特表2016-537211(P2016-537211A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヒルティ アクチエンゲゼルシャフトの特許一覧

特表2016-537211バッテリ動作の手持電動工具の低電圧ロックアウトを防止するための低温での電圧補償
<>
  • 特表2016537211-バッテリ動作の手持電動工具の低電圧ロックアウトを防止するための低温での電圧補償 図000003
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2016-537211(P2016-537211A)
(43)【公表日】2016年12月1日
(54)【発明の名称】バッテリ動作の手持電動工具の低電圧ロックアウトを防止するための低温での電圧補償
(51)【国際特許分類】
   B25F 5/00 20060101AFI20161104BHJP
【FI】
   B25F5/00 C
   B25F5/00 H
   B25F5/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-530860(P2016-530860)
(86)(22)【出願日】2014年11月14日
(85)【翻訳文提出日】2016年7月12日
(86)【国際出願番号】EP2014074573
(87)【国際公開番号】WO2015071400
(87)【国際公開日】20150521
(31)【優先権主張番号】13193102.4
(32)【優先日】2013年11月15日
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】591010170
【氏名又は名称】ヒルティ アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100090022
【弁理士】
【氏名又は名称】長門 侃二
(72)【発明者】
【氏名】ベッカート, ベネディクト
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー, トマス
(57)【要約】
電源ラインから独立して動作される電動工具であって、電動工具を駆動するための電動モータと、バッテリと、バッテリの動作限界値より上にあるモニタリング電圧限界値のモニタリング装置と、可変抵抗デバイスと、電動モータに印加される少なくとも1つの動作値をパルス幅変調(PWM)を用いて設定するための動作値レギュレータとを備え、動作値レギュレータのPWMデューティサイクルは、第1の値または第2の値に対応した、少なくとも1つの動作値の設定のために決定され、第1の値は抵抗デバイスの現在の位置から求められ、第2の値は、少なくとも1つの動作値の設定のために最後に使用されたPWMデューティサイクルにオフセット値を加えたものに相当し、バッテリの少なくとも1つの動作値がモニタリング動作限界値より上にある場合は、少なくとも1つの動作値の設定のために、第1および第2の値の小さい方がPWMデューティサイクル用に選択される。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源ラインから独立して動作される電動工具(1)であって、
前記電動工具(1)を駆動するための電動モータ(6)と、
バッテリ(9)と、
モニタリング動作限界値のモニタリング用のモニタリング装置(14)であって、当該モニタリング動作限界値が前記バッテリ(9)の動作限界値より上にあるモニタリング装置と、
可変抵抗デバイス(5)と、
前記電動モータ(6)に印加される少なくとも1つの動作値を、パルス幅変調(PWM)を用いて設定するための動作値レギュレータ(12)と、
を備え、
前記動作値レギュレータ(12)のPWMデューティサイクルは、第1の値または第2の値に対応した、少なくとも1つの動作値の設定のために決定され、当該第1の値は前記抵抗デバイス(5)の現在の位置から求められ、当該第2の値は、当該少なくとも1つの動作値の設定のために最後に使用されたPWMデューティサイクルにオフセット値を加えたものに相当しており、
前記バッテリ(9)の少なくとも1つの動作値が前記モニタリング動作限界値より上にある場合は、前記少なくとも1つの動作値の設定のために、前記第1および第2の値の小さい方が前記PWMデューティサイクル用に選択される、
ことを特徴とする電動工具。
【請求項2】
前記動作限界値は、温度値に依存して設定可能であることを特徴とする、請求項1に記載の電動工具。
【請求項3】
前記オフセット値は、前記電動モータ(6)の制御のために最後に使用されたPWMデューティサイクルの%程度に相当する値であることを特徴とする、請求項1または2に記載の電動工具。
【請求項4】
前記バッテリ(9)の少なくとも1つの動作値を周期的にモニタリングするための時間制御されたモニタリング装置(14)が設けられていることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電動工具。
【請求項5】
前記時間制御されたモニタリング装置は、時間間隔毎にこのバッテリの少なくとも1つの動作値をモニタリングすることを特徴とする、請求項4に記載の電動工具。
【請求項6】
前記モニタリング動作限界値が、モニタリング電圧限界値によって実現されていること、前記動作限界値が低電圧限界値によって実現されていること、前記動作値レギュレータが電圧レギュレータによって実現されていること、および上記の少なくとも1つの動作値が上記の動作電圧値によって実現されていることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の電動工具。
【請求項7】
電源ラインから独立して動作される電動工具(1)における電動モータ(6)を、モニタリング装置(14)を用いたモニタリング動作限界値の時間制御されたモニタリングによって制御するための方法であって、当該モニタリング動作限界値は、バッテリ(9)の動作限界値より上にあり、
前記電動モータ(6)の少なくとも1つの動作値を、動作値レギュレータ(12)のPWMデューティサイクルを第1の値または第2の値の低い方に決定することによって設定し、当該第1の値は、前記動作値レギュレータ(5)の最後の位置から求められ得るものであり、前記バッテリ(9)の少なくとも1つの動作値が前記モニタリング動作限界値より上にある場合は、当該第2の値は前記少なくとも1つの動作値の設定のために最後に使用されたPWMデューティサイクルにオフセット値を加えたものに相当していることを特徴とする方法。
【請求項8】
温度値に依存して動作限界値を設定することを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記オフセット値を、前記電動モータ(6)の制御のために最後に用いられたPWMデューティサイクルの%程度に対応した値に設定することを特徴とする、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
前記時間間隔毎のモニタリング動作限界値のモニタリングスケジュールを設定することを特徴とする、請求項7乃至9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記モニタリング動作限界値が、モニタリング電圧限界値によって実現されていること、前記動作限界値が低電圧限界値によって実現されていること、前記動作値レギュレータが電圧レギュレータによって実現されていること、および上記の少なくとも1つの動作値が上記の動作電圧値によって実現されていることを特徴とする、請求項7乃至10のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源ラインから独立して動作される電動工具に関し、この電動工具はその動作のための電動モータおよびバッテリを含む。さらに加えてこの電動工具は、モニタリング動作限界値をモニターするためのモニタリング装置を含み、このモニタリング動作限界値は、バッテリの動作限界値より上にある。さらにこの電動工具は、この電動モータの出力を変化するための可変抵抗デバイス、および少なくともこの電動モータに印加される動作値を設定するためのパルス幅変調(PWM)を用いた動作値レギュレータを含む。
【0002】
さらに本発明は、電源ラインから独立して動作される電動工具における電動モータを、モニタリング装置を用いたモニタリング動作限界値の時間制御されたモニタリングによって制御するための方法によって解決され、ここでこのモニタリング動作限界値は、バッテリの動作限界値より上にある。
【背景技術】
【0003】
通常手持で用いられる、たとえば電動ドリル、電動ドライバ、電動のこぎり等のようなバッテリ動作の電動工具では、様々な保護機能およびロックアウト機能(Abschaltfunktionen)が備えられており、これらの機能はこの電動工具の内部およびまた外部における個々の装置の保護に用いられている。このような機能としてたとえば、バッテリの電源電圧が所定の限界値を下回る場合に、その電動工具をロックアウトするための、低電圧ロックアウト部(Unterspannungsabschaltung)がある。この電動機器のロックアウト(Abschalten)は、バッテリの容量のほぼ完全な消耗(過放電の虞)となるまでの電流取り出しを避けるために用いられる。この過放電は、バッテリの修復不可能な損傷をもたらし得る。同様にこの低電圧ロックアウト部は、他の装置、具体的にはこの電動工具の制御電子回路を故障、損傷、または破損から保護するために用いられる。この低電圧ロックアウト部は、さらにバッテリが少なくともその電源電圧の限界値より上にある電圧を再び出力するまで、この電動工具を使用することを防止する。このような電動工具の使用中での低電圧ロックアウト部による遮断は、低電圧によるロックアウトが、この電動工具の使用の再開までの比較的長い待ち時間をもたらすので、使用者にとって極めて迷惑なことである。
【0004】
極限的な外部環境の影響、具体的には低温、すなわち約18℃の通常の室温より顕著に低い温度は、時にはバッテリの急激な性能低下の原因となる。この原因は、低温では化学プロセスがゆっくりと進行し、特にLi電池に使用される電解質の粘性が大きく増加し、これと同時にバッテリおよび特にリチウムイオンバッテリでは低温でその内部抵抗が増加することである。バッテリの出力可能なパワー(電圧)の低下は、またこの電動機器の使用での電源電圧の限界値をもっと早く下回ることをもたらす。具体的には、この電動工具によって一時的に大きなパワー要求(たとえばより大きなトルク)の際に起こり得る負荷ピークによって、この電源電圧の限界値をすぐに下回ってしまう。この結果、上記の低電圧ロックアウト部は、この電動工具の制御部に割り込み、バッテリでの損傷および他の装置で損傷を避けるために、電動モータのパワーを少なくとも一時的に遮断する。このため、使用者にとって望ましくない電動工具の使用中の遮断が何回も繰り返されることになる。
【0005】
潜在的な過放電の虞およびこれによって起こり得るバッテリの損傷のため、一方では常態的なバッテリ電圧のモニタリングも、また効果的な低電圧ロックアウト部も電動機器においては省くことができない。他方、特に低い環境温度での、この低電圧ロックアウト部によるこの電動機器の常態的なロックアウトは、この電動工具を用いた作業を非効率とし、あるいは全体としてこの作業を阻害することになる。さらに加えて上記の電動モータの周期的なロックアウトは、この電動モータと、これによってこの電動機器およびバッテリ自身を温めることができるということ、これによって温度に依存した、上記の低電圧ロックアウト部によるロックアウトを避けることができるという可能性を阻害する。
【0006】
さらに、電動モータでの負荷変動のためにバッテリ電圧が再び突然上昇する場合には問題がある。このような負荷変動は、具体的には印加されるトルクの低減のために電動モータでの負荷低下によって、この電動工具の自己発熱のためにバッテリ温度が上昇することによって起こり得る。この負荷変動の場合には、バッテリ電圧が再び上昇してモニタリング電圧限界値を再び越え、上記の制御部は再び充分なバッテリ電圧であるとみなし、動作電圧の設定のための電圧レギュレータの電圧PWMデューティサイクルは現在のポテンショメータの位置から再び直接導かれることになる。このような上昇したバッテリ電圧は、多くの場合再び上記のモニタリング電圧限界値より下のバッテリ電圧まですぐに低下し、これによって動作電圧あるいはPWMデューティサイクルの低下とこのような低下の無い通常の動作との間で振動するような挙動をもたらす。同様にバッテリ電圧の急激な変動は、非常に速い電圧低下を発生し得、この電圧低下は結局この電動工具のロックアウトをもたらし得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、上述の問題を解決することであり、このため電源ラインから独立して動作される電動工具、およびこの電源ラインから独立して動作される電動工具における電動モータの制御のための方法を提供することであり、電動工具の動作のためのバッテリの効果的な使用を保証するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は本発明によれば、電源ラインから独立して動作される電動工具によって解決され、この電動工具はその動作のための電動モータおよびバッテリを含む。さらに加えてこの電動工具は、モニタリング動作限界値をモニターするためのモニタリング装置を含み、このモニタリング動作限界値は、バッテリの動作限界値より上にある。さらにこの電動工具は、この電動モータの出力を変化するための可変抵抗デバイス、および少なくともこの電動モータに印加される動作値を設定するためのパルス幅変調(PWM)を用いた動作値レギュレータを含む。
【0009】
本発明によれば、動作値レギュレータのPWMデューティサイクルは、第1の値または第2の値に対応した、少なくとも1つの動作値の設定のために決定され、ここでこの第1の値は上記の抵抗デバイスの現在の位置から求められ、またこの第2の値は、この少なくとも1つの動作値の設定のために最後に使用されたPWMデューティサイクルにオフセット値を加えたものに相当しており、ここでこのバッテリの少なくとも1つの動作値が上記のモニタリング動作限界値より上にある場合は、この少なくとも1つの動作値の設定のために、これらの第1および第2の値の小さい方がこのPWMデューティサイクル用に選択される。以上により、上記のバッテリの少なくとも1つの動作値が、過度に速く、再びこのバッテリの動作限界値より下まで低下することが避けられ、これによってバッテリの保護のために電動モータまたは他の装置をロックアウトすることが避けられ、また同時にこの電動工具の使用を続けることができる。この動作値は、たとえば1つの電圧値であってよい。しかしながらこの動作値は、電流強度またはこれと類似のものであってもよい。さらに加えて、この動作値が動作状態の動作値、すなわちこの電動工具のスイッチオン状態またはスイッチオフ状態の動作値であることも可能である。
【0010】
本発明の1つの実施形態によれば、上記の動作限界値は、温度に依存して設定可能であってよい。この温度値は、たとえばバッテリの温度または電動機器の温度であってよい。しかしながらこの温度値がこのバッテリの温度または電動機器の温度に対応するものであることも可能である。すなわちこの温度値は、バッテリの温度のみ、またはこのバッテリの温度を考慮することなく、電動機器の温度のみに対して設定可能である。さらに加えてこの温度値は、バッテリの温度および電動機器の温度を組合せたものから得られることも可能である。さらにこの温度値に、上記の動作限界値の設定のためにバッテリおよび/または電動機器の周囲温度が追加的に考慮されること、またはこれのみが考慮されることも可能である。
【0011】
それぞれの温度値に依存して、上記の動作限界値は低くまたは高く設定されてよい。 ここで、低い温度では上記の動作限界値は低く設定されるようにするが、しかしながらここで注意すべきことはこの動作限界値が常に上記のモニタリング動作限界値より下になっていることである。これに対応して低い温度ではこの動作限界値は高く設定される。
【0012】
もう1つの実施形態によれば、上記のオフセット値は、電動モータの制御のために最後に使用されたPWMデューティサイクルの%程度に相当する値であってよい。具体的にはこの%程度の値は、この電動モータの制御のために最後に使用されたPWMデューティサイクルの2%〜20%に相当してよい。しかしながら、温度値に依存して高いオフセット値または低いオフセット値が使用され得ることも可能である。この温度値は、たとえばバッテリの温度または電動機器の温度であってよい。しかしながらこの温度値がこのバッテリの温度または電動機器の温度に対応するものであることも可能である。すなわちこの温度値は、バッテリの温度のみ、またはこのバッテリの温度を考慮することなく、電動機器の温度のみに対して設定可能である。さらに加えてこの温度値は、バッテリの温度および電動機器の温度を組合せたものから得られることも可能である。さらにこの温度値に、上記の動作限界値の設定のためにバッテリおよび/または電動機器の周囲温度が追加的に考慮されること、またはこれのみが考慮されることも可能である。
【0013】
バッテリの電圧値の周期的なモニタリングを確実に行うために、このバッテリの少なくとも1つの動作値を周期的にモニタリングするための時間制御されたモニタリング装置が設けられていてよい。
【0014】
この時間制御されたモニタリング装置は、本発明の1つの実施形態によれば、時間間隔毎にこのバッテリの少なくとも1つの動作値がモニタリングされるように構成されていてよい。具体的にはこの時間間隔は1ms〜100msに相当してよい。しかしながらこれより大きいかまたは小さい時間間隔が、温度値に依存してこのバッテリの少なくとも1つの動作値のモニタリングに使用され得ることも可能である。この温度値は、たとえばバッテリの温度または電動機器の温度であってよい。しかしながらこの温度値がこのバッテリの温度または電動機器の温度に対応するものであることも可能である。すなわちこの温度値は、バッテリの温度のみ、またはこのバッテリの温度を考慮することなく、電動機器の温度のみに対して設定可能である。さらに加えてこの温度値は、バッテリの温度および電動機器の温度を組合せたものから得られることも可能である。さらにこの温度値に、上記の動作限界値の設定のためにバッテリおよび/または電動機器の周囲温度が追加的に考慮されること、またはこれのみが考慮されることも可能である。
【0015】
本発明のもう1つの有利な実施形態によれば、上記のモニタリング動作限界値が、モニタリング電圧限界値によって実現されていること、上記の動作限界値が低電圧限界値によって実現されていること、上記の動作値レギュレータが電圧レギュレータによって実現されていること、および上記の少なくとも1つの動作値が上記の動作電圧値によって実現されていることも可能である。以上により、具体的には上記のバッテリの電圧が、過度に速く、再びこのバッテリの動作限界値より下まで低下することが避けられ、これによってバッテリの保護のために電動モータまたは他の装置のロックアウトが避けられ、また同時にこの電動工具の使用を続けることができる。
【0016】
さらに上記の課題は、本発明によれば、電源ラインから独立して動作される電動工具における電動モータを、モニタリング装置を用いたモニタリング動作限界値の時間制御されたモニタリングによって制御するための方法によって解決され、ここでこのモニタリング動作限界値は、バッテリの動作限界値より上にある。
【0017】
本発明によれば、この方法は、動作値レギュレータのPWMデューティサイクルを第1の値または第2の値の低い方に決定することによって、上記の電動モータの少なくとも1つの動作値を設定するステップを含み、ここでこのバッテリの少なくとも1つの動作値が上記のモニタリング動作限界値より上にある場合は、この第1の値は、上記の抵抗デバイスの最後の位置から求められ得るものであり、この第2の値は上記の少なくとも1つの動作値の設定のために最後に使用されたPWMデューティサイクルにオフセット値を加えたものに相当している。
【0018】
以上により、上記のバッテリに対し少なくとも1つの動作値が、過度に速く、再びこのバッテリの動作限界値より下まで低下することが避けられ、これによってバッテリまたは他の装置の保護のために電動モータをロックアウトすることが避けられ、また同時にこの電動工具の使用を続けることができる。
【0019】
さらに加えて、本発明のもう1つの実施形態によれば、温度値に依存して動作限界値を設定するステップが設けられていてよい。この温度値は、たとえばバッテリの温度または電動機器の温度であってよい。しかしながらこの温度値がこのバッテリの温度または電動機器の温度に対応するものであることも可能である。すなわちこの温度値は、バッテリの温度のみ、またはこのバッテリの温度を考慮することなく、電動機器の温度のみに対して設定可能である。さらに加えてこの温度値は、バッテリの温度および電動機器の温度を組合せたものから得られることも可能である。さらにこの温度値に、上記の低電圧限界値の設定のためにバッテリおよび/または電動工具の周囲温度が追加的に考慮されること、またはこれのみが考慮されることも可能である。
【0020】
それぞれの温度値に依存して、上記の動作限界値は低くまたは高く設定されてよい。ここで、低い温度では上記の動作限界値は低く設定されるようにするが、しかしながらここで注意すべきことはこの動作限界値が常に上記のモニタリング動作限界値より下になっていることである。これに対応して低い温度ではこの動作限界値は高く設定される。
【0021】
本発明のもう1つの実施形態によれば、上記のオフセット値を、電動モータの制御のために最後に用いられたPWMデューティサイクルの上記の%程度に対応した値に設定するステップが設けられていてよい。具体的にはこの%程度の値は、この電動モータの制御のために最後に使用されたPWMデューティサイクルの2%〜20%に相当してよい。しかしながら、温度値に依存して高いオフセット値または低いオフセット値が使用され得ることも可能である。この温度値は、たとえばバッテリの温度または電動機器の温度であってよい。しかしながらこの温度値がこのバッテリの温度または電動機器の温度に対応するものであることも可能である。すなわちこの温度値は、バッテリの温度のみ、またはこのバッテリの温度を考慮することなく、電動機器の温度のみに対して設定可能である。さらに加えてこの温度値は、バッテリの温度および電動機器の温度を組合せたものから得られることも可能である。さらにこの温度値に、上記の低電圧限界値の設定のためにバッテリおよび/または電動工具の周囲温度が追加的に考慮されること、またはこれのみが考慮されることも可能である。
【0022】
さらに本発明のもう1つの実施形態によれば、上記の時間間隔毎のモニタリング動作限界値のモニタリングスケジュールを設定するステップが設けられていてよい。具体的にはこの時間間隔は1ms〜100msに相当してよい。しかしながらこれより大きいかまたは小さい時間間隔が、温度値に依存してこのバッテリの少なくとも1つの動作値のモニタリングに使用され得ることも可能である。この温度値は、たとえばバッテリの温度または電動機器の温度であってよい。しかしながらこの温度値がこのバッテリの温度または電動機器の温度に対応するものであることも可能である。すなわちこの温度値は、バッテリの温度のみ、またはこのバッテリの温度を考慮することなく、電動機器の温度のみに対して設定可能である。さらに加えてこの温度値は、バッテリの温度および電動機器の温度を組合せたものから得られることも可能である。さらにこの温度値に、上記の動作限界値の設定のためにバッテリおよび/または電動機器の周囲温度が追加的に考慮されること、またはこれのみが考慮されることも可能である。
【0023】
さらに加えて、本発明のもう1つの有利な実施形態によれば、上記のモニタリング動作限界値がモニタリング電圧限界値によって実現されていること、上記の動作限界値が低電圧限界値によって実現されていること、上記の動作値レギュレータが電圧レギュレータによって実現されていること、および上記の少なくとも1つの動作値が上記の動作電圧値によって実現されていることも可能である。以上により、具体的には上記のバッテリの電圧が、過度に速く、再びこのバッテリの動作限界値より下まで低下することが避けられ、これによってバッテリまたは他の装置の保護のために電動モータのロックアウトが避けられ、また同時にこの電動工具の使用を続けることができる。
【0024】
さらなる利点が以下の図から明らかになる。図には本発明の実施形態例が示されている。本願の図、明細書、および特許請求の範囲は多くの特徴が組み合わされたものを含んでいる。当業者は、これらの特徴を適宜個別に扱い、また有意義なさらなる組み合わせにまとめるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明による、オフラインで動作される電動工具の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1には、パワードリル、ドリルハンマー、グラインダ、のこぎり、かんな、アングルグラインダ等であり得る電動工具1が示されている。この電動工具1は主にバッテリ駆動のパワードリルである。
【0027】
この電動工具1は、把持部3を有するハウジング2を備える。このハウジング2内には、工具取付部(Werkzeugaufnahme)7にあるドリル等の工具8を駆動するための電動モータ6がある。たとえばこの電動モータ6は、直流モータであってよく、ここでこの電動モータ6は、把持部3内に装着可能で、充電可能なバッテリからなるエネルギー貯蔵器9を用いて、電力供給される。把持部3には、電動モータ6の回転数、トルク等を変化させるためのポテンショメータとして構成されている抵抗部品5を有するスイッチ4がある。
【0028】
その他にハウジング2内には、電動モータ6を制御するための制御装置10がある。この制御装置10は、動作値レギュレータとして構成されている電圧レギュレータ12を備え、この電圧レギュレータは、バッテリ9から提供される動作値を、ここではバッテリ電圧の形態で、電圧レギュレータ入力部として構成された動作値レギュレータ入力部12aで受け取る。
【0029】
電圧レギュレータ12は、バッテリ9から提供されるバッテリ電圧を電動モータ6用の変動的な動作電圧に降下するために、モニタリング電圧限界値の形態で構成されたモニタリング動作限界値のモニタリング用に、時間離散的なモニタリング装置14を有して構成されている。このモニタリング装置14は、制御電子回路として構成されている。時間離散的なモニタリングは、定期的な時間間隔たとえば10ms毎に行われる。しかしながら、適用形態により、これより大きいかまたは小さい時間間隔に決定されることも可能である。
【0030】
動作電圧は、電圧レギュレータ12の電圧レギュレータ出力部12bを介して電動モータ6に印加される。低電圧限界値として構成されている動作限界値は、モニタリング装置14の閾値として用いられ、この閾値を下回ると、バッテリ9のさらなる放電およびこれによって起こり得る損傷を防ぐために、電動モータ1がロックアウトされる。
【0031】
このバッテリ9用に設けられているモニタリング電圧限界値は、バッテリ9の電圧が急激に低下した場合、ここでもまたこの電動工具1の動作において制御しながら割り込むために用いられる。この電動工具1の動作への制御しながらの割り込みは、バッテリ9の電圧が事前に決定されたモニタリング電圧限界値を下回ったら直ぐに行われる。ここでこのモニタリング電圧限界値は、バッテリ9および/または電動工具1の各々の温度に依存して設定されてよく、この際このモニタリング電圧限界値が低く設定されるほど、この温度は低くなる。このモニタリング電圧限界値を下回ることによって開始される、この電動工具1の動作への割り込みは、電圧レギュレータ12を利用したこの電動工具1の動作電圧の降下によって行われる。代替として、バッテリ9の任意の他の動作値、任意の他のモニタリング動作限界値、および/または電動工具1の任意の他の動作値が用いられてもよい。
【0032】
電圧レギュレータ12による動作電圧の降下によって、バッテリ9の低電圧限界値を下回るさらなる電圧降下、およびこれによるこのバッテリ9のさらなる放電(過放電の虞)を避けるためのこの電動工具1の強制ロックアウトが防止される。
【0033】
本発明の場合は、電圧レギュレータ12は、パルス幅変調レギュレータ(PWMレギュレータ)として構成されており、すなわち電動モータ4の制御はいわゆるデューティサイクル(デューティ比;Tastgrad)によって行われる。このため電圧レギュレータ12はスイッチ4およびポテンショメータ5と接続されている。
【0034】
動作電圧の設定のため、またこの結果として回転数、トルク等の設定のため、スイッチ4が方向Aに押し込まれる。このスイッチ4の押し込みによってポテンショメータ5の位置が変化し、これに基づく信号が電圧レギュレータ12に送られる。ここでこの信号は、ポテンショメータ5のそれぞれの位置に対応する。スイッチ4が方向Aに押し込まれるほど、電動モータ6の回転数あるいはトルクは大きくなる。スイッチ4への押し込みが低減されると、すなわち不図示のばねによって方向Bに動くと、電動モータ6の回転数あるいはトルクも低減する。PWMレギュレータとして構成された電圧レギュレータ12は、回転数あるいはトルクの制御のためにデューティサイクルを電動モータ6に送る。ここでこのデューティサイクルは、スイッチ4あるいはポテンショメータ5のそれぞれの位置に対応している。
【0035】
たとえば低い温度のおかげでバッテリ9で供給される電圧が上記のモニタリング電圧限界値より低くなる場合、(既に上述したように)モニタリング装置14は、制御しながら電動機器1の動作に割り込む。このためこの電動機器1の動作電圧は、バッテリ電圧が再びモニタリング電圧限界値より上となるようにこのデューティサイクルを設定することよって決定される。以上により電動モータ1のパワー、すなわちその回転数あるいはトルクは低減されるが、しかしながら低電圧あるいは過放電の虞のために上記の低電圧ロックアウト部によってロックアウトされることは避けられる。
【0036】
バッテリ電圧が再びモニタリング電圧限界値より上となった場合、動作電圧の設定は再び現在のポテンショメータの位置から直接導出される。しかしながら再び上昇した動作電圧のために、このバッテリ電圧が早期に再びモニタリング電圧限界値より低くなることを防止するため、動作電圧の設定のためのそれぞれ次のサイクル期間で使用される電圧レギュレータのPWMデューティサイクルが制限される。この制限のために、現在のポテンショメータの位置から求められ得るPWMデューティサイクルか、または最後に使用されたPWMデューティサイクルにオフセット値を加えたものに相当するPWMデューティサイクルかで、これら2つのPWMデューティサイクルのどちらか低い方が選択される。
【0037】
たとえばこのオフセット値は、最後に使用されたデューティサイクルの10%に相当するものであってよい。しかしながら、適用形態により、これより大きいかまたは小さいオフセット値に決定されることも可能である。動作電圧の設定のために、このデューティサイクルが電動モータ6の制御に利用され、このデューティサイクルは上述の2つのデューティサイクルの低い方に相当する。電動工具1の使用者自身がポテンショメータ5あるいはスイッチ4の押し込みを低減し、これによって電圧レギュレータ12から対応するデューティサイクルが電動モータ6の制御のために送られる場合、このデューティサイクルが最後に送られたデューティサイクルにオフセット値を加えたものよりも低ければ、この低い方の(新たな、より少なく押し込まれたスイッチ位置から求められた)デューティサイクルが動作電圧の設定に使用される。この最後に使用されたデューティサイクルにオフセット値を加えたものが、(新たな、より少なく押し込まれたスイッチ位置から求められた)現在のあるいは最後に使用されたデューティサイクルより低い場合、この結果、(現在のデューティサイクルにオフセット値を加えた)このデューティサイクルが動作電圧の設定のために使用される。
【0038】
第1のデューティサイクルと第2のデューティサイクルの比較すること、および上記の2つのデューティサイクルの低い方を使用することによって、電動機器1の動作電圧は、再び早期にモニタリング電圧限界値を下回ることが避けられ、この結果低電圧ロックアウト部によってロックアウトされることが避けられ、かつ同時にこの電動機器1の使用を継続することができる。
【0039】
本願の明細書、特許請求の範囲、および図面に開示された特徴は、個別でも、また任意に組み合わせても、本発明の様々な実施形態の実施の重要なものとなりえる。
図1
【国際調査報告】