(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-501024(P2017-501024A)
(43)【公表日】2017年1月12日
(54)【発明の名称】一体化された破裂板を有する、エチレン系不飽和単量体の高圧重合により得られる反応混合物の成分を分離するための容器
(51)【国際特許分類】
B01J 3/04 20060101AFI20161216BHJP
C08F 2/01 20060101ALI20161216BHJP
C08F 10/00 20060101ALI20161216BHJP
B01J 3/00 20060101ALI20161216BHJP
B01J 3/03 20060101ALI20161216BHJP
B01J 3/02 20060101ALI20161216BHJP
【FI】
B01J3/04 H
C08F2/01
C08F10/00 510
B01J3/00 B
B01J3/03 A
B01J3/02 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-536547(P2016-536547)
(86)(22)【出願日】2014年12月15日
(85)【翻訳文提出日】2016年6月3日
(86)【国際出願番号】EP2014077810
(87)【国際公開番号】WO2015091384
(87)【国際公開日】20150625
(31)【優先権主張番号】13198363.7
(32)【優先日】2013年12月19日
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】500289758
【氏名又は名称】バーゼル・ポリオレフィン・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】エリヒ・ノイマン
(72)【発明者】
【氏名】ダニール・ハイルリン
(72)【発明者】
【氏名】クラウディオ・フィブラ
【テーマコード(参考)】
4J011
【Fターム(参考)】
4J011AA02
4J011AA09
4J011DA06
4J011DB28
4J011DB29
4J011DB30
4J011DB32
4J011DB34
(57)【要約】
圧力10MPa〜50MPaで液体成分とガス成分とを含む組成物を液体分とガス分とに分離するための容器であって、分離容器は円筒形状を有し、垂直に配置されており、分離容器は頂部でマンホールを有し、該マンホールは分離容器の壁の肉厚部分で囲まれており、分離容器は、分離容器内に組成物を導入するための手段、分離容器の頂部からガス分を引き出すための手段、及び分離容器の底部から液体分を引き出すための手段を備え、分離容器は、分離容器の壁の肉厚部分にある孔の内部に圧密に設けられる破裂板ホルダによって保持される少なくとも1つの破裂板を有する。また、圧力10MPa〜50MPaで液体成分とガス成分とを含む組成物を液体分とガス分とに分離するための方法、及び、重合反応器において、温度100℃〜350℃及び圧力110MPa〜500MPaでフリーラジカル重合開始剤の存在下にエチレン系不飽和単量体からエチレンの単独重合体又は共重合体を製造するための方法であって、重合により得られた反応混合物の分離がそのような分離容器で行われる。
【代表図】
図4a
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力10MPa〜50MPaで液体成分とガス成分とを含む組成物を液体分とガス分とに分離するための容器であって、
分離容器は円筒形状を有し、垂直に配置されており、
前記分離容器は頂部でマンホールを有し、該マンホールは分離容器の壁の肉厚部分で囲まれており、
前記分離容器は、分離容器内に組成物を導入するための手段、分離容器の頂部からガス分を引き出すための手段、及び分離容器の底部から液体分を引き出すための手段を備え、
前記分離容器は、分離容器の壁の肉厚部分にある孔の内部に圧密に設けられる破裂板ホルダによって保持される少なくとも1つの破裂板を有する、容器。
【請求項2】
前記破裂板ホルダは、前記分離容器の壁の肉厚部分に垂直に設けられる、請求項1に記載の容器。
【請求項3】
前記破裂板ホルダは、外部からフランジ連結によって分離容器の壁に固定される、請求項1又は請求項2に記載の容器。
【請求項4】
前記破裂板は、分離容器内のガス分と接触する破裂板アセンブリの表面とマンホールの壁面とが同一平面内に配置されるように、分離容器の壁の肉厚部分にある前記孔の内側端部に配置される、請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の容器。
【請求項5】
前記分離容器は、4〜10のL/D比を有する、請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の容器。
【請求項6】
前記分離容器の頂部からガス分を引き出すための手段は、前記分離容器の壁の肉厚部分にある孔である、請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の容器。
【請求項7】
前記分離容器内に組成物を導入するための手段は入口管であり、該入口管は、頂部から分離容器の中に垂直に延びている、請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の容器。
【請求項8】
圧力10MPa〜50MPaで液体成分とガス成分とを含む組成物を液体分とガス分とに分離するための方法であって、分離が請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載の分離容器で行われる、方法。
【請求項9】
前記分離は温度120℃〜300℃で行われる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記組成物は、温度100℃〜350℃及び圧力110MPa〜500MPaでフリーラジカル重合開始剤の存在下にエチレン系不飽和単量体を重合して得られる反応混合物である、請求項8又は請求項9に記載の方法。
【請求項11】
重合反応器において、温度100℃〜350℃及び圧力110MPa〜500MPaでフリーラジカル重合開始剤の存在下にエチレン系不飽和単量体からエチレンの単独重合体又は共重合体を製造するための方法であって、重合により得られた反応混合物の分離が請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載の分離容器で行われる、方法。
【請求項12】
前記分離は重合により得られた反応混合物の第1分離であり、分離が圧力10MPa〜50MPa及び温度120℃〜300℃で行われる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記重合は、1つ以上の管型反応器又はオートクレーブ反応器又はこれらの反応器の組み合わせで行われる、請求項11又は請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力10MPa〜50MPaで、液体成分とガス成分とを含む組成物を液体分とガス分とに分離するための容器に関し、また、本発明は、圧力10MPa〜50MPaで液体成分とガス成分とを含む組成物を液体分とガス分とに分離するための方法に関し、さらに、本発明はフリーラジカル重合開始剤の存在下にエチレン系不飽和単量体からエチレンの単独重合体又は共重合体を製造するための方法に関し、重合により得られた反応混合物の分離がそのような分離容器で行われる。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンは最も広く用いられる商業用重合体である。ポリエチレンは一組の互いに異なる方法によって製造できる。フリーラジカル開始剤の存在下に高圧にて行われる重合が、ポリエチレンを得る最初に発見された方法であり、今でも低密度ポリエチレン(LDPE)の製造と高い商業的関連性を有する価値のある方法である。
【0003】
低密度ポリエチレンを製造するためのプラントの通常の構成は、オートクレーブ反応器又は管型反応器又はこれらの反応器の組み合わせからなる重合反応器以外にも、他の装備を含む。反応成分を加圧するためには、通常2つの圧縮機、すなわち一次圧縮機と二次圧縮機の1セットが用いられる。重合過程の最後に、高圧重合ユニットは一般に、得られた重合体をペレット化するために押出機及び造粒機のような装置をさらに含む。また、このような重合ユニットは一般に、1つ以上の位置で単量体と共単量体、フリーラジカル開始剤、調節剤又は他の物質を重合反応に供給するための手段も含む。
【0004】
高圧下で行われるエチレン系不飽和単量体のラジカル開始重合の一特徴は、単量体の転換が全く完全でないということである。反応器を通過するごとに、管型反応器での重合の場合には投入された単量体のうちの約10%〜50%のみが転換され、オートクレーブ反応器での重合の場合には投入された単量体のうちの8%〜30%が転換される。したがって、排出された反応混合物を重合成分とガス成分とに分離し、単量体を再循環させることが一般的な慣行である。不要な減圧ステップと圧縮ステップを避けるために、重合成分とガス成分との分離は通常2段階で行う。反応器から出る単量体−重合体混合物は第1分離容器(高圧生成物分離器ともいう)に送られ、ここで、単量体−重合体混合物から分離されたエチレンと共単量体は一次圧縮機と二次圧縮機との間の位置で反応混合物に再循環可能な圧力で重合成分とガス成分との分離が行われる。第1分離容器の作動条件で、該分離容器内の重合成分は液体状態である。第1分離容器内の液相のレベルは、一般に放射分析レベル測定で測定され、生成物排出弁によって自動制御される。第1分離容器から得られた液相は第2分離容器(低圧生成物分離器ともいう)に送られ、ここで重合成分とガス成分とのさらなる分離が低圧で起きる。第2分離容器で混合物から分離されたエチレンと共単量体は一次圧縮機に供給され、ここで該エチレンと共単量体はフレッシュなエチレン供給物の圧力で圧縮され、該フレッシュなエチレン供給物と結合し、結合されたストリームは高圧ガス再循環ストリームの圧力でさらに加圧される。
【0005】
一般に、圧力10MPa〜50MPaで作動する第1分離容器には通常、容器を過度な加圧から保護するための安全装置が備えられている。一般に用いられる装置は破裂板である。破裂板は通常、ガス分が二次圧縮機への再循環のために分離容器から出る際に通過する分離容器の排出ラインに設けられる。再循環ガスに伴う重合体による破裂板の詰まりを防止するために、破裂板の前にはデッドスペースがあってはならない。安全のため、破裂板はたびたび大きな鋼ブロック内に設けられる。
【0006】
新しい現代のワールドスケールのプラントは、過去のものよりはるかに高い容量の単一生産ラインを有するように設計されている。より高い処理量により、より大きなサイズの分離容器を用いる必要があり、これに伴い、破裂板の破裂によって減圧されるべき容積が増加することとなる。利用可能な破裂板の直径には限りがあるため、十分に速い圧力放出を行えるように、1より多い破裂板を設ける必要がある。さらに、破裂板ユニットの設置には一定の組立空間が必要になり、デッドスペースを回避するために破裂板を常にガス流があるラインに直接設けなければならないため、破裂板が第1分離容器の近傍に十分に設けられるようにするためには、1より多い排出ラインを通じて分離容器から出るガスを伝達することが必要になる。
【発明の概要】
【0007】
したがって、本発明の目的は、従来技術の短所を克服し、デッドスペースなしに1つ以上の破裂板を設けることのできる分離容器を提供することであり、前記分離容器は比較的簡単な設計を有し、経済的に作製でき、また、前記分離容器は、1より多い排出ラインを通過するように分離容器から出るガスを分割する必要がなく、別途の大きな鋼ブロックに破裂板を設けなくてもよい。
【0008】
本出願人は、上記の目的が圧力10MPa〜50MPaで液体成分とガス成分とを含む組成物を液体分とガス分とに分離するための容器によって達成されることを見出し、
分離容器は円筒形状を有し、垂直に配置されており、
前記分離容器は、頂部でマンホールを有し、該マンホールは分離容器の壁の肉厚部分で囲まれており、
前記分離容器は、分離容器内に組成物を導入するための手段、分離容器の頂部からガス分を引き出すための手段、及び分離容器の底部から液体分を引き出すための手段を備え、
前記分離容器は、分離容器の壁の肉厚部分にある孔の内部に圧密に設けられる破裂板ホルダによって保持される少なくとも1つの破裂板を有する。
【0009】
また、本出願人は、圧力10MPa〜50MPaで液体成分とガス成分とを含む組成物を液体分とガス分とに分離するための方法、及び、重合反応器において、温度100℃〜350℃及び圧力110MPa〜500MPaでフリーラジカル重合開始剤の存在下にエチレン系不飽和単量体からエチレンの単独重合体又は共重合体を製造するための方法を見出し、重合により得られた反応混合物の分離がそれらの分離容器で行われる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、好適な管型重合反応器のための典型的な構成を概略的に示す。
【
図2a】
図2aは、従来技術による分離容器の垂直断面を概略的に示す。
【
図2b】
図2bは、従来技術による該分離容器の概略的な水平断面を示す。
【
図3】
図3は、本発明による分離容器で用いられるように従来技術によっても用いられる一体化された破裂板を有する破裂板ホルダを概略的に示す。
【
図4a】
図4aは、本発明による分離容器の垂直断面を概略的に示す。
【
図4b】
図4bは、本発明によるこの分離容器の概略的な水平断面を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、圧力10MPa〜50MPa、好ましくは圧力20MPa〜30MPaで液体成分とガス成分とを含む組成物を液体分とガス分とに分離するための容器に関する。該分離容器は、分離容器内に組成物を導入するための手段、分離容器の頂部からガス分を引き出すための手段、及び分離容器の底部から液体分を引き出すための手段を備える。前記分離容器の頂部からガス分を引き出すための手段は、好ましくは分離容器の頂部にあるガス出口である。前記分離容器の底部から液体分を引き出すための手段は、好ましくは分離容器の底部にある液状用出口である。好ましくは、分離容器の下端部は円錐形部分で形成される。
【0012】
本発明による分離容器は円筒形状を有し、垂直に配置される。好ましくは、分離容器は4〜10、より好ましくは5〜8の直径に対する長さの比(L/D)を有する。容器の長さと容器直径に対する値は内部寸法を指す。好ましくは、分離容器の長さは3m〜20m、より好ましくは5m〜15mである。容器直径は、好ましくは0.5m〜2.5m、より好ましくは1m〜2mである。分離容器の下端部が円錐形部分で形成される場合、その円錐形部分のレベルは容器の長さに含まれる。
【0013】
分離容器はその頂部でマンホールを有するが、該マンホールは分離容器の壁の肉厚部分で囲まれている。好ましくは、マンホールの直径は少なくとも0.4mであり、より好ましくは0.5m〜0.8mである。分離容器の頂部にある前記分離容器の壁の肉厚部分は、マンホールの直径が分離容器の円筒形部分における内径よりも小さくなっており、マンホール領域における分離容器の外径が同じ比で減少されていない設計で得られる。好ましくは、分離容器は、分離容器の外径が容器の頂部で一定に維持され(すなわち、分離容器の頂部における外径が分離容器の円筒形部分における外径と同一であり、これにより分離容器はその頂部側にテーパされていない)、分離容器の円筒形部分における内径がマンホールの直径よりも大きく作られる。一般にマンホールは蓋で閉鎖され、該蓋は通常は好ましくはスクリューによって分離容器の本体に圧密に連結される。好ましくは、蓋と分離容器の本体を連結するための前記スクリューが分離容器の壁の肉厚部分の頂部に取り付けられる。
【0014】
本発明による分離容器の一般的な容積は4m
3〜20m
3である。このような分離容器は、例えば、80,000〜500,000トンのLDPEの年間容量を有する高圧重合プラントで高圧生成物分離器として用いられる。
【0015】
前記分離容器内に組成物を導入するための手段は、分離容器の壁にある入口であってもよい。好ましくは、前記分離容器内に組成物を導入するための手段は、頂部から分離容器の中に垂直に延びている入口管(一般に沈積管ともいう)である。このような入口管は好ましくは分離容器の中央に配置され、マンホールの蓋に一体化されている。好ましくは入口管は取外し可能なフランジを通じて蓋に連結される。
【0016】
好ましい入口管の場合、入口管の下端部、すなわち入口管の出口における内径と分離容器の円筒形部分における内径との比が0.2〜0.4であり、より好ましくは0.22〜0.35である。分離容器の円筒形部分における内径に対する入口管の下端部における内径の好ましい比の実現は、好ましくは下部が拡張している管を入口管として用いることによって達成される。前記入口管は、容器の上にある特殊なマンホールフランジを分離することで好適に再び取り付けられる。すなわち分離容器の外部に取り出すことができる。
【0017】
本発明の好ましい一実施形態によると、前記入口管は、分離容器の長さの25%〜50%、より好ましくは分離容器の長さの30%〜40%になる距離分だけ分離容器の中に延びている。
【0018】
本発明による分離容器の特徴として、該分離容器は、分離容器の壁の肉厚部分にある孔の内部に圧密に設けられる破裂板ホルダによって保持される少なくとも1つの破裂板を有する。よく破れ板とも称される破裂板は、最終保護要素として圧力容器又は圧力システムを過度な加圧から保護する再閉鎖不可能な圧力緩和装置である。破裂板は、圧力増加に対する即時の反応を提供するが、一度破れると再びシーリングすることができない。過度な加圧が起きると破裂するようになっているこのような破裂板は、破裂した破裂板の交換があまり複雑でない方式で保護対象容器又はシステムに一体化されなければならない。したがって、本発明によると、破裂板は、該破裂板が好ましくは組付ナット又はスクリューによって固定されているホルダによって保持されるようにして破裂板アセンブリが形成される。破裂板ホルダは分離容器の本体に圧密に連結される。好ましくは、破裂板ホルダは外部からフランジ連結によって分離容器の壁に固定される。
【0019】
破裂板が破裂した場合、分離容器の内容物は破裂した破裂板によって生じた開口を通じて適切な方式で膨張されることとなる。したがって、破裂板ホルダは好ましくはベントラインに連結され、該ベントラインは、そのような非常状況で分離容器の内容物を例えばブローダウン容器を通じてフレア(flare)のような安全な場所又は大気に伝達できる。破裂した破裂板の一部は破裂板ホルダを通過して外部に飛び出すため、破裂した破裂板の一部がベントラインを塞いだりベントラインから離れたりしないように、運動エネルギーを吸収するための装置(いわゆるキャッチャ)がベントラインの適切な位置に設けられることがさらに好ましい。運動エネルギーを吸収するためのこのような装置は、例えば鉛でファイリングされている管の端部である。
【0020】
本発明によると、破裂板ホルダは分離容器の壁の肉厚部分にある孔の中に設けられる。分離容器のこの領域は、分離容器の耐圧性を損傷させることなく1つ以上の孔を開けるのに十分な安定性を有している。好ましくは、分離容器の壁の頂部にある肉厚部分は、少なくとも2つの孔、すなわち分離容器の頂部からガス分を引き出すための出口として作用する1つの孔と、破裂板ホルダを設けるための少なくとも1つの孔とを有する。最大8つの孔を同じ高さで分離容器の壁の肉厚部分に簡単に穿孔させることができるため、好ましい分離容器は、分離容器の頂部からガス分を引き出すための出口として作用する1つの孔と、破裂板ホルダを設置するための1〜7つの孔とを有する。特に好ましい分離容器は、分離容器の頂部からガス分を引き出すための出口として作用する1つの孔と、破裂板ホルダを設置するための1〜3つの孔とを有する。
【0021】
好ましくは、分離容器内のガス分と接触する位置で破裂板がデッドスペースなしに、すなわち破裂板の前にプラギング(plugging)が形成される空間を有しないか又は本質的に有しないように配置される。したがって、破裂板は、分離容器内のガス分と接触する破裂板アセンブリの表面とマンホールの壁面が同一平面内に配置されるように、分離容器の壁の肉厚部分にある孔の内側端部に好適に配置される。構成上の理由により、破裂板の外面は一般に正確に破裂板アセンブリの外面のレベルにないことを理解しなければならない。破裂板は通常、該破裂板の外側縁を囲みかつ中央部は露出した状態で残される締付ナットによって破裂板ホルダに固定される。破裂板とマンホールの壁面との間の隙間、すなわち破裂板の外面の平面とマンホールの壁面の平面との間の距離は一般に数ミリメートルの大きさであるが、しばしば2〜10mmである。
【0022】
本発明の分離容器は好ましくは、フリーラジカル重合開始剤の存在下にエチレン系不飽和単量体の高圧重合時に高圧生成物分離器として用いられる。高圧重合は、好ましくはエチレンの同種重合であるか、又は1つ以上の他の単量体が高圧下でエチレンとフリーラジカル共重合可能であれば、エチレンとその1つ以上の他の単量体との共重合である。共重合可能な好適な単量体の例は、例えば、α、β−不飽和C
3−C
8−カルボン酸、特にマレイン酸、フマル酸、イタコン酸、アクリル酸、メタクリル酸及びクロトン酸、α、β−不飽和C
3−C
8−カルボン酸の誘導体、例えば不飽和C
3−C
15−カルボン酸エステル、特にC
1−C
6−アルカノールのエステル又は無水物、特にメチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート又はtert−ブチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、メタクリル酸無水物、無水マレイン酸又はイタコン酸無水物、及びプロペン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン又は1−デセンのような1−オレフィンがある。また、カルボン酸ビニル、特に好ましくはビニルアセテートが共単量体として用いることができる。プロペン、1−ブテン、1−ヘキセン、アクリル酸、n−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ビニルアセテート又はプロピオン酸ビニルが共単量体として特に好適である。
【0023】
共重合の場合に、反応混合物内の共単量体の割合は、単量体の量、すなわちエチレン及び他の単量体の合計を基準として1〜50重量%、好ましくは3〜40重量%である。共単量体の種類によって、1より多いポイントで共単量体を反応器の構成に供給することが好ましい。好ましくは共単量体は二次圧縮機の吸入側に供給される。
【0024】
本発明の目的のために、重合体又は重合材料は、いずれも少なくとも2つの単量体単位からなる物質である。これは好ましくは20,000g/moleより大きい平均分子量(M
n)を有する低密度ポリエチレンである。低密度ポリエチレンという用語は、エチレンの単独重合体及びエチレン共重合体を含む。本発明の方法は20,000g/moleより小さい分子量(M
n)を有するオリゴマー、ワックス及び重合体の製造にも有利に用いることができる。
【0025】
それぞれの反応領域でフリーラジカル重合を開始するための可能な全ての開始剤は、一般に、重合反応器内の条件下でラジカル種を生成できる物質、例えば酸素、空気、アゾ化合物又は過酸化物重合開始剤である。本発明の好ましい一実施形態において、重合は酸素を用いて行われ、この酸素は純粋なO
2の形態又は空気として供給される。酸素で重合を開始する場合、開始剤は通常、まずエチレン供給物と混合された後、反応器に供給される。このような場合、単量体と酸素を含むストリームを重合反応器の開始部に供給できるだけでなく、該反応器に沿っている1つ以上のポイントにも供給でき、2つ以上の反応領域を生成することができる。本発明の好ましい実施形態では、さらに有機過酸化物又はアゾ化合物を用いて開始が行われる。好適な有機過酸化物としては、例えば、パーオキシエステル、パーオキシケタール、パーオキシケトン及びパーオキシカーボネート、例えば、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジシクロヘキシルパーオキシジカーボネート、ジアセチルパーオキシジカーボネート、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート、ジ−tert−ブチルパーオキシド、ジ−tert−アミルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−tert−ブチルパーオキシへキサン、tert−ブチルクミルパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサ−3−イン、1,3−ジイソプロピルモノヒドロパーオキシド又はtert−ブチルヒドロパーオキシド、ジデカノイルパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、tert−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジベンゾイルパーオキシド、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−ブチルパーオキシジエチルアセテート、tert−ブチルパーオキシジエチルイソブチラート、tert−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、1,1−ジ(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロへキサン、1,1−ジ(tert−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、tert−ブチルパーオキシアセテート、クミルパーオキシネオデカノエート、tert−アミルパーオキシネオデカノエート、tert−アミルパーオキシピバレート、tert−ブチルパーオキシネオデカノエート、tert−ブチルパーマレアート、tert−ブチルパーオキシピバレート、tert−ブチルパーオキシイソノナノエート、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、メチルイソブチルケトンヒドロパーオキシド、3,6,9−トリエチル−3,6,9−トリメチル−トリパーオキソシクロノナン、及び2,2−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ブタンがある。アゾアルカン(ジアゼン)、アゾジカルボン酸エステル、アゾビスイソブチロニトリルのようなアゾジカルボキシル酸ジニトリル、及びフリーラジカルで分解され、かつC−C開始剤ともいう炭化水素、例えば1,2−ジフェニル−1,2−ジメチルエタン誘導体、及び1,1,2,2−テトラメチルエタン誘導体も好適である。個別の開始剤、又は好ましくは多様な開始剤の混合物を用いることができる。広範囲の開始剤、特にパーオキシドが商用化されており、例えばAkzo Nobel社製の商品名Trigonox(商標)又はPerkadox(商標)の製品がある。
【0026】
好適な過酸化物重合開始剤としては、例えば1,1−ジ(tert−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ブタン、tert−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、tert−ブチルクミルパーオキシド、ジ−tert−ブチルパーオキシド、及び2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサ−3−インを含み、tert−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、ジ−(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート又はtert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートを用いることが特に好ましい。
【0027】
前記開始剤は、生成されるポリエチレンの0.1mol/t〜50mol/t、特に0.2mol/t〜20mol/tの濃度で各反応領域で単独又は混合物として用いられてもよい。本発明の好ましい一実施形態において、反応領域に供給されるフリーラジカル重合開始剤は、少なくとも2つの互いに異なるアゾ化合物又は有機過酸化物の混合物である。このような開始剤混合物が用いられる場合、その開始剤混合物を全反応領域に供給することが好ましい。そのような混合物内の互いに異なる開始剤の数に対する制限はないが、好ましくは前記混合物は2〜6種、特に2種、3種又は4種の互いに異なる開始剤から構成される。互いに異なる分解温度を有する開始剤の混合物を使用することが特に好ましい。
【0028】
溶解された状態の開始剤を使用することがしばしば有利である。好適な溶媒としては例えば、ケトンと脂肪族炭化水素、特にオクタン、デカン、及びイソドデカン及び他の飽和C
8−C
25−炭化水素がある。溶液は2〜65重量%、好ましくは5〜40重量%、特に好ましくは8〜30重量%の割合の開始剤又は開始剤混合物を含む。
【0029】
高圧重合において、製造される重合体の分子量は通常連鎖移動剤として作用する調節剤の添加により変わり得る。適切な調節剤としては例えば、水素、脂肪族又はオレフィン炭化水素、例えばプロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、プロペン、1−ブテン、1−ペンテン又は1−ヘキセン、アセトン、メチルエチルケトン(2−ブタノン)、メチルイソブチルケトン、メチルイソアミルケトン、ジエチルケトン又はジアミルケトンのようなケトン、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド又はプロピオンアルデヒドのようなアルデヒド、及びメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール又はブタノールのような飽和脂肪族アルコールがある。飽和脂肪族アルデヒド、特にプロピオンアルデヒド又はプロペン、1−ブテン又は1−ヘキセンのような1−オレフィン又はプロパンのような脂肪族炭化水素を用いることが特に好ましい。
【0030】
高圧重合は、好ましくは圧力110MPa〜500MPaで行われ、管型反応器での重合の場合には、160MPa〜350MPaの圧力が好ましく、200MPa〜330MPaの圧力が特に好ましく、オートクレーブ反応器での重合の場合には、110MPa〜300MPaの圧力が好ましく、120MPa〜280MPaの圧力が特に好ましい。重合温度は管型反応器での重合の場合には、通常100℃〜350℃、好ましくは180℃〜340℃、さらに好ましくは200℃〜330℃であり、オートクレーブ反応器での重合の場合には、好ましくは110℃〜320℃、さらに好ましくは120℃〜310℃である。
【0031】
重合は高圧重合に好適なあらゆる種類の高圧反応器で行うことができる。好適な高圧反応器は例えば、管型反応器又はオートクレーブ反応器、あるいはこれらの反応器の組み合わせである。好ましくは高圧反応器は管型反応器又はオートクレーブ反応器であり、特に管型反応器である。
【0032】
通常の高圧オートクレーブ反応器は攪拌式反応器であり、2〜30、好ましくは2〜20の直径に対する長さの比を有する。このようなオートクレーブ反応器は1つ以上の反応領域、好ましくは1〜6個の反応領域、さらに好ましくは1〜4個の反応領域を有する。反応領域の数はオートクレーブ反応器内部の個々の混合領域を分離する攪拌機バッフルの数によって決まる。
【0033】
好適な管型反応器は基本的に長い厚壁管になっており、この管の長さは通常約0.5km〜4km、好ましくは1km〜3km、特に1.5km〜2.5kmである。前記管の内径は通常約30mm〜120mm、好ましくは60mm〜100mmである。このような管型反応器は好ましくは1000を上回る、好ましくは10000〜40000、特に25000〜35000の直径に対する長さの比を有する。
【0034】
好ましい管型反応器は少なくとも2個の反応領域、好ましくは2〜6個の反応領域、さらに好ましくは2〜5個の反応領域を有する。 反応領域の数は開始剤に対する供給ポイントの数から与えられる。このような供給ポイントは例えば、アゾ化合物又は有機過酸化物の溶液に対する注入ポイントであってもよい。フレッシュな開始剤が反応器に追加されると、この反応器で該フレッシュな開始剤はフリーラジカルに分解され、追加重合を開始する。管型反応器の壁を通じて取外し可能なものよりも多くの熱が発生するため、発生した反応熱によって反応混合物の温度が上昇する。温度が上昇すると、実質的に全てのフリーラジカル開始剤が消費されるまではフリーラジカル開始剤の分解速度が増加し、また重合が加速化する。その後は追加的な熱の発生がなく、反応器壁の温度が反応混合物の温度よりも低いので温度が再度低下する。これによって、管型反応器において開始剤供給ポイントの下流にありかつ温度が上昇する部分が反応領域になり、温度が再度下がるその後の部分は主に冷却領域になる。温度がどの程度上昇するかは加えられるフリーラジカル開始剤の量と特性によって決定され、したがってこの量と特性によってその値を調整することができる。通常、温度上昇は生成物の特性及び反応器の構成によって第1反応領域では70℃〜170℃と設定され、次の反応領域では50℃〜130℃と設定される。
【0035】
重合圧力による反応ガス組成物の圧縮は、好ましくは順次に作動する少なくとも2個の圧縮機で行われるが、これらの圧縮機のうちの一次圧縮機がまず反応ガス組成物を圧力10MPa〜50MPaで圧縮し、次いで、二次圧縮機(超高圧圧縮機ともいう)が反応ガス組成物を110MPa〜500MPaの重合圧力でさらに圧縮する。好ましくは、一次圧縮機及び二次圧縮機は多段式圧縮機である。また、これら圧縮機のうちの一方又は両方において1つ以上の段を分離し、それを分離された圧縮機で分割することができる。しかし、反応ガス組成物を重合圧力で圧縮するためには、通常、一連の1つの一次圧縮機と1つの二次圧縮機が用いられる。この場合、全ての一次圧縮機が一次圧縮機に指定されることもある。しかし、一次圧縮機の1つ以上の第1段(低圧生成物分離器からの再循環ガスをフレッシュなエチレン供給物の圧力で圧縮する)をブースター圧縮機に指定し、1つ以上の次の段のみ一次圧縮機に指定するのも一般的であり、もちろんそれらはいずれも1つの装置の一部分である。
【0036】
一般に、重合装置は重合反応器以外にも、未反応単量体を重合方法に再循環させるために高圧ガス再循環ライン及び低圧ガス再循環ラインを含む。重合反応器で得られた反応混合物は、高圧生成物分離器と呼ばれる第1分離容器(本発明による、分離容器の壁の肉厚部分にある孔の内部に圧密に設けられる破裂板ホルダによって保持される少なくとも1つの破裂板を有する分離容器である)に伝えられ、該分離容器の中で圧力10MPa〜50MPaでガス分と液体分とに分離される。該分離容器から引き出されたガス分は、前記高圧ガス再循環ラインを通じて二次圧縮機の吸入側に供給される。高圧ガス再循環ラインにおいて、通常前記ガスはいくつかの浄化ステップにより伴われる重合体又はオリゴマーのような望ましくない成分から浄化される。第1分離容器から引き出される液分(通常、依然としてエチレンのような溶解された単量体及び共単量体を20〜40重量%の量で含む)は第2分離容器(低圧生成物分離器ともいう)に伝達され、減少した圧力、通常0.1〜0.5MPaの絶対圧力で重合成分とガス成分とにさらに分離される。第2分離容器から引き出されたガス分は低圧ガス再循環ラインを通じて一次圧縮機、好ましくは最前方段に供給される。また、低圧ガス再循環ラインは通常、望ましくない成分からガスを浄化するためのいくつかの浄化ステップを含む。
【0037】
好ましくは、低圧ガス再循環ラインからの再循環ガスは一次圧縮機の第1段によってエチレン系不飽和単量体、好ましくはエチレンのフレッシュな供給物の圧力で圧縮され、その後にフレッシュなガス供給物と結合し、結合されたガスは一次圧縮機で圧力10MPa〜50MPaでさらに圧縮される。好ましくは、一次圧縮機は5個又は6個の圧縮段を含み、このうち2個又は3個の圧縮段がフレッシュなガスの追加前にあり、また、2個又は3個の圧縮段がフレッシュなガスの追加後にある。二次圧縮機は好ましくは2個の段を有するが、このうち第1段はガスを約30MPaから約120MPaに圧縮し、第2段はさらにガスを約120MPaから最終重合圧力に圧縮する。
【0038】
例えばオートクレーブ反応器のような好適な重合装置のための他の構成も可能である。
【0039】
図1は好適な管型重合反応器のための典型的な構成を概略的に示すが、本発明はここで説明する実施形態に限定されない。
【0040】
通常、1.7MPaの圧力下にあるフレッシュなエチレンがまず一次圧縮機(1)により約30MPaの圧力で圧縮され、その後に二次圧縮機(2)を使用して約300MPaの反応圧力で圧縮される。分子量調節剤が一次圧縮機(1)に追加される。一次圧縮機(2)から出る反応混合物はプリヒーター(3)に供給され、そこで反応混合物は約120℃〜220℃の反応開始温度で予熱されてから管型反応器(4)に送られる。
【0041】
前記管型反応器(4)は基本的に長い厚壁管でなっており、該管は冷却材回路(図示せず)により反応混合物から放出された反応熱を除去するために冷却ジャケットを有する。前記管の長さは通常約0.5km〜4km、好ましくは1.5km〜3km、特に2km〜2.5kmである。管の内径は通常約30mm〜120mm、好ましくは60mm〜100mmである。
【0042】
図1に示されている管型反応器(4)は空間的に互いに離隔している4個の開始剤の注入ポイント(5a〜5d)を有し、これら注入ポイントは開始剤又は開始剤混合物(I1〜I4)を反応器に供給し、また4個の反応領域にも供給するためのものである。反応混合物の温度で分解される好適なフリーラジカル開始剤を管型反応器に供給すると、重合反応が開始される。管型反応器の壁を通じて取外し可能なものよりも多くの熱が発生するため、発生した反応熱によって反応混合物の温度が上昇する。温度が上昇すると、全てのフリーラジカル開始剤が消費されるまでフリーラジカル開始剤の分解速度が増加し、また重合が加速化する。その後、追加的な熱の発生がなく、反応器壁の温度が反応混合物の温度より低いので温度は再度低くなる。これによって、管型反応器において開始剤の注入ポイントの下流にありかつ温度が上昇する部分が反応領域になり、温度が再度下がるその後の部分は主に冷却領域になる。
【0043】
温度がどの程度上昇するかは加えられるフリーラジカル開始剤の量と特性によって決定され、したがってこの量と特性でその値を調整することができる。通常、温度上昇は生成物の特性及び反応器の構成によって第1反応領域では70℃〜170℃と設定され、次の反応領域では50℃〜130℃と設定される。反応混合物は高圧減圧弁(6)を通じて管型反応器(4)から出てポスト反応器冷却器(7)を通過する。その後、結果として得られた重合体は、第1分離容器(8)及び第2分離容器(9)により未反応エチレン及び他の低分子量化合物(単量体、オリゴマー、重合体、添加剤、溶媒など)から分離して排出され、押出機及び造粒機(10)を通じてペレット化する。
【0044】
第1分離容器(8)で分離されたエチレン及び共単量体は、30MPaの高圧回路(11)にある管型反応器(4)の入口端部に再度供給される。前記エチレン及び共単量体はまず少なくとも1つの浄化段で他の成分から遊離し、その後、一次圧縮機(1)と二次圧縮機(2)との間で単量体ストリームに追加される。
図1は熱交換器(12)と分離器(13)とからなる1つの浄化段を示す。ただし、複数の浄化段を使用することも可能である。高圧回路(11)は通常ワックスを分離する。
【0045】
第2分離容器(9)で分離されたエチレン(特に低分子量重合生成物(オリゴマー)及び溶媒の大部分を含んでいる)は、約0.1〜0.5MPaの絶対圧力の低圧回路(14)で複数の分離器で処理され、各分離器の間には熱交換器が位置している。
図1は熱交換器(15、17)及び分離器(16、18)からなる2個の浄化段を示す。ただし、単に1つの浄化段を用いることも可能であり、好ましくは2個より多い浄化段を用いることも可能である。低圧回路(14)は通常オイルとワックスを分離する。
【0046】
好適な管型重合反応器のための他の構成ももちろん可能である。反応器管の入口で単量体を加えるだけでなく、好ましくは冷却された単量体を互いに異なる複数のポイントで反応器に供給することも有利であり得る。これは、特に酸素又は空気が開始剤として用いられる場合、異なる反応領域の開始部で特に好ましく行われ、酸素又は空気は通常一次圧縮機内の単量体供給物に追加される。
【0047】
本発明の分離容器がエチレン系不飽和単量体の高圧重合時に高圧生成物分離器として用いられる場合、分離容器で分離される組成物は、温度100℃〜350℃及び圧力110MPa〜500MPaでフリーラジカル重合開始剤の存在下にエチレン系不飽和単量体を重合して得られる反応混合物である。
【0048】
該反応混合物の重合成分とガス成分とを分離するために、分離容器の中に反応混合物を入れるステップと;反応混合物をガス分と液体分とに分離するステップと;分離容器の頂部から前記ガス分を引き出し、かつ分離容器の底部から前記液体分を引き出すステップとが行われる。前記分離は、好ましくは圧力10MPa〜50MPa、より好ましくは圧力20MPa〜30MPa及び好ましくは温度120℃〜300℃(エチレンの単独重合体の場合、より好ましくは220℃〜290℃、またエチレン共重合体の場合、より好ましくは130℃〜260℃)で行われる。分離容器の作動条件で、分離容器内の重合成分は液体状態である。
【0049】
高圧重合で得られた反応混合物の圧力は通常、重合反応器の下流に配置される高圧減圧弁に該混合物を通過させることによって減少する。その後、反応混合物は一般に後部冷却器又は生成物冷却器(冷却媒体として温水が供給される)を通過し、液分とガス分とに分離されるために分離容器に供給される。反応混合物の冷却及び/又は重合体生成物からの不純物の除去のために、反応混合物が第1分離容器に入る前に該反応混合物に低温エチレンを加えることができる。また、低温エチレンを分離容器に別々に供給することができる。好ましくは、反応混合物は高圧重合で得られたままの、すなわち低温エチレンのような他の成分が反応混合物に添加することなく分離容器に供給される。
【0050】
分離容器の頂部から引き出された反応混合物のガス分は通常高圧再循環に供給され、浄化及び冷却後に、二次圧縮機の吸入側に復帰する。浄化のために、分離容器から出るガスは、好ましくはまず熱交換器に供給され、(該熱交換器でガスは温水で冷却される)、その後、他の分離器に供給され、該分離器では伴われた重合材料とオリゴマー材料及び不純物の大部分がガスから分離される。ガスは通常追加的な冷却及び分離ステップを経ることでさらに浄化される。
【0051】
分離容器の底部から引き出された反応混合物の液分は通常第2分離容器に送られ、この分離容器では、依然として溶解されている低分子量化合物(主にエチレン)が、減少した圧力でさらに分離される。
【0052】
好ましくは、分離容器の円筒形状部分は、120〜300℃の温度を有する高圧又は中圧の飽和蒸気又は加圧水が通過するコイル又はジャケット又は加熱パネルによって効率的に加熱され、前記円錐形部分は、120〜300℃の温度を有する高圧又は中圧の飽和蒸気又は加圧水が通過するコイル又はジャケット又は加熱パネルによってさらに強く加熱される。
【0053】
本発明の好ましい一実施形態において、分離容器内の液分の充填レベルは放射分析レベル測定で測定され、レベル測定から得られるデータに基づいて作動する生成物排出弁で制御される。
【0054】
本発明による分離容器は、比較的簡単な設計で必要な破裂板をデッドスペースなく設けられるようにし、また、経済的に作製できるという利点を有する。分離容器から出るガスを分割して該ガスを1より多い排出ラインに通過させる必要がない。また、別途の大きな鋼ブロックを用いなくとも破裂板の安全な設置が可能である。
【0055】
本発明の利点を説明するために、
図2aは、従来技術による分離容器の垂直断面を概略的に示す。
図2bは、従来技術によるこの分離容器の概略的な水平断面を示す。
【0056】
分離容器(21)は円筒形状を有し、垂直に配置されている。分離容器の下端部は円錐形部分(22)で形成される。
【0057】
分離される組成物は、入口管(24)に変わる管(23)を通じて頂部から分離容器(21)に入る。分離容器(21)は液体分、例えば溶解されたガス成分を含む溶融された重合体で部分的に充填される。液体分は管(25)を通じて底部で分離容器から排出される。
【0058】
頂部で分離容器はマンホール(26)を有するが、該マンホールは分離容器の壁の肉厚部分(27)により囲まれる。分離容器のマンホール(26)は取外し可能な蓋(28)で閉鎖され、入口管(24)が取外し可能にフランジ(29)を通じて前記蓋に連結される。また、蓋(28)は分離容器の壁の肉厚部分(27)にフランジ連結される。
【0059】
分離容器の壁の肉厚部分(27)は2つの孔(30、31)を有するが、ガス分が分離容器から出る際に通過する2つの管(34、35)がフランジ(32、33)を通じて前記孔に連結されている。
【0060】
破裂板を設けるために、2つの大きな鋼ブロック(36、37)がフランジ(38、39)及びフランジ(40、41)を介して管(34、35)に挿入される。鋼ブロック(36、37)は孔(42、43)をそれぞれ有し、一体化された破裂板を有する破裂板ホルダが前記孔中に設けられる。破裂板の破裂後に分離容器の内容物を安全な場所に放出するために、ベントライン(44、45)がフランジ(46、47)を介して鋼ブロック(36、37)に連結されている。破裂板が破裂板ホルダの内側端部に位置し、よって分離容器(21)からガス分を高圧ガス再循環ライン(
図2a及び2bには図示せず)に伝達するための出口管にデッドスペースなしに設けられる。
【0061】
図3は、本発明による分離容器で用いられるように従来技術によっても用いられる一体化された破裂板を有する破裂板ホルダを詳細に概略的にさらに示す。
【0062】
破裂板ホルダは基本的に長い本体(51)になっており、該本体は一端部で開口(52)を有し、該開口端部で厚くなっている。破裂板(53)は前記本体の他の端部に付着して組付ナット(54)により固定される。破裂板(53)の破裂後に分離容器の内容物を安全な場所に放出させるために、通常ベントライン(図示せず)が破裂板開口(52)に連結されている。
【0063】
図4aは、本発明による分離容器の垂直断面を概略的に示す。
図4bは、本発明による該分離容器の概略的な水平断面を示す。
【0064】
分離容器(61)は円筒形状を有し、垂直に配置される。該分離容器の下端部は円錐形部分(62)で形成される。
【0065】
分離する組成物は入口管(64)に変わる管(63)を介して頂部から分離容器(61)に入る。分離容器(61)は液体分、例えば溶解されたガス成分を含む溶融された重合体で部分的に充填される。液体分は管(65)を介して底部で分離容器から排出される。
【0066】
頂部で分離容器はマンホール(66)を有するが、該マンホールは分離容器の壁の肉厚部分(67)により囲まれる。分離容器のマンホール(66)は取外し可能な蓋(68)で閉鎖され、入口管(64)が取外し可能にフランジ(69)を通じて前記蓋に連結される。また蓋(68)は分離容器の壁の肉厚部分(67)にフランジ連結される。
【0067】
分離容器の壁の肉厚部分(67)は1つの孔(70)を有し、ガス分が分離容器から出た際に通過する管(72)がフランジ(71)を通じて前記孔に連結される。
【0068】
前記分離容器の壁の肉厚部分(67)は2つの追加的な孔(73、74)を有するが、一体化された破裂板を有する破裂板ホルダがその追加的な孔中に設けられる。破裂板の破裂の後に分離容器の内容物を安全な場所に放出するために、ベントライン(75、76)がフランジ(77、78)を介して前記分離容器の壁の肉厚部分(67)に連結されている。破裂板が破裂板ホルダの内側端部に位置し、よって分離容器のマンホールにデッドスペースなしに設けられ、ガス分は孔(70)と出口ライン(72)を介して分離容器(61)から出る前に、先ず前記マンホールを通過して流れることとなる。
【0069】
図2a及び2bと
図4a及び4bとの比較から分かるように、本発明によって分離容器を設計する場合、より経済的に作製できるはるかに簡単な設計となる。別途の大きな鋼ブロックを設けなくてもよい。これは、これ以上このような大きな鋼ブロックを提供する必要がないだけでなく、破裂板の破裂時に流動力から生じる力を受けてこれに耐えられるように鋼ブロックを安全に固定することのできる構造体を設ける必要もないことを意味する。
【0070】
本発明はまた、圧力10MPa〜50MPa及び好ましくは温度120℃〜300℃で液体成分とガス成分とを含む組成物を液体分とガス分とに分離するための方法に関し、分離はそのような分離容器で行われる。好ましくは、組成物は、温度100℃〜350℃及び圧力110MPa〜500MPaでフリーラジカル重合開始剤の存在下にエチレン系不飽和単量体を重合して得られる反応混合物である。
【0071】
本発明の分離容器は、高圧でエチレンの単独重合体又は共重合体を製造するための方法に非常に有利に利用できる。したがって、本発明はさらに、重合反応器において、温度100℃〜350℃及び圧力110MPa〜500MPaでフリーラジカル重合開始剤の存在下にエチレン系不飽和単量体からエチレンの単独重合体又は共重合体を製造するための方法に関し、重合により得られた反応混合物の分離がそのような分離容器で行われる。分離は好ましくは重合により得られた反応混合物の第1分離であり、前記分離は圧力10MPa〜50MPaで行われる。
【0072】
前記重合は好ましくは、1つ以上の管型反応器又はオートクレーブ反応器又はこれらの反応器の組み合わせで行われる。
【国際調査報告】