(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2016-540830(P2016-540830A)
(43)【公表日】2016年12月28日
(54)【発明の名称】水性カプサイシノイド配合物ならびに製造法および使用法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/165 20060101AFI20161205BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20161205BHJP
A61P 25/04 20060101ALI20161205BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20161205BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20161205BHJP
A61K 31/57 20060101ALI20161205BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20161205BHJP
A61K 31/05 20060101ALI20161205BHJP
A61K 31/045 20060101ALI20161205BHJP
A61K 31/085 20060101ALI20161205BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20161205BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20161205BHJP
A61K 47/34 20060101ALI20161205BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20161205BHJP
A61K 47/42 20060101ALI20161205BHJP
【FI】
A61K31/165
A61P29/00
A61P25/04
A61P19/02
A61K45/00
A61K31/57
A61P43/00 121
A61K31/05
A61K31/045
A61K31/085
A61P17/02
A61K9/08
A61K47/34
A61K47/36
A61K47/42
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】35
(21)【出願番号】特願2016-554315(P2016-554315)
(86)(22)【出願日】2014年11月12日
(85)【翻訳文提出日】2016年6月8日
(86)【国際出願番号】US2014065290
(87)【国際公開番号】WO2015073577
(87)【国際公開日】20150521
(31)【優先権主張番号】14/253,660
(32)【優先日】2014年4月15日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】14/078,253
(32)【優先日】2013年11月12日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.PYREX
(71)【出願人】
【識別番号】516140395
【氏名又は名称】ヴィズリ・ヘルス・サイエンスィズ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100157923
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴喰 寿孝
(72)【発明者】
【氏名】バーバラ,チャールズ・エイ
(72)【発明者】
【氏名】バーバラ,フィリップ・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】バックス,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】コフリン,メアリー
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076AA94
4C076BB11
4C076BB31
4C076CC01
4C076CC19
4C076DD07
4C076DD09
4C076EE23E
4C076EE37M
4C076EE41M
4C076EE43M
4C076FF15
4C076FF31
4C076FF56
4C084AA19
4C084AA27
4C084MA02
4C084NA05
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4C084ZA891
4C084ZB112
4C084ZC751
4C086AA01
4C086AA02
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4C086MA04
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4C086ZB11
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206CA13
4C206CA17
4C206CA27
4C206GA03
4C206GA28
4C206KA01
4C206MA03
4C206MA05
4C206MA37
4C206MA86
4C206NA05
4C206NA08
4C206NA10
4C206ZA08
4C206ZA89
4C206ZC75
(57)【要約】
哺乳動物において、疼痛を治療/減弱するために利用可能な、カプサイシノイド配合物および治療法を本明細書に開示する。典型的には、投与は、長期間、疼痛緩和を提供するため、個別の部位での注射を通じたものである。配合物を薬学的に許容されうるビヒクル中で投与する。配合物には、カプサイシノイド投与の灼熱感および痛覚過敏効果を減弱するために十分な量の鎮痛剤が含まれる。本発明にはまた、コルチコステロイドを投与した後、カプサイシノイドを投与することによって、疼痛を治療する方法も含まれる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物において注射するための水性組成物であって:
0.0002重量%〜0.1重量%のカプサイシノイド、
99.9重量%〜99.9998重量%の、前記カプサイシノイドを可溶化する可溶化剤、および哺乳動物における前記組成物の注射に際して、前記水性組成物からの前記カプサイシノイドの放出を遅延させる長期放出剤を含む水性ビヒクル
を含み、
前記水性ビヒクルが、注射に際して前記カプサイシノイドによって生じる灼熱痛および刺痛を減少させるかまたは排除する
前記組成物。
【請求項2】
前記カプサイシノイドがカプサイシンである、請求項1におけるような水性組成物。
【請求項3】
前記カプサイシノイドがトランスカプサイシンである、請求項1におけるような水性組成物。
【請求項4】
前記カプサイシノイドが非イオン性界面活性剤を含む濃縮物の形である、請求項1におけるような水性組成物。
【請求項5】
前記可溶化剤が、ポリエチレングリコール−300、ポリエチレングリコール−400、およびポリプロピレングリコールからなる群より選択される、請求項1におけるような水性組成物。
【請求項6】
前記長期放出剤がヒアルロン酸である、請求項1におけるような水性組成物。
【請求項7】
前記持続放出剤が、0.5重量%〜1.5重量%のヒアルロン酸である、請求項6におけるような水性組成物。
【請求項8】
前記ヒアルロン酸が1000kダルトンの平均分子量を有する、請求項6におけるような水性組成物。
【請求項9】
前記ヒアルロン酸がヒドロゲルの形である、請求項6におけるような水性組成物。
【請求項10】
前記長期放出剤が、コラーゲン、エラスチン、および生物分解ポリマーマトリックスからなる群より選択される、請求項1におけるような水性組成物。
【請求項11】
0.005〜0.05重量%のカプサイシン、
5〜25重量%のポリエチレングリコール、および
0.2〜1重量%のヒアルロン酸
を含む、請求項1におけるような水性組成物。
【請求項12】
非イオン性界面活性剤をさらに含む、請求項1におけるような水性組成物。
【請求項13】
カプサイシノイドがカプサイシンであり、非イオン性界面活性剤がポリオキシ40水素付加ひまし油である、請求項12におけるような水性組成物。
【請求項14】
カプサイシノイドがカプサイシンであり、そして非イオン性界面活性剤がポリソルベート80である、請求項12におけるような水性組成物。
【請求項15】
ポリオキシソルベート80に対するカプサイシンの重量比が5に1〜5である、請求項14におけるような水性組成物。
【請求項16】
抗炎症剤をさらに含む、請求項1におけるような水性組成物。
【請求項17】
前記抗炎症剤がコルチコステロイドである、請求項16におけるような水性組成物。
【請求項18】
鎮痛剤をさらに含む、請求項1におけるような水性組成物。
【請求項19】
前記鎮痛剤が、フェノール、メントールおよびオイゲノールからなる群より選択される1またはそれより多くである、請求項18におけるような水性組成物。
【請求項20】
麻酔剤をさらに含む、請求項1におけるような水性組成物。
【請求項21】
0.005〜0.05重量%のカプサイシン、
0.025〜0.15重量%のポリソルベート80またはポリオキシ40水素付加ひまし油、
0〜25重量%のポリエチレングリコール300または400、および
0.2〜1重量%のヒアルロン酸
を含む、請求項1におけるような水性組成物。
【請求項22】
哺乳動物における部位で疼痛を治療するための方法であって:
療法的に有効な量の請求項1の水性組成物を、前記哺乳動物における前記部位に投与する
工程を含む、前記方法。
【請求項23】
前記哺乳動物がヒトである、請求項22におけるような方法。
【請求項24】
前記水性組成物の投与前に、麻酔を投与する、請求項22におけるような方法。
【請求項25】
約0.1ml〜25mlの体積で、薬学的に許容されうるビヒクル中で麻酔剤を投与する、請求項24におけるような方法。
【請求項26】
前記水性組成物の投与後、最初の1分の間に、関節を反復して屈曲しそして伸展する、請求項22におけるような方法。
【請求項27】
前記水性組成物の投与前、投与中および/または投与後に、冷却手段を前記部位に適用する、請求項22におけるような方法。
【請求項28】
前記水性組成物を注射によって投与する、請求項22におけるような方法。
【請求項29】
前記水性組成物を浸潤によって投与する、請求項22におけるような方法。
【請求項30】
疼痛が創傷または手術部位に由来する、請求項22におけるような方法。
【請求項31】
カプサイシノイドが、0.001mg〜0.5mgのトランスカプサイシン用量レベル範囲である、請求項22におけるような方法。
【請求項32】
前記水性組成物を、約0.1ml〜25mlの体積で投与する、請求項22におけるような方法。
【請求項33】
前記水性組成物が、カプサイシノイド、ヒアルロン酸、およびポリエチレングリコールを含む、請求項22におけるような方法。
【請求項34】
関節内注射によってカプサイシノイドを投与するためのキットであって:
a)少なくとも1単位用量の麻酔剤
b)少なくとも1単位用量の、カプサイシノイドおよびヒアルロン酸を含有するカプサイシノイド溶液
を含み、
前記麻酔剤を前記カプサイシノイド溶液の前に投与するように準備されている
前記キット。
【請求項35】
a)およびb)の投与のための手段をさらに含む、請求項34におけるようなキット。
【請求項36】
投与のための説明書をさらに含む、請求項34におけるようなキット。
【請求項37】
カプサイシノイド、ヒアルロン酸および麻酔剤が一緒に配合されている、請求項34におけるようなキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対するクロスリファレンス
本出願は、2013年11月12日出願の米国出願第14/078,253号に優先権の利益を主張し、該出願の全内容は、本明細書に明らかに援用される。
【0002】
発明の分野
本発明は、局所領域内へのカプサイシノイドの投与のための組成物に関する。該組成物は、疼痛(急性および慢性、中程度から重度)を伴う多数の障害の治療に有用であり、そしてこれらは長期の疼痛緩和を提供する。本発明はまた、カプサイシノイド注射に関連する灼熱痛および刺痛を限定する前治療を含む方法にも関する。
【発明の概要】
【0003】
背景技術
カプサイシンは、トウガラシ属植物の果実中の刺激性物質であり、Cニューロン末端の局所分解を引き起こすことによって疼痛を緩和するよう作用する;カプサイシノイドは、この機構によって疼痛を緩和することが知られる唯一の鎮痛剤である。カプサイシンの活性は、バニロイド受容体1(VR1)と呼ばれるイオンチャネルに結合し、そしてこれを活性化することから生じる。通常の状況下では、VR1イオンチャネルが活性化された際、短時間開放され、Cニューロンに脳に向けて疼痛シグナルを伝達させる。カプサイシンが結合し、そしてVR1を活性化すると、細胞内で一連の事象を引き起こし、C神経端またはCニューロンの末端を分解し、それによってニューロンが疼痛シグナルを送ることを防止する。
【0004】
カプサイシンの鎮痛効果は、サブスタンスPの枯渇のためであると考えられたが、最近の証拠によって、侵害受容器線維の「脱機能化」のプロセスが、カプサイシンの鎮痛効果に関与すると示唆されている(Anand P, Bley K. 疼痛管理のための局所カプサイシン:新規高濃度カプサイシン8%パッチの療法的潜在能力および作用機構 Br J Anaesth. 2011;107(4):490−502.)。
【0005】
カプサイシン局所軟膏およびクリームは、筋肉および関節の重大でない痛みおよび疼痛を緩和する。カプサイシンは現在、低用量でカプサイシンを含有する市販の局所適用非滅菌クリームおよびパッチとして販売される。カプサイシンの濃度は、典型的には0.025重量%〜0.075重量%の間である。これらの市販局所調製物は、疼痛を緩和するため、消費者によって局所で使用され、変形性関節症、帯状疱疹(shingles、herpes zoster)、乾癬および糖尿病ニューロパシーなどの状態を治療するために用いられた際、多様で、そしてしばしば不適切な結果を伴う。カプサイシンはまた、背中に適用可能である巨大接着性絆創膏でも入手可能である。
【0006】
カプサイシンの局所調製物は、疼痛および掻痒を伴う多様な皮膚障害、例えばとりわけ、帯状疱疹後神経痛、糖尿病ニューロパシー、prorates、乾癬、群発性頭痛、乳房切除術後疼痛症候群、鼻症、口腔粘膜炎、皮膚アレルギー、排尿筋反射亢進、腰腹痛/血尿症候群、首痛、切断端痛、反射性交感神経性ジストロフィー、皮膚腫瘍、関節リウマチおよび変形性関節症を含む関節炎、術後疼痛、口腔痛、ならびに傷害によって引き起こされる疼痛で用いられている(Martin Hautkappeら, 有痛性皮膚障害および神経機能不全に関するカプサイシン有効性の概説, Clin. J. Pain, 14:97−106, 1998)。
【0007】
ヒアルロン酸(HA)またはヒアルロナンは、滑液のグリコサミノグリカン構成要素である。HAは、潤滑剤およびショック吸収剤の両方として作用する滑液の粘弾性特性に関与する。HA調製物の膝および臀部への注射は、一般的に、変形性関節症を治療するために用いられるが、治療および利益対リスク比の有効性に関する議論がある。5つの異なるヒアルロナン製品を用いた40のプラセボ対照試験のコクラン概説は、結果をプールした際、荷重負荷に対する疼痛の統計的に有意な改善を見出したが、改善は多様であった。
【0008】
ヒアルロン酸(例えばSupartz、Hyalgan、Synvisc、Artzal、およびNuflexxa)の関節内への注射は、粘性補充と呼ばれる処置であり、膝変形性関節症の疼痛緩和を提供可能である。大きな安全性の問題は検出されなかったが、プラセボ対照試験において、重大でない副作用、例えば注射部位での一過性の疼痛が、関節内コルチコステロイドで処置した患者よりも、関節内ヒアルロナンで処置した患者において、わずかにより頻繁に生じた(Zhangら, 臀部および膝変形性関節症の管理のためのOARSI推奨、第II部: OARSIの証拠に基づく専門家が共通認識する指針。 Osteoarthritis Cartilage 2008; 16:137−162.)。
【0009】
さらに、HAは、ラットにおける関節疼痛のブラディキニン誘導モデルにおいて、鎮痛を誘導することが示されてきている。この鎮痛作用はまた、より低い濃度では、より低いMWのHAよりも、より高いMWの配合物で、有意な効果が観察されるように、分子量(MW)依存性であった(Gotoh Setら:ラットにおける実験関節痛に対するヒアルロン酸の分子量の影響およびその作用機構 Ann Rheum Dis 1993, 52:817−822).
HAは、サブスタンスPに対して、直接または間接的な影響を有する可能性もあり、これは疼痛に関与する可能性もある。サブスタンスPは興奮性アミノ酸、プロスタグランジン、およびNOと相互作用するため、これらの因子に対するHAの影響は、サブスタンスPの薬理学に間接的に影響を及ぼしうる。さらに、HAはサブスタンスPによって誘導された血管浸透性増加を阻害することが示されてきている(Mooreら:ジクロフェナクの薬剤送達系としてのヒアルロナン:作用様式に関する仮説 Int J Tissue React 1995, 17:153−156.)。
【0010】
抗炎症剤は、組織部位での炎症および腫脹を減少させる。これらは、特定の生理学的作用物質を遮断することによってこれを行う。例えば、これらの物質、プロスタグランジン、サブスタンスPおよびヒスタミンは、小さい動脈を拡張させて、続いて浮腫または体液形成を引き起こしうる。軟組織、筋肉、および神経細胞は、過敏に炎症性となり、そして非常に興奮性になる。抗炎症性薬剤は、この炎症プロセスを阻害しうる。しかし、抗炎症剤での慢性疼痛の治療は限定されている。
【0011】
人工股関節全形成術および人工膝関節全形成術後の疼痛緩和のための主力はオピオイドであった。これらの薬剤は優れた鎮痛剤であるが、オピオイドはその有効性が限定される問題を有する。代替鎮痛剤はこれらの処置によって引き起こされる疼痛には、穏やかすぎると見なされている。
【0012】
米国特許5962532は、カプサイシンまたはその類似体の有効濃度での特定の部位での疼痛を治療するための方法および組成物を開示する。該方法は、カプサイシンまたはその類似体を投与しようとする部位に麻酔を提供し、そして次いで関節にカプサイシンの有効濃度を投与する工程を含む。
【0013】
米国特許8,158,682は、患者において疼痛を治療するかまたは減弱するための方法に関する。特に、該発明は、開放創傷または外科切開の部位に近接した疼痛を減弱するための方法であって、カプサイシノイドを含む薬学的組成物を創傷または切開内に滴下注入し、あらかじめ決定した期間、薬学的組成物を落ち着かせ、そして薬剤組成物を取り除くため、創傷または切開を吸引する工程を含む、前記方法を提供する。本発明はまた、関節に近接した疼痛を減弱するための方法であって、カプサイシノイドを含む薬学的組成物を関節内に関節内注射し、あらかじめ決定した期間、薬学的組成物を落ち着かせ、そして薬剤組成物を取り除くため、関節を吸引する工程を含む、前記方法も提供する。該発明の特定の態様において、カプサイシノイドはカプサイシンである。
【0014】
米国特許8,420,600は、個別の位置の外側で影響を誘発することなく、個別の部位を除神経するために有効な量で、カプサイシン用量を、ヒトまたは動物の個別の部位で投与することによる、ヒトまたは動物における部位で疼痛を緩和するための組成物および方法を開示する。
【0015】
US 2004/0161481は、部位での疼痛を緩和する必要があるヒトまたは動物において、部位での疼痛を緩和するための方法であって、注射または浸潤によって、カプサイシノイド用量を投与し、そしてカプサイシノイドの望ましくない影響を減少させるため、有効量のNSAIDを同時投与する工程を含む、前記方法を開示する。
【0016】
US 2004/0156931は、部位での疼痛を緩和する必要があるヒトまたは動物において、部位での疼痛を緩和するための方法であって、注射または浸潤によって、カプサイシノイド用量を投与し、そして血管拡張剤を同時投与する工程を含む、前記方法を開示する。
【0017】
US 2004/0186182は、部位での疼痛を緩和する必要があるヒトまたは動物において、部位での疼痛を緩和するための方法であって、注射または浸潤によって、カプサイシノイド用量を投与し、そして非麻酔性ナトリウムチャネル遮断剤を同時投与する工程を含む、前記方法を開示する。
【0018】
US 2005/0019436は、部位での疼痛を緩和する必要があるヒトまたは動物において、部位での疼痛を緩和するための組成物および方法であって、個別の位置の外側で影響を誘発することなく、個別の部位を除神経するために有効な量のカプサイシン用量を、その必要があるヒトまたは動物における個別の部位で投与することによる、ここでカプサイシン用量が1μg〜3000μgの範囲である、前記組成物および方法を開示する。
【0019】
US 2005/0020690は、部位での疼痛を減弱するかまたは緩和する必要があるヒトまたは動物において、部位での疼痛を減弱するかまたは緩和するための組成物および方法であって、手術部位または開放創傷の外側で実質的に影響を誘発することなく、ヒトまたは動物における手術部位または開放創傷で、手術部位または開放創傷を除神経するために有効な量のカプサイシノイド用量を浸潤させることによる、前記組成物および方法を開示する。
【0020】
US 2005/0058734は、部位での疼痛を緩和する必要があるヒトまたは動物において、部位での疼痛を緩和するための方法であって、注射または浸潤によって、カプサイシノイド用量を投与し、そして血管収縮剤を同時投与する工程を含む、前記方法を開示する。
【0021】
US 2006/0269628は、部位での疼痛を減弱するかまたは緩和する必要があるヒトまたは動物において、部位での疼痛を減弱するかまたは緩和するための組成物および方法であって、手術部位または開放創傷の外側で実質的に影響を誘発することなく、ヒトまたは動物における手術部位または開放創傷で、手術部位または開放創傷を除神経するために有効な量のカプサイシノイド用量を浸潤させることによる、前記組成物および方法を開示する。
【0022】
米国特許出願2006/0100272は、疼痛、および特にニューロパシー疼痛の治療のための組成物および方法を開示する。
US 2006/0148903は、ヒトまたは動物における部位で、術前および術後疼痛を緩和するためのカプサイシノイドジェル配合物および方法であって、その必要があるヒトまたは動物における手術部位で、手術部位での術後疼痛を減弱するために有効な量のカプサイシノイドジェル用量を投与することによる、ここでカプサイシン用量が100μg〜10,000μgの範囲である、前記配合物および方法を提供する。
【0023】
US 2007/0293703は、トランス幾何が合成反応の開始時から設定され、そして全合成プロセスを通じて保持されるプロセスを利用することによって、カプサイシンおよび/またはカプサイシン様化合物のトランス異性体を合成するための方法を提供する。
【0024】
US 2008/0153780は、疼痛を治療するための剤を産生するための、グリコサミノグリカンまたはプロテオグリカンと併せた、バニロイド受容体アゴニストの使用に関する。
【0025】
US 2007/0036876は、部位での疼痛を緩和する必要があるヒトまたは動物において、部位での疼痛を緩和するための組成物および方法であって、個別の位置の外側で影響を誘発することなく、個別の部位を除神経するために有効な量のカプサイシン用量を、その必要があるヒトまたは動物における個別の部位で投与することによる、ここでカプサイシン用量が1μg〜3000μgの範囲である、前記組成物および方法を提供する。
【0026】
US 2008/0260791は、部位での疼痛を緩和する必要があるヒトまたは動物において、部位での疼痛を緩和するための組成物および方法であって、個別の位置の外側で影響を誘発することなく、個別の部位を除神経するために有効な量のカプサイシン用量を、その必要があるヒトまたは動物における個別の部位で投与することによる、ここでカプサイシン用量が1μg〜5000μgの範囲である、前記組成物および方法を提供する。
【0027】
US 2008/0262091 A1は、部位での疼痛を減弱するかまたは緩和する必要があるヒトまたは動物において、部位での疼痛を減弱するかまたは緩和するための組成物および方法であって、手術部位または開放創傷の外側で実質的に影響を誘発することなく、ヒトまたは動物における手術部位または開放創傷で、手術部位または開放創傷を除神経するために有効な量のカプサイシノイド用量を浸潤させることによる、前記組成物および方法を提供する。
【0028】
US 2009/0062359は、部位での疼痛を緩和する必要があるヒトまたは動物において、部位での疼痛を緩和するための方法であって、注射または浸潤によって、カプサイシノイド用量を投与し、そして非麻酔性ナトリウムチャネル遮断剤を同時投与する工程を含む、前記方法に関する。
【0029】
US 2009/0054527は、部位での疼痛を緩和する必要があるヒトまたは動物において、部位での疼痛を緩和するための方法であって、注射または浸潤によって、カプサイシノイド用量を投与し、そして血管拡張剤を同時投与する工程を含む、前記方法を開示する。
【0030】
US 2009/0111792は、部位での疼痛を緩和する必要があるヒトまたは動物において、部位での疼痛を緩和するための方法であって、注射または浸潤によって、カプサイシノイド用量を投与し、そして三環系抗うつ剤を同時投与する工程を含む、前記方法を開示する。
【0031】
US 2009/0117167 A1は、部位での疼痛を緩和する必要があるヒトまたは動物において、部位での疼痛を緩和するための方法であって、注射または浸潤によって、カプサイシノイド用量を投与し、そして血管収縮剤を同時投与する工程を含む、前記方法を開示する。
【0032】
US 2009/0118242は、部位での疼痛を緩和する必要があるヒトまたは動物において、部位での疼痛を緩和するための方法であって、注射または浸潤によって、カプサイシノイド用量を投与し、そしてカプサイシノイドの望ましくない影響を減少させるため、有効量のNSAIDを同時投与する工程を含む、前記方法を開示する。
【0033】
US 2011/0311592は、ほとんど可溶性でない化合物の溶解度を増加させる方法、ならびにこうした化合物の配合物を作製し、そして用いる方法を解説する。
ALGRX−4975は、変形性関節症、腱炎、および術後状態に関連する疼痛、ならびに神経傷害に続発して生じるニューロパシー疼痛および他の慢性疼痛状態を治療するために臨床的に開発された。Cニューロン疼痛線維のみをターゲティングすることによって、ALGRX−4975は、有意な長期鎮痛を生じることが可能であった。臨床研究において、ALGRX−4975は、表1に要約するように、単一の治療から疼痛の長期緩和を提供した。
【0034】
表I−ALGRX−4975臨床試験の要約
【0036】
(1)Cantilon, M.ら, 膝の変形性関節症(OA)におけるALGRX 4975の予備的安全性、許容性および有効性, The Journal of Pain, Vol. 6, March, 2005.
(2)Diamond, E.ら, ALGRX 4975は、中足骨間神経腫の疼痛を減少させる:ランダム化二重盲検プラセボ対照第II相多施設臨床試験の予備的結果, The Journal of Pain, Vol. 7, April, 2006.
(3)Aasvang, E.ら, ヘルニア切開後疼痛に対する新規精製カプサイシン配合物の創傷滴下注入の効果:二重盲検ランダム化プラセボ対照研究, Anesthesia and Analgesia, 2008, 107(1), p.282−291
いくつかの臨床試験のため、高純度トランスカプサイシンは、PEG−300中に溶解された0.5mg/mlの濃度の精製カプサイシン5mLを含有するバイアル中で供給された。カプサイシン/PEG−300溶液は、15℃〜25℃の間の温度で保存された。注射前4時間以内に、カプサイシン濃縮物を希釈して、約20%PEG−300、約1.5mg/mlヒスチジンおよび約5%スクロースを含む配合物を作製した。表IIに示すように、米国特許8,420,600に列挙される3つの例のカプサイシン濃度は、0.002mg/ml、0.02mg/mlおよび0.06mg/mlである。
【0037】
表II−注射可能カプサイシン用量レベル
【0039】
臨床試験におけるカプサイシン注射に際して、自発的灼熱痛および痛覚過敏が直ちに経験され、そして最長60分まで持続した。これらの望ましくない副作用は、カプサイシン適用部位での末梢侵害受容器の激しい活性化および一時的な感作に起因した。この活性化および感作は、脱感作期の前に生じる。カプサイシン注射に際しての灼熱痛および刺痛を制御する試みの中で、局所麻酔剤が注射され、そして次いでカプサイシン注射前に取り除かれた。
【0040】
注射可能カプサイシン配合物の使用に関する現在の限界は、最長1時間までの激しい灼熱痛および刺痛(B&S)ならびにさらに1〜2時間の穏やかな疼痛の可能性である。カプサイシン用量の予期されるB&Sは、侵害受容器脱感作前に、興奮期中に起こる激しい侵害受容器放出のためであると考えられる。
【0041】
多くのモデルにおける研究は、カプサイシンが神経ペプチド、特にカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)および炎症性サブスタンスP(SP)の放出を誘導する感覚神経を活性化可能であることを示してきている。Lundbergら, カプサイシンの心臓血管および気管支収縮効果に関連した、感覚神経における、サブスタンスPおよびカルシトニン遺伝子関連ペプチド様免疫反応性の共存。 Eur. J. Pharmacol., 108, 315−319, (1985)。Martlingら, カルシトニン遺伝子関連ペプチドおよび肺:カプサイシンおよび血管拡張効果によって放出されるサブスタンスPとの神経共存。 Regul. Pept., 20, 125−139, (1988)。
【0042】
カプサイシン誘導性浮腫が、抗炎症ステロイド、デキサメタゾンでの治療に無反応であることが立証されており、これは炎症性浮腫形成の他の型とは対照的である。Newboldら, ウサギ皮膚におけるカプサイシン誘導性浮腫の機構に関する研究, Brit. J. of Pharma., 114, 570−577, (1995)。
【0043】
Ferrellら(Neuroscience Letters 141:259−261, 1992)は、ラット膝内へのカプサイシンの関節内注射が、無髄線維数の有意な減少を生じ、そしてこの減少が可逆性であることを立証した。
【0044】
カプサイシン注射後に生じる急性灼熱感覚を最小限にする、注射可能カプサイシン配合物および疼痛治療法に関する満たされていない必要性がある。カプサイシノイド注射を用いて行う臨床研究は、カプサイシンが術前および術後疼痛、変形性関節症、腱炎および他の外科処置によって引き起こされる疼痛を減少させる能力を示した。疼痛の不快感は、もっともしばしば、オピオイドおよびNSAIDによって管理され、そして長期の使用はしばしば副作用によって限定される。慢性疼痛を治療するための安全でそして有効な療法に関する満たされていない必要性がある。
【0045】
発明の目的
本発明の目的は、カプサイシノイド投与に伴って経験される激しい灼熱痛を克服する、注射可能カプサイシノイドを通じた、哺乳動物における疼痛緩和を提供するための配合物および方法を考案することである。
【0046】
本発明のさらなる目的は、カプサイシノイド注射投与に関連する灼熱痛または刺痛を軽減するかまたは防止するための配合物および使用法を提供することである。
本発明の別の目的は、完全に混和可能な水性および親油性成分を含有する、視覚的に透明な溶液を提供することである。
【0047】
本発明の別の目的は、療法適用範囲に渡って、神経、脊髄または硬膜外ブロックなどの鎮静または麻酔を伴わない、長期の疼痛緩和のための配合物および方法を提供することである。
【0048】
他の目的および利点は、以下の明細を概観することから明らかであろう。
【課題を解決するための手段】
【0049】
本発明は、哺乳動物において注射するための水性組成物であって:
i)0.0002重量%〜0.1重量%のカプサイシノイド、
ii)99.9重量%〜99.9998重量%の水性ビヒクル、該水性ビヒクルは、前記カプサイシノイドを可溶化する可溶化剤、および哺乳動物における前記組成物の注射に際して、前記水性組成物からの前記カプサイシノイドの放出を遅延させる長期放出剤を含む
を含み、
前記水性ビヒクルが、注射に際して前記カプサイシノイドによって生じる灼熱痛および刺痛を減少させるかまたは排除する。前記組成物に関する。カプサイシノイドは、典型的にはトランスカプサイシンである。可溶化剤は、ポリエチレングリコールであってもよく、そして長期放出剤は、典型的には約1000kダルトンの平均分子量を有するヒアルロン酸である。長期放出剤はまた、コラーゲン、エラスチン、および生物分解性ポリマーマトリックスであってもよい。
【0050】
好適な態様において、水性組成物は:
0.005〜0.05重量%のカプサイシン、
5〜25重量%のポリエチレングリコール、および
0.2〜1重量%のヒアルロン酸
を含む。
【0051】
他の態様において、水性組成物には、抗炎症剤、鎮痛剤、および/または界面活性剤(0.002〜2重量%)、例えば非イオン性界面活性剤、ポリオキシ40水素付加ひまし油、またはPS80が含まれることも可能である。ポリソルベート80に対するカプサイシノイドの重量比は、1〜5であることが可能である。
【0052】
好適な態様において、水性組成物は:
0.005〜0.05重量%のカプサイシン、
0.025〜0.15重量%のポリソルベート80またはポリオキシ40水素付加ひまし油、
0〜25重量%のポリエチレングリコール300または400、および
0.2〜1重量%のヒアルロン酸
を含む。
【0053】
本発明はまた、哺乳動物、例えばヒトにおける部位で疼痛を治療するための方法であって、療法的に有効な量の本発明の水性組成物を、前記哺乳動物における前記部位に投与する工程を含む、前記方法にも関する。典型的には、前記水性組成物の投与前に、麻酔剤を投与する。1つの態様において、前記カプサイシノイド組成物の投与後、最初の1分の間に、関節を反復して屈曲しそして伸展する。さらに、前記カプサイシノイド組成物の投与前、投与中および/または投与後に、冷却手段を前記部位に適用することも可能である。カプサイシノイド組成物は、約0.1ml〜25mlの体積で、薬学的に許容されうるビヒクル中で投与される。
【0054】
本発明はまた、関節内注射によってカプサイシノイドを投与するためのキットであって:a)少なくとも1単位用量の麻酔剤、およびb)少なくとも1単位用量の、カプサイシノイドおよびヒアルロン酸を含有するカプサイシノイド溶液を含む、前記キットにも関する。該キットは、前記麻酔剤をカプサイシノイド溶液の前に投与するように準備されている。該キットには、a)およびb)の投与のための手段が含まれることも可能であり、そして該キットは、投与のための説明書を有することも可能である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
本発明の配合物は、中程度から重度の慢性(3ヶ月より長く持続する)または急性疼痛を管理するための、長期作用性非オピオイド治療オプションを提供する。有効なカプサイシノイド注射療法には、カプサイシノイド投与後の灼熱痛に取り組む治療様式が含まれなければならない。
【0056】
部位特異的カプサイシン注射による、無力化する(disabling)慢性疼痛状態を伴う患者における、感覚ニューロンの選択的および可逆的脱機能化は、長期持続性(数週から数ヶ月)疼痛緩和のための魅力的なアプローチである。しかし、疼痛を緩和するためのカプサイシン注射を用いた関節等の治療は、投与に際してカプサイシンが誘発する激しい灼熱痛によって複雑になる。
【0057】
本明細書に開示するカプサイシノイド配合物および方法を利用して、典型的には、長期に渡って疼痛緩和を提供するため、個別の部位での注射を介して、哺乳動物において、疼痛を治療/減弱することも可能である。配合物を、浸潤のための薬学的に許容されうるビヒクル中で投与する。方法および配合物には、さらに、カプサイシノイド投与の灼熱痛および痛覚過敏効果を減弱する量での、長期放出剤、抗炎症剤、鎮痛剤および/または麻酔剤の投与が含まれる。これは、カプサイシノイド注射前、注射中、または注射に続いて、冷却手段、例えばアイスパックまたはジェルパックの適用と組み合わせて行うことも可能である。
【0058】
部位特異的カプサイシン注射による、感覚ニューロンの選択的および可逆的脱機能化は、まったく副作用がないかまたは重大でない全身副作用で、無力化する慢性疼痛状態を持つ患者において、長期持続(数週から数ヶ月)疼痛緩和を提供する。本発明のカプサイシノイド配合物は、長期間に渡って、部位での疼痛を軽減するかまたは減弱する。変形性関節症などの関節炎状態と関連する疼痛に関しては、特定の態様において、単一単位用量カプサイシノイド注射または移植は、少なくとも3ヶ月、少なくとも4ヶ月、5ヶ月または6ヶ月に渡って、部位での疼痛を減弱する。関節疼痛に関しては、特定の態様において、単一単位用量カプサイシノイド注射または移植は、少なくとも1ヶ月、少なくとも3ヶ月、そして3〜6ヶ月に渡って、そして6ヶ月より長い期間、例えば6〜12ヶ月に渡って、部位での疼痛を減弱する。術後疼痛に関しては、単一単位用量カプサイシノイド注射または移植は、少なくとも1週間に渡って、そして特定の態様において、少なくとも1ヶ月に渡って、部位での疼痛を減弱する。
【0059】
本発明の組成物
適用に際して、灼熱感覚の減少を伴う、投与用の薬学的および生理学的に許容されうる水性ビヒクル内に取り込むことによって、注射、移植、浸潤または局所適用のためのカプサイシノイド用量を提供する。本発明は、疼痛の治療および減少のための、非常に少量のカプサイシンの個別の局所領域内への注射可能投与に関する。重要な利点は、限定された領域における感覚神経機能(TRPV−1)の改変を通じて、療法結果を生じるために、カプサイシンがミリグラムおよび/またはミリグラム量の一部であることから生じる。
【0060】
本発明の組成物の構成要素を以下に論じる。
カプサイシノイド
本発明のカプサイシノイドの一般的な考察に関しては、各々、その全体が本明細書に援用される、米国特許出願2008/0262091および共同所有されるUS第13/609,100号を参照されたい。用語「カプサイシノイド」には、本明細書において、カプサイシン、カプサイシン以外のカプサイシノイド、すなわちジヒドロカプサイシン、ノルジヒドロカプサイシン、ホモジヒドロカプサイシン、ホモカプサイシン、およびノニバミド、ならびにカプサイシンと1またはそれより多い他のカプサイシノイドの混合物が含まれる。用いる薬剤の量は、カプサイシン用量に対する療法的用量に基づく。カプサイシノイドは、配合物0.0002〜0.1重量%、好適には0.005〜0.05重量%である。
【0061】
あるいは、「カプサイシン類似体」、例えばレシニトラフェキシンを、カプサイシノイドの一部またはすべての代わりに投与してもよい。投与する類似体の量は、カプサイシンの療法的に同等な用量である−その全体が本明細書に援用される米国特許出願2008/0262091を参照されたい。別の態様において、カプサイシノイド以外のTRPV1アゴニスト、またはカプサイシン類似体を、本発明の配合物および方法において利用する。
【0062】
送達ビヒクル
本発明の水性薬学的組成物は、薬学的に許容されうる溶媒、例えばポリエチレングリコール(例えばPEG300およびPEG400)、エタノールおよび非イオン性界面活性剤、例えばポリオキシ40水素付加ひまし油(Cremophor RH40)、ポリソルベート80(PS80)で構成される単相水性/水系である薬学的に許容されうる送達ビヒクルを利用する。長期放出剤、例えばヒアルロン酸は、配合物の粘性を制御し、そして配合物安定性を補助する。開示する水性配合物の重要な利点は、水濃度が95重量%を超えうることである。
【0063】
水性薬学的ビヒクル中のさらなる構成要素の例には、浸透圧および等張性を調整するためのデキストロース(糖)および/または塩化ナトリウム溶液、ならびにpHを調整するための緩衝剤が含まれる。カプサイシン/PS80水溶液中の0.9%NaCl、0.25%フェノール、0.25%メントールおよび5%デキストロースの包含は、曇った外観または沈殿物形成を生じなかった。
【0064】
長期放出剤
配合物からのカプサイシノイドの放出を遅延させる(長期放出を引き起こす)特定の化合物は、灼熱性および刺痛性の影響を減少させることが見出されてきている。好適には、長期放出剤は、前記カプサイシノイドを、15分、30分、1時間、または4時間より長い期間に渡って放出させるであろう。1つの態様において、カプサイシノイドは、1週間より長い期間に渡って放出される。典型的には、より高い用量が、より長期の期間に渡って放出されるであろう。本発明の1つの態様において、長期放出剤はグリコサミノグリカンまたはプロテオグリカンではない。
【0065】
ヒアルロン酸
多様な組織(皮膚、関節の滑液および結合組織)で生じる、ヒト体内に天然に存在する物質であるヒアルロン酸およびその塩を伴うカプサイシンの可溶化は、局所および注射可能カプサイシン配合物に関連する灼熱痛および刺痛の軽減に寄与する。好適には、1重量%〜2重量%のヒアルロン酸またはその塩を用いる。本明細書に記載する実験試験で用いるヒアルロン酸分子量は、800〜1,200kダルトンの範囲の平均分子量を有した。理論によって束縛されることは望ましくないが、ヒアルロン酸構成要素のカプサイシンへの付加は、水溶液内で多糖ネットワークを形成し、そしてカプサイシンを、制御された方式でより緩慢に放出した結果、灼熱痛および刺痛を和らげると考えられる。本発明の1つの態様において、ヒアルロン酸は、架橋ヒドロゲルの形である。
【0066】
コラーゲンおよびエラスチン
コラーゲンは、動物における多様な結合組織の主な構造タンパク質である。結合組織の主な構成要素として、コラーゲンは哺乳動物において最も豊富なタンパク質であり、全身のタンパク質含量の25%〜35%を構成する。コラーゲンは、伸長した原線維の形で、多くは、腱、靱帯および皮膚などの線維性組織で見出され、そしてまた、角膜、軟骨、骨、血管、腸、および椎間板などにも豊富である。
【0067】
エラスチンは、弾性である結合組織中のタンパク質であり、そして体の多くの組織が、伸展または収縮した後、形状を回復することを可能にする。エラスチンは、皮膚が突かれるかまたはつままれた際、元来の位置に戻ることを補助する。エラスチンはまた、脊椎動物の体内の重要な耐荷重組織であり、そして機械的エネルギーが保存される必要がある適所で用いられる。
【0068】
カプサイシノイドを含むコラーゲンおよび/またはエラスチンは、OA疼痛を含む疼痛の治療に好適である。可溶化カプサイシン配合物へのコラーゲンおよび/またはエラスチン構成要素の添加は、カプサイシンの遅延または長期放出に寄与し、したがってカプサイシンの局所適用または注射のいずれかによる灼熱性不快感を最小限にするよう寄与する、水溶液内のタンパク質ネットワークを形成する。さらに、カプサイシノイドの注射に際して、これらの天然存在高分子量タンパク質は、神経へのカプサイシン放出速度を制御して、灼熱感を減少させ、スライドする骨表面に潤滑を提供するよう働く。これらの天然存在高分子量タンパク質のどちらかまたは両方を含有するカプサイシノイド配合物へのヒアルロン酸の添加は、耐容性および有効性をさらに最適化する。本発明の組成物において、コラーゲンまたはエラスチンは、液体またはジェルの形でなければならない。
【0069】
生物吸収性ポリマーマトリックス
生物吸収性ポリマーマトリックス、例えば架橋酸化デキストランヒドロゲルもまた、本発明の配合物において、長期放出剤として使用可能である。本明細書にその全体が援用される米国特許8,435,565を参照されたい。
【0070】
溶媒
PEGと称されるポリエチレングリコールは、不活性成分として、溶媒、可塑化剤、軟膏および座薬基剤として、そして錠剤およびカプセルにおいて、潤滑剤として用いられる。PEGは、低い全身毒性を持ち、全身吸収は0.5%未満である。用語「PEG」は数字と組み合わせて用いられる。薬学産業内で、数字は、平均分子量を示す。低分子量液体ポリエチレングリコールPEG300および400は、水に容易に溶解しない多数の物質のための優れた溶媒および共溶媒である。したがって、これらは液体および半固形調製物中の活性物質および賦形剤の溶媒および可溶化剤として広く用いられる。PEGが活性物質と複合体を形成する能力は、優れた溶媒力に関与する。ポリエチレングリコールはまた、液体薬学的調製物の粘性を調整し、そして吸収特性を修飾し、そして調製物を安定化するためにも使用可能である。
【0071】
最大400までの平均分子量を持つポリエチレングリコールは、室温で不揮発性液体である。最大PEG600までの液体PEGは任意の比で水と混和性である。しかし、さらにより高い分子量の固形PEG等級であっても、水中で優れた可溶性を有する。
【0072】
ポリエチレングリコールは、急性および慢性口腔毒性、胚毒性または皮膚適合性に関する優れた毒性学的安全性を示し、これらは非経口/吸収/排出研究によって支持される。これらは、長年、化粧品、食品および薬学産業において用いられてきている。これらの化合物の多くは、処方製品において使用するためのFDA不活性成分リストに列挙される。本発明の配合物には、溶媒重量の最大25%、典型的には5〜25重量%が含まれる。
【0073】
PEG化合物に対する代用物はポリプロピレングリコールである。さらに、エチルアルコール、グリセロール、ポリエチレングリコール等を含むアルコールをカプサイシノイド可溶化剤として、配合物に添加することも可能である。
【0074】
界面活性剤
界面活性剤、例えば非イオン性界面活性剤、例えばPS80および/またはCremophor(登録商標)RH40(ポリオキシル40水素付加ひまし油);あるいは、Cremophor(登録商標)ELP、またはSolute(登録商標)HS15を本発明の配合物中で溶媒(上述の通り)とともに、または溶媒に対する代替物として、利用することも可能である。界面活性剤は、湿潤剤および乳化剤として働き、そしてカプサイシノイド投与に関連する最初の刺痛性または灼熱性不快感を和らげることも可能である。
【0075】
さらに、界面活性剤/カプサイシン(または他のカプサイシノイド)濃縮物を、本明細書にその全体が援用される共同所有米国特許8,637,569に記載されるように、本発明の配合物および方法における使用のために形成することも可能である。これらの濃縮物を本発明の配合物において利用することも可能である。
【0076】
本発明の配合物には、0.001〜2.5重量%、典型的には0.1〜0.5重量%の界面活性剤が含まれる。
鎮痛剤および麻酔剤
本発明の配合物において、鎮痛成分を用いて、カプサイシンに関連する最初の急性灼熱痛または刺痛を軽減するかまたは防止する。多様な鎮痛剤が本発明において使用可能である。
【0077】
フェノールおよびメントール
フェノールおよび/またはメントールを、手術切開、開放創傷、または治療しようとする注射部位に投与することも可能である。カプサイシノイドの投与前に、フェノールおよびメントールを投与するか、またはカプサイシノイドとともに同時投与する。ボーラス注射されるフェノールおよびメントール濃度の有効な24時間関節内カプセル濃度(intracapsular capsular concentration)は、〜25μg/mlまたは10mlの関節液注射体積あたり〜250μgでなければならない。
【0078】
フェノールおよびメントールはどちらも、(1)注射配合物と接触して、表面に迅速に浸透し、そして(2)TRPV1アゴニスト(例えばカプサイシン)の投与に関連する急性灼熱痛および刺痛感覚を減少させるかまたは排除するように働く。オイゲノールもまた使用可能である。本発明には、カプサイシンの灼熱感覚の影響を有効に和らげるための、カプサイシンに対して、迅速な「作用開始」を有する特定の注射可能鎮痛剤(例えばフェノールおよびメントール)の使用が含まれる。化合物の作用開始は、その物理化学特性に関連し;いくつかの剤を表IIIに列挙する。
【0079】
表III−選択される鎮痛および麻酔成分の作用開始
【0081】
迅速な作用開始を伴うこれらの選択される鎮痛剤の使用は、同時投与した際、カプサイシンの灼熱性の影響を有効に和らげるが、また、カプサイシンに比較してより即効性の疼痛緩和も提供する。本発明の1つの態様において、注射鎮痛剤は、160またはそれ未満の分子量を有する。カプサイシンは、これらの迅速作用開始注射可能鎮痛剤に比較して、より長期の/長期持続疼痛緩和を提供する。
【0082】
局所麻酔、例えばリドカインは、関節内注射剤の一般的な添加剤である。これらは、医院または病院で、損傷を受けているか、または重大でない外科操作を必要とする領域を麻痺させるための使用を含めて、短期間の麻痺を生じるため、多くの基本的医学処置で用いられる。局所麻酔剤を注射可能ビヒクルに添加して、局所疼痛緩和を提供することも可能である。麻酔剤の例は、リドカイン、ブピバカイン、ロピバカイン、ジブカイン、プロカイン、クロロプロカイン、プリロカイン、メピバカイン、エチドカイン、テトラカイン、およびキシロケールである。好適には、化合物の作用開始が異なるため、麻酔剤をカプサイシノイド投与前に、すなわち2から20分前に投与する。
【0083】
抗炎症剤
抗炎症剤は、場合によって配合物に含まれる。
非ステロイド性抗炎症剤(NSAID)
非ステロイド性抗炎症剤、例えばアスピリン、ナプロキシン、インドメタシン、ジクロフェナクナトリウム、レフェコキシブ、およびイブプロフェンは、酵素シクロオキシゲナーゼを阻害し(COX−2阻害剤)、そしてしたがって、プロスタグランジン合成を減少させる。プロスタグランジンは、アレルギーおよび炎症プロセス中に放出される炎症仲介剤である。全体として、NSAIDはプロスタグランジンがそもそも合成されることを防止し、疼痛を減少させるかまたは除去する。
【0084】
NSAID抗炎症剤、例えばジクロフェナク、アスピリン、イブプロフェン、ナプロキセン、ベノキサプロフェン、フルルビプロフェン、フェノプロフェン、およびその他を、注射可能組成物に添加して、最小限の全身吸収を伴い、または全身吸収をまったく伴わず、局所疼痛緩和を提供することも可能である。
【0085】
コルチコステロイド
本発明の1つの態様において、コルチコステロイド(グルココルチコイド)などの補助剤をカプサイシンの投与用量からの最初の急性灼熱痛および刺痛を減弱するため、カプサイシンより前に、またはカプサイシンと同時に投与する。最も強力な抗炎症剤のいくつかは、コルチコステロイドである。コルチコステロイドは、炎症を引き起こす物質の産生を阻害することによって、炎症を減少させることが示されてきている。注射可能コルチコステロイドの使用は、疼痛管理において、広く普及している。これらの薬剤は、その抗炎症特性のため、有痛性病巣を減少させるかまたは除去することも可能である。コルチコステロイド注射は、薬剤を炎症部位に直接送達するため、非常に有効でありうる。コルチコステロイド注射は、カプサイシンの存在のため、TRPV−1神経末端由来の炎症物質から生じるものを含めて、炎症を軽減させる有効な方法である。理論によって束縛されることは望ましくないが、コルチコステロイドの投与は、神経を静め、そしてカプサイシノイド投与から生じる特定の生物伝達物質、例えばサブスタンスPおよびブラディキニンの炎症効果を減少させることによって作用すると考えられる。
【0086】
使用可能ないくつかのコルチコステロイドがあり、これには、デキサメタゾン、酢酸メチルプレドニゾロン、コハク酸メチルプレドニゾロンナトリウムおよびその混合物が含まれる。当業者に知られる他の同等のコルチコステロイドもまた使用可能である。1つの態様において、コルチコステロイド溶解度は、その全体が本明細書に援用される米国特許8637,569にしたがって、コルチコステロイド濃縮物(例えばPS80またはポリオキシ40水素付加ひまし油)の形成によって増加する。
【0087】
注射可能コルチコステロイドは、水溶性またはデポ配合物のいずれかで入手可能である。水溶性コルチコステロイドは、典型的には、これらが注射領域から迅速に拡散して、全身効果を発揮するため、関節内注射では用いられない。デポ配合物は、注射部位でより長い期間留まり、局所効果を維持し、そして関節注射には好適である。使用に利用可能な多様なデポ・コルチコステロイドがあり、これには、酢酸メチルプレドニゾロン、リン酸ベタメタゾンナトリウム、酢酸ベタメタゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン・テブレート(prednisolone tebulate)、トリアムシノロン・アセトニド、トリアムシノロン・ヘキサセトニドおよびその混合物が含まれる。より高い溶解度の化合物に比較して、より低い溶解度のコルチコステロイドは、より長い期間、有効滑液レベルを維持し、そしてより低い全身レベルを生じる、付加的利点を有する。
【0088】
カプサイシノイドとともに局所コルチコステロイドを投与すると、投与は、治療しようとする領域に対して、灼熱痛および刺痛の緩和を提供する。カプサイシンまたはカプサイシン様化合物の投与に伴うコルチコステロイド投与は、カプサイシン投与に際して、より少ない疼痛を生じ、そして部位での、1ヶ月より長い、好適には3ヶ月より長い、そして最も好適には6ヶ月より長い、長期間の疼痛緩和を生じる。
【0089】
強力な抗炎症活性を有するコルチコステロイドの、整形外科手術における、カプサイシノイドとの使用は、カプサイシノイド投与による急性疼痛を排除するかまたは実質的に減少させる。これによって、安全でそして有効な方式で、長期疼痛緩和が可能になる。
【0090】
水性カプサイシン注射可能配合物−ミセル/不含
表IVに示す配合物は、カプサイシン、ならびに鎮痛剤、フェノールおよびメントールを可溶化するために、PEGおよびエチルアルコールに頼る。フェノールおよびメントールの単相水溶液を維持するには、〜15−40重量%のPEGおよび〜0−40重量%のエチルアルコールの名目上の内容量が必要である。
【0091】
表IV−高PEG300/400カプサイシン配合物(ミセル不含)
【0093】
水性カプサイシン注射可能配合物−ミセル中にカプサイシン含有
米国特許8,637,569の実施例Vおよび実施例VI A〜VI Dに見られるように、水溶液内に1mg/mlのカプサイシンを含有する組成物は、水溶液中に10mg/mlのPS80を必要とした。PS80濃度の各10mg/mlの増加に関して、カプサイシン水溶性が約1mg/mlずつ増加したこともまた注目された。
【0094】
しかし、予期せぬことに、共同所有米国特許8,637,569の実施例は、1mg/mlのカプサイシンを可溶化するためには、水溶液内のPS80濃度の半分(1/2);すなわち5mg/mlのPS80が必要であることを解説する。5mg/mlのPS80で達成される、比較的水不溶性であるカプサイシンの、比例する1mg/ml濃度は、カプサイシンはミセル内に含有されることを示唆する(実施例1を参照されたい)。したがって、0.06mg/mlのカプサイシン濃度を達成するため、0.3グラム/mlのPS80しか必要ではない。
【0095】
以下の表Vに示す配合物は、可溶化およびミセル形成を通じてカプサイシンを溶解するPS80、ならびに鎮痛剤、フェノールおよびメントールを溶解するPEGおよびエチルアルコール含量に頼る。フェノールおよびメントールの単相水溶液を維持するには、5〜20重量%のPEGおよび0〜40重量%のエチルアルコールが必要である。
【0098】
以下の表VIに示す配合物は、カプサイシン、ならびに鎮痛剤、フェノールおよびメントールを可溶化するために、Cremophor(登録商標)RH40(あるいはCremophor(登録商標)ELP、またはSolute(登録商標)HS15)に頼る。
【0099】
表VI−Cremophor(登録商標)RH40カプサイシン配合物
【0101】
本発明の配合物を作製する方法
本発明の配合物を作製する方法は、以下の実施例1〜6に論じられる。
本発明の組成物を用いる方法および投与
本発明は、疼痛治療のため、水性カプサイシノイド配合物の投与を提供する。カプサイシノイド配合物の単一用量を個別の部位、手術部位または開放創傷で、注射部位、手術部位(例えば腹腔鏡)または創傷(例えば骨折または靱帯損傷)を除神経するために有効な量で投与する。部位の例は、関節、筋肉、腱、神経または腫瘍である。
【0102】
本発明の配合物は、1)関節内部位または体の空間で疼痛を緩和し;2)臨床ケア施設から退院した後、患者が経験する術後疼痛を軽減し;3)有効な術後鎮痛を提供して、患者が摂取する麻薬の量を減少させて、それによって術後リハビリテーションの時間を減少させる際に有用である。
【0103】
本発明の組成物の方法および使用には、限定されるわけではないが、膝、肩、臀部、背中、脊髄、首、肘、手、足の整形外科障害および特定の部位での疼痛を伴う他の障害が含まれる。関節内投与の例には、膝、肘、臀部、手根骨、足根骨、手首、椎間板、足関節、および関節炎状態に供される任意の他の関節への注射が含まれる。体の空間の例には、嚢または腹腔が含まれる。
【0104】
変形性関節症(OA)は、軟骨の喪失に関連する。軟骨は、軟骨細胞と呼ばれる特殊化細胞で構成され、該細胞は、プロテオグリカンがリッチな、豊富な基質であるコラーゲン線維、およびエラスチン線維で構成される、大量の細胞外マトリックスを産生するる。
【0105】
変形性関節症、関節リウマチ、腱炎、滑液包炎、術前および術後状態と関連する哺乳動物における侵害受容性疼痛、ならびに神経傷害に続発するニューロパシー疼痛の管理および長期緩和に、本発明の組成物を使用可能である。他の使用および投与法が、米国特許8,420,600、および共同所有US第13/609,100号に記載され、これらは各々、その全体が本明細書に援用される。
【0106】
本明細書において、「注射」は、皮膚を通じた部位への投与を意味する。「移植」は、皮膚、筋肉、腱または関節内に物質の用量を包埋することによる、部位への投与を意味するものとする。
【0107】
部位への注射または浸潤を通じて、カプサイシン配合物を投与することも可能である。手術または創傷のため、手術部位または創傷部位を取り巻く筋肉、組織または骨に、用量を投与する。カプサイシノイドを浸潤によって投与する際、浸潤を通じて投与するため、当業者に知られる装置、例えば針およびシリンジを用いて、カプサイシノイドを手術部位または創傷に投与する。
【0108】
本明細書において、「療法的に有効な量」は、臨床的に望ましい結果、例えば生物学的反応、あるいは疾患または状態の症状の減少、例えば疼痛の減少または除去を生じる剤の量または用量を指す。
【0109】
注射を通じてカプサイシンの単一用量を投与する際、カプサイシンの注射体積は、投与の局所部位に応じる。好適に送達される適切な注射体積は、治療部位に応じて、約0.1〜約20ml、より好適には約0.5〜約10ml、そして最も好適には約1.0〜約5mlの範囲である。
【0110】
関節疼痛の治療のための、そして注射可能カプサイシンの灼熱性および刺痛性の影響を最小限にするかまたは除去するための、本発明の注射可能組成物の好適な使用は、以下の通りである。感染リスクを減少させるため、注射には滅菌技術を用いなければならない。皮膚をまず、ベタインまたは他の適切な消毒剤で清浄にする。
【0111】
注射法
関節(例えば膝)へのカプサイシン配合物の注射のために、以下の方法を用いてもよい:
1. 針を関節内に挿入し、そして過剰な液体を抜き取る。
【0112】
2. 麻酔剤(1%リドカイン)を罹患関節内に注射し、そして約5〜10分間、周囲の関節内表面に浸潤させる。この期間中、被験体に、歩行し、膝を屈曲し、そして伸展し(折り曲げ)、リドカインを分布させるように依頼する。好適には、麻酔剤はカプサイシノイド配合物の投与前に関節から取り除かれない。冷却手段、例えばアイスパックまたはジェルパックを、場合によって、リドカイン注射前、注射中および/または注射後に、罹患した膝に適用する。
【0113】
3. リドカイン注射の5〜10分後、5ml溶液中、0.2〜0.5mgの用量で、カプサイシン配合物を注射する。アイスパックまたはジェルパックまたは冷却デバイスを、場合によって、カプサイシン配合物注射前、注射中および注射後に、罹患した膝に適用する。関節において、カプサイシンを分布させるため、被験体が診察台にいる間に、最初の1分間(好適には30秒間)、反復して、膝を完全に屈曲し、そして伸展する。被験体に、また、歩行し、そして膝を屈曲するように依頼する。
【0114】
カプサイシン注射後の関節の屈曲
重要なことに、カプサイシン投与後、最初の1分間以内の、折り曲げる(屈曲し、そして伸展する)ことによる膝の運動および/または歩行は、配合物を循環させ、そして灼熱痛および刺痛を減少させるように働く。
【0115】
冷却
外部冷却手段、例えばジェルパックまたはアイスパックまたは冷却デバイスを通じた関節または投与部位の冷却もまた、カプサイシノイド投与に由来する有痛性の影響を減少させる。1つの態様において、冷却またはジェルパックは、凍結より高い温度、例えば38〜50°Fを生じる。
【0116】
本発明の治療法は、0.001mg〜1.0mg、好適には0.2mg〜0.4mgの用量範囲のカプサイシン(例えばトランスカプサイシン)を利用する。方法は、約0.1ml〜25ml、好適には5〜10mlの体積での水性ビヒクルを利用する。小さい関節または非関節適用で用いるカプサイシノイドおよびビヒクルの量は、当業者によって決定されるように多様であろう。
【0117】
本発明の組成物には、典型的には、0.0002重量%〜0.1重量%のカプサイシノイド、好適には、0.01〜0.05重量%のカプサイシノイドが含まれる。
本発明の配合物および方法は、2〜5日間、好適には7〜21日間、またはより好適には6〜8週間、または14週より長く(すなわち1ヶ月より長く、好適には3ヶ月より長く、そして最も好適には6ヶ月より長く)、疼痛緩和を提供する。
【0118】
関節疼痛以外の疼痛緩和にも、類似の技術が使用可能である。
以下の実施例は例示であり、本発明の組成物および方法を限定しない。当業者には明らかである、通常、遭遇するような、多様な状態およびパラメータの他の適切な修飾および適応は、本発明の精神および範囲内にある。
【実施例】
【0119】
実施例1
濃縮カプサイシン/PS80溶液の調製
米国特許8,637,569は、1mg/mlのカプサイシンを可溶化するために、5mg/mlのPS80が必要である;すなわち、0.06mg/mlのカプサイシン濃度を達成するには、0.3グラム/mlのPS80のみが必要であると解説する。また、カプサイシン溶解度の各1mg/mlの増加あたり、5mg/mlのPS80が必要であるため、相対的に水不溶性であるカプサイシンはミセル内に含有されることが決定された。この特許の解説は、Croda Incから得られる高純度PS80中にカプサイシンを可溶化するために利用された。
【0120】
工程I−カプサイシンおよびPS80濃縮物の調製
成分には:
・10グラムのポリソルベート80(PS80)、超精製、Croda Inc.、CAS#9005−65−6
・2グラムのトランスカプサイシン、Aversion Technologies Inc.、USP 30、95.7%トランスカプサイシン、バランス、シスカプサイシン
が含まれる。
【0121】
方法:
1. 10グラムのPS80を50ml「Pyrex」ガラスバイアルに添加する。
2. 2グラムのトランスカプサイシンを工程1のPS80に添加する。
【0122】
3. 工程2由来の混合物を〜125℃に加熱して、トランスカプサイシンを溶解し、そしてトランスカプサイシン/PS80濃縮物を形成する。
室温のカプサイシン/PS80溶液へのいくつかのカプサイシン粒子の添加は、カプサイシン沈殿物の形成を生じず、したがって、カプサイシン溶液が過飽和していないことを示した。予期せぬことに、高濃度のレベル;すなわち、1.0mlのPS80中、200mgカプサイシン(200mg/ml)が達成された。このカプサイシン/PS80濃縮物2mlを、〜70℃の水98グラムに添加すると、濁った溶液が生じ、これは、溶液混合物を室温に冷却するにつれて、次第に非常に透明になった。したがって、この20%カプサイシン/PS80濃縮物の水への添加は、4mg/mlの水性カプサイシン溶解度レベルを生じた。同様に、このカプサイシン/PS80濃縮物10mlを〜70℃の水90グラムに添加すると、濁った溶液が生じ、これは、溶液混合物を室温に冷却するにつれて、次第に非常に透明になった。したがって、この2%カプサイシン/PS80濃縮物の水への添加は、20mg/mlの水性カプサイシン溶解度レベルを生じた。
【0123】
PS80濃度を各5mg/ml増加させると、カプサイシンの水溶解度が約1mg/ml増加することもまた注目された。理論によって束縛されることは望ましくないが、これは、カプサイシンがPS80ミセル中に含有されることを示唆する。
【0124】
実施例2
実施例1由来のカプサイシン/PS80濃縮物およびヒアルロン酸を含有する200グラムの水溶液の調製
工程I−ヒアルロン酸溶液の調製
成分には:
・1グラムのヒアルロン酸、M.W.=1,000kダルトン、Lotioncrafter LLC、CAS#9067−32−7
・191.8グラムの蒸留水、Poland Springs
が含まれる。
【0125】
方法:
1. 1グラムのヒアルロン酸を400cc Pyrexビーカーに添加する。
2. 191.8グラムの水をヒアルロン酸に添加し、そして透明な溶液が得られるまで、よく混合する。ヒアルロン酸を完全に可溶化するためには、長期間を要する。
【0126】
工程II−0.6mg/mlカプサイシン、3.0mg/ml PS80および5mg/mlヒアルロン酸水溶液の調製
成分には:
・実施例1由来の7.2グラムのカプサイシン/PS80濃縮物
・工程I由来の192.8グラムのヒアルロン酸
が含まれる。
【0127】
方法:
1.工程Iで調製され、そして400cc Pyrexビーカー内に含有される192.8グラムのヒアルロン酸溶液に、よく攪拌しながら、実施例1で調製されたカプサイシン/PS80濃縮物7.2グラムをゆっくりと添加する。
【0128】
2.工程1由来の混合物は、ここで、続いてパッケージングする用意が出来ている。
成分を完全に混合した後、生じた混合物は、非常に透明であり、そして中程度に粘性であった。ヒアルロン酸含量を変化させることによって、混合物の粘度を調整することも可能である。
【0129】
PS80中のカプサイシンの上昇した温度での可溶化が重要である。PS80およびカプサイシンを水に添加し、その後、〜70℃−90℃に加熱するいくつかの試みは、カプサイシン溶解を部分的にしか生じなかった。
【0130】
前述のテキストに記載するような、水性媒体内でカプサイシン溶解度レベルの増加を達成する能力は、注射しようとするカプサイシンの液体体積の有意な減少を可能にする。PEG400を用いた実験は、PS80(ミセル可溶化)界面活性剤に比較した際、カプサイシン溶解度レベルを達成しなかった。
【0131】
実施例3
0.06mg/mlカプサイシン注射可能溶液200グラムの調製(ミセル不含)
工程I−カプサイシン、フェノール、メントール溶液の調製
成分には:
・60グラムのPEG−300、Spectrum Chemical、NF、CAS#25322−68−3
・16グラムのエチルアルコール、グレーブスグレインアルコール、190プルーフ
・0.2グラムのフェノール、液化(石炭酸)、Spectrum Chemical、USP、CAS#108−95−2
・0.2グラムのL−メントール、結晶、Spectrum Chemical、USP、CAS#2216−51−5
・0.012グラムのトランスカプサイシン、Aversion Technologies Inc.、USP 30、95.7%トランスカプサイシン、バランス、シスカプサイシン
が含まれる。
【0132】
方法:
1. 400cc Pyrexビーカー中、60グラムのPEG−300を添加する。
2. PEG−300に、16グラムのエチルアルコールを添加し、そして完全に混合する。
【0133】
3. 工程2の混合物に、0.2グラムの液化フェノールを添加する。
4. 工程3の混合物に、0.2グラムのL−メントール結晶を添加する。
5. 工程4の混合物に、0.012グラムのトランスカプサイシンを添加する。
【0134】
6. 工程5の混合物を〜40℃に加熱し、メントールおよびカプサイシン溶液の形成を促進する。
7. 工程6由来の溶液を取り置き、そして室温に冷却させる。
【0135】
工程II−ヒアルロン酸溶液の調製
成分には:
・1グラムのヒアルロン酸、M.W.=1,000kダルトン、Lotioncrafter LLC、CAS#9067−32−7
・122.6グラムの蒸留水、Poland Springs
が含まれる。
【0136】
方法:
1. 250cc Pyrexビーカー中、1グラムのヒアルロン酸を添加する。
2. ヒアルロン酸に、122.6グラムの水を添加し、そして透明な溶液が得られるまで完全に混合する。ヒアルロン酸を完全に可溶化するためには長時間を要し;30分間掛かる可能性が最も高い。
【0137】
工程III−工程Iおよび工程IIの溶液を併せる
成分には:
・工程I由来の溶液混合物
・工程II由来の溶液混合物
が含まれる。
【0138】
方法:
1. 工程II由来のヒアルロン酸溶液を、よく攪拌しながら、工程I由来のカプサイシン含有溶液にゆっくりと添加する。
【0139】
2. 工程1由来の混合物は、ここで、続くパッケージングの準備が出来ている。
表6は、0.06mg/mlカプサイシン溶液内に含有される成分を含有する。
実施例4
0.06mg/mlカプサイシン/PS80ミセル注射可能溶液200グラムの調製
工程I−カプサイシンおよびPS80溶液の調製
成分には:(注:重量測定の精度を確実にするため、調製するカプサイシン/PS80溶液の量を、0.06mg/ml注射可能溶液に必要な量の8倍にした)
・2グラムのポリソルベート80(PS80)、超精製、Croda Inc.、CAS#9005−65−6
・0.125グラムのトランスカプサイシン、Aversion Technologies Inc.、USP 30、95.7%トランスカプサイシン、バランス、シスカプサイシン
が含まれる。
【0140】
方法:
1. 16ml Pyrexガラスバイアルに、2グラムのPS80を添加する。
2. 工程1のPS80に、0.125グラムのトランスカプサイシンを添加する。
【0141】
3. 工程2由来の混合物を〜55℃に加熱して、トランスカプサイシンを溶解し、そしてトランスカプサイシン/PS80溶液を形成する。
工程II−カプサイシン/PS80、PEG−300、エチルアルコール、フェノールおよびメントール溶液の調製
成分には:
・20mgのPEG PEG−300、Spectrum Chemical、NF、CAS#25322−68−3
・10グラムのエチルアルコール、グレーブスグレインアルコール、190プルーフ
・0.27グラムの工程1由来のトランスカプサイシン/PS80溶液
・0.2グラムのフェノール、液化(石炭酸)、Spectrum Chemical、USP、CAS#108−95−2
・0.2グラムのL−メントール、結晶、Spectrum Chemical、USP、CAS#2216−51−5
が含まれる。
【0142】
方法:
1. 400cc Pyrexビーカー中、20グラムのPEG−300を添加する。
2. PEG−300に、10グラムのエチルアルコールを添加し、そして完全に混合する。
【0143】
3. 工程2由来の混合物に、0.27グラムのトランスカプサイシン/PS80溶液を添加し、そしてよく攪拌する。
4. 工程3の混合物に、0.2グラムの液化フェノールを添加する。
【0144】
5. 工程4の混合物に、0.2グラムのL−メントール結晶を添加する。
6. 工程5由来の混合物を〜40℃に加熱し、メントール溶解を促進する。
7. 工程5由来の溶液を取り置き、そして室温に冷却させる。
【0145】
工程III−ヒアルロン酸溶液の調製
成分には:
・1グラムのヒアルロン酸、M.W.=1,000kダルトン、Lotioncrafter LLC、CAS#9067−32−7
・169.5グラムの蒸留水、Poland Springs
が含まれる。
【0146】
方法:
1. 400cc Pyrexビーカー中、1グラムのヒアルロン酸を添加する。
2. ヒアルロン酸に、169.5グラムの水を添加し、そして透明な溶液が得られるまで完全に混合する。ヒアルロン酸を完全に可溶化するためには長時間を要する。
【0147】
工程III−工程Iおよび工程IIの溶液を併せる
成分には:
・工程I由来の溶液混合物
・工程II由来の溶液混合物
が含まれる。
【0148】
方法:
1. 工程II由来のヒアルロン酸溶液を、よく攪拌しながら、工程II由来のカプサイシン含有溶液にゆっくりと添加する。
【0149】
2. 工程1由来の混合物は、ここで、続くパッケージングの準備が出来ている。
表6は、0.06mg/mlカプサイシン溶液内に含有される成分を含有する。
実施例5
4mg/mlカプサイシン、1mg/mlメントールおよび1mg/mlフェノール透明水性濃縮物200グラムの調製
4mg/mlカプサイシン、1mg/mlメントールおよび1mg/mlフェノール濃縮物の調製において、以下の工程にしたがった。
【0150】
成分には:
・0.40グラムのトランスカプサイシン、Aversion Technologies Inc.、USP 30、95.7%トランスカプサイシン、バランス、シスカプサイシン
・0.10グラムのフェノール、液化(石炭酸)、Spectrum Chemical、USP、CAS#108−95−2
・0.10グラムのL−メントール、結晶、Spectrum Chemical、USP、CAS#2216−51
・Sigma Aldrich、ミズーリ州セントルイスから得られる、2グラムのCremophor(登録商標)RH40、CAS番号61788−85−0
が含まれる。
【0151】
方法:
1. 300cc Pyrexビーカーに、0.4グラムのカプサイシン粉末、0.1グラムのメントール結晶および0.1グラムの液化フェノールを添加する。
【0152】
2. 工程1由来の混合物に、2.0グラムのCremophor(登録商標)RH40を添加する。
3. 工程2由来の混合物を約125℃に加熱する。
【0153】
4. よく攪拌しながら、工程3由来の混合物に水をゆっくり添加して、重量200グラムの水性混合物を提供する。
4mg/mlカプサイシン、1mg/mlメントール、1mg/mlフェノールおよび20mg/ml Cremophor(登録商標)RH40を含有する視覚的に透明な水溶液が生じた。カプサイシン、メントールおよびフェノール混合物を併せた、Cremophor(登録商標)40界面活性剤に対する重量比は、1.0/3.33であった。
【0154】
実施例6
HA/PEG/カプサイシン注射溶液の調製
注射可能配合物中で用いるカプサイシンは、薬剤使用のために意図される高純度合成トランスカプサイシン製品である。Formosa Laboratoriesが公認製造者である(DMF#16769)。マサチューセッツ州ウォルサムのJohnson Compoundingは、無菌液体としてカプサイシン注射配合物を調製し、そしてノースカロライナ州ダーハムのBioventus LLCは、無菌カプサイシン−HA注射溶液を調製するために用いる配合物である無菌ヒアルロン酸(HA)、Supartzを供給した。カプサイシン溶液およびSupartzは、優良医薬品製造基準(GMP)にしたがって製造され、そして販売された。
【0155】
カプサイシン溶液は、100%ポリエチレングリコール300(PEG)中にカプサイシンを溶解することによって製造される。生じた溶液を無菌濾過し、そして5mlのI型ガラスバイアル内に無菌的に充填し、続いて密封した。カプサイシン溶液の構成要素および組成物を表VIIに列挙する。
【0156】
表VII−カプサイシン溶液の構成要素
【0157】
【表7】
【0158】
1cGMP 99
+重量%トランスカプサイシンは、Formosa Laboratories、台湾から得られた。
2Sigma−Aldrich、ミズーリ州セントルイス(カタログ#81162)
次いで、カプサイシン溶液をSupartzと混合した。Supartzは、6.8〜7.8のpHを有する、精製高分子量(62万〜117万ダルトン)ヒアルロン酸ナトリウム(ヒアルロナン)の無菌粘弾性非発熱性溶液である。Supartz各1mlは、生理学的生理食塩水(1.0%溶液)中に溶解された10mgのヒアルロン酸ナトリウム(ヒアルロナン)を含有する。ヒアルロン酸ナトリウム(ヒアルロナン)は、ニワトリ肉冠より抽出される。ヒアルロン酸ナトリウム(ヒアルロナン)は、グルクロン酸およびN−アセチルグルコサミンンの反復二糖単位を含有する多糖である。Supartzの構成要素および組成物を表VIIIに示す。
【0159】
表VIII−Supartzの構成要素
【0160】
【表8】
【0161】
水性カプサイシン−HA無菌注射溶液のカプサイシン濃度は、5ml無菌注射溶液中の0.2〜0.5mgの範囲のカプサイシンであり、そしてカプサイシン溶液をヒアルロン酸配合物、Supartzと、関節内膝関節内への注射直前に混合することによって調製された。
【0162】
実施例7
膝内へのHA/PEG/カプサイシン溶液の注射
膝の有痛性変形性関節症を有する72歳の男性の左膝の関節内腔内に、1%リドカインを含有する8ml溶液注射を投与した。5mlの水性カプサイシンHA無菌溶液の関節内注射前に、約5分間、歩行および膝の折り曲げによって、リドカイン溶液を関節腔全体に分布させた。0.5mlのカプサイシン溶液を、4.5mlのHA含有Supartzビヒクルと混合することによって、0.2mgカプサイシンのカプサイシン用量レベルを達成した。水性カプサイシン−HA無菌溶液注射前に約3分間、膝をあらかじめ冷却し、そして治療処置の残りの期間、膝の冷却を続けた。カプサイシン注射直後、約1分間、激しく膝を折り曲げ(屈曲し、そして伸展し)、水性カプサイシン−HA無菌溶液を関節腔内に分布させた。疼痛レベルは、一時的に中程度のレベルまで上昇し、休息し、そして膝を折り曲げると迅速に治まった。水性カプサイシンHA無菌溶液の注射の7分後、方法を完了し、そして被験体は、変形性関節症疼痛症状の完全な緩和を経験した。表IXは、経過時間の関数としての、処置の疼痛レベルを要約する。
【0163】
表IX−注射した膝#1
0.5mlカプサイシン溶液および4.5ml Supartz
(0.2mgカプサイシン用量レベル)
【0164】
【表9】
【0165】
注:カプサイシン注射から完全な関節疼痛緩和までの経過時間=7分間
実施例8
HA/PEG/カプサイシン溶液の膝内への注射
膝の有痛性変形性関節症を有する74歳の男性の左膝の関節内腔内に、1%リドカインを含有する10ml溶液注射を投与する前に、14ccの液体を左膝関節から取り除いた。5mlの水性カプサイシンHA無菌溶液の関節内注射前に、約7分間、歩行および膝の折り曲げによって、リドカイン溶液を関節腔全体に分布させた。0.75mlのカプサイシン溶液を、4.25mlのHA含有Supartzビヒクルと混合することによって、0.3mgカプサイシンのカプサイシン用量レベルを達成した。カプサイシン−HA無菌溶液注射前に約2分間、膝をあらかじめ冷却し、そして治療処置の残りの期間、膝の冷却を続けた。カプサイシン注射直後、約1分間、激しく膝を折り曲げ、水性カプサイシン−HA無菌溶液を関節腔内に分布させた。疼痛レベルは、一時的に比較的高いレベルまで上昇し、そしてさらなるアイシングを適用し、そして膝を折り曲げると迅速に治まった。水性カプサイシンHA溶液の注射の14分後、方法を完了し、そして被験体は、変形性関節症疼痛症状の完全な緩和を経験した。表Xは、経過時間の関数としての、処置の疼痛レベルを要約する。
【0166】
表X−注射した膝#2
0.75mlカプサイシン溶液および4.25ml Supartz
0.4mgカプサイシン用量レベル
【0167】
【表10】
【0168】
注:カプサイシン注射から完全な関節疼痛緩和までの経過時間=14分間
実施例9
HA/PEG/カプサイシン溶液の膝内への注射
膝の有痛性変形性関節症を有する、実施例8と同じ74歳の男性の左膝の関節内腔内に、1%リドカインを含有する10ml溶液注射を投与する前に、5ccの液体を右膝関節から取り除いた。5mlの水性カプサイシンHA無菌溶液の関節内注射前に、約8分間、歩行および膝の折り曲げによって、リドカイン溶液を関節腔全体に分布させた。1mlのカプサイシン溶液を、4mlのHA含有Supartzビヒクルと混合することによって、0.3mgカプサイシンのカプサイシン用量レベルを達成した。カプサイシン−HA無菌溶液注射前に約2分間、膝をあらかじめ冷却し、そして治療処置の残りの期間、膝の冷却を続けた。カプサイシン注射直後、約1分間、激しく膝を折り曲げ、水性カプサイシン−HA無菌溶液を関節腔内に分布させた。疼痛レベルは、一時的に比較的中程度のレベルまで上昇し、膝を折り曲げ、そして休息すると迅速に治まった。水性カプサイシンHA無菌溶液の注射の11分後、方法を完了し、そして被験体は、変形性関節症疼痛症状の完全な緩和を経験した。表XIは、経過時間の関数としての、処置の疼痛レベルを要約する。
【0169】
表XI−注射した膝#3
1mlカプサイシン溶液および4ml Supartz
0.4mgカプサイシン用量レベル
【0170】
【表11】
【0171】
注:カプサイシン注射から完全な関節疼痛緩和までの経過時間=11分間
上記に引用するすべての文書および参考文献は、その全体が本出願に援用される。
本発明は、例示的な態様に言及して記載されてきているが、当業者には、本発明の範囲から逸脱することなく、多様な変化を作製可能であり、そしてその要素に対して同等物で置換することも可能であることが理解されるであろう。さらに、本発明の本質的な範囲から逸脱することなく、本発明の解説に特定の状態または材料を適応させるため多くの修飾を行うことが可能である。したがって、本発明は、本発明を実行するために意図される最適の様式として開示される特定の態様には限定されず、本発明は、付随する請求項の範囲内に属するすべての態様を含むであろうことが意図される。
【国際調査報告】