特表2016-537330(P2016-537330A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2016-537330ネグレリアフォーレリを生物的に駆除する方法、及び、ウィラーティアマグナ種の原生動物を含む殺菌剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2016-537330(P2016-537330A)
(43)【公表日】2016年12月1日
(54)【発明の名称】ネグレリアフォーレリを生物的に駆除する方法、及び、ウィラーティアマグナ種の原生動物を含む殺菌剤
(51)【国際特許分類】
   A01N 63/02 20060101AFI20161104BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20161104BHJP
   A01N 25/04 20060101ALI20161104BHJP
   C12N 1/10 20060101ALI20161104BHJP
   A61L 2/23 20060101ALI20161104BHJP
   A61L 9/01 20060101ALI20161104BHJP
   C02F 3/32 20060101ALI20161104BHJP
   A61L 101/52 20060101ALN20161104BHJP
【FI】
   A01N63/02 P
   A01P3/00
   A01N25/04 102
   C12N1/10
   A61L2/23
   A61L9/01 P
   C02F3/32
   A61L101:52
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-525560(P2016-525560)
(86)(22)【出願日】2014年10月22日
(85)【翻訳文提出日】2016年6月10日
(86)【国際出願番号】FR2014052691
(87)【国際公開番号】WO2015059411
(87)【国際公開日】20150430
(31)【優先権主張番号】1360347
(32)【優先日】2013年10月23日
(33)【優先権主張国】FR
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】514126153
【氏名又は名称】アモエバ
【氏名又は名称原語表記】AMOEBA
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 修平
(72)【発明者】
【氏名】プラッソン、ファブリース
(72)【発明者】
【氏名】マメリ,ムー ウーラジ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C058
4C180
4D040
4H011
【Fターム(参考)】
4B065AA86X
4B065AC20
4B065CA54
4B065CA60
4C058AA19
4C058AA20
4C058AA21
4C058AA23
4C058BB07
4C058JJ02
4C058JJ24
4C180AA07
4C180CB01
4C180EC03
4C180FF04
4D040DD01
4D040DD11
4H011AA02
4H011BB21
4H011BC18
4H011DA15
4H011DC05
4H011DD07
(57)【要約】
本発明は、ウィラーティアマグナ種の原生動物を用いることを特徴とし、ヒトまたは動物の体に適用される治療方法を除く、ネグレリア属、特に、ネグレリアフォーレリ種の増殖を抑制するプロセスに関し、さらにそのような原生動物を含む殺菌剤にも関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト又は動物の体に適用される治療方法を除く、ネグレリア属、特に、ネグレリアフォーレリ種の増殖を抑制するプロセスであって、
ウィラーティア属の原生動物を用いることを特徴とするプロセス。
【請求項2】
請求項1に係るプロセスにおいて、
気体若しくは液体の流れ、又は固体表面を、前記ウィラーティア属、特に、ウィラーティアマグナ種の原生動物により処理することを特徴とするプロセス。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法において、
前記原生動物は、有利には、ATCCに寄託番号PTA7824で寄託された株、又はATCCに寄託番号PTA7825で寄託された株に相当することを特徴とするプロセス。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のプロセスにおいて、
下水若しくは工業用水の配管網、工場若しくは原子力プラントの冷却回路、又は空調ネットワークの消毒のために実施されることを特徴とするプロセス。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか1項に記載のプロセスにおいて、
送水管内、又は、ヒト若しくは動物の食品と接触してもよいし、しなくてもよい表面におけるバイオフィルムの形成を抑制するために実施されることを特徴とするプロセス。
【請求項6】
ウィラーティア属、特にウィラーティアマグナ種の原生動物を含む消毒剤。
【請求項7】
請求項6に記載の消毒剤において、
前記原生動物は、ATCCに寄託番号PTA7824で寄託された株、又はATCCに寄託番号PTA7825で寄託された株に相当することを特徴とする消毒剤。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の消毒剤において、
水溶液又は懸濁液の形態であることを特徴とする消毒剤。
【請求項9】
ATCCに寄託番号PTA7824で寄託された株、又はATCCに寄託番号PTA7825で寄託された株に相当するウィラーティア属に属する原生動物。
【請求項10】
請求項6から8のいずれか1項に記載の殺菌剤、又は請求項9に記載の原生動物のネグレリアに対する殺菌剤としての使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネグレリア(Naegleria)属、特に、ネグレリアフォーレリ(Naegleria fowleri)種の存在、及びその増殖を生物的に抑制するための新規のプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
ネグレリアフォーレリ(N.f.)は、バルカンフィーダ(Vahlkampfiidae)科に属する自由生活アメーバである。このアメーバは、ヒトにおける深刻な病態の原因であり、この病態は非常に幸いなことに極めて珍しい(2007年に発見された235件):原発性アメーバ性髄膜脳炎(PAM)(Cervantes-Sandoval I, 2008; Kemble SK, 2012; TW, 2010; Su MY, 2013)。これらの自由生活アメーバによる感染症は、抗生物質治療により約1週間及び数週間のうちに破局的予後を有する(Su MY, 2013)。この感染症に対する真に効果的な治療は無いが、非常に幸運なことに、これらの疾病は稀であり、PAMを引き起こすには特定条件の同時発生が要求される。これらの特別な条件及び要求される種菌は、現在のところ依然として不明である。しかしながら、いくつかの薬剤及び抗生物質は感染症の進行に影響を及ぼすように見え、アンフォテリシンB、リファンピシン、及びミコナゾールなどは組み合わされた場合に、2又は3固体において効果的であることが証明された。1992年に、文献は、たった7件のPAM後の生存が証明され(Gautam PL, 2012)、2〜14歳の非常に若い被検者においてのみであって、被検者には治療及び感染症が多少の顕著な神経的後遺症を残したことを報告した。したがって、生存率は、エボラウイルスによる感染症についてよりも一層低い。それゆえ、この自由生活アメーバの監視及び抑制は、益々重要な優先事項となっている。
【0003】
一般的に、ネグレリアフォーレリは環境において汎存種分布を有するということが知られている(Martinez AJ, 1997)。なぜなら、このアメーバは、このアメーバが他の自由生活アメーバと共有する特徴である土壌、河川水、及び湖沼水(Jamerson M, 2009)、又は、産業排水、及びバイオフィルム(Goudot S, 2012; S. A. Huws, 2005)、から隔離されているためである。レジオネラ菌を含む複数の潜在的な病原菌は、自由生活アメーバの内部で生き延び複製するためのメカニズムを進化させた(Huang SW, 2010; De Jonckheere, 2011)。さらに、原子力発電所は数度分の河川水の再加熱によりネグレリアフォーレリアメーバの発現に大きく寄与するということが証明された。実際、ネグレリアフォーレリアメーバは、25°C〜45°Cの発現温度範囲で好熱性である(Visvesvara GS, 2007)。
【0004】
フランスにおいて11基を上回る原子力発電所を運転するEDFは、水中に検出されるネグレリアフォーレリのレベルに関するリスクを定量化した。
【0005】
このリスクをよりよく理解するために、EDFの研究調査部及び医学研究部は、水中のネグレリアフォーレリの濃度の関数として、泳いだ場合のPAMによる死のリスクを計算した。このリスクは、以下のように分析することができる。
【0006】
1回の水泳についてのリスク=ネグレリアフォーレリが濃度「c」で存在する水中で泳いだ場合に「n」個のネグレリアフォーレリの吸引の可能性(1回の水泳につき10mlの水が吸引される)
掛ける
「n」個のネグレリアフォーレリが吸引された場合の死の可能性(動物データに従ったモデリング)
最低推定を付与し、実際のデータに良好に適合する対数正規モデルを選択する場合(USA, Australia, New Zealand)、以下のリスクが得られる。
【0007】
水泳用水におけるN.f.の量nについての濃度リスク
1ネグレリアフォーレリ/リットル、リスク=10−8、すなわち、100,000,000回の水泳当たり1の死
10ネグレリアフォーレリ/リットル、リスク=1.45×10−7、すなわち、7,000,000回の水泳当たり1の死
100ネグレリアフォーレリ/リットル、リスク=7.24×10−6、すなわち、140,000回の水泳当たり1の死
1000ネグレリアフォーレリ/リットル、リスク=1.34×10−3、すなわち、746回の水泳当たり1の死
フランス公衆衛生高等審議会(CSHPF)の勧告によると、リットル当たり100ネグレリアフォーレリ(N.f.)の極限値を超過すると、水泳を禁止しなければならない(特に、ビュジェ、ショー、ダンピエール、ゴルフェッシュ、及びノジャンの原子力発電センター(CNPE)においてEDFにより2003年に行われたモノクロラミンによるリットル抗アメーバ薬処理の経験からのフィードバックに関する2004年5月4日のCSHPFの意見を参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
これに関連して、発明者らは、アメーバ属であるウィラーティアマグナ(W.m.)が自由生活アメーバであるネグレリアフォーレリを除去するということを全く予期外に証明した。この殺菌効果は、細菌であるレジオネラ菌、シュードモナス、及びリステリア菌などの他の細菌性剤に対するウィラーティアマグナの既に証明された捕食能力によりサポートされる(Bodennec Jacques 2006)。
【課題を解決するための手段】
【0009】
したがって、本発明の対象は、まず、ウィラーティア属、好ましくはウィラーティアマグナの原生動物を使用して、ネグレリア、特に、ネグレリアフォーレリの増殖を抑制するプロセスである。本発明に係るこのプロセスは、ヒト又は動物の体に適用される治療方法を含まない。本発明に係るプロセスにおいて、ウィラーティア属、特に、ウィラーティアマグナ種の原生動物により処理されるのは、通常は気体又は液体の流れである。しかしながら、固体表面であってもよい。
【0010】
本発明に係るプロセスは、特に、下水若しくは工業用水の配管網、例えば、原子炉タイプの工場の冷却回路、又は空調ネットワークの消毒に使用される。このプロセスを、送水管内、又は、ヒト若しくは動物の食品と接触してもよいし、しなくてもよい表面におけるバイオフィルムの形成を抑制するために実施することができる。
【0011】
原生動物は、処理しようとする管又はネットワークを循環する水又は液体に直接加えられてもよい。原生動物を、殺菌しようとする工業ネットワーク、煙突、プラント、工業製品の表面に、例えば、エアロゾルとしての水溶液の形態で噴霧することも可能である。
【0012】
本発明において使用される原生動物は、ATCCに寄託番号PTA7824として2006年8月21日に寄託された株、又は、ATCCに寄託番号PTA7825として2006年8月21日に寄託された株に相当していることが有利であり、これらの2つの菌種は、フランス国立科学研究センター(CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE(CNRS))−3 rue MichelAnge - 75794 PARIS CEDEX 16/France及びクロード・ベルナール・リヨン第1大学(UNIVERSITE LYON 1 CLAUDE BERNARD)−43 Boulevard du 11 Novembre 1918 -69622 VILLEURBANNE Cedex/Franceの名義で寄託された。
【0013】
ATCCに寄託番号PTA7824として寄託された株、又は、ATCCに寄託番号PTA7825として寄託された株に相当するウィラーティア属に属する原生動物は、本発明の不可欠な部分である。上記の寄託された株は、PCT国際出願公開WO2008/043969にも記載されている。
【0014】
したがって、このような原生動物は、消毒剤において、特に、ネグレリアフォーレリアメーバを排除するために、また、ネグレリアフォーレリの増殖及び汚染を抑制するために用いられてもよい。
【0015】
さらに、本発明の対象は、ウィラーティア属、特にウィラーティアマグナ種の原生動物を含む消毒剤である。ATCCに寄託番号PTA7824で寄託された株、又はATCCに寄託番号PTA7825で寄託された株に相当する原生動物が好ましい。本発明に係る消毒剤は、例えば、蒸留水を用いた水溶液又は水性懸濁液の形態であることが有利である。消毒剤は、例えばエアロゾル又は任意の他の適用方法として噴霧可能な形態であってもよい。
【0016】
ウィラーティア属、特に、ウィラーティアマグナ種の原生動物のネグレリアフォーレリ増殖阻害活性は、ウィラーティア属、特に、ウィラーティアマグナ種の存在及び不在においてネグレリアフォーレリの複製を比較することにより発明者らによって証明された。発明者らは、ネグレリアフォーレリ成長阻害を引き起こさない対照株として別の種の自由生活アメーバであるアカントアメーバ(Acanthamoeba)を使用することにより、ウィラーティアマグナ属によるこのネグレリアフォーレリ成長阻害の独自の特性も証明した。
【0017】
1週間未満で95%を上回る死亡率のヒトに対するネグレリアフォーレリリスクの治療的又は予防的な処理が行われない場合、本発明は、環境及びヒトに対する自然の影響によるこのアメーバ性疫病を抑制するための主な科学的進歩である。実際、EC規則1271/2008号は、現在使用されているモノクロラミンとは異なり、ウィラーティアマグナ株は危険なクラスに分類されず、何らかの危険性又は警告の推奨も言及されない、ということを現在認識している。
【0018】
さらに、本発明は、本発明の殺菌剤及び/又はウィラーティア属、特に、ウィラーティアマグナ種の原生動物の使用を対象とし、原生動物は、ネグレリアに対する生物致死剤として、ATCCに寄託番号PTA7824で寄託された株、又はATCCに寄託番号PTA7825で寄託された株に相当する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は共培養(ウィラーティアマグナ/ネグレリアフォーレリ)及びアメーバの対照固体培養の実験結果を示す。
図2図2は共培養(ウィラーティアマグナ/ネグレリアフォーレリ)及びアメーバの対照固体培養の実験結果を示す。
図3図3は共培養(ウィラーティアマグナ/ネグレリアフォーレリ)及びアメーバの対照固体培養の実験を示す。
図4図4a及び図4bは、ウィラーティアマグナアメーバの存在下での経時的なネグレリアフォーレリアメーバの生理学的状態を示す。図4aは、ウィラーティアマグナとの共培養におけるネグレリアフォーレリの迅速な生理学的分解の画像に対応する。図4bは、ネグレリアフォーレリにおけるウィラーティアマグナの「死の接吻」の現象を示す画像に対応する。
図5図5は共培養(アカントアメーバ・カステラーニ/ネグレリアフォーレリ)及びアメーバの対照固体培養の実験結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、実施例は、本発明の説明を可能にするものであるが、制限的なものでは全くない。
【0021】
1.材料及び方法
1.1.使用される株
アメーバ:使用される株は、以下の異なる3つのアメーバ性種に属する。
【0022】
ネグレリアフォーレリ(ATCC30809)
アカントアメーバ・カステラーニ(Acanthamoeba castellanii)(ATCC30010)
ウィラーティアマグナ(寄託番号PTA7824及びPTA7825としてATCCに寄託された株)
これらの3つの株は、GREINER(登録商標)チューブに3mlずつ分注された10%のウシ胎児血清を含むSCGYEM培地(Serum Casein Glucose Yeast Extract Medium)において無菌培養される。その維持において、増殖型は8〜9日毎に継代培養される。共培養のために、指数増殖期の最中に栄養体を有するように3〜4日の継代培養が用いられる。
【0023】
SCGYEM培地は以下のように得られる。
【0024】
カゼイン(MERCK,1.02244.010) 10g
NaHPO 1.325g
KHPO 0.8g
グルコース 2.5g
酵母エキス (DIFCO 0127−17−9) 5g
蒸留水 900ml
ウシ胎児血清 100ml
2.5mlのNaOH(1N)が、そしてその後、NaHPO及びKHPOが900mlの蒸留水に加えられる。ホットプレート上で少し温められた後、マグネチックスターラーを用いながらカゼインが徐々に加えられる。カゼインが溶解した後に、グルコース及び酵母エキスが加えられる。
【0025】
完全に溶解した後に、培地は、グラスファイバ(SARTORIUS SM 6513400)、その後に1μmメンブレン(WHATMAN 7190 004)を用いて連続的に濾過される。その後、その培地はガラス瓶にアリコートされる。その瓶は、120℃で20分間のオートクレーブにより滅菌される。培地の最終的な使用及び分配の前に、クリーンベンチ内で血清の割合が10%となるように、ウシ胎児血清が無菌的に加えられる。
【0026】
1.2.ウィラーティアマグナ及びネグレリアフォーレリのアメーバ性原料混濁液の調製
各初期アメーバ性混濁液(原料混濁液)の調製は、SCGYEM培地において培養された各アメーバの無菌培養の4つのフラスコ(T175ml)を用いて実施される。ネグレリアフォーレリ、アカントアメーバ、及びウィラーティアマグナのこれらの原料アメーバ性混濁液は、指数増殖期の終了時に回収され、培養開始後4〜5日で一般的には得られる。
【0027】
回収されるアメーバ濃度を上昇させるため、フラスコを5〜10分間氷浴させ、その後、できる限り多くのアメーバを収集するために手動で攪拌する。
【0028】
これら4つのフラスコの内容物を組み合わせて得られたアメーバ性混濁液をTHOMAセルにおいてカウントする([C]/ml)。
【0029】
1500gで10分間の遠心分離によりSCGYEM培養培地を除去するために、アメーバ性混濁液をFALCON(登録商標)タイプの50mlチューブへ移す。第1遠心分離の結果生じるアメーバ性ペレットは、滅菌蒸留水により2回洗浄され、1500gで10分間遠心分離される。2回の洗浄の終了後、最終的なペレットは40mlの体積の滅菌水に取り出される。
【0030】
1.3.ネグレリアフォーレリ(株ATCC30809)に対するウィラーティアマグナの殺菌効果の証明
アメーバ性共培養は、10mlの無菌PAS(Page’s Amoeba Saline)培地を含むT25mlフラスコにおいて実施される。アメーバ性共培養のフラスコは、Malassez血球計で事前にカウントされた無菌アメーバ性懸濁液から1×10ウィラーティアマグナ/ml及び1×10ネグレリアフォーレリ/mlの割合で播種される。ネグレリアフォーレリによるウィラーティアマグナの感染は、ネグレリアフォーレリ/ウィラーティアマグナの比率を1に固定して実施される。T25mlフラスコは、30℃のインキュベータにおいてインキュベートされる。
【0031】
PAS培地は以下のように得られる。
【0032】
0.22μmフィルタを用いて溶液1及び2を無菌的に濾過する。1リットルのPAS培地を取得するために、0.5mlの溶液1と5.0mlの溶液2とを加え、その後、体積を1リットルになるように滅菌蒸留水で調整する。
【0033】
ウィラーティアマグナ及びネグレリアフォーレリの対照アメーバ性個体培養は、10mlの蒸留PAS培地においてT25mlフラスコにおいて分離して培養される。
【0034】
フラスコは、Malassez血球計で事前にカウントされた無菌アメーバ性懸濁液からウィラーティアマグナ対照用の1×10ウィラーティアマグナ/ml及びネグレリアフォーレリ対照用の1×10ネグレリアフォーレリ/mlの割合で播種される。対照T25mlフラスコは、30℃のインキュベータにおいてインキュベートされる。
【0035】
各条件は3重に行われる。Malassezセルでの各カウントは5回繰り返される。実験は、3か月の期間に亘って三(3)回繰り返された。
【0036】
共培養及び対照フラスコにおけるネグレリアフォーレリ及びウィラーティアマグナアメーバの最後は、以下の方法で決定される。
【0037】
アメーバ濃度は、ネグレリアフォーレリによる感染後120時間の間監視される。各時間間隔(3時間、その後は24時間毎)において、共培養及び対照フラスコは、サンプリングされ、2つのアメーバの細胞成長の観点とそれらの形態学的及び動体学的状態の観点との双方から試験される。各フラスコについて、試験された。
【0038】
アメーバは、Malassezセルで直接カウントされる。
【0039】
120時間で、ネグレリアフォーレリアメーバのレベルが低いため、Malassezセルでの信頼性のおけるカウント、よって、最確数(MPN)法の共同使用ができなくなる。アメーバをカウントするために広く使用されているこの方法は、より正確であるという利点を有するが、全体であり生きているアメーバを全体ではあるが死んでいるアメーバから区別するという利点も有する。
【0040】
2.結果
図1図2、及び図3は、共培養(ウィラーティアマグナ/ネグレリアフォーレリ)及びアメーバの対照固体培養の実験を示す。
【0041】
これらは、固体培養におけるアメーバの各個体群の進化と比較した、1の初期ウィラーティア/ネグレリア比率での共培養後のウィラーティアマグナ及びネグレリアフォーレリアメーバの各個体群の自己進化を示す。
【0042】
図4a及び図4bは、ウィラーティアマグナアメーバの存在下での経時的なネグレリアフォーレリアメーバの生理学的状態を示す。図4aは、ウィラーティアマグナとの共培養におけるネグレリアフォーレリの迅速な生理学的分解の画像に対応する。図4bは、ネグレリアフォーレリにおけるウィラーティアマグナの「死の接吻」の現象を示す画像に対応する。
【0043】
図5は、共培養(アカントアメーバ・カステラーニ/ネグレリアフォーレリ)及びアメーバの対照固体培養の実験を示す。
【0044】
図1図2、及び図3において、ダイヤ形の点(◆)を有する、ウィラーティアマグナと称される曲線は、滅菌PAS培地における培養において単独でウィラーティアマグナの測定された濃度を説明している。
【0045】
方形の点(■)を有する、ネグレリアフォーレリと称される曲線は、滅菌PAS培地における培養において単独でネグレリアフォーレリの測定された濃度を説明している。
【0046】
三角形の点(△)を有する、W+NFと称される曲線は、滅菌PAS培地におけるネグレリアフォーレリとの共培養においてウィラーティアマグナの測定された濃度を説明している。
【0047】
十字形の点(×)を有する、NF+Wと称される曲線は、滅菌PAS培地におけるウィラーティアマグナとの共培養においてネグレリアフォーレリの測定された濃度を説明している。
【0048】
データは、Malassezセルでカウントされた、ミリリットル(ml)当たりの細胞全体の濃度として表されている。
【0049】
図4aにおいて、黒い矢印はウィラーティアマグナの存在を示し、白い矢印は全体又は断片のネグレリアフォーレリの存在を示す。
【0050】
図4bにおいて、黒い矢印はウィラーティアマグナの存在を示し、白い矢印はネグレリアフォーレリの存在を示す。白い円は、ネグレリアフォーレリ細胞の輪郭を具体化している。この「死の接吻」現象は、グランザイムを通過させ、標的細胞のアポトーシスを引き起こす接触として文献(Berke G. Source Department of Cell Biology, 1995)に記載されている。
【0051】
図5において、ダイヤ形の点(◆)からなる曲線Aは、アカントアメーバ・カステラーニの固体培養を表している。
【0052】
三角形の点(△)からなる曲線A+NFは、ネグレリアフォーレリとの共培養におけるアカントアメーバ・カステラーニの濃度を表している。
【0053】
方形の点(◆)からなる曲線NFは、ネグレリアフォーレリの固体培養を表している。
【0054】
十字形の点(×)からなる曲線NF+Aは、アカントアメーバ・カステラーニとの共培養におけるネグレリアフォーレリの濃度を表している。
【0055】
2.1.ウィラーティアマグナはネグレリアフォーレリの成長を完全に阻害する
ウィラーティアマグナとの共培養におけるネグレリアフォーレリの進化を表す図1図2、及び図3の十字形の曲線により示されるように、ネグレリアフォーレリ個体群曲線において、約24時間で、下落が非常に迅速に起こる。ネグレリアフォーレリ個体群におけるこの減少は、ウィラーティアマグナの存在下においてのみ観察される。24時間での実験1、2、及び3(図1図2、及び図3)の固体培養におけるネグレリアフォーレリの対照曲線(方形の点の曲線)は、全て成長している。また、固体培養におけるネグレリアフォーレリのレベルは24時間で実質的に2倍となる。
【0056】
顕微鏡観察は早くも24時間でウィラーティアマグナとの共培養におけるネグレリアフォーレリに重要な形態的変化を確認することが注目される(図4)。ネグレリアフォーレリ細胞の生理学的状態は、広がった栄養型からより丸いストレスを受けた形態へ変化するが、まだシスト形には類似していない。ネグレリアフォーレリ細胞の内部は、内部液胞、アメーバの成長のサインをマスクして不透明となる。ウィラーティアマグナの存在下におけるネグレリアフォーレリ細胞のサイズは、共培養の早くも3時間で固体培養におけるサイズの半分未満である(図4a)。ウィラーティアマグナアメーバの捕食のモードは、ファゴサイトーシスに基づく。図4bは、最初の24時間において、「死の接吻」に類似した阻害の現象を証明している。ウィラーティアマグナによるネグレリアフォーレリのファゴサイトーシスは実際に起こるが、このファゴサイトーシスにおいてネグレリアフォーレリを含むウィラーティアマグナの存在により共培養の25時間後にしか裏付けられない(データは報告されていない)。
【0057】
実施された全ての実験は、120時間でネグレリアフォーレリの完全な除去を伴う最大阻害効果を証明する。120時間でのMalassezセルにおける読み取りは、存在し且つ全体であるネグレリアフォーレリ細胞をカウントするが、このカウントを用いて死細胞を生細胞から区別することはできない。NNA寒天+大腸菌での二重の読み取りにより、栄養型及び/又はシスト型のみから派生したネグレリアフォーレリ生細胞をカウントすることが可能になる。
【0058】
以下の表は、Malassezセルでの読み取りにより取得されたアメーバ(ネグレリアフォーレリ)及びMPN法により取得されたアメーバ(ネグレリアフォーレリ)の濃度を示す。
【0059】
感染後120時間で採取したウィラーティアマグナ/ネグレリアフォーレリ共培養の実験1、2、及び3(図1〜3を参照)の各フラスコのアリコートは、大腸菌の層により被覆されたNNA寒天に播種される。
【0060】
各種の濃度の決定は、シャーレ当たりのピンポイントされたフロントの数をカウントすることにより測定され、アメーバ濃度をそこから推定するために、MPN表に示される。
【0061】
Nf=ネグレリアフォーレリ
W.m=ウィラーティアマグナ

【0062】
この表は、NNA寒天におけるネグレリアフォーレリフロントの不在を確認し、120時間で生きているシスト型又は栄養型のネグレリアフォーレリの不在を示す。
【0063】
発明者らは、ネグレリア属、特に、ネグレリアフォーレリ種に対するウィラーティアマグナの殺菌効果の予期しない特性が他のアメーバ性種により共有されないことを証明した。
【0064】
図5に示すように、アメーバ属であるアカントアメーバ・カステラーニ及びネグレリアフォーレリの共培養は、固体培養において測定されたこれらの種の濃度と比べて、これら2つの種の各濃度に対して何らかの影響を及ぼすことはない。この図は、別のアメーバ属、アカントアメーバタイプのネグレリアフォーレリの個体群の進化に対する相互作用がこれら2つのアメーバの共培養中に無いことを示す。
【0065】
ウィラーティアマグナだけは、ネグレリアアメーバ、特に、ネグレリアフォーレリ種の成長を阻害するこの特性を有する。
【0066】
文献
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図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2016年6月10日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グレリア属の増殖を抑制するプロセスであって、
ATCCに寄託番号PTA7824で寄託された株、又はATCCに寄託番号PTA7825で寄託された株に相当するウィラーティアマグナ種の原生動物を接触させることを含むプロセス。
【請求項2】
請求項1に係るプロセスにおいて、
ネグレリアフォーレリ種の増殖を抑制するためのプロセス。
【請求項3】
請求項1に記載のプロセスにおいて、
気体若しくは液体の流れ、又は固体表面を、前記ウィラーティアマグナ種の前記原生動物により処理することを特徴とするプロセス。
【請求項4】
請求項1に記載のプロセスにおいて、
下水若しくは工業用水の配管網、工場若しくは原子力プラントの冷却回路、又は空調ネットワーク又は工業製品の表面の消毒のために実施されることを特徴とするプロセス。
【請求項5】
請求項1に記載のプロセスにおいて、
送水管内、又は、ヒト若しくは動物の食品と接触してもよいし、しなくてもよい表面におけるバイオフィルムの形成を抑制するために実施されることを特徴とするプロセス。
【請求項6】
処理しようとする管又はネットワークを循環する水又は液体におけるネグレリアを除去するための方法であって、
ATCCに寄託番号PTA7824として寄託された株又はATCCに寄託番号PTA7825として寄託された株に相当する原生動物を加えることを含む方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法において、
前記原生動物を水溶液又は懸濁液の形態で加える方法。
【国際調査報告】