特表2016-540508(P2016-540508A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特表2016540508-循環核酸の抽出 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2016-540508(P2016-540508A)
(43)【公表日】2016年12月28日
(54)【発明の名称】循環核酸の抽出
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20161205BHJP
   B01D 15/00 20060101ALI20161205BHJP
   B03C 1/00 20060101ALI20161205BHJP
【FI】
   C12N15/00 A
   B01D15/00 M
   B03C1/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2016-535661(P2016-535661)
(86)(22)【出願日】2014年12月2日
(85)【翻訳文提出日】2016年7月29日
(86)【国際出願番号】EP2014076301
(87)【国際公開番号】WO2015082495
(87)【国際公開日】20150611
(31)【優先権主張番号】13005603.9
(32)【優先日】2013年12月2日
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】514281751
【氏名又は名称】バイオカーティス エヌ ヴイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】特許業務法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】セルボリ エヴァ
(72)【発明者】
【氏名】ファン デン ボガールド パトリック
【テーマコード(参考)】
4D017
【Fターム(参考)】
4D017AA09
4D017AA11
4D017BA07
4D017CA05
4D017CB01
4D017CB10
4D017DA07
4D017DB02
4D017DB03
4D017EA05
(57)【要約】
本発明は、循環核酸を生体液から抽出するための方法に関する。該方法は、循環核酸が含有されていると予想される生体液を供給する連続工程を含む。次いで、生体液を、少なくともカオトロピック剤を含む溶解溶液、該循環核酸の少なくとも一部と協働するように設計されたPEG誘導体を少なくとも含む結合溶液であって、エタノールおよびイソプロパノールを無含有の結合溶液、および、該循環核酸の少なくとも一部を捕捉し得る固相支持体と、接触させる。最後に、固相支持体を、該溶解溶液、該結合溶液および該生体液から分離する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体液から循環核酸を抽出するための方法であって、
連続工程:
a.循環核酸が含有されていると予想される生体液を供給する工程;
b.該生体液を:
−少なくともカオトロピック剤を含む溶解溶液;
−少なくとも、該循環核酸の少なくとも一部と協働するように設計されたPEG誘導体を含む結合溶液であって、エタノールおよびイソプロパノールを無含有の結合溶液;
−該循環核酸の少なくとも一部を捕捉し得る固相支持体
と接触させる工程;
c.前記固相支持体を、該溶解溶液、該結合溶液および該生体液から分離する工程
を含む、生体液から循環核酸を抽出するための方法。
【請求項2】
該循環核酸は、短鎖循環核酸と長鎖循環核酸とを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
該固相支持体は、該短鎖循環核酸の少なくとも一部を捕捉し得るものである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
さらに、工程a)と工程b)との間に、該生体液中に存在している残屑の少なくとも一部を廃棄するための濾過工程を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
さらに、前記生体液中に含まれた該循環核酸の少なくとも一部が回収されるように前記固相支持体によって捕捉された該循環核酸の少なくとも一部を放出させるための放出工程を、工程c)の後に含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記固相支持体によって捕捉された該循環核酸の前記少なくとも一部が前記固相支持体から、加熱器を流体運動と組み合せて使用することにより放出される、請求項5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
さらに、該生体液中に存在している該循環核酸を増幅させるための核酸増幅工程を、工程c)の後に含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
該固相支持体は、該生体液中に存在している該循環核酸の少なくとも一部を、前記固相支持体と前記循環核酸間の静電的相互作用によって捕捉し得るものである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
該固相支持体は、少なくとも膜を備えたものであり、好ましくはシリカ膜を備えたものである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
該固相支持体は、複数の粒子を備えたものである、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
該粒子は、シラン処理粒子、酸化物粒子および磁性粒子からなる群より選択される、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
該固相支持体は、複数の磁性粒子を備えたものである、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
工程c)において、前記粒子の少なくとも一部は、該結合溶液および該生体液から、該粒子の最短寸法よりも小さい孔を有するフィルター(38)を少なくとも使用することにより分離される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
工程c)において、前記粒子の少なくとも一部は、該結合溶液および該生体液から磁気的作用によって分離される、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
前記固相支持体を該溶解溶液、該結合溶液および該生体液から分離する該工程c)は、少なくとも、粒子の保持が可能で、核酸を結合しないフィルターを使用する濾過によって行なわれる、請求項10〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
該フィルターは、ポリエーテルスルホン(PES)フィルター、ホウケイ酸ガラスマイクロファイバーフィルター、セルロースフィルターまたは非対称ポリスルホンフィルターであり、好ましくは該フィルターがPESフィルターである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
カートリッジ(1)内で行なわれる自動化された方法であり、前記カートリッジ(1)は機器によって操作されるように設計されている、請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
該PEG誘導体は、約6000Da〜約10000Daの分子量を有する、請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
該循環核酸は、循環DNAを含む、請求項1〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記固相支持体を洗浄するための洗浄溶液による洗浄工程を更に含む方法であって、該洗浄溶液がアルコールを無含有のものであり、好ましくは該洗浄溶液がエタノールおよびイソプロパノールを無含有のものである、請求項1〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
エタノールおよび/またはイソプロパノール系の溶媒に対して感受性のある成分を備えた使い捨てカートリッジと適合性がある、請求項1〜20のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、循環核酸を生体液から抽出するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
がんなどの疾患の正確な早期診断のための非侵襲性の方法の導入は、患者の平均余命を伸ばすための有望な解決策である。これに関連して、生物学的試料中に含まれた循環腫瘍核酸の解析は、初期段階のがんを検出するため、または該疾患の初期段階における悪性腫瘍の発生をモニタリングするためのいずれかにおける認知された診断ツールである。血液中の循環核酸(ciNA)の濃度は、特定のがんに苦しんでいる患者では健常個体と比べて5〜10倍高いと報告されている。しかしながら、悪性変異が提示され、診断上関連性があるのはほんのわずかであり得る。
【0003】
ciNAは、さまざまな長さの断片を含み、短鎖断片のほとんどが300塩基対未満である断片化核酸であることが知られている。一般的に、ciNAを抽出するための抽出プロトコルは、最初にゲノムDNA(gDNA)などの核酸の長鎖断片のために設計され、これをさらにciNAに含まれた短鎖断片の抽出が可能なように改良した手順に基づいたものである。そのため、通常エタノール/イソプロパノール溶媒混合物中にグアニジニウム塩を含有した結合増強溶液が生物学的試料に添加される。
【0004】
最近では、診断アッセイを高分子材料製の使い捨てカートリッジで行なう傾向にある。しかしながら、かかるカートリッジを構成する異なるパーツの組み立てには、エタノールおよび/またはイソプロパノール系の溶媒に可溶性である高分子材料製の成分(接着剤など)の使用が必要とされる。このように、結合増強溶液を使用する既存のciNA抽出プロトコルは、デラミネーションが急速に起こり得る。それにより、かかる使い捨てカートリッジで抽出プロトコルを実施しようと試みた場合に問題が引き起こされ得るため、使い捨てカートリッジと適合しにくい。
【0005】
したがって、プラスチック製使い捨てカートリッジと適合性のある循環核酸の抽出方法の必要性が存在している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の不都合な点の全部または一部を改善することを目指すものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、このような目的を、生体液から循環核酸を抽出するための方法を提供することによって果たすものである。この方法は、連続工程:
a.循環核酸が含有されていると予想される生体液を供給する工程;
b.該生体液を:
i.少なくともカオトロピック剤を含む溶解溶液;
ii.少なくとも、該循環核酸の少なくとも一部と協働するように設計されたPEG誘導体を含む結合溶液;
iii.該循環核酸の少なくとも一部を捕捉し得る固相支持体
と接触させる工程;
c.前記固相支持体を、該溶解溶液、該結合溶液および該生体液から分離する工程
を含む。
【0008】
また、本発明は生体液から循環核酸を抽出するための方法に関し、この方法は、連続工程:
a.循環核酸が含有されていると予想される生体液を供給する工程;
b.該生体液を:
i.少なくともカオトロピック剤を含む溶解溶液;
ii.該循環核酸の少なくとも一部を捕捉し得る固相支持体;
iii.少なくとも、該循環核酸の少なくとも一部と協働するように設計されたPEG誘導体を含む結合溶液
と接触させる工程;
c.前記固相支持体を、該溶解溶液、該結合溶液および該生体液から分離する工程
を含む。
【0009】
このように、生体液を溶解溶液、結合溶液および固相支持体と接触させる順序は、本明細書において教示しているように、方法の工程b)において逆にしてもよい。
【0010】
好ましくは、本発明は生体液から循環核酸を抽出するための方法に関し、この方法は、連続工程:
a.循環核酸が含有されていると予想される生体液を供給する工程;
b.該生体液を:
i.少なくともカオトロピック剤を含む溶解溶液;
ii.少なくとも、該循環核酸の少なくとも一部と協働するように設計されたPEG誘導体を含む結合溶液であって、エタノールおよびイソプロパノールを無含有の結合溶液;
iii.該循環核酸の少なくとも一部を捕捉し得る固相支持体
と接触させる工程;
c.前記固相支持体を、該溶解溶液、該結合溶液および該生体液から分離する工程
を含む。
【0011】
また、本発明は生体液から循環核酸を抽出するための方法に関し、この方法は、連続工程:
a.循環核酸が含有されていると予想される生体液を供給する工程;
b.該生体液を:
i.少なくともカオトロピック剤を含む溶解溶液;
ii.該循環核酸の少なくとも一部を捕捉し得る固相支持体;
iii.少なくとも、該循環核酸の少なくとも一部と協働するように設計されたPEG誘導体を含む結合溶液であって、エタノールおよびイソプロパノールを無含有の結合溶液
と接触させる工程;
c.前記固相支持体を、該溶解溶液、該結合溶液および該生体液から分離する工程
を含む。
【0012】
好ましくは、本発明は生体液から循環核酸を抽出するための方法に関し、この方法は、連続工程:
a.循環核酸が含有されていると予想される生体液を供給する工程;
b.該生体液を:
i.少なくともカオトロピック剤を含む溶解溶液;
ii.少なくとも、該循環核酸の少なくとも一部と協働するように設計されたPEG誘導体を含む結合溶液;
iii.該循環核酸の少なくとも一部を捕捉し得る固相支持体であって、複数の粒子を備えた固相支持体
と接触させる工程;
c.前記粒子を該溶解溶液、該結合溶液および該生体液から、少なくとも、粒子の保持が可能で、核酸に結合しないフィルターを使用する濾過によって分離する工程
を含む。
【0013】
また、本発明は生体液から循環核酸を抽出するための方法に関し、この方法は、連続工程:
a.循環核酸が含有されていると予想される生体液を供給する工程;
b.該生体液を:
i.少なくともカオトロピック剤を含む溶解溶液;
ii.該循環核酸の少なくとも一部を捕捉し得る固相支持体;
iii.少なくとも、該循環核酸の少なくとも一部と協働するように設計されたPEG誘導体を含む結合溶液
と接触させる工程;
c.前記固相支持体を該溶解溶液、該結合溶液および該生体液から、少なくとも、粒子の保持が可能で、核酸に結合しないフィルターを使用する濾過によって分離する工程
を含む。
【0014】
このように、本発明は、ciNAが含有されていると予想される生体液と接触させる結合溶液であって、少なくともPEG誘導体を含む結合溶液を提供することにより課題を解決するものである。PEG誘導体は、前記ciNAの少なくとも一部の捕捉が促進されるように該ciNAの少なくとも一部と協働するように設計される。そのため、PEG誘導体は、脱水効果を誘導してciNAの少なくとも一部の沈殿をもたらし、それにより、生体液と接触している固相支持体とciNA間の相互作用、例えば疎水性相互作用を促進させるものである。したがって、先行技術によるciNA抽出方法とは反対に、本発明における結合溶液は、デラミネーションを誘導することが知られているエタノールおよびイソプロパノールを無含有のものである。したがって、本発明に係る方法は、エタノールおよび/またはイソプロパノール系の溶媒に対して感受性のある成分を備えた使い捨てカートリッジと適合性がある。
【0015】
さらに、エタノールおよび/またはイソプロパノールは、抽出された循環核酸に基づいた特定の下流のアプリケーションを阻害することが報告されている。疾患の進展のモニタリングに関しては、PCRアッセイの一部の阻害であっても、モニタリングしている循環腫瘍核酸の定量に偏りが導入される場合があり得、それにより不正確な情報が得られる場合があり得る。したがって、エタノールおよびイソプロパノールは、下流のアプリケーションを実施する前に注意深く蒸発させなければならないが、かかる蒸発工程は、ciNAの抽出が使い捨てカートリッジなどの密閉容器内で行なわれる場合は実現することが困難である。本発明における結合溶液は、好都合には、エタノールおよびイソプロパノールを無含有であり、それにより、エタノールおよび/またはイソプロパノールの存在に関連する下流のアプリケーション(PCR増幅など)の阻害が防止される。
【0016】
一実施形態によれば、循環核酸は短鎖循環核酸と長鎖循環核酸とを含む。ciNAは例えばciDNAまたはciRNAであり、ciDNAが本発明の方法に特に好適である。本発明において、短鎖循環核酸は、約1000塩基対未満、優先的には約300塩基対未満、より優先的には約1000塩基対〜約18塩基対、より優先的には約300塩基対〜約18塩基対のciNAである。
【0017】
一実施形態において、固相支持体は短鎖循環核酸の少なくとも一部を捕捉し得るものである。先行技術により、短鎖ciNAは長鎖ciNAよりも固相支持体上に捕捉されにくい傾向にあることが知られており、これは、短鎖ciNAによってもたらされる固相支持体に対する結合領域が限定的だからである。従って、この実施形態では、固相支持体は、短鎖循環核酸の捕捉が促進されるように設計される。
【0018】
本発明に係る方法では、カオトロピック剤を含む溶解バッファーは、生体液中に存在する可能性がある循環核酸と結合し易い循環生体分子の少なくとも一部が除去されるように設計される。ciNAは、タンパク質および/または小胞などの循環生体分子と結合し易く、それにより、固相支持体による前記ciNAの捕捉が害される。それ故に、溶解バッファーは、固相支持体によるciNAの捕捉を促進させるものである。
【0019】
一実施形態において、該方法は、さらに、工程a)と工程b)との間に、該生体液中に存在している残屑の少なくとも一部を廃棄するための濾過工程を含む。残屑は、固相支持体へのciNAの捕捉を阻害することが知られている。そのため、上記濾過工程により、生体液中に存在する可能性があるciNAの抽出が残屑によって妨害されることを防止することが可能になる。
【0020】
一実施形態では、該方法は、さらに前記生体液中に含まれた該循環核酸の少なくとも一部が回収されるように前記固相支持体によって捕捉された該循環核酸の少なくとも一部を放出させるための放出工程を、工程c)の後に含む。
【0021】
一実施形態において、前記固相支持体によって捕捉された該循環核酸の前記少なくとも一部が前記固相支持体から、加熱器を流体運動と組み合せて使用することにより放出される。
【0022】
一実施形態によれば、該方法は、さらに該生体液中に存在している循環核酸を増幅させるための核酸増幅工程を、工程c)の後に含む。
【0023】
一実施形態において、固相支持体は、生体液中に存在している循環核酸の少なくとも一部を、前記固相支持体と前記循環核酸間の静電的相互作用によって捕捉し得るものである。このように、ciNAの捕捉または放出は固相支持体の帯電に依存する。
【0024】
一実施形態によれば、固相支持体は少なくとも膜を備えたものである。一実施形態において、固相支持体は、少なくとも、循環核酸の少なくとも一部を捕捉し得る膜を備えたものである。一実施形態において、固相支持体は少なくともシリカ膜を備えたものである。一実施形態において、固相支持体は、少なくとも、循環核酸の少なくとも一部を捕捉し得るシリカ膜を備えたものである。固相支持体がシリカ膜の場合、本発明の方法の接触工程b)の順序は、好ましくは:
b.該生体液を:
i.少なくともカオトロピック剤を含む溶解溶液;
ii.該循環核酸の少なくとも一部を捕捉し得る固相支持体;
iii.少なくとも、該循環核酸の少なくとも一部と協働するように設計されたPEG誘導体を含む結合溶液
と接触させること
である。
【0025】
代替となる実施形態では、固相支持体が複数の粒子を備えたものである。一実施形態において、固相支持体は複数のシリカ粒子を備えたものである。一実施形態において、固相支持体は複数の磁性粒子を備えたものである。固相支持体が複数の粒子の場合、本発明の方法の接触工程b)の順序は、好ましくは:
b.該生体液を:
i.少なくともカオトロピック剤を含む溶解溶液;
ii.少なくとも、該循環核酸の少なくとも一部と協働するように設計されたPEG誘導体を含む結合溶液;
iii.該循環核酸の少なくとも一部を捕捉し得る固相支持体
と接触させること
である。
【0026】
一実施形態によれば、工程c)において、前記粒子の少なくとも一部が結合溶液および生体液から、少なくとも、粒子の最短寸法よりも小さい孔を有するフィルターを使用することにより分離される。
【0027】
一実施形態では、工程c)において、前記粒子の少なくとも一部が結合溶液および生体液から磁気的作用によって分離される。
【0028】
一実施形態によれば、該方法はカートリッジ内で行なわれる自動化された方法であり、前記カートリッジは機器によって操作されるように設計されている。
【0029】
一実施形態において、PEG誘導体は約6000Da〜約10000Daの分子量を有するものである。
【0030】
一実施形態によれば、循環核酸は循環DNAを含む。
【0031】
一実施形態では、生体液は、血液、血清、血漿、尿、痰またはその混合物の中から選択される。
【0032】
一実施形態では、生体液から循環核酸を抽出するための方法は、連続工程:
a.循環核酸が含有されていると予想される生体液を供給する工程;
b.該生体液を連続的に:
i.少なくともカオトロピック剤を含む溶解溶液;
ii.該循環核酸の少なくとも一部を捕捉し得る固相支持体;
iii.少なくとも、該循環核酸の少なくとも一部と協働するように設計されたPEG誘導体を含む結合溶液
と接触させる工程;
c.前記固相支持体を、該溶解溶液、該結合溶液および該生体液から分離する工程
を含む。
【0033】
本明細書に開示している方法またはカートリッジの記述(特長)および実施形態を本明細書において以下に示す。このように規定される本発明の記述および実施形態の各々は、そうでないことを明示していない限り、任意の他の記述および/または実施形態と組み合せてもよい。特に、好ましいまたは好都合であると記載している任意の特長(1つもしくは複数)または記述が、好ましいまたは好都合であると記載している任意の他の特長(1つもしくは複数)または記述と組み合わされてもよい。これに関して、本発明は、特に、以下の番号を付した態様および実施形態1〜55のいずれか1つ、または該態様および実施形態の1つ以上と任意の他の記述および/または実施形態との任意の組み合せによって理解されよう。
【0034】
本出願において開示する番号を付した記述は:
【0035】
1.生体液から循環核酸を抽出するための方法であって、この方法は、連続工程:
a.循環核酸が含有されていると予想される生体液を供給する工程;
b.該生体液を:
i.少なくともカオトロピック剤を含む溶解溶液;
ii.少なくとも、該循環核酸の少なくとも一部と協働するように設計されたPEG誘導体を含む結合溶液;
iii.該循環核酸の少なくとも一部を捕捉し得る固相支持体
と接触させる工程;
c.前記固相支持体を、該溶解溶液、該結合溶液および該生体液から分離する工程
を含む。
【0036】
2.循環核酸が短鎖循環核酸と長鎖循環核酸とを含む、記述1による方法。
【0037】
3.固相支持体が短鎖循環核酸の少なくとも一部を捕捉し得るものである、記述2による方法。
【0038】
4.さらに、工程a)と工程b)との間に、該生体液中に存在している残屑の少なくとも一部を廃棄するための濾過工程を含む、記述1〜3のいずれか1つによる方法。
【0039】
5.さらに、前記生体液中に含まれた該循環核酸の少なくとも一部が回収されるように前記固相支持体によって捕捉された該循環核酸の少なくとも一部を放出させるための放出工程を、工程c)の後に含む、記述1〜4のいずれか1つによる方法。
【0040】
6.前記固相支持体によって捕捉された該循環核酸の前記少なくとも一部が前記固相支持体から、加熱器を流体運動と組み合せて使用することにより放出される、記述5による方法。
【0041】
7.さらに、該生体液中に存在している循環核酸を増幅させるための核酸増幅工程を、工程c)の後に含む、記述1〜6のいずれか1つによる方法。
【0042】
8.固相支持体が、生体液中に存在している循環核酸の少なくとも一部を、前記固相支持体と前記循環核酸間の静電的相互作用によって捕捉し得るものである、記述1〜7のいずれか1つによる方法。
【0043】
9.固相支持体が少なくとも膜を備えたものである、記述1〜8のいずれか1つによる方法。
【0044】
10.固相支持体が複数の磁性粒子を備えたものである、記述1〜9のいずれか1つによる方法。
【0045】
11.工程c)において、前記粒子の少なくとも一部が結合溶液および生体液から、少なくとも、該粒子の最短寸法よりも小さい孔を有するフィルター(38)を使用することにより分離される、記述10による方法。
【0046】
12.工程c)において、前記粒子の少なくとも一部が結合溶液および生体液から磁気的作用によって分離される、記述10または11による方法。
【0047】
13.カートリッジ(1)内で行なわれる自動化された方法であり、前記カートリッジ(1)が機器によって操作されるように設計されている、記述1〜12のいずれか1つによる方法。
【0048】
14.PEG誘導体が約6000Da〜約10000Daの分子量を有するものである、記述1〜13のいずれか1つによる方法。
【0049】
15.循環核酸が循環DNAを含む、記述1〜14のいずれか1つによる方法。
【0050】
16.生体液から循環核酸を抽出するための方法であって、この方法は、連続工程:
a.循環核酸が含有されていると予想される生体液を供給する工程;
b.該生体液を:
i.少なくともカオトロピック剤を含む溶解溶液;
ii.少なくとも、該循環核酸の少なくとも一部と協働するように設計されたPEG誘導体を含む結合溶液;
iii.該循環核酸の少なくとも一部を捕捉し得る固相支持体であって、複数の粒子を備えた固相支持体
と接触させる工程;
c.前記粒子を該溶解溶液、該結合溶液および該生体液から、少なくとも、粒子の保持が可能で、核酸に結合しないフィルターを使用する濾過によって分離する工程
を含む。
【0051】
17.フィルターがポリエーテルスルホン(PES)フィルターである、記述16による方法。
【0052】
18.循環核酸が短鎖循環核酸と長鎖循環核酸とを含む、記述16または17による方法。
【0053】
19.固相支持体が短鎖循環核酸の少なくとも一部を捕捉し得るものである、記述18による方法。
【0054】
20.さらに、工程a)と工程b)との間に、該生体液中に存在している残屑の少なくとも一部を廃棄するための濾過工程を含む、記述16〜19のいずれか1つによる方法。
【0055】
21.さらに、前記生体液中に含まれた該循環核酸の少なくとも一部が回収されるように前記固相支持体によって捕捉された該循環核酸の少なくとも一部を放出させるための放出工程を、工程c)の後に含む、記述16〜20のいずれか1つによる方法。
【0056】
22.前記固相支持体によって捕捉された該循環核酸の前記少なくとも一部が前記固相支持体から、加熱器を流体運動と組み合せて使用することにより放出される、記述21のいずれか1つによる方法。
【0057】
23.さらに、該生体液中に存在している循環核酸を増幅させるための核酸増幅工程を、工程c)の後に含む、記述16〜22のいずれか1つによる方法。
【0058】
24.固相支持体が、生体液中に存在している循環核酸の少なくとも一部を、前記固相支持体と前記循環核酸との間の静電的相互作用によって捕捉し得るものである、記述16〜23のいずれか1つによる方法。
【0059】
25.粒子が、シラン処理粒子、酸化物粒子および磁性粒子からなる群より選択される、記述16〜24のいずれか1つによる方法。
【0060】
26.固相支持体が複数の磁性粒子を備えたものである、記述16〜25のいずれか1つによる方法。
【0061】
27.工程c)において、前記粒子の少なくとも一部が結合溶液および生体液から、少なくとも、該粒子の最短寸法よりも小さい孔を有するフィルター(38)を使用することにより分離される、記述26による方法。
【0062】
28.工程c)において、前記粒子の少なくとも一部が結合溶液および生体液から磁気的作用によって分離される、記述26または27による方法。
【0063】
29.カートリッジ(1)内で行なわれる自動化された方法であり、前記カートリッジ(1)が機器によって操作されるように設計されている、記述16〜28のいずれか1つによる方法。
【0064】
30.PEG誘導体が約6000Da〜約10000Daの分子量を有するものである、記述16〜29のいずれか1つによる方法。
【0065】
31.循環核酸が循環DNAを含む、記述16〜30のいずれか1つによる方法。
【0066】
32.エタノールおよび/またはイソプロパノール系の溶媒に対して感受性のある成分を備えた使い捨てカートリッジと適合性がある、記述16〜31のいずれか1つによる方法。
【0067】
33.結合溶液がエタノールおよびイソプロパノールを無含有のものである、記述16〜32のいずれか1つによる方法。
【0068】
34.さらに、前記固相支持体を洗浄するための洗浄溶液での洗浄工程を含み、ここで、該洗浄溶液がアルコールを無含有のものである、好ましくは該洗浄溶液がエタノールおよびイソプロパノールを無含有のものである、記述16〜33のいずれか1つによる方法。
【0069】
35.生体液から循環核酸を抽出するための方法であって、この方法は、連続工程:
a.循環核酸が含有されていると予想される生体液を供給する工程;
b.該生体液を:
−少なくともカオトロピック剤を含む溶解溶液;
−少なくとも、該循環核酸の少なくとも一部と協働するように設計されたPEG誘導体を含む結合溶液であって、エタノールおよびイソプロパノールを無含有の結合溶液;
−該循環核酸の少なくとも一部を捕捉し得る固相支持体
と接触させる工程;
c.前記固相支持体を、該溶解溶液、該結合溶液および該生体液から分離する工程
を含む。
【0070】
36.循環核酸が短鎖循環核酸と長鎖循環核酸とを含む、記述35による方法。
【0071】
37.固相支持体が短鎖循環核酸の少なくとも一部を捕捉し得るものである、記述36による方法。
【0072】
38.さらに、工程a)と工程b)との間に、該生体液中に存在している残屑の少なくとも一部を廃棄するための濾過工程を含む、記述35〜37のいずれか1つによる方法。
【0073】
39.さらに、前記生体液中に含まれた該循環核酸の少なくとも一部が回収されるように前記固相支持体によって捕捉された該循環核酸の少なくとも一部を放出させるための放出工程を、工程c)の後に含む、記述35〜38のいずれか1つによる方法。
【0074】
40.前記固相支持体によって捕捉された該循環核酸の前記少なくとも一部が前記固相支持体から、加熱器を流体運動と組み合せて使用することにより放出される、記述39のいずれか1つによる方法。
【0075】
41.さらに、該生体液中に存在している循環核酸を増幅させるための核酸増幅工程を、工程c)の後に含む、記述35〜40のいずれか1つによる方法。
【0076】
42.固相支持体が、生体液中に存在している循環核酸の少なくとも一部を、前記固相支持体と前記循環核酸との間の静電的相互作用によって捕捉し得るものである、記述35〜41のいずれか1つによる方法。
【0077】
43.固相支持体が、少なくとも膜を備えたものであり、好ましくはシリカ膜を備えたものである、記述35〜42のいずれか1つによる方法。
【0078】
44.固相支持体が複数の粒子を備えたものである、記述35〜43のいずれか1つによる方法。
【0079】
45.粒子が、シラン処理粒子、酸化物粒子および磁性粒子からなる群より選択される、記述35〜44のいずれか1つによる方法。
【0080】
46.固相支持体が複数の磁性粒子を備えたものである、記述35〜45のいずれか1つによる方法。
【0081】
47.工程c)において、前記粒子の少なくとも一部が結合溶液および生体液から、少なくとも、該粒子の最短寸法よりも小さい孔を有するフィルター(38)を使用することにより分離される、記述46による方法。
【0082】
48.工程c)において、前記粒子の少なくとも一部が結合溶液および生体液から磁気的作用によって分離される、記述46または47による方法。
【0083】
49.前記固相支持体を該溶解溶液、該結合溶液および該生体液から分離する工程c)が、少なくとも、粒子の保持が可能で、核酸に結合しないフィルターを使用する濾過によって行なわれる、記述44〜48のいずれか1つによる方法。
【0084】
50.フィルターがポリエーテルスルホン(PES)フィルター、ホウケイ酸ガラスマイクロファイバーフィルター、セルロースフィルターまたは非対称ポリスルホンフィルターである、好ましくはフィルターがPESフィルターである、記述49による方法。
【0085】
51.カートリッジ(1)内で行なわれる自動化された方法であり、前記カートリッジ(1)が機器によって操作されるように設計されている、記述35〜50のいずれか1つによる方法。
【0086】
52.PEG誘導体が約6000Da〜約10000Daの分子量を有するものである、記述35〜51のいずれか1つによる方法。
【0087】
53.循環核酸が循環DNAを含む、記述35〜52のいずれか1つによる方法。
【0088】
54.さらに、前記固相支持体を洗浄するための洗浄溶液での洗浄工程を含み、ここで、該洗浄溶液がアルコールを無含有のものである、好ましくは該洗浄溶液がエタノールおよびイソプロパノールを無含有のものである、記述35〜53のいずれか1つによる方法。
【0089】
55.エタノールおよび/またはイソプロパノール系の溶媒に対して感受性のある成分を備えた使い捨てカートリッジと適合性がある、記述35〜54のいずれか1つによる方法。
である。
【0090】
用語「循環核酸」または「無細胞核酸」は、本明細書で互換的に用いている場合、生体液中にみられる核酸、例えば、DNAのセグメントおよび/またはRNAのセグメントをいう。典型的には、これは、血流中、または細胞を含有していない生体液中、もしくはもはや細胞を含有していない生体液中、例えば血漿もしくは血清中の、細胞から放出された核酸をいう。
【0091】
一実施形態において、生体液は血漿、血清または尿であり得る。好ましくは、生体液は血漿または血清である。
【0092】
用語「血清」は、血液細胞でもなく凝固因子でもない血液成分をいう;この用語は、血漿からフィブリノゲンを除去したものをいう。
【0093】
用語「血漿」は、細胞は含有されていないが血液細胞(赤血球、白血球、血小板など)が懸濁しており、栄養素、糖分、タンパク質、ミネラル、酵素などが含有された血液の無色の水状液と定義される。
【0094】
用語「シリカ」は、SiO結晶および任意の他の形態のシリカ、特に、非晶質酸化ケイ素およびガラス粉末、アルキルシリカ、ケイ酸アルミニウム(ゼオライト)、または−NHを有する活性シリカをいう。
【0095】
好ましくは、本発明は生体液から循環核酸を抽出するための方法に関し、この方法は、a)循環核酸が含有されていると予想される生体液を供給する工程;b)該生体液を:少なくともカオトロピック剤を含む溶解溶液;少なくとも、該循環核酸の少なくとも一部と協働するように設計されたPEG誘導体を含む結合溶液(ここで、該結合溶液はエタノールおよびイソプロパノールを無含有のものである);該循環核酸の少なくとも一部を捕捉し得る固相支持体、と接触させる工程;ならびにc)前記固相支持体を該溶解溶液、該結合溶液および該生体液から分離する工程を含む。
【0096】
一実施形態において、工程b)は、生体液を溶解溶液;結合溶液;および固相支持体と任意の順序で接触させることにより行なわれ得る。
【0097】
一実施形態において、結合溶液は、さらに少なくとも界面活性剤を含むものであり得る。界面活性剤は、例えば、ポリソルベート(polysorbaat)20(Tween(登録商標)20、PEG(20)ソルビタン(sorbitaan)モノラウレート(monolauraat)、またはポリオキシエチレン(ethyleen)ソルビタンモノラウレート)であり得る。
【0098】
一実施形態において、循環核酸は短鎖循環核酸と長鎖循環核酸とを含むものであり得る。
【0099】
一実施形態において、固相支持体は、短鎖循環核酸の少なくとも一部を捕捉し得るものであり得る。
【0100】
一実施形態において、該方法は、さらに、工程a)と工程b)との間に、該生体液中に存在している残屑の少なくとも一部を廃棄するための濾過工程を含むものであり得る。
【0101】
一実施形態において、該方法は、さらに、前記生体液中に含まれた該循環核酸の少なくとも一部が回収されるように前記固相支持体によって捕捉された該循環核酸の少なくとも一部を放出させるための放出工程を、工程c)の後に含むものであり得る。
【0102】
一実施形態において、前記固相支持体によって捕捉された該循環核酸の少なくとも一部は前記固相支持体から、加熱器を流体運動と組み合せて使用することにより放出され得る。
【0103】
一実施形態において、該方法は、さらに、該生体液中に存在している循環核酸を増幅させるための核酸増幅工程を、工程c)の後に含むものであり得る。
【0104】
一実施形態において、固相支持体は、生体液中に存在している循環核酸の少なくとも一部を、前記固相支持体と前記循環核酸間の静電的相互作用によって捕捉し得るものであり得る。
【0105】
一実施形態において、固相支持体は少なくとも膜を備えたものであり得る。一実施形態において、固相支持体は少なくとも、循環核酸の少なくとも一部を捕捉し得る膜を備えたものであり得る。一実施形態において、固相支持体は少なくともシリカ膜を備えたものであり得る。一実施形態において、固相支持体は少なくとも、循環核酸の少なくとも一部を捕捉し得るシリカ膜を備えたものであり得る。これらの実施形態では、工程b)において、生体液はまず、固相支持体上で循環核酸の少なくとも一部を捕捉するために溶解溶液および固相支持体と接触され得、その後、生体液は、タンパク質の少なくとも一部を除去するために結合溶液と接触され得る。
【0106】
代替となる実施形態では、固相支持体は複数の粒子を備えたものであり得る。一実施形態において、固相支持体は、循環核酸の少なくとも一部を捕捉し得る複数の粒子を備えたものであり得る。これらの実施形態では、工程b)において、生体液はまず、溶解溶液および結合溶液と接触され得、その後、生体液は、固相支持体上の循環核酸の少なくとも一部を捕捉するために固相支持体と接触され得る。
【0107】
一実施形態において、粒子はシラン処理されたビーズ、酸化物ビーズまたは磁性のビーズであり得る。一実施形態において、粒子は、シラン処理粒子、酸化物粒子および磁性粒子からなる群より選択され得る。
【0108】
用語「粒子」は、本明細書で用いる場合、0.5〜5.0μm、好ましくは1.0〜5.0μm、好ましくは2.0〜4.0μmのサイズを有する粒子をいう。かかる粒子は核酸精製手法において知られている。例示的な粒子は3μmの粒径を有するものであり得る。粒子、好ましくはシラン処理粒子、酸化物粒子または磁性粒子のサイズは、レーザー回折により、例えばMastersizer(Malvern,Worcestershire,UK)を使用して測定され得る。粒子のサイズは平均サイズとみなされ得る。粒子のサイズは最大幅であり得る。
【0109】
用語「粒子」および「ビーズ」は本明細書において互換的に用いている場合があり得る。
【0110】
用語「シラン処理粒子」は、SiOまたは任意の他の形態のシリカ、特に、非晶質酸化ケイ素もしくはガラス粉末、アルキルシリカ、ケイ酸アルミニウム(ゼオライト)または−NHを有する活性シリカを含む粒子をいう。
【0111】
用語「シラン処理粒子」および「シリカ粒子」は本明細書において互換的に用いている場合があり得る。
【0112】
用語「酸化物粒子」は、酸化ケイ素(SiO)粒子または金属酸化物粒子をいい、金属酸化物粒子は、例えば好ましくは酸化鉄粒子である。
【0113】
用語「磁性粒子」は、磁気に誘引され易い粒子をいう。
【0114】
該粒子は被覆粒子であってもよい。
【0115】
一実施形態において、固相支持体は複数の磁性粒子を備えたものであり得る。一実施形態において、固相支持体は複数の超常磁性粒子を備えたものであり得る。
【0116】
一実施形態では、工程c)において、前記粒子の少なくとも一部が結合溶液および生体液から、少なくとも、該粒子の最短寸法よりも小さい孔を有するフィルター(38)を使用することにより分離される。
【0117】
本明細書において教示している方法のさらなる一実施形態では、工程c)において、前記粒子の少なくとも一部が結合溶液および生体液から磁気的作用によって分離される。
【0118】
一実施形態において、溶解溶液、結合溶液および生体液からの固相支持体、特に粒子の分離は、粒子の保持が可能なフィルターを使用して濾過することにより行なわれ得る。
【0119】
一実施形態において、溶解溶液、結合溶液および生体液からの固相支持体、特に粒子の分離は、核酸に結合しないフィルターを使用して濾過することにより行なわれ得る。
【0120】
一実施形態において、前記固相支持体を該溶解溶液、該結合溶液および該生体液から分離する工程c)は、少なくとも、粒子の保持が可能で、核酸に結合しないフィルターを使用する濾過によって行なわれ得る。
【0121】
かかるフィルターにおいて好都合なものは、すべての粒子を保持することが可能であり、DNA(あれば)に結合しないものである。
【0122】
一実施形態において、フィルターは親水性材料で構成されたものであり得る。
【0123】
一実施形態において、フィルターはポリエーテルスルホン(PES)フィルター、ホウケイ酸ガラスマイクロファイバーフィルター、セルロースフィルターまたは非対称ポリスルホンフィルターであり得る。
【0124】
非対称ポリスルホンフィルターの一例は、Vivid(商標) Plasma Separation Membranes(Pall Corporation)である。
【0125】
一実施形態において、フィルターは、ポリエーテルスルホン(PES)で実質的に構成または実質的に作製されたものであり得る。好ましくは、フィルターはPESフィルターである。PESフィルターにおいて好都合なものは、すべての粒子を保持することが可能であるが、核酸(例えば、DNA)またはタンパク質(あれば)に結合しないものである。対照的に、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などの多くの従来の材質のフィルターは、タンパク質を吸収するもの、または核酸を吸収するもののいずれかであり得る。PESフィルターにおいて好都合なものは、好都合には、ミリリットル容量の液体(例えば、30ミリリットルより多くの液体)の容易な濾過が可能なものである。PESフィルターにおいて好都合なものは、好都合には、有意に圧力が上昇することなく、すべての液体の通過が可能なものである。また、かかるPESフィルターは、本明細書において教示している方法に使用される化学薬品および温度に対して不活性であるという点で好都合なものである。
【0126】
一実施形態において、PESフィルターは0.45μmの細孔径を有するものであり得る。かかる細孔径により、粒子の完全な捕捉を確実にすることが可能である。一実施形態において、PESフィルターは非対称であり得、この場合、フィルターの一方側はフィルターの他方側より小さい細孔径の細孔を有する。例えば、PESフィルターは、フィルターの一方側では約20μmの細孔径を有し、フィルターの他方側で0.45μmまで漸減しているものであり得る。かかるPESフィルターは、好都合なのは、低い膜貫通圧力で高容量のフローが達成されることが可能なものである。
【0127】
一実施形態において、前記方法は、カートリッジ(1)内で行なわれる自動化された方法であり得、前記カートリッジ(1)は機器によって操作されるように設計されている。
【0128】
一実施形態において、PEG誘導体は約6000Da〜約10000Daの分子量を有するものであり得る。
【0129】
一実施形態において、循環核酸には循環DNAが含まれ得る。
【0130】
一実施形態において、結合溶液はアルコールを無含有のものである。一実施形態において、結合溶液はアルコールを含まないものであってもよい。
【0131】
用語「アルコール」は、本明細書で用いる場合、ヒドロキシル官能基(−OH)が飽和炭素原子に結合している任意の有機化合物をいう。好ましくは、アルコールは一価アルコール、例えば、メタノール(CHOH);エタノール(COH);イソプロピルアルコール、2−プロパノールもしくはイソプロパノール(COH);ブチルアルコールもしくはブタノール(COH);ペンタノール(C11OH);またはヘキサデカン−1−オール(C1633OH)である。
【0132】
好ましい一実施形態では、アルコールはエタノールおよび/またはイソプロパノールである。
【0133】
一実施形態において、該方法は、さらに、前記固相支持体を洗浄するための洗浄溶液での洗浄工程を含むものであり得る。例えば、固相支持体は、前記固相支持体を該溶解溶液、該結合溶液および該生体液から分離した後、洗浄され得る。一実施形態において、該方法は、さらに、前記固相支持体を洗浄するための洗浄溶液での洗浄工程を、工程c)の後に含むものであり得る。
【0134】
一実施形態において、1種類以上の洗浄溶液はアルコールを無含有のものであり得る。一実施形態において、1種類以上の洗浄溶液はアルコールを含まないものであってもよい。好ましくは、1種類以上の洗浄溶液はエタノールおよびイソプロパノールを無含有のものである。
【0135】
一実施形態では、結合溶液と1種類以上の洗浄溶液がアルコールを無含有のものであり得る。一実施形態において、結合溶液と1種類以上の洗浄溶液はアルコールを含まないものであってもよい。好ましくは、結合溶液と1種類以上の洗浄溶液はエタノールおよびイソプロパノールを無含有のものである。
【0136】
一実施形態では、結合溶液、溶解溶液、1種類以上の洗浄溶液および溶出溶液がアルコールを無含有のものであり得る。一実施形態において、結合溶液、溶解溶液、1種類以上の洗浄溶液および溶出溶液はアルコールを含まないものであってもよい。好ましくは、結合溶液、溶解溶液、1種類以上の洗浄溶液および溶出溶液はエタノールおよびイソプロパノールを無含有のものである。
【0137】
一実施形態において、該方法は、エタノールおよび/またはイソプロパノール系の溶媒に対して感受性のある成分を備えた使い捨てカートリッジと適合し得る。
【0138】
本発明を、添付の図面に照らして示した以下の詳細な説明により、さらに説明する。図面は、循環核酸を生体液から抽出するための方法の例示的および説明的な実施形態を表す。
【図面の簡単な説明】
【0139】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る方法を行なうために設計したカートリッジの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0140】
本実施形態において、本発明に係る、生体液からのciNAの抽出方法は、機器(図示せず)によって操作されるように設計された図1に示すような使い捨てカートリッジ1を用いて行なわれる。カートリッジ1は、図1に示すように、容器2で形成されており、容器2の幅を画定する2つの長方形の主表面、第1の主表面3と第2の主表面4を備えている。第1の主表面3は、機器に対向して配置されるように設計されている。第2の主表面4は、オペレーターによって機能が遂行されるように設計された抽出エリア5を備えている。
【0141】
カートリッジ1は6つの回路6を備えており、前記回路6は第1の主表面3と第2の主表面4の間に設置された1つの収集チャンバ7と流体によって連結される。
各回路6は:
一方側で抽出表面5と、および反対側でチャネル9と流体によって連結されるポート8;
さらにバルブ10を備えているチャネル9
を備えている。
【0142】
各ポート8は、1つのチューブ11が受け入れられるように設計されている。その目的のため、各チューブ11は、前記チューブの一端に設置され、前記チューブ11がカートリッジ1の抽出エリア5に対して垂直に位置している場合に1つのポート8内に挿入されるように設計された先端部12を備えている。先端部12は、さらに、前記チューブ11の内部容積に至るスルーホール13を備えている。バルブ10に関して、各バルブ10は、1つのポート8と収集チャンバ7間の流体による連結を制御するために、機器によって操作される。
【0143】
これに関連して、カートリッジ1に機能を遂行させる6つの回路6は:
−試料回路は、試料チューブ15が受け入れられるように設計された試料ポート14を備えており、前記試料ポート14は、試料バルブ17を備えた試料チャネル16と流体によって連結される;
−第1の洗浄回路は、第1の洗浄チューブ19が受け入れられるように設計された第1の洗浄ポート18を備えており、前記第1の洗浄ポート18は、第1の洗浄バルブ21を備えた第1の洗浄チャネル20と流体によって連結される;
−第2の洗浄回路は、第2の洗浄チューブ23が受け入れられるように設計された第2の洗浄ポート22を備えており、前記第2の洗浄ポート22は、第2の洗浄バルブ25を備えた第2の洗浄チャネル24と流体によって連結される;
−溶出回路は、溶出チューブ27が受け入れられるように設計された溶出ポート26を備えており、前記溶出ポート26は、溶出バルブ29を備えた溶出チャネル28と流体によって連結される;
−核酸回路は、核酸チューブ31が受け入れられるように設計された核酸ポート30を備えており、前記核酸ポート30は、核酸バルブ33を備えた核酸チャネル32と流体によって連結される;
−廃液回路は、廃液チューブ35が受け入れられるように設計された廃液ポート34を備えており、前記廃液ポート34は、廃液バルブ37を備えた廃液チャネル36と流体によって連結される、
である。
【0144】
本発明に係る方法は、ciNAを含む生体液を供給することにより開始される。生体液は、測定対象のある濃度のciDNAが含まれた5mlの血漿で構成されており、前記ciDNAは、さらに、短鎖ciDNAと長鎖ciDNAとを含むものである。
【0145】
この場合、収集チャンバ7は、ciDNAの少なくとも一部を捕捉し得る固相支持体が収集されるように設計されたポリエーテルスルホン(PES)フィルター38を備えている。ここで、固相支持体は複数の磁性粒子(図示せず)を備えたものである。その目的のため、フィルター38は、磁性粒子の最短寸法よりも小さい孔を有するものである。さらに、収集チャンバ7は、機器内に含まれた加熱器(図示せず)と接しており、収集チャンバ7が加熱される。
【0146】
本実施形態において、磁性粒子は、ciDNAの少なくとも一部を静電的相互作用によって捕捉し、次いで放出するように設計された磁性シリカビーズである。磁性シリカビーズは、酸性媒体中では正の電荷を有し、それにより、負の電荷を有するciDNAの少なくとも一部の捕捉が可能になる。塩基性媒体中では、前記磁性シリカビーズは負の電荷を有することになり、それにより、捕捉されたciDNAの放出が助長される。好都合なことに、かかる磁性シリカビーズもまた、収集チャンバ7付近に配置された磁石による磁気的作用によって収集できるものである。ここに示していない別の実施形態では、固相支持体は、膜を備えたもの、好ましくはシリカ膜を備えたものである。
【0147】
血漿中に含まれたciDNAの抽出を開始する前に、本発明に係る抽出方法に必要とされる2つの溶液、第1の溶液と第2の溶液がオペレーターによって調製される。第1の溶液は、4mlのPEG 8000(CAS番号25322−68−3)、100μlのTween(登録商標)20(CAS番号9005−64−5)および溶解バッファー(40mlに充分な量)を含む結合溶液である。第2の溶液は、pH3の水(分子生物学グレード)で6倍に希釈したクエン酸ナトリウム20nMを含む洗浄溶液である。次いで、カートリッジ1を機器に取り付け、試料チューブ15、第1の洗浄チューブ19、第2の洗浄チューブ23、溶出チューブ27、核酸チューブ31および廃液チューブ35をそれぞれのポート8内に挿入する。このように、本実施形態では、バルブ10が開放位置にある場合、各チューブ11が収集チャンバ7と流体によって連結される。さらに、1mlの溶解溶液を第1の洗浄チューブ19内に投入し、1mlの洗浄溶液を第2の洗浄チューブ23内に投入し、1100μlのTrisバッファーを溶出溶液チューブ27内に投入する。この場合、溶解溶液は、グアニジニウム塩を含む少なくともカオトロピック剤を含むものである。
【0148】
この実施形態の第1工程では、血漿をさらなるフィルター(図示せず)を通して濾過し、血漿中に存在している残屑の少なくとも一部を廃棄した後、この濾過血漿を試料チューブ15内に投入する。
【0149】
次いで、第2工程では、試料チューブ15内に収容された濾過血漿が、それぞれ10mlの溶解溶液および200μlのシリカビーズ溶液とともに室温で10分間インキュベートされる。本実施形態において、溶解溶液は、血漿中に存在しているciDNAと結合しているタンパク質および小胞の少なくとも一部を除去することを目的とするものである。この第2工程は、血漿中に存在している長鎖ciDNAの少なくとも一部が固相支持体で捕捉されることを可能にする初期捕捉工程である。
【0150】
次いで、前述のようにして調製した結合溶液のうち9mlを試料チューブ15内に投入して反応混合物を構成し、前記反応混合物を試料チューブ15内で、そのまま室温で5分間インキュベートする。続いて、機器により試料チャネル16の試料バルブ17を開放して試料チューブ15と流体によって連結させ、こうして反応混合物の収集チャンバ7内への移送を可能にする。次いで、反応混合物は、磁性シリカビーズの少なくとも一部を収集し得るポリエーテルスルホン(PES)フィルター38を通して濾過され、機器によって開放された廃液バルブ37を経由し、その流れを通じて廃液チューブ35に移送される。
【0151】
次の工程では、フィルター38上に収集された磁性シリカビーズを洗浄するために、機器により第1の洗浄バルブ21と第2の洗浄バルブ25が連続操作される。そして、まず第1の洗浄チューブ19内に収容された溶解溶液が、次に第2の洗浄チューブ23内に収容された洗浄溶液が、フィルター38上に収集された磁性シリカビーズと接触し、機器によって開放された廃液バルブ37を経由し、その流れを通じて廃液チューブ35に移送される。
【0152】
磁性シリカビーズ上に捕捉されたciDNAの放出は2工程プロセスで操作される。まず、機器により溶出バルブ29を操作し、フィルター38上に収集された磁性シリカビーズを、溶出チューブ27内に収容された1000μlのTrisバッファーと接触させて正の電荷を有する磁性シリカビーズを中和し、機器によって開放された廃液バルブ37を経由し、その流れを通じて再度、廃液チューブ35に移送させる。次に、機器により加熱器のスイッチを入れて70℃にし、磁性シリカビーズが収容された収集チャンバ7を加熱し、次いで核酸バルブ31と溶出バルブ29を開放し、100μlのTrisバッファーを、磁性シリカビーズを含有しているフィルター38を介して溶出チューブ27と核酸チューブ31間で往復させて10分間ポンプ輸送する。こうして、加熱器をTrisバッファーの流体運動との組み合せで使用することにより磁性シリカビーズによって捕捉されたciDNAの少なくとも一部が放出される。10分後、得られた溶出バッファーは核酸チューブ31内に最終的に移送され、血漿から抽出されたciDNAを含むTris溶液が保存される。
【0153】
好都合には、血漿中に存在しているciDNAを増幅させるために、PCR増幅などの核酸増幅工程が、核酸チューブに含まれた溶液に対して行なわれる。
【0154】
本発明の他の実施形態は、当業者には、本明細書および本明細書に開示した本発明の実施を検討すると自明となろう。本明細書および実施例は例示的であるにすぎないとみなされることを意図し、本発明の真の範囲および趣旨は以下の特許請求の範囲によって示される。
図1
【国際調査報告】