(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2016-537111(P2016-537111A)
(43)【公表日】2016年12月1日
(54)【発明の名称】注射デバイスのための駆動機構
(51)【国際特許分類】
A61M 5/315 20060101AFI20161104BHJP
【FI】
A61M5/315 500
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-532001(P2016-532001)
(86)(22)【出願日】2014年11月13日
(85)【翻訳文提出日】2016年7月11日
(86)【国際出願番号】EP2014074483
(87)【国際公開番号】WO2015074944
(87)【国際公開日】20150528
(31)【優先権主張番号】13193689.0
(32)【優先日】2013年11月20日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】61/907,486
(32)【優先日】2013年11月22日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】596113096
【氏名又は名称】ノボ・ノルデイスク・エー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ヒグソン, リー
(72)【発明者】
【氏名】グーラム, イムラン
(72)【発明者】
【氏名】ノルガード, イェスパ バク
(72)【発明者】
【氏名】ハンスン, ケン
(72)【発明者】
【氏名】ギョーゼスン, クラウス ウーロプ
(72)【発明者】
【氏名】アナスン, カーステン シャウ
(72)【発明者】
【氏名】ラースン, アスカ モン
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD08
4C066FF05
4C066HH17
4C066HH22
(57)【要約】
本発明は、医用注射デバイスのための駆動機構に関し、駆動機構においては、ピストンロッド(10)は、ねじ切りされた外側面と非円形横断面を有しており、さらにピストンロッド(10)の外側のねじ山(11)に嵌合される雌ねじ(41、141、241)を有する、またはピストンロッド(10)の非円形横断面に嵌合される形状を有するナットアセンブリ(2、102、202)に係合する。ナットアセンブリ(2)は、第1の部分(30、130、230)および第2の部分(40、140、240)を備え、それらは、ヒンジにより接続されて、第1の部分(30、130、230)および第2の部分(40、140、240)を、非軸方向の平面内で互いに対してチルトさせることができる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医用注射デバイスのための駆動機構であって、
ねじ切りされた外側面(11)および非円形横断面(12)を有するピストンロッド(10)と、
前記ピストンロッド(10)の前記外側のねじ山(11)と嵌合する雌ねじ(41、141、241)を有する、または前記ピストンロッド(10)の前記非円形横断面(12)と嵌合する内部形状を有するナットアセンブリ(2、102、202)であって、前記ナットアセンブリ(2、102、202)と前記ピストンロッド(10)の間の相対的な回転が、前記ピストンロッドを軸方向に駆動する、ナットアセンブリ(2、102、202)とを備え、ここで、
前記ナットアセンブリ(2、102、202)が、第1の部分(30、130、230)および第2の部分(40、140、240)を備え、前記第1の部分(30、130、230)および前記第2の部分(40、140、240)がヒンジ接続により接続されて、前記第1の部分(30、130、230)および前記第2の部分(40、140、240)を互いに対してチルトさせることができる、駆動機構。
【請求項2】
前記第1の部分(30、130、230)は、第1の中心軸(X)を有し、前記第2の部分(40、140、240)は、第2の中心軸(Y)を有し、また前記第1の部分(30、130、230)および前記第2の部分(40、140、240)は、前記第2の中心軸(Y)が前記第1の中心軸(X)に対して平行である第1の位置から、前記第2の中心軸(Y)および前記第1の中心軸(X)が平行ではない第2の位置へと、互いに対してチルト可能である、請求項1に記載の駆動機構。
【請求項3】
前記第1の部分(30、130、230)は、ハウジングに対して回転方向に、かつ軸方向にロックされる、請求項1または2に記載の駆動機構。
【請求項4】
前記第2の部分(40、140、240)は、前記第1の部分(30、130、230)に対して回転方向にロックされる、請求項3に記載の駆動機構。
【請求項5】
前記第2の部分(40、140、240)は、前記第1の部分(30、130、230)に対して軸方向に固定される、請求項1から4のいずれか一項に記載の駆動機構。
【請求項6】
前記第2の部分(40、140、240)は、前記ピストンロッド(10)にねじ込まれる、または前記ピストンロッド(10)の前記非円形横断面に係合する、請求項1から5のいずれか一項に記載の駆動機構。
【請求項7】
前記第2の部分(40)は、前記第1の部分(30)における同様の切欠き部(31)に係合するいくつかの突起部(42)を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の駆動機構。
【請求項8】
前記第2の部分(40)は、第3の部分(50)に嵌合する、請求項1から6のいずれか一項に記載の駆動機構。
【請求項9】
前記第3の部分(50)は、第4の部分(60)にヒンジ接続される、請求項8に記載の駆動機構。
【請求項10】
前記第4の部分(60)は、前記第1の部分(30)にヒンジ接続される、請求項9に記載の駆動機構。
【請求項11】
前記第3の部分(50)は、前記第4の部分(60)における同様の凹部(61)に係合するいくつかの突起部(52)を備える、請求項9または10に記載の駆動機構。
【請求項12】
前記第4の部分(60)は、前記第1の部分(30)に設けられたカップ(32)に係合するいくつかのアーム(62)を有する、請求項9から11のいずれか一項に記載の駆動機構。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載の駆動機構を備える注射デバイス。
【請求項14】
駆動要素は、前記ピストンロッド(10)に係合し、また前記ピストンロッド(10)は、前記駆動要素が回転すると遠位方向に駆動される、請求項13に記載の注射デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体薬物の用量を排出するための注射デバイスに関する。本発明は、特にこのような注射デバイスのための駆動機構に関し、さらに特にピストンロッドを前進させるためのナットおよびねじ接続を含むこのような駆動機構に関する。
【背景技術】
【0002】
注射デバイスは、通常、注射すべき液体薬物を含むカートリッジを格納するハウジングを有する。液体薬物は、カートリッジの内側でプランジャを前方に移動させることによって、注射針を介してカートリッジから押し出される。この前進運動は、通常、プランジャと当接しているピストンロッドにより行われ、ピストンロッドは、駆動機構により軸方向前方に移動される。
【0003】
このよう注射デバイスの例は、WO99/38554(
図15から
図17で特に参照が行われるが、これはFlexpen(登録商標)という商標名でNovo Nordisk A/Sにより現在販売されている)、および米国特許出願公開第2011/0054412号で開示される。開示された投与機構は、ハウジング内にしっかり固定されたナット部材に設けられた雌ねじに係合する雄ねじを有するピストンロッドを備える。駆動管は、ピストンロッドに設けられた長手方向トラックに係合しており、駆動管を回転させたとき、ピストンロッドが共に回転し、ナット部材の雌ねじ内で軸方向前方にねじ送りされる。
【0004】
WO99/38554では、駆動管は、注射ボタンがハウジングの中に深く押し込まれたとき回転するように強制される。
【0005】
米国特許出願公開第2011/0054412号で開示された注射デバイスは、いわゆる自動注射デバイス、すなわち、ばねを用いて液体薬物を排出する注射デバイスである。この注射デバイスでは、駆動管が、用量設定中に緊張させたねじりばねにより回転するように強制される。駆動管の回転により、ハウジングに固定されたナット部材を介して、ピストンロッドを前方にねじ送りする。
【0006】
別の自動注射デバイスが、WO2011/003979で(特に
図20Aから
図20Bで)開示される。FlexTouch(登録商標)という商標名でNovo Nordisk A/Sにより販売されているこの注射デバイスでは、ピストンロッドがまた、選択された用量を再設定するために使用される管により囲まれている。ピストンロッドは、ハウジングに固定されたナット部材にねじ込まれ、またピストンロッドの非円形横断面が、伝達クラッチにより係合される。ピストンロッドは、したがって、伝達クラッチがナット部材に対して回転されたとき、前方にねじ送りされる。
【0007】
注射デバイスを製作するとき、個々の部品の成形に対して、かつ個々の部品の組立において様々な許容差が適用される。これらの許容差に起因して、ナット部材が中心からずれた位置に配置され、したがって、ピストンロッドは、注射デバイスの中心線に沿って前方に移動するのではなく、中心線から偏向する危険がある。ナット部材は、例えば、中心線に対して100%直角ではなく取り付けられる可能性もある。その結果、ピストンロッドの近位端は、ピストンロッドを囲む部分の内壁に対して摺動し、かつ
図1で概略的に示すように、寄生負荷(parasitic load)を生ずる可能性がある。寄生負荷はまた、ねじ山に生ずる可能性もある。
【0008】
さらに、ピストンロッド上の、もしくはナット部材の内側(またはその両方)のねじ山の成形は、不正確になる可能性があり、これもピストンロッドの偏向を生ずるおそれがある。
【0009】
時にはナット部材がハウジングと一体に成形されるが、この場合にも、許容差が存在して、ピストンロッドは、その軸方向に動く間に偏向する可能性がある。
【0010】
注射デバイスの外径を最小化するために、寄生負荷を生成することなく、ピストンロッドの可能性のある偏向を最小化する、注射デバイスの機構を構成する様々なレイヤを、互いに非常に接近させて配置する必要がある。
【0011】
この明細書を通して、「寄生負荷」という一般的な用語は、任意の種類の望ましくない力の損失を記述するために使用される。主な損失は、ピストンロッドが、比較的静止した構成要素、すなわち、ピストンロッドの動きに対して比較的静止した構成要素の内部表面に対して摺動したとき、意図しない摩擦により生ずる。
【0012】
注射デバイスが、米国特許出願公開第2011/0054412号のように、ばね負荷の自動注射デバイスである場合、ばねの力が、これらの望ましくない寄生負荷に打ち勝つのに十分でなくてはならない。手動の注射デバイスでは、ユーザにより送達される力は、これらの負荷に打ち勝つようにより高くする必要がある。
【0013】
生産コストを最小化するために、大きな許容差を可能にすることが望ましいが、それには、これらの望ましくない寄生負荷が除かれる、または少なくとも低減され得ることが必要である。
【発明の概要】
【0014】
したがって、本発明の目的は、寄生負荷を除く、または少なくとも劇的に低減し、それにより、比較的大きな許容差を有する成形された部品を使用できるようにする、注射デバイスのための駆動機構を提供することである。
【0015】
このような駆動機構は、好ましくは、手動および自動注射デバイスの両方で動作可能である必要がある。
【0016】
本発明は、請求項1で定められる。したがって、一態様では、本発明は、医用注射デバイスのための駆動機構に関する。
【0017】
このような駆動機構は、通常、ピストンロッドおよびナットアセンブリを備える。ピストンロッドは、ねじ切りされた外側面および非円形横断面を有し、またナットアセンブリは、ピストンロッドの外側のねじと嵌合する雌ねじを有する、またはピストンロッドの非円形横断面と嵌合する内部形状を有する。
【0018】
通常、ピストンロッドはまた、ピストンロッドのねじ山と係合するねじ山を、またはピストンロッドの非円形横断面と嵌合する内部形状を有する駆動要素により係合される。
【0019】
注射デバイスの液体薬物は、一端に、ピストンロッドの軸方向の動きにより前方に移動できるプランジャを有し、かつ反対側の端部に、プランジャが前方に移動したとき、液体薬物が通って流れることのできる注射針を有するカートリッジに通常含まれる。
【0020】
さらに注射デバイス内に、排出される用量のサイズに関連する角度だけ駆動要素を回転できる機構が提供される。駆動要素の回転は、したがって、ピストンロッドを遠位方向に移動させる。
【0021】
ピストンロッドがナットアセンブリにねじ込まれる場合、ピストンロッドは、通常、駆動要素に固定され、駆動要素の回転により、ピストンロッドが回転し、回転運動および螺旋運動で前方にねじ送りされる。
【0022】
ピストンロッドが、ナットアセンブリに固定される場合、駆動要素の回転が、ピストンロッドを回転させることなく軸方向前方に移動させるように、ピストンロッドは、通常、駆動要素にねじ込まれる。
【0023】
両方の場合、ピストンロッドとナットアセンブリの間の相対的な回転は、ピストンロッドを軸方向に移動させる。
【0024】
第1の実施形態によれば、ナットアセンブリは、第1の部分および第2の部分を備え、それらは、ヒンジ接続により接続され、第1の部分および第2の部分を互いに対してチルトさせて、ピストンロッドを、寄生負荷を生ずることなく、注射デバイスの中心線から偏向させることができる。
【0025】
「チルト」により、2つの部分が枢動可能に取り付けられ、したがって、シーソーのチルトする動きと同様に、固定軸周りの1つの平面内で、互いに対して移動可能であることを意味しているが、固定軸は、水平面に従う必要はなく、空間内の3点の位置により決定される任意の平面とすることができる。
【0026】
このヒンジ接続は、第2の部分の中心軸(Y)および第1の部分の中心軸(X)が、寄生負荷を生ずることなく、互いに対して偏向することを可能にする。
【0027】
第1の部分は、ハウジングに対して、回転方向および軸方向に共にロックされて、第1の部分の中心軸(X)は注射デバイスの中心軸に従う。第2の部分はチルトすることが可能なので、第2の部分の第2の中心軸(Y)は、第1の中心軸(X)から偏向することができる。
【0028】
一例では、第1の部分は、ハウジングと一体にすることができる。第1の部分は、例えば、ハウジングと1つに成形することができるが、またはそれは、第1の部分とハウジングが、同一の構成要素として動作するように注射デバイスのハウジングに接続された別個の部分とすることもできる。
【0029】
一例では、第2の部分は、第1の部分に対して回転方向にロックされ、したがって、ピストンロッドは、ピストンロッドに係合する駆動要素が回転したときは常に、前方に移動される。ハウジングに対して回転方向および軸方向にこれもロックされる第1の部分に、第2の部分が回転方向にロックされたとき、第2の部分はまた、ハウジングに対して回転方向にロックされ、したがって、第1の部分および第2の部分は共に、回転方向に静止した1つのナットアセンブリを形成する。
【0030】
第2の部分はまた、第1の部分に対して軸方向に固定されることが好ましい。この軸方向の接続は、好ましい一実施形態では、ボールアンドソケット接続として形成することができ、第2の部分を第1の部分に対してチルトさせることができ、したがって、2つの部分の相対的な軸方向の動きが阻止される。
【0031】
ヒンジ接続は、第1の部分の同様の切欠き部と係合するいくつかの突起部を有する第2の部分により作られることが好ましい。2つのこのような突起部は、180度離れて設けられることが好ましく、したがって、突起部は、注射デバイスの中心軸に対して直角な同じ軸上に存在して、第2の部分がその周りでチルトできる軸になる。突起部および切欠き部はまた、第2の部分が第1の部分に対して回転するのを妨げる。
【0032】
第2の実施形態では、第3および第4の部分が、第1の部分と第2の部分の間に提供されて、第2の部分が、第1の部分に対して同時に、チルトおよびパンすることを可能にする。
【0033】
「パン」により、1つの平面内で、固定軸周りで枢動運動を行うことをさらに意味する。しかし、「チルトおよびパン」という用語は、その周りでチルトする軸に対して、軸が変位されることを意味する。変位は、2つの軸が互いにほぼ直角であるように約90度であることが好ましいが、2つの平面間の任意の角度変位が、特許請求の範囲に含まれることが意図される。
【0034】
第2の実施形態では、第2の部分は、例えば、1つの要素として成形される、または共にクリック(click)嵌め、もしくは圧入嵌めにより、第3の部分に移動不能に嵌合される。
【0035】
第3の部分は、次いで、第4の部分にヒンジ接続され、それは、再度第1の部分にヒンジ接続される。第4の部分は、したがって、第1の部分に対してチルトすることができ、また第3の部分は、第4の部分に対してパンすることができる。
【0036】
トルクを伝達する可能性を維持しながら、構成要素を、例えば、2つの半径方向に、互いに対してチルトおよびパンできるようにする機構を注射デバイスに組み込む原理は、寄生負荷を回避すべきである注射デバイスの他の位置でも使用可能である。例えば、ねじりばねデバイスにおいて、トルクを伝達するクラッチ機構は、カルダン継手またはオルダム継手として作ることもできる。
【0037】
本発明は、このような機構を使用する注射デバイスをさらに含む。
【0038】
上記で説明したように、このような注射デバイスは、ねじ山により、または非円形横断面によりピストンロッドに係合する駆動要素を通常有する。このような駆動要素が回転されたときは常に、ピストンロッドは軸方向運動を行う。この軸方向運動は、単なる軸方向運動とすることができるが、あるいは螺旋運動となる回転運動を組み合わせることもできる。
【0039】
定義
「注射ペン」は、通常、筆記するための万年筆に幾分似た横長の、または細長い形状を有する注射装置である。このようなペンは、通常、管状の横断面を有するが、それらは、三角形、長方形もしくは正方形、またはこれらの幾何形状に近い任意の変形形態など、様々な横断面を容易に有することもできる。
【0040】
本明細書で使用される場合、「薬物」という用語は、液体、溶液、ゲル、または微細懸濁液など、制御された方法で中空の針などの送達手段を通過できる任意の薬物を含む流動性のある薬剤を含むことを意味する。代表的な薬物は、ペプチド、タンパク質(例えば、インスリン、インスリン類似体、およびCペプチド)などの医薬品、ならびにホルモン、生物学的に誘導された、もしくは活性作用物質、ホルモンおよび遺伝子ベースの作用物質、栄養的な粉乳、および固体(調合された)もしくは液体の形態の他の物質を含む。
【0041】
「カートリッジ」は、薬物を含む容器を記述するために使用される用語である。カートリッジは、通常、ガラスから作られるが、任意の適切なポリマーから成形することもできる。カートリッジまたはアンプルは、「隔壁」と呼ばれる穿孔可能な薄膜により一端で封止されることが好ましく、隔壁は、例えば、針カニューレの後端部により穿孔することができる。反対側の端部は、通常、ゴムまたは適切なポリマーから作られたプランジャもしくはピストンにより閉じられる。プランジャもしくはピストンは、カートリッジの内側で摺動可能に移動することができる。穿孔可能な薄膜と、可動のプランジャとの間の空間は薬物を保持しており、その薬物は、プランジャが、薬物を保持している空間の容積を減少させたとき押し出される。しかし、薬物を含めるために、剛性または可撓性のある、任意の種類の容器を使用することができる。
【0042】
さらに「注射針」という用語は、液を送達する、または除去するために、被検者の皮膚を貫通するように適合された穿孔部材を定義する。多くのペンシステムに関して、注射針の針カニューレは、ユーザの皮膚を貫通するための前部分と、カートリッジの隔壁を貫通して、カートリッジの内部と、ユーザの皮下層との間で液の流れを生成するための後部分とを備える。
【0043】
本明細書で引用された公開物、特許出願、および特許を含むすべての参照は、その全体が参照により組み込まれ、また各参照が、参照により組み込まれることが個々に、かつ具体的に示され、またその全体が本明細書に記載されている場合と同程度に参照により組み込まれる。
【0044】
すべての見出し、および副見出しは、本明細書で便宜上使用されるだけのものであり、決して本明細書を限定するものとして構成されるべきではない。
【0045】
本明細書で提供される任意の、かつすべての例、または例示的な文言(例えば、など(such as))の使用は、本発明をより明らかにするように意図されているに過ぎず、別の形で特許請求されない限り、本発明の範囲に対する限定を提示するものではない。本明細書におけるいずれの文言も、いずれかの特許請求されない要素を、本発明の実施に不可欠なものであるとして示すものと解釈されるべきではない。本明細書における特許文献の引用および組み込みは、便宜上行われるに過ぎず、このような特許文献の有効性、特許性、および/または法的強制力のいずれの観点も反映するものではない。
【0046】
本発明は、適用可能な法律により許容されるように、本明細書に添付された特許請求の範囲に記載された主題の変更形態および均等な形態のすべてを含む。
【0047】
本発明は、好ましい実施形態と共に、かつ図面を参照して以下でより十分に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【
図4】第1の実施形態を部分的に切開した斜視図である。
【
図7】第2の実施形態を部分的に切開した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
図は概略的なものであって、分かりやすくするために簡略化しており、本発明を理解する上で不可欠なものである細部だけを示し、その他の細部は示されていない。全体を通して、同じ参照数字は、同一の、または対応する部分に使用される。
【0050】
以下で、「上側」および「下側」、「右」および「左」、「水平」および「垂直」、「時計回り」および「反時計回り」などの用語、または同様の相対表現が使用される場合、これらは、添付図を参照するだけのものであり、使用する実際の状況に対するものではない。示された図は、概略的な表現であり、そのため、様々な構造の構成ならびにそれらの相対的な寸法は、例示目的だけに使用されるように意図されている。
【0051】
その文脈において、添付図における「遠位端」という用語は、通常注射針を担持する注射デバイスの端部を指すことを意味するが、「近位端」という用語は、注射針から離れた方向を示し、通常用量ダイヤルボタンを担持する反対側の端部を指すことを意味するように定義することは便利であり得る。
【0052】
図1は、従来技術の概略図を開示する。ナット部材1は、通常、いずれの方向にも移動できないように、注射デバイスのハウジングに回転不能に接続される。代替的には、ナット部材1は、注射デバイスのハウジングと一体に成形される。
【0053】
ナット部材1は、内部にねじ山を備える。ねじ山を外部に備えるピストンロッド10が、ナット部材1の雌ねじにねじ込まれて、ピストンロッド10は、回転したとき、ねじ送りされる。ピストンロッド10は、したがって、螺旋運動を行う。
【0054】
管20は、ピストンロッド10を囲んでいる。この管20は、駆動管、再設定管、または単に機構のレイヤとすることができる。管20は、少なくとも軸方向に、すなわち、ピストンロッド10が前方に移動したとき、ピストンロッド10に対して通常静止している。
【0055】
ピストンロッド10が、例えば、許容差に起因して、注射デバイスの中心線Aから偏向した場合、ピストンロッド10の近位端は、管20の内面に当接する、または内面上を摺動して、前方に移動したとき、寄生負荷を生ずるおそれがある。さらに寄生負荷は、この偏向に起因してねじ接続部に生成される可能性もある。
【0056】
図2は、本発明による解決策を開示しており、この場合、ナットアセンブリ2は、ハウジングにしっかり嵌合された第1の部分30と、ピストンロッド10を前方にねじ送りするためのねじ山を担持する第2の部分40とからなる。第2の部分40は、ヒンジを介して第1の部分30に接続され、したがって、第1の部分30は、少なくとも1つの平面内で第2の部分40に対してチルトすることができる。
【0057】
第1の部分30は、第1の中心軸Xを有し、また第2の部分40は、第2の中心線Yを有する。
図2で示すように、第1の部分30と第2の部分40の間のヒンジ接続は、第1の中心軸Xおよび第2の中心軸Yを互いに対して偏向させることができる。第1の部分30と第2の部材40の間で動作するこのヒンジは、したがって、寄生負荷を生ずることなく、ピストンロッド10を偏向させることができ、それを以下で詳細に説明する。
【0058】
横断面図が、
図3で開示される。第1の部分30は、図示されていないハウジングにしっかりと接続され、したがって、第1の部分30は、ハウジングに対して静止している。第1の部分30の第1の中心軸Xは、したがって、通常、注射デバイスの中心軸Aに従う。
【0059】
ピストンロッド10は、第2の部分40に設けられた雌ねじ41と係合する長手方向のねじ山11を外部に備える。ピストンロッド10は、図示されていない駆動要素により把持される非円形横断面12をさらに有する。
【0060】
さらに
図4で開示されるように、第2の部分40は、ヒンジを構成するいくつかの突起部42を備える。これらの突起部42は、第1の部分30の同様の切欠き部31内に存在する。第2の部分40が、第1の部分30に対して1つの平面内でチルトできるように、180度位置をずらして存在する2つの突起部42、および2つの切欠き部31があることが好ましい。さらにこの方法では、ピストンロッド10が、ナットアセンブリ2に対して回転したとき、ねじ山41内を回転して前進するように、第2の部分40は、第1の部分30に対して回転方向にロックされる。
【0061】
第1の中心軸Xを有する第1の部分30、および第2の中心軸Yを有する第2の部分40は、
図5で詳細に開示される。
【0062】
図5でさらに示されるように、第2の部分40の外壁43は、好ましくは、球形状をしており、第1の部分30の同様のカップ形状の表面32の中に圧入嵌めされて、ボールアンドソケット接続を構成し、したがって、第1の部分30および第2の部分40は、軸方向に接続された状態にある、すなわち、第1の部分30は、第2の部分40に対して軸方向に移動することができない。したがって、第2の部分40は、この結合において、第1の部分30に対して回転できるだけである。しかし、この回転運動は、切欠き部31に係合する突起部42により阻止される。その結果、第2の部分40と第1の部分30の間で可能な動きは、したがって、1つの平面内における第1の部分30に対する第2の部分40のチルトだけである。平面は、2つの突起部42を通る共通軸により画定される。
【0063】
図6から
図8は、同じ参照番号が同様の部分に使用された異なる実施形態を開示する。
【0064】
ピストンロッド(この第2の実施形態では示されていない)は、第2の部分40のねじ山41と係合する雄ねじを有する。さらに第1の部分30は、図示されないハウジング内にしっかりと固定される。第1の実施形態と同様に、第1の部分30は、第1の中心軸Xを有し、また第2の部分は、第2の中心軸40を有する。
【0065】
ねじ山41を担持する第2の部分40は、第3の部分50における同様の凹部51に係合するいくつかの突起部42を有することにより、第3の部分50に固定される。第2の部分40および第3の部分50は、このように、軸方向に、かつ回転方向に互いに接続されて、第2の部分40は、第3の部分50に対していずれの方向にも移動することができない。代替的に、第2の部分40および第3の部分50は、1つの単一の要素として作成することもできる。
【0066】
さらに、第3の部分50は、第4の部分60の同様の刻み目61に係合する外側の突起部52を備える。第3の部分50が、第4の部分60に対してチルトまたはパンすることができるように、180度離れて位置する2つのこのような突起部52が存在することが好ましい。
【0067】
第4の部分60は、同様にして、第1の部分30に形成されたカップ形状の変形部33に載置される遠位方向を指す延長部63有する外側アーム62を備える。延長部63は、図示されていない圧力要素もしくは同様のものにより、カップ33の中に押し込まれることが好ましい。これらのアーム62はまた、第4の部分60が、第1の部分30に対してチルトもしくはパンできるように、180度位置をずらした1対のものとして設けられることが好ましい。
【0068】
刻み目61は、S字状の入口64を有することが好ましく、したがって、第3の部分50は、適正に取り付けられたとき、第4の部分60に対して軸方向に移動することができない。
【0069】
第3の部分50および第4の部分60は共に、第2の部分40が、第1の部分30に対して2つの平面内で移動することを可能にする。第2の部分40は、したがって、第1の部分30に対して同時にチルトし、かつパンすることができる。それに加えて、第2の部分40は、第1の部分30に対して、したがって、ハウジングに対して回転方向および軸方向にロックされる。
【0070】
このように、ピストンロッド10は、中心軸Xに対して同時にチルトし、かつパンすることができる。第1の部分30,第2の部分40、第3の部分50、および第4の部分60は、例えば、ポリマー材料などの任意の適切な材料から作ることができるが、第1の部分30,第3の部分50、および第4の部分60は、金属材料から作られることが好ましい。
【0071】
図9は、ナットアセンブリのさらなる実施形態、および図を示す。
図10Aおよび
図10Bは、ナットアセンブリのさらに他の実施形態を示す。
【0072】
図3〜
図8の実施形態は、概して円筒形の外形を有するペン形の薬物送達デバイスに(ならびに非円筒形の外形を有するデバイスに)組み込むのに適したものにする概して円筒形の設計を有するが、
図9および
図10の実施形態は、小径であることが望ましいペン形の薬物送達デバイスに組み込むには最適とはいえない。したがって、
図9および
図10の実施形態は、例えば、手動で作動できる、または電動式の「ドーザ(dozer)」の形態の、箱形外形を有する薬物送達デバイスにより適することができる。
【0073】
図9を参照すると、第1の部分および第2の部分を備えるナットアセンブリ102が示されている。概略的に示されているに過ぎない第1の部分は、開口部もしくは穴131を備えるベース部材130の形態のものである。ベース部材は、薬物送達デバイスの一般的なハウジングと一体に形成することができるが、あるいはハウジングに取り付けられた別の部材とすることができる。第2の部分は、Z軸(図の平面に対して直角に配置される)を画定する中心穴を有する円筒形の主部分145を備えるナット部材140の形態のものであり、中心穴は、対応するねじ付きのピストンロッドを受け入れ、かつ係合するように適合されたねじ山141を備える。第2の部分は、主部分の外面から半径方向に延びるロッド状部分146をさらに備える。ロッドは、ベース部材の穴131と摺動係合で受け入れられるように適合された拡大した頭部147を有する自由な遠位端を備え、これは、Z軸に関して、ベース部材に対するナット部材の回転方向のロックを提供するが、図示のように、ナット部材をY軸に関して軸方向に移動させることができる。さらに、頭部が、わずかな量の緩みで穴の中に受け入れられると、ナット部材は、X軸に関してもわずかな量を移動することが可能であり、XY平面内でわずかな量だけ枢動できるようになる。
【0074】
図10Aおよび
図10Bを参照すると、第1の部分および第2の部分を備えるナットアセンブリ202が示されている。第1の部分は、本体部分231、1対の対向する壁部分232、およびヒンジピン部分233を備えるフォーク部材230の形態のものである。第2の部分は、Z軸(
図10Aの平面に対して直角に配置される)を画定する中心穴を有する概して円筒形の主部分245を備えるナット部材240の形態のものであり、中心穴は、対応するねじ付きのピストンロッドを受け入れ、かつ係合するように適合されたねじ山241を備える。ナット部材は、その外側に、フォーク部材の壁部分の間に受け入れられるように適合された1対の対向する同一平面の平坦な部分を備え、組み合わされた第1のヒンジ250がその間に形成されて、ナット部材が、
図10Aの平面内に配置されたY軸に対応して枢動できるようにする。示された実施形態では、枢動ヒンジは、対応するナット壁キャビティに受け入れられる、壁から内側方向に延びる軸により各側部に形成される。ピン部分233は、例えば、ハウジング部材(図示せず)により形成された対応するヒンジ構造に受け入れられるように適合される。示された実施形態では、形成された第2のヒンジが、XY平面で軸方向にわずかな量だけ動くことができるのと同様に、フォーク部材がX軸に関して枢動することを可能にする。図示された実施形態では、ピン部分233は、軸方向の動きに対する停止部を提供する拡大された端部分234を備える。2つのヒンジの組み合わされた自由度により、ナット部材を、軸方向ではなく、Y方向に移動できるようにする。さらに、2つのヒンジは、フォーク部材またはハウジング部材に対してナット部材の回転方向のロックを提供する。
【0075】
いくつかの好ましい実施形態が、上記で示されているが、本発明はこれらのものに限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲で定められた主題に含まれる他の方法で実施できることが強調されるべきである。
【国際調査報告】