベートした。2つのCellSTACK(登録商標)培地ポート間に結合したポンプチュービングを有する、C−Flex(登録商標)チュービングの閉ループを使用して、細胞懸濁液を蠕動ポンプによって75rpmで5分間微粉化して、凝集体を均質化した。閉ループチュービングを無菌0.2マイクロメートル濾過器と交換して、ガス交換を可能にし、CellSTACK(登録商標)を加湿、5%のCO
2インキュベーター内で一晩インキュベートした。一晩のインキュベーション(12〜22時間、最適18時間)の後、CellSTACK(登録商標)内の細胞は、多能性細胞の丸い球状の凝集体(集団)を形成した。
【0149】
懸濁細胞集団を含有する0.5%のBSAを添加した培地を、0.5%のBSAを添加し、55〜65rpmで維持した0.4リットルの新鮮な培地と共に、CellSTACK(登録商標)から1リットルの使い捨てスピナーフラスコ(Corning;Corning,NY)へと移植した。移植から24時間後に、1リットルの使い捨てスピナーフラスコを加湿、5%のCO
2インキュベーターから除去し、集団を5〜10分間沈降させた。その後、容器内に200mLが残るまで培地を吸引してから、400mLの追加の新鮮な培養培地をスピナーフラスコに添加した。このプロセスを2日目(移植から48時間後)の終了時に繰り返した。
【0150】
3日目の終了時(CS2からスピナーフラスコへの移植から72時間後)に、継代及び更なる増殖のために、細胞集団をAccutase(登録商標)処理によって分離した。1リットルの使い捨てスピナーフラスコを加湿、5%のCO
2インキュベーターから除去することによって、継代プロセスを開始した。細胞の均質な懸濁液を維持するため、フラスコをバイオセーフティーキャビネット内のスピナプレート上に定置した。細胞懸濁液を、100mLのピペットによってスピナーフラスコから除去し、4つの175mLの円錐ポリカーボネートチューブ(ThermoFisher−Nalgene;Buffalo,NY)間に均等に分配し、80〜200rcfで5分間遠心分離した。細胞ペレットを撹乱させずに、使用済みの培地を吸引した。その後、カルシウム又はマグネシウムを含まない25mLのDPBS(DPBS
-/−)を各チューブに添加し、細胞を円錐チューブ内に結合し、80〜200rcfで5分間遠心分離した。DPBS
-/-を円錐チューブから吸引し、30mLの50%のAccutase(登録商標)/50%のDPBS
-/-溶液をチューブに添加した。細胞集団をピペットで1〜3度上下させてから、断続的に4分間旋回させ、その後80〜200rcfで5分間遠心分離した。その後、細胞ペレットを撹乱させずに、Accutase(登録商標)を可能な限り完全に吸引し、細胞懸濁液が均一な乳白色に見えるまで、円錐チューブを3〜5分間、連続的にそっと軽打した。10マイクロモルのRhoキナーゼ阻害剤、Y−27632を含有する、0.5%のBSAを添加した培地10mLを細胞懸濁液に添加し、2〜4度微粉化して、残留のAccutase(登録商標)を不活性化した。10マイクロモルのRhoキナーゼ阻害剤、Y−27632を含有する、0.5%のBSAを添加した培地90mLを細胞に添加し、懸濁液を40マイクロメートルの細胞ストレーナ(BD Falcon;Franklin Lakes,NJ)に通過させた。
【0151】
濾過した細胞懸濁液の100mLの体積における細胞密度を、NC−100 NucleoCounter(登録商標)(ChemoMetec A/S,Allerod,Denmark)で決定し、追加の培地を添加して、10マイクロモルのRhoキナーゼ阻害剤、Y−27632を含有する、0.5%のBSAを添加した培地内に、1×10
6個の細胞/mLの最終細胞濃度をもたらした。その後、225mL(2億2500万個の細胞)の細胞懸濁液を1リットルの使い捨てスピナーフラスコに移植し、加湿、5%のCO
2インキュベーター内で、撹拌せずに1時間インキュベートした。フラスコをその後、インキュベーターから除去し、バイオセーフティーキャビネット内のスピナプレート上にて100rpmで1〜3分間撹拌した。細胞懸濁液を混合している間、10マイクロモルのRhoキナーゼ阻害剤、Y−27632を含有する、0.5%のBSAを添加した培地の追加の225mLを細胞懸濁液に添加した。スピナーフラスコをその後、加湿、5%のCO
2インキュベーターに30分間戻した。フラスコをその後、インキュベーターから除去し、バイオセーフティーキャビネット内のスピナプレート上にて100rpmで1〜3分間撹拌した。細胞懸濁液を混合している間、最終体積が600mLとなるように、10マイクロモルのRhoキナーゼ阻害剤、Y−27632を含有する、0.5%のBSAを添加した培地の追加の150mLを細胞懸濁液に添加して、フラスコをインキュベーター内の撹拌懸濁液に戻した。Accutase(登録商標)分離から24及び48時間後の両方で、細胞集団をフラスコの底部に5〜10分間沈降させた。あらゆる集団の損失を確実に最小化するために、400mLの使用済み培地を吸引によってフラスコから除去し、新鮮な培地と交換した。このプロセスを使用して、H1細胞を基質上の接着培養から、細胞集団としての懸濁培養へ変換した。
【0152】
最初のAccutase(登録商標)処理から72時間後、細胞集団分離及びスピナーフラスコ播種(継代)のプロセスを繰り返して、複数の継代中(検査範囲:1〜10回の継代)細胞を懸濁液に維持した。最初の24時間後に培地を除去しなかったことを除き、上記のプロセスに従って、200mLの新鮮な培地を添加した。Accutase(登録商標)分離から48時間後に、集団をフラスコの底部に5〜10分間沈降させ、600mLを吸引し、400mLの新鮮な培地をフラスコに添加した。
【0153】
これらの懸濁液で継代し、培養した細胞はその後、将来の使用のために冷凍保存し、保管することができる。冷凍保存用に懸濁増殖細胞を調製するために、細胞を40マイクロメートルの細胞ストレーナに通過させなかったことを除き、懸濁継代に関して上記に述べたとおりに、Accutase(登録商標)で細胞集団を分離した。それぞれの1リットルの使い捨てフラスコから生成された、100mLの細胞懸濁液の細胞計数を決定した。次に、細胞懸濁液を結合し、80〜200rcfで5分間遠心分離した。次に、細胞ペレットを撹乱させることなく、遠心管からの培地を可能な限り完全に除去した。次に、1mL当たり1億5000万個の細胞の最終濃度を得るために、低温の(<4℃)CryoStor(登録商標)10(Stem Cell Technologies,Inc.,Vancouver,BC,Canada)を滴下により添加して、1.8mLのCorning(登録商標)クライオバイアル(Corning Incorporated,Corning,NY)又は15mLのMiltenyiクライオバック(Miltenyi Biotec Inc.Auburn,CA)に移植する間、細胞溶液を氷浴内で保持した。
【0154】
次いで、以下のとおり、バイアル内の懸濁増殖細胞を自動凍結保存装置内に高密度で凍結した。チャンバを4℃に予冷し、試料バイアル温度が6℃に達するまで、温度を保持した。次いで、試料が−7℃に達するまで、チャンバ温度を2℃/分で下げた。試料バイアルが−7℃に達すると、チャンバが−45℃に達するまで、チャンバを20℃/分で冷却した。次いで、チャンバ温度が−25℃に達するまで、チャンバ温度を10℃/分で素早く上昇させ、その後、試料バイアルが−45℃に達するまで、チャンバを0.8℃/分で更に冷却した。次いで、チャンバが−160℃に達するまで、チャンバ温度を35℃/分で冷却した。次いで、チャンバ温度を−160℃で少なくとも10分間保持してから、バイアルをガス相液体窒素保管容器に移植した。
【0155】
撹拌槽バイオリアクターに接種するために、高密度で冷凍保存された細胞を、液体窒素保管容器から取り出し、解凍し、閉鎖された3リットルのガラスバイオリアクター(DASGIP;Julich,Germany)に播種するために使用した。4〜5のバイアルを、ガス相液体窒素保管容器から除去し、37℃の水浴内に105秒間直接定置した。次いで、2mLのガラスピペットを介して、解凍されたバイアル内容物を50mLの円錐チューブに移植した。次いで、0.5%のBSAを含有し、10マイクロモルのRhoキナーゼ阻害剤、Y−27632を添加した9mLの培地(IH3又はEssential8(商標)培地(「E8(商標)」))を滴下によりチューブに添加した。次に、細胞を80〜200rcfで5分間遠心分離した。チューブから上澄を吸引して、0.5%のBSAを含有し、10マイクロモルのRhoキナーゼ阻害剤、Y−27632を添加した10mLの新鮮な培地(IH3又はE8(商標))を添加して、細胞を含有する体積を培地移植ボトル(Cap2V8(登録商標),Sanisure,Moorpark,CA)内に分注した。その後、蠕動ポンプによって、無菌C−flexチュービング溶接を介して、ボトル内容物をバイオリアクター内に直接ポンプで注入した。多能性幹細胞接種用の調製において、バイオリアクターを1.5Lの培地(0.5%のBSAを添加し、10マイクロモルのRhoキナーゼ阻害剤、Y−27632を含有する、IH3又はE8(商標))で調製し、37°に予熱し、70rpmで撹拌し、溶存酸素設定値を30%として(CO
2、空気、O
2、及びN
2を調節)、CO
2によって6.8〜7.1pHに調節した。接種の直後、バイオリアクターを細胞計数用に試料採取し、0.225×10
6個の細胞/mLの最終細胞濃度をもたらすよう、必要に応じて培地体積を調整した。
【0156】
撹拌槽バイオリアクターに接種した細胞は、連続的に撹拌されるタンクで細胞集団を形成し、合計3日間リアクター内の多能性培地(IH3又はE8(商標)、0.5%のBSAを添加)に維持された。培地は毎日変更し、部分的な培地交換を接種から24時間後に行い、1〜1.3リットルの使用済み培地を除去して、1.5リットルの新鮮な培地を添加した。接種から48時間後に、1.5〜1.8リットルの使用済み培地を除去し、1.5リットルの新鮮な培地を添加した。接種から72時間後に、>90%の使用済み培地を除去して、分化培地を添加することにより、多能性細胞分化を開始した(表7)。
【0157】
ステージ式の分化プロセスを開始した後は、温度(37°)、pH(分化用に7.4)、及び溶存酸素(ステージ1については10%のDO設定値、それ以外は常時30%のDO設定値、CO
2、O
2、N
2、及び空気の調節)が調節された、閉鎖した撹拌懸濁バイオリアクターに、細胞を12日間以上維持した分化プロセス全体を通し、培地交換のたびに、ディップチューブを介して培地を除去する前に羽根車を5〜20分停止して、集団を沈降させた。Terumo(商標)チューブ接合装置を使用したC−Flex(登録商標)チュービングに接続したディップチューブを通る蠕動ポンプによって、バイオリアクター内の培地を閉鎖されたボトル又は袋から除去するか、又はそこに添加して、閉鎖系を維持した。十分な培地を容器に添加して、羽根車を完全に浸らせた後で、羽根車及び加熱器に再び電圧を加えた。
【0158】
バイオリアクターのプロセスを監視するため、細胞集団を含有する培地の試料を毎日取り出して、
図7に示すとおり、細胞の数及び生存性を決定した(NucleoCounter(登録商標))。プロセスの間は、細胞の一般的な増殖が観察され、0.225×10
6個の生育細胞/mLの接種材料が、ステージ4、3日目で平均0.92×10
6個の生育細胞/mLを生成するように増殖した。バイオリアクター接種並びに多能性細胞の集団化及び培養の間は、酸性設定値(pH 7.0〜6.8)で細胞を維持することによって、ステージ4、3日目の平均細胞産出量が、平均1.3×10
6個の細胞/mLに増加した(
図7)。
【0159】
毎日の計数に加え、バイオリアクター培地試料をNOVA BioProfile(登録商標)FLEX(Nova Biomedical Corporation,Waltham,MA)によって分析した。リアクター設定値によって、ほとんどの培養培地に共通する安定な標準pH7.4に対し、ステージ0の培地のpHは酸性であり、細胞代謝の結果として、リアクター培地のpHがステージ0を経て低下したことが観察された。これらの結果は、分化6日目の終了を経て増加する乳酸濃度、及び低下するグルコースレベルの傾向と相関した(
図9及び10)。合わせて、これらのデータは、ステージ0及び分化の最初の2ステージ(1〜6日目)でリアクター内の細胞が最も迅速に成長し、グルコースを消耗したことを示した。しかしながら、ステージ3以降は、リアクター内の細胞代謝(乳酸レベル減少及びグルコースレベル増加)が低下し、ステージ3の細胞数のピーク、及びそれに続くステージ4にわたる細胞密度の低下と相関した。
【0160】
pH及び代謝におけるステージに特異的な変化が、mRNA発現パターンにおけるステージの変化に一致したかどうかを判断するため。4つのApplied Biosystems(登録商標)Low Density Arrays(Life Technologies Corporation,Carlsbad,CA)指定の多能性、胚体内胚葉(DE)、腸管(GT)、又はステージ4(S4)を使用して、バイオリアクター細胞試料のテストを実行し、全ての運転及びアレイにわたる発現を標準化するため、過去の未分化のH1(WB0106)hES細胞試料を対照として、結果を比較した。
【0161】
これらのアレイを使用して、分化のステージごとの遺伝子発現を決定した。バイオリアクターに解凍した種材料細胞は、ステージ0、1日目及びステージ0、3日目(バイオリアクター接種から24及び72時間後:
図11、12、13、及び14)には、未分化の遺伝子発現パターンを示したこともまた、観察された。これらの結果は、CD9、SSEA4、TRA−1−60、及びTRA−1−81の高い発現レベル、並びにCXCR4/CD184の欠損を示した、フローサイトメトリー結果とよく相関した(
図15及び表8)。遺伝子発現に関するフローサイトメトリー及びqRT−PCRアッセイは、安定な多能性状態と一貫した、多能性(CD9、NANOG、POU5F1、SOX2、TDGF、及びZFP42)の遺伝子に関する、堅牢かつ安定な発現パターンを示したが、GATA4、GSC、MIXL1、及びTの遺伝子発現における穏やかだが可変である増加と、指向された分化の前のステージ0プロセス中の、いくつかの試料におけるCER1、FGF17、FGF4、及びGATA2発現の≧100x増加と、もまた認められた。
【0162】
ステージ0の完了時(リアクター接種から72時間後)に、MCX及びGDF8を含有する分化培地(表7)に細胞を移植した。この培地変更の24時間後、FOXA2発現の約700xの増加、及びCER1、EOMES、FGF17、FGF4、GATA4、GATA6、GSC、MIXL1、及びT発現の1000xの増加といった、遺伝子発現パターンに有意な変化が認められた(
図18及び19)。これらの増加した発現レベルは、細胞が中内胚葉運命を経て遷移していることを示した。未分化細胞と対比して、ステージ1、1日目にはCDX2レベルが上昇したことも認められたが(対照に対して発現が470xの増加)、これは発現の一過性の増加であり、CDX2レベルはステージ1、1日目からステージ1、3日目までに94%下降し、分化の誘導前に観察されたレベルと同等のレベルに戻った(
図14、19、及び21)。
【0163】
DE分化培地への露出から72時間後に、細胞は胚体内胚葉の仕様と一貫したプロファイルを発現し、CXCR4レベルがピークに達し、FOXA2及びSOX17は過去の対照に対して>1000xで発現した。胚体内胚葉と一貫して、遺伝子CER1、EOMES、FGF17、FGF4、GATA4、GATA6、GSC、MIXL1、及びTが、ステージ1、1日目に観察された、上昇したレベルから下降したこともまた認められた(
図20及び21)。
【0164】
qRT−PCRによって観察された遺伝子発現の変化は、フローサイトメトリーによって観察された結果と相関した。分化開始時(
図15)のCD9発現/CXCR4陰性多能性細胞集団から、ステージ1の終了時(
図22)のCXCR4発現細胞(98.3%のCXCR4陽性細胞、±1.9SD)の均質な集団まで、ほぼ完全な遷移も見られた。
【0165】
胚体内胚葉の形成(ステージ1)の完了後、原始前腸の形成(ステージ2)の誘導に使用するモルフォゲンである、FGF7を含有するものに、培地を変更した。原始前腸の形成と一貫して、ステージ2、1及び3日目のHNF4α及びGATA6発現レベルが増加した一方、ステージ1の3日目に高いレベルで発現した遺伝子(CXCR4、EOMES、FGF17、FGF4、MNX1、PRDM1、SOX17、及びVWF)はステージ2の終了までに発現の減少を示した(
図23)。前腸遺伝子(AFP、PDX1、及びPROX1)の発現が増加した(
図24)。
【0166】
細胞をステージ2の培地で72時間培養した後、培養をステージ3の培地に切り替えた(表7)。この培地では一度、細胞は、この
図25に示す、PDX1及びFOXA2発現(90.9%±11.9SD PDX1陽性及び99.2%±0.6SD FOXA2陽性)によって測定された内肺葉膵臓系統と一貫したマーカーを発現した。これらの結果は、遺伝子発現に対するqRT−PCRによって分析された、試料からのデータによって確認された。PDX1の遺伝子発現は、ステージ2、3日目の終了(H1と対比して38,000x)からステージ3、1日目(H1と対比して200,000x)まで、24時間で5倍増加し、更に48時間後のステージ3、1日目で再び倍増した(H1と対比して435,000x)。これらのデータは、細胞が膵臓運命に特定化していたことを示す(
図26)。この観察は、
図26に示すとおり、膵臓内で通常発現する遺伝子(ARX、GAST、GCG、INS、ISL1、NEUROD1、NGN3、NKX2.2、NKX6.1、PAX4、PAX6、PTF1A、及びSST)の宿主の増加したレベルによって、更に支持された。加えて、OCT4/POU5F1発現がほとんど又は全くないこと(対照の2〜10%又はqRT−PCRによる32〜37試料Cts)及び内胚葉系統のその他のマーカーAFP、ALB、及びCDX2の発現レベルが高いことも見られ、比較的形成力のある腸管運命から膵臓運命まで、バイオリアクター内の細胞集団の仕様及び遷移を更に示した。
【0167】
図27に示すように、ステージ4、3日目の分化プロセスの終了時に、細胞は、高いレベルのPDX1及びFOXA2発現を保持し、膵内分泌細胞(28.1%±12.5SDクロマグラニン陽性)及び膵臓前駆細胞(NKX6.1の場合、58.3%±9.7SD陽性)の混合と一貫した発現パターンを更に発達させた。このステージに特異的なマーカー発現パターンは、多能性集団から膵臓前駆細胞への効率的なステージ式分化を示した。フローサイトメトリーで観察された結果を、qRT−PCRからのデータで更に確認した。膵臓内で通常発現する遺伝子(ARX、GAST、GCG、IAPP、INS、ISL1、MAFB、NEUROD1、NGN3、NKX2.2、NKX6.1、PAX4、PAX6、PTF1A、及びSST)の宿主は全て、増加した発現レベルを示した。(
図28)。
【0168】
異なる種材料、ステージ0の培地、ステージ0の培地のpH、及びアンチフォームの使用など、複数の可変的なプロセスをテストしたが、
図27で観察された発現パターンは、複数回の運転にわたって一貫性を保持した。種材料の複数の供給源がテストされ、それぞれ、>90% FOXA2、>75% PDX1、及び>50% NKX6.1で膵臓内胚葉運命を効率的に生成した(
図29)。更に、0.5%のBSAを添加した「IH3」と呼ばれるカスタムの自家培地、又は0.5%のBSAを添加した市販の培地Essential8(商標)のステージ0で細胞を成長させた際に、バイオリアクター産物の発現パターンに有意差がなかったことが認められた。ステージ0の培養下のpHの役割を実験した際に、比較的低いpH(6.9)でステージ0において成長させた細胞は、平均的な運転に対し、バイオリアクター内での増殖が増加したが(
図7)、ステージ4、3日目の細胞プロファイルにおいては有意な変化がなかった(
図31)ことが認められた。加えて、94百万分率でアンチフォームC乳剤(Sigma Cat#A8011)の使用は、スパージングによって産生される泡を減少させることがわかったが、ステージ0の終了からステージ4、3日目の細胞まで、細胞のプロファイルに影響する様子は見られなかった(表9及び
図32)。
【0169】
それぞれのバイオリアクター分化の終了時に、産生細胞を冷凍保存した。3.63g/Lの重炭酸ナトリウムを有するMCDB131、又は3.63g/Lの重炭酸ナトリウム、グルコース(8mM最終)、及び1x Glutamaxを有するMCDB131で細胞を洗浄してから、2.43g/Lの重炭酸ナトリウム、30%のゼノフリーKSR、10%のDMSO、及び2.5%のHEPES(最終濃度25mM)を有する57.5%のMCDB131からなる、低温の(<4℃)冷凍保存培地に移植した。次いで、冷凍保存培地内の細胞集団を周囲温度で最大15分間維持し、45分間温度を4℃まで下げ、2.00℃/分で−7.0℃(試料)まで更に下げる、冷却プロファイルを使用して、自動凍結保存装置(CRF)で細胞を凍結させた。次いで、試料をすばやく冷却し、チャンバ温度を25.0℃/分の速度で−45.0℃まで下げた。次いで、チャンバ温度を10.0℃/分で−25.0℃(チャンバ)に上げることによって、補償の増加を提供した。次いで、温度が−40.0℃に達するまで、試料を0.2℃/分で冷却した。次いで、チャンバを35.0℃/分の速さで−160℃に冷却し、その温度で15分間保持した。CRF運転の終了時に、試料をガス相液体窒素保管容器に移植した。
【0170】
細胞は、蒸気相液体窒素保管容器から取り出し、バイアルを37℃の水浴に移植することによって解凍可能であった。小さい氷晶がバイアルに残るまで、バイアルを2分未満水浴内で静かに渦流した。次いで、バイアル内容物を50mLの円錐に移植し、2.43g/Lの重炭酸ナトリウム及び2%のBSAを有するMCDB131培地を使用して、合計20mLの最終体積になるまで、滴下式で2分以上希釈した。次いで、NucleoCounter(登録商標)で合計細胞数を決定し、細胞懸濁液を超低級付着培養皿に1時間移植させた。次いで、50mLの円錐内の培地から細胞を単離し、上澄を除去し、分析用又は生体内研究用に、細胞をステージ4の培地で再懸濁した。
【0171】
あるいは、解凍後、バイアルに入れた細胞を空の125mLのガラス製Corning(登録商標)スピナーフラスコ(Corning,Incorporated,Corning,NY)に移植し、2.43g/Lの重炭酸ナトリウム及び2%のBSAを含有する10mLのMCDB131培地を滴下によりフラスコに添加した。次いで、最終体積を同一培地の80mLに調節した。NucleoCounter(登録商標)で合計細胞数を決定し、細胞懸濁液を40〜65rpmで一晩(12〜28時間)かき回した。次いで、細胞を特性化するか、又は生体内研究に使用した。
【0172】
IH3培地の組成は、以下、並びに米国公開特許第2013/0236973号に示されており、その開示は、公的な細胞培養培地に関連することから、その全体が組み込まれる。IH3培地内のBSAの量は、変わり得る。
【0173】
【表16】
[この文献は図面を表示できません]
【0174】
【表17】
[この文献は図面を表示できません]
【0175】
【表18】
[この文献は図面を表示できません]
【0176】
【表19】
[この文献は図面を表示できません]
【0177】
材料:
・ヒト胚性幹細胞(hES)細胞株H1(WA01細胞、WiCell(Madison WI)
・PBS(カタログ番号14190、Invitorogen)
・Y−27632(Axxoraカタログ番号ALX−270−333、San Diego,CA)
・EDTA(Lonza、カタログ番号17−7−11E)
・NucleoCounter(登録商標)−(ChemoMetec A/S、カタログ番号YC−T100、Allerod,Denmark)
・非組織培養処理した6ウェルの皿(Becton Dickinson,カタログ番号Falcon 351146,Franklin Lakes,NJ)
・Accutase(登録商標)(Sigma、カタログ番号A−6964、St.Louis,MO)
・pH、及び溶存酸素(DO)バイオリアクタープローブ(FermProbe(登録商標)pH電極225mm、モデル番号F−635、及びDO OxyProbe(登録商標)12mmセンサー、モデル番号D−145(Broadley−James Corporation,Irvine CA)
・免疫保護マクロ封入デバイス(TheraCyte(商標)、Irvine CA)
・Mm HUMAN C−PEPTIDE ELISA(MERCODIA CAT# 10−1141−01)
・GlutaMAX(商標)、MCDB131、及びITS−X Invitrogen
・FAF−BSA(Proliant)
・レチノイン酸、グルコース45%(2.5M)、SANT(Shh阻害剤)(Sigma)
・GDF8(Peprotech)
・MCX
・FGF7(R & D Systems)
・LDN−193189(BMP受容体アンタゴニスト)(Stemgent)
・TPPB(PKC賦活物質)(ChemPartner)
・MCDB 131カスタム培地
【0178】
(実施例8)
冷凍保存されたバイオリアクターによって生成された膵臓前駆集団の成熟及び機能
それぞれのバイオリアクター研究に十分な細胞を生成するため、H1 hES(WB0106)細胞の1つの継代31のマスター細胞バンクバイアルを解凍した。5つのMatrigel(商標)でコーティングされた2層CellSTACK(登録商標)(CS2)を播種するのに十分な細胞が生成されるまで、EDTA継代を使用し、Matriget(商標)での複数の継代に対応するmTeSR(登録商標)11培地における接着状況下で、細胞を増殖した。CS2内で成長する接着細胞が70%コンフルエントになると、隣接するポンプチュービングを有するC−Flex(登録商標)チュービングアセンブリキャップを培地ポートに結合し、系を閉鎖した。系が閉鎖した後、袋又はボトルを、Terumo接合装置を介してC−Flex(登録商標)で溶接し、全ての液体体積(培地、PBS
-/-、Accutase(登録商標)、又は懸濁細胞)を、蠕動ポンプを使用して移植した。
【0179】
CS2から細胞を剥離するため、カルシウム又はマグネシウムを含まないDulbeccoのリン酸緩衝生理食塩水(PBS
-/-)で細胞を1度洗浄してから、Accutase(登録商標)の半分濃度の溶液(等量のPBS
-/-で希釈)で処理し、4〜5分間インキュベートした。次いで、Accutase(登録商標)溶液を除去し、酵素溶液の適用から3分後に、CS2を軽打して細胞の剥離を促進した。10マイクロモルのRhoキナーゼ阻害剤、Y−27632を含有するmTeSR(登録商標)1のボトルをポンプでCS2に注入して濯ぎ、残留のAccutase(登録商標)を不活性化してから、濯ぎ剤を収集した。第2の濯ぎ液の体積を添加し、収集し、第1の濯ぎ液と共に貯留した。1.6〜2.0×10
9個の細胞が、最終体積2リットルでCS2から回復された。1層当たり2.0〜2.5×10
8個の細胞を4つのCS2、又は8個の1層Cell Stack(商標)に移植し、1層当たり200mLの体積で、加湿、5%のCO
2インキュベーター内で2時間、37℃でインキュベートした。
【0180】
CellSTACK(登録商標)培地ポート間に結合された、隣接したポンプチュービングを有する、C−Flex(登録商標)チュービングの閉ループを使用して、細胞懸濁液を蠕動ポンプによって75rpmで5分間微粉化して、凝集体を均質化した。次いで、CellSTACK(登録商標)を、加湿、5%のCO
2インキュベーターで18時間、37°で一晩インキュベートした。次いで、Cell Stackから2リットルの細胞及び培地を貯留し、1バイオリアクター当たり1.5リットルの新鮮なmTeSR(登録商標)培地と共に、2つの3リットルDASGIPバイオリアクター内へ1リットルずつ移植した。バイオリアクター接種から24時間後に培地全体を交換して、分化を開始する前に、TeSR(登録商標)培地で更に2日間細胞を維持した。次いで、分化を開始し、表10に記載のとおりに指向した。温度(37°)、pH(ドリフト、又は多能性細胞用に6.8若しくは7.2及び分化用に7.4へCO
2によって調節)、及び溶存酸素(30%のDO設定値、CO
2/空気調節)に対して調節された、閉鎖した無菌懸濁バイオリアクター内で、細胞を合計14又は15日間(2日間のmTeSR(登録商標)+12又は13日間のステージ式の分化)維持した。それぞれの培地交換の前に羽根車を5〜20分停止して、集団を沈降させた。Terumo(商標)チューブ接合装置を使用したC−Flex(登録商標)チュービング(Cole−Parmer North America,Vernon Hills,IL)に接続したディップチューブを通る蠕動ポンプによって、培地を除去又は添加して、閉鎖系を維持した。羽根車を浸らせるのに十分な培地を添加した後で、電熱ジャケットに再び電圧を加えた。
【0181】
これらの方法を使用して、3リットルリアクターで2回の産生運転を開始した。最初のリアクター運転では、多能性培養培地の最初の2日間で、2つの異なるpH設定値をテストした。細胞の代謝活動によって時間の経過と共にリアクター環境が酸性化するにつれ、pHが下方に「ドリフト」するように、固定のCO
2ガス注入率5%で、リアクター1をpH7.2に設定した。リアクター2は、CO
2ガスレベルで調節されたpH7.2に設定した。2回目のリアクター運転では、リアクター1のpHを6.8、及びリアクター2を7.2に設定し、いずれもCO
2ガスレベルで調節した。
【0182】
バイオリアクタープロセスを監視するため、分化のそれぞれのステージの終了時に細胞集団を採取し、フローサイトメトリーで分析した(表11、表12)。分化開始時のCD9発現/CXCR4陰性多能性細胞集団から、胚体内胚葉形成の完了時のCXCR4発現細胞(96.9〜98.1%のCXCR4陽性細胞)の均質集団へのほぼ完全な遷移が観察された。
【0183】
フローサイトメトリーで観察された結果は、rt−PCRで分析した2つの試料の結果と相関した。多能性から膵臓運命へのステージ式分化に特徴的な遺伝子発現について、プロセスを通して試料をテストした。指向された分化の開始前に、多能性又は早期の分化運命に関連付けられた遺伝子のパネルについて、低密度アレイでバイオリアクター細胞集団からのmRNAをテストした。
【0184】
未分化のH1対照と比較すると(
図33)、バイオリアクターからの細胞は、多能性に特徴的な遺伝子(POU5F1、NANOG、SOX2、及びZFP42)の発現を保持し、分化に特徴的な遺伝子(AFP、及びFOXA2:<50倍増、FOXD3、GATA2、GATA4、GSC、HAND2、及びT:<10倍増の発現)の誘導が最小値である又はまったくないことを示した。ただし、細胞がステージ1、1日目の分化培地に接触すると、遺伝子発現パターンが劇的に変化し、CDX2、CER1、FGF17m、FGF4、FOXA2、GATA4、GATA6、GSC、MIXL1、MNX1、及び短尾奇形(T)発現のレベルが、未分化のH1 hES細胞よりも100〜1000倍増加した(
図34)。ステージ1、3日目(胚体内胚葉の形成)の終了までに、CD9、CDX2、FGF4、MIXL1、NANOG、POU5F1、及び短尾奇形(T)は、ステージ1、1日目に対して発現が減少した一方、CD99、CER1、CXCR4、FGF17、GATA4、GATA6、KIT、OTX、又はSOX17などの特徴的な胚体内胚葉遺伝子の発現はピークに達した(
図35)。
【0185】
ステージ1の終了時に、GDF8を含有するものからFGF7を含有する培地へ細胞培養培地を変更した。ステージ2にわたる特定の遺伝子の増加(AFP、ATOH1、HHEX、OSR1、PDX1、PROX1、SOX2、及びSOX9)、発現の減少(HAD1及びSOX17)、全体的に安定な高い発現(HNF4α)、又は低い発現/発現なし(CDX2、GAST、NKX2.2、NKX6.1、及びPTF1a)といった、いくつかの異なる遺伝子発現パターンが認められた(
図36a〜e)。これらのパターンは、リアクター内の細胞が、減少する中胚葉(HAND1及びSOX17)のマーカーに対応する前腸(AFP、ATOH1、HHEX、HNF4α、OSR1、PDX1、PROX1、SOX2、及びSOX9)発現になっていることを示した。しかしながら、ステージの終了までに、細胞はより成熟した腸又は膵臓運命(CDX2、GAST、NKX2.2、NKX6.1、及びPTF1a)にまだ特定化していなかった。
【0186】
未分化の対照に対してmRNAにおける>100,000倍の増加(
図36)、及びフローサイトメトリーによるPDX1を発現する細胞の76〜98%(表11)によって実証された、PDX1発現によって測定されるとおり、ステージ3の終了までに、細胞は膵臓系統に特定化していた。また、膵臓(GAST、NKX2.2、NKX6.1、PROX1、PTF1a、及びSOX9)、並びにAFP及びCDX2などの腸の他の遺伝子の誘導も観察され、細胞がより成熟した運命に特定化し始めたことを示した。
【0187】
表11及び12に示すように、ステージ4の3又は4日目の分化プロセスの終了までに、細胞は、膵内分泌細胞(47〜54%クロマグラニン陽性)及び膵臓前駆細胞(NKX6.1の場合、33〜52%陽性)の混合と一貫した発現パターンを示した。このステージの特異的なマーカー発現パターンは、未分化のH1ヒト胚性幹細胞と比べて高い発現レベルのPDX1(誘導倍率>1×10
6)及びその他の膵臓遺伝子(誘導倍率>1000のARX、GCG、GAST、INS、ISL、NEUROD1、NGN3、NKX2.2、NKX6.1、PAX4、PTF1a、及びSST)、並びにOCT4/POU5F1発現のほぼ全損失に特徴付けられる膵臓前駆細胞への、多能性集団からの効率的なステージ式分化を示した(
図37)。
【0188】
分化プロセスの終了時に、0.08〜0.45×10
6個の細胞/mLが生成された(
図38:毎日の細胞計数)。次いで、このプロセスで生成された細胞を冷凍保存するか、TheraCyte(商標)デバイスを介して動物の皮下に直接埋め込むか、又は腎臓被膜下に定置した。細胞を冷凍保存するため、2.43g/Lの重炭酸ナトリウム、30%のゼノフリーKSR、10%のDMSO、及び2.5%のHEPES(最終濃度25mM)を有する57.5%のMCDB131からなる冷凍保存培地に、細胞を移植した。細胞集団を周囲温度で冷凍保存培地内に懸濁した後で、クライオバイアルを自動凍結保存装置(CRT)に15分以内で移植した。次いで、チャンバ温度を45分間4℃に下げ、2.00℃/分でー7.0℃(試料)まで更に下げた。次いで、試料をすばやく冷却し、チャンバ温度を25.0℃/分の速度で−45.0℃まで下げた。次いで、チャンバ温度を10.0℃/分で−25.0℃(チャンバ)に上げることによって、補償の増加を提供した。次いで、温度が−40.0℃に達するまで、試料を0.2℃/分で冷却した。次いで、チャンバを35.0℃/分の速さで−160℃に冷却し、その温度で15分間保持した。CRF運転の終了時に、試料をガス相液体窒素保管容器に移植した。
【0189】
細胞をガス相液体窒素で保存した後、保管場所から除去することによって細胞を解凍し、37℃の水浴に移植した。小さい氷晶がバイアルに残るまで、バイアルを2分未満水浴内で静かに渦流した。次いで、バイアル内容物を50mLの円錐に移植し、2.43g/Lの重炭酸ナトリウム及び2%のBSAを有するMCDB131培地を使用して、合計20mLの最終体積になるまで、滴下式で2分以上希釈した。次いで、NucleoCounter(登録商標)
で合計細胞数を決定し、細胞懸濁液を超低級付着培養皿に1時間移植させた。次いで、50mLの円錐内の培地から細胞を単離し、上澄を除去し、細胞をステージ4の培地で再懸濁した。次いで、TheraCyte(商標)デバイスを介して動物の皮下に、若しくは腎臓被膜下に細胞を埋め込むか、又は超低級付着皿内で細胞を一晩インキュベートしてから、動物に埋め込んだ。
【0190】
動物は、血糖及びCペプチドレベルについて、移植片埋め込み後4週間おきに監視された。TheraCyte(商標)デバイス内部で非冷凍保存の膵臓前駆細胞を用いて、又は腎臓被膜下への細胞の直接定置によって処理した動物は、16週目までに1ng/mLを超えるCペプチドを発現するまで成熟し、埋め込み後20週目までに2ng/mLのCペプチドに達した(
図39a及び39d)。更に、宿主のβ細胞機能をアブレーションするためにSTZで処理する際に、移植片が除去されるまで、移植された動物は正常血糖を維持し、単一の高用量のSTZによって誘導される糖尿病から動物を保護する能力が、移植片にあることを示した。
【0191】
このパターンは、冷凍保存された細胞で処理した動物でも観察された。解凍後1時間培養した、冷凍保存した膵臓前駆細胞を有する腎臓被膜移植片によって処理した動物(1207B)は、16及び20週目でそれぞれ平均0.56ng/mL及び1.09ng/mLのCペプチドを有した一方、解凍後一晩培養した細胞(1207C)は、16及び20週目でそれぞれ平均0.81ng/mL及び1.35ng/mLのCペプチドを有した(
図39d)。TheraCyte(商標)デバイス内で冷凍保存した膵臓前駆細胞で処理した動物は、16週までに1ng/mLを超えるCペプチドを有し、非冷凍保存の対照と同様に、STZ処理から1週間後にCペプチドの治療用レベルを発現することができた(0.98ng/mL、
図39c)。これらの結果は、動物モデルでテストしたときに、冷凍保存された膵臓前駆細胞が、非冷凍保存の対照と同等に機能し得ることを示す。
【0192】
【表20】
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【0193】
注:
・上記の表10の基本培地は、Glutamaxを栄養補助剤に使用しない場合、ステージ1〜5で5mMを任意追加的に含む。
・Cypi([100nM])は、上記の表10のステージ4に、任意追加的に追加し得る。
【0194】
【表21】
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【0195】
【表22】
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【0196】
撹拌槽バイオリアクター内の細胞凝集体が経験するずれ応力の計算
31 DASGIPバイオリアクターにおいて70rpmの撹拌速度で混合される、2.7リットルのDASGIP撹拌懸濁バイオリアクター内の細胞凝集体が経験する、ずれ応力を決定した。ずれ応力値を計算するため、以下に述べる前提条件を作製した。
【0197】
前提条件:
1.細胞凝集体に課される最大ずれ応力は、乱流渦の結果ではない。
2.細胞凝集体に課される最大ずれ応力は、凝集−凝集又は凝集−羽根車の衝突の結果ではない。
3.隔壁(すなわち、ディップチューブ及びプローブ)が課すずれ応力は、これらの計算では取り組まれない。
【0198】
本明細書の計算の目的のため、以下に示す専門用語及び物理的パラメーターを使用する。
【0199】
【表23】
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【0200】
【表24】
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【0201】
【表25】
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【0202】
列記した培地及びバイオリアクタオーパラメーターを以下の等式に適用した。
【0203】
等式:
レイノルズ数:
【0204】
【数1】
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【0205】
凝集体に対する最大ずれ応力(Cherry and Kwon 1990)
【0206】
【数2】
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【0207】
1単位質量当たりの散逸される電力(ε)
【0208】
【数3】
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【0209】
消費電力(P)
【0210】
【数4】
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【0211】
動力数計算は、整流装置を含まない撹拌槽に対して、Nagata(1975)が導出した実験的相関関係に基づいている。
【0212】
【数5】
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【0213】
2.7LのDASGIPバイオリアクター内において撹拌速度70rpmで細胞凝集体に課された、少なくとも0.25パスカル(2.5dyn/cm
2)の最大ずれ応力を計算した。集団の最も外側を含む細胞は、最も高いレベルのずれ応力を経験する。これらのずれ応力値は、記述した前提条件に大きく依存する。
【0214】
(実施例9)
細胞株WA01から胚体内胚葉へのヒト胚性幹細胞の分化:懸濁培養下でのMCX/GDF8の役割
2%の脂肪酸フリーのBSA(カタログ番号68700,Proliant,IA)、1X GlutaMAX(商標)(カタログ番号35050−079,Invitrogen,CA)、追加の2.5mMグルコース(カタログ番号G8769,Sigma)、及び1:50,000のストック濃度のITS−X(カタログ番号51500056,Invitrogen,CA)を添加した、3.64g/mLの重炭酸ナトリウム及び5.5mMのグルコース(カタログ番号A13051 DJ,Invitrogen,CA)を含有するMCDB−131培地で、三角/振とうフラスコ、スピナーフラスコ、又はコーティングされていない超低級結合若しくは非組織培養処理した6ウェルプレートに、0.25×10
6〜2×10
6個の細胞/mLの範囲の細胞密度で、多能性ヒト胚性幹細胞株H1(NIHコード:WA01)からの集団を播種した。この様式で添加されたMCDB−131培地は、この適用の目的で「ステージ1基本培地」と称される。この培地内の集団を、3μM MCX(GSK3B阻害剤、14−プロパ−2−エン−1−イル−3,5,7,14,17,23,27−ヘプタアザテトラシクロ[19.3.1.1〜2,6〜.1〜8,12〜]ヘプタコサ−1(25),2(27),3,5,8(26),9,11,21,23−ノナエン−16−オン、米国特許出願第12/494,789号、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)及び100ng/mLのGDF−8(カタログ番号120−00,Peprotech)、又は3μMのMCXのみ、又は20ng/mLのWNT−3A(カタログ番号1324−WN−002,R&D Systems,MN)+100ng/mLのアクチビンA(カタログ番号338−AC,R&D Systems,MN)、又は20ng/mLのWNT−3Aのみ、のいずれかで、分化の第1日目に処理した。2日目に、100ng/mLのGDF8又は100ng/mLのアクチビンAのいずれかを添加した、新鮮なステージ1の基本培地に細胞を移植した。分化開始から時間0(補助剤を加えた基本培地の添加直前)から72時間後の範囲の様々な時点で、フローサイトメトリー、PCR、及びウエスタンプロット用に試料を収集した。
【0215】
フローサイトメトリーを使用して、細胞表面マーカーCXCR4、CD99、及びCD9を発現する細胞の割合を測定することにより、分化の3日後にそれぞれの条件下で、胚体内胚葉が生成された効率を決定した。データは(
図40a〜bのFACSプロットに示され、表13に要約されているとおり)、懸濁培養下で、分化の1日目のTGF−βファミリーメンバーの不在での3μMのMCXの添加が、1日目に3μMのMCX+100ng/mLのGDF−8、又は20ng/mLのWNT−3A+100ng/mLのアクチビンAで細胞が処理される際に得られるものに相当するレベルで、胚体内胚葉を生成することを示す。
【0216】
【表26】
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【0217】
(実施例10)
細胞株WA01から胚体内胚葉へのヒト胚性幹細胞の分化:懸濁培養下でのMCX化合物濃度の用量反応
実施例9に記載したとおり、ステージ1基本培地で、三角/振とうフラスコ又はスピナーフラスコに、0.25×10
6〜2×10
6個の細胞/mLの範囲の細胞密度で、多能性ヒト胚幹細胞株H1(NIHコード:WA01)からの集団を播種した。分化の1日目に、1.5、2、3、又は4μM MCXを含有するステージ1の基本培地、及び2日目に100ng/mLのGDF−8を含有する新鮮なステージ1の基本培地で、集団を処理した。3日目に培地交換は行わなかった。分化の3日目の終了時に、フローサイトメトリー及びPCR分析用の試料を収集した。
【0218】
次いで、フローサイトメトリーを使用して、細胞表面マーカーCXCR4、CD99、及びCD9を発現する細胞の割合を測定することにより、胚体内胚葉が生成された効率を決定した。データは(
図41A〜DのFACSプロットに示され、表14に要約されているとおり)、懸濁培養下で、2μM未満の濃度のMCXを添加した結果、(CXCR4陽性のより低い割合及びCD9陽性細胞のより高い割合によって証明されるとおり)胚体内胚葉陽性細胞が次第に少なくことを示している。更に、4μMを上回る濃度のMCXは、細胞に対する有害な影響を呈し、細胞生存性の低下をもたらす。ただし、BSA濃度を高めることによって、濃度≧4マイクロモルを使用し得るように、MCXの影響を調節することができる。反対に、より低いBSA濃度で使用する際は、濃度≦1.5マイクロモルを使用して、胚体内胚葉を生成し得る。
【0219】
【表27】
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【0220】
(実施例11)
細胞株WA01から胚体内胚葉へのヒト胚性幹細胞の分化:懸濁培養下での培地交換頻度の役割
実施例9に記載したとおり、ステージ1基本培地で、三角/振とうフラスコ又はスピナーフラスコに、0.25×10
6〜2×10
6個の細胞/mLの範囲の細胞密度で、多能性ヒト胚幹細胞株H1(NIHコード:WA01)からの集団を播種した。分化の1日目に、3μM MCXを含有するステージ1の基本培地、及び2日目に100ng/mLのGDF−8を含有する新鮮なステージ1の基本培地で、集団を処理した。対照集団は、3日目に培地交換を受けたが、3日目に別個の容器への培地交換は行われなかった。分化の3日目の終了時に、フローサイトメトリー及びPCR分析用の試料を収集した。
【0221】
次いで、フローサイトメトリーを使用して、細胞表面マーカーCXCR4、CD99、及びCD9を発現する細胞の割合を測定することにより、それぞれの条件下で、胚体内胚葉が生成された効率を決定した。結果を
図42A及びBのFACSプロットに示し、表15に要約する。
【0222】
【表28】
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【0223】
(実施例12)
細胞株WA01から胚体内胚葉へのヒト胚性幹細胞の分化:懸濁培養下でのGlutaMAX(商標)の使用
三角/振とうフラスコ又はスピナーフラスコに、0.25×10
6〜2×10
6個の細胞/mLの範囲の細胞密度で、多能性ヒト胚幹細胞株H1(NIHコード:WA01)からの集団を播種した。
【0224】
分化の1日目に3μMのMCXを、2日目に100ng/mLのGDF−8を含有する新鮮なステージ1の基本培地を添加した、ステージ1の基本培地(例9に記載)+又は−GlutaMAX(商標)内で集団を懸濁することによって、胚体内胚葉の生成にGlutamx(商標)の添加が必要かどうかを決定するため、この実施例を実行した。3日目に培地交換は行わなかった。分化の3日目の終了時に、フローサイトメトリー及びPCR分析用の試料を収集した。
【0225】
フローサイトメトリーを使用して、細胞表面マーカーCXCR4、CD99、及びCD9を発現する細胞の割合を測定することにより、それぞれの条件下で、胚体内胚葉が生成された効率を決定した。結果を
図43A及びBのFACSプロットに示し、表16に要約する。
【0226】
【表29】
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【0227】
(実施例13)
細胞株WA01から胚体内胚葉へのヒト胚性幹細胞の分化:懸濁培養下での重炭酸ナトリウム濃度の役割
実施例9に記載したとおりのステージ1の基本培地(3.64g/Lの重炭酸ナトリウムを含有)、又は、2.43g/L重炭酸ナトリウムを含有する変性されたステージ1の基本培地で、三角/振とうフラスコ又はスピナーフラスコに、0.25×10
6〜2×10
6個の細胞/mLの範囲の細胞密度で、多能性ヒト胚幹細胞株H1(NIHコード:WA01)からの集団を播種した。実施例12に記載したとおり、MCX及びGDF−8を含有するステージ1の基本培地で集団を処理した。分化の3日目の終了時に、フローサイトメトリーのための試料を収集した。分化のそれぞれの日に、位相差画像もまたキャプチャした。
【0228】
次いで、フローサイトメトリーを使用して、細胞表面マーカーCXCR4、CD99、及びCD9を発現する細胞の割合を測定することにより、胚体内胚葉が生成された効率を決定した。データを
図44A及びBのFACSプロットに示し、表17に要約する。懸濁培養では、3.64g/Lを含有する培地で細胞を分化したときより(平均して97.35%の細胞発現CXCR4)、2.43g/Lほどの低さの重炭酸ナトリウムレベルのほうが、胚体内胚葉を生成する効率が低いように見える(平均して、87.4%の細胞発現CXCR4)。また、位相差顕微鏡で観察したとおり(
図44C及びD)、ステージ1の終了時に、重炭酸塩レベルの差異は集団形態の差異と相関したことが観察された。また、高い重炭酸塩レベル下で分化した細胞は、2.43g/Lの重炭酸塩で分化した細胞よりも疎性の集団を形成することが認められた。
【0229】
【表30】
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【0230】
(実施例14)
計測可能バイオリアクタープロセスでの人為的な多能性幹細胞からの膵臓前駆集団の生成
細胞療法には、1用量当たりに多数の(>10
8)細胞が必要とされる。この実施例は、現在の細胞療法製造基準で可能であるよりも、3〜5桁大きい誘導多能性幹細胞(iPS細胞)質量を分化させることができるプロセスを実証する。
【0231】
この実施例では、iPS細胞株、UTC(米国特許出願13/330,931号(米国公開特許第2013/0157365号)で以前に記述された臍帯組織細胞由来で、その開示は、それがiPS細胞株の誘導に関連するために、参照により組み込まれる)を使用した。細胞は、「フットプリント」フリーの様式でプラスミド遺伝子移入を使用して、マウスの胚性フィーダー細胞に誘導され、継代15で冷凍保存した。
【0232】
これらの冷凍保存した細胞から、Life Technologies Corporation(Grand Island,NY)のEssential8(商標)培地(E8(商標))で、供給源の培地バイアルをヒト組み換えラミニン(hrLaminin,カタログ番号LN−521(Biolamina,Stockholm,Sweden))へ直接解凍することによって、一連の細胞バンクを生成して、自家種材料を生成した。この解凍し、増殖した材料を、将来のバンク用の種材料として役立つ、「プレ−プレマスター細胞バンク」(プレ−プレMCB)と呼んだ。次いで、プレ−プレMCB 3を使用して、連続細胞バンク、プレ−MCB、MCB、及びワーキング細胞バンク(WCB)を生成した。次いで、1つのWCBバイアルを解凍し、E8(商標)での3回の継代用に、EDTA継代を使用してhrLaminで増殖した。細胞はまず、解凍からT225フラスコ(Corning;Cornin,NY)へ播種してから、複数のT225フラスコへ継代した。次いで、複数のT225フラスコを継代し、単一の1層Cell Stack(商標)(CS1)を播種するために結合した。CS1内の細胞がコンフルエントになると、細胞をPBS
-/-で1度洗浄し、Accutase(登録商標)の半分濃度の溶液(PBS
-/-で希釈)で処理し、4〜5分間インキュベートした。次いで、Accutase(登録商標)を除去し、酵素溶液の適用から3分後に、CS1を軽打して細胞の剥離を促進した。0.5%のBSAを添加し、10マイクロモルのRhoキナーゼ阻害剤、Y−27632を含有するE8(商標)をCS1に添加して、残留のAccutase(登録商標)を濯ぎ、不活性化した。次いで、濯ぎ液を収集し、第2の濯ぎ液の体積を添加し、収集し、第1の濯ぎ液と共に貯留した。
【0233】
0.5%のBSAを添加し、10マイクロモルのRhoキナーゼ阻害剤、Y−27632を含有する培地内の細胞を、225mLリットル中1×10
6個の細胞/mLの濃度で、1リットルの使い捨てスピナーフラスコ(Corning;Corning、NY)へ移植した。加湿、5%のCO
2インキュベーター内において、60分間静的懸濁液内で細胞を集団化させ、次いで、55〜65rpmで5分間撹拌し、0.5%のBSAを添加し、10マイクロモルのRhoキナーゼ阻害剤、Y−27632を含有する追加の培地225mLを添加した。細胞を更に30分間静的培養下で沈降させ、次いで、0.5%のBSAを添加し、10マイクロモルのRhoキナーゼ阻害剤、Y−27632を含有する追加の培地150mLをスピナーフラスコに添加した。その後、加湿、5%のCO
2インキュベーター内において、50〜70rpmで、細胞を連続的に撹拌した。24時間後、スピナーフラスコをインキュベーターから除去し、集団を5〜10分間沈降させた。その後、容器内に200mLが残るまで培地を吸引してから、400mLの追加の新鮮な培養培地をスピナーフラスコに添加した。このプロセスを2日目(移植から48時間後)の終了時に繰り返した。
【0234】
次いで、最初のAccutase(登録商標)処理から72時間後、細胞集団分離及びスピナーフラスコ播種(継代)のプロセスを繰り返して、複数の継代中(検査範囲:1〜10回の継代)、細胞を懸濁液に維持した。
【0235】
このプロセスを使用して、UTC iPS細胞を基質上の接着培養から、細胞集団として懸濁培養へ変換し、その後、懸濁液内で増殖した。これらの懸濁液で継代し、培養した細胞はその後、後の使用のために冷凍保存し、保管した。冷凍保存用に懸濁液で増殖した細胞集団を調製するために、細胞を40マイクロメートルの細胞ストレーナに通過させなかったことを除き、上記に述べたとおりに、Accutase(登録商標)で細胞集団を分離した。次いで、1リットルの使い捨てフラスコから細胞を計数し、必要に応じて結合し、80〜200rcfで5分間遠心分離した。次いで、細胞ペレットを撹乱させることなく、上澄を可能な限り完全に除去した。次いで、1mL当たり1億5000万個の細胞の最終濃度を得るために、低温(<4℃)のCryoStor(登録商標)10を滴下により添加して、1.8mLのCorning(登録商標)クライオバイアル(Corning;Corning,NY)又は15mLのMiltenyiクライオバック(Miltenyi Biotec Inc.Auburn,CA)に移植する間、細胞溶液を氷浴内で保持した。
【0236】
次いで、以下のとおり、バイアル内の懸濁増殖細胞を自動凍結保存装置内に高密度で凍結した。チャンバを4℃に予冷し、試料バイアル温度が6℃に達するまで、温度を保持した。次いで、試料が−7℃に達するまで、チャンバ温度を2℃/分で下降させた。試料バイアルが−7℃に達すると、チャンバが−45℃に達するまで、チャンバを20℃/分で冷却した。次いで、チャンバ温度が−25℃に達するまで、チャンバ温度を10℃/分で素早く上昇させ、その後、試料バイアルが−45℃に達するまで、チャンバを0.8℃/分で更に冷却した。次いで、チャンバが−160℃に達するまで、チャンバ温度を35℃/分で冷却した。次いで、チャンバ温度を−160℃で少なくとも10分間保持してから、バイアルをガス相液体窒素保管容器に移植した。
【0237】
撹拌槽バイオリアクターを接種するために、高密度で冷凍保存された細胞を、液体窒素保管容器から取り出し、解凍し、閉鎖された0.2リットルのガラスバイオリアクター(DASGIP;Julich,Germany)を播種するために使用した。クライオバイアルを、ガス相液体窒素保管容器から除去し、37℃の水浴内に105秒間直接定置した。次いで、2mLのガラスピペットを介して、解凍されたバイアル内容物を50mLの円錐チューブに移植した。次いで、0.5%のBSAを含有し、10マイクロモルのRhoキナーゼ阻害剤、Y−27632を添加された9mLのE8(商標)を、滴下によりチューブに添加した。次に、細胞を80〜200rcfで5分間遠心分離した。その後、チューブから上澄を吸引し、0.5%のBSAを含有し、10マイクロモルのRhoキナーゼ阻害剤、Y−27632を添加された、10mLの新鮮なE8を添加した。細胞を含有するこの体積を培地移植ボトル(Cap2V8(登録商標),SaniSure,Moorpark,CA)へ分注し、蠕動ポンプによって、無菌C−flexチュービング溶接を介して、ボトル内容物をバイオリアクター内に直接ポンプで注入した。多能性幹細胞接種用の調製において、0.5%のBSA、10マイクロモルのRhoキナーゼ阻害剤であるY−27632を添加したE8(商標)培地、0.15Lをバイオリアクターに準備し、37℃に予熱し、70rpmで撹拌し、CO
2によってpHを6.8〜7.1に調節し、溶存酸素設定値を30%とした(CO
2、空気、O
2、及びN
2で調節)。接種の直後、バイオリアクターを細胞計数用に試料採取し、0.225×10
6個の細胞/mLの最終細胞濃度をもたらすよう、必要に応じて培地体積を調整した。
【0238】
撹拌槽バイオリアクターに接種された細胞は、連続的に撹拌されるタンク内に細胞集団を形成した。接種後、リアクター内の、0.5%のBSAで添加したE8(商標)培地に、細胞集団を3日間維持した。培地は毎日変更し、接種から24時間後に使用済み培地の90%を除去して、0.15リットルの新鮮な培地を添加した。接種から48時間後に、使用済み培地の90%を除去して、0.15リットルの新鮮な培地を添加した。接種から72時間後に、>90%の使用済み培地を除去して、分化培地を添加することにより、多能性細胞分化を開始した(表18)。
【0239】
ステージ式の分化プロセスを開始した後は、温度(37℃)、pH(分化用に7.4)、及び溶存酸素(ステージ1については10%のDO設定値、それ以外は常時30%のDO設定値、CO
2、O
2、N
2、及び空気の調節)が調節された、閉鎖した撹拌懸濁バイオリアクターに、細胞を12日間以上維持した分化プロセス全体を通し、培地交換のたびに、ディップチューブを介して培地を除去する前に羽根車を5〜20分停止して、集団を沈降させた。Terumo(商標)チューブ接合装置を使用したC−Flex(登録商標)チュービングに接続したディップチューブを通る蠕動ポンプによって、バイオリアクター内の培地を閉鎖されたボトル又は袋から除去するか、又はそこに追加して、閉鎖系を維持した。十分な培地を容器に添加して、羽根車を完全に浸らせた後で、羽根車及び加熱器に再び電圧を加えた。
【0240】
バイオリアクターのプロセスを監視するため、細胞集団を含有する培地の試料を毎日取り出して、
図45に示すとおり、細胞の数及び生存性を決定した(NucleoCounter(登録商標))。プロセスの間は、細胞の一般的な増殖が観察され、生育細胞0.225×10
6個/mLの接種材料が、ステージ4、3日目で0.65×10
6個の生育細胞/mLを生成するように増殖した(
図45)。
【0241】
毎日の計数に加え、バイオリアクター培地試料をNOVA BioProfile(登録商標)FLEX(Nova Biomedical Corporation,Waltham,MA)によって分析した。ステージ0のリアクター設定値(pH6.8)によって、ステージ0の培地のpHは、ステージ0を通して酸性であった(pH6.8)(
図46)ことが観察された。ステージ0の酸性設定値は、細胞の代謝活動を低減させるようであり、ステージの0培地では、比較的低い乳酸及び高いグルコースレベルが観察された。細胞がステージ3の終了までの分化を開始すると、細胞は、培地内のほとんど全てのグルコースを消費し(
図47)、高いレベルの乳酸を生成した(
図48)。また、細胞密度の増加が、ステージ1及び2にわたって観察された(
図45)。
【0242】
pH及び代謝におけるステージに特異的な変化が、qRT−PCRによって測定されたとおりの、mRNA発現パターンにおけるステージの変化に一致したかどうかを判断するため、以下のことを行った。多能性、胚体内胚葉(DE)、腸管(GT)又はステージ4(S4)を指定する、4つのApplied Biosystems Low Density Arrays(Life(商標),Carlsbad,CA)を使用した。全ての運転及びアレイにわたって発現を標準化するため、未分化のUTCiPS細胞試料を対照として対比した、倍率差として結果を表示した。
【0243】
これらのアレイを使用して、分化のステージごとに遺伝子発現を決定した。次いで、バイオリアクターに解凍した種材料細胞は、ステージ0の1、2、及び3日目(バイオリアクター接種から24、48、及び72時間後:
図49及び50)には、未分化の遺伝子発現パターンを示したことが観察された。これらの結果は、CD9、SSEA4、TRA−1−60、及びTRA−1−81の高い発現レベル、並びにCXCR4/CD184の欠損を示した、フローサイトメトリー結果とうまく相関した(
図51)。これらのフローサイトメトリー及びqRT−PCRデータは、多能性(CD9、NANOG、POU5F1、SOX2、TDGF、及びZFP42)の遺伝子に関する、堅牢かつ安定な発現パターンと、安定な多能性状態と一貫した分化(CD99、CDH2、CDX2、CER1、CXCR4、EOMES、FGF17、FGF4、FOXA2、GATA2、GATA4、GATA6、GSC、HAND2、HNF4α、KIT、MNX1、MIXL1、PRDM1、PTHR1R、SOX17、SOX7、T、TMPRSS2、及びVWF)の間に特徴的に発現する遺伝子の発現がないことと、を示した。
【0244】
ステージ0の完了時(リアクター接種から72時間後)に、MCX及びGDF8を含有する分化培地(表18)に細胞を移植した。この培地変更の24時間後、FOXA2、HAND2、PRDM1、PTH1R、及びSOX17発現の>10xの増加、CER1、FGF4、GATA4、GATA6、GSC、及びMINX1の>100x増加、及びEOMES、FGF17、MIXL1、及びT発現の>1000xの増加といった、遺伝子発現パターンに有意な変化(
図49及び50の未分化の対照と対比した倍数発現)が認められた。これらの増加した発現レベルは、細胞が中内胚葉運命を経て遷移していることを示した。未分化細胞と対比して、CDX2レベルがステージ1、1日目に上昇したことも認められたが(対照に対して発現が2700xの増加)、これは発現の一過性の増加であり、CDX2レベルはステージ1、3日目までに、分化の誘導前に観察されたレベルと同等のレベルまで、97%下降した(
図49及び50の未分化の対照と対比した倍数発現)。
【0245】
ステージ1の分化培地への露出から72時間後に、細胞は胚体内胚葉の仕様と一貫したプロファイルを発現し、CXCR4レベルが過去の対照に対して約400xでピークに達し、FOXA2は過去の対照に対して136xで発現し、SOX17は過去の対照に対して470,000xで発現した。胚体内胚葉と一貫して、ステージ1(3日目)の終了時のCER1、EOMES、FGF4、GSC、MIX1、及びTの遺伝子発現が、ステージ1、1日目に観察された上昇レベルから下降したこともまた認められた(
図49及び50の未分化の対照と対比した倍数発現)。
【0246】
qRT−PCRによって観察された遺伝子発現のこれらの変化は、フローサイトメトリーによって観察された結果と相関した。分化開始時(
図51)のCD9発現/CXCR4陰性多能性細胞集団から、ステージ1の終了時(
図52)のCXCR4発現細胞(98.6%のCXCR4陽性)の均質な集団まで、ほぼ完全な遷移が見られた。
【0247】
胚体内胚葉の形成(ステージ1)の完了後、原始前腸の形成の誘導に使用するモルフォゲンである、FGF7を含有するものに、培地を変更した。原始前腸の形成と一貫して、ステージ2、1及び3日目のHNF4α及びGATA6発現レベルが増加した一方、ステージ1、3日目に高いレベルで発現した遺伝子(CXCR4、EOMES、FGF17、FGF4、MNX1、PRDM1、SOX17、及びVWF)はステージ2の終了までに発現の減少を示した(
図50及び53の未分化の対照と対比した倍数発現)。前腸遺伝子(AFP、HHEX、PDX1、及びPROX1)の発現が増加した(
図53の未分化の対照と対比した倍数発現)。
【0248】
細胞をステージ2の培地で72時間培養した後、培養をステージ3の培地に切り替えた(表18)。この培地で一度、細胞は、遺伝子発現に関するqRT−PCRアッセイによって測定されたとおり、内胚葉膵臓系統と一貫したマーカーを発現した。PDX1の遺伝子発現は、ステージ2、3日目の終了時点で対照に対して12,000×から、ステージ3、3日目の終了時点で対照に対して739,000×へと、60倍増加した。これらのデータは、細胞が膵臓運命に特定化していたことを示した(
図54)。この観察を支持するものは、
図54及び55に示すとおり、膵臓内で通常発現する遺伝子(ARX、GAST、GCG、INS、ISL1、NEUROD1、NGN3、NKX2.2、NKX6.1、PAX4、PAX6、PTF1A、及びSST)の宿主に関して、未分化の対照と対比した発現レベルの増加であった。興味深いことに、OCT4/POU5F1発現(qRT−PCRによる37試料Cts)がないことと、内胚葉系統AFP、ALB、及びCDX2の他のマーカーの発現レベルが高いことと、がまた観察された。このことは、バイオリアクター内の細胞集団が、多能性細胞集団から最初に比較的形成力のある腸管運命へ分化してから、膵臓運命へ更に分化したことを示す(
図54及び55)。
【0249】
4ステージ分化プロセスの終了時に、細胞は、高いレベルのPDX1(FACSによる95.6%陽性、qRT−PCRによる対照に対する約1,000,000倍の誘導)発現を維持した。細胞は、膵臓前駆細胞(FACSによるNKX6.1の39.2%陽性)及び膵臓分泌細胞の集団(PAX6の9.4%陽性、クロモグラニンの12.4%陽性、NKX2.2の15.2%陽性、全てFACSによる)と一貫した発現パターンを示した。このステージに特異的なマーカー発現パターンは、多能性集団から膵臓前駆細胞への効率的なステージ式分化を示した。フローサイトメトリーで観察されたこれらの結果を、qRT−PCRによって確認した。膵臓内で通常発現する遺伝子(ARX、GAST、GCG、IAPP、INS、ISL1、MAFB、NEUROD1、NGN3、NKX2.2、NKX6.1、PAX4、PAX6、PTF1A、及びSST)の宿主は全て、ステージ4、3日目に発現レベルが増加していることも認められた。(
図55)。参照のため、それぞれのステージ終了時の細胞集団の代表的な顕微鏡写真(4x)を、
図56に示す。
【0250】
【表31】
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【0251】
【表32】
[この文献は図面を表示できません]
【0252】
【表33】
[この文献は図面を表示できません]
【0253】
材料:
・ヒト胚性幹細胞(hES)細胞株H1(WA01細胞、WiCell(Madison WI)
・PBS(カタログ番号14190、Invitorogen)
・Y−27632(Axxoraカタログ番号ALX−270−333、San Diego,CA)
・EDTA(Lonza、カタログ番号17−7−11E)
・NucleoCounter(登録商標)−(ChemoMetec A/S、カタログ番号YC−T100、Allerod,Denmark)
・非組織培養処理した6ウェルの皿(Becton Dickinson,カタログ番号Falcon 351146,Franklin Lakes,NJ)
・Accutase(登録商標)(Sigma、カタログ番号A−6964、St.Louis,MO)
・pH、及び溶存酸素(DO)バイオリアクタープローブ(FermProbe(登録商標)pH電極225mm、モデル番号F−635、及びDO OxyProbe(登録商標)12mmセンサー、モデル番号D−145(Broadley−James Corporation,Irvine CA)
・免疫保護マクロ封入デバイス(TheraCyte(商標)、Irvine CA)
・Mm HUMAN C−PEPTIDE ELISA(MERCODIA,カタログ番号10−1141−01)
・GlutaMAX(商標)、MCDB131及びITS−X Invitrogen
・FAF−BSA(Proliant)
・レチノイン酸、グルコース45%(2.5M)、SANT(Shh阻害剤)(Sigma)
・GDF8(Peprotech)
・MCX
・FGF7(R & D Systems)
・LDN−193189(BMP受容体アンタゴニスト)(Stemgent)
・TPPB(PKC賦活物質)(ChemPartner)
【0254】
(実施例15)
細胞株WA01から胚体内胚葉へのヒト胚性幹細胞の分化:懸濁培養下でのMCX/GDF8の細胞周期制御としての役割
2%の脂肪酸フリーのBSA(カタログ番号68700,Proliant,IA)、1X GlutaMAX(商標)(カタログ番号35050−079,Invitrogen,CA)、追加の2.5mMグルコース(カタログ番号G8769,Sigma)、及び1:50,000のストック濃度のITS−X(カタログ番号51500056,Invitrogen,CA)を追加した、3.64g/mLの重炭酸ナトリウム及び5.5mMのグルコース(カタログ番号A13051 DJ,Invitrogen,CA)を含有するMCDB−131培地において、三角/振とうフラスコ内に0.5×10
6個の細胞/mLで、多能性ヒト胚性幹細胞株H1(NIHコード:WA01)からの集団を播種した。この様式で添加したMCDB−131培地は、この実施例の目的でステージ1基本培地、又は「未希釈」培地と称される。GSK3B阻害剤(14−プロパ−2−エン−1−イル−3,5,7,14,17,23,27−ヘプタアザテトラシクロ[19.3.1.1〜2,6〜.1〜8,12〜]ヘプタコサ−1(25),2(27),3,5,8(26),9,11,21,23−ノナエン−16−オン、米国特許出願第12/494,789号は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)は、「MCX」と称される。
【0255】
分化の第1日目に、以下の6つの条件のいずれかで集団を処理した。(1)未希釈、(2)3μMのMCX+100ng/mLのGDF−8(カタログ番号120−00,Peprotech)、(3)3μMのMCXのみ、(4)100ng/mLのGDF−8のみ、(5)20ng/mLのWNT−3A(カタログ番号1324−WN−002,R&D Systems,MN)+100ng/mLのアクチビンA(カタログ番号338−AC,R&D Systems,MN)、又は(6)20ng/mLのWNT−3Aのみ。
【0256】
それぞれの条件下の培地を、分化の開始から24及び48時間後に変更した。これらの時間に、条件1、2、3、及び4の細胞を、100ng/mLのGDF8を添加した新鮮なステージ1の基本培地に変更し、条件5及び6の細胞を、100ng/mLのアクチビンAを添加した新鮮なステージ1の基本培地に変更した。
【0257】
分化開始の1時間前、及び分化開始(「時間0」と称する)から5、23、29、47、71時間後に、懸濁試料を非組織培養で処理した6ウェルの皿に移植し、EdU(Click−iT(登録商標)EdU Kit,Life Technologies Corporation,Carlsbad,CA)で1時間インキュベートした。次いで、EdUでインキュベートした細胞を、分化の開始から0、6、24、30、48、又は72時間後の時間に、フローサイトメトリーによって評価して、細胞周期のG0/G1、S、又はG2/Mステージの細胞の割合を測定した。
【0258】
このプロトコルに続き、細胞周期のG0/G1、S、又はG2/Mステージで細胞の割合における有意差が観察され(
図82〜87)、かつ、MCX及びMCX+GDF8で処理した細胞は、他の4つの処理状況と比べ、EdUの取り込みにおいて40%近く低減したことが認められた(
図81)。EdU取り込みにおけるこの低減は、MCX+GDF8で処理した試料からのG0/G1細胞の38%増加、及びMCXのみで処理した細胞についてはG0/G1細胞で54%の増加に一致した。GDF8、WNT3A、WNT−3A+アクチビンA、又は未希釈培地で処理した細胞では、分化の開始から6時間後に、EdU取り込みのこれらの変化及びG0/G1への増加した遷移は観察されなかった。むしろ、
図81及び82に示すとおり、GDF8、WNT−3A、WNT−3A+アクチビンA、又は未希釈培地で処理された細胞は、分化の開始から6時間後に、EdU取り込みでの細胞の割合における最小限の減少(平均、48.1%、SD±1.2)と、G0/G1内の細胞数の平均13%の減少と(標準偏差、±5%)を実証した。
【0259】
MCX又はMCX+GDF8で処理した細胞のG0/G1値間の範囲には、他の処理条件に比べ、プロセスの後半に類似の差異が観察された。時間0から30時間後に、MCX又はMCX+GDF8で処理した細胞は、WNT−3A+アクチビンA、GDF8、WNT−3A、又は未希釈培地で処理した細胞と比べ、G0/G1内に43〜45%少ない細胞を有した。G0/G1細胞の割合間のこのギャップは、分化の開始から48時間後も維持されており、MCX又はMCX+GDF8で処理された細胞の71.9〜75.5%が細胞周期のG0/G1内にある一方、GDF8で処理した細胞の48.5%、WNT3Aで処理した細胞の55.8%、WNT−3A+アクチビンAで処理した細胞の57.7%、又は未希釈培地で処理した細胞の49%がG0/G1内にあった。EDU取り込み及びG0/G1プロファイルで観察された差異に加え、MCX又はMCX+GDF8で処理した細胞は、WNT3A+アクチビン、GDF8、WNT−3A、又は未希釈培地で処理した細胞と比べ、時間0から30及び48時間後には細胞周期のS期に15〜33%多い細胞を有した。
【0260】
胚体内胚葉形成の終了時の遺伝子発現によって測定されたとおり、データ(
図57〜80及び88a〜fに示す、CD99、CD9、CDH1、CDH2、CDX2、CER1、CXCR4、FGF17、FGF4、FOXA2、GATA4、GATA6、GSC、KIT、MIXL1、MNX1、NANOG、OTX2、POU5F1、SOX17、SOX7、及びTの遺伝子発現)は、懸濁培養下で、第1日目のTGF−βファミリーメンバー、GDF8を含む又は含まないMCXの添加が、1日目に20ng/mLのWNT−3A+100ng/mLのアクチビンAで細胞が処理されるときに得られるものに相当する胚体内胚葉を生成したことを示した。ただし、胚体内胚葉の形成のプロセスを通して観察された細胞周期における差異と一貫して、遺伝子発現における中間差異が見られた。MCX又はMCX+GDF8で処理された試料では、遺伝子T(短尾奇形)、GATA4、及びCDX2は、分化の最初の24時間内に、WNT−3A+アクチビンA又はその他の3つのテスト条件で処理された細胞よりも、実質的に高いレベルで誘導された。逆に、多能性の遺伝子(NANOG及びPOU5F1/OCT4)の発現は、最初の細胞多能性、又はテストされたその他の4つの条件と比べて、MCX又はMCX+GDF8で処理した試料内で、24時間までに劇的に減少した(
図88e)。MCX又はMCX+GDF8試料における、FGF4、FOXA2、及びSOX17などの遺伝子の発現誘導の大きさは、分化の開始から24時間後にテストされた他の4つの条件と比べてはるかに小さかったが、48時間までには、全ての試料がFGF4、FOXA2、及びSOX17を相当するレベルで発現した。(
図88c及びe)。
【0261】
(実施例16)
測定可能な懸濁分化プロセスを使用した外胚葉及び中胚葉性組織の生成
この実施例は、外胚葉又は中胚葉性組織の生成を目的とした、測定可能な製造プロセスを得るために、多能性幹細胞(PSC)の増殖及び分化の両方を行えるプロセスを実証する。
【0262】
2つの細胞株、すなわち、H1(WA01)hES細胞株のサブクローン、WB0106と、臍帯組織細胞(UTC)から生成された、誘導型多能性幹細胞株(iPSC)は、これらの研究用の種材料を提供するために懸濁増殖された。前の実施例に記載したとおり、懸濁増殖した細胞を、自動凍結保存装置内にて高密度で冷凍してから、解凍して、閉鎖された3リットルのガラスバイオリアクター(DASGIP,Julich,Germany)又は使い捨て可能な3リットルの1回使用バイオリアクター(Mobius(登録商標)、EMD Millipore Corporation,Billerica,MA)に、最終細胞濃度0.225×10
6個の細胞/mLで接種した。撹拌槽バイオリアクターに接種した細胞は、連続的に撹拌されるタンクで細胞集団を形成し、合計3日間リアクター内の多能性培地(E8(商標)、0.5%のBSAを添加)に維持された。接種から72時間後に、中胚葉/心組織(1)又は外胚葉/神経組織(2)を形成するため、それぞれの分化培地内で、細胞集団をプラスチックの使い捨て三角フラスコ(PETG 125mLフラスコ,カタログ番号4112,Thermo Scientific Rochester NY)へ移植することにより、多能性細胞分化を開始した。
【0263】
ステージ式分化プロセスを開始した後、細胞は、振とう器プラットフォーム(MAXQ 416hp,Thermo Scientific,Rochester NY)上の加湿、5%のCO
2インキュベーター内に、100rpmで10日間維持した。分化の開始から1日後、3日後、5日後、及び7日後に、フラスコ内の培地を、表19に記載したとおりに作製した新鮮な培地に交換した。参照用に分化の開始前、次いで分化の開始から3、5、7、及び10日後に、qRT−PCR試料を採取した。
【0264】
mRNA発現パターンにおける外胚葉又は中胚葉に特異的な変化が、qRT−PCRによって検出されるかどうかを決定するため、3つのApplied Biosystems Low Density Array(Life(商標),Carlsbad,CA)指定の多能性、胚体内胚葉(DE)及びステージ6(S6)を使用し、発現を標準化するため、適切な未分化の多能性幹細胞試料を対照として結果を比較した。
【0265】
これらのアレイを使用して、外胚葉(
図89)又は中胚葉(
図90)の分化培地で培養した、多能性細胞の遺伝子発現パターンを決定した。それぞれの条件において振とうフラスコ内で分化された細胞は、多能性アレイで測定されたとおり、3日目〜10日目の延長培養にわたり、NANOG、POU5F1/OCT4、TDGF1、及びZFP42のような多能性の遺伝子に関する、減少した多能性遺伝子発現を実証した。外胚葉又は中胚葉に分化したhES又はiPS細胞からの試料では、CXCR4の発現が増加した。これらの結果は、分化に特徴的な遺伝子の高い発現を示す、qRT−PCRデータと相関した。外胚葉分化培地で処理された細胞は、分化の開始から3〜10日後に、qRT−PCRによる、増加したレベルのARX、NEUROD、NKX6.1、PAX6(>100倍)、及びZIC1(>1000倍)を発現した(
図91)。これらのデータはFACSアレイによって確認され、このFACSアレイは、外胚葉運命への分化の開始から3日後に、iPSC及びhES細胞の両方が、SOX2(多能性及び神経幹細胞の両方に必要な遺伝子)の高い発現を維持したが、POU5F1/OCT4(多能性に必要な遺伝子)の発現を失い、PAX6発現(神経及び内分泌分化の遺伝子)を増したことを示した(
図92)。
【0266】
中胚葉分化培地で処理した細胞における分化の類似の運動もまた、観察された。多能性遺伝子発現は、10日間の分化にわたって下降したが(
図90)、3日目には早期の一過性中内胚葉運命(CER1、EOMES、CKIT、及びVWF)に特徴的な遺伝子の早期の誘導が観察され、10日目には、これらの遺伝子発現レベルが基準値近くまで低下した(
図93)。また、分化の開始から3、5、7、及び10日後の特徴的な中胚葉遺伝子の発現が、早期かつ増加する遺伝子発現を示したことも観察された(
図93のCDH2、CDX2、GATA6、HNF4α、MNX1、PRDM1、及びSOX17)。iPS及びhES細胞試料の両方で、遺伝子誘導の同一パターンが観察され、分化プロセスが指向されたものであり、事実上自然発生ではないことを示した。
【0267】
qRT−PCRによって観察された遺伝子発現のこれらの変化は、位相差顕微鏡によって観察され、かつ集団の凍結切片によって免疫染色された結果と相関した。中胚葉の分化懸濁培養下で10日目までに、10個の集団の中の約1つが自発的に「拍動」を開始し、細胞が心筋組織に分化されたことを示唆した(
図94、左パネル、10日目、白い棒線)。いくつかの集団の染色した断片は、筋形成を示す、線状の末端から末端のβチューブリン染色パターンを示した(
図94、右パネル)。
【0268】
外胚葉運命に分化した集団については、中胚葉に分化した集団と比べたときに(
図94)、著しく異なる形態パターンが観察された(
図95、左パネル)。外胚葉分化の間、集団は、中胚葉運命に分化した細胞よりも大きく、かつ濃密であり、外胚葉分化した細胞はより少ない合計βチューブリンを発現した。βチューブリンを発現した細胞は、神経細胞に特徴的な、より樹状突起パターンの染色(
図95、右パネル、白矢印)を示した。
【0269】
これらの結果は、qRT−PCR及びFACSデータとの組み合わせにおいて、懸濁状態で積み重なって増殖した細胞は、指向された再現可能な様式で、懸濁培養下で中胚葉又は外胚葉運命に分化し得ることを示す。
【0270】
【表34】
[この文献は図面を表示できません]
【0271】
【表35】
[この文献は図面を表示できません]
【0272】
以上、本発明を、様々な特定の材料、手順及び実施例を参照しながら本明細書に説明及び例示したが、本発明は、その目的のために選択された特定の材料及び手順の組み合わせに限定されない点は理解されるであろう。当業者には認識されるように、このような細部には多くの変更を行い得ることが示唆される。本明細書及び実施例はあくまで例示的なものとしてみなされるべきものであり、発明の真の範囲及び趣旨は以下の「特許請求の範囲」によって示されるものである。本出願において引用される参照文献、特許及び特許出願は、いずれもそれらの全容を参照により本明細書に援用するものとする。