特表2017-501890(P2017-501890A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ナム、ジョンウの特許一覧

特表2017-501890超硬合金切削工具の製造方法及びこれによって製造された切削工具
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-501890(P2017-501890A)
(43)【公表日】2017年1月19日
(54)【発明の名称】超硬合金切削工具の製造方法及びこれによって製造された切削工具
(51)【国際特許分類】
   B23P 15/34 20060101AFI20161222BHJP
   B23C 5/16 20060101ALI20161222BHJP
   B23C 5/00 20060101ALI20161222BHJP
   B23C 5/04 20060101ALI20161222BHJP
   B23C 5/10 20060101ALI20161222BHJP
   B23C 5/12 20060101ALI20161222BHJP
   B23K 5/16 20060101ALI20161222BHJP
   B23K 13/00 20060101ALI20161222BHJP
   B24B 3/02 20060101ALI20161222BHJP
【FI】
   B23P15/34
   B23C5/16
   B23C5/00 Z
   B23C5/04 Z
   B23C5/10 Z
   B23C5/12 Z
   B23K5/16
   B23K13/00 Z
   B24B3/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-563047(P2015-563047)
(86)(22)【出願日】2015年5月13日
(85)【翻訳文提出日】2015年7月13日
(86)【国際出願番号】KR2015004785
(87)【国際公開番号】WO2016080611
(87)【国際公開日】20160526
(31)【優先権主張番号】10-2014-0162650
(32)【優先日】2014年11月20日
(33)【優先権主張国】KR
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ
(71)【出願人】
【識別番号】515191383
【氏名又は名称】ナム、ジョンウ
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(72)【発明者】
【氏名】ナム、ジョンウ
【テーマコード(参考)】
3C022
3C158
【Fターム(参考)】
3C022FF05
3C022KK16
3C022KK29
3C158AA02
3C158CA01
3C158CB02
3C158DB00
3C158DB09
(57)【要約】
本発明は、a)熱間用工具鋼からなる胴体部と超硬合金からなる切削部とを熱処理して接合する段階と、b)接合された胴体部と切削部とを所定の時間の間に冷却させる段階と、c)前記切削部を用途に応じて定められたパターンで切削加工して切削工具を形成する段階と、d)機械的性質を向上させるために、切削加工された前記切削工具の表面に金属酸化物、窒化物、炭化物のうち少なくとも一つ以上からなる皮膜をコーティングする段階と、e)コーティングされた前記切削工具を所定の時間の間、空気中に冷却させる段階とを含む超硬合金切削工具の製造方法、及びこれによって製造された切削工具に関するものであって、コーティング加工後もクラックが発生せず、優れた機械的性質を有する超硬合金切削工具を製造することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)熱間用工具鋼からなる胴体部と超硬合金からなる切削部とを熱処理して接合する段階と、
b)接合された胴体部と切削部とを所定の時間の間に冷却させる段階と、
c)前記切削部を用途に応じて定められたパターンで切削加工して切削工具を形成する段階と、
d)機械的性質を向上させるために、切削加工された前記切削工具の表面に金属酸化物、窒化物、炭化物のうち少なくとも一つ以上からなる皮膜をコーティングする段階と、
e)コーティングされた前記切削工具を所定の時間の間、空気中で冷却させる段階とを含む、
超硬合金切削工具の製造方法。
【請求項2】
前記a)段階は、熱間用工具鋼であるSKD61からなる胴体部と超硬合金からなる切削部とを800〜1200℃で高周波溶接又は酸素溶接を用いて接合することを特徴とする請求項1に記載の超硬合金切削工具の製造方法。
【請求項3】
前記b)段階は、接合された胴体部と切削部を真空チャンバー内で24時間徐冷させることを特徴とする請求項1に記載の超硬合金切削工具の製造方法。
【請求項4】
前記c)段階は、前記切削部をリリーフ研削機で研削して前記切削部の円周方向に沿って流線型に同じ切削逃げ角を有する複数の刃部が形成されるように加工することを特徴とする請求項1に記載の超硬合金切削工具の製造方法。
【請求項5】
前記d)段階は、400〜700℃の温度で前記切削工具の表面にチタンアルミニウム窒化物(TiAlN)を2〜4マイクロメートルの厚さで蒸着することを特徴とする請求項1に記載の超硬合金切削工具の製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか1項による製造方法によって製造された超硬合金切削工具であって、
前記胴体部は複数の溝部と複数の翼部とを備え、前記翼部は、その側端面が「L」状に加工されて、前記切削部は「L」状に加工された前記翼部の側端面に接合されることを特徴とする超硬合金切削工具。
【請求項7】
前記溝部と翼部は、前記胴体部の軸方向に沿って斜めに配列され、前記翼部は、長さ方向に沿って互いに離隔した「L」状の複数の刃接合部を備え、前記切削部は、前記刃接合部に接合され、前記溝部の外側に露出されることを特徴とする請求項6に記載の超硬合金切削工具。
【請求項8】
前記切削部は、スリット状に加工されたチップブレーカを含むことを特徴とする請求項7に記載の超硬合金切削工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削部のみが超硬合金からなる切削工具の製造方法及びこれによって製造された切削工具に関するものであって、高温のコーティング加工後もクラックが発生せず、優れた機械的性質を有する超硬合金切削工具の製造方法及びこれによって製造された切削工具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フライス盤に使用されるエンドミルや穴加工用工具であるドリル又は冷間パンチ及び熱間パンチなどの工具は、先端の切削部を含んでシャンク(shank)部分が一体に形成される。これらの切削工具は、耐久性、耐摩耗性、切削性などの機械的性質が優れていなければならないため、通常は超硬合金で製造される。
【0003】
しかし、工具の素材として使用されている超硬合金は、非常に高価なので、最近では、切削工具のシャンクを除いた切削部のみを超硬合金で形成した切削工具が製造されているのが実情である。
【0004】
先行文献1(大韓民国登録実用新案公報第20−0256477号)は、シャンク部が工具鋼で形成され、切削部は超硬合金で形成されて、シャンク部と切削部の継ぎ部にニッケル薄板を挿入した後、ろう付け(brazing)してシャンク部と切削部を一体に形成した超硬ろう付け工具を開示している。また、先行文献2(大韓民国登録特許第10−1099395号)は、加工部は超硬合金材質で形成され、支持部は一般の金属で形成されて、加工部と支持部の素材である加工粉末を真空チャンバー内で放電プラズマ焼結法によって一体に形成した超硬切削工具及びその製造方法を開示している。
【0005】
このように、先行文献1と2は、両方とも、切削部(加工部)のみ超硬合金で構成したので、切削工具のコスト削減を達成することができた。
【0006】
ここで、先行文献に開示された超硬合金の切削工具だけでなく、一般的な他の切削工具は、耐久性、耐摩耗性、切削性などの優れた機械的性質を付与するために、工具の表面にダイヤモンド膜又はチタンアルミニウム窒化物などの追加のコーティングが必要であった。
【0007】
ところが、シャンク部と切削部全体が超硬合金からなる切削工具の場合には、前述したコーティングに問題がないが、切削部のみが超硬合金からなる切削工具の場合には、コーティング時に適用される熱処理後、シャンク部と切削部の熱膨張係数が違って工具の表面にクラック(crack)が発生する問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記した問題を解消するために発明されたものであって、胴体部と切削部を高温でコーティング加工した後、コーティングされた工具の表面にクラックが発生することを防止することができる超硬合金切削工具の製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明は、切削部と再研削工具の間にスペースを確保して切削部の再研削加工が容易で、被加工物の表面を精密に加工することができる超硬合金切削工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した目的を達成するために、本発明は、a)熱間用工具鋼からなる胴体部と超硬合金からなる切削部とを熱処理して接合する段階と、b)接合された胴体部と切削部とを所定の時間の間に冷却させる段階と、c)前記切削部を用途に応じて定められたパターンで切削加工して切削工具を形成する段階と、d)機械的性質を向上させるために、切削加工された前記切削工具の表面に金属酸化物、窒化物、炭化物のうち少なくとも一つ以上からなる皮膜をコーティングする段階と、e)コーティングされた前記切削工具を所定の時間の間、空気中に冷却させる段階とを含む。
【0011】
好ましくは、前記a)段階は、熱間用工具鋼であるSKD61からなる胴体部と超硬合金からなる切削部とを800〜1200℃で高周波溶接又は酸素溶接を用いて接合することを特徴とする。
【0012】
また、前記b)段階は、接合された胴体部と切削部を真空チャンバー内で24時間徐冷させることを特徴とする。
【0013】
また、前記c)段階は、前記切削部をリリーフ研削機で研削して前記切削部の円周方向に沿って流線型に同じ切削逃げ角を有する複数の刃部が形成されるように加工することを特徴とする。
【0014】
また、前記d)段階は、400〜700℃の温度で前記切削工具の表面にチタンアルミニウム窒化物(TiAlN)を2〜4マイクロメートルの厚さで蒸着することを特徴とする。
【0015】
本発明はまた、前述した製造方法によって製造された超硬合金切削工具であって、前記胴体部は複数の溝部と複数の翼部とを備え、前記翼部は、その側端面が「L」状に加工されて、前記切削部は「L」状に加工された前記翼部の側端面に接合されることを特徴とする。
【0016】
好ましくは、前記溝部と翼部は、前記胴体部の軸方向に沿って斜めに配列され、前記翼部は、長さ方向に沿って互いに離隔した「L」状の複数の刃接合部を備え、前記切削部は、前記刃接合部に接合され、前記溝部の外側に露出されることを特徴とする。
【0017】
好ましくは、前記切削部は、スリット状に加工されたチップブレーカを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、胴体部と切削部を高温でコーティング加工した後、コーティングされた工具の表面にクラックが発生することを防止することができる。
【0019】
また、本発明によれば、切削部と再研削工具の間にスペースを確保して切削部の再研削加工が容易で、被加工物の表面を精密に加工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明に係る超硬合金切削工具の製造方法を概略的に示したフローチャートである。
図2a】本発明に係る超硬合金切削工具の製造方法によって製造された平フライスカッターを示す図である。
図2b】本発明に係る超硬合金切削工具の製造方法によって製造された平フライスカッターを示す図である。
図3a】本発明に係る超硬合金切削工具の製造方法によって製造されたエンドミルを示す図である。
図3b】本発明に係る超硬合金切削工具の製造方法によって製造されたエンドミルを示す図である。
図4a】本発明に係る超硬合金切削工具の製造方法によって製造されたプロファイルフライスカッターを示す図である。
図4b】本発明に係る超硬合金切削工具の製造方法によって製造されたプロファイルフライスカッターを示す図である。
図5a】本発明に係る超硬合金切削工具の製造方法によって製造されたセレーションフライスカッターを示す図である。
図5b】本発明に係る超硬合金切削工具の製造方法によって製造されたセレーションフライスカッターを示す図である。
図6a】本発明に係る超硬合金切削工具の製造方法によって製造された溝フライスカッターを示す図である。
図6b】本発明に係る超硬合金切削工具の製造方法によって製造された溝フライスカッターを示す図である。
図7a】本発明に係る超硬合金切削工具の製造方法によって製造されたホブを示す図である。
図7b】本発明に係る超硬合金切削工具の製造方法によって製造されたホブを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付された図面を参照して、本発明に係る超硬合金切削工具の製造方法の好ましい実施例を説明する。
【0022】
図1、2aと2bを参照する。本発明に係る製造方法は、胴体部10と切削部20を熱処理して接合する段階(S100)と、接合された胴体部10と切削部20を冷却させる段階(S200)と、切削部20を切削加工する段階(S300)と、切削工具の表面に皮膜をコーティングする段階(S400)と、コーティングされた切削工具を冷却させる段階(S500)とを含む。
【0023】
まず、胴体部10と切削部20を熱処理して接合する段階(S100)は、熱間用工具鋼であるSKD61(胴体部)と超硬合金(切削部)の接合部位を800〜1200℃でろう付け又は溶接して接合する段階である。この接合段階で、胴体部10と切削部20は、高周波溶接や酸素溶接を用いて接合することが好ましい。
【0024】
また、このような接合段階を経て胴体部10と切削部20は、互いに接合されるだけでなく、ともに熱処理される。このような熱処理工程によって、SKD61からなる胴体部10は、約HRC55のロックウェル硬さを有するようになり、超硬合金からなる切削部20は、約HRC93〜97のロックウェル硬さを有するようになる。
【0025】
ここで、切削部20は、84.5wt%の炭化タングステン(WC)、1.5wt%のTaNbC(Tantalum&Niobium Double Carbide Powder)と14wt%のコバルト(Co)を含むタングステン−カーバイド系の超硬合金である。また、切削部20は、85〜88wt%の炭化タングステン(WC)と11〜13wt%のコバルト(Co)を含むタングステン−カーバイド系の超硬合金である。このようなタングステン−カーバイド系の超硬合金は、高速度鋼やステライト(stellite)に比べて硬度が高く、耐摩耗性にも非常に優れており、高温での硬度も高いので、胴体部10の一部に接合されて切削加工を行う切削部20として有用である。
【0026】
接合された胴体部10と切削部20を冷却させる段階(S200)は、前述したろう付けや溶接によって接合された胴体部10と切削部20を真空チャンバー内で予め設定された時間の間に徐冷させる段階である。互いに異なる熱膨張係数を有していた胴体部10と切削部20は、熱処理過程(S100)と冷却過程(S200)を経て、熱膨張係数が調節される。特に、胴体部10がSKD61からなって切削部20がタングステン−カーバイド系超硬合金からなる場合、胴体部10と切削部20を真空チャンバー内で24時間常温で放置して徐冷させる。そうすることにより、胴体部10と切削部20の熱膨張係数を等しく調節することができる。このような胴体部10と切削部20の熱膨張係数の調節は、後述するコーティング段階(S400)で胴体部10と切削部20に熱が加えられた後でも、胴体部10と切削部20の接合部位にクラックが発生することを防止する役割をする。
【0027】
切削部20を切削加工する段階(S300)は、用途に応じて、すなわち製造しようとする切削工具の種類に応じて定められたパターンで切削部20を切削加工する段階である。例えば、切削部の加工パターンに応じて、図2a及び2bに示した平フライスカッター、図3a及び3bに示したエンドミル、図4a及び4bに示したプロファイルフライスカッター、図5a及び5bに示したセレーションフライスカッター、図6a及び6bに示した溝フライスカッター、図7aと7bに示したホブを加工することができる。
【0028】
この切削加工段階(S300)で、切削部20は、リリーフ研削機を用いて研削されるが、この時、切削部20は、円周方向に沿って流線型に同じ切削逃げ角を有する複数の刃部が形成されるように加工される。このような切削部の形状によって、切削工具は、スカイビング(skiving)機能を持つようになる。つまり、切削工具は、被加工物の表面を非常に精密に削り出すことができる。
【0029】
切削工具の表面に皮膜をコーティングする段階(S400)は、切削工具の機械的性質、例えば硬度、耐摩耗性、耐酸化性などを向上させるために、切削加工された切削工具の表面に金属酸化物、窒化物、炭化物のうち少なくとも1つ以上からなる皮膜をコーティングする段階である。
【0030】
このコーティング段階(S400)で、コーティング皮膜は、物理的気相蒸着法(Physical Vapor Deposition、PVD)、又は化学的気相蒸着法(Chemical Vapor Deposition、CVD)により切削工具の表面にコーティングされる。そして、コーティング温度は400〜700℃に維持されて、コーティング皮膜は2〜4マイクロメートルに形成される。このようなコーティング被膜により、切削工具の機械的な性質は、コーティング前に比べて約1.5倍程度向上する。
【0031】
このとき、高いコーティング温度により切削工具の胴体部10と切削部20は、膨張するようになるが、胴体部10と切削部20は、前述した冷却段階(S200)で熱膨張係数が同一に調節されたので、コーティング段階(S400)で胴体部10と切削部20に熱が加えられた後でも、胴体部10と切削部20の接合部位にクラックが発生することはない。さらに、切削工具が摩耗した場合に再研削をした後も、上記のコーティング工程を容易に行うことができ、工具の性能を継続して維持することができる。
【0032】
一方、コーティング皮膜の素材は、工具の耐摩耗性を増加させるために、周期表のIV、VとVI族の遷移金属又はケイ素、ホウ素及びアルミニウムから選択される金属の酸化物、炭化物、又は窒化物である。また、コーティング皮膜は、広範な切削用途に使用するためにダイヤモンド、cBN(窒化ホウ素化合物)でコーティングされる。特に、ダイヤモンドは、物質の中で最も硬度が高く、熱伝導性、耐摩耗性、電気抵抗性が非常に優れた物質であって、コーティング皮膜の素材として最適である。
【0033】
また、コーティング皮膜は、一つ以上の層が物理的気相蒸着(PVD)によって蒸着された微細結晶アルミナ、Alで構成され、非−Al−層がある場合は、金属成分がTi、Nb、Hf、V、Ta、Mo、Zr、Cr、W、及びAlから選択される金属窒化物及び/又は炭化物から好ましく構成される、一つ以上の耐火化合物層で構成される。
【0034】
また、コーティング皮膜は、耐熱性の遷移金属窒化物あるいは炭化物であるTiN、TiCなどの2元系、TiAlN、AlCrN、TiAlSiNなどの3−4元系とDLCなど、さまざまな硬質皮膜が物理的気相蒸着法(PVD)と化学的気相蒸着法(CVD)によってコーティングされる。これらのうち、物理的気相蒸着法によるTiAlN膜は高硬度と優れた耐酸化性の機械的特性を持っており、コーティング皮膜として最も適している。
【0035】
続いて、コーティングされた切削工具を冷却させる段階(S500)は、コーティングされた高温の切削工具を所定の時間の間、空気中で冷却する段階である。この冷却段階(S500)が完了すると、チップ部分にのみ超硬合金が接合された切削工具が完成される。
【0036】
前述したように、本発明は、異種材料の胴体部10と切削部20を高温接合した後、真空状態で徐冷することにより、胴体部10と切削部20の熱膨張係数を同一に調節することができ、これにより、高温のコーティング工程時に胴体部10と切削部20の接合部位にクラックが発生することを防止することができる。
【0037】
以下、添付された図面を参照して本発明に係る超硬合金切削工具の製造方法によって製造された切削工具について説明する。
【0038】
まず、図2a及び2bを参照する。前述した段階(S100乃至S500)を経て製造された平フライスカッター(plain milling cutter)が示されている。この平フライスカッターは、熱間用工具鋼である胴体部10と超硬合金である切削部20とからなる。胴体部10は、複数の溝部11と、複数の翼部12が形成されるよう接合段階(S100)の前に予め加工される。
【0039】
胴体部10の加工段階で、円筒形胴体部10の長さ方向、すなわち軸方向に沿って約7〜23度の角度で傾いて配列された複数の溝部11と翼部12が形成される。ここで、翼部12は、その側端面が「L」状に加工される。そして、切削部20は「L」状に加工された翼部12の側端面に接合される。切削部20と翼部12の接合は、前述した接合段階(S100)に基づいて接合される。
【0040】
好ましくは、胴体部10の溝部11と翼部12は、胴体部10の軸方向に沿って斜めに配列されて、翼部12は、長さ方向に沿って互いに離隔した「L」状の複数の刃接合部12aを備える。そして、切削部20は、刃接合部12aに接合されて溝部11の外側に露出される。
このような切削部20の突出構造は、切削工具の摩耗時に必要な再研削に有利である。すなわち、胴体部10の外側に露出された切削部20は、溝部11の空間によって再研削工具との接触空間が確保され、切削部20の再研削加工が容易である。
【0041】
また、前述のように、切削部20の切削加工段階(S300)で、切削部20は、リリーフ研削機で研削されて円周方向に沿って同一な切削逃げ角を有する。これにより、切削部20は、工具の回転方向と反対方向に曲がった流線型に形成される。このような流線型の切削部20は、平フライスカッターが被加工物を切削する際に、切削部20と被加工物との間に緩やかな接触角を持つようにして、切削部20の摩耗を減らし、被加工物の精密な加工を可能にする。つまり、切削工具は、切削部20の形状により、スカイビング(skiving)機能を持つようになる。したがって、切削工具は、被加工物の表面を非常に精密に削り出すことができる。
【0042】
一方、切削部20は、スリット状に加工されたチップブレーカ(21)を備えることができる。チップブレーカ21は、切削部20の端部に複数の歯形が形成されるように加工されて、切削加工時にチップが融着されることなく、よく排出されるようにする役割をする。
【0043】
一方、図3a及び3bは、エンドミル(endmill)を示し、図4a及び4bは、プロファイルフライスカッター(profile milling cutter)を示し、図5a及び5bは、セレーションフライスカッター(serration milling cutter)を示し、図6aと6bは、溝フライスカッター(slot milling cutter)を示し、図7a及び7bは、ホブ(hob)を示す図であって、この切削工具はすべて、前述した製造段階(S100乃至S500)を経て製造されたチップ部分に超硬合金が接合された切削工具である。
【0044】
図3a乃至7bを参照する。切削工具は、前述した平フライスカッターと同様に、熱間用工具鋼である胴体部110、210、310、410、510と超硬合金である切削部120、220、320、420、520とからなる。胴体部110、210、310、410、510は、複数の溝部111、211、311、411、511、及び複数の翼部112、212、312、412、512が形成されるよう接合段階(S100)の前に予め加工される。
【0045】
胴体部110、210、310、410、510の加工段階で、胴体部には、複数の溝部111、211、311、411、511、及び複数の翼部112、212、312、412、512が形成される。ここで、翼部は、その側端面 が「L」状に加工される。そして、切削部120、220、320、420、520は、「L」状に加工された翼部の側端面に接合される。切削部と翼部の接合は、前述した接合段階S100に従う。
【0046】
好ましくは、翼部112、212、312、412、512は、「L」状の複数の刃接合部112a、212a、312a、412a、512aを備える。そして、切削部120、220、320、420、520は、刃接合部112a、212a、312a、412a、512aに接合されて溝部111、211、311、411、511の外側に露出される。このように、胴体部110、210、310、410、510の外側に露出された切削部120、220、320、420、520は、溝部111、211、311、411、511の空間によって再研削工具との接触空間が確保され、切削部の再研削加工が容易である。
【0047】
また、切削部120、220、320、420、520の切削加工段階S300で、切削部はリリーフ研削機で研削されて円周方向に沿って同一な切削逃げ角を有する。これにより、切削部120、220、320、420、520は、工具の回転方向と反対方向に曲がった流線型に形成される。このような流線型の切削部120、220、320、420、520は、切削工具が被加工物を切削する際に、切削部と被加工物との間に緩やかな接触角を持つようにして、切削部の摩耗を減らし、被加工物の精密な加工を可能にする。
【0048】
また、図3a及び3bに示されたエンドミルと、図6aと6bに示された溝フライスカッターの場合、切削部120、420は、スリット状に加工されたチップブレーカ121、421を備えることができる。このようなチップブレーカ121、421は、切削部の端部に複数の歯形が形成されるように加工されて、切削加工時にチップが融着されることなく、よく排出されるようにする役割をする。
図1
図2a
図2b
図3a
図3b
図4a
図4b
図5a
図5b
図6a
図6b
図7a
図7b
【手続補正書】
【提出日】2016年2月2日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)熱間用工具鋼からなる胴体部と超硬合金からなる切削部とを熱処理して接合する段階と、
b)接合された胴体部と切削部とを所定の時間の間に冷却させる段階と、
c)前記切削部を用途に応じて定められたパターンで切削加工して切削工具を形成する段階と、
d)機械的性質を向上させるために、切削加工された前記切削工具の表面に金属酸化物、窒化物、炭化物のうち少なくとも一つ以上からなる皮膜をコーティングする段階と、
e)コーティングされた前記切削工具を所定の時間の間、空気中で冷却させる段階とを含み、
前記b)段階は、接合された胴体部と切削部を真空チャンバー内で24時間徐冷させることを特徴とする、
超硬合金切削工具の製造方法。
【請求項2】
前記a)段階は、熱間用工具鋼であるSKD61からなる胴体部と超硬合金からなる切削部とを800〜1200℃で高周波溶接又は酸素溶接を用いて接合することを特徴とする請求項1に記載の超硬合金切削工具の製造方法。
【請求項3】
前記c)段階は、前記切削部をリリーフ研削機で研削して前記切削部の円周方向に沿って流線型に同じ切削逃げ角を有する複数の刃部が形成されるように加工することを特徴とする請求項1に記載の超硬合金切削工具の製造方法。
【請求項4】
前記d)段階は、400〜700℃の温度で前記切削工具の表面にチタンアルミニウム窒化物(TiAlN)を2〜4マイクロメートルの厚さで蒸着することを特徴とする請求項1に記載の超硬合金切削工具の製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至の何れか1項による製造方法によって製造された超硬合金切削工具であって、
前記胴体部は複数の溝部と複数の翼部とを備え、前記翼部は、その側端面が「L」状に加工されて、前記切削部は「L」状に加工された前記翼部の側端面に接合されることを特徴とする超硬合金切削工具。
【請求項6】
前記溝部と翼部は、前記胴体部の軸方向に沿って斜めに配列され、前記翼部は、長さ方向に沿って互いに離隔した「L」状の複数の刃接合部を備え、前記切削部は、前記刃接合部に接合され、前記溝部の外側に露出されることを特徴とする請求項に記載の超硬合金切削工具。
【請求項7】
前記切削部は、スリット状に加工されたチップブレーカを含むことを特徴とする請求項に記載の超硬合金切削工具。
【国際調査報告】