(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
本発明はB細胞リンパ腫および白血病において認められるB細胞受容体複合体の膜結合IgM(mIgM)を標的とする抗体およびその使用に関する。本発明の別の態様は、B細胞リンパ腫および白血病を含むB細胞悪性病変の処置における抗B細胞mIgM抗体の使用である。
前記抗体が融合体117(ATCC寄託番号PTA−121719)およびそのクローン由来のハイブリドーマ細胞株により産生されるmAb1−1と命名されたモノクローナル抗体である、請求項1に記載の単離抗体。
前記抗体が融合体118(ATCC寄託番号PTA−121717)およびそのクローン由来のハイブリドーマ細胞株により産生されるmAb2−2bと命名されたモノクローナル抗体である、請求項1に記載の単離抗体。
前記抗体が融合体118(ATCC寄託番号PTA−121718)およびそのクローン由来のハイブリドーマ細胞株により産生されるmAb3−2bと命名されたモノクローナル抗体である、請求項1に記載の単離抗体。
前記抗体が融合体119(ATCC寄託番号PTA−121716)およびそのクローン由来のハイブリドーマ細胞株により産生されるmAb4−2bと命名されたモノクローナル抗体である、請求項1に記載の単離抗体。
請求項1、8、9、10、11、12または13に記載の抗体および生理学的に許容可能なキャリア、希釈剤、賦形剤、または安定剤の内の少なくとも1種を含む組成物。
患者におけるB細胞リンパ腫または白血病を回復させるまたは処置する方法であって、請求項1、8、9、10、11、12または13に記載の単離抗体の有効量を患者に投与することを含み、前記抗体がB細胞mIgMに結合しかつ細胞増殖抑制および/またはアポトーシスを誘導する、方法。
対象におけるB細胞の増殖を止めるまたは抑制する方法であって、請求項1、8、9、10、11、12または13に記載の抗体の有効量をそれを必要としている対象に投与し、それにより対象における前記B細胞の増殖を止めるまたは抑制することを含む、方法。
対象におけるB細胞の増殖を止めるまたは抑制する方法であって、請求項1、8、9、10、11、12または13に記載の抗体の有効量を抗B細胞抗体、細胞毒素、および/または放射性同位元素の内の1種または複数種と組み合わせてそれを必要としている対象に投与し、それにより対象における前記B細胞の増殖を止めるまたは抑制することを含む、方法。
抗体を産生する方法であって、前記抗体の産生に適する条件下で請求項31、32、33、34または35に記載のハイブリドーマ細胞株を培養すること、および前記抗体の単離を含む、方法。
請求項8、9、10、11、12または13に記載の抗体と同じエピトープに結合する単離抗体であって、前記エピトープがB細胞mIgMの第4の定常領域に位置する、単離抗体。
対象におけるB細胞リンパ腫および白血病を処置するための薬物の調製のための請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12または13に記載の単離抗体または抗原結合断片の使用。
B細胞受容体複合体の活性を低下させる薬物の調製のための請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12または13に記載の単離抗体または抗原結合断片の使用。
【発明を実施するための形態】
【0056】
本発明は、本明細書で記載の特定の方法、プロトコル、細胞株、または試薬に限定されない。理由は、それらは変わってもよいからである。さらに、本明細書に使用される用語は、特定の実施形態のみを説明する目的のためであり、本発明の範囲を制限することを意図していない。本明細書および添付の請求項において使用される場合、文脈上別段の明確な記載がない限り、単数形の「a」、「an」および「the」は複数の指示対象を含む。例えば、「a host cell(宿主細胞)」への言及は、複数のこのようなhost cell(宿主細胞)を含む。特に断らなければ、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語および任意の頭字語は、本発明の分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本願に記載されているものと類似のまたは等価な任意の方法および部材を本発明の実施において使用することができるが、代表的な方法、装置、および材料が本明細書で記載される。
【0057】
略語
詳細な説明および実施例の全体を通して、次の略語が使用される:
ADCC 抗体依存性細胞傷害
ATCC アメリカ合衆国培養細胞系統保存機関
BCL2またはBcl−2 B細胞リンパ腫2
BCR B細胞受容体
BCRC B細胞受容体複合体
BTK チロシンプロテインキナーゼBTK
CDC 補体依存性細胞傷害
CDR Kabatナンバリングシステムを使って決定される、免疫グロブリン可変領域中の相補性決定領域
CHO チャイニーズハムスター卵巣
CLL 慢性リンパ性白血病
ELISA 酵素結合免疫吸着測定法
FM 蛍光顕微鏡
FR 抗体フレームワーク領域:CDR領域を除く免疫グロブリン可変領域
HRP 西洋ワサビペルオキシダーゼ
IFN インターフェロン
IC50 50%阻害を生じる濃度
Ig 免疫グロブリン
IgA 免疫グロブリンA
IgD 免疫グロブリンD
IgE 免疫グロブリンE
IgG 免疫グロブリンG
IgM 免疫グロブリンM
Kabat Elvin A.Kabatにより開拓された免疫グロブリン整列化およびナンバリングシステム((1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed. Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.)。
mAb、Mab、またはMAb モノクローナル抗体
mAb 1またはmAb1 モノクローナル抗体mAb1−1
mAb 2またはmAb2 モノクローナル抗体mAb2−2b
mAb 3またはmAb3 モノクローナル抗体mAb3−2b
mAb 4またはmAb4 モノクローナル抗体mAb4−2b
mIg 細胞表面膜結合免疫グロブリン
mIgA 細胞表面膜結合免疫グロブリンA
mIgD 細胞表面膜結合免疫グロブリンD
mIgE 細胞表面膜結合免疫グロブリンD
mIgG 細胞表面膜結合免疫グロブリンG
mIgM 細胞表面膜結合免疫グロブリンM
PCR ポリメラーゼ連鎖反応
PD 近位ドメイン
PI3K フォスフォイノシチド3キナーゼ
PK 薬物動態学
SEM 走査型免疫電子顕微鏡
V領域 異なる抗体間の配列で可変であるIgG鎖のセグメント。V領域は、軽鎖のKabat残基109および重鎖の113まで伸びている。
VH 免疫グロブリン重鎖可変領域
VK 免疫グロブリンカッパ軽鎖可変領域
VL 免疫グロブリン軽鎖可変領域
【0058】
定義
本出願を通して使用される用語は、当業者にとって通常の典型的な意味を有するものと解釈されるべきである。しかし、出願者らは次の用語が以降で定義される特定の定義を与えられるべきであることを要求する。
【0059】
抗体鎖ポリペプチド配列に関連する「実質的に同一の」という語句は、抗体鎖が参照ポリペプチド配列に対し、少なくとも70%、または80%、または90%、または95%の配列同一性を示すと解釈できる。核酸配列に関連する場合のこの用語は、ヌクレオチドの配列が参照核酸配列に対し、少なくとも85%、または90%、または95%、または97%の配列同一性を示すと解釈できる。
【0060】
「同一性」または「相同性」という用語は、配列の整列後に、および全体配列に対し最大パーセント同一性を得るために必要に応じてギャップの導入後に、配列同一性の部分としていずれの保存的置換も考慮していない場合の、それが比較される対応する配列の残基と同一である、候補配列中のアミノ酸残基の割合を意味すると解釈される。NまたはC末端の伸張および挿入のいずれも、同一性または相同性を低下させると解釈されないものとする。整列化のための方法とコンピュータプログラムは、当技術分野でよく知られている。配列同一性は配列解析ソフトウエアを使って測定できる。
【0061】
「抗体」という用語は、最も広い意味で使用され、免疫グロブリン分子および免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分、すなわち、免疫特異的に抗原を結合する抗原結合部位を含む分子、を含み、特にモノクローナル抗体(完全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、および多重特異的抗体(例えば二重特異的抗体)を包含する。抗体(Ab)および免疫グロブリン(Ig)は、同じ構造的特徴を有する糖タンパク質である。抗体は、特異的標的に対する結合特異性を示すが、免疫グロブリンは、抗体およびその他の標的特異性を持たない抗体様分子を含む。天然の抗体および免疫グロブリンは、通常、約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質であり、2つの同一の軽(L)鎖と2つの同一の重(H)鎖とから構成される。それぞれの重鎖は可変ドメイン(V
H)を一端に有し、これに多数の定常ドメインが続く。各軽鎖は、一端に可変ドメイン(V
L)、および他端に定常ドメインを有する。さらに、「抗体」(Ab)または「モノクローナル抗体」(mAb)という用語は、インタクト分子、ならびにタンパク質に特異的に結合できる抗体断片(例えば、FabおよびF(ab’)
2断片など)の両方を包含することを意味する。FabおよびF(ab’)
2断片は、インタクト抗体のF
C断片を欠き、動物または植物の循環系からより急速に除去され、インタクト抗体より非特異的組織結合が少ない場合がある(Wahl,et al.,J Nucl Med 24:316(1983))。
【0062】
本明細書で使用される場合、「抗B細胞mIgM抗体」という用語は、細胞増殖を抑制する、mIgMを内部移行させるまたはこのmIgMエピトープを有するB細胞のアポトーシスを誘導するような様式で、ヒトB細胞mIgMに結合する抗体を意味する。
【0063】
抗体の可変ドメインとの関係における「可変(variable)」という用語は、可変ドメインの特定の部分が抗体間の配列で広範囲にわたって異なり、その特定の標的に対するそれぞれの特定の抗体の結合および特異性において使用されるという事実を意味する。しかし、可変性は、抗体の可変ドメイン全体にわたって、均一に分布していない。可変性は、軽鎖および重鎖の可変ドメインの両方において高頻度可変性領域としても知られる相補性決定領域(CDR)と呼ばれる3つのセグメントに集中している。可変ドメインのより高度に保存された部分は、フレームワーク(FR)と呼ばれる。従来技術で公知であるように、当該技術分野において既知の文脈および種々の定義に応じて、抗体の高頻度可変領域を示すアミノ酸位置/境界は変わり得る。可変ドメイン内のいくつかの位置はハイブリッド高頻度可変位置と見なすことができ、そこでのこれらの位置は、1つのセットの基準下では高頻度可変領域内にあると見なすことができ、異なるセットの基準下では高頻度可変領域外であると見なすことができる。1つまたは複数のこれらの位置はまた、拡張高頻度可変領域でも見出される。本発明は、これらのハイブリッド高頻度可変位置の変更を含む抗体を提供する。天然の重鎖および軽鎖の可変ドメインの各々は、主にβシート配置をとり3つのCDRで連結される4つのFR領域を含み、CDRはβシート構造をつなぐループを形成し、およびいくつかの例ではβシート構造の部分を形成している。各鎖のCDRはFR領域によって近接して一緒に保持され、他の鎖由来のCDRと共に、抗体の標的結合部位の形成に関与する(Kabat,et al,Sequence of Proteins of Immunological Interest,” National Institute of Health,Bethesda,Md.(1987)を参照されたい)。 本明細書で使用される場合、別段の指示がない限り、免疫グロブリンアミノ酸残基のナンバリングは、Kabatらの免疫グロブリンアミノ酸残基ナンバリングシステムにより行われる。
【0064】
「抗体フラグメント」という用語は、完全長抗体の部分、通常は抗原結合領域または可変領域を意味する。抗体フラグメントの例としては、Fab、Fab’、F(ab’)
2およびFvフラグメントが挙げられる。抗体の「抗原結合断片」という語句は、完全長抗体と共通の定性的生物活性を有する化合物である。例えば、抗B細胞mIgM抗体の抗原結合断片はB細胞mIgM受容体に、このような分子がB細胞mIgMに結合する能力を持つことを妨げるまたは実質的に減らすような様式で、結合できる抗体である。本明細書で使用される場合、抗体に関する「機能性断片」という用語は、Fv、F(ab)およびF(ab’)
2断片を意味する。「Fv」断片は、完全な標的認識および結合部位を含む最小抗体断片である。この領域は、堅固な非共有結合による1つの重鎖および1つの軽鎖可変ドメインのダイマー(V
H−V
Lダイマー)から構成される。この配置において、それぞれの可変ドメインの3つのCDRが相互作用して、V
H−V
Lダイマーの表面上の標的結合部位を決定する。6つのCDRは、協調して、標的結合特異性を抗体に付与する。しかしながら、単一可変ドメイン(または抗原に特異的なCDRを3つしか含まないFvの半分)でさえ、完全な結合部位より親和性は低いが、標的を認識して結合する能力を有する。「単鎖Fv」または「scFv」抗体断片は抗体のV
HおよびV
Lドメインを含み、これらのドメインはポリペプチド単鎖中に存在する。一般に、FvポリペプチドはV
HおよびV
Lドメイン間にポリペプチドリンカーをさらに含み、これはscFvが標的結合のために所望の構造を形成することを可能にする。
【0065】
Fab断片は、軽鎖の定常ドメインおよび重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)を含む。Fab’フラグメントは、抗体ヒンジ領域の1つまたは複数のシステインを含む重鎖CH1ドメインのカルボキシル基末端でのいくつかの残基の付加の分、Fabフラグメントとは異なる。F(ab’)断片は、F(ab’)
2ペプシン消化産物のヒンジシステインの位置でのジスルフィド結合切断により産生される。抗体断片の追加の化学カップリングは、当業者には既知である。
【0066】
本明細書で使用される場合、「モノクローナル抗体」(mAb)という用語は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を意味する。すなわち、集団を構成する個々の抗体は、少量存在する場合がある天然に生じ得る変異体および同一のCDR配列を含む天然に存在するクラススイッチ変異体を除いて同一である。モノクローナル抗体は特異性が高く、単一の標的部位に対して向けられる。さらに、異なった決定基(エピトープ)に対する異なった抗体を通常は含む従来の(ポリクローナル)抗体調製物と対照的に、それぞれのモノクローナル抗体は標的上の単一の決定基に対して向けられる。その特異性に加えて、モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ培養により合成することができ、他の免疫グロブリンによって汚染されていない点で有利である。「モノクローナル」という修飾語句は、実質的に均一な抗体の集団から得られるような抗体の性質を示し、何らかの特定の方法による抗体の産生を必要とするようには解釈されるべきではない。例えば、本発明で用いるためのモノクローナル抗体は、ファージ抗体ライブラリーからよく知られた技術を使って単離できる。本発明で使用される親モノクローナル抗体は、Kohlerら(Nature 256:495(1975))により最初に記載されたハイブリドーマ法により作製でき、または組換え法により作製できる。モノクローナル抗体は、融合多発性骨髄腫パートナー(例えば、SP2/0)として、おなじ遺伝的背景を有するマウスで通常作製されるが、 以前に、Yinらは、J Immunol Methods 144:165−173(1991)で、異なるマウス株における遺伝的に高められた免疫反応性および親和性を利用するために、同一でないパートナーの使用について報告している。
【0067】
本明細書で使用される場合、「キメラ」抗体という用語は、ラットまたはマウス抗体などの非ヒト免疫グロブリン由来の可変配列、および典型的には、ヒト免疫グロブリンテンプレートから選択されるヒト免疫グロブリン定常領域を有する抗体を意味する。さらに最近では、モノクローナル抗体の結合可変配列および細胞受容体を含むキメラ構造が開発されている。キメラはまた、ヒト化可変領域配列およびマウス定常領域配列を有し、マウス試薬に最適化されたルーチン免疫組織化学、フローサイトメトリーまたはその他のアッセイを可能にする抗体を意味する。
【0068】
非ヒト(例えば、マウス)抗体の「ヒト化」型は、キメラ免疫グロブリン、その免疫グロブリン鎖またはフラグメント(例えば、Fv、Fab、Fab’、F(ab’)
2または抗体の他の標的結合配列)であり、これらは非ヒト免疫グロブリンに由来する最小の配列を含む。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、通常2つの可変ドメインの実質的に全てを有し、全てもしくは実質的に全てのCDR領域が非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、かつ全てもしくは実質的に全てのFR領域がヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものである。ヒト化抗体は、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部、典型的には、選択されたヒト免疫グロブリンテンプレートの少なくとも一部を含んでよい。
【0069】
本明細書で使用される場合、「ヒト抗体」は、ヒト免疫グロブリンのアミノ酸配列を有する抗体を含み、かつヒト免疫グロブリンライブラリーからから単離された抗体、または1種もしくは複数種のヒト免疫グロブリン遺伝子を導入され、内在性免疫グロブリンを発現していない動物から単離された抗体を含む。これらに関しては、後で、および、例えば、米国特許第5,939,598号(Kucherlapati,et al)に記載されている。
【0070】
「細胞」、「細胞株」、および「細胞培養」という用語は、子孫を含む。全ての子孫は、意図的なまたは故意でない変異に起因して、DNAの内容が正確に同一ではない可能性があるということも理解されよう。最初に形質転換された細胞中で選別される際、同じ機能または生物学的性質を有する変異子孫が含まれる。本発明で使用する場合、「宿主細胞」は原核または真核生物宿主である。
【0071】
DNAでの細胞生物の「形質転換」は、染色体外要素として、または染色体統合によりDNAが複製可能であるように、DNAを生物体中に導入することを意味する。細胞生物のDNAでの「形質移入」は、なんらかのコード配列が実際に発現されているかどうかに関係なく、細胞または生物によるDNA、例えば、発現ベクターの取り込みを意味する。「形質移入宿主細胞」および「形質転換された」は、DNAが導入された細胞を意味する。細胞は「宿主細胞」と命名され、その細胞は原核または真核生物細胞であってよい。典型的な原核宿主細胞には、大腸菌の種々の株が挙げられる。典型的な真核生物の宿主細胞は、チャイニーズハムスター卵巣細胞またはヒト起原の細胞など、哺乳動物細胞である。導入されるDNA配列は、宿主細胞と同じ種由来または宿主細胞と異なる種であってよく、またはいくつかの外来性DNAおよびいくつかの相同なDNAを含むハイブリッドDNA配列であってもよい。
【0072】
「ベクター」という用語は、適切な宿主中でDNAの発現を生じさせることが可能な適切な制御配列に機能的に連結されるDNA配列を含むDNA構築物を意味する。このような制御配列には、転写を行うプロモータ、このような転写を制御する任意のオペレータ配列、適切なmRNAリボソーム結合部位をコードする配列、および転写および翻訳の終止を制御する配列が含まれる。ベクターは、プラスミド、ファージ粒子、または単純に潜在的なゲノムインサートであってもよい。適切な宿主中に形質転換されると、ベクターは宿主ゲノムとは独立に複製および機能でき、または、場合によっては、ゲノムそれ自体の中に一体化し得る。本明細書では、プラスミドが最もよく使われる形態のベクターであるため、「プラスミド」および「ベクター」は同義に用いられることもある。しかし、本発明は、等価な機能を果たし、当該技術分野で知られている、または知られるようになるこのような他の形態のベクターを含むことを意図している。
【0073】
処置のための「哺乳動物」は、哺乳動物に分類される任意の動物を意味し、ヒト、飼育動物および家畜、非ヒト霊長類、ならびに動物園の、スポーツの、またはペットの動物、例えば、イヌ、ウマ、ネコ、雌ウシなどが含まれる。
【0074】
本明細書で使われる場合、単語「標識」は、分子またはタンパク質に、例えば、抗体に直接的にまたは間接的にコンジュゲートできる検出可能な化合物または組成物を意味する。標識それ自体が検出可能であってもよく(例えば、放射性同位元素標識または蛍光標識)、または、酵素標識の場合には、検出可能な基質化合物または組成物の化学的変化を触媒してもよい。
【0075】
本明細書で使用される場合、「固相」は、それに対し本発明の抗体が付着できる非水性マトリックスを意味する。本明細書に包含される固相の例には、ガラス(例えば、気孔制御ガラス)、多糖類(例えば、アガロース)、ポリアクリルアミド、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、およびシリコーンから部分的にまたは全体として形成されるものが挙げられる。特定の実施形態では、文脈に応じて、固相は、アッセイプレートのウエルを含んでよく、他の例では、固相は精製カラム(例えば、親和性クロマトグラフィーカラム)である。
【0076】
「活性化」、「刺激」、および「処置」という用語は、細胞または受容体に適用される場合、文脈によりまたは明示的に特に指示がない限り、例えば、リガンドによる細胞または受容体の活性化、刺激、または処置と、同じ意味を有してよい。「リガンド」は天然および合成リガンド、例えば、サイトカイン、サイトカイン変異体、類似体、ムテイン、および抗体に由来する結合化合物を包含する。「リガンド」はまた、小分子、例えば、サイトカインのペプチド模倣物質および抗体のペプチド模倣物質を包含する。「活性化」は、内部機序ならびに外部または環境要因により調節されるような細胞活性化を意味する。例えば、細胞、組織、器官、または生物の「応答」は、生化学的または生理的な挙動、例えば、生物学的区画内での濃度、密度、付着、または遊走、遺伝子発現の速度、または分化の状態の変化を包含し、その変化は、活性化、刺激、または処置、または遺伝的プログラムなどの内部機序と相関付けられる。
【0077】
分子の「活性」は、分子のリガンドもしくは受容体への結合、触媒活性;遺伝子発現もしくは細胞内シグナル伝達、分化、もしくは成熟を刺激する能力;抗原活性、その他の分子の活性の調節などを説明するまたはそれらを意味してよい。分子の「活性」はまた、細胞間相互作用、例えば、付着の調節もしくは維持における活性、または細胞の構造、例えば、細胞膜または細胞骨格の維持における活性を意味する。「活性」はまた、比活性、例えば、免疫学的な活性/mgタンパク質、生物学的区画中の濃度などを意味する場合もある。「活性」は、自然免疫系または適応免疫系の構成要素の調節を意味してもよい。
【0078】
「増殖活性」という用語は、例えば、正常細胞分裂、ならびに癌、腫瘍、異形成、細胞形質転換、転移、および血管新生を促進する、それらに必要である、またはそれらに特異的に関連する活性を包含する。
【0079】
「投与」および「処置」という用語は、動物、ヒト、実験対象、細胞、組織、器官、または生体液に適用される場合、外来の医薬、治療薬、診断薬、または組成物の、動物、ヒト、対象、細胞、組織、器官、または生体液への接触を意味する。「投与」および「処置」は、例えば、治療の、薬物動態学的、診断の、研究の、および実験の方法を意味してもよい。細胞の処置は、試薬の細胞への接触、ならびに試薬の体液への接触を包含し、この場合、体液は細胞と接触している。「投与」および「処置」はまた、例えば、細胞の、試薬、診断薬、結合化合物、または別の細胞によるインビトロおよびエクスビボ処置も意味する。「対象」という用語は、任意の生物、好ましくは動物、より好ましくは哺乳動物(例えば、ラット、マウス、イヌ、ネコ、ウサギ)および最も好ましくはヒトを含む。
【0080】
「処置する」または「処置すること」という用語は、治療薬、例えば、本発明のいずれかの抗体または抗原結合断片を含む組成物を、内部的にまたは外部的に、その治療薬が治療活性を有する1種または複数種の病徴を有する、または疾患であると疑われるまたは疾患になるリスクが高い対象または患者に投与することを意味する。通常、薬剤は、いずれかの臨床的に測定可能な程度でこのような症状(単一または複数)の退行を誘導するかまたは進行を抑制することにより、処置される対象または集団における1種または複数種の病徴を改善するのに効果的な量で投与される。いずれかの特定の病徴を改善するのに効果的な治療薬の量(「治療有効量」とも呼ばれる)は、疾患状態、年齢、および患者の体重、ならびに対象における所望の応答を誘発する薬剤の能力などの因子に応じて変わってもよい。病徴が改善されたかどうかは、その症状の重症度または進行状態を評価する医師またはその他の熟練保健医療提供者により通常使われる任意の臨床的測定により、評価できる。本発明の一実施形態(例えば、処置方法または製品)は全ての患者で標的病徴(単一または複数)の改善に効果的でない場合もあるが、それは、当該技術分野において既知の、例えば、スチューデントのt検定、χ
2検定、MannおよびWhitneyによるU検定、クラスカル・ワリス検定(H検定)、ヨンキー・テルプストラ検定およびウィルコクソン符号付き順位検定などのいずれかの統計的検定により測定して、統計的に有意な数の対象において標的病徴(単一または複数)を改善するはずである。
【0081】
「処置」という用語は、ヒト対象、獣医学的対象、または研究対象に適用される場合、治療処置、予防または防止手段、研究および診断適用を意味する。「処置」は、ヒト対象、獣医学的対象、または研究対象、または細胞、組織、または器官に適用される場合、ヒトまたは動物対象、細胞、組織、生理的区画、または生理液に対するアゴニストまたはアンタゴニストの接触を包含する。「細胞の処置」はまた、アゴニストまたはアンタゴニストが、例えば、液体相またはコロイド状相中で受容体に接触する状況を包含するが、アゴニストまたはアンタゴニストが細胞または受容体に接触しない状況もまた包含する。
【0082】
細胞株
以降で示すように、本発明の詳細説明および実施例の全体を通して、以下の11種のヒトB細胞系列細胞株および1種のマウス細胞株が参照される:
1.CRL1432−Namalwa mIgM−L バーキットリンパ腫
2.CRL1596−Ramos sIgM mIgM−L バーキットリンパ腫
3.CRL1647−ST486 sIgM mIgM−K バーキットリンパ腫
4.CRL1648−CA46 mIgM−K バーキットリンパ腫
5.CRL1649−MC116 mIgM−L 未分化リンパ腫
6.CRL2260−HT mIgM−K びまん性混合型B細胞リンパ腫
7.CRL2289−DB mIgG−L 大細胞型B細胞型リンパ腫
8.CRL2568−H2.8 マウス IgG1−K 骨髄腫
9.CRL2632−びまん性大細胞型リンパ腫 IgGk
10.CRL2958−SU−DHL−5 びまん性大細胞型リンパ腫 mIgM
11.CRL3006−JeKo−1−L マントル細胞リンパ腫 mIgM
12.SK007−リンパ腫 mIgE
【0083】
これらの細胞株はアメリカ合衆国培養細胞系統保存機関(ATCC)、10801 University Boulevard,Manassas,VA 20110から入手し、RT−PCRによりPD発現の試験を行った。細胞質および分泌IgM画分を、上清および洗浄した0.01%NP−40細胞ライセートのELISAにより確認した。
【0084】
抗体生成
本発明の抗体は、当該技術分野において既知の任意の好適な方法によって生成できる。本発明の抗体はポリクローナル抗体を含んでもよい。ポリクローナル抗体の作製方法は当業者に既知である(Harlow,et al.,Antibodies:a Laboratory Manual,Cold spring Harbor Laboratory Press,2nd ed.(1988)、この文献は参照によりその全体が本明細書に援用される)。
【0085】
例えば、上述の免疫原は、限定されないが、ウサギ、マウス、ラットなどを含む種々の宿主動物に投与されて抗原特異的ポリクローナル抗体を含む血清の産生を誘導できる。免疫用の特定のマウス株の選択は、応答不良を誘発する免疫原にとって重大な意味を持つ場合がある。マウス株の寛容性は、自己免疫欠陥またはより野生型の免疫反応性を有する株を試験するなどのプレスクリーニングを行って株を選択することにより、克服可能である。免疫原の投与は、免疫化剤および必要に応じアジュバントの1回または複数回の注射を伴う場合がある。宿主種に応じ、種々のアジュバントを使用して免疫応答を高めることができる。アジュバントとしては、フロイントのアジュバント(完全および不完全)、水酸化アルミニウムなどの鉱物ゲル、リゾレシチンなどの界面活性物質、プルロン酸ポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油乳剤、スカシ貝ヘモシアニン、ジニトロフェノール、多抗原ペプチド、および潜在的に有用なヒトアジュバント、例えば、BCG(カルメット・ゲランウシ型結核菌)およびコリネバクテリウムパルブムが挙げられるが、これらに限定されない。採用可能なアジュバントの追加の例としては、結合免疫原ペプチドを有するスカシ貝ヘモシアニン、結合免疫原ペプチドを有する多抗原ポリペプチド、およびMPL−TDMアジュバント(モノホスホリルリピドA、合成トレハロースジコリノミコレート)が挙げられる。免疫化プロトコルは当該技術分野において周知であり、選択した動物宿主中で免疫応答を誘発する任意の方法によって実施できる。アジュバントも当該技術分野において周知である。
【0086】
通常、免疫原(アジュバントありまたはなしで)は、複数回の皮下または腹腔内注射により、または筋肉内または静脈内注射により哺乳動物に注射される。免疫原としては、膜IgMに対する:EGEVSADEEGFEN(配列番号11)または膜IgGに対する:ELQLEESCAEAQDGELDG(配列番号12)の標的ペプチド、精製されたB細胞mIgM、融合タンパク質、またはその変異体を含んでよい。膜IgM用の標的ペプチド、EGEVSADEEGFEN(配列番号11)は、配列EGEVSEDEEGFE(配列番号13)を有するヒトIgMペプチドhCG2038942(受入番号EAW81938.1)に100%相同性を有する。ペプチドの性質(すなわちパーセント疎水性、パーセント親水性、安定性、実効電荷、等電点、複数の異性体型など)に応じて、免疫化される哺乳動物において免疫原性があることが分かっているタンパク質に免疫原をコンジュゲートするのが有用な場合がある。このようなコンジュゲーションは、コンジュゲートされる免疫原および免疫原性タンパク質の両方への化学官能基の活性誘導により共有結合が形成されるような化学コンジュゲーション、または融合タンパク質ベースの方法による化学コンジュゲーション、またはその他の当業者に既知の方法を含む。このような免疫原性タンパク質の例としては、スカシ貝ヘモシアニン、多抗原ペプチド、卵白アルブミン、血清アルブミン、ウシチログロブリン、大豆トリプシン阻害剤、およびプロミスキャスTヘルパーペプチドが挙げられるが、これらに限定されない。上述のように、種々のアジュバントを使用して免疫応答を高めることができる。
【0087】
本発明の抗体はモノクローナル抗体を含んでもよい。モノクローナル抗体は単一の抗原性部位を認識する抗体である。それらの一定の特異性はモノクローナル抗体をポリクローナル抗体より遥かに有用性の高いものにしている。ポリクローナル抗体は、通常、種々の異なる抗原性部位を認識する抗体を含んでいる。モノクローナル抗体は、Kohler,et al.,Nature 256:495(1975);米国特許第4,376,110号;Harlow,et al.Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,2nd ed.(1988)およびHammerling,et al.,Monoclonal Antibodies and T−Cell Hybridomas,Elsevier(1981)に記載されるようなハイブリドーマ技術方法、組換えDNA法、または当業者に既知のその他の方法を使って調製できる。 その他の方法の例としては、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kosbor,et al.,Immunology Today 4:72(1983);Cole,et al.,Proc Natl Sci USA 80:2026(1983))、およびEBVハイブリドーマ技術(Cole,et al.,Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,pp.77−96.Alan R.Liss(1985))が挙げられるが、これらに限定されない。このような抗体は、IgG、IgM、IgE、およびIgA、IgDならびにこれらの任意のサブクラスを含むいずれの免疫グロブリンクラスであってもよい。本発明のmAbを産生するハイブリドーマは、インビトロまたはインビボで培養できる。
【0088】
ハイブリドーマモデルでは、マウス、ヒト化マウス、ヒト免疫系を有するマウス、ハムスター、ウサギ、ラクダ、または任意のその他の適切な宿主動物などのホストを免疫して、免疫に使用されたタンパク質に特異的に結合する抗体を産生するまたは産生できるリンパ球を誘発する。本発明では、初期B細胞それ自体が所望の抗体の標的となりB細胞のアポトーシスが生じ得ることから、ヒトIg遺伝的レパートリーを利用するマウスは使用できない。その代わりに、リンパ球をインビトロで免疫できる。次に、ポリエチレングリコールなどの適切な融合剤を使ってリンパ球を骨髄腫細胞と融合し、ハイブリドーマ細胞を形成する(Goding,Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,Academic Press,pp.59−103(1986))。
【0089】
一般に、抗体産生ハイブリドーマの作製では、ヒト起原の細胞が望まれる場合は末梢血リンパ球(「PBL」)が使われ、または非ヒト哺乳動物起源が望まれる場合は脾臓細胞またはリンパ節細胞が使われる。次に、ポリエチレングリコールなどの適切な融合剤を使ってリンパ球を不死化細胞株と融合し、ハイブリドーマ細胞を形成する(Goding,Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,Academic Press,pp.59−103(1986))。不死化細胞株は通常、形質転換された哺乳動物細胞であり、特に、げっ歯類、ウシまたはヒト起原の骨髄腫細胞である。通常、ラットまたはマウス骨髄腫細胞株が用いられる。ハイブリドーマ細胞は、好ましくは非融合不死化細胞の成長または生存を抑制する1種または複数種の物質を含有する、適切な培地中で培養できる。例えば、親細胞が酵素ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRTまたはHPRT)を欠いている場合、ハイブリドーマ用の培地は通常、HGRT欠損細胞の成長を防止する物質である、ヒポキサンチン、アミノプテリン、およびチミジン(「HAT培地」)を含む。
【0090】
好ましい不死化細胞株は、効率的に融合して、選択された抗体産生細胞による抗体の安定な高レベル産生を支援し、かつFIAT培地などの培地に敏感な細胞株である。これらの骨髄腫細胞株には、MOPC−21およびMPC−11マウス腫瘍由来のものならびにATCC、10801 University Boulevard,Manassas,VA,USAから入手可能なSP2/0またはX63−Ag8−653細胞などのマウス骨髄腫株がある。ヒト骨髄腫およびマウス−ヒトヘテロミエローマ細胞株も、ヒトモノクローナル抗体の作製用として記載されている(Kozbor,J Immunol 133:3001(1984);Brodeur,et al.,Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,Marcel Dekker,Inc.pp.51−63(1987))。マウス骨髄腫細胞株NSOも使用できる(European Collection of Cell Cultures,Salisbury,Wilshire,UK)。
【0091】
その中でハイブリドーマ細胞が増殖される培地は、ペプチドに対するモノクローナル抗体の産生についてアッセイされ、ペプチドは、例えば、IgM用の、EGEVSADEEGFEN(配列番号11)およびIgG用の、ELQLEESCAEAQDGELDG(配列番号12)である。ハイブリドーマ細胞により産生されるモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降によりまたはインビトロ結合アッセイにより、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)、免疫ウェスタンブロットもしくは酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)により測定できる。このような技術は当技術分野および当業者に既知である。モノクローナル抗体の結合親和性は、例えば、スキャチャード解析によって決定できる(Munson et al.,Anal Biochem.,107:220(1980))。
【0092】
ハイブリドーマ細胞が、所望の特異性、親和性、および/または活性の抗体を産生すると特定されると、クローンを限界希釈法によりサブクローニングし、標準的方法により増殖させることができる(Goding,Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,Academic Press,pp.59−103(1986))。この目的のための適切な培地には、例えば、ダルベッコ変法イーグル培地(D−MEM)またはRPMI−1640培地が挙げられる。さらに、ハイブリドーマ細胞は腹水腫瘍として動物中でインビボで増殖させることができる。
【0093】
サブクローンから分泌されたモノクローナル抗体は、従来の免疫グロブリン精製手順、例えば、プロテインAセファローズ、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル排除クロマトグラフィー、ゲル電気泳動法、透析、または親和性クロマトグラフィーなどにより、培地、腹水、または血清から適切に分離または単離される。
【0094】
当該技術分野には、モノクローナル抗体の種々の作製方法が存在し、したがって、本発明はそれらのハイブリドーマによる産生のみに限定されるものではない。例えば、モノクローナル抗体は、組換えDNA法、例えば、米国特許第4,816,567号に記載の方法により作製できる。ハイブリドーマ細胞は、このようなDNAのソースとして機能する。単離されると、DNAは発現ベクター中に配置され、これは次に、大腸菌、NS0細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、または他の方法で免疫グロブリンタンパク質を産生しない骨髄腫細胞などの宿主細胞中に形質移入され、組換え型宿主細胞中でモノクローナル抗体の合成が行われる。DNAはまた、例えば、相同なマウス配列をヒト重鎖および軽鎖定常ドメインのコード配列で置換することにより(米国特許第4,816,567号;Morrison,et al.,Proc Natl Acad Sci USA 81:6851(1984))または非免疫グロブリンポリペプチドのコード配列の全てまたは一部を免疫グロブリンコード配列に共有結合的に連結することにより、改変できる。このような非免疫グロブリンポリペプチドを本発明の抗体の定常ドメインと置換して、または本発明の抗体の1つの抗原結合部位の可変ドメインと置換して、キメラの二価抗体を形成できる。
【0095】
B細胞受容体複合体(BCRC)の膜結合IgM(mIgM)に結合する本発明の抗体またはそのその抗原結合断片は、本明細書で開示の抗体の1、2、3、4、5、または6個の相補性決定領域(CDR)を含んでよい。1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つのCDRは、本発明の単一の記載抗体のCDR配列(例えば、表1、表2)から独立に選択できる。特定の実施形態では、1、2または3個のCDRが記載抗体のVLのCDR(例えば、表1;配列番号8〜10)から選択され、および/または1、2または3個のCDRが記載発明のVHのCDR(例えば、表2;配列番号5〜7)から選択される。
【0096】
BCRCのmIgMに結合する本発明の単離抗体またはその抗原結合断片は、抗体mAb4−2bのCDR−L1、CDR−L2またはCDR−L3の内の1つまたは複数を含む抗体軽鎖可変(VL)ドメインを含む。
【0097】
BCRCのmIgMに結合する本発明の単離抗体またはその抗原結合断片は、抗体mAb4−2bのCDR−H1、CDR−H2またはCDR−H3の内の1つまたは複数を含む抗体重鎖可変(VH)ドメインを含む。
【0098】
さらなる実施形態では、BCRCのmIgMに結合する単離抗体またはその抗原結合断片は、抗体mAb4−2bのCDR−L1、CDR−L2またはCDR−L3の内の1つまたは複数を含む抗体軽鎖可変(VL)ドメイン、および抗体mAb4−2bのCDR−H1、CDR−H2またはCDR−H3の内の1つまたは複数を含む抗体重鎖可変(VH)ドメインを含む。本発明のmAb4−2b抗体の軽鎖および重鎖CDRを、それぞれ表1および2に示す。
【表1】
【表2】
【0099】
本発明は、本発明の抗体のVLドメイン(例えば、配列番号4)を含む単離ポリペプチドおよびVHドメイン(例えば、配列番号2)を含む単離ポリペプチドも提供する。他の実施形態では、本発明は、BCRCのmIgMに特異的に結合し、配列番号2および4と、少なくとも50%、75%、80%、85%、90%、95%、98%または99%の配列同一性を有するVLドメインおよびVHドメインを有し、同時に、依然として所望の結合および機能特性を示す、抗体またはその抗原結合断片を提供する。別の実施形態では、本発明の抗体または抗原結合断片は、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10のまたはそれを超える保存的または非保存的アミノ酸置換を有するVLおよびVHドメイン(シグナル配列を有するまたは有しない場合の)を含み、同時に、依然として所望の結合および機能特性を示す。
【0100】
「保存的に改変された変異体」または「保存的置換」は、タンパク質中におけるアミノ酸の、類似の特徴(例えば、電荷、側鎖サイズ、疎水性/親水性、主鎖構造および剛性など)を有する他のアミノ酸との置換であって、その変化が多くの場合そのタンパク質の生物活性を変えることなく行うことができるような置換を意味する。当業者は、一般的に、ポリペプチドの非必須領域における単一アミノ酸置換は生物活性を実質的に変えないことを理解している(例えば、Watson et al.(1987) Molecular Biology of the Gene,The Benjamin/Cummings Pub.Co.,p.224(4th Ed.)を参照されたい)。さらに、構造上または機能上類似のアミノ酸の置換は、生物活性を破壊しにくい。本発明の抗体または抗原結合断片の種々の実施形態は、本明細書で開示の配列、例えば、配列番号2、3、4、5、6、7、8、9、および10を有するポリペプチド鎖、または1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、15、20の、またはそれを超える保存的アミノ酸置換を含むポリペプチド鎖を含む。代表的保存的置換を表3に示す。
【表3】
【0101】
本発明では、本発明の抗体の機能保存的変異体も意図されている。本明細書で使用される場合、「機能保存的変異体」は、1種または複数種のアミノ酸残基が抗原親和性および/または特異性などの所望の性質を変えることなく変化している抗体または断片を意味する。このような変異体としては、表3の保存的アミノ酸置換などの、類似の性質を有するアミノ酸でのアミノ酸の置換、が挙げられるが、これらに限定されない。
【0102】
別の実施形態では、本発明は、BCRCのヒトmIgMに特異的に結合し、本明細書で記載の1種または複数種のVLドメインまたはVHドメインと、少なくとも95%、90%、85%、80%、75%、または50%の配列相同性を有するVLドメインおよびVHドメインを有し、かつBCRCのヒトmIgMに対し特異的結合を示す抗体またはその抗原結合断片を提供する。別の実施形態では、本発明の結合抗体またはその抗原結合断片は、1、2、3、4、または5のもしくはそれを超えるアミノ酸置換を有するVLおよびVHドメイン(シグナル配列を有するまたは有しない場合の)を含み、BCRCのヒトmIgMに対する特異的結合を示す。
【0103】
抗体は一価抗体であってよい。一価抗体を調製する方法は当該技術分野において周知である。例えば、1つの方法は、免疫グロブリン軽鎖および改変された重鎖の組換え体発現を含む。重鎖は、重鎖架橋結合を防ぐように、通常FC領域の任意の位置で切り詰められる。あるいは、関連するシステイン残基が、架橋結合を防ぐように別のアミノ酸残基で置換されるか、または欠失される。
【0104】
特異的エピトープを認識する抗体断片は、既知の技術により生成できる。従来、これらの断片はインタクト抗体のタンパク分解性消化を介して導出された(例えば、Morimoto,et al.,J Biochem Biophys Methods 24:107(1992);Brennan,et al.,Science 229:81(1985)を参照されたい)。例えば、本発明のFabおよびF(ab’)
2断片は、パパイン(Fab断片を生成するために)またはペプシン(F(ab’)
2断片を生成するために)などの酵素を用いる、免疫グロブリン分子のタンパク質切断により生成できる。F(ab’)
2断片は、可変領域、軽鎖定常領域および重鎖のCH1ドメインを含む。しかし、今日では、これらの断片は組換え型宿主細胞から直接的に産生できる。例えば、抗体断片は抗体ファージライブラリーから単離できる。あるいは、F(ab’)
2−SH断片を大腸菌から直接回収し、化学的に結合させてF(ab’)
2断片を形成できる(Carter,et al.,Bio/Technology 10:163(1992))。別の手法では、F(ab’)
2断片は組換え宿主細胞培養物から直接単離できる。抗体断片の作製のためのその他の技術は熟練した専門家には明らかであろう。他の実施形態では、選択抗体は、単鎖Fv断片(Fv)である(国際公開第WO93/16185号)。
【0105】
ヒトにおける抗体のインビボ使用およびインビトロ検出アッセイを含むいくつかの使用のために、キメラ抗体、ヒト化抗体、またはヒト抗体を使用することが好ましい場合がある。キメラ抗体は、例えば、マウスモノクローナル抗体由来の可変領域およびヒト免疫グロブリン定常領域を有する抗体などの、抗体の異なる部分が異なる動物種由来である分子である。キメラ抗体を生成する方法は、当技術分野において既知である。例えば、Morrison,Science 229:1202(1985);Oi,et al.,BioTechniques 4:214(1986);Gillies,et al.,J Immunol Methods 125:191(1989);米国特許第5,807,715号;同第4,816,567号;および同第4,816,397号を参照されたい。これらの文献は、参照により全体が本明細書に援用される。
【0106】
ヒト化抗体は、ヒト免疫グロブリンに対し、動物由来モノクローナル抗体より高い相同性を有するように設計される。ヒト化はキメラ抗体を作製するための技術であり、実質的に一つの無傷なヒト可変領域に満たない部分が非ヒト種由来の対応配列によって置換されている。ヒト化抗体は、非ヒト種由来の1種または複数種の相補性決定領域(CDR)およびヒト免疫グロブリン分子由来のフレームワーク(FR)領域を有する所望の抗原に結合する非ヒト種中で生成される抗体分子である。多くの場合、ヒトフレームワーク領域中のフレームワーク残基はCDRドナー抗体由来の対応する残基で置換されて、抗原結合を変える、好ましくは改善する。これらのフレームワーク置換は、当該技術分野において周知の方法、例えば、抗原結合に重要なフレームワーク残基を特定するためのCDRおよびフレームワーク残基の相互作用のモデリング、および特定の位置での独特なフレームワーク残基を特定するための配列比較により特定される。例えば、米国特許第5,585,089号;Riechmann,et al.,Nature 332:323(1988)を参照されたい。この文献は参照により全体が本明細書に援用される。抗体は当該技術分野において既知の様々な技術を使ってヒト化でき、これらの技術は、例えば、CDRグラフト化(欧州特許出願EP239,400号;国際出願第WO91/09967号;米国特許第5,225,539号;同第5,530,101号;および同第5,585,089号)、ベニアリング(veneering)またはリサーフェイシング(resufacing)(欧州特許出願第EP592,106号;同第EP519,596号;Padlan,Molecular Immunology 28:489(1991);Studnicka,et al.,Protein Engineering 7:805(1994);Roguska,et al.,Proc Natl Acad Sci USA 91:969(1994))、およびチェーンシャッフリング(chain shuffling)(米国特許第5,565,332号)を含む。
【0107】
一般に、ヒト化抗体は、非ヒトソース由来の、それに組み込まれる1個または複数個のアミノ酸残基を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基は、多くの場合「インポート」残基と呼ばれ、通常「インポート」可変ドメインから取られる。ヒト化は、基本的には、Winterおよび共同研究者(Jones,et al.,Nature 321:522(1986);Riechmann,et al.,Nature 332:323(1988);Verhoeyen,et al.,Science 239:1534(1988))の方法に従って、非ヒトCDRまたはCDR配列をヒト抗体の対応する配列と置換することにより実施できる。したがって、そのような「ヒト化」抗体はキメラ抗体であって(米国特許第4,816,567号)、実質的に一つの無傷なヒト可変領域に満たない部分が非ヒト種由来の対応配列によって置換されている。実際には、ヒト化抗体は通常ヒト抗体であり、その中でいくつかのCDR残基といくつかの想定されるFR残基とが、げっ歯類抗体中の類似部位から置換される。
【0108】
ヒト化抗体が抗原に対する高い親和性と他の好ましい生物学的性質を保持していることはさらに重要である。この目的を達成するために、好ましい方法にしたがって、ヒト化抗体が、親配列およびヒト化配列の三次元モデルを用いる親配列と種々の概念上のヒト化産物とを分析するプロセスによって調製される。三次元免疫グロブリンモデルが一般的に利用可能であり、当業者によく知られている。選択された候補免疫グロブリン配列の推定三次元立体構造を図解し表示するコンピュータプログラムが利用可能である。このような表示を調べることにより、候補免疫グロブリン配列の機能における特定の残基のあり得る役割の分析、すなわち、その抗原への候補免疫グロブリンの結合能力に影響を与える残基の分析が可能となる。このようにして、標的抗原(単一または複数)に対する親和性の増大など、望ましい抗体特性が最大化されるように、レシピエントからFR残基を選択してインポート配列と組合せることができる。
【0109】
ヒト化抗体作製で使用されるヒト可変領域(重鎖および軽鎖の両方)の選択は、抗原性を減らす上で重要である。いわゆる「最良適合」法にしたがって、非ヒト抗体の可変ドメインの配列が、既知のヒト可変ドメイン配列のライブラリー全体に対してスクリーニングされる。次に、非ヒト親抗体の配列に最も近いヒト配列を、ヒト化抗体のヒトFRとして受け入れる(Sims,et al.,J Immunol 151:2296(1993);Chothia,et al.,J Mol Biol 196:901(1987))。
【0110】
別の方法は、軽鎖または重鎖の特定のサブグループの全ヒト抗体のコンセンサス配列に由来する特定のフレームワークを使用する。同じフレームワークを、いくつかの異なる非ヒト抗体に用いることができる(Carter,et al.,Proc Natl Acad Sci USA 89:4285(1992);Presta,et al.,J Immunol 151:2623(1993))。本発明の抗体は、抗体が所望の生物学的特徴(例えば、所望の結合親和性)を示す限りにおいて、任意の好適なヒトのまたはヒトコンセンサスの軽鎖または重鎖フレームワーク配列を含んでよい。いくつかの実施形態では、ヒトのおよび/またはヒトコンセンサスの非高頻度可変領域配列中に、1つまたは複数の(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、またはそれを超える)追加の改変が存在する。一実施形態では、本発明の抗体は、ヒト軽鎖のフレームワーク配列の少なくとも一部(または全て)を含む。一実施形態では、本発明の抗体は、ヒト重鎖のフレームワーク配列の少なくとも一部(または全て)を含む。一実施形態では、本発明の抗体は、ヒトサブグループIフレームワークコンセンサス配列の少なくとも一部(または全て)を含む。いくつかの実施形態では、本発明の抗体は、ヒトサブグループIII重鎖フレームワークコンセンサス配列を含む。一実施形態では、本発明の抗体のフレームワークコンセンサス配列は、位置71、73および/または78に置換を含む。これらの抗体のいくつかの実施形態では、位置71はA、73はTおよび/または78はAである。
【0111】
完全ヒト抗体は、ヒト患者の治療処置のために特に望ましい。ヒト抗体は、当該技術分野において既知の種々の方法により作製でき、この方法には、ヒト免疫グロブリン配列由来の抗体ライブラリーを使用する上記のファージディスプレイ法が含まれる。米国特許第4,444,887号および同第4,716,111号;ならびに国際公開第WO98/46645号、同第WO98/50433号、同第WO98/24893号、同第WO98/16654号、同第WO96/34096号、同第WO96/33735号、および同第WO91/10741号も参照されたい。これらの特許は、参照によりその全体が本明細書に援用される。Coleら、およびBoernerらの技術も、ヒトモノクローナル抗体の調製に利用可能である(Cole,et al.,Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Riss(1985);およびBoerner,et al.,J Immunol 147:86(1991))。
【0112】
ヒト抗体は、機能的な内在性免疫グロブリンを発現できないが、ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現できる遺伝子導入マウスを使っても作製できる。例えば、ヒト重鎖および軽鎖免疫グロブリン遺伝子免疫グロブリン遺伝子複合体は、ランダムに、または相同組換えにより、マウス胚性幹細胞中に導入できる。あるいは、ヒト重鎖および軽鎖遺伝子に加えて、ヒト可変領域、定常領域、および多様性領域を、マウス胚性幹細胞中に導入できる。マウス重鎖および軽鎖免疫グロブリン遺伝子は、別々にまたは相同組換えによるヒト免疫グロブリン座位の導入と同時に非機能性となる場合がある。特に、JH領域のホモ接合性欠失は内在の抗体産生を妨害する。改変された胚性幹細胞は増殖され、胚盤胞中に微量注入されて、キメラマウスを産生する。キメラマウスはその後交配されて、ヒト抗体を発現するホモ接合性の子孫を産生する。例えば、Jakobovitis,et al.,Proc Acad Sci USA 90:2551(1993);Jakobovitis,et al.,Nature 362:255(1993);Bruggermann,et al.,Year in Immunol 7:33(1993);Duchosal,et al.,Nature 355:258(1992)を参照されたい。
【0113】
遺伝子導入マウスは、選択された抗原により、例えば、本発明のポリペプチドの全てまたは一部により通常の方法で免疫される。抗原に対するモノクローナル抗体は、従来のハイブリドーマ技術を使って、免疫された遺伝子導入マウスから得ることができる。遺伝子導入マウスに含まれるヒト免疫グロブリン導入遺伝子は、B細胞分化中の間に再構成され、その後にクラススイッチおよび体細胞変異を受ける。したがって、このような技術を使って、治療的に有用なIgG、IgA、IgMおよびIgE抗体を作製することが可能である。ヒト抗体作製のためのこの技術の概要に関しては、Lonberg,et al.,Int Rev Immunol 13:65−93(1995)を参照されたい。ヒト抗体およびヒトモノクローナル抗体作製のためのこの技術の詳細な考察、およびこのような抗体を作製するためのプロトコルに関しては、例えば、国際公開第WO98/24893号;同第WO92/01047号;同第WO96/34096号;同第WO96/33735号;欧州特許第0598877号;米国特許第5,413,923号;同第5,625,126号;同第5,633,425号;同第5,569,825号;同第5,661,016号;同第5,545,806号;同第5,814,318号;同第5,885,793号;同第5,916,771号;および同第5,939,598号を参照されたい。これらの特許は参照によりその全体が本明細書に援用される。さらに、Abgenix,Inc.(Freemont,Calif.),Genpharm(San Jose,Calif.)、およびMedarex,Inc.(Princeton,N.J.)などの会社は、上記と類似の技術を使って選択された抗原に対するヒト抗体を提供できる。
【0114】
ヒトmAbはまた、ヒト末梢血白血球、脾細胞または骨髄を移植されたマウスを免疫することにより作製することも可能である(例えば、XTLのトリオーマ技法)。選択されたエピトープを認識する完全ヒト抗体は、「誘導選択」と呼ばれる技術を使って作製できる。この手法では、選択された非ヒトモノクローナル抗体、例えば、マウス抗体を使って、同じエピトープを認識する完全ヒト抗体の選択をガイドする(Jespers,et al.,Bio/Technology 12:899(1988))。注目すべきことに、モノクローナル抗体は応答を開始する一次免疫化B細胞と自己反応性であるはずなので、ヒトB細胞を、要求される特異的モノクローナル抗体を作製するために使用できない。
【0115】
さらに、本発明のポリペプチドに対する抗体は、当業者に周知の技術を使って本発明のポリペプチドを「模倣する」抗イディオタイプ抗体の作製に利用できる(例えば、Greenspan,et al.,FASEB J 7:437(1989);Nissinoff,J Immunol 147:2429(1991)を参照されたい)。例えば、本発明のポリペプチドに結合して、そのポリペプチドのポリペプチド多量体化およびリガンドへの結合を競合的に抑制する抗体を使って、ポリペプチド多量体化および/または結合ドメインを「模倣」し、結果として、ポリペプチドおよび/またはそのリガンドに結合して中和する抗イディオタイプを作製できる。このような抗イディオタイプの中和または抗イディオタイプのFab断片は、ポリペプチドリガンドを中和する治療法に使用できる。例えば、このような抗イディオタイプ抗体を使って、本発明のポリペプチドを結合、および/またはそのリガンド/受容体を結合でき、それによりその生物活性をブロックできる。
【0116】
本発明の抗体は二重特異性抗体であってもよい。二重特異性抗体はモノクローナル抗体であり、好ましくは、ヒト抗体またはヒト化抗体であり、少なくとも2つの異なる抗原に対する結合特異性を有する。本発明では、結合特異性の片方をB細胞mIgMに向け、もう一方を任意の他の抗原、好ましくは、細胞表面タンパク質、受容体、受容体サブユニット、組織特異的抗原、ウイルス由来タンパク質、ウイルスにコードされたエンベロープタンパク質、細菌由来タンパク質、または細菌表面タンパク質などに向けることができる。
【0117】
二重特異性抗体を作製する方法は良く知られている。従来、二重特異性抗体の組換えによる作製は、2つの免疫グロブリン重鎖/軽鎖対の同時発現に基づいており、ここで2つの重鎖は異なる特異性を有する(Milstein,et al.,Nature 305:537(1983))。免疫グロブリン重鎖および軽鎖のランダムな組み合わせのために、これらのハイブリドーマ(クアドローマ)は10種の異なる抗体分子の混合物を生成する可能性があり、そのうちの1種のみが正しい二重特異性構造を有する。正しい分子の精製は通常、親和性クロマトグラフィーステップにより行われる。類似の方法は、国際公開第WO93/08829号、およびTraunecker,et al.,EMBO J 10:3655(1991)に開示されている。
【0118】
所望の結合特異性を有する抗体可変ドメイン(抗体−抗原混合部位)は、免疫グロブリン定常ドメイン配列に融合できる。融合は、ヒンジ、CH2、およびCH3領域の少なくとも一部を含む免疫グロブリン重鎖定常ドメインと行うのが好ましい。そのドメインは、融合体の少なくとも1つ中に存在する軽鎖結合に必要な部位を含む第1の重鎖定常領域(CH1)を有してよい。免疫グロブリン重鎖融合体および必要に応じ、免疫グロブリン軽鎖をコードするDNAが別個の発現ベクターに挿入され、適切な宿主生物中に同時形質転換される。二重特異性抗体の作製のさらなる詳細については、例えば、Suresh,et al.,Meth In Enzym 121:210(1986)を参照されたい。
【0119】
本発明では、ヘテロコンジュゲート抗体も意図されている。ヘテロコンジュゲート抗体は、共有結合的につながれた2つの抗体から構成される。例えば、このような抗体は、免疫系細胞を不必要な細胞へ標的させることが提案されている(米国特許第4,676,980号)。架橋剤を伴う方法を含む合成タンパク質化学の既知の方法を使用して、抗体がインビトロで調製されることが意図されている。例えば、免疫毒素を、ジスルフィド交換反応を使って、またはチオエステル結合を形成することにより構築できる。この目的のための適切な試薬の例には、イミノチオレートおよびメチル−4−メルカプトブチルイミデートならびに、例えば、米国特許第4,676,980号に記載のものが含まれる。
【0120】
さらに、B細胞mIgMに対する単一ドメイン抗体を作製できる。この技術の例は、ラクダ科重鎖Ig由来の抗体についての国際公開第WO9425591号に、ならびにファージライブラリーからの単一ドメイン完全ヒト抗体の分離についての米国特許出願公開第20030130496号に記載されている。
【0121】
また、重鎖および軽鎖Fv領域が連結されている単一ペプチド鎖結合分子を作製することも可能である。単鎖抗体(「scFv」)およびそれらの構築方法は、米国特許第4,946,778号に記載されている。あるいは、Fabを構築し、類似の手段で発現させることが可能である。全ての完全および部分的ヒト抗体は完全マウスmAbより免疫原性が低く、断片および単鎖抗体もまた免疫原性が低い。
【0122】
抗体または抗体断片は、McCafferty,et al.,Nature 348:552(1990);Clarkson,et al.,Nature 352:624(1991)およびMarks,et al.,J Biol 222:581(1991)の技術を使って生成される抗体ファージライブラリーから単離でき、それらはファージライブラリーを用いるマウス抗体およびヒト抗体の単離についてそれぞれ記載している。その後の論文では、高親和性(nMレベル)ヒト抗体のチェーンシャッフリングによる作製(Marks,et al.,Bio/Technology 10:779(1992))、ならびに非常に大きなファージライブラリーを構築するための戦略としてコンビナトリアル感染およびインビボ組換え(Waterhouse,et al.,Nuc Acids Res 21:2265(1993))について記載されている。したがって、これらの技術は、モノクローナル抗体の単離のための従来のモノクローナル抗体ハイブリドーマ技術に対する有効な代替方法である。
【0123】
DNAはまた、例えば、相同マウス配列をヒト重鎖および軽鎖定常ドメインのコード配列で置換することにより改変できる(米国特許第4,816,567号;Morrison,et al.,Proc Natl Acad Sci USA 81:6851(1984))。
【0124】
別の選択肢は、ハイブリドーマを形成するために、化学融合ではなく電気融合を使うことである。この技術は十分に確立されている。融合の代わりに、例えば、エプスタイン・バーウイルス、または形質転換遺伝子を使って、B細胞を形質転換して不死にすることも可能である。例えば、Monoclonal Antibodies,ed.by Kennett,et al.,Plenum Press,pp.19−33.(1980)中の”Continuously Proliferating Human Cell Lines Synthesizing Antibody of Predetermined Specificity,” Zurawaki,et al.、を参照されたい。げっ歯類(例えば、マウス、ラット、ハムスター、およびモルモット)を、真核生物系または原核生物系により発現されたB細胞mIgMタンパク質、融合タンパク質、またはその断片で免疫することにより、抗B細胞mIgM mAbを作製できる。その他の動物、例えば、非ヒト霊長類、免疫グロブリン発現遺伝子導入マウス、およびヒトBリンパ球を移植された重症複合型免疫不全(SCID)マウスを、免疫に使用できる。ハイブリドーマは、前述(Kohler,et al.,Nature 256:495(1975))のように、免疫された動物由来のBリンパ球を骨髄腫細胞(例えば、Sp2/0およびNSO)と融合することによる、従来の方法で生成できる。さらに、抗B細胞mIgM抗体は、ファージディスプレーシステムにおいてヒトBリンパ球由来の組換え型単鎖FvまたはFabライブラリーのスクリーニングにより生成できる。B細胞mIgMに対するmAbの特異性は、ELISA、ウエスタンイムノブロッティング、または他の免疫化学的技術により試験できる。CD4+T細胞活性化に対する抗体の阻害活性は、増殖、サイトカイン放出、およびアポトーシスアッセイにより評価できる。陽性ウエル中のハイブリドーマは限界希釈法によりクローン化される。上記アッセイによるヒトB細胞mIgMに対する特異性のキャラクタリゼーションのために、抗体が精製される。
【0125】
抗体をコードするポリヌクレオチド
本発明は、本発明の抗体およびその断片をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドまたは核酸、例えば、DNAをさらに提供する。代表的ポリヌクレオチドとしては、配列表(例えば、配列番号1および3)に記載の1種または複数種のアミノ酸配列を含む抗体鎖をコードするものが含まれる。本発明はまた、ストリンジェントな条件下、またはより低い厳密度のハイブリダイゼーション条件下で、本発明の抗体をコードするポリヌクレオチドにハイブリダイズするポリヌクレオチドを包含する。
【0126】
好ましくは、核酸は、低い、中程度のまたは高い厳密度の条件下でハイブリダイズし、BCRCのmIgMに特異的に結合する能力を維持している抗体をコードする。温度および溶液イオン強度の適切な条件下で、単鎖型の第1の核酸分子が第2の核酸分子にアニーリングできる場合、第1の核酸分子は、第2の核酸分子に「ハイブリダイズ可能」である(Sambrook,et al.,Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,2
nd ed.(1990),3
rd ed.(2001)を参照されたい)。温度およびイオン強度の条件が、ハイブリダイゼーションの「厳密度」を決定する。典型的な低厳密度ハイブリダイゼーション条件には、55℃、5X SSC、0.1%SDSおよびフォルムアミドなし;または42℃にて、30%フォルムアミド、5X SSC、0.5%SDSが挙げられる。典型的な中等度の厳密度のハイブリダイゼーション条件は、42℃にて、40%フォルムアミド、5Xまたは6X SSCおよび0.1%SDSである。高厳密度ハイブリダイゼーション条件は、42℃にて50%フォルムアミド、5Xまたは6X SSCまたは、任意選択で、より高い温度(例えば、57℃、59℃、60℃、62℃、63℃、65℃または68℃)である。一般に、SSCは0.15M NaClおよび0.015M クエン酸ナトリウムである。ハイブリダイゼーションは2つの核酸が相補的配列を含むことを必要とするが、ハイブリダイゼーションの厳密度に応じて、塩基間のミスマッチが可能である。核酸をハイブリダイズするための適切な厳密度は、当該技術分野において周知の変数である、核酸の長さ、および相補性の程度に依存する。2つのヌクレオチド配列の間の類似性または相同性の度合いが大きいほど、その条件下で核酸がハイブリダイズできる厳密度は高い。100ヌクレオチドの長さを超えるハイブリッドに対しては、融解温度を計算する式が得られている(Sambrook,et al.,Molecular Cloning,A Laboratory Manual,9.50−9.51,Cold Spring Harbor Laboratory,2nd ed.(1990),3rd ed.(2001)を参照されたい)。より短い核酸の、例えば、オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションに対しては、ミスマッチの位置がより重要になり、オリゴヌクレオチドの長さがその特異性を決定する(Sambrook,et al.,Molecular Cloning,A Laboratory Manual,11.7−11.8,Cold Spring Harbor Laboratory,2
nd ed.(1990),3
rd ed.(2001)を参照されたい)。
【0127】
当該技術分野において既知の任意の方法により、ポリヌクレオチドが得られ、かつそのポリヌクレオチドのヌクレオチド配列が決定できる。例えば、抗体のヌクレオチド配列が既知の場合、抗体をコードするポリヌクレオチドは、化学的に合成されるオリゴヌクレオチドから構築できる(例えば、Kutmeier,et al.,Bio/Techniques 17:242(1994)に記載のように)。この方法は、簡単に説明すると、抗体をコードする配列の一部を含む重複オリゴヌクレオチドの合成、これらのオリゴヌクレオチドのアニーリングおよび連結、ならびにPCRによる連結されたオリゴヌクレオチドのその後の増幅を含む。
【0128】
あるいは、抗体をコードするポリヌクレオチドは、適切なソース由来の核酸から生成できる。特定の抗体をコードする核酸を含むクローンを利用できないが抗体分子の配列が既知である場合、免疫グロブリンをコードする核酸は、化学的に合成されるかまたは適切なソース(例えば、抗体cDNAライブラリー、または本発明の抗体から生成されるcDNAライブラリー、または本発明の抗体から単離される核酸、好ましくはポリA
+RNA、、例えば、本発明の抗体を発現のために選択されるハイブリドーマ細胞など、抗体を発現している任意の組織細胞)から、配列の3’および5’末端にハイブリダイズ可能な合成プライマーを用いるPCR増幅により、または、例えば、抗体をコードするcDNAライブラリー由来のcDNAクローンを識別するための特定の遺伝子配列に特異的なオリゴヌクレオチドプローブを用いるクローニングにより得ることができる。PCRにより生成された増幅核酸は、その後、当該技術分野において周知のいずれかの方法を使って、複製可能なクローニングベクターに挿入できる。
【0129】
抗体のヌクレオチド配列および対応するアミノ酸配列が決定されると、抗体のヌクレオチド配列は、ヌクレオチド配列の操作のための当該技術分野において周知の方法、例えば、組換えDNA技術、部位特異的変異誘発、PCRなどの方法(例えば、いずれも参照により本明細書に援用される、Sambrook,et al.,Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory 2
nd ed.(1990),3
rd ed.(2001);Ausubel,et al.,eds.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons(1998)に記載の技術を参照されたい)を使って操作して、例えば、アミノ酸置換、欠失、および/または挿入を形成して、異なるアミノ酸配列を有する抗体を生成できる。
【0130】
特定の実施形態では、重鎖および/または軽鎖可変ドメインのアミノ酸配列は、CDRの配列を特定するために、周知の方法、例えば、他の重鎖および軽鎖可変領域の既知のアミノ酸配列と比較し、超可変性配列領域を決定することにより、検査できる。通常の組換えDNA技術を使って、1つまたは複数のCDRをフレームワーク領域、例えば、ヒトフレームワーク領域中に挿入し、前述のように、非ヒト抗体をヒト化できる。フレームワーク領域は天然の領域でも、コンセンサスフレームワーク領域でもよく、好ましくはヒトフレームワーク領域である(例えば、ヒトフレームワーク領域のリストに関しては、Chothia,et al.,J Mol Biol 278:457(1998)を参照されたい)。好ましくは、フレームワーク領域およびCDRの組み合わせにより生成されるポリヌクレオチドは、本発明のポリペプチドを特異的に結合する抗体をコードする。好ましくは、前で考察したように、1個または複数個のアミノ酸置換がフレームワーク領域内で生成され、かつ好ましくは、そのアミノ酸置換が抗体のその抗原に対する結合を改善する。さらに、そのような方法を使って、鎖内ジスルフィド結合に関与する1個または複数個の可変領域システイン残基のアミノ酸置換または欠失を行い、1個または複数個の鎖内ジスルフィド結合を欠く抗体分子を生成できる。ポリヌクレオチドに対するその他の改変は、本発明に包含され、当該技術の範囲内にある。
【0131】
さらに、適切な生物活性のヒト抗体分子由来の遺伝子と共に適切な抗原特異性のマウス抗体分子由来の遺伝子をスプライシングすることによる、「キメラ抗体」の作製のために開発された技術(Morrison,et al.,Proc Natl Acad Sci 81:851(1984);Neuberger,et al.,Nature 312:604(1984);Takeda,et al.,Nature 314:452(1985))を使用できる。前述のように、キメラ抗体は、異なる部分が異なる動物種由来である分子であり、例えば、マウスmAb由来の可変領域およびヒト免疫グロブリン定常領域を有するもの、例えば、ヒト化抗体である。
【0132】
あるいは、単鎖抗体の作製用に記載された技術(米国特許第4,946,778号;Bird,Science 242:423(1988);Huston,et al.,Proc Natl Acad Sci USA 85:5879(1988);およびWard,et al.,Nature 334:544(1989))を単鎖抗体の作製に適合できる。単鎖抗体は、Fv領域の重鎖および軽鎖断片をアミノ酸架橋を介して連結し、単鎖ポリペプチドを生成することにより形成される。大腸菌中での機能性Fv断片の構築のための技術も使用できる(Skerra,et al.,Science 242:1038(1988))。
【0133】
ベクターおよび宿主細胞
別の態様では、本発明は本明細書で開示の抗体をコードする単離核酸配列、本発明の抗体をコードするヌクレオチド配列を含むベクター構築物、このようなベクターを含む宿主細胞、および抗体の作製のための組換え技術を提供する。
【0134】
抗体の組換え産生に関しては、その抗体をコードする核酸が単離され、さらなるクローニング(DNAの増幅)のためまたは発現のために複製可能ベクター中に挿入される。抗体をコードするDNAは、従来の方法を使って容易に単離、配列決定される(例えば、抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合できるオリゴヌクレオチドプローブを使うことにより)。クローニングおよび形質転換の標準的な技術を、本発明の抗体を発現する細胞株の調製に使用できる。
【0135】
ベクター
多くのベクターが利用可能である。ベクター構成要素は、通常、下記の内の1つまたは複数を含むが、これらに限定されない:シグナル配列、複製起点、1個または複数個のマーカー遺伝子、エンハンサー配列、プロモータ、および転写終止配列。本発明の抗体をコードするヌクレオチド配列を含む組換え体発現ベクターはよく知られた技術を使って調製できる。発現ベクターは、哺乳動物、微生物、ウイルス、または昆虫遺伝子由来のものなど適切な転写または翻訳調節ヌクレオチド配列に機能的に連結されるヌクレオチド配列を含んでよい。調節配列の例には、転写プロモータ、オペレータ、エンハンサー、mRNAリボソーム結合部位、ならびに/または転写および翻訳反応の開始および終止を制御する他の適切な配列が含まれる。調節配列が適切なポリペプチドのヌクレオチド配列に機能的に関連する場合、ヌクレオチド配列は「機能的に連結」されている。したがって、プロモータヌクレオチド配列が適切なヌクレオチド配列の転写を制御する場合、プロモータヌクレオチド配列は、例えば、抗体重鎖配列に、機能的に連結されている。本発明の抗体を発現するための有用な発現ベクターの例は、国際公開第WO04/070011号に見出される。この特許は参照により本明細書に援用される。
【0136】
加えて、天然の場合は抗体重鎖および/または軽鎖配列に関連していない適切なシグナルペプチドをコードする配列を、発現ベクター中に組み込むことができる。例えば、シグナルペプチド(分泌リーダー)のヌクレオチド配列をポリペプチド配列にインフレームで融合でき、それにより、抗体が細胞周辺腔または培地中に分泌される。意図される宿主細胞中で機能的なシグナルペプチドは、適切な抗体の細胞外分泌を高める。このシグナルペプチドは、抗体の細胞からの分泌時にポリペプチドから切断され得る。このような分泌シグナルは良く知られており、例えば、米国特許第5,698,435号;同第5,698,417号;および同第6,204,023号に記載のものが含まれる。
【0137】
宿主細胞
本発明において有用な宿主細胞は、原核、酵母、または高等真核細胞であり、抗体コード配列を含む組換え型バクテリオファージDNA、プラスミドDNAまたはコスミドDNA発現ベクターで形質転換された細菌(例えば、大腸菌、枯草菌)などの微生物;抗体コード配列を含む組換え型酵母発現ベクターで形質転換された酵母(例えば、サッカロマイセス、ピキア);抗体コード配列を含む組換え型ウイルス発現ベクター(例えば、バキュロウイルス)で感染された昆虫細胞系;抗体コード配列を含む組換え型ウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウイルス、CaMV;タバコモザイクウイルス、TMV)で感染されたまたは組換えプラスミド発現ベクター(例えば、Tiプラスミド)で形質転換された植物細胞系;または哺乳動物細胞のゲノム由来のプロモータ(例えば、メタロチオネインプロモータ)または哺乳動物ウイルス由来のプロモータ(例えば、アデノウイルス後期プロモータ;ワクシニアウイルス7.5Kプロモータ)を含む組換え体発現構築物を含む哺乳動物細胞(例えば、COS、CHO、BHK、293、3T3細胞)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0138】
本発明の宿主細胞として有用な原核生物には、グラム陰性またはグラム陽性生物、例えば、大腸菌、枯草菌、エンテロバクター、エルウィニア、クレブシエラ、プロテウス、サルモネラ、セラチア、および赤痢菌、ならびに桿菌、シュードモナス、およびストレプトマイセスが含まれる。1つの好ましい大腸菌クローニング宿主は大腸菌294(ATCC31,446)であるが、大腸菌B、大腸菌X1776(ATCC31,537)、および大腸菌W3110(ATCC27,325)などの他の株も好適である。これらの例は、限定的であるよりむしろ例示的である。
【0139】
原核宿主細胞で使うための発現ベクターは通常、1個または複数個の表現型選択可能なマーカー遺伝子を含む。表現型選択可能なマーカー遺伝子は、例えば、抗生物質耐性を付与するまたは独立栄養要求を満たすタンパク質をコードする遺伝子である。原核宿主細胞に対し有用な発現ベクターの例には、市販のプラスミド、例えば、pKK223−3(Pharmacia Fine Chemicals,Uppsala,Sweden)、pGEM1(Promega Biotec,Madison,Wis.,USA)、およびpET(Novagen,Madison,Wis.,USA)およびpRSET(Invitrogen Corporation,Carlsbad,Calif.,USA)シリーズのベクターに由来するものが含まれる(Studier,J Mol Biol 219:37(1991);Schoepfer,Gene 124:83(1993))。組換え型原核宿主細胞発現ベクターによく使われるプロモータ配列には、T7、(Rosenberg,et al.,Gene 56:125(1987));β−ラクタマーゼ(ペニシリナーゼ)、ラクトースプロモータシステム(Chang,et al.,Nature 275:615(1978),Goeddel,et al.,Nature 281:544(1979))、Goeddel,et al.,Nature 281:544(1979));トリプトファン(trp)プロモータシステム(Goeddel,et al.,Nucl Acids Res 8:4057(1980));およびtacプロモータ(Sambrook,et al.,Molecular Cloning,A Laboratory Manual,2nd ed.,Cold Spring Harbor Laboratory(1990))が含まれる。
【0140】
本発明に有用な酵母または糸状菌には、サッカロマイセス、ピキア、放線菌、クリベロマイセス、分裂酵母、カンジダ、トリコデルマ、パンカビ、ならびに糸状菌、例えば、パンカビ、アオカビ、トリポクラジウム、およびアスペルギルス由来のものが含まれる。酵母ベクターは多くの場合、2μ酵母プラスミド由来の複製起点配列、自己複製配列(ARS)、プロモータ領域、ポリアデニル化配列、転写終止配列、および選択可能マーカー遺伝子を含む。酵母ベクターのための適切なプロモータ配列には、特に、メタロチオネイン、3−ホスホグリセリン酸キナーゼ(Hitzeman,et al.,J Biol Chem 255:2073(1980))または他の糖分解酵素(Holland,et al.,Biochem 17:4900(1978))例えば、エノラーゼ、グリセルアルデヒド−3−ホスフェート脱水素酵素、ヘキソキナーゼ、ピルビン酸脱炭酸酵素、ホスホフルクトキナーゼ、グルコース−6−ホスフェート異性化酵素、イソメラーゼ、3−ホスホグリセリン酸ムターゼ、ピルビン酸キナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、ホスホグルコースイソメラーゼ、およびグルコキナーゼのためのプロモータが含まれる。酵母発現で使われる他の適切なベクターおよびプロモータは、Fleer,et al.,Gene 107:285(1991)にさらに記載されている。酵母のための他の適切なプロモータおよびベクターならびに酵母形質転換プロトコルは当該技術分野で周知である。酵母形質転換プロトコルは良く知られている。1つのこのようなプロトコルは、Hinnen,et al.,Proc Natl Acad Sci 75:1929(1978)により記載されている。Hinnenプロトコルは、選択的培地中でTrp
+形質転換体を選択する。
【0141】
哺乳動物または昆虫宿主細胞培養システムを、組換え型抗体を発現するために用いることもできる。原理的には、脊椎動物培養由来でも無脊椎動物培養由来でも、任意の高等真核細胞培養が使用可能である。無脊椎動物細胞の例には、植物および昆虫細胞が含まれる(Luckow,et al.,Bio/Technology 6:47(1988);Miller,et al.,Genetics Engineering,Setlow,et al.,eds.Vol.8,pp.277−9,Plenam Publishing(1986);Mseda,et al.,Nature 315:592(1985))。例えば、バキュロウイルスシステムを異種タンパク質の作製に使用できる。昆虫システムでは、オートグラファ・カリフォルニカ核多角体病ウイルス(AcNPV)をベクターとして使って外来性遺伝子を発現できる。ウイルスはヨトウガ細胞中で増殖する。抗体コード配列を個別に、ウイルスの非必須領域(例えば、ポリヘドリン遺伝子)中にクローン化し、AcNPVプロモータ(例えば、ポリヘドリンプロモータ)の制御下に置くことができる。特定されているその他の宿主には、ヤブカ、キイロショウジョウバエ、およびカイコが含まれる。形質移入用の種々のウイルス株、例えば、AcNPVのL−1変異体およびカイコNPVのBm−5株が公的に入手可能であり、特に、ヨトウガ細胞の形質移入用に、このようなウイルスを本発明によりウイルスとして使用できる。さらに、綿、トウモロコシ、ジャガイモ、大豆、ペチュニア、トマト、およびタバコの植物細胞培養を、宿主として利用することも可能である。
【0142】
脊椎動物細胞培養、および培養(組織培養)における脊椎動物細胞の増殖は、通常の手順になっている。Tissue Culture,Kruse,et al.,eds.,Academic Press(1973)を参照されたい。有用な哺乳動物宿主細胞株の例は、サル腎臓;ヒト胚腎臓株;ベビーハムスター腎臓細胞;チャイニーズハムスター卵巣細胞/−DHFR(CHO,Urlaub,et al.,Proc Acad Sci USA 77:4216(1980));マウスセルトリ細胞;ヒト子宮頸癌細胞(HELA);イヌ腎臓細胞;ヒト肺細胞;ヒト肝臓細胞;マウス乳房腫瘍;およびNS0細胞である。
【0143】
宿主細胞は抗体作製のために上記ベクターで形質転換され、プロモータ、転写および翻訳制御配列の誘導、形質転換体の選択、または所望の配列をコードする遺伝子の増殖に適切なように修正された従来の栄養素培地中で培養される。よく使われるプロモータ配列およびエンハンサー配列は、ポリオーマ、アデノウイルス2、シミアンウイルス40(SV40)、およびヒトサイトメガロウィルス(CMV)由来である。SV40ウイルスゲノム由来のDNA配列を使って、哺乳動物宿主細胞中の構造遺伝子配列の発現のための他の遺伝的要素、例えば、SV40オリジン、初期および後期プロモータ、エンハンサー、スプライス、およびポリアデニル化部位を提供できる。ウイルス初期および後期プロモータは特に有用である。理由は、両方とも、ウイルスゲノムから断片として容易に得られ、この断片はウイルス複製起点も含み得るためである。哺乳動物宿主細胞中で使用するための代表的な発現ベクターは市販されている。
【0144】
本発明の抗体を作製するために使用される宿主細胞は種々の培地中で培養できる。市販の培地、例えば、ハムF10培地(Sigma)、基礎培地(MEM、Sigma)、RPMI−1640(Sigma)、およびダルベッコ変法イーグル培地(DMEM、Sigma)は宿主細胞の培養に適する。さらに、Ham,et al.,Meth Enzymol 58:44(1979),Barnes,et al.,Anal Biochem 102:255(1980)、および米国特許第4,767,704号;同第4,657,866号;同第4,560,655号;同第5,122,469号;同第5,712,163号;または同第6,048,728号、に記載のいずれの培地も宿主細胞用の培地として使用できる。これらの培地のいずれも、必要に応じて、ホルモンおよび/またはその他の成長因子(例えば、インスリン、トランスフェリン、または上皮増殖因子)、塩(例えば、X−塩化物、ここでXはナトリウム、カルシウム、マグネシウム;およびリン酸塩)、緩衝液(例えば、HEPES)、ヌクレオチド(例えば、アデノシンおよびチミジン)、抗生物質(例えば、GENTAMYCIN(商標)薬剤)、微量成分(ミリモルレベルの最終濃度で通常存在する無機化合物と定義される)、およびグルコースまたは等価エネルギー源を補充できる。任意の他の必要なサプリメントを、当業者に既知の適切な濃度で含めてもよい。温度、pHなどの培養条件は、発現用に選択される宿主細胞で従来から使用されているものであり、当業者には明らかであろう。
【0145】
また、本発明に含まれるのは、アルゴリズムのパラメータがそれぞれの参照配列の全長にわたりそれぞれの配列の間で最大マッチを与えるように選択されるBLASTアルゴリズムにより比較を行った場合、本明細書で提供される抗体のアミノ酸配列に対し、少なくとも約70%同一の、好ましくは少なくとも約80%同一の、より好ましくは少なくとも約90%同一の、および最も好ましくは少なくとも約95%同一の(例えば、95%、96%、97%、98%、99%、100%同一の)アミノ酸配列を含むポリペプチドである。アルゴリズムのパラメータがそれぞれの参照配列の全長にわたりそれぞれの配列の間で最大マッチを与えるように選択されるBLASTアルゴリズムにより比較を行った場合、参照アミノ酸配列のいずれかに対し、少なくとも約70%類似の、好ましくは少なくとも約80%類似の、より好ましくは少なくとも約90%類似の、および最も好ましくは少なくとも約95%類似の(例えば、95%、96%、97%、98%、99%、100%類似の)アミノ酸配列を含むポリペプチドもまた本発明に含まれる。
【0146】
配列同一性は、2つの配列が最適に整列される場合に、2つのポリペプチドのアミノ酸が同じ位置で同一である度合いを意味する。配列類似性は同一の残基および非同一の、生化学的に関連するアミノ酸を含む。類似の特性を共有し置き替え可能である生化学的に関連するアミノ酸は、前に考察している。
【0147】
BLASTアルゴリズムに関連する以下の文献は配列解析に使用されることが多い:BLAST ALGORITHMS:Altschul,S.F.,et al.,(1990)J.Mol.Biol.215:403−410;Gish,W.,et al.,(1993)Nature Genet.3:266−272;Madden,T.L.,et al.,(1996)Meth.Enzymol.266:131−141;Altschul,S.F.,et al.,(1997)Nucleic Acids Res.25:3389−3402;Zhang,J.,et al.,(1997)Genome Res.7:649−656;Wootton,J.C.,et al.,(1993)Comput.Chem.17:149−163;Hancock,J.M.et al.,(1994)Comput.Appl.Biosci.10:67−70;Atlas of Protein Sequence and Structure,(1978)vol.5,suppl.3.M.O.Dayhoff(ed.),pp.345−352,Natl.Biomed.Res.Found.,Washington,DC、中のALIGNMENT SCORING SYSTEMS:Dayhoff,M.O.,et al.,”A model of evolutionary change in proteins.”;Atlas of Protein Sequence and Structure,(1978)vol.5,suppl.3.” M.O.Dayhoff(ed.),pp.353−358,Natl.Biomed.Res.Found.,Washington,DC、中のSchwartz,R.M.,et al.,”Matrices for detecting distant relationships.”;Altschul,S.F.,(1991)J.Mol.Biol.219:555−565;States,D.J.,et al.,(1991)Methods 3:66−70;Henikoff,S.,et al.,(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915−10919;Altschul,S.F.,et al.,(1993) J.Mol.Evol.36:290−300;ALIGNMENT STATISTICS:Karlin,S.,et al.,(1990) Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:2264−2268;Karlin,S.,et al.,(1993) Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873−5877;Dembo,A.,et al.,(1994) Ann.Prob.22:2022−2039;およびGenome Research(S.Suhai,ed.),(1997) pp.1−14,Plenum,New York、中のAltschul,S.F.”Evaluating the statistical significance of multiple distinct local alignments.” in Theoretical and Computational Methods。
【0148】
別の実施形態では、本発明は、本発明の単離抗体または抗原結合断片のポリペプチド鎖をコードする単離核酸または核酸、例えば、DNAに関する。一実施形態では、単離核酸は、少なくとも1つの成熟抗体抗体軽鎖可変(VL)ドメインおよび少なくとも1つの成熟抗体重鎖可変(VH)ドメインを含む抗体またはその抗原結合断片をコードし、VLドメインは配列番号3の配列を有する少なくとも3つのCDR、およびVHドメインは配列番号1の配列を有する少なくとも3つのCDRを含む。いくつかの実施形態では、単離核酸は単一核酸分子上の軽鎖および重鎖をコードし、他の実施形態では、軽鎖および重鎖は別の核酸分子上にコードされる。別の実施形態では、核酸はシグナル配列をさらにコードする。
【0149】
抗体の作製方法
本発明の抗体は、抗体の合成のために当該技術分野において既知のいずれかの方法、特に、化学合成または好ましくは、組換え体発現技術により作製できる。
【0150】
本発明の抗体、または断片、誘導体、またはそれらの類似体(例えば、本発明の抗体の重鎖もしくは軽鎖または本発明の単鎖抗体)の組換え体発現は、抗体または抗体の断片をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターの構築を必要とする。抗体分子をコードするポリヌクレオチドが得られると、抗体作製用ベクターは組換えDNA技術により作製できる。発現ベクターは、抗体コード配列および適切な転写および翻訳制御シグナルを含んで構築される。これらの方法としては、例えば、組換えDNA技術、合成技術、およびインビボ遺伝的組換えが挙げられる。
【0151】
発現ベクターは従来技術によって宿主細胞に移入され、形質移入された細胞はその後、従来技術によって培養され本発明の抗体を産生する。本発明の一態様では、重鎖および軽鎖の両方をコードするベクターは、以降で詳述するように、全体免疫グロブリン分子の発現のための宿主細胞中で同時発現される。
【0152】
上述のように、種々の宿主発現ベクター系を利用して、本発明の抗体分子を発現させることができる。このような宿主発現系は、それによって目的のコード配列が生成され、その後精製されるビークルに相当するが、また、適切なヌクレオチドコード配列で形質転換された場合または適切なヌクレオチドコード配列で形質移入された場合、本発明の抗体分子をインサイチューに発現する細胞にも相当する。大腸菌などの細菌細胞、および真核細胞は、組換え型抗体分子の発現に、特に全組換え型抗体分子の発現によく使われる。例えば、ヒトサイトメガロウィルス由来の主要中間体初期遺伝子プロモータ配列などのベクターと併用して、CHOなどの哺乳動物細胞は、抗体用の効果的な発現系である(Foecking,et al.,Gene 45:101(1986);Cockett,et al.,Bio/Technology 8:2(1990))。
【0153】
さらに、挿入された配列の発現を調節する、または遺伝子産物を所望の特定の方法で修飾およびプロセシングする宿主細胞株を選択できる。このようなタンパク質産物の修飾(例えば、グリコシル化)およびプロセシング(例えば、切断)は、タンパク質の機能にとって重要な場合がある。異なる宿主細胞は、タンパク質および遺伝子産物の翻訳後プロセシングおよび修飾に関して特徴的で特異的な機序を有する。適切な細胞株または宿主系を、発現される外来性タンパク質の適切な修飾とプロセシングを保証するように選択できる。この目的のために、一次転写産物の適切なプロセシング、遺伝子産物のグリコシル化、およびリン酸化のための細胞機構を有する真核生物宿主細胞を使用できる。このような哺乳動物宿主細胞としては、CHO、COS、293、3t3、または骨髄腫細胞が挙げられるが、これらに限定されない。
【0154】
組換えタンパク質の長期で高収率な産生のためには、安定な発現が好ましい。例えば、抗体分子を安定に発現する細胞株を操作できる。ウイルス複製オリジンを含む発現ベクターを使用する代わりに、宿主細胞を、適切な発現制御配列(例えば、プロモータ、エンハンサー、配列、転写ターミネーター、ポリアデニル化部位など)により制御されるDNA、および選択可能マーカーで形質転換できる。外来性DNAの導入後、操作された細胞を栄養強化培地中で1〜2日間増殖させ、その後、選択培地に切り替える。組換えプラスミド中の選択可能マーカーは、選択に対する耐性を与え、細胞がそれらの染色体中にプラスミドを安定に組み込むことを可能にし、かつ増殖して細胞増殖巣を形成し、これが次にクローン化され細胞株中に拡大される。この方法は、抗体分子を発現する細胞株を操作するために有利に使用できる。このような操作された細胞株は、抗体分子と直接にまたは間接的に相互作用する化合物の選別と評価に特に有用である場合がある。
【0155】
多くの選択システムを使用でき、これらには、限定されないが、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(Wigler,et al.,Cell 11:223(1977))、ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Szybalska,et al.,Proc Nail Acad Sci USA 48:202(1992))、およびアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Lowy,et al.,Cell 22:817(1980))遺伝子が含まれ、それぞれtk、hgprtまたはaprt細胞で用いることができる。また、代謝拮抗薬耐性を次の遺伝子に対する選択の基準として使用できる:dhfr、これはメトトレザトに対する耐性を付与する(Wigler,et al.,Proc Natl Acad Sci USA 77:357(1980);O’Hare,et al.,Proc Natl Acad Sci USA 78:1527(1981));gpt、これはミコフェノール酸に対する耐性を付与する(Mulligan,et al.,Proc Natl Acad Sci USA 78:2072(1981));neo、これはアミノグリコシドG−418に対する耐性を付与する(Wu,et al.,Biotherapy 3:87(1991));およびhygro、これはヒグロマイシンに対する耐性を付与する(Santerre,et al.,Gene 30:147(1984))。組換えDNA技術の分野でよく知られている方法は、所望の組換え型クローンを選択するためにルーチン的に適用でき、このような方法は、例えば、Ausubel,et al.,eds.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons(1993);Kriegler,Gene Transfer and Expression,A Laboratory Manual,Stockton Press(1990);およびChapters 12 and 13,Dracopoli,et al.,eds,Current Protocols in Human Genetics,John Wiley & Sons(1994);Colberre−Garapin,et al.,J Mol Biol 150:1(1981)に記載されている。これらの文献は参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0156】
抗体分子の発現レベルは、ベクター増幅により高めることができる(概説としては、Bebbington,et al.,”The use of vectors based on gene amplification for the expression of cloned genes in mammalian cells,” DNA Cloning,Vol.3.Academic Press(1987)を参照されたい)。抗体を発現するベクター系のマーカーが増幅可能な場合、宿主細胞の培養物中に存在する阻害剤の量の増加は、マーカー遺伝子の複製物の数を増やすことになる。増幅領域は抗体遺伝子と関連しているので、抗体の産生も増加することになる(Crouse,et al.,Mol Cell Biol 3:257(1983))。
【0157】
宿主細胞は、本発明の2つの発現ベクター、ポリペプチド由来の重鎖をコードする第1のベクターおよびポリペプチド由来の軽鎖をコードする第2のベクター、により同時形質移入され得る。2つのベクターは、重鎖および軽鎖ポリペプチドの対等の発現を可能にする同一の選択可能マーカーを含んでいてもよい。あるいは、重鎖および軽鎖ポリペプチドの両方をコードし、発現できる単一ベクターを使ってもよい。このような状況では、過剰な有毒性の遊離重鎖を避けるために、軽鎖は重鎖の前に配置する必要がある(Proudfoot,Nature 322:52(1986);Kohler,Proc Natl Acad Sci USA 77:2197(1980))。重鎖および軽鎖用のコード配列はcDNAまたはゲノムDNAを含んでもよい。
【0158】
動物により、化学的合成により、または組換え発現により、本発明の抗体分子が作製されると、その抗体分子は免疫グロブリン分子の精製のための当該技術分野において既知の任意の方法により、例えば、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換、親和性、特にプロテインA後の特異的抗原に対する親和性、およびサイズ排除クロマトグラフィー)、遠心分離、溶解度差(differential solubility)により、またはタンパク質の精製のための任意の他の標準的技術により、精製できる。さらに、本発明の抗体またはその断片を、本明細書で記載されるまたは当該技術分野において既知の異種ポリペプチド配列に融合して、精製を促進できる。
【0159】
本発明は、ポリペプチドに組換えで融合された、または化学的にコンジュゲート(共有結合的および非共有結合的コンジュゲーションの両方を含む)された抗体を包含する。本発明の融合されたまたはコンジュゲートされた抗体は、精製を容易にするために使用できる。例えば、国際公開第WO93/21232号;欧州特許出願第EP439,095号;Naramura,et al.,Immunol Lett 39:91(1994);米国特許第5,474,981号;Gillies,et al.,Proc Nail Acad Sci USA 89:1428(1992);Fell,et al.,J Immunol 146:2446(1991)を参照されたい。これらの文献は参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0160】
さらに、本発明の抗体またはその断片を、ペプチドなどのマーカー配列に融合し、精製を促進できる。好ましい実施態様では、マーカーアミノ酸配列は、特に、pQEベクター(QIAGEN,Inc.,9259 Eton Avenue,Chatsworth,Calif.,91311)で提供されるタグのようなヘキサヒスチジンペプチド(配列番号18)であり、これらの多くは市販されている。Gentz,et al.,Proc Natl Acad Sci USA 86:821(1989)に記載されているように、例えば、ヘキサヒスチジン(配列番号18)は、融合タンパク質の簡便な精製を提供する。精製に有用なその他のペプチドタグには、インフルエンザヘマグルチニンタンパク質に由来するエピトープに対応する「HA」タグ(Wilson et al.,Cell 37:767(1984))および「flag」タグが含まれるが、これらに限定されない。
【0161】
抗体精製
組換え技術を使う場合、抗体は、細胞内で産生され、細胞周辺腔中で産生され、または媒質中に直接分泌され得る。抗体が細胞内で産生される場合、第一ステップとして、粒子状壊死組織片、宿主細胞または溶解断片を、例えば、遠心分離または限外濾過により除去できる。Carterら、Bio/Technology 10:163(1992)は、大腸菌の細胞周辺腔に分泌される抗体を単離する方法を記載する。簡単に説明すると、細胞ペーストを酢酸ナトリウム(pH3.5)、EDTA、およびフッ化フェニルメチルスルホニル(PMSF)の存在下で約30分にわたり解凍する。細胞壊死組織片を遠心分離により除去できる。抗体が媒質中に分泌される場合は、通常最初に、このような発現系由来の上清を、市販のタンパク質濃縮フィルター、例えば、AmiconまたはMillipore Pellicon限外濾過ユニットを使って濃縮する。PMSFなどのプロテアーゼ阻害剤を前述のステップのいずれかで加えてタンパク質分解を抑制し、抗生物質を加えて外来性混入物の増殖を防ぐことができる。
【0162】
細胞から調製した抗体組成物を、例えば、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動法、透析、および親和性クロマトグラフィーを使って精製できるが、親和性クロマトグラフィーが好ましい精製技術である。親和性リガンドとしてのプロテインAの適合性は、抗体中に存在するいずれかの免疫グロブリンFCドメインの種およびアイソタイプに依存する。プロテインAを使って、ヒトIgG1、IgG2またはIgG4重鎖をベースにする抗体を精製できる(Lindmark,et al.,J Immunol Meth 62:1(1983))。プロテインGは、全マウスアイソタイプおよびヒトIgG3に対し推奨されている(Guss,et al.,EMBO J5:1567(1986))。親和性リガンドが付着するマトリックスは、アガロースの場合が最も多いが、その他のマトリックスも利用可能である。機械的に安定なマトリックス、例えば、気孔制御ガラスまたはポリ(スチレンジビニル)ベンゼンは、アガロースで達成され得るよりも速い流速と、より短い処理時間を可能にする。抗体がCH3ドメインを含む場合には、Bakerbond ABXTM樹脂(J.T.Baker;Phillipsburg,N.J.)が精製に有用である。タンパク質精製用のその他の技術、例えば、イオン交換カラム上の分留、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカを使ったクロマトグラフィー、陰イオンまたは陽イオン交換樹脂上のヘパリンSEPHAROSE(商標)を使ったクロマトグラフィー(例えば、ポリアスパラギン酸カラム)、等電点電気泳動、SDS−PAGE、および硫酸アンモニウム沈殿法も、回収される抗体に応じて利用可能である。任意の予備的な精製ステップ(単一または複数)後に、目的の抗体および混入物を含む混合物は、約2.5〜4.5のpHの溶出緩衝液を使って、好ましくは低塩濃度(例えば、約0〜0.25Mの塩)で行われる低pH疎水性相互作用クロマトグラフィーに供することができる。
【0163】
B細胞受容体複合体のmIgMに対する抗体
本発明は、B細胞受容体複合体(BCRC)の膜結合IgM(mIgM)成分を特異的に標的とする抗体に関する。大部分のB細胞リンパ腫および白血病はそれらの細胞表面上にmIgMを発現しているので、これらの抗体をこの分子の研究およびmIgM随伴疾患の診断と処置に使用できる。
【0164】
B細胞受容体複合体は分化、細胞増殖およびアポトーシスを制御する免疫系B細胞アームの中心的シグナル伝達要素である。この細胞表面分子複合体は、全てのB細胞悪性病変中で発現され、恒常的に活性化されている(Tsubata T,et al.,B cell signaling.Introduction.20:675−678(2000);Gauld SB,et al.,Science 296:1641−1642(2002);Girurajan M,et al.,J Immunol 15:5715−5719(2006))。BCRCは、分泌型Igの膜貫通型(受容体)からなり、CD79αβ(シグナル伝達配列)と密接に関連している(Reth M,Nature 338:383−384(1989);Gold MR.et al.,Proc Natl Acad Sci USA 88:3436−3440(1991);Jugloff L S.et al.,J Immunol 159:1139−1146(1991);Cambier JC,et al.,FASEB J 6:3207−3217(1992);Flaswinkel H,et al.,EMBO J 13:83−89(1994);Burkhardt AL,et al.,Mol Cell Biol 14:1095−1103(1994);Rowley RB,et al.,J Biol Chem 270:11590−11594(1995);Kabak S,et al.,Biochem Biophys Res Commun 324:1249−1255(2004);Patterson HC,et al.,Immunity 25:55−65(2006);Polson AG,et al.,Blood 110:616−623(2007)を参照されたい)。小さい細胞外ペプチドセグメント(細胞外近位ドメイン、ECPDまたはPD)も、mIgの膜貫通配列と膜型および分泌型Igの両方に存在する相同Igコンセンサス配列との間に存在する(Bestagno M,et al.,Biochemistry 40:10686−10692(2001);Poggianella M,et al.,J Immunol 177:3597−3605(2006))。このPDは、それぞれの膜Igクラスに対しユニークであり、対応する分泌Ig型には存在しない。さらに、ヒトゲノムデータベースの探索に基づくと、各Ig膜クラスのPD配列はそこに含まれる全ての配列に対しておよび報告された対応するマウス配列と比べてユニークである。したがって、クラス特異的PDのそれぞれに対する特異的配列のゲノムデータバンク探索により、その対応する膜Igクラスのみが得られる。遺伝子バンク探索により決定されるように、これらの配列を使うその他の膜タンパク質は特定されなかった。さらに、これらの小さいドメインの進化的誘導を示唆する相同ペプチド配列も見つからなかった。
【0165】
循環血液中の大量のIgの存在のために、同族体膜結合Ig(mIg)は薬物開発の適切な標的であるとは考えられなかった。本出願は、BCRCが、膜貫通疎水性のアミノ酸配列と、コンセンサス分泌Ig同族体配列との間の細胞外に存在する短ペプチドリンカー、すなわちPDを標的にすることにより、循環Igの干渉なしに標的化され得ることを示した。さらに、mIgM定常ドメイン4(μC4)を含むmRNAスプライスバリアントは新しい重要な特異的エピトープを提供する。これらの知見は、本明細書における抗PD mAb、すなわち、抗mIgMおよび抗mIgG PD mAbならびにユニークμC4エピトープを結合する抗体の生成をもたらした。これらのmAbは、mIgMまたはmIgGクラス特異的BCRCを標的とし、それにより、これらの抗体を使用してこれらのIg受容体を精製し、かつ対応する血清型に比較して、mIg中に存在する他の新抗原をさらに探索および発見できる。それらのユニークな配列のために、シグナルがPDにより媒介される場合、抗PD mAbがmIgからCD79αβへのシグナル伝達における下流シグナル伝達経路を調節可能であると推測されている。この抗PD mAbを利用する標的化手法の利点は、BCRCと関連する下流経路の破壊がB細胞中においてのみ調節され、かつ標的化Igクラス、例えば、mIgMを発現する細胞のみに限定されると予測され得ることである。PD中に含まれる特異的エピトープに加えて、IgMの定常領域4、μC4、内に含まれる隣接するまたは近位の配列は、このドメインの20個の近位アミノ酸の欠失により、sIgMに比べてmIgM中で切り詰められている。したがって、mIgM定常領域4、μC4、中でsIgMからmIgMをさらに識別する、追加の免疫学的に定義された新エピトープを検出することが期待されるであろう。切り詰めは、グリコシル化部位の喪失の原因でもあり;J−Chain結合が存在せず、この領域はμC4ドメインのmIgクラスタリング部位の近位にある(Tolar P et al,Immunity 30(1):44−55(2009)を参照されたい)。mIgM定常ドメイン4中の新エピトープに対してmAbを生成することが可能となり、BCRCを介するシグナル伝達も調節する1つのこのようなmAbが単離されたことが明らかになった。mIgMはBCRCの受容体成分であるので、細胞内ホスホキナーゼが存在する場合それはCD79αβに活性化シグナルを伝達するはずである。1つの分子からその他の分子へのシグナル伝達の正確な位置はまだ分かっていない。
【0166】
BCRCを特異的に調節することを目的として、mIg分子をそのPDで標的にする特異的モノクローナル抗体(mAb)、抗PD mAbを生成した。mIgM分子特異的13マーペプチドPD配列(EGEVSADEEGFEN)(配列番号11)およびmIgG特異的18マーペプチドPD配列(ELQLEESCAEAQDGELDG)(配列番号12)を検出する多数のペプチド特異的mAbが生成され、ペプチド特異的結合およびペプチド発現細胞に対する細胞結合を有することが明らかになった。高親和性抗PDモノクローナル抗体(mAb)を以下に記載する免疫化技術により生成した。ELISA、ウェスタンブロットおよび走査型免疫電子顕微鏡(SEM)により、これらのモノクローナル抗体が、mIgMプロテインAおよびmIgM+発現細胞株CA46(CRL1648)、SU−DHL−5(CRL2958)、Ramos(CRL−1596)、Namalwa(CRL−1432)、ST486(CRL−1647)、MC116(CRL−1649)、およびHT(CRL−2260)に結合することが示された。これらの高親和性抗PDモノクローナル抗体を使って、mIgMを免疫アフィニティー精製し、マウスの免疫に使用した。ELISA/ウエスタン/SEMアッセイでBCRC上の立体構造エピトープを検出しsIgMとは反応しない第二世代抗体を収集した。以降で記載のようにMTT/CASPASEおよびクローン原性の限界希釈アッセイにより増殖抑制を評価した。mAb1−1、mAb2−2b、mAb3−2bおよびmAb4−2bと命名した四種のモノクローナル抗体を、さらなる調査のために選択した。
【0167】
これらのmIgM PD/精製mIgMに対する特異的mAbの生成および評価の過程において、いくつかの問題および課題が生じた:
1.収集した初期のクローンは、抗原標的のユニークな配列にもかかわらず低親和性であった。免疫したBalb/cマウスのスクリーニングは、血清応答が不良であることを示した。種々のアジュバントを検討したが、測定できるほどの血清試料の力価または親和性の増加は得られなかった。その後、種々の株のマウスを試験し、CD−1マウスのみが高親和性抗体の生成に適する宿主であることが分かった。
2.標的ポリペプチドは少なくとも、3種の異性体型として存在する。臨床的に適切なmAb試薬を生成するために、標的PDのすべての異性体型を認識するmAbについてmAbをスクリーニングした。
3.マウス抗体免疫応答の親和性を高めるために、および追加のエピトープの探索を広げるために、細胞抽出物(mAb1−1免疫アフィニティカラムから取得)由来の精製mIgM調製物を免疫原中に組み込んだ(mIgM PD−ペプチド−MAP免疫原との同時投与により)。
4.抗体mAb1は、mIgM−PDペプチド−MAP免疫原のみを含む融合体から得て、一方、全ての他の抗体(mAb2、mAb3およびmAb4)は、mIgM−PDペプチド−MAP免疫原に加えて精製mIgMを使って生成した。これらのmAbが異なる免疫原を使った融合体由来であることを示すために、接尾辞1をmAb1に加え(mAb1−1)、その他の抗体に接尾辞2を加えた(mAb2−2、mAb3−2およびmAb2−4)。さらに、抗体mAb2、mAb3およびmAb4の生成に使用した精製mIgMは、細胞株b(CA46、CRL1648)抽出物から得られるので、接尾辞2に文字bを付加した(mAb2−2b、mAb3−2bおよびmAb4−2b)。
5.精製mIgMによる免疫中に、血清IgM上では検出されないmIgMの第4定常領域を共有するエピトープに対してmAbが生成された。これは、血清IgM mRNAスプライスバリアントに比較して、膜IgM中の遠位の20アミノ酸の末端欠失に起因して生成された新抗原の結果である。mAb4−2bは、mIgMの第4定常領域中の構造変化がIgMドメインμC4中でユニークな高次構造エピトープを誘導したことを立証する。
【0168】
次の調査は、mAb特異性を明らかにし生物活性の不可欠な側面を調査するために必要とされ、本出願において以降で次の順番で提示される:
1.ハイブリドーマパネルの生成と選択
2.生存標的細胞および細胞抽出物に対する特異性の調査(表4)
3.標的ペプチド、異性体および細胞抽出物に対する特異性の調査(表5、6)
4.免疫アフィニティーmIgMまたはPerfect−FOCUS(商標)抽出物に対する直接結合の抑制の分子特異性調査(表7、8)
5.競合的mAb結合および6マー抑制による分子エピトープマッピング(表9、10)
6.走査電子顕微鏡結合調査(表11〜18、
図1〜5)
7.mAb結合媒介BCRC内部移行(表19、
図2)
8.mAb4−2b媒介増殖抑制、抗クローン原性活性およびアポトーシス(表20〜24および
図6〜7)
【0169】
本出願で後程示すように、細胞表面結合アッセイは、一連のmIgM+対mIgM−(mIgG+)生細胞/固定細胞または抽出物に対する試験により、これらのモノクローナル抗体の特異性を実証した。さらに、正常なまたはワルデンシュトレームマクログロブリン血症血清は、mIgM+細胞に対するmAb結合をブロックするまたは減少させることができなかった。この結果は、SEMでも確認された。これらの2つの調査は、インビボでB細胞を特異的に標的とする能力が達成されたことを明確に実証している。
【0170】
37℃で、抗PDモノクローナル抗体(mAb1−1、mAb2−2b、mAb3−2b)はmIgM(BCRC)を30分までに内部移行させたが、細胞増殖抑制を調節しなかった。第二世代mAb4−2bもmIgM(BCRC)の内部移行を媒介したが、加えて、低密度培養において、細胞増殖抑制、抗クローン原性活性およびアポトーシスが観察された。アポトーシスは、高および低mIgM/CD79αβ発現細胞を含む種々の悪性細胞株で認められた。
【0171】
(1)mIgM発現細胞に特異的に結合する抗体および(2)ヒト血清IgMと反応せず、免疫アフィニティー精製mIgMに対し十分高い結合力を有する抗体は、これまで報告されていない。市販のmIgM調製物は低品質である。本発明は、これらのB細胞の細胞質中で血清または分泌Igの存在にかかわらずmIgM精製できるこのような抗体を提供する。
【0172】
以下に提示されるデータは、細胞増殖抑制アッセイにより明らかなように、BCRC内部移行がBCRCシグナル伝達カスケードを阻止するには不十分であったことを示している。細胞表面上に検出可能な残余mIgMおよびCD79αβを欠いているにもかかわらず、増殖抑制は観察されなかった。これらのデータは、mIgMからCD79αβへのシグナル伝達はPDペプチド配列を介して媒介されず、内部移行されたBCRCはその内部移行された区画内でリン酸化CD79αβを提示し続けることを強く示唆する。mAb4−2bのmIgMの非リガンド結合部位への結合時に、mAb4−2bはBCRC内部移行および別の異なるイベントにおいて、増殖抑制とアポトーシスの両方を誘導した。競合的mAb調査により、アポトーシス媒介立体構造エピトープは共有されているように見えるが、主に直鎖PD配列の外側に存在している。mAb4−2bは、直鎖mIgM−PDペプチドに比べて、精製mIgMに対し強化された結合を示し、その結合は、可溶性PD6マーにより実質的に遮断されないので、mAb4−2b標的エピトープは立体構造的であるか、もしくは定常領域4がその結合に影響しているか、またはそのエピトープが定常領域4に主に存在しているかである。実験結果は、薬剤/放射性同位元素標的化ビークルとして、またはBCRCシグナル伝達経路の抑制のメディエーターとしてのこれらのモノクローナル抗体の使用を支持する。これらの薬剤は非mIgM B細胞に結合せず、高レベルの特異性を有するために、正常なリンパ球および非リンパ組織は、この薬剤の毒性を免れることができる。
【0173】
実施例1
抗ECPDハイブリドーマパネルの生成
標的ペプチドと反応性のモノクローナル抗体を単離するために、IgM−EGEVSADEEGFEN(配列番号11)およびIgG−ELQLEESCAEAQDGELDG(配列番号12)、免疫原を有するこれらのペプチドを生成(グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST))または購入した(多抗原ペプチド(MAP(Bio−Synthesis,Lewisville,TX)およびKLHペプチド(Bio−Synthesis,Lewisville,TX))。GST、MAPおよびKLH構築物を免疫原性キャリアタンパク質として使用し、複数組のマウスを標的ペプチド保持タンパク質の1つまたは組み合わせで免疫した。Balb/cマウスを宿主として使用した最初の実験で、これらのペプチドは市販のアジュバント調製物を加えても免疫原性がないことがすぐに明らかになった。低免疫原性は、前に行った抗mIgMおよびmIgG PD mAb作製の試みと一致するが、対照的に、mIgEを作製する試みにより、いくつかの機能上異なるタイプが得られた(Poggianella M,et al.,J Immunol 177:3597−3605(2006);Feichter S,et al.,J of Immunol 180:5499−5505(2008))。Balb/cマウスから生成された11個のモノクローナル抗体の第一のパネルは、反応性が弱すぎて臨床的価値がないと思われた。
【0174】
試験した全てのマウス株(Balb/c自己免疫性マウス株など)の中で、CD−1のみがこれらの免疫原に対し大きな免疫応答が可能であると見出された。対照不含KLH(Sigma−Aldrich,St.Louis,MO,USA)もインビトロアッセイ用として入手した。さらに、mIgMおよびmIgG画分をPerfect−FOCUS(商標)−膜タンパク質抽出技術(G Biosciences,St Louis,MO,USA)により集めて、これにより、ヒト細胞株、MC116(CRL1649)(未分化リンパ腫発現mIgM)、CA46(CRL1648)(バーキットリンパ腫発現mIgM)、ST486(CRL1647)(バーキットリンパ腫/CLL様細胞株発現mIgM)、HT(CRL2260)(びまん性混合型B細胞リンパ腫mIgM)またはDB(CRL2289)(大細胞型B細胞型リンパ腫発現mIgG)由来の、初期ELISA調査に好適な富化mIgMまたはmIgG調製物を得た。これらの膜IgMまたはIgG富化画分を使って複数組のCD1マウスを免役して、第二世代モノクローナル抗体mAb4−2bを生成した。種々のアジュバントを使って、免疫前および後の血清を集めて、1:100に希釈し、ペプチド特異的活性をELISAで試験した。
【0175】
新しい免疫化方法を開発した。追加免疫用に高度精製標的タンパク質を用いならびにCD1マウスおよび新アジュバントを使って可能な立体構造エピトープを捕捉するために、ペプチドをμC4ドメイン4領域に伸長した(「伸長ペプチド」18マー)結果、免疫化後血清力価>1:10,000を有する6匹のマウスを得た。これらのマウスを標準的な技術を使いハイブリドーマ生成用として選択した。ELISAで、ペプチド/伸長ペプチドおよびmIgMの膜抽出画分への結合に活性であった4個のクローンを単離し、2個のクローンはmIgG特異的であった。2つのPDに特異的なプライマーを用いるRT PCRにより、mIgM/mIgG分子は、CRL1647またはCRL2289によりそれぞれ発現されることが分かり、ウェスタンブロット分析により細胞膜画分中に存在することが示された。さらなる選別目的のために、構築物(GST、MAPおよびKLP+/−ペプチドまたは伸長ペプチド)をPDペプチドmIgMまたはmIgG用に、およびmIgEとペプチドmIgAの共通の重複配列などの対照ペプチド用に集めた。mIgDペプチドを、全B細胞抽出物がこのペプチドも含むので、ここでの分析で使用した。特定の免疫原の組み合わせを用い、および膜抽出物画分で追加免疫をした免疫のみが、良好な反応性を有するクローンをもたらした;PD−KLHペプチド免疫のみで融合体117由来のハイブリドーマ細胞株により産生された1個のIgG2bクローン(mAb1−1)、融合体118由来のハイブリドーマ細胞株により産生された2個のIgG2bクローン(mAb2−2b、mAb3−2b)、ならびに融合体119由来のハイブリドーマ細胞株により産生された1個のIgG1クローン(mAb4−2b)。
【0176】
ハイブリドーマ上清の初期選別は、適切なPDペプチドmIgMまたはmIgGを有するKLHとの反応性、遊離KLHとの非反応性、正常なヒト血清、精製されたIgM調製物ならびにIgE、IgDおよびIgA用のペプチドを有するKLHを必要とした。CRL1647−mIgMおよびCRL2289−mIgGの細胞抽出物を試験するために、特異的「マウスIg吸着」ヤギ抗ヒトIgMFcまたはヤギ抗IgGFc抗血清キャプチャー抗体を固相プラスチックに付着させた。CRL1647またはCRL2289のNP−40ライセートまたはヒト血清または対照乳癌細胞ライセートBT−474をウエルに結合させた。CRL1647ライセートがヒトmIgMをもたらし、CRL2289がヒトmIgGをもたらしてキャプチャー抗体に結合させ、その後、ウエルを3回洗浄した。次に、ハイブリドーマ上清を加え、ここで、「特異的」モノクローナル抗体が捕捉されたヒトmIgMまたはmIgGに結合し、これはプラスチックに結合した捕捉された抗ヒトIgMFcまたはIgGFcにより結合されており、ヤギ抗ヒト−IgMFc−mIgM−mAb複合体またはヤギ抗ヒト−IgGFc−mIgG−mAb複合体を形成する。その後、マウスmAbをHRP標識した特異的ヤギ抗マウスIg(ヒトIgMまたはヒトIgGで予備吸着させた)で検出した。その他の陽性細胞抽出物、例えば、Namalwa(CRL1432)およびCA46(CRL1648)は、類似の結果を与えた。
【0177】
パネルに収集したモノクローナル抗体は、mAb1−1、mAb2−2b、mAb3−2b、mAb4−2b、およびmAb11−1と命名されたモノクローナル抗体を含んだ。モノクローナル抗体mAb1−1はIgG2bアイソタイプである。モノクローナル抗体mAb1−1を、融合体117由来のハイブリドーマ細胞株により作製した。モノクローナル抗体mAb2−2bおよびmAb3−2bは、IgG2bアイソタイプであり、mAb4−2bはIgG1アイソタイプである。クラススイッチ変異体を発生させてIgG1アイソタイプを得て、特定の実験のために、標的細胞上および細胞抽出物中の両方に存在する非特異的細胞Fc受容体結合を減らした。モノクローナル抗体mAb2−2bおよびmAb3−2bを融合体118由来のハイブリドーマ細胞株により作製し、mAb4−2bを融合体119由来のハイブリドーマ細胞株により作製した。モノクローナル抗体mAb11−1はIgG1アイソタイプである。モノクローナル抗体mAb11−1を融合体200由来のハイブリドーマ細胞株により作製し、これはmIgGと反応性である。第2の抗mIgG mAbも同様に収集したが、本明細書で記載の実験には使用しなかった。
【0178】
ヒトB細胞株SK007(mIgMなしにmIgEを発現しているヒトB細胞株)のHP−40溶解によりSK007細胞から抽出したヒトmIgEを使って、反応性の特異性をさらに確認し、特異的ヤギ抗ヒトIgEキャプチャー抗体を使ってELISAで試験した。まとめると、これらのアッセイは、ELISAにおいて、モノクローナル抗体パネルが、免疫原に含まれる合成ペプチド配列と、NP−40溶解およびPerfect−FOCUS(商標)画分から得られるヒトmIgMまたはmIgG天然タンパク質ペプチド配列との両方を識別することを示した。それらが膜貫通ドメインまたは細胞質ドメインと反応しなかったことをチェックするために、mIgM発現CLL(慢性リンパ性白血病)細胞を予備吸着させた蛍光標識ヤギ抗マウスIgを用いる生存細胞の蛍光顕微鏡(FM)を使って生存CLL細胞に結合したmAbを検出した。結果は、mAb特異的であるが、予測通り弱い細胞膜染色で、また、抗軽鎖活性に類似であり、低レベルのmIgM細胞表面発現を示す。一般に、CLL細胞はほとんどのB細胞リンパ腫に比べて少量のBCRCを発現する。通常、臨床では、mIgMの軽鎖のカッパまたはラムダとしての型判定により、CLL細胞はモノクローナル集団であると決定され、したがって、悪性であると決定される。しかし、4個全てのクローンは、試験した全てのmIgM+細胞株でそれらが強く陽性であったので、赤血球吸着アッセイにおいてインタクト生存細胞に適切に結合したように見えた。
【0179】
さらに、これらのモノクローナル抗体の存在下で培養したCLL細胞は、フローサイトメトリーの側方散乱プロットにより、対照またはポリクローナル抗IgMに比べて増大した複雑さを示し、新規細胞効果の可能性を示唆する。
【0180】
この初期選別方法の結果として、パネルのクローンは次の特徴を有した:次記に関してELISAで陽性であった:(1)KLHペプチド/伸長ペプチド(mIgM)および(2)キャプチャー抗ヒトIgMFcを使った、陽性発現細胞株CA46(CRL1648)およびNamalwa(CRL1432)のNP−40ライセートとの反応性。クローンは次記とのELISAにおいて全て陰性であった:(1)KLH単独、(2)無関係のペプチドを含むKLH、(3)キャプチャー抗ヒトIgMFcを用いる乳癌細胞株BT−474 NP−40ライセート、(4)キャプチャー抗ヒトIgMFcを用いるヒト血清、(5)キャプチャー抗ヒトIgMFcを用いるヒトワルデンストレームマクログロブリン血症血清、および(6)対照としてのSP2/0マウス骨髄腫細胞株およびH2.8(CRL2568)マウス骨髄腫細胞株のライセート(HRP標識mAb)。しかし、ELISAによる膜抽出物CA46(Perfect−FOCUS(商標)、G−Biosciences、St.Louis,MO)に対する反応性の試験およびCA46 NP−40ライセートのウェスタンブロット分析は、トリトン(商標)X−100による抽出および/またはSDSへの暴露後に、クローン間でエピトープを認識または結合するそれらの能力の差異を示した。このことは、小さいペプチド標的13マーまたは伸長された18マーであっても、ペプチド立体構造の変化はmAb結合にとって重要であることを示唆した。例えば、ウェスタンブロットでmIgMバンドを検出した、ELISAでKLHペプチドまたはPerfect−FOCUS(商標)に対し陽性であった、およびトリトン(商標)X100 ELISAで反応性であったクローンが存在したという事実は、これらのクローンのサブセットが界面活性剤中に保存されるエピトープを認識したことを示唆する。さらに、ウェスタンブロットは複雑であり、mIgMおよびCD79αβの複合体に関連する複数の分子量バンドへの結合を示す。
【0181】
mIgMは低レベルで発現されるので、フローサイトメトリーは、陰性であることを実証する信頼性の高い方法ではないと思われ、したがって、走査電子顕微鏡観察を行った。いくつかの事例では放射標識がモノクローナル抗体の親和性を低下させたので(Cesano A,Gayko U,Sem Oncol 30:253−257(2003))、結合およびエピトープマッピングを直接標識抗体で(HRP、Sigma−Aldrich,St.Louis,MO,USA)および抑制を小さい6マーペプチドまたは伸長mIgM PDペプチドで行った。
【0182】
モノクローナル抗体mAb1−1、mAb2−2b、mAb3−2bおよびmAb4−2bを産生するハイブリドーマ細胞株を2014年11月12日に、アメリカ合衆国培養細胞系統保存機関パテントデポジトリー(10801 University Blvd.,Manassas,VA)に寄託した。この寄託は、特許手続きのための微生物寄託の国際認識に関するブダペスト条約およびその規則(ブダペスト条約)の規定の下で行われた。mAb1−1と命名されたモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞株は、ATCC寄託番号_________を与えられた。mAb2−2bと命名されたモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞株は、ATCC寄託番号_________を与えられた。mAb3−2bと命名されたモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞株は、ATCC寄託番号_________を与えられた。mAb4−2bと命名されたモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞株は、ATCC寄託番号_________を与えられた。
【0183】
実施例2
抗体精製
pH8.6のトリス溶液中のそれぞれのハイブリドーマ株由来の上清を適用するプロテインAセファロースカラム(Pierce Inc.,Rockford,IL,USA)を使用して、抗体精製を行った。さらなる洗浄をpH7.0のPBSで行った後、pH4.0でmIgMを溶出した。無菌濾過したモノクローナル抗体を、アジド含有/不含の無菌PBS中に500マイクログラム/mlで4℃にて貯蔵した。ADCC、補体溶解、増殖抑制アッセイおよび生物学的アッセイ用の抗体調製物は、1000マイクログラム/mlにてアジド不含PBS中で無菌濾過した。
【0184】
実施例3
mIgMの抗体免疫アフィニティー精製
mAb1−1、またはmAb2−2bおよびmAb3−2bを含むmAb1−1共有結合免疫アフィニティービーズ(Pierce Inc.,Rockford,IL,USA)を使い、CRL−1648 NP−40抽出物を適用し、その後ビーズをpH8.6のトリス溶液で洗浄して、mIgMの抗体精製を行った。さらなる洗浄をpH7.0のPBSで行った後、pH4.0でmIgMを溶出した。無菌濾過したmIgMバッチを、アジド含有/不含の無菌PBS中に500マイクログラム/mlで4℃にて貯蔵した。
【0185】
実施例4
特異性分析
抗体の上皮細胞株バンクに対するパネルの赤血球吸着試験を行い、非特異的交差反応性を有するクローンを除去した(Rettig WJ,et al.,Int J Cancer 58:385−392(1994);Kitamura K,et al.,Proc Natl Acad Sci USA 91:12957− 12961(1994);Garin−Chesa P,et al.,Int J Oncol 9:465−471(1996);Rader C,et al.,J Biol Chem 275;13668−13676(2000))。真の陰性細胞を確定するために、これらの上皮細胞株のサブセットをPD配列に対するRT−PCRで試験したが、しかし、これまでmIgMがB細胞系列のもの以外の悪性細胞により発現されるという報告はなく、本明細書での調査は、パネル中のいずれの細胞株においてもこれらの配列を示さなかった。PD13マーmIgMおよび18マーmIgGに対する黒色腫および肉腫のパネルのRT−PCRによりこの観察は拡大され、これらの非B細胞系列細胞においてこのペプチドの発現を示すシグナルは認められなかった。したがって、いずれの結合も交差反応性を示し、BCRC抗原検出を示さないであろう。抗体の腫瘍細胞の細胞表面への結合は、抗マウスIg抗体またはプロテインAでコートされた赤血球の吸着により顕微鏡的に検出された。力価は、最大ロゼッティングを与える試薬の最大希釈として定義される(Rettig WJ,et al.,Int J Cancer 58:385−392(1994);Kitamura K,et al.,Proc Natl Acad Sci USA 91:12957−12961(1994);Garin−Chesa P,et al.,Int J Oncol 9:465−471(1996);Rader C,et al.,J Biol Chem 275:13668−13676(2000))。出願人および共同研究者により以前に開発された、mAb A33、mAb 3S193、mAb G250およびmAb F19を含む抗体パネル中に、陽性対照抗体を含めた(Rettig WJ,et al.,Int J Cancer 58:385−392(1994);Kitamura K,et al.,Proc Natl Acad Sci USA 91:12957−12961(1994);Garin−Chesa P,et al.,Int J Oncol 9:465−471(1996);Rader C,et al.,J Biol Chem 275:13668−13676(2000))。ヒト上皮細胞株のパネル:乳癌(9)、肺癌(9)、結腸癌(12)、腎臓癌(6)、前立腺癌(3)、卵巣癌(3)、黒色腫(6)および肉腫(2)に対する結合アッセイにおける、モノクローナル抗体mAb1−1、mAb2−2b、mAb3−2bおよびmAb4−2bの広範囲にわたる選別は、全て陰性であった。
【0186】
CRL1647は真の陽性で、弱いプラスチック粘着性であったが、ポリL−リシンによるプレートのプレコーティングによりより高い粘着性が得られた。非粘着性標的細胞に対しては、スライド・ガラス上で細胞を顕微鏡的に検査することによりロゼッティングを評価した。
【0187】
実施例5
生存細胞株とのmAbの特異的反応性およびNP−40ライセートアッセイ
プロテインGコートhuRBCを用いる赤血球吸着アッセイ(HA)では、位相差顕微鏡(100x)を使って、陰性(neg)、+、++、または+++としてスコア化した。細胞株パネルは、(1)mIgMラムダ、CRL1432、CRL1596、CRL1649、CRL3006、CRL2958、(2)mIgMカッパ、CRL1647、CRL1648、CRL2260、(3)mIgGラムダ2289、(4)mIgG、CRL2632、および(5)SK007から構成した。上皮癌および黒色腫細胞株を、アイソタイプ対応対照mAbとの反応性のために選択した。マウスIg予備吸着キャプチャーヤギ抗ヒトIgM定常領域血清を使ってCLのESA(細胞ライセートのELISAサンドイッチ法)を行い、ヒトIg予備吸着ヤギ抗マウスIg−HRPで検出した。留意すべきは、全てのリンパ腫株は、血清IgMと類似の細胞質IgMを有することである。したがって、このアッセイは、mIgMと血清または細胞質IgMとの間の反応性を区別するmAbの特異性を確認または評価しない。下表4に結果を示す。
【表4】
【0188】
統計分析:スチューデントのt検定を使ってELISAの示されたデータポイントの統計的妥当性を評価した。全データポイントは、それぞれ3つの実験が行われた12ウエルから構成され、代表的な平均値が示される。mAb1、mAb2、mAb3、およびmAb4は、全ての+++または++に関し、それらのそれぞれの対照に比べて、p<0.5を超えることが示された。太字の値は統計的に有意である。
【0189】
細胞株:陽性細胞株をATCCから取得することにより確認し、各アッセイの最初の5行に示した。これらは、次のように識別される:mIgMカッパ=CRL1647、CRL1648、CRL2260;mIgMラムダ=CRL1432、CRL1596、CRL1649、CRL2958;mIgGカッパ=CRL2632;mIgGラムダ=CRL2289;mIgE=SK007。結腸癌、乳癌、肺癌および黒色腫細胞株をATCCから入手し、血清学的に試験し、それらの同一性を確認した。結腸癌、乳癌、肺癌および黒色腫細胞株のこの非リンパ系癌細胞パネルは次の細胞株から構成される:
(1)結腸癌:T84、SW1222、Colo 205、Lim 1215、HT−29、DLD−1、SW1116、SW 620、SW 480、LoVo、HCT−15、HCT−116
(2)乳癌:BT 474、SK BR7、CaMa−1、BT−20、MCF−7、SK Br−3、MDA−MB453、MDA− MB436、MDA−MB468
(3)肺癌:H64、SW1271、DMS78、SK−LU−9、NCI H596、A549、NCI H1105、NCI H69、DMS53。
(4)黒色腫:SK MEL−29、MeWo
【0190】
実施例6
相対的結合調査
上述のようにELISAを使って、精製モノクローナル抗体mAb1−1、mAb2−2b、mAb3−2b、mAb4−2b、およびmAb11−1を1:4に系列希釈した後、添加して、キャプチャー抗ヒトIgMにより結合されるヒトmIgMに結合させた。その後、結合されたマウスmAbをHRP標識特異的ヤギ抗マウスIg試薬で検出した。同じアイソタイプのモノクローナル抗体は相互に比較することが可能である。下表5〜8で特定された他の陽性標的を使って類似のアッセイを行った。
【0191】
ELISAアッセイ
【表5】
【表6】
【0192】
統計分析:スチューデントのt検定を使って示されたデータポイントの統計的妥当性を評価した。全データポイントは、それぞれ3つの実験が行われた12ウエルから構成され、代表的な平均値が示される。mAb1、mAb2、mAb3、およびmAb4のデータは、行1、3、5、7、8、9および10に関し、それらのそれぞれの対照に比べて、p<0.5を超えることが示された。太字の値は統計的に有意である。略語:PD、近位ドメイン;mIgM、膜結合IgM;KLH、スカシ貝ヘモシアニン;MAP、多抗原ペプチド(PDの);P−Focus(商標)、Perfect FOCUS(商標)細胞抽出物;IA、免疫アフィニティカラム(mAb1)。
【表7】
【表8】
【0193】
Perfect FOCUS(商標)標的細胞抽出物に対するmAb結合の、血清、血漿およびCLL細胞による抑制は、標的抗原に対するmAb結合をブロッキングできる血液中の特異的抗原を欠いていることを示したが、対照的に、CLL細胞はmAbを吸着し、それにより標的に対するmAb結合を低下させた。
【0194】
統計分析:スチューデントのt検定を使って示されたデータポイントの統計的妥当性を評価した。全データポイントは、それぞれ3つの実験が行われた12ウエルから構成され、代表的な平均値が0〜+++のスコアとして示される。mAb1、mAb2、mAb3、およびmAb4のデータは、CLL細胞による予備吸着の場合以外は、結合の大きな低下を示さなかった。これらの結果は、最下段に示すポリクローナル抗ヒトIgMとは大きく異なり、正常血清、正常血漿、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症血清およびリンパ腫、乳癌または結腸癌血清に関しp<0.5を超えた。示したスコアリング:+++=統計的な結合の低下なし、++=p>0.05低下、+=p>0.01低下および0=バックグラウンドに対し検出可能な結合なし。試験した血清は、4.2グラム/デシリットルのIgMを含むワルデンシュトレームマクログロブリン血症血清(W−Ms)、22mg/デシリットルのIgMを含むCLL血清、びまん性大細胞性B細胞リンパ腫ABC型(DLBCL)無痛性非ホジキンリンパ腫(iNHL)を含んだ。
【0195】
実施例7
ペプチド抑制による結合調査およびエピトープマッピング
最初の放射標識調査では、IgG2bモノクローナル抗体は、放射免疫反応性アッセイにより良好に標識されなかった(Barendswaard EC,et al.,Int J Oncol 12:45−53(1998);Barendswaard E,et al.,J Nucl Med 42:1251−1256(2001);スキャッチャードプロット www.curvefit.com/scatchard_plots.htm#transforming_data_to_create_a_scatchard)。固相ラベリング技術でHRP用タンパク質ラベリングキット(Sigma−Aldrich,St Louis,MO,USA;Pierce Chemicals,Rockford,IL,USA)を使った。標識抗体結合をブロックする過剰の非標識抗体を使って、次の群のクローンに分類した:1.標識抗体をブロックするもの(同じエピトープ)、2.エピトープをブロックしないもの(異なるエピトープ)および3.部分的にブロックするもの(近いエピトープまたは弱い結合剤)。全てのクローンのエピトープが分類されるまでこのプロセスを繰り返した。抑制アッセイにより追加の情報が得られ、mAbは6マーによりブロックされ、このデータは確証された。結合調査の結果は、下表9および10に示す。
【表9】
【0196】
統計分析:スチューデントのt検定を使って示されたデータの統計的妥当性を評価した。全データポイントは、それぞれ3つの実験が行われた12ウエルから構成され、代表的な平均値が示される。統計的有意性比較は、mIgM−PD、KLH−mIgM−PDおよびp−Focus+IAをそれぞれ、非標識mAbで予備ブロックされたmAb−HRPの反応性試験に含んだ(例えば、mAb1−1−HRPは非標識mAb1−1によりブロックされ、それぞれのHRP標識したmAbについてそのパートナーmAbによる類似の結果を太字で示した)。mAb1、mAb2、mAb3、およびmAb4のデータポイントは、それぞれ自己ブロッキング対非ブロッキングについてp<0.5を超えることが示された(データは示さず)。さらなる試験は、mAb1はmAb2、mAb3またはmAb4をブロックしなかった;mAb2はmAb1およびmAb4をブロックしなかった;しかし、mAb3は、mAb1およびmAb4に比べて、結合を部分的に低下させたこと、を示した。これらの結果は、mAb2の部分的なブロッキングを示すmAb3の分析と類似であった。mAb4の分析は、mAb1、mAb2およびmAb4のブロッキングの欠如を示した。結論:mIgM−PD、KLH−mIgM−PDおよびP−Focus+IA標的に対し、mAb1およびmAb4はそれぞれ異なるエピトープを検出したが、一方、mAb2およびmAb3は別に分類された、部分的に共有されているエピトープを検出した。mAb4は、その他のmAbに比べて、精製mIgM(P−Focus+IA)に対し相対的に改善された結合を示した。
【表10】
【0197】
6マーAペプチド=EGEVSA(配列番号16)および6マーペプチドB=EEGFEN(配列番号17)を、mAb−HRPに比べてモル過剰X100で使用した。統計分析は、mAb4が、AまたはB6マーによりブロックされない、異なるエピトープを検出したことを示した。mAb1はBによりブロックされないが、mAb1はAにより強くブロックされ、mAb2およびmAb3はAとBの両方により部分的にブロックされた。ペプチド抑制アッセイにおける制約要因は、小さいペプチド断片の疎水性の特性を含んだ。
【0198】
これらの調査は、11マーに比べて、mAb4−2bは伸長ペプチドに対する強化された結合を有したが、どちらの6マーもそれを完全にはブロックしなかったことを示す。これらのデータは、そのエピトープは、ECPDおよび末端ミュードメイン4にまたがり、かつそのエピトープは立体構造的であり、したがって、小さい直鎖ペプチドによって完全には抑制されないことを示唆する。留意すべきは、抗体、mAb4−2bは、赤血球吸着アッセイおよびFMにおいて最強であった。
【0199】
HRP標識実験で常にある程度の部分的なブロッキングが存在したという事実にも関わらず、その他の3つのmAb、すなわち、mAb1−1、mAb2−2bおよびmAb3−2bは2つのエピトープに分割され、EDPD内で1つは近位、1つは遠位である。3つの異なるエピトープに対する結合は分類可能であるが、オーバーラップ(部分ブロッキング)が存在する。ペプチド抑制により測定して延長されたECPD内のエピトープをそれぞれ検出する、この最終パネルの4つのmAbの最高の結合力および限定的特異性を有するエピトープ特異的クローンを、3つのモノクローナル抗体の「エピトープパネル」に集めた。
【0200】
実施例8
走査型免疫電子顕微鏡による結合調査
細胞株CA46(CRL1648)は、フローサイトメトリー分析による「DIM」軽鎖反応性に基づくと、慢性リンパ性白血病(CLL)細胞に類似の、比較的低いmIgM発現を有するB細胞株であり、走査型免疫電子顕微鏡(SEM)によるモノクローナル抗体の結合を調査するために使用された。SEM結果を下表11〜18に示す。
図1Aの顕微鏡写真は、対照−IgG2bアイソタイプ対応対照抗体+2次ヤギ抗マウスIg−goldを示す。
図1Bおよび1Cの顕微鏡写真は、写真中でmAb4と表示される、CA46(CRL1648)の2つの異なる細胞に結合したモノクローナル抗体m−Ab4−2bを、
図1Aの対照抗体と同じ倍率で示す。
図1Dの顕微鏡写真は、第3のCA46(CRL1648)細胞に結合した、写真中でmAb4と表示されるモノクローナル抗体m−Ab4−2bを、
図1Aの対照抗体に比較して高倍率で示す。明るい白色スポットは、細胞表面のmAb4モノクローナル抗体と反応する免疫金粒子ヤギ抗マウスIgを表す。バックグラウンドのヤギ抗マウスIg反応性は
図1Aの対照抗体では認められず、ヒトmIgMとの交差反応性のないこと、およびB細胞上のFc受容体による非特異的結合がないことを示している。これらの顕微鏡写真から、mIgMは細胞当たり5,000〜10,000分子で存在していると推定された。これらのSEM顕微鏡写真は、細胞表面上でmAb4−2bがmIgMに結合することを示す。
【表11】
【0201】
直接mAb結合調査は細胞表面結合を示し、および標的mIgMの存在が抗ヒトIgM、抗ヒトカッパ軽鎖、抗ヒトIgM重鎖試薬により示された。
【表12】
【0202】
mAbは、高レベルの血清IgMを含むワルデンシュトレーム血清とのプレインキュベーションにより細胞表面結合をブロックされなかった。対照的に、抗ヒトIgM、抗ヒトカッパ軽鎖、および抗ヒトIgM重鎖試薬はブロックされ、それらの細胞表面結合が欠如した。
【表13】
【0203】
mAbは、mIgM発現CRL1432とのプレインキュベーションにより細胞表面結合をブロックされ、抗ヒトIgM、抗ヒトカッパ軽鎖、抗ヒトIgM重鎖試薬は、それらもCRL1432上のmIgMに結合するので、ブロックされた。
【表14】
【0204】
過剰のmIgM PDは、CRL1648の細胞表面へのmAb1−1、mAb2−2bおよびmAb3−2bの結合をブロックし、一方、mAb4−2bはブロックされず、CRL1648細胞表面への結合を検出できた。
【表15】
【0205】
30分間のmAb1−1媒介mIgMの内部移行により、mAbまたは抗ヒトIgM重鎖試薬によるCRL1648細胞の表面上のmIgMが検出されなくなる。
【表16】
【0206】
30分間のmAb4−2b媒介mIgMの内部移行により、mAbまたは抗ヒトIgM重鎖試薬によるCRL1648細胞の表面上のmIgMが検出されなくなる。
【表17】
【0207】
抗マウスIgG1−Gold試薬は、IgG2bアイソタイプmAb1−1抗体とプレインキュベーションしたCRL1648の表面に結合したマウスIgG1アイソタイプであるmAb4−2bを検出し、これは、mAb1−1がmAb4−2bとは異なるエピトープに結合し、mAb4−2bをブロックしないことを示す。
【表18】
【0208】
抗マウスIgG1−Gold試薬は、IgG2bアイソタイプmAb2−2b抗体とプレインキュベーションしたCRL1648の表面に結合したマウスIgG1アイソタイプであるmAb4−2bを検出し、これは、mAb2−2bがmAb4−2bとは異なるエピトープに結合し、mAb4−2bをブロックしないことを示す。
【0209】
実施例9
mAb結合がBCRC内部移行を媒介する
走査型免疫電子顕微鏡(SEM)を行って、モノクローナル抗体mAb4の細胞株CRL1648の細胞への結合を検出した。
図2Aは、グルタルアルデヒド固定CRL1648細胞に結合するモノクローナル抗体mAb4を示す。
図2Bは、BCRCのマイクロクラスタに結合するmAb4を示す。CRL1648細胞をmAb4と37℃で30分間インキュベートし、固定してヤギ抗マウスIgで染色した場合、
図2Aで認められるmAb4結合とは対照的に、
図2Cで示すように、検出可能なモノクローナル抗体mAb4は存在しなかった。膜上の検出可能なmAb4の欠如は、BCRC内部移行が原因であった。
図2Dでは、CRL1648細胞をmAb4と37℃で15分間インキュベートし、固定してヤギ抗マウスIgで染色した場合、内部移行が不完全で、残留結合モノクローナル抗体mAb4が認められる(
図2D)。CRL1648細胞をmAb4と37℃で30分間インキュベートし、固定してヤギ抗−hu−IgMで染色した場合、BCRCが検出されなかった。これは
図2Eに示される。
【0210】
実施例10
酸洗浄ありまたはなしの場合の前処理細胞株によるmAb4結合の抑制
mAbが誘導するmIgMの内部移行の評価
各種条件下の相対的細胞表面mIgMレベルを測定するために、B細胞株をグルタルアルデヒド固定細胞に暴露し(表19の行1および2)(下記のSEMプロトコルにより)または生存細胞を使用した。細胞をmAb4、10mcg/mlに4℃で0分間(表19の行3および4)、および37℃で5分間(表19の行5および6)、15分間(表19の行7および8)、または30分間(表19の行9および10)暴露した。次に、mAb4−HRP結合抑制アッセイに使用する前に、細胞をpH7.0のPBSまたはpH4.0の0.5M酢酸塩緩衝液0.15NのNaClで洗浄した。行1を各細胞株の100%結合として設定し、行2は、細胞結合mAb4を取り除き細胞によりmAb4−HRPを吸着させて結合アッセイに利用可能なmAb4−HRPを減らす、酸洗浄能力を示した。類似の結果は、氷上でインキュベートした細胞にも認められ、グルタルアルデヒド固定および低温の両方がmIgMのmAb媒介内部移行を減らすことを示す。時間を限定した実験は、37℃で30分までに、細胞抑制は低減され、PBS洗浄と酢酸塩洗浄との間の差異はないことを示し、mIgMのほとんどが内部移行されたことを示唆している。結果を下表19に示す。
【表19】
【0211】
実施例11
生物活性
mAb4−2bは増殖抑制、抗クローン原性活性およびアポトーシスを媒介する
mIgM PD中の配列の特異性および膜貫通細胞シグナル伝達がCD79αβに送られるという証拠から、CA46(CRL1648)細胞の増殖曲線(MTT)およびクローン原性の試験を行って、このプロセスの調節があるか否かを判定した(Kikushige Y,et al.,Cancer Cell 20(2):246−59(2011);Martinez−Climent JA,Haematol 95(2):293−302(2010);Franken NP,et al.,Nature Protocols 1:2315−2319(2006))。96ウエルプレートにおける限界希釈での単一クローン生存の最初の試験は、3つのモノクローナル抗体がある程度の活性を有することを示した。最大の活性は、PDおよびドメイン4の両方で結合し、および立体構造的エピトープ領域に結合する、モノクローナル抗体mAb4−2bが有していた。モノクローナル抗体mAb4−2bは、ある程度界面活性剤感受性で、パラホルムアルデヒドおよび還元抵抗性のエピトープに結合する。その他の3つのmAbは、PD中のより近位のエピトープに結合する。これらの細胞増殖抑制効果が、直接的にシグナルを伝達するエピトープのブロッキングに関連するのか、またはmAbの大きなサイズおよび/またはマイクロクラスタ化による立体構造に関連するのかは、明らかでない。
【0212】
全体としは、下表20〜23の抑制アッセイで示されるように、最も強力なmAbであるmAb4−2bは、CA46クローン原性能力を100倍低減させた(Kikushige Y,et al.,Cancer Cell 20(2):246−59(2011);Martinez−Climent JA,Haematol 95(2):293−302(2010);Franken NP,et al.,Nature Protocols 1:2315−2319(2006))。
【0213】
抑制アッセイ
細胞を24ウエルプレートに播種し、下表20〜23に示すように、1:2系列希釈を使って96ウエルプレートに移した。MTTアッセイを実施する。各値は8ウエルの平均/希釈点である。ng=増殖なし、生存細胞なし。
【表20】
【表21】
【表22】
【表23】
【0214】
実施例12
限界希釈アッセイおよび細胞密度実験
1マイクログラムのmAb4を含むまたは含まない限界希釈アッセイは、10日までに、顕著な細胞生存および増殖特性を示した。結果を下表24に示す。値は、(mAb4処理の場合の%生存細胞)/(対照mAb処理の場合の%生存細胞)として示した。48と24培養プレートとの間の培地体積の倍増の間の細胞増殖における、大きな差異に留意されたい。細胞を、96ウエルプレート中の100マイクロリットル、48ウエルプレート中の250マイクロリットル、および24ウエルプレート中の500マイクロリットルで播種した。500〜1000播種細胞まで、顕著な増殖抑制が観察された。これは、mAb4により死滅させられる、幹細胞により産生されるパラクリン増殖因子に対する効果を示していると考えられる。これらの実験はまた、異なる細胞密度で細胞増殖を救済できるいくつかの異なる幹細胞集団が異なる頻度で存在することを示唆している。
【表24】
【0215】
統計分析:スチューデントのt検定を使って示されたデータポイントの統計的妥当性を評価した。全データポイントは、それぞれ3つの実験が行われた12ウエルから構成され、代表的な平均値が示される。第1の分析は、(mAb4処理の場合の%生存細胞)/(対照mAb処理の場合の%生存細胞)を比較する各データポイントによって示される。示した18のデータポイントぞれぞれは、p<0.5の統計的レベルに到達した。第2の分析は、比較細胞株のそれぞれで対になっている48ウエル生存細胞数と、24ウエル生存細胞数との間で統計的差異を示した。これらもまたいずれの場合でもp<0.5を超えた。増殖抑制調査では、MTT生存数は、抑制が播種細胞の数に反比例することを示した。対照mIgM−、mIgG+発現細胞に対する類似の実験は、何らの生物学的効果も示さず、ポリクローナルウサギまたはヤギ抗IgMは、抗クローン原性ではなかった。これは、特異性決定抑制が、細胞膜近くの新エピトープ中に位置することを示唆している。
【0216】
増殖曲線:mIgMB細胞株を、1μg/mlのmAb4−2bの存在下で増殖させた(表20〜23に示す)。細胞を20細胞/mlで播種した。プレートを2日毎に収集し、生存細胞をMTTアッセイにより測定した。相対的MTT ODを各時点でプロットした。アポトーシスを生存細胞の非存在(10日目)によりスコア化した。これは、抗体の非存在下で生存細胞の再クローニング培養により求めた。結果を
図6A〜6Fに示す。
図6A、6B、および6D〜6Fに示すように、アイソタイプ対応対照抗体および対照抗PDmAb2の両方とも、CRL1648細胞株の増殖抑制を誘導しなかった。mIgG発現対照B細胞株、CRL2632が使われた場合、
図6Cに示すように、mAb4は、mIgGに結合せず、この細胞株の増殖を抑制しなかった。
図6D〜6Fは、mAb4が、mIgM発現B細胞株、CRL1648、CRL2958、CRL1596およびCRL1432の増殖抑制を誘発したことを示す。
【0217】
モノクローナル抗体mAb4による、mIgM発現B細胞株CRL1648の、10日間にわたる増殖の抑制を、20細胞/ウエル、100細胞/ウエル、250細胞/ウエル、500細胞/ウエルおよび1,000細胞/ウエルの細胞希釈で試験した。
図7に示すように、モノクローナル抗体mAb4は、mIgM発現B細胞株CRL1648の増殖を10日の期間抑制したが、播種細胞濃度が>500細胞/ウエルの場合は、抑制しなかった。
【0218】
実施例13
補体溶解およびADCC
目的は、これらのモノクローナル抗体の、ヒト補体(C’)(IgG2、IgG3およびIgM)およびヒトエフェクター細胞媒介抗体依存性細胞介在性細胞傷害(ADCC)(IgG2およびIgG3)に関する免疫細胞傷害能力を評価することであった(Paneerselvam M,et al.,J Immunol 136:2534−2541(1986);Welt S,et al.,Clin Immunol Immunopathol 45:214−229(1987))。これらのモノクローナル抗体はマウスモノクローナル抗体であるので、この分析は、部分的には、C’またはADCCがこれらのマウス抗体で陽性であるかどうか、およびしたがって、ヒト化抗体の臨床製品開発で保持すべき重要な因子であるかどうかを判定するのを支援するためにのみ用いられた。マウスIgG1モノクローナル抗体はそれらのIgサブクラスのために、エフェクター機能の能力を持たない可能性があるが、狙いは、何れかの個別のクローンが優れた活性を有するかどうかを判定することである。
【0219】
最初の結合調査に基づいて更なる分析のために保存された最終パネルのクローンから収集したアイソタイプの最終の分析では、4つのIgG2bおよび2つのIgG1モノクローナル抗体があり、これらは抗mIgM−mAb1−1、mAb2−2b、mAb3−2b、およびmAb4−2bを含んだ。アッセイが37℃で行われ、内部移行が急速に起こったので、これらの抗体のいずれもアッセイでは陽性ではなかった。これらの結果は急速内部移行の結果であったので、それらの抗体は、これらの免疫機序を媒介すると報告されている、近位ドメインエピトープに結合する他の抗体とは明確な対照をなす。これらの結果はまた、低抗原レベル、抵抗因子またはアイソタイプに起因する可能性もあると思われる(Paneerselvam M,et al.,J Immunol 136:2534−2541(1986);Welt S,et al.,Clin Immunol Immunopathol 45:214−229(1987))。リツキシマブおよびポリクローナルウサギ抗ヒトIgMを、陽性対照として使用した。
【0220】
医薬製剤
ポリペプチドまたは抗体の治療製剤は、所望の純度を有するポリペプチドを、当該技術分野で通常用いられる任意選択の「薬学的に許容される」キャリア、賦形剤または安定剤(これらはすべて「賦形剤」と呼ばれる)、すなわち、緩衝剤、安定剤、保存剤、等張化剤、非イオン性界面活性剤、抗酸化剤およびその他の種々の添加剤と混合することにより、凍結乾燥製剤あるいは水溶液として保管用に調製できる。Remington’s Pharmaceutical Sciences,16th edition,Osol,Ed.(1980)を参照されたい。このような添加剤は、用いられる服用量および濃度においてレシピエントに無毒である必要がある。
【0221】
緩衝剤は、pHを生理的条件に近い範囲に維持するのに役立つ。緩衝剤は約2mM〜約50mMの範囲の濃度で存在するのが好ましい。本発明で使用するのに適切な緩衝剤には、有機、無機両方の酸およびその塩、例えば、クエン酸塩緩衝剤(例えば、クエン酸一ナトリウム−クエン酸二ナトリウム混合物、クエン酸−クエン酸三ナトリウム混合物、クエン酸−クエン酸一ナトリウム混合物など)、コハク酸塩緩衝剤(例えば、コハク酸−コハク酸一ナトリウム混合物、コハク酸−水酸化ナトリウム混合物、コハク酸−コハク酸二ナトリウム混合物など)、酒石酸塩緩衝剤(例えば、酒石酸−酒石酸ナトリウム混合物、酒石酸−酒石酸カリウム混合物、酒石酸−水酸化ナトリウム混合物など)、フマル酸塩緩衝剤(例えば、フマル酸−フマル酸一ナトリウム混合物など)、フマル酸塩緩衝剤(例えば、フマル酸−フマル酸一ナトリウム混合物、フマル酸−フマル酸二ナトリウム混合物、フマル酸一ナトリウム−フマル酸二ナトリウム混合物など)、グルコン酸塩緩衝剤(例えば、グルコン酸−グルコン酸ナトリウム混合物、グルコン酸−水酸化ナトリウム混合物、グルコン酸−グルコン酸カリウム混合物など)、シュウ酸塩緩衝剤(例えば、シュウ酸−シュウ酸ナトリウム混合物、シュウ酸−水酸化ナトリウム混合物、シュウ酸−シュウ酸カリウム混合物など)、乳酸塩緩衝剤(例えば、乳酸−乳酸ナトリウム混合物、乳酸−水酸化ナトリウム混合物、乳酸−乳酸カリウム混合物など)および酢酸塩緩衝剤(例えば、酢酸−酢酸ナトリウム混合物、酢酸−水酸化ナトリウム混合物など)などが挙げられる。さらに、リン酸塩緩衝剤、ヒスチジン緩衝剤、およびトリスなどのトリメチルアミン塩が挙げられることもある。
【0222】
微生物の増殖を遅らせるために保存剤を添加してもよく、通常、0.2%〜1%(w/v)の範囲の量で添加できる。本開示で使用するのに適した保存剤には、フェノール、ベンジルアルコール、メタクレゾール、メチルパラベン、プロピルパラベン、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、ハロゲン化ベンザルコニウム(例えば、塩化物、臭化物またはヨウ化物)、塩化ヘキサメトニウム、およびメチルパラベンまたはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、および3−ペンタノールが挙げられる。「安定剤」として知られていることもある等張化剤は、本発明の液体組成物の等張性を確保するために添加でき、多価糖アルコール、好ましくは三価以上の糖アルコール、例えば、グリセリン、エリスリトール、アラビトール、キシリトール、ソルビトールおよびマンニトールなどが挙げられる。
【0223】
安定剤は、機能的に、増量剤から、治療剤を可溶化するあるいは変性または容器壁への付着を防ぐのに役立つ添加剤までの範囲に及び得る、広範な種類の賦形剤を意味する。典型的な安定剤は、多価糖アルコール(上で列挙した)、アルギニン、リシン、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アラニン、オルニチン、L−ロイシン、2−フェニルアラニン、グルタミン酸、トレオニンなどのアミノ酸;イノシトールなどのシクリトールを含む、ラクトース、トレハロース、スタキオース、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、リビトール、ミオイノシトール(myoinisitol)、ガラクチトール、グリセロールなどの有機糖または糖アルコール;ポリエチレングリコール;アミノ酸ポリマー;尿素、グルタチオン、チオクト酸、チオグリコール酸ナトリウム、チオグリセロール、α−モノチオグリセロールおよびチオ硫酸ナトリウムなどの含硫還元剤;低分子量ポリペプチド(すなわち、10残基未満);ヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;キシロース、マンノース、果糖およびブドウ糖などの単糖類;ラクトース、マルトースおよびショ糖などの二糖類;ラフィノースなどの三糖類;ならびにデキストランなどの多糖類であってよい。安定剤は、活性タンパク質重部あたり、0.1〜10,000重量の範囲で存在してよい。
【0224】
非イオン性界面活性剤または洗剤(「湿潤剤」としても知られる)は、治療薬を可溶化するのを容易にするために、および治療タンパク質を撹拌誘発凝集から保護するために添加でき、タンパク質の変性を起こすことなく製剤を表面剪断応力に曝すことも可能にする。適切な非イオン性界面活性剤には、ポリソルベート(20、80、など)、ポロクサマー(polyoxamer)(184、188など)、プルロン酸ポリオール、ポリオキシエチレンソルビタンモノエーテル(ツイーン(登録商標)−20、ツイーン(登録商標)−80、など)が挙げられる。非イオン性界面活性剤は、約0.05mg/ml〜約1.0mg/ml、好ましくは、約0.07mg/ml〜約0.2mg/mlの範囲で存在してもよい。
【0225】
他の種々の賦形剤には、増量剤(例えば、デンプン)、キレート化剤(例えばEDTA)、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、メチオニン、ビタミンE)、および共溶媒が挙げられる。本明細書の製剤はまた、治療される特定の適応症に必要な1種または複数種の活性化合物、好ましくは互いに悪影響を及ぼさない相補的活性を持つものを含んでもよい。例えば、免疫抑制剤をさらに提供するのが望ましい場合がある。このような分子は、意図する目的のために有効な量で組み合わされて適切に存在する。また活性成分は、例えば、コアセルべーション技術または界面重合化により調製されるマイクロカプセル中に、例えば、コロイド状ドラッグデリバリーシステム(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフィア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子およびナノカプセル)における、ヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチンマイクロカプセルおよびポリ(メチルメタクリレート)マイクロカプセル中にそれぞれ封入でき、またはマクロエマルジョンに封入できる。このような技術は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,16th edition,Osol,Ed.(1980)に開示されている。
【0226】
インビボ投与に用いられる製剤は無菌でなければならない。無菌化は、例えば、無菌濾過膜を介する濾過によって、容易に達成される。徐放製剤を調製できる。徐放製剤の好適例には、抗体を含む固体疎水性ポリマーの半透過性マトリックスが挙げられ、このマトリックスは、成形品、例えば、フィルム、またはマイクロカプセルの形態である。徐放マトリックスの例には、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ/2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号)、L−グルタミン酸とエチル−L−グルタメートのコポリマー、非分解性エチレン酢酸ビニル、分解性乳酸−グリコール酸コポリマー、例えば、LUPRON DEPO(商標)(乳酸−グリコール酸コポリマーおよび酢酸ロイプロリドから構成される注射可能微粒子)、およびポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸が挙げられる。エチレン酢酸ビニルおよび乳酸−グリコール酸などのポリマーは100日間を越える長期間にわたる分子の放出が可能であるが、特定のヒドロゲルはより短い時間でタンパク質を放出する。封入された抗体が長期間にわたって体内に残る場合は、それらは37℃での湿気への暴露の結果として変性するかまたは凝集し、結果として生物活性がなくなり、場合によっては免疫原性が変化する。
【0227】
関与する機構に応じて安定化のための合理的な方法を考案できる。例えば、凝集機構がジスルフィド交換による分子間S−−S結合形成であると見出される場合、スルフヒドリル残基を修飾する、酸性溶液から凍結乾燥する、湿分含量を制御する、適切な添加物を使用する、および特殊ポリマーマトリックス組成物を開発することにより安定化を達成できる。
【0228】
特定の障害または状態の処置において効果的であると思われる治療ポリペプチド、抗体、またはこれらの断片の量は、障害または状態の性質に依存し、標準的臨床技術により決定できる。可能な場合には、ヒトで試験する前に、用量反応曲線および最初はインビトロで、その後有用な動物モデル系で本発明の医薬組成物を決定することが望ましい。
【0229】
好ましい実施形態では、治療ポリペプチド、抗体またはこれらの断片の水溶液が皮下注射により投与される。それぞれの用量は、約0.5μg〜約50μg/kg体重、より好ましくは約3μg〜約30μg/kg体重の範囲であってよい。
【0230】
皮下投与の投薬スケジュールは、疾患のタイプ、疾患の重症度、および対象の治療薬に対する感受性を含む多くの臨床因子に応じて月1回〜毎日で変化してもよい。
【0231】
抗B細胞mIgM抗体の診断的使用
本発明の抗体は、修飾、すなわち、共有結合がB細胞mIgMに対する結合を妨害しないように、抗体への任意のタイプの分子の共有結合により修飾されている誘導体を含む。例えば、限定するものではないが、抗体誘導体は、例えば、ビオチン化、HRP、または何れか他の検出可能成分により修飾されている抗体を含む。
【0232】
本発明の抗体を使用して、例えば、限定されないが、インビトロおよびインビボの両方の診断法を含み、BCRCを精製または検出できる。例えば、抗体は、定性的におよび定量的に生物試料中のBCRCのレベルを測定するためのイムノアッセイでの用途がある。例えば、Harlow,et al.,Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,2nd ed.(1988)を参照されたい。この文献は参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0233】
以降でさらに詳細に考察するように、本発明の抗体は、単独でまたはその他の組成物と組み合わせて使用できる。抗体は、組換えによりN−またはC−末端で異種のポリペプチドにさらに融合される、またはポリペプチドまたはその他の組成物にコンジュゲート(共有結合的なでおよび非共有結合的なコンジュゲーションを含む)されてよい。例えば、本発明の抗体は、検出アッセイでの標識として有用な分子に組換えにより融合またはコンジュゲートされてよい。
【0234】
本発明は、診断薬にコンジュゲートした抗体またはその断片をさらに包含する。抗体を診断的に使って、例えば、特定細胞、組織、または血清中の対象標的の発現を検出する;または、例えば、所定の処置計画の有効性を決定する臨床試験手順の一部として、免疫性応答の発生または進行をモニターできる。検出は、検出可能な物質に抗体を結合させることにより容易にできる。検出可能な物質の例としては、種々の酵素、補欠分子団、蛍光材料、発光材料、生物発光材料、放射性材料、種々のポジトロン放出トモグラフィを使用するポジトロン放出金属、および非放射性常磁性金属イオンが挙げられる。検出可能な物質を、当該技術分野において既知の技術を使用して介在物(例えば、当該技術分野において既知のリンカーなど)により、抗体(またはその断片)に直接的にまたは間接的に結合またはコンジュゲートできる。酵素標識の例としては、ルシフェラーゼ(例えば、ホタルルシフェラーゼおよび細菌ルシフェラーゼ;米国特許第4,737,456号)、ルシフェリン、2,3−ジヒドロフタラジンジオン、リンゴ酸脱水素酵素、ウレアーゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRPO)などのペルオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、糖酸化酵素(例えば、グルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、およびグルコース−6−ホスフェート脱水素酵素)、ヘテロ環式オキシダーゼ(ウリカーゼおよびキサンチンオキシダーゼなど)、ラクトペルオキシダーゼ、ミクロペルオキシダーゼなどが挙げられる。
【0235】
酵素を抗体にコンジュゲートする技術は、Methods in Enzymology,Langone,et al.,eds.pp.147−66,Academic Press(1981)中の、O’Sullivan,et al.,”Methods for the Preparation of Enzyme−Antibody Conjugates for Use in Enzyme Immunoassay,”に記載されている。例えば、本発明による診断薬として使用するために抗体にコンジュゲートできる金属イオンに関しては、米国特許第4,741,900号を参照されたい。適切な酵素の例としては、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、またはアセチルコリンエステラーゼが挙げられ;適切な補欠分子団複合体の例としては、ストレプトアビジン/ビオチンアビジン/アセチルコリンエステラーゼが挙げられ;適切な蛍光材料の例としては、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセン、ダンシルクロリドまたはフィコエリトリンが挙げられ;発光物質の一例には、ルミノールが挙げられる;生物発光材料の例としては、ルシフェラーゼ、ルシフェリン、およびエクオリンが挙げられ;および適切な放射性の材料の例としては、
125I、
131I、
111Inまたは
99Tcが挙げられる。
【0236】
場合によっては、標識は抗体と間接的にコンジュゲートされる。当業者なら、これを実現する種々の技術を知っているであろう。例えば、抗体はビオチンとコンジュゲートでき、前述の3つの広範なカテゴリーの何れかの標識をアビジンとコンジュゲートでき、逆もまた同様である。ビオチンは選択的にアビジンに結合し、したがって、標識は間接的方法で抗体とコンジュゲートできる。あるいは、抗体との標識の間接的コンジュゲーションを行うために、抗体を小さいハプテン(例えば、ジグロキシン(digloxin))とコンジュゲートさせて、前述の異なるタイプの標識の1つを抗ハプテン抗体(例えば、抗ジグロキシン抗体)とコンジュゲートさせる。このようにして、標識の抗体との間接的コンジュゲーションを実現できる。
【0237】
本発明の別の実施形態では、抗体は標識を必要とせず、その存在は、その抗体に結合する標識抗体を使って検出できる。
【0238】
本発明の抗体を、任意の既知のアッセイ、例えば、競合的結合アッセイ、直接および間接サンドイッチ法、および免疫沈降アッセイで採用できる。Zola,Monoclonal Antibodies:A Manual of Techniques,pp.147−158.CRC Press(1987)を参照されたい。
【0239】
競合結合アッセイは、限られた量の抗体との結合について試験試料と競合する標識された標準物の能力に依存する。試験試料中の標的の量は、抗体に結合する標準物の量に反比例する。結合する標準物の量の決定を容易にするために、通常、抗体は競合の前後で不溶化される。その結果、抗体に結合する標準物および試験試料は、結合せずに残る標準物および試験試料から便宜的に分離できる。
【0240】
サンドイッチ法は2つの抗体の使用を含み、異なる免疫原性部分、またはエピトープ、または検出されるべきタンパク質にそれぞれが結合可能である。サンドイッチ法では、分析される試験試料は固体支持上に固定された第一抗体により結合され、その後、第二抗体が試験試料に結合し、それにより不溶性の3つの部分からなる複合体を形成する。例えば、米国特許第4,376,110号を参照されたい。第二抗体はそれ自体が検出可能な成分で標識されてよく(直接サンドイッチ法)または検出可能な成分で標識された抗免疫グロブリン抗体を使って測定される(間接サンドイッチ法)。例えば、1つのタイプのサンドイッチ法はELISAアッセイであり、この場合、検出可能な成分は酵素である。
【0241】
抗体は固体支持体に取り付けることができ、これは、標的抗原のイムノアッセイまたは精製に特に有用である。このような固体支持体としては、ガラス、セルロース、ポリアクリルアミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニルまたはポリプロピレンが挙げられるが、これらに限定されない。このプロセスでは、抗体は、当該技術分野において周知の方法を使って、固体支持体、例えば、セファデックス(商標)樹脂または濾紙などに固定される。固定化抗体は精製されるべき標的を含む試料と接触され、その後、支持体は、試料中の精製されるべき標的(固定化抗体に結合される)以外の実質的に全ての材料を除去する好適な溶媒で洗浄される。最終的に、支持体は、抗体から標的を遊離させる、グリシン緩衝液などの別の好適な溶媒で洗浄される。
【0242】
B細胞mIgMに特異的に結合する標識された抗体、および誘導体ならびにその類似体を使って、診断目的のために、B細胞悪性病変の異常な発現および/または活性に関連する疾患、障害、および/または状態を検出、診断、またはモニターできる。本発明は、B細胞mIgMの異常発現の検出を提供し、(a)B細胞mIgMに特異的な1種または複数種の本発明の抗体を使って個体の細胞または体液中のB細胞mIgMの発現をアッセイすること、および(b)遺伝子発現のレベルを標準発現レベルと比較し、それにより、標準発現レベルに比べてアッセイしたB細胞mIgM発現レベルの増加または減少が異常発現の指標となること、を含む。
【0243】
試料、例えば、体液または組織試料中のB細胞mIgMの存在および/またはレベルを検出するために、抗体を使用することができる。検出方法は、試料をB細胞mIgM抗体と接触させること、および試料に結合した抗体の量を決定することを含んでよい。免疫組織化学に対しては、試料は新鮮であるかまたは凍結されていてよく、またはパラフィン中に包埋され、例えば、ホルマリンなどの防腐剤で固定されていてもよい。
【0244】
本発明は、障害を診断するための診断アッセイを提供し、(a)1種または複数種の本発明の抗体を使って個体のB細胞または体液中のB細胞mIgMの発現をアッセイすること、および(b)遺伝子発現のレベルを標準発現レベルと比較し、それにより、標準発現レベルに比べてアッセイした遺伝子発現レベルの増加または減少が特定の障害の指標となること、を含む。
【0245】
本発明の抗体を使い、当業者に既知の典型的な免疫組織学的方法を使って生物試料中のタンパク質レベルをアッセイできる(例えば、Jalkanen,et al.,J Cell Biol 101:976(1985);Jalkanen,et al.,J Cell Biol 105:3087(1987)を参照されたい)。そのタンパク質遺伝子発現の検出に有用な抗体ベースの他の方法には、イムノアッセイ、例えば、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)およびラジオイムノアッセイ(RIA)が挙げられる。適切な抗体アッセイ標識は、当技術分野において既知であり、酵素標識、例えば、グルコースオキシダーゼ;放射性同位元素、例えば、ヨウ素(
131I、
125I、
121I)、炭素(
14C)、硫黄(
35S)、トリチウム(
3H)、インジウム(
112In、
111In)、およびテクネチウム(
99Tc);発光標識、例えば、ルミノール;および蛍光標識、例えば、フルオレセイン、ローダミン、およびビオチンが含まれる。免疫シンチグラフィーを使って、放射性同位元素結合同位体の場所を特定できる。
【0246】
本発明の一態様は、動物、好ましくは哺乳動物、最も好ましくはヒトにおけるB細胞mIgMの異常発現に関連する疾患または障害の検出および診断である。一実施形態では、診断は、a)B細胞mIgMに特異的に結合する標識分子の有効量を対象に投与すること(例えば、非経口的に、皮下に、または腹腔内に);b)投与後に、ポリペプチドが発現される対象の部位で標識分子を選択的に濃縮させる(および非結合標識分子がバックグラウンドレベルまで除去される)期間待つこと;c)バックグラウンドレベルを決定すること;およびd)対象中の標識分子を検出し、バックグラウンドレベルを超える標識分子の検出により対象がB細胞mIgMの異常発現に関連する特定の疾患または障害を有すると示されること、を含む。バックグラウンドレベルは、検出された標識分子の量を、特定の系について以前に決定した標準値と比較することを含む、種々の方法により決定できる。
【0247】
対象のサイズおよび使われるイメージングシステムが、診断画像の生成に必要なイメージング部分の量を決定することは、当技術分野で理解されよう。放射性同位元素成分の場合には、ヒト対象に対し、注入される放射能の量は、通常、約5〜20ミリキュリーの範囲
99Tcであろう。標識抗体または抗体断片は、その後、特定のタンパク質を含む細胞の部位で選択的に蓄積する。インビボでのイメージングに関しては、Tumor Imaging:The Radiochemical Detection of Cancer,Burchiel,et al.,eds.,Masson Publishing(1982)中の、Burchiel,et al.,”Immunopharmacokinetics of Radiolabeled Antibodies and Their Fragments.” Chapter 13に記載されている。
【0248】
使用される標識のタイプおよび投与方法を含むいくつかの変数に応じて、投与後に標識分子が選択的に対象中の部位で濃縮され、非結合標識分子がバックグラウンドレベルにまで除去されることを許容する時間間隔は、6〜48時間、6〜24時間、または6〜12時間である。別の実施形態では、投与後の時間間隔は、5〜20日または5〜10日である。
【0249】
一実施形態では、疾患または疾患の診断方法を繰り返すことにより、疾患または障害のモニタリングが行われる。例えば、最初の診断の1ヶ月後、最初の診断の6ヶ月後、最初の診断の1年後など。
【0250】
インビボスキャン関する当該技術分野において既知の方法を使用して、患者における標識分子の存在を検出できる。これらの方法は使われる標識のタイプに依存する。当業者なら特定の標識を検出する適切な方法を決定できるであろう。本発明の診断法で使用できる方法および装置としては、コンピュータ断層撮影(CT)、全身スキャン、例えば、陽電子放出断層撮影(position emission tomography)(PET)、磁気共鳴画像(MRI)、および超音波検査が挙げられるが、これらに限定されない。
【0251】
特定の実施形態では、分子は放射性同位元素で標識され、患者において、照射応答性手術器具(米国特許第5,441,050号)を使って検出される。別の実施形態では、分子は蛍光化合物で標識され、患者において、蛍光応答性走査装置を使って検出される。別の実施形態では、分子はポジトロン放出金属で標識され、患者(patent)において、陽電子放出断層撮影を使って検出される。さらに別の実施形態では、分子は常磁性標識で標識され、患者において、磁気共鳴画像(MRI)を使って検出される。
【0252】
別の態様では、本発明は、特定の患者の細胞または体液中のB細胞mIgMの存在に関して試験することにより、患者がB細胞リンパ腫または白血病であるかどうかを診断する方法を提供する。一実施形態では、方法は、対象から細胞または体液試料を集めること、体液をB細胞mIgMの存在に関し分析すること、その量を、正常細胞または体液に対し決定または試験されたレベルと比較すること、および体液中のB細胞mIgMの発現レベルに基づいて患者がB細胞リンパ腫または白血病であるかどうかを判定すること、を含む。B細胞mIgMの決定されたレベルは、文献値に基づく既知の量であってもよく、または前もって正常細胞または体液中の量を測定することにより決定してもよい。特に、特定の体液中のB細胞mIgMの決定は、患者における、好ましくは疾患発病前の、特定の、早期の疾患の検出を可能にする。本方法を使って診断可能な疾患としては、本明細書で記載のB細胞悪性病変が挙げられるが、これに限定されない。好ましい実施形態では、体液は末梢血または末梢血白血球である。
【0253】
本発明の抗体はキットで、すなわち、所定量の試薬と診断アッセイを行うためのインストラクションのパッケージ化された組み合わせで提供できる。抗体が酵素で標識される場合、キットは、酵素に必要な基質および補助因子(例えば、検出可能な発色団またはフルオロフォアを提供する基質前駆物質)を含んでよい。さらに、安定剤、緩衝液(例えば、ブロック緩衝液または溶解緩衝液)などの他の添加物が含まれてよい。アッセイの感度を実質的に最適化する試薬の溶液中の濃度を得るために、種々の試薬の相対量は広範に変わってもよい。特に、溶解時に適切な濃度の試薬溶液が得られる賦形剤を含む試薬は、通常、凍結乾燥された乾燥粉末として提供できる。
【0254】
抗B細胞mIgM抗体の治療上の使用
本発明の抗体は哺乳動物を処置するために使用されることが意図されている。一実施形態では、抗体は、例えば、前臨床のデータを得るために非ヒト哺乳動物に投与される。治療される代表的な非ヒト哺乳動物には、非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、げっ歯類および前臨床調査が行われるその他の哺乳動物が含まれる。このような哺乳動物は、抗体で処置される疾患用の樹立動物モデルであってもよく、または対象抗体の毒性試験に使用されてもよい。これらの実施形態のそれぞれでは、用量漸増調査は哺乳動物で行われる。
【0255】
治療成分をコンジュゲートしたまたはしない、単独でまたは細胞傷害性の因子(単一または複数)と組み合わせて投与される抗体を、治療薬として使用してもよい。本発明は抗体ベースの治療に関し、この治療は、B細胞リンパ腫または白血病を処置するために、本発明の抗体を動物、哺乳動物、またはヒトに投与することを含む。動物または対象は、特定の処置を必要としている動物、例えば、特定の障害、例えば、B細胞リンパ腫または白血病に関連する疾患であると診断されている動物であってよい。B細胞mIgMに対する抗体は、限定されないが、雌ウシ、ブタ、ウマ、ニワトリ、ネコ、イヌ、非ヒト霊長類など、およびヒトを含む動物におけるB細胞リンパ腫または白血病に有用である。例えば、治療的に許容可能な用量の本発明の抗体または複数抗体、または本発明の抗体の混合物を投与すること、または様々なソースの他の抗体と組み合わせて投与することにより、処置される哺乳動物での病徴を減らすかまたは取り除くことができる。
【0256】
本発明の治療化合物としては、本発明の抗体(本明細書で記載の断片、類似体およびこれらの誘導体を含む)および後述する本発明の抗体をコードする核酸(本明細書で記載の断片、類似体およびこれらの誘導体ならびに抗イディオタイプの抗体)が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の抗体を使用して、B細胞mIgMの異常発現および/または活性に関連する、限定されないが、本明細書で記載の疾患、障害、または状態の何れか1種または複数種の疾患、障害、または状態を処置、抑制、または予防できる。B細胞mIgMの異常発現および/または活性に関連する疾患、障害、または状態の処置および/または予防には、限定されないが、これらの疾患、障害、または状態に関連する少なくとも1つの症状を緩和することが含まれる。本発明の抗体は、当技術分野において既知のまたは本明細書で記載の薬学的に許容可能な組成物中で提供できる。
【0257】
本発明の抗B細胞mIgM抗体は、種々の疾患で治療的に使用できる。本発明は、哺乳動物でB細胞悪性疾患を予防または処置する方法を提供する。前記方法は、疾患を予防するまたは処置する量の抗B細胞mIgM抗体を哺乳動物に投与することを含む。抗B細胞mIgM抗体はB細胞mIgMに結合し、細胞増殖を抑制し、アポトーシスを誘導する。
【0258】
B細胞mIgMの異常発現および/または活性に関連する疾患または障害の処置、抑制、および予防に効果的であると思われる抗体の量は、標準的臨床技術により決定できる。投与量は、治療する疾患のタイプ、疾患の重症度および経過、抗体が予防目的または治療目的で投与されるのかどうか、前治療、患者の臨床歴および抗体に対する応答、ならびに主治医の慎重さに依存するであろう。抗体は、疾患に合った治療計画で、例えば、疾患状態を回復させるために単回または複数回用量を1日〜数日間で、またはアレルギーまたは喘息を予防するために定期的用量を長期間にわたり投与できる。さらに、所望により、インビトロアッセイを用いて最適な用量範囲を特定できる。製剤で使用される正確な用量は、投与経路、および疾患または障害の重篤度にも依存し、開業医の判断およびそれぞれの患者の状況に基づいて決定されなければならない。有効用量は、インビトロまたは動物モデル試験系から導出される用量反応曲線から外挿してもよい。
【0259】
抗体の場合、患者に投与される用量は通常、0.1mg/kg患者の体重〜150mg/kg患者の体重である。好ましくは、患者に投与される用量は、0.1mg/kg患者の体重〜20mg/kg患者の体重、より好ましくは1mg/kg患者の体重〜10mg/kg患者の体重である。一般に、ヒト抗体は、外来性ポリペプチドに対する免疫応答に起因して、ヒトの身体中でその他の種由来の抗体よりも長い半減期を有する。したがって、より少ない用量のヒト抗体およびより少ない頻度の投与が可能である場合が多い。さらに、例えば、脂質化などの修飾により抗体の取り込みおよび組織浸透を高めることにより、本発明の抗体の投与量および投与頻度を減らすことができる。数日間にわたる反復投与の場合は、状態に応じて、病徴の所望の抑制が起こるまで、処置が持続される。しかし、他の投与計画が有用な場合がある。この治療の進行は、従来技術およびアッセイにより容易にモニターされる。抗LFA−1または抗ICAM−1抗体の例示的な投与計画は、国際公開第94/04188号に開示されている。
【0260】
本発明の抗体は、組成物の形態であってもよいが、良質の医療のための原則に準拠するように、処方、服用および投与すべきである。これに関して考慮すべき因子には、処置される特定の障害、処置される特定の哺乳動物、個別患者の臨床状態、障害の原因、薬剤送達部位、投与方法、投与スケジュール、およびその他の開業医に既知の因子が挙げられる。投与される抗体組成物の「治療有効量」は、このような考察により決定され、疾患または障害を予防する、回復させる、または処置するのに必要な最少量である。抗体は、必要ではないが、任意選択で、問題になっている障害を予防するまたは処置するために現在使用されている1種または複数種の薬剤と共に処方される。このような他の薬剤の有効量は、製剤中に存在する抗体の量、障害または処置のタイプ、および上記で考察した他の因子に依存する。これらは一般に同じ用量でおよび上記で使用されるような投与経路により、またはこれまで用いられている用量の約1〜99%量で用いられる。
【0261】
本発明の抗体は、他のモノクローナルまたはキメラ抗体キメラ抗体と組み合わせて、または、例えば、抗体と相互作用するエフェクター細胞の数と活性を高めるのに役立つリンホカインもしくは造血因子(例えば、Il−2、IL−3、IL−7、およびIFN−γ)と組み合わせて、有利に利用できる。
【0262】
本発明の抗体は、単独でまたは他のタイプの処置、例えば、免疫療法、化学療法、および放射性同位元素と組み合わせて投与できる。
【0263】
一態様では、抗体は実質的に精製される(例えば、その効果を制限するまたは好ましくない副作用を起こす物質を含まない)。種々のデリバリーシステムが知られており、本発明の抗体の投与に使用できる。これらには、例えば、リポソーム、微小粒子、マイクロカプセルに封入された注射剤、化合物を発現できる組換え細胞、受容体依存性エンドサイトーシス(例えば、Wu,et al.,J Biol Chem 262:4429(1987)を参照されたい)、レトロウイルスのまたは他のベクターの一部としての核酸の構築、などが含まれる。
【0264】
抗B細胞mIgM抗体は、任意の許容可能な方法で哺乳動物に投与できる。導入方法としては、非経口、皮下、腹腔内、肺内、鼻腔内、硬膜外、吸入、および経口経路、ならびに免疫抑制処置が望ましい場合、病巣内投与、が挙げられるが、これらに限定されない。非経口注入には、筋肉内、皮内、静脈内、動脈内、または腹腔内投与が含まれる。抗体または組成物は、任意の都合のよい経路、例えば、注入またはボーラス注入により、上皮または皮膚粘膜(例えば、口腔粘膜、直腸および腸粘膜)の裏層を通る吸収により投与でき、また、他の生理活性薬剤と共に投与できる。投与は全身性または局所的であってよい。さらに、本発明の治療抗体または組成物を、脳室内注射およびくも膜下腔内注射などの、任意の適当な経路によって中枢神経系に導入することが望ましい場合がある。脳室内注射は、例えば、オマヤレザバーなどの、リザーバに取り付けられた脳室内カテーテルによって容易に行うことができる。さらに、抗体は、特に抗体の用量を減少して、パルス注入により適切に投与される。好ましくは、投薬は注射により与えられ、投与が短期か長期かに一部は依存して、最も好ましくは静脈内または皮下注射により与えられる。
【0265】
例えば、吸入器または噴霧器、およびエアロゾル化剤を含む製剤の使用により、肺内投与を用いることもできる。抗体はまた、乾燥粉組成物の形態で患者の肺に投与されてもよい(例えば、米国特許第6,514,496号を参照されたい)。
【0266】
特定の実施形態では、本発明の治療抗体または組成物を、処置を必要とする領域へ局所的に投与することが望ましい場合がある。これは、限定するものではないが、例えば、局所注入、局所投与、注射により、カテーテルによって、坐剤によって、またはインプラントによって実現でき、インプラントは、サイラスティック(sialastic)膜などの膜、または繊維を含む、多孔性、非多孔性、またはゼラチン状材料であってよい。好ましくは、本発明の抗体を投与する場合、タンパク質が吸収されない材料を使うように注意する必要がある。
【0267】
別の実施形態では、抗体は、小胞中で、特にリポソーム中で送達できる(Langer,Science 249:1527(1990);Treat,et al.,Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancer,Lopez−Berestein,et al.,eds.,pp.353−365(1989);Lopez−Berestein、同上、pp.317−27を参照されたい;概要についても同上文献を参照されたい)。
【0268】
さらに別の実施形態では、抗体は徐放システムで送達できる。一実施形態では、ポンプを用いることができる(Langer,Science 249:1527(1990);Sefton,CRC Crit Ref Biomed Eng 14:201(1987);Buchwald,et al.,Surgery 88:507(1980);Saudek,et al.,N Engl J Med 321:574(1989)を参照されたい)。別の実施形態では、高分子材料を用いることができる(Medical Applications of Controlled Release,Langer,et al.,eds.,CRC Press(1974);Controlled Drug Bioavailability,Drug Product Design and Performance,Smolen,et al.,eds.,Wiley(1984);Ranger,et al.,J Macromol Sci Rev Macromol Chem 23:61(1983)を参照されたい;また、Levy,et al.,Science 228:190(1985);During,et al.,Ann Neurol 25:351(1989);Howard,et al.,J Neurosurg 71:105(1989)も参照されたい)。さらに別の実施形態では、徐放システムを治療標的の近傍に配置できる。
【0269】
本発明はまた、医薬組成物を提供する。このような組成物は、治療有効量の抗体および生理学的に許容可能なキャリアを含む。特定の実施形態では、「生理学的に許容可能な」という用語は、動物での使用、およびより具体的にはヒトでの使用のために連邦政府または州政府の規制当局により承認されているまたは米国薬局方または他の一般に認められている薬局方にリストされていることを意味する。「キャリア」という用語は、治療薬が一緒に投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤、またはビークルを意味する。このような生理的なキャリアは、石油、動物、植物、または人工起源のもの、例えば、ピーナッツオイル、大豆油、ミネラルオイル、ゴマ油などを含む、水および油などの無菌の液体であってよい。医薬組成物が静脈内に投与される場合は、水が好ましいキャリアである。生理食塩水と水性デキストロースおよびグリセリン溶液も、液体キャリア、特に注射可能溶液として使用可能である。適切な医薬賦形剤としては、デンプン、グルコース、ラクトース、ショ糖、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、グリセリンモノステアレート、滑石、塩化ナトリウム、乾燥脱脂乳、グリセリン、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどが挙げられる。必要に応じ、組成物は、少量の湿潤剤もしくは乳化剤、またはpH緩衝剤を含んでもよい。これらの組成物は、溶液、懸濁液、乳剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、徐放製剤などの形態を取ることができる。組成物は、従来の結合剤およびトリグリセリドなどのキャリアとともに坐剤として処方できる。経口製剤には、標準的なキャリア、例えば、医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、ナトリウムサッカリン、セルロース、炭酸マグネシウムなどを含めてよい。適切なキャリアの例は、E.W.Martinによる、”Remington’s Pharmaceutical Sciences”に記載されている。このような組成物は、有効量の抗体を、好ましくは精製された形態で、患者への適切な投与のための形態を与えるような適量のキャリアとともに含む。製剤は、投与方法に適合する必要がある。
【0270】
一実施形態では、組成物は、人間に対する静脈内投与に適応する医薬組成物として通常の方法に従って処方される。通常、静脈内投与用組成物は、無菌等張水性緩衝液中の水溶液である。組成物は、必要に応じて、注射の部位での疼痛を緩和するための可溶化剤およびリグノカインなどの局所麻酔剤を含んでもよい。通常、成分は、例えば、活性薬剤の量を表示するアンプルまたは小袋などの密閉容器中の凍結乾燥粉末もしくは無水濃縮物として、別々にもしくは一緒に混合して単位剤形で供給される。組成物が注入によって投与される場合、無菌の医薬品グレードの水または生理食塩水を含む注入ボトルで投薬可能である。組成物が注射によって投与される場合、投与前に成分が混合されるように、注射用無菌水または生理食塩水のアンプルが提供され得る。
【0271】
本発明はまた、本発明の医薬組成物の1種または複数種の成分で充填された1つまたは複数の容器を含む医薬パックまたはキットを提供する。任意選択で、医薬品もしくは生物学的製品の製造、使用または販売を規制する政府機関により定められた形式の、ヒトへの投与のための製造、使用または販売についてその機関によって承認されていることを示す注意書きをこのような容器(単一または複数)に添付できる。
【0272】
さらに、本発明の抗体は、種々のエフェクター分子、例えば、異種のポリペプチド、薬剤、放射性ヌクレオチド、炭水化物、マイクロRNAおよびDNA、合成ヌクレオチドを含むヌクレオチド、または毒素にコンジュゲートできる。例えば、国際公開第WO92/08495号、同第WO91/14438号、同第WO89/12624号、米国特許第5,314,995号、および欧州特許出願第EP396,387号を参照されたい。抗体またはその断片を、治療成分、例えば、細胞毒素(例えば、細胞分裂停止剤または細胞破壊剤)、治療薬、または放射性金属イオン(例えば、α放射体、例えば、213Bi)にコンジュゲートできる。細胞毒素剤または細胞傷害性薬物は、細胞にとっては有害である任意の薬剤を含む。実施例としては、パクリタキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テニポシド(tenoposide)、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1−デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、プロプラノロール、およびピューロマイシンならびにこれらの類似体または同族体が挙げられる。治療薬としては、代謝拮抗物質(例えば、メトトレザト、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、シタラビン、5−フルオロウラシルデカルバジン)、アルキル化剤(例えば、メクロレタミン、チオテパクロラムブシル、メルファラン、カルムスチン(BSNU)およびロムスチン(CCNU)、シクロトスファミド、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンC、およびシス−ジクロロジアミン白金(II)(DDP)シスプラチン)、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン(以前のダウノマイシン)およびドキソルビシン)、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン(以前のアクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシン、およびアントラマイシン(AMC))、有糸分裂阻害薬(例えば、ビンクリスチンおよびビンブラスチン)および高有毒性薬剤(例えば、カリチアマイシン)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0273】
このような治療成分の抗体へのコンジュゲート技術は良く知られており、例えば、Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Reisfeld,et al.(eds.),pp.243−56 Alan R.Liss(1985)中の、Arnon,et al.,”Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy”;Controlled Drug Delivery,2nd ed.,Robinson,et al.,eds.,pp.623−53,Marcel Dekker(1987)中の、Hellstrom,et al.,”Antibodies For Drug Delivery”;Monoclonal Antibodies ’84:Biological And Clinical Applications,Pinchera,et al.,eds.,pp.475−506(1985)中の、Thorpe,”Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy:A Review,”; Monoclonal Antibodies For Cancer Detection and Therapy,Baldwin,et al.,eds.,pp.303−16.Academic Press(1985)中の、”Analysis,Results,And Future Prospective Of The Therapeutic Use Of Radiolabeled Antibody In Cancer Therapy”;およびThorpe,et al.,Immunol Rev 62:119(1982)を参照されたい。 あるいは、抗体を第二抗体にコンジュゲートして、抗体ヘテロコンジュゲートを形成できる。例えば、米国特許第4,676,980号を参照されたい。
【0274】
本発明のコンジュゲートを所定の生物学的応答を変えるために使用でき、治療剤または薬剤成分は、典型的な化学治療薬に限定されるものと解釈されるべきではない。例えば、薬剤成分は、所望の生物活性を有するタンパク質またはポリペプチドであってよい。このようなタンパク質としては、例えば、アブリン、リシンA、緑膿菌外毒素、またはジフテリア毒素などの毒素;腫瘍壊死因子、α−インターフェロン、β−インターフェロン、神経増殖因子、血小板由来増殖因子、組織プラスミノーゲンアクチベーター、アポトーシス剤、例えば、TNF−α、TNF−β、AIM I(国際公開第WO97/33899号を参照されたい)、AIM II(国際公開第WO97/34911号を参照されたい)、Fasリガンド(Takahashi,et al.,Int Immunol,6:1567(1994))、VEGI(国際公開第WO99/23105号を参照されたい)などのタンパク質;血栓薬;抗血管新生薬、例えば、アンジオスタチンもしくはエンドスタチン;または 生物学的応答調節物質、例えば、リンホカイン、インターロイキン−1(「IL−1」)、インターロイキン−2(「IL−2」)、インターロイキン−6(「IL−6」)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(「GM−CSF」)、顆粒球コロニー刺激因子(「G−CSF」)、または他の成長因子が挙げられる。
【0275】
本明細書で引用された全ての文献は、あたかもそれぞれの出版物、データベースエントリ(例えば、ジェンバンク配列またはGeneIDエントリ)、特許出願、または特許が、具体的および個別に、参照により援用されると示されるのと同程度に参照により本明細書に援用される。この参照による組み込みの記載は、出願者により、37C.F.R.§1.57(b)(1)に基づき、それぞれのおよび全ての個別の出版物、データベースエントリ(例えば、ジェンバンク配列またはGeneIDエントリ)、特許出願、または特許に関連することが意図され、このような引用が専用の参照による援用の記載に直接隣接していない場合でも、これらのそれぞれは、37C.F.R.§1.57(b)(2)にしたがって、明確に識別される。参照による援用の専用の記載の包含が明細書内に、たとえあったにしても、これは決してこの参照による援用の一般的記載を弱めるものではない。本明細書による参照の引用は、この参照が先行技術に関連するという承認を意図するものではなく、また、これらの出版物または文書の内容または日付に関しなんらかの承認を与えるものでもない。
【0276】
本発明は本明細書で記載の特定の実施形態により範囲が限定されるべきではない。当業者なら、単に定型の実験を使うだけで、本明細書で記載の特定の本発明の実施形態に対する多くの等価物を認める、または確認することができるであろう。このような等価物は、次の請求項により包含されることが意図されている。
モノクローナル抗体mAb1−1、mAb2−2b、mAb3−2bおよびmAb4−2bを産生するハイブリドーマ細胞株を2014年11月12日に、アメリカ合衆国培養細胞系統保存機関パテントデポジトリー(10801 University Blvd.,Manassas,VA)に寄託した。この寄託は、特許手続きのための微生物寄託の国際認識に関するブダペスト条約およびその規則(ブダペスト条約)の規定の下で行われた。mAb1−1と命名されたモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞株は、ATCC寄託番号