(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2016-538503(P2016-538503A)
(43)【公表日】2016年12月8日
(54)【発明の名称】エンジンブレーキ操作を制御する方法
(51)【国際特許分類】
F16H 61/12 20100101AFI20161111BHJP
【FI】
F16H61/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-532034(P2016-532034)
(86)(22)【出願日】2013年11月19日
(85)【翻訳文提出日】2016年7月13日
(86)【国際出願番号】EP2013003487
(87)【国際公開番号】WO2015074671
(87)【国際公開日】20150528
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】512272672
【氏名又は名称】ボルボトラックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100163212
【弁理士】
【氏名又は名称】溝渕 良一
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【弁理士】
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100156535
【弁理士】
【氏名又は名称】堅田 多恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【弁理士】
【氏名又は名称】林 道広
(74)【代理人】
【識別番号】100201259
【弁理士】
【氏名又は名称】天坂 康種
(74)【代理人】
【識別番号】100116757
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 英雄
(72)【発明者】
【氏名】バーリストレーム,クラス
(72)【発明者】
【氏名】カールッソン,ラーシュ
(72)【発明者】
【氏名】ビイェルネトゥン,ヨハン
(72)【発明者】
【氏名】ブルスヴェド,レンナルト
【テーマコード(参考)】
3J552
【Fターム(参考)】
3J552MA04
3J552MA05
3J552MA13
3J552NA01
3J552NB01
3J552PA61
3J552RB12
3J552RC12
3J552SA26
3J552SB03
3J552SB17
3J552SB33
3J552UA08
3J552VA48W
3J552VA50W
3J552VA74W
3J552VA76W
(57)【要約】
本発明の目的は、デュアルクラッチトランスミッション(10)を備えた車両のエンジンブレーキ操作を制御する独創的な方法を提供することである。前記デュアルクラッチトランスミッションは、各々が、それを介してトルクを伝達することができるアクティブギア選択と、それを介してトルクを伝達することができないパッシブギア選択とからなる、様々なギアコンビネーションに設定されるように構成されている。予め設定された数のギアコンビネーションでは、前記第1の入力軸(12)及び前記主軸(11)は同期回転をするものである。前記トランスミッションが前記予め設定された数のギアコンビネーションのうちの1つに設定されている場合に、エンジンブレーキ操作が実行される時、前記スピゴット軸受への損傷荷重が低減するように前記エンジンブレーキ操作を修正する。
【選択図】
図2a
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デュアルクラッチトランスミッション(10)を備えた車両のエンジンブレーキ操作を制御する方法であって、前記デュアルクラッチトランスミッション(10)は、主軸(11)と、第1及び第2の同軸入力軸(12;13)とを備えており、
−前記第1の入力軸(12)は前記第2の入力軸(13)の内部に配置され、
−前記主軸(11)は、スピゴット軸受(16)を介して前記第1の入力軸(12)に懸架され、
−前記第1の入力軸(12)は、前記主軸(11)上に回転配置された第1の歯車(17)に回転固定されており、
前記トランスミッション(10)は、各々が、それを介してトルクを伝達することができるアクティブギア選択と、それを介してトルクを伝達することができないパッシブギア選択とからなる、様々なギアコンビネーションに設定されるように構成されており、
予め設定された数のギアコンビネーションでは、前記第1の入力軸(12)及び前記主軸(11)は同期回転をするものであり、
前記車両がエンジンブレーキ操作に設定されている時;
−前記トランスミッション(10)が前記予め設定された数のギアコンビネーションのうちの1つに設定されているかどうかが継続的に確認し、
前記トランスミッションが前記予め設定された数のギアコンビネーションのうちの1つに設定されている場合;
−前記スピゴット軸受への損傷荷重が低減するように前記エンジンブレーキ操作を修正する、方法。
【請求項2】
前記エンジンブレーキ操作の前記修正は、エンジンブレーキトルクの低減を少なくとも含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記エンジンブレーキ操作の前記修正は、前記エンジンブレーキ操作の中断を少なくとも含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記エンジンブレーキ操作の前記修正は、
−前記予め設定された数のギアコンビネーションのうちの前記1つにおける前記エンジンブレーキ操作の中断が実行されることを少なくとも含む、
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記エンジンブレーキ操作の前記修正は、前記スピゴット軸受(16)への軸方向荷重(F)を低減するアクティブギアを含むギアコンビネーションが選択されることを少なくとも含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記エンジンブレーキ操作の前記修正は、前記第1の入力軸(12)と前記主軸(11)の間の相対回転を可能にするパッシブギアを含まない又は含むギアコンビネーションが選択されることを少なくとも含む、請求項1、2又は3に記載の方法。
【請求項6】
前記エンジンブレーキ操作の前記修正は、前記第1の入力軸(12)と前記主軸(11)の間の相対回転を可能にするアクティブギアを含むギアコンビネーションが選択されることを少なくとも含む、請求項1、2、3又は4に記載の方法。
【請求項7】
前記トランスミッション(10)が前記予め設定された数のギアコンビネーションのうちの1つに設定されていると判定された場合にタイマー(T)が起動し、最初にタイマー(T)が所定の制限時間(t)に達した時に、前記エンジンブレーキ操作の前記修正を実行する、請求項1乃至6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記制限時間(t)は、以下のパラメータ:軸方向荷重(F)、軸受摩耗、最後のオイル交換からの時間、トランスミッション内の油温のうちの少なくとも1つに依存する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記制限時間(t)は、0〜60秒に予め定義される、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
コンピュータ上で実行した時に請求項1乃至9のいずれかに記載のステップを実行するためのコード手段からなる、コンピュータプログラム。
【請求項11】
前記プログラム製品をコンピュータ上で実行した時に請求項1乃至9のいずれかに記載のステップを実行するためのプログラムコード手段からなるコンピュータプログラムを担持する、コンピュータ可読媒体。
【請求項12】
請求項1乃至9のいずれかに記載の方法のステップを実行するように構成されている、車両のエンジンブレーキ操作を制御するための電子制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両変速機及び特にデュアルクラッチトランスミッションの分野に関する。本発明は、デュアルクラッチトランスミッション内の円すいころ軸受の摩耗を制限するために車両のエンジンブレーキ操作中のデュアルクラッチトランスミッションを制御する方法からなる。
【背景技術】
【0002】
デュアルクラッチトランスミッション(DCT)は、オートマチックトランスミッション及びマニュアルトランスミッション用途の両方に使用することができる。運転性の向上を除けば、DCTによる利点の1つは、適切に使用すれば、ギアシフト中のトルク伝達の中断がなく、それによってアクティブ及びパッシブギアの使用を促進することである。アクティブギアで運転している間、パッシブギアは即時係合の準備ができている。パッシブギアは、優勢な運転条件に応じて、シフトするのに最も適しているギアであることが好ましい。
【0003】
ヘリカルギアを備えたトランスミッションでは、ベアリングが半径方向及び軸方向荷重にさらされている。ギアは、通常、軸受内での相対回転中、半径方向及び軸方向荷重の両方を処理するように設計されている円すいころ軸受を備えている。
【0004】
デュアルクラッチトランスミッションでは、主軸が、一般に、スピゴット軸受と呼ばれる円すいころ軸受を介して入力軸の1つに懸架されている。スピゴット軸受は、大きな軸方向荷重及び大きな半径方向荷重の両方を処理するように構成されているので、一般的に自動車用動力伝達装置用途に用いられる。
【0005】
スピゴット軸受がさらされる荷重の大きさは、主に、トランスミッションによって伝達されるトルクと係合しているギアとに左右される。一部のギア及び一部のギア速度では、スピゴット軸受が非常に大きな軸方向力にさらされる。軸方向力は、ヘリカルギアの使用によって生じるものであり、トルクの伝達時に軸方向ギア噛合力を発生させる。
【0006】
通常運転では、油膜がころところ軸受の軌道との間に存在している。油膜の継続的な維持は、ころと軸受の内外輪の相対回転によって軸受では容易になる。スピゴット軸受の内外輪の間で相対回転がない場合、オイルは徐々に軸受への荷重によって局所的に圧迫されることになる。その結果、スピゴット軸受上の大きな軸方向力は、特にスピゴット軸受の内外輪の間で相対回転がない時にギア速度において問題がある。スピゴット軸受の内外輪の間で相対回転のない、この好ましくない運転条件は、軸方向荷重が非常に大きくなり得るエンジンブレーキ中に生じる。トランスミッションは、通常、ヘリカルギアによる軸方向力が互いに等しいか又は、少なくともスピゴット軸受に軸方向荷重を受けさせないように設計されている。スピゴット軸受の内外輪の間で相対回転がない時、フレッティング摩耗が生じる可能性がある。フレッティング摩耗は、ころと軌道の間の小さな動きによって生じる。ある期間にわたる2つの表面間の繰り返し研削は、一方又は両方の接触面から材料を除去することになる。これは、軌道及びころの摩耗に、その結果、軸受の早期損傷につながる。損傷した軸受は、トランスミッションに重大な損傷を、ついには動力伝達装置の故障を引き起こす可能性がある。また、普通はギアボックス内、好ましくはシャフト内に配置されているスピゴット軸受の位置によって、スピゴット軸受の交換は非常に面倒で、従って費用がかかる場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、エンジンブレーキ操作中のデュアルクラッチトランスミッションを制御する、従って、第1の入力軸と主軸の間に配置されたスピゴット軸受の摩耗を回避することによって、運転性及び設計に対する影響を最小限に抑えながら、軸受寿命を向上させる本発明の方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の方法は、スピゴット軸受内で相対回転がないエンジンブレーキ状態中のスピゴット軸受への損傷荷重を低減又は防止する。スピゴット軸受は、トランスミッションの第1の入力軸と主軸の間に配置されている。本方法は、スピゴット軸受への損傷荷重をもたらす状況が発生した時に、トランスミッションの状態を変更するという考えに基づいている。
【0009】
本発明の方法は、オートマチック及びマニュアルトランスミッションの両方に使用することができる。オートマチックトランスミッションでは、本方法はオートマチックトランスミッション制御で実施することができる。マニュアルトランスミッションでは、本方法は、警告表示機能を設けて、運転者にトランスミッションの状態を変更すべきであることを知らせることによって、実施することができる。
【0010】
本発明の方法は、デュアルクラッチトランスミッションを備えた車両のエンジンブレーキ操作を制御することを目的とする。デュアルクラッチトランスミッションは、主軸と、第1及び第2の同軸入力軸とを備えており、第1の入力軸は第2の入力軸の内部に配置されている。入力軸は、第1及び第2の駆動クラッチに接続することができ、第1の入力軸は第1の駆動クラッチに接続することができ、第2の入力軸は第2の駆動クラッチに接続することができる。第1の駆動クラッチが係合している時、車両エンジンからの動力は第1の入力軸に伝達されるが、第2の駆動クラッチは離脱し、動力は第2の入力軸に伝達されない。その結果、第2の駆動クラッチが係合している時、車両エンジンからの動力は第2の入力軸に伝達されるが、第1の駆動クラッチは離脱し、動力は第2の入力軸に伝達されない。第1及び第2の入力軸は、歯付き歯車を備えていてもよい。一組のギアは、入力軸の各々に割り当てられ、例えば、奇数のギアは第1の入力軸に割り当てられ、偶数のギアは第2の入力軸に割り当てられる。
【0011】
主軸は、スピゴット軸受を介して第1の入力軸に懸架されており、第1の入力軸は、主軸上に回転配置された第1の歯付き歯車に回転可能に接続されている。主軸の第1の歯車は、第1又は第2のカウンタ軸の歯車と噛合する。更に、主軸は、第1の歯車の回転を主軸の同期回転に固定するための係合スリーブを備えることもできる。
【0012】
デュアルクラッチトランスミッションは、各々がアクティブギア選択及びパッシブギア選択からなる、様々なギアコンビネーションに設定されるように構成されている。特定のギアコンビネーションでは、第1及び第2の入力軸の両方は、各第1又は第2の駆動クラッチが係合している場合、トルクを2つの入力軸のいずれかで伝達することができるように係合している。しかしながら、通常の(即ち、ギアシフト中ではない)運転中は、第1及び第2の駆動クラッチの一方のみが係合しており、係合した入力軸のトルク伝達ギアはアクティブギア選択であり、そのギアはアクティブギアとして定義される。その結果、第1の駆動クラッチが係合している時、車両エンジンからの動力は第1の入力軸に伝達され、従って第1の入力軸に割り当てられたギアの一方がアクティブである。従って、第2の駆動クラッチは離脱し、車両エンジンからの動力は第2の入力軸に伝達されない。しかしながら、第2の入力軸に割り当てられたギアの一方は、第2の駆動クラッチが係合した時すぐにトルクを伝達することができるように用意している。第2の入力軸に割り当てられた用意したギアは、パッシブギアとして定義される。
【0013】
様々なギアコンビネーションは、既知の方法で、第1及び第2の入力軸、第1及び第2のカウンタ軸、及び主軸の歯車を組み合わせて回転固定することによって、作り出される。
【0014】
パッシブギアは、トルク伝達を中断することなく即時係合の用意をしている。いずれのギアがパッシブギアとして選択されるかは、様々な方法で構成することができる、車両内の制御システムによって制御されている。
【0015】
いずれのギアがパッシブギアとして選択されるかは、一般に、パッシブギアが現在のアクティブギアと同じ入力軸に割り当てられたギアである可能性はないという条件の下、優勢な運転条件に左右される。
【0016】
予め設定された数のギアコンビネーションでは、第1の入力軸及び主軸は同期回転をするものであり、スピゴット軸受の内外輪の間で相対回転がないことを意味している。本発明の方法によれば、車両がエンジンブレーキ操作に設定されている時、トランスミッションが予め設定された数のギアコンビネーションのうちの1つに設定されているかどうかが継続的に確認される。
【0017】
本発明の方法によれば、トランスミッションが予め設定された数のギアコンビネーションのうちの1つに設定されている場合、エンジンブレーキ操作は、スピゴット軸受への損傷荷重が低減するように修正される。
【0018】
スピゴット軸受への損傷荷重が低減するようにエンジンブレーキ操作を修正することによって、スピゴット軸受内での相対回転及び/又は損傷荷重の低減又は除去がもたらされる。トランスミッションを相対回転のないスピゴット軸受への損傷荷重がある状態から外すことによって、スピゴット軸受の摩耗を防止することができる。その結果、本発明の方法は、現在のハードウェア設計のいかなる変更も加えることなくスピゴット軸受のフレッティング摩耗を防止することになる。
【0019】
本発明方法の発展形態では、スピゴット軸受への損傷荷重の低減は、エンジンブレーキトルクが低減するという点で達成される。エンジンブレーキトルクの低減は、スピゴット軸受への軸方向荷重が低減し、それによって損傷が少なくなるという利点を有する。このことは、スピゴット軸受の摩耗を最小限に抑えながらエンジンブレーキ操作を最適化するという利点を有する。ブレーキトルクの低減は、例えば、排気ブレーキ制御又は圧縮エンジンブレーキ制御など、ブレーキ操作を制御することによって達成することができる。
【0020】
本発明の方法の更なる発展形態では、エンジンブレーキ操作の修正は、エンジンブレーキ操作の中断を含む。中断によりスピゴット軸受への軸方向荷重を低減し、それによってスピゴット軸受への不必要なフレッティング及び摩耗を回避することができる。
【0021】
本発明の方法の更なる発展形態では、エンジンブレーキ操作の修正は、少なくとも、予め設定された数のギアコンビネーションのうちの1つにおけるエンジンブレーキ操作の中断を含む。予め設定された数のギアコンビネーションのうちの1つにおいてエンジンブレーキ操作を中断することによって、スピゴット軸受への損傷荷重が完全に除去される。これは、エンジンブレーキ操作の実際の中断、又はより好ましくは、エンジンブレーキ操作が予め設定された数のギアコンビネーションに属さないギアで継続することができるようにトランスミッションがギアチェンジを実行すること、のいずれかによって達成される。
【0022】
上記エンジンブレーキ操作の修正は、好ましくは、スピゴット軸受への軸方向荷重(F)を低減するアクティブギアを含むギアコンビネーションを選択することを含む。より高いギアをアクティブギアとして選択することにより、軸方向荷重(F)が低下する。軸方向荷重(F)を小さくするギアを選択することにより、スピゴット軸受の油膜が圧迫されるまでの時間が増加するため、フレッティング摩耗が生じ得るまでの時間を長引かせることになる。
【0023】
本発明の方法のまた更なる発展形態では、修正は、第1の入力軸と主軸の間の相対回転を可能にするパッシブギアを含むギアコンビネーションを選択することを含む。第1の入力軸と主軸の間の相対回転を可能にするパッシブギアを選択することによって、フレッティング摩耗によってスピゴット軸受に損傷を与える危険性を考慮せずに好適なアクティブギアを使用することができる、即ち、選択されたパッシブギア及びアクティブギアコンビネーションは、第1の入力軸及び主軸が同期回転をする、予め設定された数のギアコンビネーションの一部ではない。
【0024】
本発明の方法の更なる発展形態では、上記修正は、第1の入力軸と主軸の間の相対回転を可能にするパッシブギアを含まないギアコンビネーションを選択することを含む。
【0025】
本発明の方法の別の発展形態では、修正は、第1の入力軸と主軸の間の相対回転を可能にするアクティブギアを含むギアコンビネーションを選択することを含む。
【0026】
本発明の一態様は、トランスミッションが予め設定された数のギアコンビネーションのうちの1つに設定されていると判定された場合にタイマーが起動し、それによって最初にタイマーが所定の制限時間に達した時に、エンジンブレーキ操作の修正が実行されることを提案している。
【0027】
本発明の方法は、スピゴット軸受への損傷軸方向荷重を低減するためにエンジンブレーキ操作を修正するための複数の手段を含む。複数の手段は、同時又は順番に実行することができる。タイマーを用いた時、エンジンブレーキ操作の修正を最適化するために様々な手段を異なる時間に起動するように設定することができる。
【0028】
本方法の一発展形態によれば、所定の制限時間は0に設定することができる。所定の制限時間をゼロに設定することにより、エンジンブレーキ操作が予め設定された数のギアコンビネーションのうちの1つで実行された場合すぐにギアシフトが開始される。
【0029】
軸方向荷重を低減する本発明の方法の発展形態で所定の制限時間を0に設定した場合、選択されたギアコンビネーションが、第1の入力軸及び主軸が同期回転する予め設定された数のギアコンビネーションの一部であるとすると、予め設定された数のギアコンビネーションのうちの現在のエンジンブレーキ操作を中断する状態にトランスミッションを設定する規定の手段が直ちに実行される。本発明の方法のこの発展形態は、制限時間がゼロに設定されている場合、予め設定された数のギアコンビネーションからのギアコンビネーションの代わりに、より好ましい状態にトランスミッションを設定するギアコンビネーションがすぐに選択されるという利点を有する。これにより、フレッティング摩耗が最小になる。
【0030】
本発明の方法のまた別の発展形態では、所定の制限時間は、以下のパラメータ;軸方向荷重、軸受摩耗、最後のオイル交換からの時間、トランスミッション内の油温のうちの少なくとも1つに依存する。第1の入力軸及び主軸が同期回転をするものであり、スピゴット軸受の内外輪の間で相対回転がないことを意味する、予め設定された数のギアコンビネーションでは、有害なフレッティング摩耗が生じるまでの時間は、油膜及び関連するハードウェアの特性に強く左右される。油膜が存在する限り、スピゴット軸受の軌道面はフレッティング摩耗を受けることにはならないが、油膜が局部圧力や軌道に対するころの繰り返し運動によって圧迫された時に、損傷摩耗が生じることになる。スピゴット軸受の現在の摩耗度合、スピゴット軸受の軌道の状態、付与される軸方向荷重(F)や、最後のオイル交換からの時間、オイル品質、オイルの温度等のパラメータに依存するオイルの特性、これらは全て保護油膜が切れるまでの時間、従って許容制限時間に影響を与える。制限時間(t)に影響を及ぼすパラメータに依存する制限時間を考慮及び最適化することによって、スピゴット軸受の摩耗の危険を冒さずに制限時間を最大にすることができることが利点である。
【0031】
本発明の方法の一発展形態では、制限時間は0〜120秒の間に予め定義される。
【0032】
本方法は、コンピュータプログラム上で実行することができる。コンピュータプログラムは、上記プログラムをコンピュータ上で実行した時に本方法のステップを実行するためのコード手段からなる。
【0033】
コンピュータ可読媒体は、上記プログラム製品をコンピュータ上で実行した時に本発明の方法のステップを実行するためのプログラムコード手段からなるコンピュータプログラムを担持することが好ましい。
【0034】
車両のエンジンブレーキ操作を制御するための電子制御装置は、本発明の方法のステップを実行するように構成されていることが更に好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
本発明の更なる発展形態は、図に関連して説明する。
【0036】
【
図1】
図1は、デュアルクラッチトランスミッションの概略図を示す。
【
図2a】
図2a及び
図2bは、本発明の方法の2つの異なる変形態様のフローチャートを示す。
【
図2b】
図2a及び
図2bは、本発明の方法の2つの異なる変形態様のフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下では、本発明を実施する2つの形態の単なる例証として、本発明の2つの実施形態を図示及び説明する。
【0038】
図1は、本発明の方法を実施することが役立つ、デュアルクラッチトランスミッション10の概略図を示す。デュアルクラッチトランスミッション10は、主軸11と、第1及び第2の同軸入力軸12;13と、第1及び第2のカウンタ軸14;15とを備えている。第1の入力軸12は、第2の入力軸13の内部に配置され、主軸11は、スピゴット軸受16を介して上記第1の入力軸12に懸架されている。更に、第1の入力軸12は、上記主軸11上に回転配置された第1の歯車17に回転接続されている。第2のカウンタ軸15は、既知の方法に従って第1のカウンタ軸14上に配置された歯車からなっている。
図1によれば、第1の係合スリーブ18は、係合スリーブ18が第1の歯車17の回転を主軸11の同期回転に固定し、このことによって第1の入力軸12と同期するような位置に配置されており、それによって第1の入力軸12と主軸11の間の相対回転がなくなっている。従って、
図1は、第1の入力軸12及び主軸11が同期回転するギアコンビネーションを示している。
【0039】
各々のギアコンビネーションは、アクティブギア及びパッシブギアからなっており、アクティブギア及びパッシブギアは、第1及び第2の入力軸12;13に割り当てられている。どのギアがアクティブでどのギアがパッシブかは、第1及び第2の入力軸12;13のうちのいずれが係合しているか、次に、各駆動クラッチ(図示せず)がいずれの入力軸12;13に係合しているかによって決まる。通常の(即ち、ギアシフト中ではない)運転中は、第1及び第2の駆動クラッチの一方のみが係合している。しかしながら、パワーシフト中、第1及び第2の入力軸の両方の駆動クラッチは、少なくとも部分的に係合状態にある。
【0040】
デュアルクラッチトランスミッション10が予め設定された数のギアコンビネーションのうちの1つに設定された時にエンジンブレーキ操作が開始されると、又はエンジンブレーキ中に予め設定された数のギアコンビネーションのうちの1つへのギアシフトが実行されると、エンジンブレーキからの大きな軸方向力がスピゴット軸受16の広範囲な摩耗を引き起こし得る。
【0041】
図1によれば、スピゴット軸受16は、第1の入力軸12と主軸11の間に配置されている。従って、第1の入力軸12と主軸11の間で相対回転がない時、スピゴット軸受16内での相対回転がなくなり、スピゴット軸受16のころが静止することになる。スピゴット軸受16の静止ころに作用する大きな軸方向ギア噛合力は、軸受接触面からオイルを押し出すことになる。油膜が不十分又は存在しない状態で軸方向ギア噛合力がスピゴット軸受16に付与された時は、スピゴット軸受16の摩耗を引き起こすことになる。本発明の方法は、デュアルクラッチトランスミッションがエンジンブレーキ中に予め設定された数のギアコンビネーションのうちの1つに設定されることを防止することによって、スピゴット軸受16内で相対回転がないエンジンブレーキ状態中にスピゴット軸受16への損傷荷重を低減又は防止する。
【0042】
次に、本発明の方法の一実施形態のフローチャートを示す
図2aを参照する。本発明の方法は、車両の個別の電子制御装置、又はトランスミッション制御装置等の車両の別の制御装置で実施することができる。
【0043】
本発明の方法は、エンジンブレーキ操作の開始(EBO開始)によって、及び/又はエンジンブレーキ操作中にギアシフトを実行することによって始められる。本発明の第1のステップは、ギアコンビネーション制御(GC制御)からなる。ギアコンビネーション制御(GC制御)では、デュアルクラッチトランスミッションが予め設定された数のギアコンビネーションのうちの1つに設定されているかどうかの評価が実行される。予め設定された数のギアコンビネーションは、一時的なギアMG入力と共に、ギアコンビネーション制御(GC制御)に対する入力GCとして与えられる。予め設定された数のギアコンビネーションGCは、パッシブ又はアクティブギアのいずれにおいてもスピゴット軸受内で相対回転がないギアコンビネーションである。
【0044】
一時的なギアコンビネーションMGが予め設定された数のギアコンビネーションGCのうちの1つではない場合、エンジンブレーキ操作を制御する本発明の方法は終了し、エンジンブレーキ操作は通常通り進行する(ボックスEB)。
【0045】
トランスミッションの一次的なギアコンビネーションMGが予め設定された数のギアコンビネーションのうちの1つである場合、上記エンジンブレーキ操作は、上記スピゴット軸受への損傷荷重が低減又は停止するようにEBOにおいて修正される。エンジンブレーキ操作は、損傷荷重を低減又は停止するために上記したように様々な方法で修正することができる。
【0046】
様々な方法は、エンジンブレーキトルクの低減、エンジンブレーキ操作の中断、第1の入力軸と主軸の間の相対回転を可能にするパッシブ/アクティブギアの選択、及び/又はスピゴット軸受への軸方向荷重(F)を低減するアクティブギアを含むギアコンビネーションの選択、のうちの1つ又は幾つかであってよい。
【0047】
図2bに開示された更なる実施形態では、GCまでの第1のステップは
図2aの実施形態と同じだが、ここでは、トランスミッションの一時的なギアコンビネーションMGが予め設定された数のギアコンビネーションGCのうちの1つである場合、タイマーTが代わりに起動される。タイマーTは、トランスミッションが予め設定されたギアコンビネーションGCのうちの1つに設定されている間にエンジンブレーキ操作が継続している時間を計時する。タイマーTの起動後連続的に、タイマーTが所定の制限時間tに達したかどうかの評価が実行される(T=t)。評価T=tへの入力として、制限時間tが与えられる。制限時間tは、所定の制限時間、又は、例えば軸方向荷重、軸受摩耗、最後のオイル交換からの時間、オイルの品質、及びトランスミッション内の油温等のパラメータに依存する制限時間であってよい。
【0048】
タイマーTが制限時間tに達していない間は、エンジンブレーキ操作は通常通り進行する。タイマーTが制限時間tに達すると、エンジンブレーキ操作EBOを低減又は停止する。上記したように、エンジンブレーキ操作は、損傷荷重を低減又は停止するために様々な方法で修正することができる。
【0049】
本発明の方法の好適な実施形態によれば、中断は、トランスミッションが以下のようにシフトされることで実行されるものであって、
●以下のギアコンビネーションが選択されるようにするか、
○スピゴット軸受16への軸方向荷重Fを低減するアクティブギアを含むもの、
○上記第1の入力軸12と上記主軸11の間で相対回転を可能にするアクティブギアを含むもの、
○上記第1の入力軸12と上記主軸11の間で相対回転を可能にするパッシブギアを含むもの、又は、
●パッシブギアにおいて、第1の入力軸及び主軸の同期が中断される、即ち、パッシブギアが選択されないようにする。
【0050】
エンジンブレーキトルクは、スピゴット軸受への軸方向荷重を低減するために、それに加えて低減させることができる。
【0051】
運転に対する影響、即ち、パッシブギア設定の変化が最も少ない手段が選択されることが好ましい。手段のうちの少なくとも1つは、実行して一時的なギアコンビネーションにおけるエンジンブレーキ操作を中断しなければならない。
【0052】
本発明は、上述し、且つ図面において例証した実施形態に限定されないことを理解すべきであり、むしろ、当業者は、特許請求の範囲の技術的範囲内で多くの変更及び修正が可能であることがわかるであろう。
【国際調査報告】