(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2016-537451(P2016-537451A)
(43)【公表日】2016年12月1日
(54)【発明の名称】ポリ芳香族酸化物の製造方法およびこれにより製造されたポリ芳香族酸化物
(51)【国際特許分類】
C10C 3/04 20060101AFI20161104BHJP
B82Y 30/00 20110101ALI20161104BHJP
【FI】
C10C3/04 A
B82Y30/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-522775(P2016-522775)
(86)(22)【出願日】2015年1月15日
(85)【翻訳文提出日】2016年4月13日
(86)【国際出願番号】KR2015000432
(87)【国際公開番号】WO2015111876
(87)【国際公開日】20150730
(31)【優先権主張番号】10-2014-0007692
(32)【優先日】2014年1月22日
(33)【優先権主張国】KR
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】チ・ウン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ウォン・チェ・イ
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・チン・チェ
(72)【発明者】
【氏名】ウォン・チョン・クォン
(72)【発明者】
【氏名】ヒョン・ナム
(72)【発明者】
【氏名】クォン・ナム・ソン
【テーマコード(参考)】
4H058
【Fターム(参考)】
4H058DA13
4H058DA40
4H058EA05
4H058EA12
(57)【要約】
本発明は、(a)複数種のポリ芳香族炭化水素と水を反応器内に投入した後撹拌するステップと、(b)前記反応器の内部温度を150〜300℃に加温した後、酸素を10重量%以上含む気体を投入して、内部の酸素分圧2〜30barに加圧するステップと、(c)酸素と複数種のポリ芳香族炭化水素とを反応させて酸化させるステップとを含むポリ芳香族酸化物の製造方法およびこれにより製造されたポリ芳香族酸化物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)複数種のポリ芳香族炭化水素と水を反応器内に投入した後撹拌するステップと、
(b)前記反応器の内部温度を150〜300℃に加温した後、酸素を10重量%以上含む気体を投入して、内部の酸素分圧2〜30barに加圧するステップと、
(c)酸素と複数種のポリ芳香族炭化水素とを反応させて酸化させるステップとを含むポリ芳香族酸化物の製造方法。
【請求項2】
前記(b)ステップで投入される気体は、酸素を20重量%〜100重量%含む気体であることを特徴とする請求項1に記載のポリ芳香族酸化物の製造方法。
【請求項3】
前記ポリ芳香族炭化水素は、分子量200〜1500のポリ芳香族炭化水素であることを特徴とする請求項1に記載のポリ芳香族酸化物の製造方法。
【請求項4】
前記ポリ芳香族炭化水素は、ベンゼン環5〜50個含むことを特徴とする請求項1に記載のポリ芳香族酸化物の製造方法。
【請求項5】
前記ポリ芳香族炭化水素は、化石燃料またはその産物から得られたピッチであることを特徴とする請求項1に記載のポリ芳香族酸化物の製造方法。
【請求項6】
(d)前記(c)ステップの後、反応器を冷却させるステップをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のポリ芳香族酸化物の製造方法。
【請求項7】
(e)冷却後、その結果物を精製して複数種のポリ芳香族炭化水素酸化物の混合物を得るステップをさらに含むことを特徴とする請求項6に記載のポリ芳香族酸化物の製造方法。
【請求項8】
前記ポリ芳香族酸化物は、炭化水素化合物またはこれらの誘導体化合物の分散剤用であることを特徴とする請求項1に記載のポリ芳香族酸化物の製造方法。
【請求項9】
前記炭化水素化合物は、カーボンナノチューブ、グラフェン、または黒鉛のうちのいずれか1つ以上であることを特徴とする請求項8に記載のポリ芳香族酸化物の製造方法。
【請求項10】
請求項1に記載の製造方法により製造されたポリ芳香族酸化物。
【請求項11】
全体酸化物対比、酸素を5〜20重量%含むことを特徴とする請求項10に記載のポリ芳香族酸化物。
【請求項12】
全体酸化物対比、酸素を10〜17重量%含むことを特徴とする請求項11に記載のポリ芳香族酸化物。
【請求項13】
炭化水素化合物またはこれらの誘導体化合物の分散剤用であることを特徴とする請求項10に記載のポリ芳香族酸化物。
【請求項14】
前記炭化水素化合物は、カーボンナノチューブ、グラフェン、または黒鉛のうちのいずれか1つ以上であることを特徴とする請求項13に記載のポリ芳香族酸化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ芳香族酸化物の製造方法およびこれにより製造されたポリ芳香族酸化物に関し、より詳細には、酸素を一定量以上含む気体雰囲気下、高温、高圧で水熱反応を利用して酸化処理する、グラフェン分散剤として利用可能なポリ芳香族酸化物の製造方法およびこれにより製造されたポリ芳香族酸化物
【背景技術】
【0002】
ポリ芳香族炭化水素は、ベンゼン環などの芳香族物質を多数含んでいる化合物であって、一般的に構造材料の強化材に使用される炭素繊維の製造過程において前駆体などとして使用されている。
【0003】
前記ポリ芳香族炭化水素を酸化させる方法として、従来は、例えば、化石燃料またはその産物から得られたピッチ(pitch)を原料として、濃硝酸(HNO
3)、硫酸(H
2SO
4)、またはこれらを混合してピッチを酸化させる方式などを利用していた。
【0004】
しかし、前記のような従来の方法でポリ芳香族酸化物を製造すると、硝酸や硫酸のような強酸を使用するため、使用者に大きな危険をもたらしかねないだけでなく、反応および精製工程でNOxのような窒素酸化物が生成され、これによる腐食を防ぐために関連装備が必要で費用が増加する問題、および反応後に酸性産業廃水が大量に発生して処理問題による費用が増加する問題があった。
【0005】
従来の発明としては、例えば、特開2008−248412号公報などでは、炭素繊維用分散剤に対する研究が行われたが、従来のポリ芳香族酸化物の製造方法に対する目立った改善がなかった。
【0006】
したがって、強酸のような酸化剤を使用することなく、容易にポリ芳香族酸化物を製造できる方法に対する研究が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−248412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
の従来技術の問題を解決すべく、
本発明は、強酸のような酸化剤を使用することなく、酸素を一定量以上含む気体雰囲気上で高温高圧の酸化反応を通してポリ芳香族酸化物を製造できる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
の目的を達成するために、
本発明は、a)複数種のポリ芳香族炭化水素と水を反応器内に投入した後撹拌するステップと、(b)前記反応器の内部温度を150〜300℃に加温した後、酸素を10重量%以上含む気体を投入して、内部の酸素分圧2〜30barに加圧するステップと、(c)酸素と複数種のポリ芳香族炭化水素とを反応させて酸化させるステップとを含むポリ芳香族酸化物の製造方法を提供する。
【0010】
また、本発明は、前記製造方法により製造されたポリ芳香族酸化物を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明のポリ芳香族酸化物の製造方法によれば、強酸のような酸化剤を使用することなく、空気雰囲気上で高温高圧の酸化反応を通して容易にポリ芳香族酸化物を製造できるという利点がある。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のポリ芳香族酸化物の製造方法および前記製造方法により製造されたポリ芳香族酸化物について詳細に説明する。
【0013】
本発明のポリ芳香族酸化物の製造方法は、(a)複数種のポリ芳香族炭化水素と水を反応器内に投入した後撹拌するステップと、(b)前記反応器の内部温度を150〜300℃に加温した後、酸素を10重量%以上含む気体を投入して、内部の酸素分圧2〜30barに加圧するステップと、(c)酸素と複数種のポリ芳香族炭化水素とを反応させて酸化させるステップとを含む。
【0014】
まず、本発明のポリ芳香族酸化物の製造方法は、(a)ステップで複数種のポリ芳香族炭化水素と水を反応器内に投入した後撹拌する。
【0015】
前記(a)ステップにおいて、水と共に反応器に投入されるポリ芳香族炭化水素としては特別な制限はないが、好ましくは、分子量200〜1500のポリ芳香族炭化水素が用いられる。また、前記ポリ芳香族炭化水素は特別な制限はないが、好ましくは、ベンゼン環5〜50個含むものが用いられる。前記ポリ芳香族炭化水素は、前記条件を満足する化石燃料またはその産物から得られたピッチを使用すればよく、好ましくは、ポリ芳香族炭化水素を含む炭素系混合物が用いられる。
【0016】
前記反応器としては特別な制限はないが、好ましくは、水熱反応器が用いられる。
【0017】
以後、本発明のポリ芳香族酸化物の製造方法は、(b)前記反応器の内部温度を150〜300℃に加温した後、酸素を10重量%以上含む気体を投入して、内部の酸素分圧2〜30barに加圧する。
【0018】
前記(a)ステップでは、内部温度を150〜300℃に加温して高温状態を維持すると同時に、酸素(O
2)を含む気体を投入することにより、酸素(O
2)を反応器内に供給すると同時に、内部の酸素分圧を2〜30barの高圧状態に維持させることができる。前記反応器内の内部温度が150℃未満であれば、酸化反応がよく起こらず、ポリ芳香族酸化物の酸素含有量が十分でなくなる問題が生じ、300℃を超えると、温度上昇による追加の効果がわずかになる。また、前記反応器内に投入される気体は、酸素を10重量%以上含んでもよく、好ましくは酸素を20〜100重量%含んでもよく、より好ましくは20〜60重量%含んでもよい。前記酸素の含有量が10重量%未満であれば、酸化反応がよく起こらず、気体の投入による酸化力が低下する問題がある。また、前記反応器内の内部圧力が2bar以下であれば、酸化反応がよく起こらず、ポリ芳香族酸化物の酸素含有量が十分でなくなる問題が生じ、30barを超えると、圧力上昇による追加の効果がわずかになる。
【0019】
以後、本発明のポリ芳香族酸化物の製造方法は、(c)ステップにおいて、酸素と複数種のポリ芳香族炭化水素とを反応させて酸化させる。
【0020】
従来のポリ芳香族酸化物の製造方法が硝酸や硫酸のような強酸または別途の酸化剤を用いてポリ芳香族炭化水素を酸化させるのに対し、本発明は、前記(c)ステップにおいて、酸素を高温高圧状態でポリ芳香族炭化水素と反応させて酸化させる。前記(c)ステップの反応は、3時間〜15時間反応させることが好ましい。前記反応時間が3時間より小さければ、酸化反応が十分でなく、酸化物の酸素含有量が低くなる問題があり、15時間より大きければ、反応時間による効果の上昇があまりなくなる。
【0021】
本発明のポリ芳香族酸化物の製造方法は、(d)冷却ステップをさらに含むことができる。
【0022】
前記(d)ステップの冷却は、急速に冷却すればよく、好ましくは10〜30分内に反応器を30〜80℃まで冷却させることができる。
【0023】
本発明のポリ芳香族酸化物の製造方法は、(e)精製ステップをさらに含むことができる。
【0024】
本発明の(e)精製ステップは、前記(d)ステップで冷却した後、その結果物を精製して複数種のポリ芳香族炭化水素酸化物の混合物を得ることができる。
【0025】
前記精製の方法としては特別な制限はないが、好ましくは、結果物を遠心分離して酸化物を精製することができる。
【0026】
本発明は、前記製造方法により製造されたポリ芳香族酸化物を提供する。
【0027】
前記製造方法により製造されたポリ芳香族酸化物は、全体酸化物対比、酸素を5〜20重量%含んでもよく、好ましくは、全体酸化物対比、酸素を10〜17重量%含んでもよい。
【0028】
前記製造方法により製造されたポリ芳香族酸化物は特別な制限はないが、炭化水素化合物またはその誘導体化合物の分散剤として使用すればよい。前記炭化水素化合物としては、カーボンナノチューブ、グラフェン、および黒鉛のうちのいずれか1つ以上が用いられる。
【実施例】
【0029】
以下、本発明の理解のために好ましい実施例を提示するが、下記の実施例は本発明を例示するものに過ぎず、本発明の範疇および技術思想の範囲内で多様な変更および修正が可能であることは当業者にとって明らかであり、このような変更および修正が添付した特許請求の範囲に属することも当然である。
【0030】
実施例
ポリ芳香族酸化物の製造
[実施例1]
ハステロイで製造された、マグネチック撹拌機付きの水熱反応器(U−20040624、UTO systems)に、ピッチ(ポスコ社製)0.9g、蒸留水150gを投入して撹拌した。内部温度を200℃まで上げた後、内部の酸素分圧が4barになるまで、酸素含有量が20重量%の圧縮空気を投入した。13時間水熱反応過程を進行させ、冷却水を反応器内部のチューブに注入して、内容物を30分内に50℃まで急速冷却させた。以後、フィルターを用いて分散剤を回収した後、15時間、100℃の真空オーブンにて乾燥させて、ポリ芳香族酸化物を製造した。
【0031】
[実施例2]
ピッチ2gを使用し、4時間水熱反応を進行させたことを除いては、実施例1と同様の方法でポリ芳香族酸化物を製造した。
【0032】
[比較例1]
ピッチ2gを使用し、蒸留水200gを使用し、内部温度を130℃にして2時間水熱反応を進行させたことを除いては、実施例1と同様の方法でポリ芳香族酸化物を製造した。
【0033】
[比較例2]
前記実施例で使用したピッチをそのまま用いた。
【0034】
実験例
前記実施例1〜2および比較例1で製造したポリ芳香族酸化物および比較例2のピッチの試料1mgを、ホイル上で900℃で加熱し始めて1500℃まで加熱温度を上昇させた。前記加熱によってそれぞれの試料から気体が発生し、発生した気体を捕集した後、これをElemental Analyzer(Flash2000、Thermo Fisher Scientific)を用いて元素分析し、それぞれの炭素、酸素、水素、および窒素の元素含有量を測定して表1に示した。
【0035】
【表1】
【0036】
前記表1に示しているように、本発明の実施例1〜2のポリ芳香族酸化物の酸素含有量は、実施例1は16.3重量%、実施例2は11.3重量%で、4.3重量%の比較例1および酸素が検出されなかった比較例2に比べて、酸素の含有量がはるかに高いことを確認することができた。
【国際調査報告】