(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
本開示は、グラム陰性菌種から得ることができる、または得られるHIBP表面受容体タンパク質のC−ローブドメインまたはN−ローブドメインを含むポリペプチドを含む免疫原性組成物を提供する。該HIBP表面受容体タンパク質は、宿主鉄結合タンパク質に結合することができないように修飾されている。これらの免疫原性位置を作製および使用して、動物およびヒトワクチンを調製する方法も提供される。
グラム陰性菌種から得ることができるHIBP表面受容体ポリペプチドを含む免疫原性組成物であって、前記ポリペプチドが宿主鉄結合タンパク質に実質的に結合することができないように修飾されている、免疫原性組成物。
グラム陰性菌種から得ることができるHIBP表面受容体タンパク質のC−ローブドメインまたはN−ローブドメインを含むポリペプチドを含む免疫原性組成物であって、前記ポリペプチドが宿主鉄結合タンパク質に実質的に結合することができない、免疫原性組成物。
グラム陰性菌種から得ることができるHIBP表面受容体タンパク質のC−ローブドメインを含むポリペプチドを含む免疫原性組成物であって、前記ポリペプチドが宿主鉄結合タンパク質に実質的に結合することができない、免疫原性組成物。
前記C−ローブドメインおよびN−ローブドメインが、複数のループドメインにより接続された複数のβ鎖を含み、前記複数のループドメインの少なくとも1つのループドメインが、修飾されている、請求項2に記載の免疫原性組成物。
前記C−ローブドメインおよびN−ローブドメインが、複数のループドメインにより接続された複数のβ鎖を含み、前記複数のループドメインの少なくとも2つのループドメインが、修飾されている、請求項2に記載の免疫原性組成物。
前記HIBP表面受容体ポリペプチドが、アクチノバシラス属、ナイセリア属、ヘモフィルス属、マンヘミア属、ヒストフィルス属、パスツレラ属またはモラクセラ属に属する菌種から得ることができる、請求項1に記載の免疫原性組成物。
前記C−ローブドメインが、SEQ.ID NO:5;SEQ.ID NO:6;SEQ.ID NO:22;SEQ.ID NO:33;SEQ.ID NO:34;SEQ.ID NO:119;SEQ.ID NO:125;SEQ.ID NO:179〜SEQ.ID NO:195;SEQ.ID NO:213〜SEQ.ID NO:218;SEQ.ID NO:230;SEQ.ID NO:232;SEQ.ID NO:234〜SEQ.ID NO:278;およびSEQ.ID NO:288〜SEQ.ID NO:292に示された群から選択されるC−ローブドメインである、請求項2に記載の免疫原性組成物。
前記N−ローブドメインが、SEQ.ID NO:8;SEQ.ID NO:10;SEQ.ID NO:24;SEQ.ID NO:26;SEQ.ID NO:36;SEQ.ID NO:38;SEQ.ID NO:121;SEQ.ID NO:127;SEQ.ID NO:229;SEQ.ID NO:231;およびSEQ.ID NO:233に示された群から選択されるN−ローブドメインである、請求項2に記載の免疫原性組成物。
前記HIBP表面受容体ポリペプチドが、アクチノバシラス・プルロニューモニエ、アクチノバシラス・スイス、ヘモフィルス・インフルエンザ、ヘモフィルス・パラスイス、ヘモフィルス・ソムナス、マンヘミア・ヘモリティカ、モラクセラ・カタラーリス、モラクセラ・ボビス、ナイセリア・ゴノレア、ナイセリア・メニンギティディス、マンヘミア・グルコシダおよびビベルスティニア・トレハロシからなる細菌の群から得ることができるHIBP表面受容体から得ることができる、請求項11に記載の免疫原性組成物。
前記菌種が、アクチノバシラス・プルロニューモニエ、アクチノバシラス・スイス、ヘモフィルス・インフルエンザ、ヘモフィルス・パラスイス、ヘモフィルス・ソムナス、マンヘミア・ヘモリティカ、モラクセラ・カタラーリス、モラクセラ・ボビス、ナイセリア・ゴノレア、ナイセリア・メニンギティディス、マンヘミア・グルコシダおよびビベルスティニア・トレハロシから選択される、請求項13に記載の免疫原性組成物。
前記菌株が、アクチノバシラス・プルロニューモニエ、アクチノバシラス・スイス、ヘモフィルス・インフルエンザ、ヘモフィルス・パラスイス、ヘモフィルス・ソムナス、マンヘミア・ヘモリティカ、モラクセラ・カタラーリス、モラクセラ・ボビス、ナイセリア・ゴノレア、ナイセリア・メニンギティディス、マンヘミア・グルコシダおよびビベルスティニア・トレハロシから選択される、請求項14に記載の免疫原性組成物。
前記2つの種が、アクチノバシラス・プルロニューモニエ、アクチノバシラス・スイス、およびヘモフィルス・パラスイスからなる菌種の群から選択されるである、請求項13に記載の免疫原性組成物。
前記修飾される少なくとも1つのループが、L1、L5、L8、L12、L18、L21、L23およびL27からなるループのうちの任意の1つから選択される、請求項4に記載の免疫原性組成物。
前記修飾される少なくとも1つのループが、SEQ.ID:NO42;SEQ.ID:NO44;SEQ.ID:NO46;SEQ.ID:NO48;SEQ.ID:NO50;SEQ.ID:NO52;SEQ.ID:NO54;SEQ.ID:NO56;SEQ.ID:NO58;SEQ.ID:NO60;SEQ.ID:NO62;SEQ.ID:NO64;SEQ.ID:NO66;SEQ.ID:NO68;SEQ.ID:NO70;SEQ.ID:NO72;SEQ.ID:NO74;SEQ.ID:NO76;SEQ.ID:NO78;SEQ.ID:NO80;SEQ.ID:NO82;SEQ.ID:NO84;SEQ.ID:NO86;SEQ.ID:NO88;SEQ.ID:NO90;SEQ.ID:NO92;SEQ.ID:NO94;SEQ.ID:NO96;SEQ.ID:NO98;SEQ.ID:NO100;SEQ.ID:NO102;SEQ.ID:NO104;およびSEQ.ID:NO106からなるループのいずれかから選択される、請求項4に記載の免疫原性組成物。
前記C−ローブドメインおよびN−ローブドメインが、複数のループドメインにより接続された複数のβ鎖を含み、前記複数のループドメインの少なくとも3つのループドメインが、修飾されており、前記3つのループドメインが、表3に示されたループドメインの組み合わせから選択される、請求項2に記載の免疫原性組成物。
SEQ.ID NO:170;SEQ.ID NO:172;SEQ.ID NO:174;SEQ.ID NO:176;SEQ.ID NO:4;SEQ.ID NO:14;SEQ.ID NO:16;SEQ.ID NO:18;SEQ.ID NO:20;SEQ.ID NO:30;およびSEQ.ID NO:32からなる配列群から選択されるHIBP表面受容体タンパク質を含む免疫原性組成物。
SEQ.ID NO:6;SEQ.ID NO:22;およびSEQ.ID NO:40からなる配列群から選択されるHIBP表面受容体タンパク質を含む免疫原性組成物。
SEQ.ID NO:164;SEQ.ID NO:166;およびSEQ.ID NO:168からなる配列群から選択されるHIBP表面受容体タンパク質を含む免疫原性組成物。
前記C−ローブドメインまたはN−ローブドメインが、複数のループドメインにより接続された複数のβ鎖を含み、前記複数のループドメインの少なくとも1つのループドメインが、修飾されている、請求項30に記載の方法。
前記C−ローブドメインまたはN−ローブドメインが、複数のループドメインにより接続された複数のβ鎖を含み、前記複数のループドメインの少なくとも1つのループドメインが、修飾されている、請求項33に記載の方法。
グラム陰性菌種から得ることができるHIBP表面受容体ポリペプチドを含むワクチン組成物であって、前記ポリペプチドが宿主鉄結合タンパク質に実質的に結合することができないように修飾されている、ワクチン組成物。
グラム陰性菌種から得ることができるHIBP表面受容体タンパク質のC−ローブドメインまたはN−ローブドメインを含むワクチン組成物であって、前記ポリペプチドが宿主鉄結合タンパク質に実質的に結合することができない、ワクチン組成物。
グラム陰性菌種から得ることができるHIBP表面受容体タンパク質のC−ローブドメインを含むワクチン組成物であって、前記ポリペプチドが宿主鉄結合タンパク質に実質的に結合することができない、ワクチン組成物。
前記C−ローブドメインおよびN−ローブドメインが、複数のループドメインにより接続された複数のβ鎖を含み、前記複数のループドメインの少なくとも1つのループドメインが、修飾されている、請求項36に記載のワクチン組成物。
前記C−ローブドメインおよびN−ローブドメインが、複数のループドメインにより接続された複数のβ鎖を含み、前記複数のループドメインの少なくとも2つのループドメインが、修飾されている、請求項36に記載のワクチン組成物。
前記HIBP表面受容体ポリペプチドが、アクチノバシラス属、ナイセリア属、ヘモフィルス属、マンヘミア属、ヒストフィルス属、パスツレラ属またはモラクセラ属に属する菌種から得ることができる、請求項35に記載のワクチン組成物。
前記C−ローブドメインが、SEQ.ID NO:5;SEQ.ID NO:6;SEQ.ID NO:22;SEQ.ID NO:33;SEQ.ID NO:34;SEQ.ID NO:119;SEQ.ID NO:125;SEQ.ID NO:179〜SEQ.ID NO:195;SEQ.ID NO:213〜SEQ.ID NO:218;SEQ.ID NO:230;SEQ.ID NO:232;SEQ.ID NO:234〜SEQ.ID NO:278;およびSEQ.ID NO:288〜SEQ.ID NO:292に示された群から選択されるC−ローブドメインである、請求項35に記載のワクチン組成物。
前記N−ローブドメインが、SEQ.ID NO:8;SEQ.ID NO:10;SEQ.ID NO:24;SEQ.ID NO:26;SEQ.ID NO:36;SEQ.ID NO:38;SEQ.ID NO:121;SEQ.ID NO:127;SEQ.ID NO:229;SEQ.ID NO:231;およびSEQ.ID NO:233に示された群から選択されるN−ローブドメインである、請求項36に記載のワクチン組成物。
前記HIBP表面受容体ポリペプチドが、アクチノバシラス・プルロニューモニエ、アクチノバシラス・スイス、ヘモフィルス・インフルエンザ、ヘモフィルス・パラスイス、ヘモフィルス・ソムナス、マンヘミア・ヘモリティカ、モラクセラ・カタラーリス、モラクセラ・ボビス、ナイセリア・ゴノレア、ナイセリア・メニンギティディス、マンヘミア・グルコシダおよびビベルスティニア・トレハロシからなる細菌の群から得ることができるHIBP表面受容体から得ることができる、請求項46に記載のワクチン組成物。
前記菌種が、アクチノバシラス・プルロニューモニエ、アクチノバシラス・スイス、ヘモフィルス・インフルエンザ、ヘモフィルス・パラスイス、ヘモフィルス・ソムナス、マンヘミア・ヘモリティカ、モラクセラ・カタラーリス、モラクセラ・ボビス、ナイセリア・ゴノレア、ナイセリア・メニンギティディス、マンヘミア・グルコシダおよびビベルスティニア・トレハロシから選択される、請求項46に記載のワクチン組成物。
前記菌株が、アクチノバシラス・プルロニューモニエ、アクチノバシラス・スイス、ヘモフィルス・インフルエンザ、ヘモフィルス・パラスイス、ヘモフィルス・ソムナス、マンヘミア・ヘモリティカ、モラクセラ・カタラーリス、モラクセラ・ボビス、ナイセリア・ゴノレア、ナイセリア・メニンギティディス、マンヘミア・グルコシダおよびビベルスティニア・トレハロシから選択される、請求項47に記載のワクチン組成物。
前記2つの種が、アクチノバシラス・プルロニューモニエ、アクチノバシラス・スイス、およびヘモフィルス・パラスイスからなる菌種の群から選択されるである、請求項46に記載のワクチン組成物。
前記修飾される少なくとも1つのループが、L1、L5、L8、L12、L18、L21、L23およびL27からなるループのうちの任意の1つから選択される、請求項38に記載のワクチン組成物。
前記修飾される少なくとも1つのループが、SEQ.ID:NO42;SEQ.ID:NO44;SEQ.ID:NO46;SEQ.ID:NO48;SEQ.ID:NO50;SEQ.ID:NO52;SEQ.ID:NO54;SEQ.ID:NO56;SEQ.ID:NO58;SEQ.ID:NO60;SEQ.ID:NO62;SEQ.ID:NO64;SEQ.ID:NO66;SEQ.ID:NO68;SEQ.ID:NO70;SEQ.ID:NO72;SEQ.ID:NO74;SEQ.ID:NO76;SEQ.ID:NO78;SEQ.ID:NO80;SEQ.ID:NO82;SEQ.ID:NO84;SEQ.ID:NO86;SEQ.ID:NO88;SEQ.ID:NO90;SEQ.ID:NO92;SEQ.ID:NO94;SEQ.ID:NO96;SEQ.ID:NO98;SEQ.ID:NO100;SEQ.ID:NO102;SEQ.ID:NO104;およびSEQ.ID:NO106からなるループのいずれかから選択される、請求項38に記載のワクチン組成物。
前記C−ローブドメインおよびN−ローブドメインが、複数のループドメインにより接続された複数のβ鎖を含み、前記複数のループドメインの少なくとも3つのループドメインが、修飾されており、前記3つのループドメインが、表3に示されたループドメインの組み合わせから選択される、請求項36に記載のワクチン組成物。
SEQ.ID NO:170;SEQ.ID NO:172;SEQ.ID NO:174;SEQ.ID NO:176;SEQ.ID NO:4;SEQ.ID NO:14;SEQ.ID NO:16;SEQ.ID NO:18;SEQ.ID NO:20;SEQ.ID NO:30;およびSEQ.ID NO:32からなる配列群から選択されるHIBP表面受容体タンパク質を含むワクチン組成物。
SEQ.ID NO:6;SEQ.ID NO:22;およびSEQ.ID NO:40からなる配列群から選択されるHIBP表面受容体タンパク質を含むワクチン組成物。
SEQ.ID NO:164;SEQ.ID NO:166;およびSEQ.ID NO:168からなる配列群から選択されるHIBP表面受容体タンパク質を含むワクチン組成物。
前記C−ローブドメインの少なくとも1つまたはN−ローブドメインの1つが、複数のループドメインにより接続された複数のβ鎖を含み、前記複数のループドメインの少なくとも1つのループドメインが、修飾されている、請求項64に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0036】
開示の詳細な記載
各請求された主題の実施形態の例を与えるために、様々な組成物および方法を以下に記載する。以下に記載される実施形態は、任意の請求された主題を限定するものではなく、任意の請求された主題は、以下に記載されるものとは異なる方法、工程、組成物またはシステムを含み得る。請求された主題は、以下に記載される任意の1つの組成物、方法、システムもしくは工程の特色の全て、または以下に記載される組成物、システムもしくは方法の複数もしくは全てに共通する特色を有する組成物または方法に限定されない。以下に記載される組成物、システム、方法または工程が、任意の請求された主題の実施形態ではないことが可能である。この文書に請求されていない以下に記載の組成物、システム、方法または工程に開示された任意の主題は、別の保護手段、例えば連続する特許出願の主題であり得、本出願人、発明者または所有者は、この文書内の開示により公的な任意のそのような主題を廃棄する、否認する、またはそれに専念する意図はない。
【0037】
本明細書で用いられる「実質的に」、「本質的に」、「約」および「およそ」などの程度の用語は、最終的な結果が大きく変動しないように修正される用語の合理的な変動量を意味する。この変動が修正する用語の意味をこの変動が否定しない場合に、これらの程度の用語は修正された用語の変動を含むと解釈されなければならない。
【0038】
本明細書で用いられる言語「および/または」は、包含的論理和を表すものとする。即ち、例えば「Xおよび/またはY」は、XもしくはY、またはその両方を意味するものとする。更なる例として、「X、Y、および/またはZ」は、XもしくはYもしくはZ、またはそれらの任意の組み合わせを意味するものとする。
【0039】
発行物、特許および特許出願の全ては、各個別の発行物と同程度に、全体として参照により本明細書に組み込まれる。
【0040】
本明細書でこれまで言及された通り、本開示は、新規な免疫原性組成物、詳細にはナイセリア・メニンギティディスなどのグラム陰性病原菌種からのHIBP表面受容体タンパク質に基づく特定の免疫原性組成物を提供する。本開示の免疫原性組成物は、新規なワクチン配合剤を調製するために用いられて感染性のある病原性グラム陰性菌種からヒトおよび動物を防御し得ることにおいて有用である。本開示によれば、本開示のHIBP表面受容体タンパク質は、宿主鉄結合タンパク質に実質的に結合することができないように修飾される。そのような修飾されたHIBP表面受容体タンパク質は、予想外に強い免疫原性を呈する。さらに本開示の免疫原性組成物は、実質的に安定したポリペプチドであり、それゆえ即座に製造され得る。その上、そして重要なこととして、本開示の免疫原性組成物は、例えば交差反応性免疫応答を誘導し、それにより単一の有効なワクチン接種化合物の投与により複数の病原性細菌生物体からの防御を可能にすることにより、予想外に効果的になる。本開示に従って調製されるワクチンは、生存する生物体または粗抽出物を含まず、それにより非常に低い健康リスクを示す。
【0041】
したがって本開示は、少なくとも1つの実施形態において、グラム陰性病原菌種からのHIBP表面受容体タンパク質を含む免疫原性組成物であって、該HIBP表面受容体タンパク質が、宿主鉄結合タンパク質に実質的に結合することができないように修飾されている、免疫原性組成物を提供する。
【0042】
本開示は、グラム陰性病原菌種から得ることができるHIBP表面受容体タンパク質のC−ローブドメインまたはN−ローブドメインを含むポリペプチドを含む免疫原性組成物であって、該ポリペプチドが宿主鉄結合タンパク質に実質的に結合することができない、免疫原性組成物をさらに提供する。特定の実施形態において、該HIBP表面受容体タンパク質のN−ローブドメインまたはC−ローブドメインは、複数のループドメインにより接続された複数のβ鎖を含み、該複数のループドメインのより多くのループドメインの1つは、修飾されている。
【0043】
用語および定義
他に定義されなければ、本明細書で用いられる全ての技術的および科学的用語は、本開示が属する技術分野の当業者に一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に引用されたGenBank、SwissProおよび他のデータベースからの核酸およびポリペプチド配列をはじめとする全ての特許、特許出願および他の発行物は、前または後にかかわらず、許容される限り、全体として参照により本明細書に組み込まれる。本明細書および添付の特許請求の範囲で用いられる単数形の「a」、「an」、および「the」は、その内容が明らかに他の方法で規定しない限り、複数の対象を含む。したがって例えば「免疫原」の対象は、2種以上のそのような物質の混合物を含み、「ポリペプチド」の対象は、2種以上のそのようなポリペプチドの混合物の対象を含み、「細胞」の対象は、2種以上のそのような細胞を含む、などである。
【0044】
本明細書で互換的に用いられる用語「免疫原」および「免疫原性組成物」は、細胞免疫原に特異的な免疫応答、および/または液性抗体反応を生成する宿主生物体内の免疫応答を刺激する1つまたは複数のエピトープを含む分子を指すために最も広い意味で用いられる。免疫原としては、核酸、タンパク質、ポリペプチド、ペプチドおよび免疫原性タンパク質断片が挙げられる。
【0045】
本明細書で互換的に用いられる用語「ワクチン」および「ワクチン組成物」は、対象における疾患または疾病を予防または処置するために用いられ得る、免疫原を含む任意の医薬組成物を指す。したがって該用語は、サブユニットワクチン、即ち免疫原が本来、会合している全生物体から分割および分離された免疫原を含有するワクチン組成物を包含する。
【0046】
用語「脊椎動物対象」は、脊索動物亜門、詳細には非限定的にヒトおよび他の霊長類をはじめとする哺乳動物の任意の構成員を指す。該用語は、特定の年齢を示していない。したがって新生仔、幼児、小児および成人個体の全てが、含まれるものとする。
【0047】
本明細書で互換的に用いられる用語「HIBP表面受容体タンパク質」、「HIBP表面受容体ポリペプチド」、「宿主鉄結合タンパク質表面受容体タンパク質」、または「宿主鉄結合タンパク質表面受容体ポリペプチド」は、宿主鉄結合タンパク質と相互作用することが可能なグラム陰性菌種から得ることができる任意の膜結合タンパク質またはポリペプチドを指す。該用語は、任意のTbpBおよびLbpBタンパク質を包含する。ネイティブの三次元構造でフォールディングされる場合のHIBP表面受容体タンパク質は、N−ローブドメインおよびC−ローブドメインを含む二葉構造で構成され、そのN−ローブドメインおよびC−ローブドメインがそれぞれβバレル内で組み立てられた複数のβ鎖と、ハンドルドメインと称されるβバレルに隣接するβシート構造内で組み立てられた複数のβ鎖と、を含み、該β鎖は、複数のループドメインにより接続されている(
図1にさらに示される)。該用語はさらに、非限定的にSEQ.ID NO:2;SEQ.ID NO:12;SEQ.ID NO:28;SEQ.ID NO:107〜SEQ.ID NO:115;SEQ ID NO:117;SEQ.ID NO:123;SEQ.ID NO:131〜SEQ.ID NO:147;SEQ.ID NO:177;SEQ.ID NO:178;SEQ.ID NO:196〜SEQ.ID NO:204;SEQ.ID NO:206〜SEQ.ID NO:212;およびSEQ.ID NO:219〜SEQ.ID NO:228をはじめとする全ての細菌HIBP表面受容体ポリペプチドを含むあらゆるHIBP受容体ポリペプチド配列、ならびに(i)本明細書に示された任意のHIBP表面受容体タンパク質を構成するアミノ酸配列と実質的に同一であるアミノ酸残基の配列を含むもの;(ii)本明細書に示された任意のHIBP表面受容体タンパク質をコードする任意の核酸配列に対して少なくとも適度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることが可能な核酸配列によりコードされたアミノ酸残基の配列、または本明細書に示された任意のHIBP表面受容体タンパク質をコードする任意の核酸配列に対して少なくとも適度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることが可能であるが同義コドンの使用のための核酸配列によりコードされたアミノ酸残基の配列を含むものを指す。該用語は、任意のHIBP表面受容体タンパク質前駆体ポリペプチドをさらに含むか;または(iii)Phyre2(http://www.sbg.bio.ic.ac.uk/phyre2/)もしくはSwiss−Model(http://swissmodel.expasy.org/)などの構造モデル化サーバに寄託された場合のテンプレートとして、後者が選択する自動モードにおいて、トランスフェリン結合タンパク質、ラクトフェリン結合タンパク質またはそれらのサブドメインを使用する。該用語は、成熟したTbpBポリペプチドに加え、任意のプレHIBP表面受容体ポリペプチド前駆体、またはN末端もしくは他のシグナル配列を含むHIBP表面受容体ポリペプチド前駆体をはじめとする、任意のHIBP表面受容体ポリペプチド前駆体をさらに含む。
【0048】
本明細書で互換的に用いられる用語「内在性外膜タンパク質」および「IOMタンパク質」は、ネイティブ三次元構造でフォールディングされた場合に、22鎖のC末端βバレルドメインと、該C末端βバレルドメイン内のチャネルを充填することが可能なN末端プラグまたはコルクドメインと、を含む、タンパク質のTonB依存性サブクラスに属する任意のタンパク質など、グラム陰性菌種からの任意の内在性外膜タンパク質を指す。該用語は、限定ではなく、TbpAおよびLbpAタンパク質を包含する。該用語はさらに、SEQ.ID NO:152およびSEQ.ID NO:162に示されたもの、ならびに(i)本明細書に示された任意のIOMタンパク質を構成するアミノ酸配列と実質的に同一であるアミノ酸残基の配列;(ii)本明細書に示された任意のIOMタンパク質をコードする任意の核酸配列に対して少なくとも適度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることが可能な、または本明細書に示された任意のIOMタンパク質をコードする任意の核酸配列に対して少なくとも適度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることが可能であるが同義コドンの使用のための、核酸配列によりコードされたアミノ酸残基の配列、を含むものをはじめとする全てを含むあらゆるIOMポリペプチド配列を指す。該用語は、IOMタンパク質前駆体ポリペプチドをさらに含むか;または(iii)Phyre2(http://www.sbg.bio.ic.ac.uk/phyre2/)もしくはSwiss−Model(http://swissmodel.expasy.org/)などの構造モデル化サーバに寄託された場合のテンプレートとして、後者が選択する自動モードにおいて、3V8Xまたはそれらのサブドメインを使用する。
【0049】
本明細書で用いられる用語「N−ローブドメイン」は、複数のループドメインにより接続された複数のβ鎖を含み、そのβ鎖の一部がβバレルと、ハンドルドメインと称される隣接するβシート構造とを形成するように配置されている、HIBP表面受容体タンパク質のN末端部分を指す(
図1のアミノ酸残基46〜アミノ酸残基342を参照)。用語N−ローブドメインは、非限定的にSEQ.ID NO:8;SEQ.ID NO:10;SEQ.ID NO:24;SEQ.ID NO:26;SEQ.ID NO:36;SEQ.ID NO:38;SEQ.ID NO:121;SEQ.ID NO:127;SEQ.ID NO:229;SEQ.ID NO:231;およびSEQ.ID NO:233に示された配列を有する全てのポリペプチドをさらに含む。
【0050】
本明細書で用いられる用語「C−ローブドメイン」は、複数のループドメインにより接続された複数のβ鎖を含み、そのβ鎖の一部がβバレルと、ハンドルドメインと称される隣接するβシート構造とを形成するように配置されている、HIBP表面受容体タンパク質のC末端部分を指す。さらに
図1および
図2を参照すると、C−ローブのハンドルドメインは、β鎖16から前方へ、そしてβ鎖23を含みそこまでの連続したポリペプチドドメインであり、
図2に示されたApH49、ApH57およびApH87 TbpBポリペプチドの場合には、アミノ酸残基344〜431;SEQ.ID NO:2のアミノ酸残基314〜アミノ酸残基401(ApH49);SEQ.ID NO:27のアミノ酸残基363〜アミノ酸残基450(ApH57);およびSEQ.ID NO:12のアミノ酸残基315〜アミノ酸残基401(ApH87)からなる。C−ローブβバレルドメインは、β鎖23から前方へポリペプチドのC末端までの連続したポリペプチドドメインであり、
図2に示されたApH49、ApH57およびApH87 TbpBポリペプチドの場合には、アミノ酸残基443から前方へC末端まで、そしてSEQ.ID NO:2のアミノ酸残基413から前方(ApH49);SEQ.ID NO:27のアミノ酸残基462から前方(ApH57);およびSEQ.ID NO:12のアミノ酸残基413から前方のポリペプチド鎖である。C−ローブのハンドルドメインとC−ローブのβバレルドメインが、短いループ(
図1および
図2において「L24」と記載)により接続され得ることに留意されたい。さらに、本明細書で用いられる用語「C−ローブドメイン」が、具体的にはC−ローブβバレルドメインのみならず、典型的にはおよそ90以上のアミノ酸残基で構成されて、C−ローブβバレル構造に関してN末端側に位置する、βシート構造を形成するハンドルドメインを含むものとすることに留意されたい。本明細書で用いられる用語C−ローブドメインは、限定ではなく、SEQ.ID NO:5;SEQ.ID NO:6;SEQ.ID NO:22;SEQ.ID NO:33;SEQ.ID NO:34;SEQ.ID NO:119;SEQ.ID NO:125;SEQ.ID NO:179〜SEQ.ID NO:195;SEQ.ID NO:213〜SEQ.ID NO:218;SEQ.ID NO:230;SEQ.ID NO:232;SEQ.ID NO:234〜SEQ.ID NO:278;およびSEQ.ID NO:288〜SEQ.ID NO:292に示された全てのポリペプチドをさらに含む。
【0051】
用語「ループドメイン」は、2つのβ鎖を接続するHIBP表面受容体タンパク質内のポリペプチド配列を指す。これらのポリペプチド配列は、複数のアミノ酸残基〜150以上のアミン酸残基の長さで大きく変動し得る。
【0052】
本明細書で互換的に用いられる用語「TbpB」、「TbpBタンパク質」、「TbpBポリペプチド」は、全ての細菌TbpBポリペプチド、および(i)非限定的にSEQ.ID NO:2;SEQ.ID NO:12;SEQ.ID NO:28;SEQ.ID NO:107〜SEQ.ID NO:115;SEQ ID NO:117;SEQ.ID NO:123;SEQ.ID NO:131〜SEQ.ID NO:147;SEQ.ID NO:177;SEQ.ID NO:178;SEQ.ID NO:196〜SEQ.ID NO:204;SEQ.ID NO:206〜SEQ.ID NO:212;およびSEQ.ID NO:219〜SEQ.ID NO:228をはじめとする、本明細書に示された任意のTbpBポリペプチドを構成するアミノ酸配列と実質的に同一であるアミノ酸残基の配列;または(ii)本明細書に示された任意のTbpBポリペプチドをコードする任意の核酸配列に対して少なくとも適度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることが可能な、もしくは本明細書に示された任意のTbpBポリペプチドをコードする任意の核酸配列に対して少なくとも適度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることが可能であるが同義コドンの使用のための、核酸配列によりコードされたアミノ酸残基の配列、を含むポリペプチドをはじめとするあらゆるトランスフェリン結合タンパク質B配列を指す。該用語はさらに、成熟したTbpBポリペプチドに加え、任意のプレTbpBをはじめとするTbpB前駆体、またはN末端もしくは他のシグナル配列を含むTbpBも包含する。
【0053】
本明細書で互換的に用いられる用語「LbpB」、「LbpBタンパク質」、「LbpBポリペプチド」は、全ての細菌性LbpBポリペプチド、および(i)非限定的にSEQ.ID NO:285をはじめとする、本明細書に示された任意のLbpBポリペプチドを構成するアミノ酸配列と実質的に同一であるアミノ酸残基の配列;または(ii)本明細書に示された任意のLbpBポリペプチドをコードする任意の核酸配列に対して少なくとも適度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることが可能な、もしくは本明細書に示された任意のLbpBポリペプチドをコードする任意の核酸配列に対して少なくとも適度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることが可能であるが同義コドンの使用のための、核酸配列によりコードされたアミノ酸残基の配列、を含むポリペプチドをはじめとするあらゆるラクトフェリン結合タンパク質B配列を指す。該用語は、プレ−LbpBなどの任意のLbpB前駆体をさらに包含する。
【0054】
本明細書で互換的に用いられる用語「TbpA」、「TbpAタンパク質」、「TbpAポリペプチド」は、全ての細菌性TbpAポリペプチド、および(i)非限定的にSEQ.ID NO:152をはじめとする、本明細書に示された任意のTbpAポリペプチドを構成するアミノ酸配列と実質的に同一であるアミノ酸残基の配列;または(ii)本明細書に示された任意のTbpAポリペプチドをコードする任意の核酸配列に対して少なくとも適度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることが可能な、もしくは本明細書に示された任意のTbpAポリペプチドをコードする任意の核酸配列に対して少なくとも適度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることが可能であるが同義コドンの使用のための、核酸配列によりコードされたアミノ酸残基の配列、を含むポリペプチドをはじめとするあらゆるトランスフェリン結合タンパク質A配列を指す。該用語は、プレ−TbpAなどの任意のTbpA前駆体をさらに包含する。
【0055】
本明細書で互換的に用いられる用語「LbpA」、「LbpAタンパク質」、「LbpAポリペプチド」は、全ての細菌性LbpAポリペプチド、および(i)非限定的にSEQ.ID NO:162をはじめとする、本明細書に示された任意のLbpAポリペプチドを構成するアミノ酸配列と実質的に同一であるアミノ酸残基の配列;または(ii)本明細書に示された任意のLbpAポリペプチドをコードする任意の核酸配列に対して少なくとも適度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることが可能な、もしくは本明細書に示された任意のLbpAポリペプチドをコードする任意の核酸配列に対して少なくとも適度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることが可能であるが同義コドンの使用のための、核酸配列によりコードされたアミノ酸残基の配列、を含むポリペプチドをはじめとするあらゆるラクトフェリン結合タンパク質A配列を指す。該用語は、プレ−LbpAなどの任意のLbpA前駆体をさらに包含する。
【0056】
本明細書で用いられる用語「核酸配列」は、天然由来の塩基、糖および糖間(バックボーン)結合からなるヌクレオシドまたはヌクレオチド単量体の配列を指す。該用語はまた、非天然由来の単量体またはその一部を含む修飾または置換された配列を包含する。本開示の核酸配列は、デオキシリボ核酸配列(DNA)またはリボ核酸配列(RNA)であり得、アデニン、グアニン、シトシン、チミジンおよびウラシルなどの天然由来塩基を包含し得る。該配列は、修飾された塩基も含み得る。そのような修飾塩基の例としては、アザおよびデアザアデニン、グアニン、シトシン、チミジンおよびウラシル、ならびにキサンチンおよびヒポキサンチンが挙げられる。
【0057】
本明細書で互換的に用いられる用語「HIBP表面受容体タンパク質をコードする核酸配列」および「HIBP表面受容体ポリペプチドをコードする核酸配列」は、任意のHIBP表面受容体タンパク質および非限定的にSEQ.ID NO:1;SEQ.ID NO:11;SEQ.ID NO:27;SEQ.ID NO:116;SEQ.ID NO:122;およびSEQ.ID NO:173に示されたものなどHIBP表面受容体タンパク質前駆体をコードする任意の核酸配列をはじめとし、HIBP表面受容体タンパク質をコードするあらゆる核酸配列を指す。本明細書で用いられる「HIBP表面受容体タンパク質前駆体」は、追加として形質膜を横切るポリペプチド鎖の輸送を促進するN末端シグナル配列を含む、HIBP表面受容体タンパク質分子を指す。HIBP表面受容体タンパク質をコードする核酸配列は、(i)本明細書に示されたHIBP表面受容体タンパク質と実質的に同一であるポリペプチドをコードする;または(ii)本明細書に示されたHIBP表面受容体タンパク質の核酸配列に対して少なくとも適度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることが可能な、もしくはそれに対して少なくとも適度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることが可能であるが同義コドンの使用のための、あらゆる核酸配列をさらに包含する。
【0058】
本明細書で互換的に用いられる用語「IOMタンパク質をコードする核酸配列」および「IOMポリペプチドをコードする核酸配列」は、任意のIOMタンパク質、ならびに非限定的にSEQ.ID NO:151;およびSEQ.ID NO:161に示されたものなどIOMタンパク質前駆体をコードする任意の核酸配列をはじめとし、IOMタンパク質をコードするあらゆる核酸配列を指す。本明細書で用いられる「IOMタンパク質前駆体」は、追加として形質膜を横切るポリペプチド鎖の輸送を促進するN末端シグナル配列を含む、IOMタンパク質分子を指す。IOMタンパク質をコードする核酸配列は、(i)本明細書に示されたIOMタンパク質と実質的に同一であるポリペプチドをコードする;または(ii)本明細書に示されたIOMタンパク質の核酸配列に対して少なくとも適度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることが可能な、もしくはそれに対して少なくとも適度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることが可能であるが同義コドンの使用のための、あらゆる核酸配列をさらに包含する。
【0059】
本明細書で互換的に用いられる用語「TbpBをコードする核酸配列」、「TbpBポリペプチドをコードする核酸配列」は、非限定的にSEQ.ID NO:1;SEQ.ID NO:11;SEQ.ID NO:27;SEQ.ID NO:116;SEQ.ID NO:122;およびSEQ.ID NO:173に示された配列と、さらにTbpB前駆体をコードする任意の核酸配列をはじめとする、任意のTbpBポリペプチドを含むTbpBポリペプチドをコードするあらゆる核酸配列を指す。本明細書で用いられる「TbpB前駆体」は、追加として形質膜を横切るポリペプチド鎖の輸送を促進するN末端シグナル配列を含む、TbpB分子を指す。TbpBポリペプチドをコードする核酸配列は、(i)本明細書に示されたTbpBポリペプチドと実質的に同一であるポリペプチドをコードする;または(ii)本明細書に示された任意のTbpBの核酸配列に対して少なくとも適度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることが可能な、もしくはそれに対して少なくとも適度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることが可能であるが同義コドンの使用のための、あらゆる核酸配列をさらに包含する。
【0060】
本明細書で互換的に用いられる用語「LbpBをコードする核酸配列」、「LbpBポリペプチドをコードする核酸配列」は、非限定的にSEQ.ID NO:284に示された配列と、LbpB前駆体をコードする任意の核酸配列をはじめとする、任意のLbpBポリペプチドを含むLbpBポリペプチドをコードするあらゆる核酸配列を指す。本明細書で用いられる「LbpB前駆体」は、追加として形質膜を横切るポリペプチド鎖の輸送を促進するN末端シグナル配列を含む、LbpB分子を指す。LbpBポリペプチドをコードする核酸配列は、(i)本明細書に示されたLbpBポリペプチドと実質的に同一であるポリペプチドをコードする;または(ii)本明細書に示された任意のLbpBの核酸配列に対して少なくとも適度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることが可能な、もしくはそれに対して少なくとも適度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることが可能であるが同義コドンの使用のための、あらゆる核酸配列をさらに包含する。
【0061】
本明細書で互換的に用いられる用語「TbpAをコードする核酸配列」、「TbpAポリペプチドをコードする核酸配列」は、非限定的にSEQ.ID NO:151に示された配列と、TbpA前駆体をコードする任意の核酸配列をはじめとする、任意のTbpAポリペプチドを含むTbpAポリペプチドをコードするあらゆる核酸配列を指す。本明細書で用いられる「TbpA前駆体」は、追加として形質膜を横切るポリペプチド鎖の輸送を促進するN末端シグナル配列を含む、TbpA分子を指す。TbpAポリペプチドをコードする核酸配列は、(i)本明細書に示されたTbpAポリペプチドと実質的に同一であるポリペプチドをコードする;または(ii)本明細書に示された任意のTbpAの核酸配列に対して少なくとも適度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることが可能な、もしくはそれに対して少なくとも適度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることが可能であるが同義コドンの使用のための、あらゆる核酸配列をさらに包含する。
【0062】
本明細書で互換的に用いられる用語「LbpAをコードする核酸配列」、「LbpAポリペプチドをコードする核酸配列」は、非限定的にSEQ.ID NO:161に示された配列と、LbpA前駆体をコードする任意の核酸配列をはじめとする、任意のTbpAポリペプチドを含むLbpAポリペプチドをコードするあらゆる核酸配列を指す。本明細書で用いられる「LbpA前駆体」は、追加として形質膜を横切るポリペプチド鎖の輸送を促進するN末端シグナル配列を含む、LbpA分子を指す。LbpAポリペプチドをコードする核酸配列は、(i)本明細書に示されたLbpAポリペプチドと実質的に同一であるポリペプチドをコードする;または(ii)本明細書に示された任意のLbpAの核酸配列に対して少なくとも適度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることが可能な、もしくはそれに対して少なくとも適度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることが可能であるが同義コドンの使用のための、あらゆる核酸配列をさらに包含する。
【0063】
用語「実質的に同一の」は、2つのポリペプチド配列が、好ましくは少なくとも50%同一である、より好ましくは少なくとも85%同一である、最も好ましくは少なくとも95%同一である、例えば96%、97%、98%、または99%同一であることを意味する。2つのポリペプチド配列の間の同一性%を決定するために、そのような2つの配列のアミノ酸配列を、例えばSmithおよびWaterman(27)により修正されたNeedlemanおよびWunsch(26)のアライメント法を利用して、2つの配列間で最も高次のマッチが得られるようにアライメントして、同一アミノ酸の数を2つの配列の間で決定する。2つのポリペプチドを正確にアライメントするための、好ましく広範囲に適用可能な方法は、ギャップ開始ペナルティー10およびギャップ伸長ペナルティー0.1を利用するBLOSUM62スコアリングマトリックス(29)と共に用いられるClustal Wアルゴリズム(28)を含む。これにより、2つの配列のうちの一方の全長の少なくとも50%がアライメントに含まれるような、2つの配列間で高いスコアリングアライメントの同定が可能になる。2つのアライメントされたアミノ酸配列間の同一性%を計算する方法は、概ね当該技術分野で認識されており、例えばCarilloおよびLiptonにより記載されたもの(30)、ならびにComputational Molecular Biology, Lesk, e.d. Oxford University Press, New York, 1988, Biocomputing:Informatics and Genomics Projectsに記載されたものなどが挙げられる。一般にコンピュータプログラムが、そのような計算に用いられるであろう。これに関して用いられ得るコンピュータプログラムとしては、GCG(31)、BLASTP、BLASTNおよびFASTA(32)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0064】
「少なくとも適度にストリンジェントな条件」は、溶液中での2つの相補性核酸分子間の選択的ハイブリダイゼーションを促進する条件が選択されることを意味する。ハイブリダイゼーションは、核酸配列分子の全てまたは一部に起こり得る。ハイブリダイズする部分は、典型的には少なくとも15(例えば、20、25、30、40または50)ヌクレオチド長である。当業者は、核酸二本鎖またはハイブリッドの安定性がTmにより決定され、Tmがナトリウム含有緩衝液中でナトリウムイオン濃度および温度の関数であることを、認識するであろう(Tm=81.5℃−16.6(Log10[Na+])+0.41(%(G+C)−600/1)、または同様の式)。したがってハイブリッドの安定性を決定する洗浄条件のパラメータは、ナトリウムイオン濃度および温度である。公知の核酸分子と類似しているが同一ではない分子を同定するために、1%ミスマッチが、約1℃のTm低下をもたらすと仮定することができ、例えば95%を超える同一性を有する核酸分子が探索される場合、最終的な洗浄温度は約5℃低下することになる。これらの判断に基づけば、当業者は、適切なハイブリダイゼーション条件を即座に選択することができよう。好ましい実施形態において、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件が選択される。例として、以下の条件を用いて、ストリンジェントなハイブリダイゼーションを実現することができる:Tm(上の式に基づく)−5℃で、5×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)/5×デンハルト溶液/1.0%SDSでハイブリダイゼーションし、その後、60℃で0.2×SSC/0.1%SDSで洗浄。適度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、42℃で3×SSCでの洗浄ステップを含む。しかし、同等なストリンジェンシーが、別の緩衝液、塩および温度を用いて実現され得ることを理解されたい。ハイブリダイゼーション条件に関するさらなるガイダンスは、Green and Sambrook, Molecular Cloning, a Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2012 (33)に見出され得る。
【0065】
本明細書の核酸配列の文脈で用いられる用語「キメラ」は、自然に連結していない少なくとも2つの連結した核酸配列を指す。キメラ核酸配列は、異なる天然起源の連結した核酸配列を含む。例えば、TbpBポリペプチドまたはHIBP表面受容体タンパク質の核酸配列に連結された細菌プロモータを構成する核酸配列は、キメラと見なされ、特定の部分が除去されて、TbpAポリペプチドの一部と交換されているTbpBポリペプチドをコードする核酸配列は、キメラと見なされる。キメラ核酸配列はまた、それらが自然に連結されないことを条件に、同じ天然起源の核酸配列を含み得る。例えば特定の細胞型から得られたプロモータを構成する核酸配列は、同じ細胞型から得られたポリペプチドをコードする核酸配列に連結し得るが、通常はプロモータを構成する核酸配列には連結しない。キメラ核酸配列はまた、任意の非天然由来核酸配列に連結した任意の天然由来核酸配列を含む核酸配列を含む。
【0066】
用語「宿主鉄結合タンパク質に実質的に結合することができない」は、ネイティブ宿主鉄結合タンパク質(即ち、宿主生物体内に存在する宿主鉄結合タンパク質)と修飾されたHIBP表面受容体タンパク質との結合相互作用の結合定数(Kd)または解離定数の値が、ネイティブ宿主鉄結合タンパク質とその相補性ネイティブHIBP表面受容体タンパク質との結合相互作用の結合定数の値よりも少なくとも10倍高くなるように、HIBP表面受容体タンパク質に結合する宿主鉄結合タンパク質の能力が減少することを意味する。言い換えれば、修飾タンパク質は、ネイティブ宿主鉄結合タンパク質に対して、ネイティブ受容体タンパク質よりも10倍低い親和性を有する。好ましい実施形態において、修飾タンパク質によりネイティブ宿主鉄結合タンパク質に結合するための相対的親和性は、ネイティブHIBP表面受容体タンパク質よりも30倍低く、最も好ましい実施形態において、修飾タンパク質によりネイティブ宿主鉄結合タンパク質に結合するための相対的親和性は、ネイティブHIBP表面受容体タンパク質よりも100倍低い。さらに好ましい実施形態において、修飾HIBP表面受容体タンパク質とネイティブ宿主鉄結合タンパク質との結合定数は、少なくとも300nMである。好ましくは該結合定数は、少なくとも500nMであり、最も好ましくは少なくとも1μMである。
【0067】
本明細書で用いられる用語「実質的に含まない」は、程度の用語であり、組成物に実質的に含まれないと言われた化合物を、該組成物が顕著な量で含まないことを意味する。組成物が化合物を実質的に含まない、例えばN−ローブドメインを実質的に含まない場合、そのような組成物は、好ましくは5.0%未満のそのような化合物、より好ましくは1.0%未満のそのような化合物、最も好ましくは0.1%未満のそのような化合物を含む。
【0068】
免疫原性組成物
先に述べられた通り、本開示は、少なくとも1つの実施形態において、グラム陰性病原菌種からのHIBP表面受容体タンパク質を含む免疫原性組成物であって、該HIBP表面受容体タンパク質が、宿主鉄結合タンパク質に実質的に結合することができないように修飾されている、免疫原性組成物を提供する。HIBP表面受容体タンパク質と共に用いられる用語「修飾された」は、少なくとも1つのアミノ酸残基が除去されているか、もしくは少なくとも1つのアミノ酸残基が別のものと置換されている、非ネイティブHIBP表面受容体タンパク質、または2つ以上の別のポリペプチドに分断されているHIBP表面受容体タンパク質を指すものとする。したがって修飾されたHIBP表面受容体タンパク質としては、切断されたHIBP表面受容体タンパク質(例えば、HIBP表面受容体タンパク質のN−ローブドメインまたはC−ローブドメイン);1つまたは複数のアミノ酸残基が除去されているHIBP表面受容体タンパク質(例えば、N−ローブドメインまたはC−ローブドメイン内のループドメインからの1つまたは複数のアミノ酸が除去されているHIBP表面受容体タンパク質);さらなるアミノ酸が挿入されているHIBP表面受容体タンパク質(例えば、1つまたは複数のアミノ酸がN−ローブドメインまたはC−ローブドメイン内のループドメインに付加されているHIBP表面受容体タンパク質);多量体または伸長HIBPポリペプチド(例えば、二量体および三量体、ならびにN−ローブドメインまたはC−ローブドメインの二量体および三量体);1つまたは複数のアミノ酸を改変するために部位特異的突然変異誘発により修飾されたHIBP表面受容体タンパク質;および2つ以上のHIBP表面受容体タンパク質ポリペプチドの混合物(例えば、HIBP表面受容体タンパク質の別のN−ローブドメインとC−ローブドメインとを含む混合物)が挙げられるが、これらに限定されない。本開示の修飾HIBP表面受容体タンパク質は、ネイティブ宿主鉄結合タンパク質に実質的に結合することができない。
【0069】
本明細書のこれまでに言及された通り、本開示は、1つの態様において、グラム陰性菌種から得ることができる、または得られるHIBP表面受容体タンパク質のC−ローブドメインまたはN−ローブドメインを含むポリペプチドを含む、またはそれからなる免疫原性組成物であって、該ポリペプチドが宿主鉄結合タンパク質に実質的に結合することができない、免疫原性組成物を提供する。さらなる態様において、本開示は、HIBP表面受容体タンパク質のC−ローブドメインまたはN−ローブドメインを含むポリペプチドであって、該C−ローブドメインまたはN−ローブドメインが、複数のループドメインにより接続された複数のβ鎖を含み、該複数のループドメインの少なくとも1つのループドメインが、修飾されており、該ポリペプチドが、宿主鉄結合タンパク質に実質的に結合することができない、ポリペプチドを提供する。
【0070】
本開示によれば、グラム陰性病原性菌種から得ることができるHIBP表面受容体タンパク質のC−ローブドメインまたはN−ローブドメインを含む、またはそれからなる任意のポリペプチドまたはそのようなポリペプチドをコードする核酸配列が、用いられ得る。
【0071】
ネイティブC−ローブドメインが用いられる本開示の実施形態において、ネイティブC−ローブドメインを含むポリペプチドは、HIBP表面受容体タンパク質のネイティブN−ローブドメインを含まず、ペプチド結合を介して該ネイティブN−ローブドメインに化学的に連結しておらず、したがって単離されたネイティブC−ローブドメイン、即ちネイティブN−ローブドメインから離れたネイティブC−ローブドメインである。したがって特定の実施形態において、HIBP表面受容体ポリペプチドまたはその一部のN−ローブドメインを含まない、または実質的に含まない、HIBP表面受容体ポリペプチドのC−ローブドメインを含む調製物が、提供される。ネイディブN−ローブドメインが用いられる本開示の実施形態において、本明細書で用いられるネイティブN−ローブドメインを含むポリペプチドは、HIBP表面受容体タンパク質のネイティブC−ローブドメインを含まず、ペプチド結合を介して該ネイティブC−ローブドメインに化学的に連結しておらず、したがって単離されたネイティブN−ローブドメイン、即ちネイティブC−ローブドメインから離れたネイティブN−ローブドメインである。したがって特定の実施形態において、HIBP表面受容体ポリペプチドまたはその一部のC−ローブドメインを含まない、または実質的に含まない、HIBP表面受容体ポリペプチドのN−ローブドメインを含む調製物が、提供される。しかし特定の実施形態において、ネイティブC−ローブドメインまたはその一部と、N−ローブドメインまたはその一部との混合物が用いられ得るが、ただしN−ローブドメインとC−ローブドメインが、化学的に連結しておらず、即ちそれらがペプチド結合により化学的に接続していないことを条件とする。したがって本開示は、N−ローブドメインを含むポリペプチドと、C−ローブドメインを含むポリペプチドとの混合物を含む免疫原性組成物であって、該N−ローブドメインとC−ローブドメインが物理的に連結していない、免疫原性組成物を包含する。
【0072】
本開示のポリペプチドを供給するために、非限定的に任意の病原菌種または菌株、および非限定的にパスツレラ科、モラクセラ(Moxarellaceae)科またはナイセリア科に属する任意の菌種、およびアクチノバシラス属、ナイセリア属、ヘモフィルス属、マンヘミア属、ヒストフィルス属、パスツレラ属またはモラクセラ属に属する菌種をはじめとする、任意のグラム陰性菌種から得ることができる、または得られる任意のHIBP表面受容体タンパク質またはTbpBポリペプチドが用いられ得る。該ポリペプチドとしては、さらに、任意のHIBP表面受容体タンパク質から得ることができる、もしくは得られる任意のポリペプチド、または以下の菌種:アクチノバシラス・プルロニューモニエ(12、34)、アクチノバシラス・スイス、ヘモフィルス・インフルエンザ(35、36)、ヘモフィルス・パラスイス(37)、ヘモフィルス・ソムナス(当該技術分野でヒストフィルス・ソムナスとしても知られる)(38)、マンヘミア・ヘモリティカ(当該技術分野でパスツレラ・ヘモリティカとしても知られる)(39)、モラクセラ・カタラーリス(40)、モラクセラ・ボビス、ナイセリア・ゴノレア、ナイセリア・メニンギティディス(41、42)、マンヘミア・グルコシダ(当該技術分野でパスツレラ・ヘモリティカとしても知られる)およびビベルスティニア・トレハロシ(当該技術分野でパスツレラ・トレハロシとしても知られる)から得ることができる、もしくは得られる任意のTbpBポリペプチドから得ることができる、もしくは得られる任意のポリペプチドが挙げられる。
【0073】
本明細書に従って用いられ得る例示的なC−ローブドメインおよびN−ローブドメインとしては、さらにSEQ.ID NO:5;SEQ.ID NO:6;SEQ.ID NO:22;SEQ.ID NO:33;SEQ.ID NO:34;SEQ.ID NO:119;SEQ.ID NO:125;SEQ.ID NO:179〜SEQ.ID NO:195;SEQ.ID NO:213〜SEQ.ID NO:218;SEQ.ID NO:230;SEQ.ID NO:232;SEQ.ID NO:234〜SEQ.ID NO:278、およびSEQ.ID NO:288〜SEQ.ID NO:292に示された任意のC−ローブドメイン、ならびにSEQ.ID NO:8;SEQ.ID NO:10;SEQ.ID NO:24;SEQ.ID NO:26;SEQ.ID NO:36;SEQ.ID NO:38;SEQ.ID NO:121;SEQ.ID NO:127;SEQ.ID NO:229;SEQ.ID NO:231;およびSEQ.ID NO:233に示された任意のN−ローブドメインが挙げられ、さらに非限定的にSEQ.ID NO:2;SEQ.ID NO:12;SEQ.ID NO:28;SEQ.ID NO:107〜SEQ.ID NO:115;SEQ ID NO:117;SEQ.ID NO:123;SEQ.ID NO:131〜SEQ.ID NO:147;SEQ.ID NO:177;SEQ.ID NO:178;SEQ.ID NO:196〜SEQ.ID NO:204;SEQ.ID NO:206〜SEQ.ID NO:212;およびSEQ.ID NO:219〜SEQ.ID NO:228に示されたポリペプチドをはじめとするHIBPポリペプチドもしくはTbpBポリペプチドから調製され得る、またはSEQ.ID NO:1;SEQ.ID NO:11;SEQ.ID NO:27;SEQ.ID NO:116;SEQ.ID NO:122;およびSEQ.ID NO:173によりコードされる核酸配列を用いることにより調製され得る、任意のC−ローブドメインまたはN−ローブドメインが挙げられる。これらの核酸配列およびポリペプチド配列を用いれば、さらなる新規HIBP表面受容体タンパク質およびTbpB配列、ならびにC−ローブドメインまたはN−ローブドメインが、当業者により即座に同定され得る。例えば発現ライブラリ、cDNAライブラリおよびゲノムライブラリをスクリーニングすることができ、配列情報を含むデータベースを類似の配列について検索することができる。
【0074】
本開示の免疫原性調製物は、脊椎動物対象へのその投与により、そのような脊椎動物対象における免疫応答を、脊椎動物対象による抗体産生の刺激の形態で誘発する。本明細書によれば、そのような抗体は、少なくとも1種のグラム陰性菌株に対して反応性がある。しかし好ましくは該抗体は、複数の菌株または菌種に対して交差反応性および/または交差防御性があり、好ましくはそのような交差反応性および/または交差防御性は、トランスフェリンまたはラクトフェリンなどの1種または複数の宿主鉄結合タンパク質を発現する宿主において実現される。本明細書で用いられる用語「交差反応性がある」は、1つの菌株から得られた免疫原性組成物により誘導された免疫応答が、異なる菌株または異なる菌種と追加的に反応することが可能な抗体の生成を刺激する能力を指す。本明細書で用いられる用語「交差防御性」は、1つの菌株から得られた免疫原性組成物により誘導された免疫応答が、少なくとも1つの追加的菌株または菌種による感染または疾患を予防または弱毒化する免疫応答の能力を指す。本開示の好ましい実施形態において、本開示の免疫原性組成物は、複数の菌株または菌種、例えば2、3、4、5、6、7、8、9または10の菌種または菌株に対して、交差反応性および/または交差防御性がある。交差反応性は、交差防御性の指標になると思われる。本開示の前述の態様が、1種の免疫原性化合物、即ち1種のHIBP表面受容体タンパク質から得ることができる免疫原性化合物の製造を可能にして、多重感染性菌株または菌種に対する防御を提示することによりワクチン製造を容易にすることは、当業者に即座位に理解されよう。
【0075】
本開示の免疫原性調製物は、脊椎動物対象において、特にトランスフェリンおよびラクトフェリンなどの宿主鉄結合タンパク質を発現する脊椎動物対象において、ネイティブHIBPタンパク質を用いた免疫化調製物が用いられる場合に生成される免疫応答の効果を超える、予想外に効果的な免疫応答を生成する。効果的な免疫応答の一態様は、免疫応答の規模である。好ましくは本開示の免疫原性組成物を用いて得られた抗体力価は、ネイティブHIBPタンパク質の抗体力価よりも少なくとも2倍、より好ましくは少なくとも5倍、最も好ましくは少なくとも10倍高い。
【0076】
好ましい実施形態において、少なくとも2つのポリペプチドを含み、該ポリペプチドのぞれぞれがC−ローブドメインを含む、もしくはそれからなる混合物が用いられ;または少なくとも2つのポリペプチドを含み、該ポリペプチドのそれぞれがN−ローブドメインを含む、もしくはそれからなる混合物が用いられ;または少なくとも2つのC−ローブドメインおよび少なくとも1つのN−ローブドメインを含む、もしくはそれからなる、少なくとも3つのポリペプチドを含む混合物が用いられ;または少なくとも2つのN−ローブドメインおよび少なくとも1つのC−ローブドメインを含む、もしくはそれからなる、少なくとも3つのポリペプチドを含む混合物が用いられる。好ましい実施形態において、該少なくとも2つのポリペプチドは、同じ脊椎動物種に感染することが可能なグラム陰性菌属または菌種から得ることができる、または得られる。したがって該少なくとも2つのポリペプチドは、例えば両方のC−ローブドメインがブタに感染することが可能なアクチノバシラス株から得られる、もしくは得ることができるTbpBポリペプチドから得ることができる、もしくは得られる、TbpBポリペプチドの2つのC−ローブドメインから選択されるか、または例えば両方のC−ローブドメインがウシに感染することが可能なヘモフィルス株から得られる、もしくは得ることができるTbpBポリペプチドから得ることができる、もしくは得られる、TbpBポリペプチドの2つのC−ローブドメインから選択される。少なくとも2つのC−ローブドメインが用いられる実施形態において、該混合物は、好ましくはN−ローブドメインまたはその一部を含まないか、または実質的に含まない。少なくとも2つのN−ローブドメインが用いられる実施形態において、該混合物は、好ましくはC−ローブドメインまたはその一部を含まないか、または実質的に含まない。
【0077】
本開示による特定の好ましい実施形態において、少なくとも2つのポリペプチドの混合物であって、各ポリペプチドがグラム陰性菌種から得ることができる、または得られるHIBP表面受容体タンパク質のC−ローブドメインを含む、もしくはそれからなる混合物が用いられる。そのような実施形態において、該混合物は、好ましくはN−ローブドメインまたはその一部を含まない。特定の好ましい実施形態において、SEQ.ID NO:2;SEQ.ID NO:12;SEQ.ID NO:28;SEQ.ID NO:107〜SEQ.ID NO:115;SEQ ID NO:117;SEQ.ID NO:123;SEQ.ID NO:131〜SEQ.ID NO:147;SEQ.ID NO:177;SEQ.ID NO:178;SEQ.ID NO:196〜SEQ.ID NO:204;SEQ.ID NO:206〜SEQ.ID NO:212;およびSEQ.ID NO:219〜SEQ.ID NO:228に示されたHIBP表面受容体ポリペプチドから得ることができる、もしくは得られる任意の2つのC−ローブドメインが用いられるか、またはSEQ.ID NO:1;SEQ.ID NO:11;SEQ.ID NO:27;SEQ.ID NO:116;SEQ.ID NO:122;およびSEQ.ID NO:173に示される核酸配列から得ることができる、もしくは得られる任意の2つのC−ローブドメインが用いられる。さらに好ましい実施形態において、SEQ.ID NO:5;SEQ.ID NO:6;SEQ.ID NO:22;SEQ.ID NO:33;SEQ.ID NO:34;SEQ.ID NO:119;SEQ.ID NO:125;SEQ.ID NO:179〜SEQ.ID NO:195;およびSEQ.ID NO:213〜SEQ.ID NO:218;SEQ.ID NO:230;SEQ.ID NO:232;SEQ.ID NO:234〜SEQ.ID NO:278;およびSEQ.ID NO:288〜SEQ.ID NO:292に示されるC−ローブドメインから選択される任意の2つのC−ローブドメインが用いられる。
【0078】
さらに特に好ましい実施形態において、HIBP表面受容体タンパク質から得ることができる、または得られる少なくとも2つのC−ローブドメインが用いられ、少なくとも1つのC−ローブドメインが、アクチノバシラス属、ヘモフィルス属、ヒストフィルス属、マンヘミア属、モラクセラ属、ナイセリア属、パスツレラ属およびビベルスティニア属に属する菌種から得ることができる、または得られる。
【0079】
さらに特に好ましい実施形態において、少なくとも2つのC−ローブドメインが用いられ、少なくとも1つのC−ローブドメインが、アクチノバシラス・プルロニューモニエから得ることができる、もしくは得られるHIBP表面受容体タンパク質から得ることができる、もしくは得られ、好ましくはSEQ.ID. NO:6もしくはSEQ.ID NO:22に示されるC−ローブドメインであるか、または少なくとも1つのC−ローブドメインが、アクチノバシラス・スイスから得ることができる、もしくは得られるHIBP表面受容体タンパク質から得ることができる、もしくは得られ、好ましくはSEQ.ID NO:34に示されるC−ローブドメインである。
【0080】
さらに特に好ましい実施形態において、少なくとも2つのC−ローブドメインが用いられ、少なくとも1つのC−ローブドメインが、マンヘミア・ヘモリティカから得ることができる、もしくは得られるHIBP表面受容体タンパク質から得ることができる、もしくは得られ、好ましくはSEQ.ID. NO:232もしくはSEQ.ID NO:234に示されるC−ローブドメインであるか、または少なくとも1つのC−ローブドメインが、マンヘミア・グルコシダから得ることができる、もしくは得られるHIBP表面受容体タンパク質から得ることができる、もしくは得られる。
【0081】
さらに特に好ましい実施形態において、少なくとも2つのC−ローブドメインが用いられ、少なくとも1つのC−ローブドメインが、ナイセリア・ゴノレアから得ることができる、もしくは得られるHIBP表面受容体タンパク質から得ることができる、もしくは得られ、好ましくはSEQ.ID. NO:213〜SEQ.ID NO:218に示されるC−ローブドメインのうちの1つであるか、または少なくとも1つのC−ローブドメインが、ナイセリア・メニンギティディスから得ることができる、もしくは得られるHIBP表面受容体タンパク質から得ることができる、もしくは得られ、好ましくはSEQ.ID. NO: 119;SEQ.ID NO:125;SEQ.ID NO:128;SEQ.ID NO:129;SEQ.ID NO:130;SEQ.ID NO:131;SEQ.ID NO:152;SEQ.ID NO:154;SEQ.ID NO:156;SEQ.ID NO:158;SEQ.ID NO:160;SEQ.ID NO:164;SEQ.ID NO:166;SEQ.ID NO:168;SEQ.ID NO:179〜SEQ.ID NO:195;およびSEQ.ID NO:235〜SEQ.ID NO:278に示されるC−ローブドメインのうちの1つである。
【0082】
さらに特に好ましい実施形態において、少なくとも2つのC−ローブドメインが用いられ、少なくとも1つのC−ローブドメインが、ビベルスティニア・トレハロシから得ることができる、または得られるHIBP表面受容体タンパク質から得ることができる、または得られ、好ましくはSEQ.ID. NO:292に示されるC−ローブドメインである。
【0083】
さらに好ましい実施形態において、HIBP表面受容体ポリペプチドから得ることができる、または得られる少なくとも2つのC−ローブドメインが用いられ、該2つのC−ローブドメインの両方が、アクチノバシラス・プルロニューモニエ、好ましくはSEQ.ID NO:6またはSEQ.ID NO:22に示されるC−ローブドメイン、アクチノバシラス・スイス、好ましくはSEQ.ID NO:34に示されるC−ローブドメイン、およびヘモフィルス・パラスイス、好ましくはSEQ.ID NO:294に示されるC−ローブドメインから選択される2つの菌種から得ることができる、または得られる。
【0084】
さらに特に好ましい実施形態において、HIBP表面受容体ポリペプチドから得ることができる、または得られる少なくとも2つのC−ローブドメインが用いられ、該2つのC−ローブドメインの一方が、ナイセリア・ゴノレアから得ることができる、または得られ、好ましくはSEQ.ID NO:213〜SEQ.ID NO:218に示されるC−ローブドメインの1つであり、他方のC−ローブドメインが、ナイセリア・メニンギティディスから得ることができ、好ましくはSEQ.ID. NO:119;SEQ.ID NO:125;SEQ.ID NO:128;SEQ.ID NO:129;SEQ.ID NO:130;SEQ.ID NO:131;SEQ.ID NO:152;SEQ.ID NO:154;SEQ.ID NO:156;SEQ.ID NO:158;SEQ.ID NO:160;SEQ.ID NO:164;SEQ.ID NO:166;SEQ.ID NO:168;SEQ.ID NO:179〜SEQ.ID NO:195;およびSEQ.ID NO:235〜SEQ.ID NO:278に示されるC−ローブドメインの1つである。
【0085】
さらに好ましい実施形態において、HIBP表面受容体ポリペプチドから得ることができる、または得られる少なくとも2つのC−ローブドメインが用いられ、該2つのC−ローブドメインの一方が、マンヘミア・ヘモリティカから得ることができる、または得られ、好ましくはSEQ.ID NO:232;またはSEQ.ID NO:234に示されるC−ローブドメインであり、他方のC−ローブドメインが、ビベルスティニア・トレハロシから得ることができるか、または得られ、好ましくはSEQ.ID. NO:292に示されるC−ローブドメインである。
【0086】
さらに好ましい実施形態において、TbpBポリペプチドから得ることができる、または得られる少なくとも2つのC−ローブドメインが用いられ、2つのC−ローブドメインの両方が、1種または2種の細菌種から得ることができる、または得られ、該TbpBポリペプチドまたはそれから得られるC−ローブドメインが、抗原的に多様である。該TbpBまたはC−ローブドメインは、好ましくはTbpB変異体を交換することが可能な菌種または菌株から得られる。2つのTbpBポリペプチドまたはTbpBポリペプチドのC−ローブに関して本明細書で用いられる用語「抗原的に多様である」は、2つのTbpBポリペプチドまたはC−ローブの代表的数を用いて系統樹を構築するために用いられる場合に、2種のTbpBポリペプチドまたはTbpBポリペプチドのC−ローブドメインが系統樹の異なる枝または群に属することを意味する。本明細書によれば、任意の量のTbpBまたはC−ローブドメインポリペプチドを含む系統樹が構築され得るが、好ましくは系統樹は、少なくとも25のTbpBポリペプチドまたはC−ローブドメインポリペプチド、より好ましくは少なくとも30、少なくとも40、または少なくとも50のTbpBポリペプチドまたはC−ローブドメインポリペプチドを用いて構築され、好ましくは系統樹は、根のレベルの上位に少なくとも2つの節位(node orders)を含み、より好ましくは系統樹は、根のレベルの上位に少なくとも3つ、4つ、または5つの節位を含み、最も好ましくは根のレベルの上位に少なくとも6つ、7つ、8つ、9つまたは10の節位を含む(以下および
図30にさらに説明される)。抗原的に多様なTbpBポリペプチドまたはC−ローブドメインポリペプチドは、好ましくは(i)系統樹の最も高位の節より下位で少なくとも2つの節位が分岐している(例えば、系統樹の最高位の節が、第9位の節であるなら、抗原的に多様なポリペプチドは、第七位の節、またはより下位の節、即ち第六、第五、第四、第三、第二、第一位の節で分岐したそれらのポリペプチドである)、そして/または(ii)系統樹の少なくとも第一、第二、もしくは第三位の節で分岐している、異なる枝に属する。(i)T−Coffeeサーバーサイト(http://www.tcoffee.org/)上で実行されるM−Coffeeアライメントアルゴリズムを用いるプログラム(43)など、配列アライメントを実施するコンピュータアルゴリズム;(ii)Geneious Proなどのアライメントを編集するコンピュータプログラム(44);(iii)GBlocksなどのアライメントを自動で掃除するコンピュータプログラム(45);(iv)ProtTest v3.2(Darriba et al, 2011)などのアライメントと適合性のある進化モデルを選択するコンピュータプログラム、および(iv)一般時間逆転(GTR)モデル(47)(48、49)、またはJTT+I+G+FモデルもしくはWAG+G=Fモデルなどの他のモデル、またはPHYLIP and PAUP(University of Washington)などのプログラムで実行する最尤法を用いるプログラムPhyML(46)などの系統樹を作成するコンピュータプログラムなど、複数のコンピュータプログラムを用いることにより、TbpBポリペプチドまたはC−ローブドメインポリペプチドを用いた系統樹の構築を容易にすることができる。これらのプログラムのそれぞれは、好ましくは系統樹の枝が統計学的に有意であると思われるように構成される。しかし、より遠い枝が統計学的に有意性が低くなり得、したがって最も低位の節に基づく群に属する株の選択が好ましいことに、留意されたい。
【0087】
ここで
図30を参照すると、例示目的で、根120、中間の枝(130、131、140、141、142および143により示される)および合計38の遠位の枝(遠位枝150、151、152、153、154および155により示される)を有する系統樹100が示されており、各遠位枝は1〜38の菌株(株1〜38(110))のうちの1つから得られた関係のポリペプチドを表す。示された各枝は、節(節161、171、172、181、182、183および184により示される)から発生している。したがって例えば枝130は、節161から発生し、枝143は、節172から発生している。系統樹の根(120)に最も近い節(161)は、より具体的には第一位の節161と称され;節171および172は、より具体的には第二位の節171および172と称され、節181、182、183および184は、より具体的には第三位の節181、182、183および184と称され、さらなる節は、必要な変更を加えて、第四位、第五位、第六位、第七位などの節と称することができる。
図30に、さらなる4つの群(群1(105)、菌株(110)1〜17のポリペプチド;群2(106)、菌株(110)18〜24のポリペプチド;群3(107)、菌株(110)25〜30のポリペプチド;および群4(108)、菌株(110)26〜38のポリペプチド)が示される。群1(105)または群2(106)のいずれか、または両方に属する菌株のポリペプチドは、系統樹(100)の第一位の節(161)で分岐している枝(131)に属する。同様に群3(105)または群4(106)のいずれか、または両方に属する菌株のポリペプチドは、系統樹(100)の第一位の節(161)で分岐している枝(131)に属する。したがって群1(105)または群2(106)に属する菌株全てのポリペプチドは、群3(107)または群4(108)に属する菌株全てのポリペプチドとは抗原的に異なる。群1(105)または群2(106)に属する菌株のポリペプチドは、系統樹(100)の第二位の節(172)で分岐した群に属する。群1(105)に属する菌株のポリペプチドは、本明細書によれば、群2(106)に属する菌株とは抗原的に異なる。該系統樹が異なる形式で、例えば
図30のように長方形形式で、または
図10のように円形式で表され得ることに留意されたい。TbpBポリペプチドまたはC−ローブを用いて構築された例示的系統樹が、
図4(アクチノバシラス・プルロニューモニエ、アクチノバシラス・スイスおよびヘモフィルス・パラスイスの菌株を含む)、
図10(ナイセリア・メニンギティディスの菌株を含む)、
図26(ナイセリア・メニンギティディスおよびナイセリア・ゴノレアの菌株を含む)、
図27(ヘモフィルス・インフルエンザの菌株を含む)、
図28(マンヘミア・ヘモリティカおよびビベルスティニア・トレハロシの菌株を含む)および
図29(モラクセラ・カタラーリスの菌株を含む)に示される。
【0088】
さらに好ましい実施形態において、TbpBポリペプチドから得ることができる、または得られる少なくとも2つのC−ローブドメインが用いられ、該2つのC−ローブドメインの両方が、アクチノバシラス・プルロニューモニエ、アクチノバシラス・スイスおよびヘモフィルス・パラスイスから得ることができる、または得られる。
図4に示された系統樹を参照すると、好ましい実施形態において、少なくとも2つのC−ローブドメインが用いられ、第一のC−ローブが、
図4に示される系統群1、系統群2または系統群3に属するアクチノバシラス・プルロニューモニエ、アクチノバシラス・スイスまたはヘモフィルス・パラスイス菌株から選択されるC−ローブドメインの任意の1つから得られ、第二のC−ローブドメインが、
図4に示される、第一のC−ローブドメインが選択された系統群以外の系統群に属するアクチノバシラス・プルロニューモニエ、アクチノバシラス・スイスまたはヘモフィルス・パラスイス菌株から選択されるC−ローブドメインの任意の1つから得られる。さらに好ましい実施形態において、少なくとも3つのC−ローブドメインが用いられ、
図4に示された系統群1に属するアクチノバシラス・プルロニューモニエ、アクチノバシラス・スイスまたはヘモフィルス・パラスイス菌株に属する第一のC−ローブドメインが用いられ、
図4に示された系統群2に属するアクチノバシラス・プルロニューモニエ、アクチノバシラス・スイスまたはヘモフィルス・パラスイス菌株に属する第二のC−ローブドメインが用いられ、
図4に示された系統群3に属するアクチノバシラス・プルロニューモニエ、アクチノバシラス・スイスまたはヘモフィルス・パラスイス菌株に属する第三のC−ローブドメインが用いられる。したがって具体的実施例により、アクチノバシラス・スイスH57(系統群1;
図4の黒色の矢印)からのC−ローブドメインは、アクチノバシラス・プルロニューモニエH87(系統群2;
図4の黒色の矢印)からのC−ローブドメインおよびアクチノバシラス・プルロニューモニエH49(系統群3;
図4の黒色の矢印)のC−ローブドメインと組み合わせることができる。
【0089】
さらに好ましい実施形態において、TbpBタンパク質から得ることができる、または得られる少なくとも2つのC−ローブドメインが用いられ、該2つのC−ローブドメインの両方が、ナイセリア・メニンギティディスから得ることができる、または得られる。
図10Aに示された系統樹を参照すると、好ましい実施形態において、少なくとも2つのC−ローブドメインが用いられ、第一のC−ローブドメインは、
図10Aに示される系統群1、系統群2、系統群3または系統群4に属するナイセリア・メニンギティディス菌株から選択されるC−ローブドメインの任意の1つから得られ、第二のC−ローブドメインは、
図10Aに示される、第一のC−ローブドメインが選択された系統群以外の系統群に属するナイセリア・メニンギティディス株の任意の1つから得られる。あくまでも例として、ナイセリア・メニンギティディスB16B6株(系統群1;
図10Aの黒色の矢印)から得られたTbpB C−ローブドメインは、M982株(系統群4;
図10Aの黒色の矢印)からのTbpB C−ローブドメインと組み合わされ得る。さらに好ましい実施形態において、少なくとも3つのC−ローブドメインが用いられ、該C−ローブドメインは、
図10Aに示された3つの異なる群に属する菌株から選択される(例えば、各系統群1、系統群2および系統群3から選択されるC−ローブドメイン)。さらに好ましい実施形態において、少なくとも4つのC−ローブドメインが用いられ、
図10Aに示される群1に属するナイセリア・メニンギティディス株に属する第一のC−ローブドメインが用いられ、
図10Aに示される群2に属するナイセリア・メニンギティディス株に属する第二のC−ローブドメインが用いられ、
図10Aに示される系統群3に属するナイセリア・メニンギティディス株に属する第三のC−ローブドメインが用いられ、
図10Aに示される系統群4に属するナイセリア・メニンギティディス菌株に属する第四のC−ローブドメインが用いられる。したがってあくまでも例として、ナイセリア・メニンギティディスB16B6株(系統群1;
図10Aの黒色の矢印)、BZ169(系統群2;
図10Aの黒色の矢印)、S3131(系統群3;
図10Aの黒色の矢印)およびM982(系統群4;
図10Aの黒色の矢印)からのTbpB C−ローブドメインが、選択され得る。
【0090】
さらに好ましい実施形態において、TbpBポリペプチドから得ることができる、または得られる少なくとも2つのC−ローブドメインが用いられ、該2つのC−ローブドメインの1つが、ナイセリア・メニンギティディスから得ることができる、または得られ、C−ローブの他方が、ナイセリア・ゴノレアから得ることができる、または得られる。
図26Bに示される系統樹によれば、好ましい実施形態において、少なくとも2つのC−ローブドメインが用いられ、第一のC−ローブドメインが、
図26Bに示される系統群3に属するナイセリア・ゴノレア株から選択されるC−ローブドメインの任意の1つから選択され、第二のC−ローブドメインが、
図26Bに示される系統群1または2に属するナイセリア・メニンギティディス株から選択されるC−ローブドメインの任意の1つから選択される。より好ましくは、TbpBポリペプチドから得ることができる、または得られる少なくとも3つのC−ローブドメインが用いられ、2つのC−ローブドメインは、ナイセリア・メニンギティディスから得ることができる、または得られ、他方のC−ローブドメインは、ナイセリア・ゴノレアから得ることができる、または得られる。好ましくはC−ローブドメインは、
図26Bに示される系統群3に属するナイセリア・ゴノレア株から選択され、第二のC−ローブドメインは、
図26Bに示される系統群2に属するナイセリア・メニンギティディス株から選択されるC−ローブドメインの任意の1つから得られ、第3のC−ローブドメインは、
図26Bに示される系統群1に属するナイセリア・メニンギティディス株から選択されるC−ローブドメインの任意の1つから得られる。さらに好ましい実施形態において、TbpBポリペプチドから得ることができる、または得られる少なくとも4つのC−ローブドメインが用いられ、3つのC−ローブドメインが、ナイセリア・メニンギティディスから得ることができる、または得られ、その他のC−ローブドメインが、ナイセリア・ゴノレアから得ることができる、または得られる。好ましくはC−ローブドメインは、
図26Bに示される系統群3に属するナイセリア・ゴノレア株から選択され、第二および第三のC−ローブドメインは、
図26Bに示される系統群2の2つの異なる亜群(例えば、系統亜群2.1および系統亜群2.2)に属するナイセリア・メニンギティディス株から選択されるC−ローブドメインの任意の1つから得られ、第四のC−ローブドメインは、
図26Bに示される系統群1に属するナイセリア・メニンギティディス株から選択されるC−ローブドメインの任意の1つから得られる。さらに好ましい実施形態において、TbpBポリペプチドから得ることができる、または得られる少なくとも4つのC−ローブドメインが用いられ、2つのC−ローブドメインは、ナイセリア・メニンギティディスから得ることができる、または得られ、その他の2つのC−ローブドメインは、ナイセリア・ゴノレアから得ることができる、または得られる。好ましくは該2つのC−ローブドメインは、
図26Bに示される系統群3の2つの異なる系統亜群(例えば、系統亜群3.1および系統亜群3.2)に属するナイセリア・ゴノレア株から選択され、該第三および第四のC−ローブドメインは、それぞれ系統群1および系統群2に属するナイセリア・メニンギティディス株から得られる。さらなる実施形態において、TbpBポリペプチドから得ることができる、または得られる少なくとも5つのC−ローブドメインが用いられ、3つのC−ローブドメインは、ナイセリア・メニンギティディスから得ることができる、または得られ、他の2つのC−ローブドメインは、ナイセリア・ゴノレアから得ることができる、または得られる。好ましくはナイセリア・ゴノレア株から選択される2つのC−ローブドメインは、
図26Bに示される系統群3の2つの異なる系統亜群(例えば、系統亜群3.1および系統亜群3.2)に属し、第三および第四のC−ローブドメインは、
図26Bに示される系統群2の2つの異なる系統亜群(例えば、系統亜群2.1および系統亜群2.2)に属するナイセリア・メニンギティディス株から選択され、第五のC−ローブドメインは、
図26Bに示される系統群1に属するナイセリア・メニンギティディス株に属する。さらに好ましい実施形態において、TbpBポリペプチドから得ることができる、または得られる少なくとも6つのC−ローブドメインが用いられる。この実施形態において、少なくとも1つのC−ローブドメインは、ナイセリア・メニンギティディスから得られる、または得ることができ、少なくとも1つのC−ローブドメインは、ナイセリア・ゴノレアから得られる、または得ることができ、その他は、
図26Bに従って抗原的に異なる菌株から得られる、または得ることができる。好ましい実施形態において、3つのC−ローブドメインが、ナイセリア・メニンギティディスから得ることができる、または得られ、他の3つのC−ローブドメインが、ナイセリア・ゴノレアから得ることができる、または得られる。
図26Bを参照すると、好ましくはナイセリア・ゴノレア株から得られる3つのC−ローブドメインは、3つの抗原的に異なる群に属し、ナイセリア・メニンギティディスから得られる3つのC−ローブドメインは、3つの抗原的に異なる菌株に属する。
【0091】
さらに好ましい実施形態において、TbpBポリペプチドから得ることができる、または得られる少なくとも2つのC−ローブドメインが用いられ、2つのC−ローブドメインの一方は、ナイセリア・メニンギティディスから得ることができる、または得られ、C−ローブドメインの他方は、ナイセリア・ゴノレアから得ることができる、または得られる。
図26Aに示される系統樹を参照すると、好ましい実施形態において、少なくとも2つのC−ローブドメインが用いられ、第一のC−ローブドメインは、
図26Aに示される系統群3または系統群1に属するナイセリア・ゴノレア菌株から選択されるC−ローブドメインの任意の1つから得られ、第二のC−ローブドメインは、
図26Aに示される系統群2、系統群4または系統群5に属するナイセリア・メニンギティディス菌株から選択されるC−ローブドメインの任意の1つから得られる。
【0092】
さらに好ましい実施形態において、TbpBタンパク質から得ることができる、または得られる少なくとも2つのC−ローブドメインが用いられ、2つのC−ローブドメインの両方が、ヘモフィルス・インフルエンザから得ることができる、または得られる。
図27Aおよび27Bに示された系統樹を参照すると、好ましい実施形態において、少なくとも2つのC−ローブドメインが用いられ、第一のC−ローブドメインは、
図27Aまたは27Bに示された系統群1、系統群2、または系統群3に属するヘモフィルス・インフルエンザ菌株から選択されるC−ローブドメインの任意の1つから得られ、第二のC−ローブドメインは、
図27Aまたは27Bに示された、第一のC−ローブドメインが選択された系統群以外の系統群に属するヘモフィルス・インフルエンザ株の任意の1つから得られる。したがって、あくまでも例として、ヘモフィルス・インフルエンザH216株(系統群3;
図27Bの黒色の矢印)から得られたTbpB C−ローブドメインは、H214株(系統群1;
図27Bの黒色の矢印)からのTbpB C−ローブドメインと組み合わされ得る。さらに好ましい実施形態において、少なくとも3つのC−ローブドメインが用いられ、該C−ローブドメインは、
図27Aおよび
図27Bに示された3つの異なる群に属する菌株から選択される(即ち、各系統群1、系統群2および系統群3から選択されるC−ローブドメイン)。したがってあくまでも例として、ヘモフィルス・インフルエンザH216株(系統群3;
図27Bの黒色の矢印)、H214株(系統群1;
図27Bの黒色の矢印)およびH011株(系統群2;
図27Bの黒色の矢印)からのTbpBC−ローブドメインが、選択され得る
【0093】
さらに好ましい実施形態において、TbpBタンパク質から得ることができる、または得られる少なくとも2つのC−ローブドメインが用いられ、該2つのC−ローブドメインの両方が、マンヘミア・ヘモリティカから得ることができる、または得られる。
図28に示された系統樹を参照すると、好ましい実施形態において、少なくとも2つのC−ローブドメインが用いられ、第一のC−ローブドメインは、
図28に示される系統群1に属するマンヘミア・ヘモリティカ菌株から選択されるC−ローブドメインの任意の1つから得られ、第二のC−ローブドメインは、系統群3に属するマンヘミア・ヘモリティカ株の任意の1つから得られる。
【0094】
さらに好ましい実施形態において、TbpBポリペプチドから得ることができる、または得られる少なくとも2つのC−ローブドメインが用いられ、該2つのC−ローブドメインのうちの一方は、ビベルスティニア・トレハロシから得ることができる、または得られ、C−ローブドメインの他方は、マンヘミア・ヘモリティカから得ることができる、または得られる。
図28を参照すると、好ましい実施形態において、少なくとも2つのC−ローブドメインが用いられ、第一のC−ローブドメインは、
図28に示される系統群2に属するビベルスティニア・トレハロシ菌株から選択されるC−ローブドメインの任意の1つから得られ、第二のC−ローブドメインは、
図28に示される系統群1または系統群3に属するマンヘミア・ヘモリティカ株から選択されるC−ローブドメインの任意の1つから得られる。
【0095】
さらに好ましい実施形態において、TbpBタンパク質から得ることができる、または得られる少なくとも2つのC−ローブドメインが用いられ、該2つのC−ローブドメインの両方が、モラクセラ・カタラーリスから得ることができる、または得られる。
図29に示された系統樹を参照すると、好ましい実施形態において、少なくとも2つのC−ローブドメインが用いられ、第一のC−ローブドメインは、
図29に示される系統群1、系統群2または系統群3に属するモラクセラ・カタラーリス菌株から選択されるC−ローブドメインの任意の1つから得られ、第二のC−ローブドメインは、
図29に示される、第一のC−ローブドメインが選択された系統群以外の系統群に属するモラクセラ・カタラーリス株の任意の1つから得られる。あくまでも例として、モラクセラ・カタラーリスAAC34279.1株(系統群3;
図29の黒色の矢印)から得られたTbpB C−ローブドメインは、AAD12263.1株(系統群1;
図29の黒色の矢印)からのTbpB C−ローブドメインと組み合わされ得る。さらに好ましい実施形態において、少なくとも3つのC−ローブドメインが用いられ、該C−ローブドメインは、
図29に示された3つの異なる群に属する菌株から選択される(即ち、各系統群1、系統群2および系統群3から選択されるC−ローブドメイン)。したがってあくまでも例として、モラクセラ・カタラーリスAAC34279.1株(系統群3;
図29の黒色の矢印)、AAD12263.1(系統群1;
図29の黒色の矢印)および003664398.1(系統群2;
図29の黒色の矢印)からのTbpBC−ローブドメインが、選択され得る。
【0096】
特に好ましい実施形態において、C−ローブドメインを含む、またはそれからなる前述のポリペプチド混合物は、非限定的にSEQ.ID NO:5;SEQ.ID NO:6;SEQ.ID NO:22;SEQ.ID NO:33;SEQ.ID NO:34;SEQ.ID NO:119;SEQ.ID NO:125;SEQ.ID NO:179〜SEQ.ID NO:195;およびSEQ.ID NO:213〜SEQ.ID NO:218;SEQ.ID NO:230;SEQ.ID NO:232;およびSEQ.ID NO:234〜SEQ.ID NO:278に示されるC−ローブドメインをはじめとする、TbpBポリペプチドから得ることができる、または得られるC−ローブドメインである。
【0097】
前述のC−ローブドメイン混合物は、個々のC−ローブドメインを含む調製物を混合することにより、または2つ以上のC−ローブドメインを含む融合ポリペプチドを組換え生成することにより、調製され得る。
【0098】
本明細書でこれまで述べられた通り、本開示の免疫原性調製物は、好ましくは交差反応性および/または交差防御性がある。本明細書でこれまで述べられた通り、単一のC−ローブドメインを含む配合剤は、交差反応性および/または交差防御性があり得、より広範囲の菌株および/または菌種に対する交差反応性および/または交差防御性を実質的に拡大して、複数の細菌種または細菌株により伝播された感染または疾患からの防御を提供するワクチン配合剤の調製を可能にするために用いられ得るということにおいて、C−ローブドメインの混合物は特に好ましい。
【0099】
他の実施形態によれば、C−ローブドメインまたはN−ローブドメイン内で2つのβ鎖を連結しているループドメインが修飾され、該ポリペプチドが宿主鉄結合タンパク質に実質的に結合することができないように、HIBP表面受容体ポリペプチドのC−ローブドメインおよび/またはN−ローブドメインを含むポリペプチドが調製され得る。ループドメインと共に本明細書で用いられる用語「修飾された」は、少なくとも1つのアミノ酸残基が除去または置換されているループを指す。したがってC−ローブドメインまたはN−ローブドメイン内の得られたループは、切断され得るか、または他の実施形態においてアミノ酸残基であり得、残基は、1つまたは複数の交互のアミノ酸残基で置換され得る。
図1および
図2は、例示的なHIBP表面受容体タンパク質のループドメインを示す。
図8および
図14は、それぞれN−ローブドメインおよびC−ローブドメイン内のループ減少の例を示す。本明細書によれば、HIBP結合膜受容体タンパク質のC−ローブドメインまたはN−ローブドメイン内の2つのβ鎖を接続させるループドメインの少なくとも1つが、ループドメインから少なくとも1つのアミノ酸残基を除去するように修飾されており、得られたポリペプチドは修飾されたN−ローブドメインまたはC−ローブドメインを含み、宿主鉄結合タンパク質に実質的に結合することができない。別の実施形態において、より多くのアミノ酸残基が除去されており、例えば少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100のアミノ酸残基が、ループドメインから除去されている。別の実施形態において、該ループドメインは、全体が除去されている。ループドメインのいずれかを、本開示に従って修飾するように選択することができるが、ただしそのような修飾が、宿主鉄結合タンパク質に実質的に結合することができないポリペプチドをもたらすことを条件とする。したがって
図1の例示的なブタTbpBポリペプチドを参照すると、1つのループドメインが修飾された本開示の実施形態において、そのようなループドメインは、表1にさらに示される通り、ループドメインL1〜L32(それぞれアクチノバシラス・プルロニューモニエのループL1〜L32ポリペプチド配列:SEQ.ID:NO42;SEQ.ID:NO44;SEQ.ID:NO46;SEQ.ID:NO48;SEQ.ID:NO50;SEQ.ID:NO52;SEQ.ID:NO54;SEQ.ID:NO56;SEQ.ID:NO58;SEQ.ID:NO60;SEQ.ID:NO62;SEQ.ID:NO64;SEQ.ID:NO66;SEQ.ID:NO68;SEQ.ID:NO70;SEQ.ID:NO72;SEQ.ID:NO74;SEQ.ID:NO76;SEQ.ID:NO78;SEQ.ID:NO80;SEQ.ID:NO82;SEQ.ID:NO84;SEQ.ID:NO86;SEQ.ID:NO88;SEQ.ID:NO90;SEQ.ID:NO92;SEQ.ID:NO94;SEQ.ID:NO96;SEQ.ID:NO98;SEQ.ID:NO100;SEQ.ID:NO102;SEQ.ID:NO104;およびSEQ.ID:NO106に例示され、それぞれ核酸配列:SEQ.ID:NO41;SEQ.ID:NO43;SEQ.ID:NO45;SEQ.ID:NO47;SEQ.ID:NO49;SEQ.ID:NO51;SEQ.ID:NO53;SEQ.ID:NO55;SEQ.ID:NO57;SEQ.ID:NO59;SEQ.ID:NO61;SEQ.ID:NO63;SEQ.ID:NO65;SEQ.ID:NO67;SEQ.ID:NO69;SEQ.ID:NO71;SEQ.ID:NO73;SEQ.ID:NO75;SEQ.ID:NO77;SEQ.ID:NO79;SEQ.ID:NO81;SEQ.ID:NO83;SEQ.ID:NO85;SEQ.ID:NO87;SEQ.ID:NO89;SEQ.ID:NO91;SEQ.ID:NO93;SEQ.ID:NO95;SEQ.ID:NO97;SEQ.ID:NO99;SEQ.ID:NO101;SEQ.ID:NO103;およびSEQ.ID:NO105によりコードされる)の任意の1つであるように選択され得る。2つのスープドメインが修飾された本開示の実施形態において、そのような2つのループドメインは、表2にさらに示された通り、ループドメインL1〜L32ドメインから選択される任意の2つのループドメインであり得る(同じく、
図1の例示的なTbpBポリペプチドを参照する)。3つのループドメインが修飾された本開示の実施形態において、そのような3つのループドメインは、表3にさらに示された通り、ループドメインL1〜L32ドメインから選択される任意の3つのループドメインであり得る(同じく、
図1の例示的なTbpBポリペプチドを参照する)。4つのスープドメインが修飾された本開示の実施形態において、そのような4つのループドメインは、表3にさらに示されたループの組み合わせから選択される3つのループドメインに加えて、ループドメインL1〜L32から選択される1つのさらなるループドメインであり得る(同じく、
図1の例示的なTbpBポリペプチドを参照する)。別の実施形態において、総数で5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31または32のループドメインが修飾され得る。修飾されたループドメインの厳密な数は様々であってもよく、2つまたは3つのループドメインが修飾された実施形態に関して記載されたループドメインの選択と類似の手法で、本開示のこれらの実施形態のそれぞれにおいて、ループL1〜L32から選択される任意の5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31または32のループドメインになるように選択され得ることは、当業者に明白であろう。特定の好ましい実施形態において、C−ローブドメインのループL18、L21、L23およびL27(それぞれアクチノバシラス・プルロニューモニエSEQ.ID NO:76;SEQ.ID NO:82;SEQ.ID NO:86;およびSEQ.ID NO:96に例示)の1つまたは全てが修飾されている。さらに特に好ましい実施形態において、N−ローブドメインのループL1、L5、L8およびL12(それぞれアクチノバシラス・プルロニューモニエ SEQ.ID NO:42;SEQ.ID NO:50;SEQ.ID NO:56;SEQ.ID NO:64に例示)の1つまたは全てが修飾されている。修飾され得るループドメインは、C−ローブドメインもしくはN末端ローブドメインのβバレルもしくはハンドルドメインβシート内で組立てられた2つのβ鎖を接続するループドメイン、または2つの組立てられたβ鎖を接続するループドメイン、または前述のものの組み合わせである。C−ローブドメインまたはN末端ローブドメイン内のループドメインを切断するために、該ポリペプチドは、ループドメインが全体として除去され、場合により1つまたは複数の連結したアミノ酸と置換され、これにより2つのβ鎖の間に幾分かの直接的な接続をもたらするような手法で、またはループドメインの1つの部分もしくは複数の部分が除去されるような手法で、調製され得る。本明細書によれば、好ましくはC−ローブドメインまたはN−ローブドメインのループドメインの少なくとも1つからのアミノ酸残基の少なくとも半分が、除去されている。さらに好ましい実施形態において、該ループドメインの全てのアミノ酸残基の少なくとも半分が、除去されている。したがってループドメインが例えば40のアミノ酸残基を含むそのような実施形態において、ループドメインの少なくとも20のアミノ酸残基が、除去されていることになる。さらなる実施形態において、ループドメインのアミノ酸残基の少なくとも60%、70%、80%または90%が除去されるように、ループドメインが修飾されている。他の実施形態において、切断の後に、ループドメインの最大1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10のアミノ酸が保持され、さらに別の実施形態において、切断の後にループドメインの最大10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%または90%が保持される。ループドメインの一部だけが除去されるようにループドメインが修飾されている実施形態において、除去されたアミノ酸残基は、ループドメインのN末端、ループドメインのC末端または該N末端とC末端の間に位置され得る。C−ローブドメインまたはN−ローブドメインの複数のループドメインが修飾されている実施形態において、そのようなループの減少は、各ループから同一数のアミノ酸残基の除去を含み、例えばC−ローブドメインまたはN−ローブドメイン内の各ループから10のアミノ酸残基が除去され得るか、またはループの除去は、各ループから異なる量のアミノ酸残基の除去、例えば1つのループの10の残基と、別のループの20の残基の除去を含み得る。
【0100】
さらに好ましい実施形態において、C−ローブドメインおよび/またはN−ローブドメイン内のアミノ酸残基は、例えば部位特異的突然変異誘発により、他のもので置換されており、得られたポリペプチドは、修飾されたC−ローブドメインまたはN−ローブドメインを含み、宿主鉄結合タンパク質に実質的に結合することができない。
図22は、様々なTbpBポリペプチドのN−ローブドメインループ領域内の残基置換の例を提供しており、
図23は、これらの残基置換によるTf結合の減少を示している。したがって例えば1つまたは複数のアミノ酸残基は、ループL1〜L32の任意の1つが置換されていてもよい。特定の好ましい実施形態において、1つまたは複数のアミノ酸残基は、N−ローブドメインのループドメインL1、L3、L5またはL8(それぞれアクチノバシラス・プルロニューモニエSEQ.ID NO:42;SEQ.ID NO:46;SEQ.ID NO:50;およびSEQ.ID NO:56により例示)が置換されている。好ましい実施形態において、ループドメインL8内の芳香族アミノ酸(フェニルアラニン、チロシンおよびトリプトファン)が、脂肪族アミノ酸(グリシン、バリン、ロイシン、イソロイシン)で置換されている。これらは、他の例では一般にカチオン性表面領域にある、表面への接近が可能な芳香族アミノ酸残基である。特に好ましい実施形態において、ヘモフィルス・パラスイスTbpBポリペプチドが選択され、以下の突然変異:Y93A(SEQ.ID NO:170;SEQ.ID NO:171);Y117A(SEQ.ID NO:172;SEQ.ID NO:173);Y167A(SEQ.ID.NO: 174;SEQ.ID NO:175)またはW176A(SEQ.ID NO:176;SEQ.ID NO:177)の1つまたは複数がTbpBポリペプチド内に作製されて、修飾されたTbpBポリペプチドが得られ、さらに好ましい実施形態において、アクチノバシラス・プルロニューモニエTbpBポリペプチドが選択され、以下の突然変異の1つまたは複数:F171A(SEQ.ID NO:3;SEQ.ID NO:4);Y95A(SEQ.ID NO:13;SEQ.ID NO:14);Y121A(SEQ.ID NO:15;SEQ.ID NO:16);Y174A(SEQ.ID NO:17;SEQ.ID NO:18);またはR179E(SEQ.ID NO:19;SEQ.ID NO:20)が該ポリペプチド内に作製されて、修飾されたTbpBポリペプチドが得られ、さらに好ましい実施形態において、アクチノバシラス・スイスTbpBポリペプチドが選択され、以下の突然変異の1つまたは複数:F63A(SEQ.ID NO:29;SEQ.ID NO:30)またはF152A(SEQ.ID NO:31;SEQ.ID NO:32)が該ポリペプチド内に作製されて、修飾されたTbpBポリペプチドが得られる。本開示は、前述の修飾されたポリペプチドのそれぞれ、およびこれらのポリペプチドをコードする核酸配列に加え、これらのポリペプチドを含む免疫原性組成物およびワクチンを含む。
【0101】
本開示によるHIBPポリペプチドの1つもしくは複数のループドメインのサイズ減少、またはループドメイン内のアミノ酸修飾は、好ましくは得られるポリペプチドがコンフォメーション的に安定するように生成される。用語「コンフォメーション的に安定した」は、ポリペプチドのコンフォメーション状態またはコンフォメーションが、ループのサイズ修飾またはアミノ酸残基置換の後に実質的に同一のままであることを意味する。修飾されるループドメインのコンフォメーション状態は、幾分か改変され得る。ポリペプチドのコンフォメーション状態またはコンフォメーションの決定事項としては、アミノ酸配列に反映されるポリペプチドの一次構造、ポリペプチドの二次構造(例えば、α−へリックス、β−シートなど)、ポリペプチドの三次構造(即ち、ポリペプチド鎖の三次元フォールディング)および四次構造(即ち、ポリペプチドと他のタンパク質サブユニットとの相互作用)がある。タンパク質のコンフォメーションは、pH、浸透圧、イオン強度および塩濃度などの環境因子によりさらに影響を受け得る。ループ減少の設計は、複数の異種配列のアライメントおよび比較、当該技術分野で知られる複数の異種ポリペプチドの三次元コンフォメーション構造の比較、および保存的アミノ酸置換の利用(例えば、gly、ala;val、ile;leu、met;asp、glu;asn、gln;ser、thr;lys、arg;cys、met;およびphe、trp、tyrなどの組み合わせ)により情報を与えられ得る。さらに、タンパク質のコンフォメーション状態は、機能的アッセイ(例えば、宿主鉄結合タンパク質の結合)、または物理的方法、例えばX線結晶測定もしくは核磁気共鳴(NMR)によりアッセイされ得る。
【0102】
さらなる実施形態において、最長のループを含むHIBP表面受容体タンパク質のC−ローブドメインまたはN−ローブドメインの少なくとも1つのループドメインが、修飾されるように選択される。そのようなループが全体として修飾された実施形態において、これは一般に、少なくとも25のアミノ酸残基の除去を含み、150以上のアミン酸残基の除去をもたらす場合もある。
【0103】
好ましい実施形態において、C−ローブドメインまたはN−ローブドメインの最長の(即ち、ほとんどのアミノ酸残基を含む)ループを含むHIBP表面受容体タンパク質のC−ローブドメインまたはN−ローブドメインの少なくとも1つのループドメインが、修飾されている。さらに好ましい実施形態において、C−ローブドメインまたはN−ローブドメインの最長のループを含むHIBP表面受容体タンパク質のC−ローブドメインまたはN−ローブドメインの少なくとも1つのループドメインが修飾され、二番目に長いループを含むHIBP表面受容体タンパク質のC−ローブドメインまたはN−ローブドメインの第二のループドメインが、修飾されるように選択される。さらに好ましい実施形態において、最長のループを含むHIBP表面受容体タンパク質のC−ローブドメインまたはN−ローブドメインの少なくとも1つのループドメイン、および二番目に長いループを含むHIBP表面受容体タンパク質のC−ローブドメインまたはN−ローブドメインの第二のループドメインが、修飾されるように選択され、三番目に長いループを含むHIBP表面受容体タンパク質のC−ローブドメインまたはN−ローブドメインの第三のループドメインが、修飾されるように選択される。さらに好ましい実施形態において、最長のループを含むHIBP表面受容体タンパク質のC−ローブドメインまたはN−ローブドメインの少なくとも1つのループドメイン、および二番目に長いループを含むHIBP表面受容体タンパク質のC−ローブドメインまたはN−ローブドメインの第二のループドメインが、修飾されるように選択され、三番目に長いループを含むHIBP表面受容体タンパク質のC−ローブドメインまたはN−ローブドメインの第三のループドメインが、修飾されるように選択され、四番目に長いループを含むHIBP表面受容体タンパク質のC−ローブドメインまたはN−ローブドメインの第四のループドメインが、修飾されるように選択される。上述の実施形態は、本明細書の実施例3および4にさらに詳述される。
【0104】
驚くべきことに、本明細書により、例えば微生物産生系において、1つまたは複数のループドメインが修飾されて修飾されたポリペプチドが実質的にコンフォメーション的に安定していれば、実質的にHIBP表面受容体タンパク質のC−ローブドメインまたはN−ローブドメインからなるポリペプチドが、即座に生成され得ることが見出された。
【0105】
本明細書によれば、修飾されたC−ローブドメインまたはN−ローブドメインポリペプチドは、それ自体が免疫原として用いられ得るか、または該ポリペプチドは、さらなる修飾を含むように調整され得る。本明細書により作製され得るポリペプチドの修飾されたC−ローブドメインまたはN−ローブドメインへの修飾は、ネイティブまたは修飾されたC−ローブドメインまたはN−ローブドメインポリペプチドのN末端またはC末端ポリペプチド伸長の調製を含む。そのようなN末端およびC末端ポリペプチド伸長には、C−ローブドメインに第二の全長C−ローブドメインを付加してそれによりC−ローブドメイン二量体を提供すること、N−ローブドメインに第二の全長N−ローブドメインを付加してそれによりN−ローブドメイン二量体を提供すること、またはC−ローブドメインポリペプチドの一部またはN−ローブドメインポリペプチドの一部を含む付加がある。多量体が、同じ単量体ポリペプチド(即ち、ホモ二量体、ホモ三量体)を用いて組み立てられてもよく、またはそれらが、異なるポリペプチド、例えば異なる変異体(即ち、ヘテロ二量体、ヘテロ三量体など)から得られたC−ローブドメインまたはN−ローブドメインを用いて組み立てられてもよい。好ましい実施形態において、異なる病原または病原性菌株を表すヘテロ多量体タンパク質が、組み立てられる。したがって1つの好ましい実施形態において、アクチノバシラス・プルロニューモニエ、アクチノバシラス・スイスおよびヘモフィルス・パラスイスのC−ローブドメインまたはN−ローブドメインからなる群から選択されるC−ローブドメインまたはN−ローブドメインを含むヘテロ多量体ポリペプチドが、調製される。特に好ましい実施形態において、C−ローブドメインまたはN−ローブドメインが、A.プルロニューモニエH49、A.スイスH57およびA.プルロニューモニエH87のC−ローブドメインまたはN−ローブドメインからなる群から選択される。更に好ましい実施形態において、ナイセリア・メニンギティディスの菌株から選択される少なくとも2つのTbpBC−ローブドメインまたはN−ローブドメインから選択されるC−ローブドメインを含むヘテロ多量体ポリペプチドが、調製される。特に好ましい実施形態において、該菌株は、N.メニンギティディスM982またはN.メニンギティディスB16B6から選択される。ヘテロ多量体タンパク質は、異なる病原への免疫原性を運搬し得る。さらに好ましい実施形態において、本開示は、(i)グラム陰性菌種から得ることができる、または得られるHIBP表面受容体タンパク質のN−ローブドメインまたはC−ローブドメインを含む第一のポリペプチドであって、該N−ローブドメインまたはC−ローブドメインが、複数のループドメインにより接続された複数のβ鎖を含み、該N−ローブドメインまたはC−ローブドメインの複数のループドメインの少なくとも1つのループドメインが、修飾されている、第一のポリペプチドと、(ii)該少なくとも1つのループドメインが連結し、HIBP表面受容体タンパク質またはその一部を含み、グラム陰性菌種から得ることができる、第二のポリペプチドと、を提供する。好ましい実施形態において、HIBP表面受容体タンパク質の一部は、N−ローブドメインまたはC−ローブドメインである。さらに好ましい実施形態において、HIBP表面受容体タンパク質の一部は、グラム陰性病原菌種から得ることができる、または得られるHIBP表面受容体タンパク質のN−ローブドメインまたはC−ローブドメインであり、該N−ローブドメインまたはC−ローブは、複数のループドメインにより接続された複数のβ鎖を含み、該N−ローブドメインまたはC−ローブドメインの複数のループドメインの少なくとも1つのループドメインは、修飾されている。
【0106】
さらなる実施形態において、多量体ポリペプチドが調製され、そのような多量体タンパク質は、C−ローブドメインに第二、第三、第四、第五、第六または第七の全長C−ローブドメインポリペプチドを付加し、それによりC−ローブドメイン多量体を提供するか、またはN−ローブドメインに第二、第三、第四、第五、第六または第七の全長N−ローブドメインを付加し、それによりN−ローブドメイン二量体を提供するか、またはC−ローブドメインポリペプチドの一部もしくはN−ローブドメインポリペプチドの一部を含む付加など、複数のNおよびC末端伸長を含む。したがって例えば一実施形態において、該C−ローブドメインは、A.プルロニューモニエ、A.スイスおよびヘモフィルス・パラスイスから得ることができるTbpBポリペプチドから得ることができる少なくとも2つまたは少なくとも3つのC−ローブドメインである。そのような実施形態によれば、A.プルロニューモニエH49(SEQ.ID NO:5)、A.スイス H57(SEQ.ID NO:33)およびA.プルロニューモニエH87(SEQ.ID NO:21)からのTbpB C−ローブドメインをコードする核酸配列が連結されて、3つのC−ローブ(SEQ.ID NO:6;SEQ.ID NO:34;SEQ.ID NO:22)を含む単一ポリペプチド(SEQ.ID NO:40)をコードするキメラ核酸配列(SEQ.ID NO:39)を形成し得る。したがってさらなる実施形態において、本開示は、(i)グラム陰性病原菌種から得ることができる、または得られるHIBP表面受容体タンパク質のN−ローブドメインまたはC−ローブドメインを含む第一のポリペプチドであって、該N−ローブドメインまたはC−ローブドメインが、複数のループドメインにより接続された複数のβ鎖を含み、該N−ローブドメインまたはC−ローブドメインの複数のループドメインの少なくとも1つのループドメインが、修飾されている、第一のポリペプチドと、(ii)該少なくとも1つのループドメインが連結し、各ペプチドがHIBP表面受容体タンパク質またはその一部を含み、グラム陰性菌種から得ることができる、複数のポリペプチドと、を提供する。好ましい実施形態において、HIBP表面受容体タンパク質の一部が、N−ローブドメインまたはC−ローブドメインである。さらに好ましい実施形態において、HIBP表面タンパク質の一部は、グラム陰性病原菌種から得ることができる、または得られるHIBP表面受容体タンパク質のN−ローブドメインまたはC−ローブドメインであり、該N−ローブドメインまたはC−ローブは、複数のループドメインにより接続された複数のβ鎖を含み、該N−ローブドメインまたはC−ローブドメインの複数のループドメインの少なくとも1つのループドメインは、修飾されている。
【0107】
さらなる実施形態において、HIBP表面受容体タンパク質のC−ローブまたはN−ローブの1つまたは複数のループドメインからの1つまたは複数のアミノ酸の除去により、これらの残基は、1つまたは複数の交互のアミノ酸残基で置換される。一実施形態において、該交互のアミノ酸残基は、脊椎動物宿主生物体内の免疫応答を誘発し得る異種ポリペプチド抗原決定基を含む。さらなる実施形態において、該交互のアミノ酸残基は、脊椎動物宿主生物体内の免疫応答を誘発し得る異種ポリペプチド抗原決定基を2つ以上含む。該異種抗原決定基は、同じまたは異なる病原生物体に対して免疫交差反応性があり得る。したがって、本明細書によるHIBP表面受容体タンパク質の修飾されたC−ローブドメインまたはN−ローブドメインがスカフォールドとして用いられて、1つ以上の抗原決定基を生成および提示し得ることは、明白であろう。好ましい実施形態において、TbpBのC−ローブドメインまたはN−ローブドメインの1つまたは複数のループ領域が、トランスフェリン結合タンパク質(「TbpA」)またはラクトフェリン結合タンパク質A(「LbpA」)をはじめとするIOMタンパク質から得ることができる、または得られる1つまたは複数のポリペプチド部分で置換されている。本明細書により用いられ得るLbpAおよびTbpAポリペプチドは、SEQ.ID NO:162およびSEQ.ID NO:152に示されたものを包含する。本明細書により用いられ得るLbpAおよびTbpAポリペプチドの一部は、SEQ.ID NO:286およびSEQ.ID NO:287に示されたものを包含する。これらの断片を用いて、SEQ.ID. NO:163;SEQ.ID. NO:164;SEQ.ID. NO:165;SEQ.ID. NO:166、SEQ.ID. NO:167;およびSEQ.ID. NO:168にしめされたものをはじめとするキメラ核酸配列およびポリペプチドを構築することができる。本開示のこの実施形態は、本明細書の実施例7および8にさらに詳述される。さらに好ましい実施形態において、TbpBのC−ローブまたはN−ローブの1つまたは複数のループドメインが、実施例9にさらに記載される通り、高リシンポリペプチド配列で置換されている。
【0108】
N−ローブドメインを含むHIBP表面受容体ポリペプチドを含む本明細書の以前に記載された実施形態の全てにおいて、N末端アンカーポリペプチドまたはその実質的な部分がN−ローブドメインから除去されるようにN−ローブドメインが修飾されることが、好ましい。アンカーポリペプチドの長さは、HIBP表面受容体ポリペプチドに応じて変動し得るが、典型的には40〜75アミノ酸長の範囲内であり、成熟したHIBPポリペプチドのN末端に位置する。したがって
図1を参照すると、そこに描写された成熟したTbpBポリペプチドのアンカーポリペプチドは、43アミノ酸長である。したがってN−ローブドメインを含むHIBPポリペプチドを含む本明細書の好ましい実施形態において、該アンカーポリペプチドは、少なくとも10アミノ酸残基、好ましくは少なくとも15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70または75残基、長さが減少している。アンカーポリペプチドの一部が長さの減少について選択される実施形態において、好ましくはアンカーポリペプチドのN末端の連続部分、例えばアンカーペプチドの10末端アミノ酸残基が除去されているが、アンカーポリペプチドの他の部分もまた、除去されていてもよい。更に好ましい実施形態において、アンカーペプチドが切断されているTbpBポリペプチドが、SEQ.ID NO:279〜SEQ.ID NO:283を含む。本開示の発明者らは、アンカーポリペプチドの除去が修飾されたHIBP表面受容体ポリペプチドの凝集を減少させてポリペプチドをより容易に生成しながら、ポリペプチドの免疫原性に実質的に影響を及ぼさないことから、前述の実施形態が特に望ましいことを見出した。したがってHIBPポリペプチドのこの修飾は、修飾されたループドメインを含むN−ローブドメインまたはC−ローブドメインを含む本明細書に記載されたHIBPポリペプチド、およびHIBPポリペプチドが宿主鉄結合タンパク質に実質的に結合することができないように単一アミノ酸が置換されたN−ローブまたはC−ローブドメインを含むHIBPポリペプチドなど、本明細書で示された宿主鉄結合タンパク質に実質的に結合することができない修飾ペプチドのいずれかと共に用いられ得る。
【0109】
前述の通り、本開示によれば、HIBP表面受容体タンパク質は、宿主鉄結合タンパク質に実質的に結合することができないように修飾されている。修飾されたHIBP表面受容体タンパク質への宿主鉄結合タンパク質の結合は、例えば固相結合アッセイ、アフィニティー捕捉アッセイ、または生物物理学的アッセイなど、そのような結合を評価することが可能な任意の化学的または生化学的アッセイを利用して評価され得る。これらのアッセイを実施する一般的方法論は、当業者に知られており、例えば(12、23〜25、50、51)に記載されている。これらのアッセイを実施することにより、ネイティブHIBP表面受容体タンパク質とネイティブ宿主鉄結合タンパク質、および修飾HIBP表面受容体タンパク質とネイティブ宿主鉄結合タンパク質、の結合特性の差が、即座に決定され得、一連の修飾されたHIBP表面受容体タンパク質が、宿主鉄結合タンパク質に結合し得るかどうかを決定するために評価され得る。結合定数(Kd)をはじめとする異なる結合特性が、決定され得る。上述の通り、本開示の宿主鉄結合タンパク質と修飾されたHIBP表面受容体タンパク質との結合を特徴づけるKdは、宿主鉄結合タンパク質とネイティブHIBP表面受容体タンパク質との結合を特徴づけるKdよりも少なくとも2倍高い。宿主トランスフェリンを用いて結合定数を決定する1つの例示的なアッセイ方法が、本明細書の実施例11にさらに記載される。
【0110】
本開示は、
(i)修飾HIBP表面受容体タンパク質とネイティブHIBP表面受容体タンパク質を用意すること;
(ii)修飾HIBP表面受容体タンパク質と宿主鉄結合タンパク質との結合特性を測定して、修飾HIBP表面受容体タンパク質の結合特性を得ること;
(iii)ネイティブHIBP表面受容体タンパク質と宿主鉄結合タンパク質との結合特性を測定して、ネイティブHIBP表面受容体タンパク質の結合特性を得ること;
(iv)修飾HIBP表面受容体タンパク質の特性と、ネイティブHIBP表面受容体タンパク質の特性とで結合特性を比較すること;
(v)ネイティブHIBP表面受容体タンパク質の結合特性に対して実質的に調整された結合特性を示すHIBP表面受容体タンパク質を同定すること、
を含む、修飾HIBP表面受容体タンパク質を同定する方法をさらに含む。
【0111】
本明細書で用いられる「実質的に調整された」は、修飾HIBP表面受容体タンパク質と宿主鉄結合タンパク質との結合相互作用力が、ネイティブHIBP表面受容体タンパク質と該宿主鉄結合タンパク質との結合相互作用力よりも実質的に弱いことを意味する。好ましい実施形態において、用いられる結合特性は、HIBP表面受容体タンパク質と宿主鉄結合タンパク質との結合相互作用に関するKdであり、該修飾HIBP表面受容体タンパク質と宿主鉄結合タンパク質との結合相互作用のKd値は、ネイティブHIBP表面受容体タンパク質と該宿主鉄結合タンパク質との結合相互作用のKdよりも少なくとも2倍大きな値である。前述の方法を用いて、複数の異なる候補HIBP表面受容体タンパク質を同時に、または連続してスクリーニングし、スクリーニングされた候補HIBP表面受容体タンパク質のうち、ネイティブHIBP表面受容体タンパク質に対して結合特性が幾分か顕著な調整を示すものを同定することができることを、さらに留意されたい。
【0112】
本開示は、
(i)修飾HIBP表面受容体タンパク質とネイティブHIBP表面受容体タンパク質を用意すること;
(ii)修飾HIBP表面受容体タンパク質と宿主鉄結合タンパク質との結合特性を測定して、修飾HIBP表面受容体タンパク質の結合特性を得ること;
(iii)ネイティブHIBP表面受容体タンパク質と宿主鉄結合タンパク質との結合特性を測定して、ネイティブHIBP表面受容体タンパク質の結合特性を得ること;
(iv)修飾HIBP表面受容体タンパク質の結合特性と、ネイティブHIBP表面受容体タンパク質の結合特性を比較すること;
(v)ネイティブHIBP表面受容体タンパク質の結合特性に対して実質的に調整された結合特性を示すHIBP表面受容体タンパク質を同定すること、
(vi)ワクチンとしての使用のために、ネイティブHIBP表面受容体タンパク質の結合特性に対して実質的に調整された結合特性を示す修飾HIBP表面受容体タンパク質を調製すること、
を含む、ワクチンとしての使用のための修飾HIBP表面受容体タンパク質を調製する方法をさらに含む。
【0113】
前述によれば、ネイティブHIBP表面受容体タンパク質の結合特性に対して実質的に調整された結合特性を示す同定されたHIBP表面受容体タンパク質を用いて、例えばHIBP表面受容体タンパク質を組換え生成し、HIBP表面タンパク質を単離して、HIBP表面受容体タンパク質を含むワクチン配合剤を調製することにより、免疫原性配合剤を調製することができる。
【0114】
さらなる実施形態において、本開示は、表面受容体タンパク質変異体に対する抗血清の交差反応性を評価する方法を含む。したがって本開示は、
(i)表面受容体タンパク質をコードする複数の核酸配列を用意すること;
(ii)複数の表面受容体タンパク質のうちの核酸配列変異を決定すること;
(iii)表面受容体タンパク質の変異体部分を選択すること;
(iv)該変異体の表面受容体タンパク質のN末端またはC末端部分をコードする核酸配列を、ビオチン化を受け易いペプチドをコードする核酸配列、および宿主細胞内の発現を制御することが可能な核酸配列に連結して、キメラ核酸配列を形成させること;
(v)該キメラ核酸配列を宿主細胞に導入して該キメラ核酸配列を発現させて、該ビオチン化を受け易いペプチドに融合された該変異体の表面受容体タンパク質のN末端またはC末端部分を含む融合ポリペプチドを生成させること;
(vi)宿主細胞から細胞溶解物を調製すること;
(vii)該細胞抽出物を、ストレプトアビジン・コーティング免疫アッセイ基質材料に塗布すること;ならびに
(viii)抗血清と表面受容体タンパク質の変異体部分との交差反応性を評価するために、抗血清を該免疫アッセイ基質材料に塗布し、該免疫アッセイ基質材料を洗浄して、標識された第二のコンジュゲートを塗布すること、
を含む、表面受容体タンパク質変異体に対する抗血清の交差反応性を評価する方法をさらに含む。
【0115】
ビオチン化を受けやすいペプチドをコードする核酸配列が、さらに、十分な長さの核酸配列を含むことができ、発現の際に、融合ポリペプチドのポリペプチド伸長が可能になるため、表面受容体タンパク質が免疫アッセイ基質材料から離れていて、それにより抗体の結合が完全に実行可能になる。ストレプトアビジン・コーティング免疫アッセイ基質材料は、例えばELISAプレートなど、任意の基質材料であり得る。
【0116】
さらなる実施形態において、本開示は、
(i)表面受容体タンパク質をコードする複数の核酸配列を用意すること;
(ii)複数の表面受容体タンパク質のうちの核酸配列変異を測定すること;
(iii)表面受容体タンパク質をコードする核酸配列を置換することが可能な逆選択マーカを含む宿主細胞を用意すること;
(iv)表面受容体タンパク質をコードする1つまたは複数の核酸配列の複数の変異体部分をPCR増幅させて、表面受容体変異体をコードする複数のPCR産物を得るが、ここで、該PCR増幅が逆選択マーカを含む宿主細胞にPCR産物を挿入することが可能になるように実施され、各PCR産物の同定が可能なように該PCR産物が特有の外来核酸配列を含むこと;
(v)逆選択マーカを含む宿主細胞に複数のPCR産物を導入および発現させて、抗原性HIBP変異体のライブラリを提供すること;ならびに
(vi)該ライブラリの全てまたは一部をインビボまたはインビトロ免疫原性アッセイで使用して、該ライブラリまたはその一部の交差反応性または交差防御性を評価すること、
を含む、抗血清表面受容体タンパク質変異体の交差反応性または防御性を評価する方法を含む。
【0117】
インビボまたはインビトロ免疫アッセイは、任意のELISAアッセイ、機能的免疫アッセイ、または動物感染モデルをはじめとする任意のアッセイであり得る。
【0118】
さらなる実施形態において、本開示は、
(i)(a)ワクチンが対象とする宿主病原菌種からの哺乳動物CEACAM受容体を発現するトランスジェニックマウス株と、(b)該トランスジェニックマウス株と遺伝子的に同一であるがCEACAM受容体を発現しないマウス株と、を用意すること;
(ii)変異体表面受容体タンパク質を発現するグラム陰性菌株がトランスジェニックマウス株の上気道に定着することが可能であること、そしてCEACAM受容体を発現しないマウス株の上気道で定着することができないことを実証すること;
(iii)表面受容体タンパク質に由来する抗原での免疫化が、表面受容体タンパク質変異体を発現するグラム陰性菌株で感染されたトランスジェニックマウスの上気道での定着の非存在をもたらすかどうかを決定すること;
(iv)表面受容体タンパク質に由来する抗原で免疫化された動物からの抗血清の提供が、表面受容体タンパク質変異体を発現するグラム陰性菌株で感染された非トランスジェニック免疫化マウスの上気道での定着の非存在をもたらすかどうかを決定すること;
(v)グラム陰性菌株からの表面受容体タンパク質の一部を含むライブラリを調製し、動物の上気道定着モデルにおいて該ライブラリを使用して、表面受容体変異体でチャレンジされた動物の上気道の定着を評価すること;
(vi)場合により、動物にチャレンジするために用いられたライブラリから得られたDNA、および/または暴露後の適切な時間にチャレンジされた動物から得られた試料から得られたDNAを抽出および調製して、異なる受容体変異体を発現する株の割合を決定すること、
を含む、表面受容体タンパク質変異体を発現するグラム陰性菌株による哺乳動物上気道の定着予防のためのワクチンの有効性を評価する方法を含む。
【0119】
一般に、本開示を読めば、本開示により一連の異なる調整ポリペプチドを調製および獲得することができ、その全てが修飾HIBP表面受容体タンパク質であり、該修飾HIBP表面受容体タンパク質が宿主鉄結合タンパク質に実質的に結合することができないように該修飾がなされることは、当業者に理解されよう。これらの調整ポリペプチドおよびそのような調整ポリペプチドを作製する方法は、全て本明細書に示された組成物および方法の範囲に含まれるものとする。
【0120】
修飾されたC−ローブドメインまたはN−ローブドメインポリペプチドは、従来からHIBP表面受容体タンパク質をコードする核酸配列を用意すること、および修飾C−ローブドメインまたはN−ローブドメインを含むポリペプチドが組換え宿主生物体、例えば微生物細胞において発現されるようにネイティブ核酸配列を調整すること、により調製されている。核酸配列への調整は、例えば部位特異的突然変異誘発、標的突然変異誘発、ランダム突然変異誘発、有機溶媒の添加、遺伝子シャッフル、または当業者に知られるこれらおよび他の技術の組み合わせなど、一般に当業者に知られる様々な核酸修飾技術を利用して実行することができ、各方法論は、内部のループドメインが修飾されるようにC−ローブドメインまたはN−ローブドメインのループドメインをターゲットにするように設計される。あるいはサイズ修飾されたC−ローブドメインまたはN−ローブドメインポリペプチドをコードする調整核酸配列は、最初から遺伝子合成技術を利用して調製され得る。核酸配列を調製および修飾するための一般的技術は、例えばGreen and Sambrook, Molecular Cloning, a Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2012, (33)において、当業者に即座に利用できる。
【0121】
本開示の別の実施形態において、免疫原性組成物を調製する方法が提供される。したがって本開示は、
(a)動作可能に連結された成分として、
(i)グラム陰性菌種から得ることができるHIBP表面受容体タンパク質のC−ローブドメインまたはN−ローブドメインを含むポリペプチドをコードする核酸配列であって、該ポリペプチドが宿主鉄結合タンパク質に実質的に結合することができないように修飾されている、核酸配列と、
(ii)組換え宿主細胞内での発現を制御することが可能な核酸配列と、
を含むキメラ核酸配列を用意すること;
(b)該キメラ核酸配列を宿主細胞に導入し、該宿主細胞を生育させて、C−ローブドメインまたはN−ローブドメインを含む該ポリペプチドを生成させること;
(c)該宿主細胞から、C−ローブドメインまたはN−ローブドメインを含むポリペプチドを回収すること;および
(d)免疫原性組成物を調製すること、
を含む、免疫原性組成物を調製する方法を提供する。
【0122】
特定の実施形態において、該C−ローブドメインまたはN−ローブドメインは、複数のループドメインにより接続された複数のβ鎖を含み、該複数のループドメインの少なくとも1つのループドメインは修飾されており、該ポリペプチドは、宿主鉄結合タンパク質に実質的に結合することができないように修飾されている。
【0123】
さらに好ましい実施形態において、本開示は、
(a)動作可能に連結された成分として、
(i)グラム陰性菌種から得ることができるHIBP表面受容体タンパク質の第一のC−ローブドメインまたは第一のN−ローブドメインを含むポリペプチドをコードする第一の核酸配列と、
(ii)グラム陰性菌種から得ることができるHIBP表面受容体タンパク質の第二のC−ローブドメインまたは第二のN−ローブドメインを含むポリペプチドをコードする第二の核酸配列と、
(iii)組換え宿主細胞内での発現を制御することが可能な核酸配列と、
を含むキメラ核酸配列を用意すること;
(b)該キメラ核酸配列を宿主細胞に導入し、該宿主細胞を生育させて、第一および第二のC−ローブドメインまたは第一および第二のN−ローブドメインを含む該ポリペプチドを生成させること;
(c)該宿主細胞から、第一および第二のC−ローブドメインまたは第一および第二のN−ローブドメインを含むポリペプチドを回収すること;および
(d)免疫原性組成物を調製すること、
を含む、免疫原性組成物を調製する方法を提供する。
【0124】
好ましい実施形態において、第一の核酸と第二の核酸は、第一および第二のC−ローブドメインまたは第一および第二のN−ローブドメインを含むヘテロ多量体融合ポリペプチドが生成されるように動作可能に連結され、該ヘテロ多量体融合ポリペプチドは、宿主鉄結合タンパク質に実質的に結合することができない。
【0125】
本明細書によれば、HIBP表面受容体タンパク質をコードする核酸配列は、宿主細胞におけるHIBP表面受容体タンパク質の発現を制御することが可能な核酸配列に連結されている。したがって本開示はまた、宿主細胞における発現を制御することが可能なプロモータに連結されたHIBP表面受容体タンパク質をコードする核酸配列を提供する。本明細書で用いられ得る宿主における発現を制御することが可能な核酸配列は、宿主細胞におけるポリペプチドの発現を制御することが可能な任意の転写プロモータを含む。一般に、細菌細胞から得られたプロモータは、細菌宿主が本明細書に従って選択された場合に用いられ、真菌プロモータは、真菌宿主が選択された場合に用いられ、植物プロモータは、植物細胞が選択された場合に用いられる、などである。宿主細胞における発現を制御することが可能なさらなる核酸要素としては転写ターミネータ、エンハンサなどが挙げられ、それらは全て、本開示のキメラ核酸配列に含まれ得る。
【0126】
本開示によれば、グラム陰性菌種から得ることができるHIBP表面受容体タンパク質のC−ローブドメインまたはN−ローブドメインを含むポリペプチドをコードする核酸配列に連結された、宿主における発現を制御することが可能なプロモータを含むキメラ核酸配列であって、該C−ローブドメインまたはN−ローブドメインが複数のループドメインにより接続された複数のβ鎖を含み、該複数のループドメインの少なくとも1つのループドメインが修飾されている、キメラ核酸配列は、組換え発現ベクターに挿入されて、宿主細胞における良好な発現を確実にすることができる。したがって本開示は、動作可能に連結された成分として、
(i)宿主における発現を制御することが可能な核酸配列と;
(ii)グラム陰性菌種から得ることができる、または得られるHIBP表面受容体タンパク質のC−ローブドメインまたはN−ローブドメインを含むポリペプチドをコードする核酸配列であって、該ポリペプチドが宿主鉄結合タンパク質に実質的に結合することができないように修飾されている、核酸配列と
を含み、宿主細胞における発現に適している、組換え発現ベクターを含む。用語「宿主細胞における発現に適する」は、組換え発現ベクターが、宿主細胞において発現を実現するのに必要な遺伝要素に連結された本開示のキメラ核酸配列を含むことを意味する。これに関して発現ベクター内に含まれ得る遺伝要素としては、転写終結領域、マーカ遺伝子をコードする1つまたは複数の核酸配列、1つまたは複数の複製起点などが挙げられる。遺伝要素は、典型的には当業者に知られる通り、例えばプロモータを5’から3’の転写方向でコード配列に連結することにより、動作可能に連結される。好ましい実施形態において、該発現ベクターは、宿主細胞のゲノムにおけるベクターまたはその一部の挿入に必要な遺伝要素をさらに含む。さらなる実施形態において、該C−ローブドメインまたはN−ローブドメインは、複数のループドメインにより接続された複数のβ鎖を含み、該複数のループドメインの少なくとも1つのループドメインは、修飾されている。
【0127】
本開示に従えば、該発現ベクターは、マーカ遺伝子をさらに含み得る。本開示に従って用いられ得るマーカ遺伝子は、選択およびスクリーニングが可能な全てのマーカ遺伝子をはじめとし、形質転換細胞と非形質転換細胞との識別を可能にする全ての遺伝子を包含する。該マーカ遺伝子は、例えばカナマイシンまたはアンピシリンに対して、抗生物質耐性マーカなどの耐性マーカになり得る。視覚的精査を通してトランスフォーマントを同定するのに用いられ得るスクリーニング可能なマーカとしては、β−ガラクトシダーゼ、β−グルクロニダーゼ(GUS)(米国特許第5,268,463号および同第5,599,670号)および緑色蛍光タンパク質(GFP)が挙げられる(52)。
【0128】
特に簡便に用いられ得る宿主細胞の1つが、大腸菌である。大腸菌ベクターの調製は、制限消化、ライゲーション、ライゲーション非依存性クローニング、ゲル電気泳動、DNA配列決定、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、および他の方法論など、一般に知られる技術を用いて達成され得る。本発明者が開発した慣用ベクターをはじめとする組換え発現ベクターを調製するのに求められる必須のステップを実施するのに、非常に様々なクローニングベクターを利用できる。中でも、大腸菌において機能する複製系を有するベクターが、pUCまたはpETシリーズのベクターなどのベクターである。典型的にはこれらのクローニングベクターは、形質転換細胞の選択を可能にするマーカを含む。核酸配列をこれらのベクターに導入することができ、該ベクターは、競合する細胞の調製、電気穿孔、または当業者に周知の他の方法論の利用により、大腸菌に導入され得る。大腸菌は、ルリア・ブロス培地などの適切な培地で生育させ、回収することができる。組換え発現ベクターは、細胞の回収および溶解により、即座に採取され得る。さらに、組換えベクターの調製および組換え生物体の生育に関する一般的ガイダンスは、例えばSambrook et al., Molecular Cloning, a Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2001, Third Ed (33)に見出され得る。
【0129】
組換えタンパク質の生成は、好ましくは大きなバイオマスに達した生育期間の後に発現を誘導することにより、大腸菌株の生育期全体を通して行うことができる。これは、C−ローブドメインもしくはN−ローブドメイン、またはループが修飾されたC−ローブドメインもしくはN−ローブドメインを含むポリペプチドの生成をもたらす。該ポリペプチドは、次に、例えば金属キレートクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、ゲルろ過などの様々な異なるタンパク質精製技術により、他の宿主細胞成分から回収、単離および分離され得る。タンパク質精製に関するさらなる一般的ガイダンスは、例えばProtein Purification: Principles, High Resolution Methods, and Applications(53)に見出すことができる。本明細書で用いられる用語「回収された」は、該ポリペプチドが幾分か純粋な形態で得られることを意味する。好ましい実施形態において、グラム陰性菌種から得ることができるHIBP表面受容体タンパク質のC−ローブドメインを含む実質的に免疫原性のポリペプチドであって、該C−ローブドメインまたはN−ローブドメインが複数のループドメインにより接続された複数のβ鎖を含み、該複数のループドメインの少なくとも1つのループドメインが修飾されている、ポリペプチドを、本明細書により得ることができる。したがって本明細書により得られたHIBPポリペプチドは、実質的に純粋な形態で調製され得る。「実質的に純粋な」は、該免疫原性タンパク質が、他の宿主細胞成分から分離されていることを意味する。本明細書によれば、該免疫原性タンパク質は、少なくとも95%純粋であり、より好ましくは少なくとも96%、97%、98%または99%純粋である。あるいは該HIBPポリペプチドを含む相対的に粗製の画分、例えば該ポリペプチドを含む細胞、該ポリペプチドを含む細胞溶解物、または該ポリペプチドを含む細胞画分を得ることができる。
【0130】
さらなる実施形態において、本開示は、脊椎動物対象において免疫応答を誘発する方法を提供する。該免疫応答は、該免疫原性タンパク質の送達により、または該免疫原性タンパク質をコードする核酸配列を含む発現ベクターの送達により、誘発され得る。したがって本開示は、脊椎動物対象において免疫応答を誘発する方法であって、
(a)グラム陰性菌種から得ることができるHIBP表面受容体タンパク質のC−ローブドメインもしくはN−ローブドメインを含むポリペプチドを含む免疫原であって、該ポリペプチドが宿主鉄結合タンパク質に実質的に結合することができない、免疫原;または
(b)グラム陰性菌種から得ることができるHIBP表面受容体タンパク質のC−ローブドメインもしくはN−ローブドメインを含むポリペプチドを含む免疫原をコードする核酸配列を含む発現ベクターであって、該ポリペプチドが宿主鉄結合タンパク質に実質的に結合することができない、発現ベクター、
を該対象に投与することを含み、該免疫原が、該脊椎動物対象における免疫応答を誘発するのに十分な量で投与または発現される、方法をさらに提供する。
【0131】
本開示はまた、脊椎動物対象における免疫応答を誘発するための、
(a)グラム陰性菌種から得ることができるHIBP表面受容体タンパク質のC−ローブドメインもしくはN−ローブドメインを含むポリペプチドを含む免疫原であって、該ポリペプチドが宿主鉄結合タンパク質に実質的に結合することができない、免疫原;または
(b)グラム陰性菌種から得ることができるHIBP表面受容体タンパク質のC−ローブドメインもしくはN−ローブドメインを含むポリペプチドを含む免疫原をコードする核酸配列を含む発現ベクターであって、該ポリペプチドが宿主鉄結合タンパク質に実質的に結合することができない、発現ベクター、
の使用を提供する。
【0132】
本開示は、脊椎動物対象における免疫応答を誘発するための薬剤の製造における、
(a)グラム陰性菌種から得ることができるHIBP表面受容体タンパク質のC−ローブドメインもしくはN−ローブドメインを含むポリペプチドを含む免疫原であって、該ポリペプチドが宿主鉄結合タンパク質に実質的に結合することができない、免疫原;または
(b)グラム陰性菌種から得ることができるHIBP表面受容体タンパク質のC−ローブドメインもしくはN−ローブドメインを含むポリペプチドを含む免疫原をコードする核酸配列を含む発現ベクターであって、該ポリペプチドが宿主鉄結合タンパク質に実質的に結合することができない、発現ベクター、
の使用をさらに提供する。
【0133】
本開示はさらにまた、脊椎動物対象における免疫応答を誘発するための、
(a)グラム陰性菌種から得ることができるHIBP表面受容体タンパク質のC−ローブドメインもしくはN−ローブドメインを含むポリペプチドを含む免疫原であって、該ポリペプチドが宿主鉄結合タンパク質に実質的に結合することができない、免疫原;または
(b)グラム陰性菌種から得ることができるHIBP表面受容体タンパク質のC−ローブドメインもしくはN−ローブドメインを含むポリペプチドを含む免疫原をコードする核酸配列を含む発現ベクターであって、該ポリペプチドが宿主鉄結合タンパク質に実質的に結合することができない、発現ベクター、
を提供する。
【0134】
好ましい実施形態において、該ポリペプチドは、少なくとも2つのC−ローブドメイン、または少なくとも2つのN−ローブドメインを含む。さらに好ましい実施形態において、該ポリペプチドは、少なくとも3つのC−ローブドメイン、または少なくとも3つのN−ローブドメインを含む。
【0135】
特定の実施形態において、該C−ローブドメインまたはN−ローブドメインは、複数のループドメインにより接続された複数のβ鎖を含み、該複数のループドメインの少なくとも1つのループドメインは、該C−ローブドメインまたはN−ローブドメインが宿主鉄結合タンパク質に実質的に結合することができないように修飾されている。
【0136】
本開示は、HIBP表面受容体ポリペプチドのC−ローブドメインまたはN−ローブドメインを含む免疫原であって、該C−ローブドメインまたはN−ローブドメインが、複数のループドメインにより接続された複数のβ鎖を含み、該少なくとも1つのループドメインが、薬剤としての使用のために修飾されている、免疫原をさらに含む。
【0137】
本開示は、HIBP表面受容体ポリペプチドのC−ローブドメインまたはN−ローブドメインを含む免疫原であって、該C−ローブドメインまたはN−ローブドメインが、複数のループドメインにより接続された複数のβ鎖を含み、該少なくとも1つのループドメインが、アクチノバシラス属、ナイセリア属、ヘモフィルス属、マンヘミア属、ヒストフィルス属、パスツレラ属またはモラクセラ属に属する細菌をはじめとする感染性グラム陰性菌による感染または疾患の予防への使用のために修飾されている、免疫原をさらに含む。
【0138】
本開示は、HIBP表面受容体ポリペプチドのC−ローブドメインまたはN−ローブドメインを含む免疫原であって、該C−ローブドメインまたはN−ローブドメインが、複数のループドメインにより接続された複数のβ鎖を含み、該少なくとも1つのループドメインが、アクチノバシラス属、ナイセリア属、ヘモフィルス属、マンヘミア属、ヒストフィルス属、パスツレラ属またはモラクセラ属に属する菌をはじめとする感染性グラム陰性菌による感染または疾患の予防のための薬剤の製造において使用するために修飾されている、免疫原をさらに含む。
【0139】
ワクチン調製物
本開示は、ワクチン調製物をさらに提供する。したがって本開示は、グラム陰性病原菌種からのHIBP表面受容体タンパク質由来の抗原を含むワクチン組成物であって、該HIBP表面受容体タンパク質由来のタンパク質が、宿主鉄結合タンパク質に実質的に結合することができないように修飾されている、ワクチン組成物をさらに提供する。本開示のワクチン組成物は、好ましくはグラム陰性病原菌種から得ることができるHIBP表面受容体タンパク質、HIBP表面受容体タンパク質のC−ローブドメインまたはN−ローブドメイン、を含むポリペプチドを含むワクチンであって、該ポリペプチドが宿主鉄結合タンパク質に実質的に結合することができないように修飾されている、ワクチンを含む。好ましい実施形態において、該ワクチン調製物は、2つの異なる細菌種または2つの異なる菌株に属するC−ローブドメインの混合物を含む。さらに好ましい実施形態において、該ポリペプチドは、少なくとも2つまたは少なくとも3つのN−ローブドメインまたはC−ローブドメインを含む。さらに好ましい実施形態において、前記少なくとも2つまたは少なくとも3つのN−ローブドメインまたはC−ローブドメインは、ヘテロ多量体を形成する。さらなる実施形態において、該C−ローブドメインまたはN−ローブドメインは、複数のループドメインにより接続された複数のβ鎖を含み、該複数のループドメインの少なくとも1つのループドメインは、修飾されている。
【0140】
本開示のワクチン調製物は、幾分か純粋な形態の免疫原性HIBPポリペプチドを含む。したがって本明細書によれば、実質的に純粋なHIBPポリペプチドを得ることができ、ワクチン配合剤を調製するのに用いることができる。他の実施形態において、より粗製のHIBPポリペプチド調製物を得ることができ、ワクチン配合剤を調製するのに用いることができる。したがって例えばそのような実施形態において、HIBPポリペプチドを含む細胞、細胞溶解物または細胞画分を用いて、ワクチン配合剤を調製することができる。
【0141】
対象における免疫応答を増大させるために、本明細書で提供される組成物は、さらに好ましくは薬剤、サイトカインなどのアジュバントを含む。適切なアジュバントとしては、本開示の免疫原性ポリペプチドに対する対象の免疫応答を増強する任意の物質が挙げられる。アジュバントの非限定的例としては、サイトカイン、例えばIL−1、IL−2、IL−12、IL−6が挙げられ、さらに、Wilson−Welder et al.(54)に論評された通り、無機塩、例えば水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、およびリン酸カルシウム;油性エマルジョン、例えば鉱物油、MF59、QS−21、Montamide ISA51およびISA−720;Isocom類、例えばISCOMATRIX;微生物誘導体、例えばMPLA、マクロファージ活性化タンパク質−2(macrophage−activating protein−2)、ビロソーム、LT/CT、CpG;天然ポリマー、例えば多糖類;ならびに合成ポリマー、例えばポリ酸無水物およびポリエステルが挙げられる。アジュバントは、例えばポリペプチド抗原の投与と同時に、その前に、またはその後にタンパク質または他の巨大分子として投与され得る。
【0142】
免疫原性タンパク質の用量は、ヒト対象の場合、一般に約0.1μg〜約20mg、好ましくは10μg〜約3mgの範囲内である。しかし必要となる厳密な量は、処置されるレシピエント対象の年齢および一般的状態、処置される疾病の重症度、送達される特定の調製物、投与部位、および他の因子に応じて変動するであろう。適切な治療有効量は、当業者により即座に決定され得る。したがって本発明の組成物の「治療有効量」は、疾患もしくは疾病の症状の処置もしくは予防をもたらすのに、または病原菌による定着を予防するのに十分な量であり、日常的試験で決定され得る相対的に広い範囲に収まるであろう。
【0143】
本開示の免疫原性組成物を含むワクチン調製物は、好ましくはビヒクル、賦形剤および補助物質、例えば湿潤または乳化剤、pH緩衝物質などをさらに含み、賦形剤またはビヒクル中に存在し得る。これらのビヒクル、賦形剤および補助物質は、一般にレシピエント対象において免疫応答を誘発しない医薬剤であり、過度の毒性をもたらさずに投与され得る。医薬的に許容し得る賦形剤としては、水、生理食塩水、ポリエチレングリコール、ヒアルロン酸、グリセロールおよびエタノールなどの液体が挙げられるが、これらに限定されない。医薬的に許容し得る塩、例えば塩酸塩、リン酸塩、硫酸塩などの無機酸塩;および酢酸塩、プロピオン酸塩、安息香酸塩などの有機酸の塩を本明細書に含めることができる。特に本開示のポリペプチドを安定化させるために、該調製物が安定化剤として働く医薬的に許容し得る賦形剤を含むことも、必要ではないが好ましい。ペプチドの安定化剤としても働く適切な担体の例としては、医薬等級のデキストロース、スクロース、ラクトース、ソルビトール、イノシトール、デキストランなどが挙げられるが、これらに限定されない。他の適切な担体としては、デンプン、セルロース、リン酸ナトリウムまたはカルシウム、クエン酸、グリシン、ポリエチレングリコール(PEG)、およびこれらの組み合わせが挙げられるが、同じくこれらに限定されない。
【0144】
本開示のワクチン調製物を用いて、非限定的にアクチノバシラス・プルロニューモニエ、アクチノバシラス・スイス、ヘモフィルス・パラスイス、ナイセリア・メニンギティディスをはじめとする、非限定的にアクチノバシラス属、ナイセリア属、ヘモフィルス属、マンヘミア属、ヒストフィルス属、パスツレラ属またはモラクセラ属に属する菌などの感染性グラム陰性菌により誘発される感染または疾患を予防することができる。該ワクチン調製物を用いて、宿主鉄結合タンパク質を発現する任意の脊椎動物対象、および非限定的に任意の哺乳動物対象、例えば任意のヒト対象、ブタ対象、ウシ対象、ウマ対象、ヒツジ対象、ヤギ対象、イヌ対象、ネコ対象、ウサギ対象、およびさらに任意の反芻動物対象、およびネズミ対象を免疫化することができる。免疫化され得る他の脊椎動物対象としては、任意の鳥類対象および魚類対象が挙げられる。本開示のワクチン調製物は、レシピエント宿主生物体において高い交差反応性および交差防御性免疫反応を示す。さらに、本開示のワクチン調製物は、脊椎動物対象の呼吸管または生殖管の細菌定着など、感染性グラム陰性菌による感染および/または定着を予防し得ることに、留意されたい。
【0145】
本開示は、HIBP表面受容体タンパク質、HIBP表面受容体ポリペプチドのC−ローブドメインまたはN−ローブドメインを含むワクチンであって、該C−ローブドメインまたはN−ローブドメインが、複数のループドメインにより接続された複数のβ鎖を含み、該少なくとも1つのループドメインが、アクチノバシラス属、ナイセリア属、ヘモフィルス属、マンヘミ属、ヒストフィルス属、パスツレラ属またはモラクセラ属に属する細菌をはじめとする感染性グラム陰性菌による感染または疾患の予防に使用するために修飾されている、ワクチンをさらに含む。
【0146】
ワクチン調製物のテスト
本明細書に従って、本開示のワクチン調製物の有効性を、例えばワクチン調製物で免疫化された対象の血清中に存在する抗体力価を決定することにより、例えば酵素免疫測定法(ELISA)の実践により、評価することができる。したがって本開示は、グラム陰性病原菌種から得ることができるHIBP表面受容体タンパク質のC−ローブドメインまたはN−ローブドメインを含むワクチン調製物の有効性を評価する方法であって、該ポリペプチドが宿主鉄結合タンパク質に実質的に結合することができないように修飾されていて、
(a)グラム陰性病原菌種から得ることができるHIBP表面受容体ポリペプチド、HIBP表面受容体ポリペプチドのC−ローブドメインまたはN−ローブドメインを含むワクチン調製物を、脊椎動物対象に投与し、該ポリペプチドが宿主鉄結合タンパク質に実質的に結合することができないように修飾されていること;
(b)該脊椎動物対象から血清を得ること;および
(c)該HIBP表面受容体ポリペプチドに対する抗体の存在について該血清をアッセイすること、
を含む、方法をさらに含む。
【0147】
脊椎動物血清は、単一または複数の(例えば、2、3、または4)用量のワクチン調製物の投与の後にアッセイされ得る。ELISAアッセイなどのアッセイを、単一または複数の微生物の異なる菌株または菌種からのHIBP表面受容体タンパク質単離物を用いて実施することができる。ELISAアッセイは、マルトース結合タンパク質などのキャリアタンパク質に、該HIBP表面受容体ポリペプチドを連結させることを含み得る。複数のHIBP表面受容体タンパク質単離物に対する抗体の反応性がアッセイされれば、ワクチン調製物を交差反応性について評価することができる。
【0148】
ワクチン接種レジメン
本明細書の技術の観点から当業者に明白な通り、上記ポリペプチドまたはそのようなポリペプチドをコードする核酸配列のワクチン接種(DNAワクチン)は、単一用量で、処置期間を通して連続または間欠的に実行され得る。最も効果的な手段および投与量を決定する方法は、当業者に周知であり、送達ベクター、組成物の性質、探索される具体的な予防または治療、標的細胞、および処置される対象に応じて変動するであろう。単回および反復投与が、適切な医療従事者により選択された投与レベルおよびパターンで実施され得る。
【0149】
上記医薬調製物の投与は、単一用量で、処置期間を通して連続または間欠的に実行され得る。送達は、最も典型的には液体組成物用および微粒子組成物を含む液体懸濁物用の従来の針およびシリンジを介する。加えて、様々な液体ジェットインジェクタが、当該技術分野で知られており、本発明の組成物を投与するのに用いられ得る。ワクチン送達経路は、様々であり得る。したがって本開示のワクチンは、静脈内、皮下、筋肉内、膣内、腹腔内、鼻内、経口または他の粘膜経路で送達され得る。最も効果的な投与手段および投与量を決定する方法は、当業者に周知であり、送達ビヒクル、治療の組成物、標的細胞、および処置される対象に応じて変動するであろう。単回および反復投与が、担当医師または獣医師により選択された投与レベルおよびパターンで実施され得る。
【0150】
実施例
以下は、本開示を実施するための具体的な実施形態の例である。該実施例は、例示を目的として示しているに過ぎず、本開示の範囲を限定するものではない。
【0151】
実施例1 − TbpB C−ローブドメイン、TbpB N−ローブドメインおよびそれらの混合物での免疫応答
この実施例は、より望ましい免疫応答を得るためにTbpB受容体タンパク質のサブドメインを使用する価値の例を示している。本発明者らがより望ましい免疫応答により意味するものに関して、本発明者らは、抗体反応の規模、および抗体と変異体TbpBタンパク質との交差反応性の両方を検討する。
【0152】
図3Aは、異なる宿主種(マウス、ウサギおよびブタ)をヒト病原ナイセリア・メニンギティディス(B16B6株−SEQ.ID NO:117)から、またはブタ病原アクチノバシラス・プルロニューモニエ(H49株−SEQ.ID NO:2)からのインタクトTbpBで免疫化させた、この実施例の第一の実験の結果を示している。免疫化された動物の血清を、本発明者ら特製のELISAアッセイ(以下参照)において免疫化抗原に対してテストした。結果から、ブタ病原A.プルロニューモニエ(灰色の棒)からのTbpBとのブタの抗体反応の規模(力価)がヒト病原N.メニンギティディス(黒色の棒)からのTbpBに比較して、他の宿主種よりも実質的に低かったことが示されており、宿主トランスフェリンの結合がTbpBに対する抗体反応の発達に影響を及ぼしていることが示唆される。
【0153】
第二の実験(
図3B)は、ウシ病原マンヘミア・ヘモリティカ(H196株−SEQ.ID NO:206)からのインタクトTbpB、またはブタ病原アクチノバシラス・プルロニューモニエ(H49株)からのインタクトTbpB(SEQ.ID NO:2)、TbpB N−ローブ(SEQ.ID NO:8)もしくはTbpB C−ローブ(SEQ.ID NO:6)によるブタの免疫化を含む。
図3Bは、免疫化前(白色の棒)、最初の免疫化後(淡灰色の棒)、2回目の免疫化後(濃灰色の棒)および3回目の免疫化後(黒色の棒)の個々のブタ(棒のクラスタ)における免疫応答を示している。力価を二進対数として表現して、力価を評価するのに用いられた2倍希釈を反映していることに留意されたい。ブタのほとんどが、3回目の免疫化後に高い抗体力価(26,000〜256,000)を示したが、A.プルロニューモニエからのインタクトTbpBまたはTbpB N−ローブで免疫化されたブタの数匹は、実質的に低い力価(5,300〜8,000)を示した。インタクトTbpBで免疫化されたブタ4匹中2匹と、TbpB N−ローブで免疫化されたブタ3匹が実質的に低い力価を示したという観察は、宿主トランスフェリンの結合が、動物の部分集合のみで抗体反応の発達に影響を及ぼすことを示唆している。
【0154】
この実施例に示された第三の実験(
図3C)は、抗血清の交差反応性を評価するために、インタクトTbpBおよびそのサブドメインに対する血清がブタ病原からの異なる代表的TbpBと反応する能力を評価するように設計された。ブタを、インタクトTbpB(SEQ.ID NO:2)、TbpB C−ローブドメイン(SEQ.ID NO:6)、TbpB N−ローブドメイン(SEQ.ID NO:8)またはTbpB N−ローブとTbpB C−ローブとの混合物で免疫化した。該血清を、(i)アクチノバシラス・プルロニューモニエH49株(SEQ.ID NO:2)からのインタクトTbpB、(ii)ヘモフィルス・パラスイスHP5株(SEQ.ID NO:115)からのインタクトTbpB、または(iii)アクチノバシラス・プルロニューモニエH87株(SEQ.ID NO:12)からのインタクトTbpBに対してテストした。
【0155】
図3Cの結果から、A.プルロニューモニエH49株からのTbpB C−ローブドメインが、インタクトTbpB(H87株からの異種TbpBに対してより高い力価)またはTbpB N−ローブ(H87株およびHP5株に対してより高い力価)よりも交差反応性の高い免疫応答を誘導することが示される。このアッセイで用いられたTbpBは、世界中のブタからのA.プルロニューモニエ、A.スイスおよびヘモフィルス・パラスイスの臨床疾患単離物中に存在する全体的な配列および構造多様性を表すように設計された(SEQ.ID NO:2;SEQ.ID NO:12;SEQ.ID NO:28;およびSEQ.ID NO:107〜SEQ.ID NO:115)(
図4)。したがってこの実施例において、本発明者らは、分析を1つのブタ病原に限定せず、世界中のブタ業界で問題とされる3種の異なるブタ病原をターゲットにしている。これらの病原が宿主から鉄を獲得するための一般的メカニズムを共有するように生じるという事実は、共通の抗原であるTbpBから3種の病原をターゲットにするワクチンを開発するための特有の機会を与えている。これらの結果は、1つまたは複数のC−ローブドメインを抗原として用いることにより、世界中のブタ病原に対して広く交差反応性のある応答を生じることが実現可能であり、したがってこれらの病原の存在を地球規模で排除するワクチン接種が検討され得ることを示している。
【0156】
驚くべきことに、C−ローブドメインにより誘発された高い交差反応性は、C−ローブが免疫化混合物中でN−ローブと混合された場合でも保持された(
図3C、「N+Cローブ」)。これらの結果は、より小さな可変性ループ領域(
図1、「N−ローブ」に比較した「C−ローブ」)を有する抗原がより交差反応性の高い抗体反応を誘発し得ること、および交差反応性免疫応答を誘発するこの高い能力がC−ローブを免疫化混合物中で他の抗原と混和した場合でも保持されることを、本発明者らに教示している。より具体的には、これらの結果から、N−ローブがより株特異性の高い免疫応答を生じる傾向が、C−ローブがN−ローブに物理的に連結した場合にC−ローブによる交差反応性免疫応答の誘導を効率的に阻害することのみを可能にすることが示される。言い換えれば、意外にも、N−ローブがより特異的な免疫応答を生じる性質は、N−ローブをC−ローブと混合した場合に実質的に低下する。本発明者らの知識の限りでは、この現象はこれまでに記載されていない。
【0157】
同じくこの結果から、C−ローブに比較して、インタクトTbpBおよびTbpB N−ローブに対して低い応答が存在することを示唆しており(
図3B、3C)、インタクトTbpBおよびTbpB N−ローブのみに存在する特色である宿主トランスフェリンの結合が、ブタにおいて免疫応答を調整している可能性を示し得る。
【0158】
これまで発表された試験とは異なり、本発明者らが標準的ELISA法での主要な欠陥を認識したため、抗体レベルを測定するのに標準的ELISA法を利用しなかったことを述べるのは、重要なことである。本発明者らは、一般に推定されるものとは異なり、精製タンパク質がELISAプレートに必ずしもランダムに結合せず、タンパク質表面のエピトープへの抗体結合を評価する上での潜在的に強い偏向または欠陥をもたらすことを観察した。特に本発明者らは、TbpB、特にTbpBのN−ローブが、本質的にELISAプレートの固体表面に一方向に結合して、N−ローブのCap領域をマスキングすることで、トランスフェリンの結合が検出できなくなることに注目した(
図5)。これに対して、精製されたTbpB N−ローブの前駆体であったN末端マルトース結合タンパク質(Mbp)パートナーとの組換え融合タンパク質は、トランスフェリン結合に卓越していた(
図5)。この現象は、ヒト、ブタおよびウシ病原からのTbpB N−ローブで観察され、より少ない程度にインタクトTbpBでも観察された。これらのタンパク質が、配列において全く異なることから(全体的配列同一性が30%未満)、これが特異的タンパク質に特有の性質ではなく、ランダムでない結合が固相結合アッセイに影響を及ぼす程度が様々になり得ることが示される。
【0159】
この欠陥を克服するために、本発明者らは、細胞質中でのタンパク質発現の間にN末端に酵素的に付加されたビオチン残基により、ストレプトアビジン・コーティングELISAプレートに組換えタンパク質を結合する方法を考案した。
図5に示された通り、酵素的にビオチン化されたN末端ペプチドの付加は、TbpB N−ローブがトランスフェリンに結合する能力を回復させた。このアプローチは、図の左および右側のMbpに融合されたTbpB N−ローブによる結果の比較が示す通り、トランスフェリン結合領域を暴露するとより効率的になり得る。標的タンパク質上のエピトープ全てへの完全かつ均等な接近を確実にし、これにより交差反応性の程度を評価する際の真の比較を提供するため、この新しくかつ奇抜なELISAアッセイ形式を、抗体反応性をモニタリングするためのELISAアッセイ全てに用いた。
【0160】
免疫実験のための組換え抗原を、N末端ポリヒスチジンタグ、マルトース結合タンパク質およびタバコエッチ病ウイルス(TEV)プロテアーゼ切断部位をコードする慣用的T7発現ベクターを用いて大腸菌の細胞質で産生させた。組換え融合タンパク質を、Ni−NTAクロマトグラフィーにより単離し、該抗原を(TEV)切断により遊離させて、Ni−NTAとQ−セファロースクロマトグラフィーとの組み合わせにより精製した。
【0161】
FVBマウス(Charles RiverのアルビノMHCハプロタイプH2q)、3ヶ月齢ニュージーランド白ウサギおよび51日齢ラージホワイトランドレースF1交雑ブタを、
図3Aの免疫化実験に用いた。精製された組換えタンパク質を、リン酸緩衝生理食塩水、および33%(
図3A)または20%(
図3B、
図3C)のいずれかのEmulsigen D(MVP Techologies)と混合して、マウスでは0.1ml中25μg、ウサギでは0.5ml中50μg、ブタでは2ml中100μgの最終濃度にした。3種の注射液を、マウスおよびウサギには皮下投与し、ブタには皮下(
図3A)または筋肉内(
図3B、
図3C)投与した。動物を0、21、42日目に免疫化し、最後の血液を56日目に採取した。
【0162】
8週目に採取された血清を、慣用的な固相ELISAアッセイで代表的なタンパク質に対してテストした。ELISAアッセイに用いられた組換え融合タンパク質は、N末端最適化ビオチン化配列、ポリヒスチジンタグ、マルトース結合タンパク質およびタバコエッチ病ウイルス(TEV)プロテアーゼ切断部位をコードする慣用的T7発現ベクターを使用して、大腸菌の細胞質で産生させた。これらのタンパク質を、N末端ビオチン化配列でインビボでビオチン化することで、それらをストレプトアビジン・コーティングELISAプレートに塗布することができた。
【0163】
ビオチン化融合タンパク質用の発現ベクターを用いた小規模での一夜タンパク質発現実験からの粗抽出物は、これまでの最適化実験に基づくELISAプレートを飽和させるのに十分であった。該当する抗血清の希釈物を、リン酸緩衝生理食塩水(PBST)中の2.5%脱脂乳中で調製して、プレートに室温で1時間塗布した。除去および洗浄後に、一次抗体を、1:100,000(抗ブタでは1:25,000)希釈のHRPコンジュゲートヤギ抗マウス、抗ウサギまたは抗ブタIgGにより、室温で1時間検出した。力価は、A450が0.3を超える(血清を添加していないバックグランドのウェルの測定値の平均+3SDよりも大きな)最後の希釈の逆数として表している。
【0164】
SEM誤差の計算は、ANOVAおよび事後比較として実施されたテューキーHSD(honest significant difference)検定により実施した。統計計算から、血清全てで、H49がH87と有意に異なること、およびNローブがCローブまたはN+Cローブと有意に異なることを示した。
図3Cに示された星は、H49に対してテストされたCローブまたはN+Cローブと有意に異なる特異的免疫化/タンパク質対を表している。
【0165】
実施例2 − ブタ病原TbpB C−ローブの三量体の生成
この実施例で本発明者らは、3つのブタ病原に存在するTbpBの広い多様性を表す3つの組換えC−ローブを互いに連結させて、抗原性を保持し得ることを実証する。本明細書で用いられた、改変C−ローブは、A.プルロニューモニエ、A.スイスおよびヘモフィルス・パラスイスから得られたものである(
図4)。したがってA.プルロニューモニエH49株(SEQ.ID NO:6)、A.スイスH57株(SEQ.ID NO:35)およびA.プルロニューモニエH87株(SEQ.ID NO:22)からのTbpB C−ローブをコードする遺伝子を連結させて、3つのC−ローブ(SEQ.ID NO:40)を含む単一ポリペプチドをコードする遺伝子を形成させた(
図6のパネルA)。このC−ローブ三量体中のC−ローブ(下線で示す)の二次構造要素に接続する相対的に短いペプチドがある。連結するペプチドは、個々のC−ローブドメインからの真のローブ間配列(interlobe sequence)からなる。
図6のパネルBは、C−ローブ三量体の生成を示しており、それをヒト病原N.メニンギティディスM982株からの組換えTbpB N−ローブおよびC−ローブの調製と比較している。結果から、C−ローブ三量体が良好な量で生成され、安定していることが示される。しかし
図6に示された調製は、免疫化実験に用いる前に更なる精製を必要とする。
【0166】
安定したC−ローブ三量体の生成には大きな障害がなかったため、免疫実験のためにC−ローブ三量体を生成および精製し、それが免疫原性を保持しているかどうかを決定した。
図7に示された通り、C−ローブ三量体は、3つの代表的TbpBに対して免疫応答を誘導することができ、3つの個々のC−ローブを互いに連結させることにより免疫特性が実質的に改変されないことが示された。同じく結果から、単一タンパク質抗原が免疫応答を誘導して、ブタ病原であるプルロニューモニエ、A.スイスおよびヘモフィルス・パラスイスの全てではないがほとんどの菌株と反応することが可能であり、広範囲の交差防御性ブタワクチンの開発への潜在的有望性を示すことが示唆される。
【0167】
実施例3 − A.プルロニューモニエTbpBのN−ローブにおけるループ領域の減少
この実施例では、交差反応性免疫応答の誘導への影響を測定するために、ブタ病原の3つの代表的なTbpBからのN−ローブドメインのループ領域を修飾した。3つの代表的TbpBは、A.スイスH57株(SEQ.ID NO:28)、A.プルロニューモニエH87株(SEQ.ID NO:12)およびA.プルロニューモニエH49株(SEQ.ID NO:2)のものであった。配列多様性を表すことに加え、利用できる高解像度の構造データがあったため、これらの特定のTbpBを選択した;A.スイスH57株(3PQU.pdb)、A.プルロニューモニエH87株(3PQS.pdb)およびA.プルロニューモニエH49株(3HOL.pdb)。ループ減少の工程は、A.スイスH57株(SEQ.ID NO:36、38)からのTbpB N−ローブの74アミノ酸(297〜224)、A.プルロニューモニエH87株(SEQ.ID NO:24、26)からのTbpB N−ローブの45アミノ酸(248〜203)およびA.プルロニューモニエH49株(SEQ.ID NO:8、10)のTbpB N−ローブの27アミノ酸(274〜247)という全体的欠失をもたらした。A.プルロニューモニエH49株のループ減少の設計は、例示目的で以下により詳細に記載される。
【0168】
ループ減少を設計するために、H49株(3HOL.pdb)からのTbpBの構造を、H87株(3PQS.pdb)からのTbpBの構造と重ね合わせ、ブタ病原からの代表的TbpBの組み合わせから多重配列アライメントを同時に視覚化した。変異の構造および領域を検査することにより、N−ローブの全体的構造を撹乱(perturb)しないと予測された潜在的ループ減少のための複数のエリアを同定した。これらは、標準的命名法によるループ1、5、8a、8cおよび12(
図2)を含み、
図8にTbpB N−ローブの側面図(パネルA)および上面図(パネルB)の構造モデルで示されている。ループ減少は、アミノ酸の除去に加えて必要に応じて適切なアミノ酸置換を選択することにより、N−ローブの全体的フォールディングおよび構造への潜在的撹乱を最小限にするように設計された。本来のN−ローブの(上の配列)および修飾N−ローブ(下の配列)のアミノ酸配列を、
図8のパネルCの配列アライメントに示し、ここではループ領域を灰色で強調し、灰色のフォントで標識している。パネルCに示されたアミノ酸配列をコードするDNA配列を、大腸菌株における発現について最適化し、その後、合成した。
【0169】
A.プルロニューモニエH87株およびA.スイスH57株からのTbpB N−ローブは、ブタ病原からのTbpBの相当な量の配列および構造多様性を表し(
図4)、関連の構造を入手できるため(3PQS.pdbおよび3PQU.pdb)、それらの株のTbpB N−ローブについてのループ減少を生成するために、類似の方策を採用した(12)。全てではないがほとんどの臨床単離物のN−ローブ領域に対して交差反応性の応答を集団的に誘導することができた改変された抗原を産生する能力は、3つのブタ病原をターゲットにするワクチンの有効性を増大するための少なからぬ能力を有するであろう。
【0170】
得られた遺伝子を、クローニングされたN−ローブのコード配列の前で、N末端ポリヒスチジン領域、マルトース結合タンパク質およびTEV(タバコエッチ病ウイルス)切断部位をコードする慣用的発現ベクターにクローニングした。A.プルロニューモニエH49からのTbpB N−ローブの改変バージョンの発現プラスミドを、lacZプロモータの下流に挿入されたT7 RNAポリメラーゼ遺伝子の染色体コピーを含む大腸菌発現株ER256中に形質転換した。lacプロモータのグルコース抑制およびラクトース導入を利用する自動誘導培地(55)を使用して、小規模な発現分析を実施した。したがって、培地中へのグルコース対ラクトースの特異的比率を利用することにより、T7 RNAポリメラーゼの発現を、生育の対数増殖期中期(mid−log phase)に最適に開始させる。ビードビーターを用いて細胞を一夜生育させた後に溶解して、組換えタンパク質をNi−NTA樹脂またはブタTf−セファロース樹脂のいずれかで捕捉して洗浄し、結合したタンパク質をSDS−PAGE緩衝液に溶出させた。
【0171】
図9に示される通り、A.プルロニューモニエH49株、A.スイスH57株またはA.プルロニューモニエH87株からのTbpB N−ローブのループ減少は、安定したタンパク質の生成をもたらし、つまりN−ローブの全体的フォールディングを妨害せず、免疫化に適した材料を提供した。上のパネルは、Ni−NTA樹脂で捕捉された小規模発現実験で生成された組換えタンパク質を、対照としての野生型インタクトTbpBおよびTbpB N−ローブと共に示している。結果から、変異体タンパク質が、野生型タンパク質とは異なりブタトランスフェリン(Tf)に実質的に結合できなくなったことが示される。したがって中のパネルにおいて、改変N−ローブは、ブタTf−セファロースにより捕捉されなかった。下のパネルでは、上のパネルに示された材料を、HRPコンジュゲート化ブタトランスフェリンを使用した固相結合アッセイに用いたが、改変N−ローブは、対照と異なり結合活性を示さなかった。本発明者らは、ネイティブ宿主であるブタでこれらのタンパク質の免疫原性が増大するであろうと予測している。したがってこの実施例は、TbpBタンパク質のN−ローブにおける抗原的に可変性の領域を除去するための方策が実現可能で、そのような除去が免疫原性の増大をもたらし得ることを示している。
【0172】
実施例4 − N.メニンギティディスTbpBのC−ローブの交差反応性
この実施例は、本開示によるヒト病原ナイセリア・メニンギティディスからのTbpBの改変誘導体の使用を示している。最初のステップとして、本発明者らは、N.メニンギティディスからのTbpBの多様性を検査して、本発明者らが交差反応性の評価のためのTbpBの代表的組み合わせを有することを確実にした。
図10は、長期間かけて地球規模で回収されたN.メニンギティディスの菌株中のTbpB、およびNeisseria Bacterial Isolate Genome Sequence Database(BIGSDB http://pubmlst.org/neiseria/)(56)(41)からのさらなる配列の全体的多様性を示している。
図10Aの矢印、両矢印、または線で示された菌株のTbpBの代表的組み合わせの配列(SEQ ID NO:117;SEQ.ID NO:123;SEQ.ID NO:132〜SEQ.ID NO:147;SEQ.ID NO:177;およびSEQ.ID NO:178)をこの適用に含めて、各群の配列多様性を定義している。N.メニンギティディスTbpBには4つの主要な系統群が存在した。群1は、アイソタイプI TbpBを有する菌株を含む。アイソタイプI TbpBは、特徴としてアイソタイプII TbpB(80〜85kDa)に比較して小さなTbpB(およそ65〜70kDa)を有する。多重配列アライメントによる配列の比較から、サイズの差が、アイソタイプII TbpBでC−ローブがより大きいことに起因することが明らかとなった。アイソタイプII TbpBを、3つの主要な系統群(群2〜群4、
図10A)にクラスタ化した。
【0173】
TbpB C−ローブの配列多様性を示す系統樹(
図10B)は、C−ローブ配列が2つのTbpBアイソタイプの同定を大きく左右する結論を裏づけている。
図10Aにおける群2の構成員は、互いにC−ローブ系統樹にクラスタ化せず、
図10Bの系統樹全体に分布しており、群2がN−ローブ配列により大きく定義されたことを示している。これは、免疫学的交差反応が、C−ローブに対する反応性により決定されることになれば、群2の特定の標本が必要とならないことを示している。これに対して、全体的なTbpB多様性を表すためにTbpB配列の組み合わせを同定するのに用いられた矢印および線は、全体的C−ローブ多様性を十分に表しておらず、したがって2つのさらなる菌株が、C−ローブ多様性のより包括的な表現を提供するために選択された。矢印、両矢印または線により同定された菌株からのC−ローブ配列をこの適用に含めて、配列多様性の代表的標本を提供した(SEQ ID NO:87;SEQ.ID NO: 93;およびSEQ.ID NO:147〜SEQ.ID NO:163)。
【0174】
N.メニンギティディスからのTbpBをターゲットにするワクチンが、N.ゴノレアに対する免疫応答を誘導し得るかという問題に取り組むために、本発明者らは、N.ゴノレアからのTbpBおよびTbpB C−ローブの配列多様性の分析を実施した。N.メニンギティディス試験からの代表的なTbpBおよびTbpB C−ローブの配列(
図10;SEQ.ID NO:119;SEQ.ID NO:125;SEQ.ID NO:179〜SEQ.ID NO:195;SEQ.ID NO:117;SEQ.ID NO:123;SEQ.ID NO:132〜SEQ.ID NO:147;SEQ.ID NO:177;およびSEQ.ID NO:178)が、分析に含まれた。
図26Aに示された通り、N.ゴノレアTbpBは、アイソタイプ2TbpBに最も密接に関連し、N.メニンギティディス・アイソタイプ2クラスタ内の2つの亜群を形成している。このことは、組換えTbpBの部位特異的変異体を好ましいワクチン抗原として用いる方策により、主としてメニンゴコッカスTbpB由来の抗原と、広い交差防御を実現する可能性があることを示唆している。
図26Bは、N.ゴノレアTbpB C−ローブが、インタクトTbpBの状況とは異なり、N.メニンギティディスC−ローブからの異なる亜群であることを示している。したがってC−ローブを用いて広い交差防御をもたらす方策では、N.ゴノレア株からのC−ローブが必要となろう。
【0175】
切断されたTbpBおよびTbpB C−ローブが交差反応性抗体反応を誘導する能力を比較するために、N.メニンギティディスB16B6株(
図10の黒色矢印により標識)由来の組換え切断TbpBおよびTbpB C−ローブを、免疫分析用に選択した。B16B6株からの組換え切断TbpBおよびTbpB C−ローブを用いてウサギを免疫化し、新規なELISAを用いて血清を交差反応性についてテストした(
図5)。本出願に含まれるC−ローブの配列の多くは、N−ローブ上のバレルドメインの最後のβ鎖の終了直後から開始し、したがってN−ローブとC−ローブの間にリンカー領域を含む、と認識することが重要である(
図2のL15)。したがって免疫実験のために、安定していて機能的なC−ローブを、L15領域(B16B6 C−ローブにおける14のアミノ酸)を除去するN末端切断により調製することが可能であろう。
【0176】
系統樹全体に分布した菌株由来のTbpBの代表的組み合わせ(
図10の黒色および灰色の矢印)を、血清の交差反応性を評価するために選択した。2つの両矢印により示された2つのさらなるTbpBが、より完全な範囲を提供するために分析に含める予定であったが、分析の際に利用できなかった。
【0177】
該タンパク質を、N末端ビオチン化配列を有する本発明者らの慣用的発現ベクター内で発現させ、ストレプトアビジン・コーティングELISAプレートに塗布した。B16B6株由来の改変C−ローブおよび切断TbpBで免疫化されたウサギの血清を、TbpB変異体のパネルを認識する能力についてテストした。切断TbpBに対する抗血清は、抗C−ローブ抗血清よりも同種TbpB(B16B6)に対して高い力価を有し、異種菌株(H44/76)の1つからのTbpBに対してわずかに高いか、または同等の力価を有した。しかし、該抗C−ローブ抗血清は、その抗TbpB抗血清よりも、他の異種菌株全てからのTbpBに対して高い抗体力価を有した。したがって該C−ローブは、インタクトTbpBよりも交差反応性抗体を誘導する能力が優れている。
【0178】
この免疫化実験では、組換え抗原を先に記載された通り生成し、20%Emulsigen D(VSA)アジュバント中の精製抗原50μgを用いてウサギ(ニュージーランド白ウサギ、3ヶ月齢、雌)の後脚領域に皮下投与で免疫化するために用いた。0、3および6週目にウサギを免疫化した。
【0179】
8週目に採取された血清を、本発明者らの慣用的固相ELISAプレートで代表的タンパク質に対しテストした。ELISAアッセイで用いられる組換え誘導タンパク質は、先に記載された通り生成させた。慣用的ELISAアッセイでテストされた組換えタンパク質は、N.メニンギティディスの菌株:(i)B16B6(SEQ.ID NO:117)、(ii)H44/76(SEQ.ID NO:133)、(iii)S3131(SEQ.ID NO:132)、(iv)M990(SEQ.ID NO:134)、(v)M978 (SEQ.ID NO:135)、(vi)M992(SEQ.ID NO:138)、(vii)P3006(SEQ.ID NO:139)、(viii)120M(SEQ.ID NO:137)、(ix)MC58(SEQ.ID NO:136)および(x)M982(SEQ.ID NO:123)からのインタクトTbpBの切断されたバージョン(最初の19〜36アミノ酸を欠失)であった。
【0180】
ビオチン化融合タンパク質の実験ベクターを用いた小規模での一夜タンパク質発現実験からの粗抽出物は、過去の最適化実験に基づくELISAプレートを飽和させるのに十分であった。該当する抗血清の希釈物を、リン酸緩衝生理食塩水(PBST)中の2.5%脱脂乳中に調製して、該プレートに室温で1時間適用した。一次抗体を、1:100,000希釈でHRPコンジュゲート化ヤギ抗ウサギIgGにより室温で1時間検出し、力価をA450>0.3となる最終希釈の逆数として表している。
【0181】
実施例5 − N.メニンギティディスTbpB C−ローブの二量体の生成
図11の結果から、ヒト病原N.メニンギティディスからのTbpB C−ローブドメインが、インタクトTbpBに比較して高い交差反応性を誘導し得ることが示される。この例において、本発明者らは、安定していて免疫原性がある2つのC−ローブを含む単一ポリペプチドを作製することが可能であることを実証する。この2つのC−ローブは、TbpBの2つのアイソタイプを表す抗原的に異なる菌株TbpB B16B6株およびM982株のものである(
図10)。
図12のパネルAは、実施例4に記載された免疫化実験で用いられた2つの代表的なTbpB C−ローブ(SEQ.ID NO:150)をコードするために構築された単一遺伝子を示している。
図12のパネルBは、個々の構成員TbpB C−ローブの調製物に比較した、C−ローブ二量体の生成を示している。相対的に安定していると思われるC−ローブ二量体は合理的レベルで生成されるが、免疫化実験で使用する前にさらに精製する必要があろう。
【0182】
図13は、N.メニンギティディスM982株およびB16B6株からのTbpB C−ローブからなる二量体が、両方の種からのインタクトTbpBへの効果的免疫応答を誘導し得ることを示している。
【0183】
実施例6 − N.メニンギティディスのC−ローブからのループ領域の減少
この実施例で本発明者らは、N.メニンギティディスのC−ローブからのループ領域を実質的に減少させ得ることを実証している。そのような減少は、他の抗原または他の病原からのエピトープを提示するための簡便な「スカフォールド」として用いられ得、さらに所望の免疫特性を提示し得る、大きなループ領域を欠如した誘導体を提供する上で有用である。
【0184】
この実施例では、N.メニンギティディスM982株のC−ローブドメインのループ領域を、大きなフレキシブルループ領域から合計で82アミノ酸除去するように修飾している。ネイティブC−ローブ、および大きなフレキシブルループの4つが実質的に減少した改変C−ローブの構造モデルを、
図14のパネルAに示している。減少のターゲットとなった4つのループは、タンパク質の結晶構造に解像されなかったことから(3VE2、pdb)、ループのコンフォメーションに変異があることが示され、そのためパネルAの左側のモデルで破線で表されている。
【0185】
選択されたC−ローブ配列アライメントにおける配列可変性を評価しながら、ループ除去のための方策を詳細な構造(3VE2、pdb)の検査により開発した。しかし、構造を潜在的に破壊することなくループ間の最も効果的な架橋を提供することが、架橋したアミノ酸を選択するための第一の基準であった。ネイティブC−ローブ(SEQ.ID NO:125)、それぞれがターゲットのループを欠く改変誘導体、および4つのループ全てが除去された「ループレス」C−ローブ(SEQ.ID NO:129)の配列アライメントを、
図14のパネルBに示している。
【0186】
オーバーラップエクステンションアプローチ(SOEing)(57)によるスプライシングを利用して、個々のループ欠失および4つのループ全てが除去された「ループレス」C−ローブをコードする遺伝子を調製した。SOEingアプローチは、N.メニンギティディスM982からの組換えC−ローブの生成に用いられる発現プラスミドで実施することで、得られた改変タンパク質の安定性を即座に評価することができた。該ベクターは、TbpB C−ローブをコードする挿入遺伝子の前で、N末端ポリヒスチジンタグ、マルトース結合タンパク質をコードする遺伝子、およびTEV(タバコエッチ病ウイルス)切断部位をコードしている。該発現プラスミドは、lacZ遺伝子に挿入されたT7 RNAポリメラーゼ遺伝子の染色体コピーを含む大腸菌ER2566株内に形質転換され、したがってlacプロモータの制御下にある。自動誘導培地(55)を利用して、小規模な発現分析を実施した。細胞を一夜生育後に回収および溶解して、遠心分離後の上清画分をNi−NTA樹脂にアプライし、洗浄して、結合したタンパク質をSDS−PAGE緩衝液に溶出した。
【0187】
図15に示された通り、ループ18、ループ21、ループ23またはループ27の実質的な減少を含む組換えC−ローブの収率は、ネイティブC−ローブタンパク質(WT)に匹敵し、個々のループの除去がタンパク質安定性に悪影響を及ぼさなかったことが示される。
図15はまた、4ループ全ての81アミノ酸除去がタンパク質の生成レベルに影響を及ぼさなかったことを示しており、4ループ全ての除去がC−ローブの全体的フォールディングを妨害しないことが示された。「ループレス」C−ローブが即座に生成され、良好な量で精製されたこと、およびその結晶構造が精製「ループレス」C−ローブから得られたことを述べることが重要である。このことから、改変された抗原が実質的に安定した形態で、商業的適用に適した生成レベルで即座に生成され得ることが示される。したがってこの実施例は、抗原的に可変性のある領域を除去するための方策が実現可能であることだけでなく、コア構造のフォールディングがループのサイズおよび性質の変異に影響を及ぼされないことから、得られたタンパク質がスカフォールドを提示するエピトープとして適し得ることも示している。
【0188】
最後に、
図16に示された通り、「ループレス」C−ローブ(SEQ.ID NO:129、最後の2つの棒)は、免疫原性があり、インタクト(ネイティブ)TbpB抗原(SEQ.ID NO:123)に対する強い抗体反応を誘導することが可能である。この図は、ループレスC−ローブが、本来のTbpB C−ローブ(SEQ.ID NO:125)抗原よりもマウスにおいてN.メニンギティディスM982株からのTbpBに対して高い抗体力価を実際に誘導したことを示している(図の3番目の棒と1番目の棒を比較)。驚いたのは、「ループレス」C−ローブが、配列が極めて多様であるという事実にもかかわらず(
図10)、B16B6株のネイティブTbpB C−ローブと同等の、B16B6株からの異種TbpBに対する抗体レベルを誘発した、という観察である。
図16の2番目の棒と4番目の棒を比較すると、これらの2種のタンパク質がB16B6株からのインタクトTbpBに対して同等の抗体レベルを誘導することが示される。
【0189】
これら実験では、FvB雌マウスを、0、21および42日目に20%Emulsigen Dを含む精製タンパク質抗原25μgで免疫化し、56日目に採取された血清で慣用的ELISAアッセイを利用してエンドポイント力価を評価した。B16B6 TbpB C−ローブ、M982 TbpB C−ローブ、または修飾M982 TbpB(「ループレス」)を用いて、4匹のマウスそれぞれを免疫化した。エンドポイント力価を、ビオチン化されたインタクトM982またはB16B6 TbpBタンパク質に対して評価した。力価は、ヤギ抗マウスIgG H+Lペルオキシダーゼコンジュゲート化抗体の1:100,000で測定した。エンドポイント力価は、陽性シグナルが信頼性を持って検出され得た最後の希釈の逆数として決定した。各血清は三重測定され、結果は処置された全てのマウスの平均±SEMとして示されている。
【0190】
実施例7 − TbpBの改変C−ローブへのTbpAの一部の挿入
この実施例では、内在性外膜タンパク質トランスフェリン結合タンパク質A(TbpA)の細胞外表面ループのDNAコードセグメントを、N.メニンギティディスM982株からの修飾または「ループレス」TbpB C−ローブをコードする遺伝子にスプライシングして、様々なハイブリッドTbpA−TbpBタンパク質をコードする遺伝子を得た。TbpAの選択された領域をTbpB C−ローブスカフォールドにスプライシングした理由は、それがインタクトTbpAタンパク質よりも効率的な生成手段を提供すること、および抗体の誘導のためにTbpAの表面領域を特異的に標的化する能力を提供することである。
【0191】
実施例6で調製されたTbpBポリペプチド(SEQ.ID NO:97)の修飾されたC−ローブをコードする遺伝子を、出発点として用いた(さらに、
図14のパネルA(中のモデル)を参照)。TbpAの異なる表面ループからのDNAコードセグメント(
図17のパネルA)を、より大きなループがTbpB C−ローブポリペプチドから除去された部位(
図17のパネルB)にスプライシングした。TbpAのβバレル細胞外ループ3、10、および11からの部分(58)(パネルAの黒い部分および標識された領域)を、改変TbpB C−ローブの修飾ループ領域18、12および23(パネルB)に挿入した。同様に、TbpAトランスフェリン構造(プラグループ、パネルA)内のヒトトランスフェリンのC1〜C2ドメインの挿入部を、修飾TbpB C−ローブの修飾ループ27に挿入した。
【0192】
TbpB C−ローブ上でのTbpAループの組立てを、オーバーラップエクステンションアプローチ(SOEing)によるスプライシングを利用して実施した(57)。SOEingアプローチを、N.メニンギティディスM982からの組換えC−ローブの生成に用いられる発現プラスミドで実施することで、得られた改変タンパク質の安定性を即座に評価することができた。該ベクターは、TbpB C−ローブをコードする挿入遺伝子の前で、N末端ポリヒスチジンタグ、マルトース結合タンパク質をコードする遺伝子、およびTEV(タバコエッチ病ウイルス)切断部位をコードしている。発現プラスミドは、lacZ遺伝子に挿入されたT7 RNAポリメラーゼ遺伝子の染色体コピーを含む大腸菌ER2566株内に形質転換され、したがってlacプロモータの制御下にある。自動誘導培地(55)を利用して、小規模な発現分析を実施した。細胞を一夜生育後に回収および溶解して、遠心分離後の上清画分をNi−NTA樹脂にアプライし、洗浄して、結合したタンパク質をSDS−PAGE緩衝液に溶出した。
【0193】
図18のパネルAに示された通り、修飾TbpB C−ローブのループへの外来TbpAセグメント挿入は、安定した組換えタンパク質の生成をもたらした。
図18のパネルAに示された組換えタンパク質は、N末端ポリヒスチジンタグ、マルトース結合タンパク質融合パートナー、およびTEV(タバコエッチ病ウイルス)プロテアーゼ切断部位を含んでいた。
図18のパネルBから、TEVプロテアーゼでの切断による、組換えタンパク質融合パートナーからの野生型および変異体C−ローブの放出が示される。結果から、外来タンパク質セグメントの挿入が、改変C−ローブの安定性に実質的に影響しなかったことが実証され、その外来セグメントがC−ローブのコア構造要素の正常なフォールディングを妨害しないことが示唆される。これらの結果から示唆されることは、該C−ローブが、様々な抗原および抗原変異体からのエピトープの提示に最終的に用いられ得る外来エピトープの提示のための安定していて多目的のタンパク質スカフォールドになると思われ、広範な交差防御性がある免疫応答を生成する能力のある改変された抗原を作製するためのさらなる方策が提供される、ということである。
【0194】
最後に、
図19に示された通り、大きなループが減少または除去された領域にスプライシングされたTbpAの領域を含む修飾TbpB C−ローブは、免疫原性がある。この図から、ハイブリッドTbpA−TbpB C−ローブタンパク質が親修飾(「ループレス」)C−ローブと等しいか、またはそれよりも高い抗体力価を誘導したことが示される。注目すべきこととして、TbpAからのループ10およびループ11の領域を提示するタンパク質が、最高の力価を有した(
図19の2番目および3番目の棒)。
【0195】
この実験では、FvB雌マウスを、0、21および42日目に20%Emulsigen Dを含む精製タンパク質抗原25μgで免疫化し、56日目に採取された血清で慣用的ELISAアッセイを利用してエンドポイント力価を評価した。マウス3匹を、4つのループ全てが除去された「ループレス」C−ローブ(SEQ.ID NO:97)で免疫化した。5匹を、4種の他のハイブリッド抗原:(i)TbpB C−ローブループ21に挿入されたTbpAループ10を有する「ループレス」C−ローブ(SEQ.ID NO:154)、(ii)TbpB C−ローブループ23に挿入されたTbpAループ11を有する「ループレス」C−ローブ(SEQ.ID NO:156)、(iii)TbpB C−ローブループ27に挿入されたTbpAループ3へリックスを有する「ループレス」C−ローブ(SEQ.ID NO:158)、または(iv)TbpB C−ローブループ18に挿入されたTbpAプラグループを有する「ループレス」C−ローブ(SEQ.ID NO:160)のそれぞれでの免疫化に用いた。血清を、挿入されたTbpAループ(SEQ.ID NO:131)の4つ全てを提示する修飾M982 C−ローブのビオチン化組換え形態に対してテストした。力価は、ヤギ抗マウスIgG H+Lペルオキシダーゼコンジュゲート化抗体の1:100,000で測定した。エンドポイント力価は、陽性シグナルが信頼性を持って検出され得た最後の希釈の逆数として決定した。各血清は三重測定され、結果は処置された全てのマウスの平均±SEMとして示されている。
【0196】
実施例8 − TbpBの修飾されたC−ローブへのLbpAの一部の挿入
この実施例では、MC58株からの内在性外膜タンパク質ラクトフェリン結合タンパク質A(LbpA)の細胞外表面ループのセグメント(SEQ.ID NO:162)を、実施例6に記載されたN.メニンギティディスM982株(SEQ.ID NO:129)からの修飾TbpB C−ローブにスプライシングした。LbpAの選択された領域をTbpB C−ローブスカフォールドにスプライシングした理由は、それがインタクトLbpAタンパク質よりも効率的な生成手段を提供すること、および抗体の誘導のためにLbpAの表面領域を特異的に標的化する能力を提供することである。本発明者らは、実施例7と併せて、ハイブリッドタンパク質の作製が、どのようにしてN.メニンギティディスの表面に存在する3種の異なるタンパク質に対する免疫応答を誘導する機会を提供し得るか、を示して、重要な標的タンパク質の抗原変異体がワクチン抗原に対して生成された免疫応答の影響を回避し得る潜在的「ワクチンエスケープ」に対して、より大きなバリアを提供することができた。
【0197】
LbpAに関して入手できる構造が存在しなかったため、最も適切なモデルを実現する試みとして、3つのウェブによるタンパク質予測サーバ:SWISS MODEL、I−TASSER、およびPHYRE2を利用して、LbpAの構造モデリングを実施した。最初に、BLASTサーチを実施して、既知のTbpA構造(58)を用いたモデリングに最も適したLbpAを見出し、MC58株からのLbpA(SEQ.ID NO:130)が最も適切であることを明らかにした。MC58 LbpAとK454 TbpAとのアライメントを、ClustalWにより生成し、SWISS MODELでのアライメントモードの入力情報とした。PHYRE2では、K454 TbpA構造のPDB IDおよびMC58 LbpAのFASTA配列を、それぞれテンプレートおよびターゲットとして供した。MC58 LbpAのFASTA配列だけは、I−TASSERに供した。平均平方根偏差(RMSD)を用いて、Pymol(http://www.pymol.org/)にそれらを重ね合わせた後、テンプレート構造で作成された異なるモデルの類似性を評価した。PHYRE2により作成されたLbpAモデルを、最も適切なモデルとして選択して、ハイブリッドまたはキメラタンパク質(
図20、パネルA)を作製するためのループ領域を選択するために用いた。
【0198】
実施例6で調製されたTbpBポリペプチドの「ループレス」C−ローブ(SEQ.ID NO:129)を、出発点として用いた。LbpA細胞外ループ3およびループ2からのDNAコード領域を、改変TbpB C−ローブのループ18に隣接するβ鎖をコードするDNAと、ループ21に隣接するβ鎖をコードするDNAの間に挿入した(
図20、パネルB)。TbpB C−ローブ内のループ領域および挿入のためのLbpAの対応するループを、Pymolを用いて距離について分析して、LbpA置換ループがループにより予測される距離パラメータ内でフィットするような構造を確実に作製した。TbpB C−ローブ上でのLbpAループの組立ては、実施例6および7と同様にSOE PCRを利用して実施され、配列解析でループレスM982 TbpB C−ローブ内のMC58 LbpAへリックス3およびループ2の挿入を確認した。ハイブリッドタンパク質の設計には、M982 C−ローブ(SEQ.ID NO:166)への、LbpAへリックス3領域から15アミノ酸(タンパク質配列:383−YGTDEAEKFRDKSGV)の挿入、およびM982 C−ローブ(SEQ.ID NO:164)のループ21領域への、LbpA ループ2領域から11アミノ酸(タンパク質配列:LNRWVKERIEQL)の挿入が含まれた(
図20>、パネルB)。
【0199】
組換えプラスミドの形質転換および予備的発現試験の実施の方法は、実施例7に記載された通りである。予備的スクリーニングから、組換えタンパク質の収率が高く(
図20のパネルB、左下)、スカフォールドとして使用されたネイティブC−ローブまたはループレスC−ローブの結果と同等か、またはそれよりも良好である(図示しない)ことが実証された。明らかなこととして、その結果はさらに、外来タンパク質セグメントの挿入が改変C−ローブの安定性に実質的に影響を及ぼさなかったことを実証しており、外来セグメントがC−ローブのコア構造要素の正常なフォールディングを妨害しなかったことが示唆される。
【0200】
実施例9 − H.インフルエンザのTbpB C−ローブを用いてコンジュゲート莢膜ワクチンを適用するためのループの改変
今日まで開発されたコンジュゲート莢膜ワクチンの大部分は、毒素系ワクチン成分の1種を、多糖体莢膜材料をコンジュゲートするための担体として用いてきた。莢膜多糖体を破傷風またはジフテリア毒素または類毒素にコンジュゲートする方策には複数の欠点がある。1つは、日常的免疫化に用いられるワクチンにも存在する担体タンパク質に連続暴露することにより、効果的免疫応答の誘導に負の影響を及ぼす可能性、つまり免疫耐性の発達である。2番目は、担体が、病原への自然な暴露に関係しないこと、つまり病原に遭遇した時に最も関連するT細胞ヘルプを誘導することの利益を完全に享受しないことである。
【0201】
コンジュゲート莢膜ワクチンは、通常はセロタイプまたはセログループと称される特異的莢膜多糖体を発現する細菌病原による感染の予防、そして実際には定着の予防の際に非常に成功してきた。しかし、最終的にワクチンに含まれない多糖体を発現する菌株に誘発された疾患をもたらし得る他の多糖体莢膜タイプを発現する細菌では、本質的に交差防御性が全くない。結果として、コンジュゲート莢膜ワクチンに含まれる多糖体莢膜タイプの範囲を拡大するという要望が、範囲の広いワクチンを継続的に開発する見通し、および最終的な解決策が実質的に交差防御を提供することが可能なタンパク質系ワクチン次第であるという見解に至った。しかし、広範な交差防御性を誘発することが可能なタンパク質系ワクチンが開発された場合、既存のコンジュゲート莢膜ワクチンにとって代わることが受け入れられる可能性は低い。既に一般化された(crowed)日常的免疫化計画にさらに別のワクチンを追加することが、タンパク質系ワクチン導入への潜在的障害として検討される可能性がある。
【0202】
活性化された炭水化物部分と反応するリシンのみが修飾されることになり、炭水化物とタンパク質との比率がコンジュゲーション工程の間に制御され得ることから、この実施例で本発明者らは、重要なエピトープ内のリシンの修飾を最小限にするために予測される、TbpB C−ローブのリシン残基の残り部分にあるリシンの総数を実質的に超える42リシン残基を含むH.インフルエンザからのTbpB C−ローブにコンジュゲーションループを組み込んだ。
【0203】
H36株からの改変H.インフルエンザTbpB C−ローブをコードする遺伝子の配列を、フォントの拡大(14対12)により示されたコンジュゲーションループをコードするDNA領域(SEQ.ID NO:167)と共に、
図21のパネルAに示している。コンジュゲーションループの挿入部位および配列は、N.メニンギティディスMC58株からのLbpB中の大きな負電荷ループをモデルとして用いて設計した(59)。本質的に、LbpBループの配列がテンプレートとして用いられ、リシンはループ内のアスパラギン酸またはグルタミン酸残基を交換するために用いられた。コンジュゲーションループは、ループ23の位置にあるβ鎖22と23の間のTbpB C−ローブのハンドルドメイン上に組み入れた(
図2)。ループの位置は、ループ23の代わりにかなり小さなループ(11アミノ酸で構成)で生成されたH.インフルエンザC−ローブの構造モデルと用いて、
図21のパネルBに示している。挿入された残基は、黒い球として示されている。組み入れられたループは、全体的C−ローブのサイズ(352アミノ酸残基)の1/4を超えるサイズを構成する91アミノ酸で構成され、ループは、全体的C−ローブ内の強調された残基として示され、組み込まれたループは、SEQ.ID NO:205に示されている。これは、ループドメインが、多数のさらなるアミノ酸を収容し得ることを示している。
【0204】
コンジュゲーション領域の含有は、N−ローブまたはC−ローブのループ領域への挿入に制限されず、例えばインタクトTbpBまたはTbpBローブのN末端にリシン残基のクラスタを含むことにより提供され得る。
【0205】
実施例10 − TbpBの表面結合ループ内のアミノ酸置換の生成およびそれらのTf結合特性の評価
TbpBタンパク質の表面ループ内で一連の部位特異的突然変異体を、機能的および免疫学的特性への影響を探索するために構築した。修飾のために表面が露出したアミノ酸をターゲットにするために、本発明者らがX線結晶学的に得た構造(12、13)を有するTbpBにおいて、部位特異的突然変異を作製した。オーバーラップエクステンションポリメラーゼ連鎖反応(SOE PCR)アプローチによるスプライシングを利用して、ブタ病原A.プルロニューモニエ、A.スイスおよびH.パラスイスに由来する切断TbpBタンパク質をコードする遺伝子に、突然変異を導入した。それらには、H49株由来のA.プルロニューモニエTbpB
20−528(アミノ酸20〜528)(ApH49 TbpB、SEQ.ID NO:2)およびApH49 TbpB
20−528のF171A変異体(SEQ ID.NO:4)が含まれた。同じく含まれたのは、H87株由来のA.プルロニューモニエTbpB
26−528(アミノ酸26−528)(ApH87 TbpB、SEQ.ID NO:12)、ならびにY95A変異体(SEQ.ID NO:14)、Y121A変異体(SEQ.ID NO:16)、Y174A変異体(SEQ.ID NO:18)およびR179E変異体(SEQ.ID NO:20)であった。H57株由来のA.スイスTbpB
27−577(アミノ酸27−577)(AsH57 TbpB、SEQ.ID NO:28)、F63A変異体(SEQ.ID NO:30)およびF152A変異体(SEQ ID NO:32)も生成された。最後に、Nagasaki株Hp5由来のH.パラスイスTbpB
27−577(アミノ酸27−577)(Hp5 TbpB、SEQ.ID NO:115)、Y93A変異体(SEQ.ID NO:170)、Y117A変異体(SEQ.ID NO:172)、Y167A変異体(SEQ.ID NO:174)、およびW176A変異体(SEQ.ID NO:176)も調製された。
【0206】
最初に、該組換えタンパク質を、ポリヒスチジンタグ、マルトース結合タンパク質およびTEVプロテアーゼ切断部位を含むN末端融合パートナーを用いて生成した。これにより、本発明者らは、ニトロセルロース膜および酵素標識ブタトランスフェリンを用いて、またはブタ−セファロースアフィニティ樹脂を用いた粗抽出物からの組換え融合タンパク質の捕捉により、固相結合アッセイに適した組換えタンパク質を単離することができた(13)。これらのアッセイを利用すると、ネイティブTbpBによる強固な結合が即座に観察されたが、部位特異的変異体の多くによる結合は低かった。
【0207】
これらの実験からブタTfの結合のための半定量的結合定数を得ることができるが、本発明者らは、様々な異なる生物物理学的および生化学的アプローチを利用して、より正確で定量的な結合親和性尺度を得ることを選択した。
図22に示された通り、等温熱量測定、表面プラズモン共鳴またはバイオレイヤー干渉法(23−25)を利用すると、結合速度が少し独特で120nMの推定Kdを有したアクチノバシラス・スイスのTbpB以外では(12)、ネイティブTbpBの親和性定数(Kd)は、概ね20〜60nMの範囲であった。
【0208】
A.プルロニューモニエH49株のTbpB内のF171A突然変異、A.プルロニューモニエH49株からのTbpB内のY174A突然変異、またはH.パラスイスHP5株からのTbpB内のY167AもしくはW176A二重突然変異など、突然変異の幾つかは、親和性定数(Kd)が100倍以上増加した。これらの変異体の全てがループ8に位置することは、注目すべき興味深いことである。
【0209】
実施例11 − 表面結合ループ内にアミノ酸置換を有するTbpB誘導体の免疫特性の評価
Tfへの結合を欠くTbpB由来の突然変異タンパク質の免疫特性をテストするためには、ネイティブ宿主内でそれらをテストすること、好ましくは標的病原による感染から宿主を防御する能力を直接テストすることが重要であった。したがって、ヘモフィルス・パラスイスの確立された感染モデルで実験を開始し、そこで初乳を与えていない子ブタで出生後28日目に免疫化を開始して、63日目にヘモフィルス・パラスイスでチャレンジした(37、60)。この感染モデルにおいて、チャレンジ株(Porcillis Glasser)由来の市販ワクチンは、死亡を完全に防御し、トランスフェリン受容体の組換え形態はこれまで、チャレンジの15日後に20〜30%生存させた。
【0210】
ブタ5または6匹の群を、Hp5チャレンジ株、部位特異的Y167A TbpBタンパク質もしくはPorcillis Glasserワクチンの組換えインタクトTbpB、またはアジュバント単独で免疫化した。H.パラスイスHp5(Nagasaki)株の標準的な10
8個のチャレンジ用量でブタをチャレンジし、15日間モニタリングした。
図23に示された通り、対照Porcillis Glasserで免疫化されたブタ5匹のうち1匹のみが、チャレンジで生き残り、Hp5株のより毒性のある変異体がこの実験で用いられたことが示唆された。感染したブタからの菌株単離物を用いた追跡実験は、より低い生存率を有し、この結論が裏づけられた。チャレンジ株の毒性の高さにもかかわらず、Y167A TbpBで免疫化されたブタ6匹全てが15日目に生存し、6匹のうち5匹は、ほとんど、または全く症状を有さず、剖検では病態がほとんど、または全く観察されなかった。このレベルの防御は、3匹のみがチャレンジで生き残った野生型タンパク質で免疫化されたブタ6匹とは対照的であった。生き残ったブタ3匹は、チャレンジ後に有意な臨床症状を有し、剖検で顕著な病態を示した。要約すると、この実験から、Y167A TbpB突然変異タンパク質が、野生型タンパク質に比較して優れた防御的免疫応答を誘導すること、および2種のタンパク質がトランスフェリン結合特性以外では事実上同一であるため(
図22)、ネイティブタンパク質による最適以下の免疫応答が、宿主トランスフェリンの結合に起因し得ることが示された。
【0211】
突然変異が免疫応答に及ぼす影響のさらなる証拠を提示するために、B細胞およびT細胞の応答を評価した。チャレンジ直前およびチャレンジ後96時間目に採取された血液試料を、適応免疫応答について分析した。試料をFACS分析により、成熟B細胞(αIgM
+CD21
+)およびTヘルパー細胞(CD4
+CD8α
−)サブセットについて評価した。
図24の結果から、チャレンジ前に、Y167A変異体TbpB抗原が、ネイティブTbpB抗原または市販のPorcillis Glasserワクチンよりも強いB細胞応答(パネルA)およびTヘルパー細胞応答(パネルB)を誘導したことが実証される。チャレンジ後96時間目に、変異体TbpBへの応答(51.48%±1.18%)は、ネイティブTbpB(45.65%±1.20%)またはPGワクチン(44.83%±1.59%)への応答よりも有意に高かった(
図24、パネルC)。類似の傾向が、Tヘルパー細胞の応答で観察されたが、3群間の差の割合は、それほど明白ではなかった(
図24、パネルD)。しかし96時間後に、ネイティブTbpBまたはPorcillis Glasserワクチンで免疫化された群内の生き残ったブタは6匹中3匹および5匹中2匹のみであり、応答の低いブタは、より早期に死亡する傾向があったため、96時間目に群間で観察された差は、実際には過小評価である。
【0212】
実施例12 − TbpB誘導体に対する免疫応答は定着の予防を可能にする
感染モデルは、ワクチンの潜在的効能を評価する機会を提供するが、通常、病原の伝染が感染確立前の宿主の上気道への定着を導く自然な感染工程を模倣することはほまれである。髄膜炎、肺炎および侵襲性感染を予防するように設計されたコンジュゲート莢膜ワクチンは、標的細菌を上気道から排除して(17)、非免疫化個体を防御する集団免疫のさらなる利益をもたらすことが示されている。それ以来、定着を予防する能力は、ワクチン施行を決定するための重要な特色になった(18)。したがって、感染予防によって疾患の原因病原の貯蔵庫を排除し得るように、定着を予防するワクチンを設計することが、賢明になり得る。
【0213】
本発明者らは、N.メニンギティディスとヒトCEACAM受容体の相互作用を特徴づける過去の試験(61)の利益を享受することで、ナイセリア・メニンギティディスによる定着を補助することが可能なトランスジェニック・ヒト化マウスモデルを開発した(62)。このモデルは、ナイセリア・メニンギティディスのOpaタンパク質とヒトCEACAM1受容体との特異的相互作用に基づいており、この相互作用を自然に、または人工的に発揮する他の病原にまで拡大し得る。メニンゴコッカスC群コンジュゲート莢膜ワクチンによるトランスジェニックマウスの免疫化は、該定着モデルにおいて粘膜完全排除免疫をもたらし、言い換えるとナイセリア・メニンギティディスC群による定着を予防するが、他の莢膜タイプの菌株は予防しなかった。
【0214】
このモデルを用いて、TbpBおよびその誘導体がN.メニンギティディスの定着を予防する能力をテストした。免疫化段階ではこれらのマウスの体内に存在するヒトトランスフェリンがないため、実施例11に記載された通り、改変された非結合TbpBを用いる必要はなかった。
図25Aに示された通り、組換え切断TbpBで免疫化されたマウス9匹のうち8匹は、1×10
7CFUのN.メニンギティディスM982株での鼻内チャレンジ投与後3日間は、検出可能なレベルのN.メニンギティディスを有さなかった。アジュバント単独で処置された対照マウスでは、8匹のうち6匹に検出可能なレベルのN.メニンギティディスが存在した。これが定着を予防することが可能であることを示された最初のタンパク質抗原であることを述べることは重要であり、本発明者らによる関係するメカニズムの理解が少ないため、この特色が表面タンパク質抗原に共通すると推定することはできない。
【0215】
本発明者らは、追跡実験でTbpBを、別の表面リポタンパク質、2種のワクチン中の重要成分であるH因子結合タンパク質、および個々のTbpBサブドメインと比較した。
図25Bに示された通り、C−ローブは、インタクトTbpBまたはTbpB N−ローブと同じく、またはより良好に定着を予防することができ、一方でこの実験において完全排除免疫を誘導する際にH因子結合タンパク質と同程度、またはより効果的であった。Tf結合の欠如は、それがネイティブ宿主において等しく効果的であり、交差反応性免疫応答を誘発する能力の増強(
図3、
図11)が広範囲に交差防御性があるワクチンの開発を促進することを意味するため、TbpB C−ローブが全身免疫化での粘膜完全排除免疫を誘導する能力は、特に期待の持てる発見である。
【0216】
定着試験を、過去に記載された通り実施した(62)。ヒトCEACAM−1導入遺伝子を発現する8匹以上のC57/B16の群(社内繁殖)が、指定の免疫化剤100μlを0および21日目に皮下投与された。それらの群は、滅菌リン酸緩衝生理食塩水(PBS)(Gibco)で注射あたり100μl容量に希釈された20%Emilsigen D(MVP Laboratories)を補助添加された、指定のタンパク質(25μg)またはタンパク質不含対照のいずれかを投与された。
【0217】
35日目、マウスはイソフルラン(Baxter)で麻酔され、2回動物体通過されたN.メニンギティディスM982株を鼻腔内滴下により摂取された。接種物を調製するために、感染させる菌株をGCアガー(Becton Dickinson)で一夜生育させ;一夜生育菌叢を、MgCl2(PBS/Mg)1mMを含有するPBS 1ml中に回収し、OD600を測定して細菌数を調整した。最終的な10μl接種物それぞれがおよそ1×10
7コロニー形成単位を含むように、培養物を調整した。コロニー形成用量の密度を系列希釈物を通して確認し、GCアガー上に播種した。
【0218】
感染の3日後(38日目)、マウスを二酸化炭素窒息により安楽死させた。PBS/Mg 250μlで気管洗浄し、その後、ポリエステルチップのアプリケータ(Puritan Medical Products)により鼻腔内を直接スワビングしてPBS/Mg 500μlで再懸濁させることにより、定着量を評価した。鼻内菌叢の生育を防ぐVCNTインヒビター(Becton Dickinson)を補充されたGCアガーで試料を一夜生育させた後、計数した。動物実験は、Animal Ethics Review Committee of the University of Torontoを遵守して実施した。
【0219】
実施例13 − TbpBまたはその一部の混合物を含むワクチン配合剤
TbpBを有する病原は、専ら特異的宿主(ヒト、ブタ、ウシおよび/または関連の反芻動物)の体内に存在し、TbpBは、定着を予防することができるため(
図25)、TbpBをターゲットにした改変された抗原に基づく広範囲で交差防御性があるワクチンは、病原を排除する能力を有する。
【0220】
一定範囲のグラム陰性菌に対するワクチン配合剤の効能を拡大するために、異なる菌種または菌株から得られるTbpB、またはその一部、例えばC−ローブドメインを組み合わせることができる。この実施形態で本発明者らは、ワクチン配合剤の調製に使用するためのTbpBポリペプチドまたはそれらの組み合わせの好ましい組み合わせを提供する。
【0221】
TbpBポリペプチドの有効な組合せを同定する際の重要な判断材料の1つが、異なる株、種または属がtbpB遺伝子を即座に交換し、それによりワクチンに含まれないTbpB変異体の潜在的貯蔵庫として作用する程度である。tbpB遺伝子の水平交換(horizontal exchange)に影響を及ぼす重要な因子の1つが、これらの自然に形質転換可能な種に生来、存在する取込みシグナル配列(USS)の性質である(63、64)。これらの細菌は、特異的USSを含むDNAを優先的に取り込み、それらのゲノムに組み込んで、表面抗原の抗原性変異体を組み込むための非常に効率的なメカニズムを提供する。
【0222】
ナイセリア・メニンギティディスの場合、本発明者らは、全体的な配列多様性(
図10A)を適切に表した広範囲の菌株コレクションを有する。配列多様性の非常に幅広い理解を表すこの病原用の公的データベースについて入手できる世界中の特に大規模な配列コレクションが存在する。TbpBを有し、通常はヒトの上気道に存在する他のヒト病原(ヘモフィルス・インフルエンザ、モラクセラ・カタラーリス)は、それらのゲノムDNA内のナイセリアに特異的なUSSを含まないため、それらは、抗原変異のための即時的な貯蔵庫にならない。したがってこの実施例は、
図10Aに示された2つの異なる系統学的クラスタから選択されたナイセリア・メニンギティディス株から得られた少なくとも2つのTbpBポリペプチドまたはその一部(例えば、C−ローブドメイン)を含む、改変TbpB抗原の組み合わせを含むワクチン配合剤を包含する。そのようなワクチン配合剤は、潜在的に交差反応性(
図11)および交差防御性抗体反応を誘導することができ、潜在的にヒト集団からN.メニンギティディスを排除するのに用いることができる。
【0223】
通常、ヒト泌尿生殖管に存在する関連の病原N.ゴノレアは、同じ粘膜表面にこれら2種が偶発的に存在するため、同じUSSを共有し、したがって潜在的に抗原変異のための貯蔵庫として働き得る。しかし、N.メニンギティディス内の多様性に比較したゴノコッカスTbpBの配列多様性の分析(
図26A)では、それらの大部分がN.メニンギティディスに存在する配列多様性のサブセットであり、本発明者らのアプローチのわずかな拡張により、改変された抗原を組み合わせていずれかの病原による定着を潜在的に排除し得るワクチンに用いられ得る、という見通しが得られることが示された。改変C−ローブ(
図26B)の場合、N.ゴノレアのTbpB変異体を特異的に標的化するC−ローブドメインの含有を必要とするであろう。共生のナイセリア単離物の一部におけるTbpBの存在は、抗原変異体の別の潜在的貯蔵庫を表しており、したがって共生のナイセリアからの代表的変異体を含む本発明者らのアプローチを拡張して、疾患を誘発し得るナイセリア発現TbpBを効果的に排除する必要があるかもしれない。したがってこの実施例は、ナイセリア・メニンギティディスTbpBポリペプチドまたはその一部(例えば、C−ローブドメイン)、およびナイセリア・ゴノレアTbpBポリペプチドまたはその一部(例えば、C−ローブドメイン)を含む改変TbpB抗原の組み合わせを含むワクチン配合剤を包含する。
【0224】
ブタ病原A.プルロニューモニエ、A.スイスおよびH.パラスイスは、同じUSSを共有し、その結果、TbpB配列多様性がその3つの種の間に分布するため(
図4)、主な系統学的クラスタが少なくとも2つの種からの代表物を有する。したがって、これらの病原に対するTbpBベースのワクチンを開発する際、3つの種全てにおける全体的TbpB配列変異を考慮することが重要になる。これは、1つよりも多い種からの抗原に対して免疫応答を誘発し得る改変された抗原を開発する、むしろ従来とは異なるアプローチの基礎であり(
図6、
図7)、TbpBは定着を予防し得るため、ブタ宿主からの3つの病原全てを排除するために用いられ得るアプローチを使用することである。したがってこの実施例は、アクチノバシラス・プルロニューモニエ、アクチノバシラス・スイスおよびヘモフィルス・パラスイスから得られた少なくとも2つのTbpBポリペプチドまたはその一部(例えば、C−ローブドメイン)を含む、改変TbpB抗原の組み合わせを含むワクチン配合剤を包含する。
【0225】
ヘモフィルス・インフルエンザに関しては、b型多糖体莢膜を有する菌株と、多糖体莢膜を欠く分類不能な菌株により誘発された明らかに異なる範囲の疾患により、各群を別々に標的化するワクチンに焦点があてられた。A群多糖体莢膜を発現する菌株を原因とした侵襲性疾患が近年増加したことで、A群株をターゲットにしたワクチンを開発する検討がなされた(65)。H.インフルエンザの菌株におけるTbpB多様性の評価から、分類不能な菌株が3つの群全てに分布した3つの主要な系統学的クラスタ(
図27A)が存在することが示される。H.インフルエンザの菌株は全て、同じUSSを共有するため、TbpB多様性の分泌は、莢膜の型による影響を受けないと思われ、TbpBベースの改変された抗原に由来する交差防御性ワクチンの開発は、b型菌株、分類不能な菌株および他の莢膜の型を発現する菌株を効果的に標的化するであろう。したがって本発明者らのアプローチは、無類のワクチンとして、またはコンジュゲート莢膜ワクチンの担体として(
図21)、H.インフルエンザの広範に防御性があるTbpBベースのワクチンの開発を促進するはずである。したがってこの実施例は、
図27Aに示された2つの異なる系統学的クラスタから選択されたH.インフルエンザ株から得られた少なくとも2つのTbpBポリペプチドを含む、改変TbpB抗原の組み合わせを含むワクチン配合剤を包含する。
【0226】
ナイセリア・メニンギティディスおよびヘモフィルス・インフルエンザとは異なり、モラクセラ・カタラーリス株のゲノムに存在する明らかなUSSはないが、それでもそれらは自然に形質転換可能であり、それはM.カタラーリスのDNAにとって非常に好ましい。したがってTbpBを標的とする改変された抗原を用いたM.カタラーリスへの広範な交差防御性があるワクチンの開発は、M.カタラーリスからのTbpB(
図29)の多様性のみを考慮する必要がある。3つの主要な群を構成する菌株に由来する抗原は、M.カタラーリスによる定着を予防することが可能な広範な交差防御性のあるワクチンを誘導するのに十分なはずである。したがってこの実施例は、
図29に示された2つの異なる系統学的クラスタから選択されるM.カタラーリスから得られた少なくとも2つのTbpBポリペプチドを含む、改変TbpB抗原の組み合わせを含むワクチン配合剤を包含する。
【0227】
正式にはパスツレラ・ヘモリティカとして知られる、ウシ病原マンヘミア・ヘモリティカは、ウシにおけるウシ呼吸器疾患(輸送熱)およびヒツジにおける呼吸器感染の主な原因である。2つの種マンヘミア・グルコシダおよびビベルスティニア・トレハロシに再分類されたヒツジ病原パスツレラ・トレハロシは、USSをマンヘミア・ヘモリティカと共有している。これは、これらの種が共通の遺伝子プールを共有するという発見(66)を大きく担う可能性がある。反対に、正式にはヘモフィルス・ソムナスとして知られるヒストフィルス・ソムニは、明確なUSSを有し、したがってM.ヘモリティカの抗原変異体の貯蔵庫ではない。ヒツジおよびウシの病原を明らかに含み(66)(
図28)、主にウシまたはヒツジに限定された変異体のクラスタを含むM.ヘモリティカ、M.グルコシダおよびB.トレハロシからのTbpBの3つの主な系統学的系列がある。したがってウシ、ヒツジまたはその両方の反芻動物種における疾患をターゲットにしたTbpB由来の改変された抗原の開発を検討することが可能であろう。したがってこの実施例は、
図28に示された2種の異なる系統学的クラスタから選択されるマンヘミア・ヘモリティカ、マンヘミア・グルコシダおよびビベルスティニア・トレハロシ株から得られた少なくとも2つのTbpBポリペプチドを含む、改変TbpB抗原、またはその一部、例えばC−ローブドメインの組み合わせを含むワクチン配合剤を包含する。
【0228】
全ての発行物、特許および特許出願は、各個別の発行物、特許および特許出願が全体として参照により本明細書に組み入れられることを具体的かつ個別に示すのと同じ程度に、全体として参照により本明細書に組み入れられる。
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
【表9】
【表10】
【表11】
【表12】
【表13】
【表14】
【表15】
【表16】
【表17】
【表18】
【表19】
【表20】
【表21】
【表22】
【表23】
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