(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含む、ヒトCCL17に特異的に結合する単離された抗体であって、前記抗体は、配列番号45のVH及び配列番号52のVLを含む抗体と、ヒトCCL17への結合を競合する、抗体。
重鎖相補性決定領域(HCDR)の1(HCDR1)、2(HCDR2)、及び3(HCDR3)と、軽鎖相補性決定領域(LCDR)の1(LCDR1)、2(LCDR2)、及び3(LCDR3)と、を含み、前記HCDR1、前記HCDR2、前記HCDR3、前記LCDR1、前記LCDR2、及び前記LCDR3が、それぞれ、配列番号4、5、42、8、24、及び28のアミノ酸配列、又はそれぞれ、配列番号46及び62のVH及びVLを含む、請求項5に記載の抗体。
重鎖相補性決定領域(HCDR)の1(HCDR1)、2(HCDR2)、及び3(HCDR3)と、軽鎖相補性決定領域(LCDR)の1(LCDR1)、2(LCDR2)、及び3(LCDR3)と、を含み、前記HCDR1、前記HCDR2、前記HCDR3、前記LCDR1、前記LCDR2、及び前記LCDR3が、それぞれ、配列番号4、5、71、72、73、及び74のアミノ酸配列を含む、請求項1〜8に記載の抗体。
前記HCDR1が、配列番号4のアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が、配列番号5のアミノ酸配列を含み、前記HCDR3が、配列番号6、42、又は43のアミノ酸配列を含む、請求項10に記載の抗体。
前記LCDR1が、配列番号8、9、10、13、14、15、17、又は18のアミノ酸配列を含み、前記LCDR2が、配列番号20、21、22、24、25、及び26のアミノ酸配列を含み、前記LCDR3が、配列番号28、29、30、33、34、35、37、又は38のアミノ酸配列を含む、請求項11に記載の抗体。
前記抗体が、配列番号46のVHと少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるアミノ酸配列を含むVHと、配列番号62のVLと少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるアミノ酸配列を含むVLと、を含む、請求項5に記載の抗体。
前記置換が、IgG2上のV234A、G237A、P238S、H268A、V309L、A330S、若しくはP331S置換、又はIgG4上のS228P、L234A、若しくはL235A置換を含み、残基の番号付けがEUインデックスに準ずる、請求項21に記載の抗体。
前記置換が、IgG2上のV234A/G237A/P238S/H268A/V309L/A330S/P331S置換、又はIgG4上のS228P/L234A/L235A置換を含み、残基の番号付けがEUインデックスに準ずる、請求項22に記載の抗体。
前記CCL17媒介疾患が、炎症性疾患、喘息、潰瘍性大腸炎(UC)、アトピー性皮膚炎(AD)、又は特発性肺線維症(IPF)である、請求項35に記載の使用のための抗体。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本明細書に引用される特許及び特許出願を含む(ただしそれらに限定されない)全ての刊行物は、参照によりあたかもそれらの全体が記載されているものと同様に、本明細書に組み込まれる。
【0023】
本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を記載する目的でのみ使用され、限定を意図するものではないと理解すべきである。特に断らないかぎり、本明細書において使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野における当業者によって一般的に理解されているものと同じ意味を有する。
【0024】
本明細書に記載されているものと同様又は同等の任意の方法及び材料を、本発明の試験を実施するために使用できるが、例示となる材料及び方法を本明細書に記載する。本発明を説明及び特許請求する上で以下の用語が用いられる。
【0025】
本明細書で使用される「特異的結合」又は「特異的に結合する」又は「結合する」とは、抗体が既定の抗原に、他の抗原に対するより高い親和性で結合することを指す。典型的には、抗体は、約1×10
-7M以下、例えば、約1×10
-8M以下、約1×10
-9M以下、約1×10
-10M以下、約1×10
-11M以下、約1×10
-12M以下、約1×10
-13M以下、又は約1×10
-14M以下の解離定数(K
D)で既定の抗原に結合し、非特異的抗原又はエピトープ(例えば、BSAカゼイン)との結合に関しては、典型的には、そのK
Dより少なくとも10倍低いK
Dで結合する。解離定数は標準的手法を用いて測定することができる。しかし、既定の抗原と特異的に結合する抗体は、他の関連抗原、例えばヒト又はサル、例えばMacaca fascicularis(カニクイザル、cyno)又はPan troglodytes(チンパンジー、chimp)などの他の種からの同様の既定の抗原(ホモログ)に対して交差反応性を有する可能性がある。
【0026】
「ヒトCCL17に特異的に結合するモノクローナル抗体」とは、配列番号1に示される配列を有するヒト成熟CCL17に特異的に結合する抗体を指す。
【0027】
本明細書で使用される「中和」又は「中和する」又は「中和抗体」又は「抗体アンタゴニスト」とは、いずれかの機構によって、CCL17の生物活性を部分的又は完全に阻害する抗体又は抗体断片を指す。中和抗体は、下に記載するCCL17の生物活性用のアッセイを用いて確認することができる。CCL17中和抗体は、測定されるCCL17の生物活性を20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%阻害し得る。
【0028】
本明細書で互換的に使用される「ヒトCCL17」又は「huCCL17」とは、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するヒトCCL17タンパク質を指す。シグナル配列を含む完全長CCL17の配列は、GenBank:受入番号NP_002978で入手可能である。
【0029】
本明細書で互換的に使用される「Cyno CCL17」又は「cCCL17」とは、配列番号2に示されるアミノ酸配列を有するカニクイザル(cyno)CCL17タンパク質を指す。
【0030】
本明細書で使用される「抗体」は、広義が意図され、マウス、ヒト、ヒト化、及びキメラ抗体を含むモノクローナル抗体、抗体断片、少なくとも2つの無傷の抗体若しくは抗体断片から形成される二重特異性抗体又は多重特異性抗体、二量体の、四量体の若しくは多量体の抗体、一本鎖抗体、及び必要とされる特異性の抗原認識部位を含む免疫グロブリン分子のいずれの他の修飾された構成も含む、免疫グロブリン分子を含む。
【0031】
免疫グロブリンは、重鎖定常ドメインのアミノ酸配列に応じて5つの主なクラス、即ち、IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMに分類することができる。IgA及びIgGは、IgA
1、IgA
2、IgG
1、IgG
2、IgG
3、及びIgG
4アイソタイプに更に下位分類される。あらゆる脊椎種の抗体の軽鎖は、それらの定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて2つの明確に異なるタイプ、即ちカッパ(κ)及びラムダ(λ)のうちの1つに分類することができる。
【0032】
用語「抗体断片」とは、重鎖及び/又は軽鎖抗原結合部位、例えば、重鎖相補性決定領域(HCDR)1、2、及び3、軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、2、及び3、重鎖可変領域(VH)、又は軽鎖可変領域(VL)を保有する免疫グロブリン分子の一部を指す。抗体断片は、VL又はVHからなる一価の断片であるFab断片、ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結される2つのFab断片を含む二価の断片であるF(ab)
2断片、VH及びCHIドメインからなるFd断片、一本のアームの抗体のVL及びVHドメインからなるFv断片、VHドメインからなるdAb断片(Ward et al.,Nature 341:544〜546,1989)を含む。VHドメイン及びVLドメインは、操作され、合成リンカーを介して一緒に連結して様々な種類の一本鎖抗体設計を形成することができ、VHドメイン及びVLドメインが別々の一本鎖抗体構築物で発現される場合は、VH/VLドメインが分子内又は分子間で対合して、一本鎖Fv(scFv)又はダイアボディなどの一価の抗原結合部位を形成する(これらは、例えば、国際特許公開第WO1998/44001号、国際特許公開第WO1988/01649号、国際特許公開第WO1994/13804号、国際特許公開第WO1992/01047号に記載されている)。これらの抗体断片は周知の技術を用いて得られ、断片は無傷抗体と同一の方法で特徴付けされる。
【0033】
句「単離された抗体」とは、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体を指す(例えば、ヒトCCL17に特異的に結合する単離された抗体は、ヒトCCL17以外の抗原に特異的に結合する抗体を実質的に含まない)。しかし、ヒトCCL17に特異的に結合する単離された抗体は、Macaca fascicularis(カニクイザル)CCL17など、ヒトCCL17のオルソログなどの他の抗原に対して交差反応性を有する可能性がある。更に、単離された抗体は、他の細胞物質及び/又は化学物質を実質的に含まない場合もある。
【0034】
抗体可変領域は、3つの「抗原結合部位」で遮られた「フレームワーク」領域からなる。抗原結合部位は、様々な用語を用いて定義される:(i)相補性決定領域(CDR)、これは、配列特異性に基づいてVH内に3つ(HCDR1、HCDR2、HCDR3)及びVL内に3つ(LCDR1、LCDR2、LCDR3)存在する(Wu and Kabat,J Exp Med 132:211〜50,1970、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.,1991)、(ii)「超可変領域」、即ち「HVR」又は「HV」、VH内に3つ(H1、H2、H3)及びVL内に3つ(L1、L2、L3)存在し、これは、Chothia and Lesk(Chothia and Lesk,Mol.Biol.196:901〜17,1987)により定義される構造において超可変性である抗体可変ドメインの領域を指す。他の用語は、「IMGT−CDR」(Lefranc et al.,Dev Comparat Immunol 27:55〜77,2003)及び「特異性決定残基使用(SDRU)(Almagro Mol Recognit,17:132〜43,2004)を含む。International ImMunoGeneTics(IMGT)データベース(http://www_imgt_org)は、抗原結合部位の標準化された番号付け及び定義を提供する。CDR、HV、及びIMGTの表記の間の対応については、Lefranc et al.,Dev.Comparat.Immunol.27:55〜77,2003に記載されている。
【0035】
本明細書で使用される「Chothia残基」は、Al−Lazikani(Al−Lazikani et al.,J Mol Biol 273:927〜48,1997)に準じて番号付けされた抗体VL残基及びVH残基である。
【0036】
「フレームワーク」又は「フレームワーク配列」は、抗原結合部位として定義されたこれらの配列以外の可変領域の残りの配列である。抗原結合部位は上記のような様々な用語によって定義され得るため、フレームワークの正確なアミノ酸配列は抗原結合部位がどのように定義されるかによって決まる。
【0037】
「ヒト化抗体」とは、抗原結合部位がヒト以外の種に由来しかつ可変領域フレームワークがヒト免疫グロブリン配列に由来する、抗体を指す。ヒト化抗体はフレームワーク領域内に置換を含む可能性があることから、当該フレームワークは、発現したヒト免疫グロブリン又は生殖細胞系列遺伝子配列の完全な複製物でなくてもよい。
【0038】
「ヒト抗体」とは、フレームワーク及び抗原結合部位領域の両方がヒト起源の配列に由来する重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を有する抗体を指す。抗体が定常領域を含む場合、定常領域もヒト起源の配列に由来する。
【0039】
ヒト抗体は、抗体の可変領域がヒト生殖系列免疫グロブリン又は再編成された免疫グロブリン遺伝子を使用する系から得られた場合のヒト起源の配列に「由来する」重鎖可変領域又は軽鎖可変領域を含む。そのような系は、ヒト免疫グロブリン遺伝子ライブラリ、例えばファージ上に提示されたライブラリ、及び本明細書に記載されるヒト免疫グロブリン遺伝子座を保有するマウスなど、トランスジェニックのヒト以外の動物を含む。「ヒト抗体」は、例えば天然に存在する体細胞突然変異又は意図した置換の導入により、ヒト生殖系列又は再編成された免疫グロブリン配列と比較したとき、アミノ酸の相違を含み得る。典型的には、「ヒト抗体」は、アミノ酸配列において、ヒト生殖系列又は再編成された免疫グロブリン遺伝子によってコードされるアミノ酸配列と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一である。いくつかの場合では、「ヒト抗体」は、例えばKnappik et al.,J Mol Biol 296:57〜86,2000)に記載されるヒトフレームワーク配列分析から得られたコンセンサスフレームワーク配列、又は例えばShi et al.,J Mol Biol 397:385〜96,2010及び国際特許公開第WO2009/08546号)に記載されるファージ上に提示されたヒト免疫グロブリン遺伝子ライブラリに組み込まれた合成HCDR3を含み得る。
【0040】
単離されたヒト化抗体は合成であり得る。ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン配列に由来するが、ファージ提示組み込み合成CDR及び/若しくは合成フレームワークなどの系を用いて生成されるか、又は抗体特性を改善するためにインビトロ突然変異誘発を受けることができ、インビボのヒト抗体生殖系列レパートリー内に天然に存在しない抗体をもたらす。
【0041】
ヒト抗体は、フレームワーク又は抗原結合部位に置換を含む可能性があるので、該ヒト抗体は、発現したヒト免疫グロブリン又は生殖系列遺伝子配列の正確な複製物でない場合がある。ただし、抗原結合部位がヒト以外の種から得られる抗体は、「ヒト抗体」の定義には含まれない。
【0042】
本明細書で使用される用語「組換え抗体」は、ヒト免疫グロブリン遺伝子のトランスジェニック若しくは染色体導入動物(例えばマウス)又はそれから調製されたハイブリドーマ(下で更に説明される)から単離された抗体、抗体を発現するように形質転換された宿主細胞から単離された抗体、組換えコンビナトリアル抗体ライブラリから単離された抗体、並びにヒト免疫グロブリン遺伝子配列を他のDNA配列にスプライスすることを伴う任意の他の手段により調製、発現、作製、又は単離された抗体などの組換え手段により調製、発現、作製、又は単離される全ての抗体を含む。
【0043】
本明細書で使用されるとき、「モノクローナル抗体」という用語は、単一分子組成物の抗体分子の調製物を意味する。
【0044】
「実質的に同一の」という表現は、本明細書で使用されるとき、比較される2つの抗体可変領域のアミノ酸配列が同一であるか又は「ごく僅かな相違」があるということを意味する。ごく僅かな相違とは、抗体の特性に悪影響を及ぼさない抗体可変領域配列における1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、又は15個のアミノ酸の置換である。本明細書に開示される可変領域の配列と実質的に同一のアミノ酸配列は、本発明の範囲に属する。一部の実施形態では、配列の同一性は、約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又はそれよりも高い可能性がある。同一性パーセントは、例えば、Vector NTI v.9.0.0(Invitrogen、Carlsbad、CA)のAlignXモジュールの初期設定を使用するペアワイズアライメントによって決定することができる。本発明のタンパク質配列を問い合わせ配列として使用することで、例えば、近縁配列を確認するために公開データベース又は特許データベースでの検索を実行することができる。そのような検索を実行するために使用されるプログラム例は、初期設定を使用する、XBLAST若しくはBLASTPプログラム(http_//www_ncbi_nlm/nih_gov)、又はGenomeQuest(商標)(GenomeQuest、Westborough、MA)スイートである。
【0045】
本明細書で使用される用語「エピトープ」とは、抗体が特異的に結合する抗原の一部を意味する。エピトープは通常、アミノ酸又は多糖類側鎖のような部位の化学的に活性な(極性、非極性又、は疎水性など)表面基からなり、特定の3次元構造特性及び特定の電荷特性を有し得る。エピトープは、立体配座空間単位を形成する連続した及び/又は連続していないアミノ酸からなり得る。連続していないエピトープについて、抗原の直鎖配列の異なる部分からのアミノ酸は、タンパク質分子の折り畳みを通じて、3次元空間において近接する。
【0046】
本明細書で使用される「二重特異性」とは、2つの異なる抗原と結合する、又は抗原内の2つの異なるエピトープに結合する抗体若しくは分子を指す。
【0047】
本明細書で使用されるとき、「単一特異性」とは、1つの抗原又は1つのエピトープと結合する抗体を指す。
【0048】
本明細書で使用される用語「〜と組み合わせて」は、記載される薬剤が、混合物として一緒に、又は単独薬剤として同時に、又は単独薬剤として順次に任意の順序で、動物に投与され得ることを意味する。
【0049】
用語「ベクター」は、生物系内で複製することが可能である、又はそのような系間を移動することができる天然に存在しないポリヌクレオチドを意味する。ベクターポリヌクレオチドは典型的には、生物系内でこれらのポリヌクレオチドの複製又は維持を容易にするように機能する複製起点、ポリアデニル化シグナル又は選択マーカーなどの関心のタンパク質及び追加の要素をコードするcDNAを含有する。そのような生物系の例としては、細胞、ウイルス、動物、植物、及びベクターを複製することが可能である生物学的成分を利用して再構成された生物系を挙げることができる。ベクターを構成するポリヌクレオチドは、DNA若しくはRNA分子又はこれらのハイブリッド分子であってもよい。
【0050】
用語「発現ベクター」は、生体系又は再構成された生体系において、その発現ベクター中に存在するポリヌクレオチド配列によってコードされたポリペプチドの翻訳を指示するために使用することができるベクターを意味する。
【0051】
用語「ポリヌクレオチド」は、糖−リン酸骨格又は他の同等の共有結合化学作用により共有結合を介して連結されたヌクレオチド鎖からなる分子を意味する。二本鎖及び一本鎖のDNA及びRNAが、ポリヌクレオチドの典型例である。
【0052】
「相補的DNA」又は「cDNA」は、隣接するエキソンと天然の成熟mRNA種に見られる配列要素の配置を共有する周知の合成ポリヌクレオチドを指し、ゲノムDNAに存在する介在イントロンは除去される。開始剤メチオニンをコードするコドンは、cDNAに存在してもしなくてもよい。cDNAは、例えば逆転写又は合成遺伝子アセンブリによって合成され得る。
【0053】
本明細書で使用される「合成」又は「非天然の」とは、自然界に存在しないポリヌクレオチド又はポリペプチド分子を指す。
【0054】
用語「ポリペプチド」又は「タンパク質」は、ペプチド結合により連結されてポリペプチドを生成する少なくとも2つのアミノ酸残基を含む分子を意味する。50個未満のアミノ酸からなる小さいポリペプチドは「ペプチド」と呼ばれる場合もある。
【0055】
本明細書では表1に示すような従来の1文字及び3文字のアミノ酸コードを用いる。
【0057】
物質の組成物
本発明は、ヒトCCL17に特異的に結合するモノクローナル抗体を提供する。本発明の抗体は、細胞におけるCCL17の生物活性を阻害し、かつ任意に、cyno CCL17と交差反応し得る。本発明は、抗体及びその断片をコードする合成ポリヌクレオチド、ベクター及び宿主細胞、並びに本発明の抗体を作製及び使用する方法を提供する。
【0058】
本発明の一実施形態は、ヒトCCL17に特異的に結合する単離された抗体である。
【0059】
本明細書に記載される本発明の別の実施形態は、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含む、ヒトCCL17に特異的に結合する単離された抗体であり、該抗体は、配列番号45のVH及び配列番号52のVLを含む抗体と、ヒトCCL17への結合を競合する。
【0060】
特定のVH及びVLアミノ酸配列を含む本発明の抗体とのヒトCCL17への特異的結合間の競合は、周知の方法を用いてインビトロでアッセイすることができる。例えば、非標識抗体の存在下での、MSD Sulfoタグ(商標)NHS−エステル標識抗体の、ヒトCCL17への結合は、ELISA法によって評価することができ、さもなければBiacore分析法若しくはフローサイトメトリーを用いて本発明の抗体との競合を示すことも可能である。試験抗体が配列番号45のVH及び配列番号52のVLを含む抗体のヒトCCL17への結合を阻害する能力は、試験抗体がヒトCCL17への結合についてこれらの抗体と競合し得ることを示す。
【0061】
本明細書に記載される本発明の別の実施形態は、配列番号1の配列を有するヒトCCL17に特異的に結合する単離された抗体であり、該抗体は、少なくともCCL17のアミノ酸残基21〜23、44〜45、及び60〜68内でヒトCCL17に結合する。「少なくともCCL17のアミノ酸残基21〜23、44〜45、及び60〜68内で」とは、抗CCL17抗体が配列番号1の残基21〜23のアミノ酸伸長内に位置する少なくとも1つの残基、並びに配列番号1の残基44〜45のアミノ酸伸長内に位置する少なくとも1つの残基、及び配列番号1の残基60〜68のアミノ酸伸長内に位置する少なくとも1つの残基に結合することを意味する。抗体は、配列番号1の残基21〜23、44〜45、及び60〜68内で2つ以上の残基、及び配列番号1の残基21〜23、44〜45、及び60〜68外の追加の残基に結合し得る。
【0062】
本明細書に記載される一部の実施形態では、抗体は、配列番号1の少なくとも残基R22及びK23でヒトCCL17に結合する。
【0063】
本明細書に記載される一部の実施形態では、抗体は、配列番号1の少なくとも残基L21、R22、K23、V44、Q45、N60、Y64、S67、及びL68でヒトCCL17に結合する。
【0064】
配列番号1のCCL17のアミノ酸残基21〜23、44〜45、及び60〜68内でヒトCCL17に結合する抗体の例は、配列番号45のVH及び配列番号52のVLを有するC17B236である。結晶構造分析から、C17B236によって結合された主なエピトープ残基は、これらの残基と抗体VH残基との間の接触数に基づき、配列番号1のCCL17のR22及びK23である。
【0065】
CCL17のアミノ酸残基21〜23、44〜45、及び60〜68内でヒトCCL17に結合する他の抗体の例は、C17B236の親和性成熟変異体であり、その全抗体は、同一親抗体の親和性成熟キャンペーンに由来する。例示的な抗体のVH及びVL配列は、
図3及び
図5に示される。抗体の親和性成熟は、典型的には、CDR又はバーニアゾーン(CDRを強調するフレームワーク領域)におけるアミノ酸置換を伴う。成熟変異体は、最大10
8の変異体を含有し得るコンビナトリアルライブラリをパニングすることにより選択される。ライブラリの大きさの上限は、20個全てのアミノ酸が各位置で可能な場合、可変位置の数を6〜7に制限する。大半のパラトープ残基が、各コンビナトリアルライブラリにおいて保存され、これによって結合エピトープも保存されることを確実にする。親抗体及び成熟抗体のいくつかの結晶学研究は、エピトープが親和性成熟中に常に保存されることを示している(例えば、Fransson et al.,J.Mol.Biol.2010,398:214〜231、Gustchina et al.,PLoS Pathog.2010,6:e1001182、La Porte et al.,MAbs 2014;6:1059〜1068)。
【0066】
CCL17のアミノ酸残基21〜23、44〜45、及び60〜68内でヒトCCL17に結合する抗CCL17抗体は、高親和性、典型的には約1×10
-10M未満のK
DでヒトCCL17に結合する。
【0067】
CCL17のアミノ酸残基21〜23、44〜45、及び60〜68内でヒトCCL17に結合する抗体は、例えば、残基位置21〜23、44〜45、及び60〜68にヒトCCL17配列を有するCCL17キメラタンパク質でマウスを免疫化することにより、又は本明細書に記載される方法を用いて、野生型ヒトCCL17でファージ提示ライブラリをパニングし、得られたヒットを、ヒトCCL17の残基21〜23、44〜45、及び60〜68内の各残基位置若しくはいくつかの残基位置に置換を有するCCL17変異体と交差スクリーニングすることにより作製され得る。
【0068】
本明細書に記載される本発明の一部の実施形態では、ヒトCCL17に特異的に結合する抗体は、CCL17/CCR4相互作用を阻止する。
【0069】
抗体の、CCL17/CCR4相互作用阻止能力については、標準的なフローサイトメトリーにより試験することができる。例えば、CCR4を発現する細胞を、蛍光標識されたヒトCCL17及び試験抗体とインキュベートし、その後、標準的な方法を用いて蛍光標識されたヒトCCL17のCCR4発現細胞上への結合を評価する。「CCL17/CCR4相互作用を阻止する」又は「CCL17/CCR4相互作用を阻害する」抗体は、抗体の不在下のCCL17の結合と比較したとき、CCL17のCCR4発現細胞への結合を、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%阻害し得る。
【0070】
本明細書に記載される本発明の別の実施形態は、ヒトCCL17に特異的に結合する単離された抗体であり、該抗体は、約1×10
-7M以下、約1×10
-8M以下、約1×10
-9M以下、約1×10
-10M以下、約1×10
-11M以下、約1×10
-12M以下、約1×10
-13M以下、又は約1×10
-14M以下の親和性定数(K
D)でヒトCCL17に結合し、このとき、K
Dは、抗体及びヒトCCL17を4℃で48時間同時にインキュベートした後、0.05%のTween−20を含有するトリス系生理食塩水緩衝液中の溶液平衡親和性を使用して測定される。
【0071】
本明細書に記載される一部の実施形態では、抗体は、約1×10
-10M以下の親和性定数(K
D)でヒトCCL17に結合し、このとき、K
Dは、抗体及びヒトCCL17を4℃で48時間同時にインキュベートした後、0.05%のTween−20を含有するトリス系生理食塩水緩衝液中の溶液平衡親和性を使用して測定される。
【0072】
本明細書に記載される一部の実施形態では、抗体は、約5×10
-12M以下のK
DでヒトCCL17に結合する。
【0073】
本明細書に記載される別の実施形態では、ヒトCCL17に特異的に結合する本発明の抗体は、約1×10
-6M以下、約1×10
-7M以下、約1×10
-8M以下、約1×10
-9M以下、約1×10
-10M以下、約1×10
-11M以下、又は約1×10
-12M以下の親和性定数(K
D)でカニクイザル(cyno)CCL17に結合し、このとき、K
Dは、抗体及びcyno CCL17を4℃で48時間同時にインキュベートした後、0.05%のTween−20を含有するトリス系生理食塩水緩衝液中の溶液平衡親和性を使用して測定される。
【0074】
本明細書に記載される一部の実施形態では、本発明の抗体は、約1×10
-8M以下のK
Dでカニクイザル(cyno)CCL17に結合し、このとき、K
Dは、抗体及びcyno CCL17を4℃で48時間同時にインキュベートした後、0.05%のTween−20を含有するトリス系生理食塩水緩衝液中の溶液平衡親和性を使用して測定される。
【0075】
配列番号1の配列を有するヒトCCL17又は配列番号2の配列を有するcyno CCL17に対する抗体の親和性は、任意の好適な方法を用いて実験的に測定され得る。そのような方法は、当業者に既知のProteOn XPR36若しくはBiacore 3000などのProteon、Biacore、又はKinExA機器、溶液平衡親和性(SEA)、ELISA、又は競合結合アッセイを利用し得る。例示的な方法は、実施例3に記載されるものである。特定の抗体/CCL17相互作用の測定された親和性は、異なる条件(例えば、容量オスモル濃度、pH、緩衝液、洗剤濃度)下で測定される場合に異なり得る。したがって、親和性及び他の結合パラメータ(例えば、K
D、K
on、K
off)の測定は、好ましくは標準的な条件及び本明細書に記載される緩衝液などの標準化緩衝液を用いて行われる。例えば、溶液平衡親和性、Biacore 3000、又はProteOnを用いた親和性測定での内部エラー(標準偏差(SD)として測定されるもの)は典型的には、典型的な検出限界内で測定した場合、5〜33%の範囲内であり得ることを当業者は理解するであろう。したがって、用語「約」は、アッセイにおける典型的な標準偏差を表す。例えば、K
Dが1×10
-9Mの場合の典型的なSDは、最大±0.33×10
-9Mである。
【0076】
本明細書に記載される本発明の別の実施形態は、ヒトCCL17に特異的に結合する単離された抗体であり、該抗体は、CCL17生物活性を阻害する。
【0077】
本明細書で使用される「CCL17生物活性」は、CCL17がその受容体CCR4に結合した結果として生じる、任意の活性を指す。例示的なCCL17生物活性は、細胞内カルシウム動員又は細胞、例えばCCRF−CEM細胞(急性白血病の患者からのTリンパ芽球様細胞系)の走化性をもたらす。本発明の抗体は、標準的な方法及び本明細書に記載されるものを用いてCCL17生物活性の阻害能力について試験され得る。例えば、本発明の抗体の、CCL17依存細胞内カルシウム動員の阻害能力は、Fluo−8 NW、Fluo−4 AM、又はFluo−3 AMなどの蛍光染料を用いて、CCL17によって誘導されるカルシウム動員に対する抗体の作用を測定することによりアッセイされ得る。本発明の抗体の、CCL17によって誘導される走化性の阻害能力は、2チャンバ培養システムにおいて半透性の5μMのフィルタを通るCCRF−CEM細胞の移動を測定し、フィルタを通って移動した細胞の生存率を測定することにより測定され得る。本発明の抗体は、CCL17生物活性を、約20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%阻害し得る。
【0078】
本明細書に記載される本発明の別の実施形態は、CCL17に特異的に結合する抗体であり、該抗体は、約1×10
-7M以下、約1×10
-8M以下、又は約1×10
-9M以下のIC
50値で、Fluo−8 NWを用いて測定される10ng/mlのヒトCCL17によって誘導されるCCRF−CEM細胞中のカルシウム動員を阻害する。
【0079】
本明細書に記載される本発明の別の実施形態は、CCL17に特異的に結合する抗体であり、該抗体は、重鎖相補性決定領域(HCDR)の1(HCDR1)、2(HCDR2)、及び3(HCDR3)と、軽鎖相補性決定領域(LCDR)の1(LCDR1)、2(LCDR2)、及び3(LCDR3)とを含み、該HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3は、それぞれ、配列番号4、5、71、72、73、及び74のアミノ酸配列を含む。
【0080】
配列番号4、5、71、72、73、及び74のHCDR及びLCDR配列を含む抗体は、1×10
-10以下のK
DでヒトCCL17に結合する。
【0081】
HCDR1:SYWIG(配列番号4)
【0082】
HCDR2:IIDPSDSDTRYSPSFQG(配列番号5)
【0083】
HCDR3コンセンサス配列
VGPADVWDX
1FDY(配列番号71)
式中、
X
1は、S、A、又はTである。
【0084】
LCDR1コンセンサス配列:
KSSQSVLX
1SX
2X
3NX
4NX
5LA(配列番号72)
式中、
X
1は、L、Y、S、又はNであり、
X
2は、F、P、H、又はIであり、
X
3は、D、Y、W、T、又はVであり、
X
4は、I、F、S、T、Y、N、K、又はVであり、かつ
X
5は、K、A、Q、T、又はDである。
【0085】
LCDR2コンセンサス配列:
X
1ASTRE(配列番号73)
式中、
X
1は、N、H、G、E、T、又はDである。
【0086】
LCDR3コンセンサス配列
QQX
1X
2X
3X
4PX
5T(配列番号74)
式中、
X
1は、F、Y、T、又はHであり、
X
2は、Y、L、N、又はWであり、
X
3は、S、A、L、I、T、Q、又はHであり、
X
4は、V、T、I、Y、L、又はDであり、かつ
X
5は、S、F、A、又はLである。
【0087】
本明細書に記載される一部の実施形態では、CCL17に特異的に結合する本発明の抗体において、HCDR1は配列番号4の配列を含み、HCDR2は配列番号5の配列を含み、HCDR3は配列番号6、42、43、又は44の配列を含む。
【0088】
本明細書に記載される一部の実施形態では、HCDR1は配列番号4のアミノ酸配列を含み、HCDR2は配列番号5のアミノ酸配列を含み、HCDR3は配列番号6、42、又は43のアミノ酸配列を含む。
【0089】
本明細書に記載される一部の実施形態では、LCDR1は、CCL17に特異的に結合する本発明の抗体において、配列番号7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、又は18の配列を含み、LCDR2は、配列番号19、20、21、22、23、24、25、26、39、40、又は41の配列を含み、LCDR3は、配列番号27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、又は38の配列を含む。
【0090】
本明細書に記載される一部の実施形態では、LCDR1は配列番号8、9、10、13、14、15、17、又は18のアミノ酸配列を含み、LCDR2は配列番号20、21、22、24、25、及び26のアミノ酸配列を含み、LCDR3は配列番号28、29、30、33、34、35、37、又は38のアミノ酸配列を含む。
【0091】
本明細書に記載される一部の実施形態では、CCL17に特異的に結合する抗体は、配列番号75のVH及び配列番号76のVLを含む。
【0092】
VHコンセンサス配列(配列番号75)
EVQLVQSGAEVKKPGESLKISCKGSGYSFTSYWIGWVRQMPGKGLEWMGIIDPSDSDTRYSPSFQGQVTISADKSISTAYLQWSSLKASDTAMYYCARVGPADVWDX
1FDYWGQGTLVTVSS
式中、
X
1は、S、A、又はTである。
【0093】
VLコンセンサス配列(配列番号76)
DIVMTQSPDSLAVSLGERATINCKSSQSVLX
1SX
2X
3NX
4NX
5LAWYQQKPGQPPKLLIYX
6ASTRESGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYYCQQX
7X
8X
9X
10PX
11TFGQGTKVEIK;式中、
X
1は、L、Y、S、又はNであり、
X
2は、F、P、H、又はIであり、
X
3は、D、Y、W、T、又はVであり、
X
4は、I、F、S、T、Y、N、K、又はVであり、
X
5は、K、A、Q、T、又はDであり、
X
6は、N、H、G、E、T、又はDであり、
X
7は、F、Y、T、又はHであり、
X
8は、Y、L、N、又はWであり、
X
9は、S、A、L、I、T、Q、又はHであり、
X
10は、V、T、I、Y、L、又はDであり、かつ
X
11は、S、F、A、又はLである。
【0094】
本明細書に記載される一部の実施形態では、CCL17に特異的に結合する抗体は、配列番号45、46、47、又は48のVHを含む。
【0095】
本明細書に記載される一部の実施形態では、CCL17に特異的に結合する抗体は、配列番号49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、又は66のVLを含む。
【0096】
本明細書に記載される一部の実施形態では、CCL17に特異的に結合する抗体は、配列場号45、46、又は47のアミノ酸配列を含むVHを含む。
【0097】
本明細書に記載される一部の実施形態では、CCL17に特異的に結合する抗体は、配列場号50、51、52、55、56、57、59、60、又は62のアミノ酸配列を含むVLを含む。
【0098】
本明細書に記載される本発明の別の実施形態は、CCL17に特異的に結合する単離された抗体であり、該抗体は、
それぞれ、配列番号4、5、6、7、19、及び27、
それぞれ、配列番号4、5、6、8、20、及び28、
それぞれ、配列番号4、5、6、9、21、及び29、
それぞれ、配列番号4、5、6、10、22、及び30、
それぞれ、配列番号4、5、6、11、23、及び31、
それぞれ、配列番号4、5、6、12、24、及び32、
それぞれ、配列番号4、5、6、13、21、及び33、
それぞれ、配列番号4、5、6、14、20、及び34、
それぞれ、配列番号4、5、6、15、25、及び35、
それぞれ、配列番号4、5、6、16、21、及び36、
それぞれ、配列番号4、5、6、17、25、及び37、
それぞれ、配列番号4、5、6、18、26、及び38、
それぞれ、配列番号4、5、6、8、39、及び28、
それぞれ、配列番号4、5、6、8、24、及び28、
それぞれ、配列番号4、5、6、8、22、及び28、
それぞれ、配列番号4、5、6、8、40、及び28、
それぞれ、配列番号4、5、6、8、26、及び28、
それぞれ、配列番号4、5、6、8、41、及び28、
それぞれ、配列番号4、5、42、8、24、及び28、
それぞれ、配列番号4、5、43、8、24、及び28、又は
それぞれ配列番号4、5、44、8、24、及び28のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列を含む。
【0099】
本明細書に記載される本発明の別の実施形態は、CCL17に特異的に結合する単離された抗体であり、該抗体は、
配列番号45のVH、及び配列番号49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、58、59、60、61、62、63、64、65、又は66のVL、
それぞれ、配列番号46及び62のVH及びVL、
それぞれ、配列番号47及び62のVH及びVL、又は
それぞれ、配列番号48及び62のVH及びVLを含む。
【0100】
本明細書に記載される本発明の別の実施形態は、CCL17に特異的に結合する単離された抗体であり、該抗体は、
配列番号45のVH、及び配列番号50、51、52、55、56、57、59、又は60のVL、
それぞれ、配列番号46及び62のVH及びVL、又は
それぞれ、配列番号47及び62のVH及びVLを含む。
【0101】
本明細書に記載される本発明の別の実施形態は、CCL17に特異的に結合する単離された抗体であり、該抗体は、配列番号45のVH、及び配列番号50のVLを含む。
【0102】
本明細書に記載される本発明の別の実施形態は、CCL17に特異的に結合する単離された抗体であり、該抗体は、配列番号45のVH、及び配列番号51のVLを含む。
【0103】
本明細書に記載される本発明の別の実施形態は、CCL17に特異的に結合する単離された抗体であり、該抗体は、配列番号45のVH、及び配列番号52のVLを含む。
【0104】
本明細書に記載される本発明の別の実施形態は、CCL17に特異的に結合する単離された抗体であり、該抗体は、配列番号45のVH、及び配列番号55のVLを含む。
【0105】
本明細書に記載される本発明の別の実施形態は、CCL17に特異的に結合する単離された抗体であり、該抗体は、配列番号45のVH、及び配列番号56のVLを含む。
【0106】
本明細書に記載される本発明の別の実施形態は、CCL17に特異的に結合する単離された抗体であり、該抗体は、配列番号45のVH、及び配列番号57のVLを含む。
【0107】
本明細書に記載される本発明の別の実施形態は、CCL17に特異的に結合する単離された抗体であり、該抗体は、配列番号45のVH、及び配列番号59のVLを含む。
【0108】
本明細書に記載される本発明の別の実施形態は、CCL17に特異的に結合する単離された抗体であり、該抗体は、配列番号45のVH、及び配列番号60のVLを含む。
【0109】
本明細書に記載される本発明の別の実施形態は、CCL17に特異的に結合する単離された抗体であり、該抗体は、配列番号46のVH、及び配列番号62のVLを含む。
【0110】
本明細書に記載される本発明の別の実施形態は、CCL17に特異的に結合する単離された抗体であり、該抗体は、配列番号47のVH、及び配列番号62のVLを含む。
【0111】
本明細書に記載される本発明の別の実施形態は、CCL17に特異的に結合する単離された抗体であり、該抗体は、配列番号46のVHと少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるアミノ酸配列を含むVHと、配列番号62のVLと少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるアミノ酸配列を含むVLとを含む。
【0112】
そのような例示的な抗体は表9に示される抗体である。
【0113】
重鎖CDR、軽鎖CDR、VH、又はVLアミノ酸配列が表3、4、6、7、及び9に示されるものと実質的に異ならない抗体は、本発明の範囲内に包含される。典型的には、これは、抗体の特性に悪影響を及ぼすことなく、抗原結合部位若しくはフレームワークにおいて類似する電荷、疎水性、又は立体化学的特徴を有するアミノ酸との1つ又は2つ以上の保存的アミノ酸置換を伴う。保存的置換は、例えば安定性又は親和性といった抗体の特性を向上させるためにも行われ得る。1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、又は15のアミノ酸置換がVH又はVL配列に対して行われ得る。例えば、「保存的アミノ酸置換」では、その位置のアミノ酸残基の極性又は電荷にほとんどあるいはまったく影響しないように天然アミノ酸残基を非天然残基と置換することができる。更に、ポリペプチドにおける任意の天然残基は、アラニン走査変異誘発について前述されるように、アラニンとも置換され得る(MacLennan et al(1998)Act Physiol.Scand.Suppl.643:55〜67、Sasaki et al(1998)Adv.Biopsy’s.35:1〜24)。当業者であれば、所望のアミノ酸置換を、そのような置換が望ましい時点で決定することができる。例えば、アミノ酸置換を用いることによってその分子の配列の重要な残基を特定したり、又は本明細書で述べる分子の親和性を増大若しくは減少させることができる。以下の8つのグループは、互いに保存的アミノ酸置換であるアミノ酸を含有する:1)アラニン(A)、グリシン(G)、2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)、3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q)、4)アルギニン(R)、リシン(K)、5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V)、6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)、7)セリン(S)、スレオニン(T)、及び8)システイン(C)、メチオニン(M)(例えば、Creighton,Proteins(1984)を参照)。
【0114】
アミノ酸置換は、例えば、PCR変異誘発(米国特許第4,683,195号)によって行うことができる。変異体のライブラリは、周知の方法を用いて、例えば、ランダムコドン(NNK)又は非ランダムコドン、例えば11個のアミノ酸(Ala、Cys、Asp、Glu、Gly、Lys、Asn、Arg、Ser、Tyr、Trp)をコードするDVKコドンを用い、そして所望の特性を有する変異体のライブラリをスクリーニングすることで生成することができる。
【0115】
実施例で説明する実施形態は、1個が重鎖に由来し、1個が軽鎖に由来する1対の可変領域を有しているが、当業者であれば代替的な実施形態は、1個の重鎖又は軽鎖の可変領域を有してもよいということを認識するであろう。1個の可変領域を用いることで、例えば配列番号1の配列を有するヒトCCL17に結合することが可能な2ドメイン特異的抗原結合断片を形成することが可能な可変ドメインについてスクリーニングを行うことができる。スクリーニングは、例えば、国際特許公開第WO1992/01047号に開示される階層的2重コンビナトリアルアプローチを用いたファージ提示スクリーニング法によって実現することが可能である。このアプローチでは、H鎖又はL鎖のいずれかのクローンを含む個別のコロニーを用いて、他方の鎖(L又はH)をコードするクローンの完全なライブラリに感染させ、得られた2鎖特異的抗原結合ドメインを記載されるようなファージ提示法に基づいて選択する。したがって、個別のVH及びVLポリペプチド鎖は、国際特許公開第WO1992/01047号に開示される方法を用いて、配列番号1の配列を有するヒトCCL17に特異的に結合する追加の抗体を特定するのに有用である。
【0116】
本明細書に記載される本発明の抗体は、モノクローナル抗体を生成するための様々な技術を用いて作製することができる。例えば、Kohler and Milstein,Nature 256:495,1975のハイブリドーマ法を使用することができる。ハイブリドーマ法において、ハムスター、ラット、又はサルなどのマウス又は他の宿主動物を、ヒトCCL17の細胞外タンパク質などのヒトCCL17及び/又はcyno CCL17タンパク質若しくはこれらのタンパク質の断片で免疫化し、続いて標準的な方法を用いて免役化した動物からの脾臓細胞を骨髄腫細胞と融合させてハイブリドーマ細胞を形成する(Gooding,Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,pp.59〜103(Academic Press,1986))。1個の不死化したハイブリドーマ細胞から発生したコロニーを、結合特異性、交差反応性又はその欠如、及び抗原の親和性などの所望の特性を有する抗体の生成についてスクリーニングする。
【0117】
様々な宿主動物を使用して、ヒトCCL17に対する抗体を生成することができる。例えば、Balb/cマウスを使用して、マウス抗ヒトCCL17抗体を生成することができる。Balb/cマウス及び他のヒト以外の動物において作製された抗体は、よりヒトのような配列を生成するために、様々な技術を用いてヒト化することができる。ヒト受容体フレームワークの選択を含む例示的なヒト化技術は、当該技術分野において既知であり、CDR移植(米国特許第5,225,539号)、SDR移植(米国特許第6,818,749号)、リサーフェーシング(Palin,Mol Immunol 28:489〜499,1991)、特異性決定残基リサーフェーシング(米国特許第2010/0261620号)、ヒト適応(又はヒトフレームワーク適応)(米国特許公開第US2009/0118127号)、超ヒト化(米国特許第7,709,226号)、及びガイド選択((Osborn et al.,Methods 36:61〜68,2005、米国特許第5,565,332号)を含む。
【0118】
ヒト化抗体は、国際特許公開第WO1990/007861号及び国際特許公開第WO1992/22653号に記載される開示物などの技術により、結合親和性を保存するために改変したフレームワーク支持残基を組み込むことによって所望の抗原に対するそれらの選択性又は親和性を向上させるように更に最適化され得る。
【0119】
それらのゲノムにヒト免疫グロブリン遺伝子座を保有するトランスジェニックマウスを使用して、標的タンパク質に対してヒト抗体を生成することができ、例えば、国際特許公開第WO1990/04036号、米国特許第6,150,584号、国際特許公開第WO1999/45962号、国際特許公開第WO2002/066630号、国際特許公開第WO2002/43478号、Loner et al.,Nature 368:856〜9,1994、Green et al.,Nature Genet.7:13〜21,1994、Green & Jakobovits Exp Med 188:483〜95,1998、Lonberg and Huszar Int Rev Immunol 13:65〜93,1995、Bruggemann et al.,Eur J Immunol 21:1323〜1326,1991、Fishwild et al.,Nat Biotechnol 14:845〜851,1996、Mendez et al.,Nat Genet 15:146〜156,1997、Green,J Immunol Methods 231:11〜23,1999、Yang et al.,Cancer Res 59:1236〜1243,1999、Bruggemann and Taussig Curr Opin Biotechnol 8:455〜458,1997、国際特許公開第WO2002/043478号)に記載されている。そのようなマウスにおける内因性免疫グロブリン遺伝子座は、破壊又は欠失されてよく、相同又は非相同組換え、導入染色体、又はミニ遺伝子を使用して、少なくとも1つの完全な又は部分的なヒト免疫グロブリン遺伝子座をマウスゲノム内に挿入することができる。Regeneron(http://_www_regeneron_com)、Harbour Antibodies (http://_www_harbourantibodies_com)、Open Monoclonal Technology,Inc.(OMT)(http://_www_omtinc_net、KyMab(http://_www_kymab_com)、Trianni(http://_www.trianni_com)、及びAblexis(http://_www_ablexis_com)などの企業は、上述の技術を用いた、選択された抗原を標的とするヒト抗体の提供に従事している可能性がある。
【0120】
ヒト抗体は、ファージがヒト免疫グロブリン又はその一部(Fab、一本鎖抗体(scFv)、又は非対合若しくは対合抗体可変領域など)を発現するように操作されるファージ提示ライブラリから選択され得る(Knappik et al.,J Mol Biol 296:57〜86,2000、Krebs et al.,J Immunol Meth 254:67〜84,2001、Vaughan et al.,Nature Biotechnology 14:309〜314,1996、Sheets et al.,PITAS(USA)95:6157〜6162,1998、Hoogenboom and Winter,J Mol Biol 227:381,1991、Marks et al.,J Mol Biol 222:581,1991)。本発明の抗体は、例えば、Shi et al.,J Mol Biol 397:385〜96,2010及び国際特許公開第WO2009/085462号)に記載されるバクテリオファージpIX被覆タンパク質との融合タンパク質として抗体の重鎖及び軽鎖可変領域を発現するファージ提示ライブラリから単離され得る。抗体ライブラリをヒトCCL17細胞外ドメインへの結合についてスクリーニングして、得られた陽性クローンの特徴付けを更に行い、Fabはクローンライセートから単離され、全長IgGとして発現する。ヒト抗体を単離するためのそのようなファージ提示法は、当技術分野にて確立されている。例えば、Ladnerらの米国特許第5,223,409号、第5,403,484号、及び第5,571,698号;Dowerらの米国特許第5,427,908号、及び第5,580,717号、McCaffertyらの米国特許第5,969,108号及び第6,172,197号、並びにGriffithsらの米国特許第5,885,793号、第6,521,404号、第6,544,731号、第6,555,313号、第6,582,915号及び第6,593,081号を参照。
【0121】
免疫原性抗原の調製及びモノクローナル抗体の生成は、組換えタンパク質生成等の任意の好適な技術を用いて実施してよい。免疫原性抗原は、精製タンパク質、又は全細胞又は細胞若しくは組織抽出物を含むタンパク質混合物の形態で動物に投与されるか、あるいは抗原は、動物の身体内で、該抗原又はその一部をコードする核酸から新規に形成されてよい。
【0122】
本明細書に記載される本発明の抗体は、ヒト又はヒト化されてもよい。
【0123】
本明細書に記載される本発明の抗体は、合成又は組換え抗体であってよい。
【0124】
本明細書に記載される本発明の抗体は、IgA型、IgD型、IgE型、IgG型、又はIgM型のものであってよい。本明細書に記載される本発明の抗体は、IgG1アイソタイプ、IgG2アイソタイプ、IgG3アイソタイプ、IgG4アイソタイプのものであってよい。
【0125】
本発明の抗体の免疫エフェクターの特性は、当業者には既知の技術により、Fc修飾によって強化又はサイレンシングすることが可能である。例えば、C1q結合、補体依存性細胞傷害(CDC)、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)、貧食、細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体(BCR))の下方制御などのFcエフェクター機能は、これらの活性に関与するFcの残基を修飾することによって調節され得る。薬物動態特性は、抗体の半減期を延長するFcドメインの残基を変異させることによっても強化することができる。例示的なFc修飾は、IgG4 S228P/L234A/L235A、IgG2 M252Y/S254T/T256E(Dall’Acqua et al.,J Biol Chem 281:23514〜24,2006、又はIgG2 V234A/G237A/P238S、V234A/G237A/H268Q、H268A/V309L/A330S/P331、若しくはIgG2上のV234A/G237A/P238S/H268A/V309L/A330S/P331S(国際特許公開第WO2011/066501号)、若しくは米国特許第6,737,056号に記載されるもの(EU番号付けに準ずる番号付け)である。
【0126】
本明細書に記載される一部の実施形態では、ヒトCCL17に特異的に結合する抗体は、Fc領域に置換を有する。
【0127】
本明細書に記載される一部の実施形態では、置換は、IgG2上のV234A、G237A、P238S、H268A、V309L、A330S、若しくはP331S置換、又はIgG4上のS228P、L234A、若しくはL235A置換を含み、残基の番号付けは、EUインデックスに準ずる。
【0128】
更に、本明細書に記載される本発明の抗体は、グリコシル化、異性化、脱グリコシル化などのプロセスによって、又はポリエチレングリコール部分の付加(ペグ化)及び脂質化などの自然界では生じない共有結合修飾によって翻訳後修飾してもよい。こうした修飾はインビボあるいはインビトロで行われ得る。例えば、本発明の抗体はポリエチレングリコールと接合する(ペギレート)することによって薬物動態的なプロファイルを向上させることができる。結合は、当業者に既知の方法によって行うことができる。治療用抗体のPEGとの接合によって、機能を妨害せずに薬力学的動態が強化されることが示されている(Knight et al.,Plateles 15:409〜418,2004、Leong et al.,Cytokine 16:106〜119,2001、Yang et al.,Protein Eng 16:761〜770,2003)。
【0129】
安定性、選択性、交差反応性、親和性、免疫原性、又は他の望ましい生物学的若しくは生物物理学的特性を向上するように修飾され得る、本発明の抗体又はその断片は発明の範囲内である。抗体の安定性は、(1)内在的な安定性に影響を及ぼす個々のドメインのコアパッキング、(2)HCとLCとの対合により影響を受けるタンパク質/タンパク質の界面相互作用、(3)極性及び荷電残基の埋め込み、(4)極性及び荷電残基のためのH結合ネットワーク、並びに(5)他の分子内及び分子間力の間の表面電荷及び極性残基の分布、を含むいくつかの因子によって影響を受ける(Worn and Pluckthun,J Mol Biol 305:989〜1010,2001)。構造を不安定化させる可能性のある残基は、抗体の結晶構造に基づいて、あるいは場合によっては分子モデリングによって特定することが可能であり、また、抗体の安定性に対するこれらの残基の作用は、特定された残基に変異を含む変異体を生成及び評価することにより試験することができる。抗体の安定性を高める方法の1つは、示差走査熱量測定法(DSC)で測定する場合、熱転移中点温度(T
m)を高くすることである。一般に、タンパク質のT
mは、その安定性と相関性を示すが、溶液中でのそのアンフォールディングし易さ及び変性し易さ、並びにそのタンパク質のアンフォールディングし易さに応じた分解プロセスとは負の相関性を示す(Remmele et al.,Pharm Res 15:200〜208,1997)。いくつかの研究は、DSCで熱安定性として測定された配合物の物理的安定性のランク付けと他の方法で測定された物理的安定性との間に相関性があることを発見した(Bedu−Addo et al.,Pharm Res 21:1353〜1361,2004、Gupta and Kaisheva,AAPS PharSci,5E8,2003、Maa and Hsu,Int J Pharm 140:155〜168,1996、Remmele et al.,Pharm Res 15:200〜208,1997、Zhang et al.,J Pharm Sci 93:3076〜3089,2004)。配合物の研究は、FabのTmが対応するmAbの長期物理的安定性と密接な関係があることを示唆している。フレームワーク又はCDR内のいずれかにおけるアミノ酸の相違は、Fabドメインの熱安定性に有意な作用を有し得る(Yasui et al.,FEBS Lett 353:143〜146,1994)。
【0130】
本明細書に記載される本発明のCCL17抗体は、二重特異性抗体へと操作することが可能であり、これらもまた本発明の範囲に包含される。本発明の抗体のVL領域及び/又はVH領域は、公開された方法を用いて、TandAb(登録商標)などの構造として一本鎖二重特異性抗体(国際特許公開第WO1999/57150号、米国特許公開第US2011/0206672号)、又は米国特許第5,869,620号、国際特許公開第WO1995/15388号、国際特許公開第WO1997/14719号、若しくは国際特許公開第WO2011/036460号に開示されるものなどの構造として二重特異性scFVへと操作することが可能である。
【0131】
本明細書に記載される本発明の抗体のVL領域及び/又はVH領域は、二重特異性全長抗体へと操作することも可能であり、各抗体のアームは特徴的な抗原又はエピトープに結合する。そのような二重特異性抗体は典型的には、米国特許第7,695,936号、国際特許公開第WO2004/111233号、米国特許公開第US2010/0015133号、米国特許公開第US2007/0287170号、国際特許公開第WO2008/119353号、米国特許公開第US2009/0182127号、米国特許公開第US2010/0286374号、米国特許公開第US2011/0123532号、国際特許公開第WO2011/131746号、国際特許公開第WO2011/143545号、又は米国特許公開第US2012/0149876号に記載されるものなどの技術を用いて、2つの抗体の重鎖間のCH3相互作用を調節して二重特異性抗体を形成することにより作製される。本発明の抗体のVL領域及び/又はVH領域が組み込まれる追加の二重特異性構造は、例えば、デュアル可変ドメイン免疫グロブリン(国際特許公開第WO2009/134776号)、又は2つの抗体アームを異なる特異性と接続する、ロイシンジッパー又はコラーゲン二量体化ドメインのような様々な二量体化ドメインを含む構造(国際特許公開第WO2012/022811号、米国特許第5,932,448号、米国特許第6,833,441号)である。
【0132】
本発明の別の実施形態は、本発明の抗体の重鎖可変領域又は抗体軽鎖可変領域のいずれかをコードする単離されたポリヌクレオチドである。特定の代表的なポリヌクレオチドを本明細書に開示するが、遺伝コードの縮重又は所与の発現系におけるコドンの好ましさを考慮すると、本発明の抗体をコードする他のポリヌクレオチドも本発明の範囲内に含まれる。本発明の抗体のVH若しくはVL又はそれらの断片をコードするポリヌクレオチド配列は、意図される宿主細胞におけるヌクレオチド配列の発現を可能にする、プロモーター及びエンハンサーなどの1つ又は2つ以上の制御因子に操作可能に連結され得る。ポリヌクレオチドはcDNAであってよい。
【0133】
本発明の別の実施形態は、本発明のポリヌクレオチドを含むベクターである。そのようなベクターは、プラスミドベクター、ウイルスベクター、バキュロウイルス発現ベクター、トランスポゾンに基づいたベクター、又は任意の手段によって所与の生物又は遺伝子的背景に本発明のポリヌクレオチドを導入するのに適した任意の他のベクターであってよい。例えば、任意に定常領域に連結される本発明の抗体の軽鎖及び重鎖可変領域をコードするポリヌクレオチドは、発現ベクターに挿入される。軽鎖及び重鎖は、同じ又は異なる発現ベクターにクローン化され得る。免疫グロブリン鎖をコードするDNAセグメントは、免疫グロブリンポリペプチドの発現を確実にする発現ベクター内の制御配列に操作可能に連結される。そのような制御配列は、シグナル配列、プロモーター(例えば、天然に会合する又は異種プロモーター)、エンハンサー因子、及び転写終結配列を含み、抗体を発現するように選択された宿主細胞と適合性があるように選択される。ベクターが適切な宿主内に組み込まれると、宿主は、組み込まれたポリヌクレオチドによってコードされたタンパク質の高レベル発現に適した条件下で維持される。
【0134】
好適な発現ベクターは典型的には、エピソーム又は宿主染色体DNAの不可欠な部分のいずれかとして宿主生物において複製可能である。通常、発現ベクターは、所望のDNA配列で形質転換されたこれらの細胞の検出を可能にするように、アンピシリン耐性、ヒグロマイシン耐性、テトラサイクリン耐性、カナマイシン耐性、又はネオマイシン耐性などの選択マーカーを含む。
【0135】
好適なプロモーター及びエンハンサー因子は当該技術分野において既知である。細菌細胞における発現について、例示的なプロモーターとしては、lacl、lacZ、T3、T7、gpt、lambda P、及びtrcが挙げられる。真核細胞における発現について、例示的なプロモーターとしては、軽鎖及び/又は重鎖免疫グロブリン遺伝子プロモーター及びエンハンサー因子、サイトメガロウイルス即時初期プロモーター、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼプロモーター、初期及び後期SV40プロモーター、レトロウイルスからの長鎖末端反復配列に存在するプロモーター、マウスメタロチオネイン−Iプロモーター、及び様々な当該技術分野に既知の組織特異的プロモーターが挙げられる。酵母細胞における発現について、例示的なプロモーターとしては、ADH1プロモーター、PGK1プロモーター、ENOプロモーター、PYK1プロモーター等の構成的プロモーター、又はGAL1プロモーター、GAL10プロモーター、ADH2プロモーター、PH05プロモーター、CUP1プロモーター、GAL7プロモーター、MET25プロモーター、MET3プロモーター、CYC1プロモーター、HIS3プロモーター、ADH1プロモーター、PGKプロモーター、GAPDHプロモーター、ADC1プロモーター、TRP1プロモーター、URA3プロモーター、LEU2プロモーター、ENOプロモーター、TP1プロモーター、及びAOX1などの制御可能プロモーター(例えばピキアにおいて使用するため)が挙げられる。適切なベクター及びプロモーターの選択は、十分に当業者のレベル内である。
【0136】
数多くの好適なベクター及びプロモーターが当業者に既知であり、多くは、対象組換え構築物を生成するために市販されている。例として以下のベクターを提供する。細菌性:pBs、phagescript、PsiX174、pBluescript SK、pBs KS、pNH8a、pNH16a、pNH18a、pNH46a(Stratagene,La Jolla,Calif.,USA);pTrc99A、pKK223−3、pKK233−3、pDR540、及びpRIT5(Pharmacia,Uppsala,Sweden)。真核:pWLneo、pSV2cat、pOG44、PXR1、pSG(Stratagene) pSVK3、pBPV、pMSG、及びpSVL(Pharmacia)。
【0137】
本発明の別の実施形態は、本発明のベクターを含む宿主細胞である。用語「宿主細胞」は、ベクターが導入される細胞を指す。用語「宿主細胞」は、特定の対象細胞だけでなく、そのような細胞の後代も指すように意図される。変異又は環境の影響のどちらかにより、特定の修飾が後の世代に起こる可能性があるため、そのような後代は親細胞と同一ではない可能性があるが、本明細書で使用される用語「宿主細胞」の範囲内に依然として含まれる。そのような宿主細胞は、真核細胞、原核細胞、植物細胞、又は古細菌(archeal)細胞であってよい。
【0138】
原核宿主細胞の例は、大腸菌、バチルス・ズブチルスなどの桿菌、及びサルモネラ、セラチア、及び様々なシュードモナス種などの他の腸内細菌科である。酵母などの他の微生物も発現に有用である。好適な酵母宿主細胞の例は、サッカロミセス(例えば、S.セレビジアエ)及びピキアである。例示的な真核細胞は、哺乳動物、昆虫、鳥類、又は他の動物起源のものでよい。哺乳動物の真核細胞としては、ハイブリドーマ細胞株又は骨髄腫細胞株などの不死化細胞株、例えばSP2/0(ATCC(American Type Culture Collection)、Manassa、VA、CRL−1581)、NS0(ECACC(European Collection of Cell Cultures)、Salisbury、Wiltshire、UK、ECACC番号85110503)、FO(ATCC CRL−1646)及びAg653(ATCC CRL−1580)マウス細胞株が挙げられる。ヒト骨髄腫細胞株の一例は、U266(ATTC CRL−TIB−196)である。他の有用な細胞系としては、CHO−K1SV(Lonza Biologics(Walkersville,MD))、CHO−K1(ATCC CRL−61)、又はDG44などの、チャイニーズハムスターの卵巣(CHO)細胞に由来するものが挙げられる。
【0139】
本発明の別の実施形態は、本発明の宿主細胞を培養する工程と、宿主細胞によって生成された抗体を回収する工程とを含む、本発明の抗体の生成方法である。抗体を製造して精製する方法は当該技術分野において周知である。合成されたら(化学的又は組換えのいずれか)、全抗体、それらの二量体、個々の軽鎖及び重鎖、又はVH又はVLなどの他の抗体断片は、硫酸アンモニウム沈殿、親和性カラム、カラムクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)精製、ゲル電気泳動など(一般に、Scopes,Protein Purification(Springer−Verlag,N.Y.,(1982)を参照)を含む、当該技術分野の標準的な手順により精製することができる。対象抗体は、実質的に純粋、例えば、細胞残屑、対象抗体等以外の巨大分子などの汚染物を含まない、例えば、少なくとも約80%〜85%純粋、少なくとも約85%〜90%純粋、少なくとも約90%〜95%純粋、又は少なくとも約98%〜99%以上純粋であり得る。
【0140】
本発明の特定のVH配列又はVL配列をコードするポリヌクレオチドは、標準的な分子生物学法を用いてベクター内に組み込まれる。宿主細胞の形質転換、培養、抗体発現、及び精製は、周知の方法を用いて行われる。
【0141】
治療方法
ヒトCCL17に特異的に結合する抗体は、CCL17媒介状態のスペクトルを治療又は阻止するのに好適であり得る。
【0142】
本明細書で使用される、用語「CCL17媒介状態」は、直接又は間接によらず、CCL17が疾患若しくは状態の因果関係、発症、進行、持続又は病理を含む、疾患及び病状において役割を果たす、全ての疾患及び病状を包含する。
【0143】
本明細書で使用される、用語「CCL17媒介炎症性状態」とは、少なくとも部分的にCCL17生物活性から結果として生じる、炎症性状態を指す。CCL17媒介炎症性状態の例は、喘息及びアレルギーである。
【0144】
本発明の方法を用いて任意の分類に属する動物患者を治療することができる。このような動物の例としては、ヒト、齧歯類、イヌ、ネコ、及び家畜などの哺乳動物が挙げられる。例えば、本発明の抗体は、喘息及び呼吸性アレルギー性疾患(アレルギー性喘息、アレルギー性鼻炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、特発性肺線維症(IPF)、過敏性肺疾患など)、アレルギー性疾患(全身性アナフィラキシー若しくは過敏性応答、薬物アレルギー、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)、虫刺されアレルギー、及び食物アレルギーなど)、炎症性腸疾患(クローン病、潰瘍性大腸炎、回腸炎、及び腸炎など)、膣炎、乾癬、及び炎症性皮膚疾患(皮膚炎、湿疹、アトピー性皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、蕁麻疹、及び掻痒など)、血管炎、脊椎関節症、強皮症、自己免疫疾患(関節炎(リウマチ性及び乾癬性を含む)、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス、I型糖尿病、糸球体腎炎など)、移植片拒絶(同種移植片拒絶及び移植片対宿主病を含む)、及び望ましくない炎症性応答が阻害される他の疾患(アテローム性動脈硬化症、筋炎、T細胞媒介神経変性疾患、多発性硬化症、脳炎、髄膜炎、肝炎、腎炎、敗血症、サルコイドーシス、アレルギー性結膜炎、耳炎、キャッスルマン病、副鼻腔炎、LPS誘導内毒素性ショック、ベーチェット症候群、及び痛風に有用である。
【0145】
本明細書に記載される本発明の抗体、及びはまた、そのような処置のための薬剤の調製においても有用であり、薬剤は、本明細書に定められる投薬量で投与するために調製される。
【0146】
本発明の方法及び使用は、CCL17の発現若しくは生物活性に関連する、又はCCL17が生物学的役割を果たす任意の疾患若しくは状態を有する、又はそれを発症するリスクにある動物及び患者に使用することが意図され得る。
【0147】
いかなる理論に拘束されるものではないが、本発明の抗体は、Th2細胞の動員を直接阻害し、したがって複数のTh2サイトカインを同時に阻害することにより、様々な炎症性疾患においてそれらの有効な作用を提供し得る。本発明の抗体は、CCL17のみを選択的に阻止することにより、抗CCR4抗体と比較して改善された安全なプロファイルを提供することができる。抗体は、CCR4を発現する血小板と相互作用しない。加えて、抗体は、CCR4に対するCCL22の有益な先天性免疫作用を阻止しない(Matsukawa et al.,I.Immunol 164:5382〜8,2000)。
【0148】
本明細書で使用される、「炎症性状態」とは、部分的には、サイトカイン、ケモカイン、又は炎症性細胞(例えば、好中球、単球、リンパ球、マクロファージ、マスト細胞、樹状細胞、好中球)の活性によって媒介される、有害な刺激(例えば、病原体、損傷した細胞、身体的傷害、若しくは刺激物質)に対する急性又は慢性の局部的応答又は全身性応答を指し、大抵の場合、疼痛、潮紅、膨張、及び組織機能の障害を特徴とする。
【0149】
CCL17媒介炎症状態の一例は炎症性肺疾患である。炎症性肺状態の例としては、感染によって誘導される肺状態(ウイルス、細菌、真菌、寄生虫、又はプリオン感染に関連するものを含む)、アレルゲンによって誘導される肺状態、石綿症、珪粉症、又はベリリウム中毒症などの汚染物質によって誘導される肺状態、胃吸引誘導肺状態、免疫制御障害、遺伝的素因による炎症性状態(嚢胞性線維症など)、及び身体外傷によって誘導される肺状態(人工呼吸器傷害など)が挙げられる。これらの炎症性状態には更に、喘息、肺気腫、気管支炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、サルコイドーシス、ヒスチオサイトーシス、リンパ管筋腫症、急性肺傷害、急性呼吸窮迫症候群、慢性肺疾患、気管支肺異形成症、市中肺炎、院内肺炎、人工呼吸器関連肺炎、敗血症、ウイルス性肺炎、インフルエンザ感染、パラインフルエンザ感染、ロタウイルス感染、ヒト・メタニューモウイルス感染、呼吸器合胞体ウイルス感染、及びアスペルギルス感染又は他の真菌感染も含まれる。感染関連炎症性疾患の例としては、重症肺炎、肺嚢胞性線維症、気管支炎、気道の増悪、及び急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を含むウイルス又は細菌性肺炎が挙げられる。そのような感染関連状態は、一次ウイルス感染及び二次細菌感染などの複数の感染を伴う場合がある。
【0150】
喘息は、気道過剰応答(「AHR」)、気管支収縮、喘鳴、好酸球性炎症又は好中球性炎症、粘液分泌過多、上皮下線維症、及び高いIgE値を特徴とする肺の炎症性疾患である。喘息の患者は、最も一般的には気道の微生物感染(例えばライノウイルス、インフルエンザウイルス、インフルエンザ菌など)による症状の悪化である「増悪」を経験する。喘息の発作は、環境因子(例えば、回虫、昆虫、動物(例えばネコ、イヌ、ウサギ、マウス、ラット、ハムスター、モルモット及び鳥)、真菌、空気汚染物質(例えば煙草の煙)、刺激性ガス、煙霧、蒸気、エアロゾル、化学物質、花粉、運動、又は冷気によって誘発される可能性がある。喘息は別として、肺に影響を及ぼすいくつかの慢性炎症性疾患は、気道への好中球湿潤、例えば、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、細菌性肺炎、及び嚢胞性線維症を特徴とし(Linden et al.,Eur Respir J 15:973〜7,2000、Rahman et al.,Clin Immunol 115:268〜76,2005)、COPD、アレルギー性鼻炎、及び嚢胞性線維症などの疾患は、気道の過剰応答を特徴とする(Fahy and O’Byrne Am J Respir Crit Care Med 163:822〜3,2001)。
【0151】
アレルギー性喘息において、高レベルのアレルゲン特異的IgEの存在は、一般に吸い込まれた環境アレルゲンに対する異常Th2細胞免疫応答の現れである。アレルゲンは、入来する外来抗原を絶えず確認する樹状細胞(DC)によってT細胞に提示される。DCにより適切に活性化されるとき、病的気道に存在するアレルゲン特異的リンパ球は、白血球の血管外浸潤、杯細胞過形成、及び気管支過敏性を更に制御するTh2サイトカインのインターロイキン(IL)−4、IL−5、及びIL−13を生成する。DCにより生成されたCCL17は、CCR4の誘発を通して、Th2細胞の選択的移動を誘導するが、Th1細胞は誘導しない。喘息のマウスモデルでは、抗CCL17抗体による治療が気管支肺胞洗浄(BAL)流体中のCD4+T細胞及び好酸球の数、Th2サイトカインの生成、及びアレルゲン負荷後の気道の過剰応答を減少させ、CCL17の中和がヒトにおけるアレルギー性炎症を阻害するための実現可能な戦略であることを示唆する。
【0152】
喘息及び気道の炎症に一般的に用いられる動物モデルとしては、オボアルブミン負荷モデル、メタコリン感作モデル、及びアスペルギルス・フミガーツスによる感作が挙げられる(Hessel et al.,Eur J Pharmacol 293:401〜12,1995)。培養したヒト気管支上皮細胞、気管支線維芽細胞、又は気道平滑筋細胞からのサイトカイン及びケモカインの生成の阻害をインビトロモデルとして用いることもできる。本発明の抗体をこれらのモデルのいずれかに投与することを用いて、喘息、気道の炎症、COPDなどの症状を改善して経過に変化を与えるそれらの有効性を評価することができる。
【0153】
アトピー性皮膚炎は、CCL17媒介炎症性状態の一例である。
【0154】
本発明の一態様は、CCL17媒介疾患を治療する方法であり、CCL17媒介疾患を治療するのに十分な時間の間、本発明の抗体を、それを必要とする対象に投与する工程を含む。
【0155】
本明細書に記載される一部の実施形態では、CCL17媒介疾患は、炎症性疾患である。
【0156】
本明細書に記載される一部の実施形態では、炎症性疾患は、喘息、潰瘍性大腸炎(UC)、アトピー性皮膚炎(AD)、又は特発性肺線維症(IPF)である。
【0157】
本発明の一実施形態は、喘息を治療する方法であり、喘息を治療するのに十分な時間の間、本明細書に記載される本発明の抗体を対象に投与する工程を含む。
【0158】
本発明の一実施形態は、潰瘍性大腸炎を治療する方法であり、潰瘍性大腸炎を治療するのに十分な時間の間、本明細書に記載される本発明の抗体を対象に投与する工程を含む。
【0159】
本発明の一実施形態は、アトピー性皮膚炎を治療する方法であり、アトピー性皮膚炎を治療するのに十分な時間の間、本明細書に記載される本発明の抗体を対象に投与する工程を含む。
【0160】
本発明の一実施形態は、特発性肺線維症を治療する方法であり、特発性肺線維症を治療するのに十分な時間の間、本明細書に記載される本発明の抗体を対象に投与する工程を含む。
【0161】
投与/医薬組成物
本発明は、本発明の本発明のCCL17に特異的に結合する抗体及び医薬的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。治療使用としての本発明のCCL17に特異的に結合する抗体は、医薬的に許容される担体内の活性成分として、有効量のドメイン、分子、又は抗体を含有する医薬組成物として調製することができる。用語「担体」は、活性化合物と共に投与される希釈剤、補助剤、賦形剤、又はビヒクルを指す。そのようなビヒクルは、落花生油、大豆油、鉱物油、ゴマ油等の、石油、動物、植物、又は合成物起源のものを含む、水及び油等の液体であってよい。例えば、0.4%生理食塩水及び0.3%グリシンを用いることができる。これらの溶液は滅菌され、一般には粒子状物質を含まないものである。これらは、従来周知の滅菌技術(例えば、濾過)によって滅菌することができる。この組成物は、生理学的条件に近づけるために必要とされる医薬的に許容される補助物質、例えばpH調整剤及び緩衝剤、安定化剤、増粘剤、潤滑剤及び着色剤等を含むことができる。そのような医薬製剤中の本明細書に記載される本発明の分子又は抗体の濃度は幅広く変化してよく、即ち約0.5重量%未満、通常は約1重量%又は少なくとも約1重量%か、最大で15又は20重量%までであってよく、また、選択される特定の投与方法に従って、主として必要とされる用量、液体の体積、粘度等に基づいて選択される。好適なビヒクル及び製剤(他のヒトタンパク質、例えばヒト血清アルブミンを含む)は、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,21
st Edition,Troy,D.B.ed.,Lipincott Williams and Wilkins,Philadelphia,PA 2006,Part 5,Pharmaceutical Manufacturing pp 691〜1092に記載され、特にpp.958〜989を参照されたい。
【0162】
本明細書に記載される本発明のCCL17に特異的に結合する抗体の治療使用としての投与方法は、非経口投与、例えば、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、又は皮下、肺;経粘膜(経口、鼻腔内、膣内、直腸);錠剤、カプセル、溶液、粉末、ゲル、粒子での製剤の使用、シリンジ、埋込装置、浸透圧ポンプ、カートリッジ、マイクロポンプに含有される、又は当該技術分野において周知の、当業者が理解する他の手段など、薬剤を宿主に送達する任意の好適な経路であってよい。部位特異的投与は、例えば、関節内、気管支内、腹内、関節包内、軟骨内、洞内、腔内、小脳内、脳室内、結腸内、頚管内、胃内、肝内、心筋内、骨内、骨盤内、心膜内、腹腔内、胸膜内、前立腺内、肺内、直腸内、腎臓内、網膜内、脊髄内、滑液嚢内、胸郭内、子宮内、血管内、膀胱内、病巣内、膣内、直腸、口腔内、舌下、鼻腔内、又は経皮送達によって達成され得る。
【0163】
したがって、筋肉内注射用の本明細書に記載される本発明の医薬組成物は、1mLの滅菌緩衝水、及び約1ng〜約100mg/kg、例えば約50ng〜約30mg/kg、又はより好ましくは約5mg〜約25mg/kgの本発明のCCL17に特異的に結合する抗体を含むように調製することができる。
【0164】
CCL17媒介状態を有する患者に与えられる用量は、症状を緩和する、又はCCL17媒介状態を治療するのに十分であり(「治療有効量」)、時折0.1〜10mg/kg体重、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8,9、又は10mg/kgであるが、更に高くてもよく、例えば、15、20、30、40、50、60、70、80、90、又は100mg/kgである。例えば、50、100、200、500、又は1000mgの固定単位用量が与えられるか、又は用量は、例えば、400、300、250、200、若しくは10mg/m
2の患者の表面積に基づいてもよい。通常、1〜8の用量(例えば、1、2、3、4、5、6、7、又は8)が投与されるが、10、12、20以上の用量を与えることが可。能である本明細書に記載される本発明のCCL17に特異的に結合する抗体の投与は、1日、2日、3日、4日、5日、6日、1週間、2週間、3週間、1ヶ月、5週間、6週間、7週間、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月以上後に繰り返すことができる。長期にわたる投与の場合、治療過程を繰り返すことも可能である。繰り返し投与は、同一用量であるか、又は異なる用量であってよい。
【0165】
喘息などの炎症性疾患の治療に有効である本明細書に記載される本発明のCCL17抗体の投薬量は、当該技術分野において周知の又は本明細書に記載される関連する動物モデルにCCL17抗体を投与することによって決定することができる。
【0166】
所望によりインビトロアッセイを用いて最適な用量範囲を特定することができる。特定の有効用量の選択は、当業者であれば幾つかの因子の考慮に基づいて(例えば臨床試験によって)決定することができる。こうした要因には、治療又は予防しようとする疾患、疾患症状、患者の体重、患者の免疫状態、及び当業者には既知の他の要因が含まれる。製剤に用いられる正確な用量は、投与経路、及び疾患の重篤度にも依存し、医師の判断及び各患者の状況に基づいて決定されなければならない。有効量は、インビトロ又は動物モデル試験系から導出される用量反応曲線から推定することができる。本発明の抗体の有効性及び有効量について、本明細書に記載したモデルのいずれかを用いて試験することができる。
【0167】
例えば、静脈内注射用の本明細書に記載される本発明のCCL17に特異的に結合する抗体を含む医薬組成物は、80kgの患者に投与するために、約200mlの減菌リンガー液、及び約8mg〜約2400mg、約400mg〜約1600mg、又は約400mg〜約800mgの本明細書のCCL17に特異的に結合する抗体を含むように作製され得る。非経口的に投与可能な組成物を調製する方法は周知のものであり、例えば、「Remington’s Pharmaceutical Science」(15th ed.,Mack Publishing Company,Easton,PA)に、より詳細に記載されている。
【0168】
本明細書に記載される本発明のCCL17に特異的に結合する抗体は、保存のために凍結乾燥され、使用前に適切な担体中で再構成することができる。これまでに、この手法は一般的なタンパク製剤に有効であることが示されており、当該技術分野で公知の凍結乾燥法及び溶解法を用いることができる。
【0169】
本明細書に記載される本発明のCCL17に特異的に結合する抗体は、第2の治療剤と組み合わせて、同時に、順次、又は別個に投与することができる。
【0170】
次に、本発明を以下の具体的かつ非限定的な実施例を参照して説明する。
【実施例】
【0171】
実施例1.CCL17中和抗体の生成
ヒトCCL17結合Fabを、Shi et al.,J.Mol.Biol.397:385〜396,2010、国際特許公開第WO2009/085462号、米国特許公開第US2010/0021477号、米国特許公開第US2012/0108795号に記載される新規pIXファージ提示ライブラリから選択した。簡潔に言えば、ライブラリは、ヒト足場を多様化することによって生成されたものであり、生殖系列VH遺伝子であるIGHV1−69
*01、IGHV3−23
*01、及びIGHV5−51
*01を、H3ループを介してヒトIGHJ−4ミニ遺伝子で組換え、そしてヒト生殖系列VLカッパ遺伝子であるO12(IGKV1−39
*01)、L6(IGKV3−11
*01)、A27(IGKV3−20
*01)及びB3(IGKV4−1
*01)をIGKJ−1ミニ遺伝子で組換えて、完全なVH及びVLドメインが構築された。多様化に際し、重鎖及び軽鎖可変領域内の、タンパク質抗原及びペプチド抗原と高頻度に接していると確認された位置に相当するH1、H2、L1、L2及びL3ループ周辺の位置を選択した。選択した位置での配列多様性は、それぞれのIGHV又はIGLV遺伝子のIGHV又はIGLV生殖系列遺伝子ファミリーそれぞれの位置で見られる残基に制限した。長さがアミノ酸7〜14個分の単鎖〜中鎖型の合成ループを用いることで、H3ループにおいて多様性が発生した。H3でのアミノ酸分布は、ヒト抗体において観察されるアミノ酸の変動を模倣するよう設計された。ライブラリ設計の詳細は、Shi et al.、J.Mol.Biol.397、385〜96、2010年に記載されている。ライブラリを生成するために利用した足場は、これらのヒトVH及びVL生殖系列遺伝子起源に準じて命名した。スクリーニングにあたって、3つの重鎖ライブラリを、4個の生殖系列軽鎖又は生殖系列軽鎖ライブラリと組み合わせることで24個の固有VH:VLの組み合わせを生成した。ヒトCCL17に対するファージパニンク実験では、24個全てのVH:VLライブラリの組み合わせを利用した。
【0172】
配列番号1のヒトCCL17を用いてライブラリをパニングした。簡潔に言えば、標準的な方法を用いてヒトCCL17をビオチン化し、ビオチン化したヒトCCL17(Bt−huCCL17)をストレプトアビジンコーティングした磁気ビーズ上に捕捉し(Dynal,M280)、Fab−pIXファージライブラリをビーズに付加した。1回目及び2回目には100nM、3回目及び4回目)には10mMのBt−huCCL17濃度を用いた。FabのヒトCCL17への結合のスクリーニングは、ELISAによって行われた。パニングにあたって、bt−huCCL17コーティングされた磁気ビーズを洗浄し、PBST−M(0.05%のTween−20及び3%の脱脂粉乳を含むBPS)で遮断した。ライブラリから遮断したファージをビーズに付加し、1回目は室温で回転させた。ビーズを洗浄し、その後、対数増殖期の大腸菌(MC1061F’)細胞の培養物中でインキュベートし、感染した大腸菌を37℃で一晩LB寒天プレート上で成長させた。翌朝、培養物をプレートからプレート当たり2mLの2xYT(20%グリセロール)にこすり取り、50μLの細菌懸濁液を50mLの2xYT(Carb)に添加し、最大2時間、振盪しながら37℃で成長させた。ヘルパーファージを対数増殖期中期の培養物に添加し、培養物を37℃で30分間インキュベートした。カナマイシン及びIPTGを各培養物に添加して、それぞれ、35μg/mL及び1mMの最終濃度にし、振盪しながら30℃で一晩成長させた。PEG/NaClを用いて細菌培地から増幅したファージを沈殿させ、1mLのPBSに再懸濁した。次のパニング回に200μLを使用した。
【0173】
3回パニングした後、ファージミドDNAを感染したMC1061F’細胞から単離し、制限酵素で消化させてpIXをコードする配列を除去し、線状にしたプラスミドDNAを切除し、アガロースゲルから精製した。次に、このDNAをT4 DNAリガーゼで自己連結した。連結したDNAをMC1061F’細胞内に電気穿孔し、LB(Carb/グルコース)寒天プレート上で平板培養した。この電気穿孔からのコロニーをELISAスクリーニング及びFab発現の評価のために選んだ。Fabは、重鎖のC末端にインフレームHisタグを含む。標準的な方法を用いてC末端Hisタグを介して初期のスクリーニングから24個のFabを部分的に精製し、更に特徴付けした。
【0174】
ELISAアッセイにおいて、FabはヒトCCL17(配列番号1)、cyno CCL17(配列番号2)、及びcyno CCL22(配列番号3)へのそれらの結合について特徴付けされた。簡潔に言えば、Maxisorp 96ウェルプレートを1μg/mlヤギ抗ヒトカッパ(Southern Biotech)でコーティングした。半精製したFabを各プレートに添加した。ビオチン化したhuCCL17、cCCL17、又はcCCL22を各Fab捕捉したウェルに添加した。ストレプトアビジン:HRPを用いて捕捉したFabに結合したタンパク質を検出した。ヒト及びcyno CCL17の両方に結合したが、cyno CCL22に結合しなかった5つのFab(F21、F24、F34、F43、及びF44)を親和性成熟用に選択した。
【0175】
実施例2.抗CCL17抗体の親和性成熟
これらの初期特徴付けプロファイルに基づき5つのFabを親和性成熟用に選択した。Shiら(Shi et al.,J Mol Biol 397:385〜396,2010)に記載されるインライン成熟技術を用いて軽鎖を多様化し、重鎖を不変に保つことによりFabを親和性成熟させた。Fabの重鎖はVH3−23又はVH5−51のいずれかであった。生成されたF24親和性成熟ライブラリはCCL17結合剤を改善した。
【0176】
簡潔に言えば、B3軽鎖ライブラリを用いてF24を親和性成熟させた。B3ライブラリの多様化スキームを表2に示す。位置はKabat番号付けで表示される。
【0177】
【表2】
【0178】
FabのVH領域をLCライブラリファージミド内にクローン化し、各FabのLCの完全な再多様化を生じさせる。NcoI及びApaIを用いてDNAミニプレップの制限消化によりVH領域を単離した。VH領域はゲル単離され、類似する消化されたLCライブラリDNAに連結された。連結を精製し、MC1061F’細胞内に形質転換した。対数増殖期成長(OD
600nm≒0.6)が達成されるまで、細胞を2xYT(Carb)中で成長させた。ヘルパーファージを添加し、培養物を37℃で30分間インキュベートした。カナマイシン及びIPTGを各培養物に添加して、それぞれ、35ug/mL及び1mMの最終濃度にし、振盪しながら30℃で一晩成長させた。PEG/NaClを用いて細菌培地からファージを沈殿させ、PBSに再懸濁した。
【0179】
親和性成熟パニングにあたって、Bt−CCL17を50μlのSAコーティングした磁気ビーズ上に捕捉した。抗原の濃度は、1回目は100nM、2回目は10nM、そして3回目は10nMであった。ビーズを、PBSTで6回洗浄し、PBSで1回洗浄し、続いて上述の大腸菌に感染させた。Fab発現プラスミドの単離及びFabの発現は上述のように行われた。
【0180】
huCCL17への結合について上述されるように、huCCL17(配列番号1)、cCCL17(配列番号2)及びcCCL22(配列版g能3)への結合について、親和性成熟したFabをELISAアッセイにおいてスクリーニングした。特定したクローンを配列決定し、完全IgG1抗体に変換し、MSD−SEAを用いてhuCCL17、cCCL17、及びcCCL22へのそれらの結合を確認した。
【0181】
親抗体及び親和性成熟した抗体のCDR配列を、重鎖及び軽鎖CDRについてそれぞれ表3及び表4に示す。
【0182】
【表3】
【0183】
【表4】
【0184】
実施例3.親和性成熟した抗CCL17抗体のヒト及びcyno CCL17への結合
溶液平衡親和性(SEA)を用いて抗体を、ヒトCCL17及びcyno CCL17へのそれらの結合について評価した。これらの実験の手順は、Haenelら(Haenel et al.,Anal Biochem 339:182〜184,2005)が用いたものに類似した。抗原−抗体複合体を調製するために、ヒトCCL17又はcyno CCL17を、96ディープウェルポリプロピレンプレートで2,000,000pMの濃度から開始する、0.05%のTween−20、TBST(Thermo Scientific)を含有するトリス系生理食塩水緩衝液に1:6の割合で系列希釈した。40pM又は200pMの等体積の抗hCCL17 mAbを各ケモカイン希釈物に添加して、1μMの最終濃度から開始するケモカインの系列希釈物と一定濃度(20pM又は100pM)の抗CCL17抗体とを含む混合物を得た。混合物を2組調製し、平衡に達するように4℃で48時間インキュベートした。SECTOR Imager 6000(Meso Scale Discovery)機器を用いて遊離抗体を検出した。得られた結合曲線を、データの非線形最小二乗法の回帰分析を行うために1:1結合モデルを使用するGraphPad Prismソフトウェア(v 5.01)を用いて適合し、解離平衡定数(K
D)を得た。表5は、ヒト及びcyno CCL17に対する抗体の親和性を示す。ヒトCCL17の親和性は、約2pM〜約700pMの範囲であり、cyno CCL17の親和性は、約200pM〜約9500pMの範囲であった。生成された抗体は、cyno CCL17への結合と比較して、ヒトCCL17に約2−〜約150倍高い親和性で結合した。
【0185】
【表5】
*決定されず
【0186】
実施例4.CCL17抗体の最適化
C17B234及びC17B240の抗CCL17抗体は、LCDR2の最初に潜在的なN連結グリコシル化部位(「NAS」)を含んだ。C17B234の残基位置50(Kabat番号付け)のアスパラギン残基(N)は、6つの異なるアミノ酸(A、D、G、S、T、及びI)に変異した。
【0187】
潜在的なアスパラギン酸異性化モチーフ「DS」は、親C17F24のHCDR3、及びその全ての親和性成熟変異体において特定された。この位置での置換の作用を試験するために、mAb C17B234の重鎖において、位置100c(Kabat番号付け)のセリン残基をA、T、若しくはSに変異させるか、又は位置100bのDをEに変異させた。得られた重鎖をmAb C17B258の軽鎖と対合させた。
【0188】
抗体はIgG1として発現され、それらのヒト及びcyno CCL17への親和性が測定された。表6及び表7は、最適化した抗体の重鎖及び軽鎖のCDR配列を示す。表8は、ヒト及びcyno CCL17の抗体の親和性を示す。軽鎖におけるN50の変異誘発は、2〜100倍の改善された結合をもたらした。
【0189】
【表6】
【0190】
【表7】
【0191】
【表8】
【0192】
C17B236のmAbにおける位置100a(Kabat番号付け)でのHCDR3のトリプトファン残基は、望ましくない翻訳後酸化の推定部位として特定された。この残基は、mAbがこれであるC17F319のC17B236のFab親において17個の他のアミノ酸(C及びMを除く全て)に変異した。Kunkel変異誘発は、このパネルを生成するために「NNK」又は定義されたコドンオリゴヌクレオチドを用いて行われた。これらのFabは次に、bu−ヒト及びbt−cyno CCL17両方への結合についてランキングELISAを用いてスクリーニングされた。5つの変異体(W→R、Y、F、T、I)は、Fab結合ELISAにおいてある程度の結合を示した(表5)。発現及びMSD−SEAの最良の3つは、mAb(M17B288、C17B289、C17B290)に変換された(表6)。表示される大半の変異体は、ヒト及びcyno CCL17に対する親和性を減少させた。
【0193】
抗体のVH及びVL配列を表9に示す。
【0194】
【表9】
【0195】
実施例6.定常領域の選択
選択抗体は、標準的な方法を用いて、以下の置換:IgG4 S228P/L234A/L235A又はIgG2 V234A/G237A/P238S/H268A/V309L/A330S/P331SによりIgG2又はIgG4としてクローン化された。表10は、得られた抗体を示す。
【0196】
【表10】
【0197】
特定の抗体の重鎖及び軽鎖を下に示す。
CB302 HC(配列番号67)
EVQLVQSGAEVKKPGESLKISCKGSGYSFTSYWIGWVRQMPGKGLEWMGIIDPSDSDTRYSPSFQGQVTISADKSISTAYLQWSSLKASDTAMYYCARVGPADVWDAFDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVTSSNFGTQTYTCNVDHKPSNTKVDKTVERKCCVECPPCPAPPAAASSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSAEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTFRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKTKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPMLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
【0198】
CB302 LC(配列番号68)
DIVMTQSPDSLAVSLGERATINCKSSQSVLLSFDNINKLAWYQQKPGQPPKLLIYDASTRESGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYYCQQFYSVPSTFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
【0199】
CB301 HC(配列番号69)
EVQLVQSGAEVKKPGESLKISCKGSGYSFTSYWIGWVRQMPGKGLEWMGIIDPSDSDTRYSPSFQGQVTISADKSISTAYLQWSSLKASDTAMYYCARVGPADVWDTFDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVTSSNFGTQTYTCNVDHKPSNTKVDKTVERKCCVECPPCPAPPAAASSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSAEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTFRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKTKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPMLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
【0200】
CB301 LC(配列番号70)
DIVMTQSPDSLAVSLGERATINCKSSQSVLLSFDNINKLAWYQQKPGQPPKLLIYDASTRESGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYYCQQFYSVPSTFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
【0201】
実施例7.抗CCL17抗体の特徴付け
選択抗CCL17抗体は、それらのCCL17生物活性の阻害能力を評価するために、カルシウム流入、β−アレスチンレポーターアッセイ、及び走化性アッセイにおいて特徴付けされた。
【0202】
カルシウム流入アッセイ。カルシウム動員アッセイを用いて、ハイブリドーマmAbがCCL17シグナル伝達を中和する能力を試験した。CCRF−CEM細胞(ATCC(登録商標)CCL−119(商標))を、GlutaMAX、10%のFBS、10mMのヘペス、1mMのピルビン酸ナトリウム、4500mg/Lのグルコース、及び1500mg/mlの重炭酸ナトリウムを含むRPMI中で、5%のCO
2飽和の37℃のインキュベータ中で培養した。ABD Bioquest,Inc.のFluo−8 NW洗浄不要カルシウムキット(#36315)を用いて、細胞を染料で標識した。試験抗体及び10ng/mLのヒトCCL17又は5ng/mLのcyno CCL17を試験抗体と事前にインキュベートし、混合物を細胞に添加した。蛍光シグナルは、490nmの励起及び525nmの放射を用いて、FDSS6000(Hamamatsu,Bridgewater,NJ)を用いて検出された。
【0203】
β−アレスチンレポーターアッセイ.β−アレスチンアッセイを用いて、抗CCL17抗体がCCL17機能を中和する能力を評価した。アッセイは、PathHunter eXpress β−アレスチンアッセイ(DiscoveRx)を用いて行われた。簡潔に言えば、抗CCL17抗体がCCL17によって誘導されるβ−アレスチング動員を阻害する能力は、小さい酵素断片ProLink(商標)及びβ−アレスチンの融合タンパク質及びβ−galのN末端欠失突然変異体(酵素アクセプター又はEAと呼ばれる)と共にフレーム内に融合されたCCR4を同時発現するHek293細胞において評価された。様々な濃度(0.15nM〜1μM)の抗CCL17抗体を20nMのCCL17と混合し、抗体−CCL17複合体を細胞に添加する前に混合物を37℃で20〜30分間インキュベートした。次に混合物を細胞に適用し、37℃(95% O
2/5% CO
2)で90分間インキュベートした。ウェル当たり55μlの検出試薬を添加し、室温で60分間インキュベートした。サンプルを標準的な発光プレート読取装置で読取り、IC
50値を計算した。
【0204】
走化性アッセイ:抗CCL17抗体がCCL17機能を阻害することを示すために走化性アッセイを用いた。HSC−F細胞(HSC−F細胞はNIH Nonhuman Primate Reagent Resourceから得た)又はCCRF−CEM細胞(ATCC(登録商標)CCL−119(商標))の移動は、Imai et al.1997、Imai et al.1999に記載されるプロトコルに従い、5μmのポリカーボネートフィルタを用いた96ウェル走化性チャンバを用いで評価された。簡潔に言えば、下部チャンバを、抗体なしで、又は異なる濃度(0.125、0.25、0.5 1、及び10μg/ml)の抗体と共に320μlのRPMI/BSA 0.1%及び1nMのヒト若しくはcyno CCL17で充填し、次にポリカーボネート膜を注意深く重ね合わせた。PBSで細胞を洗浄し、0.5×10
6細胞/mlでRPMI/BSA 0.1%に懸濁し、細胞懸濁液を上部チャンバに添加した。37℃の5%のCO
2加湿インキュベータ中で60分間チャンバをインキュベートし、Cell Titer−Glo Luminescence Cell Viabilityを用いて、膜を横切って下部チャンバに移動した細胞を決定した。
【0205】
表11は、カルシウム流入アッセイについてのIC50値を示す。データは、3つの独立した実験の平均である。各mAbは、10ng/ml(1.25nM)のヒトCCL17又は5ng/ml(0.625nM)のcyno CCL17のいずれかを用いたヒト又はcyno CCL17によって誘導されたカルシウム流入を完全に中和し、表11に示されるように、ヒト及びcynoタンパク質両方に対する抗体のそれぞれのIC
50値はほぼ同等であった。
【0206】
【表11】
【0207】
表12は、β−アレスチンアッセイのIC
50値を示す。データは、3つの独立した実験の平均である。mAbの全ては、20nMでヒト又はcyno CCL17によって誘導されたβ−アレスチン動員を完全に阻害し、同等の効力でヒト又はcyno CCL17によって誘導されたβ−アレスチン動員を用量依存的に阻害することができた。
【0208】
【表12】
【0209】
図1及び
図2は、それぞれ、ヒト及びcyno細胞における選択抗体による走化性の阻害を示す。試験した全ての抗体は、0.5μg/mlの抗体濃度で、ヒトCCL17によって誘導されたCCRF−CEM細胞両方の走化性を約50%の阻害レベルで阻害した。C17B302及びC17B311は、0.5μg/mlの抗体濃度で、cyno CCL17によって誘導されたcyno HSC−F細胞の走化性を約50%の阻害レベルで阻害した。
【0210】
実施例8.抗CCL17抗体C17B236のエピトープマッピング
抗体C17B236(VH:配列番号45、VL:配列番号52)結合エピトープは、X線結晶解析によって決定された。
【0211】
ヒトCCL17を大腸菌において発現させ、封入体から単離し、リフォールディングした。mAb C17B236のFab断片をHEK293F細胞において発現させた。CCL17:C17B236複合体は、過剰のCCL17で1.6:1のモル比で混合することにより調製された。次に、複合体をサイズ排除クロマトグラフィーで精製した。20%のPEG3350及び0.2MのK/Na酒石酸を含む溶液から蒸気拡散法により複合体を結晶化した。X線回折データは、1.9Åの解像度に収集された。構造は、分子置換により決定され、18.0%のR因子に修正された。
【0212】
C17B236エピトープは立体構造であり、CCL17分子の3セグメント、つまり、2つのループ(残基21〜23及び44〜45)及びC末端らせん構造(残基60〜68)に及ぶ。主要な相互作用は、CCL17の塩基性残基Arg22及びLys23、並びにAsp52、Asp55、及びAsp57を含むHCDR2における酸性残基のクラスターを伴う。これらの静電相互作用に加えて、エピトープの中心のファン−デル−ワールス接触は、VHのTrp33及びTrp105とCCL17のArg22との間で生じる。接触の数を考慮すると、エピトープの主要な残基は、VHのTrp33に対して積み重なり、HCDR3に多く接触するArg22である。パラトープ残基及びエピトープ残基を
図7に示す。
【0213】
パラトープ(CCL17の結合に関与する抗体残基)は、6つのCDRのうちの5つに属する(LCDR2を除く全て)18個の残基を含む。
【0214】
C17B236エピトープは、その二量体化表面とCCL17単量体の反対側にある。よって、C17B236は、CCL17の二量体化を阻止しない。C17B236の中和作用は、CCR4と重複するエピトープを競合することに起因する。
【0215】
【表13-1】
【0216】
【表13-2】
【0217】
【表13-3】
【0218】
【表13-4】