(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2016-534871(P2016-534871A)
(43)【公表日】2016年11月10日
(54)【発明の名称】COスリップ触媒及び使用の方法
(51)【国際特許分類】
B01J 23/63 20060101AFI20161014BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20161014BHJP
【FI】
B01J23/63 AZAB
B01D53/94 245
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-537849(P2016-537849)
(86)(22)【出願日】2014年8月28日
(85)【翻訳文提出日】2016年4月8日
(86)【国際出願番号】US2014053153
(87)【国際公開番号】WO2015031611
(87)【国際公開日】20150305
(31)【優先権主張番号】61/871,080
(32)【優先日】2013年8月28日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG
(71)【出願人】
【識別番号】590004718
【氏名又は名称】ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ワイゲルト, エーリヒ コンラン
(72)【発明者】
【氏名】マラ, シャダブ シャリフ
(72)【発明者】
【氏名】バリンジャー, トッド ハワード
(72)【発明者】
【氏名】リーク, ジェフリー スコット
(72)【発明者】
【氏名】コックス, ジュリアン ピーター
(72)【発明者】
【氏名】チェン, ハイ−イン
【テーマコード(参考)】
4D148
4G169
【Fターム(参考)】
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4G169CA03
4G169CA07
4G169CA14
4G169DA05
4G169FC08
(57)【要約】
リーンバーン内燃機関からの排気ガスを処理するためのCOスリップ触媒が開示される。COスリップ触媒は、パラジウム及びセリア含有材料を含む。本発明は、排気ガス中の、リッチ排気条件下における上流の触媒の周期的接触から生じる過剰なCOを酸化するための方法も含む。この方法は、排気ガス中の過剰なCOをCOスリップ触媒と、100から700℃の範囲の温度で接触させることを含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リーンバーン内燃機関からの排気ガスを処理するための、パラジウム及びセリア含有材料を含むCOスリップ触媒。
【請求項2】
前記セリア含有材料が、セリア、セリア−ジルコニア、セリア−ジルコニア−アルミナ、及びこれらの混合物を含む、請求項1に記載のCOスリップ触媒。
【請求項3】
前記セリア含有材料がセリアを含む、請求項2に記載のCOスリップ触媒。
【請求項4】
0.5から5重量パーセントのパラジウムを含む、請求項1記載のCOスリップ触媒。
【請求項5】
一又は複数のアルカリ又はアルカリ土類金属を更に含む、請求項1に記載のCOスリップ触媒。
【請求項6】
アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、マグネシア、ニオビア、タンタル酸化物、モリブデン酸化物、タングステン酸化物、及びこれらのうちのいずれか二以上の混合酸化物からなる群より選択される、一又は複数の無機酸化物結合剤を更に含む、請求項1に記載のCOスリップ触媒。
【請求項7】
基材上にコーティングされる、請求項1に記載のCOスリップ触媒。
【請求項8】
前記基材がセラミック基材又は金属基材である、請求項7に記載のCOスリップ触媒。
【請求項9】
リーンバーン内燃機関からの排気ガスに含まれる、リッチ排気条件下において上流の触媒の周期的接触から生じる過剰なCOを酸化する方法であって、前記排気ガス中の前記過剰なCOを、100から700℃の範囲の温度で、パラジウム及びセリア含有材料を含むCOスリップ触媒と接触させることを含む方法。
【請求項10】
前記セリア含有材料が、セリア、セリア−ジルコニア、セリア−ジルコニア−アルミナ、及びこれらの混合物を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記セリア含有材料がセリアを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記COスリップ触媒が、0.5から5重量パーセントのパラジウムを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
一又は複数のアルカリ又はアルカリ土類金属を更に含む、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、マグネシア、ニオビア、タンタル酸化物、モリブデン酸化物、タングステン酸化物、及びこれらのうちのいずれか二以上の混合酸化物からなる群より選択される、一又は複数の無機酸化物結合剤を更に含む、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記COスリップ触媒が基材上にコーティングされる、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リーンバーン内燃機関からの排気ガスを処理するためのCOスリップ触媒と、排気ガス中の過剰なCOを処理するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関は、炭化水素、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物、硫黄酸化物、及びパティキュレートマター(粒子状物質)を含む種々の汚染物質を含有する排気ガスを生じる。国家及び地方の法律がますます厳しくなることにより、このような内燃機関から放出され得る汚染物質の量は低減してきている。多くの異なる技術が、大気中に放出される前に排気ガスを清浄化するための排気システムに応用されている。
【0003】
リーンバーン用途において生成される排気ガスを清浄化するために提案される一の方法は、三元触媒(TWC)とそれに続く選択式接触還元(SCR)触媒を利用する。この構想は、米国特許第8216521号に記載されるように、長時間にわたってリーンで動作させ、その間にエンジンの排気ガス流中のCO及び炭化水素を、TWCで主にCO
2及びH
2Oに酸化するというものである。周期的なリッチイベントが、TWCでアンモニア(NH
3)を生成するために使用される。NH
3は蓄えられて、リーンフェーズの間に生成されるNO
xを選択的に還元するために、下流のSCR触媒によって使用される。これらリッチイベントの持続期間は、NO
xの転化目標を達成するために十分な量のNH
3をSCRに提供するための最適化を必要とする。残念なことに、リッチイベントを延長すると、排気中に過剰なCOが生成される。リーン動作フェーズ及びリッチ動作フェーズの両方の間について、炭化水素、NO
x、及びCOの高い転化率を維持することが重要である。NH
3の生成を最適化するためにリッチパルス時間を長くすると、COは、TWCのみを使用して制御することが最も困難な種となる。
【0004】
高レベルのCO転化を維持しながらリッチイベント時間を延ばすことを可能にする、新規で改良された触媒及び方法を開発することが望ましい。本発明者らは、リッチ動作の間に生成される高濃度のCOの転化を可能にする新規COスリップ触媒を発見した。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、リーンバーン内燃機関からの排気ガスを処理するためのCOスリップ触媒に関する。本COスリップ触媒は、パラジウム及びセリア含有材料を含む。本発明は、排気ガス中の、リッチ燃焼条件下における上流の触媒の周期的接触から生じる過剰なCOを酸化するための方法も含む。本方法は、排気ガス中の過剰なCOをCOスリップ触媒と、100から700℃の範囲の温度で接触させることを含む。本発明は、リーン動作フェーズ及びリッチ動作フェーズ両方の間の、COの転化の改善につながる。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明はCOスリップ触媒である。本COスリップ触媒は、パラジウム及びセリア含有材料を含む。好ましくは、COスリップ触媒は、原則的にパラジウム及びセリア含有材料から、更に好ましくはパラジウム及びセリア含有材料からなる。セリア含有材料は、好ましくは、セリア、セリア−ジルコニア、セリア−ジルコニア−アルミナ、又はこれらの混合物である。更に好ましくは、セリア含有材料はセリアである。
【0007】
COスリップ触媒は、好ましくは0.1から30重量パーセントのパラジウム、より好ましくは0.5から5重量パーセントのパラジウム、最も好ましくは1から4重量パーセントのパラジウムを含む。COスリップ触媒は、白金及びロジウムといった他の貴金属を含んでもよいが、唯一の貴金属としてはパラジウムが好ましい。
【0008】
好ましくは、COスリップ触媒は更に、アルカリ金属及びアルカリ土類金属といった促進剤を含む。好ましいアルカリ土類金属には、バリウム、カルシウム、ストロンチウム、又はマグネシウムが含まれる。好ましいアルカリ金属には、カリウム、ナトリウム、リチウム、又はセシウムが含まれる。銅及び亜鉛といった他の促進剤を、アルカリ又はアルカリ土類金属促進剤の代わりに、又はそれらに追加して加えてもよい。
【0009】
COスリップ触媒は、好ましくは、一又は複数の無機酸化物結合剤を含む。好ましい無機酸化物結合剤には、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、マグネシア、ニオビア、タンタル酸化物、モリブデン酸化物、タングステン酸化物、それらのうちのいずれか二以上の混合酸化物又は複合酸化物(例えばシリカ−アルミナ又はマグネシア−アルミナ)、及びそれらの混合物が含まれる。
【0010】
COスリップ触媒は、好ましくは基材上にコーティングされる。基材は、好ましくはセラミック基材又は金属基材である。セラミック基材は、任意の適切な耐熱材料、例えば、アルミナ、シリカ、チタニア、セリア、ジルコニア、マグネシア、ゼオライト、窒化ケイ素、炭化ケイ素、ケイ酸ジルコニウム類、ケイ酸マグネシウム類、アルミノケイ酸塩類及びメタロアルミノケイ酸塩類(例えばコーディエライト及びスポジュメン)、又はそれらのうちのいずれか二以上の混合物又は混合酸化物から作製することができる。コーディエライト、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、及び炭化ケイ素が、特に好ましい。
【0011】
金属基材は任意の適切な金属から作製することができ、特に、チタン及びステンレス鋼、並びに鉄、ニッケル、クロム、及び/又はアルミニウムを他の微量金属とともに含むフェライト合金などの耐熱性の金属及び金属合金から作製できる。
【0012】
基材はフィルタ基材又はフロースルー基材でもよく、最も好ましくはフロースルー基材、特にハニカムモノリスである。基材は、典型的には、車両の排気を通すいくつかのチャンネルを提供するように設計される。チャンネルの表面は触媒で担持される。
【0013】
本発明のCOスリップ触媒は、従来技術において良く知られるプロセスによって調製することができる。COスリップ触媒は、好ましくは、パラジウム粒子とセリア含有材料粒子との高レベルの相互作用を確実にするように調製される。これは、パラジウム化合物(例えば窒化パラジウム)を用いたセリア含有材料への含浸と、それに続く焼成処理により達成され得る。代替的に、このような高度な相互作用は、パラジウムとセリア含有材料粒子の共沈により生成されてもよい。
【0014】
好ましくは、COスリップ触媒は、基材上にウォッシュコート法を用いて堆積させることによって作製される。ウォッシュコート法を用いるCOスリップ触媒を調製する代表的な方法が、以下に開示される。下記のプロセスが本発明の種々の実施態様に応じて変化し得ることを理解されたい。
【0015】
COスリップ触媒は、好ましくはウォッシュコート法を用いて調製される。パラジウム化合物(例えば酢酸パラジウム又は窒化パラジウム)は、好ましくは、ウオッシュコート工程に先立ち、セリア含有材料及び(使用される場合)結合剤に加えられる。パラジウム化合物は、既知の方法によりセリア含有材料に担持され、その添加方式は特に重要とは考えられない。例えば、パラジウム化合物は、担持されたパラジウム材料を生成するために、含浸、吸着、イオン交換、初期湿潤(incipient wetness)、析出などによってセリア含有材料に添加され得る。代替的には、セリア含有材料及び結合剤は、使用される場合、基材上にコーティングすることができ、それに続いてコーティングされた基材上にパラジウム化合物が添加される。
【0016】
ウォッシュコートは、好ましくは、担持されるパラジウム材料(又はセリア含有材料のみ)及び任意選択的な結合剤の細かく分割された粒子を、適切な溶媒、好ましくは水の中でまずスラリー化して、スラリーを形成することによって施される。スラリーは、好ましくは、5から70重量パーセントの固体、より好ましくは10から50重量パーセントの固体を含む。好ましくは、スラリーを形成する前に、実質的に全ての固体粒子が平均直径で20ミクロン未満の粒径を有することを確実にするために、粒子は粉砕される(milled)か又は別の粉砕(comminution)プロセスに供する。促進剤のような追加的な成分も、水溶性又は水分散性の化合物又は複合体の混合物として、スラリー内に取り込まれ得る。
【0017】
基材は次いで、触媒上所望の担持量の触媒物質が基材上に堆積されることになるように、スラリーで一又は複数回コーティングされる。セリア含有材料及び任意選択的な結合剤のみが基材上に堆積される場合、パラジウム化合物は次いで、(硝酸白金のような)白金化合物の含浸、吸着、又はイオン交換を含む任意の既知の手段によって、コーティングされた基材に添加され得る。
【0018】
好ましくは、COスリップ触媒のウォッシュコートが基材の表面全体を被覆するように、基材の全長がスラリーで被覆される。
【0019】
基材上に触媒が堆積された後で、COスリップ触媒は、典型的には乾燥させ、次いで高温で加熱することによりか焼する。好ましくは、か焼は、およそ1から8時間にわたり、300から700℃で行われる。
【0020】
COスリップ触媒は、単層触媒製剤でもよく、又は多層触媒として調製されてもよい。例えば、COスリップ触媒は、各層が異なる量のパラジウム及び/又はセリア含有材料を有する二以上の層として、基材上に適用することができる。COスリップ触媒は、別の触媒成分の下層又は上層として、又は別の触媒成分のリアゾーン、例えば選択式接触還元触媒上の下層又はリアゾーンとして添加されてもよい。
【0021】
本発明は、排気ガス中の、リッチな排気条件下における上流の触媒の周期的接触から生じる過剰なCOを酸化する方法も含む。本発明の方法は、過剰なCOをCOスリップ触媒と、100から700℃の範囲の温度で接触させることを含む。
【0022】
酸化ガスと還元ガスの両方を含有する排気ガスの組成バランスを規定する典型的な方式は、排気ガスのラムダ(λ)値である。ラムダ値は、実際のエンジン空気燃料混合比/化学量論的エンジン空気燃料混合比と定義され、ここで1のラムダ値は、化学量論的にバランスのとれた(即ちストイキオメトリーな)排気ガス組成を表す。1より大きいラムダ値(λ>1)は、O
2及びNO
xが過剰であることを表し、このような組成は「リーン」と呼ばれる。1より小さいラムダ値(λ<1)は、炭化水素及びCOが過剰であることを表し、このような組成は「リッチ」と呼ばれる。
【0023】
リーンバーン内燃機関では、排気の触媒成分を再生するため、触媒成分に吸着するNO
x種を脱着するため、及び他の下流の触媒成分に使用されるアンモニアを生成するために、周期的なリッチ排気条件(λ<1)下で動作することが有用である。例えば、長時間にわたるリーン動作の間、エンジンの排気ガス流に含まれるCO及び炭化水素は、三元触媒(TWC)成分で主にCO
2及びH
2Oに酸化される。周期的なリッチイベントを、TWCでアンモニア(NH
3)を生成するために使用することができる。NH
3は蓄えられて、リーンフェーズの間に生成されるNO
xを選択的に還元するために、下流の選択式接触還元(SCR)触媒によって使用される。これらリッチイベントの持続期間は、NO
xの転化目標を達成するために十分な量のNH
3をSCRに提供するための最適化を必要とする。リッチイベントを延長する結果として、排気中に過剰なCOが生成される。本発明のCOスリップ触媒は、リーン動作フェーズ及びリッチ動作フェーズ両方の間にCOの高い転化率を維持するために、このような過剰なCOの酸化を助ける。
【0024】
本発明の方法において、過剰なCOは、リッチな排気条件下での上流の触媒の周期的接触から生じる。好ましくは、上流の触媒は三元触媒(TWC)を含む。
【0025】
三元触媒システムは従来技術に周知である。TWCは、典型的には三つの主要な機能を果たす:(1)COからCO
2への酸化;(2)未燃焼燃料のCO
2及びH
2Oへの酸化;並びに(3)NO
xのN
2への還元。三元触媒は、好ましくは、一又は複数の白金族金属及び一又は複数の無機酸化物担体を含む。白金族金属(PGM)は、好ましくは、白金、パラジウム、ロジウム、又はこれらの混合物である。
【0026】
無機酸化物担体は、最も一般的には、第2、3、4、5、6、13及び14族の酸化物及びランタニド元素の酸化物を含む。有用な無機酸化物担体は、好ましくは、10から700m
2/gの範囲の表面積、0.1から4mL/gの範囲の細孔容積、及び約10から1000オングストロームの孔径を有する。無機酸化物担体は、好ましくは、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、セリア、ニオビア、タンタル酸化物、モリブデン酸化物、タングステン酸化物、又はそれらのうちのいずれか二以上の混合酸化物又は複合酸化物、例えばシリカ−アルミナ、セリア−ジルコニア又はアルミナ−セリア−ジルコニアである。アルミナ及びセリアは特に好ましい。担体として機能することに加えて、セリア含有担体、例えばセリア(CeO
2)又はセリア−ジルコニア混合酸化物は、TWC内部における酸素貯蔵成分(OSC)として機能することもできる。無機酸化物担体は、ゼオライト、例えばベータゼオライト、ZSMゼオライト、フェリエライト、又はチャバサイトでもよい。
【0027】
三元触媒は、好ましくは、上述のように基材上にコーティングされる。基材はフィルタ基材又はフロースルー基材でもよく、最も好ましくはフロースルー基材、特にハニカムモノリスである。基材は、典型的には、車両の排気を通すいくつかのチャンネルを提供するように設計される。チャンネルの表面は、三元触媒で担持される。
【0028】
三元触媒は、いずれかの既知の手段により基材に添加される。例えば、無機酸化物担体又はPMG含有担体材料は、ウォッシュコートとして基材に適用及び接着され、多孔性の高表面積層が基材の表面に接着される。ウォッシュコートは、典型的には、水系スラリーから基材に適用され、次いで、高温で乾燥及びか焼される。無機酸化物担体のみが基材上にウォッシュコートされる場合、PGM金属は、(含浸、イオン交換などによって)乾燥済ウォッシュコートの担体層上に担持され、次いで乾燥されて、か焼されうる。基材上に担持されるPGMの好ましい担持量は、触媒の容積1リットル当たり0.02から1.7g(1〜300g/フィート
3)である。
【0029】
上流の触媒は、好ましくは、TWCの下流にロードされる選択式接触還元(SCR)触媒を更に含む。SCR触媒は、窒素化合物(例えばアンモニア又は尿素)又は炭化水素(リーンなNO
xの還元)との反応によりNO
xをN
2に還元する触媒である。好ましくは、SCR触媒は、バナジア−チタニア触媒、バナジア−タングスタ−チタニア触媒、又は遷移金属/モレキュラーシーブ触媒からなる。遷移金属/モレキュラーシーブ触媒は、遷移金属及びモレキュラーシーブ、例えばアルミノケイ酸塩ゼオライト及びシリコアルミノリン酸塩を含む。
【0030】
好ましい遷移金属には、クロム、セリウムマンガン、鉄、コバルト、ニッケル及び銅、並びにこれらのうちのいずれか二以上の混合物が含まれる。鉄及び銅が特に好ましい。モレキュラーシーブは、好ましくは、ベータゼオライト、(NaY及びUSYを包含するX−ゼオライト又はY−ゼオライトのような)ホージャサイト、L−ゼオライト、ZSMゼオライト(例えば、ZSM−5、ZSM−48)、SSZ−ゼオライト(例えば、SSZ−13、SSZ−41、SSZ−33)、フェリエライト、モルデナイト、チャバサイト、オフレタイト、エリオナイト、クリノプチロライト、シリカライト、(SAPO−34のような金属アルミノリン酸塩を含む)リン酸アルミニウムゼオライト、メソ多孔性ゼオライト(例えば、MCM−41、MCM−49、SBA−15)、又はそれらの混合物であり、より好ましくは、モレキュラーシーブは、ベータゼオライト、フェリエライト、又はチャバサイトである。好ましいSCR触媒には、Cu−CHA、例えばCu−SAPO−34、Cu−SSZ−13、及びFe−ベータゼオライトが含まれる。
【0031】
SCR触媒は、好ましくは、セラミック又は金属基材上にコーティングされる。基材は、典型的には、車両の排気を通す複数のチャンネルを提供するように設計され、これらチャンネルの表面は、好ましくはSCR触媒でコーティングされる。
【0032】
SCR触媒の基材は、フィルタ基材又はフロースルー基材とすることができる。好ましくは、SCR触媒はフィルタ上にコーティングされる。SCR触媒とフィルタの組み合わせは、選択式接触還元フィルタとして既知である。選択式接触還元フィルタは、SCRと粒子フィルタの機能性を組み合わせた単一基材デバイスである。
【実施例】
【0033】
以下の実施例は、単に本発明を説明するものである。当業者は、本発明の精神と特許請求の範囲に含まれる多くの変形を認めるであろう。
【0034】
実施例1:Pd/セリアCOスリップ触媒の作製
触媒1は、CeO
2、Al
2O
3、及びPd(3重量%)を主要成分とするCOスリップ触媒を、コーディエライトハニカムモノリス上にコーティングすることにより調製される。
【0035】
実施例2:実験室試験手順及び結果
触媒1と、比較用の標準Pd−Rh TWCを、CO酸化活性について試験する。COスリップ触媒の反応器のコア(reactor core)を、未使用の状態及び750℃で16時間熱水熟成した状態で評価し、未使用の比較用標準TWC反応器のコアの性能と比較する。実験は、以下の手順を用いて実行される。
【0036】
ガス混合物を、触媒試験の間、リーン条件(0%のCO、10%のO
2、5%のH
2O、8%のCO
2)及びリッチ条件(1.5%のCO、0%のO
2、5%のH
2O、8%のCO
2)をシミュレートするために調製する。ガス流は、空間速度30000時間
−1に到達するように制御される。試験の間、各試料をリーンガス混合物中においてプリコンディションし、触媒の入口温度を500℃に上昇させて5分間維持する。このプリコンディショニング工程に続いて、触媒を、リーン条件下において100℃で安定させ、そこで10サイクル(リーン条件で5分、リッチ条件で30秒)の間に性能を測定する。このサイクル性能を、150、200、250、300℃でも測定する。結果を表1に示す。
【0037】
調査したほぼすべての温度において、CO転化に対する熱水熟成の影響は殆ど見られなかった。更に、この触媒は、未使用/熟成条件の両方において、標準TWCより有意に優れている。
【0038】
表1:様々な温度での1000ppmのCOスリップのための時間
【国際調査報告】