特表2016-536398(P2016-536398A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2016-536398金属リガンド含有プレポリマー、その合成方法、及びその組成物
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  • 特表2016536398-金属リガンド含有プレポリマー、その合成方法、及びその組成物 図000006
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2016-536398(P2016-536398A)
(43)【公表日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】金属リガンド含有プレポリマー、その合成方法、及びその組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 75/045 20160101AFI20161028BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20161028BHJP
【FI】
   C08G75/045
   C09K3/10 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】73
(21)【出願番号】特願2016-527379(P2016-527379)
(86)(22)【出願日】2014年10月29日
(85)【翻訳文提出日】2016年6月23日
(86)【国際出願番号】US2014062833
(87)【国際公開番号】WO2015066135
(87)【国際公開日】20150507
(31)【優先権主張番号】14/065,554
(32)【優先日】2013年10月29日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】502328466
【氏名又は名称】ピーアールシー−デソト インターナショナル,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラオ、シャンドラ ビー.
(72)【発明者】
【氏名】デン、ジュン
(72)【発明者】
【氏名】リン、レンヘ
【テーマコード(参考)】
4H017
4J030
【Fターム(参考)】
4H017AA04
4H017AB17
4H017AC01
4H017AC14
4H017AC17
4H017AE05
4J030BA03
4J030BB07
4J030BC34
4J030BD07
4J030BF14
4J030BG03
(57)【要約】
金属リガンド含有プレポリマー、金属リガンド含有プレポリマーを含有する組成物、金属リガンド含有プレポリマーを合成する方法、及び、航空宇宙用シーラント用途における金属リガンド含有プレポリマーの使用が開示される。当該金属リガンド含有プレポリマーは、そのプレポリマーの主鎖中に組み込まれた金属リガンドを有する。当該金属リガンド含有プレポリマーを含む硬化済みシーラント組成物は、航空宇宙用シーラント用途に好適な特性が増大されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレポリマーの主鎖中に組み込まれた金属リガンドを含む、金属リガンド含有プレポリマー。
【請求項2】
硫黄含有プレポリマーを含む、請求項1に記載のプレポリマー。
【請求項3】
硫黄含有プレポリマーがポリチオエーテルを含む、請求項2に記載のプレポリマー。
【請求項4】
金属リガンドが、二座又は三座である、請求項1に記載のプレポリマー。
【請求項5】
金属リガンドが、Al(III)に対する配位能を有する、請求項1に記載のプレポリマー。
【請求項6】
金属リガンドが、ビス(スルホニル)アルカノール、ヒドロキシピリジノン、及び/又はアセチルアセトナートを含む金属キレート化剤に由来するものである、請求項1に記載のプレポリマー。
【請求項7】
金属リガンドが、アルミニウム(III)の複数の表面に対する配位能を有する少なくとも2種のヘテロ原子基を含む、請求項1に記載のプレポリマー。
【請求項8】
少なくとも2種のヘテロ原子基が、−OH、−PO、−P(O)−、−SO、−S(O)−、−COOH、−C=O、−NH、−NH−、及び/又は、これらのいずれかの組み合わせを含む、請求項7に記載のプレポリマー。
【請求項9】
金属リガンドが、以下の式(25a)、式(25b)、式(25c)、式(25d)、式(25e)、及び/又はこれらのいずれかの組合せを含む、請求項1に記載のプレポリマー:
−X−(CH−CH(−OH)− (25a)
−X−(CH−CH(−OH)−(CH−X− (25b)
−CH(−OH)−(CH−X−(CH−CH(−OH)− (25c)
−CH(−OH)−R−CH(−OH)− (25d)
−C(O)−R−C(O)− (25e)
(式中、各Xは、独立に、−C(O)−又は−S(O)−であり、nは、1、2又は3であり、Rは、C1−3アルカン−ジイルである。)。
【請求項10】
各Xが−C(O)−であり、各nが1である、請求項9に記載のプレポリマー。
【請求項11】
各Xが−S(O)−であり、各nが1である、請求項9に記載のプレポリマー。
【請求項12】
以下の式(26)の部分を含む、請求項1に記載のプレポリマー:
−A−R9’−L−R9’−A− (26)
(式中、各R9’は、独立に、金属キレート化剤R−L−RのRとチオール基との反応に由来する部分であり、ここで、各Rは、チオールと反応性の末端基を含み、Lは、金属リガンドを含み、
各Aは、独立に、以下の式(12)の部分である:
−S−R−[−S−(CH−O−(R−O)−(CH−S−R−]−S− (12):
(式中、各Rは、独立に、C2−10アルカンジイル、C6−8シクロアルカンジイル、C6−10アルカンシクロアルカンジイル、C5−8ヘテロシクロアルカンジイル、又は−[(−CHR−)−X−]−(−CHR−)−):
(式中、sは、2〜6の整数であり、
qは、1〜5の整数であり、
rは、2〜10の整数であり、
各Rは、独立に、水素又はメチルを含み、
各Xが、独立に、−O−、−S−及びNR−(ここでRは水素及びメチルから選択される。)を含む。)を含み、
各Rは、独立に、C1−10アルカンジイル、C6−8シクロアルカンジイル、C6−14アルカンシクロアルカンジイル、又は−[(−CHR−)−X−]−(−CHR−)−)(式中、s、q、r、R及びXはRについて上で定義したとおりである。)を含み、
mは、0〜50の整数であり、
nは、1〜60の整数であり、
pは、2〜6の整数である。))。
【請求項13】
金属キレート化剤が、ビス(スルホニル)アルカノール、ヒドロキシピリジノン、アセチルアセトナート、及び/又はこれらのいずれかの組み合わせを含む、請求項12に記載のプレポリマー。
【請求項14】
式(28a)の金属リガンド含有ポリチオエーテル、式(28b)の金属リガンド含有ポリチオエーテル、又はこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載のプレポリマー:
−A−[−R9’−L−R9’−A−]−R (28a)
{R−A−[−R9’−L−R9’−A−]−V’−}B (28b)
(式中、Nは、1〜10の整数であり、
各R9’は、独立に、金属キレート化剤R−L−RのRとチオール基との反応に由来する部分であり、ここで、各Rは、チオールと反応性の末端基を含み、Lは、金属リガンドを含み、
各Aは、独立に、以下の式(12)の部分であり、
−S−R−[−S−(CH−O−(R−O)−(CH−S−R−]−S− (12):
(式中、各Rは、独立に、C2−10アルカンジイル、C6−8シクロアルカンジイル、C6−10アルカンシクロアルカンジイル、C5−8ヘテロシクロアルカンジイル、又は−[(−CHR−)−X−]−(−CHR−)−):
(式中、sは、2〜6の整数であり、
qは、1〜5の整数であり、
rは、2〜10の整数であり、
各Rは、独立に、水素又はメチルを含み、
各Xが、独立に、−O−、−S−及びNR−(ここでRは水素又はメチルを含む。)である。)を含み、
各Rは、独立に、C1−10アルカンジイル、C6−8シクロアルカンジイル、C6−14アルカンシクロアルカンジイル、又は−[(−CHR−)−X−]−(−CHR−)−)(式中、s、q、r、R及びXはRについて上で定義したとおりである。)を含み、
mは、0〜50の整数であり、
nは、1〜60の整数であり、
pは、2〜6の整数である。);
Bは、z価の多官能化剤B(−V)のコアを表し:
(式中、zは、3〜6の整数であり、
各Vは、末端チオール基に対して反応性の末端基を含む基である。)
各−V’−は、−Vとチオールとの反応に由来するものであり、
各Rは、独立に、水素、及び/又は、末端反応性基を有する部分を含む。)。
【請求項15】
各Rが水素である、請求項14に記載のプレポリマー。
【請求項16】
各Rが同じであり、かつ、末端反応性基が、−SH、−CH=CH、−NH、−OH、エポキシ基、ポリアルコキシシリル基、イソシアナート基、及びマイケルアクセプター基から選ばれる基を含む、請求項14に記載のプレポリマー。
【請求項17】
(a)以下の式(18a)のチオール末端ポリチオエーテル、以下の式(18b)のチオール末端ポリチオエーテル、又はこれらの組み合わせを含む、チオール末端ポリチオエーテル:
HS−R−[−S−(CH−O−(R−O)−(CH−S−R−]−SH
(18a)
{HS−R−[−S−(CH−O−(R−O)−(CH−S−R−]−S−V’−}B (18b)
(式中、各Rは、独立に、C2−10アルカンジイル、C6−8シクロアルカンジイル、C6−10アルカンシクロアルカンジイル、C5−8ヘテロシクロアルカンジイル、又は−[(−CHR−)−X−]−(−CHR−)−):
(式中、sは、2〜6の整数であり、
qは、1〜5の整数であり、
rは、2〜10の整数であり、
各Rは、独立に、水素又はメチルを含み、
各Xが、独立に、−O−、−S−又はNR−(ここでRは水素及びメチルから選択される。)である。)を含み、
各Rは、独立に、C1−10アルカンジイル、C6−8シクロアルカンジイル、C6−14アルカンシクロアルカンジイル、又は−[(−CHR−)−X−]−(−CHR−)−)(式中、s、q、r、R及びXはRについて上で定義したとおりである。)を含み、
mは、0〜50の整数であり、
nは、1〜60の整数であり、
pは、2〜6の整数である。);
Bは、z価の多官能化剤B(−V)のコアを表し:
(式中、zは、3〜6の整数であり、
各Vは、末端チオール基に対して反応性の末端基を含む基である。)
各−V’−は、−Vとチオールとの反応に由来するものである。)、並びに、
(b)金属キレート化剤R−L−R(式中、各Rが、独立に、チオールと反応性である末端基を含み、−L−が金属リガンドを含む。)
を含む反応物質の反応生成物を含む、チオール末端金属リガンド含有ポリチオエーテル。
【請求項18】
金属リガンドが、以下の式(25a)、式(25b)、式(25c)、式(25d)、式(25e)、及びこれらのいずれかの組合せから選択される部分を含む、請求項15に記載のポリチオエーテル:
−X−(CH−CH(−OH)− (25a)
−X−(CH−CH(−OH)−(CH−X− (25b)
−CH(−OH)−(CH−X−(CH−CH(−OH)− (25c)
−CH(−OH)−R−CH(−OH)− (25d)
−C(O)−R−C(O)− (25e)
(式中、各Xは、独立に、−C(O)−又は−S(O)−であり、各nは、1、2又は3であり、Rは、C1−3アルカン−ジイルである。)。
【請求項19】
金属キレート化剤が、ビス(スルホニル)アルカノール、ヒドロキシピリジノン、アセチルアセトナート、又はこれらのいずれかの組み合わせを含む、請求項17に記載のポリチオエーテル。
【請求項20】
式(18a)のポリチオエーテルが、ジチオール及びジビニルエーテルの反応生成物を含む、請求項17に記載のポリチオエーテル。
【請求項21】
式(18a)のポリチオエーテルが、1,8−ジメルカプト−3,6−ジオキサオクタン及びジエチレングリコールジビニルエーテルの反応生成物を含む、請求項17に記載のポリチオエーテル。
【請求項22】
式(18b)のポリチオエーテルが、ジチオール、ジビニルエーテル及び多官能化剤の反応生成物を含む、請求項17に記載のポリチオエーテル。
【請求項23】
式(18b)のポリチオエーテルが、1,8−ジメルカプト−3,6−ジオキサオクタン、ジエチレングリコールジビニルエーテル及びトリアリルシアヌラートの反応生成物を含む、請求項17に記載のポリチオエーテル。
【請求項24】
(a)式(29a)のチオール末端金属リガンド含有ポリチオエーテル、式(29b)のチオール末端金属リガンド含有ポリチオエーテル、又はこれらの組み合わせを含む、チオール末端金属リガンド含有ポリチオエーテル:
H−A−[−R9’−L−R9’−A−]−H (29a)
{H−A−[−R9’−L−R9’−A−]−V’−}B (29b)
(式中、Nは、1〜10の整数であり、
各R9’は、独立に、金属キレート化剤R−L−RのRとチオール基との反応に由来する部分であり、ここで、各Rは、チオールと反応性の末端基を含み、Lは、金属リガンドを含み、
各Aは、独立に、以下の式(12)の部分であり、
−S−R−[−S−(CH−O−(R−O)−(CH−S−R−]−S− (12):
(式中、各Rは、独立に、C2−10アルカンジイル、C6−8シクロアルカンジイル、C6−10アルカンシクロアルカンジイル、C5−8ヘテロシクロアルカンジイル、又は−[(−CHR−)−X−]−(−CHR−)−):
(式中、sは、2〜6の整数であり、
qは、1〜5の整数であり、
rは、2〜10の整数であり、
各Rは、独立に、水素又はメチルを含み、
各Xが、独立に、−O−、−S−又はNR−(ここでRは水素又はメチルである。)である。)を含み、
各Rは、独立に、C1−10アルカンジイル、C6−8シクロアルカンジイル、C6−14アルカンシクロアルカンジイル、又は−[(−CHR−)−X−]−(−CHR−)−)(式中、s、q、r、R及びXはRについて上で定義したとおりである。)を含み、
mは、0〜50の整数であり、
nは、1〜60の整数であり、
pは、2〜6の整数である。);
Bは、z価のアルケニル末端多官能化剤B(−V)のコアを表し:
(式中、zは、3〜6の整数であり、
各Vは、末端アルケニル基を含む基である。)
各−V’−は、−Vとチオールとの反応に由来するものである。)並びに、
(b)ポリアルケニル化合物
を含む反応物質の反応生成物を含む、チオール末端金属リガンド含有ポリチオエーテルプレポリマー。
【請求項25】
金属リガンドが、以下の式(25a)、式(25b)、式(25c)、式(25d)、式(25e)、及びこれらのいずれかの組合せから選択される部分を含む、請求項24に記載のポリチオエーテルプレポリマー:
−X−(CH−CH(−OH)− (25a)
−X−(CH−CH(−OH)−(CH−X− (25b)
−CH(−OH)−(CH−X−(CH−CH(−OH)− (25c)
−CH(−OH)−R−CH(−OH)− (25d)
−C(O)−R−C(O)− (25e)
(式中、各Xは、独立に、−C(O)−又は−S(O)−であり、各nは、1、2又は3であり、Rは、C1−3アルカン−ジイルである。)。
【請求項26】
ポリアルケニル化合物が、ジビニルエーテル、ポリアルケニル化合物、又はこれらの組み合わせを含む、請求項24に記載のポリチオエーテルプレポリマー。
【請求項27】
(N+1)モルの以下の式(18a)のチオール末端ポリチオエーテルと、(N)モルの金属キレート化剤R−L−Rとを反応させることを含む、以下の式(29a)のチオール末端金属リガンド含有ポリチオエーテルを調製する方法:
H−A−[−R9’−L−R9’−A−]−H (29a)
HS−R−[−S−(CH−O−(R−O)−(CH−S−R−]−SH
(18a)
(式中、Nは、1〜10の整数であり、
各R9’は、独立に、金属キレート化剤R−L−RのRとチオール基との反応に由来する部分であり、ここで、各Rは、チオールと反応性の末端基を含み、Lは、金属リガンドを含み、
各Aは、独立に、以下の式(12)の部分であり、
−S−R−[−S−(CH−O−(R−O)−(CH−S−R−]−S− (12):
(式中、各Rは、独立に、C2−10アルカンジイル、C6−8シクロアルカンジイル、C6−10アルカンシクロアルカンジイル、C5−8ヘテロシクロアルカンジイル、又は−[(−CHR−)−X−]−(−CHR−)−):
(式中、sは、2〜6の整数であり、
qは、1〜5の整数であり、
rは、2〜10の整数であり、
各Rは、独立に、水素又はメチルを含み、
各Xが、独立に、−O−、−S−又はNR−(ここでRは水素又はメチルを含む。)である。)を含み、
各Rは、独立に、C1−10アルカンジイル、C6−8シクロアルカンジイル、C6−14アルカンシクロアルカンジイル、又は−[(−CHR−)−X−]−(−CHR−)−)(式中、s、q、r、R及びXはRについて上で定義したとおりである。)を含み、
mは、0〜50の整数であり、
nは、1〜60の整数であり、
pは、2〜6の整数である。)。
【請求項28】
金属リガンドが、以下の式(25a)、式(25b)、式(25c)、式(25d)、式(25e)、及び/又はこれらのいずれかの組合せを含む、請求項27に記載の方法:
−X−(CH−CH(−OH)− (25a)
−X−(CH−CH(−OH)−(CH−X− (25b)
−CH(−OH)−(CH−X−(CH−CH(−OH)− (25c)
−CH(−OH)−R−CH(−OH)− (25d)
−C(O)−R−C(O)− (25e)
(式中、各Xは、独立に、−C(O)−又は−S(O)−であり、各nは、1、2又は3であり、Rは、C1−3アルカン−ジイルである。)。
【請求項29】
金属キレート化剤が、
ビス(スルホニル)アルカノール、ヒドロキシピリジノン、アセチルアセトナート、及び/又はこれらのいずれかの組み合わせを含む、金属リガンド、並びに、
チオール基に対して反応性である少なくとも2種の末端基を含む、
請求項27に記載の方法。
【請求項30】
(z)モルの以下の式(29a)のチオール末端金属リガンド含有ポリチオエーテルと、1モルの多官能化剤B{V}とを反応させることを含む、式(29b)のチオール末端金属リガンド含有ポリチオエーテルを調製する方法:
{H−A−[−R9’−L−R9’−A−]−V’−}B (29b)
H−A−[−R9’−L−R9’−A−]−H (29a)
(式中、Nは、1〜10の整数であり、
各R9’は、独立に、金属キレート化剤R−L−RのRとチオール基との反応に由来する部分であり、ここで、各Rは、チオールと反応性の末端基を含み、Lは、金属リガンドを含み、
各Aは、独立に、以下の式(12)の部分であり、
−S−R−[−S−(CH−O−(R−O)−(CH−S−R−]−S− (12):
(式中、各Rは、独立に、C2−10アルカンジイル、C6−8シクロアルカンジイル、C6−10アルカンシクロアルカンジイル、C5−8ヘテロシクロアルカンジイル、又は−[(−CHR−)−X−]−(−CHR−)−):
(式中、sは、2〜6の整数であり、
qは、1〜5の整数であり、
rは、2〜10の整数であり、
各Rは、独立に、水素又はメチルを含み、
各Xが、独立に、−O−、−S−及びNR−(ここでRは水素又はメチルを含む。)を含む。)を含み、
各Rは、独立に、C1−10アルカンジイル、C6−8シクロアルカンジイル、C6−14アルカンシクロアルカンジイル、又は−[(−CHR−)−X−]−(−CHR−)−)(式中、s、q、r、R及びXはRについて上で定義したとおりである。)を含み、
mは、0〜50の整数であり、
nは、1〜60の整数であり、
pは、2〜6の整数である。);
Bは、z価の多官能化剤B(−V)のコアを表し:
(式中、zは、3〜6の整数であり、
各Vは、末端チオール基に対して反応性の末端基を含む基である。)
各−V’−は、−Vとチオールとの反応に由来するものである。)。
【請求項31】
金属リガンドが、以下の式(25a)、式(25b)、式(25c)、式(25d)、式(25e)、及び/又はこれらのいずれかの組合せを含む、請求項30に記載の方法:
−X−(CH−CH(−OH)− (25a)
−X−(CH−CH(−OH)−(CH−X− (25b)
−CH(−OH)−(CH−X−(CH−CH(−OH)− (25c)
−CH(−OH)−R−CH(−OH)− (25d)
−C(O)−R−C(O)− (25e)
(式中、各Xは、独立に、−C(O)−又は−S(O)−であり、各nは、1、2又は3であり、Rは、C1−3アルカン−ジイルである。)。
【請求項32】
金属キレート化剤が、
ビス(スルホニル)アルカノール、ヒドロキシピリジノン、アセチルアセトナート、及びこれらのいずれかの組み合わせから選択される、金属リガンド、並びに、
チオール基に対して反応性である少なくとも2種の末端基を含む、
請求項30に記載のポリチオエーテル。
【請求項33】
請求項1に記載の金属リガンド含有プレポリマーを含む組成物。
【請求項34】
シーラント組成物としての配合物である、請求項33記載の組成物。
【請求項35】
硫黄含有プレポリマーを含み、
この硫黄含有プレポリマーが、ポリチオエーテルプレポリマー、ポリスルフィドプレポリマー、硫黄含有ポリホルマールプレポリマー、及び/又は、これらのいずれかの組み合わせを含む、請求項33に記載の組成物。
【請求項36】
硬化剤を含む、請求項33に記載の組成物。
【請求項37】
請求項33に記載の組成物を含む、硬化済みシーラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2013年6月21日に出願された米国特許出願第13/923,903号の一部継続出願、2013年6月21日に出願された米国特許出願第13/923,941号の一部継続出願、及び2013年3月13日に出願された米国特許出願第13/833,827号の一部継続出願であり、それぞれその全てを参照により組み込む。
【0002】
技術分野
本開示は、金属リガンド含有プレポリマー、金属リガンド含有プレポリマーを含有する組成物、金属リガンド含有プレポリマーの合成方法、及び金属リガンド含有プレポリマーの航空宇宙用シーラント用途における使用に関する。金属リガンド含有プレポリマーは、例えば、ポリチオエーテルプレポリマー又はポリスルフィドプレポリマーといったプレポリマー主鎖に組み込まれる、ビス(スルホニル)アルカノール、アセチルアセトナート、又はヒドロキシピリジノン基等の金属リガンドを含む。
【背景技術】
【0003】
航空宇宙及びその他の用途に有用なシーラントは、厳しい、機械的、化学的、及び環境要件を満たす必要がある。例えば、航空宇宙用シーラントは、約−67°Fから約360°Fといった温度範囲にわたって機能し、耐燃料油性を示すことが望ましい。米国特許出願第13/923,903号及び米国特許出願第13/923,941号に開示されているように、主鎖に組み込まれた、及び/又は末端基として存在するビス(スルホニル)アルカノール基を有するポリチオエーテルプレポリマーを用いて形成されるシーラントは、金属表面に対し増強された接着性を示し、また、航空宇宙用シーラントのその他の性能要件を満たす。
【0004】
航空宇宙機は、多くの場合、アルミニウム及びチタン合金製の軽量表面を含む。本発明者らによる以前の研究は、ビス(スルホニル)アルカノール部分がプレポリマー主鎖に組み込まれたプレポリマーを用いることにより、これらの表面に対する接着性が向上した組成物を実現できることを明らかにした。他の金属リガンドを含むよう、この研究を発展させ、航空宇宙用及びその他の表面に対する表面接着性を増強する更なる好機を提供する。
【0005】
金属表面に対する接着性が向上し、航空宇宙及びその他の用途へ使用するための、その他の性能要件を満たす硫黄含有プレポリマーが望まれる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
第一の態様において、プレポリマー主鎖に組み込まれた金属リガンドを含む、金属リガンド含有プレポリマーが提供される。
【0007】
第二の態様において、チオール末端金属リガンド含有ポリチオエーテルであって、
(a)式(18a)のチオール末端ポリチオエーテル、式(18b)のチオール末端ポリチオエーテル、又はそれらの組み合わせ
HS−R−[−S−(CH−O−(R−O)−(CH−S−R−]−SH (18a)
{HS−R−[−S−(CH−O−(R−O)−(CH−S−R−]−S−V’−}B (18b)
(式中、
各Rは独立にC2〜10アルカンジイル、C6〜8シクロアルカンジイル、C6〜10アルカンシクロアルカンジイル、C5〜8ヘテロシクロアルカンジイル、又は−[(−CHR−)−X−]−(−CHR−)−を含み、ここで
sは2から6の整数であり、
qは1から5の整数であり、
rは2から10の整数であり、
各Rは独立に水素又はメチルを含み、
各Xは独立に−O−、−S−、又は−NR−を含み、ここでRは水素及びメチルから選択され、
各Rは独立にC1〜10アルカンジイル、C6〜8シクロアルカンジイル、C6〜14アルカンシクロアルカンジイル、又は−[(−CHR−)−X−]−(−CHR−)−を含み、ここでs、q、r、R、及びXはRで定義される通りであり、
mは0から50の整数であり、
nは1から60の整数であり、
pは2から6の整数であり、
Bは、z価の多官能化剤B(−V)のコアを表し、ここで
zは3から6の整数であり、
各Vは、末端チオール基と反応する末端基を含む基であり、
各−V’−は、−Vとチオールの反応に由来する基である)
を含む、チオール末端ポリチオエーテルと、
(b)金属キレート剤R−L−R(式中、各Rは独立にチオールと反応する末端基を含み、−L−は金属リガンドを含む)と
を含む反応物の反応生成物を含む、チオール末端金属リガンド含有ポリチオエーテルが提供される。
【0008】
第三の態様において、チオール末端金属リガンド含有ポリチオエーテルプレポリマーであって、
(a)式(29a)のチオール末端金属リガンド含有ポリチオエーテル、式(29b)のチオール末端金属リガンド含有ポリチオエーテル、又はそれらの組み合わせ
H−A−[−R9’−L−R9’−A−]−H (29a)
{H−A−[−R9’−L−R9’−A−]−V’−}B (29b)
(式中、
Nは1から10の整数であり、
各R9’は、独立に、金属キレート剤R−L−RのRとチオール基の反応に由来する部分であり、ここで各Rは、チオールと反応する末端基を含み、Lは金属リガンドを含み、
各Aは独立に式(12)
−S−R−[−S−(CH−O−(R−O)−(CH−S−R−]−S− (12)
の部分であり、ここで、
各Rは、独立に、C2〜10アルカンジイル、C6〜8シクロアルカンジイル、C6〜10アルカンシクロアルカンジイル、C5〜8ヘテロシクロアルカンジイル、又は−[(−CHR−)−X−]−(−CHR−)−を含み、ここで
sは2から6の整数であり、
qは1から5の整数であり、
rは2から10の整数であり、
各Rは独立に水素又はメチルを含み、
各Xは独立に−O−、−S−、又は−NR−を含み、ここでRは水素及びメチルから選択され、
各Rは独立にC1〜10アルカンジイル、C6〜8シクロアルカンジイル、C6〜14アルカンシクロアルカンジイル、又は−[(−CHR−)−X−]−(−CHR−)−を含み、ここでs、q、r、R、及びXはRで定義される通りであり、
mは0から50の整数であり、
nは1から60の整数であり、
pは2から6の整数であり、
Bは、z価のアルケニル末端多官能化剤B(−V)のコアを表し、ここで
zは3から6の整数であり、
各Vは、末端アルケニル基を含む基であり、
各−V’−は、−Vとチオールの反応に由来する基である)
を含む、チオール末端金属リガンド含有ポリチオエーテルと、
(b)ポリアルケニル化合物と
を含む反応物の反応生成物を含む、チオール末端金属リガンド含有ポリチオエーテルプレポリマーが提供される。
【0009】
第四の態様において、式(29a)のチオール末端金属リガンド含有ポリチオエーテルの調製方法であって、式(18a)のチオール末端ポリチオエーテル(N+1)モルを、金属キレート剤R−L−R(N)モルと反応させる工程を含む、方法が提供される:
H−A−[−R9’−L−R9’−A−]−H (29a)
HS−R−[−S−(CH−O−(R−O)−(CH−S−R−]−SH (18a)
(式中、
Nは1から10の整数であり、
各R9’は、独立に、金属キレート剤R−L−RのRとチオール基の反応に由来する部分であり、ここで各Rは、チオールと反応する末端基を含み、Lは金属リガンドを含み、
各Aは独立に式(12)
−S−R−[−S−(CH−O−(R−O)−(CH−S−R−]−S− (12)
の部分であり、ここで、
各Rは、独立に、C2〜10アルカンジイル、C6〜8シクロアルカンジイル、C6〜10アルカンシクロアルカンジイル、C5〜8ヘテロシクロアルカンジイル、又は−[(−CHR−)−X−]−(−CHR−)−を含み、ここで
sは2から6の整数であり、
qは1から5の整数であり、
rは2から10の整数であり、
各Rは独立に水素又はメチルを含み、
各Xは独立に−O−、−S−、又は−NR−を含み、ここでRは水素又はメチルを含み、
各Rは独立にC1〜10アルカンジイル、C6〜8シクロアルカンジイル、C6〜14アルカンシクロアルカンジイル、又は−[(−CHR−)−X−]−(−CHR−)−を含み、ここでs、q、r、R、及びXはRで定義される通りであり、
mは0から50の整数であり、
nは1から60の整数であり、
pは2から6の整数である)。
【0010】
第五の態様において、式(29b)のチオール末端金属リガンド含有ポリチオエーテルの調製方法であって、式(29a)のチオール末端金属リガンド含有ポリチオエーテル(z)モルを、1モルの多官能化剤B{V}と反応させる工程を含む方法が提供される:
{H−A−[−R9’−L−R9’−A−]−V’−}B (29b)
H−A−[−R9’−L−R9’−A−]−H (29a)
(式中、
Nは1から10の整数であり、
各R9’は、独立に、金属キレート剤R−L−RのRとチオール基の反応に由来する部分であり、ここで各Rは、チオールと反応する末端基を含み、Lは金属リガンドを含み、
各Aは独立に式(12)
−S−R−[−S−(CH−O−(R−O)−(CH−S−R−]−S− (12)
の部分であり、ここで、
各Rは、独立に、C2〜10アルカンジイル、C6〜8シクロアルカンジイル、C6〜10アルカンシクロアルカンジイル、C5〜8ヘテロシクロアルカンジイル、又は−[(−CHR−)−X−]−(−CHR−)−を含み、ここで
sは2から6の整数であり、
qは1から5の整数であり、
rは2から10の整数であり、
各Rは独立に水素又はメチルを含み、
各Xは独立に−O−、−S−、又は−NR−を含み、
ここでRは水素又はメチルを含み、
各Rは独立にC1〜10アルカンジイル、C6〜8シクロアルカンジイル、C6〜14アルカンシクロアルカンジイル、又は−[(−CHR−)−X−]−(−CHR−)−を含み、ここでs、q、r、R、及びXはRで定義される通りであり、
mは0から50の整数であり、
nは1から60の整数であり、
pは2から6の整数であり、
Bは、z価の多官能化剤B(−V)のコアを表し、ここで
zは3から6の整数であり、
各Vは、末端チオール基と反応する末端基を含む基であり、
各−V’−は、−Vとチオールの反応に由来する基である)。
【0011】
第六の態様において、金属リガンド含有プレポリマーを含む組成物が提供される。
【0012】
第七の態様において、金属リガンド含有プレポリマーを含む組成物を含む、硬化シーラントが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例4に記載の、リガンドとアルミニウム(III)表面との相互作用エネルギーの計算値を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、組成物及び方法の、幾つかの実施形態について説明する。開示される実施形態は、特許請求の範囲を限定することを意図するものではない。一方、特許請求の範囲は、全ての代替形態、変更形態、及び均等形態を対象とすることを意図するものである。
【0015】
詳細な説明
定義
続く発明の詳細な説明の目的のため、本開示が提供する実施形態は、これと異なる明確な指定がある場合を除き、様々な代替的変形形態及び工程順序を仮定し得ると理解されるべきである。さらに、実施例又は別段の記載がある箇所以外では、本明細書及び特許請求の範囲で使用される、例えば成分量を表す、全ての数字は、すべての場合において「約」という語で修飾されていると理解されるべきである。従って、これと異なる記載がない限り、以下の明細書及び添付の特許請求の範囲に記載の数値パラメータは、得るべき所望の特性に依存して変動する概値である。少なくとも、特許請求の範囲に対する均等論の適用を限定しようとするものとしてではなく、各数値パラメータは、少なくとも報告される有効数字の数を考慮し、通常の四捨五入の手法を適用して解釈されるべきである。
【0016】
発明の範囲を広く記載する数値範囲及びパラメータは概値であるにもかかわらず、特定の例に記載される数値は、可能な限り正確に報告される。しかし、いかなる数値も、必然的に、それらの各試験測定において見られる標準偏差に起因する、ある特定の誤差を内在的に含有する。
【0017】
また、本明細書中に記載されるいかなる数値範囲も、それに包含される全ての下位の範囲を含むよう意図されることを理解すべきである。例えば、「1から10」という範囲は、記載される最小値である約1と記載される最大値である約10との間の(並びに、最小値約1及び最大値約10を含む)全ての下位の範囲を含むよう意図され、即ち約1と等しいか又は約1より大きい最小値、及び約10と等しいか又は約10より小さい最大値を有する。また、ある特定の例において「及び/又は」という表現を明確に使用してもよいが、この出願において、別段の明確な記載がない限り、「又は」の使用は「及び/又は」を意味する。
【0018】
二つの文字間又は記号間以外に用いられるダッシュ記号(「−」)は、置換基又は二つの原子間の共有結合点を示す。例えば、化学基−CONHは、炭素原子を通して他の化学部分と共有結合する。
【0019】
「アセチルアセトナート基」は、式(1)
【化1】

の構造を有する基を意味する。
ある特定の実施形態において、アセチルアセトナートは、アセチルアセトナートのリガンド及び一つ又は複数の反応性官能基を含む、金属キレート剤を意味する。ある特定の実施形態において、一つ又は複数の反応性官能基は、チオール基と反応することができる、エポキシ基、アルケニル基、マイケル(Michael)アクセプター基、又は、例えば−Cl、−Br、−I、−OSOCH(メシラート)、−OSO−C−CH(トシラート)等の、求核置換によく適する脱離基を有する飽和炭素を含む基といった基である。
【0020】
「アルカンアレーン」は、一つ又は複数のアリール及び/又はアレーンジイル基、並びに一つ又は複数のアルキル及び/又はアルカンジイル基を有する、炭化水素基を意味し、ここでアリール、アレーンジイル、アルキル、及びアルカンジイルは、本明細書中で定義される。ある特定の実施形態において、アリール及び/又はアレーンジイル基(単数又は複数)の各々はC6〜12、C6〜10であり、ある特定の実施形態において、フェニル又はベンゼンジイルである。ある特定の実施形態において、各アルキル及び/又はアルカンジイル基(単数又は複数)はC1〜6、C1〜4、C1〜3であり、ある特定の実施形態において、メチル、メタンジイル、エチル、又はエタン−1,2−ジイルである。ある特定の実施形態において、アルカンアレーン基は、C4〜18アルカンアレーン、C4〜16アルカンアレーン、C4〜12アルカンアレーン、C4〜8アルカンアレーン、C6〜12アルカンアレーン、C6〜10アルカンアレーンであり、ある特定の実施形態において、C6〜9アルカンアレーンである。アルカンアレーン基の例として、ジフェニルメタンが挙げられる。
【0021】
「アルカンアレーンジイル」は、アルカンアレーン基のジラジカルを意味する。ある特定の実施形態において、アルカンアレーンジイル基は、C4〜18アルカンアレーンジイル、C4〜16アルカンアレーンジイル、C4〜12アルカンアレーンジイル、C4〜8アルカンアレーンジイル、C6〜12アルカンアレーンジイル、C6〜10アルカンアレーンジイルであり、ある特定の実施形態において、C6〜9アルカンアレーンジイルである。アルカンアレーンジイル基の例として、ジフェニルメタン−4,4’−ジイルが挙げられる。
【0022】
「アルカンジイル」は、飽和した、分岐又は直鎖の、例えば1から18個の炭素原子(C1〜18)、1から14個の炭素原子(C1〜14)、1から6個の炭素原子(C1〜6)、1から4個の炭素原子(C1〜4)、又は1から3個の炭素原子(C1〜3)、を有する、非環式炭化水素基のジラジカルを意味する。分岐アルカンジイルは最低で3個の炭素原子を有することが理解されるであろう。ある特定の実施形態において、アルカンジイルは、C2〜14アルカンジイル、C2〜10アルカンジイル、C2〜8アルカンジイル、C2〜6アルカンジイル、C2〜4アルカンジイルであり、ある特定の実施形態において、C2〜3アルカンジイルである。アルカンジイル基の例として、メタン−ジイル(−CH−)、エタン−1,2−ジイル(−CHCH−)、プロパン−1,3−ジイル及びiso−プロパン−1,2−ジイル(例えば−CHCHCH−及び−CH(CH)CH−)、ブタン−1,4−ジイル(−CHCHCHCH−)、ペンタン−1,5−ジイル(−CHCHCHCHCH−)、ヘキサン−1,6−ジイル(−CHCHCHCHCHCH−)、ヘプタン−1,7−ジイル、オクタン−1,8−ジイル、ノナン−1,9−ジイル、デカン−1,10−ジイル、並びにドデカン−1,12−ジイル等が挙げられる。
【0023】
「アルカンシクロアルカン」は、一つ又は複数のシクロアルキル及び/又はシクロアルカンジイル基、並びに一つ又は複数のアルキル及び/又はアルカンジイル基を有する、飽和炭化水素基を意味し、ここでシクロアルキル、シクロアルカンジイル、アルキル、及びアルカンジイルは、本明細書中で定義される。ある特定の実施形態において、各シクロアルキル及び/又はシクロアルカンジイル基(単数又は複数)は、C3〜6、C5〜6であり、ある特定の実施形態において、シクロヘキシル又はシクロヘキサンジイルである。ある特定の実施形態において、各アルキル及び/又はアルカンジイル基(単数又は複数)は、C1〜6、C1〜4、C1〜3であり、ある特定の実施形態において、メチル、メタンジイル、エチル、又はエタン−1,2−ジイルである。ある特定の実施形態において、アルカンシクロアルカン基は、C4〜18アルカンシクロアルカン、C4〜16アルカンシクロアルカン、C4〜12アルカンシクロアルカン、C4〜8アルカンシクロアルカン、C6〜12アルカンシクロアルカン、C6〜10アルカンシクロアルカンであり、ある特定の実施形態において、C6〜9アルカンシクロアルカンである。アルカンシクロアルカン基の例として、1,1,3,3−テトラメチルシクロヘキサン及びシクロヘキシルメタンが挙げられる。
【0024】
「アルカンシクロアルカンジイル」は、アルカンシクロアルカン基のジラジカルを意味する。ある特定の実施形態において、アルカンシクロアルカンジイル基は、C4−18アルカンシクロアルカンジイル、C4−16アルカンシクロアルカンジイル、C4−12アルカンシクロアルカンジイル、C4−8アルカンシクロアルカンジイル、C6−12アルカンシクロアルカンジイル、C6−10アルカンシクロアルカンジイルであり、ある特定の実施形態において、C6−9アルカンシクロアルカンジイルである。アルカンシクロアルカンジイル基の例として、1,1,3,3−テトラメチルシクロヘキサン−1,5−ジイル及びシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイルが挙げられる。
【0025】
「アルケニル」基は−CR=CR構造を有する基を意味し、ここでアルケニル基は末端基であり、より大きな分子に結合する。そのような実施形態において、各Rは、例えば水素及びC1〜3アルキルから選択され得る。ある特定の実施形態において、各Rは水素であり、アルケニル基は−CH=CH構造を有する。
【0026】
「アルコキシ」は−OR基を意味し、ここでRは本明細書中で定義されるアルキルである。アルコキシ基の例として、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、及びn−ブトキシが挙げられる。ある特定の実施形態において、アルコキシ基はC1〜8アルコキシ、C1〜6アルコキシ、C1〜4アルコキシであり、ある特定の実施形態において、C1〜3アルコキシである。
【0027】
「アルキル」は、飽和した、分岐又は直鎖の、例えば1から20個の炭素原子、1から10個の炭素原子、1から6個の炭素原子、1から4個の炭素原子、又は1から3個の炭素原子を有する非環式炭化水素基のモノラジカルを意味する。分岐アルキルは最低で3個の炭素原子を有することが理解されるであろう。ある特定の実施形態において、アルキル基は、C1〜6アルキル、C1〜4アルキルであり、ある特定の実施形態において、C1〜3アルキルである。アルキル基の例として、メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、iso−ブチル、tert−ブチル、n−ヘキシル、n−デシル、及びテトラデシル等が挙げられる。ある特定の実施形態において、アルキル基は、C1〜6アルキル、C1〜4アルキルであり、ある特定の実施形態において、C1〜3アルキルである。分岐アルキルは少なくとも3個の炭素原子を有することが理解されるであろう。
【0028】
「ビス(スルホニル)アルカノール基」は、一般式:
−S(O)−R10−CH(−OH)−R10−S(O)− (2)
(式中、各R10は、独立にC1〜3アルカンジイル及び置換C1〜3アルカンジイルから選択され、ここで一つ又は複数の置換基は−OHである)
を有する基を意味する。ある特定の実施形態において、ビス(スルホニル)アルカノール基は、−CH−CH−S(O)−R10−CH(−OH)−R10−S(O)−CH−CH−構造を有する。
【0029】
ある特定の実施形態において、「ビス(スルホニル)アルカノール基」は、一価のビス(スルホニル)アルカノール基、又は二価のビス(スルホニル)アルカノール基であり得る。ある特定の実施形態において、一価のビス(スルホニル)アルカノール基は、「1−(エチレンスルホニル)−n−(ビニルスルホニル)アルカノール基」といった末端ビス(スルホニル)アルカノール基であり得る。末端ビス(スルホニル)アルカノール基は、ビス(スルホニル)アルカノールの反応から誘導することができ、一般構造−R8’−S(O)−R10−CH(−OH)−R10−S(O)−Rを伴う末端部分を有することができる。ここで、R8’は、Rと、Rに対して反応する部分との反応に由来する部分であり、各R10は、独立にC1〜3アルカンジイル及び置換C1〜3アルカンジイルから選択され、ここで一つ又は複数の置換基は−OHである。ある特定の実施形態において、各Rは反応官能基を含み、ある特定の実施形態において、−CH=CHである。ある特定の実施形態において、末端ビス(スルホニル)アルカノール基は、1−(エチレンスルホニル)−3−(ビニルスルホニル)プロパン−2−オール、即ち−CH−CH−S(O)−CH−CH(−OH)−CH−S(O)−CH=CHといった、1−(エチレンスルホニル)−n−(ビニルスルホニル)アルカノール基である。ある特定の実施形態において、末端ビス(スルホニル)アルカノール基は、−CH−CH−S(O)−R10−CH(−OH)−R10−S(O)−CH=CH構造を有する。
【0030】
ある特定の実施形態において、例えばビス(スルホニル)アルカノール基が本明細書中に開示されるポリチオエーテルといったプレポリマーの主鎖に組み込まれる場合、ビス(スルホニル)アルカノール基は二価であってもよい。ある特定の実施形態において、二価のビス(スルホニル)アルカノール基は、一般構造−R8’−S(O)−R10−CH(−OH)−R10−S(O)−R8’−を、ある特定の実施形態において、−CH−CH−S(O)−R10−CH(−OH)−R10−S(O)−CH−CH−を、ある特定の実施形態において、−R8’−S(O)−CH−CH(−OH)−CH−S(O)−R8’−を、ある特定の実施形態において、−CH−CH−S(O)−CH−CH(−OH)−CH−S(O)−CH−CH−を有することができ、ここでR8’及びR10は本明細書中で定義される。ある特定の実施形態のビス(スルホニル)アルカノールにおいて、各Rはアルケニル基であり、各R8’はエタン−ジイル基であり、及び/又は各R10はメタン−ジイルである。
【0031】
「ビス(スルホニル)アルカノール」は、一般式R−S(O)−R10−CH(−OH)−R10−S(O)−Rの化合物を意味し、ここで各Rは、反応官能基を有する部分であり、各R10は、独立にC1〜3アルカンジイル及び置換C1〜3アルカンジイルから選択され、ここで一つ又は複数の置換基は−OHである。ある特定の実施形態において、各Rは、例えば、アルケニル基、エポキシ基、マイケルアクセプター基、又は例えば−Cl、−Br、−I、−OSOCH(メシラート)、−OSO−C−CH(トシラート)等といった求核置換によく適する脱離基を有する飽和炭素を含む基といった、チオール基と反応する末端基を含む。ある特定の実施形態において、ビス(スルホニル)アルカノールは、末端アルケニル基を含むビス(ビニルスルホニル)アルカノールであり得る。ある特定の実施形態において、ビス(スルホニル)アルカノールは、式CH=CH−S(O)−R10−CH(−OH)−R10−S(O)−CH=CHを有する化合物といった、Rが末端アルケニル基を含むビス(ビニルスルホニル)アルカノールであり得る。ある特定の実施形態において、ビス(ビニルスルホニル)アルカノールは、1,3−ビス(ビニルスルホニル)−2−プロパノールである。ある特定の実施形態において、ビス(スルホニル)アルカノールを含有する化合物は、反応末端官能基、及びチオール基又はエポキシ基といったビス(ビニルスルホニル)アルカノールの末端アルケニル基と反応する末端基を有する化合物に対して、ビス(ビニルスルホニル)アルカノールを反応させることによって調製することができる。このような実施形態において、ビス(スルホニル)アルカノールは、R8’−CH−CH−S(O)−R10−CH(−OH)−R10−S(O)−CH−CH−R8’構造を有することができ、ここで各R8’は、上記化合物とビス(ビニルスルホニル)アルカノールの末端アルケニル基との反応に由来する部分である。
【0032】
「ビス(スルホニル)アルカノール含有」ポリマー、プレポリマー、又は付加体は、ポリマー、プレポリマー、又は付加体の主鎖に二価のビス(スルホニル)アルカノール基が一つ又は複数組み込まれた、ポリマー、プレポリマー、又は付加体を表す。
【0033】
二価のビス(スルホニル)アルカノール基は、例えば、適切な比率で、式(3a)のポリチオールモノマー又はプレポリマーと、式(4a)のビス(スルホニル)アルカノールとを反応させることによって、プレポリマーに組み込むことができる:
R(−SH) (3a)
−S(O)−R10−CH(−OH)−R10−S(O)−R (4a)
(式中、Rは有機部分であり、wは2以上の整数であり、各Rは、例えばアルケニル基及びエポキシ基、マイケルアクセプター基、又は、例えば−Cl、−Br、−I、−OSOCH(メシラート)、−OSO−C−CH(トシラート)等といった求核置換によく適する脱離基を有する飽和炭素を含む基といった、チオール基と反応する末端基を含む)。ある特定の実施形態において、式(4a)のビス(スルホニル)アルカノールは、式(4b):
CH=CH−S(O)−R10−CH(−OH)−R10−S(O)−CH=CH (4b)
(式中、各R10は、独立にC1〜3アルカンジイル及び置換C1〜3アルカンジイルから選択され、ここで一つ又は複数の置換基は−OHである)
の構造を有するビス(ビニルスルホニル)アルカノールであり得る。ある特定の実施形態において、ビス(スルホニル)アルカノールは、1,3−ビス(ビニルスルホニル)−2−プロパノールであり得る。若しくは、ビス(スルホニル)アルカノール基は、適切な比率で、式(4c)のチオール末端ビス(スルホニル)アルカノールと、式(3b)の反応物とを反応させることによって、プレポリマー主鎖に組み込むことができる:
HS−R8’−S(O)−R10−CH(−OH)−R10−S(O)−R8’−SH (4c)
R(−R (3b)
(式中、Rは有機部分であり、wは2以上の整数であり、R8’は、Rと、Rに対して反応する部分との反応に由来する部分であり、各R10は本明細書中で定義され、各Rは、例えばアルケニル基、エポキシ基、マイケルアクセプター基、又は、例えば−Cl、−Br、−I、−OSOCH(メシラート)、−OSO−C−CH(トシラート)等といった求核置換でよく知られている脱離基を有する飽和炭素からなる基といった、チオール基と反応する末端基を含む)。
【0034】
式(3a)及び式(4a)、又は式(4c)及び式(3b)の反応物群の適切な比率を選択することで、一つ又は複数のビス(スルホニル)アルカノール基を、鎖セグメントとして、若しくは反応基を有する末端の一部として、又はその両者としてプレポリマーに組み込むことができる。例えば、ビス(ビニルスルホニル)アルカノールは、一つ又は複数の1,nビス(エチレンスルホニル)アルカノール基をプレポリマーの主鎖へ導入するため、若しくは一つ又は複数の末端1−(エチレンスルホニル)−n−(ビニルスルホニル)アルカノール基を導入するため、又はその両者のために使用することができる。
【0035】
ある特定の実施形態において、ビス(ビニルスルホニル)−2−プロパノールは、チオール末端モノマー/ポリマーと反応して、プレポリマー主鎖に1,3−ビス(エチレンスルホニル)−2−プロパノール基を組み込むことができる。
【0036】
ある特定の実施形態において、ビス(ビニルスルホニル)−2−プロパノールは、チオール末端モノマー/ポリマーと反応して、1−(エチレンスルホニル)−3−(ビニルスルホニル)−2−プロパノール末端基を提供することができ、ここで末端アルケニル基は、よく認識されているマイケルアクセプター基である。
【0037】
ビス(スルホニル)アルカノールとチオール基の反応に由来する部分は、チオール基と、チオール基に対して反応する末端基を含有する部分との反応生成物を意味する。チオール基に対して反応する末端基の例として、エポキシ基、エチレン基、及びマイケルアクセプター基が挙げられる。ある特定の実施形態において、ビス(スルホニル)アルカノールとチオール基の反応に由来する部分は、−CH−CH−R−、−CH(−OH)−CH−R−、−CH−CH(−OH)−R−、又は−CH−CH−SO−R−構造を有し、ここでRは共有結合、又はスルホニル基に結合する有機部分を示す。
【0038】
ビス(スルホニル)アルカノールとチオール基の反応に由来する部分は、R基とチオール基の反応に由来するR8’の部分も意味し、ここでRはチオール基と反応する末端基を含む。
【0039】
ある特定の実施形態において、R8’は、チオール基と反応する末端基及びビス(スルホニル)アルカノールと反応する基を有する化合物と、ビス(スルホニル)アルカノールとの反応に由来する基である。ある特定の実施形態において、R8’は、チオール基と反応する末端基及びエチレン基と反応する基を有する化合物と、ビス(エチレンスルホニル)アルカノールとの反応に由来する基である。このような実施形態において、R8’は、−CH−CH−R’−CH−CH−、−CH(−OH)−CH−R’−CH−CH−、−CH−CH(−OH)−R’−CH−CH−、又は−CH−CH−SO−R’−CH−CH−構造を有し得、ここでR’は、ビス(エチレンスルホニル)アルカノールをキャップするために使用される化合物と、エチレン基、エポキシ基、マイケルアクセプター基、又は、例えば−Cl、−Br、−I、−OSOCH(メシラート)、−OSO−C−CH(トシラート)等といった求核置換によく適する脱離基を有する飽和炭素を含む基といった、官能基との反応に由来する有機部分である。
【0040】
ある特定の実施形態において、R8’は、C2〜10アルカンジイル、置換C2〜10アルカンジイル、C2〜10ヘテロアルカンジイル、置換C2〜10ヘテロアルカンジイル、C4〜14アルカンシクロアルカンジイル、置換C4〜14アルカンシクロアルカンジイル、C4〜14ヘテロアルカンシクロアルカンジイル、置換C4〜14ヘテロアルカンシクロアルカンジイル、C4〜14アルカンアレーンジイル、置換C4〜14アルカンアレーンジイル、C4〜14ヘテロアルカンアレーンジイル、及び置換C4〜14ヘテロアルカンアレーンジイルから選択される。ある特定の実施形態において、R8’は、エタン−ジイルである。
【0041】
ある特定の実施形態において、Rは、C2〜10アルキル、置換C2〜10アルキル、C2〜10ヘテロアルキル、置換C2〜10ヘテロアルキル、C4〜14アルカンシクロアルキル、置換C4〜14アルカンシクロアルキル、C4〜14ヘテロアルカンシクロアルキル、置換C4〜14ヘテロアルカンシクロアルキル、C4〜14アルカンアリール、置換C4〜14アルカンアリール、C4〜14ヘテロアルカンアリール、及び置換C4〜14ヘテロアルカンアリールから選択される。ある特定の実施形態において、Rはエチレン、即ち−CH=CHである。
【0042】
「シクロアルカンジイル」は、飽和した、単環又は多環の炭化水素基のジラジカルを意味する。ある特定の実施形態において、シクロアルカンジイル基は、C3〜12シクロアルカンジイル、C3〜8シクロアルカンジイル、C3〜6シクロアルカンジイルであり、ある特定の実施形態において、C5〜6シクロアルカンジイルである。シクロアルカンジイル基の例として、シクロヘキサン−1,4−ジイル、シクロヘキサン−1,3−ジイル、及びシクロヘキサン−1,2−ジイルが挙げられる。
【0043】
「シクロアルキル」は、飽和した、単環又は多環の炭化水素のモノラジカル基を意味する。ある特定の実施形態において、シクロアルキル基は、C3〜12シクロアルキル、C3〜8シクロアルキル、C3〜6シクロアルキルであり、ある特定の実施形態において、C5〜6シクロアルキルである。
【0044】
「ヘテロアルカンジイル」は、一つ又は複数の炭素原子が、N、O、S、又はPといったヘテロ原子に置き換えられたアルカンジイル基を意味する。ヘテロアルカンジイルの、ある特定の実施形態において、ヘテロ原子はN及びOから選択される。
【0045】
「ヘテロアルカンアレーンジイル」は、一つ又は複数の炭素原子が、N、O、S、又はPといったヘテロ原子に置き換えられたアルカンアレーンジイル基を意味する。ヘテロアルカンアレーンジイルの、ある特定の実施形態において、ヘテロ原子はN及びOから選択される。
【0046】
「ヘテロシクロアルカンジイル」は、一つ又は複数の炭素原子が、N、O、S、又はPといったヘテロ原子に置き換えられたシクロアルカンジイル基を意味する。ヘテロシクロアルカンジイルのある特定の実施形態において、ヘテロ原子はN及びOから選択される。
【0047】
「マイケルアクセプター」は、少なくとも一つのアルケン/アルキン基が、カルボニル(−CO)、ニトロ(−NO)、ニトリル(−CN)、アルコキシカルボニル(−COOR)、ホスホナート(−PO(OR))、トリフルオロメチル(−CF)、スルホニル(−SO−)、トリフルオロオメタンスルホニル(−SOCF)、p−トルエンスルホニル(−SO−C−CH)等といった電子吸引基の一つ又は複数に直接結合する、置換アルケン/アルキン化合物を意味する。マイケルアクセプターとして機能する化合物の種類は、ビニルケトン、キノン、ニトロアルケン、アクリロニトリル、アクリラート、メタクリラート、シアノアクリラート、アクリルアミド、マレイミド、ジアルキルビニルホスホナート、及びビニルスルホンである。マイケルアクセプターの他の例は、Matherら、Prog. Polym. Sci. 2006、31巻、487〜531頁に開示されている。複数のマイケルアクセプター基を有するマイケルアクセプター化合物も周知である。例としては、ジアクリラート、例えばエチレングリコールジアクリラート及びジエチレングリコールジアクリラート、ジメタクラート、例えばエチレングリコールメタクリラート及びジエチレングリコールメタクリラート、ビスマレイミド、例えばN,N’−(1,3−フェニレン)ジマレイミド及び1,1’−(メチレンジ−4,1−フェニレン)ビスマレイミド、並びにビニルスルホン、例えばジビニルスルホン及び1,3−ビス(ビニルスルホニル)−2−プロパノール、等が挙げられる。ある特定の実施形態において、マイケルアクセプター基は、式(7a)又は式(7b)の構造を有する:
−CH−CH−S(O)−R10−CH(−OH)−R10−S(O)−CH=CH (7a)
−CH−CH−S(O)−CH−CH(−OH)−CH−S(O)−CH=CH (7b)
(式中、各R10は、独立にC1〜3アルカンジイル及び置換C1〜3アルカンジイルから選択され、ここで一つ又は複数の置換基は−OHである)。
【0048】
「マイケルアクセプター化合物」は、少なくとも一つの末端マイケルアクセプター基を含む化合物を意味する。ある特定の実施形態において、マイケルアクセプター化合物はジビニルスルホンであり、マイケルアクセプター基はビニルスルホニル、即ち−S(O)−CH=CHである。ある特定の実施形態において、マイケルアクセプター化合物はビス(ビニルスルホニル)アルカノールであり、マイケルアクセプター基は1−(エチレンスルホニル)−n−(ビニルスルホニル)アルカノール(−CH−CH−S(O)−R10−CH(−OH)−R10−S(O)−CH=CH)であり、ある特定の実施形態において、1−(エチレンスルホニル)−3−(ビニルスルホニル)プロパン−2−オール(−CH−CH−S(O)−CH−CH(−OH)−CH−S(O)−CH=CH)である。
【0049】
ヒドロキシピリジノンは、式(8a)又は式(8b)の構造をそれぞれ有する3−ヒドロキシ−4−ピリジノン及び3−ヒドロキシ−2−ピリジノンを含む:
【化2】

(式中、Rはアルキル基といった有機基である)。ヒドロキシピリジノンに由来する金属キレート剤は、ヒドロキシピリジノン基、及び末端チオール基といった反応性官能基を一つ又は複数含む。
【0050】
「金属リガンド」(“metal ligand”:金属配位子)は、金属原子及び潜在的に他の原子と結合し、配位錯体を形成するイオン又は分子を意味する。金属、及び/又は原子との間の結合は、一般的に一つ又は複数の電子対の金属への供与を伴い、結合の性質は共有結合性又はイオン結合性であり得る。本開示が提供する金属リガンドは、アルミニウム及びチタン表面といった、酸化され得る航空宇宙表面に配位錯体を形成することができる。酸化した表面の場合、金属リガンドは、Al(III)といった金属及び酸素原子で配位錯体を形成し得る。配位錯体は、金属又は酸化した金属表面に対する密着性を向上させることができる。
【0051】
本開示が提供するように、金属リガンドはプレポリマーの主鎖に組み込まれ得る。プレポリマー主鎖へ組み込むため、金属リガンドは、配位錯体を形成し得る部分に加え、プレポリマーのサブユニットの基と反応する基を少なくとも二つ含む、又は含むよう誘導体化されることがある。そのような反応性金属リガンドは、商業的に入手してもよく、又は当業者に公知の方法を用いて適切な反応性置換基を含むよう誘導体化してもよい。
【0052】
「ポリアルコキシシリル基」は、式
−Si(−R(−OR3−P (9)
(式中、pは0、1、及び2から選択され、各Rは独立にC1〜4アルキルから選択される)
を有する基を意味する。ポリアルコキシシリル基の、ある特定の実施形態において、pは0であり、pは1であり、ある特定の実施形態において、pは2である。ポリアルコキシシリル基の、ある特定の実施形態において、各Rは独立にエチル及びメチルから選択される。ポリアルコキシシリル基の、ある特定の実施形態において、各Rはエチルであり、ある特定の実施形態において、各Rはメチルである。ポリアルコキシシリル基の、ある特定の実施形態において、当該基は−Si(−OCHCH、−Si(−OCH、−Si(−CH)(−OCH、−Si(−CH(−OCH)、−Si(−CH)(−OCHCH、−Si(−CH(−OCHCH)、−Si(−CHCH)(−OCH)、及び−Si(−CHCH(−OCH)から選択される。
【0053】
「置換」(“substituted”)とは、一つ又は複数の水素原子が、それぞれ独立に、同一又は異なる置換基(単数又は複数)で置き換えられた基を意味する。ある特定の実施形態において、置換基は、ハロゲン、−S(O)OH、−S(O)、−SH、RがC1〜6アルキルである−SR、−COOH、−NO、各Rが水素及びC1〜3アルキルから独立に選択される−NR、−CN、−C=O、C1〜6アルキル、−CF、−OH、フェニル、C2〜6ヘテロアルキル、C5〜6ヘテロアリール、C1〜6アルコキシ、及びRがC1〜6アルキルである−CORから選択される。ある特定の実施形態において、置換基は、−OH、−NH、及びC1〜3アルキルから選択される。
【0054】
本明細書中で用いられるように、「ポリマー」は、オリゴマー、ホモポリマー、及びコポリマーを意味する。別段の記述がない限り、分子量は、当技術分野で認められている手法で、例えば標準ポリスチレンを用いるゲル浸透クロマトグラフィーによって決定される、「M」で表される高分子材料の数平均分子量である。
【0055】
以下、金属リガンド含有ポリチオエーテル等の金属リガンド含有プレポリマー、それらの組成物、及び合成方法の、幾つかの実施形態について説明する。開示される実施形態は、特許請求の範囲の限定を意図するものではない。一方、特許請求の範囲は、全ての代替形態、変更形態、及び均等形態を対象とすることを意図するものである。
【0056】
引張強度、及びむき出しの金属表面又は陽極酸化金属表面といった表面に対する、硬化航空宇宙用シーラントの接着性を向上させるため、ビス(スルホニル)アルカノールといった金属リガンドは、硫黄含有プレポリマーの主鎖に組み込まれる。ビス(スルホニル)アルカノール含有硫黄含有プレポリマーといった金属リガンド含有プレポリマーは、任意の適切な硬化化学作用に適合することができる。例えば、チオール末端金属リガンド含有ポリチオエーテルプレポリマー及びポリエポキシ硬化剤は、航空宇宙用途に有用なシーラントを提供する。
【0057】
ビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテル
本開示が提供するビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテルは、ポリチオエーテルの主鎖に組み込まれるビス(スルホニル)アルカノール基を、一つ又は複数有することを特徴とする。
【0058】
航空宇宙用シーラント用途に有用なポリチオエーテルは、例えば米国特許第6,172,179に開示される。ポリチオエーテルは、チオエーテル、−C−S−C−結合を少なくとも二つ含む化合物を意味する。ポリチオエーテルは、例えばジチオールをジビニルエーテルと反応させることによって調製され得る。一般的に、ビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテルは、ポリチオエーテルの末端と反応する末端基を有する単量体ビス(スルホニル)アルカノールを反応させることによって調製され得る。
【0059】
ある特定の実施形態において、ビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテルは、式(10):
−S(O)−R10−CH(−OH)−R10−S(O)− (10)
(式中、各R10は、独立にC1〜3アルカンジイル及び置換C1〜3アルカンジイルから選択され、ここで一つ又は複数の置換基は−OHである)
の部分を含む。
【0060】
ある特定の実施形態において、ビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテルは、式(11):
−A−R8’−S(O)−R10−CH(−OH)−R10−S(O)−R8’−A− (11)
(式中、
各R8’は、ビス(スルホニル)アルカノールとチオール基の反応に由来する部分であり、
各R10は、独立に、C1〜3アルカンジイル及び置換C1〜3アルカンジイルから選択され、ここで一つ又は複数の置換基は−OHであり、
各Aは独立に式(12):
−S−R−[−S−(CH−O−(R−O)−(CH−S−R−]−S− (12)
の部分であり、ここで、
各Rは、独立に、C2〜10アルカンジイル、C6〜8シクロアルカンジイル、C6〜10アルカンシクロアルカンジイル、C5〜8ヘテロシクロアルカンジイル、及び−[(−CHR−)−X−]−(−CHR−)−から選択され、ここで
sは2から6の整数であり、
qは1から5の整数であり、
rは2から10の整数であり、
各Rは独立に水素及びメチルから選択され、
各Xは独立に−O−、−S−、及び−NR−から選択され、ここでRは水素及びメチルから選択され、
各Rは独立にC1〜10アルカンジイル、C6〜8シクロアルカンジイル、C6〜14アルカンシクロアルカンジイル、及び−[(−CHR−)−X−]−(−CHR−)−から選択され、ここでs、q、r、R、及びXはRで定義される通りであり、
mは0から50の整数であり、
nは1から60の整数であり、
pは2から6の整数である)
の構造を含む。
【0061】
式(11)及び式(12)の、ある特定の実施形態において、各Rは−[−(CHR−X−]−(CHR−であり、ここで各Xは、独立に−O−及び−S−から選択される。Rが−[−(CHR−X−]−(CHR−である、ある特定の実施形態において、各Xは−O−であり、ある特定の実施形態において、各Xは−S−である。ある特定の実施形態において、各Rは水素である。
【0062】
式(11)及び式(12)の、ある特定の実施形態において、各Rは−[−(CH−X−]−(CH−であり、ここで各Xは、独立に−O−及び−S−から選択される。Rが−[−(CH−X−]−(CH−である、ある特定の実施形態において、各Xは−O−であり、ある特定の実施形態において、各Xは−S−である。
【0063】
式(11)及び式(12)の、ある特定の実施形態において、各Rは−[(−CH−)−X−]−(CH−であり、ここでsは2、XはO、qは2、rは2、Rはエタンジイル、mは2、及びnは9である。
【0064】
式(11)及び式(12)の、ある特定の実施形態において、各Rはジメルカプトジオキサオクタン(DMDO)に由来する基であり、ある特定の実施形態において、各Rはジメルカプトジエチルスルフィド(DMDS)に由来する基である。
【0065】
式(11)及び式(12)の、ある特定の実施形態において、各mは独立に1から3の整数である。ある特定の実施形態において、各mは同一で、1又は2であり、ある特定の実施形態において、3である。
【0066】
式(11)及び式(12)の、ある特定の実施形態において、nは、1から30の整数、1から20の整数、1から10の整数であり、ある特定の実施形態において、1から5の整数である。また、ある特定の実施形態において、nは1から60の任意の整数であってもよい。
【0067】
式(11)及び式(12)の、ある特定の実施形態において、各pは、独立に、2、3、4、5、及び6から選択される。ある特定の実施形態において、各pは同一で、2、3、4、5、又は6である。
【0068】
式(11)において、各R8’は、チオール基と、末端アルケニル基、末端エポキシ基、又は末端マイケルアクセプター基といったチオール基と反応する基との反応に由来する基である。式(11)及び式(12)の、ある特定の実施形態において、各R8’は、独立に、C2〜10アルカンジイル、置換C2〜10アルカンジイル、C2〜10ヘテロアルカンジイル、置換C4〜10ヘテロアルカンジイル、C4〜14アルカンシクロアルカンジイル、置換C4〜14アルカンシクロアルカンジイル、C4〜14ヘテロアルカンシクロアルカンジイル、置換C4〜14ヘテロアルカンシクロアルカンジイル、C2〜14アルカンアレーンジイル、置換C4〜14アルカンアレーンジイル、C4〜14ヘテロアルカンアレーンジイル、及び置換C4〜14ヘテロアルカンアレーンジイルから選択される。ある特定の実施形態において、各R8’は同一である。ある特定の実施形態において、各R8’はエタン−ジイル、即ち−CH−CH−である。
【0069】
式(11)の、ある特定の実施形態において、各R10は、独立に、メタン−ジイル、エタン−ジイル、及び1,3−プロパン−ジイルから選択される。ある特定の実施形態において、各R10はメタン−ジイルであり、ある特定の実施形態において、エタン−ジイルであり、ある特定の実施形態において、1,3−プロパン−ジイルである。
【0070】
式(11)の、ある特定の実施形態において、各R8’はエタン−ジイルであり、各R10はメタン−ジイルである。
【0071】
ある特定の実施形態において、ビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテルは、式(13a)のビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテル、式(13b)のビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテル、及びそれらの組み合わせから選択される:
−A−[−R8’−S(O)−R10−CH(−OH)−R10−S(O)−R8’−A−]−R (13a)
{R−A−[−R8’−S(O)−R10−CH(−OH)−R10−S(O)−R8’−A−]−V’−}B (13b)
(式中、
Nは1から10の整数であり、
各R8’は、ビス(スルホニル)アルカノールとチオール基の反応に由来する部分であり、
各R10は、独立に、C1〜3アルカンジイル及び置換C1〜3アルカンジイルから選択され、ここで一つ又は複数の置換基は−OHであり、
各Aは独立に式(12):
−S−R−[−S−(CH−O−(R−O)−(CH−S−R−]−S− (12)
の部分であり、ここで、
各Rは、独立に、C2〜10アルカンジイル、C6〜8シクロアルカンジイル、C6〜10アルカンシクロアルカンジイル、C5〜8ヘテロシクロアルカンジイル、及び−[(−CHR−)−X−]−(−CHR−)−から選択され、ここで、
sは2から6の整数であり、
qは1から5の整数であり、
rは2から10の整数であり、
各Rは独立に水素及びメチルから選択され、
各Xは独立に−O−、−S−、及び−NR−から選択され、ここでRは水素及びメチルから選択され、
各Rは独立にC1〜10アルカンジイル、C6〜8シクロアルカンジイル、C6〜14アルカンシクロアルカンジイル、及び−[(−CHR−)−X−]−(−CHR−)−から選択され、ここでs、q、r、R、及びXはRで定義された通りであり、
mは0から50の整数であり、
nは1から60の整数であり、
pは2から6の整数であり、
Bは、z価の多官能化剤B(−V)のコアを表し、ここで
zは3から6の整数であり、
各Vは、チオール基と反応する末端基を含む基であり、
各−V’−は、−Vとチオールとの反応に由来する基であり、
各Rは、独立に、水素、及び末端反応基を有する部分から選択される)。
【0072】
式(13a)及び式(13b)のビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテルの、ある特定の実施形態において、Nは1、2、3、4、5、6、7、8、9であり、ある特定の実施形態において、Nは10である。式(13a)及び式(13b)のビス(スルホニル)アルカノール含有ポリマーの、ある特定の実施形態において、分子量は400ダルトンから20,000ダルトンである。ある特定の実施形態において、式(13a)のビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテルは、Nが異なる値の式(13a)のビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテルの組み合わせを含む。ある特定の実施形態において、式(13b)のビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテルは、Nが異なる値の式(13b)のビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテルの組み合わせを含む。式(13a)及び式(13b)のビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテルの、ある特定の実施形態において、Nは1である。
【0073】
式(13a)及び式(13b)の、ある特定の実施形態において、各R8’は、チオール基と、末端アルケニル基、末端エポキシ基、又は末端マイケルアクセプター基といったチオール基と反応する基との反応に由来する基である。式(13a)及び式(13b)の、ある特定の実施形態において、各R8’は、独立に、C2〜10アルカンジイル、置換C2〜10アルカンジイル、C2〜10ヘテロアルカンジイル、置換C2〜10ヘテロアルカンジイル、C4〜14アルカンシクロアルカンジイル、置換C4〜14アルカンシクロアルカンジイル、C4〜14ヘテロアルカンシクロアルカンジイル、置換C4〜14ヘテロアルカンシクロアルカンジイル、C4〜14アルカンアレーンジイル、置換C4〜14アルカンアレーンジイル、C4〜14ヘテロアルカンアレーンジイル、及び置換C4〜14ヘテロアルカンアレーンジイルから選択される。ある特定の実施形態において、各R8’は同一である。ある特定の実施形態において、各R8’はエタン−ジイル、即ち−CH−CH−である。
【0074】
式(13a)及び式(13b)の、ある特定の実施形態において、各R10は、独立に、メタン−ジイル、エタン−ジイル、及び1,3−プロパン−ジイルから選択される。ある特定の実施形態において、各R10はメタン−ジイルであり、ある特定の実施形態において、エタン−ジイルであり、ある特定の実施形態において、1,3−プロパン−ジイルである。
【0075】
式(13a)及び式(13b)の、ある特定の実施形態において、各R8’はエタン−ジイルであり、各R10はメタン−ジイルである。
【0076】
式(13a)及び式(13b)のビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテルの、ある特定の実施形態において、各Rは−[−(CHR−X−]−(CHR−であり、ここで各Xは、独立に−O−及び−S−から選択される。Rが−[−(CHR−X−]−(CHR−である、ある特定の実施形態において、各Xは−O−であり、ある特定の実施形態において、各Xは−S−である。ある特定の実施形態において、各Rは水素である。
【0077】
式(13a)及び式(13b)のビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテルの、ある特定の実施形態において、各Rは−[−(CH−X−]−(CH−であり、ここで各Xは、独立に−O−及び−S−から選択される。Rが−[−(CH−X−]−(CH−である、ある特定の実施形態において、各Xは−O−であり、ある特定の実施形態において、各Xは−S−である。
【0078】
式(13a)及び式(13b)のビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテルの、ある特定の実施形態において、各Rは−[(−CH−)−X−]−(CH−であり、ここでsは2、XはO、qは2、rは2、Rはエタンジイル、mは2、及びnは9である。
【0079】
式(13a)及び式(13b)のビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテルの、ある特定の実施形態において、各RはDMDOに由来する基であり、ある特定の実施形態において、各RはDMDSに由来する基である。
【0080】
ある特定の実施形態において、各mは独立に1から3の整数である。ある特定の実施形態において、各mは同一で、1又は2であり、ある特定の実施形態において、3である。
【0081】
式(13a)及び式(13b)のビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテルの、ある特定の実施形態において、nは、1から30の整数、1から20の整数、1から10の整数であり、ある特定の実施形態において、1から5の整数である。また、ある特定の実施形態において、nは1から60の整数であってもよい。
【0082】
式(13a)及び式(13b)のビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテルの、ある特定の実施形態において、各pは、独立に、2、3、4、5、及び6から選択される。ある特定の実施形態において、各pは同一で、2、3、4、5、又は6である。
【0083】
式(13a)及び式(13b)のビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテルの、ある特定の実施形態において、各Rは−[(−CH−)−X−]−(CH−であり、ここでsは2、Xは−O−、qは2、rは2、Rはエタンジイル、mは2、及びnは9である。
【0084】
式(13a)及び式(13b)のビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテルの、ある特定の実施形態において、各Rは、C2〜6アルカンジイル、及び−[−(CHR−X−]−(CHR−から選択される。
【0085】
式(13a)及び式(13b)のビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテルの、ある特定の実施形態において、各Rは−[−(CHR−X−]−(CHR−であり、ある特定の実施形態において、Xは−O−であり、ある特定の実施形態において、Xは−S−である。
【0086】
が−[−(CHR−X−]−(CHR−である、式(13a)及び式(13b)のビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテルの、ある特定の実施形態において、sは2、rは2、qは1、及びXは−S−であり、ある特定の実施形態において、sは2、qは2、rは2、及びXは−O−であり、ある特定の実施形態において、sは2、rは2、qは1、及びXは−O−である。
【0087】
が−[−(CHR−X−]−(CHR−である、式(13a)及び式(13b)のビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテルの、ある特定の実施形態において、各Rは水素であり、ある特定の実施形態において、少なくとも一つのRはメチルである。
【0088】
式(13a)及び式(13b)のビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテルの、ある特定の実施形態において、各Rは同一であり、ある特定の実施形態において、少なくとも一つのRは異なる。
【0089】
式(13a)及び式(13b)のビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテルの、ある特定の実施形態において、各Rは同一であり、末端反応基は、−SH、−CH=CH、−NH、−OH、エポキシ基、ポリアルコキシシリル基、及びマイケルアクセプター基から選択される。
【0090】
ある特定の実施形態において、式(13a)のビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテルは、式(14):
11−R8’−S(O)−CH−CH(−OH)−CH−S(O)−R8’−R11 (14)
(式中、ここで各R8’は本明細書中で定義される通りであり、各R11はH−[−S−(−R12−O−)−R12−S−(−R12−O−)−R12−]−S−(−R12−O−)−R12−S−であり、ここで各R12は−CH−CH−である)
の構造を有する。
【0091】
ある特定の実施形態において、式(13a)のビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテルは、式(15):
11−CHCH−S(O)−CH−CH(−OH)−CH−S(O)−CHCH−R11 (15)
(式中、各R11はH−[−S−(−R12−O−)−R12−S−(−R12−O−)−R12−]−S−(−R12−O−)−R12−S−であり、ここで各R12は−CH−CH−である)
の構造を有する。
【0092】
式(13a)及び式(13b)のビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテルの、ある特定の実施形態において、各Rは水素であり、ビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテルは、チオールで終端し、式(16a)、式(16b)、式(16c)、又は式(16d)の構造を有する:
H−A−[−R8’−S(O)−R10−CH(−OH)−R10−S(O)−R8’−A−]−H (16a)
{H−A−[−R8’−S(O)−R10−CH(−OH)−R10−S(O)−R8’−A−]−V’−}B (16b)
H−A−[−CH−CH−S(O)−R10−CH(−OH)−R10−S(O)−CH−CH−A−]−H (16c)
{H−A−[−CH−CH−S(O)−R10−CH(−OH)−R10−S(O)−CH−CH−A−]−V’−}B (16d)
(式中、A、N、R8’、R10、V’、z、及びBは、本明細書中で定義される)。
【0093】
B(−V)は、多官能化剤を表す。多官能化剤は、単一型の多官能化剤であってもよく、又は、同一又は異なる官能性を有し得る、異なる多官能化剤の組み合わせであってもよい。ある特定の実施形態において、zは3、4、5、又は6である。適切な多官能化剤として、zが3の化合物である三官能化剤が挙げられる。例えばその引用部分を参照により組み込む米国特許出願公開第2010/0010133号の[0102]から[0105]段落に開示されているように、適切な三官能化剤として、例えば、シアヌル酸トリアリル(TAC)、変性1,2,3−プロパントリチオール、変性イソシアヌラート含有トリチオール、1,2,4−トリビニルシクロヘキサン、及び、前述のものの任意の組み合わせが挙げられる。他の有用な多官能化剤として、トリメチロールプロパントリビニルエーテルが挙げられる。多官能化剤の混合物を使用してもよい。適切なイソシアヌラート含有官能化剤は、例えば、米国特許出願公開第2011/0319559号に開示されている。
【0094】
は、末端反応基を有する部分を表す。末端反応基は、特定の硬化化学作用に適するものとして選択することができる。例えば、ある特定の実施形態において、各Rは同一であり、反応基は、−SH、−CH=CH、−NH、−OH、エポキシ基、ポリアルコキシシリル基、及びマイケルアクセプター基から選択される。特定の硬化化学作用の使用は、例えば、所望の、組成物の硬化時間、塗布方法、表面親和性、保存期間、ポットライフ、及び/又は硬化シーラント組成物の特性を達成するよう選択することができる。例えば、ある特定の実施形態において、式(13a)及び/又は式(13b)のビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテルは、チオールで終端し、Rは、水素、又はチオール基で終端する部分である。ある特定の実施形態において、B(−V)はアルケニル末端多官能化剤であり、ここで各−Vは末端アルケニル基を含み、従って、各−V’−は、アルケニル基、及びアルケニル基と反応する基の反応によって形成される部分を表す。
【0095】
ある特定の実施形態において、多官能化剤は、一つ又は複数のビス(スルホニル)アルカノール基を含み得る。例えば、ある特定の実施形態において、多官能化剤は、多官能化剤の末端基と反応する末端基及びチオール基と反応する末端基を有するビス(スルホニル)アルカノールと反応し得る。従って、ある特定の実施形態において、式(17)のビス(スルホニル)アルカノール含有多官能化剤は、式(4a)のビス(スルホニル)アルカノールと、式B(−V)を有する多官能化剤とを反応させることによって形成され得る:
{R−S(O)−R10−CH(−OH)−R10−S(O)−R8’−V’−}B (17)
(式中、R、R8’、R10、B、及びV’は本明細書中で定義される)。
【0096】
式(13a)及び式(13b)のビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテルの、ある特定の実施形態において、Rは水素であり、式(13a)及び式(13b)のビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテルはチオールで終端する。
【0097】
ある特定の実施形態において、式(13a)及び式(13b)のビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテルは、例えば各Rが水素であり、チオールで終端し、キャップされていないビス(スルホニル)アルカノールを含有するポリチオエーテルと称することができる。ある特定の実施形態において、キャップされていないビス(スルホニル)アルカノールを含有するポリチオエーテルは、室温で液体である。さらに、ある特定の実施形態において、キャップされていないビス(スルホニル)アルカノールを含有するポリチオエーテルは、ASTM D−2849§79から90に従って決定し、温度約25℃、圧力約760mmHgで、Brookfield CAP2000粘度計を用いて測定して、固形分100%において、500ポアズ未満、例えば100ポアズから300ポアズ、又は場合により100ポアズから200ポアズの粘度を有する。前述の範囲内の任意の端点も使用することができる。ある特定の実施形態において、キャップされていないビス(スルホニル)アルカノールを含有するポリチオエーテルの数平均分子量は、例えば1モル当たり1,000グラムから1モル当たり8,000グラム等、1モル当たり400グラムから1モル当たり10,00グラムである。分子量は、例えば、標準ポリスチレンを用いるゲル浸透クロマトグラフィーによって決定する。前述の範囲内の任意の端点も使用することができる。ある特定の実施形態において、キャップされていないビス(スルホニル)アルカノールを含有するポリチオエーテルのTgは、−55℃以下であり、例えば−60℃以下である。
【0098】
ある特定の実施形態において、ビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテルを異なる硬化化学作用での使用に適合させるため、ビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテルは、特定の反応基で、キャップされていても、又は終端されてもよい。
【0099】
が末端反応基を有する部分である式(13a)及び式(13b)のビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテルは、各Rが水素である対応する式(13a)及び式(13b)のチオール末端のビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテルを、末端反応基及びチオール基と反応する基を有する部分でキャップすることによって調製され得る。航空宇宙用シーラント用途に有用な、キャップされているポリチオエーテル類似体、及びキャップされているポリチオエーテル類似体の調製方法は、例えば、それぞれ参照により組み込む、米国特許第6,172,179号及び米国特許出願公開第2011/0319559号に開示されている。ある特定の実施形態において、Rは、末端アルケニル基、末端エポキシ基、末端ポリアルコキシシリル基、末端アミン基、又は末端マイケルアクセプター基を含む。キャップ基Rの分子量は500ダルトン未満であってもよい。
【0100】
本開示が提供する末端変性ビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテルは、当業者に公知の多数の方法によって調製され得る。例えば、式(13a)及び式(13b)の末端変性ビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテルを得るため、本明細書中に開示されるように、式(16a)又は式(16b)のチオール末端ビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテルは、末端官能基及びチオール基と反応する末端基を有する化合物と反応し得る。
【0101】
例えば、式(13a)のアルケニル末端ビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテルを得るため、式(16a)のチオール末端ビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテルは、末端アルケニル基、及び、TMI、メタクリル酸2−イソシアナトエチル、又はアリルイソシアナートに由来する基といったイソシアナート基を含有する化合物と、ジブチル錫ジラウラート触媒の存在下で反応し得る。更なる例として、式(13a)のビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテルは、3−ブテン−1−オールといったアルケン−オール、及びホルムアルデヒドといったアルデヒドと、トルエン等の有機溶媒中、Amberlyst(商標)15等のスルホン酸(例えば4.7meq/gH)の存在下で反応し得、式(13a)のアルケニル末端ビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテルを提供する。ある特定の実施形態において、式(13a)のアルケニル末端ビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテルは、ジアルケニル化合物といったポリアルケニル化合物と、式(16a)のチオール末端ビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテルとを反応させることによって調製され得る。
【0102】
式(13a)のポリアルコキシシリル末端ビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテルは、例えば、式(16a)のチオール末端ビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテルと、3−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、又は3−イソシアナトプロピルトリエトキシシランといったポリアルコキシシランとを、ジブチル錫ジラウラートの存在下で反応させることによって調製され得、式(13a)の対応するポリアルコキシシリル末端ビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテルを提供する。ある特定の実施形態において、式(13a)のポリアルコキシシリル末端ビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテルは、ビニルアルコキシシランとチオール末端ビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテルとを反応させることによって調製され得る。
【0103】
式(13a)のエポキシ末端ビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテルは、例えば、式(16a)のチオール末端ビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテルと、エピクロロヒドリンといったモノエポキシド、又はアリルグリシジルエーテルといったアルケニルグリシジル化合物とを反応させることによって調製され得、式(13a)の対応するエポキシ末端ビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテルを提供する。
【0104】
式(13a)のアミン末端ビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテルは、例えば、活性化した、式(13a)のアルケニル末端ビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテル又は式(13a)のマイケルアクセプター末端ビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテルと、ジアミン、4−(アミノメチル)アニリンといったアミノ置換アニリン、又はn−ブチルアミンといったアルキルアミンとを、任意で有機溶媒中、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)といった触媒の存在下で、反応させることによって調製され得、式(13a)の対応するアミン末端ビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテルを提供する。若しくは、式(13a)のアミン末端ビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテルは、式(13a)のイソシアナート末端ビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテルと、4−(アミノメチル)アニリンといったジアミンとを反応させることによって得ることができ、式(13a)の対応するアミン末端ビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテルを提供する。式(13a)のアミン末端ビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテルは、式(13a)のヒドロキシル末端ビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテルと、エチル−4−アミノベンゾアートといったアミノ置換ベンゾアートとを、BuSnO又はNaOMeの存在下で、高められた温度で反応させることによっても得ることができ、式(13a)の対応するアミン末端ビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテルを提供する。
【0105】
式(13a)のイソシアナート末端ビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテルは、例えば、式(16a)のチオール末端ビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテルと、TDI、Isonate(商標)143L(ポリカルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアナート)、Desmodur(登録商標)N3400(1,3−ビス(6−イソシアナトヘキシル)−1,3−ジアゼチジン−2,4−ジオン)、IPDI(イソホロンジイソシアナート)、又はDesmodur(登録商標)W(H12MDI)といったジイソシアナートとを、任意でジブチル錫ジラウラートといった触媒の存在下で、反応させることによって調製され得る。イソシアナート末端硫黄含有ポリマーは、例えば本開示が提供するある特定の、アミン末端及びチオール末端ビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテル等の、他の末端変性硫黄含有ポリマーの合成における中間体として使用され得る。
【0106】
式(13b)のキャップされているビス(スルホニル)アルカノール含有プレポリマーを調製するために、同様の反応を使用してもよい。
【0107】
ある特定の実施形態において、チオール末端ビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテルは、
(a)式(18a)のチオール末端ポリチオエーテル、式(18b)のチオール末端ポリチオエーテル、及びそれらの組み合わせ:
HS−R−[−S−(CH−O−(R−O)−(CH−S−R−]−SH (18a)
{HS−R−[−S−(CH−O−(R−O)−(CH−S−R−]−S−V’−}B (18b)
(式中、
各Rは独立にC2〜10アルカンジイル、C6〜8シクロアルカンジイル、C6〜10アルカンシクロアルカンジイル、C5〜8ヘテロシクロアルカンジイル、及び−[(−CHR−)−X−]−(−CHR−)−から選択され、ここで
sは2から6の整数であり、
qは1から5の整数であり、
rは2から10の整数であり、
各Rは独立に水素及びメチルから選択され、
各Xは独立に−O−、−S−、及び−NR−から選択され、
ここでRは水素及びメチルから選択され、
各Rは独立にC1〜10アルカンジイル、C6〜8シクロアルカンジイル、C6〜14アルカンシクロアルカンジイル、及び−[(−CHR−)−X−]−(−CHR−)−から選択され、ここでs、q、r、R、及びXはRで定義される通りであり、
mは0から50の整数であり、
nは1から60の整数であり、
pは2から6の整数であり、
Bは、z価の多官能化剤B(−V)のコアを表し、ここで
zは3から6の整数であり、
各Vは、チオール基と反応する末端基を含む基であり、
各−V’−は、−Vとチオールの反応に由来する基である)
から選択される、チオール末端ポリチオエーテルと、
(b)式(19):
−S(O)−R10−CH(−OH)−R10−S(O)−R (19)
(式中、
各Rは独立に末端チオール基と反応する末端基を含む部分から選択され、
各R10は、独立にC1〜3アルカンジイル及び置換C1〜3アルカンジイルから選択され、ここで一つ又は複数の置換基は−OHである)
のビス(スルホニル)アルカノールと
を含む反応物の反応生成物を含む。
【0108】
式(18a)及び式(18b)のチオール末端ポリチオエーテルの、ある特定の実施形態において、各Rは−[−(CHR−X−]−(CHR−であり、ここで各Xは独立に−O−、及び−S−から選択される。Rが−[−(CHR−X−]−(CHR−である、ある特定の実施形態において、各Xは−O−であり、ある特定の実施形態において、各Xは−S−である。ある特定の実施形態において、各Rは水素である。
【0109】
式(18a)及び式(18b)のチオール末端ポリチオエーテルの、ある特定の実施形態において、各Rは−[−(CH−X−]−(CH−であり、ここで各Xは独立に−O−、及び−S−から選択される。Rが−[−(CH−X−]−(CH−である、ある特定の実施形態において、各Xは−O−であり、ある特定の実施形態において、各Xは−S−である。
【0110】
式(18a)及び式(18b)のチオール末端ポリチオエーテルの、ある特定の実施形態において、各Rは−[−(CH−X−]−(CH−であり、ここで、sは2、XはO、qは2、rは2、Rはエタンジイル、mは2、及びnは9である。
【0111】
式(18a)及び式(18b)のチオール末端ポリチオエーテルの、ある特定の実施形態において、各RはDMDOに由来する基であり、ある特定の実施形態において、各RはDMDSに由来する基である。
【0112】
式(18a)及び式(18b)のチオール末端ポリチオエーテルの、ある特定の実施形態において、各mは独立に1から3の整数である。ある特定の実施形態において、各mは同一で、1又は2であり、ある特定の実施形態において、3である。
【0113】
式(18a)及び式(18b)のチオール末端ポリチオエーテルの、ある特定の実施形態において、nは、1から30の整数、1から20の整数、1から10の整数であり、ある特定の実施形態において、1から5の整数である。また、ある特定の実施形態において、nは1から60の任意の整数であってもよい。
【0114】
式(18a)及び式(18b)のチオール末端ポリチオエーテルの、ある特定の実施形態において、各pは、独立に、2、3、4、5、及び6から選択される。ある特定の実施形態において、各pは同一で、2、3、4、5、又は6である。
【0115】
式(18a)及び式(18b)のチオール末端ポリチオエーテルの、ある特定の実施形態において、RはDMDOに由来する基であり、Rはジビニルエーテルに由来する基であり、多官能化剤はTACである。
【0116】
ある特定の実施形態において、式(18a)のポリチオエーテルプレポリマーは、式(20):
H−[−S−(−CHCH−O−)−CHCH−S−(−CHCH−O−)−CHCH−]−S−(−CHCH−O−)−CHCH−SH (20)
の構造を有する。
【0117】
式(19)の、ある特定の実施形態において、各R10は、独立に、メタン−ジイル、エタン−ジイル、及び1,3−プロパン−ジイルから選択される。ある特定の実施形態において、各R10はメタン−ジイルであり、ある特定の実施形態において、エタン−ジイルであり、ある特定の実施形態において、1,3−プロパン−ジイルである。
【0118】
式(19)の、ある特定の実施形態において、Rは、アルケニル基、エポキシ基、及びマイケルアクセプター基から選択される、チオール基と反応する基を含む。ある特定の実施形態において、各Rはアルケニル基で終端する。ある特定の実施形態において、Rは、C2〜10アルキル、置換C2〜10アルキル、C2〜10ヘテロアルキル、置換C2〜10ヘテロアルキル、C4〜14アルカンシクロアルキル、置換C4〜14アルカンシクロアルキル、C4〜14ヘテロアルカンシクロアルキル、置換C4〜14ヘテロアルカンシクロアルキル、C4〜14アルカンアリール、置換C4〜14アルカンアリール、C4〜14ヘテロアルカンアリール、及び置換C4〜14ヘテロアルカンアリールから選択される。ある特定の実施形態において、Rはエチレン、即ち−CH=CHである。
【0119】
ある特定の実施形態において、式(19)のビス(スルホニル)アルカノールは、ビス(ビニルスルホニル)アルカノールを含む。ある特定の実施形態において、ビス(ビニルスルホニル)アルカノールは、式(21):
CH=CH−S(O)−R10−CH(−OH)−R10−S(O)−CH=CH (21)
(式中、R10は本明細書中で定義される)
の構造を有する。
【0120】
ある特定の実施形態において、式(19)のビス(ビニルスルホニル)アルカノールは、1,3−ビス(ビニルスルホニル)−2−プロパノールを含み、式(22):
CH=CH−S(O)−CH−CH(−OH)−CH−S(O)−CH=CH (22)
の構造を有する。
【0121】
式(18a)及び式(18b)のチオール末端ポリチオエーテル、並びに式(19)のビス(ビニルスルホニル)アルカノールは、アミン触媒といった塩基触媒の存在下で反応し得る。適切なアミン触媒の例として、例えば、トリエチレンジアミン(1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、DABCO)、ジメチルシクロヘキシルアミン(DMCHA)、ジメチルエタノールアミン(DMEA)、ビス−(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、N−エチルモルホリン、トリエチルアミン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)、ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA)、ベンジルジメチルアミン(BDMA)、N,N,N’−トリメチル−N’−ヒドロキシエチル−ビス(アミノエチル)エーテル、及びN’−(3−(ジメチルアミノ)プロピル)−N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミンが挙げられる。
【0122】
ある特定の実施形態において、本開示が提供するビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテルは、約400から約4,000のメルカプタン当量重量(MEW)を特徴とする。
【0123】
式(18a)及び式(18b)のチオール末端ポリチオエーテルを調製するために、様々な方法を使用することができる。適切なチオール末端ポリチオエーテル、及びそれらの製造方法の例は、その引用部分を参照により組み込む米国特許第6,172,179号の、第2カラム29行目から第4カラム22行目、第6カラム39行目から第10カラム50行目、及び第11カラム65行目から第12カラム22行目に記載される。そのようなチオール末端ポリチオエーテルは、二官能性の、即ち二つの末端チオール基を有する直鎖ポリマーであってもよく、又は、多官能性、即ち3つ以上の末端チオール基を有する分岐ポリマーであってもよい。適切なチオール末端ポリチオエーテルは、例えばPRC−DeSoto International Inc.(シルマー、カリフォルニア州)が提供するPermapol(登録商標)P3.1Eのように、商業的に入手できる。
【0124】
ある特定の実施形態において、末端チオール基が生じるようポリチオエーテルの調製に使用する各反応物の量を選択し、ポリチオール、及びジビニルエーテルといったジエンを反応させることによって、チオール末端ポリチオエーテルを調製することができる。従って、場合により、(n、又は>n、例えばn+1)モルのポリチオール(例えばジチオール、又は少なくとも二つの異なるジチオールの混合物等)、及び約0.05モルから1モルの、例えば0.1モルから0.8モル等の、チオール末端多官能化剤を、(n)モルのジエン(例えばジビニルエーテル、又は少なくとも二つの異なる、ジビニルエーテルといったジエンの混合物)と反応させ得る。ある特定の実施形態において、チオール末端多官能化剤は、2.05から3、例えば2.1から2.8等の平均官能性を有するチオール末端ポリチオエーテルを提供するのに十分な量で反応混合物中に存在する。
【0125】
チオール末端ポリチオエーテルの製造に使用する反応は、フリーラジカル触媒の触媒作用を受け得る。適切なフリーラジカル触媒として、アゾ化合物、例えばアゾ(ビス)イソブチロニトリル(AIBN)といったアゾビスニトリル化合物;過酸化ベンゾイル、及び過酸化t−ブチルといった有機過酸化物;及び過酸化水素といった無機過酸化物が挙げられる。反応は、ラジカル開始剤/光増感剤を用いる場合も用いない場合も、紫外光の照射によっても進行し得る。例えばトリエチルアミン等の有機塩基又は無機塩基の何れかを用いるイオン触媒法も使用され得る。
【0126】
適切なチオール末端ポリチオエーテルは、ジビニルエーテル又はジビニルエーテルの混合物を、過剰なジチオール又はジチオールの混合物と反応させることによって製造され得る。
【0127】
従って、ある特定の実施形態において、チオール末端ポリチオエーテルは、
(a)式(23):
HS−R−SH (23)
(式中、Rは、C2〜6アルカンジイル、C6〜8シクロアルカンジイル、C6〜10アルカンシクロアルカンジイル、C5〜8ヘテロシクロアルカンジイル、及び−[−(CHR−X−]−(CHR−から選択され、ここで
各Rは独立に水素及びメチルから選択され、
各Xは独立に−O−、−S−、−NH−、及び−NR−から選択され、ここでRは水素及びメチルから選択され、
sは2から6の整数であり、
qは1から5の整数であり、
rは2から10の整数である)
のジチオールと、
(b)式(24):
CH=CH−O−[−R−O−]−CH=CH (24)
(式中、
各Rは独立にC1〜10アルカンジイル、C6〜8シクロアルカンジイル、C6〜14アルカンシクロアルカンジイル、及び−[(−CHR−)−X−]−(−CHR−)−から選択され、ここでs、q、r、R、及びXは上記で定義される通りであり、
mは0から50の整数であり、
nは1から60の整数であり、
pは2から6の整数である)
のジビニルエーテルと
を含む反応物の反応生成物を含む。
また、ある特定の実施形態において、反応物は、(c)多官能性化合物B(−V)といった多官能性化合物を含んでもよく、ここでB、−V、及びzは本明細書中で定義される。
【0128】
ある特定の実施形態において、チオール末端ポリチオエーテルの調製における使用に適切なジチオールとして、式(23)を有するもの、本明細書中に開示される他のジチオール、又は本明細書中に開示される任意のジチオールの組み合わせが挙げられる。ある特定の実施形態において、ジチオールは式(23):
HS−R−SH (23)
(式中、
は、C2〜6アルカンジイル、C6〜8シクロアルカンジイル、C6〜10アルカンシクロアルカンジイル、C5〜8ヘテロシクロアルカンジイル、及び−[−(CHR−X−]−(CHR−から選択され、
ここで、
各Rは独立に水素及びメチルから選択され、
各Xは独立に−O−、−S−、及び−NR−から選択され、ここでRは水素及びメチルから選択され、
sは2から6の整数であり、
qは1から5の整数であり、
rは2から10の整数である)
の構造を有する。
【0129】
式(23)のジチオールの、ある特定の実施形態において、Rは−[−(CHR−X−]−(CHR−である。
【0130】
式(23)の化合物の、ある特定の実施形態において、Xは−O−、及び−S−から選択され、従って式(23)の−[−(CHR−X−]−(CHR−は、−[(−CHR−)−O−]−(CHR−、又は−[(−CHR−)−S−]−(CHR−である。ある特定の実施形態において、p及びrは等しく、例えばp及びrは何れも2である。
【0131】
式(23)のジチオールの、ある特定の実施形態において、Rは、C2〜6アルカンジイル、及び−[−(CHR−X−]−(CHR−から選択される。
【0132】
式(23)のジチオールの、ある特定の実施形態において、Rは−[−(CHR−X−]−(CHR−であり、ある特定の実施形態において、Xは−O−であり、ある特定の実施形態において、Xは−S−である。
【0133】
が−[−(CHR−X−]−(CHR−である、ある特定の実施形態において、sは2、rは2、qは1、及びXは−S−であり、ある特定の実施形態において、sは2、qは2、rは2、及びXは−O−であり、ある特定の実施形態において、sは2、rは2、qは1、及びXは−O−である。
【0134】
が−[−(CHR−X−]−(CHR−である、ある特定の実施形態において、各Rは水素であり、ある特定の実施形態において、少なくとも1つのRはメチルである。
【0135】
適切なジチオールの例として、例えば、1,2−エタンジチオール、1,2−プロパンジチオール、1,3−プロパンジチオール、1,3−ブタンジチオール、1,4−ブタンジチオール、2,3−ブタンジチオール、1,3−ペンタンジチオール、1,5−ペンタンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、1,3−ジメルカプト−3−メチルブタン、ジペンテンジメルカプタン、エチルシクロヘキシルジチオール(ECHDT)、ジメルカプトジエチルスルフィド、メチル置換ジメルカプトジエチルスルフィド、ジメチル置換ジメルカプトジエチルスルフィド、ジメルカプトジオキサオクタン、1,5−ジメルカプト−3−オキサペンタン、及び前述のものの任意の組み合わせが挙げられる。ポリチオールは、低級(例えばC1〜6)アルキル基、低級アルコキシ基、及びヒドロキシル基から選択されるペンダント基を、一つ又は複数有し得る。適切なアルキルペンダント基として、例えば、C1〜6直鎖アルキル、C3〜6分岐アルキル、シクロペンチル、及びシクロヘキシルが挙げられる。
【0136】
適切なジチオールの他の例として、ジメルカプトジエチルスルフィド(DMDS)(式(23)中、Rは−[(−CH−)−X−]−(CH−、ここでsは2、rは2、qは1、及びXは−S−)、ジメルカプトジオキサオクタン(DMDO)(式(23)中、Rは−[(−CH−)−X−]−(CH−、ここでsは2、qは2、rは2、及びXは−O−)、及び1,5−ジメルカプト−3−オキサペンタン(式(23)中、Rは−[(−CH−)−X−]−(CH−、ここでsは2、rは2、qは1、及びXは−O−)が挙げられる。炭素主鎖中のヘテロ原子、及びメチル基等のペンダントアルキル基の両方を含むジチオールを使用することも可能である。そのような化合物として、例えば、HS−CHCH(CH)−S−CHCH−SH、HS−CH(CH)CH−S−CHCH−SHといったメチル置換DMDS、並びにHS−CHCH(CH)−S−CHCHCH−SH、及びHS−CH(CH)CH−S−CHCH(CH)−SHといったジメチル置換DMDSが挙げられる。
【0137】
ポリチオエーテルを調製するための、適切なジビニルエーテルとして、例えば式(24):
CH=CH−O−(−R−O−)−CH=CH (24)
のジビニルエーテルが挙げられ、ここで式(24)中のRは、C2〜6n−アルカンジイル基、C3〜6分岐アルカンジイル基、C6〜8シクロアルカンジイル基、C6〜10アルカンシクロアルカンジイル基、及び−[(−CH−)−O−]−(−CH−)−から選択され、ここでsは2から6までの範囲の整数、qは1から5の整数、及びrは2から10の整数である。式(24)のジビニルエーテルの、ある特定の実施形態において、Rは、C2〜6n−アルカンジイル基、C3〜6分岐アルカンジイル基、C6〜8シクロアルカンジイル基、C6〜10アルカンシクロアルカンジイル基であり、ある特定の実施形態において、−[(−CH−)−O−]−(−CH−)−である。
【0138】
適切なジビニルエーテルとして、例えば、1から4個のオキサアルカンジイル基を有する化合物(すなわち式(24)においてmが1から4までの範囲の整数である化合物)といった、少なくとも一つのオキシアルカンジイル基を有する化合物等が挙げられる。ある特定の実施形態において、式(24)におけるmは、2から4までの範囲の整数である。1分子当たりのオキシアルカンジイル単位の数が非整数の平均値であることを特徴とする、市販のジビニルエーテル混合物を採用することも可能である。従って、式(24)におけるmは、例えば1.0から10.0まで、1.0から4.0まで、又は2.0から4.0までといった、0から10.0までの範囲の有理数の値をとることもできる。
【0139】
適切なビニルエーテルの例として、ジビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル(EG−DVE)(式(24)におけるRはエタンジイル、及びmは1)、ブタンジオールジビニルエーテル(BD−DVE)(式(24)におけるRはブタンジイル、及びmは1)、ヘキサンジオールジビニルエーテル(HD−DVE)(式(24)におけるRはヘキサンジイル、及びmは1)、ジエチレングリコールジビニルエーテル(DEG−DVE)(式(24)におけるRはエタンジイル、及びmは2)、トリエチレングリコールジビニルエーテル(式(24)におけるRはエタンジイル、及びmは3)、テトラエチレングリコールジビニルエーテル(式(24)におけるRはエタンジイル、及びmは4)、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、ポリテトラヒドロフリルジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテルといったトリビニルエーテルモノマー、ペンタエリトリトールテトラビニルエーテルといった四官能性エーテルモノマー、及びそのようなポリビニルエーテルモノマーの二つ以上の組み合わせが挙げられる。ポリビニルエーテルは、アルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、及びアミン基から選択されるペンダント基を一つ又は複数有し得る。
【0140】
ある特定の実施形態において、式(24)におけるRがC3〜6分岐アルカンジイルであるジビニルエーテルは、ポリヒドロキシ化合物をアセチレンと反応させることによって調製され得る。この種のジビニルエーテルの例としては、式(24)におけるRが、アルキル置換メタンジイル基、例えば−CH(−CH)−(式(24)におけるRがエタンジイル、及びmが3.8)、又はアルキル置換エタンジイルである化合物が挙げられる。
【0141】
他の有用なジビニルエーテルとして、式(24)におけるRがポリテトラヒドロフリル(poly−THF)、又はポリオキシアルカンジイルであり、例えば平均して約3個のモノマー単位を有する化合物等が挙げられる。
【0142】
式(24)のポリビニルエーテルモノマーを2種類以上使用してもよい。従って、ある特定の実施形態において、式(23)のジチオール2種及び式(24)のポリビニルエーテルモノマー1種、式(23)のジチオール1種及び式(24)のポリビニルエーテルモノマー2種、式(23)のジチオール2種及び式(24)のジビニルエーテルモノマー2種、並びに式(23)及び式(24)のうちの一つ又は両方の化合物の3種以上を用いて、多様なチオール末端ポリチオエーテルを製造し得る。
【0143】
ある特定の実施形態において、ポリビニルエーテルモノマーは、チオール末端ポリチオエーテルの調製に使用する反応物を、20から50未満のモル百分率で含み、ある特定の実施形態において、30から50未満のモル百分率で含む。
【0144】
本開示が提供する、ある特定の実施形態において、ジチオール及びジビニルエーテルの相対量は、末端チオール基を有するポリチオエーテルが生成するように選択される。従って、式(23)のジチオール、又は式(23)の少なくとも2種の異なるジチオールの混合物を、式(24)のジビニルエーテル、又は式(24)の少なくとも2種の異なるジビニルエーテルの混合物と、チオール基のビニル基に対するモル比が1:1よりも多く、例えば1.1〜2.0:1.0等となるような相対量で反応させる。
【0145】
ジチオールとジビニルエーテル間の反応、及び/又はポリチオールとポリビニルエーテル間の反応は、フリーラジカル触媒の触媒作用を受け得る。適切なフリーラジカル触媒として、例えば、アゾ化合物、例えばアゾ(ビス)イソブチロニトリル(AIBN)といったアゾビスニトリル;過酸化ベンゾイル、及び過酸化t−ブチルといった有機過酸化物;及び過酸化水素といった無機過酸化物が挙げられる。触媒は、フリーラジカル触媒、イオン触媒、又は紫外線照射であってもよい。ある特定の実施形態において、触媒は、酸性又は塩基性化合物を含まず、分解により酸性又は塩基性化合物を生成しない。フリーラジカル触媒の例として、Vazo(登録商標)−57(Du Pont)、Vazo(登録商標)−64(Du Pont)、Vazo(登録商標)−67(Du Pont)、V−70(登録商標)(Wako Specialty Chemicals)、及びV−65B(登録商標)(Wako Specialty Chemicals)といったアゾ系触媒が挙げられる。他のフリーラジカル触媒の例は、過酸化t−ブチルといった過酸化アルキルである。反応は、カチオン性光開始部分がある場合もない場合も、紫外光の照射によっても進行され得る。
【0146】
本開示が提供するチオール末端ポリチオエーテルは、式(23)の少なくとも1種の化合物と式(24)の少なくとも1種の化合物を組み合わせ、その後適切な触媒を添加し、30℃から120℃の温度、例えば70℃から90℃等で、2から24時間、例えば2から6時間等の時間に渡り、反応を行うことによって調製され得る。
【0147】
本明細書中に開示されるように、チオール末端ポリチオエーテルは、多官能性ポリチオエーテルを含み得る。即ち、チオール末端ポリチオエーテルは、2.0を超える平均官能性を有し得る。適切な多官能性チオール末端ポリチオエーテルとして、例えば、式(28a):
{HS−R−[−S−(CH−O−(R−O)−(CH−S−R−]−S−V’−}B (18a)
(式中、zは、平均して2.0を超える値を有し、ある特定の実施形態において、2から3の間の値、2から4の間の値、3から6の間の値を有し、ある特定の実施形態において、3から6の整数である)
の構造を有するものが挙げられる。
【0148】
そのような多官能性チオール末端ポリマーの調製における使用に適切な多官能化剤として、三官能化剤、即ちzが3の化合物が挙げられる。適切な三官能化剤として、例えば、その引用部分を参照により組み込む米国公開第2010/0010133の[0102]から[0105]段落に開示されているような、シアヌル酸トリアリル(triallyl cyanurate:TAC)、1,2,3−プロパントリチオール、イソシアヌラート含有トリチオール、及びそれらの混合物、並びに、例えば、参照により組み込む米国特許出願公開第2011/0319559に開示されているような、イソシアヌラートが挙げられる。他の有用な多官能化剤として、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、並びに、それぞれ参照により組み込む、米国特許第4,366,307号、第4,609,762号、及び第5,225,472号に記載のポリチオールが挙げられる。多官能化剤の混合物もまた使用され得る。その結果、本開示が提供するビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテルは、広範囲な平均官能性を有し得る。例えば、三官能化剤は、2.05から3.0、例えば2.1から2.6等といった平均官能性をもたらし得る。より広範囲な平均官能性は、四官能性以上の官能性の多官能化剤を用いることにより達成され得る。官能性は、当業者が理解するように、化学量論といった因子によっても決定され得る。
【0149】
2.0を超える官能性を有する、チオール末端ポリチオエーテル及びビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテルは、それぞれ参照により組み込む、米国特許出願公開第2010/0010133号、米国特許出願公開第2011/0319559号、及び米国特許第6,172,179号に記載される二官能チオール末端ポリチオエーテルと同様の方法によって調製され得る。ある特定の実施形態において、ポリチオエーテルは、(i)本明細書中に記載される一つ又は複数のジチオールを、(ii)本明細書中に記載される一つ又は複数のジビニルエーテル、及び(iii)一つ又は複数の多官能化剤と組み合わせることによって調製され得る。混合物はその後、任意選択で適切な触媒の存在下で、反応させられ得、2.0を超える官能性を有する、チオール末端ポリチオエーテル又はビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテルをもたらし得る。
【0150】
ある特定の実施形態において、チオール末端ポリチオエーテル、ビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテル、及び前述のものの任意のキャップされている類似体を含む、ポリチオエーテルは、分子量分布を有するポリチオエーテルに相当する。ある特定の実施形態において、有用なポリチオエーテルは、500ダルトンから20,000ダルトン、ある特定の実施形態において、2,000ダルトンから5,000ダルトン、及びある特定の実施形態において、3,000ダルトンから4,000ダルトンの範囲の、数平均分子量を示すことができる。ある特定の実施形態において、有用なポリチオエーテルの示す多分散性(M/M:重量平均分子量/数平均分子量)は、1から20の範囲であり、ある特定の実施形態において、1から5の範囲である。ポリチオエーテルの分子量分布は、例えばゲル浸透クロマトグラフィーによって特徴付けることができる。
【0151】
金属リガンド含有プレポリマー
ビス(スルホニル)アルカノールは、硫黄含有プレポリマーといったポリマーの主鎖に組み込まれ得る金属リガンドの一種を表し、表面接着性を改善する。他の金属リガンドもまた、ポリマー主鎖に組み込まれ得、表面接着性を高める。航空宇宙用シーラント用途に関するといった、ある特定の実施形態において、金属リガンドは、アルミニウム、酸化アルミニウム、Al(III)、陽極酸化アルミニウム、チタン、酸化チタン、及び/又はAlodine(登録商標)の表面に配位できるリガンドから選択され得る。金属リガンドは、二座、三座、又はより多座の配位錯体を表面原子に対し形成し得る。従って、金属リガンド含有プレポリマーとして、ビス(スルホニル)アルカノール基が他の金属リガンドに置き換えられた、本明細書中に開示される任意のビス(スルホニル)アルカノール含有プレポリマーが挙げられる。同様に、金属リガンド含有プレポリマー、その誘導体、及びそれらのキャップされている類似体の合成方法として、本明細書中に記載のビス(スルホニル)アルカノール含有プレポリマーの任意の調製方法に、適当な金属キレート剤を採用したものが挙げられる。金属リガンドを含む部分−L−に加え、金属キレート剤R−L−Rは、硫黄含有ポリマーの前駆体と反応する末端基を含む基Rを含む。ある特定の実施形態において、各Rは、アルケニル、エポキシ、又はマイケルアクセプター基といった、チオール基と反応する末端基を含む。
【0152】
金属リガンド、特にアルミニウム(III)金属リガンドとして、金属の空の軌道に電子を供与し得る、−OH、−PO、−SO、−COOH、−C=O、及び−NH基といった強いルイス塩基が挙げられる。アルミニウム(III)との多座配位錯体の形成に有効な塩基性供与体基として、脂肪族モノヒドロキシ酸アニオン、カテコラート、芳香族ヒドロキシ酸アニオン、3−ヒドロキシ−4−ピリジノン、ヒドロキサマート、及び3−ヒドロキシ−2−ピリジノンが挙げられる。安定なアルミニウム(III)錯体は、負の酸素電子供与体を有する多座リガンドを含む。金属リガンドは、金属と共に二座錯体又は三座錯体といった多座錯体を形成し得る。
【0153】
ある特定の実施形態において、金属リガンドの官能基は、ビス(スルホニル)アルカノール、ヒドロキシピリジノン、及びアセチルアセトナートから選択される金属キレート剤に由来する基である。
【0154】
アルミニウム、酸化アルミニウム、及びAl(III)のキレート剤の例として、2,3−ジヒドロキシ安息香酸、5−ニトロサリチラート、3−ヒドロキシ−4−ピリジノン、3−ヒドロキシ−2−ピリジノン、2−2’−ジヒドロキシアゾベンゼン、8−ヒドロキシキノリン、オキシラート、マロナート、シトラート、イミノ二酢酸、ピコリン酸、マルトール、コウジ酸、N,N’−二酢酸(EDTA)、N−(2−ヒドロキシ)エチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、エチレンジアミン−N,N’−ビス(2−ヒドロキシフェニル酢酸(EDDHA)、及びN,N’−ビス(ヒドロキシベンジル)エチレンジアミン−N,N’−二酢酸(HBED)、アセトアセタート、アセチルアセトナート、カテコラート、ヒドロキサマート、及びキノンが挙げられる。他のアルミニウムキレート化剤、及び酸化アルミニウムキレート化剤は、例えばYokel、「錯体化学レビュー2002(Coordination Chemistry Reviews 2002)」、228巻、97から113頁、及びMartellら、「錯体化学レビュー1996(Coordination Chemistry Reviews 1996)」、149巻、311から328頁に開示されている。
【0155】
チタン金属リガンド、又は酸化チタン金属リガンドの例として、H、アセトアセトナート(CH(COCH)、EDTA、trans−1,2−シクロヘキサンジアミン四酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸(GEDTA、(CHOCHCHN(CHCOOH))、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA、HOOCHN(CHCHN(CHCOOH)))、ニトリル三酢酸(NTA、N(CHCOOH))、サリチル酸、乳酸、アセトアセトナート、トリエタノールアミン、及び前述のものの任意の組み合わせが挙げられる。
【0156】
ある特定の実施形態において、金属リガンドは、アルミニウム(III)表面に配位可能なヘテロ原子基(ヘテロ原子含有基)を少なくとも二つ含む。ある特定の実施形態において、金属リガンドは、−OH、−PO、−P(O)−、−SO、−S(O)−、−COOH、−C=O、−NH、−NH−、及び前述のものの任意の組み合わせから選択されるヘテロ原子基を、少なくとも二つ含む。
【0157】
ある特定の実施形態において、金属リガンドの官能基は、式(25a)、式(25b)、式(25c)、式(25d)、式(25e)、及び前述のものの任意の組み合わせ:
−X−(CH−CH(−OH)− (25a)
−X−(CH−CH(−OH)−(CH−X− (25b)
−CH(−OH)−(CH−X−(CH−CH(−OH)− (25c)
−CH(−OH)−R−CH(−OH)− (25d)
−C(O)−R−C(O)− (25e)
(式中、−X−は独立に−C(O)−又は−S(O)−から選択され、各nは独立に1、2、及び3から選択され、RはC1〜3アルカンジイルである)
から選択される部分を含む。ある特定の実施形態において、各Xは−C(O)−、及び各nは1であり、ある特定の実施形態において、各Xは−S(O)−、及び各nは1である。
【0158】
ビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテルに関し、ポリチオエーテルを含む硫黄含有プレポリマーといったプレポリマーの主鎖に、他の金属リガンドが組み込まれてもよい。従って、ある特定の実施形態において、金属リガンド含有プレポリマーは、式(26):
−A−R9’−L−R9’−A− (26)
(式中、
各R9’は、独立に、金属キレート剤R−L−RのRとチオール基の反応に由来する部分であり、ここで各Rは、チオールと反応する末端基を含み、Lは金属リガンドを含み、
各Aは独立に式(12):
−S−R−[−S−(CH−O−(R−O)−(CH−S−R−]−S− (12)
の部分であり、ここで、
各Rは、独立に、C2〜10アルカンジイル、C6〜8シクロアルカンジイル、C6〜10アルカンシクロアルカンジイル、C5〜8ヘテロシクロアルカンジイル、又は−[(−CHR−)−X−]−(−CHR−)−を含み、ここで
sは2から6の整数であり、
qは1から5の整数であり、
rは2から10の整数であり、
各Rは独立に水素又はメチルを含み、
各Xは独立に−O−、−S−、及び−NR−を含み、
ここでRは水素及びメチルから選択され、
各Rは独立にC1〜10アルカンジイル、C6〜8シクロアルカンジイル、C6〜14アルカンシクロアルカンジイル、又は−[(−CHR−)−X−]−(−CHR−)−を含み、ここでs、q、r、R、及びXは、Rについて定義される通りであり、
mは0から50の整数であり、
nは1から60の整数であり、
pは2から6の整数である)
の部分を含む。
【0159】
金属キレート剤R−L−Rは、例えばチオール基と反応する基R、及び金属リガンド−L−を含む。金属リガンド−L−は、例えば、式(25a)から(25e)の部分を含み得る。ある特定の実施形態において、金属キレート剤は、ビス(スルホニル)アルカノール、ヒドロキシピリジノン、アセチルアセトナート、及び前述のものの任意の組み合わせから選択される。
【0160】
ある特定の実施形態において、金属リガンド含有プレポリマーは、式(28a)の金属リガンド含有ポリチオエーテル、式(28b)の金属リガンド含有ポリチオエーテル、又はそれらの組み合わせ:
−A−[−R9’−L−R9’−A−]−R (28a)
{R−A−[−R9’−L−R9’−A−]−V’−}B (28b)
(式中、
Nは1から10の整数であり、
各R9’は、独立に、金属キレート剤R−L−RのRとチオール基の反応に由来する部分であり、ここで各Rは、チオールと反応する末端基を含み、Lは金属リガンドを含み、
各Aは独立に式(12):
−S−R−[−S−(CH−O−(R−O)−(CH−S−R−]−S− (12)
の部分であり、ここで、
各Rは、独立に、C2〜10アルカンジイル、C6〜8シクロアルカンジイル、C6〜10アルカンシクロアルカンジイル、C5〜8ヘテロシクロアルカンジイル、又は−[(−CHR−)−X−]−(−CHR−)−を含み、ここで
sは2から6の整数であり、
qは1から5の整数であり、
rは2から10の整数であり、
各Rは独立に水素又はメチルを含み、
各Xは独立に−O−、−S−、又は−NR−を含み、ここでRは水素及びメチルから選択され、
各Rは独立にC1〜10アルカンジイル、C6〜8シクロアルカンジイル、C6〜14アルカンシクロアルカンジイル、又は−[(−CHR−)−X−]−(−CHR−)−を含み、ここでs、q、r、R、及びXは、Rについて定義される通りであり、
mは0から50の整数であり、
nは1から60の整数であり、
pは2から6の整数であり、
Bは、z価の多官能化剤B(−V)のコアを表し、ここで
zは3から6の整数であり、
各Vは、末端チオール基と反応する末端基を含む基であり、
各−V’−は、−Vとチオールの反応に由来する基であり、
各Rは、独立に、水素、又は末端反応基を有する部分を含む)
を含む。
【0161】
式(28a)及び式(28b)のプレポリマーの、ある特定の実施形態において、各Rは水素である。
【0162】
式(28a)及び式(28b)のプレポリマーの、ある特定の実施形態において、各Rは同一であり、末端反応基は、−SH、−CH=CH、−NH、−OH、エポキシ基、ポリアルコキシシリル基、イソシアナート基、及びマイケルアクセプター基から選択される。
【0163】
ある特定の実施形態において、チオール末端金属リガンド含有ポリチオエーテルは、
(a)式(18a)のチオール末端ポリチオエーテル、式(18b)のチオール末端ポリチオエーテル、又はそれらの組み合わせ:
HS−R−[−S−(CH−O−(R−O)−(CH−S−R−]−SH (18a)
{HS−R−[−S−(CH−O−(R−O)−(CH−S−R−]−S−V’−}B (18b)
(式中、
各Rは独立にC2〜10アルカンジイル、C6〜8シクロアルカンジイル、C6〜10アルカンシクロアルカンジイル、C5〜8ヘテロシクロアルカンジイル、又は−[(−CHR−)−X−]−(−CHR−)−を含み、ここで
sは2から6の整数であり、
qは1から5の整数であり、
rは2から10の整数であり、
各Rは独立に水素又はメチルを含み、
各Xは独立に−O−、−S−、又は−NR−を含み、ここでRは水素及びメチルから選択され、
各Rは独立にC1〜10アルカンジイル、C6〜8シクロアルカンジイル、C6〜14アルカンシクロアルカンジイル、又は−[(−CHR−)−X−]−(−CHR−)−を含み、ここでs、q、r、R、及びXは、Rについて定義される通りであり、
mは0から50の整数であり、
nは1から60の整数であり、
pは2から6の整数であり、
Bは、z価の多官能化剤B(−V)のコアを表し、ここで
zは3から6の整数であり、
各Vは、末端チオール基と反応する末端基を含む基であり、
各−V’−は、−Vとチオールの反応に由来する基である)
を含む、チオール末端ポリチオエーテルと、
(b)金属キレート剤R−L−R(式中、各Rは独立にチオール基と反応する末端基を含む部分であり、−L−は金属リガンドを含む部分である)と
を含む反応物の反応生成物を含む。
【0164】
式(18a)及び式(18b)の、ある特定の実施形態において、金属リガンドは、式(25a)、式(25b)、式(25c)、式(25d)、式(25e)、及び前述のものの任意の組み合わせ:
−X−(CH−CH(−OH)− (25a)
−X−(CH−CH(−OH)−(CH−X− (25b)
−CH(−OH)−(CH−X−(CH−CH(−OH)− (25c)
−CH(−OH)−R−CH(−OH)− (25d)
−C(O)−R−C(O)− (25e)
(式中、
−X−は独立に−C(O)−又は−S(O)−から選択され、
各nは独立に1、2、及び3から選択され、
はC1〜3アルカンジイルである)
から選択される部分を含み得る。
【0165】
式(18a)及び式(18b)の、ある特定の実施形態において、金属リガンドは、ビス(スルホニル)アルカノール、ヒドロキシピリジノン、アセチルアセトナート、又は前述のものの任意の組み合わせを含む。
【0166】
ある特定の実施形態において、式(18a)のポリチオエーテルは、1,8−ジメルカプト−3,6−ジオキサオクタン、及びジエチレングリコールジビニルエーテルの、反応生成物を含む。
【0167】
ある特定の実施形態において、式(18b)のポリチオエーテルは、1,8−ジメルカプト−3,6−ジオキサオクタン、ジエチレングリコールジビニルエーテル、及びシアヌル酸トリアリルの、反応生成物を含む。
【0168】
ある特定の実施形態において、チオール末端金属リガンド含有ポリチオエーテルプレポリマーは、
(a)式(29a)のチオール末端金属リガンド含有ポリチオエーテル、式(29b)のチオール末端金属リガンド含有ポリチオエーテル、又はそれらの組み合わせ:
H−A−[−R9’−L−R9’−A−]−H (29a)
{H−A−[−R9’−L−R9’−A−]−V’−}B (29b)
(式中、
Nは1から10の整数であり、
各R9’は、独立に、金属キレート剤R−L−RのRとチオール基の反応に由来する部分であり、ここで各Rは、チオールと反応する末端基を含み、Lは金属リガンドを含み、
各Aは独立に式(12):
−S−R−[−S−(CH−O−(R−O)−(CH−S−R−]−S− (12)
の部分であり、ここで、
各Rは、独立に、C2〜10アルカンジイル、C6〜8シクロアルカンジイル、C6〜10アルカンシクロアルカンジイル、C5〜8ヘテロシクロアルカンジイル、又は−[(−CHR−)−X−]−(−CHR−)−を含み、ここで
sは2から6の整数であり、
qは1から5の整数であり、
rは2から10の整数であり、
各Rは独立に水素又はメチルを含み、
各Xは独立に−O−、−S−、又は−NR−を含み、ここでRは水素及びメチルから選択され、
各Rは独立にC1〜10アルカンジイル、C6〜8シクロアルカンジイル、C6〜14アルカンシクロアルカンジイル、又は−[(−CHR−)−X−]−(−CHR−)−を含み、ここでs、q、r、R、及びXは、Rについて定義される通りであり、
mは0から50の整数であり、
nは1から60の整数であり、
pは2から6の整数であり、
Bは、z価のアルケニル末端多官能化剤B(−V)のコアを表し、ここで
zは3から6の整数であり、
各Vは、末端アルケニル基を含む基であり、
各−V’−は、−Vとチオールの反応に由来する基である)
を含む、チオール末端金属リガンド含有ポリチオエーテルと、
(b)ポリアルケニル化合物と
を含む反応物の反応生成物を含む。
【0169】
式(29a)及び式(29b)のポリチオエーテルの、ある特定の実施形態において、金属リガンドは、式(25a)、式(25b)、式(25c)、式(25d)、式(25e)、及び前述のものの任意の組み合わせ:
−X−(CH−CH(−OH)− (25a)
−X−(CH−CH(−OH)−(CH−X− (25b)
−CH(−OH)−(CH−X−(CH−CH(−OH)− (25c)
−CH(−OH)−R−CH(−OH)− (25d)
−C(O)−R−C(O)− (25e)
(式中、
−X−は独立に−C(O)−又は−S(O)−から選択され、
各nは独立に1、2、及び3から選択され、
はC1〜3アルカンジイルである)
から選択される部分を含む。
【0170】
式(29a)及び式(29b)のチオール末端金属リガンド含有ポリチオエーテルの、ある特定の実施形態において、ポリアルケニル化合物は、ジエチレングリコールジビニルエーテル、シアヌル酸トリアリル、又はそれらの組み合わせを含む。
【0171】
ある特定の実施形態において、式(29a)のチオール末端金属リガンド含有ポリチオエーテルの調製方法は、式(18a)のチオール末端ポリチオエーテル(N+1)モルを、−L−及びチオール基と反応する末端基を含む金属キレート剤(N)モルと反応させる工程を含む:
H−A−[−R9’−L−R9’−A−]−H (29a)
HS−R−[−S−(CH−O−(R−O)−(CH−S−R−]−SH (18a)
(式中、
Nは1から10の整数であり、
各R9’は、独立に、金属キレート剤R−L−RのRとチオール基の反応に由来する部分であり、ここで各Rは、チオールと反応する末端基を含み、Lは金属リガンドを含み、
各Aは独立に式(12):
−S−R−[−S−(CH−O−(R−O)−(CH−S−R−]−S− (12)
の部分であり、ここで、
各Rは、独立に、C2〜10アルカンジイル、C6〜8シクロアルカンジイル、C6〜10アルカンシクロアルカンジイル、C5〜8ヘテロシクロアルカンジイル、又は−[(−CHR−)−X−]−(−CHR−)−を含み、ここで
sは2から6の整数であり、
qは1から5の整数であり、
rは2から10の整数であり、
各Rは独立に水素又はメチルを含み、
各Xは独立に−O−、−S−、又は−NR−を含み、ここでRは水素又はメチルを含み、
各Rは独立にC1〜10アルカンジイル、C6〜8シクロアルカンジイル、C6〜14アルカンシクロアルカンジイル、又は−[(−CHR−)−X−]−(−CHR−)−を含み、ここでs、q、r、R、及びXは、Rについて定義される通りであり、
mは0から50の整数であり、
nは1から60の整数であり、
pは2から6の整数である)。
【0172】
前記方法のある特定の実施形態において、金属リガンドは、式(25a)、式(25b)、式(25c)、式(25d)、式(25e)、及び前述のものの任意の組み合わせ:
−X−(CH−CH(−OH)− (25a)
−X−(CH−CH(−OH)−(CH−X− (25b)
−CH(−OH)−(CH−X−(CH−CH(−OH)− (25c)
−CH(−OH)−R−CH(−OH)− (25d)
−C(O)−R−C(O)− (25e)
(式中、
−X−は独立に−C(O)−又は−S(O)−から選択され、
各nは独立に1、2、及び3から選択され、
はC1〜3アルカンジイルである)
から選択される部分を含む。
【0173】
前記方法のある特定の実施形態において、金属キレート剤は、ビス(スルホニル)アルカノール、ヒドロキシピリジノン、アセチルアセトナート、又は前述のものの任意の組み合わせを含む。
【0174】
ある特定の実施形態において、式(29b)のチオール末端金属リガンド含有ポリチオエーテルの調製方法は、式(29a)のチオール末端金属リガンド含有ポリチオエーテル(z)モルを、1モルの多官能化剤B{V}と反応させる工程を含む:
{H−A−[−R9’−L−R9’−A−]−V’−}B (29b)
H−A−[−R9’−L−R9’−A−]−H (29a)
(式中、
Nは1から10の整数であり、
各R9’は、独立に、金属キレート剤R−L−RのRとチオール基の反応に由来する部分であり、ここで各Rは、チオールと反応する末端基を含み、Lは金属リガンドを含み、
各Aは独立に式(12):
−S−R−[−S−(CH−O−(R−O)−(CH−S−R−]−S− (12)
の部分であり、ここで、
各Rは、独立に、C2〜10アルカンジイル、C6〜8シクロアルカンジイル、C6〜10アルカンシクロアルカンジイル、C5〜8ヘテロシクロアルカンジイル、又は−[(−CHR−)−X−]−(−CHR−)−を含み、ここで
sは2から6の整数であり、
qは1から5の整数であり、
rは2から10の整数であり、
各Rは独立に水素又はメチルを含み、
各Xは独立に−O−、−S−、又は−NR−を含み、ここでRは水素又はメチルを含み、
各Rは独立にC1〜10アルカンジイル、C6〜8シクロアルカンジイル、C6〜14アルカンシクロアルカンジイル、又は−[(−CHR−)−X−]−(−CHR−)−を含み、ここでs、q、r、R、及びXはRで定義される通りであり、
mは0から50の整数であり、
nは1から60の整数であり、
pは2から6の整数であり、
Bは、z価の多官能化剤B(−V)のコアを表し、ここで
zは3から6の整数であり、
各Vは、末端チオール基と反応する末端基を含む基であり、
各−V’−は、−Vとチオールの反応に由来する基である)。
【0175】
前記方法のある特定の実施形態において、金属リガンドは、式(25a)、式(25b)、式(25c)、式(25d)、式(25e)、及び前述のものの任意の組み合わせ:
−X−(CH−CH(−OH)− (25a)
−X−(CH−CH(−OH)−(CH−X− (25b)
−CH(−OH)−(CH−X−(CH−CH(−OH)− (25c)
−CH(−OH)−R−CH(−OH)− (25d)
−C(O)−R−C(O)− (25e)
(式中、
−X−は独立に−C(O)−又は−S(O)−から選択され、
各nは独立に1、2、及び3から選択され、
はC1〜3アルカンジイルである)
から選択される部分を含む。
【0176】
前記方法のある特定の実施形態において、金属キレート剤は、ビス(スルホニル)アルカノール、ヒドロキシピリジノン、アセチルアセトナート、又は前述のものの任意の組み合わせから選択される。
【0177】
金属リガンド含有硫黄含有プレポリマー
接着性を改善するために、ポリチオエーテルプレポリマー以外に、金属リガンドを、他の硫黄含有ポリマーといった他のポリマーの主鎖に組み込んでもよい。硫黄含有ポリマーは、繰り返し単位中に少なくとも一つの硫黄原子を有する、任意のポリマーであり得、例えば高分子チオール、ポリチオール、チオエーテル、ポリチオエーテル、硫黄含有ポリホルマール、及びポリスルフィドが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書中で用いる「チオール」は、チオール又はメルカプタン基、即ち「SH」基を、唯一の官能基として含む化合物、又は、「SH」基を、例えばチオグリセロールのように、ヒドロキシル基といった他の官能基と組み合わせて含む化合物を意味する。ポリチオールは、ジチオール、又はそれより高い官能性のチオールといった、複数のSH基を有するような化合物を意味する。そのような基は、概して、他の官能基と反応する活性水素を有するような、末端及び/又はペンダント基である。ポリチオールは、末端及び/又はペンダントの硫黄(−SH)、並びに非反応性硫黄原子(−S−又は−S−S−)の両方を含むことができる。従って、ポリチオールという用語は、一般的にポリチオエーテル及びポリスルフィドを包含する。
【0178】
ポリスルフィドという用語は、一つ又は複数のスルフィド結合、即ち−Sx−結合(ここでxは2から4である)を、ポリマー主鎖及び/又はポリマー鎖上のペンダントの位置に含有するポリマーを意味する。ある特定の実施形態において、ポリスルフィドポリマーは、二つ以上の硫黄−硫黄結合を有するだろう。適切なポリスルフィドは、例えば、Akzo Nobel及び東レ・ファインケミカル株式会社(Toray Fine Chemicals)から、Thioplast(登録商標)及びThiokol−LPという製品名で商業的に入手可能である。Thioplast(登録商標)製品は、例えば1,100未満から8,000超まで(分子量は、1モル当たりのグラム数の平均分子量)の範囲の広範囲な分子量で入手可能である。ポリスルフィドは、1,000ダルトンから4,000ダルトンの数平均分子量を有する場合もある。
【0179】
航空宇宙用シーラント用途に有用な硫黄含有ポリホルマールプレポリマーは、例えば米国特許出願公開第2012/0234205号、及び米国特許出願公開第2012/0238707号に開示されている。
【0180】
ビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテル合成方法
一般的に、チオール末端ビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテルは、チオール末端ポリチオエーテル、又はチオール末端ポリチオエーテルの混合物を、ビス(ビニルスルホニル)アルカノールといったビス(スルホニル)アルカノールと反応させることによって調製され得る。ある特定の実施形態において、チオール末端ビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテルは、二官能性チオール末端ポリチオエーテル、又は二官能性チオール末端ポリチオエーテルの混合物を、チオール基と反応する末端基を有するビス(スルホニル)アルカノール又はビス(ビニルスルホニル)アルカノールといった、ビス(スルホニル)アルカノールと反応させることによって調製され得る。
【0181】
ある特定の実施形態において、式(16a)のチオール末端ビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテルの調製方法は、式(18a)のチオール末端ポリチオエーテル(N+1)モルを、式(4a)のビス(スルホニル)アルカノール(N)モルと反応させる工程を含む:
H−A−[−R8’−S(O)−R10−CH(−OH)−R10−S(O)−R8’−A−]−H (16a)
HS−R−[−S−(CH−O−(R−O)−(CH−S−R−]−SH (18a)
−S(O)−R10−CH(−OH)−R10−S(O)−R (4a)
(式中、
Nは1から10の整数であり、
各Rは、独立に末端チオール基と反応する末端基を含む部分から選択され、
各R8’は、ビス(スルホニル)アルカノールとチオール基の反応に由来する部分であり、
各R10は、独立にC1〜3アルカンジイル及び置換C1〜3アルカンジイルから選択され、ここで一つ又は複数の置換基は−OHであり、
各Aは独立に式(12):
−S−R−[−S−(CH−O−(R−O)−(CH−S−R−]−S− (12)
の部分であり、ここで、
各Rは、独立に、C2〜10アルカンジイル、C6〜8シクロアルカンジイル、C6〜10アルカンシクロアルカンジイル、C5〜8ヘテロシクロアルカンジイル、及び−[(−CHR−)−X−]−(−CHR−)−から選択され、ここで
sは2から6の整数であり、
qは1から5の整数であり、
rは2から10の整数であり、
各Rは独立に水素及びメチルから選択され、
各Xは独立に−O−、−S−、及び−NR−から選択され、
ここでRは水素及びメチルから選択され、
各Rは独立にC1〜10アルカンジイル、C6〜8シクロアルカンジイル、C6〜14アルカンシクロアルカンジイル、及び−[(−CHR−)−X−]−(−CHR−)−から選択され、ここでs、q、r、R、及びXは、Rについて定義される通りであり、
mは0から50の整数であり、
nは1から60の整数であり、
pは2から6の整数である)。
【0182】
式(16a)のチオール末端ビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテルの、ある特定の実施形態において、Nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9であり、ある特定の実施形態において、Nは10である。式(16a)のビス(スルホニル)アルカノール含有ポリマーの、ある特定の実施形態において、分子量は200ダルトンから20,000ダルトンである。ある特定の実施形態において、式(16a)のチオール末端ビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテルは、Nの値が異なる式(16a)のビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテルの組み合わせを含む。式(16a)のチオール末端ビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテルの、ある特定の実施形態において、Nは1である。従って、実際には、式(16a)のチオール末端ビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテルを調製する際、式(16a)のチオール末端ビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテルが異なる値のNを有するチオール末端ビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテルの混合物に相当するといったように、ビス(スルホニル)アルカノールに対するチオール末端ポリチオエーテルのモル比は、整数である必要はない。
【0183】
ある特定の実施形態において、式(16b)のチオール末端ビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテルの調製方法は、式(16a)のチオール末端ビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテル(z)モルを、1モルの多官能化剤B{V}と反応させる工程を含む:
{H−A−[−R8’−S(O)−R10−CH(−OH)−R10−S(O)−R8’−A−]−V’−}B (16b)
H−A−[−R8’−S(O)−R10−CH(−OH)−R10−S(O)−R8’−A−]−H (16a)
(式中、
各R8’はビス(スルホニル)アルカノールとチオール基の反応に由来する部分であり、各R10は、独立にC1〜3アルカンジイル及び置換C1〜3アルカンジイルから選択され、ここで一つ又は複数の置換基は−OHであり、
各Aは独立に式(12):
−S−R−[−S−(CH−O−(R−O)−(CH−S−R−]−S− (12)
の部分であり、ここで、
各Rは、独立に、C2〜10アルカンジイル、C6〜8シクロアルカンジイル、C6〜10アルカンシクロアルカンジイル、C5〜8ヘテロシクロアルカンジイル、及び−[(−CHR−)−X−]−(−CHR−)−から選択され、ここで
sは2から6の整数であり、
qは1から5の整数であり、
rは2から10の整数であり、
各Rは独立に水素及びメチルから選択され、
各Xは独立に−O−、−S−、及び−NR−から選択され、
ここでRは水素及びメチルから選択され、
各Rは独立にC1〜10アルカンジイル、C6〜8シクロアルカンジイル、C6〜14アルカンシクロアルカンジイル、及び−[(−CHR−)−X−]−(−CHR−)−から選択され、ここでs、q、r、R、及びXは、Rについて定義される通りであり、
mは0から50の整数であり、
nは1から60の整数であり、
pは2から6の整数であり、
Bは、z価の多官能化剤B(−V)のコアを表し、ここで
zは3から6の整数であり、
各Vは、チオール基と反応する基を含む基であり、
各−V’−は、−Vとチオールの反応に由来する基である)。
【0184】
ある特定の実施形態において、チオール末端ビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテルと、ビス(ビニルスルホニル)アルカノールといったビス(スルホニル)アルカノールの間の反応は、例えば、本明細書中に開示される任意のアミン触媒を含むアミン触媒といった触媒の存在下で行われる。
【0185】
チオール末端金属リガンド含有プレポリマー合成方法
ある特定の実施形態において、チオール末端金属リガンド含有ポリチオエーテルといったチオール末端金属リガンド含有プレポリマーは、二官能性チオール末端プレポリマー、又は二官能性チオール末端プレポリマーの混合物を、チオール基と反応する末端基を少なくとも二つ有する、ビス(スルホニル)アルカノール、ヒドロキシピリジノン、又はアセチルアセトナートといった、チオール基と反応する基を少なくとも二つ有する金属キレート剤と反応させることによって調製され得る。
【0186】
ある特定の実施形態において、式(29a)のチオール末端金属リガンド含有プレポリマーの調製方法は、式(18a)のチオール末端ポリチオエーテル(N+1)モルを、(N)モルの金属キレート剤R−L−Rと反応させる工程を含む:
H−A−[−R9’−L−R9’−A−]−H (29a)
HS−R−[−S−(CH−O−(R−O)−(CH−S−R−]−SH (18a)
(式中、
Nは1から10の整数であり、
各R9’は、独立に、金属キレート剤R−L−RのRとチオール基の反応に由来する部分であり、ここで各Rは、チオールと反応する末端基を含み、Lは金属リガンドを含み、
各R10は、独立にC1〜3アルカンジイル及び置換C1〜3アルカンジイルから選択され、ここで一つ又は複数の置換基は−OHであり、
各Aは独立に式(12)
−S−R−[−S−(CH−O−(R−O)−(CH−S−R−]−S− (12)
の部分であり、ここで、
各Rは、独立に、C2〜10アルカンジイル、C6〜8シクロアルカンジイル、C6〜10アルカンシクロアルカンジイル、C5〜8ヘテロシクロアルカンジイル、及び−[(−CHR−)−X−]−(−CHR−)−から選択され、ここで
sは2から6の整数であり、
qは1から5の整数であり、
rは2から10の整数であり、
各Rは独立に水素及びメチルから選択され、
各Xは独立に−O−、−S−、及び−NR−から選択され、
ここでRは水素及びメチルから選択され、
各Rは独立にC1〜10アルカンジイル、C6〜8シクロアルカンジイル、C6〜14アルカンシクロアルカンジイル、及び−[(−CHR−)−X−]−(−CHR−)−から選択され、ここでs、q、r、R、及びXは、Rについて定義される通りであり、
mは0から50の整数であり、
nは1から60の整数であり、
pは2から6の整数である)。
【0187】
式(29a)のチオール末端金属リガンド含有ポリチオエーテルの、ある特定の実施形態において、Nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9であり、ある特定の実施形態において、Nは10である。式(29a)の金属リガンド含有プレポリマーの、ある特定の実施形態において、分子量は200ダルトンから20,000ダルトンである。ある特定の実施形態において、式(6)のチオール末端金属リガンド含有プレポリマーは、Nの値が異なる式(29a)の金属リガンド含有プレポリマーの組み合わせを含む。式(29a)のチオール末端金属リガンド含有プレポリマーの、ある特定の実施形態において、Nは1である。従って、実際には、式(29a)のチオール末端ビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテルを調製する際、式(29a)のチオール末端金属リガンド含有プレポリマーが異なる値のNを有するチオール末端金属リガンド含有プレポリマーの混合物に相当するといったように、金属キレート剤に対するチオール末端ポリチオエーテルのモル比は、整数である必要はない。
【0188】
ある特定の実施形態において、式(29b)のチオール末端金属リガンド含有プレポリマーの調製方法は、式(29a)のチオール末端金属リガンド含有プレポリマー(z)モルを、1モルの多官能化剤B{V}と反応させる工程を含む:
{H−A−[−R9’−L−R9’−A−]−V’−}B (29b)
H−A−[−R9’−L−R9’−A−]−H (29a)
(式中、
各R9’は、独立に、金属キレート剤R−L−RのRとチオール基の反応に由来する部分であり、ここで各Rは、チオールと反応する末端基を含み、Lは金属リガンドを含み、
各R10は、独立にC1〜3アルカンジイル及び置換C1〜3アルカンジイルから選択され、ここで一つ又は複数の置換基は−OHであり、
各Aは独立に式(12):
−S−R−[−S−(CH−O−(R−O)−(CH−S−R−]−S− (12)
の部分であり、ここで、
各Rは、独立に、C2〜10アルカンジイル、C6〜8シクロアルカンジイル、C6〜10アルカンシクロアルカンジイル、C5〜8ヘテロシクロアルカンジイル、及び−[(−CHR−)−X−]−(−CHR−)−から選択され、ここで
sは2から6の整数であり、
qは1から5の整数であり、
rは2から10の整数であり、
各Rは独立に水素及びメチルから選択され、
各Xは独立に−O−、−S−、及び−NR−から選択され、
ここでRは水素及びメチルから選択され、
各Rは独立にC1〜10アルカンジイル、C6〜8シクロアルカンジイル、C6〜14アルカンシクロアルカンジイル、及び−[(−CHR−)−X−]−(−CHR−)−から選択され、ここでs、q、r、R、及びXは、Rについて定義される通りであり、
mは0から50の整数であり、
nは1から60の整数であり、
pは2から6の整数であり、
Bは、z価の多官能化剤B(−V)のコアを表し、ここで
zは3から6の整数であり、
各Vは、チオール基と反応する基を含む基であり、
各−V’−は、−Vとチオールの反応に由来する基である)。
【0189】
ある特定の実施形態において、チオール末端金属リガンド含有ポリチオエーテルと金属キレート剤の間の反応は、例えば、本明細書中に開示される任意のアミン触媒を含むアミン触媒といった触媒の存在下で行われる。
【0190】
アルケニル末端ビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテルプレポリマー
本開示が提供するチオール末端ビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテルは、ジアルケニルエーテル及び/又はアルケニル末端多官能化剤といったポリアルケニルと反応することができ、アルケニル末端ビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテルプレポリマーを提供する。アルケニル末端ビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテルプレポリマーは、硬化剤と組み合わせてもよく、シーラント組成物といった硬化性組成物を提供する。
【0191】
例えば、ある特定の実施形態において、アルケニル末端ビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテルプレポリマーは、
(a)式(16a)のチオール末端ビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテル、式(16b)のチオール末端ビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテル、及びそれらの組み合わせ:
H−A−[−R8’−S(O)−R10−CH(−OH)−R10−S(O)−R8’−A−]−H (16a)
{H−A−[−R8’−S(O)−R10−CH(−OH)−R10−S(O)−R8’−A−]−V’−}B (16b)
(式中、
Nは1から10の整数であり、
各R8’は、ビス(スルホニル)アルカノールとチオール基の反応に由来する部分であり、
各R10は、独立にC1〜3アルカンジイル及び置換C1〜3アルカンジイルから選択され、ここで一つ又は複数の置換基は−OHであり、
各Aは独立に式(12):
−S−R−[−S−(CH−O−(R−O)−(CH−S−R−]−S− (12)
の部分であり、ここで、
各Rは、独立に、C2〜10アルカンジイル、C6〜8シクロアルカンジイル、C6〜10アルカンシクロアルカンジイル、C5〜8ヘテロシクロアルカンジイル、及び−[(−CHR−)−X−]−(−CHR−)−から選択され、ここで
sは2から6の整数であり、
qは1から5の整数であり、
rは2から10の整数であり、
各Rは独立に水素及びメチルから選択され、
各Xは独立に−O−、−S−、及び−NR−から選択され、
ここでRは水素及びメチルから選択され、
各Rは独立にC1〜10アルカンジイル、C6〜8シクロアルカンジイル、C6〜14アルカンシクロアルカンジイル、及び−[(−CHR−)−X−]−(−CHR−)−から選択され、ここでs、q、r、R、及びXは、Rについて定義される通りであり、
mは0から50の整数であり、
nは1から60の整数であり、
pは2から6の整数であり、
Bは、z価の多官能化剤B(−V)のコアを表し、ここで
zは3から6の整数であり、
各Vは、チオール基と反応する末端基を含む基であり、
各−V’−は、−Vとチオールの反応に由来する基である)
から選択される、チオール末端ビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテルと、
(b)ポリアルケニル化合物と
を含む反応物の反応生成物を含む。
【0192】
ある特定の実施形態において、ポリアルケニル化合物は、ジビニルエーテル又は本明細書中に開示される任意のジビニルエーテルを含むジビニルエーテルの混合物、アルケニル末端多官能化剤、及びそれらの組み合わせから選択される。
【0193】
前記反応のある特定の実施形態において、(a)は式(16a)のポリチオエーテルであり、(b)は、ジビニルエーテル、アルケニル末端多官能化剤、及びそれらの組み合わせから選択されるポリビニルエーテルである。
【0194】
前記反応のある特定の実施形態において、(a)は式(16a)のポリチオエーテルであり、(b)は、ジエチレングリコールジビニルエーテル(DEG−DVE)、TAC、及びそれらの組み合わせから選択されるポリアルケニルエーテルである。
【0195】
アルケニル末端金属リガンド含有ポリチオエーテルプレポリマー
本開示が提供するチオール末端金属リガンド含有プレポリマーは、ジアルケニルエーテル及び/又はアルケニル末端多官能化剤といったポリアルケニルと反応することができ、アルケニル末端金属リガンド含有プレポリマーを提供する。アルケニル末端金属リガンド含有プレポリマーは、硬化剤と組み合わせてもよく、シーラント組成物といった硬化性組成物を提供する。
【0196】
例えば、ある特定の実施形態において、アルケニル末端金属リガンド含有プレポリマーは、
(a)式(29a)のチオール末端金属リガンド含有ポリチオエーテル、式(29b)の金属リガンド含有ポリチオエーテル、及びそれらの組み合わせ:
H−A−[−R9’−L−R9’−A−]−H (19a)
{H−A−[−R9’−L−R9’−A−]−V’−}B (29b)
(式中、
Nは1から10の整数であり、
各R9’は、金属キレート剤R−L−Rとチオール基の反応に由来する部分であり、ここで−L−は金属基を含み、各Rはチオール基と反応する基を含み、
各R10は、独立にC1〜3アルカンジイル及び置換C1〜3アルカンジイルから選択され、ここで一つ又は複数の置換基は−OHであり、
各Aは独立に式(12):
−S−R−[−S−(CH−O−(R−O)−(CH−S−R−]−S− (12)
の部分であり、ここで、
各Rは、独立に、C2〜10アルカンジイル、C6〜8シクロアルカンジイル、C6〜10アルカンシクロアルカンジイル、C5〜8ヘテロシクロアルカンジイル、及び−[(−CHR−)−X−]−(−CHR−)−から選択され、ここで
sは2から6の整数であり、
qは1から5の整数であり、
rは2から10の整数であり、
各Rは独立に水素及びメチルから選択され、
各Xは独立に−O−、−S−、及び−NR−から選択され、
ここでRは水素及びメチルから選択され、
各Rは独立にC1〜10アルカンジイル、C6〜8シクロアルカンジイル、C6〜14アルカンシクロアルカンジイル、及び−[(−CHR−)−X−]−(−CHR−)−から選択され、ここでs、q、r、R、及びXは、Rについて定義される通りであり、
mは0から50の整数であり、
nは1から60の整数であり、
pは2から6の整数であり、
Bは、z価の多官能化剤B(−V)のコアを表し、ここで
zは3から6の整数であり、
各Vは、チオール基と反応する末端基を含む基であり、
各−V’−は、−Vとチオールの反応に由来する基である)
から選択される、チオール末端金属リガンド含有プレポリマーと、
(b)ポリアルケニル化合物と
を含む反応物の反応生成物を含む。
【0197】
ある特定の実施形態において、ポリアルケニル化合物は、ジビニルエーテル又は本明細書中に開示される任意のジビニルエーテルを含むジビニルエーテルの混合物、アルケニル末端多官能化剤、及びそれらの組み合わせから選択される。
【0198】
前記反応のある特定の実施形態において、(a)は式(29a)のポリチオエーテルであり、(b)は、ジビニルエーテル、アルケニル末端多官能化剤、及びそれらの組み合わせから選択されるポリビニルエーテルである。
【0199】
前記反応のある特定の実施形態において、(a)は式(29a)のポリチオエーテルであり、(b)は、ジエチレングリコールジビニルエーテル(DEG−DVE)、TAC、及びそれらの組み合わせから選択されるポリアルケニルエーテルである。
【0200】
キャップされているビス(スルホニル)アルカノールを含有するプレポリマー及びキャップされている金属リガンドを含有するプレポリマー
ビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテル及び金属リガンド含有プレポリマーは、チオール末端ビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテル又はチオール末端金属リガンド含有プレポリマーといった、ビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテル又は金属リガンド含有プレポリマーを、適切な官能基でキャップするか又は終端させることにより、特定の硬化化学作用での使用に適合させてもよい。チオール末端ポリチオエーテルのキャップされている類似体は、例えば米国特許第6,172,179号、及び米国特許出願公開第2011/0319559号に開示されている。
【0201】
例えば、ある特定の実施形態において、ビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテル又は金属リガンド含有プレポリマーは、未反応チオール基以外の末端基、例えば、ヒドロキシル、アルケニル、イソシアナート、アミン、エポキシ、加水分解性官能基、例えば、ポリアルコキシシリル基、マイケルアクセプター基、又はエポキシ基を有する。
【0202】
キャップされている類似体は、当業者に公知の多数の方法によって調製され得る。例えば、キャップされているビス(スルホニル)アルカノールを含有するポリチオエーテル又はキャップされている金属リガンドを含有するプレポリマーを得るために、チオール末端ビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテル又はチオール末端金属リガンド含有プレポリマーは、チオール基と反応する末端基を有する化合物と反応させてもよい。
【0203】
アルケニル末端ビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテル又はアルケニル末端金属リガンド含有プレポリマーを得るために、チオール末端ビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテル又はチオール末端金属リガンド含有プレポリマーは、ジブチル錫ジラウラート触媒の存在下で、TMI、メタクリル酸2−イソシアナトエチル、又はアリルイソシアナートに由来する基といったイソシアナート基及び末端アルケニル基を含有する化合物と反応させてもよい。
【0204】
ポリアルコキシシリル末端ビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテル及びポリアルコキシシリル末端金属リガンド含有プレポリマーは、例えば、ジブチル錫ジラウラートの存在下で、チオール末端ビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテル又はチオール末端金属リガンド含有プレポリマーを、3−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン又は3−イソシアナトプロピルトリエトキシシランといった、イソシアナトアルキルトリアルコキシシランと反応させることによって調製され得、対応するポリアルコキシシリル末端ビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテル又は対応するポリアルコキシシリル末端金属リガンド含有プレポリマーを提供する。
【0205】
エポキシ末端ビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテル及びエポキシ末端金属リガンド含有プレポリマーは、例えば、チオール末端ビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテル又はチオール末端金属リガンド含有プレポリマーを、アリルグリシジルエーテルといったモノエポキシドの存在下で反応させることによって調製され得、対応するエポキシ末端ビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテル又は対応するエポキシ末端金属リガンド含有プレポリマーを提供する。
【0206】
アミン末端ビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテル及びアミン末端金属リガンド含有プレポリマーは、例えば、チオール末端ビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテル又はチオール末端金属リガンド含有プレポリマーを、フリーラジカル開始剤と共に、単官能性4−アミノブチルビニルエーテルと反応させることによって調製され得る。若しくは、アミン末端ビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテル又はアミン末端金属リガンド含有プレポリマーは、イソシアナート末端ビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテル又はイソシアナート末端金属リガンド含有プレポリマーを、4−(アミノメチル)アニリンといったジアミンと反応させることによって得てもよく、対応するアミン末端ビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテル又は対応するアミン末端金属リガンド含有プレポリマーを提供する。アミン末端ビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテル及びアミン末端金属リガンド含有プレポリマーはまた、BuSnO又はNaOMeの存在下で、チオール末端ビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテル、又はアルカノール末端若しくはヒドロキシ末端金属リガンド含有プレポリマーを、エチル−4−アミノベンゾアートといったアミノ置換ベンゾアートと、高められた温度で反応させることによって得てもよく、対応するアミン末端ビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテル又は対応するアミン末端金属リガンド含有プレポリマーを提供する。
【0207】
イソシアナート末端ビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテル及びイソシアナート末端金属リガンド含有プレポリマーは、例えば、任意選択でジブチル錫ジラウラートといった触媒の存在下で、チオール末端ビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテル又はチオール末端金属リガンド含有プレポリマーを、TDI、Isonate(商標)143L(ポリカルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアナート)、Desmodur(登録商標)N3400(1,3−ビス(6−イソシアナトヘキシル)−1,3−ジアゼチジン−2,4−ジオン)、IPDI(イソホロンジイソシアナート)、又はDesmodur(登録商標)W(H12MDI)といったジイソシアナートと反応させることによって調製され得る。イソシアナート末端ビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテル及びイソシアナート末端金属リガンド含有プレポリマーは、ある特定のアミン末端及びチオール末端ビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテル、アミン末端及びチオール末端金属リガンド含有プレポリマーといった、他の末端変性ビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテル及び末端変性金属リガンド含有プレポリマーの合成における中間体として使用され得る。
【0208】
ヒドロキシル末端ビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテル及びヒドロキシ末端金属リガンド含有プレポリマーは、例えば、チオール末端ビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテル又はチオール末端金属リガンド含有プレポリマーを、チオール基と反応する基及び末端ヒドロキシル基を有する化合物と反応させることによって調製され得る。
【0209】
ある特定の実施形態において、ビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテル及び金属リガンド含有プレポリマーは、マイケルアクセプター基で終端し得る。ある特定の実施形態において、マイケルアクセプター基は、ビニルスルホンに由来する基であり、式(27):
−CH−C(R13−S(O)−CR13=CH (27)
(式中、各R13は、独立に水素及びC1〜3アルキルから選択される)
の構造を有する。式(27)の、ある特定の実施形態において、各R13は水素である。ある特定の実施形態において、マイケルアクセプター末端ビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテルは、例えば、アミン触媒の存在下で、チオール末端ビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテルを、ジビニルスルホンといったチオール基と反応する基及び末端マイケルアクセプター基を有する化合物と反応させることによって調製され得る。マイケルアクセプター/ポリチオエーテルの化学及び化合物は、その全てを参照により組み込む、2012年6月13日に出願された米国特許出願第13/529,237号に開示されている。イソシアナートキャップでキャップされているポリチオエーテル及びエポキシでキャップされているポリチオエーテル、並びにイソシアナートでキャップされているポリチオエーテル及びエポキシでキャップされているポリチオエーテルの製造方法の例は、米国特許第7,879,955号B2に開示されている。
【0210】
組成物
本開示が提供する組成物は、一つ又は複数のビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテル及び/若しくは一つ又は複数のビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテルプレポリマー、並びに/又は一つ又は複数の金属リガンド含有プレポリマーを含み得る。硬化性組成物は、更に硬化剤を含み得る。組成物は、更に、添加剤、触媒、フィラー、並びに/又は、例えばポリチオエーテル、硫黄含有ポリホルマール、及び/若しくはポリスルフィドを含む、他の硫黄含有プレポリマーを含み得る。
【0211】
適切な硬化剤は、ビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテル、金属リガンド含有プレポリマー、及び任意選択で硫黄含有プレポリマーの、末端基と反応するよう選択される。
【0212】
ビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテル、そのプレポリマー、又は金属リガンド含有プレポリマーが、チオール基で終端する、ある特定の実施形態において、適切な硬化剤はポリエポキシドである。適切なポリエポキシドの例として、例えばヒダントインジエポキシド、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル、DEN(商標)438(Dow Chemical Company)等のNovolac(登録商標)型エポキシド、ある特定のエポキシド化不飽和樹脂、及び前述のものの任意の組み合わせといった、ポリエポキシド樹脂が挙げられる。ポリエポキシドは、二つ以上の反応性エポキシ基を有する化合物を意味する。ある特定の実施形態において、エポキシ硬化剤は、EPON(商標)828(Momentive Specialty Chemicals,Inc)、DEN(商標)431(Dow Chemical Company)、及びそれらの組み合わせから選択される。チオール基と反応する有用な硬化剤の例として、ジエポキシドが挙げられる。
【0213】
ある特定の実施形態において、ポリエポキシ硬化剤は、エポキシ官能性ポリマーを含む。適切なエポキシ官能性ポリマーの例として、米国特許出願第13/050,988号に開示されているエポキシ官能性硫黄含有ポリホルマールポリマー、及び米国特許第7,671,145号に開示されているエポキシ官能性ポリチオエーテルポリマーが挙げられる。一般的に、硬化剤として用いる場合、エポキシ官能性ポリマーは、約2,000ダルトン未満、約1,500ダルトン未満、約1,000ダルトン未満、及びある特定の実施形態において、約500ダルトン未満の分子量を有する。
【0214】
ある特定の実施形態において、ポリエポキシは、その組成物の約0.5wt%から約20wt%、約1wt%から約10wt%、約2wt%から約8wt%、約2wt%から約6wt%、及びある特定の実施形態において、約3wt%から約5wt%を構成し、ここでwt%は組成物の総固形分重量に基づく。
【0215】
ビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテル、そのプレポリマー、又は金属リガンド含有プレポリマーがチオール基で終端する、ある特定の実施形態において、適切な硬化剤は、ポリオールのアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステル、合成又は天然不飽和樹脂化合物、トリアリルシアヌラート、及び、ポリチオエーテル等の硫黄含有化合物の、オレフィン末端誘導体といった、不飽和化合物である。
【0216】
ある特定の実施形態において、例えばアミン及び/若しくはヒドロキシル末端ビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテル、そのプレポリマー、又はアミン及び/若しくはヒドロキシル末端金属リガンド含有プレポリマーを使用するといった場合、本開示が提供する組成物は、ジイソシアナート及び/又はトリイソシアナート硬化剤といった、イソシアナート硬化剤を含み得る。適切なイソシアナート硬化剤の例として、トルエンジイソシアナート、及び前述のものの任意の組み合わせが挙げられる。イソシアナート硬化剤は商業的に入手可能であり、例えばBaydur(登録商標)(Bayer MaterialScience)、Desmodur(登録商標)(Bayer MaterialScience)、Solubond(登録商標)(DSM)、ECCO(ECCO)、Vestanat(登録商標)(Evonik)、Irodur(登録商標)(Huntsman)、Rhodocoat(商標)(Perstorp)、及びVanchem(登録商標)(V.T. Vanderbilt)という商品名の製品が例として挙げられる。ある特定の実施形態において、ポリイソシアナート硬化剤は、チオール基と反応し、マイケルアクセプター基に対する反応性の低い、イソシアナート基を含む。アミン基と反応する有用な硬化剤の例として、高分子ポリイソシアナートが挙げられ、その限定されない例として、ウレタン結合(−NH−C(O)−O−)、チオウレタン結合(−NH−C(O)−S−)、チオカルバマート結合(−NH−C(S)−O−)、ジチオウレタン結合(−NH−C(S)−S−)、及び前述のものの任意の組み合わせから選択される結合を主鎖に有する、ポリイソシアナートが挙げられる。
【0217】
ある特定の実施形態において、イソシアナート硬化剤は、イソシアナート官能性ポリマーを含む。適切なイソシアナート官能性ポリマーの例として、米国特許出願第13/051,002に開示されているイソシアナート官能性硫黄含有ポリホルマールポリマーが挙げられる。一般的に、硬化剤として用いる場合、イソシアナート官能性ポリマーは、約2,000ダルトン未満、約1,500ダルトン未満、約1,000ダルトン未満、及びある特定の実施形態において、約500ダルトン未満の分子量を有する。
【0218】
そのような組成物において、イソシアナート硬化剤は、その組成物の約0.5wt%から約20wt%、約1wt%から約10wt%、約2wt%から約8wt%、約2wt%から約6wt%、及びある特定の実施形態において、その組成物の約3wt%から約5wt%を構成し、ここでwt%は組成物の総固形分重量に基づく。
【0219】
ある特定の実施形態において、イソシアナート末端ビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテル、そのプレポリマー、又はイソシアナート末端金属リガンド含有プレポリマーを使用するといった場合、本開示が提供する組成物は、アミン硬化剤を含む。イソシアナート基と反応する有用な硬化剤の例として、本明細書中に開示されるものを含む、ジアミン、ポリアミン、ポリチオール、及びポリオールが挙げられる。
【0220】
ある特定の実施形態において、マイケルアクセプター末端ビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテル、そのプレポリマー、又はマイケルアクセプター末端金属リガンド含有プレポリマーを使用するといった場合、本開示が提供する組成物は、単量体チオール、ポリチオール、ポリアミン、及びブロック化ポリアミンから選択される硬化剤を含む。
【0221】
本開示が提供する組成物に有用な硬化剤として、ビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテル又は金属リガンド含有プレポリマーの末端基と反応する化合物、例えば、ヒドロキシル基、アルケニル基、エポキシ基、チオール基、アミン基、又はイソシアナート基と反応する化合物等が挙げられる。
【0222】
ヒドロキシル基と反応する有用な硬化剤の例として、ジイソシアナート及びポリイソシアナートが挙げられ、その例示は本明細書中に開示される。
【0223】
アルケニル基と反応する有用な硬化剤の例として、ジチオール及びポリチオールが挙げられ、その例示は本明細書中に開示される。
【0224】
本開示が提供する、ポリアルコキシシリル末端ビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテル又は金属リガンド含有プレポリマーは、縮合による自己重合を含め、水の存在下で加水分解することができる。ポリアルコキシシリル末端ビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテル又はポリアルコキシシリル末端金属リガンド含有プレポリマーと共に使用する触媒として、有機チタン化合物、例えば、テトライソプロポキシチタン、テトラ−tert−ブトキシチタン、チタンジ(イソプロポキシ)ビス(エチルアセトアセタート)、及びチタンジ(イソプロポキシ)ビス(アセチルアセトアセタート);有機錫化合物であるジブチル錫ジラウラート、ジブチル錫ビスアセチルアセトアセタート、及び錫オクチラート;金属ジカルボキシラート、例えば、鉛ジオクチラート;有機ジルコニウム化合物、例えば、ジルコニウムテトラアセチルアセトナート;並びに有機アルミニウム化合物、例えば、アルミニウムトリアセチルアセトナートが挙げられる。湿気硬化に適切な他の触媒の例として、ジイソプロポキシビス(エチルアセトアセトナート)チタン、ジイソプロポキシビス(アセチルアセトナート)チタン、及びジブトキシビス(メチルアセトアセトナート)チタンが挙げられる。ポリアルコキシシリル末端ビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテル又はポリアルコキシシリル末端金属リガンド含有プレポリマーについては、大気中の水分が硬化剤となり得るため、ポリアルコキシシリル末端ビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテル又はポリアルコキシシリル末端金属リガンド含有プレポリマーを含有する硬化性組成物は、硬化剤を含む必要がないと認識できる。従って、ポリアルコキシシリル末端ビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテル又はポリアルコキシシリル末端金属リガンド含有プレポリマーを含む組成物、及びポリアルコキシシリル基の硬化剤は、大気中の水分を意味する。
【0225】
ビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテル、そのプレポリマー、又は金属リガンド含有プレポリマーが、エポキシ基で終端する、ある特定の実施形態において、適切な硬化剤は、ポリチオール、ポリアルキレン、又はポリアミンである。末端エポキシ基と反応する他の有用な硬化剤の例として、ジエチレントリアミン(DTA)、トリエチレンテトラミン(TTA)、テトラエチレンペンタミン(TEPA)、ジエチルアミノプロピルアミン(DEAPA)、N−アミノエチルピペラジン(N−AEP)、イソホロンジアミン(IPDA)、m−キシレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン(DDM)、ジアミノジフェニルスルホン(DDS)といったアミン、芳香族アミン、ケチミン、ポリアミン、ポリアミド、フェノール樹脂、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、エチレングリコールビストリメリタート、グリセロールトリストリメリタート、無水マレイン酸、テトラヒドロフタル酸無水物、メチルテトラヒドロフタル酸無水物、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸無水物といった無水物、ポリメルカプタン、ポリスルフィド、及び当業者に公知の他の硬化剤が挙げられる。
【0226】
本開示が提供する組成物は、選択された硬化剤(単数又は複数)を、化学量論量で約90%から約150%、約95%から約125%、及びある特定の実施形態において、約95%から約105%の量で含有し得る。
【0227】
追加の硫黄含有プレポリマー
ある特定の実施形態において、本開示が提供する組成物は、ビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテル、そのプレポリマー、金属リガンド含有プレポリマー、若しくは本明細書中に開示されるいずれか一つの反応の反応生成物、又は前述のものの任意の組み合わせに加え、一つ又は複数の、追加の硫黄含有プレポリマーを含む。硫黄含有プレポリマーは、少なくとも一つの硫黄原子を繰り返し単位に有する、任意のプレポリマーであり得、例として高分子チオール、ポリチオール、チオエーテル、ポリチオエーテル、硫黄含有ポリホルマール、及びポリスルフィドが挙げられるが、これに限定されない。本明細書中で用いる「チオール」は、チオール又はメルカプタン基、即ち「SH」基を、唯一の官能基として、又は、例えばチオグリセロールのように、ヒドロキシル基といった他の官能基と組み合わせて含む化合物を意味する。ポリチオールは、ジチオール、又はそれより高い官能性のチオールといった、複数のSH基を有するような化合物を意味する。そのような基は、概して、他の官能基と反応する活性水素を有するような、末端及び/又はペンダント基である。ポリチオールは、末端及び/又はペンダントの硫黄(−SH)、並びに非反応性硫黄原子(−S−又は−S−S−)の両方を含むことができる。従って、ポリチオールという用語は、一般的にポリチオエーテル及びポリスルフィドを包含する。
【0228】
本開示が提供する組成物に有用な、追加の硫黄含有プレポリマーの例として、例えば米国特許第6,172,179号、第6,509,418号、及び第7,009,032号に開示されているものが挙げられる。ある特定の実施形態において、本開示が提供する組成物は、式(30):
−R−[−S−(CH−O−[−R−O−]−(CH−S−R−]− (30)
(式中、各RはC2〜6アルカンジイル、C6〜8シクロアルカンジイル、C6〜10シクロアルカンアルカンジイル、−[(−CH−)−X−]−(−CH−)−、及び少なくとも一つの−CH−単位がメチル基で置換される−[(−CH−)−X−]−(−CH−)−から選択され、RはC2〜6アルカンジイル、C6〜8シクロアルカンジイル、C6〜10シクロアルカンアルカンジイル、及び−[(−CH−)−X−]−(−CH−)−から選択され、XはO、S、及び−NR−から選択され、ここでRは水素及びメチルから選択され、mは0から10の整数であり、nは1から60の整数であり、pは2から6の整数であり、qは1から5の整数であり、rは2から10の整数である)
の構造を有するポリチオエーテルを含む。このようなポリチオエーテルは、米国特許第6,172,179号、第2カラム29行目から第4カラム34行目に記載される。
【0229】
一つ又は複数の追加の硫黄含有プレポリマーは、二官能性、若しくは例えば3から6個の末端基を有する多官能性、又はそれらの組み合わせであってもよい。
【0230】
ある特定の実施形態において、本開示が提供する組成物は、本開示が提供する硫黄含有ポリマーを、約10wt%から約90wt%、約20wt%から約80wt%、約30wt%から約70wt%、及びある特定の実施形態において、約40wt%から約60wt%含み、ここでwt%は、組成物の不揮発性成分の総重量(即ち乾燥重量)に基づく。
【0231】
本明細書中で用いられるポリスルフィドという用語は、一つ又は複数のスルフィド結合、即ち−S−結合(ここでxは2から4である)を、ポリマー主鎖及び/又はポリマー鎖上のペンダントの位置に含有するポリマーを意味する。ある特定の実施形態において、ポリスルフィドポリマーは、二つ以上の硫黄−硫黄結合を有するだろう。適切なポリスルフィドは、例えば、Akzo Nobel及び東レ・ファインケミカル株式会社から、Thioplast(登録商標)及びThiokol−LPという製品名で商業的に入手可能である。Thioplast(登録商標)製品は、例えば1,100未満から8,000超まで(分子量は、1モル当たりのグラム数の平均分子量)の範囲の広範囲な分子量で入手可能である。ポリスルフィドは、1,000ダルトンから4,000ダルトンの数平均分子量を有する場合もある。これら製品の架橋密度も、使用する架橋剤の量に依存して変化する。これら製品の−SH含有量、即ちチオール又はメルカプタン含有量も多様とすることができる。ポリスルフィドの、メルカプタン含有量及び分子量は、ポリマーの硬化速度に影響を与えることができ、分子量に伴い硬化速度は上がる。
【0232】
航空宇宙用シーラント用途に有用な硫黄含有ポリホルマールプレポリマーは、例えば米国特許出願公開第2012/0234205号、及び米国特許出願公開第2012/0238707号に開示されている。
【0233】
ある特定の実施形態において、硫黄含有ポリマーは、ポリチオエーテル及びポリスルフィド、並びにその組み合わせから選択される。ある特定の実施形態において、硫黄含有ポリマーはポリチオエーテルを含み、ある特定の実施形態において、硫黄含有ポリマーはポリスルフィドを含む。硫黄含有ポリマーは、異なるポリチオエーテル及び/又はポリスルフィドの混合物を含み得、ポリチオエーテル及び/又はポリスルフィドは同一の官能性を有していても、異なる官能性を有していてもよい。ある特定の実施形態において、硫黄含有ポリマーは、2から6、2から4、2から3、及びある特定の実施形態において、2.05から2.5の平均官能性を有する。例えば、硫黄含有ポリマーは、二官能性硫黄含有ポリマー、三官能性硫黄含有ポリマー、及びそれらの組み合わせから選択することができる。
【0234】
本開示が提供する組成物は、一つ又は複数の触媒を含み得る。触媒は、採用する硬化化学作用に適するものを選択することができる。ある特定の実施形態において、例えば、チオール末端ビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテル、プレポリマー、又はチオール末端金属リガンド含有プレポリマー、及びポリエポキシドを硬化させる場合、触媒はアミン触媒である。硬化触媒は、組成物の総重量に基づき、0.1から5重量パーセントの量で存在し得る。適切な触媒の例として、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO(登録商標)、Air Products、Chemical Additives Division、ペンシルベニア州、アレンタウン、から商業的に入手可能)、及びDMP−30(登録商標)(2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールを含む反応促進剤組成物)が挙げられる。
【0235】
ある特定の実施形態において、本開示が提供する組成物は、一つ又は複数の接着促進剤を含む。一つ又は複数の更なる接着促進剤は、組成物の総乾燥重量に基づき、組成物の0.1wt%から15wt%、5wt%未満、2wt%未満、及びある特定の実施形態において、1wt%未満の量で存在し得る。接着促進剤の例として、Methylon(登録商標)フェノール樹脂といったフェノール性化合物、並びに、Silquest(登録商標)A−187及びSilquest(登録商標)A−1100等の、エポキシ、メルカプト、又はアミノ官能性シランといった有機シラン化合物が挙げられる。他の有用な接着促進剤は当技術分野で公知である。
【0236】
本開示が提供する組成物は、一つ又は複数の異なる種類のフィラーを含み得る。適切なフィラーとして、カーボンブラック及び炭酸カルシウム(CaCO)といった無機フィラー、シリカ、ポリマー粉末、並びに軽量フィラーを含む、当技術分野で一般に知られているものが挙げられる。適切な軽量フィラーとして、例えば米国特許第6,525,168に記載されるものが挙げられる。ある特定の実施形態において、組成物は、組成物の総乾燥重量に基づき、5wt%から60wt%、10wt%から50wt%、及びある特定の実施形態において、20wt%から40wt%の、フィラー又はフィラーの組み合わせを含む。本開示が提供する組成物は、さらに一つ又は複数の、着色剤、チキソトロープ剤、促進剤、難燃剤、接着促進剤、溶媒、マスキング剤、又は前述のものの任意の組み合わせを含み得る。理解されるように、組成物に用いるフィラー及び添加剤は、高分子成分、硬化剤、及び/又は触媒に対してだけでなく、互いに親和性があるよう選択され得る。非導電性フィラーの例として、炭酸カルシウム、マイカ、ポリアミド、ヒュームドシリカ、モレキュラーシーブ粉末、ミクロスフェア、二酸化チタン、石灰、アルカリブラック(alkaline black)、セルロース、硫化亜鉛、重晶石、アルカリ土類酸化物、及びアルカリ土類水酸化物等といった材料が挙げられるがこれに限定されない。
【0237】
ある特定の実施形態では、本開示が提供する組成物は、低密度フィラー粒子を含む。本明細書中で用いられる低密度とは、このような粒子に関して用いる場合、粒子が、0.7を超えない、ある特定の実施形態において、0.25を超えない、ある特定の実施形態において、0.1を超えない、比重を有することを意味する。適切な軽量フィラー粒子は、多くの場合ミクロスフェア及びアモルファス粒子の二つに分類される。ミクロスフェアの比重は0.1から0.7の範囲であり得、例えば、ポリスチレンフォーム、ポリアクリラート及びポリオレフィンのミクロスフェア、並びに、5から100ミクロンの範囲の粒子径及び0.25の比重(Eccospheres(登録商標))を有する、シリカミクロスフェアが例として挙げられる。他の例として、5から300ミクロンの範囲の粒子径、及び0.7の比重(Fillite(登録商標))を有するアルミナ/シリカミクロスフェア、比重約0.45から約0.7のケイ酸アルミニウムミクロスフェア(Z−Light(登録商標))、比重0.13の炭酸カルシウム被覆ポリビニリデン共重合体ミクロスフェア(Dualite(登録商標)6001AE)、並びに、平均粒子径約40μm、及び密度0.135g/ccのDualite(登録商標)E135(Henkel)といった、炭酸カルシウム被覆アクリロニトリル共重合体ミクロスフェアが挙げられる。組成物の比重を低減するための適切なフィラーとして、例えばExpancel(登録商標)ミクロスフェア(AkzoNobelから入手可能)といった中空ミクロスフェア、又はDualite(登録商標)低密度高分子ミクロスフェア(Henkelから入手可能)が挙げられる。ある特定の実施形態において、本開示が提供する組成物は、その引用部分を参照によりここに組み込む米国特許出願公開第2010/0041839の[0016]から[0052]段落に記載されるものといった、薄い塗膜で被覆された外面を含む軽量フィラー粒子を含む。
【0238】
ある特定の実施形態において、低密度フィラーは、組成物の2wt%未満、1.5wt%未満、1.0wt%未満、0.8wt%未満、0.75wt%未満、0.7wt%未満、及びある特定の実施形態において、組成物の0.5wt%未満を構成し、ここでwt%は組成物の総乾燥重量に基づく。
【0239】
ある特定の実施形態において、本開示が提供する組成物は、組成物の比重の低減に有効なフィラーを少なくとも一つ含む。ある特定の実施形態において、組成物の比重は、0.8から1、0.7から0.9、0.75から0.85、及びある特定の実施形態において、0.8である。ある特定の実施形態において、組成物の比重は、約0.9未満、約0.8未満、約0.75未満、約0.7未満、約0.65未満、約0.6未満、及びある特定の実施形態において、約0.55未満である。
【0240】
ある特定の実施形態において、本開示が提供する組成物は、導電性フィラーを含む。導電性材料をポリマー中に組み込むことによって、導電性及びEMI/RFIシールド効果を、組成物に付与することができる。導電性成分は、例えば金属又は金属めっき粒子、織物、メッシュ、繊維、及びそれらの組み合わせを含むことができる。金属の形状は、例えばフィラメント、粒子、薄片、又は球とすることができる。金属の例として、銅、ニッケル、銀、アルミニウム、錫、及び鋼が挙げられる。ポリマー組成物に導電性及びEMI/RFIシールド効果を付与するために使用することができる、他の導電性材料として、カーボン又はグラファイトを含む、導電性粒子又は繊維が挙げられる。ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリ(p−フェニレン)ビニレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレン、及びポリアセチレンといった導電性ポリマーも使用できる。導電性フィラーは、硫化亜鉛及び無機バリウム化合物といった、高バンドギャップ材料も含む。
【0241】
導電性フィラーの他の例として、導電性貴金属系フィラー、例えば、純銀;貴金属めっき貴金属、例えば、銀めっき金;貴金属めっき非貴金属、例えば、銀めっき銅、ニッケル又はアルミニウム、例えば、銀めっきアルミニウムコア粒子又は白金めっき銅粒子;貴金属めっきガラス、プラスチック又はセラミック、例えば、銀めっきガラスミクロスフェア、貴金属めっきアルミニウム又は貴金属めっきプラスチックミクロスフェア;貴金属めっきマイカ;及び他のそのような貴金属導電性フィラーが挙げられる。非貴金属系材料も使用することができ、例えば、非貴金属めっき非貴金属、例えば、銅被覆鉄粒子又はニッケルめっき銅;非貴金属、例えば、銅、アルミニウム、ニッケル、コバルト;非貴金属めっき非金属、例えば、ニッケルめっきグラファイト;並びに非金属材料、例えば、カーボンブラック及びグラファイトが挙げられる。所望の伝導率、EMI/RFIシールド効果、硬度、及び特定の用途に適切な他の性質を達成するために、導電性フィラーを組み合わせて使用することもできる。
【0242】
本開示の組成物に使用する導電性フィラーの形状及び大きさは、導電性及びEMI/RFIシールド効果を硬化組成物に付与するために適切な、任意の形状及び大きさとすることができる。例えばフィラーは、球、薄片、プレートレット、粒子、粉末、不定形、及び繊維等を含む、導電性フィラーの製造に一般的に使用される、任意の形状のものとすることができる。本開示の、ある特定のシーラント組成物において、ベース組成物は、粒子、粉末又は薄片として、Ni被覆グラファイトを含むことができる。ある特定の実施形態において、ベース組成物中のNi被覆グラファイトの量は、ベース組成物の総重量に基づき、40wt%から80wt%の範囲とすることができ、ある特定の実施形態において、50wt%から70wt%の範囲とすることができる。ある特定の実施形態において、導電性フィラーは、Ni繊維を含むことができる。Ni繊維は、10μmから50μmの範囲の直径、及び250μmから750μmの範囲の長さを有することができる。ベース組成物は、例えば、ベース組成物の総重量に基づき、2wt%から10wt%、及びある特定の実施形態において、4wt%から8wt%に及ぶ量のNi繊維を含むことができる。
【0243】
炭素繊維、とりわけグラファイト炭素繊維も、本開示の組成物に導電性を付与するために使用することができる。気相熱分解法によって形成され、熱処理によって黒鉛化した炭素繊維は、繊維径が0.1ミクロンから数ミクロンの範囲の、中空又は個体であり、高い導電性を有する。米国特許第6,184,280号に開示されているように、0.1μm未満から数十ナノメートルの外径を有する、炭素マイクロファイバー、ナノチューブ、又は炭素フィブリルは、導電性フィラーとして使用することができる。本開示の導電性組成物に適する黒鉛化炭素繊維の例として、0.00055Ω・cmの電気抵抗率を有する、直径0.921μmの円形繊維、Panex(登録商標)3OMF(Zoltek Companies, Inc.、セントルイス、ミズーリ州)が挙げられる。
【0244】
導電性フィラーの平均粒子径は、ポリマー系組成物に導電性を付与するのに有用な範囲内とすることができる。例えば、ある特定の実施形態において、一つ又は複数のフィラーの粒子径は、0.25μmから250μmの範囲とすることができ、ある特定の実施形態において、0.25μmから75μmの範囲とすることができ、ある特定の実施形態において、0.25μmから60μmの範囲とすることができる。ある特定の実施形態において、本開示の組成物は、1,000mg/gから11,500mg/gのヨード吸収(J0/84−5試験方法)、及び480cm/100gから510cm/100gの細孔容積(DBP吸収、KTM 81−3504)を特徴とする導電性カーボンブラック、Ketjenblack(登録商標)EC−600JD(Akzo Nobel, Inc.、シカゴ、イリノイ州)を含むことができる。ある特定の実施形態において、導電性カーボンブラックフィラーは、Black Pearls(登録商標)2000(Cabot Corporation、ボストン、マサチューセッツ州)である。
【0245】
ある特定の実施形態において、導電性ポリマーは、本開示の組成物に導電性を付与するため、又は本開示の組成物の導電性を変更するために使用することができる。例えばポリフェニレンスルフィド及びポリチオフェンのように、芳香族基又は隣接する二重結合に組み込まれた硫黄原子を有するポリマーは、導電性であることが知られている。他の導電性ポリマーとして、例えばポリピロール、ポリアニリン、ポリ(p−フェニレン)ビニレン、及びポリアセチレンが挙げられる。ある特定の実施形態において、ベース組成物を形成する硫黄含有ポリマーは、ポリスルフィド及び/又はポリチオエーテルであり得る。このように、本開示の組成物の導電性を高めるため、硫黄含有ポリマーは、芳香族硫黄基及び共役二重結合に隣接する硫黄原子を含むことができる。
【0246】
本開示の組成物は、複数の導電性フィラーを含むことができ、当該複数の導電性フィラーは、同一又は異なる、材料及び/又は形状のものであり得る。例えば、シーラント組成物は、粉末、粒子、又は薄片状の、導電性Ni繊維及び導電性Ni被覆グラファイトを含むことができる。導電性フィラーの量及び種類は、硬化した際に0.50Ω/cm未満のシート抵抗(4点抵抗)、ある特定の実施形態において、0.15Ω/cm未満のシート抵抗を示す、シーラント組成物を製造するよう選択することができる。本開示のシーラント組成物を用いて開口(aperture)を密封するために、1MHzから18GHzの周波数にわたって有効なEMI/RFI遮蔽を提供するよう、フィラーの量及び種類を選択することもできる。
【0247】
ある特定の実施形態において、導電性ベース組成物は、ベース組成物の総重量に基づき、2wt%から10wt%の範囲の量で非導電性フィラーを含むことができ、ある特定の実施形態において、非導電性フィラーの量は3wt%から7wt%の範囲とすることができる。ある特定の実施形態において、硬化剤組成物は、硬化剤組成物の総重量に基づき、6wt%未満の範囲、ある特定の実施形態において、0.5重量%から4重量%の範囲の量で非導電性フィラーを含むことができる。
【0248】
本開示の導電性組成物及び異種金属表面の電解腐食は、組成物に腐食防止剤を添加することによって、及び/又は適切な導電性フィラーを選択することによって、最小化すること、又は防ぐことができる。ある特定の実施形態において、クロム酸ストロンチウム、クロム酸カルシウム、クロム酸マグネシウム、及びそれらの組み合わせが腐食防止剤として挙げられる。米国特許第5,284,888号及び米国特許第5,270,364号は、アルミニウム及び鋼表面の腐食を抑制するため、芳香族トリアゾールの使用を開示する。ある特定の実施形態において、Znといった犠牲的な酸素捕捉剤を腐食防止剤として使用することができる。ある特定の実施形態において、腐食防止剤は、導電性組成物の総重量の10重量%未満を構成することができる。ある特定の実施形態において、腐食防止剤は、導電性組成物の総重量のうち2重量%から8重量%の範囲の量を構成することができる。異種金属表面間の腐食は、組成物を構成する導電性フィラーの、種類、量、及び特性を選択することによっても、最小化すること、又は防ぐことができる。
【0249】
ある特定の実施形態において、ビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテル及び/若しくはビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテルプレポリマー、並びに/又は金属リガンド含有プレポリマーは、組成物の約50wt%から約90wt%、約60wt%から約90wt%、約70wt%から約90wt%、及びある特定の実施形態において、組成物の約80wt%から約90wt%を構成し得、ここでwt%は組成物の総乾燥固形分重量に基づく。
【0250】
要望に応じて、組成物は添加剤をいくつでも含み得る。適切な添加剤の例として、可塑剤、顔料、界面活性剤、接着促進剤、チキソトロープ剤、難燃剤、マスキング剤、及び促進剤(例えば1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、DABCO(登録商標)を含む、アミン等)、並びに前述のものの任意の組み合わせが挙げられる。用いる際、添加物は、例えば約0重量%から60重量%の範囲の量で組成物中に存在し得る。ある特定の実施形態において、添加物は、約25重量%から60重量%の範囲の量で組成物中に存在し得る。
【0251】
使用
本開示が提供する組成物は、例えばシーラント、コーティング、封入剤、及び注封用組成物(potting compositions)に使用され得る。湿度及び温度といった運転条件に対し抵抗性を有するフィルムであって、水、燃料、及び他の液体、並びに気体といった材料の移動を、少なくとも部分的に遮る能力を有するフィルムを製造することができる組成物が、シーラントとして挙げられる。例えば、外観、接着性、湿潤性、耐食性、耐摩耗性、耐燃料油性、及び/又は耐擦傷性といった基材の特性を向上させるために、基材表面に塗布する被覆が、コーティング組成物として挙げられる。耐衝撃性及び耐振性を提供し、水分及び腐食剤を除去する、電子アセンブリに有用な材料が、注封用組成物として挙げられる。ある特定の実施形態において、本開示が提供するシーラント組成物は、例えば航空宇宙用シーラント、及び燃料タンクのライニングとして有用である。
【0252】
ある特定の実施形態において、シーラントといった組成物は、例えば2液型組成物等の多液型組成物として提供され得、ここで、一つの容器は、本開示が提供するチオール末端金属リガンド含有ポリチオエーテル又はチオール末端金属リガンド含有プレポリマーを一つ又は複数含み、第二の容器は、本開示が提供する多官能性硫黄含有エポキシを一つ又は複数含む。要望又は必要に応じて、何れの容器に添加剤及び/又は他の材料を添加してもよい。二つの容器は、使用する前に配合又は混合され得る。ある特定の実施形態において、一つ又は複数の、混合されたチオール末端ポリチオエーテル及びエポキシのポットライフは、少なくとも30分、少なくとも1時間、少なくとも2時間であり、ある特定の実施形態において、2時間を超える。ここでポットライフは、混合された組成物が、混合後に依然としてシーラントとしての使用に適する期間を意味する。
【0253】
本開示が提供する、シーラントを含む組成物は、任意の様々な基材に塗布することができる。組成物を塗布してもよい基材の例として、何れも陽極酸化、下塗り、有機被覆、又はクロム被覆されていてもよい、チタン、ステンレス鋼、アルミニウム、及びそれらの合金といった金属、エポキシ、ウレタン、グラファイト、繊維ガラス複合材、Kevlar(登録商標)、アクリル、及びポリカーボネートが挙げられる。ある特定の実施形態において、本開示が提供する組成物は、ポリウレタン被覆といった基材上の被覆に塗布され得る。ある特定の実施形態において、本開示が提供する、ビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテル又は金属リガンド含有プレポリマーを含む組成物は、アルミニウム、酸化アルミニウム、陽極酸化アルミニウム、チタン、酸化チタン、及び/又はAlodine(登録商標)表面に対し、増強された接着性を示す。とりわけ、本開示が提供する、ビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテル又は金属リガンド含有プレポリマーを含む組成物は、地金及び陽極酸化金属表面に対し増強された接着性を示す。
【0254】
本開示が提供する組成物は、当業者に公知の任意の適切な塗布工程によって、基材表面上に直接、又は下地層の上から塗布され得る。
【0255】
更に、本開示が提供する組成物を利用して、開口を密封する方法が提供される。これらの方法は、例えば、本開示が提供する組成物を表面に塗布して開口を密封する工程、及び組成物を硬化させる工程を含む。ある特定の実施形態において、開口を密封する方法は、(a)本開示が提供するシーラント組成物を、開口を規定する一つ又は複数の表面に塗布する工程、及び(b)塗布したシーラント組成物を硬化させて密封された開口を提供する工程を含む。
【0256】
ある特定の実施形態において、本開示のシーラント組成物で密封された開口が提供される。
【0257】
ある特定の実施形態において、組成物は大気条件下で硬化させてもよく、ここで大気条件は、20℃から25℃の温度、及び大気の湿度を意味する。ある特定の実施形態において、組成物は、0℃から100℃の温度、及び相対湿度0%から相対湿度100%の湿度を包含する条件下で硬化させてもよい。ある特定の実施形態において、組成物は、少なくとも30℃、少なくとも40℃、及びある特定の実施形態において、少なくとも50℃といった、より高い温度で硬化させてもよい。ある特定の実施形態において、組成物は、室温、例えば25℃で硬化させてもよい。ある特定の実施形態において、組成物は、紫外線照射といった化学線照射によって硬化させてもよい。理解されるように、本方法は、航空機及び航空宇宙機を含む、航空宇宙機上の開口を密封するために使用され得る。
【0258】
ある特定の実施形態において、本組成物は、約200°F未満の温度で、約2時間未満、約4時間未満、約6時間未満、約8時間未満、及びある特定の実施形態において、約10時間未満で、タックフリー硬化(tack−free cure)を達成する。
【0259】
本開示の硬化性組成物を用いて、現実に機能するシールを形成するまでの時間は、当業者が理解するように、幾つかの因子に依存することができ、適用する規格及び仕様の要件によって決まる。一般的に、本開示の硬化性組成物の接着強度は24時間から30時間以内に増進し、最大接着強度の90%は、混合及び表面への塗布後2日から3日で達成される。一般的に、本開示の硬化組成物は、その最大接着強度及びその他の特性を、混合及び表面へ硬化性組成物を塗布した後7日間以内に完全に発揮する。
【0260】
硬化シーラントといった、本明細書が開示する硬化組成物は、航空宇宙用途における使用に相応する特性を示す。一般的に、航空及び航空宇宙用途で使用するシーラントは、次の特性を示すことが望ましい:航空宇宙材料規格(Aerospace Material Specification:AMS)3265B試験仕様書に従い、AMS3265B基材上で、JRF Type I中に7日間浸漬し、3%NaCl溶液中に浸漬した後に、乾燥条件下で測定して、リニアインチあたり20ポンド(pli)を超える剥離強度;平方インチあたり300ポンド(psi)から400psiの間の引張強度;リニアインチあたり50ポンド(pli)を超える引裂強度;250%から300%の間の伸び率;及びA型デュロメーターで40を超える硬度。これら又はその他の、航空及び航空宇宙用途に適する硬化シーラントの特性は、その全てを参照によりここに組み込むAMS3265Bに開示されている。硬化した際、60℃(140°F)、大気圧力で、JRF Type I中に一週間浸漬した後に、航空及び航空機用途に使用する本開示の組成物の示す膨張が、体積百分率で25%以下であることも望ましい。その他の特性、範囲、及び/又は閾値は、他のシーラント用途に適しているだろう。
【0261】
従って、ある特定の実施形態において、本開示が提供する組成物は耐燃料油性である。本明細書中で用いる「耐燃料油性」という用語は、組成物が、基材に塗布され硬化した際、ASTM D792(米国材料試験協会、American Society for Testing and Materials)又はAMS3269(航空宇宙材料規格、Aerospace Material Specification)に記載の方法と同様の方法に従い、140°F(60℃)、大気圧力で、ジェット基準流体(Jet Reference Fluid:JRF)Type I中に一週間浸漬した後に、体積百分率で40%以下、場合により25%以下、場合により20%以下、更に他の場合では10%以下の膨張を示す、シーラントといった硬化生成物を提供できることを意味する。耐燃料油性を決定するために用いるジェット基準流体JRF Type Iは、次の組成を有する:トルエン28体積%±1体積%、シクロヘキサン(工業用)34体積%±1体積%、イソオクタン38体積%±1体積%、及び三級ジブチルジスルフィド1体積%±0.005体積%(SAE(Society of Automotive Engineers)より入手可能な、1989年7月1日発行、AMS2629、§3.1.1等参照)。
【0262】
ある特定の実施形態において、AMS3279、§3.3.17.1、試験手順AS5127/1、§7.7に記載の手順に従って測定する場合、本明細書中で提供される組成物は、少なくとも100%の伸び率、及び少なくとも400psiの引張強度を示す、シーラントといった硬化組成物を提供する。
【0263】
ある特定の実施形態において、SAE AS5127/1、第7.8項に記載の手順に従って測定する場合、組成物は、例えば少なくとも220psi、少なくとも250psi、及び場合により少なくとも400psi等、200psiを超えるラップせん断強度を示す、シーラントといった硬化生成物を提供する。
【0264】
ある特定の実施形態において、本開示が提供する組成物を含む硬化シーラントは、AMS3277に記載の航空宇宙用シーラントの要件を満たすか又は上回る。
【0265】
本開示が提供する組成物で密封される、航空宇宙機の開口(apertures)を含む、開口も開示される。
【0266】
ある特定の実施形態において、本開示が提供する硬化シーラントは、室温で2日間、140°Fで1日間、200°Fで1日間硬化させた際、次の特性を示す:乾燥硬度49、引張強度428psi、及び伸び率266%、並びに7日間JRF Type I中に漬けた後に、硬度36、引張強度312psi、及び伸び率247%。
【0267】
ある特定の実施形態において、本開示が提供する組成物は、10を超える、20を超える、30を超える、及びある特定の実施形態において、40を超えるショアA型の硬度(7日間の硬化)、10psiを超える、100psiを超える、200psiを超える、及びある特定の実施形態において、500psiを超える引張強度、並びに100%を超える、200%を超える、500%を超える、及びある特定の実施形態において、1,000%を超える伸び率を示し、JRF Type Iへの暴露(7日間)後の膨張は20%未満である。
【0268】
本開示が提供する金属リガンド含有プレポリマーから調製した硬化シーラントは、増強された引張強度、及び増強された金属及び/又は金属酸化物表面に対する接着性を示す。プレポリマーの主鎖に組み込まれる金属リガンドは、金属キレート中で多座リガンドとして機能することができる。
【実施例】
【0269】
本開示により提供される実施形態は、以下の諸例を参照することによって、更に例証され、それにより、特定のビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテル及び金属リガンド含有プレポリマー、並びにビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテル又は金属リガンド含有プレポリマーを含む組成物についての合成、特性及び使用を説明する。本開示の範囲を逸脱することなく、材料及び方法の両方について、多くの変更形態が実施され得ることは、当業者にとって明らかであろう。
【0270】
例1
チオール末端ポリチオエーテル
1,8−ジメルカプト−3,6−ジオキサオクタン(DMDO;1995.60g;10.95モル)を5リットルの4口丸底フラスコに投入した。このフラスコに、窒素用ガスアダプタ、パドル型攪拌機及び温度プローブを装備した。フラスコを窒素でフラッシュし、内容物を攪拌しつつ60℃に加熱した。フリーラジカル開始剤Vazo(登録商標)−67(0.41g)をフラスコ内に添加した。ジエチレングリコールジビニルエーテル(1154.51g;7.30モル)を6.25時間の期間に渡って反応混合物中に導入したが、その間の温度を60〜65℃に維持した。反応温度を77℃に上げて、Vazo(登録商標)−67の2つの部分(各0.045g)を3時間の間隔で添加した。反応混合物を、94℃で2時間加熱し、66℃に冷却してから、1時間66℃〜74℃/15mmHgで排気した。得られたポリマー、ジチオールは、430のメルカプタン当量重量を有していた。
【0271】
例2
チオール末端ビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテル
例1のジチオール(55.04g;0.064モル)を250mLの3口丸底フラスコに投入した。このフラスコに、窒素用ガスアダプタ及びパドル型攪拌機を装備した。内容物に対して7mmで30分間排気を行ってから、この減圧を窒素下で開放した。攪拌しつつ、塩基触媒DBU(1,8−ジアザビシクロウンデカ−7−エン;0.013g)を加え、続いてエタノール(10g)を加えて、フラスコに温度プローブを装備した。(水浴で)冷却しながら、1,3−ビス(ビニルスルホニル)−2−プロパノール(7.69g;0.032モル)のテトラヒドロフラン(90g)溶液を、19℃〜20℃の温度で2時間かけて滴下した。水浴を取り外し、反応物を周囲温度で更に2時間撹拌した。反応の完了時を決定するためにメルカプタン当量を用いた。溶媒を除去した後、液体の二官能性ポリマーが、1,166のメルカプタン当量重量及び81ポアズ(poise)の粘度を有するものとして得られた。
【0272】
例3
チオール末端ビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテルプレポリマー
例2のジチオール(62g;0.0177モル)を250mLの3口丸底フラスコに投入した。攪拌しながら、トリアリルシアヌレート(TAC)(0.93g;0.0037モル)及びジエチレングリコールジビニルエーテル(0.22g;0.0014モル)のトルエン(1.0g)溶液を反応混合物中に導入し、内容物を77℃に加熱した。ラジカル開始剤Vazo(登録商標)−67を、7つの部分(各0.016グラム)に分けて1時間の間隔で添加し、反応を完了させた。真空下で溶媒を除去し、2.21の理論上のチオール官能性、1,659のメルカプタン当量重量及び195ポアズの粘度を有するポリマーが得られた。
【0273】
例4
ビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテルシーラント
例3のプレポリマー(14.93グラム;0.009当量)及び炭酸カルシウム(Socal(登録商標)N2R;4.48グラム)を、Hauschildミキサー(モデル:DAC600FVZ)の混合カップ(容量:60グラム)に投入した。内容物を手動混合によって組み合わせ、次いで30秒間Hauschildミキサーで混合した(速度:2300RPM)。内容物を再び手動で混合した後、さらに30秒間Hauschildミキサー中で混合した。エポキシ促進剤S−5304(PPG Aerospaceから入手可能;3.60g、0.009当量)を添加した。内容物を手動混合によって組み合わせ、次いで30秒間Hauschildミキサーで混合した。塩基触媒DABCO33−LV(0.12g)を加えた。内容物を手動混合し、次いで30秒間Hauschildミキサーで混合した。
【0274】
混合物の一部を用い、硬度のための硬化プラグを製造し、混合物の残りを用い、以下の7種の表面についての接着試験片(おおよその寸法:4cm×1.4cm×0.3cm)を作成した:Scotch−Brite(登録商標)処理の裸のアルミニウム;Mil−C−27725;Scotch−Brite(登録商標)処理のチタンB;Scotch−Brite(登録商標)処理のチタンC;Alodine(登録商標)1200;陽極酸化されたSAA;陽極酸化されたCAA。全ての試験片を、室温/20時間、60℃/27時間の硬化サイクルにかけた。試料の硬化後、硬度は40(ショアA)であった。硬化済みのシーラントを金属表面から剥離/切断することによって評価した接着性は、7個の表面のうち6個について非常に良好であった(100%凝集破壊)。しかし、硬化済み試験片は、Alodine(登録商標)1200に接着しなかった(0%凝集破壊)。
【0275】
例5
チオール末端ビス(スルホニル)アルカノール含有二官能性ポリチオエーテル
例1のジチオール(636.40g;0.74モル)を2リットルの4口丸底フラスコに投入した。フラスコに、窒素用ガスアダプタ及びパドル攪拌機を装備した。内容物に対して8mmで1時間排気を行ってから、この減圧を窒素下で開放した。撹拌しながら、エタノール(116g)を加え、次いで塩基触媒DBU(0.145g)を加え、フラスコに温度プローブを装備した。(水浴にて)冷却下、1,3−ビス(ビニルスルホニル)−2−プロパノール(88.91g;0.37モル)のテトラヒドロフラン(1.04kg)溶液を23℃から27℃の温度で約2時間かけて滴下した。メルカプタン当量を用いて、反応の進行度を測定した。水浴を取り外し、反応物をさらに3時間室温にて撹拌した。溶媒の除去により、1,296のメルカプタン当量重量、107ポアズの粘度を有する二官能性ポリマーを得た。
【0276】
例6
チオール末端ビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテルプレポリマー
例5の二官能性ポリマー(725.29g;0.2798モル)を2リットルの4口丸底フラスコに投入した。このフラスコに窒素用のガスアダプタ及びパドル攪拌機を装備した。内容物を窒素でフラッシュした。攪拌しながら、トリアリルシアヌレート(10.22g;0.041モル)およびジエチレングリコールジビニルエーテル(0.49g;0.0031モル)のトルエン(5.0mL)溶液を反応混合物に導入し、内容物を70℃に加熱した。ラジカル開始剤Vazo(登録商標)−67の15個の部分(各0.084g)を1時間間隔で加え、反応を完了させた。真空下で溶媒を除去して、2.21の理論上の官能価、1675のメルカプタン当量重量及び238ポアズの粘度を有するポリマーを得た。
【0277】
例7
ビス(スルホニル)アルカノール含有ポリチオエーテルシーラント
例6のプレポリマー(30g;0.0179当量)及び炭酸カルシウム(Socal(登録商標)N2R;9.00g)を、Hauschildミキサーの混合カップ(容量100g)内に投入した。内容物を手動で混合し、Hauschildミキサー中で30秒間混合した(速度:2300RPM)。内容物に対して、手動での混合及び次いでのHauschildミキサー中での4分間の混合を2ラウンド行った。内容物を周囲温度に冷却した。エポキシ促進剤、S−5304(PPG Aerospaceから入手可能、0.0179当量)を添加した。内容物に対して、手動での混合及び次いでのHauschildミキサー中での30秒間の混合を2ラウンド行った。塩基触媒DABCO33−LV(0.24g)を加えた。内容物を、手動で混合し、更にHauschildミキサー中で30秒間混合し、グリッド内に注いでフローアウト(おおよその寸法:長さ:6インチ、幅:3.2インチ、厚み:0.1インチ)を作製した。シーラント試料を、室温/7日の硬化サイクルに供し、140°F/24時間で硬化させた。硬化済みシーラントは、48ショアA硬度、373psiの引張強さ、及び472%の伸びを有していた。
【0278】
比較例1
Permapol(登録商標)3.1Eポリマー(10g、PRC−Desoto International、Sylmar、CAから市販されているチオール末端ポリチオエーテルプレポリマー)及び炭酸カルシウム(5.0g)を、Hauschildミキサー中、2300rpmで30秒間混合した。続いて、促進剤(S−5304、2.6g、PRC−Desoto International、Sylmar、CAから市販されているエポキシペースト)及び触媒(トリエチレンジアミン;0.08g)を添加し、混合した。試料を、陽極酸化されたCAA、陽極酸化されたSAA、Mil−C−27725、Alodine(登録商標)1200、チタンC、裸のアルミニウム、及びScotch−Brite(登録商標)処理の裸のアルミニウムを様々な基材上に塗布し、24時間室温で硬化させ、続いて140°Fで48時間硬化させた。凝集破壊の%確率を、基材から試料を剥離させることによって測定した。試料の各々は0%の凝集破壊を示した。
【0279】
例8
密度関数理論の計算
代表的な航空宇宙用基材のアルミニウム表面酸化物を構成するAlクラスタと種々の官能基との相互作用のギブスの自由エネルギー(Li et al.,“Structural determination of (Al(n=1−7)clusters based on density functional calculation,”(「密度関数計算に基づく(Al(n=1−7)クラスターの構造決定」)Computational and Theoretical Chemistry 2012,996,125−131参照)を、密度関数理論(density functional theory:DFT)に基づく方法を用いて算出した。Gaussian09/B3LYP/6−31g(d)を用いて全ての構造を最適化し、それらの構造が極小値にて存在することを確認するために同じレベルの理論にて振動周波数を算出した。CPCM救出スキームによる単一点のエネルギー計算を用いて、水環境中でのエネルギーを算出した。上記相互作用のギブスの自由エネルギーを、補正せずに、圧力及び温度の標準条件(1気圧及び25℃)下で算出した。
【0280】
HOMO(最高被占分子軌道)、LUMO(最低空分子軌道)のエネルギー、及び、HOMOとLUMOとのエネルギーギャップを含む、種々の官能基の固有の特性について、これらの官能基を分析した。典型的に、より高いHOMOエネルギーを有する官能基は、より電子供与性であり、より低いLUMOエネルギーを有する官能基は、より電子受容性である。表1に示した種々の官能基を比較すると、3−ヒドロキシ−1,2−ジメチルピリジン−4(1H)−オン(HOPO)が最も高いHOMOエネルギーを有し、これは、HOPOが最も大きな電子供与性であることを意味する。他方、官能基ビス(スルホニル)−2−プロパノール(BSP)が最も低いHOMOエネルギーを有し、これは、その官能基が最も小さい電子供与性であることを意味する。
【表1】
【0281】
種々の官能基とアルミニウム酸化物クラスターとの相互作用を測定した。気相中での相互作用のギブスの自由エネルギー(ΔG)及び水中での相互作用のギブスの自由エネルギー(ΔG)を算出し、その結果を反応のエンタルピー(ΔH)からの寄与とともに図1に示す。図1では、より大きな負のΔGが、より安定な錯体、又は、官能基とアルミニウム酸化物との間のより強い相互作用に対応している。BSP及びHOPOは、気相中において及びシミュレートした水環境中においても、アルミニウム酸化物に対して、アセトアセタートよりも強い相互作用を有する。アセトアセタートは、(Alにおける)電子欠乏性アルミニウムに対する(アセトアセタートにおける)電子リッチなカルボニル酸素の配位を通じてAlに結合する。HOPOは二座配位子としてAlと相互作用する。すなわち、(HOPOにおける)カルボニル酸素は、(Alにおける)アルミニウムに結合し、(HOPOにおける)ヒドロキシル基は、(Alにおける)酸素と水素結合する。BSPとAlとの三座結合様式が同定されたが、ここでは、(BSPにおける)ヒドロキシル基と(Alにおける)酸素原子との間の水素結合に加えて、(BSPにおける)2つのスルホニル基が(Alにおける)2つのアルミニウム原子に結合する。BSPは、(表1中の低いHOMOエネルギーによって示されているように)電子供与性があまり大きくないにもかかわらず、3つの配位箇所でのAlとの強い結合が観察される。
【0282】
結論として、BSPの官能基は、三座配位様式によりアルミニウム酸化物と結合し、非常に強い相互作用(接着)を与える結果になることが示された。HOPOのような他の強い結合リガンドと異なり、BSPは酸化され難く、良好な安定性を有すると期待される。BSPに類似する結合モチーフを有する構造もまた、アルミニウム酸化物への強い結合をもたらし得る。
【0283】
特定の金属表面に対する接着性を増進するのに適しており、かつ、本開示中で述べられたプレポリマーの主鎖中に組み込まれてよい、及び/又はプレポリマーの末端基として提供されてよい他の金属リガンドを同定するために、類似の方法を用いることができる。
【0284】
最後に、本明細書に開示された実施形態を実施するための代替的方法群が存在することに注目すべきである。従って、本実施形態は、例証として把握されるべきであり、限定的なものとして把握されるべきではない。さらに、本特許請求の範囲は、本明細書に記載された詳細な事項に限定されるべきではなく、その範囲の全体及びその等価物に権利が与えられるべきである。
図1
【国際調査報告】