(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2016-540717(P2016-540717A)
(43)【公表日】2016年12月28日
(54)【発明の名称】溶浸セラミックマトリックス複合体中のマトリックスクラックの補修方法
(51)【国際特許分類】
C04B 41/88 20060101AFI20161205BHJP
C04B 37/00 20060101ALN20161205BHJP
F02C 7/00 20060101ALN20161205BHJP
【FI】
C04B41/88 U
C04B37/00 B
F02C7/00 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-526305(P2016-526305)
(86)(22)【出願日】2014年9月26日
(85)【翻訳文提出日】2016年6月15日
(86)【国際出願番号】US2014057571
(87)【国際公開番号】WO2015065627
(87)【国際公開日】20150507
(31)【優先権主張番号】14/067,322
(32)【優先日】2013年10月30日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】390041542
【氏名又は名称】ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ
(74)【代理人】
【識別番号】100137545
【弁理士】
【氏名又は名称】荒川 聡志
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 俊久
(74)【代理人】
【識別番号】100113974
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 拓人
(72)【発明者】
【氏名】コーマン,グレゴリー・スコット
【テーマコード(参考)】
4G026
【Fターム(参考)】
4G026BA14
4G026BB14
4G026BD08
4G026BF31
4G026BG02
(57)【要約】
MI−CMC部品中のマトリックスマイクロクラックを補修する方法が、部品のクラックのあるマトリックス部分内に存在する「フリーの」ケイ素相を、ケイ素相の融点を超える温度に加熱する工程を含む。部品の加熱中に、ケイ素相の追加の源が、部品に供給される。部品の周囲の雰囲気は、部品の加熱の間、制御される。MI−CMC部品は、ケイ素相の融点未満に冷却されて、マイクロクラック中に移動したケイ素相を冷却し固化する工程によって、クラック面を接着する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マトリックス部分が実質的に炭化ケイ素と、炭化ケイ素内に分散したケイ素相の領域とを含む溶浸セラミックマトリックス複合体(CMC)部品のマトリックス部分の1以上のクラックを補修する方法であって、
溶浸CMC部品をケイ素相の融点を超える第1の温度に加熱して、マトリックス部分内に溶融ケイ素相を形成する工程と、
溶浸CMC部品をケイ素相の融点を超える第1の温度に加熱しながら、溶浸CMC部品の周囲の雰囲気を制御する工程と、
溶浸CMC部品を、第1の温度未満である第2の温度に冷却して、1以上のクラック内に流れ込んだ溶融ケイ素相を固化して1以上のクラックの表面を接着する工程と
を含む方法。
【請求項2】
溶浸CMC部品をケイ素相の融点を超える温度に加熱しながら、追加の溶融ケイ素相を溶浸CMC部品に供給する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
溶浸CMC部品をケイ素相の融点を超える温度に加熱しながら、追加の溶融ケイ素相を溶浸CMC部品に供給する工程が、部品の外表面にケイ素相を配置する工程を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
溶浸CMC部品をケイ素相の融点を超える第1の温度に加熱して、マトリックス部分内に溶融ケイ素相を形成する際に、溶融ケイ素相が、毛管作用によって1以上のクラック内に流れ込む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ケイ素相が実質的に元素態ケイ素であり、他の元素がケイ素相内に溶解している、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ホウ素がケイ素相内に溶解している、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
部品が、マトリックス部分に炭化ケイ素繊維を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
第1の温度が約1380℃以上である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
溶浸CMC部品の周囲の雰囲気を制御する工程が、部品の周囲に不活性雰囲気を供給する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
溶浸CMC部品の周囲の雰囲気を制御する工程が、部品の周囲に真空をもたらすことを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
真空が、約0.01torr〜約2torrの範囲内である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
真空が、約0.1torr〜約1torrの範囲内である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
溶浸CMC部品の周囲の雰囲気を制御する工程が、部品の周囲に非酸化性雰囲気を供給する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
溶浸CMC部品を第1の温度に加熱する前に、溶浸CMC部品を前処理して、1以上のクラック上に形成された酸化物膜を実質的に除去する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
溶浸CMC部品を前処理する工程は、酸化物膜を実質的に除去するためにエッチング液を利用する工程を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
溶浸CMC部品を前処理する工程が、炭素質樹脂の化学蒸着(CVD)及び熱分解の少なくとも1つを介して、酸化物膜上に炭素膜を形成する工程を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
炭素膜を利用して、炭素熱還元を介して酸化物膜を実質的に除去する工程を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
溶浸CMC部品をケイ素相の融点を超える第1の温度に加熱して、溶融ケイ素相をマトリックス部分内に形成する工程が、溶浸CMC部品の温度を約5分〜約30分間ケイ素相の融点よりも高く維持する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
溶浸CMC部品をケイ素相の融点を超える第1の温度に加熱して、溶融ケイ素相をマトリックス部分内に形成する工程が、溶浸CMC部品の温度を約10分〜約20分間ケイ素相の融点よりも高く維持する工程を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
約7体積%〜約20体積%のケイ素相が、炭化ケイ素マトリックス内に分散している、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
一般に、セラミックマトリックス複合体(CMC)中のクラックを補修し、特に、繊維強化溶浸セラミックマトリックス複合体(MI−CMC)中のマトリックスクラックを補修する方法、並びに関連する構成、部品及びアセンブリ
【背景技術】
【0002】
SiCセラミック等のモノリシックセラミックが何年も前に開発されたが、耐損傷性を欠いており壊滅的に故障するので、高温構造用途に使われることは決してなかった。セラミックマトリックス複合体(CMC)、特に繊維強化CMCが開発されて、モノリシックセラミックの耐損傷性の問題が軽減され、これによって、高温構造用途(ガスタービン機関等)にとって魅力的となった。高温構造用途にとって特に魅力的である繊維強化CMCの一タイプが、反応性の溶浸繊維強化CMC(以降「MI−CMC」)である。
【0003】
MI−CMCにおいて、繊維及びマトリックス構成素のプリフォームに金属が浸入して、マトリックス構成素と反応すると、セラミックマトリックスが生じる。SiC系MI−CMC(浸入金属はケイ素又はケイ素合金であり、マトリックス構成素は、得られるマトリックスが実質的にSiC(例えばSiC及び/又はCの微粒子)である)が、高温構造用途にとって特に魅力的である。というのも、他のCMCと比較して、熱伝導率が高く、熱ショック耐性、クリープ耐性、及び耐酸化性が優れているからである。
【0004】
MI−CMCの現在の一不利点として、比較的費用がかかるということがある。したがって、MI−CMC部品は、長時間、経済的に存続可能であるような作動条件にある必要がある。例えば、ガスタービン用途において、MI−CMC部品は、機関サービスの数インターバルを通じて持続することが期待される。不運にも、典型的な高温構造用途(例えば、ガスタービン用途)での使用中に、MI−CMC部品は、多くの場合、部品のマトリックスクラッキングストレスを超える負荷を受ける。そのようなストレスから部品のマトリックス部分において得られるクラックが、MI−CMC複合体の剛性及び耐酸化性を低下させるように作用して、MI−CMC部品の早期故障の原因となる虞がある。さらに、部品又はツールの脱落等に由来する一時的な超過ストレス状態が、MI−CMC部品の製造、輸送、及び/又は設置の間に起こる虞があり、そしてまたマトリックスクラックをもたらす虞がある。
【0005】
結果として、MI−CMC部品内のマトリックスクラックを補修して、これを使用可能な状態に戻す方法、並びに関連する構成、部品及びアセンブリの必要性が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2010/059166号明細書
【発明の概要】
【0007】
マトリックス部分が実質的に炭化ケイ素と、炭化ケイ素内に分散したケイ素相の領域とを含む溶浸セラミックマトリックス複合体(CMC)部品のマトリックス部分の1以上のクラックを補修する方法が開示される。一部の実施形態では、本方法は、溶浸CMC部品をケイ素相の融点を超える第1の温度に加熱して、マトリックス部分内に溶融ケイ素相を形成することを含む。一部の実施形態では、本方法は、溶浸CMC部品をケイ素相の融点を超える第1の温度に加熱しながら、溶浸CMC部品の周囲の雰囲気を制御することを含む。一部の実施形態では、本方法は、溶浸CMC部品を、第1の温度未満である第2の温度に冷却して、1以上のクラック内に流れ込んだ溶融ケイ素相を固化して1以上のクラックの表面を接着することを含む。
【0008】
本開示のこれらの、そして他の目的、特徴、及び利点は、添付の図面をともにして、本開示の種々の態様の以下の詳細な説明から、明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本開示に従う、例示的な溶浸繊維強化SiC系セラミックマトリックス複合体の断面図である。
【図2】本開示に従う、例示的なマイクロクラックを有する、図1の例示的な溶浸繊維強化SiC系セラミックマトリックス複合体の断面図である。
【図3】図2の例示的な溶浸繊維強化SiC系セラミックマトリックス複合体の例示的なマイクロクラックを補修する方法を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に示される各本開示のある態様の説明を容易にするものであり、本開示の範囲を限定すると解釈されるべきでない。さらに、本明細書及び特許請求の範囲を通して用いられる近似の文言(approximating language)は、その文言が関連する基本的な機能の変化をもたらすことのないように差し支えなく変わり得る、あらゆる定量的説明を変更するために適用される。したがって、「約」等の用語によって変更される値は、特定された正確な値に限定されない。場合によっては、近似の文言は、値を測定する機器の精度に対応してよい。種々の実施形態の要素を紹介する場合、冠詞「1つの(a)」、「1つの(an)」、「前記(the)」及び「前記(said)」は、要素が1つ以上あることを意味することが意図される。用語「含む、備える(comprising)」、「含む、備える、挙げられる(including)」、及び「有する(having)」は、包括的であり、一覧にされた要素以外の追加の要素があってよいことを意味することが意図される。本明細書中で用いられる用語「あり得る(may)」及び「あってよい(may be)」は、一組の状況内の発生の可能性、指定された性質、特徴、もしくは機能の所有を示し、かつ/又は、条件付きの(qualified)動詞と関連する能力、機能、もしくは可能性の1つもしくは複数を表すことによって、別の動詞を条件付ける。したがって、「あり得る(may)」及び「あってよい(may be)」の使用は、修飾された用語が、示された能力、機能、又は使用について、明らかに適切である、可能である、又は適していることを示す一方で、一部の状況において、修飾された用語は、時折、適切でない、可能でない、又は適していない場合があることを考慮に入れている。作動パラメータのあらゆる例が、開示される実施形態の他のパラメータを除外しない。特定の任意の実施形態に関して本明細書中に記載される、例示される、又はそれ以外で開示される部品、態様、特徴、構成、配置、使用等は、本明細書中で開示される他の任意の実施形態に同様に当てはめられ得る。
【0011】
様々な生産方法又は製造方法が、溶浸繊維強化セラミックマトリックス複合体(MI−CMC)の製造のために開発されてきた。あるプロセスとして、「プリプレッグプロセス」が知られており、そして別のプロセスとして、「スラリーキャスト」プロセスが知られており、例えば米国特許出願公開第2006/0163773号明細書に開示されている。プリプレッグプロセス及びスラリーキャストプロセスの双方が、マトリックス構成素のスラリー(例えばSiC及び/又は炭素微粒子、バインダー、溶媒等)を利用するが、当該プロセスは主に、素地複合体(green composite)プリフォームが形成される方法が異なる。しかしながら、双方のプロセスにおける最終緻密化工程は、素地複合体プリフォーム中へのケイ素の溶浸工程である。
【0012】
繊維及びマトリックス構成素を含有するグリーン体の複合体プリフォームが形成されると、加熱されながらケイ素金属又は合金源と接触して、マトリックス構成素と反応したときにセラミックマトリックスが生じる。溶浸ケイ素相は、グリーン体の複合体プリフォームのマトリックス構成素(例えばSiC及び/又は炭素のマトリックス構成素)を容易に濡らすので、毛管作用によってプリフォームの一部の小孔中に容易に引き入れられる。外部駆動力は典型的に、マトリックス構成素中へのケイ素の浸入に必要とされず、浸入の結果としての複合体プリフォームの寸法は典型的に変わらない(プリフォームの小孔がケイ素で満たされるからである)。ケイ素(例えば、ケイ素金属又は合金)を用いる繊維強化CMCの溶浸のための現行の従来プロセスは、ケイ素金属粉末がプリフォームの表面上に適用され、又はケイ素が溶融した状態でプリフォームに移されるバッチプロセス(多孔質カーボンウィックを用いる)を利用する。
【0013】
プリプレッグプロセス及びスラリーキャストプロセスを利用して、溶浸SiC系セラミックマトリックス複合体(SiC系MI−CMC)が、繊維強化炭化ケイ素(SiC)マトリックス複合体となり、例えば、図1及び図2において、例示的なSiC系MI−CMC部品10の断面図によって示される。SiC繊維が利用されると、得られるCMCは、SiC/SiC MI−CMCと呼ばれ得る。一般に、SiC系MI−CMC部品は、SiC及び/又は炭素マトリックス構成素中に埋め込まれた繊維(例えば、BNコーティングされた炭化ケイ素繊維)を含有するプリフォーム中への、ケイ素金属又は合金の溶浸によって製造される。
【0014】
図1に示されるように、先に議論されたケイ素浸入プロセス中の例えば毛管作用を介した溶融ケイ素の浸入時に、ケイ素は、マトリックス構成素の一部の小孔中に引き入れられてマトリックス構成素の炭素と反応して、SiC系MI−CMC部品10を形成する。マトリックス部分12が、繊維14(例えば、SiC繊維)の周囲に、実質的にSiC結晶質の構造16を含む。マトリックス部分12のセラミックSiC結晶質構造16を形成することに加えて、ケイ素浸入プロセスは、マトリックス部分12の残りの小孔の少なくとも一部を、構成素の炭素と反応しないケイ素金属又は合金で満たす。このようにして、「フリーな」、又は反応しないケイ素相18の相互連結ポケットが、マトリックス部分12の内部に形成される。ケイ素相が、元素態ケイ素を、ケイ素相中に溶解した他の任意の元素(ホウ素等)とともに実質的に含有するとして本明細書中で規定される。このように、一部の例示的なSiC系MI−CMC10のマトリックス部分12は、実質的に、Si−SiCマトリックス部分12である。一部の実施形態では、マトリックス部分12中に浸入した「自由」ケイ素相18(すなわち、SiCを形成していないSi)の量は、マトリックス部分12の約2体積%〜約50体積%、より好ましくはマトリックス部分12の約5体積%〜約35体積%、さらにより好ましくはマトリックス部分12の約7体積%〜約20体積%である。
【0015】
一部の例示的な実施形態では、例示的なSiC系MI−CMC部品10が、図2に示されるように、クラック20が少なくともマトリックス部分12中に形成されるように、1以上の一時的な負荷又はストレスを受ける場合がある。クラック20として、あらゆる破壊、不連続性、ボイド、亀裂、異常、分離等が挙げられ得る。例えば、製造、出荷、又は使用中に、部品10は、一時的に、マトリックス部分12のマトリックスクラッキングストレス(例えば、Si−SiCマトリックス部分12のマトリックスクラッキングストレス)を超えるレベルにまで、負荷が与えられる場合がある。このような一部の実施形態では、SiC系MI−CMC部品10のマトリックス部分12において形成されるマトリックスクラック20は、最も広い部分の幅が最大約20ミクロンであり、より好ましくは最大約5ミクロンであるようなマトリックスマイクロクラック20となり得る。
【0016】
マトリックスクラック20は、合成部品10の剛性及び耐酸化性を引き下げるように作用し得、これによって、使用中の早期故障の原因となる虞がある。例えば、マトリックスクラック20、例えば、図2に示される例示的なSiC系MI−CMC部品10の例示的なマトリックスマイクロクラック20は、クラックのない部品と比較して、MI−CMC部品10の比例(弾性)限界(PL)、弾性率(E)、及び極限強さの少なくとも1つを引き下げるのに有効であり得る。マトリックスクラック20はまた、MI−CMC部品10のマトリックス部分12の、又はMI−CMC部品の繊維もしくは繊維コーティングの環境分解の原因となり得、これは今度は、クラックのない部品10と比較して、部品10のPL、E、及び極限強さの少なくとも1つを引き下げるようにさらに作用する。
【0017】
図3に示されるように、MI−CMC部品のマトリックスクラック(図2に示される例示的なSiC系MI−CMC部品10のマトリックスマイクロクラック20等)を補修する例示的な方法100が、マトリックスクラック20が1以上の超過ストレスイベントから形成されているSiC系MI−CMC部品10を得る102ことを含んでよい。一部の実施形態では、マトリックスクラック20を有するSiC系MI−CMC部品10を得ることは、使用から(例えば、ガスタービンから)そのような部品10を取り出すことを含んでよい。マトリックスクラック20を有するSiC系MI−CMC部品10が得られる102と、マトリックスクラック20を補修する方法100は、図3に示されるように、マトリックスミクロ構造部分12の内部に含有される残りの「フリーの」ケイ素相18の融点を超える温度に部品10を加熱106することを含んでよい。一部の実施形態では、クラックのある部品10は、約1380℃以上の温度に加熱106されてよい。一部の実施形態では、クラックのある部品10は、約1420℃以上の温度に加熱106されてよい。一部の実施形態では、部品10は、比較的短い時間量の間加熱106されて、マトリックス部分12内の溶融Siが(マトリックスクラック20中に流れ込んで、マトリックスクラック20を実質的に満たす以外に)相互作用するのを、又はそうでなければ部品10の他の構成素を「攻撃する」のを防止する。そのような一部の実施形態では、部品10は、約5分〜約30分間、好ましくは約10分〜約20分間加熱106してもよい。
【0018】
一部の実施形態(図3に示される)において、MI−CMC部品10のマトリックスクラック20を補修する例示的な方法100が、部品10の周囲の雰囲気を制御108しながら、部品10が加熱106されることを含んでよい。一部の実施形態では、部品10の周囲の雰囲気を制御108しながら、部品10が加熱106される工程は、真空炉内で部品10を加熱106することを含む。そのような一部の例示的な実施形態では、真空炉は、非酸化性雰囲気(すなわち、炉内の残留ガスは、浸入ケイ素に対して重大な悪影響を及ぼさない)中で、部品10を加熱106するように構成されてよい。一部の実施形態では、炉は、不活性ガス雰囲気中で部品10を加熱106するように構成されてよい。一部の実施形態では、炉は、真空中で部品10を加熱106して、部品10内にトラップ又は形成されているガスを実質的に除去するように構成されてよい。例えば、一部の実施形態では、炉は、約0.01torr〜約2torrの範囲内の、好ましくは約0.1torr〜約1torrの範囲内の真空中で部品10を加熱106するように構成されてよい。
【0019】
一部の実施形態では、一部のMI−CMC部品10のマトリックスクラック20は、酸化が起こるような環境にさらされてよい。例えば、一部の実施形態では、環境条件により、シリカ又はSiO
2等の酸化物膜が、マトリックスクラック20の表面又は表側(すなわち、マトリックスクラック20によってさらされる、又は形成されるマトリックス部分12の表面)の上に形成されてよい。マトリックスクラック20の表面上の酸化物膜が、溶融ケイ素相の、マトリックスクラック20中への流を制限し、かつ潜在的に実質的に防止するように作用し得る。部品10のマトリックスクラック20のそのような環境分解を説明するために、一部の実施形態では、MI−CMC部品10のマトリックスクラック20を補修する例示的な方法100は、部品10を前処理104して(図3参照)、マトリックスクラック20上に形成されたあらゆる酸化物膜を、少なくとも部分的に、実質的に除去することを含んでよい。例えば、一部の実施形態では、MI−CMC部品10のマトリックスマイクロクラック20を補修する方法は、エッチング液で部品10を前処理104して、マトリックスクラック20の表面又は表側の上にある酸化物膜を実質的に除去することを含んでよい。一部の他の実施形態では、MI−CMC部品10のマトリックスマイクロクラック20を補修する方法100は、マトリックスクラック20の表面上に形成された酸化物膜上に炭素膜を適用することによって、部品10を前処理104することを含んでよい。例えば、部品10を前処理104する方法は、マトリックスクラック20の表面上に形成された酸化物膜上に、炭素質樹脂の化学蒸着(CVD)を介して、又は炭素質樹脂の熱分解によって、炭素膜を適用することを含んでよい。一部の実施形態では、炭素膜は、炭素膜の炭素による酸化物(例えば、SiO
2)の炭素熱還元を介して、酸化物膜又は表面層を除去するように作用し得、約0.01bar未満の圧力にて揮発性のガス(例えば、SiO)を潜在的に産出する。
【0020】
図3に示されるように、MI−CMC部品10のマトリックスクラック20を補修する方法100の一部の複合体10の加熱106中に、追加のケイ素相18を部品又は複合体10に供給110することを含んでよい。一部の実施形態では、加熱106中に追加のケイ素相18を複合体10に供給110することは、ケイ素相18を複合体10の外側に適用しながら、複合体10が加熱106されることを含んでよい。例えば、追加のケイ素相18を複合体10に供給110することは、複合体が加熱106されて補修されている複合体10の1以上の外面と接触するようにケイ素合金を配置することを含んでよい。そのような一部の実施形態では、加熱106中の複合体10の外側に適用されるケイ素相は、ケイ素−BNパックであってよい。一部の実施形態では、加熱106中に追加のケイ素相18を複合体に供給110することは、マトリックス部分12の内部に存在するものよりも上方にある追加のケイ素相18がマトリックスクラック20を実質的に満たすことによって補修するようなケイ素合金18の十分な供給を確実とすることが必要とされるならば、例えば毛管作用を介して、溶融ケイ素相18をマトリックスクラック20中に配置するのに有効であり得る。一部の実施形態では、加熱106中に追加のケイ素相18を複合体に供給110することは、複合体10のマトリックス部分12の内部に含有される溶融ケイ素相18が、複合体10から蒸発することを、そして結果として、マトリックスクラック20の表側を実質的に満たせずに接着できないことを防止するのに有効であり得る。このようにして、加熱106中に追加のケイ素相18を複合体に適用110することは、十分な量のケイ素相18が、マトリックスクラック20中に移動し、これによって、マトリックスクラック20の表面又は表側を実質的に接着する(すなわち、マトリックスクラック20を補修する)ことを確実とし得る。
【0021】
一部の実施形態では、クラックのある複合体部品10が、マトリックス部分12中の残留Si相18の融点を超えて加熱106されると、溶融Si相18(マトリックス部分12の内部のケイ素相18及び/又は外部から供給された追加のケイ素相18)は、マトリックスクラック20中に運ばれる(wick into)。溶融Si相18は、毛管作用によってマトリックスクラック20中に移動し得る。溶融Si相18(溶浸を介して製造中に導入された、かつ/又は加熱中に外部から適用された)は、実質的に、マトリックスクラック20を満たし得る。例えば、マトリックスミクロ構造部分12の溶融Si金属相18は、マトリックスクラック20の容量の少なくとも約50%、より好ましくはマトリックスクラック20の容量の少なくとも約80%を満たす。
【0022】
図3に示されるように、一部の実施形態では、クラックのある部品10が、マトリックス部分12中の残留Si相18の融点を超えて加熱106されて、溶融Si相18がマトリックスクラック20を実質的に満たした後に、マトリックスクラック20を補修する方法100は、部品10を、溶融Si相18の融点未満の温度に冷却112して、クラックを補修することを含んでよい。部品をSi相18の融点未満に冷却112して直ぐに、マトリックスクラック20の内部に存在する溶融Si相18は、実質的に固化して、クラックの表面又は表側(例えば、SiC表面)を実質的に接着し得る。このように、図3に示されるMI−CMC部品10のマトリックスクラック20を補修する例示的な方法100は、そのようなマトリックスクラック20を「回復させる」のに有効であり得る。
【0023】
一部の実施形態では、本明細書中で開示されるマトリックスクラック補修法(例えば、図3参照)により補修される、図2に示されるようなマトリックスクラック20を有する例示的なMI−CMC部品10が、マトリックスクラック20の形成直前の、歪みを無視した部品10と比較して、比例(弾性)限界(PL)が少なくとも約10%以内であり、弾性率(E)が少なくとも約20%以内であり、極限強さが少なくとも約20%以内であり得る。
【実施例】
【0024】
以下の実施例は、本明細書中で開示されるMI−CMC部品内のマトリックスクラックを補修する方法、並びに関連する構成、部品及びアセンブリをよく示している。
【0025】
実施例1
約6インチ×6インチ×0.08インチに測って切った、予備含浸済みMI−CMCの2つのパネルを試験した。パネルの材料は、HiPerComp(商標)の商標名で入手可能である。パネルを、約6インチの長さ×0.5インチの幅のMI−CMC試験棒にカットした。製造されたままのHiPerComp(商標)CMCは、材料の比例限界ストレスの測定に影響を及ぼす、マトリックス部分における残留ストレスを含むことが知られている。そのような残留ストレスを和らげるために、6つの試験棒を、(a)約2400°F(約1315℃)の空気中で約100時間加熱することによって、(b)真空下で約20分間、ケイ素の融点よりも高く再加熱することによって、又は双方の処理(a)及び(b)を用いることによって、アニールした。その後、熱処理したMI−CMC試験棒を、引張り試験を介して(ASTM C1275において概説される手順を用いて)、室温で破壊試験してして、熱処理した各MI−CMC試験棒のPL、E、及び極限強さを判定した。PLは、0.005%の歪みオフセット法を用いて判定した。試験した熱処理したMI−CMC試験棒は全て、HiPerComp(商標)の正常変動の範囲内の名目上等しい引張り強度特性(PL、E、及び極限強さ)を有した。
【0026】
4つの他の試験MI−CMC試験棒(同じHiPerComp(商標)パネルからとった)を、約0.15%の面内引張り歪みにかけて、MI−CMC試験棒のマトリックス部分内にマイクロクラックを生じさせた。クラックのある2つのMI−CMC試験棒を、上述のように、引張り破壊試験して、有効PL、E、及び極限強さを測定した。1435℃、約0.2torrの真空レベルの真空炉内で約30分間パネルを加熱することによって、クラックのある他の2つのMI−CMC試験棒を補修した。試験棒の表面上に配置されたケイ素−BNパックによって、ケイ素相をMI−CMC試験棒に供給しながら、加熱した。補修したMI−CMC試験棒を、上述のように、引張り破壊試験し、補修済みの各MI−CMC試験棒のPL、E、及び極限強さを判定した。
【0027】
3セットのMI−CMC試験棒(アニール済み、クラックあり、及び補修済み)の引張り試験の結果を、以下の表1に示す。表1に示すクラックのあるサンプルの引張り強度データは、アニールされたMI−CMC試験棒及び補修されたMI−CMC試験棒と比較して、測定した比例限界ストレスが40%超引き下げられており、かつ初期弾性率が12%引き下げられ、歪み曝露はマトリックスクラックを導入するのに十分であったことを示している。補修処理の後、試験MI−CMC試験棒の比例限界は、クラックのないアニール済みMI−CMC試験棒の2%以内に戻り、初期弾性率は、クラックのないアニール済みMI−CMC試験棒の2%以内に戻った(表2に示す)。繊維支配性質であることが知られている極限強さは、クラッキング処理によって引き下げられるとは予想されなかったであろう。アニールされたMI−CMC試験棒に対する、クラックのあるMI−CMC試験棒について観察された極限強さの8%の低下は、おそらく、材料の正常変動を表している。しかしながら、表2に示すように、補修したMI−CMC試験棒の極限強さは、クラックのあるMI−CMC試験棒と実質的に同じである。極限強さが実質的に類似するのは、補修熱処理が、MI−CMC試験棒の繊維又は繊維コーティングに対していかなる付加的分解をも引き起こさなかったことを示している。
【0028】
【表1】
実施例2
被覆Hi−Nicalon繊維で強化した予備含浸済みMI−CMC材料のパネルを、米国特許出願公開第2007/0099527号明細書及び米国特許第6024898号明細書に記載される手順に従って製造した。このパネルから試験MI−CMC試験棒を切り取って、実施例1に記載したものと同じ試験手順にかけた。実施例1に関して上述のように、アニール済み状態の3つのMI−CMC試験棒を引張り強度試験し、クラックあり状態の1つのMI−CMC試験棒を引張り強度試験し、補修済み状態の2つのMI−CMC試験棒を引張り強度試験した。アニール済み、クラックあり、及び補修済みのMI−CMC試験棒の引張り強度試験の結果を、以下の表2に示す。
【0029】
【表2】
表2に示すように、MI−CMC試験棒のクラッキング処理は、アニール済みMI−CMC試験棒に対して、MI−CMC試験棒の測定した比例限界の約40%以上の低下を、そしてMI−CMC試験棒の初期弾性率の約25%以上の低下を引き起こした。表2にも示すように、補修処理は、比例限界を、アニール済みMI−CMC試験棒の6%以内に戻した。さらに、補修済みMI−CMC試験棒の弾性率は、アニール済みMI−CMC試験棒を上回った。
【0030】
予めクラックを入れる処理及び補修処理の双方が、表2に示すように、MI−CMC試験棒の実験的に測定した極限強さのわずかな増加をもたらした。しかし、メトリクス(metrics)の値の範囲は、MI−CMC試験棒のこの性質について、材料の正常変動内である。クラックありのMI−CMC試験棒に対する補修処理の比例限界及び初期変動率の著しい好転(極限強さの低下はない)は、繊維又は繊維コーティングに対して重大な、又は有効な分解を引き起こすことなく、マトリックスクラックを回復させる補修処理の有効性を実証している。
【0031】
先の記載は実例となること、そして限定的でないことが意図されると理解されるべきである。以下の特許請求の範囲及びその等価物によって規定される本発明の一般的な精神及び範囲を逸脱することなく、数多くの変更及び修飾が、当業者によって本明細書中でなされてよい。例えば、先に記載された実施形態(及び/又はその態様)は、互いと組合せて用いられてよい。また、特定の状況又は材料を、種々の実施形態の教示に応用するような多くの修飾が、その範囲を逸脱することなくなされてよい。本明細書中に記載される材料の寸法及びタイプは、種々の実施形態のパラメータを規定することが意図される一方で、決して限定ではなく、単に例示的なだけである。他の多くの先の記載を再検討すれば直ぐに、当業者にとって明らかとなろう。したがって、種々の実施形態の範囲は、添付の特許請求の範囲、及び特許請求の範囲が求める等価物の全範囲に関して決定されるべきである。添付の特許請求の範囲において、用語「備える、含む(including)」及び「そこで(in which)」は、それぞれの用語「備える、含む(comprising)」及び「そこで(wherein)」の平易な(plain)英語の等価物として用いられる。さらに、以下の特許請求の範囲において、用語「第1の」、「第2の」、及び「第3の」等は、単に呼び名として用いられており、それらの目的語に数の要件を課すことが意図されるのではない。また、連結、接続、接合、封入等の用語と併用される用語「作動可能に」は、直接的又は間接的に連結されている別々の異なる部品に由来する接続、及び一体に形成されている(すなわち、ワンピースの、一体化した、又はモノリシックな)部品に由来する接続の双方に言及するように、本明細書中で用いられる。さらに、以下の特許請求の範囲の限定は、ミーンズ・プラス・ファンクションの形式で記載されておらず、そして、そのような特許請求の範囲の限定が、更なる構造を欠いた機能の記述が続くフレーズ「の手段(means for)」を明示的に用いるまで、米国特許法第112条第6パラグラフに基づいて解釈されることが意図されない。先に記載されるような目的又は利点の全てが必ずしも、特定の任意の実施形態に従って達成され得るわけでないと理解されるべきである。ゆえに、例えば、当業者であれば、本明細書中に教示又は示唆され得る他の目的又は利点を必ずしも達成せずとも、本明細書中に教示される1つの利点又は利点の群を達成又は最適化するようにして、本明細書中に記載される系及び技術が実現又は実行され得ると認識するであろう。
【0032】
本発明は、限られた数の実施形態についてのみ詳細に記載されてきたが、本発明は、そのような開示された実施形態に限定されないと容易に理解されるべきである。むしろ、本発明は、これまで記載されていないが、本発明の精神及び範囲に相応する、多数のあらゆる変形、改変、置換、又は等価の配置を組み込むように変更されてよい。加えて、本発明の種々の実施形態が記載されてきたが、本開示の態様が、記載された実施形態の一部しか含んでいない場合があると理解されるべきである。したがって、本発明は、前述の記載によって限定されると見られるべきでなく、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0033】
本記載は、ベストモードを含む本発明を開示するために、そしてまた、当業者が、任意の装置又は系の製造及び使用、並びに任意の統合された方法の実行が挙げられる本発明を実践することを可能にするために、実施例を用いている。本発明の特許性のある範囲は、特許請求の範囲によって規定されるが、当業者に思い浮かぶ他の例を含んでもよい。そのような他の例は、特許請求の範囲の文言と異ならない構造要素を有するならば、又は特許請求の範囲の文言との差異が実体なく、等価の構造要素を備えるならば、特許請求の範囲内にあると意図される。
【国際調査報告】