(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2016-540787(P2016-540787A)
(43)【公表日】2016年12月28日
(54)【発明の名称】フェルラ酸エチルエステルおよびアリールアルカノールを含む組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/37 20060101AFI20161205BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20161205BHJP
A61K 8/06 20060101ALI20161205BHJP
A61Q 90/00 20090101ALI20161205BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20161205BHJP
A61K 31/216 20060101ALI20161205BHJP
A61K 31/045 20060101ALI20161205BHJP
A61K 31/047 20060101ALI20161205BHJP
A61K 31/11 20060101ALI20161205BHJP
A61K 31/08 20060101ALI20161205BHJP
A61K 31/192 20060101ALI20161205BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20161205BHJP
A61K 47/08 20060101ALI20161205BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20161205BHJP
A61K 9/107 20060101ALI20161205BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20161205BHJP
【FI】
A61K8/37
A61K8/34
A61K8/06
A61Q90/00
A61P31/04
A61K31/216
A61K31/045
A61K31/047
A61K31/11
A61K31/08
A61K31/192
A61K47/10
A61K47/08
A61K47/12
A61K9/107
A61P17/00 101
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2016-539091(P2016-539091)
(86)(22)【出願日】2014年7月4日
(85)【翻訳文提出日】2016年6月13日
(86)【国際出願番号】EP2014064364
(87)【国際公開番号】WO2015090634
(87)【国際公開日】20150625
(31)【優先権主張番号】102013226507.7
(32)【優先日】2013年12月18日
(33)【優先権主張国】DE
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】591036572
【氏名又は名称】レール・リキード−ソシエテ・アノニム・プール・レテュード・エ・レクスプロワタシオン・デ・プロセデ・ジョルジュ・クロード
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(72)【発明者】
【氏名】ウルフギャング・ベイルフス
(72)【発明者】
【氏名】クラウス・ウェーバー
(72)【発明者】
【氏名】ペーター・オルトマンズ
(72)【発明者】
【氏名】サビネ・ハーウェグ
(72)【発明者】
【氏名】ザーラ・エーリクセン
(72)【発明者】
【氏名】カーステン・ブンゲンストック
(72)【発明者】
【氏名】ソニア・ルスジェ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C083
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA17
4C076BB31
4C076CC31
4C076DD37
4C076DD38
4C076DD39
4C076DD40
4C076DD43
4C076FF36
4C083AC071
4C083AC111
4C083AC121
4C083AC151
4C083AC152
4C083AC171
4C083AC211
4C083AC311
4C083AC312
4C083AC341
4C083AC342
4C083BB48
4C083CC02
4C083CC05
4C083DD32
4C083DD33
4C083EE01
4C083EE09
4C206AA01
4C206AA02
4C206CA11
4C206DB21
4C206DB43
4C206MA02
4C206MA03
4C206MA04
4C206MA05
4C206MA42
4C206MA83
4C206NA03
4C206ZB35
(57)【要約】
本発明は、a)フェルラ酸エチルエステルと、b)1種、2種またはそれ以上のアリールアルカノールとを含む組成物に関する。成分a)およびb)の組合せは、化粧品などの製品に抗菌効果を与える。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)フェルラ酸エチルエステルと、
b)1種、2種またはそれ以上のアリールアルカノールと
を含む組成物。
【請求項2】
成分a)が、シス−フェルラ酸エチルエステル、トランス−フェルラ酸エチルエステルおよびそれらの混合物から選択され、ここで、トランス−フェルラ酸エチルエステルが、成分a)として特に好ましいことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記アリールアルカノールが、3−フェニル−1−プロパノール、フェネチルアルコール、ベラトリルアルコール、4−メチル−ベンジルアルコール、ベンジルアルコールおよび2−メチル−1−フェニル−2−プロパノール、好ましくは、3−フェニル−1−プロパノール、フェネチルアルコールおよびベンジルアルコールから選択されることを特徴とする請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
成分b)が、3−フェニル−1−プロパノールまたは3−フェニル−1−プロパノールとベンジルアルコールとの混合物であり、ここで、特に好ましくは、成分b)が、3−フェニル−1−プロパノールであることを特徴とする請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
濃縮物として存在し、
a)1〜30重量%のフェルラ酸エチルエステルと、
b)70〜95重量%の1種、2種またはそれ以上のアリールアルカノールと
を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
c)1,3−プロパンジオール、バニリルブチルエーテル、1−(2−エチルヘキシル)グリセリンエーテル、1,2−オクタンジオール、1−ウンデカノール、1,2−ペンタンジオール、フェルラ酸またはそれらの混合物も含むことを特徴とする請求項5に記載の濃縮物。
【請求項7】
a)10〜18重量%のフェルラ酸エチルエステルと、
b)82〜90重量%の3−フェニル−1−プロパノールと
を含むことを特徴とする請求項5または6に記載の濃縮物。
【請求項8】
消費者製品であり、ここで、前記消費者製品が、好ましくは、局所的に適用される消費者製品、特に、局所的に適用される水中油型もしくは油中水型消費者製品などの局所的に適用される塗布消費者製品であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
a)0.01〜1.0重量%のフェルラ酸エチルエステルと、
b)0.1〜4重量%の1種、2種またはそれ以上のアリールアルカノールと
を含むことを特徴とする請求項8に記載の消費者製品。
【請求項10】
水中油型もしくは油中水型エマルションとして存在することを特徴とする請求項8または9に記載の消費者製品。
【請求項11】
局所的に適用される消費者製品における抗菌効果を与えるための、特に、局所的に適用される塗布消費者製品の抗菌保存のための、例えば、局所的に適用される水中油型もしくは油中水型消費者製品の抗菌保存のための、請求項5〜7のいずれか一項に記載の濃縮物の使用。
【請求項12】
1種、2種またはそれ以上のアリールアルカノールを含む消費者製品の抗菌保存を向上させるためのフェルラ酸エチルエステルの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、a)フェルラ酸エチルエステルと、b)1種、2種またはそれ以上のアリールアルカノールとを含む組成物に関する。この組成物は、例えば(抗菌作用のある)濃縮物または(抗菌剤を含有する)消費者製品(例えば化粧品)の形態であり得る。さらに、本発明は、局所的に適用される消費者製品における抗菌効果を与えるための濃縮物の使用に関する。本発明は、1種、2種またはそれ以上のアリールアルカノールを含む消費者製品の抗菌効果を向上させるためのフェルラ酸エチルエステルの使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
化粧品の保存のために、通常、ホルムアルデヒド分離剤、p−ヒドロキシ安息香酸エステル(パラベン)、有機酸、イソチアゾリン−3−オン、フェノキシエタノールまたはベンジルアルコールなどの芳香族アルコール、フェネチルアルコールとの組合せおよびフェニルプロパノールとの組合せなどの活性成分が使用される。これらの活性成分のうちのいくつかの欠点は、低い安定性および著しい臭いである。さらに、使用可能な活性成分の数は、毒性学的要件および規制上の要件によって次第に厳しく制限されるようになっている。化粧品市場において、できるだけ皮膚に優しく、天然由来の活性成分が、保存のためにますます必要とされている。
【0003】
カナダ国特許出願公開第2,012,288A号明細書は、a)フェノール化合物、b)芳香族アルコールおよびc)湿潤剤、界面活性剤およびプラントの衛生用の消毒剤としての通常の添加剤の組合せの使用に関する。フェルラ酸が、フェノール化合物(すなわち、4−ヒドロキシ−3−メトキシケイ皮酸)として記載されている。
【0004】
特に好ましい芳香族アルコールは、フェノキシエタノールである。
【0005】
H.Eggensperger(Multiaktive Wirkstoffe in Kosmetika,Verlag fuer Chemische Industrie 2000,volume 2,p.19−65)は、フェルラ酸についての酸化防止剤効果、光防護効果、消臭効果、抗炎症効果および抗菌効果を記載している。フェルラ酸エチルエステルについては、化粧品効果が記載されている(H.Eggensperger and M.Wilker,SOEFW−Journal,122.Jg.,3/96,p.146−156;4/96,p.210−215および8/96,p.554−556も参照)。
【0006】
フェルラ酸エチルエステルの含量を有するRahn AG社(Zuerich,Switzerland)の製品CELLIGENT(登録商標)については、前記エステルは、紫外線吸収特性を有する天然の酸化防止剤である。仏国特許出願公開第2921560A1号明細書には、保存料組成物の一部としてフェルラ酸が記載されている。フェルラ酸エチルエステルは、高価な活性成分であるほか、水溶性も低いため、特に、化粧品または医薬品用エマルションの水相のための、抗菌機能のために使用される唯一の固形物として適さないであろう。本発明に関する予備的な研究の際、フェルラ酸エチルエステルが、フェルラ酸自体よりはるかに弱い抗菌効果を有することも発見された。カルボン酸エステルが、典型的に、基礎となるカルボン酸より抗菌効果がはるかに弱いことが当業者に公知である。しかしながら、抗菌剤としてのカルボン酸の欠点は、それらが、通常、酸性のpH範囲内でのみ有効であるため、化粧品におけるそれらの適用性が限られることである。
【0007】
国際公開第2013/080140A2号パンフレットには、紫外線フィルタ、芳香族カルボン酸またはその塩、芳香族アルコールおよび外見上許容できる水性担体の組合せを含む日焼け止め剤用の保存料系が記載されている。芳香族カルボン酸の一例は、フェルラ酸である。あるいは、アニス酸のエステルが、芳香族カルボン酸の誘導体として記載されている。好ましい芳香族アルコールは、フェノキシエタノールである。
【0008】
国際公開第2013/091775A2号パンフレットには、化粧品用の抗菌性活性成分としての選択されたシクロヘキサノール誘導体の使用が開示されている。この化粧品は、色素沈着を抑制するために、例えばフェルラ酸と組み合わせることができ、またはフェルラ酸によって抗菌性にされ得る。
【0009】
さらに、フェノキシエタノール(アリールオキシアルカノール)などの芳香族アルコールが、化粧品において抗菌活性のために使用される(独国特許発明第102012212281B3号明細書も参照)。しかしながら、フェノキシエタノールは、現在議論されており、例えばベビー用品用などのある用途では減少されるかまたは禁止されることがある。一般に、アリールオキシアルカノールは、世界中で、消費者にますます受け入れられなくなっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の根本的な目的は、化粧品の抗菌目的(すなわち、保存)のための活性成分の組合せを提供することである。活性成分のこの組合せは、使用の際に、公知の活性成分および活性成分の組合せの上述された欠点を示さない活性成分に基づくべきである。活性成分の組合せは、天然または天然と同等の成分に基づくべきであり、できるだけ低い濃度で有効であるべきである。さらに、それらはまた、多用途であるべきであり、すなわち、それらの使用は、保存される製品の特定のpH値に制限されるべきではない。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的が、
a)フェルラ酸エチルエステルと、
b)1種、2種またはそれ以上のアリールアルカノールと
を含む組成物によって達成されることが意外にも分かった。
【0012】
本発明はまた、a)フェルラ酸エチルエステルと、b)1種、2種またはそれ以上のアリールアルカノールとの組合せが、相乗的に作用し、ここで、比較的高い濃度でのみ抗菌効果を有するフェルラ酸エチルエステルが、極めて低い濃度でもアリールアルカノールの効果を高める(すなわち、促進剤として働く)ことが分かったことに基づいている。
【0013】
3−フェニル−1−プロパノール(アリールアルカノール)は、保存料として前に列挙されていないが、良好な抗菌効果を有し、天然同等であることも示されている。しかしながら、全てのアリールアルカノールは、明らかな特異臭を有し、これは、アリールオキシアルカノールの特異臭よりある程度強い。a)フェルラ酸エチルエステルの使用によるアリールアルカノールの向上した抗菌効果(この効果は、アリールオキシアルカノールを用いた場合よりはるかに顕著である)にもかかわらず、保存に必要とされるアリールアルカノールの必要量を減少させることができる。
【0014】
したがって、本発明の教示は、化粧品用の塗布製剤の天然または天然同等の保存または抗菌性の安定化、すなわち、保存料を含まない化粧品としての抗菌製品の提供を可能にする。
【発明を実施するための形態】
【0015】
a)フェルラ酸エチルエステル
フェルラ酸エチルエステルとして、天然および合成由来のシス−フェルラ酸エチルエステル、トランス−フェルラ酸エチルエステルおよびシス/トランス−混合物が好適である。好ましくは、成分a)は、フェルラ酸エチルエステルのトランス体である。
【0016】
b)アリールアルカノール
好ましい実施形態において、アリールアルカノールは、3−フェニル−1−プロパノール、フェネチルアルコール、ベラトリルアルコール、ベンジルアルコール、4−メチル−ベンジルアルコールおよび2−メチル−1−フェニル−2−プロパノール、好ましくは、3−フェニル−1−プロパノール、フェネチルアルコールおよびベンジルアルコールから選択される。特に、成分b)は、3−フェニル−1−プロパノールまたは3−フェニル−1−プロパノールとベンジルアルコールとの混合物である。特に、成分b)が3−フェニル−1−プロパノール(アリールアルカノールとしてのみ)であることが好ましい。
【0017】
濃縮物
第1の代替例によれば、組成物は、濃縮物の形態であり、
a)1〜30重量%、好ましくは、8〜20重量%、特に、10〜18重量%(12〜16重量%、例えば約14重量%など)のフェルラ酸エチルエステルと、
b)70〜95重量%、好ましくは、80〜92重量%、特に、82〜90重量%(84〜88重量%、例えば約86重量%など)の1種、2種またはそれ以上のアリールアルカノールと
を含む。
【0018】
特定の実施形態によれば、上記で定義される組成物は、
a)8〜20重量%のフェルラ酸エチルエステルと、
b)80〜92重量%、特に、82〜90重量%(84〜88重量%、例えば約86重量%など)の1種、2種またはそれ以上のアリールアルカノールと
を含む。
【0019】
特に好ましい濃縮物は、
a)10〜18重量%(12〜16重量%、例えば約14重量%など)のフェルラ酸エチルエステルと、
b)82〜90重量%(84〜88重量%、例えば約86重量%など)の3−フェニル−1−プロパノールと
を含む。
【0020】
組成物が、(典型的に液体)濃縮物の形態である場合、組成物は、c)1,3−プロパンジオール、バニリルブチルエーテル、1−(2−エチルヘキシル)グリセリンエーテル(ビタミンEで安定化される、Schuelke & Mayr GmbH社(Norderstedt,Germany)の商品Sensiva(登録商標)SC 50)、1,2−オクタンジオール、1−ウンデカノール、1,2−ペンタンジオールまたはフェルラ酸、またはそれらの混合物などのさらなる活性成分または添加剤を含み得る。
【0021】
特に好ましくは、本発明に係る濃縮物は、a)フェルラ酸エチルエステルおよびb)1種、2種またはそれ以上のアリールアルカノール(好ましくは、3−フェニル−1−プロパノール単独)以外の他の成分を含有せず、すなわち、濃縮物は、好ましくは、成分a)フェルラ酸エチルエステルおよびb)1種、2種またはそれ以上のアリールアルカノールからなる。特に、a)フェルラ酸エチルエステルおよびb)3−フェニル−1−プロパノールからなる、すなわち、これらの2つの成分以外の他の成分を含有しない濃縮物が好ましい。
【0022】
消費者製品
第2の代替例によれば、組成物は、消費者製品として提供され、ここで、この消費者製品は、好ましくは、局所的に適用される消費者製品(すなわち、外部から、局部的に)、特に、例えば、局所的に適用される水中油型もしくは油中水型消費者製品、例えば、水中油型もしくは油中水型ローションまたは水中油型もしくは油中水型エマルションなどの局所的に適用される塗布消費者製品である。
【0023】
消費者製品は、好ましくは、化粧品、皮膚用剤混合物、医薬品混合物または原体、好ましくは、化粧品である。
【0024】
典型的に、本発明に係る抗菌効果がある消費者製品は、
a)0.01〜1.0重量%、好ましくは、0.02〜0.5重量%、特に、0.04〜0.25重量%(0.06〜0.15重量%、例えば約0.1重量%など)のフェルラ酸エチルエステルと、
b)0.1〜4重量%、好ましくは、0.2〜2重量%、特に、0.3〜1.0重量%(0.4〜0.8重量%、例えば約0.6重量%など)の1種、2種またはそれ以上のアリールアルカノールと
を含み、ここで、成分b)は、特に好ましくは、具体的に3−フェニル−1−プロパノールである。
【0025】
特定の実施形態によれば、上記で定義される消費者製品は、100重量%になるまでの、1種またはそれ以上の局所的に許容できる成分、0.02〜0.5重量%のフェルラ酸エチルエステルおよび0.2〜2重量%の1種、2種またはそれ以上のアリールアルカノールを含む化粧品である。
【0026】
本発明は、特に、局所的に適用される塗布消費者製品の抗菌保存のための、例えば、化粧用クリームまたはエマルションなどの局所的に適用される水中油型消費者製品の抗菌保存のための、局所的に適用される消費者製品における抗菌効果を与えるための濃縮物の使用にも関する。
【0027】
さらに、本発明は、1種、2種またはそれ以上のアリールアルカノールを含む消費者製品の抗菌保存を向上させるためのフェルラ酸エチルエステルの使用に関する。言い換えると、a)フェルラ酸エチルエステルおよびb)アリールアルカノールは、化粧品の抗菌効果について相乗的に作用し、すなわち、効果が、個々の成分の効果から予測され得る効果を明らかに超えている。
【0028】
したがって、本発明は、以下の利点を提供する:
−アリールアルカノールの濃度の低減、
−従来の「天然の保存料」と比較して低い濃度、
−向上した市場受け入れ性、
−フリーラジカルからの皮膚の向上した保護、
−向上したアンチエイジング特性、
−比較的低い濃度での良好な殺真菌効果、
−抗菌性の安定化のための、天然同等の、保存料を含まない活性成分系の使用、
−抗炎症効果および
−pHに依存しない活性。
【0029】
3−フェニル−1−プロパノールの利点:
−pH−中性、
−pHに依存しない効果、すなわち、(弱)アルカリ性化粧品においても有効である。
【0030】
フェルラ酸エチルエステルの利点:
−フリーラジカルから皮膚を保護する、
−皮膚への鎮静効果、抗炎症性、アンチエイジング特性。
【0031】
本発明の利点は、特に、以下の実施例に記載される。特に示されない限り、パーセンテージは重量基準である。
【実施例】
【0032】
方法1:細菌数低減試験
この細菌数低減試験の目的は、実験室において注入される試料のための好適な保存料および反応時間を決定することである。
【0033】
使用される溶液および培地:
CSA カゼインペプトン−大豆粉ペプトン−寒天
SA サブロー寒天
CSL カゼインペプトン−大豆粉ペプトン−ブイヨン
NaCl 生理食塩水、0.85%
【0034】
使用される試験生物
黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、大腸菌(Escherichia coli)または緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、アスペルギルス・ブラジリエンシス(Aspergillus brasiliensis)。
【0035】
注入溶液の調製
細菌:
黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)/大腸菌(Escherichia coli)の24時間CS−傾斜寒天培地(継代1代)から、24時間CSL−培地(継代2代)を生成する。培養を37℃で行う。細菌懸濁液の力価は、約10
9CFU/mlである。
【0036】
酵母:
SA−寒天(継代2代)上の4日齢のカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)培地を、5mlの生理食塩水で洗浄し、硫酸バリウム標準(DVG Guidelinesを参照)にしたがって調整する。カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)懸濁液の力価は、10
8CFU/mlである。
【0037】
カビ:
SA寒天(25℃±1℃)上の7〜14日齢のアスペルギルス・ブラジリエンシス(Aspergillus brasiliensis)培地を、5mlの生理食塩水で洗浄し、グラスウールを含むガラス漏斗によってろ過し、100mlになるまで生理食塩水を充填する。アスペルギルス・ブラジリエンシス(Aspergillus brasiliensis)懸濁液の力価は、約10
7CFU/mlである。
【0038】
それぞれ生成された試験生物懸濁液の力価を、生理食塩水中の希釈系列によって決定し、記録する。
【0039】
実施:
試料を、様々な濃度の好適な保存料と取り替える。試験細菌ごとに、希釈系列が必要とされる。試料に、それぞれの試験生物懸濁液を個々に注入し、十分に撹拌する:
25gの試料=0.1mlの細菌懸濁液
50gの試料=0.2mlの細菌懸濁液。
【0040】
指示された反応時間の後、試料を、まず、滅菌したガラス棒を用いて均一に撹拌し、次に、CSAまたはSA寒天上に広げる。細菌試料をCSA上に広げ、48時間にわたって37℃で培養する。カビおよび酵母試料をSA寒天上に広げ、48時間にわたって37℃(カンジダ・アルビカンス(Candida albicans))および25℃(アスペルギルス・ブラジリエンシス(Aspergillus brasiliensis))で培養する。
【0041】
方法2:KoKo試験
以下に記載される試験を行って、化粧品における保存効果を決定する。
【0042】
原理
記載される方法によって、化学保存料の有効性は、化粧品の缶内保存について試験される。このために、様々な異なる試験において、試験される保存料を、保存処理されていない試料に様々な濃度で加える。連続細菌負荷を、試験培地に定期的に注入することによって行う。注入と並行して、塗抹標本を、この直前に個々の培地から採取する。塗抹標本の細菌増殖について評価を行う。細菌増殖が最初に出現するまでの期間が長いほど、保存料の有効性が高い。
【0043】
実施
試験される25gの化粧品を、ねじ込みキャップを備えた広口瓶(LDPE)中に量り分ける。試験される保存料を、それらの適用濃度で分離した堆積物に加える。保存処理されていない試料を、増殖対照として使用する。保存料の添加の2日後、試料を、以下の試験生物からなる0.1mlの注入溶液に感染させる。注入溶液は、約10
7〜10
8個の細菌/mlの力価を有する(表1)。
【0044】
【表1】
【0045】
次に、試験堆積物を、週に1回、寒天プレート(細菌についてはカゼインペプトン−大豆粉ペプトン−寒天(CSA)ならびに酵母およびカビについてはサブローデキストロース寒天(SA))上に広げ、次に、注入した。最初の汚染の全てをできるだけ明らかにするために、非阻害培地(TLSH)および非阻害でない培地の両方で第1のスメア(無菌試験)を行う。塗抹標本の細菌増殖の評価を、25℃での3日間の培養後に行う。陰性塗抹標本を、念のためさらに2日間にわたって観察し、次に、再度評価する。個々の製品濃度の保存効果の評価を、個々の塗抹標本の増殖に対して半定量的方法で行う。
【0046】
[表]
【0047】
結果の評価
上記の実験室条件下で、試料に影響を与える細菌を含まずに6週間の期間にわたって試料が保たれる場合、すなわち、6回目の注入の後でも細菌増殖の兆候がない場合、試料は、基準Aにしたがって十分に保存されている。この試験方法の長年の経験から、化粧品のために推奨される30ヶ月を超える微生物的安定性を定義することができる。
【0048】
試料が、6回の注入サイクル中に低い細菌増殖(+)を示す場合、試料は基準Bを満たす。微生物学的リスク分析が、製剤と無関係の制御因子を含む場合、基準Bが、十分な保存を表し得る。これには、例えば、缶の代わりにポンプを含む包装の使用および/または医薬品適正製造基準(good manufacturing practice)(GMP)の高い要求が含まれ得る。
【0049】
実施例1
方法1にしたがって行われる試験の結果が、表2に示され、0.75%の3−フェニル−1−プロパノール単独と比較して、0.7%の(フェルラ酸+3−フェニル−1−プロパノール)および特に、0.7%の(フェルラ酸エチルエステル+3−フェニル−1−プロパノール)の組合せの向上した有効性を示す。それらの結果は、フェルラ酸(2−エチルヘキシル)エステル+3−フェニル−1−プロパノールの組合せのごく中程度の有効性および特にフェルラ酸のエチルエステルとの本発明に係る組合せが有利であることも示す。
【0050】
しかしながら、フェルラ酸エステルとアリールオキシアルカノールフェノキシエタノールとの9:1混合物は、フェノキシエタノール単独を上回る利点をほとんど示さず、これは、アリールアルカノール3−フェニル−1−プロパノールとの本発明に係る組合せの有効性が意外であったことを示す。さらに、比較的低い濃度の活性成分によるカビに対する有効性は明白である。
【0051】
実施例2
方法2にしたがって行われる試験の結果が、表3に示され、3−フェニル−1−プロパノール+フェルラ酸エチルエステル(少なくとも基準B)の6:1の組合せの有効性を証明し、フェノキシエタノール+フェルラ酸エチルエステルの6:1混合物より高い有効性を示す。
【0052】
実施例3
方法1にしたがって行われる試験の結果が、表4にも示され、細菌に対するフェルラ酸の固有の有効性を証明する一方、フェルラ酸エステル自体は、比較的高い濃度の2%で有効でない。結果として、フェルラ酸エステルを含有する組合せがより有効であることは意外であった。
【0053】
【表2】
【0054】
[表]
【0055】
【表2】
【0056】
[表]
【0057】
【表3】
【0058】
【表4】
【0059】
【表4】
【0060】
実施例4
方法2にしたがって行われる試験の結果が、以下の表5に表され、1:6の重量比のa)フェルラ酸エチルエステルおよびb)3−フェニル−1−プロパノールの特に好ましい濃縮物の有効性を示す(KoKo試験では基準Aで合格した)。
【0061】
【表5】
【国際調査報告】