(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2016-538236(P2016-538236A)
(43)【公表日】2016年12月8日
(54)【発明の名称】単結晶グラフェンの製造方法
(51)【国際特許分類】
C30B 29/64 20060101AFI20161111BHJP
C01B 31/02 20060101ALI20161111BHJP
C30B 29/02 20060101ALI20161111BHJP
B01J 21/02 20060101ALN20161111BHJP
【FI】
C30B29/64
C01B31/02 101Z
C30B29/02
B01J21/02 M
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-555437(P2016-555437)
(86)(22)【出願日】2014年12月26日
(85)【翻訳文提出日】2016年5月23日
(86)【国際出願番号】KR2014012902
(87)【国際公開番号】WO2015102318
(87)【国際公開日】20150709
(31)【優先権主張番号】10-2013-0167109
(32)【優先日】2013年12月30日
(33)【優先権主張国】KR
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ
(71)【出願人】
【識別番号】516151597
【氏名又は名称】コリア リサーチ インスティテュート オブ スタンダーズ アンド サイエンス
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】ファン、 チャンヨン
【テーマコード(参考)】
4G077
4G146
4G169
【Fターム(参考)】
4G077AA03
4G077BA02
4G077CA03
4G077ED06
4G077EF01
4G077EJ09
4G077HA05
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4G077JA06
4G077JA08
4G077JB07
4G146AA01
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4G146BA12
4G146BA48
4G146BB23
4G146BC07
4G146BC33A
4G146BC34A
4G146BC42
4G146BC43
4G169AA03
4G169BB02A
4G169CB81
(57)【要約】
本発明は、ウェーハスケールの絶縁体基板上に単結晶のように一方向に整列されたグラフェン膜を成長させるために、基板上に炭化水素ガスを用いて多結晶グラフェンを形成する段階と、多結晶グラフェン上に触媒を形成する段階と、多結晶グラフェン及び触媒を熱処理することによって、多結晶グラフェンを単結晶グラフェンに再結晶化する段階と、を含む単結晶グラフェン膜の製造方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に炭化水素ガスを用いて多結晶グラフェンを形成する段階と、
前記多結晶グラフェン上に触媒を形成する段階と、
前記多結晶グラフェン及び前記触媒を熱処理することによって、前記多結晶グラフェンを単結晶グラフェンに再結晶化する段階と、
を含む単結晶グラフェンの製造方法。
【請求項2】
前記基板は、Al2O3、AlN、Si3N4、SrTiO3またはBNを含んでなる絶縁基板である、請求項1に記載の単結晶グラフェンの製造方法。
【請求項3】
前記基板は、前記絶縁基板上に遷移金属を0.5μm〜3μmの薄膜形態に成長させた複合基板である、請求項2に記載の単結晶グラフェンの製造方法。
【請求項4】
前記単結晶グラフェンは、前記基板上に成長した単結晶グラフェンを含む、請求項2または請求項3に記載の単結晶グラフェンの製造方法。
【請求項5】
前記基板は、WまたはMoを含んでなる金属基板である、請求項1に記載の単結晶グラフェンの製造方法。
【請求項6】
前記基板は、ウェーハスケールの基板を含む、請求項1に記載の単結晶グラフェンの製造方法。
【請求項7】
前記基板上に炭化水素ガスを用いて多結晶グラフェンを形成する段階は、600℃〜1100℃の温度で行われる、請求項1に記載の単結晶グラフェンの製造方法。
【請求項8】
前記触媒は、アルミニウム、アルミニウムを含有する化合物または3d遷移金属系化合物を含む、請求項1に記載の単結晶グラフェンの製造方法。
【請求項9】
前記多結晶グラフェン及び前記触媒を熱処理することによって、前記多結晶グラフェンを単結晶グラフェンに再結晶化する段階は、1400℃〜2000℃の温度で行われる、請求項8に記載の単結晶グラフェンの製造方法。
【請求項10】
前記熱処理は、
局部的加熱源を用いて前記多結晶グラフェン及び前記触媒の第1部分を加熱する段階と、
前記局部的加熱源を移動させて前記第1部分を冷却させると共に、他の位置の第2部分を加熱する段階と、
を含んで行われる、請求項1に記載の単結晶グラフェンの製造方法。
【請求項11】
前記熱処理は、前記基板の一側から他側に一方向に前記局部的加熱源を移動させて行われる、請求項10に記載の単結晶グラフェンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラフェンの製造方法に係り、さらに詳細には、単結晶グラフェンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
グラフェン(graphene)は、炭素(C)原子1層または複数の層からなるハニカム構造の2次元薄膜を言う。炭素原子は、sp
2混成軌道によって化学結合を行う場合、二次元の炭素六角網面を形成する。炭素は、最外殻電子が4つで、結合を行う時、4つの電子が混成されて結合に参与する。炭素の結合には、sp
3結合を行う方法とsp
2結合を行う方法とがあり、sp
3結合のみからなるものが正方形のダイヤモンドであり、sp
2結合のみからなる物質が黒鉛(graphite)または黒鉛の1層であるグラフェンである。例えば、元々s軌道(orbital)とp軌道とにのみ存在しなければならない電子が、sとp軌道とを合わせたsp
2及びsp
3の混成軌道を有する。前記sp
2混成軌道は、s軌道に1つの電子とp軌道に2つの電子を有するので、sp
2混成軌道は、総体で3つの電子を有するようになり、この際、各電子のエネルギー準位は同一である。それぞれsとp軌道を有するよりも、このように混成軌道を有することが安定しているために、混成軌道状態にある。このようなsp
2結合によって平面構造を有する炭素原子の集合体がグラフェンであり、単一層の厚さは、炭素原子1つの大きさに過ぎず、約0.3nmである。グラフェンは、その特性が金属性であって、層方向に伝導性を有し、熱伝導性に優れ、電荷キャリアの移動度が大きくて、高速電子素子を具現することができる。グラフェンシート(sheet)の電子移動度は、約20,000〜50,000cm
2/Vsの値を有すると知られている。
【0003】
2005年にイギリスのマンチェスター大学の研究グループが黒鉛で原子1つ厚さの炭素薄膜を作る方法を紹介して以来、グラフェンは、物理学分野で最も熱い関心主題の1つとなった。その理由は、グラフェン内では、電子の有効質量がなくて、秒速1,000km(光速の300分の1)で動く相対性粒子で挙動するという事実に基づいて、グラフェンのみの独特の量子ホール効果についての研究だけではなく、既存の粒子物理学分野では行えなかった粒子物理実験を、グラフェンを通じて間接的に具現可能になったためである。
【0004】
一方、既存のシリコンベース半導体工程技術としては、30nm級以下の高集積度を有する半導体素子を製造することが容易ではない。なぜならば、基板に蒸着された金やアルミニウムのような金属原子層の厚さが30nm以下では、熱力学的に不安定になって、金属原子が互いに絡み合って均一な薄膜が得られないためであり、また、シリコンにドーピングされた不純物の濃度が、このようなナノサイズでは、不均一になるためである。しかし、グラフェンは、このようなシリコンベース半導体素子技術の集積度の限界を克服することができる可能性を有している。グラフェンは、その特性が金属性でありながらも、その厚さが電子遮蔽厚さに該当する数nm以下と非常に薄くて、ゲート電圧によって電荷密度が変わることによって、電気抵抗が変わる特性を有している。それを用いて金属トランジスタを具現し、電荷輸送体のモビリティが大きくて、高速電子素子を具現し、また、ゲート電圧の極性によって電荷輸送体の電荷を電子から正孔に変化させることができるために、多様な分野で応用されると期待される。
【0005】
以上、グラフェンを得る方法は、次の三種に分類されている。
【0006】
第1の方法は、セロハンテープを使う超微細黒鉛層分離方法(micro cleavage method)である。この方法は、イギリスのマンチェスター大学の研究チームによって開発されたものであって、グラフェンを研究する研究者は、その単純性のために、この方法を使った。この方法を使えば、黒鉛をセロハンテープを使って連続して分離させることによって、黒鉛の厚さを減少させ、このように得られた薄い黒鉛薄膜を基板上に移すか、または黒板にチョークで描くように黒鉛を基板に擦ることによって、薄い黒鉛薄膜を得る方法である。しかし、この方法は、接着性テープの品質に依存するという点と、無用かつ厚い黒鉛粒子が多くて、電子ビームリソグラフィーによる電極のパターン化が困難であるという点で問題があった。
【0007】
第2の方法は、高真空下で炭化ケイ素(SiC)の熱分解を通じるエピタキシャル成長技法で作る方法である。このようなエピタキシャル成長技法は、分子線結晶成長システム(MBE)のような高真空及び高温で炭化ケイ素の表面にあるケイ素を昇華させて、表面に残っている炭素原子がグラフェンを形成する技術である。しかし、この技術は、炭化ケイ素自体が基板として使われなければならないが、この基板は、電子素材として使うには性能が良くないという問題点がある。
【0008】
第3の方法は、黒鉛化合物の化学的剥離作用を用いる方法である。しかし、このような方法では、現在まで単に数百nm厚さの黒鉛切片のみ得られ、グラフェンは得られず、かつ黒鉛層の間に挿入された化学物質が完璧に除去されず、多くの欠点を誘発するという問題点がある。
【0009】
第4の方法は、金属基板上に化学的気相蒸着技法で作る方法である。しかし、このような方法では、グラフェンが成長する間に、成長特性に起因して一方向に整列されたグラフェン成長が不可能であるという問題点がある。グラフェン電子素子の実用化に最大の障害物は、物質の特性上、バンドギャップを作ることが大変であって、論理回路を構成し難いということよりは、シリコンのように大面積の単結晶を求めにくいということである。現在、銅をほとんど溶かした液体状態でグラフェンを成長させれば、グラフェン膜の初期均一度を制御することができると知られているが、この場合にも、方向性が一致しないので、大面積のグラフェン単結晶成長は不可能である。グラフェン応用電子素子産業の新たな創出のためには、単結晶グラフェンの製作のための新たなアイディアの創出が要求されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、前記問題点を含む多様な問題点を解決するためのものであって、ウェーハスケールの絶縁体基板上に単結晶のように一方向に整列されたグラフェン膜を成長させる製造方法を提供することを目的とする。しかし、このような課題は例示的なものであって、これにより、本発明の範囲が限定されるものではない。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一観点による単結晶グラフェン膜の製造方法が提供されうる。前記単結晶グラフェン膜の製造方法は、基板上に炭化水素ガスを用いて多結晶グラフェンを形成する段階と、前記多結晶グラフェン上に触媒を形成する段階と、前記多結晶グラフェン及び前記触媒を熱処理することによって、前記多結晶グラフェンを単結晶グラフェンに再結晶化する段階と、を含む。
【0012】
前記単結晶グラフェン膜の製造方法で、前記基板は、Al
2O
3、AlN、Si
3N
4、SrTiO
3またはBNを含む絶縁基板であり得る。または、前記基板は、絶縁体上にCuやNiなどを含む遷移金属を0.5μm〜3μmの薄膜形態に成長させた複合基板であり得る。前記単結晶グラフェンは、前記絶縁基板あるいは前記複合基板上に成長した単結晶グラフェンを含みうる。
【0013】
前記単結晶グラフェン膜の製造方法で、前記基板は、WまたはMoを含んでなる金属基板であり得る。
【0014】
前記単結晶グラフェン膜の製造方法で、前記基板は、ウェーハスケールの基板を含みうる。
【0015】
前記単結晶グラフェン膜の製造方法で、前記基板上に炭化水素ガスを用いて多結晶グラフェンを形成する段階は、600℃〜1100℃の温度で行われる。
【0016】
前記単結晶グラフェン膜の製造方法で、前記触媒は、アルミニウムまたは3d遷移金属系化合物を含みうる。
【0017】
前記単結晶グラフェン膜の製造方法で、前記多結晶グラフェン及び前記触媒を熱処理することによって、前記多結晶グラフェンを単結晶グラフェンに再結晶化する段階は、1400℃〜2000℃の温度で行われる。
【0018】
前記単結晶グラフェン膜の製造方法で、前記熱処理は、局部的加熱源を用いて前記多結晶グラフェン及び前記触媒の第1部分を加熱する段階と、前記局部的加熱源を移動させて前記第1部分を冷却させると共に、他の位置の第2部分を加熱する段階と、を含んで行われる。前記熱処理は、前記基板の一側から他側に一方向に前記局部的加熱源を移動させて行われる。
【発明の効果】
【0019】
前記のようになされた本発明の一実施形態によれば、ウェーハスケールの絶縁基板上に単結晶のように一方向に整列されたグラフェン膜を成長させる製造方法を提供することができる。本発明の一実施形態によって、ウェーハスケールで単結晶のように一方向に整列されたグラフェン膜を、絶縁体上に成長させた製品を製造することによって、グラフェン電子素子の実用化が可能であって、ポストシリコン時代を主導すると予想される。もちろん、このような効果によって、本発明の範囲が限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態による単結晶グラフェン膜の製造方法を図解するフローチャートである。
【
図2】本発明の一実施形態による単結晶グラフェン膜の製造方法を順次に図解する断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態による単結晶グラフェン膜の製造方法を順次に図解する断面図である。
【
図4】本発明の一実施形態による単結晶グラフェン膜の製造方法で再結晶化する段階を図解するフローチャートである。
【
図5】本発明の一実施形態による単結晶グラフェン膜の製造方法で再結晶化する段階を順次に図解する平面図である。
【
図6】本発明の一実施形態による単結晶グラフェン膜の製造方法で再結晶化する段階を順次に図解する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態を詳しく説明すれば、次の通りである。しかし、本発明は、以下で開示される実施形態に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態として具現可能なものであって、以下の実施形態は、本発明の開示を完全にし、当業者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものである。また、説明の便宜上、図面では、構成要素がその大きさが誇張または縮小されうる。
【0022】
図1は、本発明の一実施形態による単結晶グラフェン膜の製造方法を図解するフローチャートであり、
図2及び
図3は、本発明の一実施形態による単結晶グラフェン膜の製造方法を順次に図解する断面図である。
【0023】
図1ないし
図3を参照すれば、本発明の一実施形態による単結晶グラフェン膜の製造方法は、基板10上に炭化水素ガスを用いて多結晶グラフェン20を形成する段階(ステップS100)と、多結晶グラフェン20上に触媒30を形成する段階(ステップS200)と、多結晶グラフェン20及び触媒30を熱処理することによって、多結晶グラフェン20を単結晶グラフェン40に再結晶化する段階(ステップS300)と、を含む。
【0024】
基板10上に炭化水素ガスを用いて多結晶グラフェン20を形成する段階(ステップS100)で、基板10は、Al
2O
3、AlN、Si
3N
4、SrTiO
3またはBNを含んでなる絶縁基板であり得る。または、基板10は、絶縁体(例えば、Al
2O
3、AlN、Si
3N
4、SrTiO
3またはBNを含んでなる絶縁基板)上にCuやNiなどを含みうる遷移金属を0.5μm〜3μmの薄膜形態に成長させた複合基板であり得る。この場合、単結晶グラフェン40は、前記絶縁基板または前記複合基板上に成長した単結晶グラフェンを含みうる。本発明の変形された実施形態による単結晶グラフェン膜の製造方法では、基板10は、WまたはMoを含んでなる金属基板であり得る。本発明の実施形態で、基板10は、ウェーハスケールの基板を含みうる。前記炭化水素ガスは、例えば、メチル基、メタン、エタン、エチレン、アセチレン、プロパン、プロピレン、ブタン、ブタジエン、ペンタンまたはヘキサンを含みうる。本発明の一実施形態による単結晶グラフェン膜の製造方法で、基板10上に炭化水素ガスを用いて多結晶グラフェン20を形成する段階(ステップS100)は、約600℃〜1100℃の温度で行われる。
【0025】
本発明の一実施形態による単結晶グラフェン膜の製造方法で、多結晶グラフェン20上に触媒30を形成する段階(ステップS200)で、前記触媒は、アルミニウム、アルミニウムを含有する化合物または3d遷移金属系化合物を含みうる。前記3d遷移金属は、例えば、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)または銅(Cu)を含みうる。例えば、アルミニウムを含有する化合物または3d遷移金属系化合物は、Al
4C
3、KAl
2(AlSi
3)O
10(OH)
2、Cu、Ni、Co、Mn、CaO、CrCl
2−6H
2O、Cr
3C
2、CrS、CuF
2、CuSiF
6、CuOまたはCuClであり得る。本発明者は、前記アルミニウム、アルミニウムを含有する化合物または3d遷移金属系化合物を非常に低いカバレッジ(coverage)に蒸着するか、これらを含む前駆体(precursor)などを用いて気相蒸着(CVD)や原子層蒸着(ALD)工程で吸着させることによって、触媒30を具現し、このような触媒によって、前記絶縁基板または前記複合基板上にグラフェン単結晶を成長させることができるということを確認した。
【0026】
本発明の一実施形態による単結晶グラフェン膜の製造方法で、多結晶グラフェン20及び触媒30を熱処理することによって、多結晶グラフェン20を単結晶グラフェン40に再結晶化する段階(ステップS300)は、約1400℃〜2000℃の温度で具現されうる。前記熱処理は、試料全体の温度を同時に上げることよりはヒーターを動かして前記試料の一部分の温度を上げ、このように温度が上がった領域を一方向にスキャンする方式で行われ、以下、図面を参照して、それを説明する。
【0027】
図4は、本発明の一実施形態による単結晶グラフェン膜の製造方法で再結晶化する段階を図解するフローチャートであり、
図5及び
図6は、本発明の一実施形態による単結晶グラフェン膜の製造方法で再結晶化する段階を順次に図解する平面図である。
【0028】
多結晶グラフェン20及び触媒30を熱処理することによって、多結晶グラフェン20を単結晶グラフェン40に再結晶化する段階(ステップS300)は、局部的加熱源60を用いて多結晶グラフェン20及び触媒30を含んで構成される試料50の第1部分A1を加熱する段階(ステップS310)と、局部的加熱源60を移動させて第1部分A1を冷却させると共に、試料50の他の位置の第2部分A2を加熱する段階と、を含みうる。前記熱処理は、試料50を構成する基板10の一側から他側に一方向に(例えば、
図5及び
図6で、左側から右側に一方向に)局部的加熱源60を移動させて行われる。第2部分A2は、第1部分A1から局部的加熱源60が移動する方向に、第1部分A1に隣接する領域に該当する。
【0029】
以上、図面を参照して、本発明の一実施形態による単結晶グラフェン膜の製造方法を説明した。
【0030】
本発明は、炭化水素ガスを用いて直ちに単結晶グラフェンを形成するものではなく、炭化水素ガスを用いて基板上に多結晶グラフェンを成長させた後に多結晶グラフェン上に触媒を形成し、以後に、前記多結晶グラフェン及び前記触媒をゾーンヒーティング方法で熱処理することによって、前記多結晶グラフェンを単結晶グラフェンに再結晶化する多段階方法を開示する。前記熱処理は、ポストアニーリング(post annealing)と理解される。
【0031】
グラフェンの単結晶の膜形成に重要な因子の1つは、温度である。バルク材のグラファイト(bulk graphite)を形成する温度が、約2500K以上であるが、これは、炭素原子と炭素原子間の結合の大きさを考えると、適当な温度と判断される。単一層膜の場合、バルク材よりは炭素原子が動くことができる空間が多くあるので、形成温度は2500Kの温度よりはさらに低い。単結晶の形成のためには、互いに異なる粒子(grain)が再び一方向に整列するために、リボンディング(re−bonding)工程を経なければならないので、温度は約1400K〜2000Kの範囲になると見られる。このような温度では、WまたはMoなど溶融点が高い金属基板を使わなければならず、この温度で、これら金属の炭素原子溶解度は溶融点で多く落ちているので、炭化水素の表面反応によるグラフェン形成が可能である。一方、本発明の一部実施形態では、高温で薄膜成長が可能なセラミック基板(例えば、Al
2O
3、AlN、Si
3N
4、SrTiO
3またはBNを含んでなる絶縁基板)を用いてグラフェンを成長させることができる。この場合、成長したグラフェンを他の基板に転写(transfer)する工程を別途に行わず、半導体素子や電子素子の製作が可能であると期待される。
【0032】
一方、本発明の一実施形態による単結晶グラフェン膜の製造方法では、再結晶化の温度を低める方法として、有無機物質を用いた触媒反応を活用して反応エネルギーを低めようとした。発明者は、アルミニウムまたは3d遷移金属系化合物を触媒として使えば、工程温度を1800K以下に低めることができるということを確認した。また、効率的な再結晶化のためには、試料全体の温度を同時に上げるよりはヒーターを動かして試料の一部分の温度を上げ、このように温度が上がった領域を一方向にスキャンすることがさらに望ましいということを確認した。すなわち、試料全体を加熱するものではなく、基板のエッジ(edge)から加熱を行い、加熱される領域を一方向に移動させるゾーンヒーティング(zone heating)工程を用いて再結晶化を誘導することによって、前記絶縁基板または前記複合基板上にグラフェン単結晶成長を具現した。
【0033】
本発明は、図面に示された実施形態を参考にして説明されたが、これは例示的なものに過ぎず、当業者ならば、これより多様な変形及び均等な他実施形態が可能であるという点を理解できるであろう。したがって、本発明の真の技術的保護範囲は、特許請求の範囲の技術的思想によって決定されるべきである。
【国際調査報告】