(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2016-539769(P2016-539769A)
(43)【公表日】2016年12月22日
(54)【発明の名称】外科用ステープラ
(51)【国際特許分類】
A61B 17/068 20060101AFI20161125BHJP
【FI】
A61B17/068
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2016-552708(P2016-552708)
(86)(22)【出願日】2014年11月4日
(85)【翻訳文提出日】2016年6月17日
(86)【国際出願番号】IB2014002992
(87)【国際公開番号】WO2015063609
(87)【国際公開日】20150507
(31)【優先権主張番号】61/899,654
(32)【優先日】2013年11月4日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】516134121
【氏名又は名称】クイックリング メディカル テクノロジーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ミロ,シンハ
(72)【発明者】
【氏名】ベルスキー,ジブ
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160CC03
4C160CC16
4C160MM33
4C160NN02
4C160NN07
4C160NN09
(57)【要約】
【課題】人体内で外科ステープリングを行うための方法及び装置を提供する。
【解決手段】外科用ステープラは、前方に延びるバレルを有する操作ハンドルと、バレルの先端にあり、ステープリングヘッド部と、ステープラ本体部と、それらの間にありステープリングヘッド部をバレルに対して旋回可能にするヒンジ接続部と、を有するステープリング装置と、を備える。ステープリングヘッド部は、外科用ステープルの位置決め及び埋込時にこれを保持するように構成されたホルダ部をヒンジ接続部と反対側に有する。ステープリングヘッド部の基端部は、ステープラ本体部と並列する停止時位置から、組織へのステープルの埋込を操作ハンドルに向かう略基端方向に行うための動作位置にバレルに対して少なくとも約15度まで外側に旋回可能である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前方に延びるバレルを有する操作ハンドルと、
前記バレルの先端にあり、ステープリングヘッド部と、ステープラ本体部と、それらの間にあり前記ステープリングヘッド部を前記バレルに対して旋回可能にするヒンジ接続部と、を有するステープリング装置であって、前記ステープリングヘッド部は、外科用ステープルの位置決め及び埋込を行う間これを保持するように構成されたホルダ部を前記ヒンジ接続部と反対側に有し、前記ステープリングヘッド部の基端部は、前記ステープラ本体部と並列する停止時位置から、組織へのステープルの埋込を前記操作ハンドルに向かう略基端方向に行うための動作位置に前記バレルに対して少なくとも約15度まで外側に旋回可能である、ステープリング装置と、
を備えた、外科用ステープラ。
【請求項2】
前記ステープリングヘッド部は、前記ヒンジ接続部と前記ホルダ部との間に配置されたベース部を有し、前記ホルダ部は、前記ベース部に対して回動可能である、請求項1に記載のステープラ。
【請求項3】
前記バレル内に複数のステープルを含むように構成され、前記ステープリングヘッド部が前記ステープラ本体部と並列する停止時位置にある時、前記ステープルを前記ステープリングヘッド部の前記ホルダ部に向けて順次送出する位置に配置されたマガジンをさらに備えた、請求項1又は2に記載のステープラ。
【請求項4】
前記バレル内に複数のステープルを含むように構成され、前記ステープリングヘッド部が前記ステープラ本体部と並列する停止時位置にある時、前記ステープルを前記ステープリングヘッド部の前記ホルダ部に向けて、前記バレルの中心軸と平行な方向に順次送出する位置に配置されたマガジンをさらに備えた、請求項1又は2に記載のステープラ。
【請求項5】
前記マガジンは、その長手軸回りに180度回転可能である、請求項3又は4に記載のステープラ。
【請求項6】
分かれた先端を有するシースが、前記ステープリング装置及び前記バレルの先端を摺動可能に取り囲み、前記シースを前記バレルに対して摺動させる手段を設けた、請求項1〜5のいずれかに記載のステープラ。
【請求項7】
前記ステープリングヘッド部は、アンビルと、ステープルを前記アンビルに押し付けて前記外科用ステープルを患者の組織に埋め込むように構成された成形具と、を備えた、請求項1〜6のいずれかに記載のステープラ。
【請求項8】
前記ステープリングヘッド部はさらに、前記ホルダ部と並列状態になり、ステープルを埋込準備位置に固定するように配置された、前記アンビルを備えるクランプを備えた、請求項7に記載のステープラ。
【請求項9】
前記ステープリングヘッドが前記ステープラ本体部と並列する停止時位置にある時、前記マガジンの先端にあるステープルと係合し、前記ステープルを前記ホルダ部に送出するためのプッシャをさらに備えた、請求項7又は8に記載のステープラ。
【請求項10】
前記ステープリングヘッド部は、前記停止時位置から前記バレルに対して少なくとも80度まで外側に旋回可能である、請求項1〜9のいずれかに記載のステープラ。
【請求項11】
前記ステープリングヘッド部の旋回及び前記ホルダ部の回動は、前記操作ハンドルから操作可能である、請求項2〜9のいずれかに記載のステープラ。
【請求項12】
一対の脚を有するステープルとともに使用され、前記ステープルを患者の組織に埋め込む前にステープルの2本の脚の間の間隔を前記ステープラ内部で最初の間隔から変更するように構成されたクリンピング機構をさらに備えた、請求項1〜11のいずれかに記載のステープラ。
【請求項13】
前記ハンドルのレバーにより作動される取出及び送出機構をさらに備え、前記レバーの移動によって前記マガジンの最先端位置にあるステープルが前記ホルダ部に送出されると同時に、前記成形具に後に動力を供給するばねが前記端部内に装着されるように構成し、前記成形具は、前記ステープリングヘッドに保持された前記ステープルのクラウンコネクタの下面を前記アンビルに押し付け、前記脚を前方かつ互いに向き合うように移動させて、前記ステープルを患者の組織に埋め込むように構成された、請求項3〜12のいずれかに記載のステープラ。
【請求項14】
前記ステープリングヘッド部は、前記ステープルの脚の端にある2つのプロングが心臓弁組織に突き刺さっているかどうかを検知するセンサを含み、前記操作ハンドルは、前記ステープリングヘッド部に保持されたステープルを埋め込むためのトリガ機構を含み、前記ステープラはさらに、前記センサがステープルの2つのプロングが前記組織に左右対称に突き刺さっていることを検知した時にのみ前記トリガ機構を操作可能にする相互接続部を前記センサと前記トリガ機構との間に備えた、請求項1〜13のいずれかに記載のステープラ。
【請求項15】
前記トリガ機構は、互いに向かう方向に略同軸移動するように設計された2つのボタンを前記操作ハンドルの反対面に備える、請求項14に記載のステープラ。
【請求項16】
2本の脚を有する略M字形の外科用ステープルとともに使用するための外科用ステープラであって、
中心軸を有する前方に延びるバレルを有する操作ハンドルと、
前記バレルの先端にあるステープリング装置と、を備え
前記ステープリング装置は、
ステープラ本体部と、
前記本体部に旋回可能にヒンジ接続され、外科用ステープルを保持し、患者の組織に穿刺した後、前記2本の脚を互いの方向に前記組織を収縮させる安定した最終位置に移動させることによって、前記ステープルを組織に埋め込むように構成されたステープリングヘッド部と、を備え、
前記ヘッド部は、前記本体部と並列する停止時位置から、略基端方向に組織へのステープルの埋込を行うための動作位置へ少なくとも約15度まで旋回可能である、外科用ステープラ。
【請求項17】
略M字形の複数の外科用ステープルを収容するための前記バレル内のマガジンと、前記マガジンから前記外科用ステープルの1つを取り出し、前記ステープリングヘッド部がその停止位置に旋回した時に前記ステープルを前記ステープリングヘッド部に送出することができる機構と、をさらに備えた、請求項16に記載のステープラ。
【請求項18】
前方に延びるバレルを有するハンドルと、
ステープラ本体部と、前記ステープラ本体部に旋回可能にヒンジ接続され、各端にプロングを備えた2本の脚を有するタイプの外科用ステープルを保持し、患者の組織に穿刺した後、前記2本の脚を互いの方向に前記組織を収縮させる安定した最終位置に移動させることによって、前記ステープルを組織に埋め込むように構成されたステープリングヘッド部と、を備えた、前記バレルの先端にあるステープリング装置と、
複数の外科用ステープルを収容するように構成された前記バレル内のマガジンと、
前記ステープリングヘッド部が前記ステープラ本体部と並列する停止時位置にある時に、前記マガジンから前記外科用ステープルの1つを取り出し、そのプロングが前記ハンドルの方向を向いた状態で前記ステープルを前記ステープリングヘッド部に送出することができる機構と、を備え、
前記ステープリングヘッド部は、その停止時位置から、略基端方向に組織への前記ステープルの埋込を行うための動作位置へ少なくとも約15度まで旋回可能である、外科用ステープラ。
【請求項19】
前記ステープリングヘッド部は、硬性であり、かつ前記ステープリングヘッドに送出される時及び患者の組織に埋め込まれる時にステープルを保持するように構成された端部より先端側にある旋回点でヒンジ接続される、請求項18に記載の外科用ステープラ。
【請求項20】
患者の漏れのある僧帽弁を修復する方法であって、
(a)ハンドルと、プロングが前記ハンドルの方を向く方向に配置された外科用ステープルを有するステープリングヘッド部とを有する内視鏡外科用ステープラを、前記細長い本体を折り曲げた状態で、経心尖経路を通って患者の心臓の左心室に挿入するステップと、
(b)前記ステープラを前記僧帽弁の弁尖の間の弁開口部を通して左心房へ移動させるステップと、
(c)前記ステープラを展開して前記ステープリングヘッド部を露出させるステップと、
(d)前記プロングが略前記ハンドル方向に向いた状態のまま、前記ステープルを後尖に隣接する弁輪に埋め込み、前記ステープルが埋め込まれた場所で前記組織を収縮させるステップと、
(e)前記ステープラを再び折り曲げ、前記ステープリングヘッド部に別のステープルを再装填するステップと、
(f)前記再装填されたステープラを展開し、前記埋め込まれたステープルに隣接させて別のステープルを埋め込むステップと、
(g)ステップ(e)及び(f)を繰り返し、前記僧帽弁の締まりが改善されるように前記僧帽弁輪の形状を適切に変更するステップと、
(h)前記ステープラを再び折り曲げ、前記患者の心臓から抜き取るステップと、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[001] 本出願は、2013年11月4日出願の米国出願第61/899,654号の利益を主張し、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
[002] 本出願は、人体内で外科ステープリングを行うための方法及び装置、特に、人間の心臓内の腔にアクセスし、例えば、心臓が鼓動している間にステープリングを行うことによって心室腔内で心臓弁の病変を修復するなどの低侵襲外科的処置を行うための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0003】
[003] 人体内で経皮的低侵襲手術を行うための装置が種々開発され、また、そのような処置のためのステープリング装置が種々開発されている。これらは、例えば、Grimesに付与された米国特許第6,312,447号に示されるものなど、形状記憶ステープルを採用しているものが多い。その他のツール、例えば、Ainsworthらに付与された米国特許第8,157,719号に開示されるものなどが、人間の心臓の腔内でステープリング装置の操作が行われる経皮的低侵襲心臓手術のために提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
[003] この技術分野は、この10年で飛躍的な進歩を遂げてきたが、かかる装置の改良がさらに継続的に求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[004] 有利には、ステープラは、ステープラのホルダよりもさらにハンドルから離れたステープラのホルダのヒンジ及び/又は回転接続部を有することができる。また、有利には、このような構成によって、概してヒンジ及び/又は回転接続部から離れハンドルに向かう方向にステープルを挿入することができる。ヒンジが比較的離れていることによって、ステープラヘッドにかかる力の大部分をハンドルの前方方向に略平行かつ逆向きにすることができる。つまり、かかる力はステープラヘッドを略ユーザ方向に引き寄せる。これによって、ステープルのプロングがクラウン、すなわち上部よりもユーザに近くなるようにステープルを組織に適用することができ、心尖の心臓への入口点が底部にあるために有利であり、プロングが心尖の方向を向くようにステープルを挿入することができる。
【0006】
[005] 外科用ステープラは、経心尖経路、又は心臓壁に作られた他の何らかの開口部を通る入口のいずれかを経由して患者の心臓の所望の心腔に効果的に送達できるように十分小さなサイズで作ることができる。例えば、ステープリング装置を心臓の左心房に送達することは、僧帽弁の弁輪形成を行う前に行うことができる。外科用ステープラは、先に挿入されたガイドワイヤに沿って包囲シース内に包まれた状態で所望の心腔に送達されることが好ましい。所望の場所に到達したらステープリング装置を心腔内でシースから露出させ、所望の処置、例えば、ステープリングを行って僧帽弁輪の組織を収縮させ、そして有利には弁の形状を変えて逆流を最小限に抑え、再び完全に作動可能にすることなどに影響を及ぼし得る。
【0007】
[006] ステープラ設計は、ハンドルから先端側に延びる細長いバレルの先端で本体にヒンジ接続されたステープリングヘッドを備える。ヘッドは、ハンドルの基端を向いた硬くて先の尖ったプロングで終端する2本の脚を有する略M字形の外科用ステープルを1つ保持するための機構を備える。ハンドルのバレルは、後にステープリングヘッドに個別に装填することができる外科用ステープルのマガジンを含むことが好ましい。
【0008】
[007] 説明するステープラは、一対の肩に対する加力がクラウンコネクタの下面をアンビルに押し付ける、Simonらに付与された米国特許第5,725,554号に一般に示されるタイプのM字形外科用ステープルを埋め込むように適合されており、このステープラ設計の原理は、形状記憶ステープルを使用する装置を構成するように適合されてもよい。特に、説明するステープラは、互いに相互接続されて鎖を形成する少なくとも1本の脚から側方に延びるリングコネクタを有する米国特許第8,475,491号に示される一般的なタイプのステープルを埋め込むように適合されている。
【0009】
[008] ステープリングヘッドは、弁輪の組織に突刺可能な位置でステープルのプロングを露出させるのに十分なほどハンドルのバレルの長手軸から離れるように旋回可能である。弁輪形成処置では、プロングは、基端側、すなわち略ハンドルに戻る方向を向いた姿勢を保つ。なぜなら、ステープリングヘッドの旋回点は、ハンドルからステープリングヘッドよりも先端に位置するためである。施術者は、ステープリング装置を操作してステープルを弁輪に沿って所望の場所に位置決めし、ステープルはその場所で弁組織を収縮させるように埋め込まれる。’491特許に例示されているような相互接続されたステープルを使用することには、弁輪を収縮させるだけではなく、非相互接続のステープルを使用する場合にステープル間の組織が時間が経つにつれて伸びるために起こりうる後の組織の再構築を妨げるというさらなる利点がある。
【0010】
[009] 必要に応じてステープル脚の間の距離は、その特定のステープルの埋込時に発生する組織の収縮を所望の量に設定するために、組織に突き刺す前に、例えば、ステープリングヘッドに装填されている間に変えることができる。好ましくは、ステープリングヘッドは、例えば、ハンドルの長手軸と略一直線の最初の停止時位置に戻り旋回することにより心腔内の適所で再装填可能であり、1つのステープルをマガジンからプッシャにより把持し、略長手軸に沿って摺動させ、ステープリングヘッドへ送出することができる。ステープリングヘッドが、ハンドルの先端にある本体部と並列する最初の停止時姿勢から、好ましくは少なくとも約80度旋回可能であることに加えて、ヘッドは、旋回した後ステープラのバレル自体もそうであるようにその軸回りに両方向に回動可能である。
【0011】
[0010] 1つの特定の態様では、外科用ステープラは、中心軸を有する前方に延びるバレルを有する操作ハンドルと、バレルの先端にあるステープリング装置とを備え、ステープリング装置は、ステープリングヘッド部と、ステープラ本体部と、これら2つの部品を旋回可能に相互接続するヒンジ接続部と、プロングを各端に有する2本の脚を有する略M字形の外科用ステープルとを備え、ステープリングヘッド部は、そのような外科用ステープルを1つ保持し、患者の組織に穿刺した後2本の脚を互いの方向に動かし組織を収縮させる安定した最終位置に到達させることによってステープルを組織に埋め込む機構と、ステープラ本体部と並列する停止時位置から、略基端方向にステープルを組織へ埋め込むための動作位置へ少なくとも約15度までステープリングヘッド部を旋回させる駆動機構とを備える。
【0012】
[0011] 別の特定の態様では、本発明は、中心軸を有する前方に延びるバレルを有する操作ハンドルと、バレルの先端にあるステープリング装置とを備え、ステープリング装置は、ステープラ本体部と、本体部に旋回可能にヒンジ接続されたステープリングヘッド部と、プロングを各端に有する、基端側を向くように配向された2本の脚を有する外科用ステープルとを備えた外科用ステープラであって、ステープリングヘッド部は、そのような外科用ステープルを1つ保持し、患者の組織に穿刺した後、2本の脚を互いの方向に組織を収縮させる安定した最終位置に動かすことによってステープルを組織に埋め込む機構と、本体部と並列する停止時位置から、略基端方向にステープルを組織へ埋め込むための動作位置へ少なくとも約15度までヘッド部を旋回可能な駆動機構とを備える外科用ステープラを提供する。
【0013】
[0012] さらに別の特定の態様では、本発明は、前方に延びるバレルを有するハンドルと、ステープラ本体部と、ステープラ本体部に旋回可能にヒンジ接続され、各端にプロングを備え旋回点より基端側の位置に配置された2本の脚を有する外科用ステープルを1つ保持し、患者の組織に穿刺した後2本の脚を互いの方向に組織を収縮させる安定した最終位置に動かすことによってステープルを組織に埋め込む機構を備えたステープリングヘッド部とを備えた、バレルの先端にあるステープリング装置と、複数の外科用ステープルを収容するバレル内のマガジンと、マガジンから外科用ステープルの1つを取り出し、ステープリングヘッド部がステープラ本体部と隣接する停止時並列位置に旋回する時にプロングがハンドルの方向を向いた状態でステープルをステープリングヘッド部に送出することができる機構と、ステープリングヘッド部をステープラ本体部と並列する停止時位置から、略基端方向にステープルを組織へ埋め込むための動作位置へ少なくとも約15度まで旋回可能な機構とを備えた外科用ステープラを提供する。
【0014】
[010] さらに別の特定の態様では、本発明は、患者の漏れのある僧帽弁を修復する方法であって、(a)細長い本体を有するハンドルと、ハンドルの方を向く方向に配向されたプロングが配置された外科用ステープルを保持するステープリングヘッド部とを有する内視鏡外科用ステープラを、細長い本体を折り曲げた状態で、経心尖経路を通って患者の心臓の左心室に挿入するステップと、(b)ステープラを僧帽弁の弁尖の間の弁開口部を通して左心房へ移動させるステップと、(c)ステープラを展開してステープリングヘッド部を露出させるステップと、(d)プロングが略ハンドル方向を向いた状態のままステープルを後尖に隣接する弁輪に埋め込むことにより、ステープルが埋め込まれた場所で組織を収縮させるステップと、(e)ステープラを再び折り曲げ、ステープリングヘッド部に別のステープルを再装填するステップと、(f)再装填されたステープラを展開し、埋め込まれたステープルに隣接させて別のステープルを埋め込むステップと、(g)ステップ(e)及び(f)を繰り返し、僧帽弁の締まりが改善されるように僧帽弁輪の形状を適切に変化させるステップと、(h)ステープラを再び折り曲げ、患者の心臓から抜き取るステップと、を備えた方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】[011] 通常最初に挿入され、動作位置に外科用ステープラを誘導するために使用されるガイドワイヤに関連して示された本発明の種々の特徴を含む外科用ステープラの一実施形態を示す斜視図である。
【
図1A】[012] 反対側から示した
図1と同様の斜視図である。
【
図2】[013] ガイドワイヤがなく、かつフランジ付きシースがその後退位置に示された
図1の外科用ステープラの斜視図である。
【
図3】[014] バレルを時計回りにわずかに回転させた
図2の外科用ステープラの先端の拡大サイズの部分斜視図である。
【
図4】[015] バレルを時計回りにさらに回転させた
図3と類似の斜視図であり、外科用ステープラの細長いバレルの軸に対してステープリングヘッドを約20度の角度旋回させたステープラの先端を示す。
【
図5】[016] 約40度の角度に旋回させた
図4と類似の斜視図である。
【
図6】[017] 約65度の角度に旋回させた
図5と類似の斜視図である。
【
図7】[018] ステープリングヘッドの端部を時計回りに約20度回動させた
図6と類似の斜視図である。
【
図8】[019] 端部を時計回りにさらに約60度まで回動させた
図7と類似の図である。
【
図9A】[020] 端部を反時計回りに約90度回動させた
図8と類似の図である。
【
図9B】[021]
図9Aに示したステープラの先端を反転させ、反対面を見た斜視図である。
【
図10】[022] 埋込後にわずかに引き抜かれたステープリングヘッドと、埋め込まれたステープルを概略的に示す
図9Bと類似の図である。
【
図11】[023] 端部がゼロ位置に戻り回動し、停止時位置へと戻り旋回する途中の状態を示す
図10と類似の図であり、埋め込まれたステープルの位置を引き続き概略的に示すとともに、最も先端にあるステープルのマガジン内での位置を概略的に示す。
【
図12】[024] ステープリングヘッドが本体部と並列し、再装填のためにマガジンからステープルを受け入れている過程を示す
図11と類似の図である。
【
図13】[025] 再装填されたステープリングヘッドを示す
図12と類似の図である。
【
図14】[026] 停止時位置から旋回後の再装填されたステープルを保持したステープリングヘッドを示す
図5と類似の図である。
【
図15】[027] 端部が回動し、ステープリングヘッドが保持するステープルのプロングの一方が、埋め込まれたステープルの右側にあるリングと位置合わせされるように旋回された
図14に示すステープラの先端の図である。
【
図16】[028] プロングの一方がリングを通った後、ステープルのプロングが心臓の弁組織へ最初に突き刺さった状態を示す
図15と類似の図である。
【
図17】[029] 埋め込まれた2つのステープルと、わずかに引き抜かれたステープリングヘッドを概略的に示す
図10と類似の図である。
【
図18】[030] 側方リングが
図11〜14に示すものと反対側になるように配向されたステープルが再装填されたステープリングヘッドを示す
図11の姿勢を有する図である。
【
図19】[031] 脚が最初に埋め込まれたステープルの左側にあるリングを通って埋め込まれるステープルを示す
図16と類似の図である。
【
図20】[032] 埋め込まれた3番目のステープル、及びわずかに引き抜かれたステープリングヘッドを示す
図17と類似の図である。
【
図21】[033] 埋込後に停止時位置に戻り旋回したステープリングヘッド、及びバレルのステープリング装置の先端が部分的にシース内に相対的に後退した状態を示す図である。
【
図22A】[034] 外側縁に沿ったガイドワイヤが通るトンネルを示す
図1に示すシースの部分斜視図である。
【
図22B】[035] トンネルへの小さな入口と、シースの基端付近にあり、シースが経心尖経路にある間にステープラのバレル端を引き抜く場合に血液の流出を防ぐ内部一方向弁とを示す
図22Aのフランジ付きシースの基端を見た斜視図である。
【
図23】[036] バレルを概略的に示す
図1のステープラの拡大部分斜視図である。
【
図24】[037]
図1のステープラの先端が経心尖開口部から人間の心臓の左心室(LV)に進入する様子を示す概略図である。
【
図25】[038] 誘導ガイドワイヤが僧帽弁の弁尖の間を延びて左心房(LA)に達するまでステープラがさらに挿入された
図24と類似の図である。
【
図26】[039] シースの先端を僧帽弁の弁尖の間を通ってLAに到達するように挿入し、ガイドワイヤをシースの側面に沿ってトンネルに相当距離引っ込めた
図25と類似の図である。
【
図27】[040] ガイドワイヤがトンネルへ完全に引き込まれ、シースがステープラのバレル上を相対的に移動することによりステープラの先端をLA内で出現させた
図26と類似の拡大部分図である。
【
図28】[041] ステープラのバレルに沿ってシースが相対的に十分に移動することによって、ステープリング装置がLA内で完全に露出した状態を示す
図27と類似の図である。
【
図29】[042]
図9Bに示すものと類似の動作位置に旋回したステープリングヘッドを示す
図28と類似の図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[043]
図1は、基端に把持部15を備えて形成された操作ハンドル13と、操作ハンドルから前方に延びる細長いバレル部17とを備える外科用ステープラ11を示す。外科用器具は、患者の胸部及び心臓内に経皮的に挿入されるため、バレル部17は、これを覆い、保護するためのフランジ付きシース、すなわちイントロデューサ19を有することが好ましい。外科用ステープラ11は、例えば、心尖を通る患者の胸部の切開部から、左心室(LV)、次いで僧帽弁を通って左心房(LA)へ挿入されるように設計されている。この基本的なステープリング装置は、心臓内の他のステープリング処理に使用可能で、同様に他の所望の特定の内視鏡ステープリング処置のために開発可能であることが理解されよう。カテーテル内での使用に適している場合には、シースを用いることはできない。
【0017】
[044] バレル17の先端のステープリング装置21は、シース19に入れられて保護され、ヒンジ部又は接続部27によりステープラ本体25に旋回可能に接続されたステープリングヘッド23を備える。フランジ付きシース19が基端方向に後退するように相対移動が行われると、先の尖った分割チップ29が広がり、ステープリング装置21が出現する。シースの長手軸に垂直に配向された平らなフランジ31は、その基端に位置する。フランジ31によりステープラの細長いバレル17に対するシースの操作が可能となるが、ステープラのバレルに対してシースを操作する他の装置を代替的に使用してもよい。シース19はまた、その全長に沿って延びるガイドワイヤ34を都合よく通すことができるトンネル33を備えて形成され、トンネル33への小さな入口35をフランジ付きシースの基端に見ることができる(
図22B参照)。シースはまた、その目的が後で説明される内部一方向弁37を有する。
【0018】
[045]
図1からステープラの細長いバレル17は位置39に段差を有し、シース19はバレルの径の小さい先端部に摺動可能に収受されることが分かる。したがって、シース19は段差39と当接する
図2に示す位置よりも基端側に引くことはできず、この相対位置でステープリング機構はその動作位置に露出されている。また、シース19及びバレルの長さを安全機能として用いることで、ステープラの先端を僧帽弁からあまりに深く挿入することにより発生し得るLAの上端の損傷を防ぐ。例えば、シースの長さは、フランジ31が患者の皮膚と当接することによりステープラの先端の挿入が制限されるような寸法でもよい。ステープラは、ガイドワイヤをバレルと相互接続しシースを排する設計としてもよいが、保護シース又はイントロデューサが好ましい。
【0019】
[046] ステープリングヘッド23は、1つのステープル41を保持し、埋め込むように設計される。埋込が行われた後、ヘッド23は本体25と並列する「停止時」位置に戻り、そこで先端に形成された本体部25より基端側に位置する細長いバレル17内部の中空部45内に含まれるステープルのマガジン43からステープル47を再装填することが好ましい。
図23から最もよく分かるように、マガジン43は、ステープラの細長いバレル17に設けられた円筒中空部45にある円筒外面でできたカートリッジ内に一連のステープル47を含む。マガジンに装填されている図に示すステープル47は、ステープル41と類似の設計であるが、理由は後で説明するが、ステープルの一方の脚のみから側方に延設されたリングを有する。略M字形のステープル47は、それぞれが先の尖ったプロングで終端する一対の剛脚とクラウンコネクタを備えた基本的に平面状又は平坦な本体を備えて形成される。クラウンコネクタの初期形状は略U字形で、埋め込まれるとU字形が平坦化され略直線形状となる。
図23に示す図には、ステープル47のリングが、マガジン内の各ステープルの左側の脚に取り付けられ、ステープルの本体がバレルの中心線を含むように配向された共通平面内にあり、リングがその面と垂直である様子が示されている。初めに埋め込まれる最初のステープル41は、
図3〜10からよく分かるように左右対称の2つのOリングを有する。この最初のステープル41は、製造者によりステープリングヘッド23に装着されてもよい。マガジン43内の残りのステープル47はすべて、Oリングを1つしか持たない。この左右対称の2つのOリングを有する最初のステープルはまず、僧帽弁後尖の弁輪の中央に配置されることが好ましい。後続のステープルは各側に交互に1つずつ配置することができ、したがって、後尖の弁輪を左右対称に短縮することが可能になる。
【0020】
[047]
図1及び1Aは、本発明の種々の特徴を具現化する外科用ステープラ11を両側から示す。先端にフランジ付きシース19を備え、かつシースの側面に沿ってトンネル33を通って延び、その先端から突出するガイドワイヤ34を備えたステープラ11が図示されている。
図2に示す外科用ステープラ11には、ガイドワイヤがなく、シース19とステープラの細長いバレル17とが相対移動した結果、先端がシースの分割端29から突出している。このような移動は、シースの基端にある平坦なフランジ31により促進され、手動による引込、又はシースの先端29が挿入される経皮的入口スリットと隣接する患者の胸部の皮膚にフランジを押し付けることによって行われてもよい。外科用ステープラ11の挿入は、後でより詳しく説明するように通常先に導入されたガイドワイヤ34の後に続く。
【0021】
[048]
図2には、シース19がハンドルの細長いバレル部17の段差39まで後退し、バレルの先端にあるステープリング装置21が露出する状態が示されている。ステープリング装置21は、ステープラ本体部と並列する
図2に示す停止時位置から外側へ旋回できるようにバレルの端でヒンジ接続部27によりステープラ本体部25に接続されたステープリングヘッド部23を備える。
図3は、
図2とは異なる角度から見た外科用ステープラの先端の拡大部分斜視図であり、2本の脚の端にあるプロングがハンドルの把持部15がある基端側を向いたステープリングヘッド23に保持されたステープル41を示す。
【0022】
[049]
図4は、ステープラ本体部25との並列位置から約15度旋回したステープリングヘッド23を示し、ステープリングヘッド及びステープル41の端にあるプロングが露出している。
図5は、バレルの長手方向の中心線に対して約30度の角度にさらに旋回した状態を示し、ステープル41とステープリングヘッドの一部が停止時位置において収容されるステープラ本体部25内部にあるキャビティ49を示す。ステープリングヘッド23の旋回動作は、操作ハンドルにより操作ハンドルの把持部15にある刻み付きホイール51を回転させることによって行われる。この操作ハンドルの把持部15の上辺にある刻み付きホイール51は、細長いバレル17の全長を横断する機構を介して接続しステープリングヘッド23を旋回させる。
【0023】
[050]
図6には、ステープリングヘッド23が本体部と並列する停止時位置から約60度に旋回した状態が示されている。ステープラは、ステープリングヘッド23が少なくとも約60度旋回し、また、設計目的により所望の弁輪形成処置を促進するためには、好ましくは少なくとも約80度旋回する設計とされている。しかし、ある特定の内視鏡的ステープリング処置にとって望ましい場合には、ステープラは、ステープリングヘッドを最大180度旋回させる設計、すなわち、バレルから先端側に一直線に延びるようにしてもよい。外科用ステープラ11の動作によって、概ねステープリングヘッド23が少なくとも約15度、好ましくは少なくとも約25度旋回することによって、ステープルを細長いバレルから十分にオフセットして配置し、隣接するバレルの存在から干渉されずにステープルを略基端方向に埋め込むことができる。
【0024】
[051]
図7から分かるように、ステープリングヘッド23は、ベース部53及び回動可能な端部55を備えて形成され、この図では端部はステープリングヘッドの停止時姿勢における最初のゼロ位置から時計回りに約20度回動している。ステープル41を保持した端部55のベース部53に対する回動は、操作ハンドルの把持部15の左側に位置し、同様にバレル17を通って外科用ステープラの先端にあるヒンジ部27へと延びるリンク機構を含む別の刻み付きホイール57により制御される。
図8は、ゼロ位置から時計回りに約60度までさらに回動した状態を示す。回動はゼロ位置から時計回り又は反時計回りのいずれの方向にも可能であり、
図9Aはステープリングヘッド23の端部55がゼロ位置から反時計回りの方向に約90度回動した状態を示す。
図9Bはステープラの先端を
図9Aと逆向きで示す。なお、硬性ステープリングヘッド23のステープル41は、依然としてそのプロングが基端側、すなわち、概ね操作ハンドルの把持部15に戻る方向を向くように配向されている。組織にステープリングを行う際に硬性ヘッド23をこのように配向することで、プロングが正確な力で組織に押し付けられるようにステープルにかかる力を制御することができる。施術者は、ステープリングヘッド23が概ねハンドル方向に向けられた状態でステープリングヘッドが組織に隣接する時、操作ハンドル13を一定の正確な動作でバレルの中心線に対して(逆向きではあるが)鋭角に注意深く引くことができる。その結果、所望の力ベクトルが容易に生成され、基本的にステープルが横向きの状態で硬性ステープリングヘッド23及び装填されたステープルが組織方向に、好ましくは組織表面に対して略垂直に引っ張られる。
【0025】
[052]
図10は、ステープル41が組織に埋め込まれステープリングヘッド23がわずかに引き抜かれた後の外科用ステープラの先端を示す。埋め込まれたステープル41は、中央のクラウンコネクタ61が真っ直ぐになり、脚59が折り曲げられてプロングが互いに隣接した状態で概略的に示されている。ステープル41は、2本の脚59からそれぞれ側方に延設された2つのリング63を有し、これらのリングは’491特許に開示されているように所望の弁輪形成を達成する相互接続されたステープルの鎖を形成するために使用される。
図10のステープリングヘッド23は、M字形のステープルを旋回クランプ67によりホルダ内に収容及び保持するホルダ部65を露出する開位置にある状態が示されている。クランプ67は、ステープルの埋込後に移動する解放位置にある状態が示されている。
【0026】
[053]
図11には、ステープリングヘッドの端部55がゼロ位置に戻り回動し、ヘッド23が停止時の並列位置に戻りつつ本体部25方向に旋回した状態のステープラが示されている。クランプ67は、停止時位置に戻る間解放すなわち開位置のままである。
【0027】
[054]
図23から最もよく分かるように、中空バレル17は、円筒ホルダ、すなわちマガジン43に配置され、それぞれが好ましくはバレルの中心軸を含む共通平面にその本体を横たえるように整列された複数のステープル47を備える。マガジン内のステープル47は、1本の脚から側方に配設された1つのリングのみを有する。
図23では、マガジンは、リングがバレル内部でステープルの左側の脚に取り付けられるように配向されている。施術者に便利なように、ステープラ11は、リングを有するステープルの脚がステープラのバレル内でステープルの右端に位置するようにマガジン43を180度回転できるように設計されている。マガジンの180度回転は、操作ハンドルの把持部15の先端近くのスライド69により行われる。スライド69は、把持部15の直径を横切るように移動でき、スライド69の端が把持部の左側から突出する時、
図23に示すように、ステープルは、リングを有する脚が左側となるように配向される構成である。スライドが把持部の右側表面から突出するようにスライドを内向きに右方に押すと、マガジンは180度回転し、今度はリングが右側の脚に取り付けられる。これによって、最初のOリングを2つ有するステープルの両側に左右対称に配置できるように、固定された送出装置全体を180度回転させる必要性がなくなる。
【0028】
[055]
図11は、リングを有する脚がステープルの左側に置かれたマガジン内で最も先端にあるステープル41を概略的に示す。示されたステープルは、M字形のステープルであり、そのクラウンコネクタは、はじめから後で説明される成形機構による動作により埋め込まれるまでは略U字形に形成されている。
【0029】
[056]
図12は、停止時位置に戻ったステープリング装置21を概略的に示す。
図12では、バレルは、
図1の姿勢から180度回転している。把持部15に対するバレル17全体の360度回転は、把持部の先端にある横置きされた刻み付きホイール72を回すことによって行われる。この姿勢では、リングを有する脚は把持部15に対して右側にある。ステープル47がステープルの基端側対向面と係合するプッシャを備える取出及び装填機構73により、ステープリングヘッド23のホルダ部65に引き渡されている状態が示されている。この位置では、クランプ67はステープル47を受け取るために依然として開位置にある。
【0030】
[057]
図13では、ステープル47の引渡が完了し、把持部15の下面のスロットに位置するレバー74により操作される取出及び装填機構73により、ばね負荷されたクランプ67が閉じられ、打ち金が起こされ、ステープル47を埋め込む準備をするためにばね負荷された成形機構71に負荷がかけられる。クランプ67は、ステープル47のU字形クラウンコネクタの下面に隣接するように、移動して装填状態でホルダ部65の対向面と当接するアンビル部75をその端に備える。
【0031】
[058]
図14は、本体部25から旋回して離れ、把持部15に対して基端側を向いたステープルのプロングを露出する(ステープル47が装填された)ステープリングヘッド23を示す。
図15は、リングを有しない脚が、埋め込まれたステープル41の右側にあるリング63の中心と一直線になるように、ステープリングヘッド23をさらに旋回し、ベース53に対して端部55を回動してステープル47を調整した状態を示す。
図16は、その後、ステープル47の脚がリング63を通り、次に患者の心臓の弁組織を突き刺すように施術者が外科用ステープラ11を移動させた状態を示す。
【0032】
[059] ステープリングヘッド23には、ステープル47の2本のプロングが定められた最小の圧力閾値を超えることにより図のように心臓の弁組織に左右対称に突き刺さっているかどうかを判断するセンサが配置されている。このようなセンサは、機械的又は電子的なものであってもよく、トリガ機構77に信号を送信するように設計されている。トリガ機構77は、ハンドルの把持部15の両側に略同軸上に配置された一対のトリガ79を備え、トリガ機構77を作動させるためには反対側に配置された2つのトリガ79を同時に押すことが必要である。一対の同軸トリガ79をこのように空間的に配置することによって、埋込動作の際に施術者が操作ハンドルを不注意にわずかに動かしてしまうことを積極的に防止する。トリガ機構77は、M字形ステープル47の肩の上面を前方に押すばね負荷された成形機構71を作動させ、下面がアンビル75に支えられたU字形のクラウンコネクタを直線コネクタに整形する。この時、2本の脚は互いを通過し、ステープル47が最初に埋め込まれたステープル41と相互接続された
図17に示す姿勢となる。
【0033】
[060]
図18は、ステープリングヘッド23がバレルの先端の本体部25との並列状態に戻り、別のステープル47が装填された状態を示す。
図18では、ステープルは
図14のステープリングヘッドに保持されたステープル47から180度に方向づけられている。したがって、ステープル47は、ステープルのリングが
図12及び13に示すものと反対側の脚に取り付けられるように180度回転後にマガジン43からステープリングヘッド23に装填されている。
【0034】
[061]
図19は、施術者がステープラ11を操作して、ステープル47の1本の脚が最初に埋め込まれたステープル41の左側にあるリング63を通って突出し、心臓の弁輪への埋込をすぐに行える状態を示す。
図20は、埋込が完了し、ステープリングヘッド23をわずかに取り外した状態を示す。この図は、最初のM字形ステープルが収容されるホルダ部65をよく示し、また、M字形ステープルを最終的な埋込形状に変形させる時に成形機構71の一部が移動するトラック81を示す。最後に、
図21は、ステープリングヘッド23が停止時の並列位置に移動し、バレルが最初に基端方向に引き抜かれた後の状態を示す。その結果、フランジ付きシース、すなわちイントロデューサ19は、ステープラの先端を僧帽弁の弁尖の間から引き抜く準備としてステープリングヘッドを覆い始める。
【0035】
[062] 以上で示した外科用ステープラ11は、多様な内視鏡用途に適用可能であり、プロングを基端側、すなわち、ステープラのハンドルグリップ側に略戻る方向に、特にステープラの長手軸に対して約45度以下の角度で配向したステープルを埋め込むことができるという概念は独特であると思われる。しかし、この発明概念の種々の特徴を具現化する図面に示された外科用ステープラ11は、心臓弁、特に病的状態に陥りやすい二葉弁である僧帽弁の弁輪形成を達成するために特に設計されている。説明する外科用ステープラ11の特定の設計によれば、鼓動している心臓の心尖を経由して左心室(LV)にアクセスすることが有利とされる。このような侵入に備えガイドワイヤ34は、通常まず心尖に通された中空針を通じて左心室(LV)に挿入され、例えば、国際出願公開第WO2013/027107号に開示されるような装置が使用されてもよい。ガイドワイヤ34を準備し、その基端をシースの先端に近い位置から基端フランジ31の開口部35まで延びるフランジ付きシース19の側壁に設けられたトンネル33に送り込む。
【0036】
[063] シース19を外科用ステープラの先端のステープリング装置21を覆った状態で準備し、
図24に概略的に示すように心尖を経由して左心室に挿入する。ガイドワイヤ34は、ワイヤの先端85が折れ曲がって前向きの曲面をもたらし、僧帽弁の弁尖87間をスムーズに通過して左心房に侵入できるような記憶能力を有するように形成される。ガイドワイヤ34の曲がった先端85を左心房(LA)に入れるためのステープラの挿入は
図25に示されている。このような動きはすべて、X線透視法、又は、好ましくは連続的な3次元リアルタイム心エコー法により誘導される。
【0037】
[064] 次に、ステープラ11をガイドワイヤ34に沿って移動させ、
図26に示すようにシースの先端が弁尖87間を摺動して左心房に侵入する。いったんシースの先端29が左心房に留まると、ガイドワイヤはシースの側面に沿って延びるトンネル33へ引き込まれる。
図26はそのような部分的な引込を示している。ガイドワイヤ34が引き込まれた状態で、ステープリング装置21がシース19の開放された分割チップ29の先端から出現し始めるように、
図27に示すようにシース19に対してステープラの細長いバレル17が移動する。
【0038】
[065]
図28は、フランジ付きシース19がバレルの段差部39辺りにフランジ31が留まる位置まで引かれた状態を示す。ステープリング装置21は、この位置で完全に露出され、左心房内に留まっている。シースの分割端29の先端は、僧帽弁尖87の領域辺りに位置する。ステープリングヘッド23は、この場所に到達した後ステープラ本体25との停止時並列位置から旋回して離れ、端部55は、後尖の中間辺りで僧帽弁輪と位置合わせされるように2つのリング63を有するステープル41を配置するように回動する。ステープル41は、
図9B及び10に関して既に説明したように、この場所に埋め込まれ、次いでステープリングヘッド23にはマガジン43から一度に1つのステープル47が装填され、
図15〜20に示す工程を踏んで相互接続されたステープルの鎖が作成される。
【0039】
[066] ステープルを3つ埋め込むことだけが説明されているが、施術者は、米国特許第8,123,801号及び’491特許に概ね説明されているように、弁輪の所望の収縮量を達成するために中央のステープル41の各側に弁輪に沿ってステープル47を所望の数だけ埋め込むであろうことを理解されたい。処置の目的は、弁尖87が再び接合(co‐apt)し、効果的に弁を閉じ、左心室のポンプ動作中の逆流を防ぐ、又は少なくとも最小限に抑えるように僧帽弁の病的状態に対抗することである。
【0040】
[067] ここで外科用ステープラ11は、必要に応じてステープルの2本の脚の端にある先の尖ったプロング間の間隔を効果的に変えることができるクリンピング機構89を備える。機構89は、ステープリングヘッド23の端部55のホルダ部65と関連して配置され、ステープルの硬い脚の外側面に内向きの側圧をかけ、互いの方向に変形させるように設計される。例えば、ステープルはステンレス鋼又は同等の剛性を有するCo‐Cr合金から作られてもよい。例えば、外科用ステープラに最初に装填されているステープル41及び47は、鋭い先端が互いから約7.5mm離間するように形成されてもよく、クリンピング機構89は、例えば、埋め込まれて真っ直ぐになった形状のクラウンコネクタとほぼ同じ長さの約5.5mmに間隔を短くすることができる。クリンピング機構は、おそらく
図23から最もよく分かるようにハンドルの把持部15の刻み付きホイール51及び57の間の領域に位置するスライド91により作動する。スライド91を
図23に示す停止時位置から基端側に動かすことによって、ハンドルの細長いバレル部17を通って延びるリンク機構を介して後にステープリングヘッド23に装填されるステープルの脚を横方向内側に曲げる。各ステープルのプロングを、例えば、約7.5mmと5.5mmの間の所望の距離に設定できるため、このようなクリンピング機構を外科用ステープラ内部に含めることによって、施術者は各ステープルを用いて所望の正確な組織収縮量を実現して、僧帽弁輪の再形成を達成し、効果的な弁輪形成を行うことができる。この弁輪形成手術は、2つのリング63を有する最初に埋め込まれたステープル47が、弁輪の後尖の中央に位置する処置に関連して説明されているが、必要であればステープルを三角(trigon)近くの所望の鎖のどちらかの端に配置してもよく、また、リングが1つのステープル47のみを使用してもよいことを理解されたい。例えば、鎖は1つの三角部付近から始まり、施術者が所望の収縮量を得られるまで僧帽弁輪に沿って一方向に弓形に延びてもよい。
【0041】
[068] また、外科用器具は、鼓動している心臓の手術が行われている間に、患者があまりに長時間にわたる僧帽弁閉鎖不全症に耐えられなくなるためにステープル埋込処置の中断を望む場合に、患者の体中に自然な血流が回復することを可能に構成できることを理解されたい。マガジンからステープル47をいくつか埋め込んだ後、(
図21に示すように)ステープリング装置をシース内部に格納し、回復が達成される十分な時間の間左心室に引っ込めることができる。その後、ガイドワイヤ34は、ステープラをその動作位置に戻るように誘導する準備として、再びトンネル33内の場所から
図25から分かるように僧帽弁尖間に向けて左心房へと延ばすことができる。どんな理由であれ、外科的処置の途中でステープラを除去する必要がある場合には、LVに延びているシース19及びガイドワイヤ34を留置しつつ、細長いバレルを除去することができる。内部一方向弁37は、代わりのステープラを用意してガイドワイヤに沿ってシースに挿入する間の血液の流出を防ぐ。
【0042】
[069] 以上のように弁輪形成を行う発明を、発明者が現在理解している最良の形態で説明及び図示してきたが、添付の特許請求の範囲に規定された本発明の範囲から逸脱することなく、示された装置に対して様々な変更及び修正を行うことが理解されよう。本発明の種々の特徴は、添付の特許請求の範囲において強調される。
【国際調査報告】