(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2016-538302(P2016-538302A)
(43)【公表日】2016年12月8日
(54)【発明の名称】局所用医薬組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/455 20060101AFI20161111BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20161111BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20161111BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20161111BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20161111BHJP
A61K 47/14 20060101ALI20161111BHJP
A61K 47/44 20060101ALI20161111BHJP
A61K 31/618 20060101ALI20161111BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20161111BHJP
A61K 31/045 20060101ALI20161111BHJP
A61K 9/12 20060101ALI20161111BHJP
【FI】
A61K31/455
A61K9/06
A61K47/10
A61K47/32
A61K47/12
A61K47/14
A61K47/44
A61K31/618
A61P29/00
A61K31/045
A61K9/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-534694(P2016-534694)
(86)(22)【出願日】2014年11月27日
(85)【翻訳文提出日】2016年7月14日
(86)【国際出願番号】GB2014053510
(87)【国際公開番号】WO2015079233
(87)【国際公開日】20150604
(31)【優先権主張番号】1320932.5
(32)【優先日】2013年11月27日
(33)【優先権主張国】GB
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】503356705
【氏名又は名称】フューチュラ メディカル ディベロップメンツ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】FUTURA MEDICAL DEVELOPMENTS LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087871
【弁理士】
【氏名又は名称】福本 積
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197169
【弁理士】
【氏名又は名称】柴田 潤二
(72)【発明者】
【氏名】エイドリアン デイビス
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA09
4C076AA24
4C076BB00
4C076BB31
4C076CC01
4C076CC18
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4C076FF31
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4C086AA01
4C086BC19
4C086DA17
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4C086NA11
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4C206CA13
4C206KA01
4C206MA03
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4C206MA48
4C206MA83
4C206NA11
4C206NA12
4C206ZA08
(57)【要約】
以下の成分及び%を含む局所用医薬組成物が提供される:サリチル酸又はニコチン酸のエステル−10〜20%;メントール−5〜10%;低級アルコール−15〜35%;水−10〜20%;プロピレングリコール及び/又はペンタン−1,5−ジオール−15〜35%;メントールに対して親水性で医薬的に許容される不揮発性非溶媒−2〜16%;及び、任意に、最大5%の樟脳、全て重量%。また、揮発性相と不揮発性相とを含む局所用医薬組成物が提供され、該不揮発性相が全組成物の32〜81重量%を含み、該不揮発相の重量%で表される以下の不揮発成分:サリチル酸又はニコチン酸のエステル−14〜48%;メントール−7〜27%;プロピレングリコール及び/又はペンタン−1,5−ジオール−25〜67%;メントールに対して親水性で医薬的に許容される不揮発性非溶媒−3〜35%を含む組成物であって、当該組成物の不揮発性成分を含む濃縮物である。該組成物は、疼痛の治療及び予防に有用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
局所用医薬組成物であって、
サリチル酸又はニコチン酸のエステル 10〜20%
メントール 5〜10%
低級アルコール 15〜35%
水 10〜20%
プロピレングリコール及び/又はペンタン−1,5−ジオール 15〜35%
メントールに対して親水性で医薬的に許容される不揮発性非溶媒 2〜16%
及び、任意に、最大5%の樟脳(camphor)、を含み、
全て重量%である、組成物。
【請求項2】
サリチル酸又はニコチン酸のエステルが、14〜16%で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
プロピレングリコール及び/又はペンタン−1,5−ジオールが15%〜25%で存在する、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
親水性非溶媒が、2〜10%、例えば5〜10%で存在する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
親水性非溶媒が、グリセロールを含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
さらに、流体力学的性質若しくは湿潤特性を改善するため、又は、pHを調節するために、1以上の追加の賦形剤を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
アクリル酸ポリマーを含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
脂肪酸、又はその塩若しくはグリセリドを含む、請求項6又は7に記載の組成物。
【請求項9】
脂肪酸は、エミューオイルの形態で存在する、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記サリチル酸のエステルがサリチル酸メチルである、及び/又は、前記ニコチン酸のエステルがニコチン酸エチルである、請求項1〜9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
揮発性相と不揮発性相とを含む局所用医薬組成物であって、前記不揮発性相が、全組成物の32〜81重量%を含み、前記不揮発相の重量%で表される以下の不揮発成分:
サリチル酸又はニコチン酸のエステル 14〜48%
メントール 7〜27%
プロピレングリコール及び/又はペンタン−1,5−ジオール 25〜67%
メントールに対して親水性で医薬的に許容される不揮発性非溶媒 3〜35%
を含む、組成物。
【請求項12】
揮発性相が、水及び/又は低級アルコールを含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
請求項1〜12に記載の局所用医薬組成物の調製に使用することができる濃縮物であって、前記濃縮物は、前記濃縮物の重量%として表される以下の不揮発性成分:
サリチル酸又はニコチン酸のエステル 14〜48%
メントール 7〜27%
プロピレングリコール及び/又はペンタン−1,5−ジオール 25〜67%
メントールに対して親水性で医薬的に許容される不揮発性非溶媒 3〜35%
を含む、濃縮物。
【請求項14】
前記サリチル酸エステル又はニコチン酸エステル対前記メントールの比が、重量で、2.5:1〜1:1である、請求項1〜13のいずれか1項に記載の組成物又は濃縮物。
【請求項15】
治療で使用するための、請求項1〜12又は14のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
疼痛の治療又は予防に使用するための、請求項1〜12又は14のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項17】
必要とする被験体において疼痛を治療又は予防する方法であって、前記方法は、前記被験体の皮膚へ、請求項1〜12又は14のいずれか1項に記載の組成物の局所適用を含む、方法。
【請求項18】
請求項1〜12又は14のいずれか1項に記載の局所用医薬組成物の製造のための、請求項13に記載の濃縮物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は局所用医薬組成物に関する。特に、組織の根底にある痛み、特に限定されないが、筋肉疲労、固い関節及び関節炎に関連する痛みから局所緩和を提供するこのような組成物に関連するものである。
【背景技術】
【0002】
様々な局所鎮痛剤組成物は、ゲル、クリーム、スプレー、パッチの形で市販されており、活性成分は、サリチル酸メチル及びメントールを含んでいる。一例としてはサロンパス(RTM)であり、その中で、活性成分は、重量で15:7の比率のサリチル酸メチル及びメントール((−)−立体異性体としての、レボメントール)である。他の同様の製品も市販されている。しかしながら、そのような製品によって提供される疼痛緩和は、許容できないほどの長い開始時間及び/又は許容できないほど短い持続時間を有するものである。
【0003】
本発明の目的は、サリチル酸メチル、メントール及び/又は他の同様の活性成分を含む局所鎮痛組成物を提供することであり、これらの活性成分を含有する公知の組成物と比較して、鎮痛効果、開始時間及び/又は持続時間を改善するために配合組成(formulate)される。
【0004】
一態様において、本発明は、局所用医薬組成物を提供し、以下
サリチル酸又はニコチン酸のエステル 10〜20%
メントール 5〜10%
低級アルコール 15〜35%
水 10〜20%
プロピレングリコール及び/又はペンタン−1,5−ジオール 15〜35%
メントールに対して親水性で医薬的に許容される不揮発性非溶媒 2〜16%
及び、任意に、最大5%の樟脳(camphor)、を含み、
全て重量%である、組成物である。
【0005】
驚くべきことに、本発明者によって、水を含む公知の組成物、例えばサロンパスを用いる場合、適用した後に水が皮膚から蒸発するとメントールの感覚効果が失われるが、適用部位を再度濡らすことによって回復できることが見出された。この驚くべき発見は、水の一時的な存在が、メントールの飽和度を増加させ、それ故、適用部位及び隣接する組織に対するメントールの効果を増加させるという仮説を導いた。本発明の組成物は、この知見を利用し、メントールの飽和度及び効果の両者を増強するために設計され、また一方で、サリチル酸エステル又はニコチン酸エステルの高い経皮浸透も提供するものである。親水性非溶媒の存在が、メントールの感覚が公知の組成物中では20〜30分であるものが、本発明の組成物では1〜2時間へ延長されるという、メントール増強効果の延長を提供する。当該結果は、当該組成物が適用されるとすぐに本質的に急速なメンソール(及び、任意に樟脳)感覚が提供されるが、それは長く持続し、サリチル酸エステル又はニコチン酸エステルの有効量の浸透に至るまでの期間全体を通して、その感覚は維持される。
【0006】
樟脳が存在する場合、それは、メントールと共に、追加の発赤効果を提供できる。本発明の組成物において、メントールは、樟脳に対して共溶媒として機能する。
【0007】
サリチル酸又はニコチン酸のエステルは、いくつかの実施形態において、12%〜20%、12〜18%、14〜16%、又は15%で存在してもよい。メントールは、例えば、6、7、8、9%で存在してもよい。プロピレングリコール及び/又はペンタン−1,5−ジオール(好ましくはプロピレングリコール)は、特定の実施形態において、15%〜25%又は15〜20%である。低級アルコールは、特に、20〜35%又は20〜30%で存在してもよい。親水性の非溶媒は、特に、2〜10%、例えば5〜10%で存在してもよい。
【0008】
本発明に係る組成物はまた、流体力学的性質若しくは湿潤特性を改善するため、又は、pH、好ましくはpH6〜7へ調節するために、追加の賦形剤を少量含んでも良い。例えば、架橋されたポリアクリル酸塩などのアクリル酸ポリマー、例えばカーボポール(Carbopol)(例えば、Ultez−10などのカルボポールUltrez)がゲル化剤として添加されてもよく(組成物がゲルの形態となるものである)、及び/又は、ジエチルアミン若しくはトリエタノールアミンなどの有機アミン、又は、NaOH若しくはKOHなどの無機塩基がpH調整のために使用されてもよい。脂肪酸(及び/又はその塩若しくはエステル(特に、グリセロールエステル、すなわち、グリセリド))が、例えば、抗炎症性、抗真菌性又は他の特性を高めるために含まれていてもよい。適切な脂肪酸は、その混合物又は混合グリセリドを含む、C
10〜20の不飽和脂肪酸を含み、任意に、同様の長さの飽和脂肪酸を有する。具体的には、オレイン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、リノール酸、及びリノレン酸が使用されてもよい。脂肪酸の適切な混合物は、エミューオイル(エミューオイルインスティテュート/エミュープロダクツ社から入手可能)中に存在するものであってもよく、圧倒的な量のオレイン酸と、本段落中で述べた少量の他の脂肪酸とを含むグリセリドを含有する。このような脂肪酸含有成分は、(組成物の総重量に基づく)合計の10%までの量が存在してもよい。例えば、2〜10%、好ましくは2〜5%である。
【0009】
本発明の組成物は、適用時に、室温(例えば、15〜30℃、好ましくは15〜25℃)にて単相であることが好ましく、ゲル又はスプレーの形態であってもよい(スプレーの場合、組成物はエアロゾル化を達成するために必要な追加の賦形剤、例えば、噴霧剤(例えば、HFC噴霧剤)を含んでいてもよい)。好ましい実施形態において、サリチル酸又はニコチン酸のエステル、メントール(及び任意の樟脳)、低級アルコール、水、プロピレングリコール及び/又はペンタン−1,5−ジオール、並びにメントールに対する親水性の医薬的に許容可能な不揮発性非溶媒は室温で単相であり、一方で、上記で述べた他の成分(例えばゲル化剤、エミューオイルなどの脂肪酸/グリセリド)は、それらが厳密には同一相に存在しない場合であっても、当該単相全体に分散することが可能であり、これは、当業者に理解されるであろう。アルコールと水の最小濃度は、サリチル酸又はニコチン酸のエステル、メントール(及び任意の樟脳)、プロピレングリコール及び/又はペンタン−1,5−ジオール、並びにメントールに対して親水性で医薬的に許容可能な不揮発性非溶媒を可溶化し、全体的にこれらの成分の単相を確保するような濃度である。不揮発性の残留相の成分の相対濃度は、組成物の有効性に関連してより有意である。
【0010】
本発明の組成物に使用するのに適しているサリチル酸のエステルは、C
1〜6アルキルエステルを含み、例えば、メチル、エチル及びプロピルサリチル酸塩、好ましくはサリチル酸メチルなどである。ニコチン酸のエステルは、C
1〜6アルキルエステルを含み、例えば、メチル及びエチルエステル、並びに、C
6〜14アラルキル(例えば、ベンジル)エステルである。好ましいニコチン酸エステルは、ニコチン酸エチルである。
【0011】
「低級アルコール」とは、1〜5個の炭素原子を有する脂肪族アルコールを意味する。皮膚へ組成物を適用すると蒸発するという点で、このようなアルコールは揮発性である。好ましいアルコールはエタノールである。水もまた皮膚上へ組成物を適用する際に蒸発し、本発明の目的では揮発性溶媒とみなされる。プロピレングリコール及び/又はペンタン−1,5−ジオールは、一方で、本発明の文脈においては、不揮発性である。親水性の不揮発性非溶媒は、好ましくは、低分子量(例えば、500Da未満、好ましくは200Da未満、より好ましくは150Da未満)の多価アルコール、好ましくはグリセロールである。この成分はまた、不揮発性であり、プロピレングリコール及び/又はペンタン−1,5−ジオールと共に、有効成分(エステル及びメントール(及び任意に、樟脳))であり、皮膚に当該組成物を適用する場合に残留相を含む。
【0012】
前述したような本発明の組成物に基づいて、全ての不揮発(残留)相は、32〜81重量%の範囲であり(任意の樟脳の存在、又は他の不揮発性成分を除く)、全部の残留相の重量%として表される(任意の樟脳の存在、又は他の不揮発性成分を除く)不揮発性組成物の範囲は、以下の通りである(最も近い全体の割合(括弧内は実際の数字)):
【0013】
サリチル酸又はニコチン酸のエステル 14(14.1)〜48(47.6)%
メントール 7(6.6)〜27(27.0)%
プロピレングリコール及び/又はペンタン−1,5−ジオール 25(24.6)〜67(67.3)%
メントールに対して親水性で医薬的に許容される不揮発性非溶媒 3(3.0)〜35(34.8)%
【0014】
樟脳が存在する時、当業者によって理解されるように、不揮発性の残留相の4つの主要成分の重量%は、組成物の総残留相が重量%として表される場合はそれに応じて調整される。同様に、他の不揮発性成分が最終組成物に含まれる場合、又は、揮発性成分と混合する前に不揮発性相中に取り込まれる場合、当業者によって理解されるように、不揮発性の残留相の4つの主要な構成成分の重量%は、組成物の総残留相の重量%として表されている場合はそれに応じて調整される。
【0015】
従って、別の、関連する態様において、本発明は、局所用医薬組成物を提供するものであり、揮発性相及び不揮発性(残留)相を含むものであって、該不揮発性相は、全組成物の32〜81重量%を含むものであって、不揮発性相の重量%として表される、以下の不揮発性成分を含む:
【0016】
サリチル酸又はニコチン酸のエステル 14(14.1)〜48(47.6)%
メントール 7(6.6)〜27(27.0)%
プロピレングリコール及び/又はペンタン−1,5−ジオール 25(24.6)〜67(67.3)%
メントールに対して親水性で医薬的に許容される不揮発性非溶媒 3(3.0)〜35(34.8)%
【0017】
揮発性相は、水及び/又は低級アルコールを含んでもよく、これらの成分の混合物を含んでもよい。
【0018】
また、別の関連する局面において、本発明は、本発明の局所用医薬組成物の製造に使用されてもよい濃縮物を提供するものであって、該濃縮物は、直上の態様で定義された不揮発性相の成分及び量を含む。
【0019】
組成物中、本発明の濃縮物において、サリチル酸又はニコチン酸エステル対メントールの割合は、例えば、重量あたり2.5:1〜1:1であり、好ましくは、2.5:1〜2.0:1であり、例えば、15:7又は16:10である。明らかに、16:10の比率では、より高い比率のメントールが存在する。メントールは1:1比において、より高い割合でも存在し、この比率においてメントールはサリチル酸メチル中では飽和レベルであるが、それは、メントールの有効性のための潜在的な利点を有している。より高い比率のメントールにおいて、より高い親水性非溶媒(例えば、グリセロール)濃度が、特により高い濃度のプロピレングリコール及び/又はペンタン−1,5−ジオールにおいて、使用されるべきである。
【0020】
本発明の組成物及び濃縮物において、親水性非溶媒の含有量は、エステル:メタノール比及びプロピレングリコール及び/又はペンタン−1,5−ジオール含有量を考慮して、メタノールが、不揮発系中の飽和点又はちょうど飽和点未満となるように、適用されるべきである。当業者は、本明細書に記載の実施例に示されるように、これらのレベルを容易に決定することができるであろう。
【0021】
好ましくは17.5〜22.5重量%の範囲、例えば20重量%で存在する、プロピレングリコール及び/又はペンタン−1,5−ジオール(プロピレングリコールが好ましい)の含有物は、有効成分の皮膚浸透を増強する有益な効果を有する。しかし、それはまたメントールを可溶化し、従って、飽和の程度、及び、従って残留相の熱力学的活性を減少させることができる。それにもかかわらず、皮膚浸透の増強が可溶化効果を上回り、プロピレングリコール及び/又はペンタン−1,5−ジオールの存在が、このように有益である。親水性の医薬的に許容される不揮発性非溶媒は、非溶媒揮発性相の持続的な代用物(surrogate)として機能し、それによって、残留相におけるその存在が、水が蒸発後であってもメントール(及び、任意の樟脳)の感覚効果を維持し、それにより、鎮痛剤及び/又は発赤効果の持続期間を延長する。
【0022】
サリチル酸メチル、メントール(及び、存在する場合、樟脳)並びにプロピレングリコール及び/又はペンタン−1,5−ジオールが、全ての比率において混和性である一方、グリセロールの存在が、特定の濃度以上において、活性成分の沈殿を引き起こすことが見出されている。従って、エステル:メントールの所定の比率及びプロピレングリコール及び/又はペンタン−1,5−ジオールの濃度に対し、グリセロールは、活性成分の近飽和を引き起こすのに最適な量で添加すること可能であり、従って、皮膚へ適用して揮発性成分が蒸発する際の感覚効果を増強する。
【0023】
上述の任意の追加の成分は、全組成物の揮発性及び不揮発性相の全体への分散液として存在する。製造中に不揮発性成分に添加される場合、追加の成分は、不揮発性相全体に分散される。揮発性成分が添加される場合、組成物全体を通して追加の成分の分散が生じる。
【0024】
さらなる局面において、本発明は、治療に使用するための、上記で定義した本発明の組成物を提供する。
【0025】
関連する局面において、本発明は、疼痛の治療又は予防に使用するための、上記で定義された本発明の組成物を提供する。
【0026】
同様に、本発明は、必要がある被験体の疼痛を治療又は予防する方法を提供するものであって、該方法は、上記で定義される本発明の組成物の、被験体の皮膚への局所適用を含む。
【0027】
本発明の残留相及び局所用組成物の実施形態(及び、拡張によって、本発明の濃縮物の実施形態)は、単なる実施例の方法並びに添付の状態図及び表を参照して、これから説明される。
【0028】
添付の状態図において:
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】
図1は、サリチル酸メチル:メントール比10:10(1:1)の三元残留相濃度を表す。
【
図2】
図2は、サリチル酸メチル:メントール比16:10(1.6:1)の濃度を表す。
【
図3】
図3は、サリチル酸メチル:メントール比15:7(2.14:1)の濃度を表す。
【
図4】
図4は、既知の組成物と比較した、いくつかの本発明の組成物のサリチル酸メチルの皮膚浸透結果を示す(
図4aは、24時間の結果を示し、
図4bは、同じ結果を6時間スケールで示している)。
【
図5】
図5は、既知の組成物と比較した、本発明の組成物の適用後の異なる時点におけるヒト皮膚のサリチル酸メチル浸透の累積率を示す。
【
図6】
図6は、ヒト皮膚に浸透したサリチル酸メチルの投与量の割合を示す。そして、
【
図7】
図7は、サロンパスと比較して、本発明の組成物のいくつかを使用して、ヒト皮膚の累積サリチル酸メチル透過を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
状態図(phase diagrams)を参照した場合、プロットされた点は、活性成分のそれぞれの比に対して、サリチル酸メチル:メントール混合物の一定量(2.2g)に、プロピレングリコールの量を変化させて(約10%から約40%まで)添加し、各実施例で透明な溶液を提供した時の状態を表す。その後、相分離に起因するわずかな曇りが観察されるまでグリセロールを滴下した。各個々のプロットされた点は、濁りが透明になる三元組成比を示し、従って、相分離され、飽和した系の指標を提供する。ポイントの線の右側は、組成物(残留相)が完全に混和性であり、線の左側では、相分離が起こる。
【0031】
従って、
図1は、サリチル酸メチル:メントール比が1:1であるものに対し、プロピレングリコールの量の増加は、混和性の限界を達成するために、グリセロールの量の増加が必要であることを示している。サリチル酸メチル:メントール比が1.6:1を示す
図2は、プロピレングリセロールの増加には、グリセロールのわずかな増加の必要性があることを示し、一方で、
図3は、約55%より高いプロピレングリコール濃度を除き、グリセロールの必要量が一貫して10%周辺であることを示している。
【0032】
図1〜3に含まれるデータは以下の表1に記載されている。最後の列は、組成物を100%にするために添加されてもよい揮発性相(例えば、水及び低級アルコール)の量を示す。
【表1】
【0033】
樟脳も含まれた系を用いて、同様の実験を行った。相境界の結果が、以下の表2に報告されている。
【表2】
【0034】
樟脳(C)を含有するMS:M組成物の範囲においても、本発明の組成物と定義された範囲内において、快適にグリセロールレベルにて、メントールを飽和にすることが可能であることがわかる。
【0035】
本発明の代表的なMS:Mの組成物は、表1に報告された不揮発性相に基づいて調製され、表3に示されるように、揮発性相成分及びその他の任意成分を伴う。
【表3】
【0036】
同様に、本発明の代表的なMS:M:Cの組成物は、表2に報告された不揮発性相に基づいて調製され、表4に示されるように、揮発性相成分及びその他の任意成分を伴う。
【表4】
【0037】
さらに、代表的な配合組成は、脂肪酸含有成分(エミューオイル)が含まれるように調製され、表5に示されている。
【表5】
【0038】
それぞれの例示の配合組成において、単相系として組成物(すなわち、上記で特定した揮発性及び不揮発性相を含む)を調製することが可能であり、その中で、メントールは、飽和点又は飽和付近において不揮発性相中に存在した。組成物の使用に続く揮発性成分の損失時に、メントール濃度が飽和又は過飽和に向かって移動し、組成物は、増強されたメントール効果及び増強したサリチル酸メチル皮膚浸透性を示す。
【0039】
また、本発明の組成物において、不揮発性相の定性的及び定量的な設計が最も重要であることが理解されるであろう。提供される不揮発性相は、揮発性成分の損失時に、メントールが飽和できるように準備され、揮発性成分の量及び割合が、有用性(すなわち、使用における、外観、感触、展延性(spreadability)等)の基準に基づいてほとんどが選択される。
【0040】
本発明の組成物(及び比較組成物)の多くが調整され、サリチル酸メチル(MS)を経皮的に送達する能力の点で評価された。ヒト表皮膜(3名の皮膚ドナー由来)を横切るMSフラックスを、標準的なプロトコル(MedPharm社、ギルフォード、UK)を用いて、以下の組成物を採用して測定された:
【表6】
【0041】
ADゲル1aと2は、グリセロールを欠く比較組成物である。加えて、以下で示すセットの4つの商業的な組成物が試験に含まれていた:
【0042】
・サロンパス(15%サリチル酸メチル、7%メントール)
・ベンゲイ(15%サリチル酸メチル、10%メントール)
・ディープヒート(12.8%サリチル酸メチル、5.91%メントール)
・アイシーホット(IcyHot)(30%サリチル酸メチル、10%メントール)
【0043】
MSフラックス実験の結果は、
図4a及び4bに示されている。結果は、MS:M 15:7(商業組成物のサロンパスを含む)及び1:1の組成物は、同様に、皮膚を通したMSの迅速かつ広範な送達を提供することを示す。上記で挙げた2番目から4番目の商業的組成物は、全て、比較によって、乏しいPS送達を示す。本発明の組成物のMS送達は、サロンパスと同等のレベルの結果であることが証明されているが、本発明の組成物の追加の利点はグリセロールの存在に由来するものであり、それは、ユーザ上に対し、より長く持続するメントール効果を提供することが見出されている。
【0044】
図5は、本発明の組成物及びサロンパスに対し、MSフラックスの大部分が、適用後の最初の数時間に起こることを示す。本発明の組成物は、従って、MSの迅速な送達、及び、メントールによって生成された迅速かつ長期持続性緩和の両方による、迅速な疼痛緩和を提供することが可能である。
【0045】
図6は、適用された用量の割合として表されたMSの吸収を示している。結果は、当該試験において、組成物ADスプレー11(MS:M 1:1)がわずかに利点があることを示唆している。
【0046】
さらにMS皮膚透過性試験は、以下の本発明組成物(比較として含まれたADゲル1a)、及び上記の商業的な組成物サロンパスを用いて行った:
【表7】
【0047】
MSフラックス(ヒト上皮細胞膜を透過したMSの累積量)の結果が
図7に示される。また、本発明の組成物は、市販のサロンパスと同様に、MSの迅速かつ広範な送達を示すが、各実施例において、本発明の組成物は、より迅速かつ広範なMSの送達を提供する。ADスプレー12は、本試験において、最も広範なMSの送達を提供するように見えるだろう。また、本発明の組成物中のグリセロールの存在は、メントール効果の延長により、組成物の有効性の向上を提供する。
【国際調査報告】