(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2016-538095(P2016-538095A)
(43)【公表日】2016年12月8日
(54)【発明の名称】所定の生物学的構造体の非侵襲的検知装置
(51)【国際特許分類】
A61B 5/107 20060101AFI20161111BHJP
A61B 10/00 20060101ALI20161111BHJP
A61B 5/15 20060101ALI20161111BHJP
【FI】
A61B5/10 300Z
A61B10/00 E
A61B5/14 300Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2016-549651(P2016-549651)
(86)(22)【出願日】2014年10月21日
(85)【翻訳文提出日】2016年6月27日
(86)【国際出願番号】IB2014065506
(87)【国際公開番号】WO2015059636
(87)【国際公開日】20150430
(31)【優先権主張番号】FI2013A000255
(32)【優先日】2013年10月23日
(33)【優先権主張国】IT
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】516124649
【氏名又は名称】インソーノ ソチエタ レスポンサビリタ リミタータ
(74)【代理人】
【識別番号】100064388
【弁理士】
【氏名又は名称】浜野 孝雄
(74)【代理人】
【識別番号】100194113
【弁理士】
【氏名又は名称】八木田 智
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(72)【発明者】
【氏名】ペロシ,ジュリオ
(72)【発明者】
【氏名】トリチェッリ,ジョナタン
(72)【発明者】
【氏名】シオリア,ファビオ
(72)【発明者】
【氏名】マゾッティ,レオナルド
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038TA10
4C038UA10
4C038VA04
4C038VB11
4C038VB12
4C038VC02
4C038VC05
(57)【要約】
本発明に係る肉眼で見える領域に関連した所定の生物学的構造体の非侵襲的検知装置は、
a)検査されるべき生物学的構造体によって選択的に吸収されるように適合された赤外線光及び可視領域の帯域を有する光で検査されるべき領域を照射する手段と、
b)カメラの入口で光を、赤外線領域に関するスペクトル帯域を有する光を備えた光ビームと、可視領域のスペクトル帯域を有する光ビームとに分離する手段と、
c)赤外線領域に関する分離された光ビームの情報内容に関連する画像と、可視領域における光ビームの情報寄与度に関連する画像との二つの画像を獲得する手段と、
d)二つの画像を重ねて、検査されるべき隠された生物学的構造体の形状を重ねることによって目に見えるように検査されるべき領域を示す一つの画像を生成する手段と
e)前記一つの画像を見るためのビューワーと
を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
・特定の生物学的構造体の、少なくとも形状及び空間位置の中の少なくとも特定のパラメータを検知するために、所定の方法で、検出されるべき前記特定の生物学的構造体特有の吸収及び/又反射、及び/又は他の相互作用に晒されるスペクトル帯域を有する一つ又は複数の第一光ビームを用いて検査すべき領域を照射するように適合された少なくとも一つの光源と、
・検査するべき前記領域に向けられる視野を有し、前記少なくとも一つの光源による照射に続けて、検査するべき前記領域から来る一つ又は複数の光放射線に関連する画像を獲得するように適合された画像獲得ユニットと
を備えた所定の生物学的構造体の非侵襲的検知装置であって、
特に、前記画像が、情報寄与度から成る少なくとも二つのグループに関連し、
・第一の情報寄与度グループが、生物学的構造体に少なくとも関連し、即ち、光放射線が、少なくとも部分的に、周囲の生物学的組織及び/又は構造体とは異なる方法で、関心のある生物学的構造体によって散乱され、反射され、又は吸収されるような帯域に対応するスペクトル帯域を有する少なくとも一つの第一光放射線に関連した情報寄与度であり、その結果、前記画像が、前記関心のある生物学的構造体の重要なパラメータを示し及び/又は検知することができ、
・第二の情報寄与度グループが、前記第一の情報寄与度グループとは、少なくとも部分的に異なり、検査の対象とされる関心のある前記生物学的構造体に対して、前記第一光放射線と異なる方法で相互作用し、前記画像獲得ユニットの視野にある別の生物学的構造体に関連し、
さらに、該非侵襲的検知装置が、
・電子的手段及び少なくとも一つのビューワーを備え、
・前記電子的手段が、
・関心のある生物学的構造体に関する少なくとも第一の情報寄与度グループを処理し、かつ、
・少なくとも一つの画像において、関心のある生物学的構造体に関する前記第一グループの処理済情報寄与度と、選択的に処理される、前記画像獲得ユニットの視野にある前記別の生物学的構造体に関する前記第二グループの情報寄与度とを結合する
ように適合され、
・前記ビューワーが、少なくとも前記画像を観察することを可能にするよう適合され、
その結果、装置の使用者が、検査するべき領域から、ある距離離した前記装置を用いて、前記少なくとも一つのビューワーで観察することで、同じ視野にある前記別の生物学的構造体の画像と組み合わせられた、前記関心のある生物学的構造体の少なくとも一つの処理済画像を、連続して見るようにした
所定の生物学的構造体の非侵襲的検知装置。
【請求項2】
・少なくとも二つの光源が、各々、
・一つ又は複数の前記第一光ビームを用いて検査されるべき領域を照射するよう適合された少なくとも一つの前記第一光源と、
・前記第一光源から放射された前記第一光ビームの帯域とは、少なくとも部分的に異なるスペクトル帯域を有する一つ又は複数の第二光ビーム用の少なくとも一つの第二光源であって、前記第二光ビームが、前記第一光ビームとは異なる方法で、検査されるべき前記領域と光学的に相互作用するように適合され、前記第二の情報寄与度グループを含む画像を生成するようにされている第二光源と
を示し、
・前記第一及び第二光源の前記光ビームが、前記二つの光源によって、実質的に同時に放射され、
・画像獲得ユニットが、実質的に同時に、前記少なくとも一つの第一画像と、前記少なくとも一つの第二画像とを獲得し、
・該非侵襲的検知装置が、二つの対向する主表面を有し、第一表面に前記ビューワーが設けられ、第二の対向する表面上に、前記画像獲得ユニットの光導入口が設けられ、
好ましくは、装置の電子管理・処理及び観察構成要素の殆どの部分が、実質的に前記二つの表面の間に配置され、
装置の空間的な拡張部分が実質的に平坦であり、
前記画像獲得ユニットの光学ユニットの光軸、即ち、分離される前の放射線の主たる光軌道が、装置の平坦な拡張部分に直交し、
好ましくは、前記ビューワーがフラットディスプレイを有し、前記光軸が前記フラットディスプレイに直交し、
好ましくは、前記光軸が、前記ビューワーの中心を通って直交する軸と一致する
請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第二の情報寄与度のグループから成る情報寄与度が、検査されるべき領域の形状や空間位置を画定するような、検査されるべき領域の外観及び/又は表面要素に関し、
前記第二の情報寄与度グループを含む画像が、検査されるべき領域の表面外観及び/又は他の表面要素を表示することができる
請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記少なくとも一つの光源によって照射された後に、検査すべき領域から来る散乱及び/又は反射光ビームを、少なくとも二つの異なる光放射線に分離するように適合されたスプリット手段を備え、
前記分離される光放射線が、それぞれ、
光放射線が、一つ又は複数の周囲の生物学的構造体とは、少なくとも部分的に異なる方法で、関心ある生物学的構造体によって散乱され、反射され、又は吸収されることができる帯域に対応する第一スペクトル帯域を有する少なくとも一つの第一光放射線と、
前記第一スペクトル帯域とは少なくとも部分的に異なり、前記第一光放射線とは少なくとも部分的に異なる方法で、関心ある生物学的構造体によって、散乱され、反射され又は吸収されることができる第二スペクトル帯域を有する少なくとも一つの第二光放射線とから成り、
前記画像獲得ユニットが、前記スプリット手段によって分離された前記光放射線にぞれぞれ関連付けされた画像、即ち、前記少なくとも一つの光放射線と、前記少なくとも一つの第二光放射線とそれぞれ関連付けされた画像を獲得するように適合され、
特に、関心ある生物学的構造体に関する前記第一情報寄与度グループに属する情報寄与度を有する少なくとも一つの第一画像と、前記第二情報寄与度グループに関する情報寄与度を有する第二画像とを獲得するように適合され、
前記電子的手段が、
関心ある生物学的構造体に関する情報寄与度を含む、獲得された前記少なくとも一つの第一画像、又は前記少なくとも一つの獲得された第一画像の処理と、
第二情報寄与度グループの情報寄与度を含む、前記少なくとも一つの獲得された第二画像、又は前記少なくとも一つの獲得された第二画像の処理と
を組み合わせるように適合されている
請求項1〜3の何れか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記少なくとも一つの第二光放射線が、少なくとも部分的に、可視スペクトル帯域に含まれるスペクトル帯域を有し、
前記画像獲得ユニットが、それぞれ、前記スプリット手段によって分離された前記光放射線に関連付された複数の画像を獲得するように適合され、即ち、それぞれ前記少なくとも一つの第一光放射線及び前記少なくとも一つの第二光放射線に関連付けされた画像を獲得するように適合され、
特に、関心のある生物学的構造体に関連する第一情報寄与度グループに属する情報寄与度を有する少なくとも一つの第一画像と、検査されるべき領域の表面外観に関する情報寄与度を有する少なくとも一つの第二画像とを獲得するように適合されている
請求項4に記載の装置。
【請求項6】
隠された生物学的構造体に関する少なくとも前記第一情報寄与度グループを処理するように適合された前記電子的手段が、
前記関心ある生物学的構造体の形状に関する部分を強め、即ち、ハイライトするように適合され、
好ましくは、前記第一及び第二画像グループの前記情報寄与度を含む前記画像の獲得、処理及び結合をリアルタイムに実行するように適合されている
請求項1〜5の何れか一項に記載の装置。
【請求項7】
少なくとも二つの光源が、それぞれ、
・一つ又は複数の前記第一光ビームによって、検査されるべき領域を照射するよう適合された少なくとも一つの前記第一光源と、
・前記第一光源によって放射された前記第一光ビームのスペクトル帯域とは、少なくとも部分的に異なるスペクトル帯域を有する一つ又は複数の第二光ビーム用の少なくとも一つの第二光源と
を示し、
前記第二光ビームが、前記第一光ビームとは異なる方法で、検査されるべき前記領域と光学的に相互作用し、前記第二情報寄与度グループを含む画像を生成するよう適合されている
請求項1〜6の何れか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記第二光源が、少なくとも可視帯域のスペクトル帯域を有する第二光ビームを放射する
請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記第一及び第二光源の前記光ビームが、前記二つの光源によって実質的に同時に放射される
請求項7又は8に記載の装置。
【請求項10】
前記少なくとも一つの光源の明度及び/又は強度を調整するための手段を有する
請求項1〜9の何れか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記画像獲得ユニットが、少なくとも二つの異なる画像獲得カメラを有し、
少なくとも一つの第一カメラが、前記スプリット手段によって分離された前記少なくとも一つの第一光放射線に由来し、かつ、前記生物学的構造体の観察の基準に関連付けられた少なくとも一つの第一画像を獲得するようにされ、かつ、
少なくとも一つの第二カメラが、前記少なくとも一つの第二分離光放射線に由来する少なくとも一つの第二画像を獲得するようにされ、
好ましくは、前記少なくとも一つの第二カメラが、検査されるべき領域の形状及び空間位置を画定するように、好ましくは、少なくとも部分的に可視帯域、即ち、その帯域において、表面生物学的構造体及び/又は検査されるべき領域の表面要素の視野によって関連情報が較正され得る周波数帯域にあるスペクトル帯域を有する前記少なくとも一つの第二光放射線に由来する少なくとも一つの第二画像を獲得するように適合され、
前記カメラが、好ましくは、画像センサである
請求項4に記載の装置。
【請求項12】
それを通して検査すべき前記領域から来る光放射線を受光する少なくとも一つの光学ユニットを備え、
前記光学ユニットが、前記スプリット手段及び同じ視野を観察するように配置された前記少なくとも二つのカメラを備えている
請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記少なくとも一つの光学ユニットが、光軌道、即ち、検査されるべき領域から、対応する画像獲得カメラに達するルートを画定し、
これらの光軌道が、全て同じ光路長を有する
請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記少なくとも一つの光学ユニットが、少なくとも一つの光学的焦点合わせシステムを備え、
前記光学的焦点合わせシステムが、前記光学ユニットの入口、又は、前記カメラの一つ又は両方の入口に配置される
請求項12又は13に記載の装置。
【請求項15】
前記光学的焦点合わせシステムが、少なくとも一つのズームシステムを有する
請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記スプリット手段と前記第一カメラとの間に配置され、
光放射線が、周囲の生物学的構造体とは異なる方法で、隠された生物学的構造体によって散乱され、反射され、又は吸収されることを可能にするような帯域に対応するスペクトル帯域、好ましくは700nmから1cmの間、より好ましくは700nmから1000nmの間のほぼ赤外線帯域におけるスペクトル帯域を有する少なくとも一つの光ビームの前記第一カメラに向けての通過を許すように適合された第一フィルタを備えている
請求項11〜15の何れか一項に記載の装置。
【請求項17】
前記スプリット手段と前記第二カメラとの間に配置され、
可視帯域に属するスペクトル帯域を有する少なくとも一つの光ビームの、前記第二カメラに向けた通過を許すように適合された第二フィルタを備えている
請求項11〜16の何れか一項に記載の装置。
【請求項18】
前記領域から来る光放射線を分割するように適合された前記スプリット手段が、
所定のスペクトル帯域に属する光放射線を、所定の画像獲得領域に向けて反射し、かつ、他のスペクトル帯域に属する他の光放射線を、他の画像獲得領域に送るように適合された少なくとも一つのミラーを有する
請求項11〜17の何れか一項に記載の装置。
【請求項19】
それを通して、検査されるべき領域から来る全ての光放射線を受光する少なくとも一つの単一光学ユニットを備え、
前記光学ユニットが、前記スプリット手段及び同じ視野を観察するように配置された前記少なくとも二つのカメラを備えている
請求項11〜18の何れか一項に記載の装置。
【請求項20】
検査されるべき同じ領域に向けられ、全体的に重ねられた視野を有する少なくとも二つの前記光学ユニットを備え、
前記電子的手段に、検査されるべき領域の三次元再構築を実行する、前記少なくとも二つの光学ユニットから獲得した画像の三次元結合用手段が設けられ、
好ましくは、関心のある関連生物学的構造体を有する検査されるべき領域を三次元でビューワー上で観察するために眼鏡が設けられる
請求項11〜19の何れか一項に記載の装置。
【請求項21】
画像獲得ユニットが、実質的に同時に前記少なくとも一つの第一画像と、少なくとも一つの第二画像とを獲得する
請求項1〜20の何れか一項に記載の装置。
【請求項22】
二つの向き合う主表面を備え、
第一表面上に前記ビューワーが設けられ、
対向する第二表面上に前記画像獲得ユニットの光学入力部が配置され、
好ましくは、装置の電子管理・処理及び観察構成要素の殆どが、実質的に、前記二つの表面の間に設けられ、
装置の空間の広がりが実質的に平坦である
請求項1〜21の何れか一項に記載の装置。
【請求項23】
前記画像獲得ユニットの光学ユニットの光軸、即ち、分離される前の放射線の主たる光学的軌道が、装置の平坦な空間に直交し、
好ましくは、前記ビューワーがフラットディスプレイを備え、かつ、前記光軸が前記フラットディスプレイと直交し、
好ましくは、前記光軸が、前記ビューワーの中心を直交して通過する軸と一致する
請求項22に記載の装置。
【請求項24】
前記少なくとも一つの光源によって放射され、検出されるべき生物学的構造体によって所定の方法で吸収されるように適合された前記少なくとも一つの第一光ビームが、約700nmから1,000,000nmの間の波長の領域、即ち、好ましくは、おおよそ赤外線領域の中で選択された第一スペクトル帯域を有し、
好ましくは、前記少なくとも一つの第二光源によって放射されるか、又は、周囲から放射される少なくとも一つの光ビームが、約300nmから800nmの間の、即ち、おおよそ可視領域の中のスペクトル帯域を有する
請求項1〜23の何れか一項に記載の装置。
【請求項25】
・検出されるべき生物学的構造体による所定の方法での吸収、散乱、反射及び/又は他の典型的な光学的相互作用にさらされるスペクトル帯域に含まれるスペクトル帯域を有する一つ又は複数の光ビーム、並びに可視帯域にある波長、即ち、スペクトル帯域を有する一つ又は複数の光ビームを用いて検査されるべき領域を照射し、
・前記照射の後に、検査されるべき前記領域から来る散乱され、反射され、及び/又は典型的な光学的相互作用によって相互作用された光ビームを、少なくとも二つの異なる光放射線に分離し、
少なくとも一つの第一光放射線が、光放射線が周囲の生物学的組織及び/又は構造体とは異なる方法で、関心のある生物学的構造体によって散乱され、反射され、又は吸収されるような帯域に対応するスペクトル帯域を有し、
少なくとも一つの第二光放射線が、可視スペクトル帯域に少なくとも部分的に含まれるスペクトル帯域を有し、
・前記分離された光放射線と、それぞれ関連付けられた画像を獲得し、即ち、前記少なくとも一つの第一光放射線及び前記少なくとも一つの第二光放射線とそれぞれ関連付けられた画像を獲得し、
特に、少なくとも一つの第一画像が、関心のある生物学的構造体に関する情報寄与度を有し、
少なくとも一つの第二画像が、検査されるべき領域の表面外観に関する情報寄与度を有し、
・関心ある生物学的構造体に関する情報寄与度を含む、獲得された前記少なくとも一つの第一画像、又は前記少なくとも一つの獲得された第一画像の処理と、
検査されるべき領域の表面外観に関する情報寄与度を含む、前記少なくとも一つの獲得された第二画像、又は前記少なくとも一つの獲得された第二画像の処理と
を組み合わせて、
関心のある生物学的構造体に関する情報寄与度の画像と、検査されるべき領域の表面外観に関する情報寄与度の画像の両方を含む単一の出力画像を生成し、
・前記単一の画像又は、診断要求によって正確に識別される単一の結合表示を少なくとも一つのビューワーで観察し、
前記少なくとも一つのビューワーを観察する使用者が、検査されるべき領域に、この領域に組み合わせる方法で重ねられた、又は代わりに提案された領域を見て、前記生物額的構造体の形状を確認する
身体の表面近くにある血管の非侵襲的検知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人間の身体の生物学的構造体の診断又は生体検査の分野に関し、より詳細には、関心のある所定の生物学的構造体、限定するわけではないが、好ましくは、表在血管のような隠された生物学的構造体を非侵襲的に検知する装置に関する。また、本発明は、例えば、この装置によって実行される所定の生物学的構造体を非侵襲的に検知する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
公知のように、画像(写真のように固定された画像、一連の「フレーム」から成るビデオ)は、光源から来る光(即ち、電磁放射線)の観察される場所の対象物上での作用と、これらの対象物から、人間の目、光学センサ等であり得る画像獲得センサへ向かって光が「戻る」方法との結果である。光源によって照射された電磁波の物理的特性、言い換えれば、その波長(おそらく、波長のスペクトル帯域、実際には、常に、照射され、非常に狭い帯域のための放射線である電磁波のビームが、それらの波長において僅かに変動する)並びに、それによって電磁波(より明確には、ある帯域の電磁波)が当てられる現実の場所(その場所を「占める」又は「形成する」現実の構造体)が波長と相互作用する方法、及び、それによってセンサが現実の場所から来る電磁波(この場所と相互作用した結果、電磁波源によって送られてきた電磁波に関して一般的に変化させられた電磁波)を受信する方法の結果(波長、強度、傾き等)によれば、センサによって提供される画像には、異なる情報寄与度が設けられることになり、即ち、画像を見る人に異なる情報を与えることになる。例えば、与えられた場所が、可視のスペクトル帯域を有する光によってのみ照射され、かつ、その場所が可視光及び赤外線光に対する感度を有するセンサによって観察される場合、センサによって生成される画像は可視であるものに関することになり、かつ、画像に関連付けられた関連情報内容は、画像の中で観察され、可視帯域に関連付けられたものに関することになる。代わりに、同じ場所が、赤外線帯域におけるスペクトル帯域のみを有する光によってのみ照射された場合、同じセンサで生成される画像は、可視におけるそれに関して異なるものになり、かつ、画像に関連付けられた関連情報内容は、先に説明した情報内容とは異なるものになる。
【0003】
用語「情報寄与度」は、センサに当たる戻り光ビームのスペクトル帯域に関連する画像の中に見られるものに関連付けられた全てのものとして意図される。例えば、可視の場合、空間、形状、色等に関する寄与度があり得、一方、赤外線の場合には、空間及び形状に関連する情報であり得るが、例えば、(赤外線放射線のより強い貫通力のために)肉眼では見えない「構造体」に関する情報及び放射された放射線の強さに基づく構造体の温度に関する情報でもあり得る。一般的に、それぞれの身体及び物質は吸収スペクトルを有し、即ち、特定の物質とその波長が相互作用するため白色光が小さい強度で反射される周波数の窓を有する。これは、照射として使用される光の吸収のために、照射の後にサンプルによって散乱される光が大幅に減衰される帯域をハイライトするサンプルを形成する物質についての情報を得ることが可能であるすべての分光機器の基礎となる物理的原理である。
【0004】
異なる物質は、紫外線、可視光又は赤外線の何れかの部分で吸収スペクトルを有する。この理由のため、異なる光学帯域に対応する幾つかの画像を持つことにより、その組成が他と異なる場所を形成する異なる構造体に関する情報を得ることが可能になる。
【0005】
この原理に従って、採血を行うことを容易にするために、また、静脈組織と相互作用する如何なる場合においても、表在血管を非侵襲的に検知する装置は、基本的に次の三つの動作原理に基づく。血液が供給されない組織によるNIR(近赤外線)領域における波長、即ち、スペクトル帯域を有する光の反射、可視光による透過照射及びNIR光による透過照射。
【0006】
NIR光による透過照射装置は、NIR光ビームを、受光器を横切るように照射する。これらの装置は、検査するべき組織に接触して動作し、装置に設けられたディスプレイに静脈を表示する。装置の側部から赤いレーザ光が放射され、どこに注射するのかを医師に示す。このポイントは、ディスプレイ上には表示されないが、それがスクリーンから出るポイントにおける静脈の方向に基づいて外挿される。見ることを特に詳述したが、操作上の観点から見ると、この装置は、患者と接触させているので非常に使用に難く、使用後に継続的に滅菌するか、又は交換可能な保護部材を使用しなければならない。さらに、それは、小児用としては、手足のサイズが制限され、従って、静脈のサイズも制限されているので、特に使用し難い。
【0007】
代わりに、NIR反射装置は、反射したNIR光を使用し、可視光を通して分析される対象物(患者)の表面に隠された構造物を投影する方法を利用して、概して埋もれた構造体(血管)を検出する。実際、隠された構造体は、NIR光を使用してスキャンされ、それらの形態は、実質的に、その装置によって、それらを隠す表面、例えば、患者の皮膚に投影される。
【0008】
特許の観点から、患者の皮膚表面によって隠された生物学的構造体を検出する問題に対処する様々な特許がある。
【0009】
例えば、米国特許第4817622号には、身体の一部、典型的には、肘の内側が赤外線光源によって照射されている。ビデオ画像を生成するためのビデオカメラが、皮膚を観察するために使用される。前記ビデオカメラには、そのすぐ上に配置されたモニタが接続されている。前記ビデオカメラは、赤外線放射線に対する感度を有する。画像は、広い範囲で照射される身体の部分に対して、静脈のような赤外線光を吸収する部分のみを示す。また、信号を増幅し、赤外線画像のコントラストを強めるための回路が設けられる。この解決方法は、静脈構造体を見ることができるようにするためだけという制限があり、静脈構造体が外面に関してどこに位置しているかを使用者が理解することを助けることはできない。
【0010】
米国特許第6032070号は、血管のような解剖学的構造体を、周囲の組織に対してハイコントラストで、観察するための方法及びシステムを開示している。このシステムは、ヘルメットに赤外線画像を照射し受信するためのシステムを統合することを提供する。このシステムには、強調されたコントラストで構造体の細胞学的画像を供給するシステム及び方法が設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第4817622号
【特許文献2】米国特許第6032070号
【発明の概要】
【0012】
本発明の目的は、好ましくは、限定するものではないが、表在血管のような関心ある所定の生物学的構造体の非侵襲的検知装置を提供することにあり、使用者が該装置を容易に使用できるようにし、使用者に対して、関心のある生物学的構造体の観察において「拡張現実」の間隔を与えることにある。
【0013】
本発明の他の重要な目的は、使用している間に装置と患者との間の接触を最低限まで減らすことができる関心ある所定の生物学的構造体の非侵襲的検知装置を提供することにある。
【0014】
本発明のさらに別の重要な目的は、患者のどの部位にでも容易に使用することができる関心ある所定の生物学的構造体の非侵襲的検知装置を提供することにある。
【0015】
これらの目的及び以下の説明でより明らかになる他の目的は、好ましくは、限定するものではないが、特許請求の範囲の請求項1に示した表在血管等の隠された生物学的構造体のような、関心ある所定の生物学的構造体の非侵襲的検知装置を提供することにある。
【0016】
第一の特徴によれば、本発明は、
・特定の生物学的構造体の、少なくとも形状及び空間位置の中の少なくとも特定のパラメータを検知するために、所定の方法で、検出されるべき前記特定の生物学的構造体特有の吸収及び/又反射、及び/又は他の相互作用に晒されるスペクトル帯域を有する一つ又は複数の第一光ビームを用いて検査すべき領域を照射するように適合された少なくとも一つの光源と、
・検査するべき前記領域に向けられる視野を有し、前記少なくとも一つの光源による照射に続けて、検査するべき前記領域から来る一つ又は複数の光放射線に関連する画像を獲得するように適合された画像獲得ユニットと
を備えた所定の生物学的構造体の非侵襲的検知装置であって、
特に、前記画像が、情報寄与度から成る少なくとも二つのグループに関連し、
・第一の情報寄与度グループが、生物学的構造体に少なくとも関連し、即ち、光放射線が、少なくとも部分的に、周囲の生物学的組織及び/又は構造体とは異なる方法で、関心のある生物学的構造体によって散乱され、反射され、又は吸収されるような帯域に対応するスペクトル帯域を有する少なくとも一つの第一光放射線に関連した情報寄与度であり、その結果、前記画像が、前記関心のある生物学的構造体の重要なパラメータを示し及び/又は検知することができ、
・第二の情報寄与度グループが、前記第一の情報寄与度グループとは、少なくとも部分的に異なり、検査の対象とされる関心のある前記生物学的構造体に対して、前記第一光放射線と異なる方法で相互作用し、前記画像獲得ユニットの視野にある別の生物学的構造体に関連し、
さらに、該非侵襲的検知装置が、
・電子的手段及び少なくとも一つのビューワーを備え、
・前記電子的手段が、
・関心のある生物学的構造体に関する少なくとも第一の情報寄与度グループを処理し、かつ、
・少なくとも一つの画像において、関心のある生物学的構造体に関する前記第一グループの処理済情報寄与度と、選択的に処理される、前記画像獲得ユニットの視野にある前記別の生物学的構造体に関する前記第二グループの情報寄与度とを結合する
ように適合され、
・前記ビューワーが、少なくとも前記画像を観察することを可能にするよう適合され、
その結果、装置の使用者が、検査するべき領域から、ある距離離した前記装置を用いて、前記少なくとも一つのビューワーで観察することで、同じ視野にある前記別の生物学的構造体の画像と組み合わせられた、前記関心のある生物学的構造体の少なくとも一つの処理済画像を、連続して見るようにした
所定の生物学的構造体の非侵襲的検知装置に関する。
【0017】
組織の「典型的な相互作用」の語は、全ての実現可能な公知の基本的な光学的相互作用に関し、その中の吸収、反射及び散乱は、周りの組織から検査に供される特定の組織の性質を識別することができ、又は、成長、老化及び/又は他の生物学的、解剖学的及び病理学的因子の状態に関する情報を提供し得る。典型的な相互作用の中には、電磁放射線の吸収に由来する他の特定の相互作用を含むことも可能であり、リン光や蛍光発光等及び/又はそれらの組み合わせが挙げられます。また、これらの場合、その組織を部分的であっても隠す及び/又は囲むことができる他の周囲の組織に関して特定の方法での検査に供された組織の状態とリンクした上述したパラメータとリンクした情報を得ることも可能である。
【0018】
用語「生物学的構造体」は、例えば、人の身体の細胞構造の何れかを意図している。例えば、表皮が生物学的構造体として考慮され、同様に、画定された「構造」は持っていないが、腫瘍細胞のグループも、本発明では、生物学的構造体として考慮される。従って、この用語は、人間の身体の明確に画定された構造、又は、より一般的には、生物学的活動によって特徴付けられる部分を意味するものであり得る。
【0019】
「隠された」生物学的構造又は「隠された」構造は、従来の目視検査の間に完全ではないが部分的に見ることができる組織又は組織の組み合わせのような何等かの生物学的構造を意味するものである。特に、他の組織の下にある場合、又は肉眼による検出には合わない寸法の場合、それは完全には見ることができない。例えば、隠された構造体は、少なくとも、内皮細胞、上皮下結合組織、血管平滑筋及び血液から成る静脈血管を生成する組織の組み合わせを参照し得る。この構造体は、表在血管を除いて、たびたび、表皮によって殆ど完全に隠される。この種の構造体が、それを覆う組織に関して深くなればなる程、可視光がこれらの外側の組織を貫通することができなくなるので、それは隠される。他の生物学的構造体は、全てではなく部分的に隠され、それらの一部は、完全に視覚分析に供される。例えば、潰瘍のような幾つかの皮膚疾患に対しては、従来の視覚分析が外層で実行され得るが、最も内側の層に関する情報は何ら得ることができず、それらの働き(動脈又は静脈)は検知され得ない。さらに、最も外側部分では、視覚分析を通した一連の生理学的及び病理学的パラメータを検知することができない。なぜなら、それらが、可視光の応答に対して相互に関連がなく、他の種類の放射線にだけ相互関連があるからである。さらに、最も内側の層は可視光によってはアクセスできず、また、(解剖病理学的レベルでそれを特徴付ける)その微細構造の幾つかは肉眼では検知できないという両方の理由で、肌の有害な新生物(黒色腫)のような他の構造体は、視診を通しては完全には検出することができない。さらにまた、この種の従来の分析では、脈管化の度合い、浸潤の度合い並びに診断や治療介入及び外科的介入の計画のために非常に役立つ他のファクタを検知することができない。
【0020】
本発明は、「関心のある」で限定された生物学的構造体に関し、「完全に隠されている」ことは必ずしも必要ではなく、即ち、可視光による照射を通した簡単な検査では、全ての望ましい情報を検知することができない構造体に関する。
【0021】
本発明の実施例によれば、前記第二の情報寄与度グループの情報寄与度は、検査されるべき領域の表面の外形及び/又は表面要素に関し得、検査されるべき領域の外部形状及び空間における位置を画定するようにし、その結果、前記第二グループの情報寄与度を含む画像が、検査されるべき前記領域の表面の外形及び/又は他の表面の要素を表すことができるようにしている。
【0022】
本発明の実施例によれば、好ましくは、装置の電子的手段が、関心ある生物学的構造体に関する少なくとも前記第一情報寄与度グループを処理するように適合されており、この特別な場合に、電子的手段は、前記関心ある生物学的構造体の形状に関する部分を強調し、ハイライトするようにプログラムされ、好ましくは、前記第一及び第二グループの前記情報寄与度を含む画像の獲得、処理及び結合が、リアルタイムに実行される。
【0023】
好ましい実施例によれば、本発明に係る装置は、前記少なくとも一つの光源によって照射された後に、検査すべき領域から来る散乱及び/又は反射光ビームを、少なくとも二つの異なる光放射線に分離するように適合されたスプリット手段を備え、
前記分離される光放射線が、それぞれ、
光放射線が、一つ又は複数の周囲の生物学的構造体とは、少なくとも部分的に異なる方法で、関心ある生物学的構造体によって散乱され、反射され、又は吸収されることができる帯域に対応する第一スペクトル帯域を有する少なくとも一つの第一光放射線と、
前記第一スペクトル帯域とは少なくとも部分的に異なり、前記第一光放射線とは少なくとも部分的に異なる方法で、関心ある生物学的構造体によって、散乱され、反射され又は吸収されることができる第二スペクトル帯域を有する少なくとも一つの第二光放射線とから成り、
前記画像獲得ユニットが、前記スプリット手段によって分離された前記光放射線にそれぞれ関連付けされた画像、即ち、前記少なくとも一つの光放射線と、前記少なくとも一つの第二光放射線とそれぞれ関連付けされた画像を獲得するように適合され、
特に、関心ある生物学的構造体に関する前記第一情報寄与度グループに属する情報寄与度を有する少なくとも一つの第一画像と、前記第二情報寄与度グループに関する情報寄与度を有する第二画像とを獲得するように適合され、
前記電子的手段が、
関心ある生物学的構造体に関する情報寄与度を含む、獲得された前記少なくとも一つの第一画像、又は前記少なくとも一つの獲得された第一画像の処理と、
第二情報寄与度グループの情報寄与度を含む、前記少なくとも一つの獲得された第二画像、又は前記少なくとも一つの獲得された第二画像の処理と
を組み合わせるように適合されている。
【0024】
実際、この別の実施例によれば、検査されるべき領域から来る光ビームは、二つ又はそれ以上の異なるスペクトル帯域を持つ一連の光放射線に分離され得、これら一連の光放射線は、画像獲得ユニットによって互いに別個に検出され得、従って、特定の一連の光放射線のスペクトル帯域のタイプに関連付けされた画像が得られる。
【0025】
好ましくは、前記少なくとも一つの第二光放射線が、少なくとも部分的に、可視スペクトル帯域に含まれるスペクトル帯域を有し、前記画像獲得ユニットが、それぞれ、前記スプリット手段によって分離された前記光放射線に関連付された複数の画像を獲得するように適合され、即ち、それぞれ前記少なくとも一つの第一光放射線及び前記少なくとも一つの第二光放射線に関連付けされた画像を獲得するように適合され、特に、関心のある生物学的構造体に関連する第一情報寄与度グループに属する情報寄与度を有する少なくとも一つの第一画像と、検査されるべき領域の表面外観に関する情報寄与度を有する少なくとも一つの第二画像とを獲得するように適合され、従って、ビューワーは、好ましくは、単一の画像で、外側から検査されるべき領域を表示することができ、言い換えれば、肉眼で見ることができるように表示することができ、同時に、肉眼で見ることができない同じ領域にある関心ある一つ又は複数の生物学的構造体を表示することが可能になる。この解決手段により、最適な「拡張現実」が得られ、医療従事者の作業を容易にする。例えば、作業者が患者の腕にある静脈を見つけることを必要としている場合、この装置は、その「現実」の視界における腕、即ち、あたかも肉眼で見ているかのような腕と、腕の中のそれらの実際の位置にある静脈との両方をビューワー上に表示することができる。
【0026】
好ましい実施例によれば、隠された生物学的構造体に関する少なくとも前記第一情報寄与度グループを処理するように適合された前記電子的手段が、前記関心ある生物学的構造体の形状に関する部分を強め、即ち、ハイライトするように適合され、好ましくは、前記第一及び第二画像グループの前記情報寄与度を含む前記画像の獲得、処理及び結合をリアルタイムに実行するように適合されている。
【0027】
好ましくは、装置は、少なくとも二つの光源を有し、前記少なくとも二つの光源が、それぞれ、
・一つ又は複数の前記第一光ビームによって、検査されるべき領域を照射するよう適合された少なくとも一つの前記第一光源と、
・前記第一光源によって放射された前記第一光ビームのスペクトル帯域とは、少なくとも部分的に異なるスペクトル帯域を有する一つ又は複数の第二光ビーム用の少なくとも一つの第二光源と
を示し、
前記第二光ビームが、前記第一光ビームとは異なる方法で、検査されるべき前記領域と光学的に相互作用し、前記第二情報寄与度グループを含む画像を生成するよう適合される。
【0028】
好ましくは、前記第一及び第二光源の前記光ビームは、前記二つの光源によって実質的に同時に放射される。
【0029】
この方法において、異なるスペクトル帯域を有する異なる光による検査するべき領域の「専用」の照射により、光の種類に従って相互に分化された情報寄与度を有し、その後、所望の出力を得るために相互に組み合わせられ得る複数の画像を得ることで、分化した方法で、それらに当てられる特定のタイプの光に作用する様々な生物学的構造体を分析することを可能にする。
【0030】
好ましい実施例によれば、第二光源が、少なくとも可視のスペクトル帯域を有する一つ又は複数の第二光ビームを放射する。この方法では、可視のスペクトル帯域を有する光を用いた検査される領域の「専用」の照射により、装置の周りにおける周囲の光の状態に関係なく、最適な収率で、可視の情報寄与度を有する画像を獲得することを可能にする。
【0031】
好ましい実施例では、装置は、前記少なくとも一つの光源の明度及び/又は強度を調整するための手段を有する。装置が、周囲の光の状態に基づいて、及び/又は検査される領域からの距離に基づいて、及び/又は検査される領域の生体構造及び/又は検査される領域の色に基づいて、前記少なくとも一つの光源(特に、ある場合には可視光の光源)の明度及び/又は強度を見積り得るという意味においては、この調整は、「自動的」に実行され得る。
【0032】
好ましい実施例によれば、少なくとも一つの前記光源は、平面分布LEDを備える。
【0033】
好ましい実施例によれば、各光源は、それと検査に供される空間との間に置かれる適当な分散手段を通して、表示画面においてより均一に形成される。
【0034】
好ましくは、画像獲得ユニットは、実質的に同時に少なくとも一つの第一画像及び少なくとも一つの第二画像を獲得する。
【0035】
好ましい実施例によれば、前記画像獲得ユニットが、少なくとも二つの異なる画像獲得カメラを有し、少なくとも一つの第一カメラが、前記スプリット手段によって分離された前記少なくとも一つの第一光放射線に由来し、かつ、前記生物学的構造体の観察の基準に関連付けられた少なくとも一つの第一画像を獲得するようにされ、かつ、少なくとも一つの第二カメラが、前記少なくとも一つの第二分離光放射線に由来する少なくとも一つの第二画像を獲得するようにされ、好ましくは、前記少なくとも一つの第二カメラが、検査されるべき領域の形状及び空間位置を画定するように、好ましくは、少なくとも部分的に可視帯域、即ち、その帯域において、表面生物学的構造体及び/又は検査されるべき領域の表面要素の視野によって関連情報が較正され得る周波数帯域にあるスペクトル帯域を有する前記少なくとも一つの第二光放射線に由来する少なくとも一つの第二画像を獲得するように適合され、前記カメラが、好ましくは、画像センサである。
【0036】
好ましくは、装置は、それを通して検査すべき前記領域から来る光放射線を受光する少なくとも一つの光学ユニットを備え、前記光学ユニットが、前記スプリット手段及び同じ視野を観察するように配置された前記少なくとも二つのカメラを備える。好ましくは、この光学ユニットは、光軌道、即ち、検査されるべき領域から、対応する画像獲得カメラに達するルートを画定し、これらの光軌道が、全て同じ光路長を有する。
【0037】
好ましくは、前記光学ユニットが、少なくとも一つの光学的焦点合わせシステムを備え、 前記光学的焦点合わせシステムが、前記光学ユニットの入口、又は、前記カメラの一つ又は両方の入口に配置され、好ましくは、前記光学的焦点合わせシステムが、少なくとも一つのズームシステムを有する。
【0038】
実施例によれば、装置は、それを通して、検査される前記領域から来る全ての光放射線を受光する少なくとも一つの単一光学ユニットを有し、この単一光学ユニットは、前記スプリット手段と、同じ視野を観察するように配置された前記少なくとも二つのカメラとを有する。
【0039】
好ましい実施例によれば、装置は、前記スプリット手段と前記第一カメラとの間に配置されたフィルタを有し、該フィルタが、光放射線が、周囲の生物学的構造体とは異なる方法で、隠された生物学的構造体によって散乱され、反射され、又は吸収されることを可能にするような帯域に対応するスペクトル帯域、好ましくは700nmから1,000,000nmの間、より好ましくは700nmから1000nmの間のほぼ赤外線帯域におけるスペクトル帯域を有する少なくとも一つの光ビームの前記第一カメラに向けての通過を許すように適合されている。
【0040】
好ましい実施例によれば、装置は、前記スプリット手段と前記第二カメラとの間に配置されたフィルタを有し、該フィルタが、可視帯域に属するスペクトル帯域を有する少なくとも一つの光ビームの、前記第二カメラに向けた通過を許すように適合されている。
【0041】
好ましくは、前記領域から来る光放射線を分割するように適合された前記スプリット手段が、所定のスペクトル帯域に属する光放射線を、所定の画像獲得領域に向けて反射し、かつ、他のスペクトル帯域に属する他の光放射線を、他の画像獲得領域に送るように適合された少なくとも一つのミラーを有する。
【0042】
好ましくは、前記領域から来る光放射線を分割するように適合された前記スプリット手段が、装置の光学的入口と画像受信ユニットとの間に配置されたビームスプリッタ等を有し、可視帯域の波長を有する光ビームの、前記第二カメラに向けた伝送を可能にし、かつ、赤外線帯域における波長を有するビームの前記第一カメラに向けた反射を可能にし、好ましくは、前記ビームスプリッタが、キューブビームスプリッタ、プリズムビームスプリッタ、3波長ビームスプリッタ、又はホットミラー等で構成される。
【0043】
好ましくは、装置は、光学ユニットの入口に偏光装置を有する。
【0044】
好ましい実施例では、装置は、二つの対向する主表面を有し、第一表面に前記ビューワーが設けられ、第二の対向する表面上に、前記画像獲得ユニットの光導入口が設けられている。有利には、装置の電子管理・処理及び観察構成要素の殆どが、実質的に、前記二つの表面の間に設けられ、装置の空間の広がりが実質的に平坦である。
【0045】
好ましくは、ビューワーは、タッチスクリーンモニタであり、好ましくは、装置を管理するコントローラは、モニタのタッチスクリーンインターフェイスによって全体的に管理される。
【0046】
好ましい実施例によれば、装置は、前記ビューワー及び前記画像獲得ユニットを有する装置の主たる部分を支持するための支持構造体に接続されたサポートアームを備え、その結果、前記主たる部分が、検出領域の上方の空間に安定的に位置決めされ得る。好ましくは、電源への前記主たる部分の電気的接続部が、前記サポートアームに一体的に設けられ、好ましくは、前記支持構造体は、基部又は負荷支持構造体に可逆的に固定するための装置である。好ましくは、このサポートアームは、連結タイプであり、好ましくは、アームは、少なくとも一つのモータ駆動式のジョイントを有し、好ましくは、前記少なくとも一つのジョイントのモータ駆動による動きは、前記タッチスクリーンによって管理される。
【0047】
有利には、このアームによって、前記ビューワー及び前記画像獲得ユニットを有する装置の前記主たる部分と、前記アームとの間に可逆連結手段を設けることができ、アームから分離した時に自律動作するためのバッテリが主たる部分に設けられ、好ましくは、可逆連結手段が、前記主たる部分を前記アームにロックするための装置を備え、好ましくは、モータ駆動される。
【0048】
有利には、この支持構造体は、地上を移動するカートであり得、好ましくは、前記カートは、検査されるべき領域を持った患者の身体の一部を置くための載置面を有し、好ましくは、前記載置面は、患者の腕の部分を受けるために長手方向に長く、かつ、上方に向いた凹面を有する。
【0049】
好ましい実施例によれば、前記少なくとも一つの光源によって放射され、検出されるべき生物学的構造体によって所定の方法で吸収されるように適合された前記少なくとも一つの第一光ビームが、約700nmから1,000,000nmの間の波長の領域、即ち、好ましくは、おおよそ赤外線領域の中で選択された第一スペクトル帯域を有し、好ましくは、前記少なくとも一つの第二光源によって放射されるか、又は、周囲から放射される少なくとも一つの光ビームが、約300nmから800nmの間の、即ち、おおよそ可視領域の中のスペクトル帯域を有する。
【0050】
好ましくは、少なくとも二つの画像獲得カメラが、光放射線の帯域における適切な感度を有する各画像センサを有し、それらが獲得するための能力を持ち、好ましくは、これらのセンサが、10nmから1mmの間のスペクトル帯域で動作し、より好ましくは、300nmから1000nmの間のスペクトル帯域で動作する。
【0051】
別の特徴によれば、本発明は、一つ又は複数の先の実施例による装置若しくは他の装置によって得られる身体の表面近くにある血管の非侵襲的検知方法に関する。
この方法は、
・検出されるべき生物学的構造体による所定の方法での吸収、散乱、反射及び/又は他の典型的な光学的相互作用にさらされるスペクトル帯域に含まれるスペクトル帯域を有する一つ又は複数の光ビーム、並びに可視帯域にある波長、即ち、スペクトル帯域を有する一つ又は複数の光ビームを用いて検査されるべき領域を照射し、
・前記照射の後に、検査されるべき前記領域から来る散乱され、反射され、及び/又は典型的な光学的相互作用によって相互作用された光ビームを、少なくとも二つの異なる光放射線に分離し、
少なくとも一つの第一光放射線が、光放射線が周囲の生物学的組織及び/又は構造体とは異なる方法で、関心のある生物学的構造体によって散乱され、反射され、又は吸収されるような帯域に対応するスペクトル帯域を有し、
少なくとも一つの第二光放射線が、可視スペクトル帯域に少なくとも部分的に含まれるスペクトル帯域を有し、
・前記分離された光放射線と、それぞれ関連付けられた画像を獲得し、即ち、前記少なくとも一つの第一光放射線及び前記少なくとも一つの第二光放射線とそれぞれ関連付けられた画像を獲得し、
特に、少なくとも一つの第一画像が、関心のある生物学的構造体に関する情報寄与度を有し、
少なくとも一つの第二画像が、検査されるべき領域の表面外観に関する情報寄与度を有し、
・関心ある生物学的構造体に関する情報寄与度を含む、獲得された前記少なくとも一つの第一画像、又は前記少なくとも一つの獲得された第一画像の処理と、
検査されるべき領域の表面外観に関する情報寄与度を含む、前記少なくとも一つの獲得された第二画像、又は前記少なくとも一つの獲得された第二画像の処理と
を組み合わせて、
関心のある生物学的構造体に関する情報寄与度の画像と、検査されるべき領域の表面外観に関する情報寄与度の画像の両方を含む単一の出力画像を生成し、
・前記単一の画像又は、診断要求によって正確に識別される単一の結合表示を少なくとも一つのビューワーで観察し、
前記少なくとも一つのビューワーを観察する使用者が、検査されるべき領域に、この領域に組み合わせる方法で重ねられた、又は代わりに提案された領域を見て、前記生物額的構造体の形状を確認する。
【0052】
好ましくは、この方法は、また、画像を重ねる処理の前に、前記少なくとも一つの画像を修正するために、前記少なくとも一つの第一画像及び/又は前記少なくとも一つの第二画像を電子的に処理するステップを含む。好ましくは、前記処理ステップは、前記隠された生物学的構造体の形状に関する部分を強調/ハイライトするように適合される。好ましくは、前記画像を獲得し、処理し及び重ねるステップは、リアルタイムに実行される。
【0053】
好ましくは、この方法は、また、検査されるべき前記領域に向けて放射される光の明度及び/又は強度を調整するステップを有する。
【0054】
好ましくは、また、この方法は、前記画像の光学的獲得ユニットによって検査されるべき前記領域の手動又は自動の焦点合わせを行うステップを有する。
【0055】
好ましくは、この方法は、前記光学ユニットの導入口で光を変更するための一つ又は複数の装置を有する。
【0056】
好ましくは、この方法は、前記分割された光ビームに対する赤外線の領域及び可視領域の夫々においてフィルタリングをするステップを有する。
【0057】
他の特徴によれば、本発明は、床擦れのような様々な種類の皮膚の疾患又は変化、幅広いバリエーションの皮膚疾患に対する静脈及び/又は動脈潰瘍(真菌症、皮膚炎、ほくろ、黒色種等)及び表面組織を、それらが、身体の外側からアクセス可能であってもなくても、及び/又は腔内手段によって完全に若しくは部分的にアクセス可能であってもなくても、非侵襲的に診断する方法に関する。
この方法は、
・検査される組織が少なくとも一つの典型的な相互作用を持つスペクトル帯域に属する一つ又は複数の光ビームを用いて検査されるべき領域を照射し、
・前記照射に続く、検査されるべき前記領域における光学的相互作用に基づく組織からの応答として同じ光学系から受けた光ビームを、検査される組織の診断パラメータが、特定の帯域における組織の応答の獲得に由来する画像と関連付けられるようにする全ての帯域に分離し、
・前記分離した光放射線に各々関連付けられた画像を獲得し、
・前記複数の画像を結合するように処理して、上述した光帯域の獲得に由来する複数の画像から成るハイパースペクトル情報から始まる生物学的、解剖学的及び病理学的パラメータに関連するグローバル情報及び/又はローカル情報を推定するようにし、
・例えば、少なくとも一つのビューワー上で単一の画像を通して、特別なケースに対して、適切なフォームで、この診断情報を観察し、前記少なくとも一つのビューワーにおける使用者の視野に、検査されるべき領域が入り、そして、この領域に重ねられた、前記生物学的構造体の形状及び検知されたパラメータに関連付けされた特別な色が視野に入るようにし、又は、異なる情報を提供する複数の同時に存在する画像を通して、又は、使用者に、肉眼における簡単な分析を通しては見ることができない前記パラメータに関する情報を提供することができる他のリアルタイム観察技術を通して特別なケースに対して、適切なフォームで、この診断情報を観察する。
【0058】
本発明の別の特徴及び利点は、添付図面における非限定的実施例によって示された幾つかの好ましい非排他的な実施の形態の説明をから、明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【
図1】本発明による装置の動作原理を示す概略図である。
【
図2】
図1に示した装置の構成要素と、構成要素間の相互作用に関するブロック図である。
【
図3】その構成要素のブロック図をハイライトする
図1の装置の別の動作概略図である。
【
図4】
図1の装置の光学ユニットの実施可能な実施例を概略的に示している。
【
図5】
図1の装置の光学ユニットの別の実施可能な実施例を概略的に示している。
【
図6】装置の平面形状を理解するための本発明による装置の概略側面図である。
【
図7】地上を移動することができるカートを備えた本発明による装置の一実施例を示している。
【
図8】先の図面に示した実施例と異なる実施例を示しており、この実施例では、一つの赤外線光源と一つの画像獲得ユニットだけがある。
【
図10】その光源にも関連する本発明による装置の光学ユニットの構成要素の実施可能な組み合わせを示す概略図である。
【
図11】その光源にも関連する本発明による装置における幾つかの光学ユニットの組み合わせの概略図である。
【
図12】
図11に示した本発明による装置における少なくとも二つの光学ユニットの組み合わせを示す概略図であり、検査されるべき領域の三次元視野を実現するために用いられる。
【発明を実施するための形態】
【0060】
図面を参照すると、本発明による関心のある所定の生物学的構造体(以下、隠された生物学的構造体と称する)の非侵襲的検知装置の全体が符号10で示されている。この実施例では、この装置は、特に、患者の表在血管の検知に適している。
【0061】
その主たる構成要素において、この実施例の装置10は、第一光源11及び第二光源12から成る二つの光源を有し、前記光源は、異なる波長、即ち、異なるスペクトル帯を有する二つの光ビームによって、検査される患者の領域Zを照射するように適合されている。第一光ビームf1は、検出するべき隠された生物学的構造体、この実施例では、患者の表在静脈構造の領域によって所定の方法で吸収されるように適合された、ある範囲の波長から選択される少なくとも一つの第一波長、即ち、第一スペクトル帯を有する。第二光ビームf2は、可視領域にあり、静脈構造がある検査するべき領域を可視化することを可能にする。
【0062】
本発明では、用語「光」「光ビーム」「光放射線」「光学的放射」「光学的ビーム」等は同意語として意図されているものであり、言い換えれば、100nm〜1cmの間の所定のスペクトル帯に成分を有する電磁放射線に関する。
【0063】
当然に、他の実施例において、第二光源、即ち、可視波長を持つ光ビームに関する光源は、検査する領域を照射するために周辺光が用いられる場合には、省略され得る。
【0064】
この実施例では、検出するべき隠された生物学的構造体によって所定の方法で吸収されるように適合された第一光源11から放射される第一光は、例えば、880nmに等しい、即ち、約700nmから1000000nmの間、好ましくは、700nmから1000nmの間、言い換えれば、およそ赤外線領域にある波長から選択された第一波長を有する。
【0065】
第二光源12によって放射される第二光ビームは、例えば、白色光であり、従って、約300nmから800nmの間、言い換えれば、およそ可視領域の範囲にあるスペクトルを有する。
【0066】
好ましくは、光源は、平面(即ち、二次元)分布のLEDを有し、これらのLEDは、少なくとも二つのグループに分かれ、少なくとも一つの第一グループは赤外線領域で作用し、少なくとも一つの第二グループは可視領域で作用する。
【0067】
操作の観点から、第一光ビーム及び第二光ビームは、各光源によって実質的に同時に放射される。
【0068】
この実施例では、各光源は、光源の明度及び/又は強度を調整するための手段13に関連付けられている。例えば、LEDは、装置の処理ユニット14によって直接制御され、例えば、各グループのLEDの明度は、独立して制御される。明度の調整は、患者からの装置の距離を補うため、また、外部光の存在の埋め合わせをするため、そして、生成され得るあらゆる影を取り除くために必要である。
【0069】
LEDによって生成された光は、散乱スクリーンのような散乱手段15を通過する。散乱手段15は、LEDの指向性を低減させ、より均一な光源を生成することを目的とするものである。
【0070】
この装置は、検査されるべき領域Zに向けられた視界を有する画像獲得ユニット16を備え、これは、それぞれ、検査されるべき領域Zからくる光放射線Rの波長に関連した複数の画像を獲得するように適合されており、特に、静脈の形状及び配置に関連する内容を示す第一画像A1及び検査すべき領域に関連する内容を示す第二画像A2を獲得する。
【0071】
より有利には(
図4及び
図5参照)、この画像獲得ユニット16は、単一の光源17を有し、この光源17を通して、装置10が、検査すべき領域Zから来る全ての光放射線Rを受光する。
【0072】
この光学ユニット17は、スプリット手段18を有する。このスプリット手段18は、二つの光源11及び12からの照射に続いて、検査すべき領域Zから来る光放射線Rを、第一及び第二光放射線R1及びR2にスプリットするように適合されている。第一及び第二光放射線R1及びR2は、それぞれ、隠された生物学的構造体によって、周囲の生物学的構造体とは異なる方法で光放射線が散乱され、反射され、又は吸収されることが可能な領域(即ち、700nmから1000000nmの間、好ましくは、700nmから1000nmの間、言い換えれば、赤外線領域)に対応する波長、即ち、スペクトル帯を有し、かつ、少なくとも部分的に、可視スペクトル帯、即ち、300nmから800nmの間の帯域に含まれる波長、即ち、スペクトル帯を有する。
【0073】
好ましくは、これらのスプリット手段18は、キューブビームスプリッタ、プリズムビームスプリッタ、スリーバンドビームスプリッタ、ホットミラー又はこの機能を実行する他の手段のような公知のタイプのビームスプリッタ等を有する。
【0074】
また、同じ光学ユニット17が、二つの異なる画像獲得カメラを有する。第一カメラ19は、第一画像A1を獲得するためのカメラであり、第二カメラ20は、第二画像A2を獲得するためのカメラである。有利には、これらのカメラは、CCDセンサやCMOSセンサ等のような画像センサであり得る。
【0075】
例えば、これらの画像センサは、相互に直角に位置決めされ、ビームスプリッタ、ホットミラー又は他のスプリット手段18が、第二光放射線R2が直接通過することを可能にする一方で、90°まで光軌道の角度が大きくなるように赤外線にある第一光放射線R1を反射する。従って、第二カメラ20は、光学ユニットの光軸に対して正面向きに(直交して)配置されたセンサの受光面を有し、第一カメラ19は、第二カメラ20に対して90°の角度で位置決めして配置され、前記光軸と並行に配置されたセンサの受光面を有する。
【0076】
実際には、ビームスプリッタやホットミラー等は、装置の光入力部と二つのカメラで形成された画像受信ユニットとの間に配置されたミラーであり、可視の波長、即ち、スペクトル帯を有する光放射線を第二カメラに向けて伝達し、赤外線の波長、即ち、スペクトル帯を有する光放射線を第一カメラに向けて反射することを可能にする。上述した二つの光放射線を二つの帯域に分離する装置は、二つのカメラによって同一の光領域の獲得を可能にし、(隠された生物学的構造体に関する情報寄与度を含む)獲得画像A1と、(検査するべき領域Zの表面に見える物に関する情報寄与度を含む)獲得画像A2とを、必要に応じて、一回の較正処理を介して、正確に重ね合わせることができるようにしている。
【0077】
実際、光学ユニット17は、光軌道(即ち、検査すべき領域Zから対応する画像獲得カメラ19及び20に達するルート)を画定する。前記光軌道は、既知の方法で、全て同じ光路長を有する。
【0078】
好ましくは、二つの画像獲得カメラ19及び20は、約300nmから1000nmの間の同じ波長帯域、言い換えれば、赤外線領域及び可視領域の両方を含む波長帯域で感知する画像センサを、夫々有する。
【0079】
有利には、光学ユニット17は、また、少なくとも一つの光学焦点システム22を有する。例えば、
図4に示すように、この光学焦点システム22は、光学ユニットに対する入力の位置に配置される。選択的に、カメラ19及び20の入力の位置に、二つの光学焦点システム22が配置される。
【0080】
有利には、一つ又は複数の光学焦点システム22は、観察される画像部分を拡大したり縮小したりすることができるズームシステムを有し得る。このシステムは、有利には、管理システムによって制御され得、かつ、自動的(自動焦点)及び装置のモニタ上での使用者の操作又は他のインターフェース装置による指示の両方で設定され得る。
【0081】
光学ユニット17は、また、ビームフィルタやホットミラー等18と、第一カメラ19との間に配置された第一フィルタ23を有し得る。第一フィルタ23は、 前記第一カメラ19に向けて、光放射線が、周囲の生物学的構造体とは異なる方法で、隠された生物学的構造体によって散乱され、反射され、又は吸収されることを可能にする領域、好ましくは、おおよそ700nmから1000000nmの間の赤外線領域、より好ましくは、700nmから1000nmの間の赤外線領域に属する波長、即ち、スペクトル帯を有する光ビームが通過することを可能にする。例えば、この第一フィルタは、880nmの波長で中心波長が50nmの帯域を有する。
【0082】
同様に、光学ユニット17は、また、ビームフィルタやホットミラー等18と第二カメラ20との間に配置された第二フィルタ24を有し得る。この第二フィルタ24は、第二カメラ20に向けて、ほぼ可視領域に属する波長、即ち、スペクトル帯を有する光ビームが通過することを可能にする。
【0083】
特に、選択された周波数で照射された光放射線を、適当な偏光装置を通して特定の方向に従って交互に偏光する場合に、光学ユニット17の入口に、ポーラライザ25が配置され得る。この解決方法により、外部の光条件からの性能の高い独立性が保障され、かつ、特に赤外線領域における画像の高度な明暗差が保障され得る。
【0084】
また、照射される放射線を所定のパターンに従って非連続とし、かつ、画像の獲得をこの光とほぼ同期させて、周囲環境の明度の変化に対するより良い耐性を保障することも可能である。
【0085】
必然的に、ビューワー26が、画像受信装置によって受信された画像を見ることを可能にするよう調整されて設けられ得る。
【0086】
好ましくは、装置は、第一画像A1の電子処理手段27を有し得る。この電子処理手段27は、コントラストを強め、かつ静脈の形状を強調するようにされ、その結果、以下に説明するように、この生物学的構造体(静脈)は、ビューワー26において明確に見分けられ得るようになる。処理アルゴリズムはリアルタイムであり、様々な方法に従って行うことができ、かつ、赤外線の光学経路から来る入力ビデオフローの情報のみを、又は、装置によって獲得される全てのビデオフローを基礎とし得る。これは、一つの光学経路が赤外線であり、もう一つの光学経路が可視光である二つの光学経路から成る典型的なケースにおいて、生物学的構造体のマッピングを生成するために要求される処理が、赤外線における画像の情報と、可視光から来る画像の情報の両方に基づき得ることを意味する。その見え方を改善し、その情報寄与度を改善するために可視領域に関する画像A2の処理手段も設けられ得ることは、言うまでもない。
【0087】
本発明によれば、装置10は、また、電子的手段28を有する。前記電子的手段28は、光学ユニットから得られる及び/又はその後に処理される第一画像A1(赤外線領域に関する情報寄与度)と第二画像A2(可視領域に関する情報寄与度)とを重ね合わせることによって単一画像を生成し、次いで、この単一画像をビューワー26へ送るようにされている。その結果、装置の使用者は、検査されるべき領域Zから離され、かつ、ビューワーで観察することにより、この装置を用いて、検査するべき領域と、この領域に重ねあわされた静脈の分布を観察する。この装置は、実際に、「拡張現実」を持つタイプの観察装置を生成する。
【0088】
この方法では、例えば、採血領域向けの光学ユニットを備えた装置を通して、患者の腕から採血を実施する作業者は、装置を腕に接触させて配置することなく、腕の外表面を観察し、かつ、静脈の分布を観察し、そして、採血を安全に実施することができる。
【0089】
実際、装置は、以下の処理をするように適合された電子組立体から成る。
・ある波長、即ち、スペクトル帯(700÷900nm)を有する少なくとも一つの光ビームを照射し、周囲の組織に関して、低酸素ヘモグロビン(静脈血)の吸収力のある性状を強調するようにする。ここで、検査するべき領域は、装置に一体に設けられた光源を介して、又は周囲の光を介して可視の光に当てられるようにしなければならず、例えば、これらの光は、平面分布LEDを使用することによって得られる。
・必要に応じて、散乱光、偏光フィルタ又は受光装置をサチュレートさせ、かつ、コントラストを低減させる傾向にある表面反射を減らす他の技術を使用する。
・単一の光学ユニットを通して画像を受信し、後方散乱光放射線(即ち、反射及び/又は散乱を通して検査するべき領域から来る光放射線)を、ホットミラー、ビームスプリッタ又は他の同等の装置を介して、異なる波長、即ち、スペクトル帯(例えば、400÷700及び700÷900)を有する少なくとも二つの光学的軌道に分離する。
・両方共、400nm〜900nmの帯域で感知できる二つの別々の画像センサを備えた獲得手段を通して異なるスペクトル成分を有する放射線に由来する画像を備えた二つの同一のシーンを提案する。
・赤外線領域で画像を処理して血管を強調し、次いで、血管のみを推定する。
・作業者がシステムを操作することを可能にするためにタッチスクリーンを備えたLCDモニタ上で可視光によって得られた画像に重ね合されたこれらの画像を観察する。
【0090】
構造的な観点から、装置は、二つの対向する主たる面を有する。第一面30上には前記ビューワー26が設けられ、第二対向面31上には、画像獲得ユニット16の光学的入口16Aが配置される。
実際、好ましくは、装置の空間は、例えば、電子タブレット装置の形状と同様に、本質的に平坦であるので、装置10の電子管理・処理及び観察要素の大部分は、実質的に、前記二つの面30及び31の間に設けられる。即ち、ビューワーは、
図6,8及び11に示すように、フラットディスプレイから成り、前記画像獲得ユニットの光学ユニットの光軸、即ち、スプリットされる前の放射線Rの主たる光学的軌道は、装置の平面、即ち、負らとディスプレイの平面に対して直角である。好ましくは、光軸は、ディスプレイの中心を垂直に通過する軸と同軸であり、簡単な方法で、装置を通した観察の効果が保証される。
【0091】
有利には、ビューワー26は、タッチスクリーンモニタであり得、好ましくは、装置を管理するための制御が、モニタのタッチスクリーンインターフェイスによって管理される。従って、装置は、使用者のためのグラフィックインターフェイス26Aを有する。
【0092】
装置10の使用を容易にするために、装置10は、サポートアーム32を備えている。サポートアーム32は、画像獲得ユニットを有するビューワー26を備えた装置の主たる部分10Aを支持するために、基部33に連結されており、その結果、主たる部分は、検出領域Zの上方に距離をあけて安定的に位置決めされ得る。
【0093】
好ましくは、このサポートアーム32は、関節接合タイプのものであり、一つ又は複数の自動化部分を有し、空間内でその動きを可能にするか、又は、継手の堅さを自動的に調整することを可能にする。有利には、アームの動き又は継手の堅さ管理するための制御は、タッチスクリーンビューワー上で実行される。
【0094】
基部33は、好ましくは、地面上の動くことができるカートである。しかし、選択的に、基部33は、テーブルであり得、又はベッド、医療機器若しくは装置が使用される他の機器にある任意の固定位置であり得る。このカートは、特に、検査されるべき領域を持つ患者の身体の部分を支持するための支持面34を有し得る。例えば、この支持面34は、患者の腕の一部を受けるために上向きで、長手方向にのばされた凹面を有する。
【0095】
好ましくは、電源への主たる部分の電気接続部35がアーム32の中に一体的に設けられる。例えば、電気トラック又は電気ケーブルが、ビューワーを備えた主たる部分10を、カートにあるバッテリ36A及び/又は電力供給ネットワークEへの接続のためのケーブルを有するシステム36に接続するか、又は、電力供給ネットワークEへの接続のためのケーブルに直接接続する。
【0096】
好ましくは、アーム32と、ビューワー26を備えた装置の主たる部分との間には可逆接続手段37が設けられる。有利には、これらの可逆接続手段37には、コネクタ37A及びコネクタを受けるためのシート37Bが設けられ、かつ、前記シートにはコネクタをロックするための装置(図示せず)が設けられる。ロックされたコネクタは、特定のリリースボタンの動作を通して解放され得る。リリースボタンの動作は、機械的でもよく、また、選択的にパスワードと関連付けられたタッチスクリーンモニタ上での使用者の操作に基づいて処理ユニットによって制御される電気機械的装置によって実行されてもよい。
【0097】
有利には、装置の主たる部分10Aが、カートに設けられた電源36及び/又は電源供給ネットワークに接続された電源36から独立して動作することを可能にするために、従って、主たる部分10Aを、どこにでも移動して配置することができるようにするために、主たる部分10Aには、再充電可能なバッテリ36Cが設けられる。
【0098】
ここで説明する装置10の目的は、例えば、身体の表在静脈構造を見ることであり、従って、例えば、注射を実行するための、言い換えれば、表在静脈構造を正確に知る必要がある処置を実施するための理想的な位置を識別するために医療従事者を助けることにある。
【0099】
このように、この装置は、主として定置用に製造される機器であるが、バッテリを設けて、少なくとも、短時間は携帯使用を可能にする。
【0100】
実際、この装置は、それを観察するべき領域と作業者の目との間に入れることによって、使用者の最も使いやすい距離で、使用される卓上拡大鏡と同じ方法で使用され得る。
【0101】
この装置には、下の領域をキャプチャする下側部分に位置決めされた対物レンズが設けられており、かつ、下の画像をリアルタイムで再現する上側に位置決めされたビューワーが設けられている。
【0102】
「拡張現実」技術を使用して、装置は静脈の位置を識別し、疑似色で(静脈を表す)グラフィックサインを実像に重ね、使用者が、患者の肌の下の静脈を見ることができるようにする。
【0103】
この装置は、肉眼で見ることができない静脈を周囲の領域から識別するために、周囲の細胞組織に比べてかなりの程度で赤外線放射を吸収する静脈血の特性を動作原理として使用する。
【0104】
従って、この装置は、調べたい領域に当てて組織と作用する赤外線光ビームを生成するようにされている。その後、この赤外線光は、静脈血がある、これらの領域によって、比較的低い強度で、反射及び/又は散乱され、従って、暗くなる。
【0105】
赤外線光を感知するセンサが、その領域の画像を受信するためにある。
【0106】
空間基準として作用する表面組織を表す画像を生成することができるようにするために、装置には可視物質用センサが設けられ得、また、選択的に白色光照明システムが設けられ得る。
【0107】
これらのセンサは、これらのセンサの両方が同じ視野領域を監視することを可能にする光学機器に挿入され、対象物が置かれている距離に関係なく、視差エラーなしに、二つの重ねられた画像を生成するようにしている。
【0108】
使用者が、何のエラーもなく、最適な距離で装置を位置決めすることを可能にするために、光学機器にはオートフォーカスシステムが設けられ、たとえ予め決められていない距離であっても、詳細な画像を確保することができるようにしている。
【0109】
これに加えて、上記したように、放射された放射線の明度を調整するために、自動又は手動システムが設けられ得、ビューワーが離れた領域にある時に、調べる領域の全体を見ることを可能にするために光強度を強くし、かつ、近接して使用する間は、光学的に眩しくなることを防止し、獲得した画像において情報が飽和することを防止するために、照射を弱くするようにしている。
【0110】
二つ以上の光放射線及び二つ以上の画像獲得センサを備えた本発明による装置の別の実施例は、表在静脈血管及び動脈血管の両方を検知することに関し得る。この目的のために、装置は、複数の光源を有し、可視帯域で光学的放射線を照射し、(上述した実施例に関しては)検査するべき領域を囲む組織の実像を再現し、かつ、赤外線帯域における二つの異なるサブバンドで少なくとも二つの光学的放射線を照射するようにしている。第一のサブバンドは、酸化ヘモグロビンの吸収スペクトルの中心にあり、他のサブバンドは、脱酸素ヘモグロビンの吸収スペクトルにある。また、選択的に、装置は、メラニンの吸収に関する赤外線スペクトルにある第四放射線を放射するソースを有し得る。後方散乱光学的放射線、即ち、検査されるべき領域から来る光学的放射線は、四つの放射線を、前記信号を獲得することができる同じ数のカメラに達する四つの独立した光学的軌道に分離することができる少なくとも一つの光学ユニットによってキャプチャされる。従って、対応する情報を含む獲得された四つの画像は、同時に獲得され、そして、適当なアルゴリズムを通して処理され、メラニン吸収に関するスペクトル成分を持つ画像及び可視画像を考慮して、各画像から始まる静脈及び動脈の位置がハイライトされる。処理の結果は、リアルタイムに、可視帯域に由来する画像上で重ねられた二つの血管系をハイライトすることができる疑似色を有する一つの画像に結合することができ、また、装置のディスプレイ及び/又は他のオプションモニタで、様々な方法で分離して再現され得、例えば、獲得した画像及び/又は処理された画像の幾つかを含む幾つかの画像を並べて配置することができる。
【0111】
本発明の別の実施例は、様々な種類の解剖学的特徴が特に重要であり得る黒色腫の早期診断に関する。簡単な視診によって肉眼で見える現在のサイズ、形状及び色は、病気の予防や処置のために特に重要な他のパラメータと同様に、病状のタイプ(良性又は悪性)や病状のステージング(病期)の診断に使用されるメインパラメータである。この分析は、前記パラメータをハイライトするために特に重要である周波数で中心決めされた帯域におけるN個の光学的放射線及び測定されるべき拡張範囲を用いて照射することができる本発明に係る装置を通して実行され得る。例えば、本発明に係る装置には、検査する領域からくる光放射線を七つの異なる帯域に分離するためのスプリッタが設けられ得、前記七つの帯域のうちの二つの帯域は紫外線帯域であり、三つは可視帯域であり、残りの二つは赤外線帯域である。上記した装置は、フレーム付けされたシーンが同一になるように受光した放射線を分離することができ、好ましくは、(必要に応じて較正ステップを通して)次の獲得した画像と重ねられた画像を生成する。これらの画像は、リアルタイムに簡単に観察され得、医師が、可視帯域の外側のスペクトル帯域で形状やサイズを評価し、皮膚表面の下にある組織部分から散乱される赤外線帯域における画像を通して新生物の深さに関する情報を獲得し、紫外線のようなより高い周波数の帯域での吸収における反応に関する情報を獲得し、かつ、これらのマルチスペクトル成分の比較からの情報を結合することを可能にする。さらにまた、赤外線帯域に関する画像は、新生物の血管新生の度合いを検出することを可能にし、もし著しい肥大が得られたら、検査した組織に血管新生する血管の寸法もまた検出され得る。獲得した画像又は上述した処理と同様の処理から直接的に得られるこの情報は、新生物の活性化を検知するための有力な診断器具になり成り得、従って、任意の外科的又は医学的治療に大きな助けとなる幾つかの処置パラメータに成り得る。上述した全ての画像を一緒に処理して、進行の段階、悪性腫瘍及び診断の他のファクタとより簡単に関連付けられ得る導かれたパラメータの画像、マップ又は全体評価を推定することも可能である。この得られた情報は、疑似色の成分を重ねることを通して、又は、診断する医師によって容易に理解される他の表現方法を通して再構築され得る。
【0112】
従って、本発明による装置が、表面組織の他の病状に関する多数の診断法に適用され得ることは明らかであり、異なる光学的帯域における多重放射線を用いて同じ視野を獲得し、それらの処理を行い、かつ、一緒に、それらの観察を行い及び/又は適切な方法で所望の情報を提案し、使用者が、毎回調べられる組織上に集中するように、関心ある領域の上で器具を動かすことによって、装置上で、又は適当な観察手段上で、リアルタイムで診断の結果を得ることができるようにする可能性を持つ。
【0113】
多くの例があり得ることは明らかである。概して、異なるスペクトル帯の放射線に関する画像を獲得し、かつ、異なるスペクトル帯の放射線に関する異なる情報寄与度を提供し、かつ、分析される生物学的構造の所望の応答に関する異なる情報寄与度を提供するカメラの数と同じ数のソースを持つ必要はない。例えば、検査するべき領域から来る全ての光放射線から分離されるべき情報寄与度の分割に応じたカメラを有することができ、即ち、検査するべき領域から来る放射線の広域帯域のサブ帯域に応じた放射線に分離することが可能であり、ここで、放射線は、そこから放射される一つ又は複数の光との同じ領域の相互作用に応じたものである。
【0114】
しかし、ある構造又は最も簡単化された構造(例えば、
図8に示すような構造)において、どのようにして、本発明に係る装置が、例えば、赤外線の単一の光源11と、例えば、赤外線を感知するデジタルの画像センサを有し、画像Aを提供することになる単一のカメラ19によって形成される画像獲得ユニット16とを有し得るのかを注意しなければならない。この装置は、赤外線光f1を放射し、この赤外線光f1が、例えば、患者の身体である検査されるべき領域Zに当たり、そして、赤外線光が、皮膚及び皮下組織と相互作用するこの構造体と相互作用する。隠された生物学的構造体を表す静脈の血液は、公知の方法で赤外線放射線を吸収し、従って、反射及び/又は散乱される及び/又は静脈から放射される光放射線は、公知の吸収の作用を持ち、その結果、センサに当たる光放射線は、この隠された構造体に関する第一情報寄与度グループを提供し、センサによって獲得された画像Aの部分A1(例えば、静脈の形状及び位置並びに明確な色)を生成する。また、(画像獲得ユニットと同じ視野で)患者に当たる赤外線放射線も、皮膚表面のような静脈以外の生物学的構造体と相互作用する。この相互作用の方法は、静脈に関するものとは異なり、その皮膚で反射及び/又は散乱され、及び/又はその皮膚から放射される光放射線は、静脈から来る光放射線とは異なるものになり、その結果、センサに入るこの第二の光放射線は、皮膚の外観の位置及び形状に関する第二情報寄与度グループを提供し、例えば、検査すべき領域(画像Aの部分A2)の表面の外観(及び/又は、体毛及び肉眼で見ることができる皮膚表面に関する他の要素)を画定する。その後、装置の電子的手段は、符号27の位置において、画像Aの部分A1に関するコンテンツを処理し、即ち、第一情報寄与度グループを処理し(センサは、好ましくは、デジタルであり、これらの情報は、デジタル画像を形成するデジタルデータであり、従って、この処理は公知の画像処理技術を用いて実行される)、例えば、静脈に関する形状のコントラストを強める。そして、選択的に、画像Aの部分A2に関するコンテンツ、即ち、第二情報寄与度グループが、符号27の位置で処理され、皮膚表面の外観(もし、患者の身体のこの部分が検査されるのであれば、例えば、腕の外観)の可視性が改善される。従って、装置の電子的手段は、符号28の位置において、二つの情報寄与度グループを結合して、検査される身体の部分の画像を出力する。前記身体の部分は、明確に見ることができる検査される二つの生物学的構造体を有し、それらは相互に結合され、特別な要求のために図形的に最適に処理され、例えば、二つの情報寄与度グループは、二つの対応する画像を生じさせ、それらは相互に重ねられて、隠された生物学的構造体(例えば、静脈)が明らかに画定された一つの画像を提供し、前記一つの画像は、静脈が明らかに認識できるように配置されている身体の部分の外観も有する。画像獲得ユニットは、例えば、所望の帯域の外のスペクトル帯域を持つ光ビームを除外し、即ち、一つ又は複数の光学センサに、所定のスペクトル帯域に属する光ビームだけを伝達するための光学的フィルタ25を有し得、従って、特定のスペクトル帯域にのみ関連する情報寄与度を有する画像が得られる。例えば、光学的フィルタは、赤外線帯域におけるフィルタであり得、より具体的には、近赤外線(NIR)における帯域のフィルタであり得る。
【0115】
直前に説明した簡単な場合を除いて、上述した他の実施例では、検査されるべき領域と面する単一の光学ユニットを有し、その内部に、放射線を各々所望のスペクトル帯域に関連する幾つかの光ビームに分離するスプリット手段があり、かつ、獲得された各光ビームに関する情報を持つ関連画像獲得カメラを有する画像獲得ユニットについて主として言及される。
図10は、単一の光学ユニット17を備えた装置の実施可能な組み合わせによって、光学ユニットを要約する概略図を示しており、二個から二個より多いk個までの数のカメラS1〜Skと、光学ユニットの視野にある検査されるべき領域から来る光ビームを獲得カメラS1〜Skの数と等しい数で、それぞれ各カメラに向けられた光ビームR1〜Rkに分離するためのスプリット手段18とを示している。関連する獲得された複数の画像は、処理され、又は処理されずに、実行されるべき検査の種類に対して最適な方法で相互に結合される。本発明に係る装置には、(光ビームf1〜fiを生成するために)一つから一つより多い「i」個までの間で可変な量の複数の光源L1〜Liが設けられ得る。光源Lの数及びカメラの数は、好ましくは、必ずしも必須ではないが、同じである。
【0116】
別の実施例では、
図11に示すように、(2個から2より大きいj個までの間で可変である)複数の光学ユニット17
1〜17
jがあり得、それぞれ
図10で説明したような構成を有し、各光学ユニットには、同じ視野又はほぼ同じ視野(例えば、間に所定の距離を有する二つの近接している領域)が設けられる。この構成により、必要に応じて、使用に対する大きな柔軟性を持たせることを可能にし、かつ、画像の様々なタイプの処理及び様々なタイプの検査に対して大きな柔軟性を持たせることを可能にしている。
【0117】
例えば、二つ又はそれ以上の光学ユニットを有する本発明による装置は、3Dタイプの拡張現実の検査を実行するために使用され得、即ち、その領域の分析のために使用される各スペクトル帯域に関して検査されるべき領域を立体視することを可能するために使用され得る。
【0118】
実際、装置は、表面組織の病状の非侵襲性の診断のために使用され得、使用者が、非常に正確な拡張現実体験を得ることを可能にする。これは、例えば、二つ又はそれ以上の複数の上述したビームスプリット手段を有する光学ユニットを再現することが得られる。この方法では、少なくとも二つの重ねられた領域で上記した処理を実行する装置を製造することが可能である。前記領域は、相互にほぼ同じであるが、所定の距離を持つ二つのポイントで中心決めされている。これにより、獲得行程及び処理工程が上述したように実行されることを可能にし、さらに、三次元再構築アルゴリズムを通して、装置の下に横たわる領域が、深さに関して正しい位置で表示されることを可能にし、検査される組織を、装置を通して実際に観察し、かつ、上述した画像結合アルゴリズムを通して再構築された必要な情報を実際に得ている印象を与える。これは、3Dディスプレイや3Dメガネ等のような今日利用可能な複合的な技術を通して得ることができる。実施可能なシステムを図面で説明するために
図12が参照される。この図は、それらによって領域Zに関連する視野Q及びWが、それぞれ関連付けさえる二つの光学ユニット17
1及び17
2を強調している。この実施例では、装置は、例えば、(視野Qに関連する光学ユニット17
1のための可視帯域及び近赤外線(NIR)帯域、並びに視野Wに関連する光学ユニット17
2のための可視帯域及び近赤外線(NIR)帯域に関連付けられた)四つの異なる画像を同時に獲得し、続けて、上述した方法に従って、二つの光学ユニットの画像の処理をし、ディスプレイ26上での代わりの観察を可能にするように寄与度の3D再構築を実行する。(レンズH1及びH2を備えた)眼鏡Hは、例えば、最初に一方のレンズをブロックし、次いで、他方をブロックする公知の3D観察モードに従って、二つの拡張現実画像を観察することを可能にする。特に、光学ユニット17
1由来の獲得及び処理に関連する画像をディスプレイ26上で提示する時にはレンズH1は透明にされ、レンズH2は暗くされる。代わりに、光学ユニット17
2の処理の出力を提示する時には、レンズH1が暗くされ、レンズH2が透明にされる。眼鏡Hは、任意の方法で、有線又は無線で装置に接続される。
【0119】
この実施可能な実施例は、作業者が、深さに関する情報を得ることを可能にし、この深さに関する情報は、装置のモニタを通してそれを見ることによって、検査される組織に直接、医療的処置及び外科的処置を実行する時に特に有用であり得る。
【0120】
図面は、本発明の実施可能な非限定的実施例を示しているにすぎず、本発明は、本発明に基づく概念の範囲から逸脱することなく、その形態及び構造を変更することができることは理解される。特許請求の範囲に記載した符号は、上述の説明及び添付図面を考慮して特許請求の範囲を読み易くするためだけに記載したもので、保護範囲を何等限定するものではない。
【国際調査報告】