(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-500053(P2017-500053A)
(43)【公表日】2017年1月5日
(54)【発明の名称】芳香を保持した可溶性コーヒー
(51)【国際特許分類】
A23F 5/40 20060101AFI20161209BHJP
【FI】
A23F5/40
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-542770(P2016-542770)
(86)(22)【出願日】2014年12月23日
(85)【翻訳文提出日】2016年8月22日
(86)【国際出願番号】NL2014050903
(87)【国際公開番号】WO2015099531
(87)【国際公開日】20150702
(31)【優先権主張番号】13199299.2
(32)【優先日】2013年12月23日
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】512164779
【氏名又は名称】コーニンクラケ ダウ エグバート ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100085545
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 光夫
(74)【代理人】
【識別番号】100118599
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 博司
(72)【発明者】
【氏名】デ コク,ペトラス マリア テレシア
(72)【発明者】
【氏名】オースターヴェルド,アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ヘイジマン,ヘルトヤン
【テーマコード(参考)】
4B027
【Fターム(参考)】
4B027FB22
4B027FC01
4B027FC02
4B027FE01
4B027FK10
4B027FQ11
4B027FQ13
(57)【要約】
芳香化された可溶性粒子を含む新規のインスタントコーヒーおよび可溶性コーヒー粒子の芳香化方法が開示される。該可溶性コーヒー粒子は、焙煎されたまるごとの豆と混合され、該混合物は、少なくとも2日間保持される。結果は、上記粒子を含むインスタントコーヒー中の比較的多い量の2−メチルピラジンの存在によって明らかにされる、芳香化された可溶性コーヒー粒子である。該インスタントコーヒーは、好ましい芳香成分含有量を有し、なおかつ低い油含有量を有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香化された可溶性コーヒー粒子の調製方法であって、可溶性コーヒー粒子を準備すること、該可溶性コーヒー粒子を焙煎されたまるごとのコーヒー豆と混合すること、該混合物を少なくとも2日間保持すること、及び、該豆を該可溶性コーヒー粒子から分離することを含む、上記方法。
【請求項2】
該可溶性コーヒー粒子が、液体コーヒー抽出物を作ること、任意的に該抽出物を濃縮した後で、可溶性コーヒー粒子を得るように、該コーヒー抽出物を乾燥することによって準備される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
該乾燥が凍結乾燥である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
コーヒー豆と可溶性コーヒー粒子との重量比が、5未満:1、好ましくは4:1〜1:4、である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
コーヒー豆と可溶性コーヒー粒子との重量比が、3:1〜1:3、好ましくは2:1〜1:2、である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
保持時間が、3日〜2週間、好ましくは4〜10日、である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
2−メチルピラジンを含むコーヒー芳香が該可溶性コーヒー粒子へ移される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
該焙煎されたまるごとのコーヒー豆が、深煎りである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法によって得られうる可溶性コーヒー粒子。
【請求項10】
請求項9に記載の可溶性コーヒー粒子を含むインスタントコーヒーであって、該インスタントコーヒーの平衡化されたヘッドスペースは、ヘッドスペースml当たり少なくとも1.5ngのレベルの2−メチルピラジンを含み、該インスタントコーヒー中の油の量は、0.8〜4.5重量%である、上記インスタントコーヒー。
【請求項11】
該2−メチルピラジンのレベルが、ヘッドスペースml当たり少なくとも1.75ng、好ましくはヘッドスペースml当たり少なくとも2.0ng、である、請求項10に記載のインスタントコーヒー。
【請求項12】
該インスタントコーヒー中の油の量が、1.0〜4.3重量%である、請求項10または11に記載のインスタントコーヒー。
【請求項13】
液体コーヒー抽出物を準備すること、該コーヒー抽出物を乾燥して可溶性コーヒー粒子を準備すること、該可溶性コーヒー粒子を焙煎されたまるごとのコーヒー豆と混合すること、該混合物を少なくとも2日間静置すること、そして該豆を該可溶性コーヒー粒子から分離することを含む方法によって、可溶性コーヒー粒子に付加的な2−メチルピラジン芳香を与えるための、焙煎されたまるごとのコーヒー豆を使用する方法。
【請求項14】
液体コーヒー抽出物を準備すること、該コーヒー抽出物を乾燥して可溶性コーヒー粒子を準備すること、該可溶性コーヒー粒子を焙煎されたまるごとのコーヒー豆と混合すること、該混合物を少なくとも2日間静置すること、そして該豆を該可溶性コーヒー粒子から分離することを含む方法によって、可溶性コーヒー粒子の芳香保持を改善するための、焙煎されたまるごとのコーヒー豆の使用。
【請求項15】
該方法が請求項1〜8のいずれか一項に定義された通りである、請求項13または14に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可溶性コーヒー粒子を作ることに、および可溶性コーヒー粒子を含むインスタントコーヒーに関する。特に、本発明は、良く保持された芳香を有する可溶性コーヒー粒子に関する。本発明はまた、まるごとの焙煎コーヒー豆の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コーヒーは、周知の飲料であり、一般的に焙煎され挽かれたコーヒー豆の熱湯または水蒸気による抽出物として調製される。コーヒーの広く普及した形態は、インスタントコーヒーの形態である。そこでは、抽出されたコーヒーは、(典型的には、噴霧乾燥または凍結乾燥によって)可溶性粒子に変えられる。これらの粒子は、一般的に推奨された量の該粒子を熱湯に溶かすことによって、液体コーヒーに戻されることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
可溶性コーヒー粒子を作る上での現行の課題は、熱湯に溶かした際に、抽出されたばかりのコーヒーに可能な限り類似した液体コーヒーをもたらすような粒子を提供することである。このことは、可溶性コーヒーの出現以来、世界中のコーヒー製造業者にとって問題となっている。しかしながら、一般消費者は、可溶性コーヒー粒子を熱湯に溶かすことにより生じる液体の匂いを嗅ぎ味見をすると、上記液体は作られたばかりのコーヒーに匹敵することができないと知覚されることを良く知ることになるであろう。
【0004】
前述の問題は、可溶性コーヒー粒子を作るのに使用するための、コーヒーを抽出し、コーヒー抽出物を濃縮する方法を様々に改善することによって解決されようと試みられている。特に有用な方法は、例えば国際公開第2007/043873号で開示された方法であり、これは、より良好な芳香をもたらす。
【0005】
インスタントコーヒーを提供する上での特別の要望は、焙煎されたばかりのコーヒーの匂いに匹敵する匂いを発生する可溶性コーヒー粒子を作ることにある。この点において、米国特許第1,836,931号明細書では、可溶性コーヒーにコーヒー芳香を付与する方法が提案されている。この方法では、可溶性コーヒー顆粒は、焙煎されたばかりのコーヒーと混合される。該可溶性コーヒー顆粒および該焙煎されたばかりのコーヒーは、しばらくの間緊密に接触した状態で維持され、その後分離される。米国特許第1,836,931号明細書における焙煎されたばかりのコーヒーは、好ましくは挽かれている。緊密な接触が生じる時間は、典型的には24時間である。
【0006】
しかしながら、前述の文献で開示された方法は、芳香、特に2−メチルピラジンの低い含有量のみを有する可溶性コーヒー粒子を提供するという欠点を伴う。また、上述された1931年の古い開示に関して、可溶性コーヒーを貯蔵した際の芳香の保存に関する改善が望まれている。
【0007】
欧州特許第0144785号明細書では、焙煎され挽かれたコーヒーは芳香化されるインスタントコーヒー(すなわち、可溶性コーヒー粒子)から分離することが困難であるという意味で、米国特許第1,836,931号明細書で開示された方法の欠点が認識されている。したがって、欧州特許第0144785号明細書の教示は、焙煎され挽かれたコーヒーからの揮発性芳香を加熱によって移すが、該焙煎され挽かれたコーヒーがインスタントコーヒーと接触していない、方法に関する。しかしながら、これは、加熱のためのエネルギーを必要とする故に、方法の観点から余り望ましくない。また、それは、焙煎され挽かれたコーヒーからの蒸発させられた芳香が可溶性コーヒー粒子へ移されることを許すために、コーヒー製造において通常は存在しない装置を設置することを必要とする。欧州特許第0144785号明細書では、芳香の保持を改善するために、ある量の油性物質をインスタントコーヒーに添加することがさらに教示されている。油の添加は、可溶性コーヒー粒子を戻すことによって得られる液体コーヒーの外観を変化させる可能性がある故に望ましくない。また、規制上の観点から、外来物質をコーヒー粒子に添加することは一般的に望ましくない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述の要望の1つ以上により良く対処するために、本発明は、1つの局面において、芳香化された可溶性コーヒー粒子の調製方法であって、可溶性コーヒー粒子を準備すること、該可溶性コーヒー粒子を焙煎されたまるごとのコーヒー豆と混合すること、該混合物を少なくとも2日間保持すること、及び、該豆を該可溶性コーヒー粒子から分離することを含む、上記方法を提供する。
【0009】
別の局面において、本発明は、芳香化された可溶性コーヒー粒子の調製方法であって、コーヒー芳香が、本発明に従う本コーヒー芳香のマーカー物質である2−メチルピラジンを含んでいる、上記方法を提供し、2−メチルピラジンは、消費者にとって魅力的である淹れたてのコーヒーの特徴的なコーヒー芳香であると考えられている。この2−メチルピラジンは、可溶性コーヒー粒子を準備すること、該可溶性コーヒー粒子を焙煎されたまるごとのコーヒー豆と混合すること、該混合物を少なくとも2日間静置すること、該豆を該可溶性コーヒー粒子から分離することを含む方法によって該可溶性コーヒー粒子へ移される。
【0010】
さらに別の局面において、本発明は、上記に特定された方法によって得られうる芳香化された可溶性コーヒー粒子にある。
【0011】
さらなる局面において、本発明は、上述された可溶性コーヒー粒子を含むインスタントコーヒー(インスタントコーヒー製品とも云われる)であって、該インスタントコーヒーの平衡化されたヘッドスペースは、ヘッドスペースml当たり少なくとも1.5ngのレベルの2−メチルピラジンを含み、該インスタントコーヒー中の油の量は、0.8〜4.5重量%である、上記インスタントコーヒーを提供する。
【0012】
さらなる局面において、本発明は、液体コーヒー抽出物を準備すること、該コーヒー抽出物を乾燥して可溶性コーヒー粒子を準備すること、該可溶性コーヒー粒子を焙煎されたまるごとのコーヒー豆と混合すること、該混合物を少なくとも2日間静置すること、そして該豆を該可溶性コーヒー粒子から分離することを含む方法によって、可溶性コーヒー粒子に付加的な2−メチルピラジン芳香を与えるための、焙煎されたまるごとのコーヒー豆の使用を提供する。
【0013】
別のさらなる局面において、本発明は、液体コーヒー抽出物を準備すること、該コーヒー抽出物を乾燥して可溶性コーヒー粒子を準備すること、該可溶性コーヒー粒子を焙煎されたまるごとのコーヒー豆と混合すること、該混合物を少なくとも2日間静置すること、そして該豆を該可溶性コーヒー粒子から分離することを含む方法によって、可溶性コーヒー粒子の芳香保持を改善するための、焙煎されたまるごとのコーヒー豆の使用を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
広い意味において、本発明は、十分に長い保持時間とまるごとの豆の使用との特定の組合せが、可溶性コーヒー粒子の芳香の付加および保持に関する予想外に大きな進歩をもたらすという思慮深い洞察に基づいている。すなわち、芳香の付加および保持に関するそのような進歩が、本発明の簡単で効率的な方法によって得られた可溶性コーヒー粒子によるインスタントコーヒーに限定されることは、驚くべきことである。
【0016】
本発明の可溶性コーヒー粒子、および上記粒子を含む本発明のインスタントコーヒーは、芳香化されていると示されている(これは、本発明の方法の結果である)。同様に、本発明の方法が、驚くべきことに、芳香の好ましい付加だけでなくそのような芳香の好ましい保持をもたらす故に、それらは、芳香を保持しているとも示されている。本発明の可溶性コーヒー粒子の芳香の付加および保持は、これらの粒子を含むインスタントコーヒーにまで及ぶ。
【0017】
インスタントコーヒーという用語は、可溶性コーヒー粒子を含む製品を云い、熱湯で戻すことによってそこから液体飲料の形態のコーヒーが作られることができる。興味深い実施態様において、インスタントコーヒーは、可溶性コーヒー粒子に加えて、少量の焙煎され挽かれたコーヒー豆(すなわち、不溶性コーヒー粒子)を含む。別の興味深い実施態様において、インスタントコーヒーは、可溶性コーヒー粒子と、焙煎され挽かれたコーヒーとから本質的に成る。さらに別の興味深い実施態様において、インスタントコーヒーは、可溶性コーヒー粒子から成る。インスタント製品は、100%の本発明に従う芳香を保持した可溶性コーヒー粒子から成りうる。それはまた、本発明に従う可溶性コーヒー粒子(例えば、本発明の芳香化方法によって処理された、または本発明の方法によって得られうる可溶性コーヒー粒子の特徴を有するように他の様式で処理された、可溶性コーヒー粒子)と、本発明に従わない可溶性コーヒー粒子(例えば、処理されていない可溶性コーヒー粒子)との組合せを含みうる。例えば、インスタント製品は、90%〜10%の処理された可溶性コーヒー粒子および10〜90%の処理されていない可溶性コーヒー粒子、より好ましくは80〜50%の処理された可溶性コーヒー粒子および20〜50%の処理されていない可溶性コーヒー粒子、を含みうる。しかしながら、最も好ましいのは、インスタントコーヒー製品の全てが処理されていることである。
【0018】
従来技術における既存の慣行に従って、本発明に従うインスタントコーヒーは、焙煎され挽かれたコーヒー豆を含みうる。存在する場合、その量は、下で議論されているように、一般的に5重量%を超えず、好ましくはより低い、であろう。
【0019】
完全を期すために、インスタントコーヒーと関係して、「可溶性」および「不溶性」という用語は、水への溶解性を指すことが理解されるであろうと付け加えられる。焙煎され挽かれたコーヒー豆は、大気圧で、高温であろうと低温であろうと、液体の水に可溶でないと理解されるであろう。可溶性コーヒー粒子は、液体の水に可溶であり、それにより、溶解速度は温度によって影響を与えられるが、溶解性自体は影響を与えられない。
【0020】
さらに、広い意味において、本発明は、ある特定の構成物質の特徴、例えばマーカー化合物の存在、ならびに芳香および/または芳香を持続させる適切な戻りを損なう化合物の不存在のために、芳香に関するそのような予想外の進歩を有するこれらの可溶性コーヒー粒子に言及している。
【0021】
保持時間とは、可溶性コーヒー粒子および焙煎されたまるごとのコーヒー豆が混合物として保たれる期間を云う。焙煎されたまるごとの豆と可溶性コーヒー粒子との混合は、任意の順序で、単に該豆と該粒子とを一緒に置くことによって、実行されることができる。しかしながら、好ましくは、該混合は、該豆および該粒子が撹拌、混合、振盪、または他の方法で、2つの成分を相互に良く分配させる操作を施される工程を含む。混合物は、どのようにしても保持されることができるが、好ましくは密閉容器内に、より好ましくは気密容器内に、保持されることができる。貯蔵湿度は、好ましくは90%RH未満、より好ましくは80%RH未満、典型的には約70%RH、である。
【0022】
保持時間は、少なくとも2日、好ましくは少なくとも3日、より好ましくは約1週間、である。保持時間は、所望の長さとすることができるが、好ましくは1カ月を超えず、より好ましくは3週間を超えない。保持時間を長くしても、一般的に、可溶性コーヒー粒子に付与される芳香はさほど多い結果とはならないものであり、保持時間を短くすることは、方法全体においてより実際的であり、特にまるごとの焙煎された豆が、引き続いて挽いて抽出して、可溶性コーヒー粒子を製造するのに使用される場合、より実際的である。保持時間は、好ましくは3日〜2週間、より好ましくは4〜10日、である。
【0023】
混合物が保持される温度は、特に重要ではない。該温度は、0℃超〜50℃、好ましくは4℃〜25℃、の範囲であることが好ましい。最も好ましくは、室温(18℃〜25℃、好ましくは20℃〜23℃)が適用される。興味深い実施態様において、比較的低温(0℃〜10℃、好ましくは4℃〜6℃)の可溶性コーヒー粒子は、比較的高温(30℃〜50℃、好ましくは35℃〜40℃)のまるごとの焙煎された豆と一緒にされる。
【0024】
本発明は、可溶性コーヒー粒子を焙煎されたまるごとの豆の形態の焙煎されたコーヒーと混合することに基づいている。好ましくは、焙煎されたコーヒーは、そのような焙煎されたまるごとの豆から本質的に成る。すなわち、1つ以上の豆が常に偶発的に砕かれうる故に、時々生じる砕かれた豆の存在を排除することは実際的でないが、本発明は、まるごとの豆の形態の焙煎されたコーヒーを選択することに基づいている。以前に焙煎されており可溶でない、残留する砕かれた豆、断片または他の関連した粒子状豆物質は、本発明の文脈において焙煎され挽かれたコーヒー豆として包括される。そのような焙煎され挽かれたコーヒー豆が最終製品、すなわち、芳香化された可溶性コーヒー粒子を含むインスタントコーヒー中に存在する場合、元に戻した後に、消費者にとって不快であり、かつ最終調製の際に異味を与える不溶性残留物が残りうる。理論に制約されることは望まないが、本発明者たちは、該不溶性残留物の過抽出が、この知覚される異味を引き起こしうると考えている。したがって、本発明に従うインスタントコーヒーは、そのような焙煎され挽かれたコーヒー豆を5重量%を超えない量で含む。好ましくは、この量は、3重量%を超えず、より好ましくは1重量%を超えず、さらにより好ましくはせいぜい0.5重量%であろう。最も好ましくは、該量は、検出閾値未満である。したがって、本インスタントコーヒー中にそのような焙煎され挽かれたコーヒー豆が存在しないことが好ましい。
【0025】
理論に制約されることは望まないが、本発明者たちは、まるごとの豆から発生される芳香のタイプ(本質的に、揮発性物質のみ)が、焙煎され挽かれたコーヒー豆から特に油とともに移される芳香のタイプよりも、可溶性コーヒーに持続可能な芳香を与えるのに適していると考えている。また、本発明の方法は、2−メチルピラジンに関して証明されるように、芳香と油とのより好ましい比をもたらす。この点において、本発明の方法は、0.8〜4.5%、好ましくは1.0〜4.3%、の油の量を有するインスタントコーヒーを提供する可溶性コーヒー粒子をもたらす。インスタントコーヒーの芳香の付加および保持に決定的に寄与する特定された特徴を有するそのような粒子が、特許請求された方法によって得られることは驚くべきことである。
【0026】
本発明に従う可溶性コーヒー粒子を含むインスタントコーヒーは、別の顕著な利点を有する。これは、いわゆる開封後保存期限中の芳香の保持に関する。当然のことながら、インスタントコーヒーの実際的な使用において、容器(例えば、ガラス瓶)は、消費者によって開けられ、それから該容器が空になるまでしばらくの間(数日または数週間)使用されるであろう。最初に開けた後、製品の保存期限は、さらに「開封後保存期限」と云われる。開封後保存期限が始まってしまうと、コーヒー芳香がより急速に低減されていくことは良く知られている。本発明に従うインスタントコーヒーの利点は、特に2−メチルピラジンに関して明らかにされる、芳香のより良好な保持を、開封後保存期限中にも示すことである。
【0027】
焙煎されたまるごとのコーヒー豆は、好ましくは、使用の直前に焙煎される。一般的に、焙煎されると、豆は、可溶性コーヒー粒子と混合される前に、1カ月以下、好ましくは1週間未満、より好ましくは1日未満、保たれるであろう。
【0028】
まるごとの焙煎コーヒー豆および可溶性コーヒー粒子は、広範な比で混合されることができる。好ましくは、焙煎コーヒー豆と可溶性コーヒー粒子との重量比は、5未満:1、より好ましくは4:1〜1:4、好ましくは3:1〜1:3、最も好ましくは2:1〜1:2、である。
【0029】
使用されるコーヒー豆は、任意のタイプのものとすることができる。使用される主なコーヒー種は、アラビカ種の豆およびロブスタ種の豆である。典型的には、両者の混合物は、使用されることができる。これらの豆は、特定された地理的起源、例えばブラジル、コロンビアまたはインドネシアを持つものとして認識されることができる。可溶性コーヒー粒子は、任意のタイプの焙煎され挽かれたコーヒー豆からの抽出によって作られることができる。可溶性コーヒー粒子は、脱カフェインされた豆から製造されることができる。
【0030】
興味深い実施態様において、該可溶性コーヒー粒子は、可溶性コーヒー粒子の以前に製造されたバッチにコーヒー芳香を付与するために、挽く前に、本発明の方法において使用されてきた、焙煎され挽かれたコーヒー豆からの抽出によって作られる。
【0031】
可溶性コーヒー粒子は、既製品で準備され、それから本発明の方法を施されることができる。しかしながら、好ましくは、本発明は、可溶性コーヒー粒子と焙煎されたまるごとのコーヒー豆との両方を製造するコーヒー製造工場において実現される。この実施態様において、本発明は、芳香化された可溶性コーヒー粒子の調製方法であって、液体コーヒー抽出物を準備すること、該コーヒー抽出物を乾燥して可溶性コーヒー粒子を準備すること、該可溶性コーヒー粒子を焙煎されたまるごとのコーヒー豆と混合すること、該混合物を少なくとも2日間保持すること、そして該豆を該可溶性コーヒー粒子から分離することを含む、上記方法に関する。ここで、保持時間および比に関する選好は、上述されたとおりである。
【0032】
可溶性コーヒー粒子は、液体コーヒー抽出物から、上記抽出物、特にコーヒー濃縮物から水が除去されるところの任意の濃縮手法によって得られることができる。これらの手法は、一般的に、例えば凍結濃縮、蒸発またはナノろ過である。これは、噴霧乾燥、ドラム乾燥、凍結乾燥または押出を含む。乾燥された可溶性コーヒー粒子は、一般的に、1重量%〜5重量%、好ましくは2重量%〜4%、最も好ましくは約3.5%、の範囲の残留水分含有量を有する。
【0033】
可溶性コーヒー粒子が芳香化されるところの本発明の特定の工程に加えて、当業者が利用可能な他の任意の手法が、可溶性コーヒー粒子に芳香を付加するために適用されることができる。例えば、可溶性コーヒー粒子を作る際に、コーヒー豆および/またはコーヒー抽出物から芳香が得られるところの方法の流れを適用し、これらの芳香を可溶性コーヒー粒子に再循環させることが可能である。
【0034】
好ましい方法は、乾燥された(特に、噴霧乾燥されたまたは凍結乾燥された)コーヒー濃縮物を製造することを含み、ここで、該濃縮物は、国際公開第2007/043873号または欧州特許出願公開第0352842号明細書における教示に従って製造される。
【0035】
従来から製造されている可溶性コーヒー粒子の比表面積は、一般的に0.1〜0.3m
2/gmの範囲である。興味深い実施態様において、微孔構造を有する可溶性コーヒー粒子が、焙煎されたまるごとのコーヒー豆からの芳香の吸着を促進するために使用されうる。
【0036】
本発明の好ましい実施態様において、その局面の全てにおいて、可溶性コーヒー粒子は、凍結乾燥によって得られる。
【0037】
可溶性コーヒー粒子が作られる抽出物源として用いられるコーヒー、ならびに可溶性コーヒー粒子に芳香を付与するために用いられるまるごとの焙煎コーヒー豆は、同じまたは異なる焙煎でもよい。本発明に従う芳香発生に使用された後のまるごとの焙煎された豆が、その後抽出に使用される実施態様と関係して、使用されるコーヒーの全ては、好ましくは同じ焙煎である。
【0038】
先に実質的に記載された本発明の方法は、検出可能な量の2−メチルピラジンが存在するように、コーヒー芳香で可溶性コーヒー粒子を芳香化するのに特に適している。2−メチルピラジンは、可溶性コーヒー粒子に与えられる唯一の芳香ではないが、消費者にとって魅力的である淹れたてのコーヒーの特徴的なコーヒー芳香であると考えられている。
【0039】
これと関係して、可溶性コーヒー粒子中の2−メチルピラジンの実際の含有量が、インスタントコーヒー芳香に大きな影響を及ぼすことは重要である。従来技術で一般に知られているように、芳香とは、匂いまたは香気を有し、それにより味覚と嗅覚との両方に影響を与える化合物を云う。したがって、本発明の文脈において、芳香は、鼻の上部にある嗅覚系に運ばれるのに十分に揮発性である故に、匂いまたは香気を有する化合物である。一般的に、この仕様を満たす分子は、300未満の分子量を有する。特に、2−メチルピラジンは、そのような揮発性化合物である。そのような化合物をヘッドスペース中で定量化すること、すなわち、蒸気を放出する液体または固体の上部の密閉空間のガス状構成物質がヘッドスペースクロマトグラフィーを使用して測定されることは、従来技術で一般的に認められている。したがって、ヘッドスペースml当たり少なくとも1.5ngの2−メチルピラジン、好ましくはヘッドスペースml当たり少なくとも1.75ngの2−メチルピラジン、最も好ましくはヘッドスペースml当たり少なくとも2.0ngの2−メチルピラジン、を含む、可溶性コーヒー粒子の平衡化されたヘッドスペースが測定される。
【0040】
したがって、本発明はまた、特にヘッドスペースml当たり少なくとも1.5ngの2−メチルピラジン、好ましくはヘッドスペースml当たり少なくとも1.75ngの2−メチルピラジン、最も好ましくはヘッドスペースml当たり少なくとも2.0ngの2−メチルピラジン、というその驚くほど高い2−メチルピラジン含有量によって特徴付けられる、本明細書に記載された可溶性コーヒー粒子を含む、製品、すなわちインスタントコーヒーに関する。
【0041】
別の局面において、製品は、0.8〜4.5重量%、好ましくは1.0〜4.3重量%、の油の量を有する可溶性コーヒー粒子によってさらに特徴付けられる。
【0042】
そのように特徴付けられる本発明の製品が、インスタントコーヒーの所望の改善された芳香を維持するのに代表的である貯蔵されたときに、これらの特徴を維持することができることは、さらなる重要な知見である。該製品特徴は、調製後少なくとも3カ月間、好ましくは少なくとも6カ月間、さらにより好ましくは少なくとも24カ月間、維持される。
【0043】
前述と関係して、本発明はまた、芳香化された可溶性コーヒー粒子の調製方法であって、2−メチルピラジンを含むコーヒー芳香が、可溶性コーヒー粒子を準備すること、該可溶性コーヒー粒子を焙煎されたまるごとのコーヒー豆と混合すること、該混合物を少なくとも2日間静置すること、該豆を該可溶性コーヒー粒子から分離することを含む方法によって該可溶性コーヒー粒子へ移される、上記方法に関する。前述の実施態様および選好、例えば保持時間および比に関するものは、この方法にも同様に当てはまる。
【0044】
2−メチルピラジンによって明らかにされる芳香は、存在する油に比べて比較的多い量で存在することがさらに好ましい。
【0045】
さらに別の局面において、本発明は、実施態様のいずれかにおいて先に実質的に記載された方法によって得られうる芳香を保持した可溶性コーヒー粒子にある。
【0046】
本発明はまた、焙煎されたまるごとのコーヒー豆の新たな使用を提供する。これは、先に実質的に記載された方法によって、可溶性コーヒー粒子に付加的な2−メチルピラジン芳香を与えるためのものである。別のさらなる局面において、本発明は、可溶性コーヒー粒子の芳香保持を改善するための、焙煎されたまるごとのコーヒー豆の使用を提供する。これは、液体コーヒー抽出物を準備すること、該コーヒー抽出物を乾燥して可溶性コーヒー粒子を準備すること、該可溶性コーヒー粒子を焙煎されたまるごとのコーヒー豆と混合すること、該混合物を少なくとも2日間静置すること、そして該豆を該可溶性コーヒー粒子から分離することを含む方法によって実現される。本発明に従う新規の使用は、好ましくは、先に記載された方法の実施態様のいずれか1つによって実現される。
【0047】
本発明の局面および実施態様の全てにおける焙煎されたまるごとのコーヒー豆は、浅煎り、中煎りまたは深煎りとすることができる。これらの用語は、当業者にとって公知の意味を有する。好ましくは、まるごとの焙煎された豆は、深煎りである。
【0048】
本発明は、以下の非限定的な実施例を参照してさらに例示される。
【実施例1】
【0049】
焙煎されたアラビカ種の豆のバッチが挽かれ、この挽かれたコーヒーから、国際公開第2007/043873号に従って抽出物が得られた。この抽出物は、可溶性コーヒー粒子を得るために、濃縮され、さらに凍結乾燥された。該方法の収率は、約45〜50%であり、これは、2キログラムの焙煎コーヒー豆が1キログラムの可溶性コーヒー粒子を産生することを意味する。
【0050】
可溶性コーヒー粒子のバッチが、焙煎されたアラビカ種のコーヒー豆のバッチと、コーヒー豆と可溶性コーヒー粒子との重量比2:1で均質に混合され、気密容器内に詰められた。該混合物は、23℃で7日間静置された。7日間の静置時間の後、該容器が開けられ、該混合物がふるいで分離されて、1950グラムのまるごとのコーヒー豆および1040グラムの可溶性コーヒー粒子を産生した。
【0051】
可溶性コーヒー粒子が、気密容器内に包装された。23℃で3カ月間の貯蔵の後、可溶性コーヒー粒子の匂いが、嗅覚の専門家のチームによって評価された。可溶性コーヒー粒子の匂いは、焙煎されたコーヒーの香りを有すると評された。これは、2−メチルピラジンのレベルの増加に起因すると考えられた。
【0052】
可溶性コーヒー粒子は、40g/kg可溶性コーヒー粒子の油濃度を有していた。
【0053】
分離されたまるごとのコーヒー豆は、抽出に適していると評価され、国際公開第2007/043873号に従って抽出されて、液体抽出物を産生した。この液体抽出物は、可溶性コーヒー粒子を調製するために再び使用されることが可能である。
【実施例2】
【0054】
100%アラビカ種のコーヒーを使用した、実施例1におけるような実験設定において、以下の表1に要約されているように、まるごとの焙煎された豆と可溶性コーヒー粒子との比および保持時間に関して変更が加えられる。
【0055】
【表1】
*)全ての実施例は、3カ月の貯蔵時間を有する可溶性コーヒーに基づいている。
【0056】
全ての実施例は、匂いに関して、はっきりした焙煎されたコーヒーの香りを有すると肯定的に評価された、可溶性コーヒー粒子をもたらす。
【実施例3】
【0057】
本実施例は、米国特許第1,836,931号明細書との比較に関する。その教示に従って、46%のアラビカ種と54%のロブスタ種とのコーヒーブレンドが、可溶性コーヒー粒子を準備するために、焙煎および挽くこと、抽出ならびに噴霧乾燥を施された。
【0058】
(a)可溶性コーヒー粒子の一部が、上述されたブレンドを有する焙煎され挽かれたコーヒーの一部と、焙煎され挽かれたコーヒーと可溶性コーヒーとの比が5:1となるように混合された。該混合物は、1日間(24時間)保持された。
【0059】
(b)可溶性コーヒー粒子の別の一部が、上述されたブレンドを有する焙煎されたまるごとのコーヒー豆の一部と、焙煎されたまるごとのコーヒー豆と可溶性コーヒーとの比が2:1となるように混合された。その混合物は、14日間(2週間)保持された。
【0060】
先行の実施例におけるのと同じパラメータが決定された。結果が、表2に示されている。
【0061】
【表2】
【実施例4】
【0062】
本実施例は、可溶性コーヒー粒子中の2−メチルピラジンと油との比についての比較に関する。試料は、前述の実施例、ならびに同様にして製造された他の試料で、なおかつコーヒー豆のタイプ、焙煎方法および乾燥方法に関してさらに差異を設けたものを含む。試料の概要は、以下の表3に与えられている。
【0063】
試料は、以下のようにGC−MSによって定性分析された:
0.5グラムのインスタントコーヒーが、10mLバイアル中に秤量された。
試料が、40℃で15分間平衡化された。
2.5mL SPDEシリンジを使用して、ヘッドスペース試料が濃縮された
シリンジの内容物1mLが、Trace Quadrupole GC−MSへ脱着された。
GC分析は、Varian VF−1ms 30m×0.25mm×1μmカラムを使用して、スプリットレスで、フルスキャンモードで実行された。
2−メチルピラジンが参照標準によって同定され、ピーク面積が報告された。分析の実施間の差は、前の実施からの参照試料で補正された。
【0064】
油レベルの決定方法
油レベルは、ソックスレー抽出によって決定された。したがって、5グラムのインスタントコーヒーが150mLの沸騰水に溶かされ、得られた溶液が、6gのセライト545を有するフィルタに通された。該フィルタが収集され、室温で16時間および103℃で動作する乾燥炉で1時間乾燥された。
【0065】
引き続いて、乾燥されたフィルタがSchleicher & Schuell BioScience GmbHからの円筒ろ紙に収集され、150mLのヘキサンが抽出媒体として添加された。180℃で動作するGerhart Soxtermを用いて、試料が抽出され乾燥された。乾燥された製品が秤量され、油レベルが、インスタントコーヒー100グラム当たりのグラムで表された。
【0066】
表3の列は、以下のようにA〜Hの文字で示されている:
A=実施例番号
B=豆:粒子の重量比
C=保持時間(日)
D=乾燥方法:噴霧乾燥された(S)または凍結乾燥された(F)
E=豆の組成(a)アラビカ種(%)、(b)ロブスタ種(%)
F=焙煎タイプ
G=焙煎時間(分)
H=焙煎された豆の形態:まるごと(W)または挽かれた(G)
【0067】
【表3】
【0068】
結果は
図1に示されており、これは、油含有量(白抜き)および2−メチルピラジン含有量(塗り)を示す棒グラフである。全ての2−メチルピラジンのレベルは、10
7で除されたピーク面積で表される。
【実施例5】
【0069】
本実施例は、本発明に従うインスタントコーヒーの最終の良好で長い保持された芳香に有意に寄与する、一連の特徴の決定に関する。したがって、マーカー物質である2−メチルピラジンの定量的レベルおよびインスタントコーヒー粒子の可溶性コーヒー粒子中の油レベル百分率が、上記の油分析法および下記の2−メチルピラジン定量法によって決定される。
【0070】
2−メチルピラジンの定量分析法
2−メチルピラジンのヘッドスペース濃度は、2−メチルピラジンの参照標準を使用したヘッドスペース濃度の間接的な外部校正によって決定された。したがって、1リットル当たり1096mgの2−メチルピラジンの検量線用溶液が、2−メチルピラジンをペンタンに溶かすことによって得られた。この検量線用溶液は、7μg/ml〜1096μg/mlの6種のキャリブレーション溶液を得るために、ペンタンでさらに希釈された。シミュレートオンカラムPTV注入装置で、希釈された検量線用溶液1μLの液体注入によって、検量線が作成された。
【0071】
引き続いて、既知の2−メチルピラジン溶液のヘッドスペース濃度は、50mL当たり610mgの標準2−メチルピラジンをポリエチレングリコールに溶かすことによって決定された。このストック溶液は、水で10倍希釈され、この溶液から、300μLが2700μLの水に20mLバイアル中で添加され、30℃で15分間平衡化された。溶液の上部の静的ヘッドスペース1mLを注入し、液体/ヘッドスペース分配係数を計算することによって、既知の2−メチルピラジン溶液のヘッドスペース濃度が決定された。液体/ヘッドスペース分配係数から、ng/mLヘッドスペース(HS)単位の2−メチルピラジン濃度が計算された。
【0072】
定量化は、Agilent VF−WAXms 30m×0.25mm×1μmカラムを使用して、SPDE−HS−GC−FIDによって行われた。したがって、4グラムのインスタントコーヒーが、20mLバイアル中に秤量され、試料が、30℃で15分間平衡化された。2.5mL SPDEシリンジを使用して、試料のヘッドスペースが濃縮され、シリンジの内容物1mLが、GC−FIDへ脱着された。
【0073】
試料は、前述の実施例で、なおかつ上記で特定された特徴に関してさらに差異を設けたものを含み、米国特許第1,836,931号明細書に従う参照試料を含む。実施例4に基づいて、以下の製造特徴をさらに有する、他の試料も加えられる:
実施例5a: 豆:粒子の重量比1:2、保持時間6日、
実施例5b: 豆:粒子の重量比1:1、保持時間7日。
【0074】
結果は表4に示されている。
【0075】
表4の列は、以下のようにAおよびI〜Lの文字で示されている:
A=実施例番号
I=t=0におけるマーカーレベル[ng/ヘッドスペースml]
J=t=0におけるインスタントコーヒー中の油レベル[重量%]
K=3カ月間の貯蔵時間の後のマーカーレベル[ng/ヘッドスペースml]
L=インスタントコーヒー中の焙煎され挽かれた豆(%)
【0076】
【表4】
【0077】
これらの結果は、本発明の方法が、インスタントコーヒー芳香のために決定的であることが見出された特定の特徴に関する定量的要件を満たす製品を導くことを示す。
【0078】
このことは、本発明に従うインスタントコーヒーの特徴が先行技術である米国特許第1,836,931号明細書に従う製品のこれらの対応する特徴と比較されたときに、さらにより明らかになる。
【0079】
先行技術である米国特許第1,836,931号明細書に従う製品の結果は、本発明に従って調製されていないそのような製品が、特別の良好で保持された芳香を有するインスタントコーヒーを得るのに必要とされる特徴を全く満たさないことを明らかに示す。
【実施例6】
【0080】
本実施例は、インスタントコーヒーの良好な芳香および元に戻る能力に寄与するさらなる特徴、すなわち、インスタントコーヒー中の焙煎され挽かれたコーヒーのパーセンタイル含有量の決定に関する。上記で説明されたように、焙煎され挽かれたコーヒーは、可溶性コーヒー粒子とは対照的に不溶性であり、従来技術で公知の手段によってコーヒー溶液から物理的に分離することによって決定され、それから重量測定法で分析される。
【0081】
インスタントコーヒー中の焙煎され挽かれた部分の決定方法
インスタントコーヒー中の焙煎され挽かれた部分の含有量は、ろ過によって決定された。インスタントコーヒー中の焙煎され挽かれたコーヒーの量に依存して、1〜10グラムのインスタントコーヒーが200mLの沸騰脱塩水に溶かされ、95℃で20分間保たれた。引き続いて、コーヒー溶液が、50mmの直径および200mLの容量を有するSartoriusステンレス製加圧フィルタホルダを使用して、既知の重量および15μmのメッシュサイズを有する乾燥されたナイロンフィルタ(Kabel Zaandam)に通された。
【0082】
フィルタが収集され、103℃で動作する乾燥炉で1時間乾燥された。乾燥された製品が秤量され、焙煎され挽かれた部分の含有量が、インスタントコーヒー100グラム当たりのグラムで表された。
【0083】
コーヒー豆とコーヒー粒子との比が1:1であり、保持時間が7日である、本発明に従って調製されたインスタントコーヒーは、わずか0.13重量%というインスタントコーヒー中の焙煎され挽かれたコーヒーの含有量を示し、これは、想定された下限である0.5重量%を下回り、先行技術のインスタントコーヒーまたは市販製品が典型的に特徴とするものをはるかに下回る。
【実施例7】
【0084】
本実施例は、インスタントコーヒーの開封後保存期限中の芳香保持の決定に関する。200gのインスタントコーヒーを含む最初に密閉されシールされた容器(ガラス瓶)であって、再密閉可能な覆いが備えられた、上記容器を使用して、以下のように試験が実行される。開封し該容器を開けた直後に、すなわち、遅延なくインスタントコーヒーを一切撹拌せずに、インスタントコーヒーが、3つのガラス管に、各管が10gのインスタントコーヒーを充填されるまで、ティースプーンを使用してすくい取られた。これらの管の少なくとも1つから、4gの量のインスタントコーヒーが採取され、この試料が、上述された2−メチルピラジンの定量分析を施される。
【0085】
該量のコーヒーを採取した後(これは、開封後保存期限0を表す「0 OP」と示されている)、インスタントコーヒーが、ティースプーンで10秒間強く撹拌される。その後、インスタントコーヒーが、さらに10秒間振盪され、その後、覆いが閉じられる。合計で20秒間の撹拌および振盪は、インスタントコーヒーのヘッドスペースを置き換えるのに役立つ。
【0086】
24時間の静置時間の後、該容器が再び開けられる。全く同じ手順が繰り返され、すなわち、第2のシリーズの3つのインスタントコーヒー試料を各10g採取し、インスタントコーヒーを合計で20秒間撹拌および振盪し、覆いを閉じる。4gの量のこの第2のシリーズのインスタントコーヒー試料が、上述された2−メチルピラジンの定量分析を施される。試験は、3日目から6日目まで毎日繰り返される。撹拌および振盪の結果として、試験は、実際の貯蔵に比べて開封後保存期限について加速された方法を提供することに留意される。すなわち、試験期間中に、芳香の低減が観察されることができると予想される。
【0087】
使用されるコーヒーは、実施例5bのコーヒーと同様にして、2.8重量%の初期油レベルで調製される。
【0088】
結果は表5に示されている。表中の文字は、以下の意味を有する:
M=開封後保存期限の日数、
N=本発明のインスタントコーヒーの量のマーカーレベル[ng/ヘッドスペースml]。
【0089】
【表5】
【0090】
結果は、本発明のインスタントコーヒーが、ヘッドスペースml当たり少なくとも1.5ngの2−メチルピラジンという所望の芳香レベルを、少なくとも3日間の加速された開封後保存期限の間保持することを示す。
【国際調査報告】