(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-501315(P2017-501315A)
(43)【公表日】2017年1月12日
(54)【発明の名称】セルロース繊維
(51)【国際特許分類】
D01F 2/00 20060101AFI20161216BHJP
【FI】
D01F2/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2016-544398(P2016-544398)
(86)(22)【出願日】2014年12月22日
(85)【翻訳文提出日】2016年8月24日
(86)【国際出願番号】EP2014079043
(87)【国際公開番号】WO2015101543
(87)【国際公開日】20150709
(31)【優先権主張番号】14150132.0
(32)【優先日】2014年1月3日
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】500077889
【氏名又は名称】レンツィング アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100117444
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100149076
【弁理士】
【氏名又は名称】梅田 慎介
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【弁理士】
【氏名又は名称】佃 誠玄
(72)【発明者】
【氏名】シュレンプ,クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】シュスター,クルト クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ルフ,ハルトムート
(72)【発明者】
【氏名】フィルゴ,ハインリッヒ
(72)【発明者】
【氏名】ハインブーヒャ,カール ミヒャエル
【テーマコード(参考)】
4L035
【Fターム(参考)】
4L035AA04
4L035BB04
4L035BB71
4L035DD19
4L035EE08
(57)【要約】
本発明は、0.8dtexから3.3dtexの繊度を有し、次の関係式:
Holler係数F2≧1、好ましくは≧2
Holler係数F1≧−0.6
Holler係数F2≦6および
Holler係数F2−4.5×Holler係数F1≧1、好ましくは≧3
を特徴とするリヨセルタイプの繊維に関する。本発明に記載の繊維は、平面構造物内において、Holler係数に関する特性である柔軟性および耐摩耗性の特定の組合せを示す。したがって、繊維はよりビスコースに類似の挙動を示し、ビスコースの標準方法に従って織物に加工することができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.8dtexから3.3dtexの繊度を有し、次の関係式:
Holler係数F2≧1、好ましくは≧2
Holler係数F1≧−0.6
Holler係数F2≦6、および
Holler係数F2−4.5×Holler係数F1≧1、好ましくは≧3
を特徴とするリヨセルタイプのセルロース繊維。
【請求項2】
300回から5000回に達する耐湿潤摩耗性を特徴とする請求項1に記載の繊維。
【請求項3】
0.55から1.00の柔軟性を特徴とする請求項1または2に記載の繊維。
【請求項4】
前記繊維のリング糸Nm50/1から生産されるシングルジャージー150g/m2が、マーチンデール法に従って、孔形成時点までに30000回から60000回の耐摩耗性を示す、請求項1から3のいずれかに記載の繊維。
【請求項5】
アミノオキシド処理に従って生産されることを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載の繊維。
【請求項6】
少なくとも2つの異なるパルプの混合物から生産されることを特徴とする、請求項1から5のいずれかに記載の繊維。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の複数の繊維を含む繊維束。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リヨセルタイプのセルロース繊維に関する。
【背景技術】
【0002】
セルロース繊維生産のための既知のビスコース法に関連する環境問題を受け、ここ数十年にわたり、より環境に優しい代替的方法の実現に注力されてきている。それに伴い、近年特に注目を集めている可能性として、誘導体が形成されることなく有機溶剤にセルロースを溶解し、前記溶液からの成形体を押出すことである。このような溶液から紡糸される繊維は、BISFA(人造繊維の標準化のための国際標準局)からリヨセルという一般名を得ており、ここで有機溶剤とは有機化学物質と水の混合物と理解される。
【0003】
さらに、このような繊維は「溶剤紡糸繊維」という用語でも知られている。
【0004】
具体的には、第三級アミンオキシドと水の混合物は、リヨセル繊維および他の成形体それぞれの生産に対する有機溶剤として完全に適していることが分かっている。それにより、N−メチルモルホリン−N−オキシド(NMMO)は、主にアミンオキシドとして使用される。他の適切なアミンオキシドはEP−A553070において開示されている。
【0005】
EP0356419Aにおいて、アミンオキシド中パルプ溶液の製造方法に関する技術導入が記載されている。その際、破砕されたパルプ懸濁液が薄い層状となり、加熱表面を通って第三級アミンオキシド水溶液中を運搬され、水分が蒸発し、それにより、紡糸可能なセルロース溶液が生産される。
【0006】
アミンオキシド中でセルロース溶液を紡糸する方法は、US4,246,221から知られている。前記方法に従って、紡糸口金から押出されたフィラメントをエアーギャップを介して誘導し、そこで延伸し、その後、セルロースを水性紡糸浴槽中で沈殿させる。前記方法は、「乾湿式紡糸プロセス」もしくは「エアーギャップ紡糸プロセス」としても知られている。
【0007】
第三級アミンオキシド中のセルロース溶液から繊維を生産する方法全体は、以後「アミンオキシドプロセス」と呼び、略語「NMMO」は、以後セルロースを溶解できるすべての第三級アミンオキシドを指す。アミンオキシドプロセスに従って生産される繊維は、湿潤状態と同様に正量状態における高い繊維強度、高い湿潤弾性、および高い引掛け強度を特徴とする。
【0008】
通気力学のみならず、温度、湿度、フィラメントの冷却速度等のエアーギャップ内の条件は、生産する繊維の特性に対して非常に重要である(これに関連して、Volker Simonの刊行物「Transactions of the American Society of Mechanical Engineers(ASME)118(1996)2月号、246〜249ページ」参照)。
【0009】
紡糸加工の技術的な実施形態は、多くの文献に記載されている。
【0010】
WO93/19230は、空気を吹き付けることで、押出されたフィラメントがノズル直下で冷却される方法を記載している。WO94/28218は、ノズル設計および吹付け法を記載している。WO95/01470は、WO93/19230に記載の冷却ガス流の層流を特許請求している。WO95/04173は、吹付けの更なる技術導入を記載している。WO96/17118において、吹付け空気中の水分が定義される。WO01/68958において、吹付け空気流は、押出されたフィラメントに対して、0°から45°の角度で下方向に向けられる。WO03/014436は、吹付け空気の吸入口を備える吹付け装置を記載している。WO03/057951は、エアーギャップの一部に対する吹付け空気の遮断を特許請求している。WO03/057952において、フィラメントを冷却するガスの乱流が記載されている。WO05/116309は同様に、エアーギャップの一部に対する吹付け空気の遮断を記載している。
【0011】
エアーギャップ紡糸プロセスに従って得られた繊維/フィラメントは、構造の観点で既知のビスコース繊維と異なる。結晶配向は、ビスコース繊維およびリヨセル繊維共に概ね同様の高いレベルであるが(主に、繊維の構築面積に位置するセルロース鎖の繊維軸に対する概ね平行な配置)、非晶配向において相当の差異が存在する(リヨセル繊維では、ランダムな部分でより高い平行度となる)。
【0012】
高い結晶度、細長いクリスタリット、高い非晶配向等のリヨセル繊維の特徴により、繊維軸に交差するクリスタリットの結合は不十分となる。湿潤状態において、繊維の膨張がさらに繊維軸に交差する結合力を低下させるため、機械的な歪みにより繊維フィラメントの剥離を生じる。この挙動は、湿潤フィブリルと呼ばれ、最終的に織物製品の白化または毛羽の形で品質を低下させる。
【0013】
この分野の研究の現状調査は、Josef Schurz、Jurgen Lenzの著書「Investigations on the structure of regenerated cellulose fibers」、Macromolecular Symposia、83巻、第1版、273〜289ページ、1994年5月、およびFink H−P、Weigel P、Purz H−J、Ganster J「Structure formation of regenerated cellulose materials from NMMO−solutions」Prog.Polym.Sci、2001(26)1473〜1524ページに記載される。
【0014】
リヨセル繊維の湿潤フィブリル耐性改善のための過去の取組みは、
− 製造条件の変更、または
− 生産加工中における化学的架橋結合の工程の導入
の二方向に向けられた。
【0015】
しかし、各事例に記載されているフィブリル抑制手段の成否の評価はほぼ不可能である。フィブリル挙動を測定する標準化された方法は存在せず、特許文献で出願される方法はすべて所有権がある。
【0016】
2つ目の手段である化学的架橋結合は、
− 繊維生産における追加の化学薬品/薬品コスト/廃水の問題
− 架橋結合の化学薬品生産時における環境汚染
− 織物の加工条件下における不十分な架橋結合の加水分解安定性
などのいくつかの欠点と関連している。
【0017】
化学的架橋結合の手段の例はそれぞれ、EP053977A、EP0665904A、およびEP0943027Aに記載されている。
【0018】
1つ目の手段に関して、製造条件を変更した多くの文献が公開されている。しかし、記載の方法は、フィブリル挙動をわずかに改善するのみで処理能力の永続的な改善に反映されていないか、もしくはコスト/技術的費用の結果として大規模では実現不可能な方法となっている。
【0019】
SU1,224,362において、アミルアルコールまたはイソプロパノール中のNMMO含有浴槽に単パルプから紡糸原液が紡がれる。WO92/14871はフィブリルを抑制した繊維を請求し、紡糸浴槽およびその後の洗浄浴槽のpHが8.5未満であることを特徴とする。パルプの種類や紡糸条件の詳細は記載されていない。
【0020】
WO94/19405は、パルプ混合物を使用する方法を記載している。しかし、紡糸された繊維のフィブリル化の傾向については言及されていない。
【0021】
WO95/02082は、数学的表現を用いて、フィブリル化の傾向が低い繊維を生産するための加工パラメータの組合せを記載している。前記加工パラメータは、紡糸孔の直径、紡糸材料の吐出量、フィラメントの繊度、エアーギャップの幅、およびエアーギャップ中の湿度である。使用されるパルプは詳細に記載されておらず、紡糸温度はわずか115℃である。
【0022】
WO95/16063において、紡糸浴槽もしくは精練浴槽で、押出されたフィラメントを溶存態の界面活性剤と接触させる。使用されるパルプの種類は特定しておらず、紡糸温度は115℃である。
【0023】
WO96/07779は、紡糸浴槽として、有機溶剤、好ましくはポリエチレングリコールを使用する。使用されるパルプ、もしくは得られた繊維の織物物性について詳細は記載されない。紡糸温度として110℃が示される。
【0024】
WO96/07777において、エアーギャップ中で、押出されたフィラメントをガス態で提供される脂肪族アルコールと接触させる。使用されるパルプの種類は特定しておらず、紡糸温度は115℃である。
【0025】
WO96/20301は、成形溶液を少なくとも2つの沈殿媒体に通し連続して先導する方法を記載し、1つ目の沈殿媒体中におけるセルロースの凝集は、後半の沈殿媒体に比べて遅く進行する。その例において、好ましくは、1つ目の沈殿媒体として高級アルコールが使用される。使用されるパルプは示されていないが、紡糸温度は115℃に達する。
【0026】
WO96/21758は、成形溶液が、高い水分量の上層空気および低い水分量の下層空気におけるエアーギャップに吹き付けられる方法を記載している。様々な重合度の単パルプがパルプとして使用され、紡糸温度は115℃に達する。
【0027】
EP0853146は2段階の方法を記載しており、1つ目の沈殿段階における繊維の滞留時間は、繊維に成形される溶液の表面粘着性のみを妨げるよう調節され、後半の沈殿段階において繊維が張ることなく凝集される。この例では、紡糸温度が109〜112℃に達する。
【0028】
WO97/23669において、NMMO含有量が60%を超える紡糸浴槽中へ紡糸される。単パルプが使用される。
【0029】
WO97/35054において、低フィブリル繊維を得るためのパラメータの組合せ、つまり紡糸原液の濃度、エアーギャップの通気量、およびノズル孔の直径が記載される。単パルプが使用され、紡糸温度は80℃から120℃に及ぶ。
【0030】
WO97/38153においても同様に、低フィブリル繊維を得るためのパラメータの組合せ、つまりエアーギャップの長さ、紡糸速度、エアーギャップ中の滞留時間、エアーギャップにおける吹付け空気の速度、吹付け空気の水分量、およびエアーギャップ中の滞留時間と吹付け空気の水分量の積が記載される。パルプ原料として単パルプが使用される。
【0031】
WO97/36028において、繊維は沈殿浴槽から取り出されてすぐ、任意選択で添加剤を添加した、40〜80%NMMO溶液で処理される。
【0032】
WO97/36029において、繊維は沈殿浴槽から取り出されてすぐ塩化鉛溶液で処理される。
【0033】
WO97/46745において、繊維は沈殿浴槽から取り出されてすぐNaOH溶液で処理される。
【0034】
WO98/02602において、繊維は弛緩状態で沈殿浴槽から取り出されてすぐNaOH溶液で処理される。
【0035】
WO98/06745において、異なる重合度のパルプ溶液を混合して得られるパルプ混合物が使用される。紡糸温度に関する詳細は記載されていない。
【0036】
WO98/09009において、紡糸材料に対する添加剤(ポリアルキレン、ポリエチレングリコール、ポリアクリレート)の添加が記載される。パルプ原料として単パルプが使用される。
【0037】
WO98/22642において、低い重合度を有するパルプ混合物が使用される。紡糸温度は110〜120℃に達する。
【0038】
WO98/30740においても、パルプ混合物が使用され、遠心紡糸加工に従って紡糸材料が紡がれる。紡糸温度は80〜120℃に達する。
【0039】
WO98/58103において、パルプ混合物に由来する紡糸材料中のパルプの分子量分布の詳細が示され、これが安定した紡糸につながる。しかし、得られた繊維/フィラメントのフィブリル挙動への言及はされていない。
【0040】
DE19753190において、繊維は沈殿浴槽から取り出されてすぐNMMO濃縮溶液で処理される。
【0041】
GB2337990において、単パルプの溶解に共溶剤が使用される。初期の溶液は60〜70℃で紡糸される。
【0042】
US6471727において、ヘミセルロースおよびリグニンを多く含有する単パルプ由来の紡糸材料は、それぞれ乾湿またはメルトブロー紡糸プロセスに従って加工される。
【0043】
WO01/81663において、紡糸細管が吐出口の交差部近辺で直接加熱される紡糸口金が記載される。前記方法は、リヨセル繊維のフィブリル化の傾向を抑制すると考えられるが、この試験条件は特定していない。
【0044】
WO01/90451は、エアーギャップ中の熱流束密度および押出溝の直径に対する長さの比を含む数学的関係式を特徴とする紡糸方法を記載している。本発明に従って紡糸される繊維は、低フィブリル傾向を示すと提示されているが、これに関連する更なる詳細は記載されていない。
【0045】
US6773648において、フィブリル抑制繊維を生産するメルトブロープロセスが公開されている。不規則な繊度のため、メルトブロー繊維は織物の用途に適していない。
【0046】
DE10203093において、単パルプ由来の異なるセルロース濃度を有する2つの紡糸原液を二重ノズルから紡糸することで、低フィブリル繊維が生産される。例は示されていない。
【0047】
DE10304655において、溶液の質を改善するため、ポリビニルアルコールがNMMOに添加される。請求されるフィブリル化の弱い繊維を紡糸する条件は示されていない。
【0048】
リヨセル繊維の特定の構造は、一方で、それらから生産される平面構造物の非常に良好な寸法安定性のみならず、乾燥および湿潤状態における高強度等の優れた織物物性につながり、他方で、繊維の低い柔軟性(高い硬化性)につながり、平面構造物中のビスコース繊維と比較して耐摩耗性の低下として現れる。
【0049】
柔軟性(コンプライアンス)という用語は、フックの法則に従って、試験体の伸張および伸張を引き起こす負荷の比率として定義される。リヨセル繊維の柔軟性の増加は、いくつかの刊行物の目的である。
【0050】
柔軟なリヨセル繊維がEP0686712に記載される。この特許は、尿素、カプロラクタム、もしくはアミノプロパノール等の窒素性物質を、それぞれポリマー溶液もしくは沈殿浴槽に添加することで得られる、NMR規則度の低い繊維を請求する。しかし、湿潤強度の非常に低い繊維が得られ、そのため、この繊維は後述の発明に記載の繊維とは明白に異なる。
【0051】
WO97/25462において、柔軟なフィブリル抑制繊維の生産方法が記載され、成形された繊維は、沈殿浴槽の後、脂肪族アルコールさらに任意選択で水酸化ナトリウムの添加剤を含有する洗浄および精練浴槽に先導される。得られた繊維の特性については不十分な記載のみである。具体的には、乾燥強度および湿潤強度のデータが欠落しており、更なる詳細を後述するが、これらは「Holler図」中の分類を可能とするものである。
【0052】
しかし、本出願の実施例において、前記文献に示される繊維伸張と本発明に記載の繊維の対応データとの比較では、繊維は相当な差異を示し、さらに、前記文献に示される伸張の値が低いため、上述の柔軟性の定義に従って、繊維の柔軟性はあまり高くはなり得ないと言ってもよい。文献の本文に示されるフィブリル挙動の改善は、いずれのデータからも全く確認されていない。
【0053】
EP1433881、EP1493753、EP1493850、EP1841905、EP2097563、およびEP2292815の文献は、それぞれポリビニルアルコールをNMMO/紡糸原液に添加することで生産される、好ましくはタイヤコード用途の、繊維およびフィラメントを記載している。この繊維/フィラメントは、高強度、低伸張性を特徴とする。そのため、上述の定義に従って柔軟性は、ほんのわずかとなり得る。
【0054】
紡糸材料に添加剤を添加することで、繊維のフィブリル挙動および/または柔軟性に影響を与え得ることを示唆する更なる文献として、Chanzy H、Paillet m、Hagege Rの「Spinning of cellulose from N−methylmorpholine N−oxide in the presence of additives」Polymer 1990、31、400〜5ページ、Weigel P、Gensrich J、Fink H−Pの「Strukturbildung Cellulosefasern aus Aminoxidlosungen」Lenzinger Berichte 1994;74(9),31〜6ページ、およびMortimer SA、Peguy AA「Methods for reducing the tendency of lyocell fibers to fibrillate」J.appl.Polym.Sci.1996、60、305〜16ページがある。
【0055】
WO2014/029748(出願公開はされていない)は、特にイオン性液体の溶液由来の溶剤紡糸セルロース繊維の製造を開示する。さらに、これに関連する最新の技術は、DE102011119840A1、AT506268A1、US6,153,136、CN102477591A、WO2006/000197、EP1657258A1、US2010/0256352A1、WO2011/048608A2、JP2004/159231A、およびCN101285213Aから得られる。
【0056】
ビスコース繊維(CrossおよびBevan 1892、GB 8700)は、100年以上前に発明された。生産の短所(環境問題)や特性(標準タイプの不十分な洗浄性)にもかかわらず、前記繊維タイプは毎年100万トン以上生産される。
【0057】
第2次世界大戦以降、従来の加工がさらに発展させられ(ポリノジック繊維およびモーダル繊維)、向上した洗浄性、高い寸法安定性を有する繊維を生み出したが、方法の根本的な特性を変えることはできなかった(多くの処理工程による非常に煩雑な方法であり、環境との関連もそのままである)。
【0058】
逆に、新しい繊維タイプ「リヨセル」の開発において、その様々な繊維構造のため特別な要求が加工条件に求められ、そのため、ビスコース繊維またはモーダル繊維の加工で確立した方法は、織物の流れに適用できないことが明らかとなった。繊維に合わせた特別な機械や加工調整が、特に染色および湿式仕上げに必要となる。リヨセル繊維が市場に現れてから20年以上が経過した現在、未だにこれが短所と見なされる。
【0059】
そのため、リヨセル繊維の優れた特性(例えば、高い湿潤強度、高い湿潤弾性、ならびに、これらに基づきビスコース繊維と比較して格段に改善する洗浄性および寸法安定性)を維持しつつ、リヨセル繊維に次の特定のビスコース繊維の特性
− 湿潤状態における低フィブリル傾向
− 高い柔軟性(低い硬化性)
を付与することが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0060】
したがって、本発明の目的は、確立した周知のビスコース加工方法に従って繊維の加工をできるようにすることにより、ビスコースにより類似した特性を有するリヨセル繊維を提供することである。
【0061】
紡糸材料、紡糸浴槽、もしくは精練における添加剤として、加工と無関係の化学物質に頼らない場合、特性の変化は、繊維生産に対して適切な加工パラメータを選択することでのみ達成されるべきである。そのシステムにおけるいずれの追加の化学物質も、紡糸材料もしくは紡糸浴槽に対する添加剤も同様であるが、復元に多大の労力が必要でありコスト要因となる。
【課題を解決するための手段】
【0062】
本発明の目的は、0.8dtexから3.3dtexの繊度を有し、次の関係式:
Holler係数F2≧1、好ましくは≧2
Holler係数F1≧−0.6
Holler係数F2≦6、および
Holler係数F2−4.5×Holler係数F1≧1、好ましくは≧3
を特徴とするリヨセルタイプのセルロース繊維により達成される。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【
図1】リヨセル繊維の開発以前に商業的に入手可能な再生セルロース由来の繊維に対するHoller図を示す図である。
【
図2】Holler図において本発明に記載の繊維が位置する領域を示す図である。
【
図3】本発明に記載の繊維を一般的なリヨセル繊維と対照させているHoller図を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0064】
下記に、本発明に記載の新しいリヨセル繊維は、いわゆる「Holler係数」F1およびF2への参照により記載され、公知の先行技術の人造セルロース繊維と区別される。
【0065】
ビスコース繊維等の人造セルロース繊維の基本的な化学構造は、リヨセル繊維を含め本質的に同じ(セルロース)であるが、繊維は結晶性または特に非晶領域での配向等の要素が異なる。それらの要素を互いに量的に区別するのは困難である。
【0066】
さらに、例えば、リヨセル繊維が織物物性パラメータ(強度値等)においてビスコース繊維と異なることは、当業者には明らかであるが、明確さに欠ける定義が可能な特性、例えば織物の「グリップ」においても異なる。同様に、(標準)ビスコース繊維、モーダル繊維、もしくはポリノジック繊維等、ビスコース加工に従って生産される様々な種類のセルロース繊維の間にも相当な差異がある。
【0067】
R.Holler著のエッセイ「Neue Methode zur Charakterisierung von Fasern aus Regeneratcellulose」Melliand Textilberichte 1984(65)573〜4ページにおいて、当時既知の再生セルロースから作製される様々な種類の繊維、つまりビスコース加工に従って生産された繊維間の明確な区別が、量的特徴に基づき表された。
【0068】
この提案に従って、多くの繊維の特性を比較する複雑さは、繊維を類似特性の集団に分割する少数のパラメータの形成、および係数分析により、有意に単純化できた。係数分析は、多変量解析であり、相関する特徴の集団を少数の無相関因子に減じることができる。
【0069】
係数分析のためにHollerに使用される織物物性は、最大正量張力(FFk)および最大湿潤張力(FFn)、最大正量張力の伸張(FDk)および最大湿潤張力の伸張(FDn)、湿潤弾性(NM)、正量引掛け強度(SFk)、ならびに正量ノット強度(KFk)である。
【0070】
それらの定量のみならずすべての測定量は、当業者には公知であり、特にBISFA規則「Testing methods viscose, modal, lyocell and acetate staple fibers and tows」2004年版6章および7章を参照し、更なる詳細を後述する。
【0071】
Hollerが入手可能であり収集した繊維において、サンプル間のばらつきの87%から92%は、2つの係数のみにより検出できた(
図1参照)。それらの2つの係数は次式で算出される。
Holler係数F1=−1.109+0.03992×FFk−0.06502×FDk+0.04634×FFn−0.04048×FDn+0.08936×NM+0.02748×SFk+0.02559×KFk
Holler係数F2=−7.070+0.02771×FFk+0.04335×FDk+0.02541×FFn+0.03885×FDn−0.01542×NM+0.2891×SFk+0.1640×KFk
【0072】
図1に見られるように、異なる種類の繊維間の区別は、この分析により明確に図形化でき、図は明瞭な定量パラメータに基づき作成された。
【0073】
Holler係数F1およびF2の座標系において、
図1は、Hollerが調査した商業的に入手可能な再生セルロース繊維70サンプルから作製される繊維集団を示す。係数F1に沿うことで、(同じ基本方法すなわちビスコース加工に従って生産されるが)異なる繊維タイプとしてBISFAにも一覧される、(標準)ビスコース繊維およびモーダル繊維の分割を特定することができる。縦座標の左側では、(標準)ビスコース繊維の領域が示される(
図1で「V」として示される)。縦座標の右側では、本質的にモーダル繊維の領域が示され、さらに2つの小集団、すなわちHWMタイプの繊維(「HWM」高い湿潤弾性)およびポリノジックタイプの繊維(「PN」)に系統づけられる。さらに、再生セルロースから作製され、かつ当時調査された繊維のいずれも存在しない境界(破線)をグラフにプロットする。しかし、本公開の時点では、リヨセル繊維は未だ試作段階であり、商業的に入手可能ではなかった。
【0074】
現在、商業的に入手可能なリヨセル繊維は、2から3のHollerF1値および2から8のF2値を有する。そのため、
図1に記載の「Holler図」において、このような繊維は上述の境界を越える位置にあり、ビスコース集団の繊維およびリヨセル繊維間の相当な差異が視覚的に明白となる。
【0075】
本発明に記載の繊維は現在、四角により図形化できるHoller図の領域に位置する。
四角の辺は、それぞれ次の値または関係式に対応する。
下辺F2=1
左辺F1=−0.6
上辺F2=6
右辺は下記関係式で定義される。
Holler係数F2−4.5×Holler係数F1≧1、好ましくは≧3
【0076】
前記関係から生じる、本発明に記載のリヨセル繊維のHoller図における配置が
図2に示される。大まかに言うと、本発明に記載の繊維は、Holler図において、横座標の上方かつ縦座標付近および左側の空間を占有し、現在商業的に入手可能であり、大まかにはHoller図において縦座標の(相当)右側に位置するリヨセル繊維と明確に区別される。
【0077】
逆に、本発明に記載のリヨセル繊維は、Holler図において(標準)ビスコースの領域付近に位置する。実際、本発明に記載のリヨセル繊維は、処理能力に関して、現在商業上一般的なリヨセル繊維より、はるかに「ビスコースに類似」する特性を有することが示されている。
【0078】
織物への適用において、「よりビスコースに類似」の特性により、次の特性変化につながる。
− 本発明に記載の繊維は、撚り糸状のビスコースのように平面構造物として染色が可能である(従来のリヨセル繊維は、拡布染色にのみ適している)。
− 本発明に記載の繊維から作製される平面構造物(編生地等)は、樹脂加工による高級仕上げを受けていないが、洗浄時により長い時間、織物の外観を変更せず維持する。
− 本発明に記載の繊維から作製される平面構造物は、ビスコースから作製される平面構造物に類似した耐摩耗性を示し、そのため、従来のリヨセル繊維と比較して2倍の向上を示す。
【0079】
しかし、本発明に記載の繊維は、洗浄処理においてリヨセル繊維に特徴的な高い寸法安定性を有する。
【0080】
モーダル繊維の領域の一部と同様に、本発明に記載の繊維および(標準)ビスコース繊維の領域は、Holler図で重複するが、本発明に記載の繊維は、(標準)ビスコース繊維およびモーダル繊維等のビスコース加工に従って生産される繊維と分析的に明白に区別できるため、製造プロセスの基本的な差異に基づき、繊維の種類を互いに明白に区別することができる。
− リヨセルの繊維タイプに関連する溶剤の残余量が検出可能である(具体的には、アミノオキシド処理に従って生産される繊維の場合、NMMOの残余)。
− ビスコース加工に従って生産される繊維と異なり、繊維は硫黄を含有していない。
【0081】
後述の方法に従って、本発明に記載の繊維の湿潤摩耗挙動は、繊維破断点までに300回から5000回まで、好ましくは500回から3000回まで及ぶ。
【0082】
本発明に記載の繊維の柔軟性(つまり、FDk/FFk指数)は、0.55から1.00に及ぶのが好ましく、好ましくは0.65から1.00である。
【0083】
本発明に記載の繊維のリング糸Nm50/1から作製されるシングルジャージー150g/m
2の、マーチンデール法に従う乾燥摩耗は、孔形成時点までに30000回から60000回まで及ぶ可能性が示されている。
【0084】
本発明に記載の繊維は、好ましくは、アミノオキシド処理に従って生産されることを特徴とする。
【0085】
本発明に記載の繊維は、好ましくは、ステープルファイバー、つまり切断された繊維として提供される。
【0086】
リヨセル繊維の発明に従って、特性がビスコースに類似するリヨセル繊維へ変化し、本発明に従って原料や加工条件を注意深く調節することにより、Holler図中の繊維データの置換えが達成される。
【0087】
1)パルプ
使用原料の定められた分子量分布が、本発明に記載の繊維の生産に必要である。具体的には、2つ以上の単パルプを混合することで達成される。したがって、本発明に記載の繊維は、好ましくは、少なくとも2つの異なるパルプの混合物から生産されることを特徴とする。
【0088】
分子量分布は、次のパラメータを特徴とする。
a)50未満の重合度を有するセルロースまたはセルロース随伴物質(キシラン等の重合ペントサンおよびヘキソサン、グルコマンナン、低分子β−1,4−グルカン)は2%未満(パルプ混合物に基づく)、好ましくは1.5%未満(DMAC/LiCl中のMALLS検出を用いたGPC/SEC法による分子量分布の定量、Bohrn,R.、A.Potthastら(2004)。「A novel diazo reagent for fluorescence labeling of carboxyl groups in pulp.」Lenzinger Berichte 83:84〜91)。
b)パルプ混合物の70%から95%の量は、(SCAN−CM15:99に従う測定により)250から500ml/g、好ましくは390から420ml/gに及ぶ極限粘度数を有し、以降「低分子成分」と称される。
c)パルプ混合物の5%から30%の量は、1000から2500ml/g、好ましくは1500から2100ml/gまでの極限粘度数を有し、以降「高分子成分」と称される。
d)好ましくは、低分子成分の量はそれぞれ、高分子成分が1000から1800ml/gの極限粘度数を有する場合、70〜75%であり、高分子成分が2000ml/g超の極限粘度数を有する場合、70〜95%である。
e)さらに、使用されるパルプの純度が重要である。純度は、DIN54355(1977)、つまり苛性ソーダに対するパルプ耐性の定量(耐アルカリ性)に従って、耐アルカリ性R10およびR18の平均値として定義される。前記値は、TAPPI T 203 CM−99に従うαセルロースの含有量と概ね一致する。
低分子成分の純度は>91%、好ましくは>94%であり、高分子成分の純度は>91%、好ましくは>96%である。
【0089】
特に、コットンリンターパルプ等の高純度パルプの使用により、本発明に記載の特性を提示する繊維の生産をより容易にできることが示されている。
【0090】
さらに、再生コットン生地(「再生コットン繊維」−RCF)から作製されるパルプは、本発明に記載の繊維の製造に適していることが示されている。このようなパルプは、刊行物「Process for pretreating reclaimed cotton fibres to be used in the production of moulded bodies from regenerated cellulose」(Research Disclosure、www.researchdisclosure.com、データベース番号609040、2014年12月11日デジタル公開)の教示に従って生産可能である。
【0091】
2)紡糸条件
適切なパルプ組成物の選択に加え、本発明に記載の繊維を生産するための紡糸条件は、特に重要である。
i)紡糸材料の処理量は、0.01から0.05g/ノズル孔/分、好ましくは0.015から0.025g/ノズル孔/分に及ぶべきである。
ii)エアーギャップ長:本発明に記載の繊維の生産手法は、エアーギャップ長が関連パラメータとならない点において、先行技術(WO95/02082、WO97/38153)と異なる。本発明に記載の繊維は、20mm以上のエアーギャップ長で既に得られている。
iii)エアーギャップ内の環境条件:本発明に記載の繊維の生産は、吹付け空気の湿度および温度が関連パラメータとならない点においても、先行技術(WO95/02082、WO97/38153)と異なる。吹付け空気の湿度の値は、空気1kg当たり0gから30gまでが適応可能であり、吹付け空気の温度は10℃から30℃に及んでもよい(吹付け空気の湿度の設定について、相対湿度100%に対する最低気温に達しない設定がありえないことは当業者には公知のことである)。
エアーギャップにおける吹付け空気の速度は、現在商業的に入手可能なリヨセル繊維の生産に対するものより低く、3m/秒未満、好ましくは約1〜2m/秒とするべきである。
iv)エアーギャップの通気量:エアーギャップ中の通気量(紡糸浴槽からの引き取り速度とノズルからの押出速度の比率)は7未満とするべきである。繊維の繊度が定められる場合、小さな孔径を有するノズルの使用により少量の通気が達成可能である。100μm以下の孔径を有するノズルが使用可能であり、40μmから60μmの孔径を有するノズルが好ましい。
v)紡糸温度:紡糸は可能な限り高温で行わなければならず、溶剤の熱安定性によってのみ制限される。しかし、130℃を下回ってはならない。
vi)紡糸浴槽の温度は、0℃から40℃に及んでもよく、0℃から10℃が好ましい。
vii)WO97/33020に従って、紡糸浴槽から精練までの繊維の輸送、および精練において、フィラメントは最大5.5cN/texの長手方向の引張荷重に曝されるべきである。
【0092】
上記パラメータが満たされる場合、2つのHoller係数F1およびF2に関して本発明に記載の関係に準拠し、より「ビスコースに類似」の特性を有するリヨセル繊維を、再現性をもって得られることが示されている。
【0093】
本発明は、本発明に記載の複数の繊維を含む繊維束にも関する。「繊維束」は複数の繊維、例えば、複数のステープルファイバー、連続フィラメントの撚り、もしくは1梱の繊維であると理解される。
【0094】
測定方法
織物物性の試験
Lenzing Technik製の振動計を用い、BISFA規則「Testing methods viscose, modal, lyocell and acetate staple fibers and tows」2004版6章に従って、繊維の繊度(線密度)の定量を実施した。
【0095】
引張試験機Lenzing Vibrodyn(定常変形速度での単繊維に対する引張試験用の装置)を用い、上述のBISFA規則7章に従って、正量および湿潤状態における最大張力(引張強さ)、最大張力の伸張(引張時の伸張)、ならびに湿潤弾性の定量を実施した。
【0096】
DIN53843 2部に基づき、次の方法で引掛け強度を定量した。試験に使用される2つの繊維の繊度を振動計上で定量する。引掛け強度の定量には、1つ目の繊維をループ状に形成し、両端に予備荷重を固定する(上述のBISFA規則7章に記載の予備荷重量)。2つ目の繊維を初めの繊維のループ中に引き抜き、2つの留め具の中央にインターレースが位置するように、引張試験機の上留め具(測定ヘッド)上に繊維の端を配置する。予備荷重が一様になった後、下方の留め具を閉め、引張試験を開始する(留め具の長さ20mm、牽引速度2mm/分)。ループの弧上において繊維の破断が起こることを確認するべきである。繊度関連の引掛け強度として、得られた最大張力の計測値を2つの繊維の繊度の小さい方で除算する。
【0097】
DIN53842 1部に基づき、次の方法で結節強度を定量した。試験対象の繊維からループを形成し、繊維の片端をループに通して引き抜き、緩いノットを形成する。ノットが留め具間の中央に位置するように、引張試験機の上留め具に繊維を配置する。予備荷重が一様になった後、下方の留め具を閉め、引張試験を開始する(留め具の長さ20mm、牽引速度2mm/分)。評価には、ノットにおいて、実際に繊維が破断した結果のみを使用する。
【0098】
湿潤摩耗法に従うフィブリル挙動の定量
Helfried Stoverの刊行物「Zur Fasernassscheuerung von Viskosefasern」Faserforschung und Textiltechnik 19(1968)10号、447〜452ページ、に記載される方法を利用した。
【0099】
この原理は、ビスコースフィラメントホースで覆われた鋼鉄回転軸を使用した、湿潤状態における単繊維の摩耗に基づく。ホースは継続して水で湿らせる。繊維が完全に擦り切れ、予備荷重が接触するまでの回転数を定量し、それぞれの繊維の繊度と関連付ける。
【0100】
装置:Lenzing Technik InstrumentsのAbrasion Machine Delta 100
上で引用した公開からはずれ、フィラメントホースの溝の形成を防止するため、測定中に鋼鉄軸を継続的に長手方向に移動させる。
フィラメントホースの供給源:Vom Baur GmbH&KG.Marktstrasse 34、D−42369 Wuppertal
試験条件:
水流速度:8.2ml/分
回転速度:500U/分
摩耗角:繊度1.3dtexに対して40°、繊度1.7dtexに対して50°、繊度3.3dtexに対して50°
予備荷重:繊度1.3dtexに対して50mg、繊度1.7dtexに対して70mg、繊度3.3dtexに対して150mg
【0101】
マーチンデール法に従う平面構造物の耐摩耗性の定量
規格「Determination of the Abrasion Resistance of Planar Textile Assemblies by means of the Martindale Method−Part2:Definition of the Destruction of Samples」(ISO 12947−2:1998+訂正1:2002;独版EN ISO 12947−2:1998+AC:2006)の方法。
【実施例】
【0102】
後述の表1のパルプおよびパルプ混合物を、それぞれ表2に示される組成物の紡糸材料に加工し、表2の条件下においてWO93/19230に記載の紡糸方法により、約1.2から約1.6dtexの繊度を有する繊維に紡糸した。
【0103】
表中に示されていない定数パラメータは次の通りである。
− 紡糸材料の吐出量 0.02g/孔/分
− エアーギャップ 20mm
− 吹付け空気の湿度 空気1kg当たり8〜12gH
2O
− 吹付け空気の温度 28〜32℃
− エアーギャップ中の吹付け空気の速度 2m/秒
【0104】
得られた繊維の織物物性は表3に示される。繊維データから算出されるHoller係数、繊維の湿潤摩耗値および柔軟性は、表4から参照できる。結果として、パルプの影響および紡糸温度の特別の重要性が、明確に示されている。
【0105】
【表1】
【0106】
刊行物「Process for pretreating reclaimed cotton fibres to be used in the production of moulded bodies from regenerated cellulose」(Research Disclosure、www.researchdisclosure.com、データベース番号609040、2014年12月11日デジタル公開)の教示に従って、パルプ「RCV LV」および「RCV HV」を生産した。
【0107】
【表2】
【0108】
【表3】
【0109】
【表4】
【0110】
図3は、本発明に従って請求される図の領域とともに、Holler図の実施例/比較例の位置付けを示す。その中で(本発明に記載の)実施例1から17は、それぞれの番号で指定され、比較例1から4はそれぞれ接頭文字「V」で指定される。
【0111】
比較例1は、他のすべての製造パラメータが本発明に記載の繊維の生産のためのパラメータに一致する場合でも、紡糸温度が122℃で、少なくとも130℃という要求値未満の場合、本発明の目的は達成されないことを証明する。
【0112】
比較例2は、他のすべての製造パラメータが本発明に記載の繊維の生産のためのパラメータに一致する場合でも、通気量が9.64で、8.00未満という要求値を超える場合、本発明の目的は達成されないことを証明する。
【0113】
比較例3は、パルプの重要性を証明する。他のすべての製造パラメータが本発明に記載の繊維の生産のためのパラメータに一致する場合でも、パルプ組成物が単パルプから成り、高分子量および低分子量の必要な割合を示すことができない場合、本発明の目的は達成されない。
【0114】
比較例4は、商業的なリヨセル繊維(Lenzing AGのTencel(登録商標))の特性およびHoller図における位置付けを示す。
【0115】
加工例
実施例11に記載の1.3dtex/38mmの繊維130kg/梱をリング糸Nm50に加工した。前記糸から、単位面積当たりの質量が150g/m
2のシングルジャージーを生産した。このシングルジャージーのサンプルを、実験室の染色機を用い、4%ノバクロンマリンFG、浴比1:30、60℃で45分間染色し、その後60℃で15回の家庭用洗浄に供した。
【0116】
表5は、それぞれ商業的ビスコースもしくはリヨセル繊維から作製される同じ構造の平面構造物と比較した、このシングルジャージーの摩耗性および洗浄性を示す。
【0117】
【表5】
【国際調査報告】