特表2016-539767(P2016-539767A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2016-539767(P2016-539767A)
(43)【公表日】2016年12月22日
(54)【発明の名称】内視鏡検査用装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/00 20060101AFI20161125BHJP
【FI】
   A61B1/00 300B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2016-552665(P2016-552665)
(86)(22)【出願日】2014年11月10日
(85)【翻訳文提出日】2016年5月10日
(86)【国際出願番号】DK2014000052
(87)【国際公開番号】WO2015070866
(87)【国際公開日】20150521
(31)【優先権主張番号】PA201300642
(32)【優先日】2013年11月12日
(33)【優先権主張国】DK
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ベルクロ
(71)【出願人】
【識別番号】516137889
【氏名又は名称】シモンセン ウィール エー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(72)【発明者】
【氏名】スヴェンドセン ラース ビー.
(72)【発明者】
【氏名】スヴェンドセン モルテン ビー.
(72)【発明者】
【氏名】コンゲ ラース
【テーマコード(参考)】
4C161
【Fターム(参考)】
4C161AA04
4C161AA05
4C161GG11
4C161JJ08
(57)【要約】
【課題】個体(11)に対して行われる内視鏡検査、特に結腸鏡検査の質をモニタするための装置(100)を提供する。
【解決手段】本発明による個体(11)に対して行われる内視鏡検査、特に結腸鏡検査の質をモニタするための装置(100)は、−個体の大腸(4)に挿入されるのに適する細長可撓性内視鏡アーム(2)と、−個体の体外に配置されるのに適するセンサシステム(14)と、−個体に対して行われる特定の内視鏡検査手技の質を評価するための質評価システム(16)とを含む。本発明は、個体の大腸への内視鏡の内視鏡挿入の質の改良を提供する。さらに、本発明は、医療スタッフの技術を高めるために、結腸鏡検査を行うその医療スタッフの最適化された訓練を提供する。最後に、本発明は、内視鏡検査の質に関して客観的評価を提供する。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
個体(11)に対して行われる内視鏡検査、特に結腸鏡検査の質をモニタするための装置(100)であって、
−個体の大腸(4)に挿入されるのに適する細長可撓性内視鏡アーム(2)と、
−個体の体外に配置されるのに適するセンサシステム(14)と、
−個体に対して行われる特定の内視鏡検査手技の質を評価するための質評価システム(16)と、を含み、
前記内視鏡アームは、個体の直腸(6)を介して前記個体の大腸(8)に挿入されるのに適し、前記内視鏡アームは、近位端(18)と遠位端(20)とを有し、
前記内視鏡アームは、前記近位端の近くの位置に、前記アームの空間的形状を制御するための形状制御入力手段(22)を含み、
前記内視鏡アームは、その拡張部に沿って、前記形状制御入力手段(22)の作動に応じて前記アームの空間的形状を調節するための手段(24)を含み、
前記内視鏡アームは、その拡張部に沿って、1つ以上の位置指示手段(26)を含み、各位置指示手段は、前記特定の位置指示手段の位置に関する情報を提供するのに適し、
前記内視鏡アームは、その遠位端(20)の近くに、腸の内部の画像(30)を撮影するための1つ以上の撮像手段(28)を含み、
前記センサシステム(14)は、前記内視鏡アーム(2)の前記位置指示手段(26)の1つ以上を検知するのに適し、前記センサシステムは、前記1つ以上の位置指示手段が前記センサシステム(14)の検出範囲内にあるときに、前記位置指示手段(26)の1つ以上の位置の表現として電気信号を生成するのに適し、
前記センサシステム(14)は、前記センサシステム(14)から発生する前記電気信号を処理するのに適するマイクロプロセッサを含む制御ユニット(32)を含み、前記制御ユニットは、この電気信号をモニタ信号(34)の形で前記位置指示手段(26)の1つ以上の位置の3D表現(33)に変換するのに適し、
前記装置は、モニタ(36)を含み、前記モニタは、前記位置指示手段(26)の1つ以上の位置の前記3D表現(33)を図表的に表示するのに適し、
前記装置は、モニタ(38)を含み、前記モニタは、前記内視鏡アーム(2)の前記1つ以上の撮像手段(28)により撮影された前記画像(30)を図表的に表示するのに適し、
前記質評価システム(16)は、1つ以上の選択されたポイント(40)の3次元空間における位置を所定の時間間隔で決定するための手段を含み、前記1つ以上の選択されたポイントは、前記細長可撓性内視鏡アーム上に固定されたポイント(40)であり、
前記質評価システム(16)は、前記選択されたポイント(40)の1つ以上に関して、前記選択されたポイントの1つ以上の進行に関係する1つ以上のパラメータを決定するための手段を含み、前記パラメータは、特定の選択されたポイントの進行速度、特定の選択されたポイントの進行方向、特定の選択されたポイントの不動時間の長さを含む群から選択され、
前記質評価システム(16)は、内視鏡挿入の理想的進行の1つ以上の例のパラメータに関連するデータを格納するためのデータ格納部(42)を含み、
前記質評価システム(16)は、実際に行われた内視鏡検査挿入の1つ以上のパラメータを、内視鏡挿入の前記理想的進行の1つ以上に関連する同じ1つ以上のパラメータと比較することにより1つ以上のスコア(44)を計算するための手段を含み、前記1つ以上のスコアは、内視鏡挿入の理想的進行の1つ以上の選択された例からの逸脱の程度を表し、
前記質評価システム(16)は、前記1つ以上のスコア(44)をユーザに通信するのに適する通信手段(46)を含む、
装置(100)。
【請求項2】
前記1つ以上の選択されたポイント(40)の1つは、前記細長可撓性内視鏡アーム(2)の前記遠位端(20)に位置するポイントである、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記内視鏡アーム(2)の前記1つ以上の位置指示手段(26)は、永久磁石または電磁石を含む、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記内視鏡アーム(2)の前記拡張部に沿って配置される位置指示手段(26)の数は、1〜50、2〜48等、4〜46等、例えば6〜44、例えば8〜42、10〜40等、12〜38等、14〜36等、例えば16〜34、例えば18〜32、20〜30等、22〜28等、例えば24〜26である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
腸の内部の画像(30)を撮影するための前記内視鏡アーム(2)の前記1つ以上の撮像手段(28)は、前記制御ユニットに画像を伝送するための手段を含むビデオカメラまたはレンズの形である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記細長可撓性内視鏡アーム(2)は、腸の内部を照らすための1つ以上の照明手段(48)を含み、前記1つ以上の照明手段は、前記細長可撓性内視鏡アーム(2)の前記遠位部(20)に配置されるのが好ましい、請求項1〜5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記位置指示手段の1つ以上の位置の前記3D表現を図表的に表示するのに適する前記モニタ(36)は、前記内視鏡アームの前記1つ以上の撮像手段により撮影された前記画像(30)を図表的に表示するのに適する前記モニタ(38)と同じモニタであるかまたは異なるモニタである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
内視鏡挿入の理想的進行の1つ以上の例のパラメータに関連する前記データは、1人の人間の個体(11)に基づく、または、内視鏡挿入の理想的進行の1つ以上の例のパラメータに関連する前記データは、数人の異なる人間の個体(11)の平均に基づく、請求項1〜7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記1つ以上スコアをユーザに伝達するのに適する前記質評価システム(16)の前記通信手段(46)は、好ましくはモニタ(50)上に、色(単数または複数)を表示すること、および/または数を表示することなどにより、前記1つ以上スコアを図表的に伝達するように構成される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記装置は、3次元空間における前記選択されたポイント(40)の1つ以上の位置を、前記センサシステム(14)から発生する前記電気信号により提供される情報から直接的に、または、前記制御ユニット(32)により提供される前記モニタ信号(34)から間接的に計算するように構成される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
内視鏡挿入の理想的進行の1つ以上の例のパラメータに関連し、かつ前記データ格納部(42)に格納される前記データは、個体からの臨床的に明らかな不満のない、または個体からの不満が所定のレベル以下である、盲腸までの最短可能時間と定義される、請求項1〜10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
前記装置は、前記位置指示手段の1つ以上の位置を時間の関数として記録するためのデータ格納部(52)を含む、請求項1〜11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
前記装置は、特定の内視鏡検査を行う特定の医療スタッフ人員の識別情報を入力するための入力手段(54)を含み、前記装置は、前記特定の医療スタッフ人員に関して、当該特定の医療スタッフの前記識別情報により得られた平均スコアを相関付けおよび表示するための手段を任意にさらに含み、それにより1人以上の医療スタッフ人員の累積質評価を得ることを可能にする、請求項1〜12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
内視鏡検査、特に結腸鏡検査を行う際に医療スタッフ人員を訓練するための、請求項1〜13のいずれか一項に記載の装置(100)の使用。
【請求項15】
前記使用は、個体(11)に対して内視鏡検査を行う際の医療スタッフ人員を訓練するためのものであり、前記個体は、生きた人間;あるいは人間のモデルまたは人間のモデルの一部もしくは人間の一部のモデルである、請求項14に記載の使用。
【請求項16】
前記使用は、診断または外科的ステップを含まない、請求項14または15に記載の使用。
【請求項17】
内視鏡検査、特に結腸鏡検査を行う際に医療スタッフ人員を訓練する方法であって、
i)請求項1〜13のいずれか一項に記載の装置(100)を提供するステップと、
ii)前記細長可撓性内視鏡アーム(2)の前記遠位端(20)を個体(11)の前記直腸(6)に挿入するステップと、
iii)前記内視鏡アーム(2)の前記形状制御入力手段(22)の調節により、そして前記モニタ(36)上の前記位置指示手段(26)の1つ以上の位置の前記3D表現を参照して、大腸の内部形態にしたがいながら、前記細長可撓性内視鏡アーム(2)をその個体の大腸(8)に次第に挿入するステップと、
iv)ステップiii)の間に、内視鏡挿入の進行からの逸脱の程度に関して前記質評価システム(16)から情報を繰り返し受信するステップであって、前記情報は、前記スコア(単数または複数)(44)により提供される、ステップと、
v)ステップiv)において得られた前記スコア(単数または複数)(44)を、前記内視鏡アームの前記挿入の前記進行を修正するためのフィードバックとして用いて、その後、必要に応じて前記内視鏡アーム(2)の前記挿入の前記進行を修正するステップと、
vi)前記個体(11)の体(4)から前記内視鏡アーム(2)を後退させるステップと、
を含む方法。
【請求項18】
前記方法は、前記内視鏡アーム(2)の前記1つ以上の撮像手段(28)により撮影された画像を表示するための前記モニタ(38)上に表示された前記画像(30)に基づいて診断を行うステップをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記個体(11)は、生きた人間、あるいは人間のモデルまたは人間のモデルの一部もしくは人間の一部のモデルである、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
前記方法は、診断または外科的ステップを含まない、請求項17〜19のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1態様において、内視鏡検査の質をモニタするための装置に関する。本発明は、第2態様において、内視鏡検査を行う際に医療スタッフ人員を訓練するための、第1態様による装置の使用に関する。本発明は、第3態様において、内視鏡検査を行う際に医療スタッフ人員を訓練する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
大腸(結腸)の合併症は、西洋人の間で発生件数が増えている病的状態であるとみられる。これらの合併症は、結腸過敏、潰瘍性大腸炎、憩室炎、ポリープ等の命にかかわらない状態から、大腸の癌(大腸癌)等のより重度で命にかかわる可能性のある状態にまで及びうる。
【0003】
これらの状態の多くでは、医学的診断は、大腸内部の目視検査を含む。そのために医師は、近位端と遠位端とを有する細長可撓性チュービングを含む内視鏡を使用する。遠位端は、直腸を経由して患者の大腸に挿入されるのに適する。内視鏡の遠位端に、腸の内部の画像を撮影してモニタに伝送するカメラまたはレンズ等の撮像手段が提供される。内視鏡の近位端には、チュービングの形状が患者の腸の内部形状に基本的にしたがうように医師が当該チュービングの空間的形状を調節できるようにする、形状制御手段が提供される。
【0004】
内視鏡を患者の直腸に挿入し、内視鏡の近位端の形状制御手段を使用して内視鏡の形状を調節することにより、医師が大腸を通して内視鏡の遠位端を導くことができ、その途中で医師は、モニタに表示された内視鏡の遠位端の地点での大腸内部の外観を表す画像を検査しうる。このような目視検査は、医師が特定の患者に関連する正しい診断に到達できるようにする上で大いに役立つ。
【0005】
人間の大腸は、(直腸の端から小腸の方向に伸びる)やや複雑な形状を有し、最初に小さく下方へ曲がった後、個体の左側で上に向かって胃の左の位置まで伸びる。この位置で大腸は急に曲がり、胃のすぐ下を個体の右手側に向かって伸びる。ちょうど胃に対して位置する位置で、大腸はもう一度、今回は下方向に急に曲がり、ここでようやく小腸の端と出会う。
【0006】
医師が内視鏡を使用して人の大腸の外観を目視検査しようとする場合には、医師は、その個体の直腸を経由して個体に内視鏡を挿入しなければならず、内視鏡の形状がその個体の腸の内部の形態に基本的にしたがうように内視鏡の近位端の形状制御手段を使用して内視鏡の調節を試みなければならない。
【0007】
人間の腸の壁は、医学的手術または診断の間に大腸内部に挿入される医療機器または診断機器により与えられる機械的衝撃等の機械的衝撃に非常に敏感である。したがって個体は大抵、結腸鏡検査により若干の苦痛および不快感から強い違和感を受ける。
【0008】
したがって、大腸の内視鏡検査をうまく行うことは困難であり、それを行う内視鏡医には高い技術と熟練が必要である。
【0009】
その上、大腸の内視鏡検査が誤って大腸破裂につながることが珍しくないことを付け加えねばならない。全ての内視鏡検査のうちの約2000件に1件が、腸の穿孔につながる。これらのうち3分の1に至る穿孔は結果が致命的であり、検診を受けている個体の死亡につながる。
【0010】
したがって、直腸を経由して大腸に内視鏡を挿入し、内視鏡の形状を大腸の内壁の形態に適合させるために内視鏡をどのように制御すべきかを医師の技術だけに基づいて感知および検知するという、内視鏡検査を行う上述した従来の方法は、検査を受ける個体にとって最善の解法ではなかった。
【0011】
近年、従来の内視鏡装置の改良型がUPDシステムとしてオリンパス(Olympus)により開発され、市販されている。オリンパスのシステムは、磁気内視鏡画像法と一般的に称される。磁気内視鏡画像法システムは、上述のような腸の内部の画像を撮影するカメラ等の撮像手段を含む細長可撓性内視鏡アームを含む。さらに、磁気内視鏡画像法システムの細長可撓性内視鏡アームは、従来の内視鏡アームに関して上述したような、アームの長さに沿って所定の相互の距離で設けられたいくつかの磁石を含む。最後に、内視鏡アームの近位端には、従来の内視鏡アームに関して上述したような、医師が細長可撓性内視鏡アームの空間的形状を調節できるようにするための形状制御手段が提供される。
【0012】
加えて、磁気内視鏡画像法システムは、患者の外部に設けられるように構成され、細長可撓性内視鏡アーム上に設けられた磁石の1つ以上の位置を検知するのに適する1つ以上のセンサコイルを含む。
【0013】
制御ユニットは、検知コイル(単数または複数)により受信される電気信号に関連する情報を受信し、制御ユニットはこの情報を、内視鏡アームの個々の磁石の位置の3D表現に変形し、この3D表現がモニタに表示される。したがって、表示されたコイルの3D表現は、個体の腸の内部の内視鏡アームの実際の形状に関係する実時間の情報を提供する。モニタには、内視鏡の遠位端に設けられた撮像デバイスにより撮影された画像も表示される。
【0014】
デンマークでは、デンマーク国家保健委員会(National Health and Medicines Authority(Sundhedsstyrelsen))が、2011年に採択された政府の法律に基づき、結直腸癌の早期診断を強化するイニシアティブを開始した。このイニシアティブの実施は、2014年に始まる。
【0015】
このイニシアティブは、50〜74歳の全ての人を結直腸癌のスクリーニングに招くことを含む。スクリーニングは、便潜血分析と、陽性の場合にはその人の血液試料の提供と合わせた医師の予備問診が含まれ、その特定の人にi)便通の規則性パターンの変化等のパターンの変化がみられるか否か、ii)大便の潜血がみられるか否か、iii)体重減少がみられるか否か、およびiv)血虚があるか否かが評価される。
【0016】
便潜血試験が陽性の全てのケースに、大腸の内視鏡検査の形でさらなる検診が行われ、したがって医療スタッフがその人の大腸の内部の目視検査をすることができる。
【0017】
この新たな診断イニシアティブに基づき、デンマーク全国で行われる結腸鏡検査の年間増加件数は、新たな診断イニシアティブの実施の最初の2年以内に100%に達すると考えられる。
【0018】
他の国や地域も、病気を初期のステージで治癒させるために結腸の病的状態を発見するための同様のスクリーニングプログラムをすぐに開始すると考えられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
現在の既存の磁気内視鏡画像法システムは、従来の内視鏡検査を行う方法よりも大きく改良されたことが分かっているものの、このシステムにもいくつかの欠点がある。
【0020】
これらの欠点の1つは、現在の既存の磁気内視鏡画像法システムは、モニタに表示された内視鏡アームの実際の空間的形状の実時間の指示を提供するが、理想的でありしたがって安全かつ最も不快感の少ない内視鏡の挿入様式に関して、例えばとりわけ大腸の様々な地点での挿入速度、大腸の様々な位置での内視鏡の滞留時間等に関して、そのシステムにより医療スタッフに指示が提供されないことである。
【0021】
結腸鏡検査を受ける2000人に1人が残念ながら後に死亡するリスクが高い腸の穿孔を被るという統計的事実から、医療スタッフの技術を高め、それによりその医療スタッフが提供する結腸鏡検査の全体的質を改善するために、結腸鏡検査を行う医療スタッフの最適化された訓練が必要であることは明らかである。さらに、スクリーニングされる少なくない数の人が、スクリーニング時に症状のない健常者であると分かることに注意しなければならない。
【0022】
現在の既存の磁気内視鏡画像法システムのもう1つの欠点は、内視鏡挿入の終了時に、その内視鏡検査の質に関する客観的評価が医療スタッフに提供されないことである。したがって、既存の磁気内視鏡画像法システムは、内視鏡検査を行った特定の医療スタッフ人員の技術の客観的評価を提供しない。
【0023】
したがって、結腸鏡検査を行うための磁気内視鏡画像法装置の技術の改良が、大いに必要とされている。
【0024】
このような欠点を克服することが、本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0025】
上述の欠点は、本発明の第1、第2および第3態様においてそれぞれ軽減される。
【0026】
本発明は、その第1態様において、個体に対して行われる内視鏡検査、特に結腸鏡検査の質をモニタするための装置に関し、当該装置は、
‐個体の大腸に挿入されるのに適する細長可撓性内視鏡アームと、
‐個体の体外に設けられるのに適するセンサシステムと、
‐個体に対して行われる特定の内視鏡検査手技の質を評価するための質評価システムと
を含み、
当該内視鏡アームは、個体の直腸を経由して個体の大腸に挿入されるのに適し、当該内視鏡アームは、近位端と遠位端とを有し、
当該内視鏡アームは、近位端の近くの位置に当該アームの空間的形状を制御するための形状制御入力手段を含み、
当該内視鏡アームは、その拡張部に沿って、当該形状制御入力手段の作動に応じて当該アームの空間的形状を調節するための手段を含み、
当該内視鏡アームは、その拡張部に沿って1つ以上の位置指示手段を含み、各位置指示手段は、当該特定の位置指示手段の位置に関する情報を提供するのに適し、
当該内視鏡アームは、その遠位端の近くに、腸の内部の画像を撮影するための1つ以上の撮像手段を含み、
当該センサシステムは、当該内視鏡アームの当該位置指示手段の1つ以上を検知するのに適し、当該センサシステムは、当該1つ以上の位置指示手段が当該センサシステムの検出範囲内にあるときに、当該位置指示手段の1つ以上の位置の表現として電気信号を生成するのに適し、
当該センサシステムは、当該センサシステムから発生する電気信号を処理するのに適するマイクロプロセッサを含む制御ユニットを含み、当該制御ユニットは、この電気信号をモニタ信号の形で当該位置指示手段の1つ以上の位置の3D表現に変換するのに適し、
当該装置はモニタを含み、当該モニタは、当該位置指示手段の1つ以上の位置の当該3D表現を図表的に表示するのに適し、
当該装置はモニタを含み、当該モニタは、当該内視鏡アームの1つ以上の撮像手段により撮影された画像(imaged)を図表的に表示するのに適し、
当該質評価システムは、1つ以上の選択されたポイントの3次元空間における位置を所定の時間間隔で判断するための手段を含み、当該1つ以上の選択されたポイントは、細長可撓性内視鏡アーム上に固定されたポイントであり、
当該質評価システムは、当該選択されたポイントの1つ以上に関して、当該選択されたポイントの1つ以上の進行に関係する1つ以上のパラメータを決定するための手段を含み、当該パラメータは、特定の選択されたポイントの進行速度、特定の選択されたポイントの進行方向、特定の選択されたポイントの不動時間の長さを含む群から選択され、
当該質評価システムは、内視鏡挿入の理想的進行の1つ以上の例のパラメータに関連するデータを格納するためのデータ格納部を含み、
当該質評価システムは、実際に行われた内視鏡挿入の1つ以上のパラメータを内視鏡挿入の当該理想的進行の1つ以上に関連する同じ1つ以上のパラメータと比較することにより1つ以上のスコアを計算するための手段を含み、当該1つ以上のスコアは、内視鏡挿入の理想的進行の1つ以上の選択された例からの逸脱の程度を表し、
当該質評価システムは、当該1つ以上のスコアをユーザに伝達するのに適する通信手段を含む。
【0027】
本発明は、その第2態様において、内視鏡検査、特に結腸鏡検査を行う際に医療スタッフ人員を訓練するための、本発明の第1態様による装置の使用に関する。
【0028】
本発明は、その第3態様において、内視鏡検査、特に結腸鏡検査を行う際に医療スタッフ人員を訓練する方法に関し、当該方法は、
i)本発明の第1態様による装置を提供するステップと、
ii)細長可撓性内視鏡アームの遠位端を個体の直腸に挿入するステップと、
iii)内視鏡アームの形状制御入力手段の調節により、当該モニタ上の当該位置指示手段の1つ以上の位置の3D表現を参照して、細長可撓性内視鏡アームを大腸の内部形態にしたがいながらその個体の大腸に次第に挿入するステップと、
iv)ステップiii)の間に、内視鏡挿入の進行からの逸脱の程度に関して当該質評価システムから情報を繰り返し受信するステップであって、当該情報は、当該スコア(単数または複数)により提供される、ステップと、
v)ステップiv)において得られたスコア(単数または複数)を、内視鏡アームの挿入の進行(the progression of the progression of)を修正するためのフィードバックとして用いて、その後、必要に応じて内視鏡アームの挿入の進行を修正するステップと、
vi)個体の体から当該内視鏡アームを後退させるステップと、
を含む。
【発明の効果】
【0029】
本発明は、その第1、第2および第3態様において、個体への内視鏡の内視鏡挿入の質の改良のための装置、使用および方法をそれぞれ提供する。したがって、本発明の様々な態様は、理想的な、したがって安全で不快感の最も少ない内視鏡挿入様式に関して、例えばとりわけ大腸内の様々なポイントでの挿入速度、大腸内の様々なポイントでの内視鏡の滞留時間などに関して、医療スタッフに指示を提供しうる。
【0030】
さらに、本発明は、その第1、第2および第3態様において、医療スタッフの技術を改良し、それによりその医療スタッフにより提供される結腸鏡検査の全体の質を改良するために、結腸鏡検査を行う医療スタッフの最適化された訓練をそれぞれ提供する。
【0031】
最後に、本発明は、その第1、第2および第3態様において、内視鏡検査の質についての客観的評価をそれぞれ提供する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】人の個体の胃腸管を示した概略図である。
図2】本発明による装置の一実施形態を示した概略図である。
図3】本発明による装置とともに使用するための細長可撓性内視鏡アームの詳細を示した図である。
図4】内視鏡挿入の質を表すスコアを計算するためのアルゴリズムの一実施形態を示した図である。
図5a】未熟練の医療スタッフ人員により行われた大腸への内視鏡挿入中の内視鏡の先端の様々な位置を示したダイヤグラムである。
図5b図5aにより表される内視鏡の挿入のスコアを表したヒストグラムである。
図6a】熟練の医療スタッフ人員により行われた大腸への内視鏡挿入中の内視鏡の先端の様々な位置を示したダイヤグラムである。
図6b図6aにより表される内視鏡の挿入のスコアを表したヒストグラムである。
図7】本発明の第1態様による装置により得た、実施例において使用した結腸鏡検査進行マップの二つの例(経験者のものと未経験者のもの)を示した図である。
図8a】実施例において得た、簡単なモデル腸における結腸鏡検査進行スコアの分布を示した図である。
図8b】実施例において得た、難しいモデル腸における結腸鏡検査進行スコアの分布を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の第1態様
本発明は、第1態様において、個体に対して行われる内視鏡検査、特に結腸鏡検査の質をモニタするための装置に関し、当該装置は、
‐個体の大腸に挿入されるのに適する細長可撓性内視鏡アームと、
‐個体の体外に設けられるのに適するセンサシステムと、
‐個体に対して行われる特定の内視鏡検査手技の質を評価するための質評価システムと
を含み、
当該内視鏡アームは、個体の直腸を経由して個体の大腸に挿入されるのに適し、当該内視鏡アームは、近位端と遠位端とを有し、
当該内視鏡アームは、近位端の近くの位置に当該アームの空間的形状を制御するための形状制御入力手段を含み、
当該内視鏡アームは、その拡張部に沿って、当該形状制御入力手段の作動に応じて当該アームの空間的形状を調節するための手段を含み、
当該内視鏡アームは、その拡張部に沿って1つ以上の位置指示手段を含み、各位置指示手段は、当該特定の位置指示手段の位置に関する情報を提供するのに適し、
当該内視鏡アームは、その遠位端の近くに、腸の内部の画像を撮影するための1つ以上の撮像手段を含み、
当該センサシステムは、当該内視鏡アームの当該位置指示手段の1つ以上を検知するのに適し、当該センサシステムは、当該1つ以上の位置指示手段が当該センサシステムの検出範囲内にあるときに、当該位置指示手段の1つ以上の位置の表現として電気信号を生成するのに適し、
当該センサシステムは、当該センサシステムから発生する電気信号を処理するのに適するマイクロプロセッサを含む制御ユニットを含み、当該制御ユニットは、この電気信号をモニタ信号の形で当該位置指示手段の1つ以上の位置の3D表現に変換するのに適し、
当該装置はモニタを含み、当該モニタは、当該位置指示手段の1つ以上の位置の当該3D表現を図表的に表示するのに適し、
当該装置はモニタを含み、当該モニタは、当該内視鏡アームの1つ以上の撮像手段により撮影された画像(imaged)を図表的に表示するのに適し、
当該質評価システムは、1つ以上の選択されたポイントの3次元空間における位置を所定の時間間隔で判断するための手段を含み、当該1つ以上の選択されたポイントは、細長可撓性内視鏡アーム上に固定されたポイントであり、
当該質評価システムは、当該選択されたポイントの1つ以上に関して、当該選択されたポイントの1つ以上の進行に関係する1つ以上のパラメータを決定するための手段を含み、当該パラメータは、特定の選択されたポイントの進行速度、特定の選択されたポイントの進行方向、特定の選択されたポイントの不動時間の長さを含む群から選択され、
当該質評価システムは、内視鏡挿入の理想的進行の1つ以上の例のパラメータに関連するデータを格納するためのデータ格納部を含み、
当該質評価システムは、実際に行われた内視鏡挿入の1つ以上のパラメータを内視鏡挿入の当該理想的進行の1つ以上に関連する同じ1つ以上のパラメータと比較することにより1つ以上のスコアを計算するための手段を含み、当該1つ以上のスコアは、内視鏡挿入の理想的進行の1つ以上の選択された例からの逸脱の程度を表し、
当該質評価システムは、当該1つ以上のスコアをユーザに伝達するのに適する通信手段を含む。
【0034】
本発明の第1態様の一実施形態では、当該1つ以上の選択されたポイントの1つは、細長可撓性内視鏡アームの遠位端に位置するポイントである。
【0035】
このような実施形態は、少なくとも可撓性内視鏡アームの先端等の当該アームの遠位ポイントの進行によって表される可撓性内視鏡アームの進行の質評価を行うことを可能にする。
【0036】
本発明の第1態様の一実施形態では、当該内視鏡アームの当該1つ以上の位置指示手段は、永久磁石または電磁石を含む。
【0037】
当該内視鏡アームのこのようなタイプの位置指示手段は、例えば装置のセンサシステムの検出コイルによる、簡単かつ正確な位置判断を提供する。
【0038】
本発明の第1態様の一実施形態では、内視鏡アームの拡張部に沿って設けられた位置指示手段の数は1〜50であり、2〜48等であり、4〜46等であり、例えば6〜44であり、例えば8〜42であり、10〜40等であり、12〜38等であり、14〜36等であり、例えば16〜34であり、例えば18〜32であり、20〜30等であり、22〜28等であり、例えば24〜26である。
【0039】
一般に、内視鏡アームの拡張部に沿って存在する位置指示手段の数が多いほど、アームの3D画像のより多くの詳細が、位置指示手段の位置の当該3D表現を図表的に表示するためのモニタ上に再生されうる。位置指示手段の上述の数は、この点で適切であることが分かっている。
【0040】
本発明の第1態様の一実施形態では、腸の内部の画像を撮影するための内視鏡アームの1つ以上の撮像手段は、当該制御ユニットに画像を伝送するための手段を含むビデオカメラまたはレンズの形である。
【0041】
本発明の第1態様の一実施形態では、当該細長可撓性内視鏡アームは、腸の内部を照らすための1つ以上の照明手段を含み、当該1つ以上照明手段は、当該細長可撓性内視鏡アームの遠位部に設けられるのが好ましい。
【0042】
照明手段は、アームの遠位部に設けられた撮像手段(単数または複数)がより高い質の画像を撮影することを可能にする。
【0043】
本発明の第1態様の一実施形態では、当該位置指示手段の1つ以上の位置の当該3D表現を図表的に表示するのに適する当該モニタは、当該内視鏡アームの1つ以上の撮像手段により撮影された画像を図表的に表示するのに適するモニタと同じモニタであるか、または異なるモニタである。
【0044】
そのような実施形態は、使用されるモニタ数の減少を確保し、したがって空間を節約する。
【0045】
本発明の第1態様の一実施形態では、内視鏡挿入の理想的進行の1つ以上の例のパラメータに関連する当該データは、1人の人間の個体に基づき、または、内視鏡挿入の理想的進行の1つ以上の例のパラメータに関連する当該データは、数人の異なる人間の個体の平均に基づく。
【0046】
内視鏡挿入の理想的進行の1つ以上の例のパラメータに関連するデータが、1人の人間の個体に基づく場合、内視鏡アームの実際の挿入をその特定の人間の個体に適合させることが可能となり、したがってその個体の特定の腸の形態に対応することが可能である。しかし通常は、内視鏡挿入の理想的進行の1つ以上の例のパラメータに関連するデータは、数人の異なる人間の個体の平均に基づく。
【0047】
本発明の第1態様の一実施形態では、当該質評価システムの当該通信手段は、当該1つ以上スコアをユーザに伝達するのに適するが、好ましくはモニタ上に色(単数または複数)を表示することおよび/または数を表示すること等により、当該1つ以上スコアを図表的に伝達するように構成される。
【0048】
本発明の第1態様の一実施形態では、当該装置は、当該センサシステムから発生する当該電気信号により提供される情報から直接的に、または当該制御ユニットにより提供される当該モニタ信号から間接的に、3次元空間における当該選択されたポイントの1つ以上の位置を計算するように構成される。
【0049】
これらの実施形態は、3次元空間における当該選択されたポイントの1つ以上の計算において、一方では当該センサシステムにより検出される信号の最も直接的な変形、または他方では当該制御ユニットにより提供されるモニタに基づく間接的計算を可能にする。
【0050】
本発明の第1態様の一実施形態では、内視鏡挿入の理想的進行の1つ以上の例のパラメータに関連する、当該データ格納部に格納される当該データは、個体から臨床的に明らかな不満のない、または個体からの不満が所定のレベル以下である、盲腸までの最短可能時間と定義される。
【0051】
本実施形態において、内視鏡挿入の理想的進行は、挿入対象の個体に加わる衝撃の違和感が最も低い挿入を表す。
【0052】
本発明の第1態様の一実施形態では、当該装置は、当該位置指示手段の1つ以上の位置を時間の関数として記録するためのデータ格納部52を含む。
【0053】
そのようなデータ格納部は、大腸への内視鏡の挿入の質に関する分析を行うことを可能にする。
【0054】
本発明の第1態様の一実施形態では、当該装置は、特定の内視鏡検査を行う特定の医療スタッフ人員の識別情報を入力するための入力手段を含み、当該装置はさらに、当該特定の医療スタッフ人員に関して、当該特定の医療スタッフにより得られた平均スコアを相関付けおよび表示するための手段を任意含み、このようにして1人以上の医療スタッフ人員の累積質評価を得ることを可能にする。
【0055】
この実施形態は、医療スタッフに属する様々な人により行われる内視鏡手技の質の統計記録をつけることを可能にする。
【0056】
本発明の第1態様の一実施形態では、この装置は、内視鏡検査の質をモニタする装置であるかわりに、内視鏡検査を行う際に医療スタッフ人員を訓練するための装置である。
【0057】
通常、本発明の第1態様はかわりに、「前記質評価システムは、実際に行われた内視鏡挿入の1つ以上のパラメータを、内視鏡挿入の当該理想的進行の1つ以上に関連する同じ1つ以上のパラメータと比較することにより1つ以上のスコアを計算するための手段を含み、前記1つ以上のスコアは、内視鏡挿入の理想的進行の1つ以上の選択された例からの逸脱の程度を表す」という特徴が任意の特徴である代替的設計を有する、請求項1に記載の装置に関しうる。
【0058】
この代替的な第1態様では、質評価システムは、実際に行われた内視鏡検査挿入の1つ以上のパラメータの、所定の内視鏡挿入の進行様式に関連する同じ1つ以上のパラメータからの(with)逸脱に基づいて1つ以上のスコアを計算するための手段を含む。
【0059】
このようにして、所定の内視鏡挿入の任意の種類のパラメータとの比較に基づいてスコアが計算されうる。
【0060】
本発明の第2態様
本発明は、第2態様では、内視鏡検査、特に結腸鏡検査を行う際に医療スタッフ人員を訓練するための、本発明の第1態様による装置の使用に関する。
【0061】
本発明の第2態様の一実施形態では、当該使用は、個体に対して内視鏡検査を行う際に医療スタッフ人員を訓練するためのものであり、当該個体は、生きた人間あるいは人間のモデルまたは人間のモデルの一部もしくは人間の一部のモデルである。
【0062】
訓練されていない医療スタッフの場合、人間のモデルまたは人間のモデルの一部もしくは人間の一部のモデル等の生きていない個体に対して内視鏡挿入を行うことが練習目的で有利であろう。しかし、生きた人間に対して使用が行われてもよい。
【0063】
したがって、本説明および添付の請求項においては、個体とは、生きた人間、あるいは人間の生きていないモデルおよび/または人工モデル、または人間のモデルの一部もしくは人間の一部のモデルを意味するものと解釈されうる。
【0064】
本発明の第2態様の一実施形態では、当該使用は、診断または外科的ステップを含まない。
【0065】
そのような使用は、専ら内視鏡挿入を練習する目的に特に適切である。
【0066】
本発明の第3態様
本発明は、第3態様において、内視鏡検査、特に結腸鏡検査を行う際に医療スタッフ人員を訓練する方法に関し、当該方法は、
当該方法は、
i)本発明の第1態様による装置を提供するステップと、
ii)細長可撓性内視鏡アームの遠位端を個体の直腸に挿入するステップと、
iii)内視鏡アームの形状制御入力手段の調節により、当該モニタ上の当該位置指示手段の1つ以上の位置の3D表現を参照して、細長可撓性内視鏡アームを大腸の内部形態にしたがいながらその個体の大腸に次第に挿入するステップと、
iv)ステップiii)の間に、内視鏡挿入の進行からの逸脱の程度に関して当該質評価システムから情報を繰り返し受信するステップであって、当該情報は、当該スコア(単数または複数)により提供される、ステップと、
v)ステップiv)において得られたスコア(単数または複数)を、内視鏡アームの挿入の進行を修正するためのフィードバックとして用いて、その後、必要に応じて内視鏡アームの挿入の進行を修正するステップと、
vi)個体の体から当該内視鏡アームを後退させるステップと、
を含む。
【0067】
本発明の第3態様の一実施形態では、当該方法は、当該内視鏡アームの1つ以上の撮像手段により撮影された画像を表示するためのモニタに表示された画像に基づいて診断を行うステップをさらに含む。
【0068】
この実施形態は、内視鏡検査を受ける個体の診断の基礎を形成するための、内視鏡検査の間に得られた情報の使用を可能にする。
【0069】
本発明の第3態様の一実施形態では、個体は生きた人間あるいは人間のモデルまたは人間のモデルの一部もしくは人間の一部のモデルである(being)。
【0070】
訓練されていない医療スタッフの場合、人間のモデルまたは人間のモデルの一部もしくは人間の一部のモデル等の生きていない個体に対して内視鏡挿入を行うことが練習目的で有利であろう。しかし、生きた人間に対して本方法が行われてもよい。
【0071】
本発明の第3態様の一実施形態では、当該方法は、診断または外科的ステップを含まない。
【0072】
そのような方法は、専ら内視鏡挿入を練習する目的に特に適切である。
【0073】
本説明では、「内視鏡挿入」という用語は、個体の腸への内視鏡の挿入もしくは個体の腸からの内視鏡の抜去、あるいは内視鏡挿入後の個体の腸からの内視鏡抜去の組合せ、またはそのような挿入および抜去の一部もしくはその組み合わせを意味するものと解釈されるものとする。
【0074】
ここで本発明の好ましい実施形態を例示するための図面を詳しく参照すると、図1には、人間の個体の胃腸管が概略的に示されている。
【0075】
図1は、人間の個体11の腹部4を示す。胃腸管は、(消化運動の方向に)胃10、続いて小腸12、続いて大腸8を含み、直腸6で終わる。図1は、様々な屈曲、捻じれおよび湾曲した形態を含む大腸の湾曲した進行を明らかに示す。図1から、大腸に内視鏡を次第に挿入するにはそれなりの技術が必要であることが明らかである。
【0076】
図2は、本発明の第1態様による装置100の一実施形態を概略的に示す。図2には、直腸6を経由して個体の大腸に内視鏡2の遠位部20を挿入することによって結腸鏡検査のために準備された個体11が示される。大腸に挿入されている内視鏡2の部分は、その拡張部に沿っていくつかの位置指示手段26を含み、位置指示手段26は、これらの位置指示手段26の各々が3次元空間のどこに位置するかについての情報を提供するのに適する。
【0077】
さらに、細長可撓性アームの遠位端は、モニタ38上に示される腸の内部の画像を撮影するための撮像手段20を含む。
【0078】
内視鏡の反対の端18には、形状制御入力手段22が提供される。これらの形状制御入力手段により、ユーザは、細長ワイヤの空間的形状を制御することができる。さらに内視鏡は、内視鏡アームの空間的形状を調節するための手段24(図示せず)を含む。これらの手段24は、形状制御入力手段22を介して提供された入力への応答として、または内視鏡にトルクを与えることにより、細長可撓性アームの形状を適合させる。
【0079】
個体11の外部には、ここでは単一の検出コイル14を含むものとして図示されたセンサシステム14が設けられる。しかし、いくつかの検出コイルがセンサシステム14に存在してもよい。
【0080】
センサシステム14は、細長可撓性内視鏡アーム2上の位置指示手段26の各々の存在および場所を検知する。
【0081】
制御ユニット32は、検知システム14から信号を受信する。これらの信号は、モニタ信号34の形の当該位置指示手段の1つ以上の位置の3D表現に変換されるために電子的に処理される。このモニタ信号は、位置指示手段26の位置のこの3D表現を示すモニタ36に伝送される。
【0082】
制御ユニット32はまた、撮像手段26により捉えられる信号を制御し、これらの信号を処理してモニタ信号に変形し、このモニタ信号がモニタ38に送られて、さらにモニタ38が当該腸内から見た腸の画像30を描出する。
【0083】
最後に、制御ユニット32は、内視鏡挿入の理想的進行の1つ以上の例のパラメータに関連するデータを格納するためのデータ格納部42(図2には示されない)が埋め込まれている。
【0084】
制御ユニットは、3次元空間における1つ以上の選択されたポイント40の位置を所定の時間間隔で判断するための手段を含む質評価システム16をさらに含み、当該1つ以上の選択されたポイント40は、細長可撓性内視鏡アーム上に固定されたポイントである。
【0085】
これにより、質評価システム16は、当該選択されたポイント40の1つ以上に関して、当該選択されたポイントの1つ以上の進行に関係する1つ以上のパラメータを決定することが可能となり、当該パラメータは、特定の選択されたポイントの進行速度、特定の選択されたポイントの進行方向、特定の選択されたポイントの不動時間の長さを含む群から選択される。
【0086】
質評価システム16は、実際に行われた内視鏡検査の挿入の1つ以上のパラメータを内視鏡挿入の当該理想的進行の1つ以上に関連する同じ1つ以上パラメータと比較することにより、1つ以上のスコア44を計算するための手段も含み、当該1つ以上のスコアは、内視鏡挿入の理想的進行の1つ以上の選択された例からの逸脱の程度を表す。図2では、そのようなスコア(単数または複数)が、モニタ50の形の通信手段46上に、縦のバーおよび数字(それぞれ44)として表示される。
【0087】
図2には、内視鏡検査を行う際のユーザの技術を表す累積スコアを得るためにユーザが自分の識別情報を入力できる入力手段54も見られる。
【0088】
図3は、本発明の第1態様による装置100の内視鏡アーム2の詳細を示す。アーム2は、近位端18と遠位端20とを有する細長可撓性ワイヤまたはそれに類するものを含む。遠位端は、人の腸に挿入されるように構成される。遠位端は、撮像手段28を含み、腸の内部を照らすための照明手段48も含みうる。
【0089】
細長可撓性ワイヤの他端である近位端18には、形状制御入力手段22を含むハンドルが提供される。これらの形状制御入力手段により、ユーザは、内視鏡が挿入される腸に形状を適合させるように細長ワイヤの空間的形状を制御することができる。ハンドルからは、制御ユニット32に接続するためのコネクタ19も伸びる。細長可撓性ワイヤの拡張部に沿って、いくつかの位置指示手段26が提供される。これらの位置指示手段は、磁場を提供し、それによりこれらの位置指示手段26の各々が3次元空間のどこに位置するかについての情報を提供する、永久磁石または電子磁石でありうる。
【0090】
図3には、細長可撓性内視鏡アーム上のいくつかの選択されたポイント40も示される。これらの選択されたポイント40の位置は、位置指示手段26の位置と同一であってもよいし、異なっていてもよい。選択されたポイント40は、個体の腸への細長可撓性内視鏡アームの進行の特徴を特定するために例えばその位置、速度、移動方向および不動時間が検出および記録されうるポイントである(being)。
【0091】
図4は、内視鏡挿入の進行の質を評価するためのアルゴリズムの一例を示す。図4は、内視鏡アームの先端の挿入の進行に関係するデータがどのように処理され、その進行の質を表すスコアに換算されうるかを示した流れ図である。
【0092】
内視鏡アームの先端の位置を表すデータの取得においては、当該アームの先端に配置された位置指示手段の位置が、センサシステムおよび制御ユニットにより、例えば毎秒12回の判断のサンプリングレートで判断される。このサンプリングされたデータは、図4に「XYZ座標」として表される。
【0093】
このデータはその後、定量化される空間の所与の既定サイズのsの各ビンに関して、当該特定のビン内に先端が位置するサンプルの数を表すヒストグラムに定量化される。この定量化は、図4において「2D/3Dヒストグラム、S」のタイトルのボックスで表される。
【0094】
最終スコアの減少を提供するために、所与のビン内の進行が遅すぎる場合には、定量化SがSに二乗される。これは、図4においてMSS=Sのタイトルのボックスで示される。MMSという用語は、「マトリックス単回二乗」を意味する。
【0095】
SおよびMSSのタイトルのヒストグラムに関しては、全てのビンがまずy軸に関して、その後x軸に関して集計される。集計は、SおよびMSSに関してそれぞれ行われる。その結果、図4の中央列の二つのボックスにより表されるように、時間スコアTSおよびマトリックススコアMSが得られる。
【0096】
その後、時間スコアおよびマトリックススコアは、式PS=log(MS)/log(TS)にしたがって進行スコアPSを計算するための基礎として使用される。
【0097】
進行スコアは、[1;2]の範囲内の数となる。[0;1]の範囲内のスコアに達するために、進行スコアPSは、CP=2−PSと定義される結腸鏡検査進行スコアCPに換算される。
【0098】
加えて、進行を時間に関して相関させるために、結腸鏡検査進行時間スコアCPTSが計算される。CPTSの値は、CPTS=CP/(TS/60)として計算される。CPTSは、当該内視鏡検査を行うために費やされた時間と比較した、行われた特定の内視鏡検査の質を表す。
【0099】
センサシステムおよび制御ユニットによる、内視鏡アーム上に設けられた位置指示手段の位置を表すデータの取得においては、データは、3次元空間における当該選択されたポイント40の1つ以上の位置を当該センサシステム14から発生する当該電気信号により提供される情報から直接的に計算するためのものであってもよいし、または当該制御ユニット32により提供される当該モニタ信号34から間接的に計算するためのものであってもよい点に注意しなければならない。ランガラジ M.ランガヤン(Rangaraj M.Rangayyan)、生体医用画像解析(Biomedical Image Analysis)、CRCプレス(CRC Press)、2005年.ISBN:0‐8493‐9695‐6、第2章、5章および6章など、画像解析に関係する文献が参照される。
【0100】
図4に示されるアルゴリズムは、挿入データを分析するため、およびこれらのデータ(date)を行われた内視鏡検査の質を表す式に換算するために有用ないくつかの考えられるアルゴリズムのうちの1つにすぎない。当技術分野の技術者は、さらなるアルゴリズムおよび/または代替的アルゴリズムを推論することができるであろう。
【0101】
図5aは、あまり熟練していない医療スタッフ人員による挿入中の内視鏡先端の先端の様々な位置の定量化された表現を示す。あたかも内視鏡医が大腸を手探りで進んでいるかのように、経路があまり明確でないことが分かる。XおよびY軸は空間パラメータを表し、色は「手技の割合」を表し、青が挿入の開始を示し、赤が挿入の終わりを示す。
【0102】
図5aにより表される結腸鏡検査の質評価を行うために、図4に示したアルゴリズムを適用した。
【0103】
このアルゴリズムにしたがった結果が、ヒストグラムと関連のマトリックススコアとを示した図5bに示されている。図5aにより表される結腸鏡検査のCP値は、約49であった。
【0104】
図6aは、今度は熟練の医療スタッフ人員による挿入中の内視鏡先端の先端の様々な位置の定量化された表現を示す。図5aと比較して、内視鏡医が大腸内の進路を知っているかのように、経路がはるかに明確であることが分かる。XおよびY軸は空間パラメータを表し、色は「手技の割合」を表し、青が挿入の開始を示し、赤が挿入の終わりを示す。
【0105】
図6aにより表される結腸鏡検査の質評価を行うために、図4に示したアルゴリズムを適用した。
【0106】
このアルゴリズムにしたがった結果が、ヒストグラムと関連のマトリックススコアとを示した図6bに示されている。図6aにより表される結腸鏡検査のCP値は、約25であった。
【0107】
内視鏡挿入のスコアを計算するための他の様々な種類のアルゴリズムが可能である点に注意しなければならない。当業者は、そのような代替的アルゴリズムを考える立場となる。
【実施例】
【0108】
本実施例は、本発明による装置を用いた結腸鏡検査実行の評価を示す。
【0109】
最低350件(中央値2000、範囲350〜4000)の結腸鏡検査の経験をもつ10名の経験のある内視鏡検査コンサルタントが、本実施例に参加した。加えて、シミュレータベースの結腸鏡検査訓練プログラムに参加する11名の訓練生を比較に入れた。
【0110】
以前に正式なシミュレータ訓練を受けたことがある訓練生、または臨床の場で2件を超える結腸鏡検査を行ったことがある訓練生は本実施例から除外した。
【0111】
MEIスコープガイド(MEI Scope Guide)(オリンパス光学工業(Olympus Optical)、東京、日本)を用いて、結腸鏡(CF‐H180DL、イーヴィスエクセラIIビデオシステムセンター(Evis Exera II video system center)CV‐180、オリンパスメディカルシステムズ(Olympus Medical Systems Ltd)、東京、日本)のルートを、標準訓練モデル(京都科学大腸内視鏡トレーニングモデル(Kyoto Kagaku Colonoscope Training Model))の模擬結腸を通じて記録した。
【0112】
実物の結腸鏡、実物の磁気内視鏡画像法(MEI)および実物に近いヒト結腸の標準モデルを用いて、実物に近い設定でテストを行った。
【0113】
結腸鏡は、パルス低電圧磁場を生成する規則的間隔でセットされた一体型コイルを含むため、MEIが結腸鏡の位置を判断することが可能であり、患者/シミュレータの外部の磁気センサがこれらのインパルスを検出する。信号はその後、検出器において変調され、結腸鏡の実時間の3次元図に変換される。画像は前後方向図、横方向図またはその両方でモニタに表示され、分割スクリーン図として見られる。参加者は、MEIを見ることができた。
【0114】
京都科学の大腸内視鏡トレーニングモデルは、実物大のプラスチック胴内に置かれ、ベルクロおよびゴム環により固定されたヒト結腸を模した物理モデルシミュレータである。これは、各ケースが異なるループ形成および難易度を有する、6つの標準ケースに構成できる。
【0115】
両群にシミュレータを紹介し、経験のある内視鏡検査インストラクタが訓練生に結腸鏡を紹介した。参加者は、ループのない簡単なケース(ケース1)およびS状結腸のループを含むより難しいケース(ケース2)で結腸鏡検査を行った。シミュレータおよびMEIは、全てのセッションで同じように配置した。
【0116】
結腸鏡ガイドを校正し、各結腸鏡検査の前に潤滑化した。参加者は、「盲腸」に着くまでに最大15分あり、盲腸を洗濯挟みで作ったくぼみでマークした。
【0117】
結腸鏡の挿入から「盲腸」へのMEIデータだけを記録し、抜き出しは記録しなかった。
【0118】
磁気内視鏡画像を、スコープガイドから直接医療記録デバイス(メディキャップ(Medicap)USB200、メディキャプチャ(Medicapture Inc)、プリマスミーティング、ペンシルバニア、USA)を通じて25Hzで記録し、テスト参加者ごとに別々のUSB格納ディスクに保存した。スコープガイドは10Hzでトラッキングしたため、記録した画像の周波数をバーチャルダブ(VirtualDub)(VDubMPEG2_1.6.19、Virtualdub.org)で10Hzにデシメートした。
【0119】
磁気内視鏡画像のビデオ記録に基づき、マトラブ(MatLab)2012a(マスワークス(MathWorks,Inc)、ネイティック、マサチューセッツ、USA)を用いて各画像での結腸鏡の先端を確認した。先端の位置を、10×10ピクセルの複数の正方形からなるグリッドに入力した。
【0120】
挿入をスコアリングするために本実施例で使用したアルゴリズムは、図4に示したフローチャートと類似するものであった。
【0121】
したがって、先端が既に通った正方形に戻った場合にはスコアが減点され、進行していないことを知らせた。盲腸に達する前に通った正方形が少ないほど、スコアが加点された。
【0122】
これにより、均一な進行であれば高スコアにつながり、不均一な不安定な様式の前進であればより低いスコアにつながることが確保された。
【0123】
CPTSに加えて、本方法は、仮想グリッドにおける結腸鏡の位置のプロットとして手技の進行の図表マップを構築する機会も含む。
【0124】
これが図7に示されており、結腸鏡の位置を毎秒5回マークしたものである。安定した均一な進行(経験者;左側)により、結腸モデルの「製図」に近い等間隔の点のマップが得られ、他方で訓練生の不安定で不均一な進行(右側)により、問題のエリアにおける高密度の点のパターンが得られることが明らかに示される。この結腸鏡検査進行マップ(CoP‐マップ)は印刷し、訓練手技を評価するためにCPTSとともに用いることができる。
【0125】
IBM SPSSスタティスティクス(IBM SPSS Statistics)(PASW、バージョン18.0;SPSS Inc、シカゴ、イリノイ、USA)により、統計解析を行った。独立データのノンパラメトリックテストには、マン‐ホイットニーUテストを用いた。有意水準は、P<0.05に設定した。群対照方法を用いて、合格スコアを決定した。これは、2つの群が外部基準(経験、結腸鏡検査の件数)により異なることが分かっていたために可能であった。偽陽性(合格訓練生)および偽陰性(不合格経験者)の重みが等しいものとし、2つの群のスコア分布をグラフ化し、得られた2つの曲線の交点に設定することにより合格標準を決定した。
【0126】
この状況が、図8aの簡単なケース(ケース1)および図8bの難しいケース(ケース2)に関する訓練生(点線)および経験のある内視鏡検査コンサルタント(実線)のスコア分布を表した図8aおよび図8bに示されている。
【0127】
結果
21名の医師が研究に参加し、不完全なデータセットまたは欠測データはなかった。簡単なケース(ケース1)では、パフォーマンスの差には説得力があった。訓練生の平均CPTSは93.1(SD73.4)だったのに対し、経験のある参加者は平均459.7(SD147.5)を得点し、差は極めて有意であった(P<0.001)。
【0128】
より難しいケース(ケース2)では、パフォーマンスの差はなお有意であったが、経験のある参加者の一部は予想したほど高スコアではなかった。訓練生は41.1(SD35.5)の平均CPTSを達成し、経験者は106.9(SD102.5)の平均CPTSを達成し、この差も有意であった(P<0.01)。合格スコアを決定するために、群対照方法を用い、得られた2つの曲線の交点に合格スコアを設定したスコア分布をグラフ化した。
【0129】
その結果、ケース1の合格スコアは234.8となり(図8a参照)、ケース2の合格スコアは93.0となった(図8b参照)。
【0130】
ケース1では、経験のある内視鏡医全員と訓練生1名だけが合格した。ケース2では、初心者1名と経験のある内視鏡医3名だけが合格した。
【0131】
この実施例は、本発明による装置を、結腸鏡検査の質の評価のために自動化された評価ツールとして用いることができることを示す。このツールは、結腸鏡検査物理シミュレータで、簡単なケースおよび難しいケースのシナリオにおいて訓練生と経験のある内視鏡医とを区別することができた。このツールは、動的かつ完全に客観的な機器であり、ライブフィードバックの可能性を提供する。さらに、本発明の装置は、経験のある監督者によるフルタイムの手技監督を必要としない貴重な評価ツールを与える。
【0132】
本実施例は、非人型シミュレータにおける内視鏡医の訓練に関するが、生きた人間における内視鏡検査の質をモニタするために本装置を用いることもできることは明らかである。
【符号の説明】
【0133】
2 細長可撓性内視鏡アーム
4 人間の体の腹部
6 直腸
8 大腸
10 胃
11 個体
12 小腸
14 センサシステム
16 質評価システム
18 細長可撓性内視鏡アームの近位端
19 制御ユニットへのコネクタ
20 細長可撓性内視鏡アームの遠位端
22 内視鏡アームの形状制御入力手段
24 内視鏡アームの空間的形状を制御するための手段
26 位置指示手段
28 撮像手段
30 腸の画像
32 制御ユニット
33 位置指示手段の位置の3D表現
34 モニタ信号
36、38、50 モニタ
40 細長可撓性内視鏡アーム上の選択されたポイント
42、52 データ格納部
44 スコア
46 1つ以上のスコアをユーザに通信するための通信手段
48 内視鏡アームの照明手段
54 ユーザの識別情報を入力するための入力手段
100 装置
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8A
図8B
【国際調査報告】