特表2016-536578(P2016-536578A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特表2016-536578時計の共振器を維持及び調整するための方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2016-536578(P2016-536578A)
(43)【公表日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】時計の共振器を維持及び調整するための方法
(51)【国際特許分類】
   G04B 17/26 20060101AFI20161028BHJP
   G04B 17/06 20060101ALI20161028BHJP
【FI】
   G04B17/26
   G04B17/06 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】59
(21)【出願番号】特願2016-519844(P2016-519844)
(86)(22)【出願日】2015年1月14日
(85)【翻訳文提出日】2016年4月1日
(86)【国際出願番号】EP2015050588
(87)【国際公開番号】WO2015121014
(87)【国際公開日】20150820
(31)【優先権主張番号】14155425.3
(32)【優先日】2014年2月17日
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】506425538
【氏名又は名称】ザ・スウォッチ・グループ・リサーチ・アンド・ディベロップメント・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】エスレ,ティエリー
(72)【発明者】
【氏名】サルチ,ダヴィデ
(72)【発明者】
【氏名】ストランツル,マルク
(57)【要約】
時計用共振器機構(1)の周波数をその自然周波数(ω0)付近に維持及び調整するための方法。この方法は、周期的運動によって共振器機構(1)に作用して、共振器機構(1)の共振周波数又は品質係数又は静止点の位置の周期的変調を、自然周波数(ω0)の整数倍の値の0.9倍〜1.1倍の調整周波数(ωR)でもたらす、少なくとも1つのレギュレータデバイス(2)を実装し、上記整数は2以上10以下である。また上記周期的運動は、共振器機構(1)の損失及び/又は減衰及び/又は摩擦に作用することによって、共振器機構(1)の品質係数の周期的変調をもたらす。
【選択図】図15
【特許請求の範囲】
【請求項1】
時計の共振器機構(1)の周波数を、前記共振器機構(1)の動作中に、前記共振器機構(1)の自然周波数(ω0)付近に維持及び調整するための方法であって、
前記方法は、周期的運動によって前記共振器機構(1)に作用する少なくとも1つのレギュレータデバイス(2)を実装し、
前記周期的運動は、前記共振器機構(1)の共振周波数及び/又は品質係数及び/又は静止点の位置の周期的変調を、前記自然周波数(ω0)の整数倍の値の0.9倍〜1.1倍である前記レギュレータデバイス(2)の調整周波数(ωR)でもたらし、前記整数は2以上10以下である、方法において、
前記方法は、前記周期的運動が、前記共振器機構(1)の損失及び/又は減衰及び/又は摩擦に対して作用することによって、前記共振器機構(1)の品質係数の周期的変調をもたらすことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記周期的運動は、前記共振器機構(1)の変形によって及び/又は前記共振器機構(1)の周辺の環境の修正によって、前記共振器機構(1)の空気力学的損失に対して作用することにより、前記共振器機構(1)の前記品質係数の周期的変調をもたらすことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記周期的運動は、前記共振器機構(1)が備える弾性復元手段の内部減衰を変調することによって、前記共振器機構(1)の前記品質係数の周期的変調をもたらすことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記周期的運動は、前記共振器機構(1)内の機械的摩擦を変調することによって、前記共振器機構(1)の前記品質係数の周期的変調をもたらすことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記方法は、前記周期的運動によって前記共振器機構(1)に作用する少なくとも1つの前記レギュレータデバイス(2)を実装し、
前記方法は、前記周期的運動が、前記共振器機構(1)の少なくとも前記共振周波数の周期的変調をもたらすことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記方法は、前記周期的運動によって前記共振器機構(1)に作用する少なくとも1つの前記レギュレータデバイス(2)を実装し、
前記方法は、前記周期的運動が、前記共振器機構(1)の少なくとも前記静止点の位置の周期的変調をもたらすことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記方法は、前記周期的運動によって前記共振器機構(1)に作用する少なくとも1つの前記レギュレータデバイス(2)を実装し、
前記方法は、前記周期的運動が、前記共振器機構(1)の少なくとも前記共振周波数及び前記静止点の位置の周期的変調をもたらすことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記周期的運動は、前記共振器機構(1)の剛性及び/又は慣性に作用することによって、前記共振器機構(1)の前記共振周波数の周期的変調をもたらすことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記周期的運動は、前記共振器機構(1)の前記剛性の変調及び前記共振器機構(1)の前記慣性の変調をもたらすことによって、前記共振器機構(1)の前記共振周波数の周期的変調をもたらすことを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記周期的運動は、前記共振器機構(1)の質量の分布を変調することによって、及び/又は前記共振器機構(1)の変形によって、及び/又は前記共振器機構(1)の慣性中心の位置の変調によって、前記共振器機構(1)の前記慣性の変調をもたらすことにより、前記共振器機構(1)の前記共振周波数の周期的変調をもたらすことを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記周期的運動は、前記共振器機構(1)が備える弾性復元手段の剛性の変調、又は前記共振器機構(1)内の磁場若しくは静電場若しくは電磁場によって印加される復元力の変調によって、前記共振器機構(1)の前記共振周波数の周期的変調をもたらすことを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記周期的運動は、前記共振器機構(1)が備えるゼンマイの有効長の変調、又は前記共振器機構(1)が備えるゼンマイの断面の変調、又は前記共振器機構(1)が備える復元手段の弾性率の変調、及び/又は前記共振器機構(1)が備える前記復元手段の形状の変調によって、前記共振器機構(1)の前記共振周波数の周期的変調をもたらすことを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記周期的運動は、前記共振器機構(1)の前記剛性及び/又は前記静止点の位置に作用することによって、前記共振器機構(1)の前記共振周波数の周期的変調をもたらすことを特徴とする、請求項7及び8に記載の方法。
【請求項14】
前記周期的運動は、前記共振器機構(1)の取り付け位置の変調、及び/又は前記共振器機構(1)に作用する前記復元力の間の均衡の変調によって、前記共振器機構(1)の前記静止点の位置の周期的変調をもたらすことを特徴とする、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記周期的運動は、機械的弾性復元手段及び/又は磁性復元手段及び/又は静電復元手段によって生成される、前記共振器機構(1)に作用する前記復元力の間の均衡の変調によって、前記共振器機構(1)の前記静止点の位置の周期的変調をもたらすことを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記周期的運動は、前記共振器機構(1)の構成部品、及び前記共振器機構(1)の少なくとも1つの構成部品上の損失生成器機構の両方に対して、同一の前記調整周波数(ωR)で付与されることを特徴とする、請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記レギュレータ機構(2)は、前記共振器機構(1)の周波数の周期的変調を、前記共振器機構(1)の前記品質係数の逆数よりも高い相対振幅でもたらすことを特徴とする、請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記方法は、テンプ(26)を含む少なくとも1つのゼンマイ‐テンプ組立体(3)を備える前記共振器機構(1)に対して適用されること;及び
前記共振器機構(1)の前記品質係数は、前記レギュレータデバイス(2)の作用下で、前記テンプ(26)上に中心をずらして設置された、高い残留不均衡を有する副ゼンマイ‐テンプ(260)の発振を引き起こすことによって、修正されること
を特徴とする、請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記方法は、前記共振器機構(1)の弾性復元手段(40)を形成する捩りワイヤ(46)を保持するヒゲ玉(7)を含む少なくとも1つのテンプ(26)を備える前記共振器機構(1)に対して適用されること;及び
前記捩りワイヤ(46)の張力の周期的変動を引き起こすことによって、少なくとも1つの前記レギュレータデバイス(2)を作用させること
を特徴とする、請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記方法は、前記テンプ(26)を備える少なくとも1つの前記ゼンマイ‐テンプ組立体(3)を含む前記共振器機構(1)に適用されること;及び
前記共振器機構(1)の前記品質係数は、前記テンプ(26)の幾何学的形状の局所的修正によって生成された、前記テンプ(26)の空気摩擦の修正によって、修正され、前記テンプ(26)は、前記テンプ(26)の周縁部にヒンジ留めされた、航空機の翼の外形を有する変調用フィンを支持し、前記フィンは反転可能であり、運動方向を完全に傾動させるように配設されること
を特徴とする、請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記方法は、少なくとも1つの音叉を備える前記共振器機構(1)に対して適用されること;並びに
少なくとも1つの前記レギュレータデバイス(2)を、前記音叉の取り付け部に対して、及び/又は前記音叉の少なくとも1つのアームに対して圧力を印加する可動要素に対して、作用させること
を特徴とする、請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
時計の共振器機構(1)の周波数を、前記共振器機構(1)の動作中に、前記共振器機構(1)の自然周波数(ω0)付近に維持及び調整するための方法であって、
前記方法は、周期的運動によって前記共振器機構(1)に作用する少なくとも1つのレギュレータデバイス(2)を実装し、
前記周期的運動は、前記共振器機構(1)の共振周波数及び/又は品質係数及び/又は静止点の位置の周期的変調を、前記自然周波数(ω0)の整数倍の値の0.9倍〜1.1倍である前記レギュレータデバイス(2)の調整周波数(ωR)でもたらし、前記整数は2以上10以下である、方法において、
前記方法は:
前記方法が、テンプ(26)を備える少なくとも1つのゼンマイ‐テンプ組立体(3)を含む前記共振器機構(1)に対して適用されること;及び
前記共振器機構(1)の前記品質係数は、前記レギュレータデバイス(2)の作用下で、前記テンプ(26)上に中心をずらして設置された、高い残留不均衡を有する副ゼンマイ‐テンプ(260)の発振を引き起こすことによって、修正されること
を特徴とする、方法。
【請求項23】
時計の共振器機構(1)の周波数を、前記共振器機構(1)の動作中に、前記共振器機構(1)の自然周波数(ω0)付近に維持及び調整するための方法であって、
前記方法は、周期的運動によって前記共振器機構(1)に作用する少なくとも1つのレギュレータデバイス(2)を実装し、
前記周期的運動は、前記共振器機構(1)の共振周波数及び/又は品質係数及び/又は静止点の位置の周期的変調を、前記自然周波数(ω0)の整数倍の値の0.9倍〜1.1倍である前記レギュレータデバイス(2)の調整周波数(ωR)でもたらし、前記整数は2以上10以下である、方法において、
前記方法は:
前記方法が、前記共振器機構(1)の弾性復元手段(40)を形成する捩りワイヤ(46)を保持するヒゲ玉(7)を備える少なくとも1つのテンプ(26)を含む前記共振器機構(1)に対して適用されること;及び
前記捩りワイヤ(46)の張力の周期的変動を引き起こすことによって、少なくとも1つの前記レギュレータデバイス(2)を作用させること
を特徴とする、方法。
【請求項24】
時計の共振器機構(1)の周波数を、前記共振器機構(1)の動作中に、前記共振器機構(1)の自然周波数(ω0)付近に維持及び調整するための方法であって、
前記方法は、周期的運動によって前記共振器機構(1)に作用する少なくとも1つのレギュレータデバイス(2)を実装し、
前記周期的運動は、前記共振器機構(1)の共振周波数及び/又は品質係数及び/又は静止点の位置の周期的変調を、前記自然周波数(ω0)の整数倍の値の0.9倍〜1.1倍である前記レギュレータデバイス(2)の調整周波数(ωR)でもたらし、前記整数は2以上10以下である、方法において、
前記方法は:
前記方法が、少なくとも1つの音叉を含む前記共振器機構(1)に対して適用されること;並びに
少なくとも1つの前記レギュレータデバイス(2)を、前記音叉の取り付け部に対して、及び/又は前記音叉の少なくとも1つのアームに対して圧力を印加する可動要素に対して、作用させること
を特徴とする、方法。
【請求項25】
前記レギュレータデバイス(2)は、前記共振器機構(1)の始動及び/又は維持のために使用されることを特徴とする、請求項1〜24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記調整周波数(ωR)は、前記自然周波数(ω0)の整数倍の値で選択され、前記整数は2以上であることを特徴とする、請求項1〜25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記調整周波数(ωR)は、前記自然周波数(ω0)の2倍であることを特徴とする、請求項1〜26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記調整周波数(ωR)は、前記自然周波数(ω0)の1.8倍〜2.2倍であることを特徴とする、請求項1〜26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記レギュレータデバイス(2)の前記周期的運動は、離間した電力又は磁力又は電磁力による、前記共振器機構(1)の前記周波数及び/又は前記静止点の位置の変調をもたらすことを特徴とする、請求項1〜28のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時計の共振器機構の周波数を、上記共振器機構の動作中に、その自然周波数付近に維持及び調整するための方法に関し、上記方法は、周期的運動によって上記共振器機構に作用する少なくとも1つのレギュレータデバイスを実装し、上記周期的運動は、上記共振器機構の共振周波数及び/又は品質係数及び/又は静止点の位置の周期的変調を、上記自然周波数の整数倍の値の0.9倍〜1.1倍である上記レギュレータデバイスの調整周波数でもたらし、上記整数は2以上10以下である。
【0002】
本発明は、機械式腕時計製作におけるタイムベースの分野に関する。
【背景技術】
【0003】
時計のタイムベースの性能の改善のための探求は、常に関心の対象となっている。
【0004】
機械式腕時計の時間測定性能に対する大きな制約は、従来のインパルス脱進機の使用にあり、このタイプの干渉を回避できる脱進機に関する解決策は未だ存在しない。
【0005】
本出願人による特許文献1は、第1の低周波数共振器(例えば約数ヘルツ)と、第2の高周波数共振器(例えば約1キロヘルツ)とを含む、連結型共振器を開示している。この発明は、第1の共振器及び第2の共振器が、恒常的な機械的連結手段を含み、上記連結によって、外部干渉が発生した場合、例えば衝撃が発生した場合に周波数を安定化させることができることを特徴とする。
【0006】
PATEK PHILIPPE SAによる特許文献2は、ヒゲゼンマイによって機械的に維持される発振テンプと、テンプを同期させるための静止部材に磁気連結された振動部材とを含む、時計ムーブメントの調整のための可動組立体を開示している。テンプ及び振動部材は、同一の単一の、可動式かつ振動性の、同時に発振性の要素によって形成される。振動部材の振動周波数は、テンプの発振周波数の整数倍である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】欧州特許出願第1843227A1号
【特許文献2】スイス特許出願第615314A3号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、可能な限り正確なタイムベースを製造することを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的のために、本発明は、時計の共振器機構の周波数を、上記共振器機構の動作中に、その自然周波数付近に維持及び調整するための方法に関し、上記方法は、周期的運動によって上記共振器機構に作用する少なくとも1つのレギュレータデバイスを実装し、上記周期的運動は、上記共振器機構の共振周波数及び/又は品質係数及び/又は静止点の位置の周期的変調を、上記自然周波数の整数倍の値の0.9倍〜1.1倍である上記レギュレータデバイスの調整周波数でもたらし、上記整数は2以上10以下である。上記方法は、上記周期的運動が、上記共振器機構の損失及び/又は減衰及び/又は摩擦に対して作用することによって、上記共振器機構の品質係数の周期的変調をもたらすことを特徴とする。
【0010】
本発明はまた、時計の共振器機構の周波数を、上記共振器機構の動作中に、その自然周波数付近に維持及び調整するための方法に関し、上記方法は、周期的運動によって上記共振器機構に作用する少なくとも1つのレギュレータデバイスを実装し、上記周期的運動は、上記共振器機構の共振周波数及び/又は品質係数及び/又は静止点の位置周期的変調を、上記自然周波数の整数倍の値の0.9倍〜1.1倍である上記レギュレータデバイスの調整周波数でもたらし、上記整数は2以上10以下である。上記方法は:上記方法が、テンプを備える少なくとも1つのゼンマイ‐テンプ組立体を含む上記共振器機構に対して適用されること;及び上記レギュレータデバイスの作用下で、上記テンプ上に中心をずらして設置された、高い残留不均衡を有する副ゼンマイ‐テンプの発振を引き起こすことによって、上記共振器機構の品質係数が修正されることを特徴とする。
【0011】
本発明はまた、時計の共振器機構の周波数を、上記共振器機構の動作中に、その自然周波数付近に維持及び調整するための方法に関し、上記方法は、周期的運動によって上記共振器機構に作用する少なくとも1つのレギュレータデバイスを実装し、上記周期的運動は、上記共振器機構の共振周波数及び/又は品質係数及び/又は静止点の位置の周期的変調を、上記自然周波数の整数倍の値の0.9倍〜1.1倍である上記レギュレータデバイスの調整周波数でもたらし、上記整数は2以上10以下である。上記方法は:上記方法が、上記共振器機構の弾性復元手段を形成する捩りワイヤを保持するヒゲ玉を備える少なくとも1つのテンプを含む上記共振器機構に対して適用されること;及び上記捩りワイヤの張力の周期的変動を引き起こすことによって、少なくとも1つの上記レギュレータデバイスを作用させることを特徴とする。
【0012】
本発明はまた、時計の共振器機構の周波数を、上記共振器機構の動作中に、その自然周波数付近に維持及び調整するための方法に関し、上記方法は、周期的運動によって上記共振器機構に作用する少なくとも1つのレギュレータデバイスを実装し、上記周期的運動は、上記共振器機構の共振周波数及び/又は品質係数及び/又は静止点の位置の周期的変調を、上記自然周波数の整数倍の値の0.9倍〜1.1倍である上記レギュレータデバイスの調整周波数でもたらし、上記整数は2以上10以下である。上記方法は:上記方法が、少なくとも1つの音叉を含む上記共振器機構に対して適用されること;並びに少なくとも1つの上記レギュレータデバイスを、上記音叉の取り付け部に対して、及び/又は上記音叉の少なくとも1つのアームに対して圧力を印加する可動要素に対して、作用させることを特徴とする。
【0013】
本発明の他の特徴及び利点は、添付の図面を参照して以下の詳細な説明を読むことにより明らかになるであろう。添付の図面は、本発明の様々な実装態様及び変形例に対応するパラメトリック発振器を部分的かつ概略的に示す。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明によって調整されるパラメトリック共振器機構の概略部分平面図である。上記パラメトリック共振器機構は、共振器を形成する時計用ゼンマイ‐テンプを備え、上記時計用ゼンマイ‐テンプの慣性及び/又は品質係数は、ばねを介して径方向又は接線方向に配置された錘によって変調され、テンプが組み込まれたゼンマイ‐テンプ共振器の周波数の2倍の周波数で励起され、また上記時計用ゼンマイ‐テンプのヒゲゼンマイは図示されていない。このテンプはその天輪上に、テンプの枢動運動中に径方向又は接線方向に振動する要素を支持する。
図2図2は、天輪に接続された、錘を支持する4つの径方向ばねを備えるテンプの概略部分平面図である。上記ばねは、テンプが組み込まれたゼンマイ‐テンプ共振器の周波数の2倍の周波数での調整用励起を受ける。ヒゲゼンマイは図示されていない。
図3図3は、緩く設置された内蔵型ゼンマイ‐テンプを支持するテンプの概略部分平面図であり、上記内蔵型ゼンマイ‐テンプはそれぞれ高い不均衡を有する。
図4図4は、直径方向反対側に位置する2つの径方向ばねによって懸架されたテンプの概略部分平面図である。テンプの重心の軌跡は、2つのばねの共通の方向に対応する。
図5A図5Aは、テンプの枢動運動中に枢動する要素を天輪上に支持するテンプの概略部分平面図である。
図5B図5Bは、テンプの枢動運動中に枢動する要素を天輪上に支持するテンプの概略部分平面図である。
図5C図5Cは、テンプの枢動運動中に枢動する要素を天輪上に支持するテンプの概略部分平面図である。
図6図6は、テンプの概略部分平面図であり、このテンプの近傍において、空気力学的制動パッドが、テンプが組み込まれたゼンマイ‐テンプ共振器の周波数の2倍の周波数で運動可能である。ゼンマイ‐テンプ共振器のヒゲゼンマイは図示されていない。
図7図7は、高い不均衡を有する2つのゼンマイ‐テンプを有する、図3と同様のテンプを示す。上記ゼンマイ‐テンプは、同一の直径上の、不均衡の整列の位置(静止点)に、緩く設置され、上記不均衡は図3のものとは異なっており、また同相又は逆相で振動する。
図8図8は、音叉の概略部分平面図であり、この音叉の一方のアームは、音叉共振器の周波数の2倍の周波数で励起される摩擦パッドと接触する。
図9図9は、捩りワイヤを保持するヒゲ玉を含むテンプを備える共振器機構を示し、共振器デバイスは、テンプ及び捩りワイヤを備える共振器の周波数の2倍の周波数で、張力の周期的変動を制御する。
図10図10は、本発明によって調整されるパラメトリック共振器機構の概略図である。上記パラメトリック共振器機構は時計用ゼンマイ‐テンプを備え、ヒゲゼンマイの外側コイルは、レギュレータデバイスが周期的運動を付与するヒゲ持ちにピン留めされ、上記ヒゲ持ちは、必要な場合にヒゲゼンマイを捻るために、空間内で並進運動、枢動運動、傾動運動可能である。
図11図11は、緩急針機構を備えるヒゲゼンマイの概略図である。緩急針機構はピンを有し、またヒゲゼンマイの有効長を連続的に変化させるために、緩急針の連続的運動を作動させるためのクランク‐ロッド系を有する。
図12図12は、ヒゲゼンマイの有効長並びに/又はヒゲゼンマイの取り付け点の位置及び/若しくは幾何学的形状を連続的に変化させるために、カムが静置された、ヒゲゼンマイの概略図である。この図は簡略化された図であり、ヒゲゼンマイの片側のみに単一のカムが静置されている。ヒゲゼンマイの両側を挟むように配設された2つのカムを組み合わせることもできることは明らかである。
図13図13は、ゼンマイ‐テンプ組立体のヒゲゼンマイの部分概略図であり、ヒゲゼンマイに追加のコイルが固定され、ヒゲゼンマイの外側終端カーブに局所的に並置され、レギュレータデバイスはこの追加のコイルの一方の端部を作動させる。
図14図14は、その終端カーブ近傍に別のコイルを有するヒゲゼンマイを示し、上記別のコイルは、その第1の端部において、レギュレータデバイスによって操作される支持体によって保持され、また上記別のコイルは、上記支持体に対するレギュレータデバイスの作用下で終端カーブと周期的に接触するよう配設された第2の端部において自由である。
図15図15は、図2に示したタイプの共振器によって得られる調整を示す。
図16A図16Aは、共振器の重心の修正を示す。ゼンマイ‐テンプ共振器はテンプを備え、このテンプは、天輪に取り付けられた略径方向のばねを支持し、また発振性慣性ブロックを支持し、これら慣性ブロックのうちのいくつかは天輪の内側を向いており、いくつかは天輪の外側を向いている。
図16B図16Bは、共振器の重心の修正を示す。ゼンマイ‐テンプ共振器はテンプを備え、このテンプは、天輪に取り付けられた略径方向のばねを支持し、また発振性慣性ブロックを支持し、これら慣性ブロックのうちのいくつかは天輪の内側を向いており、いくつかは天輪の外側を向いている。
図17A図17Aは、空気力学的損失及び慣性を修正できるようにする可撓性ホゾを有する羽状部を有する別のテンプ系の、図5と同様の図である。
図17B図17Bは、空気力学的損失及び慣性を修正できるようにする可撓性ホゾを有する羽状部を有する別のテンプ系の、図5と同様の図である。
図18A図18Aは、内蔵型ゼンマイ‐テンプを備える図3又は図7のものと同様の共振器に基づく、重心の変調を示す。
図18B図18Bは、内蔵型ゼンマイ‐テンプを備える図3又は図7のものと同様の共振器に基づく、重心の変調を示す。
図18C図18Cは、内蔵型ゼンマイ‐テンプを備える図3又は図7のものと同様の共振器に基づく、重心の変調を示す。
図18D図18Dは、内蔵型ゼンマイ‐テンプを備える図3又は図7のものと同様の共振器に基づく、重心の変調を示す。
図19図19は、パラメトリック発振器の例示的実施形態を示し、ヒゲ玉は、金の層を用いて重量を付与された周縁慣性ブロックを支承するシリコンばねを支持し、ばね‐慣性ブロック組立体は、調整周波数ωRで発振する。
図20図20は、図19と同様のばね‐慣性ブロック組立体を備えるテンプを示す。
図21図21は、音叉を示し、この音叉の一方の分岐は、枢動可能に緩く設置された副ゼンマイ‐テンプを支持する。
図22図22は、音叉を示し、この音叉の一方の分岐は、自由に振動できるように設置されたばね‐慣性ブロック組立体を支持す。
図23図23は、2倍周波数レギュレータデバイスによって本発明に従って調整される共振器機構を有する機械式ムーブメントを含む腕時計のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の目的は、時計、特に機械式時計、とりわけ機械式腕時計の製作のための、可能な限り正確なタイムベースを製造することである。
【0016】
これを達成する1つの方法は、異なる複数の共振器を直接又は脱進機を介して関連させることからなる。
【0017】
脱進機機構に関連する不安定性という因子を克服するために、パラメトリック共振器系は、脱進機機構の影響を低減することによって、腕時計をより正確なものとすることができる。
【0018】
パラメトリック発振器は、発振を維持するために、調整周波数ωRを有する発振器のパラメータのうちの少なくとも1つを変更することからなるパラメトリック起動を用いる。
【0019】
従来どおり、レギュレータと共振器とを明確に区別するために、本明細書において「レギュレータ(regulator)」2は、本明細書において「共振器(resonator)」1と呼ばれる他の維持対象の系の周波数を維持及び調整するために使用される発振器を指す。
【0020】
寸法1のパラメトリック共振器のラグランジアンLは:
【0021】
【数1】
【0022】
であり、ここでTは運動エネルギ、Vは位置エネルギであり、上記共振器の慣性I(t)、剛性k(t)、静止位置x0(t)は時間の周期関数であり、xは共振器の一般化座標である。
【0023】
付勢された、及び減衰されたパラメトリック共振器に関する方程式は、ラグランジアンLに関するラグランジェ方程式に、強制関数f(t)と、散逸機構を考慮したランジュバン力とを加えることによって得られる:
【0024】
【数2】
【0025】
ここでxの1次導関数の係数は:
【0026】
【数3】
【0027】
であり、β(t)>0は損失を記述する項であり、ゼロ次項の係数は、共振器の周波数
【0028】
【数4】
【0029】
に左右される。
【0030】
関数f(t)は、非強制型発振器の場合には0の値を取る。この関数f(t)もまた周期関数であってよく、又はディラックインパルスの表現であってよい。
【0031】
本発明は、レギュレータと呼ばれる維持用発振器の動作によって、項β(t)、k(t)、l(t)、x0(t)のうちの1つ及び/又は1つ以外又は全てを、調整対象の発振器系の自然周波数ω0の整数倍(特に2倍)の値の0.9〜1.1倍である調整周波数ωRで変化させることからなる。
【0032】
この現象を理解するために、全長が変更される振り子の例に擬えることができる。減衰された発振器に関する方程式は以下の通りである:
【0033】
【数5】
【0034】
ここでxの1次項は損失項であり、ゼロ次項は共振器の周波数項であり、x0(t)は共振器の静止位置に対応する。
【0035】
関数f(t)は、非強制型発振器の場合には0の値を取る。この関数f(t)もまた周期関数であってよく、又はディラックインパルスの表現であってよい。
【0036】
本発明は、維持用発振器、即ちレギュレータ2の動作によって、項β(t)、k(t)、l(t)、x0(t)のうちの1つ及び/又は1つ以外又は全てを、調整対象の発振器系、この場合は共振器1の自然周波数ω0の整数倍(この整数は2以上である)の値の0.9〜1.1倍である調整周波数ωRで変化させることからなる。特定の応用例では、調整周波数ωRは、自然周波数ω0の1.8〜2.2倍であり、より詳細には、調整周波数ωRは自然周波数ω0の2倍である。
【0037】
好ましくは、1つ若しくは複数の項又は全ての項β(t)、k(t)、l(t)、x0(t)は、上述のように定義された調整周波数ωRで変化し、この調整周波数ωRは好ましくは、調整対象の共振器系1の自然周波数ω0の整数倍(特に2倍)である。
【0038】
従って一般に、パラメトリックな項の変調に加えて、維持又は調整に使用される発振器は、非パラメトリック維持項f(t)を導入し、その振幅は、パラメトリックな状態が達成されると無視できる(W. B. Case, The pumping of a swing from the standing position, Am. J. Phys. 64, 215 (1996))。
【0039】
ある変形例では、付勢項f(t)は、第2の維持機構によって導入できる。
【0040】
維持用発振器、即ちレギュレータ2によっても、項f(t)がゼロでない場合に項f(t)を変化させることができる。
【0041】
付勢されていない減衰された発振器の例において、x0が一定である場合、方程式のパラメータは、周波数項ω及び損失項β、特に機械的又は空気力学的又は内部又は他の摩擦による損失項に集約される。
【0042】
発振器の品質係数は、Q=ω/βによって定義される。
【0043】
現象をより良好に理解するために、全長が変更される振り子の例に擬えることができる。この場合:
【0044】
【数6】
【0045】
であり、Lは振り子の長さ、gは重力による引力である。
【0046】
この特定の例では、長さLが周波数2ω及び十分な変調振幅δL(δL/L>2β/ω)で時間に関して周期的に変調される場合、系は減衰することなく周波数ωで発振する。(D. Rugar and P. Grutter, Mechanical parametric amplification and thermomechanical noise squeezing, PRL 67, 699 (1991), A. H. Nayfeh and D. T. Mook, Nonlinear Oscillations, Wiley-Interscience, (1977))
【0047】
ゼロ次項はω2(A,t)の形を取ってもよく、ここでAは発振振幅である。
【0048】
従って本発明は、時計の共振器機構1の周波数を、その自然周波数ω0付近に維持及び調整するための方法及び系に関する。本方法によると、周期的運動によって共振器機構1に作用する少なくとも1つのレギュレータデバイス2が実装される。
【0049】
より具体的には、共振器機構1の少なくとも1つの内部構成部品に対して、又は上記内部構成部品に空気力学的影響等の影響を与える、若しくは上記共振器1の内部構成部品に「復元(return)」力(本明細書では牽引若しくは反発という広い意味で使用される)を印加する磁場若しくは静電場若しくは電磁場等を制動若しくは変調する、外部構成部品に対して、周期的運動を付与する、少なくとも1つのレギュレータデバイス2が実装される。
【0050】
この周期的運動は、共振器機構1の共振周波数及び/又は品質係数及び/又は静止点の位置の少なくとも1つの周期的変調を、自然周波数ω0の整数倍の値の0.9倍〜1.1倍である調整周波数ωRでもたらし、この整数は2以上10以下である。
【0051】
品質係数に関して、腕時計設計者は可能な限り高い値を得ようとする。品質係数は共振器のアーキテクチャに左右され、また共振器の全ての動作パラメータ、特に自然周波数に左右され、更に品質係数は、共振器の動作環境に左右される。第1の設計上の選択肢は、ある値をモデル化して試験によって検査し、十分であると考えられた場合に、品質係数をこの一定の値に設定することからなってよい。この第1の選択肢は確実なものと思われるが、これは、腕時計製作において使用される共振器の往復動作には適しておらず、方向の反転又は転換の領域に関して特に非現実的に思われる。
【0052】
従って本発明は、往復動作に関連するこれらの現象を考慮した第2の選択肢を選択する。本発明によると、周期的運動は、共振器機構1の損失及び/又は減衰及び/又は摩擦に作用することによって、共振器機構1の品質係数の周期的変調をもたらす。
【0053】
特にゼンマイ‐テンプタイプの共振器の場合、テンプ自体に作用することは不可能であるものの、これは、テンプ周辺の環境に対して又は(特に仮想ホゾの場合には)枢動位置に対して作用して、空気力学的制動トルクの変調を生成し、これによって品質係数の変調を生成することを排除するものではないことを理解されたい。
【0054】
特定の実装形態では、周期的運動は、共振器機構1の変形によって及び/又は上記共振器機構1の周辺の環境の修正によって、共振器機構1の空気力学的損失に対して作用することにより、共振器機構1の周期的な品質係数変調をもたらす。
【0055】
空気力学的損失に関して、往復運動を行い中央位置周辺で発振する要素を含む共振器の状態は、一般に一方向にのみ動作する速度レギュレータの場合とは全く異なる。更に本発明は、ここでは速度ではなく周波数の調整に関し、これは全く異なる複数の大きさの調整精度を必要とする。約10‐2の精度は例えば、慣性ブロック及び/又は制動フィンを有する時計の時報動作レギュレータに関しては十分であるが、ムーブメントの速度を確実に一定にすることを目的とした共振器には好適でなく、後者の場合には、1日あたり1秒程度の速度偏差を得るために、10‐5の精度を目標とするべきである。
【0056】
ある具体的実装形態では、周期的運動は、共振器機構1が備える弾性復元手段の内部減衰を変調することによって、共振器機構1の周期的な品質係数変調をもたらす。
【0057】
ある具体的実装形態では、周期的運動は、共振器機構1内の機械的摩擦を変調することによって、共振器機構1の周期的な品質係数変調をもたらす。
【0058】
本発明の第1の具体的実装態様では、この周期的運動は、共振器機構1の少なくとも共振周波数の周期的変調を、自然周波数ω0の整数倍の値の0.9倍〜1.1倍である調整周波数ωRでもたらし、上記整数は2以上10以下である。
【0059】
本発明の第2の具体的実装態様では、この周期的運動は、共振器機構1の少なくとも品質係数の周期的変調を、自然周波数ω0の整数倍の値の0.9倍〜1.1倍である調整周波数ωRでもたらし、上記整数は2以上10以下である。
【0060】
本発明の第3の具体的実装態様では、この周期的運動は、共振器機構1の少なくとも静止点の位置の周期的変調を、自然周波数ω0の整数倍の値の0.9倍〜1.1倍である調整周波数ωRでもたらし、上記整数は2以上10以下である。
【0061】
当然のことながら、本発明の他の具体的実装態様は、第1、第2及び第3の態様を組み合わせることができる。
【0062】
従って、第1の態様と第2の態様とを組み合わせた本発明の第4の具体的実装態様では、この周期的運動は、共振器機構1の少なくとも共振周波数及び品質係数の周期的変調を、自然周波数ω0の整数倍の値の0.9倍〜1.1倍である調整周波数ωRでもたらし、上記整数は2以上10以下である。
【0063】
第2の態様と第3の態様とを組み合わせた本発明の第5の具体的実装態様では、この周期的運動は、共振器機構1の少なくとも品質係数及び静止点の周期的変調を、自然周波数ω0の整数倍の値の0.9倍〜1.1倍である調整周波数ωRでもたらし、上記整数は2以上10以下である。
【0064】
第1の態様と第3の態様とを組み合わせた本発明の第6の具体的実装態様では、この周期的運動は、共振器機構1の少なくとも共振周波数及び静止点の周期的変調を、自然周波数ω0の整数倍の値の0.9倍〜1.1倍である調整周波数ωRでもたらし、上記整数は2以上10以下である。
【0065】
第1の態様、第2の態様及び第3の態様を組み合わせた本発明の第7の具体的実装態様では、この周期的運動は、共振器機構1の少なくとも共振周波数、品質係数及び静止点の周期的変調を、自然周波数ω0の整数倍の値の0.9倍〜1.1倍である調整周波数ωRでもたらし、上記整数は2以上10以下である。
【0066】
本方法のこれらの様々な実装態様の具体的実装形態では、全ての変調は同一の周波数ωRで実施されるか、又は互いの倍数である周波数ωRで実施される。
【0067】
本発明の最初の3つの主要な実装態様について、以下に詳細に記載する。
【0068】
本発明の第1の態様の具体的実装形態では、周期的運動は、共振器機構1の剛性及び/又は慣性に作用することによって、共振器機構1の共振周波数の周期的変調をもたらす。より具体的には、周期的運動は、共振器機構1の剛性の変調及び共振器機構1の慣性の変調の両方をもたらすことによって、共振器機構1の共振周波数の周期的変調をもたらす。
【0069】
異なる有利な変形例は、本発明をこの第1の実装態様において達成する異なる手段を可能とする。
【0070】
第1の実装態様の第1の変形例では、この周期的運動は、共振器機構1の質量の変調、及び/又は(図1、2若しくは3に見られるような)共振器機構1の形状の変調、及び/又は例えば図4の概略図に見られるような共振器機構1の重心の位置の変調によって、共振器機構1の慣性の変調をもたらすことにより、共振器機構1の共振周波数の周期的変調をもたらす。
【0071】
第1の態様のこの第1の変形例では、図16A、16Bはまた、共振器の重心及び共振器の慣性の変調を図示している。
【0072】
第1の態様のこの第1の変形例では、図18A〜18Dは、図3又は図7のものと同様の共振器に基づく、重心の変調を図示している。このタイプの系は、内蔵型の副ゼンマイ‐テンプ260を含む。これらの副ゼンマイ‐テンプ260は有利には、アーバを有しない、即ち可撓性軸受を有する系によって置換される。副ゼンマイ‐テンプ260の発振の振幅が必ずしも大きくない場合には、上記可撓性軸受を有する副ゼンマイ‐テンプ260の方が達成が容易である。この場合、主ゼンマイ‐テンプの慣性のみが変調される。従って、小型ゼンマイ‐テンプの不均衡の角度位置に応じて、重心が変調される系を生成できる。
【0073】
このような重心の変調は好ましくは、共振器1の構成部品のうちの1つ又は複数に作用する動的変調である。慣性の変調は、形状の変調によって、質量の変化によって、又は例えば可撓性テンプを使用する場合の、回転の中心に対する共振器の重心の変化によって、達成できる。図7に示すように好適な位相比を有する非対称性を有する内蔵型共振器を使用することもでき、この場合不均衡は同相又は逆相で振動する。
【0074】
第1の態様の第2の変形例では、この周期的運動は、共振器機構1が備える弾性復元手段の剛性の変調、又は共振器機構1内の磁場若しくは静電場若しくは電磁場によって印加される復元力の変調をもたらすことによって、共振器機構1の共振周波数の周期的変調をもたらす。より具体的には、この第2の変形例では、周期的運動は、(図11、12に見られるように)共振器機構1が備えるゼンマイの有効長の変調、又は(図13、14に見られるように)共振器機構1が備えるゼンマイの断面の変調、又は共振器機構1が備える復元手段の弾性率の変調、又は共振器機構1が備える復元手段の形状の変調によって、共振器機構1の共振周波数の周期的変調をもたらす。共振器1の構成部品の弾性率の変調は、圧電系の実装によって、電場(電極)によって、周期的な局所加熱によって、特定の合金を膨張させる磁場の作用によって、光力学的共振系によって、特に形状記憶材料に対する捩れによって又は捻りによって、得ることができる。
【0075】
本発明の第3の実装態様と組み合わせることによって得られる、第1の態様の第3の変形例では、周期的運動は、共振器機構1の剛性の変調及び共振器機構1の静止点の位置の変調の両方をもたらすことによって、共振器機構1の共振周波数の周期的変調をもたらす。
【0076】
剛性に作用するために、磁気歪み現象を有利に使用でき、これは、共振器1の、好適な材料で作製された構成部品を、磁場(内部磁化及び/若しくは外部場)又は衝撃に曝露することによって、剛性を周期的に変調する。
【0077】
弾性率に作用するために、磁気歪み現象を有利に利用することもできるが、周期的な温度上昇、形状記憶構成部品、圧電効果、又は特定の応力の使用によって達成される非線形状態を採用することもできる。
【0078】
本発明の第2の実装態様の具体的実装形態では、この周期的運動は、共振器機構1の損失及び/又は減衰及び/又は摩擦に作用することによって、共振器機構1の品質係数の周期的変調をもたらす。作用は以下の異なる複数の様式で発生し得る:
‐この第2の態様の第1の変形例では、周期的運動は、(図5において枢動羽状部を備えるテンプに関して見られるような、若しくは図17に見られるような)共振器機構1の変形によって、及び/又は(周期的運動によって移動されるパッドがテンプ周辺の空気の流れを修正する図6に見られるような)共振器機構1の周辺の環境の変調によって、共振器機構1の空気力学的損失に作用することにより、共振器機構1の品質係数の変調をもたらす;
‐この第2の態様の第2の変形例では、周期的運動は、例えば中空体内の液体の流れ(例えばヒゲゼンマイ又はゼンマイ‐テンプ組立体のテンプ)を用いて、又はゼンマイを含む共振器の剛性及び減衰の両方の修正をもたらす、ヒゲゼンマイ等に周期的に印加される捩れの影響下で、共振器機構1が備える弾性復元手段の内部減衰を変調することにより、共振器機構1の品質係数の変調をもたらす。具体的なあるケースでは、剛性を修正することなく内部損失を修正できる。単一のゼンマイの代わりに全体として等しい剛性の2つのゼンマイを使用すると、内部損失は大きくなる。2つのゼンマイは特に、場合に応じて直列又は並列に配置でき、ゼンマイのうちの一方には予備応力を印加してよい。同一の剛性を維持したまま損失を修正する別の手段は、ゼンマイに対して、シリコンのドープによる熱補償、又はゼンマイのコイルの2つの異なる部分間の熱交換による熱弾性効果を使用することである;
‐この第2の態様の第3の変形例では、周期的運動は、重力の仮想的な上昇と同様の効果を有する、共振器機構1内の機械的摩擦の変調によって、共振器機構1の品質係数の周期的変調をもたらす。図8は、摩擦ストリップが音叉のアームと協働してこれを変調させる例を示す。
【0079】
本発明の第3の態様のある具体的実装形態では、この周期的運動は、共振器機構1の取り付け位置の変調、及び/又は共振器機構1に作用する復元力の間の均衡の変調によって、共振器機構1の静止点の周期的変調をもたらす。共振器機構1の取り付け位置の変調は、共振器機構1の少なくとも1つの取り付け位置に対して実施できる。例えばゼンマイ‐テンプ3を有する共振器1では、ホゾの衝撃吸収要素に対する作用によって、少なくとも1つの枢動点にヒゲゼンマイ4を取り付けるためのヒゲ持ち及び/又はヒゲ玉7に作用できる。この目的のために、例えば従来の脱進機機構においてはゼンマイに対するレバーの衝突等の、ムーブメントのいくつかの機能を使用できる。
【0080】
‐より具体的には、この第3の態様の第1の変形例では、周期的運動は、機械的弾性復元手段及び/又は磁性復元手段及び/又は静電復元手段によって生成される、共振器機構1に作用する復元力の間の均衡の変調によって、共振器機構1の静止点の周期的変調をもたらす。この均衡を変調するために、最も簡単な解決策は、共振器を異なる源からの複数の復元力に曝露することである。復元力のうちの少なくとも1つを時間、強度及び/又は方向に関して変調すると十分である。これらの力は必ずしも全てが同一の性質のものでなく、いくつかが機械的なもの(ゼンマイ)であってよく、その他が場の印加に関連するものであってよい。ある具体例は、2つのゼンマイを備えるゼンマイ‐テンプ3に対する印加であり、均衡を変調するためには、ヒゲ持ちのうちの一方のみの位置の変調で十分である。図10の角度Ψのヒゲゼンマイの捩れは、共振器1に印加される力のバランスを変更する、従って上記力の均衡を変調するための良好な手段である。これに関して、ヒゲ持ちには6の自由度を与えることができ、図10はある具体的な簡略化された応用例を示しており、特に軸Zの周りでの回転が有利であり得ることに留意されたい;
‐この第3の態様の第2の変形例では、静止点の位置の変調を、第1の態様による剛性の変調と組み合わせる。実際には、力の均衡が修正される場合、全体の剛性も修正される場合が多い。従って静止点を変調する作用は、剛性を変調する作用と組み合わせられる。
【0081】
好ましくは、剛性を変調できる構成部品は複数の要素で形成され、変調はこれらの要素のうちの少なくとも1つに対して実施される。
【0082】
本発明の別の実装態様では、周期的運動は、共振器機構1の品質係数の周期的変調をもたらし、本発明によると、周期的運動は、共振器機構1の構成部品、及び共振器機構1の少なくとも1つの構成部品上の損失生成機構の両方に対して、同一の調整周波数ωRで付与される。
【0083】
上述の様々な態様それぞれと適合する、本発明の更に別の実装態様では、レギュレータ機構2は、共振器機構1の周波数の周期的変調を、共振器機構1の品質係数の逆数よりも高い相対振幅でもたらす。
【0084】
本発明の、実装が容易な態様では、レギュレータデバイス2は、共振器機構1の少なくとも1つの取り付け部に作用する。
【0085】
周波数ωRに関して、様々な特徴:共振周波数、品質係数、静止点の周期的変調が、周波数ω0の異なる倍数で(例えば、基本周波数の2倍の剛性変調、基本周波数の4倍の品質係数変調)発生することを考えることもできるが、パラメトリック増幅の最大の効果及び安定性は、周波数が基本周波数の2倍である場合に得られるため、これはいずれの特定の利点も提供しない。更に、各特徴が異なる状態で変調される系は、複数のレギュレータ2が存在する場合(これは系が複雑になってしまう)を除いて、容易には想定できない。従って、全てのパラメータの変調は好ましくは同一の周波数ωRで発生する。
【0086】
本発明の異なる複数の応用例が可能である。
【0087】
従来の応用例では、本発明は、少なくとも1つの弾性復元手段40を備える共振器機構1に適用され、少なくとも1つの上述のようなレギュレータデバイス2は、共振器機構1の周波数及び/又は共振器機構1の品質係数の周期的変動を引き起こすことによって作用する。
【0088】
通常の腕時計製作における応用例では、本発明は、弾性復元手段40として少なくとも1つのゼンマイ4を有するテンプ26を含む少なくとも1つのゼンマイ‐テンプ組立体3を備える、共振器機構1に適用される。より具体的には、図3に見られるように、共振器機構1の慣性及び品質係数は、テンプ26上に偏心して設置され、共振器1の速度に従って発振する、高い残留不均衡261を有する副ゼンマイ‐テンプ260を運動するように設定する、レギュレータデバイス2によって修正される。
【0089】
弾性復元手段40として少なくとも1つのゼンマイ4を有するテンプ26を備えるゼンマイ‐テンプ組立体3に対する適用の別の変形例では、共振器機構1の品質係数は、レギュレータデバイス2の作用下において、テンプ26の幾何学的形状の局所的修正によって生成された、テンプ26の空気摩擦の修正によって、修正され、上記デバイスはここではテンプ26上にある。例えば図5に見られるように、テンプ26は、(上述のように簡単な速度レギュレータが含んでよい制動フィンとは異なる)変調用羽状部、特に変調用フィンを支持してよく、航空機の翼の外形を有する上記変調用フィンは、テンプ26の周縁部に、特に可撓性ガイド部材等によってヒンジ留めされ、これらフィンは好ましくは反転可能であり、従って運動方向を完全に傾動させることができる。好ましくはこれらのフラップは、可撓性ストリップによって保持される。中間速度において、フラップは図5Aのように天輪に近接している。図5Bにおける最大速度では、フラップが図5Cに見られるように反対方向に変化すると、空気力学的効果によってフラップは持ち上げられる(航空機の翼の効果)。この例では、慣性は、ゼンマイ‐テンプ共振器の自然周波数の4倍の周波数で修正される。このようにして、空力制動タイプの空気摩擦が得られ、テンプの周縁部のフラップは、品質係数及び/又は慣性に対する影響を有する。このフラップは、枢動可能に緩く設置するか又は枢動可能に設置してよく、ヒゲゼンマイ又は可撓性ガイド部材等によって戻すことができる。ある変形例は、可変の幾何学的形状を有する天輪からなってよい。従ってこのような変形例では、共振器機構1の品質係数は、レギュレータデバイス2の作用下でのテンプ26の幾何学的形状の局所的修正によって生成されたテンプ26の空気摩擦の修正によって、修正される。レギュレータ2は、この共振器1の速度とは独立して運動できることに留意されたい。ある具体的変形例は、この変形例を1つ前の変形例と組み合わせることからなり、偏心ゼンマイ‐テンプ26は発振するよう設定される。
【0090】
テンプ自体ではなく環境に対して作用する別の変形例では、共振器機構1の品質係数は、図6に見られるような、レギュレータデバイス2の作用下でのテンプ26周辺の環境の幾何学的形状の局所的修正によって生成されたテンプ26の空気摩擦の修正によって、修正され、ここで周期的運動によって移動するパッドは、テンプの周辺の空気の流れを修正する。
【0091】
従って本発明は、機械的復元手段を有しない共振器機構1にも適用できる。よって具体的応用例(図示せず)では、レギュレータ機構2の周期的運動は、離間した電力又は磁力又は電磁力による、共振器機構1の周波数及び/又は品質係数及び/又は静止点の位置の変調をもたらす。
【0092】
図9に示す本発明の別の変形応用例は、弾性復元手段40を形成する捩りワイヤ46を保持するヒゲ玉7を備える少なくとも1つのテンプ26を備える、共振器機構1に関し、ここで少なくとも1つのレギュレータデバイス2は、捩りワイヤ46の張力の周期的変化を引き起こすことによって作用する。同様の変形例では、捩りワイヤを可撓性ガイド部材に置換する。
【0093】
図8に示す本発明の別の変形応用例は、少なくとも1つの音叉を備える共振器機構1に関し、少なくとも1つのレギュレータデバイス2は、共振器機構1の周波数、及び/又は共振器機構1の品質係数を定義する少なくとも1つの音叉のアームの剛性の周期的変動を引き起こすことによって作用する。より具体的には、レギュレータデバイス2は、音叉の取り付け部及び/又は音叉の少なくとも1つのアームに圧力を印加するホイールセットに作用できる。このタイプの音叉は、必ずしも従来の音叉の形状ではなく、可能な形状の中でも特に、ハート型又はH字型を取ってよいことに留意されたい。
【0094】
ある変形例では、本発明は、単一のアームを有する共振器、又は捩れて若しくは伸長して動作する共振器に適用することもできる。
【0095】
有利には、本発明により、共振器機構1を始動及び/又は維持するためにレギュレータデバイス2を使用できる。好ましくは、このレギュレータデバイス2は、共振器機構1の始動及び/又は維持機構と協働して、共振器機構1の発振振幅を増大させる。
【0096】
本発明は有利には、同時維持(co‐maintenance)、即ち発振を維持するためのパラメトリックな方法と組み合わせた標準的な低動力維持を可能とする。レギュレータデバイス2は、単独で、又は始動及び/若しくはインパルス維持機構と協働させて、共振器機構1の連続的な維持に使用される。
【0097】
例えばこのような維持は、図2の構成による、天輪上に発振性慣性ブロックを支持するばねを含むテンプを備える、ゼンマイ‐テンプ系を用いて得ることができる。続いてレバー式脱進機等により、テンプ及び小型慣性ブロックの発振を励起できる。ばね及び慣性ブロックは、ここではゼンマイ‐テンプの自然周波数の2倍である周波数で発振する。慣性ブロックは慣性連結によって発振する。テンプの慣性はゼンマイ‐テンプの2倍の周波数で変動するため、パラメトリック効果が発生する。図15は、このタイプの共振器によって得られる調整を示す。この場合、空気力学的損失も修正されることに留意されたい。
【0098】
別の例はデテント脱進機を用いることからなり、このデテント脱進機はまた、(運動するピンを用いて)ヒゲゼンマイ4の剛性に作用するレギュレータ機構2と協働して計数機能を保証する。
【0099】
本発明はまた、少なくとも1つの共振器機構1を含む時計ムーブメント10にも関する。本発明によると、このムーブメント10は少なくとも1つのこのようなレギュレータデバイス2を備え、このレギュレータデバイス2は、共振器機構1の1つ又は複数の物理的特徴:共振周波数及び/又は品質係数及び/又は静止点の周期的変化を、共振器機構1の自然周波数ω0の整数倍の値の0.9倍〜1.1倍である調整周波数ωRでもたらすことによって、共振器機構1に作用するよう配設され、上記整数は2以上10以下である。
【0100】
ある変形例では、このレギュレータデバイス2は、共振器機構1に調整周波数ωRで周期的運動を直接付与することによって、共振器機構1に作用するよう配設される。
【0101】
ある変形例では、このレギュレータデバイス2は、共振器機構1の少なくとも1つの取り付け部、並びに/又は共振器機構の周波数、特に剛性及び/若しくは慣性、並びに/又は共振器機構1の品質係数、並びに/又は共振器機構1の損失若しくは摩擦に作用する。
【0102】
ある変形例では、レギュレータデバイス2は、共振器機構1の構成部品及び/又は共振器機構1の少なくとも1つの構成部品上の損失生成機構に周期的運動を付与することによって、共振器機構1に作用する。
【0103】
本発明はまた、少なくとも1つのこのような時計ムーブメント10を含む時計30にも関する。
【0104】
ここで示すいくつかのパラメトリック発振器の例は非限定的なものである。図15〜18のもの等、いくつかは、既存のムーブメントにそのまま挿入して、テンプ等の標準的な構成部品を置換でき、有利である。というのは、関連するムーブメントの機械的構成部品の設計及び製造が問題とならないためである。
【0105】
これらの系の利点の1つは、脱進機の効率の本質的な低下にもかかわらず、ゼンマイ‐テンプを高い周波数で動作させることができることである。
【0106】
実装のための最も容易な原理は、テンプの一部分を発振させることからなる。このような(ゼンマイ‐テンプの自然周波数のn≧2倍の周波数での)発振は、慣性又は重心又は空気力学的損失を修正する。
【0107】
図面は、本発明の実施形態の簡単で非限定的な例を図示している。そのいくつかは、例えば標準的なテンプを特定のテンプに置換することによって、極めて容易に実装できる。
【0108】
これらの例は、レギュレータ2の構成要素を、共振器1のいくつかの構成部品に組み込むことができることを示す。多くの場合、本発明は副次的な励起回路を必要とせず、共振器1の自然周波数ω0に対して特定の関係にある定義された周波数ωRでのレギュレータ2の発振を可能とするのは、レギュレータ構成部品の寸法である。
【0109】
図1は、本発明に従って調整されるパラメトリック共振器機構1を示し、これは、テンプ26及びヒゲゼンマイ(図示せず)を有する、共振器を形成するゼンマイ‐テンプ3を備える。慣性及び/又は品質係数は、ばね72を介して径方向又は接線方向に配設された慣性ブロック71によって変調され、ばね72は取り付け点73においてテンプ26の構造体、特にテンプ26の天輪に固定される。これらの慣性ブロック‐ばね組立体は、ゼンマイ‐テンプ3によって、共振器1の周波数ω0の2倍の周波数で励起される。共振器1はここでは、慣性ブロック‐ばね組立体で形成されたレギュレータ2の要素を支持し、上記組立体は、テンプ26の枢動運動中に径方向及び/又は接線方向に振動する。慣性ブロック‐ばね組立体のうちのいくつかは特に、テンプ26が備える経路74内にガイドされてよい。慣性ブロックの径方向振動は慣性及び摩擦項に影響を与え、接線方向振動は動的慣性に影響を与える。テンプ26はここでは、主に径方向に発振する振動ストリップ84を支持するアーム85も支持する。レギュレータ2の効率を高めるために、ばね72は好ましくはテンプに比べて大きな体積を有し、径方向設置面積は例えば、テンプ自体の天輪の半径と同等であるか又はそれより大きく、例えばばね72及び慣性ブロックの径方向設置面積はヒゲ玉7の半径の4倍に等しい。
【0110】
好ましくは、全ての例に当てはまることであるが、レギュレータが備える全ての振動性組立体は、本発明によって定義される同一の周波数ωRで発振する。これらの組立体のうちのいくつかを、自然周波数ω0に対して本発明によって定義された周波数ωRの整数倍の周波数で発振させることも可能である。
【0111】
図2もまたゼンマイ‐テンプ3を有する共振器1を示し、ゼンマイ‐テンプ3のテンプ26は、レギュレータ2の要素、即ち:点73において天輪に取り付けられ、慣性ブロック71を支持し、共振器1の周波数ω0の2倍の周波数の調整用励起を受ける、4つの径方向ばね72を支持する。図15は、このタイプの共振器を用いて得られる調整を示す。
【0112】
図3は、既存のテンプを図1、2のものと同様の共振器1で置換するための、極めて容易な解決策を示し、上記共振器1は、枢動可能に緩く設置された内蔵型副ゼンマイ‐テンプ260を支持し、内蔵型副ゼンマイ‐テンプ260はそれぞれ高い不均衡261を有する。以下の2つの実施形態が存在する:
‐副ゼンマイ‐テンプ260は、例えば従来の機械的枢動によって、振幅の制限なしに完全に自由に回転できる;又は
‐副ゼンマイ‐テンプ260は振幅に関して制限され、例えばシリコン製等の実施形態ではテンプ26と一体として作製され、可撓性ホゾを有し、従って振幅が制限される。
【0113】
図4は、図1〜3のものと同様の共振器1を示し、テンプ26は、直径方向反対側に位置する2つの略径方向のばね51によって懸架され、テンプ26の重心は、これら2つのばね51の共通の方向に対応する。ある変形例では、天真はばねによって保持される。別の変形例では、テンプ26は従来のアーバと共に枢動せず、可撓性軸受部材とのみ枢動し、仮想的な天真がばねの方向によって画定される。この図は、ばねを2つのみとして意図的に簡略化されており、当然のことながら、テンプ26を3つ以上のばね51から懸架することも考えられる。この組立体全体の一体型実施形態は、テンプ26の所望の枢動振幅の限界内において可能である。機能性構成部品を異なる平面上に分散させるための多層型の実施形態も可能であることは明らかである。
【0114】
図5A、5B、5Cは、空気力学的外形を有するフラップ60を天輪上に支持するテンプ26が組み込まれた別の同様の共振器1を示し、上記フラップ60は、テンプ26の天輪上の可撓性軸受ホゾ81上にヒンジ留めされ、上述のようにテンプ26の枢動運動中に枢動する。この構成は、自然周波数ω0の2倍のフラップの調整周波数を用いて真空中で動作でき、又はω0の4倍の周波数を用いて空気中で動作できる。
【0115】
図6は、テンプ26を有する共振器1を示す。ここではレギュレータ2は、共振器1から完全に分離されている。テンプ26の天輪の近傍のパッド82は空気力学的制動装置を形成し、テンプが組み込まれたゼンマイ‐テンプ共振器1の周波数の2倍の周波数で可動である。この可動性は、外部励起源によるものであってよく、また天輪の外形、例えば歯付き外形によるものであってもよく、上記外形は、パッド82近傍の空気流の変動を生成する。
【0116】
図7は、高い不均衡261を有する2つの副ゼンマイ‐テンプ260を有する、図3と同様のテンプを示し、上記2つの副ゼンマイ‐テンプ260は、同一の直径上の、不均衡の整列の位置(静止点)に、緩く設置され、上記不均衡は図3のものとは異なっており、また同相又は逆相で振動する。好ましくはこの実施形態は、シリコン又は同様の微小機械加工可能な材料(特に酸化ケイ素、石英、「LIGA(登録商標)」、非晶質金属等)で作製され、副ゼンマイ‐テンプ及びその不均衡261はテンプ26と一体であり、上記副ゼンマイ‐テンプ及びその不均衡261はテンプ26に関して、可撓性接続を介して枢動し、また不均衡の整列は、この構造体の静止状態である。このタイプのテンプもまた、既存のテンプを置換して時間測定性能を改善するための極めて容易な解決策である。
【0117】
図8は、構造体50に固定された音叉55を有する共振器1を示し、音叉55の一方のアーム56は、音叉共振器の周波数の2倍の周波数で励起される摩擦パッド57と接触する。
【0118】
図9は、捩りワイヤ46を保持するヒゲ玉7を含むテンプ26を備える共振器機構を示し、共振器デバイス2は、テンプ‐捩りワイヤ型共振器1の周波数の2倍の周波数で、張力の周期的変調を制御する。
【0119】
図10は、ゼンマイ‐テンプ3を備えるパラメトリック共振器機構1を示し、ヒゲゼンマイ4の外側コイル6は、レギュレータデバイス2が周期的運動を付与するヒゲ持ち5にピン留めされ、上記ヒゲ持ち5は、必要な場合にヒゲゼンマイ4を捻るために、空間内で並進運動、枢動運動、傾動運動可能である。
【0120】
図11は、緩急針12及びピン11を有する緩急針機構を有する、別のゼンマイ‐テンプ3共振器1を示し、レギュレータ系2は、ヒゲゼンマイ4の有効長を連続的に変化させるために、緩急針12の連続的運動を作動させるためのクランク‐ロッド系を有する。
【0121】
図12は、ヒゲゼンマイ4の有効長並びに/又はヒゲゼンマイの取り付け点の位置及び/若しくは幾何学的形状を連続的に変化させるために、カム14が静置されたヒゲゼンマイ4を、同様の様式で示す。この図は簡略化された図であり、ヒゲゼンマイの片側のみに単一のカムが静置されている。ヒゲゼンマイ4の両側を挟むように配設された2つのカムを組み合わせることもできることは明らかである。
【0122】
図13は、ヒゲゼンマイ4を同様の様式で示し、ヒゲゼンマイには追加のコイル18が固定され、ヒゲゼンマイの終端カーブ17に局所的に並置され、レギュレータデバイス2はこの追加のコイル18の一方の端部18Aを作動させる。
【0123】
図14は、その終端カーブ17近傍に別のコイル23を有する別のヒゲゼンマイ4を示し、上記別のコイル23は、その第1の端部24において、レギュレータデバイス2によって操作される支持体59によって保持され、また上記別のコイル23は、上記支持体に対するレギュレータデバイス2の作用下で終端カーブ17と周期的に接触するよう配設された第2の端部25において自由である。
【0124】
図16A、16Bは、共振器1の重心の修正を示す。ゼンマイ‐テンプ3共振器はテンプ26を備え、このテンプ26は、天輪に取り付けられた略径方向のばね72を支持し、また発振性慣性ブロック71を支持し、これら慣性ブロック71は図2と同様であるものの、いくつかは天輪の内側を向いており、いくつかは天輪の外側を向いている。これに関連する求心効果又は遠心効果により、共振器1の重心の位置を変調できる。
【0125】
図17A、17Bは、空気力学的損失及び慣性を修正するための可撓性ホゾ81を有するフラップ80を有する別のテンプ系26の変形例の、図5と同様の図である。
【0126】
図18〜18Dは、不均衡261を有する内蔵型副ゼンマイ‐テンプ260を備える図3又は図7のものと同様の共振器に基づく、重心の変調を示す。
【0127】
図19は、パラメトリック発振器の例示的実施形態を示し、ヒゲ玉7は、例えばガルバニック堆積又は他の手段によって得られた金又は別の重金属の層75を用いて重量を付与された周縁慣性ブロック71を支承するシリコンばね72を支持し、ばね‐慣性ブロック組立体は、調整周波数ωRで発振する。例えばω0=10Hz、ωR=20Hzである。図20はテンプ26を示し、これらのばね‐慣性ブロック組立体はヒゲ玉7から天輪の最大直径まで延在する。
【0128】
図21は、支持体50に組み込まれた音叉55を示し、一方の分岐56は、分岐56に枢動可能に緩く設置された、偏心性不均衡261を有する副ゼンマイ‐テンプ組立体260を支持する。
【0129】
図22は音叉55を示し、その一方の分岐56は、自由に振動できるように設置されたばね72‐慣性ブロック71組立体を支持する。
【0130】
本発明はまた、ある有利な実施形態において、強制発振型の時計用共振器機構1にも関し、上記時計用共振器機構1は、自然周波数ω0で発振するよう配設され、好ましくはテンプ26又は音叉55又は振動性ストリップ等を含む少なくとも1つの発振部材100と、上記発振部材100に衝撃及び/又は力及び/又はトルクを印加するよう配設された発振維持手段200とを備える。
【0131】
本発明によると、この発振部材100は少なくとも1つの発振性レギュレータデバイス2を支持し、この発振性レギュレータデバイス2の自然周波数は調整周波数ωRであり、ωRは、上記共振器機構1の自然周波数ω0の整数倍の値の0.9倍〜1.1倍であり、この整数は2以上である。自然周波数ω0に対するωRの複数の具体的な値は、好ましくは上述の具体的な規則に従う。
【0132】
第1の変形例では、このレギュレータデバイス2は、副枢軸の周りで枢動する少なくとも1つの副ゼンマイ‐テンプ260を含み、上記副ゼンマイ‐テンプ260の上記副枢軸に関して偏心した不均衡261を有し、これは発振部材100上に枢動可能に緩く設置されている。
【0133】
具体的には、発振部材100は主枢軸の周りで枢動し、この少なくとも1つの副ゼンマイ‐テンプ260は、主枢軸に関して偏心した副軸を有する。
【0134】
ある具体的実施形態では、レギュレータデバイス2は、少なくとも第1の副ゼンマイ‐テンプ260及び第2の副ゼンマイ‐テンプ260を含み、これらの不均衡261は、応力のない静止状態において、副ゼンマイ‐テンプ260の副枢軸と整列している。より具体的には、発振部材100は主枢軸の周りで枢動し、少なくとも1つの副ゼンマイ‐テンプ260は主枢軸に関して偏心した副軸を有する。
【0135】
微小材料技術によって可能となるある有利な実施形態では、少なくとも1つのこのような副ゼンマイ‐テンプ260は、副ゼンマイ‐テンプ260を保持するための、発振部材100が備える弾性維持手段によって画定される仮想副軸の周りで枢動され、その運動の振幅は発振部材100に関して制限される。
【0136】
有利には、少なくとも1つのこのような副ゼンマイ‐テンプ260は、発振部材100と一体である。
【0137】
より具体的には、少なくとも1つのこのような副ゼンマイ‐テンプ260は、発振部材100が備える、又は上記発振部材100を形成するテンプ26と一体である。
【0138】
第2の変形例では、レギュレータデバイス2は、ばね72によって発振部材100上の点73に取り付けられた慣性ブロック71を備える、少なくとも1つのばね‐慣性ブロック組立体を含む。
【0139】
具体的には、発振部材100は主枢軸の周りで枢動し、少なくとも1つのこのようなばね72は、上記主枢軸に関して径方向に延在する。
【0140】
ある具体的実施形態では、発振部材100は複数のこのようなばね‐慣性ブロック組立体を支持し、上記組立体のばね72は主枢軸に関して径方向に延在し、少なくとも1つの組立体は、その慣性ブロック71を、そのばね72に比べて主枢軸から離間した位置に支持し、また少なくとも1つの別の組立体は、その慣性ブロック71を、そのばね72に比べて主枢軸に近接した位置に支持する。
【0141】
具体的には、発振部材100は主枢軸の周りで枢動し、少なくとも1つのこのようなばね72は、主枢軸に関して、点73に対する接線方向に延在する。
【0142】
具体的には、少なくとも1つのこのようなばね‐慣性ブロック組立体は、その取り付け点73を除いて、発振部材100に関して自由に運動できる。
【0143】
ある具体的実施形態では、ばね‐慣性ブロック組立体の可動性は、上記発振部材100が備えるガイド手段によって制限されるか、又はばね‐慣性ブロック組立体は、上記発振部材100が備える経路74内を移動する。
【0144】
第3の変形例では、レギュレータデバイス2は少なくとも1つのフラップ80又はストリップ84を含み、上記フラップ80又はストリップ84は、空気力学的変動の影響下で可動であり、ホゾ81又は弾性ストリップ又はアーム85によって発振部材100に取り付けられる。
【0145】
特に、ある具体的実施形態では、少なくとも1つのフラップ80又はストリップ84は、このフラップ80又はストリップ84が支持されるホゾ81に関して又は弾性ストリップに関して又はアーム85に対して傾斜してよい。
【0146】
本発明を既存のムーブメントに容易に適合できるようにし、最小のコストで既存のムーブメントの時間測定性能を大幅に改善させることができる、ある有利な実施形態では、発振部材100は発振維持手段200の作用を受けるテンプ26であり、発振維持手段200は、少なくとも1つのヒゲゼンマイ4及び/又は少なくとも1つの捩りワイヤ46を備える復元手段である。
【0147】
別の具体的実施形態では、発振部材100は音叉55であり、この音叉55の少なくとも1つの分岐56は、発振維持手段200の作用を受ける。
【0148】
これらの異なる非限定的な変形例は、互いに、及び/又は本発明の原理を遵守する更に他の変形例と、組み合わせてよいことは明らかである。
【0149】
本発明はまた、その自然周波数ω0付近で発振するよう配設された少なくとも1つの共振器機構1を備える時計ムーブメント10にも関する。本発明によると、このムーブメント10は、共振器機構1の共振周波数及び/又は品質係数及び/又は静止点の位置の周期的変調を、上記共振器機構1の自然周波数ω0の整数倍の値の0.9倍〜1.1倍である調整周波数ωRでもたらすことによって上記共振器機構1に作用するよう配設された手段を備える、少なくとも1つのレギュレータデバイス2を含み、この整数は2以上10以下である。
【0150】
第1の変形例では、ムーブメント10は少なくとも1つのこのような共振器機構1を含み、その発振部材は少なくとも1つの上記レギュレータデバイス2を支持する。
【0151】
第2の変形例では、ムーブメント10は、上記少なくとも1つの共振器機構1とは別個の上記レギュレータデバイス2を含み、このレギュレータデバイス2は、空気力学的な流れ又は磁場又は静電場又は電磁場の変調によって、上記共振器機構1の少なくとも1つの構成部品と接触すること又は上記共振器機構1から離間することにより、作用する。
【0152】
有利には、この共振器機構1は、剛性及び/又は慣性が可変である少なくとも1つの変形可能な構成部品を含み、上記少なくとも1つのレギュレータデバイス2は、上記変形可能な構成部品を変形させてその剛性及び/又は慣性を変化させるよう配設された手段を含む。
【0153】
ある具体的実施形態では、この少なくとも1つのレギュレータデバイス2は、共振器機構1を変形させるよう、及び共振器機構1の重心の位置を変調するよう配設された手段を含む。
【0154】
ある具体的実施形態では、この少なくとも1つのレギュレータデバイス2は、上記共振器機構1の少なくとも1つの構成部品において損失生成手段を含む。
【0155】
実装が極めて容易であるため有利である、ある実施形態では、レギュレータデバイス2は、発振部材100近傍の空気力学的流れを変調するための手段を含み、これら変調手段は、弾性復元手段83によって構造体50から懸架された少なくとも1つのパッド83を備える。
【0156】
本発明はまた、少なくとも1つの上述のような時計ムーブメント10を含む時計30、特に腕時計にも関する。
【0157】
当然のことながら、本発明を置き時計等の別の時計に適用することも全く問題なく可能である。本発明は、機械的発振部材100を備えるいずれの種類の発振器、特に振り子に対して適用できる。
【0158】
上で定義したような周波数ωRにおける、より詳細には周波数ω0の2倍における励起は、矩形波又はパルス波信号を用いて達成でき、正弦波励起を用いることは必須ではない。
【0159】
維持用レギュレータは極めて正確である必要はない。精度のいずれの欠如は振幅の損失にしかつながらず、周波数の変動性が極めて高い場合(これは回避されるべきである)を除いて、周波数は変動しない。実際には、これら2つの発振器、即ち維持用のレギュレータ及び維持される共振器は連結されず、一方が他方に対して、理想的には(ただし必須ではない)単一方向に、維持を行う。
【0160】
ある好ましい実施形態では、維持用レギュレータ2と維持される共振器1との間には連結用ゼンマイは存在しない。
【0161】
本発明はまた、レギュレータの周波数が共振器の自然周波数の2倍又は倍数である(又はある倍数に極めて近い)こと、及びエネルギ伝達のモードにおいて、公知の連結式発振器とは異なる。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16A
図16B
図17A
図17B
図18A
図18B
図18C
図18D
図19
図20
図21
図22
図23
【手続補正書】
【提出日】2016年4月1日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時計の共振器機構の周波数を、上記共振器機構の動作中に、その自然周波数付近に維持及び調整するための方法に関し、上記方法は、周期的運動によって上記共振器機構に作用する少なくとも1つのレギュレータデバイスを実装し、上記周期的運動は、上記共振器機構の共振周波数及び/又は品質係数及び/又は静止点の位置の周期的変調を、上記自然周波数の整数倍の値の0.9倍〜1.1倍である上記レギュレータデバイスの調整周波数でもたらし、上記整数は2以上10以下である。
【0002】
本発明は、機械式腕時計製作におけるタイムベースの分野に関する。
【背景技術】
【0003】
時計のタイムベースの性能の改善のための探求は、常に関心の対象となっている。
【0004】
機械式腕時計の時間測定性能に対する大きな制約は、従来のインパルス脱進機の使用にあり、このタイプの干渉を回避できる脱進機に関する解決策は未だ存在しない。
【0005】
本出願人による特許文献1は、第1の低周波数共振器(例えば約数ヘルツ)と、第2の高周波数共振器(例えば約1キロヘルツ)とを含む、連結型共振器を開示している。この発明は、第1の共振器及び第2の共振器が、恒常的な機械的連結手段を含み、上記連結によって、外部干渉が発生した場合、例えば衝撃が発生した場合に周波数を安定化させることができることを特徴とする。
【0006】
PATEK PHILIPPE SAによる特許文献2は、ヒゲゼンマイによって機械的に維持される発振テンプと、テンプを同期させるための静止部材に磁気連結された振動部材とを含む、時計ムーブメントの調整のための可動組立体を開示している。テンプ及び振動部材は、同一の単一の、可動式かつ振動性の、同時に発振性の要素によって形成される。振動部材の振動周波数は、テンプの発振周波数の整数倍である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】欧州特許出願第1843227A1号
【特許文献2】スイス特許出願第615314A3号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、可能な限り正確なタイムベースを製造することを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的のために、本発明は、時計の共振器機構の周波数を、上記共振器機構の動作中に、その自然周波数付近に維持及び調整するための、請求項1に記載の方法に関する。
【0010】
本発明はまた、時計の共振器機構の周波数を、上記共振器機構の動作中に、その自然周波数付近に維持及び調整するための、請求項22に記載の方法に関する。
【0011】
本発明はまた、時計の共振器機構の周波数を、上記共振器機構の動作中に、その自然周波数付近に維持及び調整するための、請求項23に記載の方法に関する。
【0012】
本発明はまた、時計の共振器機構の周波数を、上記共振器機構の動作中に、その自然周波数付近に維持及び調整するための、請求項24に記載の方法に関する。
【0013】
本発明の他の特徴及び利点は、添付の図面を参照して以下の詳細な説明を読むことにより明らかになるであろう。添付の図面は、本発明の様々な実装態様及び変形例に対応するパラメトリック発振器を部分的かつ概略的に示す。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明によって調整されるパラメトリック共振器機構の概略部分平面図である。上記パラメトリック共振器機構は、共振器を形成する時計用ゼンマイ‐テンプを備え、上記時計用ゼンマイ‐テンプの慣性及び/又は品質係数は、ばねを介して径方向又は接線方向に配置された錘によって変調され、テンプが組み込まれたゼンマイ‐テンプ共振器の周波数の2倍の周波数で励起され、また上記時計用ゼンマイ‐テンプのヒゲゼンマイは図示されていない。このテンプはその天輪上に、テンプの枢動運動中に径方向又は接線方向に振動する要素を支持する。
図2図2は、天輪に接続された、錘を支持する4つの径方向ばねを備えるテンプの概略部分平面図である。上記ばねは、テンプが組み込まれたゼンマイ‐テンプ共振器の周波数の2倍の周波数での調整用励起を受ける。ヒゲゼンマイは図示されていない。
図3図3は、緩く設置された内蔵型ゼンマイ‐テンプを支持するテンプの概略部分平面図であり、上記内蔵型ゼンマイ‐テンプはそれぞれ高い不均衡を有する。
図4図4は、直径方向反対側に位置する2つの径方向ばねによって懸架されたテンプの概略部分平面図である。テンプの重心の軌跡は、2つのばねの共通の方向に対応する。
図5A図5Aは、テンプの枢動運動中に枢動する要素を天輪上に支持するテンプの概略部分平面図である。
図5B図5Bは、テンプの枢動運動中に枢動する要素を天輪上に支持するテンプの概略部分平面図である。
図5C図5Cは、テンプの枢動運動中に枢動する要素を天輪上に支持するテンプの概略部分平面図である。
図6図6は、テンプの概略部分平面図であり、このテンプの近傍において、空気力学的制動パッドが、テンプが組み込まれたゼンマイ‐テンプ共振器の周波数の2倍の周波数で運動可能である。ゼンマイ‐テンプ共振器のヒゲゼンマイは図示されていない。
図7図7は、高い不均衡を有する2つのゼンマイ‐テンプを有する、図3と同様のテンプを示す。上記ゼンマイ‐テンプは、同一の直径上の、不均衡の整列の位置(静止点)に、緩く設置され、上記不均衡は図3のものとは異なっており、また同相又は逆相で振動する。
図8図8は、音叉の概略部分平面図であり、この音叉の一方のアームは、音叉共振器の周波数の2倍の周波数で励起される摩擦パッドと接触する。
図9図9は、捩りワイヤを保持するヒゲ玉を含むテンプを備える共振器機構を示し、共振器デバイスは、テンプ及び捩りワイヤを備える共振器の周波数の2倍の周波数で、張力の周期的変動を制御する。
図10図10は、本発明によって調整されるパラメトリック共振器機構の概略図である。上記パラメトリック共振器機構は時計用ゼンマイ‐テンプを備え、ヒゲゼンマイの外側コイルは、レギュレータデバイスが周期的運動を付与するヒゲ持ちにピン留めされ、上記ヒゲ持ちは、必要な場合にヒゲゼンマイを捻るために、空間内で並進運動、枢動運動、傾動運動可能である。
図11図11は、緩急針機構を備えるヒゲゼンマイの概略図である。緩急針機構はピンを有し、またヒゲゼンマイの有効長を連続的に変化させるために、緩急針の連続的運動を作動させるためのクランク‐ロッド系を有する。
図12図12は、ヒゲゼンマイの有効長並びに/又はヒゲゼンマイの取り付け点の位置及び/若しくは幾何学的形状を連続的に変化させるために、カムが静置された、ヒゲゼンマイの概略図である。この図は簡略化された図であり、ヒゲゼンマイの片側のみに単一のカムが静置されている。ヒゲゼンマイの両側を挟むように配設された2つのカムを組み合わせることもできることは明らかである。
図13図13は、ゼンマイ‐テンプ組立体のヒゲゼンマイの部分概略図であり、ヒゲゼンマイに追加のコイルが固定され、ヒゲゼンマイの外側終端カーブに局所的に並置され、レギュレータデバイスはこの追加のコイルの一方の端部を作動させる。
図14図14は、その終端カーブ近傍に別のコイルを有するヒゲゼンマイを示し、上記別のコイルは、その第1の端部において、レギュレータデバイスによって操作される支持体によって保持され、また上記別のコイルは、上記支持体に対するレギュレータデバイスの作用下で終端カーブと周期的に接触するよう配設された第2の端部において自由である。
図15図15は、図2に示したタイプの共振器によって得られる調整を示す。
図16A図16Aは、共振器の重心の修正を示す。ゼンマイ‐テンプ共振器はテンプを備え、このテンプは、天輪に取り付けられた略径方向のばねを支持し、また発振性慣性ブロックを支持し、これら慣性ブロックのうちのいくつかは天輪の内側を向いており、いくつかは天輪の外側を向いている。
図16B図16Bは、共振器の重心の修正を示す。ゼンマイ‐テンプ共振器はテンプを備え、このテンプは、天輪に取り付けられた略径方向のばねを支持し、また発振性慣性ブロックを支持し、これら慣性ブロックのうちのいくつかは天輪の内側を向いており、いくつかは天輪の外側を向いている。
図17A図17Aは、空気力学的損失及び慣性を修正できるようにする可撓性ホゾを有する羽状部を有する別のテンプ系の、図5と同様の図である。
図17B図17Bは、空気力学的損失及び慣性を修正できるようにする可撓性ホゾを有する羽状部を有する別のテンプ系の、図5と同様の図である。
図18A図18Aは、内蔵型ゼンマイ‐テンプを備える図3又は図7のものと同様の共振器に基づく、重心の変調を示す。
図18B図18Bは、内蔵型ゼンマイ‐テンプを備える図3又は図7のものと同様の共振器に基づく、重心の変調を示す。
図18C図18Cは、内蔵型ゼンマイ‐テンプを備える図3又は図7のものと同様の共振器に基づく、重心の変調を示す。
図18D図18Dは、内蔵型ゼンマイ‐テンプを備える図3又は図7のものと同様の共振器に基づく、重心の変調を示す。
図19図19は、パラメトリック発振器の例示的実施形態を示し、ヒゲ玉は、金の層を用いて重量を付与された周縁慣性ブロックを支承するシリコンばねを支持し、ばね‐慣性ブロック組立体は、調整周波数ωRで発振する。
図20図20は、図19と同様のばね‐慣性ブロック組立体を備えるテンプを示す。
図21図21は、音叉を示し、この音叉の一方の分岐は、枢動可能に緩く設置された副ゼンマイ‐テンプを支持する。
図22図22は、音叉を示し、この音叉の一方の分岐は、自由に振動できるように設置されたばね‐慣性ブロック組立体を支持す。
図23図23は、2倍周波数レギュレータデバイスによって本発明に従って調整される共振器機構を有する機械式ムーブメントを含む腕時計のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の目的は、時計、特に機械式時計、とりわけ機械式腕時計の製作のための、可能な限り正確なタイムベースを製造することである。
【0016】
これを達成する1つの方法は、異なる複数の共振器を直接又は脱進機を介して関連させることからなる。
【0017】
脱進機機構に関連する不安定性という因子を克服するために、パラメトリック共振器系は、脱進機機構の影響を低減することによって、腕時計をより正確なものとすることができる。
【0018】
パラメトリック発振器は、発振を維持するために、調整周波数ωRを有する発振器のパラメータのうちの少なくとも1つを変更することからなるパラメトリック起動を用いる。
【0019】
従来どおり、レギュレータと共振器とを明確に区別するために、本明細書において「レギュレータ(regulator)」2は、本明細書において「共振器(resonator)」1と呼ばれる他の維持対象の系の周波数を維持及び調整するために使用される発振器を指す。
【0020】
寸法1のパラメトリック共振器のラグランジアンLは:
【0021】
【数1】
【0022】
であり、ここでTは運動エネルギ、Vは位置エネルギであり、上記共振器の慣性I(t)、剛性k(t)、静止位置x0(t)は時間の周期関数であり、xは共振器の一般化座標である。
【0023】
付勢された、及び減衰されたパラメトリック共振器に関する方程式は、ラグランジアンLに関するラグランジェ方程式に、強制関数f(t)と、散逸機構を考慮したランジュバン力とを加えることによって得られる:
【0024】
【数2】
【0025】
ここでxの1次導関数の係数は:
【0026】
【数3】
【0027】
であり、β(t)>0は損失を記述する項であり、ゼロ次項の係数は、共振器の周波数
【0028】
【数4】
【0029】
に左右される。
【0030】
関数f(t)は、非強制型発振器の場合には0の値を取る。この関数f(t)もまた周期関数であってよく、又はディラックインパルスの表現であってよい。
【0031】
本発明は、レギュレータと呼ばれる維持用発振器の動作によって、項β(t)、k(t)、l(t)、x0(t)のうちの1つ及び/又は1つ以外又は全てを、調整対象の発振器系の自然周波数ω0の整数倍(特に2倍)の値の0.9〜1.1倍である調整周波数ωRで変化させることからなる。
【0032】
この現象を理解するために、全長が変更される振り子の例に擬えることができる。減衰された発振器に関する方程式は以下の通りである:
【0033】
【数5】
【0034】
ここでxの1次項は損失項であり、ゼロ次項は共振器の周波数項であり、x0(t)は共振器の静止位置に対応する。
【0035】
関数f(t)は、非強制型発振器の場合には0の値を取る。この関数f(t)もまた周期関数であってよく、又はディラックインパルスの表現であってよい。
【0036】
本発明は、維持用発振器、即ちレギュレータ2の動作によって、項β(t)、k(t)、l(t)、x0(t)のうちの1つ及び/又は1つ以外又は全てを、調整対象の発振器系、この場合は共振器1の自然周波数ω0の整数倍(この整数は2以上である)の値の0.9〜1.1倍である調整周波数ωRで変化させることからなる。特定の応用例では、調整周波数ωRは、自然周波数ω0の1.8〜2.2倍であり、より詳細には、調整周波数ωRは自然周波数ω0の2倍である。
【0037】
好ましくは、1つ若しくは複数の項又は全ての項β(t)、k(t)、l(t)、x0(t)は、上述のように定義された調整周波数ωRで変化し、この調整周波数ωRは好ましくは、調整対象の共振器系1の自然周波数ω0の整数倍(特に2倍)である。
【0038】
従って一般に、パラメトリックな項の変調に加えて、維持又は調整に使用される発振器は、非パラメトリック維持項f(t)を導入し、その振幅は、パラメトリックな状態が達成されると無視できる(W. B. Case, The pumping of a swing from the standing position, Am. J. Phys. 64, 215 (1996))。
【0039】
ある変形例では、付勢項f(t)は、第2の維持機構によって導入できる。
【0040】
維持用発振器、即ちレギュレータ2によっても、項f(t)がゼロでない場合に項f(t)を変化させることができる。
【0041】
付勢されていない減衰された発振器の例において、x0が一定である場合、方程式のパラメータは、周波数項ω及び損失項β、特に機械的又は空気力学的又は内部又は他の摩擦による損失項に集約される。
【0042】
発振器の品質係数は、Q=ω/βによって定義される。
【0043】
現象をより良好に理解するために、全長が変更される振り子の例に擬えることができる。この場合:
【0044】
【数6】
【0045】
であり、Lは振り子の長さ、gは重力による引力である。
【0046】
この特定の例では、長さLが周波数2ω及び十分な変調振幅δL(δL/L>2β/ω)で時間に関して周期的に変調される場合、系は減衰することなく周波数ωで発振する。(D. Rugar and P. Grutter, Mechanical parametric amplification and thermomechanical noise squeezing, PRL 67, 699 (1991), A. H. Nayfeh and D. T. Mook, Nonlinear Oscillations, Wiley-Interscience, (1977))
【0047】
ゼロ次項はω2(A,t)の形を取ってもよく、ここでAは発振振幅である。
【0048】
従って本発明は、時計の共振器機構1の周波数を、その自然周波数ω0付近に維持及び調整するための方法及び系に関する。本方法によると、周期的運動によって共振器機構1に作用する少なくとも1つのレギュレータデバイス2が実装される。
【0049】
より具体的には、共振器機構1の少なくとも1つの内部構成部品に対して、又は上記内部構成部品に空気力学的影響等の影響を与える、若しくは上記共振器1の内部構成部品に「復元(return)」力(本明細書では牽引若しくは反発という広い意味で使用される)を印加する磁場若しくは静電場若しくは電磁場等を制動若しくは変調する、外部構成部品に対して、周期的運動を付与する、少なくとも1つのレギュレータデバイス2が実装される。
【0050】
この周期的運動は、共振器機構1の共振周波数及び/又は品質係数及び/又は静止点の位置の少なくとも1つの周期的変調を、自然周波数ω0の整数倍の値の0.9倍〜1.1倍である調整周波数ωRでもたらし、この整数は2以上10以下である。
【0051】
品質係数に関して、腕時計設計者は可能な限り高い値を得ようとする。品質係数は共振器のアーキテクチャに左右され、また共振器の全ての動作パラメータ、特に自然周波数に左右され、更に品質係数は、共振器の動作環境に左右される。第1の設計上の選択肢は、ある値をモデル化して試験によって検査し、十分であると考えられた場合に、品質係数をこの一定の値に設定することからなってよい。この第1の選択肢は確実なものと思われるが、これは、腕時計製作において使用される共振器の往復動作には適しておらず、方向の反転又は転換の領域に関して特に非現実的に思われる。
【0052】
従って本発明は、往復動作に関連するこれらの現象を考慮した第2の選択肢を選択する。本発明によると、周期的運動は、共振器機構1の損失及び/又は減衰及び/又は摩擦に作用することによって、共振器機構1の品質係数の周期的変調をもたらす。
【0053】
特にゼンマイ‐テンプタイプの共振器の場合、テンプ自体に作用することは不可能であるものの、これは、テンプ周辺の環境に対して又は(特に仮想ホゾの場合には)枢動位置に対して作用して、空気力学的制動トルクの変調を生成し、これによって品質係数の変調を生成することを排除するものではないことを理解されたい。
【0054】
特定の実装形態では、周期的運動は、共振器機構1の変形によって及び/又は上記共振器機構1の周辺の環境の修正によって、共振器機構1の空気力学的損失に対して作用することにより、共振器機構1の周期的な品質係数変調をもたらす。
【0055】
空気力学的損失に関して、往復運動を行い中央位置周辺で発振する要素を含む共振器の状態は、一般に一方向にのみ動作する速度レギュレータの場合とは全く異なる。更に本発明は、ここでは速度ではなく周波数の調整に関し、これは全く異なる複数の大きさの調整精度を必要とする。約10-2の精度は例えば、慣性ブロック及び/又は制動フィンを有する時計の時報動作レギュレータに関しては十分であるが、ムーブメントの速度を確実に一定にすることを目的とした共振器には好適でなく、後者の場合には、1日あたり1秒程度の速度偏差を得るために、10-5の精度を目標とするべきである。
【0056】
ある具体的実装形態では、周期的運動は、共振器機構1が備える弾性復元手段の内部減衰を変調することによって、共振器機構1の周期的な品質係数変調をもたらす。
【0057】
ある具体的実装形態では、周期的運動は、共振器機構1内の機械的摩擦を変調することによって、共振器機構1の周期的な品質係数変調をもたらす。
【0058】
本発明の第1の具体的実装態様では、この周期的運動は、共振器機構1の少なくとも共振周波数の周期的変調を、自然周波数ω0の整数倍の値の0.9倍〜1.1倍である調整周波数ωRでもたらし、上記整数は2以上10以下である。
【0059】
本発明の第2の具体的実装態様では、この周期的運動は、共振器機構1の少なくとも品質係数の周期的変調を、自然周波数ω0の整数倍の値の0.9倍〜1.1倍である調整周波数ωRでもたらし、上記整数は2以上10以下である。
【0060】
本発明の第3の具体的実装態様では、この周期的運動は、共振器機構1の少なくとも静止点の位置の周期的変調を、自然周波数ω0の整数倍の値の0.9倍〜1.1倍である調整周波数ωRでもたらし、上記整数は2以上10以下である。
【0061】
当然のことながら、本発明の他の具体的実装態様は、第1、第2及び第3の態様を組み合わせることができる。
【0062】
従って、第1の態様と第2の態様とを組み合わせた本発明の第4の具体的実装態様では、この周期的運動は、共振器機構1の少なくとも共振周波数及び品質係数の周期的変調を、自然周波数ω0の整数倍の値の0.9倍〜1.1倍である調整周波数ωRでもたらし、上記整数は2以上10以下である。
【0063】
第2の態様と第3の態様とを組み合わせた本発明の第5の具体的実装態様では、この周期的運動は、共振器機構1の少なくとも品質係数及び静止点の周期的変調を、自然周波数ω0の整数倍の値の0.9倍〜1.1倍である調整周波数ωRでもたらし、上記整数は2以上10以下である。
【0064】
第1の態様と第3の態様とを組み合わせた本発明の第6の具体的実装態様では、この周期的運動は、共振器機構1の少なくとも共振周波数及び静止点の周期的変調を、自然周波数ω0の整数倍の値の0.9倍〜1.1倍である調整周波数ωRでもたらし、上記整数は2以上10以下である。
【0065】
第1の態様、第2の態様及び第3の態様を組み合わせた本発明の第7の具体的実装態様では、この周期的運動は、共振器機構1の少なくとも共振周波数、品質係数及び静止点の周期的変調を、自然周波数ω0の整数倍の値の0.9倍〜1.1倍である調整周波数ωRでもたらし、上記整数は2以上10以下である。
【0066】
本方法のこれらの様々な実装態様の具体的実装形態では、全ての変調は同一の周波数ωRで実施されるか、又は互いの倍数である周波数ωRで実施される。
【0067】
本発明の最初の3つの主要な実装態様について、以下に詳細に記載する。
【0068】
本発明の第1の態様の具体的実装形態では、周期的運動は、共振器機構1の剛性及び/又は慣性に作用することによって、共振器機構1の共振周波数の周期的変調をもたらす。より具体的には、周期的運動は、共振器機構1の剛性の変調及び共振器機構1の慣性の変調の両方をもたらすことによって、共振器機構1の共振周波数の周期的変調をもたらす。
【0069】
異なる有利な変形例は、本発明をこの第1の実装態様において達成する異なる手段を可能とする。
【0070】
第1の実装態様の第1の変形例では、この周期的運動は、共振器機構1の質量の変調、及び/又は(図1、2若しくは3に見られるような)共振器機構1の形状の変調、及び/又は例えば図4の概略図に見られるような共振器機構1の重心の位置の変調によって、共振器機構1の慣性の変調をもたらすことにより、共振器機構1の共振周波数の周期的変調をもたらす。
【0071】
第1の態様のこの第1の変形例では、図16A、16Bはまた、共振器の重心及び共振器の慣性の変調を図示している。
【0072】
第1の態様のこの第1の変形例では、図18A〜18Dは、図3又は図7のものと同様の共振器に基づく、重心の変調を図示している。このタイプの系は、内蔵型の副ゼンマイ‐テンプ260を含む。これらの副ゼンマイ‐テンプ260は有利には、アーバを有しない、即ち可撓性軸受を有する系によって置換される。副ゼンマイ‐テンプ260の発振の振幅が必ずしも大きくない場合には、上記可撓性軸受を有する副ゼンマイ‐テンプ260の方が達成が容易である。この場合、主ゼンマイ‐テンプの慣性のみが変調される。従って、小型ゼンマイ‐テンプの不均衡の角度位置に応じて、重心が変調される系を生成できる。
【0073】
このような重心の変調は好ましくは、共振器1の構成部品のうちの1つ又は複数に作用する動的変調である。慣性の変調は、形状の変調によって、質量の変化によって、又は例えば可撓性テンプを使用する場合の、回転の中心に対する共振器の重心の変化によって、達成できる。図7に示すように好適な位相比を有する非対称性を有する内蔵型共振器を使用することもでき、この場合不均衡は同相又は逆相で振動する。
【0074】
第1の態様の第2の変形例では、この周期的運動は、共振器機構1が備える弾性復元手段の剛性の変調、又は共振器機構1内の磁場若しくは静電場若しくは電磁場によって印加される復元力の変調をもたらすことによって、共振器機構1の共振周波数の周期的変調をもたらす。より具体的には、この第2の変形例では、周期的運動は、(図11、12に見られるように)共振器機構1が備えるゼンマイの有効長の変調、又は(図13、14に見られるように)共振器機構1が備えるゼンマイの断面の変調、又は共振器機構1が備える復元手段の弾性率の変調、又は共振器機構1が備える復元手段の形状の変調によって、共振器機構1の共振周波数の周期的変調をもたらす。共振器1の構成部品の弾性率の変調は、圧電系の実装によって、電場(電極)によって、周期的な局所加熱によって、特定の合金を膨張させる磁場の作用によって、光力学的共振系によって、特に形状記憶材料に対する捩れによって又は捻りによって、得ることができる。
【0075】
本発明の第3の実装態様と組み合わせることによって得られる、第1の態様の第3の変形例では、周期的運動は、共振器機構1の剛性の変調及び共振器機構1の静止点の位置の変調の両方をもたらすことによって、共振器機構1の共振周波数の周期的変調をもたらす。
【0076】
剛性に作用するために、磁気歪み現象を有利に使用でき、これは、共振器1の、好適な材料で作製された構成部品を、磁場(内部磁化及び/若しくは外部場)又は衝撃に曝露することによって、剛性を周期的に変調する。
【0077】
弾性率に作用するために、磁気歪み現象を有利に利用することもできるが、周期的な温度上昇、形状記憶構成部品、圧電効果、又は特定の応力の使用によって達成される非線形状態を採用することもできる。
【0078】
本発明の第2の実装態様の具体的実装形態では、この周期的運動は、共振器機構1の損失及び/又は減衰及び/又は摩擦に作用することによって、共振器機構1の品質係数の周期的変調をもたらす。作用は以下の異なる複数の様式で発生し得る:
‐この第2の態様の第1の変形例では、周期的運動は、(図5において枢動羽状部を備えるテンプに関して見られるような、若しくは図17に見られるような)共振器機構1の変形によって、及び/又は(周期的運動によって移動されるパッドがテンプ周辺の空気の流れを修正する図6に見られるような)共振器機構1の周辺の環境の変調によって、共振器機構1の空気力学的損失に作用することにより、共振器機構1の品質係数の変調をもたらす;
‐この第2の態様の第2の変形例では、周期的運動は、例えば中空体内の液体の流れ(例えばヒゲゼンマイ又はゼンマイ‐テンプ組立体のテンプ)を用いて、又はゼンマイを含む共振器の剛性及び減衰の両方の修正をもたらす、ヒゲゼンマイ等に周期的に印加される捩れの影響下で、共振器機構1が備える弾性復元手段の内部減衰を変調することにより、共振器機構1の品質係数の変調をもたらす。具体的なあるケースでは、剛性を修正することなく内部損失を修正できる。単一のゼンマイの代わりに全体として等しい剛性の2つのゼンマイを使用すると、内部損失は大きくなる。2つのゼンマイは特に、場合に応じて直列又は並列に配置でき、ゼンマイのうちの一方には予備応力を印加してよい。同一の剛性を維持したまま損失を修正する別の手段は、ゼンマイに対して、シリコンのドープによる熱補償、又はゼンマイのコイルの2つの異なる部分間の熱交換による熱弾性効果を使用することである;
‐この第2の態様の第3の変形例では、周期的運動は、重力の仮想的な上昇と同様の効果を有する、共振器機構1内の機械的摩擦の変調によって、共振器機構1の品質係数の周期的変調をもたらす。図8は、摩擦ストリップが音叉のアームと協働してこれを変調させる例を示す。
【0079】
本発明の第3の態様のある具体的実装形態では、この周期的運動は、共振器機構1の取り付け位置の変調、及び/又は共振器機構1に作用する復元力の間の均衡の変調によって、共振器機構1の静止点の周期的変調をもたらす。共振器機構1の取り付け位置の変調は、共振器機構1の少なくとも1つの取り付け位置に対して実施できる。例えばゼンマイ‐テンプ3を有する共振器1では、ホゾの衝撃吸収要素に対する作用によって、少なくとも1つの枢動点にヒゲゼンマイ4を取り付けるためのヒゲ持ち及び/又はヒゲ玉7に作用できる。この目的のために、例えば従来の脱進機機構においてはゼンマイに対するレバーの衝突等の、ムーブメントのいくつかの機能を使用できる。
【0080】
‐より具体的には、この第3の態様の第1の変形例では、周期的運動は、機械的弾性復元手段及び/又は磁性復元手段及び/又は静電復元手段によって生成される、共振器機構1に作用する復元力の間の均衡の変調によって、共振器機構1の静止点の周期的変調をもたらす。この均衡を変調するために、最も簡単な解決策は、共振器を異なる源からの複数の復元力に曝露することである。復元力のうちの少なくとも1つを時間、強度及び/又は方向に関して変調すると十分である。これらの力は必ずしも全てが同一の性質のものでなく、いくつかが機械的なもの(ゼンマイ)であってよく、その他が場の印加に関連するものであってよい。ある具体例は、2つのゼンマイを備えるゼンマイ‐テンプ3に対する印加であり、均衡を変調するためには、ヒゲ持ちのうちの一方のみの位置の変調で十分である。図10の角度Ψのヒゲゼンマイの捩れは、共振器1に印加される力のバランスを変更する、従って上記力の均衡を変調するための良好な手段である。これに関して、ヒゲ持ちには6の自由度を与えることができ、図10はある具体的な簡略化された応用例を示しており、特に軸Zの周りでの回転が有利であり得ることに留意されたい;
‐この第3の態様の第2の変形例では、静止点の位置の変調を、第1の態様による剛性の変調と組み合わせる。実際には、力の均衡が修正される場合、全体の剛性も修正される場合が多い。従って静止点を変調する作用は、剛性を変調する作用と組み合わせられる。
【0081】
好ましくは、剛性を変調できる構成部品は複数の要素で形成され、変調はこれらの要素のうちの少なくとも1つに対して実施される。
【0082】
本発明の別の実装態様では、周期的運動は、共振器機構1の品質係数の周期的変調をもたらし、本発明によると、周期的運動は、共振器機構1の構成部品、及び共振器機構1の少なくとも1つの構成部品上の損失生成機構の両方に対して、同一の調整周波数ωRで付与される。
【0083】
上述の様々な態様それぞれと適合する、本発明の更に別の実装態様では、レギュレータ機構2は、共振器機構1の周波数の周期的変調を、共振器機構1の品質係数の逆数よりも高い相対振幅でもたらす。
【0084】
本発明の、実装が容易な態様では、レギュレータデバイス2は、共振器機構1の少なくとも1つの取り付け部に作用する。
【0085】
周波数ωRに関して、様々な特徴:共振周波数、品質係数、静止点の周期的変調が、周波数ω0の異なる倍数で(例えば、基本周波数の2倍の剛性変調、基本周波数の4倍の品質係数変調)発生することを考えることもできるが、パラメトリック増幅の最大の効果及び安定性は、周波数が基本周波数の2倍である場合に得られるため、これはいずれの特定の利点も提供しない。更に、各特徴が異なる状態で変調される系は、複数のレギュレータ2が存在する場合(これは系が複雑になってしまう)を除いて、容易には想定できない。従って、全てのパラメータの変調は好ましくは同一の周波数ωRで発生する。
【0086】
本発明の異なる複数の応用例が可能である。
【0087】
従来の応用例では、本発明は、少なくとも1つの弾性復元手段40を備える共振器機構1に適用され、少なくとも1つの上述のようなレギュレータデバイス2は、共振器機構1の周波数及び/又は共振器機構1の品質係数の周期的変動を引き起こすことによって作用する。
【0088】
通常の腕時計製作における応用例では、本発明は、弾性復元手段40として少なくとも1つのゼンマイ4を有するテンプ26を含む少なくとも1つのゼンマイ‐テンプ組立体3を備える、共振器機構1に適用される。より具体的には、図3に見られるように、共振器機構1の慣性及び品質係数は、テンプ26上に偏心して設置され、共振器1の速度に従って発振する、高い残留不均衡261を有する副ゼンマイ‐テンプ260を運動するように設定する、レギュレータデバイス2によって修正される。
【0089】
弾性復元手段40として少なくとも1つのゼンマイ4を有するテンプ26を備えるゼンマイ‐テンプ組立体3に対する適用の別の変形例では、共振器機構1の品質係数は、レギュレータデバイス2の作用下において、テンプ26の幾何学的形状の局所的修正によって生成された、テンプ26の空気摩擦の修正によって、修正され、上記デバイスはここではテンプ26上にある。例えば図5に見られるように、テンプ26は、(上述のように簡単な速度レギュレータが含んでよい制動フィンとは異なる)変調用羽状部、特に変調用フィンを支持してよく、航空機の翼の外形を有する上記変調用フィンは、テンプ26の周縁部に、特に可撓性ガイド部材等によってヒンジ留めされ、これらフィンは好ましくは反転可能であり、従って運動方向を完全に傾動させることができる。好ましくはこれらのフラップは、可撓性ストリップによって保持される。中間速度において、フラップは図5Aのように天輪に近接している。図5Bにおける最大速度では、フラップが図5Cに見られるように反対方向に変化すると、空気力学的効果によってフラップは持ち上げられる(航空機の翼の効果)。この例では、慣性は、ゼンマイ‐テンプ共振器の自然周波数の4倍の周波数で修正される。このようにして、空力制動タイプの空気摩擦が得られ、テンプの周縁部のフラップは、品質係数及び/又は慣性に対する影響を有する。このフラップは、枢動可能に緩く設置するか又は枢動可能に設置してよく、ヒゲゼンマイ又は可撓性ガイド部材等によって戻すことができる。ある変形例は、可変の幾何学的形状を有する天輪からなってよい。従ってこのような変形例では、共振器機構1の品質係数は、レギュレータデバイス2の作用下でのテンプ26の幾何学的形状の局所的修正によって生成されたテンプ26の空気摩擦の修正によって、修正される。レギュレータ2は、この共振器1の速度とは独立して運動できることに留意されたい。ある具体的変形例は、この変形例を1つ前の変形例と組み合わせることからなり、偏心ゼンマイ‐テンプ26は発振するよう設定される。
【0090】
テンプ自体ではなく環境に対して作用する別の変形例では、共振器機構1の品質係数は、図6に見られるような、レギュレータデバイス2の作用下でのテンプ26周辺の環境の幾何学的形状の局所的修正によって生成されたテンプ26の空気摩擦の修正によって、修正され、ここで周期的運動によって移動するパッドは、テンプの周辺の空気の流れを修正する。
【0091】
従って本発明は、機械的復元手段を有しない共振器機構1にも適用できる。よって具体的応用例(図示せず)では、レギュレータ機構2の周期的運動は、離間した電力又は磁力又は電磁力による、共振器機構1の周波数及び/又は品質係数及び/又は静止点の位置の変調をもたらす。
【0092】
図9に示す本発明の別の変形応用例は、弾性復元手段40を形成する捩りワイヤ46を保持するヒゲ玉7を備える少なくとも1つのテンプ26を備える、共振器機構1に関し、ここで少なくとも1つのレギュレータデバイス2は、捩りワイヤ46の張力の周期的変化を引き起こすことによって作用する。同様の変形例では、捩りワイヤを可撓性ガイド部材に置換する。
【0093】
図8に示す本発明の別の変形応用例は、少なくとも1つの音叉を備える共振器機構1に関し、少なくとも1つのレギュレータデバイス2は、共振器機構1の周波数、及び/又は共振器機構1の品質係数を定義する少なくとも1つの音叉のアームの剛性の周期的変動を引き起こすことによって作用する。より具体的には、レギュレータデバイス2は、音叉の取り付け部及び/又は音叉の少なくとも1つのアームに圧力を印加するホイールセットに作用できる。このタイプの音叉は、必ずしも従来の音叉の形状ではなく、可能な形状の中でも特に、ハート型又はH字型を取ってよいことに留意されたい。
【0094】
ある変形例では、本発明は、単一のアームを有する共振器、又は捩れて若しくは伸長して動作する共振器に適用することもできる。
【0095】
有利には、本発明により、共振器機構1を始動及び/又は維持するためにレギュレータデバイス2を使用できる。好ましくは、このレギュレータデバイス2は、共振器機構1の始動及び/又は維持機構と協働して、共振器機構1の発振振幅を増大させる。
【0096】
本発明は有利には、同時維持(co‐maintenance)、即ち発振を維持するためのパラメトリックな方法と組み合わせた標準的な低動力維持を可能とする。レギュレータデバイス2は、単独で、又は始動及び/若しくはインパルス維持機構と協働させて、共振器機構1の連続的な維持に使用される。
【0097】
例えばこのような維持は、図2の構成による、天輪上に発振性慣性ブロックを支持するばねを含むテンプを備える、ゼンマイ‐テンプ系を用いて得ることができる。続いてレバー式脱進機等により、テンプ及び小型慣性ブロックの発振を励起できる。ばね及び慣性ブロックは、ここではゼンマイ‐テンプの自然周波数の2倍である周波数で発振する。慣性ブロックは慣性連結によって発振する。テンプの慣性はゼンマイ‐テンプの2倍の周波数で変動するため、パラメトリック効果が発生する。図15は、このタイプの共振器によって得られる調整を示す。この場合、空気力学的損失も修正されることに留意されたい。
【0098】
別の例はデテント脱進機を用いることからなり、このデテント脱進機はまた、(運動するピンを用いて)ヒゲゼンマイ4の剛性に作用するレギュレータ機構2と協働して計数機能を保証する。
【0099】
本発明はまた、少なくとも1つの共振器機構1を含む時計ムーブメント10にも関する。本発明によると、このムーブメント10は少なくとも1つのこのようなレギュレータデバイス2を備え、このレギュレータデバイス2は、共振器機構1の1つ又は複数の物理的特徴:共振周波数及び/又は品質係数及び/又は静止点の周期的変化を、共振器機構1の自然周波数ω0の整数倍の値の0.9倍〜1.1倍である調整周波数ωRでもたらすことによって、共振器機構1に作用するよう配設され、上記整数は2以上10以下である。
【0100】
ある変形例では、このレギュレータデバイス2は、共振器機構1に調整周波数ωRで周期的運動を直接付与することによって、共振器機構1に作用するよう配設される。
【0101】
ある変形例では、このレギュレータデバイス2は、共振器機構1の少なくとも1つの取り付け部、並びに/又は共振器機構の周波数、特に剛性及び/若しくは慣性、並びに/又は共振器機構1の品質係数、並びに/又は共振器機構1の損失若しくは摩擦に作用する。
【0102】
ある変形例では、レギュレータデバイス2は、共振器機構1の構成部品及び/又は共振器機構1の少なくとも1つの構成部品上の損失生成機構に周期的運動を付与することによって、共振器機構1に作用する。
【0103】
本発明はまた、少なくとも1つのこのような時計ムーブメント10を含む時計30にも関する。
【0104】
ここで示すいくつかのパラメトリック発振器の例は非限定的なものである。図15〜18のもの等、いくつかは、既存のムーブメントにそのまま挿入して、テンプ等の標準的な構成部品を置換でき、有利である。というのは、関連するムーブメントの機械的構成部品の設計及び製造が問題とならないためである。
【0105】
これらの系の利点の1つは、脱進機の効率の本質的な低下にもかかわらず、ゼンマイ‐テンプを高い周波数で動作させることができることである。
【0106】
実装のための最も容易な原理は、テンプの一部分を発振させることからなる。このような(ゼンマイ‐テンプの自然周波数のn≧2倍の周波数での)発振は、慣性又は重心又は空気力学的損失を修正する。
【0107】
図面は、本発明の実施形態の簡単で非限定的な例を図示している。そのいくつかは、例えば標準的なテンプを特定のテンプに置換することによって、極めて容易に実装できる。
【0108】
これらの例は、レギュレータ2の構成要素を、共振器1のいくつかの構成部品に組み込むことができることを示す。多くの場合、本発明は副次的な励起回路を必要とせず、共振器1の自然周波数ω0に対して特定の関係にある定義された周波数ωRでのレギュレータ2の発振を可能とするのは、レギュレータ構成部品の寸法である。
【0109】
図1は、本発明に従って調整されるパラメトリック共振器機構1を示し、これは、テンプ26及びヒゲゼンマイ(図示せず)を有する、共振器を形成するゼンマイ‐テンプ3を備える。慣性及び/又は品質係数は、ばね72を介して径方向又は接線方向に配設された慣性ブロック71によって変調され、ばね72は取り付け点73においてテンプ26の構造体、特にテンプ26の天輪に固定される。これらの慣性ブロック‐ばね組立体は、ゼンマイ‐テンプ3によって、共振器1の周波数ω0の2倍の周波数で励起される。共振器1はここでは、慣性ブロック‐ばね組立体で形成されたレギュレータ2の要素を支持し、上記組立体は、テンプ26の枢動運動中に径方向及び/又は接線方向に振動する。慣性ブロック‐ばね組立体のうちのいくつかは特に、テンプ26が備える経路74内にガイドされてよい。慣性ブロックの径方向振動は慣性及び摩擦項に影響を与え、接線方向振動は動的慣性に影響を与える。テンプ26はここでは、主に径方向に発振する振動ストリップ84を支持するアーム85も支持する。レギュレータ2の効率を高めるために、ばね72は好ましくはテンプに比べて大きな体積を有し、径方向設置面積は例えば、テンプ自体の天輪の半径と同等であるか又はそれより大きく、例えばばね72及び慣性ブロックの径方向設置面積はヒゲ玉7の半径の4倍に等しい。
【0110】
好ましくは、全ての例に当てはまることであるが、レギュレータが備える全ての振動性組立体は、本発明によって定義される同一の周波数ωRで発振する。これらの組立体のうちのいくつかを、自然周波数ω0に対して本発明によって定義された周波数ωRの整数倍の周波数で発振させることも可能である。
【0111】
図2もまたゼンマイ‐テンプ3を有する共振器1を示し、ゼンマイ‐テンプ3のテンプ26は、レギュレータ2の要素、即ち:点73において天輪に取り付けられ、慣性ブロック71を支持し、共振器1の周波数ω0の2倍の周波数の調整用励起を受ける、4つの径方向ばね72を支持する。図15は、このタイプの共振器を用いて得られる調整を示す。
【0112】
図3は、既存のテンプを図1、2のものと同様の共振器1で置換するための、極めて容易な解決策を示し、上記共振器1は、枢動可能に緩く設置された内蔵型副ゼンマイ‐テンプ260を支持し、内蔵型副ゼンマイ‐テンプ260はそれぞれ高い不均衡261を有する。以下の2つの実施形態が存在する:
‐副ゼンマイ‐テンプ260は、例えば従来の機械的枢動によって、振幅の制限なしに完全に自由に回転できる;又は
‐副ゼンマイ‐テンプ260は振幅に関して制限され、例えばシリコン製等の実施形態ではテンプ26と一体として作製され、可撓性ホゾを有し、従って振幅が制限される。
【0113】
図4は、図1〜3のものと同様の共振器1を示し、テンプ26は、直径方向反対側に位置する2つの略径方向のばね51によって懸架され、テンプ26の重心は、これら2つのばね51の共通の方向に対応する。ある変形例では、天真はばねによって保持される。別の変形例では、テンプ26は従来のアーバと共に枢動せず、可撓性軸受部材とのみ枢動し、仮想的な天真がばねの方向によって画定される。この図は、ばねを2つのみとして意図的に簡略化されており、当然のことながら、テンプ26を3つ以上のばね51から懸架することも考えられる。この組立体全体の一体型実施形態は、テンプ26の所望の枢動振幅の限界内において可能である。機能性構成部品を異なる平面上に分散させるための多層型の実施形態も可能であることは明らかである。
【0114】
図5A、5B、5Cは、空気力学的外形を有するフラップ60を天輪上に支持するテンプ26が組み込まれた別の同様の共振器1を示し、上記フラップ60は、テンプ26の天輪上の可撓性軸受ホゾ81上にヒンジ留めされ、上述のようにテンプ26の枢動運動中に枢動する。この構成は、自然周波数ω0の2倍のフラップの調整周波数を用いて真空中で動作でき、又はω0の4倍の周波数を用いて空気中で動作できる。
【0115】
図6は、テンプ26を有する共振器1を示す。ここではレギュレータ2は、共振器1から完全に分離されている。テンプ26の天輪の近傍のパッド82は空気力学的制動装置を形成し、テンプが組み込まれたゼンマイ‐テンプ共振器1の周波数の2倍の周波数で可動である。この可動性は、外部励起源によるものであってよく、また天輪の外形、例えば歯付き外形によるものであってもよく、上記外形は、パッド82近傍の空気流の変動を生成する。
【0116】
図7は、高い不均衡261を有する2つの副ゼンマイ‐テンプ260を有する、図3と同様のテンプを示し、上記2つの副ゼンマイ‐テンプ260は、同一の直径上の、不均衡の整列の位置(静止点)に、緩く設置され、上記不均衡は図3のものとは異なっており、また同相又は逆相で振動する。好ましくはこの実施形態は、シリコン又は同様の微小機械加工可能な材料(特に酸化ケイ素、石英、「LIGA(登録商標)」、非晶質金属等)で作製され、副ゼンマイ‐テンプ及びその不均衡261はテンプ26と一体であり、上記副ゼンマイ‐テンプ及びその不均衡261はテンプ26に関して、可撓性接続を介して枢動し、また不均衡の整列は、この構造体の静止状態である。このタイプのテンプもまた、既存のテンプを置換して時間測定性能を改善するための極めて容易な解決策である。
【0117】
図8は、構造体50に固定された音叉55を有する共振器1を示し、音叉55の一方のアーム56は、音叉共振器の周波数の2倍の周波数で励起される摩擦パッド57と接触する。
【0118】
図9は、捩りワイヤ46を保持するヒゲ玉7を含むテンプ26を備える共振器機構を示し、共振器デバイス2は、テンプ‐捩りワイヤ型共振器1の周波数の2倍の周波数で、張力の周期的変調を制御する。
【0119】
図10は、ゼンマイ‐テンプ3を備えるパラメトリック共振器機構1を示し、ヒゲゼンマイ4の外側コイル6は、レギュレータデバイス2が周期的運動を付与するヒゲ持ち5にピン留めされ、上記ヒゲ持ち5は、必要な場合にヒゲゼンマイ4を捻るために、空間内で並進運動、枢動運動、傾動運動可能である。
【0120】
図11は、緩急針12及びピン11を有する緩急針機構を有する、別のゼンマイ‐テンプ3共振器1を示し、レギュレータ系2は、ヒゲゼンマイ4の有効長を連続的に変化させるために、緩急針12の連続的運動を作動させるためのクランク‐ロッド系を有する。
【0121】
図12は、ヒゲゼンマイ4の有効長並びに/又はヒゲゼンマイの取り付け点の位置及び/若しくは幾何学的形状を連続的に変化させるために、カム14が静置されたヒゲゼンマイ4を、同様の様式で示す。この図は簡略化された図であり、ヒゲゼンマイの片側のみに単一のカムが静置されている。ヒゲゼンマイ4の両側を挟むように配設された2つのカムを組み合わせることもできることは明らかである。
【0122】
図13は、ヒゲゼンマイ4を同様の様式で示し、ヒゲゼンマイには追加のコイル18が固定され、ヒゲゼンマイの終端カーブ17に局所的に並置され、レギュレータデバイス2はこの追加のコイル18の一方の端部18Aを作動させる。
【0123】
図14は、その終端カーブ17近傍に別のコイル23を有する別のヒゲゼンマイ4を示し、上記別のコイル23は、その第1の端部24において、レギュレータデバイス2によって操作される支持体59によって保持され、また上記別のコイル23は、上記支持体に対するレギュレータデバイス2の作用下で終端カーブ17と周期的に接触するよう配設された第2の端部25において自由である。
【0124】
図16A、16Bは、共振器1の重心の修正を示す。ゼンマイ‐テンプ3共振器はテンプ26を備え、このテンプ26は、天輪に取り付けられた略径方向のばね72を支持し、また発振性慣性ブロック71を支持し、これら慣性ブロック71は図2と同様であるものの、いくつかは天輪の内側を向いており、いくつかは天輪の外側を向いている。これに関連する求心効果又は遠心効果により、共振器1の重心の位置を変調できる。
【0125】
図17A、17Bは、空気力学的損失及び慣性を修正するための可撓性ホゾ81を有するフラップ80を有する別のテンプ系26の変形例の、図5と同様の図である。
【0126】
図18〜18Dは、不均衡261を有する内蔵型副ゼンマイ‐テンプ260を備える図3又は図7のものと同様の共振器に基づく、重心の変調を示す。
【0127】
図19は、パラメトリック発振器の例示的実施形態を示し、ヒゲ玉7は、例えばガルバニック堆積又は他の手段によって得られた金又は別の重金属の層75を用いて重量を付与された周縁慣性ブロック71を支承するシリコンばね72を支持し、ばね‐慣性ブロック組立体は、調整周波数ωRで発振する。例えばω0=10Hz、ωR=20Hzである。図20はテンプ26を示し、これらのばね‐慣性ブロック組立体はヒゲ玉7から天輪の最大直径まで延在する。
【0128】
図21は、支持体50に組み込まれた音叉55を示し、一方の分岐56は、分岐56に枢動可能に緩く設置された、偏心性不均衡261を有する副ゼンマイ‐テンプ組立体260を支持する。
【0129】
図22は音叉55を示し、その一方の分岐56は、自由に振動できるように設置されたばね72‐慣性ブロック71組立体を支持する。
【0130】
本発明はまた、ある有利な実施形態において、強制発振型の時計用共振器機構1にも関し、上記時計用共振器機構1は、自然周波数ω0で発振するよう配設され、好ましくはテンプ26又は音叉55又は振動性ストリップ等を含む少なくとも1つの発振部材100と、上記発振部材100に衝撃及び/又は力及び/又はトルクを印加するよう配設された発振維持手段200とを備える。
【0131】
本発明によると、この発振部材100は少なくとも1つの発振性レギュレータデバイス2を支持し、この発振性レギュレータデバイス2の自然周波数は調整周波数ωRであり、ωRは、上記共振器機構1の自然周波数ω0の整数倍の値の0.9倍〜1.1倍であり、この整数は2以上である。自然周波数ω0に対するωRの複数の具体的な値は、好ましくは上述の具体的な規則に従う。
【0132】
第1の変形例では、このレギュレータデバイス2は、副枢軸の周りで枢動する少なくとも1つの副ゼンマイ‐テンプ260を含み、上記副ゼンマイ‐テンプ260の上記副枢軸に関して偏心した不均衡261を有し、これは発振部材100上に枢動可能に緩く設置されている。
【0133】
具体的には、発振部材100は主枢軸の周りで枢動し、この少なくとも1つの副ゼンマイ‐テンプ260は、主枢軸に関して偏心した副軸を有する。
【0134】
ある具体的実施形態では、レギュレータデバイス2は、少なくとも第1の副ゼンマイ‐テンプ260及び第2の副ゼンマイ‐テンプ260を含み、これらの不均衡261は、応力のない静止状態において、副ゼンマイ‐テンプ260の副枢軸と整列している。より具体的には、発振部材100は主枢軸の周りで枢動し、少なくとも1つの副ゼンマイ‐テンプ260は主枢軸に関して偏心した副軸を有する。
【0135】
微小材料技術によって可能となるある有利な実施形態では、少なくとも1つのこのような副ゼンマイ‐テンプ260は、副ゼンマイ‐テンプ260を保持するための、発振部材100が備える弾性維持手段によって画定される仮想副軸の周りで枢動され、その運動の振幅は発振部材100に関して制限される。
【0136】
有利には、少なくとも1つのこのような副ゼンマイ‐テンプ260は、発振部材100と一体である。
【0137】
より具体的には、少なくとも1つのこのような副ゼンマイ‐テンプ260は、発振部材100が備える、又は上記発振部材100を形成するテンプ26と一体である。
【0138】
第2の変形例では、レギュレータデバイス2は、ばね72によって発振部材100上の点73に取り付けられた慣性ブロック71を備える、少なくとも1つのばね‐慣性ブロック組立体を含む。
【0139】
具体的には、発振部材100は主枢軸の周りで枢動し、少なくとも1つのこのようなばね72は、上記主枢軸に関して径方向に延在する。
【0140】
ある具体的実施形態では、発振部材100は複数のこのようなばね‐慣性ブロック組立体を支持し、上記組立体のばね72は主枢軸に関して径方向に延在し、少なくとも1つの組立体は、その慣性ブロック71を、そのばね72に比べて主枢軸から離間した位置に支持し、また少なくとも1つの別の組立体は、その慣性ブロック71を、そのばね72に比べて主枢軸に近接した位置に支持する。
【0141】
具体的には、発振部材100は主枢軸の周りで枢動し、少なくとも1つのこのようなばね72は、主枢軸に関して、点73に対する接線方向に延在する。
【0142】
具体的には、少なくとも1つのこのようなばね‐慣性ブロック組立体は、その取り付け点73を除いて、発振部材100に関して自由に運動できる。
【0143】
ある具体的実施形態では、ばね‐慣性ブロック組立体の可動性は、上記発振部材100が備えるガイド手段によって制限されるか、又はばね‐慣性ブロック組立体は、上記発振部材100が備える経路74内を移動する。
【0144】
第3の変形例では、レギュレータデバイス2は少なくとも1つのフラップ80又はストリップ84を含み、上記フラップ80又はストリップ84は、空気力学的変動の影響下で可動であり、ホゾ81又は弾性ストリップ又はアーム85によって発振部材100に取り付けられる。
【0145】
特に、ある具体的実施形態では、少なくとも1つのフラップ80又はストリップ84は、このフラップ80又はストリップ84が支持されるホゾ81に関して又は弾性ストリップに関して又はアーム85に対して傾斜してよい。
【0146】
本発明を既存のムーブメントに容易に適合できるようにし、最小のコストで既存のムーブメントの時間測定性能を大幅に改善させることができる、ある有利な実施形態では、発振部材100は発振維持手段200の作用を受けるテンプ26であり、発振維持手段200は、少なくとも1つのヒゲゼンマイ4及び/又は少なくとも1つの捩りワイヤ46を備える復元手段である。
【0147】
別の具体的実施形態では、発振部材100は音叉55であり、この音叉55の少なくとも1つの分岐56は、発振維持手段200の作用を受ける。
【0148】
これらの異なる非限定的な変形例は、互いに、及び/又は本発明の原理を遵守する更に他の変形例と、組み合わせてよいことは明らかである。
【0149】
本発明はまた、その自然周波数ω0付近で発振するよう配設された少なくとも1つの共振器機構1を備える時計ムーブメント10にも関する。本発明によると、このムーブメント10は、共振器機構1の共振周波数及び/又は品質係数及び/又は静止点の位置の周期的変調を、上記共振器機構1の自然周波数ω0の整数倍の値の0.9倍〜1.1倍である調整周波数ωRでもたらすことによって上記共振器機構1に作用するよう配設された手段を備える、少なくとも1つのレギュレータデバイス2を含み、この整数は2以上10以下である。
【0150】
第1の変形例では、ムーブメント10は少なくとも1つのこのような共振器機構1を含み、その発振部材は少なくとも1つの上記レギュレータデバイス2を支持する。
【0151】
第2の変形例では、ムーブメント10は、上記少なくとも1つの共振器機構1とは別個の上記レギュレータデバイス2を含み、このレギュレータデバイス2は、空気力学的な流れ又は磁場又は静電場又は電磁場の変調によって、上記共振器機構1の少なくとも1つの構成部品と接触すること又は上記共振器機構1から離間することにより、作用する。
【0152】
有利には、この共振器機構1は、剛性及び/又は慣性が可変である少なくとも1つの変形可能な構成部品を含み、上記少なくとも1つのレギュレータデバイス2は、上記変形可能な構成部品を変形させてその剛性及び/又は慣性を変化させるよう配設された手段を含む。
【0153】
ある具体的実施形態では、この少なくとも1つのレギュレータデバイス2は、共振器機構1を変形させるよう、及び共振器機構1の重心の位置を変調するよう配設された手段を含む。
【0154】
ある具体的実施形態では、この少なくとも1つのレギュレータデバイス2は、上記共振器機構1の少なくとも1つの構成部品において損失生成手段を含む。
【0155】
実装が極めて容易であるため有利である、ある実施形態では、レギュレータデバイス2は、発振部材100近傍の空気力学的流れを変調するための手段を含み、これら変調手段は、弾性復元手段83によって構造体50から懸架された少なくとも1つのパッド83を備える。
【0156】
本発明はまた、少なくとも1つの上述のような時計ムーブメント10を含む時計30、特に腕時計にも関する。
【0157】
当然のことながら、本発明を置き時計等の別の時計に適用することも全く問題なく可能である。本発明は、機械的発振部材100を備えるいずれの種類の発振器、特に振り子に対して適用できる。
【0158】
上で定義したような周波数ωRにおける、より詳細には周波数ω0の2倍における励起は、矩形波又はパルス波信号を用いて達成でき、正弦波励起を用いることは必須ではない。
【0159】
維持用レギュレータは極めて正確である必要はない。精度のいずれの欠如は振幅の損失にしかつながらず、周波数の変動性が極めて高い場合(これは回避されるべきである)を除いて、周波数は変動しない。実際には、これら2つの発振器、即ち維持用のレギュレータ及び維持される共振器は連結されず、一方が他方に対して、理想的には(ただし必須ではない)単一方向に、維持を行う。
【0160】
ある好ましい実施形態では、維持用レギュレータ2と維持される共振器1との間には連結用ゼンマイは存在しない。
【0161】
本発明はまた、レギュレータの周波数が共振器の自然周波数の2倍又は倍数である(又はある倍数に極めて近い)こと、及びエネルギ伝達のモードにおいて、公知の連結式発振器とは異なる。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
時計の共振器機構(1)の周波数を、前記共振器機構(1)の動作中に、前記共振器機構(1)の自然周波数(ω0)付近に維持及び調整するための方法であって、
前記方法は、周期的運動によって前記共振器機構(1)に作用する少なくとも1つのレギュレータデバイス(2)を実装し、
前記周期的運動は、前記共振器機構(1)の共振周波数及び/又は品質係数及び/又は静止点の位置の周期的変調を、前記自然周波数(ω0)の整数倍の値の0.9倍〜1.1倍である前記レギュレータデバイス(2)の調整周波数(ωR)でもたらし、前記整数は2以上10以下である、方法において、
前記方法は、前記周期的運動が、前記共振器機構(1)の損失及び/又は減衰及び/又は摩擦に対して作用することによって、前記共振器機構(1)の品質係数の周期的変調をもたらすことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記周期的運動は、前記共振器機構(1)の変形によって及び/又は前記共振器機構(1)の周辺の環境の修正によって、前記共振器機構(1)の空気力学的損失に対して作用することにより、前記共振器機構(1)の前記品質係数の周期的変調をもたらすことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記周期的運動は、前記共振器機構(1)が備える弾性復元手段の内部減衰を変調することによって、前記共振器機構(1)の前記品質係数の周期的変調をもたらすことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記周期的運動は、前記共振器機構(1)内の機械的摩擦を変調することによって、前記共振器機構(1)の前記品質係数の周期的変調をもたらすことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記方法は、前記周期的運動によって前記共振器機構(1)に作用する少なくとも1つの前記レギュレータデバイス(2)を実装し、
前記方法は、前記周期的運動が、前記共振器機構(1)の少なくとも前記共振周波数の周期的変調をもたらすことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記方法は、前記周期的運動によって前記共振器機構(1)に作用する少なくとも1つの前記レギュレータデバイス(2)を実装し、
前記方法は、前記周期的運動が、前記共振器機構(1)の少なくとも前記静止点の位置の周期的変調をもたらすことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記方法は、前記周期的運動によって前記共振器機構(1)に作用する少なくとも1つの前記レギュレータデバイス(2)を実装し、
前記方法は、前記周期的運動が、前記共振器機構(1)の少なくとも前記共振周波数及び前記静止点の位置の周期的変調をもたらすことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記周期的運動は、前記共振器機構(1)の剛性及び/又は慣性に作用することによって、前記共振器機構(1)の前記共振周波数の周期的変調をもたらすことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記周期的運動は、前記共振器機構(1)の前記剛性の変調及び前記共振器機構(1)の前記慣性の変調をもたらすことによって、前記共振器機構(1)の前記共振周波数の周期的変調をもたらすことを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記周期的運動は、前記共振器機構(1)の質量の分布を変調することによって、及び/又は前記共振器機構(1)の変形によって、及び/又は前記共振器機構(1)の慣性中心の位置の変調によって、前記共振器機構(1)の前記慣性の変調をもたらすことにより、前記共振器機構(1)の前記共振周波数の周期的変調をもたらすことを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記周期的運動は、前記共振器機構(1)が備える弾性復元手段の剛性の変調、又は前記共振器機構(1)内の磁場若しくは静電場若しくは電磁場によって印加される復元力の変調によって、前記共振器機構(1)の前記共振周波数の周期的変調をもたらすことを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記周期的運動は、前記共振器機構(1)が備えるゼンマイの有効長の変調、又は前記共振器機構(1)が備えるゼンマイの断面の変調、又は前記共振器機構(1)が備える復元手段の弾性率の変調、及び/又は前記共振器機構(1)が備える前記復元手段の形状の変調によって、前記共振器機構(1)の前記共振周波数の周期的変調をもたらすことを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記周期的運動は、前記共振器機構(1)の前記剛性及び/又は前記静止点の位置に作用することによって、前記共振器機構(1)の前記共振周波数の周期的変調をもたらすことを特徴とし、
前記周期的運動は、前記共振器機構(1)の前記剛性の変調及び前記共振器機構(1)の前記静止点の位置の変調をもたらすことによって、前記共振器機構(1)の前記共振周波数の周期的変調をもたらすことを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項14】
前記周期的運動は、前記共振器機構(1)の取り付け位置の変調、及び/又は前記共振器機構(1)に作用する前記復元力の間の均衡の変調によって、前記共振器機構(1)の前記静止点の位置の周期的変調をもたらすことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記周期的運動は、機械的弾性復元手段及び/又は磁性復元手段及び/又は静電復元手段によって生成される、前記共振器機構(1)に作用する前記復元力の間の均衡の変調によって、前記共振器機構(1)の前記静止点の位置の周期的変調をもたらすことを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記周期的運動は、前記共振器機構(1)の構成部品、及び前記共振器機構(1)の少なくとも1つの構成部品上の損失生成器機構の両方に対して、同一の前記調整周波数(ωR)で付与されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記レギュレータ機構(2)は、前記共振器機構(1)の周波数の周期的変調を、前記共振器機構(1)の前記品質係数の逆数よりも高い相対振幅でもたらすことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記方法は、テンプ(26)を含む少なくとも1つのゼンマイ‐テンプ組立体(3)を備える前記共振器機構(1)に対して適用されること;及び
前記共振器機構(1)の前記品質係数は、前記レギュレータデバイス(2)の作用下で、前記テンプ(26)上に中心をずらして設置された、高い残留不均衡を有する副ゼンマイ‐テンプ(260)の発振を引き起こすことによって、修正されること
を特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記方法は、前記共振器機構(1)の弾性復元手段(40)を形成する捩りワイヤ(46)を保持するヒゲ玉(7)を含む少なくとも1つのテンプ(26)を備える前記共振器機構(1)に対して適用されること;及び
前記捩りワイヤ(46)の張力の周期的変動を引き起こすことによって、少なくとも1つの前記レギュレータデバイス(2)を作用させること
を特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記方法は、前記テンプ(26)を備える少なくとも1つの前記ゼンマイ‐テンプ組立体(3)を含む前記共振器機構(1)に適用されること;及び
前記共振器機構(1)の前記品質係数は、前記テンプ(26)の幾何学的形状の局所的修正によって生成された、前記テンプ(26)の空気摩擦の修正によって、修正され、前記テンプ(26)は、前記テンプ(26)の周縁部にヒンジ留めされた、航空機の翼の外形を有する変調用フィンを支持し、前記フィンは反転可能であり、運動方向を完全に傾動させるように配設されること
を特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記方法は、少なくとも1つの音叉を備える前記共振器機構(1)に対して適用されること;並びに
少なくとも1つの前記レギュレータデバイス(2)を、前記音叉の取り付け部に対して、及び/又は前記音叉の少なくとも1つのアームに対して圧力を印加する可動要素に対して、作用させること
を特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
時計の共振器機構(1)の周波数を、前記共振器機構(1)の動作中に、前記共振器機構(1)の自然周波数(ω0)付近に維持及び調整するための方法であって、
前記方法は、周期的運動によって前記共振器機構(1)に作用する少なくとも1つのレギュレータデバイス(2)を実装し、
前記周期的運動は、前記共振器機構(1)の共振周波数及び/又は品質係数及び/又は静止点の位置の周期的変調を、前記自然周波数(ω0)の整数倍の値の0.9倍〜1.1倍である前記レギュレータデバイス(2)の調整周波数(ωR)でもたらし、前記整数は2以上10以下である、方法において、
前記方法は:
前記方法が、テンプ(26)を備える少なくとも1つのゼンマイ‐テンプ組立体(3)を含む前記共振器機構(1)に対して適用されること;及び
前記共振器機構(1)の前記品質係数は、前記レギュレータデバイス(2)の作用下で、前記テンプ(26)上に中心をずらして設置された、高い残留不均衡を有する副ゼンマイ‐テンプ(260)の発振を引き起こすことによって、修正されること
を特徴とする、方法。
【請求項23】
時計の共振器機構(1)の周波数を、前記共振器機構(1)の動作中に、前記共振器機構(1)の自然周波数(ω0)付近に維持及び調整するための方法であって、
前記方法は、周期的運動によって前記共振器機構(1)に作用する少なくとも1つのレギュレータデバイス(2)を実装し、
前記周期的運動は、前記共振器機構(1)の共振周波数及び/又は品質係数及び/又は静止点の位置の周期的変調を、前記自然周波数(ω0)の整数倍の値の0.9倍〜1.1倍である前記レギュレータデバイス(2)の調整周波数(ωR)でもたらし、前記整数は2以上10以下である、方法において、
前記方法は:
前記方法が、前記共振器機構(1)の弾性復元手段(40)を形成する捩りワイヤ(46)を保持するヒゲ玉(7)を備える少なくとも1つのテンプ(26)を含む前記共振器機構(1)に対して適用されること;及び
前記捩りワイヤ(46)の張力の周期的変動を引き起こすことによって、少なくとも1つの前記レギュレータデバイス(2)を作用させること
を特徴とする、方法。
【請求項24】
時計の共振器機構(1)の周波数を、前記共振器機構(1)の動作中に、前記共振器機構(1)の自然周波数(ω0)付近に維持及び調整するための方法であって、
前記方法は、周期的運動によって前記共振器機構(1)に作用する少なくとも1つのレギュレータデバイス(2)を実装し、
前記周期的運動は、前記共振器機構(1)の共振周波数及び/又は品質係数及び/又は静止点の位置の周期的変調を、前記自然周波数(ω0)の整数倍の値の0.9倍〜1.1倍である前記レギュレータデバイス(2)の調整周波数(ωR)でもたらし、前記整数は2以上10以下である、方法において、
前記方法は:
前記方法が、少なくとも1つの音叉を含む前記共振器機構(1)に対して適用されること;並びに
少なくとも1つの前記レギュレータデバイス(2)を、前記音叉の取り付け部に対して、及び/又は前記音叉の少なくとも1つのアームに対して圧力を印加する可動要素に対して、作用させること
を特徴とする、方法。
【請求項25】
前記レギュレータデバイス(2)は、前記共振器機構(1)の始動及び/又は維持のために使用されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記調整周波数(ωR)は、前記自然周波数(ω0)の整数倍の値で選択され、前記整数は2以上であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
前記調整周波数(ωR)は、前記自然周波数(ω0)の2倍であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
前記調整周波数(ωR)は、前記自然周波数(ω0)の1.8倍〜2.2倍であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項29】
前記レギュレータデバイス(2)の前記周期的運動は、離間した電力又は磁力又は電磁力による、前記共振器機構(1)の前記周波数及び/又は前記静止点の位置の変調をもたらすことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【国際調査報告】