(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2016-534912(P2016-534912A)
(43)【公表日】2016年11月10日
(54)【発明の名称】一体形成熱電対を備えた射出成形装置
(51)【国際特許分類】
B29C 45/27 20060101AFI20161014BHJP
【FI】
B29C45/27
【審査請求】有
【予備審査請求】有
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-545750(P2016-545750)
(86)(22)【出願日】2014年9月12日
(85)【翻訳文提出日】2016年5月26日
(86)【国際出願番号】US2014055291
(87)【国際公開番号】WO2015047743
(87)【国際公開日】20150402
(31)【優先権主張番号】61/884,070
(32)【優先日】2013年9月29日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】595155303
【氏名又は名称】ハスキー インジェクション モールディング システムズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HUSKY INJECTION MOLDING SYSTEMS LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【弁理士】
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100107401
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 誠一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100120064
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 孝夫
(74)【代理人】
【識別番号】100154162
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 浩輔
(74)【代理人】
【識別番号】100182257
【弁理士】
【氏名又は名称】川内 英主
(74)【代理人】
【識別番号】100202119
【弁理士】
【氏名又は名称】岩附 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】イェンコ,エドワード ジョゼフ
【テーマコード(参考)】
4F202
【Fターム(参考)】
4F202AQ03
4F202CA11
4F202CK03
4F202CK04
(57)【要約】
熱電対及これに関連する熱電対接合は、自由形式の製造により、ノズルを含む射出成形装置の種々の要素に一体化することができる。従来達成が困難又は不可能であったが、熱電対を単一モノリシックに一体化することにより、熱電対接合を温度モニタリングの実施が望まれる箇所、特に、射出成形ノズルの先端付近に極めて近接して配置することができるようになる。本発明の種々の様態によると、1つ以上の一体型熱電対を備えた射出成形ノズルと、一体型熱電対を備え、自由形式の製造プロセスを用いて単一要素としてマニホルドとモノリシックに一体化された射出成形ノズル付きホットランナマニホルドと、少なくとも1つの一体型熱電対を有し、強固な電気接続を有するように個別に形成された射出成形ノズルとを開示する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出成形装置であって、
単一モノリシックとなるように1つ以上の自由形式製造プロセスを用いて製造された本体を備え、
前記本体は、
少なくとも1つのメルトチャンネルと、
前記本体と単一モノリシックに形成された熱電対接合を有する熱電対とを備える射出成形装置。
【請求項2】
前記本体は、メルトチャンネルを有するノズル本体を備え、前記熱電対接合は、前記ノズル本体内の前記メルトチャンネルに近接して配置される請求項1に記載の射出成形装置。
【請求項3】
前記熱電対接合は、前記ノズル本体内に単一モノリシックに形成された誘電体内に収容される請求項2に記載の射出成形装置。
【請求項4】
前記熱電対はさらに、前記熱電対接合から延び、前記ノズル本体と単一モノリシックに形成された一対の導電体を備える請求項3に記載の射出成形装置。
【請求項5】
前記一対の導電体は、前記誘電体内に収容される請求項4に記載の射出成形装置。
【請求項6】
前記一対の導電体はともに、前記誘電体内に収容される請求項5に記載の射出成形装置。
【請求項7】
前記一対の導電体は、前記誘電体内に個別に収容されていて前記ノズル本体の一部によって部分的に分離されている、請求項5に記載の射出成形装置。
【請求項8】
前記ノズル本体と単一モノリシックに形成された一対の外部電気接点をさらに備え、前記一対の外部電気接点は、前記一対の導電体に各々対応するよう電気的に接続される請求項4に記載の射出成形装置。
【請求項9】
前記ノズルはさらに、注出口を有するノズル先端を備え、前記熱電対接合は、前記注出口に近接して前記ノズル先端内に配置される請求項2に記載の射出成形装置。
【請求項10】
前記本体は、ホットランナマニホルドと、前記ホットランナマニホルドと単一モノリシックに形成された射出成形ノズルとを備える請求項1に記載の射出成形装置。
【請求項11】
前記熱電対接合は、前記ノズル内に単一モノリシックに形成された誘電体内に収容される請求項10に記載の射出成形装置。
【請求項12】
前記熱電対はさらに、前記熱電対接合から延び、前記ノズル及び前記ホットランナマニホルドの各々と単一モノリシックに形成される一対の導電体を備える請求項11に記載の射出成形装置。
【請求項13】
前記一対の導電体は、前記誘電体内に収容される請求項12に記載の射出成形装置。
【請求項14】
前記一対の導電体はともに、前記誘電体内に収容される請求項13に記載の射出成形装置。
【請求項15】
前記一対の導電体は、前記ノズル本体の一部によって部分的に分離されるよう、前記誘電体内に個別に収容される請求項13に記載の射出成形装置。
【請求項16】
前記ホットランナマニホルドと単一モノリシックに形成された一対の外部電気接点をさらに備え、前記一対の外部電気接点は、前記一対の導電体に各々対応するよう電気的に接続される請求項12に記載の射出成形装置。
【請求項17】
前記ノズルはさらに、注出口を有するノズル先端を備え、前記熱電対接合は、前記注出口に近接して前記ノズル先端内に配置される請求項11に記載の射出成形装置。
【請求項18】
単一モノリシックに形成される射出成形装置の製造方法であって、
少なくとも1つのメルトチャンネルを有する射出成形装置を自由形式で製造するステップと、
前記射出成形装置と一体形成される熱電対接合を自由形式で製造するステップとを備える方法。
【請求項19】
前記熱電対接合を自由形式で製造するステップはさらに、メルトチャンネルを有するノズルを自由形式で製造するステップと、前記メルトチャンネルに近接して前記熱電対接合を自由形式で製造するステップとを備える請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記射出成形装置を製造するステップは、
少なくとも1つのメルトチャンネルの第1部分を含むように、ホットランナマニホルドを自由形式で製造するステップと、
前記少なくとも1つのメルトチャンネルの第2部分を含むように、前記ホットランナマニホルドと単一モノリシックにノズルを自由形式で製造するステップとを備え、
前記方法はさらに、前記ホットランナマニホルド及び前記ノズル内に一対の導電体を自由形式で製造するステップを備える請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して射出成形分野に係る。また、本発明は、特に、一体形成された熱電対を備えた射出成形装置に係る。
【背景技術】
【0002】
成形品を製造する射出成形システムは、多くの場合、射出成形機械と、金型プレートと、ホットランナアセンブリとを備えている。ホットランナアセンブリは、射出成形機械から加熱マニホルド内のメルトチャンネル網を介して射出成形ノズルに、1つ以上のプラスチック材料、1つ以上の溶解材料、すなわち1つ以上の溶融物を分配させる加熱マニホルドを含んでいる。各溶融物が、射出成形ノズルを介して1つ以上の型穴(キャビティ)に間欠的に送られる。ノズルは、バルブゲート型又はホットチップ型のいずれかであってもよく、従来、マニホルドとは別個に形成され、好適な手段によってマニホルドに固定される。各メルトチャンネル内の溶融物は、通常、マニホルドの外側に配置された電気ヒーターを用いて加熱される。
そして、ノズルの先端部のチャンネルを含むメルトチャンネル内の溶融物を適正な温度に保つことが重要である。
【発明の概要】
【0003】
本発明の種々の様態の範囲は、独立項によって与えられる範囲に限定されることが理解され、また本発明の範囲は、(i)従属項、(ii)非限定的実施形態の詳細な説明、(iii)概要、(iv)要約、及び/又は(v)本文書以外(つまり、出願、申請、及び/又は特許付与された本願以外)で与えられる説明に限定されないことも理解される。
【0004】
一の実施態様において、本開示は射出成形装置を対象とする。当該装置は、単一モノリシックに作成するよう1つ以上の自由形式の製造プロセスを用いて製造された本体を備える。当該本体は、少なくとも1つのメルトチャンネルと、該本体と単一モノリシックに形成された熱電対接合を有する熱電対とを備える。
【0005】
他の実施形態において、本開示は、単一モノリシックに形成された射出成形装置の製造方法を対象とする。当該方法は、少なくとも1つのメルトチャンネルを備える射出成形装置を自由形式で製造するステップと、射出成形装置と一体化して形成された熱電対接合を自由形式で製造するステップとを備える。
【0006】
当業者にとって、以下に述べる本発明の特定の非限定的実施形態の説明を添付の図面とともに検討することにより、本発明の種々の様態に係る非限定的実施形態のこれらの様態及び特徴、並びに他の様態及び特徴が明らかとなるであろう。
【0007】
図面は、本発明を説明する目的で、本発明の1つ以上の実施形態の様態を示している。しかしながら、本発明は図面に示す精密な配置及び手段に限定されるものでないことが理解されなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一体型熱電対を有する自由形式で製造された(freeform-fabricated)ホットチップノズルの立面外観図である。
【
図2】
図1に示す自由形式で製造されたノズルの2−2線に沿った縦断面図である。
【
図3】
図1に示す自由形式で製造されたノズルの3−3線に沿った横断面図である。
【
図4】
図1に示す自由形式で製造されたノズルの先端に配置され、
図2の円形領域4内に示す熱電対の二種の金属接合の拡大断面図である。
【
図5】全ノズルが一体型熱電対を有する、自由形式で製造されたマニホルド/ノズルの組み合わせを示す3次元斜視図である。
【
図6A】2つのノズルのうちの1つが搭載される自由形式で製造されたモジュラーノズルとともに使用される、自由形式で製造されたマニホルドの3次元斜視図である。
【
図6B】
図6Aのマニホルドとともに使用される、自由形式で製造されたノズルの上面図である。
【
図6C】
図6Aのマニホルドとモジュラーノズルとの間の接合部分の縦断面図である。
【
図7】一体型熱電対を有するバルブゲートノズルの縦断面図である。 図面は、寸法どおりに示されるものではなく、極細線、図式表現、及び部分図で示されることがある。ある例示においては、実施形態の理解に不要な詳細や、他の詳細の把握を困難にするような詳細説明については省略されている。
【0009】
[詳細な説明]
いくつかの様態においては、本発明は、一体形成熱電対を含む射出成形装置と同装置の製造方法とにかかる。本発明に係る一例としての実施形態において、これらの装置は、1つ以上の自由形式の製造プロセス(freeform fabrication processes)を全体的又は部分的に用いて製造することができる。本発明の様態に係る射出成形装置の製造プロセスを用いることにより、熱電対とその関連の熱電対接合を、ノズル及びホットランナマニホルドを含む装置の種々の部分に一体化することができる。これにより、従来は達成が困難又は不可能であった、射出成形装置全体、特に射出成形ノズルの先端付近での正確な温度モニタリング及び制御が可能となる。これは、本明細書に開示の一体形成技術を用いることにより、熱電対接合をモニタリング対象のメルトチャンネルに非常に近い位置に配置することができるためである。さらに、従来、熟練の技術者により個別に製造された要素から射出成形装置を製造する際に必要であった費用のかかる、且つ時間の掛かる追加組み立てステップを部分的又は全体的に回避することができる。さらに熱電対とこれに関連する配線を射出成形装置の要素に一体化することにより、射出成形装置の要素の外部配置を最少化し、他の物との接触による損傷の可能性を取り除いたり、少なくとも低減することができる。
【0010】
また本発明の様態により、個別に機械の要素を製造することによって生じる既知の累積誤差を部分的又は完全に排除することにより、装置の個別の構成をより正確且つ精密に製造することが可能となる。本開示の一体形成熱電対を含む射出成形装置の他の利点として、製造コストの削減、材料の削減、重量の低減、動作条件に対する構成の最適化が可能である等が挙げられるが、これに限定されるものでない。当業者は、本開示全体を熟読した後、射出成形装置の設計者や製造者にとって上記した利点及び他の利点を得ることがどのようにしてできるかを容易に理解するであろう。
【0011】
本発明に係る一体形成熱電対を備えた射出成形装置を、少なくとも部分的に、「固体自由形式製造プロセス(solid freeform fabrication processes)」と呼ばれている1つ以上の付加的製造プロセスによって製造することができる。固体自由形式製造(SFF)は、対象物を製造するためにエネルギー及び/又は材料を空間における特定の箇所に順次送出することにより固体物を製造する技術の集積のうちのいずれかをいう。SFFは、「高速試作」、「高速製造」、「積層製造」、や「付加的製造」とも称されることがある。尚、SFFは自由形式製造(FFF)と称されることがある。本発明の射出成形装置を製造する際に好適に用いられるいくつかの以下のSFF技術であるが、他にもある。(A)電子ビーム溶解(electron beam melting)(粉末物からの完全溶融ボイドフリー固体金属部材)、(B)電子ビーム自由形式製造(electron beam freeform fabrication)(ワイヤ供給原料からの完全溶解ボイドフリー固体金属部材)、(C)レーザー操作によるネットシェイプ(laser-engineered net shaping)(レーザーを用いて金属粉末を溶解し、部材に直接堆積させる。これによれば、部材は完全に固体であり、部材の容積の全体にわたって金属合金組成を動的に変更することができる利点がある。)、(D)ポリジェットマトリクス(POLYJET MATRIX)(多種類の材料の同時噴射を可能にした最初の技術。)、(E)選択的レーザー焼結(selective laser sintering)(選択的レーザー焼結ではレーザを用いて粉末金属、ナイロン、又はエラストマーを溶融する。高密度金属部材の製造には追加的処理が必要である。)、及び(F)シェイプデポジション製造(shape deposition manufacturing)(印刷ヘッドを用いて部品及び支持材を堆積させ、ほぼ最終形状に機械加工する。)
【0012】
他の例における一体形成熱電対を備えた射出成形装置の製造方法では、鋳造等の非固体自由形式製造を用いる。鋳造は、通常、所望の形状のキャビティを有する金型に液体材料を注ぎ入れ、固体化させる製造プロセスである。固体化された部品はまた鋳造物としても知られ、金型から取り出されるか、抜き出されてプロセスを完了する。鋳造材料は、通常、2つ以上の成分をともに混合した後、硬化する金属又は種々の低温硬化材料であり、例としてエポキシ、コンクリート、プラスター、及びクレイが挙げられる。鋳造は、他の方法では製造が困難又は不経済となってしまうような複雑な形状を製造するために用いられることが最も多い。選択的レーザー焼結(SLS)は、支持構造が必要ないため好適とされることが多い。SLSで構築された部材は、常に、非焼結粉末で包囲されるが、これにより複雑な幾何構造の構築が可能となる。
【0013】
さて図面を参照すると、各要素の参照符号の第1桁は、当該要素を最初に示す図面番号に対応しており、
図1〜
図4は本発明により製造された射出成形ノズル、特にホットチップノズル100を示している。本例において、ノズル100は、本体104と、本体に一体化された熱電対200(
図2)を備える。以下、詳細に説明するとおり、ノズル100及びその各構成要素は、上述の1つ以上のSFF鋳造技術のような、1つ以上の好適な製造技術を用いて単一モノリシック本体として形成することができる。本例において、ノズル100の他の部材及び特徴として、メルトチャンネル204(
図2)と、使用中、メルトチャンネル内の溶融物(図示せず)に熱を与えるヒーター108と、例えば、完成したホットランナアセンブリ内のホットランナマニホルド(図示せず)にノズルを係合させるためのマニホルド接合部分112と、熱電対200を好適な温度測定回路120に接続する電気接点116(1)及び116(2)と、先端124と、メルトチャンネル内の溶融物を型穴(図示せず)に連通させるために先端に配置された少なくとも1つのオリフィス128とを備える。これらの構成の各々は、概して当該技術において既知である。しかしながら、本実施形態においては、電気接点116(1)及び116(2)は、1つ以上のモノリシック製造技術を用いて、ノズル100の他の部材と一体形成される。
【0014】
図2〜
図4に示すとおり、熱電対200は、2つの異種の導体、具体的には、熱電対導体200(1)及び200(2)から成り、熱電対接合200(3)(
図2及び
図4)を形成し、本例ではノズル先端124(
図2)に近接して配置されることによって先端124及びメルトチャンネル204の実際の温度にできるだけ近い温度を読み取ることができるようにしている。しかしながら当業者は、熱電対が他の好適な方法で実装されてもよいこと、及び特定の成形動作の要件に応じて熱電対接合がノズル100内の任意の箇所又はホットランナマニホルド等、射出成形装置の他の箇所に配置されてもよいことを容易に理解するであろう。ノズル100の本体104が金属で作成される本例において、
図2に示すとおり、熱電対導体200(1)及び200(2)は、誘電体208内に収容されることにより、互いに電気的に絶縁され、またノズル本体を形成する金属からも絶縁されるようにしている。図示の誘電体208の特定な構成は単なる一例である。他の実施形態において、導体200(1)及び200(2)の電気的絶縁は他の方法で達成することができ、例えば特に、別個の誘電「スリーブ」にこれらを収容することによって達成することができる。
【0015】
種々の自由形式による製造技術で、熱電対200等の1つ以上の一体型熱電対を有するモノリシック構造を作成するため、ノズル100等、射出成形装置に1つ以上の材料をモノリシックに一体化することができる。例えば粉末溶融技術において、適切なタイミングで、用いられる設備の種別に応じて、材料の所望の各領域に部分的に又は製造土台全体に亘って、溶融に先立って堆積される粉末の種別を変更することができる。具体的には、このような技術を用いて
図1〜
図4のノズル100を製造する一例において、必要な領域において第1金属種別の粉末を堆積及び溶融することによって本体104が形成され、必要な領域に誘電体の粉末を堆積及び溶融することによって誘電体208が形成され、必要な領域に第2金属種別の粉末を堆積及び溶融することによって熱電対導体200(1)及びこれに対応する電気接点116(1)が形成され、必要な領域に第3金属種別の粉末を堆積及び溶融することによって熱電対導体200(2)及び対応の電気接点116(2)が形成され、必要な領域に好適な電気抵抗材料を堆積及び溶融することによってヒーター108が形成される。他の例として、溶融配線技術によると、特定の材料が必要とされる各領域において、用いられる配線の種別を変更することができる。当業者は、本開示全体を熟読した後、本開示に係る一体形成熱電対を備えた射出成形装置を製造するのに適切な材料及び適切な製造プロセスをどのように選択すべきか理解するであろう。
【0016】
図1に示すとおり、1つ以上の接続ケーブル132を用いて、電気接点116(1)及び116(2)を介して熱電対200を温度測定回路120に電気的に接続することができる。接続ケーブル132は、電気接点116(1)及び116(2)の構成に応じて、所望により既成の標準構成要素から形成することができる。当業者が容易に理解するとおり、熱電対接合204は、一方側(例えば、導体200(1))に鉄、他方側(例えば、導体200(2))にコンスタンタンの「J」型接合、一方側にクロメル、他方側にアルメルの「K」型接合、一方側にクロメル、他方側にコンスタンタンの「E」型接合等、任意の好適な接合とすることができる。当業者は、これらの接合種別が単なる例示であること、接合の誘電材料は、必要な接合特性と、ノズル100のうちの互いにモノリシックな構成要素を形成するのに用いられるプロセスとに相応しい任意の材料であってもよいことを容易に理解するであろう。
【0017】
図5は、本発明の他の様態に係る射出成形装置を示しており、特に、一体型熱電対504(1)〜504(4)を備え、自由形式で製造された単一モノリシックなマニホルド/ノズル装置500を示している。本例において、単一モノリシック装置500は、ホットマニホルド部508と、特に上述のSFF技術のうちのいずれか1つ以上の好適なモノリシック形成技術を用いてマニホルド部とモノリシックに形成された4つのノズル512(1)〜512(4)とを備える。ノズル512(1)〜512(4)は各々、マニホルド部508内にモノリシックに形成された導電体構造520(1)〜520(4)を介してマニホルドの外側のコネクタ領域516内に配置され電気接点の各対516(1)〜516(4)に配線された一体形成熱電対504(1)〜504(4)のうちの対応する1つを有する。当業者が容易に理解するであろうとおり、熱電対504(1)〜504(4)を適切な温度測定回路(図示せず)に電気的に接続するように各対516(1)〜516(4)を係合するのに、1つ以上の適切に構成されたコネクタ(図示せず)を用いることができる。
【0018】
図5に示す実施形態において、熱電対504(1)〜504(4)は各々、メルトチャンネル内の溶融物の測定をノズル512(1)〜512(4)の対応する各ノズル先端524(1)〜524(4)に近接させるため、
図2〜
図4の熱電対200と同一の目的で設けられる。この関連で、各熱電対504(1)〜504(4)は、実施可能な限り、対応するメルトチャンネルの近く、且つ対応するノズル先端524(1)〜524(4)付近に配置された熱電対接合528(1)〜528(4)を備える。
図2〜
図4の熱電対接合204との関連で上述したとおり、各熱電対接合528(1)〜528(4)は、特に、J型熱電接合、K型熱電接合、及びE型熱電接合との関連で上述したクロメル、コンスタンタン、鉄、及びアルメル材料等、いずれか2つの好適な導電材料で形成することができる。また
図1のノズル100との関連で上述した一例としての製造プロセスと同様に、単一モノリシック装置500は、同一又は同様の技術を用いて製造することができる。この関連において、
図5には詳細に示されていないが、導電体構造520(1)〜520(4)は、適当な粉末及び/又は配線材料と適当な溶融及び/又は溶解技術による粉末溶解技術及び/溶解配線技術等の技術を用いて、マニホルド部508の残りの部分とモノリシックに形成することができる。また、各導電体構造520(1)〜520(4)は、とりわけ、各誘電スリーブに収容された個別導体として
図2〜
図4に示す共通誘電「チャンネル」構造に収容されたデュアル導体等、いずれかの好適な方法で構成されてもよい。これらの構成は双方とも、1つ以上の導電材料で作成されるマニホルドとの使用に好適である。当業者は、導電体構造520(1)〜520(4)をマニホルド部508及びノズル512(1)〜512(4)に一体化することのできる種々の方法を容易に理解するであろう。
【0019】
図1〜
図4は、ホットランナマニホルドとは一体形成されないもののモノリシックに一体化された内部熱電対200を備えた従来のホットチップノズル100を描いたものであり、熱電対接合204がノズルの先端124に接近して精密に配置されている。上述のとおり、ノズル100はさらに、ノズルに対して外部に配置された熱電対200のための一対の電気接点116(1)及び116(2)を備える。電気接点116(2)及び116(2)のこのような配置はいくつかの適用例によく適合しているが、これらがノズル100から突出しているために損傷を受けやすくなってしまうため、他の適用例には適合しない場合もある。
【0020】
一方、
図6A〜
図6Cは、特に、突出する接続によって発生し得る損傷から熱電対接続を保護するよう構成された射出成形装置600を描いている。
図6Aに示すとおり、射出成形装置は、ホットランナマニホルド604と、個別形成された一対の射出ノズルとを備えるが、
図6Aには、マニホルドに対して使用位置に配置された1つのみのノズル608(1)、ここではホットチップノズルが示されており、2つのノズル係合領域のうちの1つ、ここではノズルのうちの対応する1つを受容するマニホルド上のノズル係合領域612(2)を見せるために
図6Aでは第2ノズル608(2)(
図6Bに示す)が省略されている。ノズル係合領域612(1)は
図6Aには示されないものの、
図6Cにおいて対応するノズル608(1)とともに描かれている。以下、より詳細に説明するとおり、各ノズル係合領域612は特に、各ノズル608(1)及び608(2)と熱電対616(1)及び616(2)(図示せず)のための対応するノズル係合領域612(1)及び612(2)との間の電気的接続が隠され、電気的接続の構成要素が損傷から保護されるように構成されている。
【0021】
図6Cを参照すると、ノズル608(1)の熱電対616(1)は、環状の電気接点620(1)及び620(2)(
図6Bも参照のこと。ノズル608(2)上に類似の一対の環状電気接点620A(1)及び620A(2)を示している)と、
図2〜
図4の熱電対接合200(3)と同一又類似する、電気接点を熱電対接合628(
図6A)に電気接続する対応の一対の導体624(1)及び624(2)とを備える。
図6Cに示すとおり、導電体624(1)及び624(2)は、互いから電気的に絶縁し、またノズル608(1)の金属本体636から電気的に絶縁するために、誘電体632に収容されている。電気接点620(1)及び620(2)は、マニホルド604と一体に形成された一対の環状電気接点644(1)及び644(2)に各々対応して接触するように、上面640(
図6Cに対して「上方」)を越えて延在している。本例において、環状接点644(1)及び644(2)は、これら接点を互いから電気的に絶縁し、マニホルド604の金属本体652(
図6C)から電気的に絶縁するために、マニホルド604と一体形成された誘電体648に埋め込まれている。一対の導体656(1)及び656(2)(
図6C及び
図6A)は、対応する接点644(1)及び644(2)の各々を、熱電対616(2)を適当な温度測定回路(図示せず)に電気的に接続するために設けられたコネクタ660(1)及び660(2)に電気的に接続している。同様の一対の導体656A(1)及び656A(2)(
図6A)は、対応する接点644A(1)及び644A(2)の各々を、熱電対616(2)(図示せず)を適当な温度測定回路(図示せず)に電気的に接続するために設けられたコネクタ660A(1)及び660A(2)に電気的に接続している。図示の実施形態において、各導体656(1)及び656(2)は、マニホルド604の金属本体652の介在部によって互いから離間するように、誘電体648内に個別に収容される。しかしながら、代替的な実施形態において、導体656(1)及び656(2)は、共通の誘電体にともに収容されてもよい。
【0022】
図示の実施形態において、電気接点620(1)及び620(2)とノズル608(1)のための電気接点644(1)及び644(2)(並びに電気接点620A(1)及び620A(2)とノズル608(2)のための電気接点644A(1)及び644A(2))との間の接触が、マニホルド‐型板及び裏板等、ホットランナアセンブリの他の要素によって誘発される圧縮力に起因するような態様で、マニホルド604とノズル608(1)及び608(2)は特にホットランナアセンブリ(図示せず)に取り付けられる。また
図6Cに示すとおり、この圧縮による構成を用いて各ノズル608(1)及び608(2)とマニホルド604との間の流体封止を確保する。
図6Cを参照すると、図示の実施形態において、ノズル608(1)は、ノズル608(1)に形成されたメルトチャンネル668の注入口668Aを包囲する環状ボス664を備える。ボス664は、マニホルド604に形成されたメルトチャンネル676の出口676Aを包囲する表面672を封止して係合するよう設計及び構成される。当業者が容易に理解するであろうとおり、この種の圧縮配置構成及び封止により、使用中に発生し得る熱による動きを許容するように、ボス664と表面672との間の摺動を可能にする。他の実施形態において、各ノズル608(1)及び608(2)は、ねじ留め、ねじ部品、溶接、及び/又はその他の好適な手段によってマニホルド604に確実に固定することができる。
【0023】
当業者は、単一モノリシックノズル608(1)及び608(2)とマニホルド604とが各々、
図1〜4のノズル100に関連して具体的に上述した粉末ベースプロセス及び配線ベースプロセスを含む上述の付加的製造プロセスのうちのいずれか好適な1つ以上を用いて、ノズル100の構成要素をノズル608(1)及び608(2)とマニホルド604と類似の構成要素で適切に代替させることにより、製造することができることを理解するであろう。
【0024】
図1〜
図6Cはホットチップノズルを対象とするものであったが、
図7は一体型内部熱電対708を有するバルブゲートノズル704を備えた射出成形装置700を示している。当業者が容易に理解するであろうとおり、熱電対708は、とりわけ、
図1〜
図4のノズル100との関連で上述した溶融粉末技術及び溶解配線技術を含むがこれに限定されない付加的製造技術のうちのいずれか1つ以上を用いてノズル704内にモノリシックに一体化することができる。単一の熱電対708のみをノズル704の先端716付近に配置した熱電対接合712とともに示したが、他の実施形態においては、同様のノズル(並びにホットチップノズル)が1つ超の熱電対を有してもよく、各熱電対が温度の読み取りが所望される所望の位置に配置されてもよいことも留意される。
【0025】
図示の実施形態において、熱電対708は
図2〜
図4の熱電対200と略同一の方法で配置及び実装されるが、主な違いは、
図7に示すノズル704がバルブゲートノズルであり、
図1〜
図4に示すノズル100がホットチップノズルであるという点である。換言すると、熱電対708は、誘電体724内に収容されている一対の誘電体720(1)及び720(2)を備え、一対の誘電体720(1)及び720(2)は、熱電対を好適な温度測定回路(図示せず)に接続する誘電体732(1)及び732(2)に電気的に接続する一対の電気接点728に対して熱電対接合712を電気的に接続する。当業者には既知であるが、完全を期すために、図に示す射出成形装置700の他の構成要素として、ノズル704のノズル本体744内のメルトチャンネル740内に配置されたバルブ軸736と、バルブ軸を駆動する空気圧式、油圧式、又は電気式のアクチュエータ等のバルブアクチュエータ748と、ノズルに1つ以上の溶融物(図示せず)を供給するホットランナマニホルド752とを備える。
【0026】
以上、例示としての実施形態を添付の図面において開示及び図示した。当業者は、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、本明細書に具体的に開示した実施形態に種々の変更、省略、及び追加を行うことができることを理解するであろう。
【手続補正書】
【提出日】2015年3月27日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出成形装置であって、
単一モノリシックとなるように1つ以上の自由形式製造プロセスを用いて製造された本体を備え、
前記本体は、
少なくとも1つのメルトチャンネルと、
前記本体内に単一モノリシックに形成された熱電対接合を有する熱電対とを備える射出成形装置。
【請求項2】
前記本体は、メルトチャンネルを有するノズル本体を備え、前記熱電対接合は、前記ノズル本体内の前記メルトチャンネルに近接して配置される請求項1に記載の射出成形装置。
【請求項3】
前記熱電対接合は、前記ノズル本体内に単一モノリシックに形成された誘電体内に収容される請求項2に記載の射出成形装置。
【請求項4】
前記熱電対はさらに、前記熱電対接合から延び、前記ノズル本体と単一モノリシックに形成された一対の導電体を備える請求項3に記載の射出成形装置。
【請求項5】
前記一対の導電体は、前記誘電体内に収容される請求項4に記載の射出成形装置。
【請求項6】
前記一対の導電体はともに、前記誘電体内に収容される請求項5に記載の射出成形装置。
【請求項7】
前記一対の導電体は、前記誘電体内に個別に収容されていて前記ノズル本体の一部によって部分的に分離されている、請求項5に記載の射出成形装置。
【請求項8】
前記ノズル本体と単一モノリシックに形成された一対の外部電気接点をさらに備え、前記一対の外部電気接点は、前記一対の導電体に各々対応するよう電気的に接続される請求項4に記載の射出成形装置。
【請求項9】
前記ノズルはさらに、注出口を有するノズル先端を備え、前記熱電対接合は、前記注出口に近接して前記ノズル先端内に配置される請求項2に記載の射出成形装置。
【請求項10】
前記本体は、ホットランナマニホルドと、前記ホットランナマニホルドと単一モノリシックに形成された射出成形ノズルとを備える請求項1に記載の射出成形装置。
【請求項11】
前記熱電対接合は、前記ノズル内に単一モノリシックに形成された誘電体内に収容される請求項10に記載の射出成形装置。
【請求項12】
前記熱電対はさらに、前記熱電対接合から延び、前記ノズル及び前記ホットランナマニホルドの各々と単一モノリシックに形成される一対の導電体を備える請求項11に記載の射出成形装置。
【請求項13】
前記一対の導電体は、前記誘電体内に収容される請求項12に記載の射出成形装置。
【請求項14】
前記一対の導電体はともに、前記誘電体内に収容される請求項13に記載の射出成形装置。
【請求項15】
前記一対の導電体は、前記ノズル本体の一部によって部分的に分離されるよう、前記誘電体内に個別に収容される請求項13に記載の射出成形装置。
【請求項16】
前記ホットランナマニホルドと単一モノリシックに形成された一対の外部電気接点をさらに備え、前記一対の外部電気接点は、前記一対の導電体に各々対応するよう電気的に接続される請求項12に記載の射出成形装置。
【請求項17】
前記ノズルはさらに、注出口を有するノズル先端を備え、前記熱電対接合は、前記注出口に近接して前記ノズル先端内に配置される請求項11に記載の射出成形装置。
【請求項18】
単一モノリシックに形成される射出成形装置の製造方法であって、
少なくとも1つのメルトチャンネルを有する射出成形装置を自由形式で製造するステップと、
前記射出成形装置内に一体形成される熱電対接合を自由形式で製造するステップとを備える方法。
【請求項19】
前記熱電対接合を自由形式で製造するステップはさらに、メルトチャンネルを有するノズルを自由形式で製造するステップと、前記メルトチャンネルに近接して前記熱電対接合を自由形式で製造するステップとを備える請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記射出成形装置を製造するステップは、
少なくとも1つのメルトチャンネルの第1部分を含むように、ホットランナマニホルドを自由形式で製造するステップと、
前記少なくとも1つのメルトチャンネルの第2部分を含むように、前記ホットランナマニホルドと単一モノリシックにノズルを自由形式で製造するステップとを備え、
前記方法はさらに、前記ホットランナマニホルド及び前記ノズル内に一対の導電体を自由形式で製造するステップを備える請求項18に記載の方法。
【国際調査報告】