特表2016-539758(P2016-539758A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2016-539758多相性睡眠管理システム、その操作方法、睡眠分析機器、現状睡眠フェーズ分類方法、多相性睡眠管理システム、および多相性睡眠管理における睡眠分析機器の使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2016-539758(P2016-539758A)
(43)【公表日】2016年12月22日
(54)【発明の名称】多相性睡眠管理システム、その操作方法、睡眠分析機器、現状睡眠フェーズ分類方法、多相性睡眠管理システム、および多相性睡眠管理における睡眠分析機器の使用
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/16 20060101AFI20161125BHJP
   A61B 5/0408 20060101ALI20161125BHJP
   A61B 5/0478 20060101ALI20161125BHJP
   A61B 5/0492 20060101ALI20161125BHJP
   A61B 5/0476 20060101ALI20161125BHJP
   A61B 5/0488 20060101ALI20161125BHJP
   A61B 5/11 20060101ALI20161125BHJP
【FI】
   A61B5/16 300Z
   A61B5/04 300J
   A61B5/04 322
   A61B5/04 330
   A61B5/10 310Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-551106(P2016-551106)
(86)(22)【出願日】2015年1月26日
(85)【翻訳文提出日】2016年4月27日
(86)【国際出願番号】IB2015050570
(87)【国際公開番号】WO2015111012
(87)【国際公開日】20150730
(31)【優先権主張番号】PL406957
(32)【優先日】2014年1月27日
(33)【優先権主張国】PL
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ブルートゥース
2.ANDROID
3.アンドロイド
(71)【出願人】
【識別番号】516062868
【氏名又は名称】インテルクリニック スプウカ ス オルガニザツィーノン オトゥポビエジャルノシチョン
【氏名又は名称原語表記】INTELCLINIC SPOLKA Z OGRANICZONA ODPOWIEDZIALNOSCIA
(74)【代理人】
【識別番号】100109634
【弁理士】
【氏名又は名称】舛谷 威志
(74)【代理人】
【識別番号】100129263
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100163991
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 慎司
(74)【代理人】
【識別番号】100146374
【弁理士】
【氏名又は名称】有馬 百子
(74)【代理人】
【識別番号】100153947
【弁理士】
【氏名又は名称】家成 隆彦
(72)【発明者】
【氏名】アダムテック, カミル
(72)【発明者】
【氏名】フロジェック, ヤヌッシュ
(72)【発明者】
【氏名】フイノフスキー, クシシュトフ
【テーマコード(参考)】
4C038
4C127
【Fターム(参考)】
4C038PP05
4C038PS03
4C038PS07
4C038VA04
4C038VA15
4C038VB02
4C038VB03
4C038VB31
4C038VB34
4C127AA03
4C127AA04
4C127BB00
4C127EE01
4C127GG11
4C127KK03
4C127LL08
4C127LL13
(57)【要約】
本発明の対象は、多相性睡眠管理システムである。多相性睡眠管理システムは、生体信号を測定する電極と、生体信号を増幅する生物学的増幅器と、生物学的増幅器や加速度計などの個々のシステム・コンポーネントを制御し、さらに、外部機器との通信を実行するためのマイクロコントローラと、ユーザーの動きの頻度に関するデータを収集するための加速度計と、コンピュータやタブレットや携帯電話などの外部機器と、その動作方法と、を含むことを特徴とする。本発明は、睡眠分析機器、現状の睡眠フェーズ分類方法、多相性睡眠管理のシステムおよび機器の使用に関連する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多相性睡眠管理システムであって、
生体信号を測定するための電極と、
前記生体信号を増幅するための生物学的増幅器と、
生物学的増幅器や加速度計のような個別のシステムコンポーネントを制御し、さらに、外部機器との通信を実行するためのマイクロコントローラと、
ユーザーの動きの頻度に関するデータを収集するための加速度計と、
コンピュータ、タブレット、および携帯電話などの外部機器と、を含むことを特徴とする多相性睡眠管理システム。
【請求項2】
前記生物学的増幅器の入力に接続され、生体信号を測定するための2つの前面電極と、前記増幅器の接地に接続された中央電極と、を含む少なくとも3つの電極をさらに含む請求項1に記載の多相性睡眠管理システム。
【請求項3】
2つの頬骨電極と、2つの側頭部電極とを含む請求項1または2に記載の多相性睡眠管理システム。
【請求項4】
前記生物学的増幅器において、前記信号は、最初に前記入力の後続物によってハイパス・フィルタリングおよび増幅され、その後、「ダブルT」タイプのアクティブ・フィルターを用いて帯域消去フィルタリングされ、同時に信号を追加増幅するバタワース特性の4次フィルターを用いてローパス・フィルタリングされ、最後の増幅は、バイラテラル・スイッチを使用して実施される請求項1、2または3のいずれかに記載の多相性睡眠管理システム。
【請求項5】
前記マイクロコントローラは、アナログ−デジタル変換器が受信した前記生体信号および前記加速度計からのデータに基づいて、現在の睡眠フェーズを分類し、前記外部機器にその結果を送信する請求項1ないし4のいずれかに記載の多相性睡眠管理システム。
【請求項6】
前記マイクロコントローラは、ブルートゥース低エネルギー(BLE)インタフェースを介して、前記外部機器と通信する請求項1ないし5のいずれかに記載の多相性睡眠管理システム。
【請求項7】
前記加速度計は、追加的に、前記マイクロコントローラを、スリープ・モードからを復帰させる請求項1ないし6のいずれかに記載の多相性睡眠管理システム。
【請求項8】
睡眠分析機器であって、
ユーザーの頭部に装着するためのキャリアコンポーネントとして機能するマスクと、
少なくとも一つのPCBプレート(12)と、
生物学的増幅器(11)の入力に接続され、生体信号を測定するための2つの前面電極(1)と、前記増幅器(11)の接地に接続された1つの中央電極(2)とを含む少なくとも3つの電極と、
アキュムレータ・バッテリーのような電源(9)と、を含み、
前記PCBプレート(12)は、
生物学的増幅器(11)および加速度計(7)のような個別のシステムコンポーネントを制御し、さらに、外部機器との通信を実行するためのマイクロコントローラ(5)と、
前記生体信号を増幅するための生物学的増幅器(11)と、
前記ユーザーの動きの頻度に関するデータを収集するための加速度計(7)と、を含むことを特徴とする睡眠分析機器。
【請求項9】
追加的に、統合アンテナ(6)を含む請求項8に記載の睡眠分析機器。
【請求項10】
追加的に、単色LED、多色RGB LED、電球などの少なくとも1つの光源(8)を含む請求項8または9に記載の睡眠分析機器。
【請求項11】
追加的に、振動コンポーネント(10)を備える請求項8、9、10のいずれかに記載の睡眠分析機器。
【請求項12】
追加的に、2つの頬骨電極(4)と、2つの側頭部電極(3)とを含む請求項8ないし11のいずれかに記載の睡眠分析機器。
【請求項13】
前記生体信号を測定するための前記電極と、
前記生体信号を増幅するための前記生物学的増幅器と、
前記生物学的増幅器や前記加速度計等の前記個別のシステムコンポーネントを制御し、さらに、前記外部機器と通信を実行するための前記マイクロコントローラと、
前記ユーザーの動きの頻度に関するデータを収集するための前記加速度計と、が請求項8から12に定義される1つの睡眠分析機器内に統合されている請求項1から7のいずれかに記載の多相性睡眠管理システム。
【請求項14】
請求項13に定義された多相性睡眠管理システムの動作方法であって、
前記多相性睡眠管理システムが起動される工程と、
前記睡眠分析機器が初期化される工程と、
前記睡眠分析機器と外部機器との間の接続が確立され、その後、覚醒時間、覚醒バッファ期間、覚醒方法などの設定データが送信される工程と、を含み、前記設定データが送信される工程は、
前記睡眠分析機器が前記ユーザーの頭部に装着される工程と、
前記ユーザーの皮膚と電極の接触がテストされる工程と、
生体信号が測定される工程と、
前記現在の睡眠フェーズが分類される工程と、
適切な睡眠フェーズ中に覚醒が開始される工程と、
データが前記外部機器に送信される工程と、
前記睡眠分析機器がスリープ・モードとされ、前記睡眠分析機器が再初期化を待つ工程と、を含むことを特徴とする方法。
【請求項15】
前記睡眠分析機器は、前記加速度計からのイベントによって初期化される請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記睡眠分析機器と前記外部機器との間の接続は、ワイヤレス・ブルートゥース技術を使用して確立される請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
前記覚醒は、前記覚醒バッファ期間中に最初のREMフェーズが検出された後、あるいは前記睡眠分析機器の動作リミットに達した後、開始される請求項14から16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
現在の睡眠フェーズの分類方法であって、
生体信号の測定可能性を確認するために電極テストを実行する工程と、
最大信号値がアナログ−デジタル変換器の許容電圧値を超えないように、生物学的増幅器による増幅がテスト実行に基づいて調節される工程と、
n秒信号フラグメントが取得される工程と、
前記取得された信号の振幅スペクトルが、高速フーリエ変換(FFT)を使用して、k回計算される工程と、
前記計算されたスペクトルが平均化、および正規化される工程と、
前記平均化および正規化されたスペクトルと前記加速度計のデータの特徴ベクトルが生成される工程と、
前記取得された特徴ベクトルと、個々の睡眠フェーズ標準とが比較される工程と、
前記特徴ベクトルに対して最も高い相関性を持つ基準に対応する睡眠フェーズが選択される工程と、を含むことを特徴とする方法。
【請求項19】
前記電極テストが不合格の場合、前記特徴ベクトルは前記加速度計のデータからのみ生成され、続いて、前記得られた特徴ベクトルが前記個々の睡眠フェーズの標準と比較され、前記特徴ベクトルに対して最も高い相関を有する標準に対応する前記睡眠フェースが選択される請求項18に記載の方法。
【請求項20】
請求項1ないし7のいずれか、または請求項13に記載のシステムを使用する多相性睡眠管理。
【請求項21】
請求項8ないし12のいずれかに記載の睡眠分析機器を使用する多相性睡眠管理。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の目的は、多相性睡眠管理システム、その操作方法、睡眠分析機器、現状睡眠フェーズ分類方法、多相性睡眠管理システム、および多相性睡眠管理における睡眠分析機器の使用に関する。本発明は、多相性睡眠効率を増加させ、多相性睡眠モードをユーザーの身体の個々の特性に適応させ、多相性睡眠のスケジュールを確立し、さらに、多相性睡眠に関連する今後の活動をユーザーに通知するために使用される。また、本発明は、睡眠状態から覚醒状態への移行に伴う不快感を回避するためにも使用される。
【背景技術】
【0002】
睡眠とは、24時間周期のリズムにおいて、定期的に発生および実行される中枢神経系の機能状態を指す。睡眠の間、意識の消失(ただし明晰夢を除く)および動きの欠如が発生する。睡眠は、外部要因の影響が弱まることを特徴とする。
【0003】
単相性睡眠は、標準の睡眠モードである。これは、最も一般的な睡眠の方法である。これには、1日に1回、通常は夜間の連続睡眠(4時間以上)が含まれる。このタイプの睡眠において推奨される時間は、人によるが、7〜9時間である。
【0004】
多相性睡眠とは、24時間の間の、断続的な反復する睡眠習慣を指す。この名前は、特定の睡眠モデルを指すものではないが、異なる睡眠計画セットを示すものである。多相性睡眠の一般的な特徴は、単相性睡眠を、間隔をおいて交互に続く複数の睡眠/昼寝の短い期間に分割することにある。
【0005】
単相性睡眠は、主として、睡眠状態にある期間(頻度と長さ)において、多相性睡眠とは異なっている。結果として、2つの異なるモードでの睡眠の個々のフェーズは、異なるコンテンツによって、同様に特徴付けられる。
【0006】
米国睡眠医学会(AASM)の睡眠分類のステージによると、単相性睡眠は以下の複数の睡眠ステージに分けられる。
【0007】
1.Wフェーズ(覚醒):覚醒フェーズ−EOGにおける明滅、意志依存、急速眼球運動、傾眠時の眼球の遅い浮遊運動、EMGにおける高電圧スコア、意志依存の体の動きの発生、目を開いた状態でのEEGであって、ベータ波(>13Hz)優位状態の低電圧混合活性、目が閉じた状態での50%以上のスコア時間を表すアルファ波(8〜13Hz)優位状態の低電圧混合活動
【0008】
2.遅い眼球運動を伴う睡眠(略称:NREM−非急速眼球運動)、別名として、深い睡眠あるいは徐波睡眠。この段階では、脳の電気的活動にΔ波が出現する。NREMは、徐波の割合に基づいて、2ステージに分割される。
【0009】
・ステージ1では、環境刺激の認識が徐々に減少する。EOGの低速の浮遊眼球の動き、EMGの中程度の電圧スコア、50%以上のスコア時間を表すシータ波(4〜8Hz)が優位である低電圧混合活動を有するEEGスコアによって特徴付けられる。
【0010】
・ステージ2は、刺激に対する反応性の欠如、EOG眼球運動の減少と継続的な欠如、EMG低電圧スコア、シータ波優位の低電圧混合活性を有するEEGスコア、およびN2ステージの(睡眠紡錘およびK複合体)の特徴的な脳波グラフ要素によって特徴づけられる。
【0011】
・ステージ3は、EOG眼球運動の欠如、EEGからの高電圧徐波を含むEOGスコア、EMG低電圧スコア、EEG高電圧遅速デルタ波(0〜2Hz)、20%以上のスコア時間を表すことで特徴付けられる。
【0012】
3.Rフェーズ−急速眼球運動を伴う睡眠(REM−急速眼球運動(rapid eye movement))。浅い睡眠あるいは逆説睡眠などの別名でも呼ばれる。このフェーズでは、最も頻繁に夢が発生し、完全に筋弛緩状態となり、夢による動きは発生しない。
【0013】
EOGの急速眼球運動、EMG中のEMGスコア最低振幅、エピソード(位相性)筋肉収縮、優位なシータおよびベータ波を伴うEEG低電圧混合アクティビティ、Rステージの特徴脳波グラフ要素の存在、のこぎり波によって特徴づけられる。
【0014】
従って、睡眠構造であるアーキテクチャを特徴づけるために、3つの生理的パラメータの夜間分析が必要である。
【0015】
1.脳半球の左と右に渡って、前頭部、頭部中央、後頭部の皮膚に配置された電極を用いた脳波記録(EEG)を用いて評価された生体電気脳機能
2.電気眼球図記録(EOG)によって分析される眼球運動−電極は左眼下の側面、同様に右眼上の側面に配置する。
3.筋電図検査(EMG)によって分析された筋緊張。電極をあごの筋肉の上方に設置。
【0016】
睡眠はNREMフェーズから始まり、適切には80〜100分間続き、次にREM睡眠フェーズが約15分間続く。成人では、このタイプのサイクルを4〜5回繰り返す。
【0017】
睡眠時間の経過と共に、
・徐波睡眠(最も高い活性を有するΔ波)の最も深い期間の割合が減少する。
・REMフェーズ時間が増加し、通常、夜の終わりまで、約40分間続く。
【0018】
多相性睡眠
REMは、最も効果的な睡眠のフェーズである。REMにおいて、脳が最も再生する。単相性睡眠中の人間は、定期的にREM睡眠に出たり入ったりし、NREM睡眠フェーズを通過する。睡眠はREMフェーズで開始されることはなく、REMフェーズに入るためには、まず、すべてのNREMフェーズを経過する必要がある。
【0019】
多相性睡眠は、正確には、NREMフェーズの期間における睡眠量の減少を前提としている(別の言い方をすれば、多相性睡眠のモードに応じた睡眠量の減少を前提としている)。これにより、体が主にREM睡眠を利用して睡眠し、さらに、睡眠に落ちた瞬間、体がNREMフェーズに入ることなく、直接REMフェーズに入るようにすることができる。
【0020】
単相性睡眠から多相性睡眠への移行の有益な効果
1)時間の節約:日々(24時間)の単相性睡眠の推奨持続時間は約7〜9時間である。多相性睡眠によって、睡眠時間を24時間当たり6.5から2時間短縮することができる。したがって、1日当たりの活性/覚醒の時間を数時間増加することができる。
2)研究によると、典型的な睡眠時間の頻繁な変更、すなわち交代制勤務(シフトワーク)において起こる状況は、健康に有害である。多相性睡眠への移行によって、日勤と夜勤の頻繁なシフトを伴う仕事を行う場合であっても、睡眠を調節する機会がある。これは体のために、より健康的である。
【0021】
文明的な環境変化に起因する睡眠問題、活動時間の延長の必要性、または睡眠時間の変更への適用によって、多相性睡眠への移行方法とその管理方法だけでなく、これらの方法を実現できるシステムおよび機器が、本分野において必要とされている。
【0022】
さらに、米国特許公報番号US8398538には、睡眠管理方法およびシステム、並びに、その方法で使用される機器が開示されている。開示の方法、システム、および機器では、患者の動き、照明、患者周辺の音と温度が、ベッドあるいは患者のベッド周辺に設置したセンサーによって分析される。該システムは、主として子供や高齢者を対象とし、その主な用途は、成人とは異なる睡眠習性を持つ子供の睡眠習性を最適化するために、その子供の両親/世話人を支援することである。
【0023】
特許出願US20130002435およびWO2012170586は、Jawbone Up(顎骨アップ)と名付けられた機器を開示している。該デバイスは、昼夜を通して活動をモニターするために手首に装着されるバンドという形態を有している。日中、バンドは内側に位置する加速度計を使用して、装着者の動きをモニターし、歩数や消費カロリー量などを計算する。REM睡眠中は身体が麻痺して動かないことを前提とする「アクティグラフ(actigraphy)」と呼ばれる方法を用いて、夜間に睡眠をモニターする。これにより、バンドは、REM睡眠フェーズとNREM睡眠フェーズとを区別し、加速度計が収集したデータに基づいて、ユーザーが深い睡眠に落ちる前の最も適切な瞬間に、ユーザーを覚醒させる。
【0024】
「Sleep Cycle (iOS)」またはAndroid(アンドロイド)の「Sleep」などのスマートフォンやタブレットアプリケーションは、ユーザーの睡眠をモニターするものとして知られている。これらのアプリケーションは、携帯電話/タブレット内蔵の加速度計、またはJawboneの加速度計、FitBitリストバンド、および被験者の体の動きのみによって睡眠(覚醒/睡眠)と睡眠フェーズ(REM/NREM)を特徴付ける、上述の「アクティグラフ」と呼ばれる現象を使用して、睡眠をモニターする。上記の研究に基づき、これらのアプリケーションは、睡眠履歴を記録し、深い眠りに入る前の)最適な瞬間に、睡眠から目覚めさせる。
【0025】
上記の方法、システム、および機器は、EEG(脳波測定)、EOG(眼球運動測定)、EMG(筋緊張測定)などのパラメータのモニタリングを利用しない。上記の方法、システム、および機器は、多相性睡眠モードを含まない。上記の方法、システム、および機器では、ユーザーは単相性睡眠から多相性睡眠に徐々に導かれず、さらに、ユーザーデータに基づいてユーザーの身体に合った睡眠スケジュールを確立することもない。本発明は、18〜65歳の成人を対象とし、主要な目的は、ユーザーの単相性睡眠から多相性睡眠への移行を容易にすることにある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
本発明に係る睡眠測定機器は、ユーザーの額に配置される複数の電極を利用する。これらにより、脳活動の電気信号(EEG−脳波研究)、眼球運動(EOG−電気眼球図記録)、および筋緊張(EMG−筋電図検査)が、ユーザーの身体から収集される。本発明に係る機器は、頭部から患者の動きのデータを収集するための加速度計が用いられる。睡眠フェーズ(覚醒/睡眠およびREM/NREMフェーズ)を測定し、最適な瞬間にユーザーを覚醒させる(深い眠りに落ちる前)機能を除き、本機器は、多相性睡眠モードを持つ世界初の機器である。このモードでは、ユーザーは、ユーザーが選択した睡眠モデル用にカスタマイズされ、策定された睡眠と昼寝(ナッピング)計画を有することができる。使用されるアプリケーションは、自動的に以前の睡眠から収集されたデータに基づいて、睡眠モードを、ユーザーの体の現在のニーズに適応させ、定期的に睡眠の規則性をモニターする。睡眠が少なくなりすぎることによって、移行期間がユーザーへの負担にできるだけならないように、アプリケーションは段階的に、徐々に、単相性から多相性にユーザーの睡眠モードを移行する。
【0027】
本発明に係る機器は、EEG、EOG、およびEMGの測定技術と、データ収集用の加速度計とを使用し、さらに、個々のユーザー用にカスタマイズされた固有の多相性睡眠モードを作成するための人工知能方法を用いて処理される市場初の機器である。
【0028】
ユーザーの身体の動きのみに基づく睡眠分析と比較して、ユーザーの体の動き、脳波計測、目の動き、および筋肉の緊張に基づく分析は、はるかに正確である。本発明に係る機器では、身体の動きだけを測定する既知の機器とは対照的に、上記4つのパラメータの全てが測定される。
【0029】
さらに、本発明に係る機器とは対照的に、既知の機器は、光を用いた覚醒促進を実行しない。本発明の機器の形状は、頭部用マスクであり、このマスクにはLEDが装着される。LEDは予定された覚醒時間の5分前に点灯され、ユーザーの目を光に慣れさせる。ほとんどの場合、アラームを使用することなく、光のみでユーザーの睡眠を静かに覚醒させることができる。
【0030】
モニタリング、および睡眠の最適化を含む機能を有する電子機器の一般的な出発点は、現代医学で一般的に使用される睡眠ポリグラフである。これらの機器は、EEG(脳波)−脳波測定、EOG(電気眼球図記録)−眼球運動周期測定、EMG(筋電図)−筋肉収縮測定等の技術を使用して、患者の頭部から生体信号を収集する。収集されたデータに基づいて、医師が手動によって上記の波形を記録し、それらに基づいて睡眠関連疾患/不規則性の診断についての結論を出す。
【0031】
睡眠ポリグラフにより収集された信号は、経験豊富な医師によって、前述の不規則性がどの睡眠フェーズで発生したのか判断する。
【0032】
加速度を用いて収集したデータによって人間の睡眠を特徴付けることが可能であると製造メーカーが主張する上記の機器とは別に、睡眠ポリグラフの機能を具現しようとする機器が最近登場している。また、睡眠ポリグラフの動作原理による、米国特許出願20130060097A1で開示された「Multimodal Sleep System」と名付けられた機器は、3つの電極(2つの信号電極と接地)を用いて患者の額からEEG信号を収集する。ユーザーがどの睡眠フェーズいるのかを自動的に判別するため、睡眠ポリグラフ信号と共にこのEEG信号が機器に提供される。しかしながら、上述のすべての機器は、4つの上述のパラメータを用いて単相性睡眠モードから多相性睡眠モードに移行できる本発明に係る機器のような正確な測定値を提供することができない。
【0033】
現在、覚醒のリズムを多相性睡眠へ変更することを希望する個人は、手動による睡眠管理を実行せざるを得ない状況にある。これは、夜間のメイン睡眠の長さと日中の昼寝の長さを適切に適応させる工程を含む。
【0034】
従って、本発明の目的は、個々のユーザーに合わせてカスタマイズされた固有の多相性睡眠モードの作成を可能し、単相性睡眠モードから多相性睡眠モードへの容易な段階的移行と、定期的に睡眠の規則をモニターすることを可能とする睡眠管理方法、該方法において使用されるシステムおよび機器を開発することである。
【0035】
本発明の目的は、生体信号を測定する電極と、生体信号を増幅する生物学的な増幅器と、生物学的増幅器や加速度計などの個々のシステム・コンポーネントを制御し、さらに、外部機器との通信を実行するためのコントローラと、ユーザーの動きの頻度に関するデータを収集するための加速度計と、コンピュータやタブレットや携帯電話などの外部機器と、その動作方法とを含む多相性睡眠管理システムによって実現される。
【0036】
本発明に係るシステムは、好ましくは、生体信号を測定する生物学的増幅器の入力に接続された2つの前面電極と、増幅器の接地に接続された中央電極とを含む少なくとも3つの電極を含む。
【0037】
本発明に係るシステムは、さらに2つの頬骨電極と、2つの側頭部電極とを含むことが好ましい。
【0038】
好ましくは、本発明に係るシステムは、生物学的増幅器において、信号が入力の後続物によってハイパス・フィルタリングおよび増幅され、その後「ダブルT」タイプのアクティブ・フィルターによって帯域消去フィルタリングされ、その後、信号を同時に追加増幅する増幅バタワース(Butterworth)特性の4次フィルターで信号をローパス・フィルターし、最後にバイラテラル・スイッチを使用する増幅ステージを実施することを特徴とする。
【0039】
好ましくは、本発明に係るシステムにおいて、マイクロ・コントローラは、アナログ−デジタル変換器が受信した生体信号および加速度計からのデータに基づいて、現状の睡眠フェーズを分類し、外部機器にその結果を送信する。
【0040】
好ましくは、本発明に係るシステムにおいて、マイクロ・コントローラは、ブルートゥース低エネルギー(BLE)インタフェースを介して、外部機器と通信する。
【0041】
好ましくは、本発明に係るシステムにおいて、加速度計は、さらに、マイクロ・コントローラをスリープ・モードから覚醒させる。
【0042】
また、本発明の対象は、ユーザーの頭部に装着するキャリア・コンポーネントとして作用するマスクと、少なくとも1つのPCBプレートと、少なくとも3つの電極(生物学的増幅器入力に接続された生体信号計測用の2つの前面電極と、増幅器の接地に接続された1つの中央電極)と、アキュムレータ・バッテリー(蓄電池)のような電源と、を含む睡眠分析機器である。ここで、PCBプレートは、生物学的増幅器や加速度計などの個々のシステム・コンポーネントを制御し、さらに、外部機器との通信を実行するためのマイクロ・コントラーと、生体信号を増幅する生物学的増幅器と、ユーザーの動きの頻度に関するデータを収集するための加速度計などのコンポーネントとを含む。
【0043】
好ましくは、本発明に係る機器は、さらに、統合アンテナと、少なくとも1つの照明源(8)(単色LED、多色RGBのLED、電球)と、振動コンポーネントと、2つの側頭部電極と、2つの顎骨電極との、いずれか1つ、またはその組み合わせ、またはその全部を含む。
【0044】
好ましくは、本発明に係るシステムにおいて、生体信号を測定する電極、生体信号を増幅する生物学的増幅器、生物学的増幅器や加速度計などの個々のシステム・コンポーネントを制御し、さらに、外部機器との通信を実行するためのコントローラ、ユーザーの動きの頻度に関するデータを収集するための加速度計等のコンポーネントが、1つの睡眠分析機器に統合されている。
【0045】
また、本発明は、以下の工程を含む上述のシステムの動作方法に関する。該方法では、システムが起動され、睡眠分析機器が初期化され、睡眠分析機器と外部機器との間の接続(後に、覚醒時間、覚醒バッファ期間、覚醒方法などの設定データを送信する)が確立され、ユーザーの頭部に睡眠分析機器が装着され、ユーザーの皮膚と電極のコンタクトがテストされ、生体信号が測定され、現在の睡眠フェーズが分類され、適切な睡眠フェーズで覚醒が開始され、データが外部機器に送信され、睡眠分析機器がスリープモードされ、睡眠分析機器が再初期化モードで待機する。
【0046】
好ましくは、本発明に係る方法では、加速度計からのイベントによって、睡眠分析機器が初期化される。
【0047】
好ましくは、本発明に係る方法では、睡眠分析機器と外部機器との間の接続は、ワイヤレス・ブルートゥース技術を使用して、確立される。
【0048】
好ましくは、本発明に係る方法では、覚醒バッファ期間中に最初のREMフェーズが検出された後、あるいは機器の動作リミットに達した後、覚醒が開始される。
【0049】
また、本発明は、以下の工程を含む現在の睡眠フェーズ分類方法に関する。該方法では、生体信号の測定可能性を確認するに電極テストが実行され、生物学的増幅器による増幅が、最大信号値がアナログ−デジタル変換器の許容電圧値を超えないように、テスト実行に基づいて調節され、n−秒信号フラグメントが取得され、取得された信号の振幅スペクトルが、高速フーリエ変換(FFT)を使用してk回計算され、計算されたスペクトルが平均化および正規化され、平均正規化スペクトルと加速度計データの特徴ベクトルが生成され、得られた特徴ベクトルが個々の睡眠フェーズ用の基準と比較され、特徴ベクトルに対し最も高い相関を有する標準に対応する睡眠フェーズが選択される。
【0050】
好ましくは、電極のテストが不合格である場合、特徴ベクトルは、加速度計のデータからのみ生成され、続いて、得られた特徴ベクトルが個々の睡眠フェーズの標準と比較され、特徴ベクトルに対し最も高い相関を有する標準が選択される。
【0051】
また、本発明の対象は、多相性睡眠管理のための上述のシステムの使用である。
【0052】
また、本発明の対象は、多相性睡眠管理のための上述機器の使用である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
本発明の目的は、図面上の実施形態において示される。
【0054】
図1図1は、本発明に係る多相性睡眠管理システムの構造を示す。
図2図2は、本発明に係る睡眠分析機器を示す。
図3図3は、本発明に係る睡眠分析用機器における電極の実施形態を示す。
図4図4は、本発明に係る睡眠分析用機器の電極の異なる実施形態を示す。
図5図5は、本発明に係る多相性睡眠管理システムの動作方法を示す。
図6図6は、本発明に係る現在の睡眠フェーズの分類方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0055】
図1は、本発明に係る多相性睡眠管理システムの構成を示す。該システムを形成し、生物信号用の一式のアナログ−デジタル処理経路を構成するコンポーネントが、以下に説明される。
【0056】
1.電極
基本的な3つの電極は、ユーザーの額上に配置される。中央電極は、増幅器の接地に接続され、2つの先端電極は、増幅器の異なる入力にそれぞれ接続される。入力間の電圧が測定される。また、システムは、眼の下(頬骨)および眼の外角部(側頭部)に設置された追加電極を備えていてもよい。
【0057】
2.生物学的増幅器
本発明に係るシステムの1つの実施形態では、生物学的増幅器は、機器的な増幅器に基づいて構築される。信号は、入力の後続物によって初期ハイパス・フィルタリングされる。その後、「ダブルT」タイプのアクティブ・フィルターを用いて帯域消去フィルタリングされ、最後に、同時に信号を追加増幅するバタワース特性の4次フィルターを用いて最終ローパスフィルタリングされる。最後の増幅段階は、5つの増幅によって調整される。これは異なる種類のオペアンプ抵抗のループ内に含まれるバイラテラル・スイッチを用いて実現される。増幅後、信号はマイクロコントローラのADCコンバータの入力に供給される。
【0058】
3.マイクロコントローラ
マイクロコントローラは、システム内の2つの重要な機能を有する。1つ目は、ブルートゥース低エネルギー(BLE)インタフェースなどを介した外部(外部機器)との通信およびシステムの個々のコンポーネント(生物学的増幅器、加速度計)を制御することである。マイクロコントローラの2つ目の機能は、内蔵のアナログ−デジタル変換器および加速度計データ(詳細は動作アルゴリズムの章を参照)を用いて受信した生体信号に基づく、現状の睡眠フェーズの予測である。
【0059】
4.加速度計
加速度計は、被験者の動きの頻度に関するデータを収集するために使用される。データは、その後、マイクロコントローラによって実現される現状の睡眠フェーズの予測に利用される。加速度計は、マイクロコントローラの電池による動作時間をできるだけ長くするため、マイクロコントローラをスリープモードから起動するために使用される。
【0060】
5.コンピュータ/スマートフォン
機器によって実現される計算の結果は、例えば、BLEインタフェースを用いて接続を確立できるパーソナル・コンピュータ、スマートフォン、その他の機器等の外部機器に送信される。結果の送信は、その視覚化とアーカイブに使用される。
【0061】
好ましい実施形態において、生体信号を測定する電極、生体信号を増幅する生物学的増幅器、生物学的増幅器や加速度計などの個々のシステム・コンポーネントを制御し、さらに、外部機器との通信を実行するためのコントローラ、およびユーザーの動きの頻度に関するデータを収集するための加速度計は、好ましくは、顔マスクの形態を有する1つの睡眠分析機器内に統合される。
【0062】
本発明に係る睡眠分析用機器の図が、図2および図3に示されている。睡眠分析用機器は、ユーザーの頭部に装着するためのキャリア・コンポーネントとして機能するマスクと、少なくとも1つのPCBプレート(12)と、少なくとも3つの電極(生物学的増幅器(11)の入力に接続された生体信号計測用の2つの前面電極、および増幅器(11)の接地に接続された1つ中央電極)と、アキュムレータ・バッテリー等の電源(9)と、を含む。PCBプレート(12)は、生物学的増幅器(11)や加速度計(7)などの個々のシステム・コンポーネントを制御し、さらに、外部機器との通信を実行するためのマイクロ・コントラー(5)と、生体信号を増幅する生物学的増幅器(11)と、ユーザーの動きの頻度に関するデータを収集するための加速度計(7)とを含む。機器は、さらに、集積アンテナ(6)と、少なくとも1つのLED(8)(好ましくは2つのLED(8))と、さらに振動部材(10)とを含む。好ましい実施形態において、機器は、さらに2つの頬骨電極(4)と、2つの側頭部電極(3)とを含む。
【0063】
本発明は、電極(1、2、3、4)が、額、こめかみ、または顔面頭蓋上の位置に接触するように、睡眠時に顔にマスクを置くことによって使用される。睡眠中、マスクは、近接場所に配置されたコンピュータ/携帯電話/タブレットに信号を送信する。ユーザーを睡眠から覚醒する時間になると、マスクは、マスクに設けられた光源(8)(例えば、単色LED、または多色RGB LED、電球)の光およびマスクに設けられた振動モーター(10)の振動によって、ユーザーを覚醒する。また、携帯電話/コンピュータ/タブレット上のアプリケーションは、目覚まし時計として機能し、音声信号を発する。
【0064】
本発明の対象は、人間の多相性睡眠管理方法および人間の多相睡性眠管理のためのコンピュータ/タブレット/携帯電話のアプリケーションを含む電気的多相性睡眠マスクである。また、本発明は、睡眠マスクと、コンピュータ/タブレット/携帯電話とを含むシステムに関する。ここで、マスクを使用するための適切なアプリケーションがインストールされ、コンピュータ/タブレット/携帯電話から統計データを読み込み可能とするアプリケーションを有する適切なPCコンピュータが得られる。本発明に係るシステムは、上記の3つすべてのコンポーネント(マスク、コンピュータ/タブレット/携帯電話、PCコンピュータ)を含み、または、それらコンポーネントのすべての機能を有する1つまたは2つのコンポーネント、およびこれらコンポーネントの組み合わせを含む。
【0065】
図2および図3に示す本発明に係るマスクは、4つのコンポーネント、すなわち、粘弾性発泡体充填材(15)と、電極(1、2、3、4)およびプレートと電極を接続するワイヤーを含むPCB(プリント回路基板)プレート(12)と、薄いプラスチック・プレートおよび繊維カバーを有し、マスクを顔に装着するためのワイド弾性バンド(14)と、フック&ループファスナー(13)と、個々のコンポーネント(16)と(18)を結合する繊維とを含む。
【0066】
粘弾性発泡体の使用によって、マスクの形状がユーザーの顔の湾曲に適合される。粘弾性発泡体の外側の曲率は、球状の面を持つので、スキー用のゴーグルに似ている。内側は額の真ん中から、頬骨の上部の鼻用の切り欠きまでの粘弾性輪郭である。マスクの内側は凹面であり、プラスチック板を取り付けるための外表面付近の溝(17)を有するPCBプレートに応じた形状に調整されている。PCBプレートは、プラスチックとポリカーボネート製のプレートの硬化板によってユーザーの顔から離間されている。外表面付近の溝内に入る繊維カバーは、マスクの外側の部分を包むが、プラスチック板は包まない。
【0067】
カバーの内側(顔側)には、導電性の糸に接続された導電繊維(21)製の合計7個の電極(1、2、3、4)があることが好ましい。中央正面の電極(2)は、ユーザーの接地用であり、2つの正面抹消部電極(1)は、生物学的増幅器の第1チャンネルの生体電気信号(EEG、EOG、EMG)を増幅するよう機能する。2つの側頭部電極(3)は、第2のチャネルの生体電気信号を取得するために使用され、目の下(頬骨上)に配置された2つの電極(4)は、第3チャネルに生体電気信号を登録する。
【0068】
図4に示される1つの実施形態では、電極は、カバー(19)の表面の形態で作られ、表面側から導電性糸などで縫い付けられる。電極は、カバーの反対側を通過し、ここで、接触領域(20)(恒久的マスクに位置する金メッキしたプレートの形態など)に接触する。ワイヤー(23)は、これらの接触領域(20)から出発し、生物学的増幅器(11)の入力に生体信号を運ぶ。別の実施形態では、電極は、さらにクランプリング(24)を用いて固定されていてもよい。さらなる別の実施形態では、図5に示されるように、電極は、ラッチ(25)および(26)を使用してカバーに固定されていてもよい。
【0069】
マスクは、側面(こめかみ部分)に装着された幅広弾性バンドを使用して、顔に装着される。電極が顔に密着するように、マスクを顔に接着する必要がある。
【0070】
マスクをハードウェアスイッチで動作停止した場合、マスクは、同様にスイッチによって動作開始され、アキュムレータ・バッテリーから電力を提供、またはバッテリーからシステムの電子機器に電力を供給する。マスクがアプリケーション(ソフトウェア)によって動作停止された場合、例えばマスクをテーブルから持ち上げたりすることによりマスクを動かすことにより、マスクを自動的にオンにできる。これは内蔵加速度計によって実現される。事前に定義された閾値以上の加速度によりプロセッサを動作(覚醒)させることができる。
【0071】
その後、携帯電話/タブレット/コンピュータは、自身の自動ロックを無効化し、好ましくは、夜間用に充電器に接続される。適切なアプリケーションを開き、ログインし、メインメニューのオプションを選択し、覚醒するまでの時間を設定するか、自動モードを有効にする。機器がペアリング(電話との接続を確立)すると、その内部のLEDが青色に点灯する。睡眠の追跡を開始する適切なオプションがロードされる。LEDが点灯(例えば、赤色に点灯)する。赤色LEDが点灯すると、電極が額やその他電極が置かれるべき箇所に触れるように、機器が頭に装着される。機器が正しい皮膚との接触を検出すると、緑色のLEDが点滅する。電話は、電話と機器とのリンクを失わないように、機器の近くに置かれる。
【0072】
テスト生成機器から信号を患者の接地(増幅器)に提供することにより、電極のインピーダンス制御が実行される。そして、接地電極は依然として平均電位がゼロであるが、周波数500ヘルツの重畳された急速変化発生信号を有する。患者の体を介するテスト信号は電極に達し、その後、生物学的増幅器の入力に到達する。生物学的増幅器の入力に、選択的な増幅器が直接に配置される。テスト信号のみが受信され、そこから、マイクロ・コントローラのADC変換器の入力にそれらの入力が提供される。電極の接触が良好な場合、受信した信号の振幅がより大きくなる。所与のチャネルの両方の電極において同じ振幅を有する弱い信号は、接地電極の接触不良である可能性が高いことを示す。無視できる程度の確率ではあるが、増幅器の2つの入力電極の接点劣化(同等の)による可能性もある。
【0073】
信号処理はいくつかの工程によって実現される。最初の工程において、数秒の信号時間経過から、FFT法を用いて、振動スペクトルが計算される。特定の数のスペクトルが収集されると、それらスペクトルが、平均化される。次の工程において、人工ニューラル・ネットワーク、サポート・ベクター・マシン(SVM)、または決定木のいずれかである分類アルゴリズム用に、特徴ベクトルが計算される。特徴ベクトルは、脳波(α、β、γ、δ)−EEG信号、眼球運動−EOG信号、および筋肉運動−EMG信号に対応する特定の周波数範囲に対応する帯域の振幅に基づくものである。加速度計から受信したユーザーの睡眠中の動きに関連する周波数に、このようにして生成された特徴ベクトル情報が追加される。このように準備された特徴ベクトルが、分類アルゴリズムによって処理される。これにより、被験者のその時の睡眠モードが判別される。
【0074】
機器にはアキュムレータ・バッテリーまたはバッテリーから電力が供給される。
【0075】
多相性睡眠管理の新しい方法は、メインの夜間睡眠時間、各昼寝の時間と回数、睡眠/昼寝の時間インターバルの自動調整を含む。
【0076】
自動的方法は、EEG、EOGおよびEMG信号と、加速度計信号測定とに基づく。上記のデータに基づき、ユーザーがどの睡眠フェーズにあるかを判別するため、その信号が処理される。システムはユーザーを、REM、NREM1、2、3睡眠フェーズから構成される単相性睡眠から、主としてREM睡眠からなる多相性睡眠に切り替えることを目的とする。システムは自動的に、この単相性睡眠から多相性睡眠への移行スケジュールを設定し、多相性睡眠の有効性(REM対NREM睡眠比)をモニターする。
【0077】
システム動作方法および睡眠フェーズ分類方法
本発明に係る睡眠フェーズ分類方法とシステムの動作方法を、図6および図7に示す。システム起動後、機器は初期化され、スタンバイ・モードから接続待機モードに入る。外部機器との接続(例えば、ブルートゥース)が確立されるまでこのモードで待機する。接続を確立した後、機器は、設定データ、覚醒時間、覚醒バッファ持続時間、および覚醒方法を待つ。この段階を経て、システムの測定を開始する準備が完了する。まず、機器は、ユーザーによる頭部への正しい装着を待つ。この目的のため、被験者の皮膚と電極との接触をテストする。電極の接触テスト中、矩形高周波信号を接地電極に供給する。残りの電極から受信した信号がテスト信号と一致する場合、テストは合格したものと判断する。テストに失敗した場合、テストが繰り返される。
【0078】
テストが完了した後、機器は、生体電気信号の測定および睡眠フェーズ分類を開始する。まず、信号測定を不可能とするような被験者頭部上での機器の動きがあったか否かを確認するために、電極テストが実施される。このテストが失敗した場合、加速度計のデータのみに基づいて、睡眠フェーズが判別される。または、生物学的増幅器による増幅が、ショート・テスト実行に基づいて調整される。この調整において、最大信号値がアナログ−デジタル変換器の許容電圧値を超えないように、信号フラグメントに基づいて、システムの増幅が選択される。増幅が設定された場合、FFTアルゴリズムを用いて計算された振幅スペクトルに基づき、n秒信号フラグメント(nはアルゴリズムのパラメータ)を取得することが可能である。
【0079】
この機能は、k回(kはパラメータ)実施される。この際に、計算されたスペクトルが平均化および正規化される。
【0080】
電極の試験結果に関わらず、加速度計によって収集されたユーザーの動きの頻度に関する情報が含まれる特徴ベクトルが生成される。さらに、電極テストが合格である場合、正規化および平均化された振幅スペクトルの形の情報が特徴ベクトルに付加される。生成された特徴ベクトルに基づいて、被験者の現在の睡眠フェーズが判別される。これはフェーズを選択する工程において行われる。該工程におけるフェーズの基準は、計算された特徴ベクトルに対して最も高い相関関係を有する。各フェーズの基準は、設定トレーニング・データに基づいて決定され、機器内の分類アルゴリズム内に記録される。
【0081】
覚醒が開始されるまで、睡眠フェーズを判別するための上述のアルゴリズムが実行される。覚醒バッファ期間中において、最初のREMフェーズが検出された後、あるいは機器の運転リミットに達した後、アルゴリズムが開始される。覚醒を実行した後、睡眠フェーズの判別に関連するデータが、外部機器へ送信される。
【0082】
アルゴリズムの最後の工程は、機器をスリープ・モードにすることである。機器は、動かされるか、加速度計からのイベントを生成することで覚醒される。覚醒後、アルゴリズムは、動作アルゴリズムの先頭に戻る。
【0083】
本発明の有益な効果
本発明を使用することにより、多相性睡眠への非常に不快な、負担の大きい、不健康な適応フェーズを回避することができる。適応フェースでは、体が新しいモードに切り替わる前の重大な睡眠障害となる。
【0084】
本発明は、重大な睡眠障害と多相性睡眠の無効性を回避できるように、多相性睡眠の有効性をモニターする。多相性睡眠モードが非効率である場合、システムが自動的に別のモード(利用者の身体により適合するモード)へ切り替わる。
【0085】
さらに、適切な睡眠フェース(REM)でユーザーを覚醒できるという有益な効果があり、睡眠状態から覚醒状態へスムーズかつ快適に移行させることができる。
【0086】
多相性睡眠効率には、睡眠全体中のREM睡眠コンテンツと、多相モードの睡眠の開始から2週間後の患者の主観的な感情とが含まれる。多相性睡眠中の人の昼寝にREM睡眠が90%未満しか含まれない場合、それらは非効率である。多相モードで睡眠開始から2週間後、不活発感や無気力感がある場合、それは、多相性睡眠モードが体に適合しないことを示すものである。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】