【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、このような目的を、生体液から循環核酸を抽出するための方法を提供することによって果たすものである。この方法は、連続工程:
a.循環核酸が含有されていると予想される生体液を供給する工程;
b.該生体液を:
i.少なくともカオトロピック剤を含む溶解溶液;
ii.少なくとも、該循環核酸の少なくとも一部と協働するように設計されたPEG誘導体を含む結合溶液;
iii.該循環核酸の少なくとも一部を捕捉し得る固相支持体
と接触させる工程;
c.前記固相支持体を、該溶解溶液、該結合溶液および該生体液から分離する工程
を含む。
【0008】
また、本発明は生体液から循環核酸を抽出するための方法に関し、この方法は、連続工程:
a.循環核酸が含有されていると予想される生体液を供給する工程;
b.該生体液を:
i.少なくともカオトロピック剤を含む溶解溶液;
ii.該循環核酸の少なくとも一部を捕捉し得る固相支持体;
iii.少なくとも、該循環核酸の少なくとも一部と協働するように設計されたPEG誘導体を含む結合溶液
と接触させる工程;
c.前記固相支持体を、該溶解溶液、該結合溶液および該生体液から分離する工程
を含む。
【0009】
このように、生体液を溶解溶液、結合溶液および固相支持体と接触させる順序は、本明細書において教示しているように、方法の工程b)において逆にしてもよい。
【0010】
好ましくは、本発明は生体液から循環核酸を抽出するための方法に関し、この方法は、連続工程:
a.循環核酸が含有されていると予想される生体液を供給する工程;
b.該生体液を:
i.少なくともカオトロピック剤を含む溶解溶液;
ii.少なくとも、該循環核酸の少なくとも一部と協働するように設計されたPEG誘導体を含む結合溶液であって、エタノールおよびイソプロパノールを無含有の結合溶液;
iii.該循環核酸の少なくとも一部を捕捉し得る固相支持体
と接触させる工程;
c.前記固相支持体を、該溶解溶液、該結合溶液および該生体液から分離する工程
を含む。
【0011】
また、本発明は生体液から循環核酸を抽出するための方法に関し、この方法は、連続工程:
a.循環核酸が含有されていると予想される生体液を供給する工程;
b.該生体液を:
i.少なくともカオトロピック剤を含む溶解溶液;
ii.該循環核酸の少なくとも一部を捕捉し得る固相支持体;
iii.少なくとも、該循環核酸の少なくとも一部と協働するように設計されたPEG誘導体を含む結合溶液であって、エタノールおよびイソプロパノールを無含有の結合溶液
と接触させる工程;
c.前記固相支持体を、該溶解溶液、該結合溶液および該生体液から分離する工程
を含む。
【0012】
好ましくは、本発明は生体液から循環核酸を抽出するための方法に関し、この方法は、連続工程:
a.循環核酸が含有されていると予想される生体液を供給する工程;
b.該生体液を:
i.少なくともカオトロピック剤を含む溶解溶液;
ii.少なくとも、該循環核酸の少なくとも一部と協働するように設計されたPEG誘導体を含む結合溶液;
iii.該循環核酸の少なくとも一部を捕捉し得る固相支持体であって、複数の粒子を備えた固相支持体
と接触させる工程;
c.前記粒子を該溶解溶液、該結合溶液および該生体液から、少なくとも、粒子の保持が可能で、核酸に結合しないフィルターを使用する濾過によって分離する工程
を含む。
【0013】
また、本発明は生体液から循環核酸を抽出するための方法に関し、この方法は、連続工程:
a.循環核酸が含有されていると予想される生体液を供給する工程;
b.該生体液を:
i.少なくともカオトロピック剤を含む溶解溶液;
ii.該循環核酸の少なくとも一部を捕捉し得る固相支持体;
iii.少なくとも、該循環核酸の少なくとも一部と協働するように設計されたPEG誘導体を含む結合溶液
と接触させる工程;
c.前記固相支持体を該溶解溶液、該結合溶液および該生体液から、少なくとも、粒子の保持が可能で、核酸に結合しないフィルターを使用する濾過によって分離する工程
を含む。
【0014】
このように、本発明は、ciNAが含有されていると予想される生体液と接触させる結合溶液であって、少なくともPEG誘導体を含む結合溶液を提供することにより課題を解決するものである。PEG誘導体は、前記ciNAの少なくとも一部の捕捉が促進されるように該ciNAの少なくとも一部と協働するように設計される。そのため、PEG誘導体は、脱水効果を誘導してciNAの少なくとも一部の沈殿をもたらし、それにより、生体液と接触している固相支持体とciNA間の相互作用、例えば疎水性相互作用を促進させるものである。したがって、先行技術によるciNA抽出方法とは反対に、本発明における結合溶液は、デラミネーションを誘導することが知られているエタノールおよびイソプロパノールを無含有のものである。したがって、本発明に係る方法は、エタノールおよび/またはイソプロパノール系の溶媒に対して感受性のある成分を備えた使い捨てカートリッジと適合性がある。
【0015】
さらに、エタノールおよび/またはイソプロパノールは、抽出された循環核酸に基づいた特定の下流のアプリケーションを阻害することが報告されている。疾患の進展のモニタリングに関しては、PCRアッセイの一部の阻害であっても、モニタリングしている循環腫瘍核酸の定量に偏りが導入される場合があり得、それにより不正確な情報が得られる場合があり得る。したがって、エタノールおよびイソプロパノールは、下流のアプリケーションを実施する前に注意深く蒸発させなければならないが、かかる蒸発工程は、ciNAの抽出が使い捨てカートリッジなどの密閉容器内で行なわれる場合は実現することが困難である。本発明における結合溶液は、好都合には、エタノールおよびイソプロパノールを無含有であり、それにより、エタノールおよび/またはイソプロパノールの存在に関連する下流のアプリケーション(PCR増幅など)の阻害が防止される。
【0016】
一実施形態によれば、循環核酸は短鎖循環核酸と長鎖循環核酸とを含む。ciNAは例えばciDNAまたはciRNAであり、ciDNAが本発明の方法に特に好適である。本発明において、短鎖循環核酸は、約1000塩基対未満、優先的には約300塩基対未満、より優先的には約1000塩基対〜約18塩基対、より優先的には約300塩基対〜約18塩基対のciNAである。
【0017】
一実施形態において、固相支持体は短鎖循環核酸の少なくとも一部を捕捉し得るものである。先行技術により、短鎖ciNAは長鎖ciNAよりも固相支持体上に捕捉されにくい傾向にあることが知られており、これは、短鎖ciNAによってもたらされる固相支持体に対する結合領域が限定的だからである。従って、この実施形態では、固相支持体は、短鎖循環核酸の捕捉が促進されるように設計される。
【0018】
本発明に係る方法では、カオトロピック剤を含む溶解バッファーは、生体液中に存在する可能性がある循環核酸と結合し易い循環生体分子の少なくとも一部が除去されるように設計される。ciNAは、タンパク質および/または小胞などの循環生体分子と結合し易く、それにより、固相支持体による前記ciNAの捕捉が害される。それ故に、溶解バッファーは、固相支持体によるciNAの捕捉を促進させるものである。
【0019】
一実施形態において、該方法は、さらに、工程a)と工程b)との間に、該生体液中に存在している残屑の少なくとも一部を廃棄するための濾過工程を含む。残屑は、固相支持体へのciNAの捕捉を阻害することが知られている。そのため、上記濾過工程により、生体液中に存在する可能性があるciNAの抽出が残屑によって妨害されることを防止することが可能になる。
【0020】
一実施形態では、該方法は、さらに前記生体液中に含まれた該循環核酸の少なくとも一部が回収されるように前記固相支持体によって捕捉された該循環核酸の少なくとも一部を放出させるための放出工程を、工程c)の後に含む。
【0021】
一実施形態において、前記固相支持体によって捕捉された該循環核酸の前記少なくとも一部が前記固相支持体から、加熱器を流体運動と組み合せて使用することにより放出される。
【0022】
一実施形態によれば、該方法は、さらに該生体液中に存在している循環核酸を増幅させるための核酸増幅工程を、工程c)の後に含む。
【0023】
一実施形態において、固相支持体は、生体液中に存在している循環核酸の少なくとも一部を、前記固相支持体と前記循環核酸間の静電的相互作用によって捕捉し得るものである。このように、ciNAの捕捉または放出は固相支持体の帯電に依存する。
【0024】
一実施形態によれば、固相支持体は少なくとも膜を備えたものである。一実施形態において、固相支持体は、少なくとも、循環核酸の少なくとも一部を捕捉し得る膜を備えたものである。一実施形態において、固相支持体は少なくともシリカ膜を備えたものである。一実施形態において、固相支持体は、少なくとも、循環核酸の少なくとも一部を捕捉し得るシリカ膜を備えたものである。固相支持体がシリカ膜の場合、本発明の方法の接触工程b)の順序は、好ましくは:
b.該生体液を:
i.少なくともカオトロピック剤を含む溶解溶液;
ii.該循環核酸の少なくとも一部を捕捉し得る固相支持体;
iii.少なくとも、該循環核酸の少なくとも一部と協働するように設計されたPEG誘導体を含む結合溶液
と接触させること
である。
【0025】
代替となる実施形態では、固相支持体が複数の粒子を備えたものである。一実施形態において、固相支持体は複数のシリカ粒子を備えたものである。一実施形態において、固相支持体は複数の磁性粒子を備えたものである。固相支持体が複数の粒子の場合、本発明の方法の接触工程b)の順序は、好ましくは:
b.該生体液を:
i.少なくともカオトロピック剤を含む溶解溶液;
ii.少なくとも、該循環核酸の少なくとも一部と協働するように設計されたPEG誘導体を含む結合溶液;
iii.該循環核酸の少なくとも一部を捕捉し得る固相支持体
と接触させること
である。
【0026】
一実施形態によれば、工程c)において、前記粒子の少なくとも一部が結合溶液および生体液から、少なくとも、粒子の最短寸法よりも小さい孔を有するフィルターを使用することにより分離される。
【0027】
一実施形態では、工程c)において、前記粒子の少なくとも一部が結合溶液および生体液から磁気的作用によって分離される。
【0028】
一実施形態によれば、該方法はカートリッジ内で行なわれる自動化された方法であり、前記カートリッジは機器によって操作されるように設計されている。
【0029】
一実施形態において、PEG誘導体は約6000Da〜約10000Daの分子量を有するものである。
【0030】
一実施形態によれば、循環核酸は循環DNAを含む。
【0031】
一実施形態では、生体液は、血液、血清、血漿、尿、痰またはその混合物の中から選択される。
【0032】
一実施形態では、生体液から循環核酸を抽出するための方法は、連続工程:
a.循環核酸が含有されていると予想される生体液を供給する工程;
b.該生体液を連続的に:
i.少なくともカオトロピック剤を含む溶解溶液;
ii.該循環核酸の少なくとも一部を捕捉し得る固相支持体;
iii.少なくとも、該循環核酸の少なくとも一部と協働するように設計されたPEG誘導体を含む結合溶液
と接触させる工程;
c.前記固相支持体を、該溶解溶液、該結合溶液および該生体液から分離する工程
を含む。
【0033】
本明細書に開示している方法またはカートリッジの記述(特長)および実施形態を本明細書において以下に示す。このように規定される本発明の記述および実施形態の各々は、そうでないことを明示していない限り、任意の他の記述および/または実施形態と組み合せてもよい。特に、好ましいまたは好都合であると記載している任意の特長(1つもしくは複数)または記述が、好ましいまたは好都合であると記載している任意の他の特長(1つもしくは複数)または記述と組み合わされてもよい。これに関して、本発明は、特に、以下の番号を付した態様および実施形態1〜55のいずれか1つ、または該態様および実施形態の1つ以上と任意の他の記述および/または実施形態との任意の組み合せによって理解されよう。
【0034】
本出願において開示する番号を付した記述は:
【0035】
1.生体液から循環核酸を抽出するための方法であって、この方法は、連続工程:
a.循環核酸が含有されていると予想される生体液を供給する工程;
b.該生体液を:
i.少なくともカオトロピック剤を含む溶解溶液;
ii.少なくとも、該循環核酸の少なくとも一部と協働するように設計されたPEG誘導体を含む結合溶液;
iii.該循環核酸の少なくとも一部を捕捉し得る固相支持体
と接触させる工程;
c.前記固相支持体を、該溶解溶液、該結合溶液および該生体液から分離する工程
を含む。
【0036】
2.循環核酸が短鎖循環核酸と長鎖循環核酸とを含む、記述1による方法。
【0037】
3.固相支持体が短鎖循環核酸の少なくとも一部を捕捉し得るものである、記述2による方法。
【0038】
4.さらに、工程a)と工程b)との間に、該生体液中に存在している残屑の少なくとも一部を廃棄するための濾過工程を含む、記述1〜3のいずれか1つによる方法。
【0039】
5.さらに、前記生体液中に含まれた該循環核酸の少なくとも一部が回収されるように前記固相支持体によって捕捉された該循環核酸の少なくとも一部を放出させるための放出工程を、工程c)の後に含む、記述1〜4のいずれか1つによる方法。
【0040】
6.前記固相支持体によって捕捉された該循環核酸の前記少なくとも一部が前記固相支持体から、加熱器を流体運動と組み合せて使用することにより放出される、記述5による方法。
【0041】
7.さらに、該生体液中に存在している循環核酸を増幅させるための核酸増幅工程を、工程c)の後に含む、記述1〜6のいずれか1つによる方法。
【0042】
8.固相支持体が、生体液中に存在している循環核酸の少なくとも一部を、前記固相支持体と前記循環核酸間の静電的相互作用によって捕捉し得るものである、記述1〜7のいずれか1つによる方法。
【0043】
9.固相支持体が少なくとも膜を備えたものである、記述1〜8のいずれか1つによる方法。
【0044】
10.固相支持体が複数の磁性粒子を備えたものである、記述1〜9のいずれか1つによる方法。
【0045】
11.工程c)において、前記粒子の少なくとも一部が結合溶液および生体液から、少なくとも、該粒子の最短寸法よりも小さい孔を有するフィルター(38)を使用することにより分離される、記述10による方法。
【0046】
12.工程c)において、前記粒子の少なくとも一部が結合溶液および生体液から磁気的作用によって分離される、記述10または11による方法。
【0047】
13.カートリッジ(1)内で行なわれる自動化された方法であり、前記カートリッジ(1)が機器によって操作されるように設計されている、記述1〜12のいずれか1つによる方法。
【0048】
14.PEG誘導体が約6000Da〜約10000Daの分子量を有するものである、記述1〜13のいずれか1つによる方法。
【0049】
15.循環核酸が循環DNAを含む、記述1〜14のいずれか1つによる方法。
【0050】
16.生体液から循環核酸を抽出するための方法であって、この方法は、連続工程:
a.循環核酸が含有されていると予想される生体液を供給する工程;
b.該生体液を:
i.少なくともカオトロピック剤を含む溶解溶液;
ii.少なくとも、該循環核酸の少なくとも一部と協働するように設計されたPEG誘導体を含む結合溶液;
iii.該循環核酸の少なくとも一部を捕捉し得る固相支持体であって、複数の粒子を備えた固相支持体
と接触させる工程;
c.前記粒子を該溶解溶液、該結合溶液および該生体液から、少なくとも、粒子の保持が可能で、核酸に結合しないフィルターを使用する濾過によって分離する工程
を含む。
【0051】
17.フィルターがポリエーテルスルホン(PES)フィルターである、記述16による方法。
【0052】
18.循環核酸が短鎖循環核酸と長鎖循環核酸とを含む、記述16または17による方法。
【0053】
19.固相支持体が短鎖循環核酸の少なくとも一部を捕捉し得るものである、記述18による方法。
【0054】
20.さらに、工程a)と工程b)との間に、該生体液中に存在している残屑の少なくとも一部を廃棄するための濾過工程を含む、記述16〜19のいずれか1つによる方法。
【0055】
21.さらに、前記生体液中に含まれた該循環核酸の少なくとも一部が回収されるように前記固相支持体によって捕捉された該循環核酸の少なくとも一部を放出させるための放出工程を、工程c)の後に含む、記述16〜20のいずれか1つによる方法。
【0056】
22.前記固相支持体によって捕捉された該循環核酸の前記少なくとも一部が前記固相支持体から、加熱器を流体運動と組み合せて使用することにより放出される、記述21のいずれか1つによる方法。
【0057】
23.さらに、該生体液中に存在している循環核酸を増幅させるための核酸増幅工程を、工程c)の後に含む、記述16〜22のいずれか1つによる方法。
【0058】
24.固相支持体が、生体液中に存在している循環核酸の少なくとも一部を、前記固相支持体と前記循環核酸との間の静電的相互作用によって捕捉し得るものである、記述16〜23のいずれか1つによる方法。
【0059】
25.粒子が、シラン処理粒子、酸化物粒子および磁性粒子からなる群より選択される、記述16〜24のいずれか1つによる方法。
【0060】
26.固相支持体が複数の磁性粒子を備えたものである、記述16〜25のいずれか1つによる方法。
【0061】
27.工程c)において、前記粒子の少なくとも一部が結合溶液および生体液から、少なくとも、該粒子の最短寸法よりも小さい孔を有するフィルター(38)を使用することにより分離される、記述26による方法。
【0062】
28.工程c)において、前記粒子の少なくとも一部が結合溶液および生体液から磁気的作用によって分離される、記述26または27による方法。
【0063】
29.カートリッジ(1)内で行なわれる自動化された方法であり、前記カートリッジ(1)が機器によって操作されるように設計されている、記述16〜28のいずれか1つによる方法。
【0064】
30.PEG誘導体が約6000Da〜約10000Daの分子量を有するものである、記述16〜29のいずれか1つによる方法。
【0065】
31.循環核酸が循環DNAを含む、記述16〜30のいずれか1つによる方法。
【0066】
32.エタノールおよび/またはイソプロパノール系の溶媒に対して感受性のある成分を備えた使い捨てカートリッジと適合性がある、記述16〜31のいずれか1つによる方法。
【0067】
33.結合溶液がエタノールおよびイソプロパノールを無含有のものである、記述16〜32のいずれか1つによる方法。
【0068】
34.さらに、前記固相支持体を洗浄するための洗浄溶液での洗浄工程を含み、ここで、該洗浄溶液がアルコールを無含有のものである、好ましくは該洗浄溶液がエタノールおよびイソプロパノールを無含有のものである、記述16〜33のいずれか1つによる方法。
【0069】
35.生体液から循環核酸を抽出するための方法であって、この方法は、連続工程:
a.循環核酸が含有されていると予想される生体液を供給する工程;
b.該生体液を:
−少なくともカオトロピック剤を含む溶解溶液;
−少なくとも、該循環核酸の少なくとも一部と協働するように設計されたPEG誘導体を含む結合溶液であって、エタノールおよびイソプロパノールを無含有の結合溶液;
−該循環核酸の少なくとも一部を捕捉し得る固相支持体
と接触させる工程;
c.前記固相支持体を、該溶解溶液、該結合溶液および該生体液から分離する工程
を含む。
【0070】
36.循環核酸が短鎖循環核酸と長鎖循環核酸とを含む、記述35による方法。
【0071】
37.固相支持体が短鎖循環核酸の少なくとも一部を捕捉し得るものである、記述36による方法。
【0072】
38.さらに、工程a)と工程b)との間に、該生体液中に存在している残屑の少なくとも一部を廃棄するための濾過工程を含む、記述35〜37のいずれか1つによる方法。
【0073】
39.さらに、前記生体液中に含まれた該循環核酸の少なくとも一部が回収されるように前記固相支持体によって捕捉された該循環核酸の少なくとも一部を放出させるための放出工程を、工程c)の後に含む、記述35〜38のいずれか1つによる方法。
【0074】
40.前記固相支持体によって捕捉された該循環核酸の前記少なくとも一部が前記固相支持体から、加熱器を流体運動と組み合せて使用することにより放出される、記述39のいずれか1つによる方法。
【0075】
41.さらに、該生体液中に存在している循環核酸を増幅させるための核酸増幅工程を、工程c)の後に含む、記述35〜40のいずれか1つによる方法。
【0076】
42.固相支持体が、生体液中に存在している循環核酸の少なくとも一部を、前記固相支持体と前記循環核酸との間の静電的相互作用によって捕捉し得るものである、記述35〜41のいずれか1つによる方法。
【0077】
43.固相支持体が、少なくとも膜を備えたものであり、好ましくはシリカ膜を備えたものである、記述35〜42のいずれか1つによる方法。
【0078】
44.固相支持体が複数の粒子を備えたものである、記述35〜43のいずれか1つによる方法。
【0079】
45.粒子が、シラン処理粒子、酸化物粒子および磁性粒子からなる群より選択される、記述35〜44のいずれか1つによる方法。
【0080】
46.固相支持体が複数の磁性粒子を備えたものである、記述35〜45のいずれか1つによる方法。
【0081】
47.工程c)において、前記粒子の少なくとも一部が結合溶液および生体液から、少なくとも、該粒子の最短寸法よりも小さい孔を有するフィルター(38)を使用することにより分離される、記述46による方法。
【0082】
48.工程c)において、前記粒子の少なくとも一部が結合溶液および生体液から磁気的作用によって分離される、記述46または47による方法。
【0083】
49.前記固相支持体を該溶解溶液、該結合溶液および該生体液から分離する工程c)が、少なくとも、粒子の保持が可能で、核酸に結合しないフィルターを使用する濾過によって行なわれる、記述44〜48のいずれか1つによる方法。
【0084】
50.フィルターがポリエーテルスルホン(PES)フィルター、ホウケイ酸ガラスマイクロファイバーフィルター、セルロースフィルターまたは非対称ポリスルホンフィルターである、好ましくはフィルターがPESフィルターである、記述49による方法。
【0085】
51.カートリッジ(1)内で行なわれる自動化された方法であり、前記カートリッジ(1)が機器によって操作されるように設計されている、記述35〜50のいずれか1つによる方法。
【0086】
52.PEG誘導体が約6000Da〜約10000Daの分子量を有するものである、記述35〜51のいずれか1つによる方法。
【0087】
53.循環核酸が循環DNAを含む、記述35〜52のいずれか1つによる方法。
【0088】
54.さらに、前記固相支持体を洗浄するための洗浄溶液での洗浄工程を含み、ここで、該洗浄溶液がアルコールを無含有のものである、好ましくは該洗浄溶液がエタノールおよびイソプロパノールを無含有のものである、記述35〜53のいずれか1つによる方法。
【0089】
55.エタノールおよび/またはイソプロパノール系の溶媒に対して感受性のある成分を備えた使い捨てカートリッジと適合性がある、記述35〜54のいずれか1つによる方法。
である。
【0090】
用語「循環核酸」または「無細胞核酸」は、本明細書で互換的に用いている場合、生体液中にみられる核酸、例えば、DNAのセグメントおよび/またはRNAのセグメントをいう。典型的には、これは、血流中、または細胞を含有していない生体液中、もしくはもはや細胞を含有していない生体液中、例えば血漿もしくは血清中の、細胞から放出された核酸をいう。
【0091】
一実施形態において、生体液は血漿、血清または尿であり得る。好ましくは、生体液は血漿または血清である。
【0092】
用語「血清」は、血液細胞でもなく凝固因子でもない血液成分をいう;この用語は、血漿からフィブリノゲンを除去したものをいう。
【0093】
用語「血漿」は、細胞は含有されていないが血液細胞(赤血球、白血球、血小板など)が懸濁しており、栄養素、糖分、タンパク質、ミネラル、酵素などが含有された血液の無色の水状液と定義される。
【0094】
用語「シリカ」は、SiO
2結晶および任意の他の形態のシリカ、特に、非晶質酸化ケイ素およびガラス粉末、アルキルシリカ、ケイ酸アルミニウム(ゼオライト)、または−NH
2を有する活性シリカをいう。
【0095】
好ましくは、本発明は生体液から循環核酸を抽出するための方法に関し、この方法は、a)循環核酸が含有されていると予想される生体液を供給する工程;b)該生体液を:少なくともカオトロピック剤を含む溶解溶液;少なくとも、該循環核酸の少なくとも一部と協働するように設計されたPEG誘導体を含む結合溶液(ここで、該結合溶液はエタノールおよびイソプロパノールを無含有のものである);該循環核酸の少なくとも一部を捕捉し得る固相支持体、と接触させる工程;ならびにc)前記固相支持体を該溶解溶液、該結合溶液および該生体液から分離する工程を含む。
【0096】
一実施形態において、工程b)は、生体液を溶解溶液;結合溶液;および固相支持体と任意の順序で接触させることにより行なわれ得る。
【0097】
一実施形態において、結合溶液は、さらに少なくとも界面活性剤を含むものであり得る。界面活性剤は、例えば、ポリソルベート(polysorbaat)20(Tween(登録商標)20、PEG(20)ソルビタン(sorbitaan)モノラウレート(monolauraat)、またはポリオキシエチレン(ethyleen)ソルビタンモノラウレート)であり得る。
【0098】
一実施形態において、循環核酸は短鎖循環核酸と長鎖循環核酸とを含むものであり得る。
【0099】
一実施形態において、固相支持体は、短鎖循環核酸の少なくとも一部を捕捉し得るものであり得る。
【0100】
一実施形態において、該方法は、さらに、工程a)と工程b)との間に、該生体液中に存在している残屑の少なくとも一部を廃棄するための濾過工程を含むものであり得る。
【0101】
一実施形態において、該方法は、さらに、前記生体液中に含まれた該循環核酸の少なくとも一部が回収されるように前記固相支持体によって捕捉された該循環核酸の少なくとも一部を放出させるための放出工程を、工程c)の後に含むものであり得る。
【0102】
一実施形態において、前記固相支持体によって捕捉された該循環核酸の少なくとも一部は前記固相支持体から、加熱器を流体運動と組み合せて使用することにより放出され得る。
【0103】
一実施形態において、該方法は、さらに、該生体液中に存在している循環核酸を増幅させるための核酸増幅工程を、工程c)の後に含むものであり得る。
【0104】
一実施形態において、固相支持体は、生体液中に存在している循環核酸の少なくとも一部を、前記固相支持体と前記循環核酸間の静電的相互作用によって捕捉し得るものであり得る。
【0105】
一実施形態において、固相支持体は少なくとも膜を備えたものであり得る。一実施形態において、固相支持体は少なくとも、循環核酸の少なくとも一部を捕捉し得る膜を備えたものであり得る。一実施形態において、固相支持体は少なくともシリカ膜を備えたものであり得る。一実施形態において、固相支持体は少なくとも、循環核酸の少なくとも一部を捕捉し得るシリカ膜を備えたものであり得る。これらの実施形態では、工程b)において、生体液はまず、固相支持体上で循環核酸の少なくとも一部を捕捉するために溶解溶液および固相支持体と接触され得、その後、生体液は、タンパク質の少なくとも一部を除去するために結合溶液と接触され得る。
【0106】
代替となる実施形態では、固相支持体は複数の粒子を備えたものであり得る。一実施形態において、固相支持体は、循環核酸の少なくとも一部を捕捉し得る複数の粒子を備えたものであり得る。これらの実施形態では、工程b)において、生体液はまず、溶解溶液および結合溶液と接触され得、その後、生体液は、固相支持体上の循環核酸の少なくとも一部を捕捉するために固相支持体と接触され得る。
【0107】
一実施形態において、粒子はシラン処理されたビーズ、酸化物ビーズまたは磁性のビーズであり得る。一実施形態において、粒子は、シラン処理粒子、酸化物粒子および磁性粒子からなる群より選択され得る。
【0108】
用語「粒子」は、本明細書で用いる場合、0.5〜5.0μm、好ましくは1.0〜5.0μm、好ましくは2.0〜4.0μmのサイズを有する粒子をいう。かかる粒子は核酸精製手法において知られている。例示的な粒子は3μmの粒径を有するものであり得る。粒子、好ましくはシラン処理粒子、酸化物粒子または磁性粒子のサイズは、レーザー回折により、例えばMastersizer(Malvern,Worcestershire,UK)を使用して測定され得る。粒子のサイズは平均サイズとみなされ得る。粒子のサイズは最大幅であり得る。
【0109】
用語「粒子」および「ビーズ」は本明細書において互換的に用いている場合があり得る。
【0110】
用語「シラン処理粒子」は、SiO
2または任意の他の形態のシリカ、特に、非晶質酸化ケイ素もしくはガラス粉末、アルキルシリカ、ケイ酸アルミニウム(ゼオライト)または−NH
2を有する活性シリカを含む粒子をいう。
【0111】
用語「シラン処理粒子」および「シリカ粒子」は本明細書において互換的に用いている場合があり得る。
【0112】
用語「酸化物粒子」は、酸化ケイ素(SiO
2)粒子または金属酸化物粒子をいい、金属酸化物粒子は、例えば好ましくは酸化鉄粒子である。
【0113】
用語「磁性粒子」は、磁気に誘引され易い粒子をいう。
【0114】
該粒子は被覆粒子であってもよい。
【0115】
一実施形態において、固相支持体は複数の磁性粒子を備えたものであり得る。一実施形態において、固相支持体は複数の超常磁性粒子を備えたものであり得る。
【0116】
一実施形態では、工程c)において、前記粒子の少なくとも一部が結合溶液および生体液から、少なくとも、該粒子の最短寸法よりも小さい孔を有するフィルター(38)を使用することにより分離される。
【0117】
本明細書において教示している方法のさらなる一実施形態では、工程c)において、前記粒子の少なくとも一部が結合溶液および生体液から磁気的作用によって分離される。
【0118】
一実施形態において、溶解溶液、結合溶液および生体液からの固相支持体、特に粒子の分離は、粒子の保持が可能なフィルターを使用して濾過することにより行なわれ得る。
【0119】
一実施形態において、溶解溶液、結合溶液および生体液からの固相支持体、特に粒子の分離は、核酸に結合しないフィルターを使用して濾過することにより行なわれ得る。
【0120】
一実施形態において、前記固相支持体を該溶解溶液、該結合溶液および該生体液から分離する工程c)は、少なくとも、粒子の保持が可能で、核酸に結合しないフィルターを使用する濾過によって行なわれ得る。
【0121】
かかるフィルターにおいて好都合なものは、すべての粒子を保持することが可能であり、DNA(あれば)に結合しないものである。
【0122】
一実施形態において、フィルターは親水性材料で構成されたものであり得る。
【0123】
一実施形態において、フィルターはポリエーテルスルホン(PES)フィルター、ホウケイ酸ガラスマイクロファイバーフィルター、セルロースフィルターまたは非対称ポリスルホンフィルターであり得る。
【0124】
非対称ポリスルホンフィルターの一例は、Vivid(商標) Plasma Separation Membranes(Pall Corporation)である。
【0125】
一実施形態において、フィルターは、ポリエーテルスルホン(PES)で実質的に構成または実質的に作製されたものであり得る。好ましくは、フィルターはPESフィルターである。PESフィルターにおいて好都合なものは、すべての粒子を保持することが可能であるが、核酸(例えば、DNA)またはタンパク質(あれば)に結合しないものである。対照的に、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などの多くの従来の材質のフィルターは、タンパク質を吸収するもの、または核酸を吸収するもののいずれかであり得る。PESフィルターにおいて好都合なものは、好都合には、ミリリットル容量の液体(例えば、30ミリリットルより多くの液体)の容易な濾過が可能なものである。PESフィルターにおいて好都合なものは、好都合には、有意に圧力が上昇することなく、すべての液体の通過が可能なものである。また、かかるPESフィルターは、本明細書において教示している方法に使用される化学薬品および温度に対して不活性であるという点で好都合なものである。
【0126】
一実施形態において、PESフィルターは0.45μmの細孔径を有するものであり得る。かかる細孔径により、粒子の完全な捕捉を確実にすることが可能である。一実施形態において、PESフィルターは非対称であり得、この場合、フィルターの一方側はフィルターの他方側より小さい細孔径の細孔を有する。例えば、PESフィルターは、フィルターの一方側では約20μmの細孔径を有し、フィルターの他方側で0.45μmまで漸減しているものであり得る。かかるPESフィルターは、好都合なのは、低い膜貫通圧力で高容量のフローが達成されることが可能なものである。
【0127】
一実施形態において、前記方法は、カートリッジ(1)内で行なわれる自動化された方法であり得、前記カートリッジ(1)は機器によって操作されるように設計されている。
【0128】
一実施形態において、PEG誘導体は約6000Da〜約10000Daの分子量を有するものであり得る。
【0129】
一実施形態において、循環核酸には循環DNAが含まれ得る。
【0130】
一実施形態において、結合溶液はアルコールを無含有のものである。一実施形態において、結合溶液はアルコールを含まないものであってもよい。
【0131】
用語「アルコール」は、本明細書で用いる場合、ヒドロキシル官能基(−OH)が飽和炭素原子に結合している任意の有機化合物をいう。好ましくは、アルコールは一価アルコール、例えば、メタノール(CH
3OH);エタノール(C
2H
5OH);イソプロピルアルコール、2−プロパノールもしくはイソプロパノール(C
3H
7OH);ブチルアルコールもしくはブタノール(C
4H
9OH);ペンタノール(C
5H
11OH);またはヘキサデカン−1−オール(C
16H
33OH)である。
【0132】
好ましい一実施形態では、アルコールはエタノールおよび/またはイソプロパノールである。
【0133】
一実施形態において、該方法は、さらに、前記固相支持体を洗浄するための洗浄溶液での洗浄工程を含むものであり得る。例えば、固相支持体は、前記固相支持体を該溶解溶液、該結合溶液および該生体液から分離した後、洗浄され得る。一実施形態において、該方法は、さらに、前記固相支持体を洗浄するための洗浄溶液での洗浄工程を、工程c)の後に含むものであり得る。
【0134】
一実施形態において、1種類以上の洗浄溶液はアルコールを無含有のものであり得る。一実施形態において、1種類以上の洗浄溶液はアルコールを含まないものであってもよい。好ましくは、1種類以上の洗浄溶液はエタノールおよびイソプロパノールを無含有のものである。
【0135】
一実施形態では、結合溶液と1種類以上の洗浄溶液がアルコールを無含有のものであり得る。一実施形態において、結合溶液と1種類以上の洗浄溶液はアルコールを含まないものであってもよい。好ましくは、結合溶液と1種類以上の洗浄溶液はエタノールおよびイソプロパノールを無含有のものである。
【0136】
一実施形態では、結合溶液、溶解溶液、1種類以上の洗浄溶液および溶出溶液がアルコールを無含有のものであり得る。一実施形態において、結合溶液、溶解溶液、1種類以上の洗浄溶液および溶出溶液はアルコールを含まないものであってもよい。好ましくは、結合溶液、溶解溶液、1種類以上の洗浄溶液および溶出溶液はエタノールおよびイソプロパノールを無含有のものである。
【0137】
一実施形態において、該方法は、エタノールおよび/またはイソプロパノール系の溶媒に対して感受性のある成分を備えた使い捨てカートリッジと適合し得る。
【0138】
本発明を、添付の図面に照らして示した以下の詳細な説明により、さらに説明する。図面は、循環核酸を生体液から抽出するための方法の例示的および説明的な実施形態を表す。