(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2016-538974(P2016-538974A)
(43)【公表日】2016年12月15日
(54)【発明の名称】剛性コアゴルフボール及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A63B 37/00 20060101AFI20161118BHJP
A63B 45/00 20060101ALI20161118BHJP
C08L 21/00 20060101ALI20161118BHJP
C08L 23/08 20060101ALI20161118BHJP
C08K 3/34 20060101ALI20161118BHJP
C08K 7/10 20060101ALI20161118BHJP
C08L 77/12 20060101ALI20161118BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20161118BHJP
C08L 9/00 20060101ALI20161118BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20161118BHJP
C08K 3/00 20060101ALI20161118BHJP
【FI】
A63B37/00 512
A63B37/00 618
A63B37/00 622
A63B37/00 530
A63B37/00 542
A63B37/00 528
A63B45/00 B
C08L21/00
C08L23/08
C08K3/34
C08K7/10
C08L77/12
C08L101/00
C08L9/00
C08K3/04
C08K3/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-549213(P2016-549213)
(86)(22)【出願日】2014年10月20日
(85)【翻訳文提出日】2016年5月23日
(86)【国際出願番号】US2014061367
(87)【国際公開番号】WO2015058190
(87)【国際公開日】20150423
(31)【優先権主張番号】61/893,268
(32)【優先日】2013年10月20日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】516117799
【氏名又は名称】オンコア ゴルフ テクノロジー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】特許業務法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デュフォー,ダグラス,ピー.
(72)【発明者】
【氏名】ブレイクリー,キース,エイ.
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AA011
4J002AC031
4J002BB031
4J002BB231
4J002BC031
4J002BN151
4J002BP031
4J002CK021
4J002CL001
4J002DA016
4J002DA026
4J002DE096
4J002DE146
4J002DJ006
4J002DK006
4J002FA046
4J002FA066
4J002FA096
4J002FD016
4J002GC01
(57)【要約】
ゴルフボールは、400MPaから200GPaの剛性を有する球状コアを備える。コアの剛性は、構成材料及び材料の割合の調整によって制御され得る。その結果、プレーに適合すると共に、現在入手可能な高性能のゴルフボールと同等の飛距離が可能なだけでなく、プレー中のフック及びスライスを少なくする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のディンプルを規定する外面と、空洞を規定すると共に、前記外面に対向した内面と、を有するカバー層と、
前記空洞内に配置された球状コアと、を備え、
前記球状コアは、ポリマーマトリックス複合材料を含むと共に、400MPaから200GPaの剛性を有する
ことを特徴とするゴルフボール。
【請求項2】
前記ポリマーマトリックス複合材料は、有機または無機の強化相を含む
ことを特徴とする請求項1に記載のゴルフボール。
【請求項3】
前記強化相は、窒化ケイ素、炭化ケイ素、二ホウ化チタン、炭化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、及び炭化ホウ素の集合から選ばれるセラミックを含む
ことを特徴とする請求項2に記載のゴルフボール。
【請求項4】
前記強化相は、炭素繊維、カーボンナノチューブ、及びグラフェンの集合から選ばれる材料を含む
ことを特徴とする請求項2に記載のゴルフボール。
【請求項5】
前記強化相は、前記球状コアの5重量%から80重量%である
ことを特徴とする請求項2に記載のゴルフボール。
【請求項6】
前記ポリマーマトリックス複合材料は、ナイロン、ポリエチレン、ポリスチレン、及びアクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)の集合から選ばれるポリマーを含む
ことを特徴とする請求項1に記載のゴルフボール。
【請求項7】
前記ポリマーマトリックス複合材料は、エチレン(メタ)アクリル酸アイオノマー、ポリエーテルブロックアミド、ウレタン、ポリウレタン、及びポリブタジエンの集合から選ばれるポリマーを含み、さらに、前記ポリマーマトリックス複合材料は、炭化ケイ素を有する強化相を含み、前記炭化ケイ素は、5重量%から80重量%である
ことを特徴とする請求項1に記載のゴルフボール。
【請求項8】
前記ポリマーマトリックス複合材料は、ポリブタジエン及びグラフェンを含み、前記グラフェンは、1重量%から20重量%である
ことを特徴とする請求項1に記載のゴルフボール。
【請求項9】
前記ポリマーマトリックス複合材料は、ポリマー樹脂及び30重量%の重量の炭化ケイ素ウィスカーを含む
ことを特徴とする請求項1に記載のゴルフボール。
【請求項10】
前記ポリマーマトリックス複合材料は、ポリエーテルブロックアミド及び40重量%の重量の窒化ケイ素繊維を含む
ことを特徴とする請求項1に記載のゴルフボール。
【請求項11】
前記ポリマーマトリックス複合材料は、エチレン(メタ)アクリル酸イオノマーと窒化ケイ素の混合物を含み、前記窒化ケイ素は、10重量%から80重量%である
ことを特徴とする請求項1に記載のゴルフボール。
【請求項12】
前記ポリマーマトリックス複合材料は、エラストマーを含む
ことを特徴とする請求項1に記載のゴルフボール。
【請求項13】
前記球状コアは、110から200のATTI圧縮を有する
ことを特徴とする請求項1に記載のゴルフボール。
【請求項14】
前記球状コアは、0.7より大きな反発係数を有する
ことを特徴とする請求項1に記載のゴルフボール。
【請求項15】
さらに、前記球状コアと前記カバー層との間に少なくとも1つの追加の層を備える
ことを特徴とする請求項1に記載のゴルフボール。
【請求項16】
複数のディンプルを規定する外面と、空洞を規定すると共に、前記外面に対向した内面と、を有するカバー層と、
前記空洞内に配置された球状コアと、を備え、
前記球状コアは、金属マトリックス複合材料を含むと共に、400MPaから200GPaの剛性を有する
ことを特徴とするゴルフボール。
【請求項17】
前記金属マトリックス複合材料は、鉄、マグネシウム、チタン、アルミニウム、コバルト、モリブデン、タングステン、ニッケル、及びこれらの合金の集合から選ばれる金属を含み、さらに、前記金属マトリックス複合材料は、窒化ケイ素、炭化ケイ素、二ホウ化チタン、炭化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭化ホウ素、炭素繊維、カーボンナノチューブ、及びグラフェンの集合から選ばれる強化相を含む
ことを特徴とする請求項16に記載のゴルフボール。
【請求項18】
前記強化相は、前記球状コアの5重量%から80重量%である
ことを特徴とする請求項17に記載のゴルフボール。
【請求項19】
前記球状コアは、110から200のATTI圧縮を有する
ことを特徴とする請求項16に記載のゴルフボール。
【請求項20】
前記球状コアは、0.7より大きな反発係数を有する
ことを特徴とする請求項16に記載のゴルフボール。
【請求項21】
さらに、前記球状コアと前記カバー層との間に少なくとも1つの追加の層を備える
ことを特徴とする請求項16に記載のゴルフボール。
【請求項22】
複数のディンプルを規定する外面と、空洞を規定すると共に、前記外面に対向した内面と、を有するカバー層と、
前記空洞内に配置された球状コアと、を備え、
前記球状コアは、ナノ構造材料を含むと共に、400MPaから200GPaの剛性を有する
ことを特徴とするゴルフボール。
【請求項23】
前記ナノ構造材料は、炭素鋼、ステンレス鋼、またはチタンを含み、さらに、前記ナノ構造材料は、1μmより小さな粒径を有する
ことを特徴とする請求項22に記載のゴルフボール。
【請求項24】
前記ナノ構造材料は、ナノメートルサイズの強化相を含む
ことを特徴とする請求項22に記載のゴルフボール。
【請求項25】
前記球状コアは、110から200のATTI圧縮を有する
ことを特徴とする請求項22に記載のゴルフボール。
【請求項26】
前記球状コアは、0.7より大きな反発係数を有する
ことを特徴とする請求項22に記載のゴルフボール。
【請求項27】
さらに、前記球状コアと前記カバー層との間に少なくとも1つの追加の層を備える
ことを特徴とする請求項22に記載のゴルフボール。
【請求項28】
剛性が400MPaから200GPaになるように、球状コアの剛性を制御するように構成された所定の時間の間で多軸押出機を使用することで、セラミック繊維をポリマーに混合する
ことを特徴とするゴルフボールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[対応出願]
本願は、2013年10月20日出願の米国仮出願第61/893,268号に対する優先権を主張するもので、これを引用することで開示内容を本願中に組み込む。
【0002】
本願は、プレー特性を向上させるゴルフボール、特に、剛性コアを有するゴルフボールに関する。
【背景技術】
【0003】
米国で販売される大抵のゴルフボールは、米国ゴルフ協会(USGA)の適合リストに記載されている。数種類の仕様がUSGAによって設定され、ゴルフボールは、重量、サイズ、初速、総合飛距離(キャリー及びロール)及び球対称に対するこれらの仕様について、所定の試験基準を満たす必要がある。USGAに適合するためには、ゴルフボールは、重量が1.620オンスを超えてはならず、最小直径が1.680インチであり、最小初速が、標準USGAボール試験機で測定される250フィート毎秒(最大2%の許容誤差あり)であり、さらに、最大総合飛距離が、USGA総合飛距離試験方法で測定される317ヤード(最大3ヤードの許容誤差あり)である必要がある。さらに、ボールは、球対称のボールとは異なる特性を有するように設計、製造または意図的な改良を行ってはならない。USGAは、ボールが様々な角度から打たれたときの総合飛距離の試験データ(距離変動及び飛行時間変動)の統計的偏差を調査することで、対称性に対する試験を行う。
【0004】
一般的なゴルフボールは、「巻かれた」タイプまたは「成形された」タイプのいずれかである。成形されたゴルフボールは製造費用が安価で、現在販売される略全てのゴルフボールは成形されている。費用を考慮して、現在販売される大抵のゴルフボールは、ポリブタジエンのコアを有するツーピースのポリマーのボールである。このタイプのボールを製造する方法は、ポリブタジエンを様々な直径の中実コアに圧縮成形する工程と、その後、このコアにカバーを射出成形する工程と、を含む。ディンプルが型に設けられているので、第2工程の射出成形で略完成したゴルフボールが製造され、洗浄及び塗装が行われて、ゴルフボールが完成する。
【0005】
新しいゴルフボールの大抵の改良は、ポリブタジエンの中実コアを有するツーピース構造を基礎とするものであって、コアと外側カバーとの間に様々な層が付加されている。2から6の間の層が追加され得る。いくつかのボールは射出成形のコアまたはマントル層(コアとカバー層との間)を使用するが、最も販売されるツアーボールは、圧縮成形のポリブタジエンのコアを採用する。
【0006】
大抵の市販されるゴルフボールは、非金属のゴム及びプラスチック、例えば、エラストマー、アイオノマー、ポリウレタン、ポリイソプレン、ナイロン及びその他の類似の材料からなる。しかし、近年では、金属の中空コアを有するゴルフボールが市場に出ている。この設計は、金属製コアの高い剛性(一般的なゴルフボールの剛性と比較したとき)の利点を利用して、高い精度(小さいフック及びスライス)の同時特性(simultaneous characteristics)だけではなく、向上されたプット特性(putting characteristics)を有するゴルフボールを製造する。これらのタイプのゴルフボールは、硬い感じがあり、一般的な成形のゴルフボールに比べて小さな距離ロスがある等、いくつかの欠点がある。
【0007】
単にゴルフボールの一部に金属を使用するだけでは、ゴルフボールの剛性を十分に上げることはできない。このような設計はいくつかの欠点があり、金属製の中空の球の設計では、クラブで打たれたときの衝撃力に耐えるのに十分な耐性がない欠点を含む。これは永久歪みを導く。
【0008】
近年の他の改良では、十分に高い剛性を有するコアを提供できない。
【0009】
従って、現存するゴルフボールの欠点が現れない高い剛性のコアを有するゴルフボールに対して、満たされていない要求がある。
【発明の概要】
【0010】
ゴルフボールは、耐久性、構造的整合性及び対称性を維持可能な高い剛性の球状コアを備え、良好な感触、リバウンド及び飛行軌道を有する。ゴルフボールは、球状コアと、例えば、ゴルフクラブで圧縮されたときの力に耐えることができる耐久性の混合ポリマーが含まれた球状コアを囲む1以上の外層と、を含む。球状コアは、中実であり、ポリマーマトリックス複合材料、金属マトリックス複合材料またはナノ構造材料とできる。例えば、球状コアは、複数成分の混合物であって、成分の一つは、射出成形可能なポリマー、圧縮成形可能なポリマーまたはエラストマー、または両方の組み合わせである。高弾性材料、例えば、グラフェン、炭化ケイ素、窒化ケイ素、または他の無機材料または化合物を、球状コアに含めることができる。球状コアを囲む外層は、射出成形可能なポリマー、圧縮成形可能なポリマー、または、少なくとも2種類の成分の混合物からなる混合ポリマーにできる。
【0011】
一実施形態では、ゴルフボールは、カバー層及び球状コアを備える。カバー層は、ディンプルを有する外面と、空洞を規定すると共に、外面に対向した内面と、を有する。空洞内の球状コアは、ポリマーマトリックス複合材料を含み、400MPaから200GPaの剛性を有する。ポリマーマトリックス複合材料は、有機または無機の強化相を含む。強化相は、窒化ケイ素、炭化ケイ素、二ホウ化チタン、炭化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭化ホウ素、炭素繊維、カーボンナノチューブ、またはグラフェンとすることができる。強化相は、球状コアの5重量%から80重量%である。ポリマーマトリックス複合材料は、例えば、ナイロン、ポリエチレン、ポリスチレン、またはアクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)であるポリマーを含む。ポリマーマトリックスは、エラストマーを含んでもよい。球状コアとカバー層との間に少なくとも1つの追加の層があってもよい。球状コアは、110〜200のATTI圧縮と、0.7より大きな反発係数と、を有する。
【0012】
別の実施形態では、ゴルフボールは、カバー層及び球状コアを備える。カバー層は、ディンプルを有する外面と、空洞を規定すると共に、外面に対向した内面と、を有する。空洞内の球状コアは、金属マトリックス複合材料を含み、400MPaから200GPaの剛性を有する。金属マトリックス複合材料は、金属や強化相を含む。金属は、鉄、マグネシウム、チタン、アルミニウム、コバルト、モリブデン、タングステン、ニッケル、またはこれらの合金にできる。強化相は、窒化ケイ素、炭化ケイ素、二ホウ化チタン、炭化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭化ホウ素、炭素繊維、カーボンナノチューブ、またはグラフェンにできる。強化相は、球状コアの5重量%から80重量%である。球状コアとカバー層との間に少なくとも1つの追加の層があってもよい。球状コアは、110〜200のATTI圧縮と、0.7より大きな反発係数と、を有する。
【0013】
別の実施形態では、ゴルフボールは、カバー層及び球状コアを備える。カバー層は、ディンプルを有する外面と、空洞を規定すると共に、外面に対向した内面と、を有する。空洞内の球状コアは、ナノ構造材料を含み、400MPaから200GPaの剛性を有する。ナノ構造材料は、炭素鋼、ステンレス鋼、またはチタンを含むことができ、1μmより小さな粒径とできる。ナノ構造材料は、ナノメートルサイズの強化相を含むことがでる。球状コアとカバー層との間に少なくとも1つの追加の層があってもよい。球状コアは、110〜200のATTI圧縮と、0.7より大きな反発係数と、を有する。
【0014】
別の実施形態では、ゴルフボールを製造する方法が提供される。球状コアの剛性が400MPaから200GPaになるよう制御するように構成された所定時間の間で多軸押出機を使用することで、セラミック繊維をポリマーに混合する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
開示の本質及び目的を完全に理解するために、図面と共に以下の詳細な説明を参照すべきである。
【
図1】高い剛性の球からなる最内側コアと、中間マントル層と、カバー層と、からなる3つの要素を含むゴルフボールの一部断面斜視図。
【
図2】高い剛性の球からなる最内側コアと、中間マントル層と、カバー層と、からなる3つの要素を含むスリーピースのゴルフボールの断面図。
【
図3】高い剛性の球からなる最内側コアと、カバー層と、からなる2つの要素を含むツーピースのゴルフボールの断面図。
【
図4】高い剛性の球からなる最内側コアと、内側マントル層と、外側マントル層と、カバー層と、からなる4つの要素を含むフォーピースのゴルフボールの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本願で請求される内容は、所定の実施形態に基づいて説明されるが、全ての効果及び特徴が提供されない実施形態を含む他の実施形態もまた本開示の範囲内である。本開示の精神または範囲から逸脱しない種々の構造、論理及び処理工程の変更を実行できる。従って、本開示の範囲は添付の特許請求の範囲を参照することによって定義される。
【0017】
ここで開示されるゴルフボールに使用される球状コアは、400MPaから200GPaの剛性を有する。この高い剛性の球状コアを有するゴルフボールは、より好ましいプレー特性を提供する。高い剛性のコアは、スピン速度(例えば、バックスピン、サイドスピン、ライフルスピン)、水平及び垂直発射角度、及び起動速度に影響を与える。
【0018】
コアの剛性は、球を構成するために使用される材料の特性(例えば、硬度、弾性、靱性等の係数)に起因し得る。また、コアの剛性は、材料が金属、セラミック、ポリマー、エラストマー、または2以上のこれらまたは他の材料の複合であるか否かに起因し得る。球の表面特徴及び全体的な大きさ及び形状、例えば、慣性モーメント、断面係数等は、コアの剛性に影響を与える他の要因である。さらに、球状コアを囲むポリマーまたは他の材料の特性が、プレー特性に影響を与える。
【0019】
ここに開示されたゴルフボールは、ディンプルパターンを有する外側カバーと、現在の市場でのゴルフボールの大部分に見られる一般的なポリブタジエンのコアの少なくとも約5倍または約2倍の剛性を有する球状コアと、を備える。ここに開示されたゴルフボールの剛性は、現在の市場での金属製の中空コアよりも小さくてよい。
【0020】
ATTI圧縮試験は、剛性を測定するために使用され得る。ATTI圧縮試験は、ばねによって力が加えられるときのゴルフボールまたはゴルフボールコアの撓みを測定する。撓みとATTI圧縮との間の関係は、式[1]に示される。
ATTI圧縮=200−(撓み×1000) ・・・ [1]
一般的なポリブタジエンのコアは、110未満のATTI圧縮を有する。一般的な金属製の中空コアは、190より大きなATTI圧縮を有する。ここに開示される改良されたゴルフボールのコアのATTI圧縮は110〜200であり、これらの間の全ての値及び範囲を含む。
【0021】
ここで開示されるゴルフボールは、ツーピースのゴルフボールでよく、この場合、硬い球状コアを有するカバーで構成される。ここで開示されるゴルフボールは、ツーピースより多い、例えば、3つ、4つ、5つ等のピースを用いた他の複数ピースの設計でよく、この場合、球が最内側の球状コアとして機能する。従って、ここで開示された球状コアは、
図1〜4の実施形態のいずれか、または、他のゴルフボールの設計で使用され得る。
【0022】
図1の通り、ゴルフボール11は、第1のポリマー層13で囲まれた剛性の球状コア12を含み、表面を有するツーパートの球状体14を形成する。ツーパートの球状体は、カバー層15によって囲まれ、カバー層は、この分野で周知の、飛行距離を向上するためのディンプル、または、他の特徴を含む。カバー層15は、ディンプルを有する外面と、空洞を規定すると共に、外面と対向した内面と、を備える。カバー層15の内面及び外面が、約4mmのカバー厚さを規定するが、厚さは約1mmと約6mmとの間でよく、それらの間の全ての値及び範囲を含み、または、約2mmと約5mmとの間でもよい。表面にディンプルを有するカバー層15は、(デュポン社製)SURLYN(登録商標)の商品名で販売されているポリマーからなる。他の実施形態では、カバー層15は、アイオノマー、ウレタン、バラタ、ポリブタジエン、他の合成エラストマー、または、ゴルフボールカバーに適した任意の他の材料からなる。カバー層15は、また、ゴルフボールの直径を形成する。実施形態では、ゴルフボールの直径は約42.67mm(1.68インチ)であるが、プレーすることが可能であれば、42.67mmと同等、大きい、または、小さくてもよい。例えば、USGA適合のゴルフボールは、直径が1.68インチ、またはそれ以上である。例えば、ゴルフボールの直径は、約40mmと約45mmとの間でよく、それらの間の全ての値及び範囲を含む。
【0023】
球状コア12の直径は、約10mm(0.39インチ)から約38mm(1.50インチ)の任意の直径でよく、それらの間の全ての値及び範囲を含む。例えば、剛性コアを有するUSGA適合のゴルフボールは、コアの直径が0.9インチと同等または未満となっている。例では、ゴルフボール11の球状コア12は、約31.75mm(1.25インチ)未満の直径であって、その間の全ての値及び範囲を含む。別の例では、ゴルフボール11の球状コア12は、約22.86mm(0.90インチ)と同等または未満の直径である。さらに別の例では、球状コア12は、約0.9インチから約0.25インチの直径である。
【0024】
第2の層14は、ポリマー材料であって、例えば、1以上のエチレン(メタ)アクリル酸アイオノマー(例えば、デュポン社製のHPFTM樹脂)、ポリエーテルブロックアミド(例えば、アルケマグループ社製のPEBAX(登録商標)の商品名で販売されている材料)、ポリブタジエン、または、この分野で周知の、ゴルフボールに使用される他の材料である。第2の層13は、成形構造とできる。第2の層14は、一般的に、外径が約1.52〜1.60インチ(3.86〜4.06センチメートル)、かつ、厚さが0.05〜0.65インチ(0.13〜1.65センチメートル)であり、その間の全ての値及び範囲を含む。別の例では、第2の層14は、外径が約0.21〜0.55インチ(0.53〜1.4センチメートル)である。
改良されたゴルフボール11の別の実施形態が、
図2に示される。ゴルフボール11は、薄い第1のマントル層13に囲まれ、第2のマントル層14に囲まれ、さらに、カバー層15に囲まれた剛性の球状コア12を含む。
【0025】
改良されたゴルフボール11の別の実施形態が、
図3に示される。ゴルフボール11は、薄い第1のマントル層13に囲まれ、さらに、カバー層15に囲まれた剛性の球状コア12を含む。
図3のゴルフボール11は、
図2に示された第2のマントル層14がない。
【0026】
改良されたゴルフボール11の別の実施形態が、
図4に示される。ゴルフボール11は、一次の剛性の球状コア12aと、一次のコア12aを囲み、マントル層14に囲まれ、さらに、カバー層15に囲まれた中空の球状コア13と、を含む。中空の球状コア13は、金属、または、プラスチックでよい。一次の球状コア12aは、ポリマーマトリックス複合材料、金属マトリックス複合材料、または、炭素マトリックス複合材料である。
【0027】
図1のゴルフボール11または球状コア12の直径は、
図2〜
図4のゴルフボール11または球状コア12,12aの一部または全てに適用できる。
【0028】
反発係数(COR)は、一般的に、ゴルフボール、例えば、
図1〜4のゴルフボールのプレー性能を分析する際に測定される。CORは、加えられた衝突速度でのボールの全体的な弾力性の尺度であり、移動不能に固定された躯体で(一般的には、空気砲で)ボールを発射することによって試験される。ボールのCORは、以下の式[2]で計算される。
COR=衝撃後のボールの速度/衝撃前のボールの速度 ・・・ [2]
【0029】
ここで開示された改良されたゴルフボールのCORは、約0.7より大きい。例えば、ここで開示された改良されたゴルフボールのCORは、0.75より大きい。ポリマーマトリックス複合材料、金属マトリックス複合材料、またはナノ構造材料を使用して、様々な材料特性を調整することによって、CORを最適化し、または適合させることができる。剛性の材料は、より少ない撓みを有する傾向がある。
【0030】
最近のゴルフボールでは、衝撃後のボールの速度は、通常、固定目標における衝撃の直前のゴルフボールの速度より約20%少ない。この衝撃の間に生じる運動エネルギー(すなわち速度)の損失によって、ボール材料が分子レベルで熱に変換されるので、衝突で励起されると共に、振幅が減少されたボール材料内で振動エネルギーに変換される。振動損失を最小化または減少させる特性によって、一般的には、衝撃からの損失運動エネルギーが減少し、それによって、ボールのCORが増大する。ゴルフボールの振動反応に起因する他のパラメータは、衝撃によって生じる振動を減衰するボールの特性である。減衰は、球状コアを囲みまたはコア内に配置された材料の特性、例えば、物質の密度、粘度、弾性率、摩擦係数等に起因し得る。材料は、加圧されたまたはそうでない、気体、液体、ゲル、泡、固体であってもよい。さらに、材料の状態、例えば、材料がプレストレスされているか否かも考慮される。これらのパラメータのいずれかが、ゴルフボールの振動応答を調整するために変更されてもよい。
【0031】
次式[3]は、強い衝撃の衝突の間に打たれたときの、
図1に示したスリーピースのゴルフボール11の撓みを説明する。この式はスリーピースのボールの撓みを説明するが、この解析は、条件を追加または減少させることによって、他のタイプのボールにも等しく有効であることに留意すべきである。例えば、ツーピースボールの場合、マントル層に関連する部分をゼロに設定することになる。
D=(d
cover×(F)+d
mantle×(F)+d
core×(F))×F
・・・ [3]
ここで、Dはボールの合計変形(すなわち全ての層の撓み)であり、Fはボールに加えられる力であり、d
cover×(F)はカバー層の撓みであり、d
mantle×(F)はマントル層の撓みであり、d
core×(F)は球状コアの撓みである。カバー、マントルおよびコアの撓みが、加えられた力、層の厚さ、構成および構造の材料のそれぞれの全ての関数となる。スリーピースのゴルフボールの球状コアおよび弾性マントル層は、小さい負荷に対して線形に偏向する傾向があり、負荷が増加すると、次第に剛性になることによって、非線形となる。
【0032】
ゴルフボールの各層の変形は、その厚さ及び(加えられた力に対して非線形関数となり得る)層の係数に関係する。特定の層の変形は、層の構成に応じて変化し得る。
【0033】
図1〜4に示す球状コア12,12aの剛性は、ゴルフボールのプレー性能に影響を与える。従って、球状コアの剛性は、ゴルフボールにおける所定の性能特性を達成するための設計ツールとなり得る。(一般的なエラストマー又はポリマーコアの剛性と比較した場合の)硬いコアの剛性は、COR、及びゴルフボールの他の性能特性を制御する設計要素として使用され得る。設計者は、プレー中の少ないフックとスライスを許容する設計体制を構築しながら、硬いコアの剛性を制御することにより、CORを制御できる。
【0034】
例えば、
図1〜4に示された球状コア12,12aの剛性は、約400MPaから約200GPaであり、その間の全ての値及び範囲を含む。別の例では、
図1〜4に示された球状コア12,12aの剛性は、約600MPaから約100GPaである。別の例では、
図1〜4に示された球状コア12,12aの剛性は、約1GPaから約100GPaである。
【0035】
球状コアの剛性は、材料設計を介して制御される。ここで開示されたゴルフボールは、ローサイドスピン速度、長距離、及び反発性能に悪影響を及ぼすことのないバイトを含む改善された性能特性を提供する。不適切に打ったときのボールのフックやスライスを最小限に抑える。性能特性を最適化するために、ゴルフボールの設計で、球形コア、第2のまたは他の追加の層の材料及び大きさ、および外側カバーを変更できる。例えば、球状コアをより高い剛性とすることで、より高いライフルスピンまたは下側スピンに影響を及ぼすことができ、それにより、フックまたはスライスを減少できる。この高い剛性はまた、改善された、または最適なバックスピンを生み出す。
【0036】
例えば、ゴルフボールは、所定の層に適合するスピン特性の幅で製造される。
【0037】
ここで開示されるゴルフボールは、球状で、同等の空気力学特性を有し、中心軸まわりの同等の慣性モーメントを有するように、例えば、射出成形および/または圧縮成形などの工程および技術を用いて製造され得る。ナノ構造材料が、射出成形されたポリマー内に組み込まれる場合、射出成形中にスクリュー背圧を増加することで、ポリマー中の材料の分散性を向上できる。
【0039】
1以上のポリマーおよび1以上の強化相が、ポリマーマトリックス複合材料から製造される球状コアに使用され得る。最終的な複合体は、設??計要件(例えば、係数、靭性、表面仕上げ)を満たさなければならないことを除いて、使用され得る材料の種類に制限はない。これらの1以上のポリマーと1以上の強化相が、いずれかの単一の材料では得られない一連の特性を提供する混合物を形成する。現在のコア複合材料のための射出成形ポリマーとしては、これらに限定されないが、ナイロン、ポリエチレン、ポリスチレン、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、及びこれらの組み合わせがある。ポリマーマトリックス複合材料で強化相として使用され得るセラミックスとしては、限定されないが、例えば、窒化シリコン(Si
3N
4)、炭化シリコン(SiC)、二ホウ化チタン(TiB
2)、炭化チタン(TiC)、アルミニウム酸化物(Al
2O
3)、酸化ジルコニウム(ZrO
2)、炭化ホウ素(B
4C)、及びこれらの組み合わせがある。炭素繊維、カーボンナノチューブ(CNTs)、グラフェン、または他の材料は、強化相として使用することができ、上記のようにポリマーマトリックス複合材料で使用される場合、ポリマーまたはエラストマーの十分な剛性を付与できる。また、エラストマーは、マトリックスとして使用され、またはポリマーと混合されてマトリックスを提供し得る。
【0040】
実施形態において、球状コアは、1以上のポリマーおよび1以上の強化相からなる。
【0041】
例えば、強化相は、球状コアの約5重量%から80重量%であって、それらの間のすべての値および範囲を含む。別の例では、強化相は、球状コアの約10重量%から60重量%である。
【0042】
実施形態では、ポリマーマトリックスのコアは、エチレン(メタ)アクリル酸アイオノマー(例えば、デュポン社製HPFTM樹脂)、ポリエーテルブロックアミド(例えば、アルケマグループ社製のPEBAX(登録商標)の商品名で販売されている材料)、ウレタン/ポリウレタン、及び/又はポリブタジエンを含む1以上のポリマーを含む。炭化ケイ素ウィスカー(SiC−W)材料は、複合コアを形成するポリマーおよび/またはエラストマーに添加される。SiC−W材は、球状コアの約5重量%から80重量%、または約10重量%から60重量%の間である。SiC−Wは、ナノ複合材料の形態で添加され、例えば、SiC−Wは、ポリプロピレン又は他のポリマー等のポリマー担体中に含まれる。ポリマー複合コアは、1以上の層を含むことができる。ゴルフボールは、コアを囲む1または複数の追加の層を含むことができる。中間層または複数の層が使用される場合、(デュポン社製)SURLYN(登録商標)の商品名で販売されているポリマー等、ゴルフボールに適した硬質で耐久性のあるポリマーからなるカバーで囲まれる。本実施形態に係るゴルフボールは、従来のゴルフボールに比べて、より高い反発係数及びより高精度を有することができる。
【0043】
別の実施形態では、ポリマーマトリックス複合材料を含む一連の材料が使用される。例えば、デュポン社のHPF樹脂は、炭化ケイ素(SiC)繊維及び/又はウィスカー等のセラミック微粒子および/または繊維で充填された射出成形マトリックスを提供する。
【0044】
一実施形態では、高い剛性の球形コアは、球状コアの1〜20重量%の間のグラフェンを含有するポリブタジエンからなり、エチレン(メタ)アクリル酸イオノマーの混合物(例えばデュポン社製のHPFTM樹脂)等のブレンドポリマー層によって囲まれ、それは、カバーの表面にディンプルパターンを含むアイオノマーカバーに囲まれる。ポリマーブレンドの混合ポリマー層の約1重量%〜80重量%の間、その間の全ての値および範囲を含み、または、約10重量%〜60重量%の間が、ポリブタジエンである。
【0045】
他の実施形態では、複合球状コアは、窒化ケイ素とエチレン(メタ)アクリル酸イオノマーの混合物(例えば、デュポン社のHPFTM樹脂)との混合からなり、ブレンドポリマーのマントル層、例えば、エチレン(メタ)アクリル酸イオノマーの混合物(例えば、デュポン社のHPFTM樹脂)に囲まれ、それは、ディンプルパターンを含むアイオノマーカバーに囲まれる。複合混合物の約10重量%と80重量%との間、又は、約10重量%と60重量%との間が、コア中の窒化ケイ素である。ポリマーブレンドの約1重量%と80重量%との間、又は、約10重量%と60重量%との間が、マントル層中のポリブタジエンである。
【0046】
ポリマーマトリックス複合材料は、例えば、物理的混合またはその場(in−situ)重合によって製造され得る。物理的混合では、強化相は、例えば、超音波、高速せん断、またはロールミルなどの方法によってポリマーマトリックス中に分散される。界面活性剤は、分散を改善するために湿潤剤として使用され得る。その場重合は、モノマーに力を加えて、充填剤又は添加剤の存在下で直接重合する。その場重合によって、強化相の分散が分子スケールで得られ、より大きな混合および分離を可能にする。ポリマーおよびそれらの複合体の調製のための出発材料は、光重合または縮合重合の反応工程を使用できる。UV誘発重合は、120Wcm
−1での従来の中圧UVランプ及び光重合開始剤を用いて達成され得る。予備硬化/凝縮ポリマー複合マトリックスの最終的な架橋結合は、必要に応じて、温度制御されたオーブン内で加熱され得る。全ての調製及び修正工程又は材料処理が、制御された雰囲気中で実行され得る。
【0047】
例えば、剛性が400MPaから200GPaになるように、球状コアの剛性を制御するように構成された所定の時間の間で多軸押出機を使用することで、セラミック繊維をポリマーに混合する
【0049】
スリーピースボール − 30重量%の重量の炭化ケイ素ウィスカーが混合されたデュポン社製HPF1000又はHPF2000樹脂を含むポリマー複合コアと、ポリブタジエンエラストマーを含む第2のポリマー層と、(デュポン社製)SURLYN(登録商標)の商品名で販売されるポリマーと、カバーと、からなる。コアは、外径が0.90インチ(22.86ミリメートル)であって、0.330インチ(8.38ミリメートル)の層厚さのポリブタジエン、及び0.060インチ(1.52ミリメートル)の厚さを有する(デュポン社製)SURLYN(登録商標)の商品名で販売されるポリマーからなるカバーで構成される。ボールの総質量が1.620オンス(45.93グラム)で、外径が1.680インチ(42.67ミリメートル)である。
【0051】
スリーピースボール − 40重量%の重量の窒化ケイ素繊維が混合されたポリエーテルブロックアミド(例えば、アルケマグループ社製のPEBAX(登録商標)の商品名で販売されている物質)樹脂を含むポリマー複合コアと、デュポン社製HPF1000又は HPF2000樹脂を含む第2のポリマー層と、アイオノマーカバーと、からなる。コアは、外径が0.90インチ(22.86ミリメートル)であって、0.330インチ(8.38ミリメートル)の層厚さのデュポン社製HPF1000またはHPF2000、及び厚さ0.060インチ(1.52ミリメートル)のデュポン社製のSURLYN(登録商標)の商品名で販売されるポリマーからなるカバーで構成される。ボールの総質量が1.620オンス(45.93グラム)で、外径が1.680インチ(42.67ミリメートル)である。
【0053】
金属マトリックス複合材料(MMC)は、剛性の球状コアを製造するために使用され得る複合材料の別の分類である。MMCは、少なくとも2つの構成部品:金属と強化相から構成される。使用され得る金属としては、限定されないが、鉄及び合金、例えば、炭素鋼、合金鋼、ステンレス鋼、マグネシウム、チタン、アルミニウム、コバルト、モリブデン、タングステン、ニッケル、及びこれらおよび他の金属の合金又は混合物を含む。強化相は、他の金属又はセラミック、有機、または他のタイプの材料とできる。金属マトリックス複合材料の強化相として使用され得るセラミックスとしては、限定されないが、窒化シリコン(Si
3N
4)、炭化シリコン(SiC)、二ホウ化チタン(TiB
2)、炭化チタン(TiC)、酸化アルミニウム(Al
2O
3)、酸化ジルコニウム(ZrO
2)、及び炭化ホウ素(B
4C)を含む。金属マトリックス複合材料の強化相として、または、含めるものとして、他の材料を使用できる。例えば、硬化鋼、ステンレス鋼、炭素繊維、カーボンナノチューブ(CNT)、グラフェン硬化、および他の材料が、上述した複合材に使用される場合に、剛性を付与し得る。
【0054】
一実施形態では、球状コアは、1以上の金属および1以上の強化相からなる。
【0055】
一実施形態では、アルミニウムマトリックスを有する鋼またはステンレス鋼の硬化合金が、球状コアに使用され得る。
【0056】
例えば、強化相は、球状コアの約5重量%から80重量%で、その間のすべての値および範囲を含む。別の例では、強化相は、球状コアの約10重量%から50重量%である。さらに別の例では、強化相は、球状コアの約10重量%から30重量%である。
【0057】
金属マトリックス複合材料は、例えば、鋳造、圧力鋳造、ホットプレス、熱間静水圧プレス、焼結、射出成形を介した常圧焼結、圧縮成形を介した常圧焼結、またはこの分野で公知の他の方法を用いて製造され得る。
【0058】
例えば、乾燥金属粉末に強化相を混合し、粉末混合物を球状に圧縮し、その後、焼結、静水圧プレス及びホットプレス等の工程を用いた温度及び圧力の組み合わせを介して、球体を圧縮することで、金属マトリックス複合材料を製造する。別の例では、強化相を溶融金属中に混合して、真空、重力又は圧力補助を用いて、得られた混合物を球状または略球状に流し込み、続いて固体状に冷却する。必要に応じて、さらに、機械加工、粉砕または他の技術を用いて、固体形態を最終形状および大きさに縮小する。
【0060】
ナノ構造材料は、コアを形成するために使用される、または、上述の複合材料で使用される材料の別の分類である。微細構造の精密化をナノメートルの範囲にすることで、バルク材料の特性の変化を引き起こし、しばしば重要な特性の改善をもたらす。ナノ結晶粒の大きさ又は分散状態で製造されたナノ構造材料は、数十?数百マイクロメートルのオーダーの粒径を有する従来の材料には見られない特性を有する。ナノ構造材料は、例えば、異なる強度、硬さ、成形性、または、伝搬特性の割れに対して従来の材料よりも抵抗を有することもできる。
【0061】
ナノ構造材料は、サブミクロンレベルでの材料の組成の制御に基づく様々な特性を示し、強度、剛性、延性、硬度、加工性、割れ伝播特性、他の物理的および機械的特性、またはそれらの組み合わせを多様にする。例えば、粒子サイズに制御された炭素鋼、ステンレス鋼及びチタン等の金属を含む材料が、粒子サイズに対して有益な特性を有するゴルフボールの球状コアを製造するために用いられてもよい。粒子サイズは、約1μm未満とできる。
【0062】
複合ナノ構造材料は、また、中空又は中実の金属球を含むゴルフボールの特性を変更するために使用され得る。例えば、金属マトリクス複合材料内のナノメートルサイズの強化相(すなわち、第2の相分散)の量を変化させることにより、球に用いられる基材の強度及び剛性を調整できる。ここで開示されるポリマーマトリックス複合材料または金属マトリックス複合材料の強化相材料は、ナノ構造材料において使用され得る。
【0063】
一実施形態では、球状コアは、1以上のポリマー及び1以上の強化相または1以上の金属及び1以上の強化相からなる。
【0064】
ナノ構造材料は、例えば、鋳造、圧力鋳造、ホットプレス、熱間静水圧プレス、焼結、射出成形を介した常圧焼結、圧縮成形を介した常圧焼結、またはこの分野で公知の他の方法を用いて製造され得る。
【0065】
本開示は、1以上の特定の実施形態に関して説明してきたが、本開示の他の実施形態は、本開示の精神および範囲から逸脱することなくなされ得ることが理解される。したがって、本開示は、添付の特許請求の範囲及びその合理的な解釈によってのみ、限定されるものとみなされる。
【国際調査報告】